説明

デジタル式車速表示装置

【課題】デジタル表示のちらつきを防止しつつ、車速表示の遅れ感を改善することのできる車速表示装置を提供する。
【解決手段】車速データに基づいて車速を更新表示するデジタル式車速表示装置1において、車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間を計測し、車速の表示更新があった時点から継続時間の計測を開始する計測手段3と、計測手段により計測された継続時間が、車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間を超えるか否かを判定する判定手段4と、車速データおよび判定手段4により判定された判定結果に基づいて車速表示を制御する表示制御手段5とを備え、表示制御手段5は、判定手段4の判定の結果、継続時間が基準時間を超える場合には、表示すべき車速に変化があった時点で車速表示を更新し、基準時間を超えない場合には、基準時間の経過時に車速表示を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車速データに基づいて車速を表示するデジタル式車速表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車速表示方式として、指針を使用したアナログ式とともに、7セグメントの数字によるデジタル式が採用されている。デジタル式は、現在の車速を数字として直接表示することで、ドライバが直感的に車速を理解できる効果があるが、その反面、短時間で車速が変動し続けた場合に、表示の切り替わりが連続して、ドライバがデジタルのちらつきを感じることがある。
【0003】
そこで、従来では、車速表示の切り替わりに一定の周期を設けることでデジタルのちらつきを防止する技術が提案されている(特許文献1)。また、車速データの転送タイミングを遅延させるとともに、車速の表示部に光学的変調装置を設けることで、デジタルのちらつきを防止する技術も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−77532(段落0022、0023、図4等参照)
【特許文献2】特開2000−314642(段落011、0016、図1、図2等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、例えば、車両が緩やかに加速している状況、すなわち、上記した一定の周期のなかで車速が緩やかに変化している状況においては、車速表示が一定の周期毎にしか更新されないため、車速が上がっているにも関わらず、車速表示が変化しないという状況が生じ、ドライバが車速表示の遅れ感を感じることがある。
【0006】
また、特許文献2の技術のように、車速データの転送タイミングを遅延させたり、光学的変調装置を設けたりすることで、デジタルのちらつきを防止することができるが、光学的変調装置のような、追加の装置を設ける必要があるため、表示装置が高価になってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、デジタル表示のちらつきを防止しつつ、車速表示の遅れ感を改善することのできる車速表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明のデジタル式車速表示装置では、車速データに基づいて車速を更新表示するデジタル式車速表示装置において、車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間を計測し、車速の表示更新があった時点から前記継続時間の計測を開始する計測手段と、前記計測手段により計測された前記継続時間が、車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間を超えるか否かを判定する判定手段と、前記車速データおよび前記判定手段により判定された判定結果に基づいて車速表示を制御する表示制御手段とを備え、前記表示制御手段は、前記判定手段の判定の結果、前記継続時間が前記基準時間を超える場合には、表示すべき車速に変化があった時点で車速表示を更新し、前記基準時間を超えない場合には、前記基準時間の経過時に車速表示を更新することを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1にかかる発明によれば、計測手段により、車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間が計測され、判定手段により該継続時間が車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間を超えるか否かが判定される。
【0010】
そして、表示制御手段が、判定手段の判定の結果、継続時間が基準時間を超える場合には、表示すべき車速に変化があった時点で直ちに車速表示を更新するとともに、継続時間が基準時間を超えない場合には、基準時間の経過時に車速表示を更新する。また、車速の表示更新があった場合、計測手段は、その更新があった時点から継続時間の計測を開始する。
【0011】
したがって、例えば、車速の表示更新があったときから基準時間を経過するまでの間に予め定められた一定値を超える車速の変化があった場合は、直ちに車速表示が切り替わることがないため、短時間での車速の変化や瞬間的に車速が変動した場合に車速表示の切り替わりが連続して発生することによるデジタルのちらつきを防止することができる。
【0012】
また、車両が加速することにより車速が緩やかに変化している状況では、基準時間のなかで実際の車速が変化し、車速の表示を一定周期毎に更新すると、ドライバがアクセル操作により加速していると感じているにもかかわらず、車速の表示かなかなか切り替わらないという表示の遅れ感を感じることがあるが、本発明では、車速変化の少ない(車速の変化が一定値以内)状態が、車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間を超えて継続している場合は、その後に表示すべき車速の変化があった時点で、直ちに車速の表示が更新されるため上記したような車速表示の遅れ感を改善することができる。
【0013】
また、従来技術のように、デジタルのちらつき防止に光学的変調装置などの追加の装置を設ける必要がないため、安価な構成でデジタルのちらつき防止、ならびに、車速表示の遅れ感を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のデジタル式車速表示装置のブロック図である。
【図2】図1の動作説明図である。
【図3】図1の動作説明図である。
【図4】図1のデジタル式車速表示装置の動作説明用フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。なお、図1は本発明にかかる一実施形態のデジタル式車速表示装置のブロック図、図2は表示制御手段の説明図、図3は表示制御手段の説明図、図4は図1の動作説明用のフローチャートである。
【0016】
(構成)
本発明にかかる一実施形態のデジタル式車速表示装置1の構成について、図1を参照して説明する。
【0017】
車速センサ2は、車両の速度を検出するためのセンサであり、車速センサ2により検出した車速データを、逐次、後述する計測手段3および表示制御手段5が取得する。このとき、車速センサ2は、後述する車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間よりも短い時間間隔で、逐次、車速を検出する。
【0018】
計測手段3は、車速センサ2から取得した車速データに基づいて、車速表示が更新された時点での車速と、車速センサ2が順次検出したそれぞれの車速との差(車速の変化)が予め定められた一定値以内である状態の継続時間を計測する。このとき、計測手段3は、車速の表示更新があった時点での車速を記憶した上で、車速センサ2が順次検出した車速データを取得し、更新時の車速と車速センサ2が順次検出したそれぞれの車速とを比較して、継続時間を計測する。なお、予め定められた一定値として、車速表示が更新された時点における車速を基準にして、その後、順次車速センサ2により検出されたそれぞれの車速の変化量が1km/h未満であるとしたときの例えば0.5km/hとすればよい。そして、車速の表示更新があった場合、計測手段3は、車速の表示更新があった時点から新たに継続時間の計測を開始する。
【0019】
判定手段4は、計測手段3から取得した車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間が、車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間を超えるか否かを判定する。このとき、基準時間を、例えば、300msに設定するとよい。
【0020】
次に、表示制御手段5について、図2および図3を参照して説明する。なお、図2は、車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間が基準時間を超えない場合における、実際の車速(図2(a))、表示車速(図2(b))、更新表示タイミング(図2(c))を示し、図3は車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間が基準時間を超える場合における、実際の車速(図3(a))、表示車速(図3(b))、更新表示タイミング(図3(c))を示す。なお、図2(c)および図3(c)の長い矢印は、車速センサ2が車速を検出するタイミングであって、かつ、車速表示を更新するタイミングまたは更新するか否かを判断するタイミングを示し、短い矢印は車速センサ2が車速を検出するタイミングを示す。
【0021】
表示制御手段5は、車速の更新時における車速センサ2が検出した車速を、一定の閾値に基づいて後述する表示手段6に表示するように制御する。表示制御手段5は、例えば、車速センサ2が検出した車速が20km/h以上21km/h未満である場合は20km/h、21km/h以上22km/h未満である場合は21km/hを表示するように制御する。
【0022】
したがって、表示制御手段5は、例えば、図2に示すように、車速の更新タイミングである時刻t1における車速センサ2により検出した車速が20km/hである場合は、表示手段6の車速表示が20km/hを示すように表示手段6を制御する。このとき、計測手段3は、時刻t1における車速(20km/h)を基準にして、上記した継続時間の計測を開始する。
【0023】
また、表示制御手段5は、車速センサ2から取得した車速データおよび判定手段4により判定された判定結果に基づいて車速表示の更新タイミングを制御する。まず、判定手段4は、車速の変化が予め定められた一定値(例えば0.5km/h)以内である状態の継続時間が、車速を表示更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間を超えるか否かを判定する。図2に示すように、時刻t1での車速が20km/hであるのに対して、車速を表示更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間に対応する時刻t3よりも前の時刻であるt2での車速が、予め定められた一定値を超えて変化している。このような場合、表示制御手段5は、表示すべき車速の変化があった時刻t2で車速の表示更新を行なわず、基準時間に対応する時刻である時刻t3で車速の表示更新を行なう。このとき、計測手段3は、表示更新のあった時刻t3から新たに継続時間の計測を開始する。また、これと同様に、車速の表示更新時(時刻t3)の車速に対して、予め定められた一定値を超える車速の変化が、次の基準時間に対応する時刻t5の前の時刻である時刻t4において生じているため、表示制御手段5は、次の基準時間に対応する時刻t5で車速の表示更新を行なう。
【0024】
次に、計測手段3により計測された継続時間が基準時間を超える場合の車速の表示更新手段について、図3を参照して説明する。図3に示すように、判定手段4は、車速の表示更新があった時刻t6を基準に、継続時間が基準時間を超えるか否かを判定する。この場合、車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間(時刻t6〜時刻t8)が基準時間(時刻t6〜時刻t7)を超えているため、表示制御手段5は、基準時間に対応する時刻t7で車速の表示更新を行なわず、次に表示すべき車速に変化のあった時刻t8で直ちに車速表示の更新を行なう。このとき、計測手段3は、車速の表示更新のあった時刻t8から新たに継続時間の計測を開始する。これと同様に、車速の表示更新時刻である時刻t8を基準にした場合、車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間(時刻t8〜時刻t10)が基準時間(時刻t8〜時刻t9)を超えているため、表示制御手段5は、次に表示すべき車速に変化のあった時刻t10で直ちに車速表示の更新を行なう。
【0025】
表示手段6は、ドライバが車速を一見して分かるように表示するもので、車両のインストルメントパネルにバー状の7セグメント形式で車速を表示する。
【0026】
次に、本実施形態にかかるデジタル式車速表示装置1の動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
まず、車速センサ2により車速を検出し(ステップS1)、その車速データを計測手段3および表示制御手段5が取得する。
【0028】
次に、計測手段3は、車速センサ2から取得した車速データに基づいて、車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間を計測する。このとき、計測手段3は、車速センサ2から取得した車速表示の更新時の車速を記憶した上で、その後車速センサ2により順次検出される車速データを逐次取得し、取得した更新時の車速データおよびその後に順次取得する車速データに基づいて、車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間を計測する(ステップS2)。
【0029】
次に、判定手段4は、計測された継続時間に関する情報を計測手段3から取得し、該継続時間が車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間を超えるか否かを判定する(ステップS3)。
【0030】
判定手段4による判定の結果、継続時間が基準時間を超えない場合、表示制御手段5は、表示すべき車速に変化があった時点で車速の表示更新を行なわず、基準時間経過時に車速の表示更新を行なう(ステップS4)。このとき、計測手段3は、車速の表示更新を行なった時点(基準時間経過時)から新たに継続時間の計測を開始する。
【0031】
そして、運転を継続している間は、ステップS5をNOで通過して車速の表示更新を繰り返し、運転を終了した時にステップS5をYESで通過して動作を終了する。
【0032】
また、ステップS3において、判定手段4による判定の結果、継続時間が基準時間を超える場合、表示制御手段5は、車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間経過時に車速の表示更新を行なわず、その後表示すべき車速に変化があった時点で直ちに車速の表示更新を行なう(ステップS6)。このとき、計測手段3は、車速の表示更新を行なった時点(表示すべき車速に変化があった時点)から新たに継続時間の計測を開始する。
【0033】
そして、運転を継続している間は、ステップS5をNOで通過して車速の表示更新を繰り返し、運転を終了した時にステップS5をYESで通過して動作を終了する。
【0034】
したがって、上記した実施形態によれば、車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間を計測手段3が計測し、計測手段3が計測した継続時間が車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間を超えるか否かを判定手段4が判定する。
【0035】
そして、判定手段4が判定した結果、継続時間が基準時間を超える場合には、表示制御手段5は、その後表示すべき車速が変化した時点で直ちに車速の表示更新を行い、継続時間が基準時間を超えない場合には、表示制御手段5は、基準時間が経過した時点で、車速の表示更新を行なう。
【0036】
したがって、車速の表示更新があったときから基準時間を経過するまでの間に予め定められた一定値を超える車速の変化があった場合は、直ちに車速表示が切り替わることがないため、短時間での車速の変化や瞬間的に車速が変動した場合に車速表示の切り替わりが連続して発生することによるデジタルのちらつきを防止することができる。
【0037】
また、車両が加速することにより車速が緩やかに変化している状況では、基準時間のなかで実際の車速が変化し、車速の表示を一定周期毎に更新すると、ドライバがアクセル操作により加速していると感じているにもかかわらず、車速の表示かなかなか切り替わらないという表示の遅れ感を感じることがあるが、本発明では、車速変化の少ない(車速の変化が一定値以内)状態が、車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間を超えて継続している場合は、その後に表示すべき車速の変化があった時点で、直ちに車速の表示が更新されるため上記したような車速表示の遅れ感を改善することができる。
【0038】
また、従来技術のように、デジタルのちらつき防止に光学的変調装置などの追加の装置を設ける必要がないため、安価な構成でデジタルのちらつき防止、ならびに、車速表示の遅れ感を改善することができる。
【0039】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0040】
例えば、上記した実施形態では、車速表示を更新するか否かを判断するための基準時間を300msに設定したが、車速センサ2の車速検出間隔や表示制御手段5の制御時間等を考慮して、適宜、最適な数値で設定すればよい。
【符号の説明】
【0041】
1… デジタル式車速表示装置
2… 車速センサ
3… 計測手段
4… 判定手段
5… 表示制御手段
6… 表示手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車速データに基づいて車速を更新表示するデジタル式車速表示装置において、
車速の変化が予め定められた一定値以内である状態の継続時間を計測し、車速の表示更新があった時点から前記継続時間の計測を開始する計測手段と、
前記計測手段により計測された前記継続時間が、車速表示を更新するか否かを判断するために予め定められた基準時間を超えるか否かを判定する判定手段と、
前記車速データおよび前記判定手段により判定された判定結果に基づいて車速表示を制御する表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記判定手段の判定の結果、前記継続時間が前記基準時間を超える場合には、表示すべき車速に変化があった時点で車速表示を更新し、
前記基準時間を超えない場合には、前記基準時間の経過時に車速表示を更新する
ことを特徴とするデジタル式車速表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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