説明

デジタル放送受信機

【課題】位置情報を取得する手段を持たなくても、チャンネルスキャンの時間を短縮できるデジタル放送受信機を提供する。
【解決手段】予め設定された物理チャンネルの中から受信可能な放送局の物理チャンネルを検出するチャンネルスキャンを行うチューナ3と、放送局とその送信チャンネルとの組ごとの同時に受信可能な放送局の物理チャンネルが設定された同時受信可能チャンネル情報を参照して、受信可能な放送局の物理チャンネルにスキャン対象の物理チャンネルを絞り込んで、チューナ3によるチャンネルスキャンを制御する制御部71とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体用のデジタル放送受信機に係り、特に現在位置で受信可能な放送局をサーチして登録するチャンネルスキャン処理に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送のTS(トランスポートストリーム)信号は、ISO/IEC13818−1により規定されている。これは、一般にMPEG2トランスポートストリームと呼ばれている。TS信号には、映像および音声に加えて、チャンネル構成情報などの付加データも含まれる。
【0003】
従来の地上デジタルテレビ受信機は、受信機の初期セットアップ時、あるいは移動体が地域を移動した際にチャンネルスキャンを行う。このとき、地上デジタル放送に割り当てられている周波数(UHF13〜UHF62)を順次走査し、受信可能なデジタルテレビ放送波であれば、それをチャンネル情報としてユーザプリセットに登録する。
【0004】
また、特許文献1には、現在位置を含む地域に対応するチャンネルテーブルに基づいてチャンネルスキャンを行うことで、チャンネルスキャン対象を絞り込む放送信号受信装置が開示されている。これにより、効率良くチャンネルスキャンを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−86367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地上デジタル放送では、デジタル復調処理、または信号分離された付加データ内の放送局に固有な情報(例えば、放送局のネットワークID、TS_IDまたは放送局名など)を確認する処理を行う必要があるため、アナログ放送よりチャンネルスキャンが長時間化するという欠点がある。
このため、カーナビゲーション装置に接続あるいは内蔵されるデジタルTVチューナには、チャンネルスキャンを行わず、カーナビゲーション装置から得られる位置情報を利用して、現在受信可能な放送局にユーザプリセットを自動的に更新する機能(エリア選局機能)が提供されている。
【0007】
しかしながら、このようなデジタルTVチューナであっても、カーナビゲーション装置と別筐体のデジタルTVチューナであると、エリア選局機能は、同一メーカーの一部製品同士でないと機能しない場合が多い。このため、デジタルTVチューナを単体で使用する場合には、依然としてチャンネルスキャンに時間がかかるという問題点がある。
また、特許文献1に代表される従来の技術では、現在位置情報を用いてスキャン対象を絞り込むため、GPS(Global Positioning System)や携帯電話などから現在位置情報を取得することができない場合には適用することができない。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、位置情報を取得する手段を持たなくても、チャンネルスキャンの時間を短縮できるデジタル放送受信機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るデジタル放送受信機は、予め設定された物理チャンネルの中から受信可能な放送局の物理チャンネルを検出するチャンネルスキャンを行うチューナと、放送局とその送信チャンネルとの組ごとの同時に受信可能な放送局の物理チャンネルが設定されたリスト情報を参照して、受信可能な放送局の物理チャンネルにスキャン対象の物理チャンネルを絞り込んでチューナによるチャンネルスキャンを制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、チャンネルスキャンの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係るデジタル放送受信機の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係るデジタル放送受信機によるチャンネルスキャン動作を示すフローチャートである。
【図3】放送エリアと現在位置の関係の一例を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る同時受信可能チャンネル情報の一例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るデジタル放送受信機によるチャンネルスキャン動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態2に係る同時受信可能チャンネル情報の一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係るデジタル放送受信機によるチャンネルスキャン動作を示すフローチャートである。
【図8】放送エリアと現在位置の関係の一例を示す図である。
【図9】実施の形態3に係る同時受信可能チャンネル情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るデジタル放送受信機の構成を示すブロック図であり、移動体(例えば車両)に搭載した移動体向けのデジタル放送受信機を示している。図1において、実施の形態1に係るデジタル放送受信機1は、アンテナ2、チューナ3、信号分離処理部4、AVデコーダ5、OSD(On Screen Display)重畳処理部6、CPU7およびリモコン8を備える。アンテナ2で放送局から地上デジタル放送波を受信し、チューナ3がアンテナ2の受信信号からチューナ3で地上デジタル放送のTS信号を出力する。なお、TS信号には、映像・音声データに加え、チャンネル構成情報などの付加データも含まれる。信号分離処理部4は、TS−DeMUXと呼ばれる処理部であり、TS信号から映像・音声データと付加データとを分離する。
【0013】
信号分離処理部4に分離された映像・音声データは、AVデコーダ5に出力され、付加データはCPU7に出力される。AVデコーダ5は、信号分離処理部4から入力した映像・音声データをデコードしてAV出力する。OSD重畳処理部6は、CPU7(制御部71)から出力指示された文字情報や色情報の映像データを、AV出力された映像データに組み込む処理を行う。このOSD重畳処理部6により画面表示、メニュー画面表示などが実現される。
【0014】
CPU7は、後述するメモリ72に記憶された制御プログラムを実行することにより、デジタル放送受信機1の動作を制御する構成部である。なお、制御プログラムを実行して実現される機能構成として、制御部71、メモリ72、チャンネル情報蓄積部73および同時受信可能チャンネル情報参照部74を備える。
【0015】
制御部71は、OSD重畳処理部6を制御して不図示の表示部の画面上に操作メニュー画面等を提示して、ユーザ操作によるリモコン8からの信号に従い、ユーザに選択された操作に対応する動作を行う。例えば、チャンネルスキャンの実行が選択された場合には、物理チャンネルリストを基に、同時受信可能チャンネル情報を参照してスキャン対象を絞り込んでチャンネルスキャンをするようにチューナ3を制御する。
【0016】
メモリ72は、チャンネルスキャンの対象となる放送局(送信所)の物理チャンネルをリストアップした物理チャンネルリストを格納する記憶部である。チャンネル情報蓄積部73は、チャンネルスキャンにより判別された受信可能なデジタル放送のチャンネル情報を登録するユーザプリセットを記憶する記憶部である。なお、チャンネル情報には、放送局(送信所)のある地域、チャンネル番号、放送の周波数等が含まれる。
【0017】
同時受信可能チャンネル情報参照部74は、制御部71から同時受信可能チャンネル情報を参照可能に保持する構成部である。
同時受信可能チャンネル情報とは、放送局(送信所)と送信チャンネルとの組ごとに、同時に受信可能な放送局のリスト情報である。同時受信可能チャンネル情報は、放送局の放送エリア情報から予め作成される。
なお、放送エリア情報には、送信所からの放送波が届く放送エリアの情報、放送波の受信チャンネルおよびその送信所の位置、送信所から送信される放送波の出力の情報、放送局の系列局の情報などが含まれる。
【0018】
次に動作について説明する。
図2は、実施の形態1に係るデジタル放送受信機によるチャンネルスキャン動作を示すフローチャートである。また、図3は、放送エリアと現在位置の一例を示す図であり、図4は、同時受信可能チャンネル情報の一例を示す図である。
以降では、デジタル放送受信機1を搭載した車両が、図3に示す放送エリアと現在位置の関係にあり、図4に示す同時受信可能チャンネル情報が、同時受信可能チャンネル情報参照部74に保持されているものとして説明する。
【0019】
まず、制御部71は、地上デジタル放送に割り当てられている全てのチャンネル(UHF13〜UHF62)をスキャン対象の物理チャンネルに設定する(ステップST1)。これにより、メモリ72の物理チャンネルリストに、UHF13〜UHF62までの物理チャンネルが登録される。
次に、制御部71は、物理チャンネルリストの最初の物理チャンネル(UHF13)をチューナ3に設定する(ステップST2)。UHF13が、チャンネルスキャンでサーチを行う初期値となる。
制御部71は、ステップST2の処理を実施すると、メモリ71に格納される物理チャンネルリストを更新する(ステップST3)。すなわち、物理チャンネルリストからチューナ3に設定した物理チャンネル(UHF13)を除外する。
【0020】
チューナ3は、アンテナ2を介して、制御部71に設定された物理チャンネル(UHF13)のチャンネルスキャンを行う。制御部71は、チューナ3のスキャン結果に基づき現在の物理チャンネル(UHF13)で放送の受信可否を判定する(ステップST4)。放送の受信ができなかった場合(ステップST5;NO)には、ステップST7の処理に移行する。ここでは、デジタル放送受信機1を搭載する車両が、放送エリアとの間で図3に示す位置関係にあるので、放送が受信され(ステップST5;YES)、物理チャンネル(UHF13)の放送局Aが検出される。
【0021】
ステップST6において、制御部71は、同時受信可能チャンネル情報参照部74が保持する同時受信可能チャンネル情報を参照して、メモリ72の物理チャンネルリストを更新する。すなわち、制御部71は、図4の同時受信可能チャンネル情報を参照して、受信できた放送局(放送局A)と同時に受信できない放送局の物理チャンネルを、物理チャンネルリストから除外する。図4の例では、物理チャンネル(UHF13)の放送局Aと同時に放送を受信できる可能性がある局の物理チャンネルは、UHF20、UHF25、UHF33、UHF40の4つである。従って、これ以外の物理チャンネルは、制御部71によってメモリ72の物理チャンネルリストから除外され、以降のチャンネルスキャンは行われない。
【0022】
続いて、制御部71は、メモリ72の物理チャンネルリストを参照して、チャンネルスキャンが未実施の物理チャンネルがあるか否かを判定する(ステップST7)。このとき、未実施の物理チャンネルがなければ(ステップST7;NO)、チャンネルスキャン動作を終了する。また、未実施の物理チャンネルがある場合(ステップST7;YES)は、制御部71が、物理チャンネルリストにおける次の物理チャンネルをチューナ3に設定し(ステップST8)、ステップST4からの処理を繰り返す。
【0023】
ここでは、物理チャンネルUHF20のチャンネルスキャンが実施されて、放送局Bが検出される。制御部71は、図4に示す同時受信可能チャンネル情報を参照し、放送局Aと放送局Bの双方と同時に受信できる可能性がある放送局の物理チャンネルがUHF25のみであることから、これ以外の物理チャンネルを物理チャンネルリストから除外する。
同様に、物理チャンネルUHF25のスキャンが実施されて、放送局Cが検出される。このとき、図4の同時受信可能チャンネル情報を参照すると、物理チャンネルUHF13の放送局A、物理チャンネルUHF20の放送局B、および物理チャンネルUHF25の放送局Cの3つと同時に受信できる可能性のある放送局の物理チャンネルは存在しないため、チャンネルスキャンが終了する。
【0024】
以上のように、この実施の形態1によれば、予め設定された物理チャンネルの中から受信可能な放送局の物理チャンネルを検出するチャンネルスキャンを行うチューナ3と、放送局とその送信チャンネルとの組ごとの同時に受信可能な放送局の物理チャンネルが設定された同時受信可能チャンネル情報を参照して、受信可能な放送局の物理チャンネルにスキャン対象の物理チャンネルを絞り込んで、チューナ3によるチャンネルスキャンを制御する制御部71とを備える。
このように構成することで、地上デジタル放送に割り当てられた全ての物理チャンネルについてチャンネルスキャンを行う場合に比べて、スキャン対象となる物理チャンネルを大幅に削減することが可能であり、チャンネルスキャン時間を格段に短縮することが可能である。また、現在位置情報が不要であるので、GPSや携帯電話等から位置情報を取得することができない構成においても適用できる。
【0025】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、最初に受信可能な放送局が検出されるまで物理チャンネルリストの物理チャンネルを順次スキャンしていく必要がある。このため、チャンネルスキャンを行う順番が若い物理チャンネルで受信可能な放送局が検出できない場合、放送局を最初に検出するまでの時間がかかる場合がある。
そこで、この実施の形態2では、放送エリアの広さに応じた優先順位を、同時受信可能チャンネル情報に設定し、上記優先順位が高い物理チャンネルからチャンネルスキャンを実施する。このようにすることで、受信されやすい(放送局が検出されやすい)物理チャンネルからスキャンを行うことができ、チャンネルスキャンの時間をさらに短縮することが可能である。
【0026】
実施の形態2に係るデジタル放送受信機の基本的な構成は、上記実施の形態1で図1を用いて説明したものと同様である。実施の形態2では、同時受信可能チャンネル情報に、放送エリアの広さに応じた優先順位が、受信可能性情報として付与される。従って、デジタル放送受信機の構成については、図1を参照するものとする。
【0027】
次に動作について説明する。
図5は、この発明の実施の形態2に係るデジタル放送受信機によるチャンネルスキャン動作を示すフローチャートである。また、図6は、実施の形態2に係る同時受信可能チャンネル情報の一例を示す図である。
以降では、デジタル放送受信機1を搭載した車両が、図3に示す放送エリアと現在位置の関係にあり、図6に示す同時受信可能チャンネル情報が、同時受信可能チャンネル情報参照部74に保持されているものとして説明する。
【0028】
まず、制御部71は、地上デジタル放送に割り当てられている全てのチャンネル(UHF13〜UHF62)をスキャン対象の物理チャンネルに設定する(ステップST1a)。これにより、メモリ72の物理チャンネルリストに、UHF13〜UHF62までの物理チャンネルが登録される。
次に、制御部71は、同時受信可能チャンネル情報参照部74が保持する同時受信可能チャンネル情報を参照し、当該同時受信可能チャンネル情報における受信可能性情報から最も受信可能性の高い物理チャンネルをチューナ3に設定する(ステップST2a)。
図3の例では、放送局Aの放送エリアが最も広いので、図6に示すように放送局Aの物理チャンネルUHF13が最も優先順位が高い。従って、制御部71は、物理チャンネルリストの物理チャンネル(UHF13)をチューナ3に設定する(ステップST2a)。
制御部71は、ステップST2aの処理を実施すると、メモリ71に格納される物理チャンネルリストの更新処理を行う(ステップST3a)。すなわち、物理チャンネルリストからチューナ3に設定した物理チャンネルUHF13を除外する。
【0029】
チューナ3は、アンテナ2を介して、制御部71に設定された物理チャンネル(UHF13)のスキャンを行う。制御部71は、チューナ3のスキャン結果に基づき現在の物理チャンネル(UHF13)で放送の受信可否を判定する(ステップST4a)。放送の受信ができなかった場合(ステップST5a;NO)には、ステップST7aの処理に移行する。ここでは、デジタル放送受信機1を搭載する車両が、放送エリアとの間で図3に示す位置関係にあるので、放送が受信され(ステップST5a;YES)、物理チャンネル(UHF13)の放送局Aが検出される。
【0030】
ステップST6aにおいて、制御部71は、同時受信可能チャンネル情報参照部74が保持する同時受信可能チャンネル情報を参照して、メモリ72の物理チャンネルリストを更新する。すなわち、制御部71は、図6の同時受信可能チャンネル情報を参照して、受信できた放送局(放送局A)と同時に受信できない放送局の物理チャンネルを、物理チャンネルリストから除外する。図6の例では、物理チャンネルUHF13の放送局Aと同時に放送を受信できる可能性がある局の物理チャンネルは、UHF20、UHF25、UHF33、UHF40の4つである。従って、これ以外の物理チャンネルは、制御部71によってメモリ72の物理チャンネルリストから除外され、以降のチャンネルスキャンは行われない。
【0031】
続いて、制御部71は、メモリ72の物理チャンネルリストを参照して、チャンネルスキャンが未実施の物理チャンネルがあるか否かを判定する(ステップST7a)。このとき、未実施の物理チャンネルがなければ(ステップST7a;NO)、チャンネルスキャン動作を終了する。
一方、未実施の物理チャンネルがある場合(ステップST7a;YES)、制御部71は、同時受信可能チャンネル情報における受信可能性情報を参照して、物理チャンネルリストの次に優先順位が高い物理チャンネルをチューナ3に設定し(ステップST8a)、ステップST4aからの処理を繰り返す。
【0032】
ここでは、2番目に受信可能性が高い物理チャンネルの中から、最もチャンネルが若い物理チャンネルUHF25のチャンネルスキャンが実施されて、放送局Cが検出される。
制御部71は、図6に示す同時受信可能チャンネル情報を参照し、放送局Aと放送局Cの双方と同時に受信できる可能性がある放送局の物理チャンネルがUHF20のみであることから、これ以外の物理チャンネルを物理チャンネルリストから除外する。
同様に、物理チャンネルUHF20のスキャンが実施されて、放送局Bが検出される。このとき、図6の同時受信可能チャンネル情報を参照すると、物理チャンネルUHF13の放送局A、物理チャンネルUHF20の放送局B、および物理チャンネルUHF25の放送局Cの3つと同時に受信できる可能性のある放送局の物理チャンネルは存在しないため、チャンネルスキャンが終了する。
【0033】
以上のように、この実施の形態2によれば、同時受信可能チャンネル情報には、放送局の放送エリアの広さに応じた優先順位を示す受信可能性情報が設定されており、制御部71が、受信可能性情報の優先順位に基づく順番で、チューナ3にチャンネルスキャンを行わせる。このようにすることで、チャンネルスキャンのサーチを行う順番を受信可能性が高い順に設定されることから、最初に受信可能な放送局を検出するまでの時間を短縮できる。
【0034】
実施の形態3.
実施の形態3では、放送エリアが重複する複数の放送局を示す情報(エリア重複情報)を同時受信可能チャンネル情報に付与し、互いの放送エリアが重複する放送局について、そのいずれかの放送局が検出されると、残りの放送局はスキャンすることなく、受信可能な放送局に設定する。これにより、チャンネルスキャン時間をさらに短縮することができる。
【0035】
実施の形態3に係るデジタル放送受信機の基本的な構成は、上記実施の形態1で図1を用いて説明したものと同様である。実施の形態3では、同時受信可能チャンネル情報に、放送エリアが重複する放送局を示すエリア重複情報が付与される。従って、デジタル放送受信機の構成については、図1を参照するものとする。
【0036】
次に動作について説明する。
図7は、この発明の実施の形態3に係るデジタル放送受信機によるチャンネルスキャン動作を示すフローチャートである。また、図8は放送エリアと現在位置の一例を示す図であり、図9は、実施の形態3に係る同時受信可能チャンネル情報の一例を示す図である。
以降では、デジタル放送受信機1を搭載した車両が、図8に示す放送エリアと現在位置の関係にあり、図9に示す同時受信可能チャンネル情報が、同時受信可能チャンネル情報参照部74に保持されているものとして説明する。
【0037】
まず、制御部71は、地上デジタル放送に割り当てられている全てのチャンネル(UHF13〜UHF62)をスキャン対象の物理チャンネルに設定する(ステップST1b)。これにより、メモリ72の物理チャンネルリストにUHF13〜UHF62までの物理チャンネルが登録される。
次に、制御部71は、物理チャンネルリストの最初の物理チャンネル(UHF13)をチューナ3に設定する(ステップST2b)。UHF13が、チャンネルスキャンでサーチを行う初期値となる。
制御部71は、ステップST2bの処理を実施すると、メモリ71の物理チャンネルリストを更新する(ステップST3b)。すなわち、物理チャンネルリストからチューナ3に設定した物理チャンネル(UHF13)を除外する。
【0038】
チューナ3は、アンテナ2を介して制御部71に設定された物理チャンネル(UHF13)のチャンネルスキャンを行う。制御部71は、チューナ3のスキャン結果に基づき、現在の物理チャンネル(UHF13)で放送の受信可否を判定する(ステップST4b)。放送の受信ができなかった場合(ステップST5b;NO)、ステップST8bの処理に移行する。ここでは、デジタル放送受信機1を搭載する車両が、放送エリアとの間で図8に示す位置関係にあるので、放送が受信され(ステップST5b;YES)、物理チャンネル(UHF13)の放送局Aが検出される。
【0039】
ステップST6bにおいて、制御部71は、同時受信可能チャンネル情報参照部74が保持する同時受信可能チャンネル情報を参照して、メモリ72の物理チャンネルリストを更新する。すなわち、制御部71は、図9に示す同時受信可能チャンネル情報を参照し、受信できた放送局(放送局A)と同時に受信できない放送局の物理チャンネルを、物理チャンネルリストから除外する。図9の例では、物理チャンネルUHF13の放送局Aと同時に放送を受信できる可能性がある局の物理チャンネルは、UHF20、UHF25、UUHF30、HF33、UHF40の4つである。これ以外の物理チャンネルは、制御部71によりメモリ72の物理チャンネルリストから除外され、以降のチャンネルスキャンは行われない。
【0040】
続いて、制御部71は、同時受信可能チャンネル情報におけるエリア重複情報を参照して、放送エリアが重複している放送局があれば、その局をユーザプリセットへの登録対象とし、その物理チャンネルをメモリ72の物理チャンネルリストから除外する(ステップST7b)。図9の例では、放送局Aと物理チャンネルUHF30の放送局Fとが互いに放送エリア#0となっている。このため、放送局Fについては、スキャンすることなく、受信可能な放送局として検出されたものとする。
【0041】
この後、制御部71は、メモリ72の物理チャンネルリストを参照して、チャンネルスキャンが未実施の物理チャンネルがあるか否かを判定する(ステップST8b)。このとき、未実施の物理チャンネルがなければ(ステップST8b;NO)、チャンネルスキャン動作を終了する。また、未実施の物理チャンネルがある場合(ステップST8b;YES)は、制御部71が、物理チャンネルリストにおける次の物理チャンネルをチューナ3に設定し(ステップST9b)、ステップST4bからの処理を繰り返す。
【0042】
ここでは、物理チャンネルUHF13の次の物理チャンネルUHF20のスキャンが実施されて、放送局Bが検出される。制御部71は、図9に示す同時受信可能チャンネル情報を参照し、放送局A、放送局Fおよび放送局Bのいずれとも同時に受信できる可能性がある放送局の物理チャンネルがUHF25のみであることから、これ以外の物理チャンネルを物理チャンネルリストから除外する。
同様に、物理チャンネルUHF25のスキャンが実施されて、放送局Cが検出される。このとき、図9の同時受信可能チャンネル情報を参照すると、物理チャンネルUHF13の放送局A、物理チャンネルUHF30の放送局F、物理チャンネルUHF20の放送局B、および物理チャンネルUHF25の放送局Cの3つと同時に受信できる可能性のある放送局の物理チャンネルは存在しないため、チャンネルスキャンが終了する。
【0043】
以上のように、この実施の形態3によれば、同時受信可能チャンネル情報には、放送エリアが重複する放送局を示すエリア重複情報が設定されており、制御部71が、エリア重複情報で放送エリアが重複することが示された放送局のうちのいずれかの放送局が受信可能な局として検出された場合、チューナ3がスキャンを行うことなく、残りの放送局についても受信可能な局として検出されたものとみなす。
このようにすることで、放送エリアが重複する放送局については、そのいずれかの放送局が受信可能な局として検出されたときに、残りの放送局についても受信可能な局としてユーザプリセットへ登録される。これにより、実際のサーチ動作を省略することができ、チャンネルスキャン時間を短縮することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態3は、上記実施の形態1と組み合わせた場合について示したが、上記実施の形態2に適用してもかまわない。すなわち、最初にチャンネルスキャンする物理チャンネルは、受信可能性情報で優先順位が最も高いものを選択し、この後のスキャンでは、受信可能性情報およびエリア重複情報をともに参照して、放送エリアが重複する放送局があれば、そのうち、スキャンした放送局以外の放送局もユーザプリセットへの登録対象とする。
【0045】
また、本発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 デジタル放送受信機、2 アンテナ、3 チューナ、4 信号分離処理部、5 AVデコーダ、6 OSD重畳処理部、7 CPU、8 リモコン、71 制御部、72 メモリ、73 チャンネル情報蓄積部、74 同時受信可能チャンネル情報参照部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送局から送信されたデジタル放送を受信するデジタル放送受信機において、
予め設定された物理チャンネルの中から受信可能な放送局の物理チャンネルを検出するチャンネルスキャンを行うチューナと、
放送局とその送信チャンネルとの組ごとの同時に受信可能な放送局の物理チャンネルが設定されたリスト情報を参照して、受信可能な放送局の物理チャンネルにスキャン対象の物理チャンネルを絞り込んで、前記チューナによるチャンネルスキャンを制御する制御部とを備えたことを特徴とするデジタル放送受信機。
【請求項2】
前記リスト情報には、放送局の放送エリアの広さに応じた優先順位を示す受信可能性情報が設定されており、
前記制御部は、前記受信可能性情報の優先順位に基づく順番で、前記チューナにチャンネルスキャンを行わせることを特徴とする請求項1記載のデジタル放送受信機。
【請求項3】
前記リスト情報には、放送エリアが重複する放送局を示すエリア重複情報が設定されており、
前記制御部は、前記エリア重複情報で放送エリアが重複する放送局のうちのいずれかの放送局が受信可能な局として検出された場合、前記チューナがスキャンを行うことなく、残りの放送局についても受信可能な局として検出されたものとみなすことを特徴とする請求項1または請求項2記載のデジタル放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−38507(P2013−38507A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171088(P2011−171088)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】