説明

デスフェリチオシンポリエーテル類似体およびその使用



上に記載されている構造式、例えば式(I)によって示されるデスフェリチオシン類似体は、金属過負荷(例えば、輸液療法による鉄過負荷)、酸化的ストレス、ならびに新生物性および前新生物性状態のような状態を処置するのに有用である。他の実施形態において、本発明は、被験体における三価金属(例えば、Fe3+)のキレート化に反応性の病理学的状態を処置する方法であり、該方法は、治療または予防有効量の化合物またはその医薬組成物を被験体に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年8月25日に出願された米国仮特許出願第61/275,096号に対して米国特許法§119(e)の下、優先権を主張する。この出願は本明細書において参照として援用される。
【0002】
政府の支援
本発明は、the National Diabetes and Digestive and Kidney Diseases Advisory Council (NIDDK) of the National Institutes of Health (NIH)からの、助成金番号5 R37 DK049108の下の米国政府の援助によりなされた。米国政府は本発明における一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
霊長類における鉄代謝は、極めて効率的な再循環過程を特徴とする。この遷移金属を除去する特定のメカニズムは存在しない。鉄クリアランスメカニズムの欠如により、霊長類への「過剰鉄」の導入は、慢性過負荷を生じることが多く、最終的に生物学的損傷(例えば、過酸化的組織損傷)を生じうる。多くの過剰鉄導入の仕方があり、それは、高鉄食、急性鉄摂取または金属吸収不良を包含する。これらの状況のそれぞれにおいて、鉄レベルを減少させるために、一般に静脈切開によって被験体を処置することができる。しかし、慢性輸液療法によって生じる鉄過負荷症候群、例えば再生不良性貧血および地中海性貧血に関しては、静脈切開は選択肢に入らない。これらの続発性鉄過負荷症候群において、過剰鉄の由来は、輸注された赤血球である。鉄過負荷(iron overload)を改善するために赤血球を除去することは逆効果であるので、鉄を除去するための代替的方法は、キレート化療法である。地中海性貧血を有する患者における鉄過負荷を管理する新しい治療法、特に、経口的に行なうことができる治療法、の開発に多大な努力が払われているが、デスフェリオキサミンB(Streptomyces pilosusによって産生される六配位ヒドロキサメート鉄キレート剤)が、現在も一般的に好まれる薬剤である。しかし、鉄が低い効率で除去されるので、デスフェリオキサミンBはキレート化療法に理想的でない。さらに、デスフェリオキサミンBの経口活性は最低限であり、それにより非経口投与が必要とされ、これによって、特に長期キレート化療法を必要とする患者において、低い患者コンプライアンスを生じうる。近年、かなり多くの合成鉄キレート剤[例えば、ピリドキサルイソニコチノイルヒドラゾン(PIH)、ヒドロキシピリドン、およびN,N’−ビス−(2−ヒドロキシベンジルエチレンジアミン)−N,N’−ジ酢酸(HBED)]が、潜在的経口活性治療法として研究されているが、これらの合成キレート剤は、所望の特性(例えば、有効なキレート化、好適な経口活性、許容されうる毒性)が示されていない。腸内バクチンおよびロドトルル酸を包含するシデロフォアも、キレート化療法に関して研究されている。しかし、腸内バクチンおよびロドトルル酸の両方ともが、容認できない毒性を示し、測定可能な経口活性を示さない。一般に、多くのシデロフォアおよび合成鉄キレート剤が開発されているが、それらの特性が慢性鉄過負荷の治療に使用するのに適していないので、それらの大部分が断念されている。
【0004】
従って、キレート化療法、特に慢性キレート化療法に使用することができる新規鉄キレート剤が今も必要とされている。好ましくは、被験体における鉄過負荷を処置するのに使用されるキレート剤は、有機体から、鉄をキレート化し除去するのに有効であり、好適な経口生物学的利用能を有し、かつ/または被験体に対して最小限の毒性を有することが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
金属キレート剤として有用な化合物を提供する。これらの化合物は、被験体における金属の蓄積(例えば、地中海性貧血または他の輸液依存性貧血の処置に関連した慢性輸液療法、急性鉄摂取等)に関連した疾患を処置するのに有用でありうる。これまでに、特定のデスフェリチオシンポリエーテル類似体が、国際PCT出願公開WO2006/107626(2006年10月12日公開)に記載されており、該特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明化合物のより短いポリエーテル鎖が、油状物ではなく固体形態を生じることが本発明者らによって見出された。特定の実施形態において、精製された本発明化合物は、結晶性固体を包含する固体である。
【0006】
特定の実施形態において、該化合物は、式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、
は、−[(CH−O]−R’であり;
、RおよびRは、それぞれ独立に、−H、アルキル基、または−ORであり;
は、−H、またはアルキル基であり;
は、−H、アルキル基、O−保護基、またはアシル基であり;
各Rは、独立に、−H、アルキル基、O−保護基、またはアシル基であり;
R’は、−H、アルキル基、O−保護基、またはアシル基であり;
各nは、2であり;
xは、1または2である]
の化合物、またはその塩、溶媒和物あるいは水和物であって、
式(I)の化合物が、式(II):
【0009】
【化2】

【0010】
の化合物でないことを条件とする。
【0011】
本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、化合物は、結晶性固体を包含する固体であることができる。
【0012】
特定の実施形態において、ポリエチレングリコール鎖の長さは、8個の炭素および酸素原子の長さである。他の実施形態において、該鎖の長さは、5個の炭素および酸素原子の長さである。特定の実施形態において、化合物は、カルボン酸、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、またはイソ−プロピルエステルである。特定の実施形態において、化合物は、カルボン酸である。特定の実施形態において、化合物は、メチルエステルである。特定の実施形態において、化合物は、エチルエステルである。
【0013】
特定の実施形態において、Rは水素である。特定の実施形態において、R、RおよびRは全て水素である。特定の実施形態において、Rは水素である。特定の実施形態において、Rはメチルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。特定の実施形態において、Rはプロピルである。特定の実施形態において、Rはイソ−プロピルである。
【0014】
特定の実施形態において、化合物は、
【0015】
【化3】

【0016】
、またはその塩、溶媒和物あるいは水和物である。
【0017】
特定の実施形態において、化合物は、
【0018】
【化4】

【0019】
、またはその塩、溶媒和物あるいは水和物である。
【0020】
特定の実施形態において、化合物は、
【0021】
【化5】

【0022】
、またはその塩、溶媒和物あるいは水和物である。
【0023】
他の実施形態において、化合物は、
【0024】
【化6】

【0025】
、またはその塩、溶媒和物あるいは水和物の、固体形態である。
【0026】
特定の実施形態において、化合物は、
【0027】
【化7】

【0028】
、またはその塩、溶媒和物あるいは水和物の、結晶形態である。
【0029】
本発明の金属キレート剤は、望ましい鉄除去効率を有するという利点がある。本発明の金属キレート剤は、既知のキレート剤と異なる分布容積を有し、器官の間で異なる分布を生じる。この異なる分布は、器官、例えば心臓、脳および膵臓への透過を可能にすることができ、さらに、肝臓によるキレート剤の大部分のクリアランスを生じ、それによって腎毒性のリスクを減少させることができる。
【0030】
本発明は、治療有効量の本発明化合物および薬学的に許容されうる賦形剤を含む医薬組成物も提供する。該医薬組成物は、鉄過負荷の処置に有用である。
【0031】
他の実施形態において、本発明は、被験体における三価金属(例えば、Fe3+)のキレート化に反応性の病理学的状態を処置する方法であり、該方法は、治療または予防有効量の化合物またはその医薬組成物を被験体に投与することを含む。特定の実施形態において、化合物または医薬組成物が経口投与される。他の実施形態において、化合物または医薬組成物が非経口(例えば、静脈内)投与される。
【0032】
本発明化合物は、被験体における酸化的ストレスを減少させる方法、および新生物性疾患または前新生物性状態に罹患している被験体を処置する方法にも使用することができ、該方法において、治療有効量の本発明化合物またはその医薬組成物が被験体に投与される。
【0033】
本発明は、金属過負荷に関連した疾患または障害、酸化的ストレス、ならびに新生物性および前新生物性状態の処置における、本明細書に開示されている化合物の使用にも関する。特定の実施形態において、前記疾患または障害は、鉄過負荷に関連している。
【0034】
本発明はさらに、金属のキレート化または封鎖に反応性の病理学的状態の処置、酸化的ストレスの減少、または新生物性疾患もしくは前新生物性状態の処置用の、薬剤の製造における本発明化合物の使用に関する。
【0035】
定義
本発明を詳しく説明する前に、本発明をよりたやすく理解しうるように、便宜上、いくつかの用語をここに先ず定義し集める。
【0036】
本発明のいくつかの化合物、および特定の官能基の定義を、以下に詳しく記載する。本発明の解釈上、化学成分は、Periodic Table of the Elements、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75版、裏表紙に従って特定され、特定の官能基は、一般に、それに記載されているように定義される。さらに、有機化学の一般原理、ならびに特定の官能成分および反応性は、Organic Chemistry,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito,1999に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0037】
当業者は、本明細書に記載されている化合物および合成法が種々の保護基を使用することを理解する。本明細書に使用されている「保護基」という用語によって、特定の官能成分、例えば、C、O、SまたはNが、一時的にブロックされ、それによって多官能性化合物中の他の反応部位において選択的に反応を行なうことができることを表わす。特定の実施形態において、保護基が、高収率で選択的に反応して、計画反応に安定な保護基質を与え;保護基は、他の官能基を攻撃しない容易入手可能な、好ましくは非毒性の試薬によって、高収率で選択的に除去すべきであり;保護基は、容易に分離可能な誘導体を形成し(より好ましくは、新しい不斉中心を生じずに);かつ、保護基は、更なる反応部位をなくすために、最小限の更なる官能性を有する。本明細書に詳しく記載されているように、酸素、硫黄、窒素および炭素保護基を使用しうる。例示的保護基が本明細書に詳しく記載されているが、本発明はこれらの保護基に限定されるものではなく、むしろ、前記の規準を使用して、種々の付加的等価保護基を容易に特定することができ、本発明の方法に使用できることが理解される。さらに、種々の保護基が、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Greene,T.W.およびWuts,P.G.編集、 John Wiley & Sons,New York,1999に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0038】
本明細書に記載されている化合物は、任意の数の置換基または官能成分で置換されてよいことが理解される。一般に、「置換された」という用語(「任意に」という用語が前置されているかまたは前置されていない)、および本発明の式に含まれている置換基は、所定構造中の水素ラジカルの、特定置換基のラジカルでの置き換えを表わす。任意所定構造中の2つ以上の位置が、特定の群から選択される2つ以上の置換基で置換される場合、置換基は、各位置において、同じであっても異なってもよい。本明細書に使用されている「置換された」という用語は、有機化合物のあらゆる許容置換基を包含するものとする。広い観点において、許容置換基は、非環式および環式、分岐鎖および非分岐鎖、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の、有機化合物の置換基を包含する。本発明の解釈上、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基、および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載されている有機化合物の任意許容置換基を有しうる。さらに、本発明は、いかなる方法においても、有機化合物の許容置換基によって限定されるものではない。本発明によって推測される置換基および変化物の組合せは、例えば、癌を包含するがそれに限定されない増殖性障害の、処置に有用な安定化合物を形成するものであるのが好ましい。本明細書に使用されている「安定な」という用語は、製造を可能にするのに充分な安定性を有し、検出するのに充分な期間にわたって、好ましくは、本明細書に詳述されている目的に有用であるのに充分な期間にわたって、化合物の完全性を維持する化合物を表わすのが好ましい。
【0039】
アルキル基は、分子中の飽和炭化水素であって、その炭素原子の1つからの単一共有結合によって、該分子中の1つの他の基に結合している飽和炭化水素である。アルキル基は、環式または非環式、分岐鎖または非分岐鎖(直鎖)であることができ、直鎖または分岐鎖である場合に置換または非置換であることができる。アルキル基は、一般に、1〜約12個の炭素原子、例えば、1〜約6個の炭素原子、または1〜約4個の炭素原子を有する。低級アルキル基は、1〜4個の炭素原子を有し、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルを包含する。環式である場合、アルキル基は、一般に、約3〜約10個の炭素、例えば、約3〜約8個の炭素原子を含有し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基またはシクロオクチル基である。
【0040】
アルコキシ基は、酸素原子を介して親分子成分に結合している先に定義したアルキル基である。特定の実施形態において、アルキル基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含有する。特定の他の実施形態において、アルキル基は、1〜10個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、本発明において使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜8個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、アルキル基は、1〜6個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、アルキル基は、1〜4個の脂肪族炭素原子を含有する。アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、ネオペントキシおよびn−ヘキソキシを包含するが、それらに限定されない。チオアルキルの例は、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ等を包含するが、それらに限定されない。
【0041】
アシル基は、式−C(O)Rによって表わされ、ここでRはアルキル基である。アシル基は、酵素、酸または塩基によって、化合物から加水分解するかまたは開裂することができる。アシル基の1つ以上の水素原子を、以下に記載のように置換することができる。一般的には、アシル基は、本発明化合物が鉄(III)のような金属イオンに結合する前に、除去される。
【0042】
アルキルおよびアシル基に好適な置換基は、−OH、−O(R”)、−COOH、=O、−NH、−NH(R”)、−NO、−COO(R”)、−CONH、−CONH(R”)、−CON(R”)、グアニジンを包含する。各R”は、独立に、アルキル基またはアリール基である。これらの基をアリール基でさらに置換することができる(例えば、アルキル基を芳香族基で置換して、アリールアルキル基を形成することができる)。置換アルキルまたはアシル基は、2つ以上の置換基を有することができる。
【0043】
アリール基は、炭素環式芳香族基、例えば、フェニル、p−トリル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラシルおよび2−アントラシルを包含する。アリール基は、さらに、複素環式芳香族基、例えば、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、2−チエニル、3−チエニル、2−フラニル、3−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、2−ピラニル、3−ピラニル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリルおよび5−オキサゾリルを包含する。
【0044】
アリール基は、さらに、縮合多環式芳香族環系を包含し、該環系において、炭素環式、脂環式または芳香族環またはヘテロアリール環が、1つ以上の他のヘテロアリールまたはアリール環に縮合している。その例は、2−ベンゾチエニル、3−ベンゾチエニル、2−ベンゾフラニル、3−ベンゾフラニル、2−インドリル、3−インドリル、2−キノリニル、3−キノリニル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾキサゾリル、2−ベンズイミダゾリル、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、1−イソインドリル、および3−イソインドリルを包含する。
【0045】
「O−保護基」という用語は、合成手順の間に、望ましくない反応に対してヒドロキシル基を保護する置換基を意味する。O−保護基の例は、下記を包含するが、それらに限定されない:メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、ベンジル、トリフェニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、t−ブチル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、メチレンアセタール、アセトニドベンジリデンアセタール、環状オルトエステル、メトキシメチレン、環状カーボネートおよび環状ボロネート。
【0046】
「脱離基」という用語は、不均一結合開裂において電子対と共に離れることができる分子フラグメントを表わす。脱離基の例は、下記を包含するが、それらに限定されない:ハロゲン化物、例えば、Br、Cl、I;スルホネート、例えば、トシレート、ノシレート、ミセレート;ノナフレート;トリフレート;フルオロスルホネート;ニトレート;およびホスフェート。
【0047】
塩基性基を有する化合物から酸付加塩を形成するために一般に使用される酸は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硫酸、燐酸等、および有機酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、蓚酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸等である。そのような塩の例は、下記を包含する:硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、燐酸塩、燐酸一水素塩、燐酸二水素塩、メタ燐酸塩、ピロ燐酸塩、塩化物、臭化物、沃化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、蟻酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、蓚酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ガンマ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩等。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1−1】図1は、げっ歯類および霊長類に経口投与されたデスフェリチオシン類似体の鉄除去効率を、それぞれのLog Papp値および生理化学特性と共に示す。げっ歯類において[n=3(6)、4(3−5、7)、5(1)、8(2)]、薬剤を、150μmol/kg(1)または300μmol/kg(2−7)の用量で経口投与した。薬剤を、カプセル中におけるか(6、7)、40% Cremophor RH−40/水に溶解させるか(1)、蒸留水に溶解させて(4)投与するか、またはそれらの一ナトリウム塩(1当量のNaOHを、蒸留水中の遊離酸の懸濁液に添加することによって調製)として与えた(2、3、5)。各化合物の効率を、処置動物の鉄排泄から対照動物の24時間鉄排泄を引くことによって、計算した。次に、その数値を理論排出量で割り、結果がパーセントで表わされている。リガンド1についてのICEデータは、参考文献39からのデータである。2−4についてのICEデータは、参考文献34からのデータである。ICEは、48時間試料採集時間に基づく。胆汁および尿に排泄された鉄の相対パーセンテージが、角括弧に示されている。霊長類において[n=4(1、3、4、5、6 カプセル中、7)または7(2、6 一ナトリウム塩として)]、キレート剤を、75μmol/kg(5−7)または150μmol/kg(1−4)の用量で経口的に与えた。薬剤を、カプセル中におけるか(6、7)、40% Cremophor RH−40/水に溶解させるか(1、3)、蒸留水に溶解させて(4)投与するか、またはそれらの一ナトリウム塩(1当量のNaOHを、蒸留水中の遊離酸の懸濁液に添加することによって調製)として与えた(2、5、6)。薬剤投与前の4日間の鉄排出量を平均し、これらの数値を、薬剤投与後2日の鉄除去から引き、次に理論排出量で割ることによって、効率を計算し、結果がパーセントで表わされている。リガンド1についてのICEデータは、参考文献40、41からのデータである。2−4についてのICEデータは、それぞれ、参考文献42、43および34からのデータである。糞および尿に排泄された鉄の相対パーセンテージが、角括弧に示されている。性能比率は、平均ICE霊長類/ICEげっ歯類として定義される。データは、オクタノール層中のフラクションの対数(log Papp)として表わされ;測定は、TRIS緩衝液、pH7.4において、「フラスコ振とう」直接法を使用して行なわれた52。2および3についての数値は、参考文献43からの数値であり;4についての数値は、参考文献34からの数値である。1−3についてのmpデータは、それぞれ、参考文献39、42および43からのデータである。
【図1−2】図1は、げっ歯類および霊長類に経口投与されたデスフェリチオシン類似体の鉄除去効率を、それぞれのLog Papp値および生理化学特性と共に示す。げっ歯類において[n=3(6)、4(3−5、7)、5(1)、8(2)]、薬剤を、150μmol/kg(1)または300μmol/kg(2−7)の用量で経口投与した。薬剤を、カプセル中におけるか(6、7)、40% Cremophor RH−40/水に溶解させるか(1)、蒸留水に溶解させて(4)投与するか、またはそれらの一ナトリウム塩(1当量のNaOHを、蒸留水中の遊離酸の懸濁液に添加することによって調製)として与えた(2、3、5)。各化合物の効率を、処置動物の鉄排泄から対照動物の24時間鉄排泄を引くことによって、計算した。次に、その数値を理論排出量で割り、結果がパーセントで表わされている。リガンド1についてのICEデータは、参考文献39からのデータである。2−4についてのICEデータは、参考文献34からのデータである。ICEは、48時間試料採集時間に基づく。胆汁および尿に排泄された鉄の相対パーセンテージが、角括弧に示されている。霊長類において[n=4(1、3、4、5、6 カプセル中、7)または7(2、6 一ナトリウム塩として)]、キレート剤を、75μmol/kg(5−7)または150μmol/kg(1−4)の用量で経口的に与えた。薬剤を、カプセル中におけるか(6、7)、40% Cremophor RH−40/水に溶解させるか(1、3)、蒸留水に溶解させて(4)投与するか、またはそれらの一ナトリウム塩(1当量のNaOHを、蒸留水中の遊離酸の懸濁液に添加することによって調製)として与えた(2、5、6)。薬剤投与前の4日間の鉄排出量を平均し、これらの数値を、薬剤投与後2日の鉄除去から引き、次に理論排出量で割ることによって、効率を計算し、結果がパーセントで表わされている。リガンド1についてのICEデータは、参考文献40、41からのデータである。2−4についてのICEデータは、それぞれ、参考文献42、43および34からのデータである。糞および尿に排泄された鉄の相対パーセンテージが、角括弧に示されている。性能比率は、平均ICE霊長類/ICEげっ歯類として定義される。データは、オクタノール層中のフラクションの対数(log Papp)として表わされ;測定は、TRIS緩衝液、pH7.4において、「フラスコ振とう」直接法を使用して行なわれた52。2および3についての数値は、参考文献43からの数値であり;4についての数値は、参考文献34からの数値である。1−3についてのmpデータは、それぞれ、参考文献39、42および43からのデータである。
【図2】図2は、非鉄負荷胆管カニューレ挿入ラットにおける、デスフェリチオシン関連キレート剤によって誘発される鉄クリアランスを示す(300μmol/kg、経口)。
【図3】図3は、ラットの器官における鉄組織濃度を示す。図3aは、(S)−4’−(HO)−DADFT−ノルPE−EEで処置したラットにおける鉄組織濃度を示し、図3bは、対応する年齢一致対照における鉄組織濃度を示す。
【図4】図4は、(S)−4’−(HO)−DADFT−ノルPE−酸またはエチルエステルで処置したラットおよび対照ラットの器官における、10日間の鉄組織濃度を表わす(384μmol/kg/日)。
【図5】図5は、(S)−4’−(HO)−DADFT−ノルPE−エチルエステルで処置したラットおよび対照ラットの器官における、10日間の鉄組織濃度を表わす(192または384μmol/kg/日、経口)。
【図6】図6は、(S)−4’−(HO)−DADFT−PE(用量:119.85mg/kg;適用:経口;ヒビクル:dHO)を使用したラットにおける鉄排泄を示す(単一用量値)。図6aは、胆汁によるクリアランス鉄排泄を示し;図6bは、胆汁による累積鉄排泄を示し;図6cは、48時間後の、尿および胆汁における鉄排泄を示す。
【図7】図7は、(S)−4’−(HO)−DADFT−ノルPE酸(用量:106.5mg/kg;適用:経口;ビヒクル:カプセル)を使用したラットにおける鉄排泄を示す(単一用量値)。図7aは、胆汁によるクリアランス鉄排泄を示し;図7bは、胆汁による累積鉄排泄を示し;図7cは、48時間後の、尿および胆汁における鉄排泄を示す。
【図8】図8は、(S)−4’−(HO)−DADFT−ノルPE−EE(用量:115.04mg/kg;適用:経口(PD);ビヒクル:カプセル)を使用したラットにおける鉄排泄を示す(単一用量値)。図8aは、胆汁によるクリアランス鉄排泄を示し;図8bは、胆汁による累積鉄排泄を示し;図8cは、48時間後の、尿および胆汁における鉄排泄を示す。
【図9】図9は、(S)−4’−(HO)−DADFT−ホモPE(用量:133mg/kg;ビヒクル:dHO)を使用したラットにおける鉄排泄を示す(単一用量値)。図9aは、胆汁によるクリアランス鉄排泄を示し;図9bは、胆汁による累積鉄排泄を示し;図9cは、48時間後の、尿および胆汁における鉄排泄を示す。
【図10】図10は、(S)−4’−(HO)−DADFT−PE(薬剤/Fe:2;用量:59.9mg/kg;ビヒクル:dHO;経路:経口)を使用した鉄負荷Cebusサルモデルにおける鉄排泄を示す(単一用量値)。図10aは、胆汁によるクリアランス鉄排泄を示し;図10bは、胆汁による累積鉄排泄を示し;図10cは、薬剤後の最初の48時間の、尿および糞における誘発鉄排泄を示す。
【図11】図11は、4’−ノルPE酸(薬剤/Fe:2;用量:26.6mg/kg;ビヒクル:カプセル;経路:経口)を使用したFe負荷Cebusサルモデルにおける鉄排泄を示す(単一用量値)。図11aは、胆汁によるクリアランス鉄排泄を示し;図11bは、胆汁による累積鉄排泄を示し;図11cは、薬剤後の最初の48時間の、尿および糞における誘発鉄排泄を示す。
【図12】図12は、4−ノルPE酸(薬剤/Fe:2;用量:26.6mg/kg;ビヒクル:dHO/NaOH;経路:経口)を使用したFe負荷Cebusサルモデルにおける鉄排泄を示す(単一用量値)。図12aは、胆汁によるクリアランス鉄排泄を示し;図12bは、胆汁による累積鉄排泄を示し;図12cは、薬剤後の最初の48時間の、尿および糞における誘発鉄排泄を示す。
【図13】図13は、4’−ノルPE酸(薬剤/Fe:2;用量:26.6mg/kg;ビヒクル:dHO/NaOH;経路:経口)を使用したFe負荷Cebusサルモデルにおける鉄排泄を示す(単一用量値)。図13aは、胆汁によるクリアランス鉄排泄を示し;図13bは、胆汁による累積鉄排泄を示し;図13cは、薬剤後の最初の48時間の、尿および糞における誘発鉄排泄を示す。
【図14】図14は、4’−ノルPE−EE(薬剤/Fe:2;用量:28.8mg/kg;ビヒクル:カプセル;経路:経口)を使用したFe負荷Cebusサルモデルにおける鉄排泄を示す(単一用量値)。図14aは、胆汁によるクリアランス鉄排泄を示し;図14bは、胆汁による累積鉄排泄を示し;図14cは、薬剤後の最初の48時間の、尿および糞における誘発鉄排泄を示す。
【図15】図15は、(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(6)のX線データを示す。構造は、50%確率楕円体で描かれている。
【図16】図16は、エチル(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボキシレート(7)のX線データを示す。構造は、50%確率楕円体で描かれている。
【発明を実施するための形態】
【0049】
発明の詳細な説明
本出願は、構造式(I)
【0050】
【化8】

【0051】
[式中、
は、−[(CH−O]−R’であり;
、RおよびRは、それぞれ独立に、−H、アルキル基、または−ORであり;
は、−H、またはアルキル基であり;
は、−H、アルキル基、O−保護基、またはアシル基であり;
各Rは、独立に、−H、アルキル基、O−保護基、またはアシル基であり;
R’は、−H、アルキル基、O−保護基、またはアシル基であり;
各nは、2であり;
xは、1または2である]
によって特徴付けられる化合物、またはその塩、溶媒和物あるいは水和物に関する。
【0052】
特定の実施形態において、化合物は、式(II):
【0053】
【化9】

【0054】
の化合物ではない。
【0055】
特定の実施形態において、化合物は固体である。他の実施形態において、化合物は結晶性固体である。特定の実施形態において、化合物は非晶質固体である。
【0056】
特定の実施形態において、本発明化合物は、80%より高い鏡像異性体過剰率を有する。他の実施形態において、鏡像異性体過剰率は90%より高い。他の実施形態において、鏡像異性体過剰率は95%より高い。さらに他の実施形態において、鏡像異性体過剰率は98%より高い。特定の実施形態において、鏡像異性体過剰率は99%より高い。特定の実施形態において、鏡像異性体過剰率は99.5%より高い。
【0057】
本明細書に記載されるように、かつ当業者に理解されるように、本明細書に開示されている化合物の立体異性体および立体異性体混合物は、本発明の範囲に含まれるものと考えられる。
【0058】
一般的に、本発明化合物は、式(I)で表わされ、式中、変化物は、本明細書に記載されている類、種類、亜類および種において開示されている通りである。
【0059】
特定の実施形態において、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、C1〜6アルキル基、O−保護基、または−ORであり;ここで、Rは、水素、C1〜6アルキル基、O−保護基、またはアシル基である。他の実施形態において、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、C1〜4アルキル基、または−ORであり;ここで、7は、水素、C1〜4アルキル基、またはアシル基である。他の実施形態において、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素またはC1〜4アルキル基である。
【0060】
特定の実施形態において、R、RおよびRは、それぞれ−Hである。他の実施形態において、R、RおよびRは、それぞれ独立に、−H、またはC1〜6アルキル基である。さらに他の実施形態において、R、RおよびRは、それぞれ独立に、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基である。特定の実施形態において、R、RおよびRは、同じC1〜6アルキル基である。他の実施形態において、少なくとも1つのR、RまたはRが、メチルである。さらに他の実施形態において、少なくとも1つのR、RまたはRが、エチルである。他の実施形態において、少なくとも1つのR、RおよびRが、プロピルである。特定の実施形態において、少なくとも1つのR、RおよびRが、ブチルである。特定の実施形態において、R、RおよびRが、それぞれ水素である。
【0061】
特定の実施形態において、少なくとも1つのR、RまたはRは、−ORであり;各Rは、−H、C1〜4アルキル基、またはアシル基である。他の実施形態において、Rは−Hである。他の実施形態において、RはC1〜6アルキル基である。他の実施形態において、RはO−保護基である。さらに他の実施形態において、Rはアシル基である。特定の実施形態において、Rはアセチル基である。他の実施形態において、R、RおよびRは、同じ−ORである。
【0062】
特定の実施形態において、Rは、−H、O−保護基、またはアシル基である。他の実施形態において、Rは−Hである。特定の実施形態において、Rはアルキル基である。特定の実施形態において、RはC1〜6アルキル基である。特定の実施形態において、RはC1〜4アルキル基である。特定の実施形態において、Rはメチルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。特定の実施形態において、Rはプロピルである。特定の実施形態において、Rはブチルである。他の実施形態において、RはO−保護基である。さらに他の実施形態において、Rはアシル基である。他の実施形態において、Rはアセチル基である。
【0063】
特定の実施形態において、R、R、RおよびRは同じである。他の実施形態において、R、R、RおよびRは、それぞれ−Hである。他の実施形態において、R、R、RおよびRは異なる。さらに他の実施形態において、RおよびRは同じである。特定の実施形態において、RおよびRは同じである。他の実施形態において、RおよびRは同じである。
【0064】
特定の実施形態において、xは1または2である。他の実施形態において、xは1である。他の実施形態において、xは2である。
【0065】
特定の実施形態において、R’は水素である。特定の実施形態において、R’はアルキル基である。他の実施形態において、R’はC1〜6アルキル基である。他の実施形態において、R’はC1〜4アルキル基である。さらに他の実施形態において、R’はメチルである。他の実施形態において、R’はエチルである。特定の実施形態において、R’はプロピルである。他の実施形態において、R’はブチルである。
【0066】
特定の実施形態において、本発明化合物は、下記式:
【0067】
【化10】

【0068】
【化11】

【0069】
の化合物であるが、下記式:
【0070】
【化12】

【0071】
の化合物ではない。
【0072】
他の実施形態において、本発明化合物は、下記式:
【0073】
【化13】

【0074】
の化合物であるが、下記式:
【0075】
【化14】

【0076】
の化合物ではない。
【0077】
特定の実施形態において、本発明化合物は、下記式:
【0078】
【化15】

【0079】
の化合物であるが、下記式:
【0080】
【化16】

【0081】
の化合物ではない。
【0082】
特定の実施形態において、本発明化合物は、下記式の化合物である:
【0083】
【化17】

【0084】
【化18】

【0085】
他の特定の実施形態において、本発明化合物は、下記式の化合物である:
【0086】
【化19】

【0087】
他の実施形態において、本発明化合物は、下記式:
【0088】
【化20】

【0089】
を有するが、下記式:
【0090】
【化21】

【0091】
を有さない。
【0092】
他の実施形態において、本発明化合物は、下記式を有する:
【0093】
【化22】

【0094】
特定の実施形態において、本発明化合物は、下記式を有する:
【0095】
【化23】

【0096】
特定の実施形態において、本発明化合物は、下記式を有する:
【0097】
【化24】

【0098】
【化25】

【0099】
他の実施形態において、本発明化合物は、下記式を有する:
【0100】
【化26】

【0101】
他の実施形態において、本発明化合物は、下記式を有する:
【0102】
【化27】

【0103】
特定の実施形態において、本発明は、下記式の化合物の固体形態を提供する:
【0104】
【化28】

【0105】
他の実施形態において、本発明化合物は、下記式の化合物の結晶形態である:
【0106】
【化29】

【0107】
特定の実施形態において、化合物は塩形態である。他の実施形態において、塩はナトリウム塩である。他の実施形態において、塩はカリウム塩である。特定の実施形態において、塩はアルミニウム塩である。特定の実施形態において、塩はカルシウム塩である。特定の実施形態において、塩はリチウム塩である。特定の実施形態において、塩はマグネシウム塩である。特定の実施形態において、塩はバリウム塩である。他の実施形態において、塩は亜鉛塩である。
【0108】
他の実施形態において、本発明化合物は、下記式の化合物の塩形態である:
【0109】
【化30】

【0110】
特定の実施形態において、本発明化合物は、下記式の化合物を含む組成物を提供する:
【0111】
【化31】

【0112】
本発明は、本発明化合物の鏡像異性体および鏡像異性体混合物(例えば、ラセミ混合物)、ならびにそれらの塩(例えば、薬学的に許容されうる塩)、共結晶、溶媒和物、水和物およびプロドラッグも包含する。
【0113】
さらに、本発明化合物は、平面偏光を回転させる能力を有する光学活性形態で存在することができる。光学活性化合物の記述において、接頭辞DおよびL、またはRおよびSは、キラル中心のまわりの置換基の絶対配置を示すために使用される。接頭辞dおよびlまたは(+)および(−)は、化合物による平面偏光の回転の符号を示すために使用され、(−)またはlは、化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞が付された化合物は、右旋性である。所定の化学構造に関して、これらの化合物、いわゆる立体異性体は、1つ以上のキラル炭素が相互に重ね合わすことができない鏡像であることを除いて、同一である。もう1つの立体異性体の正確な鏡像である特定の立体異性体は、鏡像異性体と称することもでき、そのような異性体の混合物は、鏡像異性体混合物と称されることが多い。鏡像異性体の50:50混合物は、ラセミ混合物と称される。
【0114】
当分野で使用されているように、キラル炭素のまわりの絶対配置を特定することが所望される場合、キラル炭素への結合を、くさび形として描くことができ(紙面の上方の原子への結合)、もう1つの結合を、一連のまたはくさび形の短い平行線として描くことができる(紙面の下方の原子への結合)。Cahn−Ingold−Prelogシステムを使用して、(R)または(S)配置をキラル炭素に割り当てることができる。チアゾリンまたはチアゾリジン環の4位におけるキラル炭素は、好ましくは(S)配置を有する。
【0115】
本発明化合物が1つのキラル中心を含有する場合、不斉合成によって製造されていない化合物は、2つの鏡像異性体形で存在し、本発明は、いずれかのまたは両方の鏡像異性体、および鏡像異性体混合物(例えば、ラセミ混合物と称される特定の50:50混合物)を包含する。鏡像異性体は、当業者に既知の方法、例えば下記の方法によって、分離することができる:例えば結晶化によって分離しうる、ジアステレオマー塩の形成(David KozmaによるCRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation(CRC Press,2001)参照);例えば結晶化、ガス−液体または液体−クロマトグラフィーによって分離しうる、ジアステレオマー誘導体または錯体の形成;1つの鏡像異性体と鏡像異性体特異性試薬との選択的反応、例えば酵素的エステル化;または、キラル環境における、例えば、キラル支持体(例えば、結合キラルリガンドを有するシリカ)上、またはキラル溶媒の存在下の、ガス−液体または液体クロマトグラフィー。所望の鏡像異性体が、前記分離方法の1つによって、別の化学成分に変換される場合、所望の鏡像異性体形を遊離するために、更なる工程を必要とすることが理解される。
【0116】
または、光学活性試薬、基質、触媒または溶媒を使用する不斉合成によるか、または1つの鏡像異性体を不斉変換によって他の鏡像異性体に変換することによって、特定の鏡像異性体を合成しうる。
【0117】
本発明化合物のキラル炭素における特定の絶対配置の指定は、該化合物の指定鏡像異性体形が鏡像異性体過剰(ee)であり、換言すれば、他の鏡像異性体を実質的に含有しないことを意味するものと理解される。例えば、化合物の「R」形は、化合物の「S」形を実質的に含有せず、従って、「S」形の鏡像異性体過剰である。逆に言えば、化合物の「S」形は、化合物の「R」形を実質的に含有せず、従って、「R」形の鏡像異性体過剰である。本明細書において使用される鏡像異性体過剰は、鏡像異性体混合物における50%より高い特定の鏡像異性体の存在である。例えば、混合物が80%の第一鏡像異性体および20%の第二鏡像異性体を含有する場合、第一鏡像異性体の異性体過剰率は60%である。本発明において、鏡像異性体過剰率は約20%以上、特に約40%以上、さらには約60%以上、例えば約70%以上、例えば約80%以上、例えば約90%以上であることができる。特定の実施形態において、記載されている化合物の鏡像異性体過剰率は、少なくとも約90%である。さらに特定の実施形態において、化合物の鏡像異性体過剰率は、少なくとも約95%、例えば少なくとも約96%、97%、97.5%、98%、例えば、少なくとも約99%の鏡像異性体過剰率である。
【0118】
本明細書に記載されている化合物の、塩および薬学的に許容されうる塩も本発明に含まれる。充分に酸性の官能基(例えば、カルボン酸基)、充分に塩基性の官能基、またはそれらの両方を有する本明細書に開示されている化合物は、多くの有機または無機塩基、および無機および有機酸と反応して、塩を形成することができる。
【0119】
酸性基は、1つ以上の前記金属、ならびにアルカリおよびアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム)との塩を形成することができる。さらに、酸性基は、アミンとの塩を形成することもできる。本発明化合物は、遷移、ランタニド、アクチニドまたは主族金属塩として、供給することができる。遷移、ランタニド、アクチニドまたは主族金属塩として、本発明化合物は、金属との錯体を形成する傾向がある。例えば、本発明化合物が三座であり、該化合物との塩を形成する金属が6つの配位部位を有する場合、2:1の化合物:金属の錯体が形成される。化合物対金属の比率は、金属の密度、および金属上の配位部位の数に応じて変化する(好ましくは、各配位部位は本発明化合物によって満たされるが、配位部位は、他のアニオン、例えば、水酸化物、ハロゲン化物またはカルボキシレートで満たすこともできる)。
【0120】
または、化合物は、実質的に金属不含(例えば、鉄不含)塩であることもできる。金属不含塩は、一般的に、アルカリおよびアルカリ土類金属塩を含まないものとする。金属不含塩は、例えば金属過負荷状態に苦しむ被験体、または毒性金属暴露もしくは有害作用を生じる限局的濃度の金属に苦しむ個体に投与される。
【0121】
本発明化合物およびその塩形態は、それらの水和物、例えば、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物等の形態で製造することができる。本発明化合物の溶媒和物、例えばアルコラートも製造しうる。
【0122】
医薬組成物
本発明の他の態様において、医薬組成物が提供され、該組成物は、本明細書に記載されているいずれか1つの化合物(またはそのプロドラッグ、薬学的に許容されうる塩、または他の薬学的に許容されうる形態)、および任意に、薬学的に許容されうる賦形剤を含む。特定の実施形態において、これらの組成物は、任意に、1つ以上の付加的治療薬をさらに含む。または、本発明化合物は、それを必要とする患者に、1つ以上の他の治療薬の投与と組み合わせて投与しうる。例えば、癌の処置において、本発明化合物と共同投与するための、または医薬組成物に含有させるための、付加的治療薬は、承認化学療法薬であってよい。
【0123】
いくつかの本発明化合物は、処置のために遊離形態で、または場合によっては、その薬学的に許容されうる誘導体として、存在できることも理解される。本発明によれば、薬学的に許容されうる誘導体は、下記を包含するが、それらに限定されない:本発明化合物の、薬学的に許容されうる塩、エステル、そのようなエステルの塩、またはプロドラッグまたは他のアダクトまたは誘導体(それは、必要とする患者に投与した際に、それ以外で本明細書に記載されている化合物、またはその代謝物もしくは残留物を、直接的または間接的に与えることができる)。
【0124】
前記のように、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容されうる賦形剤を任意に含んで成り、本発明に使用される該賦形剤は、所望される特定の投与形態に適したあらゆる溶媒、希釈剤または他の液体ヒビクル、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、粘稠化または乳化剤、防腐剤、酸化防止剤、固体結合剤、潤滑剤等を包含する。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,PA,1980)は、医薬組成物の配合に使用される種々の賦形剤、および既知のその製造法を開示している。任意の従来の賦形剤媒質が、本発明化合物と不適合である(例えば、何らかの望ましくない生物学的作用を生じるか、そうでなければ医薬組成物の他の任意成分と有害的に相互作用することによる)場合を除いて、その使用は、本発明の範囲に含まれるものとする。薬学的に許容されうる賦形剤として機能しうる物質のいくつかの例は、下記の物質(それらに限定されない):糖類、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチおよびバレイショデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、カカオ脂および坐剤ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱性物質除去水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;および燐酸緩衝液;ならびに他の非毒性適合性潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム;を包含し、さらに、着色剤、放出剤、被覆剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤も、配合者の判断によって組成物中に存在することができる。
【0125】
経口投与用の液体投与形態は、薬学的に許容されうる乳剤、マイクロエマルジョン剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を包含するが、それらに限定されない。液体投与形態は、活性化合物に加えて、当分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば下記の物質を含有しうる:水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ(com)油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、佐剤、例えば、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味剤、香味剤および芳香剤も含有しうる。
【0126】
注射可能製剤、例えば、滅菌注射可能水性または油性懸濁剤は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、既知の方法に従って配合しうる。滅菌注射可能製剤は、非毒性の非経口的に許容されうる希釈剤または溶媒中の、滅菌注射可能液剤、懸濁剤または乳剤、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用しうる許容されうるビヒクルおよび溶媒として挙げられるのは、水、リンゲル液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム液である。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒として慣例的に使用されている。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを包含する任意の無刺激不揮発性油を使用することができる。さらに、脂肪酸、例えばオレイン酸が、注射可能製剤の製造に使用される。
【0127】
注射可能配合物は、例えば、細菌保持フィルターでの濾過によるか、または、使用前に滅菌水または他の滅菌注射可能媒質中に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物形態の滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0128】
薬剤の作用を長引かせるために、皮下または筋肉内注射からの薬剤の吸収を遅くすることが望ましい場合が多い。これは、低水溶性を有する液体懸濁液または結晶質もしくは非晶質物質の使用によって行なうことができる。それにより、薬剤の吸収速度はその溶解速度に依存し、該溶解速度は結晶の大きさおよび結晶形に依存しうる。または、非経口投与される薬剤形態の遅延吸収は、薬剤を油ビヒクルに溶解または懸濁させることによって得られる。注射可能デポー剤形態は、生分解性ポリマー、例えばポリラクチド−ポリグリコリド中に、薬剤のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって製造される。薬剤対ポリマーの比率、および使用される特定ポリマーの性質に依存して、薬剤の放出速度を調節することができる。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)を包含する。デポー注射可能配合物は、体組織に適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに、薬剤を閉じ込めることによっても製造される。
【0129】
直腸または膣内投与用組成物は、好ましくは坐剤であり、坐剤は、本発明化合物を、好適な非刺激賦形剤または担体、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックス(これらは、周囲温度で固体であるが、体温で液体であり、従って、直腸または膣腔で溶解し、活性化合物を放出する)と混合することによって製造することができる。
【0130】
経口投与用の固体投与形態は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤を包含する。そのような固体投与形態において、活性化合物が、下記の物質と混合される:少なくとも1つの不活性の薬学的に許容されうる賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたは燐酸二カルシウム、および/または、a)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび珪酸;b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcelhdose)、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシア;c)保湿剤、例えばグリセロール;d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム;e)溶解遅延剤、例えばパラフィン;f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物;g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート(monosteamte);h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ;および、i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投与形態は緩衝剤も含有しうる。
【0131】
同様のタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を使用して、軟および硬ゼラチンカプセル中の充填物として使用することもできる。錠剤、糖衣丸、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体投与形態は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶コーティングおよび医薬配合分野で周知の他のコーティングを使用して製造することができる。それらは、任意に、不透明剤を含有してよく、活性成分のみを、または活性成分を優先的に、腸管の特定部分で、任意に遅延的に、放出する組成物であることもできる。使用できる埋封組成物の例は、高分子物質およびワックスを包含する。同様のタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を使用して、軟および硬ゼラチンカプセル中の充填物としても使用しうる。
【0132】
活性化合物は、1つ以上の前記賦形剤を使用して、マイクロカプセル形態にすることもできる。錠剤、糖衣丸、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体投与形態は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶コーティング、放出制御コーティング、および医薬配合分野で周知の他のコーティングを使用して、製造することができる。そのような固体投与形態において、活性化合物を、少なくとも1つの不活性希釈剤、例えば、スクロース、ラクトースおよびデンプンと混合しうる。そのような投与形態は、通常の慣例におけるように、不活性希釈剤以外の付加的物質、例えば、タブレット成形潤滑剤および他のタブレット成形補助剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースも含有しうる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投与形態は、緩衝剤も含有しうる。それらは、任意に、不透明剤を含有してよく、活性成分のみを、または活性成分を優先的に、腸管の特定部分で、任意に遅延的に、放出する組成物であることもできる。使用できる埋封組成物の例は、高分子物質およびワックスを包含する。
【0133】
本発明は、本発明化合物の薬学的に許容されうる局所配合物を包含する。本明細書で使用される「薬学的に許容されうる局所配合物」という用語は、表皮への配合物の適用による本発明化合物の皮内投与用の、薬学的に許容されうる任意の配合物を意味する。本発明の特定の実施形態において、局所配合物は、賦形剤系を含有する。薬学的に有効な賦形剤は、下記を包含するが、それらに限定されない:溶剤(例えば、アルコール、ポリアルコール、水)、クリーム、ローション、軟膏、油、硬膏、リポソーム、粉末、エマルジョン、マイクロエマルジョンおよび緩衝液(例えば、低張または緩衝生理食塩水)、または局所投与医薬に関して当分野で既知の任意の他の賦形剤。当分野で既知のカーバーの(of art−known carvers)より完全なリストが、当分野で標準的な参考テキスト、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、1980および第17版、1985、発行:Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvaniaに示されており、それらに開示の内容は全体として本明細書に組み入れられる。特定の他の実施形態において、本発明の局所配合物は、賦形剤を含有しうる。当分野で既知の薬学的に許容されうる任意賦形剤を使用して、本発明の薬学的に許容されうる局所配合物を製造しうる。本発明の局所配合物に含有することができる賦形剤の例は、下記を包含するが、それらに限定されない:防腐剤、酸化防止剤、モイスチャライザー、皮膚軟化剤、緩衝剤、可溶化剤、他の浸透剤、皮膚保護剤、界面活性剤およびプロペラント、および/または本発明化合物と組み合わせて使用される付加的治療剤。好適な防腐剤は、アルコール、第四級アミン、有機酸、パラベンおよびフェノールを包含するが、それらに限定されない。好適な酸化防止剤は、アスコルビン酸およびそのエステル、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール(hydroxyarrisole)、トコフェロール、ならびにEDTAおよびクエン酸のようなキレート剤を包含するが、それらに限定されない。好適なモイスチャライザーは、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素およびプロピレングリコールを包含するが、それらに限定されない。本発明に使用するのに好適な緩衝剤は、クエン酸、塩酸および乳酸緩衝剤を包含するが、それらに限定されない。好適な可溶化剤は、第四級塩化アンモニウム、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、レシチンおよびポリソルベートを包含するが、それらに限定されない。本発明の局所配合物に使用できる好適な皮膚保護剤は、ビタミンE油、アラントイン(allatoin)、ジメチコーン、グリセリン、ワセリンおよび酸化亜鉛を包含するが、それらに限定されない。
【0134】
特定の実施形態において、本発明の薬学的に許容されうる局所配合物は、少なくとも1つの本発明化合物および浸透促進剤を含む。局所用配合の選択は、下記を包含するいくつかの要素に依存する:治療される状態、本発明化合物および存在する他の賦形剤の物理化学的特性、配合物中でのそれらの安定性、使用可能な製造装置、およびコスト制約。本明細書に使用されている「浸透促進剤」という用語は、好ましくは全身吸収がほとんどまたは全くなしに、薬理学的活性化合物を、角質層を通って表皮または真皮に輸送することができる物質を意味する。種々の化合物が、皮膚を通る薬剤の浸透速度を高めることにおけるそれらの有効性に関して評価が行なわれている。例えば、下記文献を参照:Percutaneous Penetration Enhancers、Maibach H.I.およびSmith H.E.(編者)、CRC Press,Inc.,Boca Raton,Fla.(1995)(これは、種々の皮膚浸透促進剤の使用および試験を調査している);および、Buyuktimkinら、Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems、Gosh T.K.、Pfister W.R.、Yum S.I.(編者)、Interpharm Press Inc.,Buffalo Grove,Ill.(1997)。特定の例示的実施形態において、本発明に使用される浸透促進剤は、下記を包含するが、それらに限定されない:トリグリセリド(例えば、ダイズ油)、アロエ組成物(例えば、アロエベラゲル)、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクトリフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N−デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、グリセロールモノオレエート、およびプロピレングリコールモノオレエート)、およびN−メチルピロリドン。
【0135】
特定の実施形態において、組成物は、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー剤、吸入剤またはパッチ剤の形態であってよい。特定の例示的実施形態において、本発明による組成物の配合物は、クリーム剤であり、該クリーム剤は、飽和または不飽和脂肪酸、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミト−オレイン酸、セチルまたはオレイルアルコールをさらに含有してよく、ステアリン酸が特に好ましい。本発明のクリーム剤は、非イオン界面活性剤、例えば、ポリオキシ−40−ステアレートも含有しうる。特定の実施形態において、活性化合物を、滅菌条件下に、薬学的に許容されうる賦形剤、および要求に応じて、必要とされる任意の防腐剤または緩衝剤と混合する。眼科用配合物、点耳薬および点眼薬も、本発明の範囲に含まれるものとする。さらに、本発明は、経皮パッチ剤の使用も意図し、該経皮パッチ剤は、体への化合物の制御送達を与えるという付加的利点を有する。そのような投与形態は、化合物を適切な媒質に溶解または分散させることによって製造される。前記のように、皮膚を通る化合物の流入を増加させるために、浸透促進剤も使用することができる。その速度は、速度制御膜を与えることによるか、または化合物をポリマーマトリックス(例えば、PLGA)もしくはゲルに分散させることによって、制御することができる。
【0136】
本発明の化合物および医薬組成物を、併用療法において処方し使用しうることも理解され、即ち、該化合物および医薬組成物を、1つ以上の他の所望される治療法または医学的手順と共に処方するか、または、それと同時に、それの前に、もしくはそれの後に、投与することができる。併用治療計画に使用される療法(治療法または手段)の特定の組合せは、所望される治療法および/または手段と、達成すべき所望治療効果との適合性を考慮に入れる。使用される療法が、同じ障害に関して所望される効果を達成しうる(例えば、本発明化合物を、他の免疫調節剤または抗癌剤と同時に投与しうる)か、またはそれらが異なる効果(例えば、何らかの副作用の制御)を達成しうることも理解される。
【0137】
例えば、癌療法用に本発明化合物と組み合わせて使用しうる他の療法または抗癌剤は、下記を包含する:手術、放射線療法(ほんの数例を挙げれば、γ放射線、中性子線療法、電子線療法、陽子療法、近接照射療法、および全身放射性同位元素)、内分泌療法、生物的反応修飾物質(少しの例を挙げれば、インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子(TNF))、温熱療法および寒冷療法、何らかの副作用を減少させる物質(例えば、制吐剤)、および下記を包含するがそれらに限定されない他の承認化学療法薬:アルキル化剤(少しの例を挙げれば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、代謝拮抗物質(メトトレキサート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル、ゲムシタビン)、紡錘体阻害剤(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン(displatin)、カルボプラチン(darboplatin))、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド(leuprelide)、フルタミド、およびメゲストロール)。最新癌療法の、より包括的な考察については、The Merck Manual、第17版、1999参照(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)。さらに、FDA承認腫瘍薬のリストについては、National Cancer Institute(CNI)ウェブサイト(www.nci.nih.gov)およびFood and Drug Administration(FDA)ウェブサイト(www.fda.gov/cder/cancer/draglis&ame)参照。
【0138】
特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1つ以上の付加的治療活性成分(例えば、化学療法的および/または一時緩和的)をさらに含む。本発明の解釈上、「一時緩和的」という用語は、疾患の症状および/または治療計画の副作用の軽減に焦点を当てるが、治癒的でない処置を表わす。例えば、一時緩和的処置は、鎮痛剤、制吐剤および抗悪心剤を包含する。さらに、化学療法、放射線療法および手術は全て一時緩和的に使用することができる(即ち、治癒することなしに症候を軽減させる;例えば、腫瘍を縮小させ、圧迫、出血、痛みおよび癌の他の症候を減少させる)。
【0139】
さらに、本発明は、本発明化合物の薬学的に許容されうる誘導体;および、これらの化合物、それらの医薬組成物、またはこれらのどちらかと1つ以上の付加的治療薬とを組み合わせて使用して、被験体を処置する方法;も提供する。
【0140】
いくつかの本発明化合物は、処置のために遊離形態で存在することができ、または場合によっては、その薬学的に許容されうる誘導体として存在できることも理解される。本発明によれば、薬学的に許容されうる誘導体は、下記を包含するが、それらに限定されない:本発明化合物の、薬学的に許容されうる塩、エステル、そのようなエステルの塩、またはプロドラッグまたは他のアダクトまたは誘導体(それは、必要とする患者に投与した際に、それ以外で本明細書に記載されている化合物、またはその代謝物もしくは残留物を、直接的または間接的に与えることができる)。
【0141】
本発明の他の態様は、本発明の方法を、都合よく有効に実施するためのキットに関する。一般に、医薬パックまたはキットは、本発明医薬組成物の1つ以上の成分を充填した1つ以上の容器を含む。医薬製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知書を、そのような容器に任意に付すことができ、該通知書は、該機関による、ヒト投与のための製造、使用または販売の承認を示すものである。
【0142】
医薬的使用および治療法
一般に、本発明化合物を使用する方法は、治療有効量の本発明化合物を、それを必要とする被験体に、投与することを含む。三価金属のキレート化または封鎖に反応性の病理学的状態に罹患している被験体を、治療または予防有効量の本発明化合物またはその医薬組成物で処置することができる。三価金属のキレート化に反応性の、1つの特定タイプの病理学的状態は、三価金属過負荷状態である(例えば、鉄過負荷状態または疾患、アルミニウム過負荷状態、クロム過負荷状態)。金属キレート化または封鎖に反応性の、他のタイプの病理学的状態は、遊離三価金属の量が多い場合(例えば、血清または細胞において)、例えば、三価金属の不充分な貯蔵能力、または金属放出に導く金属貯蔵系の異常が存在する場合である。
【0143】
鉄過負荷状態または疾患は、全体的鉄過負荷または限局的鉄過負荷によって特徴付けることができる。全体的鉄過負荷状態は一般に、多くの組織における鉄の過剰、または生体全体に存在する過剰鉄を包含する。全体的鉄過負荷状態は、被験体による鉄の過剰摂取、例えば食餌性鉄または輸血からの、鉄の過剰貯蔵および/または保持から生じうる。1つの全体的鉄過負荷状態は、原発性ヘモクロマトーシスであり、これは、一般的に、遺伝的障害である。第二の全体的鉄過負荷状態は、続発性ヘモクロマトーシスであり、これは、一般的に、多くの(慢性的)輸血を受けた結果である。輸血は、地中海性貧血または鎌状赤血球貧血に罹患している患者に必要とされることが多い。あるタイプの食餌性鉄過負荷は、バンツー鉄沈着症と称され、これは、高い鉄含有量の自家醸造ビールの摂取に関連している。
【0144】
限局的鉄過負荷状態において、過剰鉄は、1つまたは少しの細胞型または組織または特定の器官に限定される。または、過剰鉄に関連した症候が、個別の器官、例えば、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓または脳に限定される。限局的鉄過負荷は、神経系または神経変性障害、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンティングトン病、ニューロフェリチノパチー、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症を生じうると考えられる。金属キレート化または封鎖から益を得る病理学的状態は、多くの場合、被験体の組織における金属の沈着に関連している。沈着は、全体的または限局的に生じうる。
【0145】
鉄過負荷疾患を有するヒトにおいて、この金属の過剰に関連した毒性は、鉄と、活性酸素種、例えば内因性過酸化水素(H)との相互作用に由来する1−4。Fe(II)の存在において、Hは、ヒドロキシルラジカル(HO)、極めて反応性の化学種、およびHOに還元される(フェントン反応)。ヒドロキシルラジカルは、種々の細胞成分と極めて素早く反応し、遊離基およびラジカル媒介連鎖過程を開始させることができ、これによりDNAおよび膜を損傷し、さらに発癌物質も生じる2、5、6。遊離したFe(III)は、種々の生物学的還元剤(例えば、アスコルベート、グルタチオン)によって還元されてFe(II)に戻りうる(問題サイクル)。
【0146】
鉄媒介損傷は、再灌流損傷、パーキンソンおよびフリートライヒ運動失調におけるように、限局的であることもあり、または輸液鉄過負荷、例えば、地中海性貧血10、鎌状赤血球症10、11、および脊髄形成異常症12におけるように、全体的であって、多くの器官が関係していることもある。両シナリオにおける解決策は同じであって、過剰非制御鉄をキレート化し、排泄を促進することである。
【0147】
ヒトは極めて効率的な鉄制御システムを有し、該システムにおいて、ヒトは毎日約1mgの鉄を吸収し排泄するが、過剰鉄の排泄のための導管が存在しない。地中海性貧血のような輸液依存性貧血は、肝臓、心臓、膵臓等における鉄の蓄積を生じ、その結果、下記の疾患を生じる:(i)肝硬変に進行しうる肝疾患13−15、(ii)膵臓β細胞分泌の鉄誘発減少および肝臓インスリン抵抗性の増加の両方に関係した糖尿病16、17、および(iii)心疾患。心不全は、現在も、重症型地中海性貧血および輸液鉄過負荷の関連形態における死の主要原因である18−20
【0148】
鉄を封鎖し、体からのその排泄を可能にすることができるキレート剤での処置は、使用可能な唯一の治療法である。現在使用されている、または臨床的に評価されている、いくつかの鉄キレート剤は、下記を包含する:デスフェリオキサミンBメシレート(DFO)21、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン(デフェリプロン、L1)22−25、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−1,2,4−トリアゾル−1−イル]安息香酸(デフェラシロックス、ICL670A)26−29、およびデスフェリチオシン、(S)−4,5−ジヒドロ−2−(3−ヒドロキシ−2−ピリジニル)−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(DFT、1、図1)類似体、(S)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5−ジヒドロ−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸[デフェリトリン(2)30、図1]。これらのリガンドはそれぞれ、重大な欠点を有する。DFOは、長期間、例えば、1日に12時間、1週間に5日、皮下的に与えなければならず、重大な患者コンプライアンス問題を有する31−33。デフェリプロンは、経口的に活性であるが、患者をネガティブ鉄バランスに維持するために充分な鉄を除去することは決してない22−25。デフェラシロックスは、DFOに対して非劣性を示さず、多くの副作用に関連しており;それは極めて狭い治療域を有する26−29。最後に、2(図1)の臨床試験は、腎毒性によりGenzymeによって断念された30。しかし、デフェリトリン(2)は再設計され、2の芳香環上の4’−ヒドロキシルを、3,6,9−トリオキサデシルオキシポリエーテル基で置き換えることによって腎毒性問題が解決することが見出され34;鉄除去効率(ICE)も向上した。多くの血液学者によって設定された境界条件は、キレート剤が450μg/kg/日の金属を除去できることである35
【0149】
酸化的ストレス減少を必要とする被験体は、1つ以上の下記状態を有しうる:還元剤の減少したレベル;活性酸素種の増加したレベル;酸化防止酵素(例えば、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ、Mnスーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンレダクターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、チオレドキシン、チオレドキシンペルオキシダーゼ、DT−ジアホラーゼ)の変異または減少したレベル;金属結合タンパク質(例えば、トランスフェリン、フェリチン、セルロプラスミン、アルブミン、メタロチオネイン)の変異または減少したレベル;スーパーオキシドを生成することができる変異したまたは過敏性の酵素(例えば、酸化窒素シンターゼ、NADPHオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、NADHオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、ジヒドロオロット酸デヒドロゲナーゼ、シトクロムcオキシダーゼ);および放射線傷害。還元剤、活性酸素種およびタンパク質の増加したまたは減少したレベルは、健康な人に一般的に見出されるそのような物質の量と比較して規定される。酸化的ストレス減少を必要とする被験体は、虚血エピソードに罹患していることがある。虚血エピソードは、例えば動脈狭窄または途絶による、血液供給の機械的閉塞が存在する場合に、起こりうる。狭心症および心筋梗塞を生じうる心筋虚血は、通例は冠動脈疾患による、心筋への血液の不充分な循環から生じる。24時間以内に回復する脳における虚血エピソードは、一過性脳虚血発作と称される。より長く継続する虚血エピソード、脳卒中は、不可逆性脳損傷を含み、症候の型および重症度は、血液循環へのアクセスが損なわれた脳組織の位置と程度に依存する。虚血エピソードに罹患するリスクのある被験体は、一般に、アテローム性動脈硬化症、他の血管障害、増加した血液凝固傾向、または心疾患に罹患する。本発明化合物は、これらの障害を処置するために使用することができる。
【0150】
酸化的ストレス減少を必要とする被験体は、炎症に罹患していることがある。炎症は、物理的、化学的または生物学的物質を原因とする損傷または異常刺激に反応して、血管および隣接組織に起こる細胞学的および化学的反応の複合体から成る基本的な病理学上の過程である。炎症性障害は、長期間持続する(即ち、慢性炎症)または組織を損傷させる炎症を特徴とする。そのような炎症性障害は、さまざまな組織、例えば、気道、関節、腸および軟部組織を冒しうる。本発明化合物はこれらの障害を処置するために使用することができる。理論に縛られるものではないが、本発明化合物は、種々のメカニズムによって、酸化的ストレスを減少させるそれらの能力を引き出すと考えられる。1つのメカニズムにおいて、該化合物が、金属、特に酸化還元活性金属(例えば、鉄)に結合し、該金属の全ての配位部位を満たす。全ての金属配位部位が満たされた場合に、酸化および/または還元物質は、金属と相互作用して酸化還元サイクルを引き起こす能力が減少していると考えられる。他のメカニズムにおいて、化合物が金属を特定の酸化状態で安定化させ、それによって、酸化還元サイクルを受ける可能性が低くなる。さらに他のメカニズムにおいて、化合物自体が抗酸化活性を有する(例えば、フリーラジカル捕捉、活性酸素または窒素種の捕捉)。デスフェリチオシンならびにその誘導体および類似体は、下記文献に記載されているように固有抗酸化活性を有することが既知である:米国出願公開第2004/0044220号(2004年3月4日公開);米国出願公開第2004/0132789号(2004年7月8日公開);PCT出願第WO2004/017959号(2004年3月4日公開);米国出願公開第2003/0236417号(2003年12月25日公開);および米国特許第6083966号、第6559315号、第6525080号、および第6521652号(それぞれに記載の内容は、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0151】
1つ以上の器官、組織、腫瘍またはそれらの組合せの、画像化または検査は、本発明化合物の金属塩を被験体に投与した後に行なうことができる。画像化および検査の方法は、診断に使用される種々の機器技術、例えば、X線法(CTスキャンおよび従来のX線像を包含する)、磁気画像法(磁気共鳴画像法、電子常磁性共鳴画像法)、および放射化学法を包含するものとする。一般的に、画像化または検査に使用される金属塩は、造影剤として機能する。従って、1つの実施形態において、本発明化合物の金属錯体または金属塩は、例えば、1つ以上の器官(例えば、胃腸管)の画像化または検査において、造影剤として使用することができる。造影剤として機能することができる金属は、下記を包含する:ガドリニウム、鉄、マンガン、クロム、ジスプロシウム、テクネチウム、スカンジウム、バリウム、アルミニウムおよびホルミウム(好ましくは、トリカチオンとして)。放射性金属塩は、下記を包含する同位体から製造することができる:241Am、51Cr、60Co、57Co、58Co、64Cu、153Gd、67Ga、198Au、113mIn、111In、59Fe、55Fe、197Hg、203Hg、99mTc、201Tl、および169Yb(ここでも、金属が三価カチオンとして存在するのが好ましい)。
【0152】
新生物性疾患は、細胞増殖によって正常組織より速く成長する異常組織を特徴とする。異常組織は、新しい成長を開始させた刺激が終わった後にも成長し続ける。新生物は、構造機構および正常組織との機能的協調の、部分的または完全な欠如を示し、通例は、良性または悪性でありうるはっきりした組織塊を形成する。新生物は、例えば、下記を包含するさまざまな組織で生じうる:脳、皮膚、口、鼻、食道、肺、胃、膵臓、肝臓、膀胱、卵巣、子宮、精巣、結腸および骨、ならびに免疫系(リンパ節)および内分泌系(甲状腺、副甲状腺、副腎、胸腺、下垂体、松果体)。本発明化合物は、これらの障害を処置するために使用することができる。本発明によって処置できる腫瘍または癌の例は、下記を包含するが、それらに限定されない:白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、真性赤血球増加症、肺腫瘍、頭頚部腫瘍、脳腫瘍(神経芽腫)、子宮内膜腫瘍、卵巣腫瘍、子宮頸部腫瘍(cervical tumors)、乳房腫瘍、絨毛上皮腫、精巣腫瘍(testical tumors)、前立腺腫瘍、ウィルムス腫瘍、甲状腺腫瘍、副腎腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、結腸腫瘍、カルチノイド、インスリノーマ、骨腫瘍(骨原性肉腫)、その他の肉腫および皮膚癌(メラノーマ)。
【0153】
前新生物性状態は、良性または悪性新生物の形成に先行する。前癌性病変は、一般的に、悪性新生物の前に形成される。前新生物は、下記を包含する:光線皮膚炎、X線皮膚炎、タール皮膚炎、ヒ素皮膚炎(arsenic dermatitis)、狼瘡性皮膚炎、老年性角化症、パジェット病、コンジローム、火傷瘢痕、梅毒性瘢痕、フィステル瘢痕、下腿潰瘍瘢痕、慢性潰瘍、静脈瘤性潰瘍、骨フィステル、直腸フィステル、バレット食道、胃潰瘍、胃炎、胆石症、外陰萎縮症、色素性母斑、ボーエン皮膚症、色素性乾皮症、紅色肥厚症、白斑症、パジェット骨病、外骨腫症、外軟骨腫、線維性骨炎、骨性獅子面症、神経線維腫症、ポリープ症、胞状奇胎、腺腫様増殖、および結節性甲状腺腫。本発明化合物は、これらの障害を処置するために使用することができる。
【0154】
「被験体」は、一般的にヒトであるが、処置を必要とする動物、例えば、愛玩用動物(例えば、イヌ、ネコ等)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等)、および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、非ヒト霊長類等)であることもできる。
【0155】
本発明の化合物および医薬組成物は、適切な経路によって投与することができる。好適な投与経路は、経口、腹腔内、皮下、筋肉内、経皮、直腸、舌下静脈内、口腔内、または吸入を包含するが、それらに限定されない。好ましくは、本発明の化合物および医薬組成物は、経口的に投与される。本発明の医薬組成物は、該化合物または混合物を、経口的、非経口的、静脈内的、皮内的、筋肉内的または皮下的、直腸的、吸入によって、または口腔内投与によって、または経皮的に、投与可能にするのに好適な、薬学的に許容されうる賦形剤を含有するのが好ましい。活性成分を、従来の薬学的に許容されうる賦形剤と混合または配合しうる。慣例的に使用され、かつ作用物質に対して不活性の、投与方式、ビヒクル、賦形剤または担体を、本発明の医薬組成物を製造し投与するために使用しうることが当業者に理解される。そのような方法、ビヒクル、賦形剤および担体の例は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(1990)に記載されており、それに開示の内容は参照により本明細書に組み入れられる。被験体において使用される本発明の配合物は、作用物質を、1つ以上の許容されうるそれの賦形剤および任意に他の治療剤と共に含む。賦形剤は、配合物の他の成分と適合性であり、それのレシピエントに有害でないという意味において、「許容しうる」とされるべきである。配合物は、慣例的に、単位投与形態で与えることができ、薬学の分野で周知の任意方法によって製造することができる。全ての方法は、作用物質と、1つ以上の補助成分を構成する賦形剤とを合わせる工程を含む。一般に、配合物は、作用物質と賦形剤とを均質かつ密接に合わすことによって製造され、次に、必要であれば、生成物をその単位用量に分割する。
【0156】
経口投与に好適な形態は、当分野で公認の方法によって製造される錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤、チューインガム剤等を包含する。そのような治療的に有用な組成物または調製物中の、活性化合物の量は、好適な用量が得られる量である。シロップ配合物は一般に、液体担体、例えば、エタノール、グリセリンまたは水中の、化合物または塩の懸濁液または溶液から成り、香味剤または着色剤が使用される。組成物が錠剤の形態である場合、固体配合物の製造に慣例的に使用される1つ以上の医薬賦形剤を使用することができる。そのような賦形剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトースおよびスクロースを包含する。組成物がカプセル剤の形態である場合、慣例的カプセル封入の使用が一般に好適であり、例えば、硬ゼラチンカプセルシェルに前記の賦形剤が使用される。組成物が軟ゼラチンシェルカプセルの形態である場合、分散剤または懸濁剤の製造に慣例的に使用される医薬賦形剤が考えられ、例えば、水性ガム、セルロース、シリケートまたは油が、軟ゼラチンカプセルシェルに組み入れられる。
【0157】
非経口投与に好適な配合物は、慣例的に、好ましくはレシピエントの血液と等張性の、作用物質の滅菌水性調製物を包含する。好適な賦形剤溶液は、燐酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、水、乳酸加リンゲル液またはデキストロース(水中5%)を包含する。そのような配合物は、慣例的に、作用物質と水とを混合して溶液または懸濁液を作製することによって製造され、これを滅菌容器に充填し、細菌汚染に対して密封する。好ましくは、滅菌物質は、最終滅菌の必要がないように、無菌製造条件下に使用される。そのような配合物は、1つ以上の付加的成分を任意に含有することができ、該成分は、防腐剤、例えば、メチルヒドロキシベンゾエート、クロロクレゾール、メタクレゾール、フェノールおよび塩化ベンザルコニウムを包含しうる。そのような物質は、配合物が多用量容器で提供される場合に特に有用である。
【0158】
配合物に好適なpH値を与えるために、緩衝剤も含有させることができる。適切な緩衝物質としては、リン酸ナトリウムおよび酢酸塩が挙げられる。塩化ナトリウムまたはグリセリンを使用して、配合物を血液と等張性にすることができる。
【0159】
所望であれば、配合物を不活性雰囲気下、例えば窒素下で、容器に充填することができ、単位用量または多用量形態で、例えば、密閉アンプルにおいて、好都合に提供することができる。
【0160】
当業者は、本発明の方法に従って、被験体に投与される本発明組成物の種々の成分の量は、前記の要素に依存することを理解する。
【0161】
一般的な坐剤配合物は、この方法で投与された際に活性な化合物またはその薬学的に許容されうる塩を、結合剤および/または潤滑剤、例えば、高分子量グリコール、ゼラチン、カカオ脂、または他の低融点植物蝋または脂肪と共に含有する。一般的な経皮配合物は、慣例的な水性または非水性ヒビクル、例えば、クリーム、軟膏、ローションまたはペーストを含有するか、または薬用プラスチック、パッチまたは膜の形態である。
【0162】
一般的な吸入用組成物は、溶液、懸濁液またはエマルジョンの形態であり、それは、慣例的なプロペラント、例えばジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロフルオロメタンを使用して、エーロゾルの形態で投与することができる。
【0163】
本発明の化合物または医薬組成物の治療有効量は、各場合に、例えば下記のような、いくつかの要素に依存する:処置される被験体の健康状態、年齢、性別、体格および症状、意図する投与方式、および意図する投与形態を受け入れる被験体の能力等。作用物質の治療有効量は、処置されている症状に所望の作用を有するのに充分な量である。例えば、新生物性または前新生物性状態を処置する方法において、所望の作用は、哺乳動物、例えばヒトにおける、下記の作用である:癌転移を包含する癌または腫瘍の進行の、部分的または全体的な抑制、遅延または予防;癌転移を包含する癌または腫瘍の再発の、抑制、遅延または予防;または、癌または腫瘍の開始または発生の予防(化学的予防)。金属イオンをキレート化するかまたは封鎖することによって処置できる症状を有する被験体を処置する方法において、作用物質の治療有効量は、例えば、被験体における金属の負荷量を減少させるか、金属イオンに関連した症候を減少させるか、または金属の存在に関連した症候の開始および/または重症度を予防、抑制または遅延させるのに充分な量である。酸化的ストレスの処置を必要とする被験体の酸化的ストレスを減少させる方法において、作用物質の治療有効量は、例えば、酸化的ストレスに関連した症候を減少させるか、または酸化的ストレスに関連した症候の開始および/または重症度を予防、抑制または遅延させるのに充分な量である。
【0164】
被験体(平均70kgの被験体を想定)に投与される本発明化合物の一般的な合計日用量は、約5mg〜約10,000mg(例えば、0.07mg/kg〜143mg/kg)、好ましくは、約50mg〜約5,000mg、約100mg〜約2,000mg、約300mg〜約1,000mgである。鉄過負荷治療については、日用量の本発明化合物は、1日につき、体重1kg当たり、約0.25〜約0.40mgの鉄を除去すべきである。投与量を、数用量で、例えば、1、2、3、4、6、8、12またはそれ以上の個別用量で、経口投与することができる。
【0165】
本発明化合物の製造
式(Ia)の化合物は、例えば、式:
X−O−[(CH−O]−R
[式中、Xは脱離基である]
のポリエチレングリコール鎖を、式(III)
【0166】
【化32】

【0167】
のアルコールと、好適な条件下に反応させて、式(Ia)の化合物を得ることによって、合成することができる。
【0168】
当業者に理解されるように、好適な反応条件は、温度、溶媒、反応時間、濃度等を包含する。
【0169】
特定の実施形態において、ポリエチレングリコール鎖およびアルコールを、塩基性条件下に反応させることができる。他の実施形態において、ポリエチレングリコール鎖およびアルコールを、アルカリ性溶液中で反応させることができる。特定の実施形態において、ポリエチレングリコール鎖およびアルコールを、塩基の存在下に反応させることができる。他の実施形態において、塩基はアルカリである。他の実施形態において、塩基は塩基性塩である。さらに他の実施形態において、塩基性塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、または水酸化マグネシウムである。特定の実施形態において、塩基性塩は、炭酸カルシウムまたは炭酸カリウムである。
【0170】
特定の実施形態において、塩基はアルコキシドである。さらに他の実施形態において、アルコキシドはアルコキシド塩である。特定の実施形態において、アルコキシドは、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、またはカリウムtert−ブトキシドである。
【0171】
特定の実施形態において、溶媒は極性溶媒である。他の実施形態において、溶媒は非求核性溶媒である。さらに他の実施形態において、溶媒は極性非プロトン性溶媒である。他の実施形態において、溶媒は、DMF、ジオキサン、HMPT(ヘキサメチルホスホロトリアミド)、THF、またはEtOである。特定の実施形態において、溶媒はアセトンである。
【0172】
特定の実施形態において、ポリエチレングリコール鎖は、0.01〜0.5Mの溶液中に存在する。他の実施形態において、ポリエチレングリコール鎖は、0.1〜0.25Mの溶液中に存在する。他の実施形態において、ポリエチレングリコール鎖は、0.15Mの溶液中に存在する。特定の実施形態において、ポリエチレングリコール鎖は、0.15Mの濃度でアセトン中に存在する。
【0173】
本発明の他の態様において、一般式(Ia)の化合物を固体として得る方法を提供する。
【0174】
特定の実施形態において、式(Ia)の化合物を得る方法は、結晶化の工程をさらに含む。特定の実施形態において、結晶化は、直接結晶化である。他の実施形態において、結晶化は、再結晶である。特定の実施形態において、再結晶は、単一溶媒再結晶である。他の実施形態において、再結晶は、多溶媒再結晶である。他の実施形態において、再結晶は、熱時濾過再結晶である。特定の実施形態において、結晶化は自発的である。他の実施形態において、結晶化は、接種を必要とする。他の実施形態において、結晶化は、トリチュレーションである。
【0175】
特定の実施形態において、結晶化溶媒は、極性非プロトン性溶媒である。他の実施形態において、極性非プロトン性溶媒は、EtOAcである。他の実施形態において、結晶化溶媒は、非極性溶媒である。特定の実施形態において、結晶化溶媒は、ヘキサンである。特定の実施形態において、結晶化溶媒は、極性非プロトン性溶媒および非極性溶媒である。他の実施例において、結晶化溶媒は、EtOAcおよびヘキサンである。
【0176】
特定の実施形態において、一般式(Ia)のエステルが、スキーム1に示すように合成される:
【0177】
【化33】

【0178】
スキーム1.
式(Ib)の化合物は、例えば、一般式(Ia)の化合物のエステル加水分解によって、合成することができる。
【0179】
特定の実施形態において、加水分解は、酸触媒加水分解である。他の実施形態において、加水分解は、塩基加水分解である。他の実施形態において、塩基は、有機塩基である。特定の実施形態において、塩基は、水酸化物である。他の実施形態において、水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化カルシウムである。他の実施形態において、塩基は、1N NaOHである。
【0180】
特定の実施形態において、加水分解は、極性溶媒中で行なわれる。他の実施形態において、極性溶媒は、アルコールである。他の実施形態において、アルコールは、第一級アルコールである。他の実施形態において、アルコールは、第二級アルコールである。特定の実施形態において、アルコールは、第三級アルコールである。他の実施形態において、アルコールは、メタノール、エタノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、またはtert−ブタノールである。
【0181】
特定の実施形態において、一般式(Ib)のエステルは、0.01〜0.5Mの溶液中に存在する。他の実施形態において、エステルは、0.1〜0.25Mの溶液中に存在する。他の実施形態において、エステルは、0.1Mの溶液中に存在する。特定の実施形態において、エステルは、0.1Mの濃度でメタノール中に存在する。
【0182】
特定の実施形態において、該方法は、酸性化の工程をさらに含む。他の実施形態において、酸性化は、一塩基酸を使用して行なわれる。他の実施形態において、酸性化は、多塩基酸を使用して行なわれる。他の実施形態において、酸は、鉱酸である。特定の実施形態において、酸は、有機酸である。他の実施形態において、酸は、HClである。
【0183】
特定の実施形態において、一般式(Ib)の化合物を得る方法は、結晶化の工程をさらに含む。特定の実施形態において、結晶化は、直接結晶化である。他の実施形態において、結晶化は、再結晶である。特定の実施形態において、再結晶は、単一溶媒再結晶である。他の実施形態において、再結晶は、多溶媒再結晶である。他の実施形態において、再結晶は、熱時濾過再結晶である。特定の実施形態において、結晶化は自発的である。他の実施形態において、結晶化は、接種を必要とする。他の実施形態において、結晶化は、トリチュレーションである。
【0184】
特定の実施形態において、結晶化溶媒は、極性非プロトン性溶媒である。他の実施形態において、極性非プロトン性溶媒は、EtOAcである。他の実施形態において、結晶化溶媒は、非極性溶媒である。特定の実施形態において、結晶化溶媒は、ヘキサンである。特定の実施形態において、結晶化溶媒は、極性非プロトン性溶媒および非極性溶媒である。他の実施例において、結晶化溶媒は、EtOAcおよびヘキサンである。
【0185】
特定の実施形態において、一般式(Ib)の酸が、スキーム2に示すように合成される:
【0186】
【化34】

【0187】
スキーム2.
特定の実施形態において、本発明化合物が、スキーム3に示すように合成される:
【0188】
【化35】

【0189】
スキーム3. (S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6,9,12−テトラオキサトリデシルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(5)の合成。試薬および条件:(a)NaI(2当量)、アセトン、還流、18時間、94%;(b)9(1.3当量)、KCO(1.3当量)、アセトン、還流、2日間、73%;(c)50% NaOH(水溶液)(11当量)、CHOH、94%。
【0190】
特定の実施形態において、本発明化合物が、スキーム4に示すように合成される:
【0191】
【化36】

【0192】
スキーム4. (S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(6)ならびにそのエチル(7)およびイソプロピル(13)エステルの合成。試薬および条件:(a)KCO(1.1当量)、アセトン、還流、2日間、73%;(c)50% NaOH(水溶液)(13当量)、CHOH、80%;(c)2−ヨードプロパン(1.6当量)、DIEA(1.6当量)、DMF、3日間、85%。
【0193】
特定の実施形態において、前記の方法が、液相で行なわれる。特定の実施形態において、前記方法が、固相で行なわれる。特定の実施形態において、該合成法が、ハイスループット技術、またはコンビナトリアルケミストリーにおいて一般に使用される技術によって行なわれる。
【0194】
特定の実施形態において、出発物質が合成される。他の実施形態において、出発物質が市販源から購入される。出発物質は、それらを反応させる前に、保護してもよい。
【0195】
特定の実施形態において、ポリエチレングリコール鎖およびアルコールの反応混合物が、加熱される。他の実施形態において、反応温度は、50〜120℃である。さらに他の実施形態において、反応温度は、50〜60℃である。さらに他の実施形態において、反応温度は、60〜70℃である。特定の実施形態において、反応温度は、70〜80℃である。他の実施形態において、反応温度は、80〜90℃である。さらに他の実施形態において、反応温度は、90〜100℃である。さらに他の実施形態において、反応温度は、100〜110℃である。特定の実施形態において、反応温度は、110〜120℃である。特定の実施形態において、反応温度は、60℃である。
【実施例】
【0196】
DFT(1)は、天然物鉄キレート剤、シデロフォアである。それは、Fe(III)との密接2:1錯体を形成し、29.6のlogβを有し36−38、経口的に活性であることが示された最初の鉄キレート剤の1つであった。それは、胆管カニューレ挿入げっ歯類モデル(ICE、5.5%)39、および鉄過負荷C.apella霊長類(ICE、16%)40、41の両方において、よく機能した。残念なことに、1は、重度の腎毒性であった41。それにもかかわらず、顕著な経口活性が、経口的に活性かつ安全なDFT類似体を同定するための構造−活性試験を促した。第一の目的は、経口投与時に鉄クリアランスに適合性の、最小限の構造基盤、ファルマコフォアーを、規定することであった42−44
【0197】
DFTのピリジン窒素の除去は、(S)−4,5−ジヒドロ−2−(2−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸[(S)−DADFT]44、デスアザ(DA)系の親リガンドを与えた。(S)−DADFTの4−メチルの、水素での置換は、(S)−4,5−ジヒドロ−2−(2−ヒドロキシフェニル)−4−チアゾールカルボン酸[(S)−DADMDFT]41、44、次のDADM系の基盤、を生じた。付加的な構造活性関係(SAR)試験中に、我々は、所定ファミリーのリガンド、例えばDADFTまたはDADMDFT内において、キレート剤のlog Papp、親油性が、ICEおよび毒性の両方に重大な作用を有することを確認できた34、43、45。各ファミリーにおいて、親油性が減少すると共に、即ち、log Pappが、よりマイナスになると共に、毒性も減少する。より高い親油性のキレート剤は、一般に、より高いICEおよび増加した毒性を有していた34、43、45。これらの比較を行なう場合、ファミリー内にとどまることが重要である。例えば、DFT自体のlog Papp、ICEおよび毒性と、その類似体のlog Papp、ICEおよび毒性との間に、関連性はない。しかし、デスアザファミリーのリガンドの場合、例えば、2の4’−(HO)の代わりに4’−(CHO)基を配置して、(S)−4,5−ジヒドロ−2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(3、図1)を得た場合、その分子の親油性が増加し、そのICEおよび毒性も増加した34、43。このリガンドは、極めて親油性(log Papp= −0.70)であり、げっ歯類34または霊長類43に経口的に与えた場合に極めて有効な鉄キレート剤である(図1)。残念なことに、該リガンドは極めて腎毒性でもあった34。従って、鉄除去効率を維持しながら、親油性/毒性相互作用を如何に調整するかが問題となった。
【0198】
最終的に、ポリエーテル成分、3,6,9−トリオキサデシルオキシ基を、2の4’位置に配置して、(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6,9−トリオキサデシルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(4、図1)を得ることによって、3のICE特性を保持しているが、3よりかなり低い親油性および低い毒性のリガンドを生じることを我々は見出した34。このポリエーテルフラグメントを、芳香環の3つの位置(3’−、4’−または5’−)の1つに配置させた34、46。位置異性体の評価が行なわれているげっ歯類および霊長類における鉄除去効率は、極めて高感度であることが示されている34、46。げっ歯類において、該ポリエーテルは、それらの対応する親リガンドより、一様に高いICEを有していた。毒性、特に腎毒性における、かなりの減少もあった34、46、47。霊長類モデルにおいて、3’−および4’−ポリエーテルの両方についてのICEは、対応するフェノール親、例えば、それぞれ、デフェリトリン(2)の3’−(HO)異性体および2と、同様であった46。しかし、5’−ポリエーテル置換リガンドのICEは、その親と比較して減少した46。未解明のままであったのは、リガンドの特性における、ポリエーテル主鎖の長さの定量的重要性(この研究の主題)であった。
【0199】
現在の研究において、2の追加ポリエーテル類似体が合成された(図1)。特に、リガンド4の4’位置における3,6,9−トリオキサデシルオキシ置換基を、長くして、(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6,9,12−テトラオキサトリデシルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(5)を得、短くして、(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(6)を得た。6のエチルエステル、エチル(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボキシレート(7)も調製した。リガンド2における構造変化に関して、3つの問題に取り組んだ:1)親油性への作用、2)胆管カニューレ挿入げっ歯類および霊長類モデルにおける、鉄除去効率への作用、3)リガンドの生理化学的特性への作用。我々は、所定ファミリー内で、より高い親油性を有するリガンドは、より有効な鉄キレート剤であるが、より毒性でもあることを一貫して観測した34、43、45(即ち、問題点1および2)。我々は、さらに、3’−および4’−3,6,9−トリオキサデシルオキシ類似体のためのポリエーテル酸は油状物であり、ほとんどの場合、塩は吸湿性であることを観測した。結晶性固体リガンドは、投与形態において、より高い順応性を与えうる。
【0200】
デフェリトリン(2)を、本研究室において、エチル(S)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5−ジヒドロ−4−メチル−4−チアゾールカルボキシレート(10)48に変換した。カルボキシレート基をエステルとして保護して、2’−ヒドロキシ、鉄キレート部位の存在下に、10のより低い立体障害4’−ヒドロキシをアルキル化して、3〜6(図1)を包含する多くのデスフェリチオシン類似体を生成した34、43
【0201】
従って、還流アセトン中で、炭酸カリウムを使用して、エチルエステル10を、13−ヨード−2,5,8,11−テトラオキサトリデカン(9)でO−モノアルキル化して、遮蔽キレート剤11を73%収率で生成した(スキーム3)。アルキル化剤8はエステル11と類似したクロマトグラフィー特性を有するので、還流アセトン中で沃化ナトリウム(2当量)を使用して、トシレート8から沃化テトラエーテル9が94%収率で容易に得られた49、50。塩基中で11のエステル保護基を除去することによって、3,6,9,12−テトラオキサトリデシルオキシリガンド5、447の類似体の合成が、ポリエーテル鎖中に付加的エチレンオキシ単位を有して、94%収率で完了した。
【0202】
3,6−ジオキサヘプチルオキシリガンド(6)、ポリエーテル鎖中に1つ少ないエチレンオキシ単位を有するキレート剤4の類似体の合成は、同様の方法(スキーム4)を使用して行なわれた。3,6−ジオキサヘプチル4−トルエンスルホネート(12)49を使用して、エチルエステル10を4’−O−アルキル化して、7を73%再結晶収率で生成した。アルカリ性条件下に、エステル7をアンマスキングして、より短い4’−ポリエーテル誘導鉄キレート剤6を、80%再結晶収率で得た。リガンド6およびそのエチルエステル7の両方が結晶性固体であり、従って、大規模合成および投与形態の両方において、以前に報告されたポリエーテル置換DFT(これは油状物である)より明らかに有利である34、46、47。DMF中で、2−ヨードプロパンおよびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(それぞれ1.6当量)を使用して、カルボン酸6をエステル化して、イソプロピル(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボキシレート(13)を、85%収率で油状物として得た(スキーム4)。これは、リガンド結晶性の構造境界条件が極めて狭いという認識と一致している。
【0203】
単結晶X線分析は、キレート剤6(図1)およびそのエチルエステル7(図2)が(S)−配置で存在することを確認した。6および7の両方が、単斜格子、空間群P2において、単位格子中に2分子で、結晶化する。さらに、酸6は、単位格子寸法:a=5.5157(5)Å、b=8.8988(8)Å、およびc=17.3671(16)Åを有し、αおよびγ=90°、およびβ=98.322(1)°である。エステル7の単位格子寸法は、a=7.7798(6)Å、b=8.9780(6)Å、およびc=14.1119(10)Åであり、αおよびγ=90°であるが、β=106.078(1)°である。6および7の単位格子体積(Å)は、それぞれ、843.46(13)および947.12(12)である。6の結晶格子において、酸性水素は、カルボキシレート基のO6Aに結合して、中性分子を生じる(図1)。しかし、強電子供与4’−ヒドロキシを有する親リガンド2(図1)は、両性イオン性であり、即ち、イミニウムイオンがX線結晶構造解析によって観測される51。従って、意外ではないが、デフェリトリン(2)(log Papp = −1.05)は、ポリエーテルキレート剤6(lo gPapp = −0.89)より親水性である。
【0204】
オクタノールと水との分配係数(pH7.4、トリス緩衝液における)を、log Papp値を測定する「フラスコ振とう」直接法によって求めた52。次に、オクタノール中の薬剤の画分を、log Pappとして表わす。これらの数値は、1についてのlog Papp= −1.77〜7についてのlog Papp= 3.00に広範囲に亘っていた(図1)。これは、分配における58,000倍以上の差を表わしている。最も親油性のキレート剤7は、親2より11,220倍高い親油性である。
【0205】
動物モデル:
鉄除去剤のインビボ有効性を予測するための、信頼できるインビトロアッセイが存在しない53、54。密接鉄結合が、有効な鉄キレート剤の必要条件であるが、それだけでは不充分である55。リガンド基盤、フォルマコフォアが、鉄に密接に結合していることを確認したら、鉄クリアランスを最適化しながら毒性を最小限にすることに焦点を当てた、例えばデスフェリチオシン37、38の構造−活性関係試験を行なう。
【0206】
非鉄過負荷胆管カニューレ挿入げっ歯類における、キレート剤誘発鉄クリアランス:
本明細書において使用される「鉄除去効率」(ICE)は、キレート剤によって誘発された鉄排泄量の測度として使用される。パーセントで表わされるICEは、(リガンド誘発鉄排泄/理論鉄排泄)x100として算出される。例示のために、1ミリモルのDFO(Fe(III)との1:1錯体を形成する六座キレート剤)の投与後の理論鉄排泄は、1ミリ−g−原子の鉄である。2ミリモルのデスフェリチオシン(DFT、1、図1)(Fe(III)との2:1錯体を形成する三座キレート剤)が、1ミリ−g−原子の鉄の理論排泄に必要とされる。げっ歯類において、各場合に、ポリエーテル類似体が、それらのフェノール対応物より優れた鉄除去剤である;例えば2対4、5、6または7(図1)。過去のデータ(化合物1〜4)34、39、43は、比較のために含まれている。3,6,9−トリオキサデシルオキシ類似体(4)のICEは、親リガンド(2)のICEより5倍高く、5.5±1.9%対1.1±0.8%(p<0.003)である34。より長いエーテル類似体、3,6,9,12−テトラオキサトリデシルオキシ類似体(5)は、2のほぼ11倍の有効性であり、12.0±1.5%(p<0.001)のICEを有する。より短いエーテル類似体、3,6−ジオキサヘプトキシリガンド(6)、およびその対応するエチルエステル(7)は、高度結晶性固体であり、ラットにカプセルで投与された56。両リガンドは、親化合物2の約24倍の有効性であり、それぞれのICE値は、26.7±4.7%(p<0.001)および25.9±6.5%(p<0.001)のICEである。4と5対6と7の鉄除去特性の違いは、おそらく、log Papp(図1)に反映されている親油性の違いによるものと考えられる。この所見は、DFT類似体を使用した我々の試験を通じて、顕著に一致していた34、43、45。後者の2つのリガンドは、より親油性であり、より大きいlog Papp値を有している。
【0207】
リガンド2および4〜7の、胆汁鉄動態プロフィールは、極めて異なり(図2)、ポリエーテル主鎖の違いに明らかに関係している。親薬剤、デフェリトリン(2)の、最大鉄クリアランス(MIC)は、3時間で生じ、鉄クリアランスは、事実上、9時間で終わる。トリオキサポリエーテル(4)も3時間においてMICを有し、鉄排泄は12時間まで続く。テトラオキサエーテル類似体5は、6時間においてMICを有し、鉄排泄は24時間続いた。ジオキサエーテル類似体6およびその対応するエステル7のMICは、12〜15時間まで生じず、鉄排泄は、薬剤後48時間でも基線レベルに戻らなかった。6の胆汁鉄動態曲線は二相であるように見える(図2)が、この普通でない線形の理由は、数匹の動物が一時的に閉塞した胆汁流れを有していたからであることに留意すべきである。胆汁における鉄濃度は同じままであったが、胆汁量、従って全体的鉄排泄は減少した。閉塞が解けると、胆汁量および全体的鉄排泄は正常化した。
【0208】
鉄過負荷霊長類における、キレート誘発鉄クリアランス:
霊長類におけるキレート剤についての鉄クリアランスデータが、図1に示されている。過去のデータ(化合物1〜4)は、比較のために含まれている34、39、40、42、43。リガンド2は、16.8±7.2%のICEを有し34、4のICEは25.4±7.4%である34。より長い3,6,9,12−テトラオキサ類似体(5)のICEは有意に低く、9.8±1.9%(p<0.001)であった。より短い3,6−ジオキサ類似体6は、霊長類にカプセルで与えた場合に、26.3±9.9%のICEを有し;そのナトリウム塩として胃管栄養法によって投与した場合に、ICEは実質的に同じであり、28.7±12.4%(p>0.05)であった。カプセル封入された酸と、胃管栄養法によって与えられたナトリウム塩との、6のICEの類似性は、同等の薬物動態を示唆している。リガンド6のエステル、化合物7は、霊長類において比較的低機能であり、ICEは8.8±2.2%に過ぎなかった。
【0209】
現在のICEデータと、以前に報告された研究とに、いくつかの顕著な違いがある34、43、46。過去において、リガンドは一般に、鉄過負荷霊長類において、非鉄過負荷げっ歯類より、有意によく機能した。例えば、我々は、類似体2〜4の、平均ICE霊長類/ICEげっ歯類として定義される性能比率(PR)が、それぞれ、15.3、3.7、および4.6であることを示した(図1)46。現在の研究において、リガンド5のPRは0.82であり、6のPRは1.0である。以前に、霊長類およびげっ歯類においてそのように同様に挙動した唯一のリガンドは、4の5’−異性体であり、それは1の性能比率も有していた46。しかし、絶対的規準において、霊長類におけるこのキレート剤のICE(8.1±2.8%)は、事実上、低かった。現在の研究において、リガンド6は、げっ歯類および霊長類の両方において非常によく機能し(ICE>26%)、ヒトにおけるより高い成功率を示唆している。これに対して、6のエステル、リガンド7は、極めて低い性能比率(0.33)を有し、我々が以前に観測したより低かった。
【0210】
げっ歯類および霊長類における、親酸キレート剤6のICEとエステル7のICEとの重要な違いは、2つの可能な説明と一致している:1)霊長類において、エステルが、胃腸(GI)管からあまり吸収されない、または2)霊長類非特異性血清エステラーゼが、エステル7を、活性キレート剤酸6にどうしても開裂できない。霊長類における7の比較的低いICEが、加水分解における種間差異によるかを判断するために、ラットおよびサル血漿を使用して実験を行なった。7をDMSOに溶解させ、37℃でラット血漿と共にインキュベートした場合、全てのエステルが1〜2時間以内に活性酸6に変換された。これは、Cebus apellaサルからの血漿を使用して実験を行なった場合も同様であった。このように、ラットと霊長類との間に、7の加水分解における違いはない。従って、サルにおける7の低いICEは、エステルが、霊長類のGI管より、げっ歯類のGI管から、かなり多く有効に吸収されるという考えと一致する。生理食塩水をラットまたはサル血漿の代わりに使用する対照実験も行なった。7をDMSOに溶解させ、ラットまたはサル血漿の代わりに生理食塩水と共にインキュベートした場合、全ての薬剤がエステル形態のままであったことに留意すべきである。
【0211】
(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(6)およびそのエチルエステル(7)の毒性プロフィール:
10日間の毒性試験を、ラットにおいて、リガンド6および7について行なった。薬剤を、動物に、経口的に、毎日1回、384μmol/kg/d(100mg/kgのDFTナトリウム塩と同等)の用量で与えた。追加の年齢一致動物を、非処置被験体として使用した。動物を、11日目、薬剤の最終用量から1日後に、安楽死させた。広範囲な組織を、組織病理学試験に出した。被験および対照動物の腎臓、肝臓、膵臓および心臓を除去し、湿式灰化して、それらの鉄含有量を評価した。
【0212】
リガンド6は、ラットおよび霊長類の両方において、そのように有効な鉄キレート剤であるので、その毒性プロフィールは最も重要性を持つ。病理学者からの重要なコメントは、「グループ1[被験群]のラットからの組織は、グループ2[対照動物]のラットからの組織と組織学的に正確に識別できない」というものであった。これは、特に、そのような短期間で肝臓および心臓からいかに多くの鉄をキレート剤が除去したかという点で、極めて勇気づけられるものであった。しかし、この結果にかかわらず、6への28日間の暴露は、毒性を生じるのに充分に肝臓鉄貯蔵を減少しえたので、げっ歯類における任意の遅延性毒性試験に、鉄負荷および非鉄負荷動物の両群を含めるべきであることが明らかである。
【0213】
6のエチルエステル、化合物7を用いたシナリオは、幾分異なっていた。そのICEは、肝臓および腎臓鉄含有量の印象的減少と共に、げっ歯類において優れていたが、エステル7は、いくらかの腎毒性を示した。7を、384μmol/kg/日x10日の用量で与えた場合に、軽度〜中等度の近位管状上皮細胞の空胞変性が見られた。しかし、7の用量を、192μmol/kg/日x10日の用量に減少させた場合、薬剤関連異常はなかった。
【0214】
組織鉄除去:
前記のように、げっ歯類に、酸6または7を、経口的に、384μmol/kg/日x10日の用量で与えた。エチルエステル7も、192μmol/kg/日x10日の用量で与えた。11日目に、動物を安楽死させ、腎臓、肝臓、膵臓および心臓を除去した。組織試料を湿式灰化し、それらの鉄レベルを測定した(図4および5)。6で処置したげっ歯類の腎臓鉄含有量は、薬剤をカプセルで投与した場合に7.4%減少し、そのナトリウム塩として与えた場合に24.8%減少した(図4)。後者の動物の腎臓鉄含有量は、非処置対照の腎臓鉄含有量より有意に少なかった(p<0.001)が、カプセルまたはナトリウム塩群間に有意な差はなかった(p>0.05)。肝臓鉄の減少は顕著であり、カプセルおよびナトリウム塩群の両方において>35%であった(p<0.001)。薬剤をそのナトリウム塩として与えた場合は、非処置対照と比較して、膵臓鉄の有意な減少があった(p<0.05)が、カプセルで投与した場合はなかった(図4)。しかし、腎臓鉄と同様に、カプセル対ナトリウム塩処置群に有意な差はなかった(p>0.05)。最後に、酸6で処置した動物において心臓鉄の有意な減少があり、薬剤をカプセルおよびそのナトリウム塩で与えた場合に、それぞれ6.9%および9.9%減少した(p<0.05)。
【0215】
エチルエステル7を、カプセルで、経口的に、384μmol/kg/日x10日の用量で与えたラットは、非処置対照と比較して、腎臓および肝臓鉄の両方において、顕著な減少を示した:それぞれ32.1%(p<0.001)および59.1%(p<0.001)(図5)。我々は、組織鉄濃度におけるそのような劇的な減少をこれまでに観測したことがない。384μmol/kg/日の投与計画において7によって観測された腎毒性により、我々は、10日間の毒性試験を繰り返すことを決定し、今回は、半分の用量、192μmol/kg/日で薬剤を投与した。腎臓および肝臓鉄濃度の減少において、明らかな用量反応が観測された(図5)。腎臓鉄の減少は、384μmol/kg/日において32.1%、192μmol/kg/日において12.6%であった(p<0.01)。肝臓鉄の減少は、384μmol/kg/日において59.1%、192μmol/kg/日において27%であった(p<0.001)。どちらの用量も、膵臓または心臓鉄含有量の減少と関連していなかった。
【0216】
2を使用した先の試験は、4’−ヒドロキシルのメチル化が、げっ歯類および霊長類の両方においてより高いICEを有するリガンド(3)を生じることを示した(図1)43。しかし、リガンド3は、容認できない腎毒性であり34、再設計し、3,6,9−トリオキサデシル基を、4’−(HO)に、メチルの代わりに付加した34、46、47。これは、メチル化類似体3とほぼ同様の、げっ歯類および霊長類におけるICEを有するが、事実上、どのような腎毒性もないキレート剤(4)を生じた34。対応する3’−および5’−トリオキサ類似体も、4’−O−メチルエーテル3より優れた、げっ歯類におけるICE特性を有していた。霊長類において、3’−トリオキサリガンドのICEは、4’−トリオキサ類似体(4)のICEと同様であったが、5’−はより低い有効性であった。これらのデータは、ポリエーテル鎖の長さをどのように変化させれば、リガンドのICE、親油性および生理化学特性に影響を与えうるかを評価することを奨励するものであった。
【0217】
リガンド4の4’−位置における3,6,9−トリオキサデシルオキシ置換基を34、長くして3,6,9,12−テトラオキサトリデシルオキシ基にして、5を得、短くして3,6−ジオキサヘプチルオキシ成分にして、6を得た。さらに、リガンド6の、エチル(7)およびイソプロピル(13)エステルも生成した。合成法は、極めてシンプルで、高収量であり、多量の薬剤が前臨床試験に必要とされる場合に有利である。
【0218】
全ての場合において、2のエチルエステル、化合物10を、出発物質として使用した(スキーム1および2)。10の4’−(HO)を、沃化ポリエーテル9またはトシレート10でアルキル化して、それぞれ11または7を得た。次に、水性塩基中でのエチルエステルの加水分解によって、より長いポリエーテル鎖を有する5(油状物)を得る(スキーム3)か、またはより短いポリエーテル鎖を有するリガンド6を得た(スキーム4)。6およびそのエステル7は両方とも結晶性固体であった。毒性プロフィール、鉄除去剤としての有効性、生理化学状態、結晶性固体は、リガンド6を、魅力ある臨床候補物質にする。6のエチルエステル、遮蔽リガンド7も、容易に結晶化するということは、注目すべきことである(X線構造、図15および16参照)。この研究室で以前に合成された全てのポリエーテル類似体は、酸およびエステルの両方とも、油状物であった34、46、47。ほとんどの場合、前者の金属塩は、吸湿性であった。興味深いことに、6のイソプロピルエステル、化合物13でさえ、油状物であった。6および7は結晶性固体であるので、それらを、カプセル56で、げっ歯類および霊長類の両方に与えた。
【0219】
げっ歯類において、ナトリウム塩としての5のICEは、親(2)のICEよりほぼ11倍高く、トリオキサポリエーテル(4)の2倍の有効性であった。カプセルで与えたより短いポリエーテル酸6は、2より24倍高いICEを有し、4のICEよりほぼ5倍高かった(図1)。対応するエステル7のICEは、6のICEと実質的に同じであった。6および7の両方についての胆汁鉄動態曲線は、他のいずれのリガンドとも顕著に異なっていた(図2)。MICは、薬剤後12〜15時間まで生じず、鉄クリアランスは、48時間においても継続していた。これに対して、他のリガンドの場合、MICはかなり早期に生じ、2および4については3時間、5については6時間で生じた。さらに、鉄排泄は、2については9時間までに、4については12時間までに、5については24時間までに、基線レベルに戻っていた(図2)。リガンド6の遅延性鉄排泄特性が、ヒトにおいても観測され、地中海性貧血患者は、1週間に2〜3回処置するだけでよい。これは、現在使用可能な処置計画の厳しさを改善しうる。
【0220】
霊長類において、親ポリエーテル4のICEは、より長い類似体5のICEより2.5高く、より短いポリエーテル類似体6のICEは、4のICEの誤差の範囲であった(図1)。しかし、6のエチルエステル、リガンド7の、ICEは、6のICEの3分の1に過ぎない(図1)。ラットおよびサル血漿における試験は、ラットと霊長類との間で、7の非特異性エステラーゼ加水分解における違いを示さなかった。しかし、サルにおける7の低いICEは、霊長類よりげっ歯類においてエステルがGI管からかなり効果的に吸収されるという考えと一致する。
【0221】
胆管カニューレ挿入ラットにおいて示されたポリエーテル酸6およびエステル7の遅延性胆汁鉄動態および顕著な鉄除去効率(図2)は、毎日1回、10日間、薬剤で経口処置されたげっ歯類の組織鉄レベルの劇的減少に反映されていた(図4および5)。カプセルで経口的に与えるか、またはナトリウム塩として胃管栄養法によって与えた酸6は、肝臓および心臓鉄の両方を有意に減少させ(図4)、処置群と対照群において、組織学的異常は認められなかった。カプセルで投与された化合物7は、腎臓および肝臓から鉄を、6よりかなり多く除去したが、膵臓または心臓鉄負荷において影響を有さなかった(図5)。しかし、エステル7は、容認できない腎毒性を示した。
【0222】
化合物11(スキーム3)、キレート剤5(図1)のエチルエステルは、5の合成の中間体であった。エステルは、動物において非特異性血清エステラーゼによって酸5に開裂された場合でも、親酸自体より良好に機能するとは考えられない。これは、酸6(図1)とそのエステル7(図1)を比較する場合に強調される。このエステルは、霊長類において、親酸のように良好に作用しない。13の合成は、単に、7のエチルエステル以外のエステルも固体であることを期待しうるかどうかを判断するためであった。
【0223】
材料:
試薬は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI)から購入した。Fisher Optima銘柄溶媒を規定通りに使用し、DMFは蒸留した。反応は窒素雰囲気下に行なわれ、有機抽出物は硫酸ナトリウムで乾燥させた。SiliCycle,Inc.(Quebec City,Quebec,Canada)からのシリカゲル40−63を、カラムクロマトグラフィーに使用した。融点は補正されていない。3N HClに15分間予浸し、蒸留水および蒸留EtOHで洗浄し、オーブン乾燥したガラス器を、5および6の単離に使用した。光学回転は、589nm(ナトリウムD線)および20℃において、Perkin−Elmer 341偏光計で行われ、cは100mLのCHCl当たりの化合物のグラム数での濃度であった。H NMRスペクトルは、CDCl中、400MHzで行ない、化学シフト(δ)はテトラメチルシランからの低磁場ppmで示す。結合定数(J)はヘルツで表わす。13C NMRスペクトルは、CDCl中、100MHzで測定し、化学シフト(δ)はδ77.16の残留溶媒共鳴を規準にしてppmで示す。規準ピークは、ESI−FTICR質量スペクトルに関して示す。元素分析は、Atlantic Microlabs(Norcross,GA)によって行なわれ、計算値の±0.4%以内であった。化合物の純度は、元素分析および高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって確認される。全ての場合において、純度は≧95%であった。
【0224】
Cebus apellaサルは、World Wide Primates(Miami,FL)から得た。雄Sprague−Dawleyラットは、Harlan Sprague−Dawley(Indianapolis,IN)から入手した。超高純度塩は、Johnson Matthey Electronics(Royston,UK)から得た。全ての血液学的および生化学的試験41は、Antech Diagnostics(Tampa,FL)によって行なわれた。原子吸収(AA)測定は、Perkin−Elmerモデル5100 PC(Norwalk,CT)で行なわれた。組織病理学的分析は、Florida Vet Path(Bushnell,FL)によって行なわれた。
【0225】
エチル(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボキシレート(7)の合成:
活性KCO(2.16g、15.64mmol)およびトシレート(12)(3.97g、14.50mmol)を、無水アセトン(100mL)中の(10)(WO2006/107626参照)(4.0g、14.22mmol)に添加した。反応混合物を還流させながら2日間加熱した。室温に冷却した後、固形物を濾過し、溶媒を真空下で除去した。残渣を1:1の0.5M クエン酸/飽和NaCl(100mL)に溶解させ、EtOAc(3x50mL)で抽出した。集めた有機抽出物を、蒸留HO(100mL)および飽和ブライン(100mL)で洗浄した。溶媒を真空下で除去して、無色油状物を得た。油状物をEtOAc/ヘキサン(Hexame)中で結晶化して、3.97gの4(73%)を白色固形物として得た。融点68〜70℃;
H NMR δ 1.30 (t, 3H, J = 7.2), 1.66 (s, 3H), 3.19 (d, 1H, J = 11.2), 3.40 (s, 3H), 3.57−3.59 (m, 2 H), 3.71−3.73 (m, 2 H), 3.83−3.88 (d + m, 3 H, J = 11.6), 4.16 (t, 2 H, J = 4.8), 4.24 (dq, 2H, J = 7.2), 6.46 (dd, 1 H, J = 2.4, 8.8), 6.49 (d, 1H, J = 2.8), 7.29 (d, 1H J = 8.4); 100 MHz 13C NMR δ 14.12, 24.48, 39.84, 59.09, 61.89, 67.55, 69.52, 70.80, 71.94, 83.12, 101.45, 107.28, 109.89, 131.69, 161.18, 162.99, 170.81, 172.80; HRMS m/z calcd for C1826NO6S, 384.1475 (M+H); found, 384.1509.
【0226】
【化37】

【0227】
(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(6)の合成:
CHOH(20mL)中の50%(w/w)NaOH(2.1mL、40mmol)の溶液を、30mL CHOH中の(7)(1.2g、3.1mmol)に0℃で添加した。反応混合物を室温で6時間撹拌し、大部分の溶媒を真空下で除去した。残渣を希薄NaCl(30mL)で処理し、エーテル(2x20mL)で抽出した。水性層を氷で冷却し、6N HClでpH=2に酸性化し、EtOAc(4x25mL)で抽出した。EtOAc層を飽和NaCl(50mL)で洗浄した。キレート剤の抽出を行なう場合、全てのガラス器を先ず3N HClに15分間浸漬して、あらゆる外来鉄を除去した。溶媒を除去して淡色油状物を得、これをEtOAc/ヘキサン中で結晶化して、.880gの1(80%)を固形物として得た。融点82〜83℃;
H NMR δ 1.70 (s, 3H), 3.22 (d, 1H J = 11.2), 3.40 (S, 3H), 3.58−3.60 (m, 2 H), 3.71−3.73 (m, 2 H), 3.83−3.87 (m, 3 H), 4.15 (t, 2 H, J = 5.2), 6.45 (dd, 1 H, J = 2.0, 8.8), 6.51 (d, 1 H, J = 2.0), 7.28(d, 1H, J = 8.4); 100 Mhz 13C NMR δ 24.58, 39.77, 59.13, 67.64, 69.61, 70.77, 71.99, 82.63, 101.53, 107.73, 109.63, 131.88, 161.42, 163.40, 171.96, 176.91; HRMS m/z calcd for C-1622NOS, 356.1162 (M+H); found, 356.1190.
【0228】
【化38】

【0229】
(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6,9,12−テトラオキサトリデシルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(5)の合成:
CHOH(75mL)中の50%(w/w)NaOH(7.0g、87mmol)の溶液を、CHOH(85mL)中の11(3.64g、7.72mmol)に、0℃で3分間にわたって添加した。反応混合物を0℃で1.5時間、室温で18時間撹拌し、大部分の溶媒を減圧下で除去した。残渣をHO(90mL)で処理し、CHCl(4x50mL)で抽出した。水性層を氷で冷却し、飽和NaCl(45mL)および冷たい5N HCl(22mL)で集め、EtOAc(100mL、5x70mL)で抽出した。EtOAc層を、飽和NaCl(75mL)で洗浄した。溶媒を真空中で除去して、3.20gの5(94%)を黄色油状物として得た。
【0230】
[α] +47.6° (c 0.86).
H NMR (CDCl + 1−2 drops DO) δ 1.69 (s, 3 H), 3.21 (d, 1 H, J = 11.3), 3.38 (s, 3 H), 3.53−3.57 (m, 2 H), 3.62−3.69 (m, 8 H), 3.70−3.73 (m, 2 H), 3.82−3.87 (m, 3 H), 4.11−4.15 (m, 2 H), 6.45 (dd, 1 H, J = 8.8, 2.5), 6.50 (d, 1 H, J = 2.4), 7.27 (d, 1H, J = 9.0). 13C NMR δ 24.67, 39.90, 59.11, 69.66, 70.53, 70.67, 70.69, 70.71, 70.94, 72.02, 82.93, 101.56, 107.70, 109.80, 131.85, 161.32, 163.30, 171.76, 176.19. HRMS m/z calcd for C2030NOS, 444.1687 (M + H); found, 444.1691. Anal. (C2029NOS・0.5HO) C, H, N.
(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(6)の合成:
CHOH(20mL)中の50%(w/w)NaOH(2.1mL、40mmol)の溶液を、CHOH(30mL)中の7(1.2g、3.1mmol)に0℃で添加した。反応混合物を室温で6時間撹拌し、大部分の溶媒を減圧下で除去した。残渣を希薄NaCl(30mL)で処理し、エーテル(2x20mL)で抽出した。水性層を氷で冷却し、6N HClでpH=2に酸性化し、EtOAc(4x25mL)で抽出した。EtOAc層を、飽和NaCl(50mL)で洗浄した。溶媒を真空中で除去し、EtOAc/ヘキサンから再結晶して、0.880gの6(80%)を固形物として得た。融点82〜83℃:
[α] +59.6° (c 0.094). H NMR δ 1.70 (s, 3 H), 3.22 (d, 1 H, J = 11.2), 3.40 (s, 3 H), 3.58−3.60 (m, 2 H), 3.71−3.73 (m, 2 H), 3.83−3.87 (m + d, 3 H, J = 12.0), 4.15 (t, 2 H, J = 5.2), 6.45 (dd, 1 H, J = 8.8, 2.0), 6.51 (d, 1 H, J = 2.0), 7.28 (d, 1 H, J = 8.4). 13C NMR δ 24.58, 39.77, 59.13, 67.64, 69.61, 70.77, 71.99, 82.63, 101.53, 107.73, 109.63, 131.88, 161.42, 163.40, 171.96, 176.91. HRMS m/z calcd for C1622NOS, 356.1162 (M + H); found, 356.1190. Anal. (C1621NOS) C, H, N.
エチル(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボキシレート(7)の合成:
火炎活性KCO(2.16g、15.6mmol)および1249(3.97g、14.5mmol)を、アセトン(100mL)中の1048(4.0g、14.2mmol)に添加した。反応混合物を還流させながら2日間加熱した。室温に冷却した後、固形物を濾過し、アセトンで洗浄し、濾液を回転蒸発器で濃縮した。残渣を1:1の0.5M クエン酸/飽和NaCl(100mL)で処理し、EtOAc(3x50mL)で抽出した。有機抽出物をHO(100mL)および飽和NaCl(100mL)で洗浄した。溶媒を真空中で除去した後、EtOAc/ヘキサンから再結晶して、3.97gの7(73%)を固形物として得た。融点68〜70℃:
[α] +47.4° (c 0.114). H NMR δ 1.30 (t, 3 H, J = 7.2), 1.66 (s, 3 H), 3.19 (d, 1 H, J = 11.2), 3.40 (s, 3 H), 3.57−3.59 (m, 2 H), 3.71−3.73 (m, 2 H), 3.83−3.88 (d + m, 3 H, J = 11.6), 4.16 (t, 2 H, J = 4.8), 4.24 (dq, 2H, J = 7.2, 1.6), 6.46 (dd, 1 H, J = 8.8, 2.4), 6.49 (d, 1 H, J = 2.8), 7.29 (d, 1 H, J = 8.4), 12.69 (s, 1 H). 13C NMR δ 14.12, 24.48, 39.84, 59.09, 61.89, 67.55, 69.52, 70.80, 71.94, 83.12, 101.45, 107.28, 109.89, 131.69, 161.18, 162.99, 170.81, 172.80. HRMS m/z calcd for C1826NOS, 384.1475 (M + H); found, 384.1509. Anal. (C1825NOS) C, H, N.
13−ヨード−2,5,8,11−テトラオキサトリデカン(9)の合成:
沃化ナトリウム(8.61g、57.5mmol)を、アセトン(230mL)中の8(10.37g、28.61mmol)の溶液に添加し、反応混合物を還流させながら18時間加熱した。溶媒を真空中で蒸発させた後、残渣をHO(150mL)で集め、CHCl(150mL、2x80mL)で抽出した。有機抽出物を1% NaHSO(80mL)、HO(80mL)および飽和NaCl(50mL)で洗浄し、溶媒を真空中で蒸発させた。フラッシュカラムクロマトグラフィー(14%アセトン/CHClを使用)によって精製して、8.56gの9(94%)を無色液体として得た:
H NMR δ 3.24−3.29 (m, 2 H), 3.39 (s, 3 H), 3.54−3.58 (m, 2 H), 3.64−3.70 (m, 10 H), 3.74−3.78 (m, 2 H). 13C NMR d 59.17, 70.32, 70.65, 70.70, 70.73, 70.77, 72.05, 72.09. HRMS m/z calcd for C20IO, 319.0401 (M + H); found, 319.0417. Anal. (C19IO) C, H.
エチル(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6,9,12−テトラオキサトリデシルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボキシレート(11)の合成:
火炎活性KCO(0.666g、4.82mmol)を、アセトン(85mL)中の9(1.46g、4.59mmol)および1048(1.08g、3.84mmol)の溶液に添加し、反応混合物を還流させながら43時間加熱した。室温に冷却した後、固形物を濾過し、アセトンで洗浄し、濾液を回転蒸発器によって濃縮した。残渣を1:1の0.5M クエン酸/飽和NaCl(100mL)で集め、EtOAc(3x80mL)で抽出した。有機抽出物を1% NaHSO(80mL)、HO(80mL)および飽和NaCl(55mL)で洗浄した。溶媒を真空中で除去し、残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(25%アセトン/石油エーテル、次に、9%アセトン/CHClを使用)によって精製して、1.33gの11(73%)を黄色油状物として得た:
[α] +36.2° (c 1.20). H NMR δ 1.30 (t, 3 H, J = 7.2), 1.66 (s, 3 H), 3.19 (d, 1 H, J = 11.3), 3.38 (s, 3 H), 3.52−3.56 (m, 2 H), 3.62−3.74 (m, 10 H), 3.81−3.88 (m, 3 H), 4.12−4.16 (m, 2 H), 4.20−4.28 (m, 2 H), 6.46 (dd, 1 H, J = 8.6, 2.3), 6.49 (d, 1 H, J = 2.4), 7.29 (d, 1 H, J = 8.6). 13C NMR δ 14.21, 24.59, 39.95, 59.14, 62.01, 67.66, 69.58, 70.62, 70.71, 70.73, 70.97, 72.04, 83.23, 101.52, 107.42, 109.99, 131.78, 161.28, 163.109, 170.90, 172.95. HRMS m/z calcd for C2234NOS, 472.2000 (M + H); found, 472.2007. Anal. (C2233NOS) C, H, N.
イソプロピル(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6−ジオキサヘプチルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボキシレート(13)の合成:
2−ヨードプロパン(1.60g、9.41mmol)およびDIEA(1.22g、9.44mmol)を、DMF(50mL)中の6(2.1g、5.9mmol)に順次に添加し、反応混合物を室温で72時間撹拌した。溶媒を高真空下で除去し、残渣を1:1 の0.5M クエン酸/飽和NaCl(100mL)で処理し、EtOAc(3x100 mL)で抽出した。有機抽出物を、各50mLの、1% NaHSO、HOおよび飽和NaClで洗浄し、溶媒を真空中で蒸発させた。フラッシュカラムクロマトグラフィー(5%アセトン/CHClを使用)によって精製して、1.99gの13(85%)を黄色油状物として得た:
[α] +40.0°(c 0.125). H NMR δ 1.26 and 1.27 (2 d, 6 H, J = 5.5), 1.63 (s, 3 H), 3.17 (d, 1 H, J = 11.2), 3.38 (s, 3 H), 3.55−3.58 (m, 2 H), 3.69−3.72 (m, 2 H), 3.81−3.86 (d + m, 3 H, J = 11.2), 4.15 (t, 2 H, J = 5.2), 5.07 (septet, 1 H, J = 6.4), 6.46 (dd, 1 H, J = 9.2, 2.0), 6.49 (d, 1 H, J = 2.4), 7.28 (d, 1 H, J = 8.4), 12.7 (br s, 1 H). 13C NMR δ 21.54, 24.27, 39.63, 58.98, 67.46, 69.35, 69.42, 70.69, 71.85, 83.10, 101.37, 107.14, 109.83, 131.57, 161.11, 162.88, 170.55, 172.10. HRMS m/z calcd for C1928NOS, 398.1637 (M + H); found, 398.1658. Anal. (C1927NOS) C, H, N.
化合物(6)および(7)のX線実験データ:
X線データは、A CCD面検出器、およびMoKα線(λ=0.71073Å)を使用するグラファイトモノクロメーターを取り付けたSiemens SMART PLATFORMにおいて、173Kで収集した。8192反射までを使用して、格子パラメーターを精密化した。ω−スキャン法(0.3°フレーム幅)を使用して、データ(1850フレーム)の全領域を収集した。最初の50フレームは、データ収集の終わりに再測定して、計器および結晶能力をモニターした(Iにおける最大補正は<1%であった)。積分による吸収補正を、測定した指標付き結晶面に基づいて適用した。
【0231】
構造を、直接法によってSHELXTL6で分析し57、全マトリックス最小二乗を使用して精密化した。非H原子は異方的に処理し、水素原子は、理想の位置で計算され、それらの各炭素原子に乗っていた。6については、I>2σ(I)で3588反射を使用して、合計227のパラメーターを精密化の最終サイクルで精密化して、それぞれ3.16%および8.58%のRおよびwRを得た。化合物7については、I>2σ(I)で4082反射を使用して、合計243のパラメーターを精密化の最終サイクルで精密化して、それぞれ2.52%および6.53%のRおよびwRを得た。精密化は、Fを使用して行なった。6および7についての全結晶学的データが、CCDCに提出されている(寄託番号CCDC757291および757292)。
【0232】
非鉄過負荷胆管カニューレ挿入ラットモデルにおける鉄キレート剤の鉄除去効率:
非鉄過負荷胆管カニューレ挿入げっ歯類モデルにおいて、本発明化合物を使用して試験を行なう。簡単に言えば、平均450gの雄Sprague−Dawleyラットを、実験期間中、Nalgeneプラスチック代謝ケージに収容し、水を自由に飲めるようにする。腹腔内投与されるナトリウムペントバルビタール(55mg/kg)を使用して、動物に麻酔をかける。22ゲージのポリエチレンチューブを使用して、胆管にカニューレを挿入する。カニューレを、胆管に、十二指腸から約1cmで挿入し、所定位置にしっかりつなぐ。肩を通った後、カニューレifsが、ラットから、金属トルク伝達テザー内のスイベル(これは、動物胸部の周りのげっ歯類ジャケット取り付けられている)に向かう。カニューレは、代謝ケージの上方に取り付けられた液体スイベルによって、ラットから、Gilsonマイクロフラクションコレクター(Middleton,WI)に向かう。3時間胆汁試料を、最少24時間〜48時間まで、連続的に収集する。しかし、効率の計算は、24時間鉄排泄に基づく。各キレート剤の効率を、2:1のリガンド−鉄錯体に基づいて算出する。げっ歯類モデルにおける効率を、処置動物の鉄排泄から、対照動物の鉄排泄を引くことによって算出される。次に、この数値を理論排出量で割り、その結果をパーセンテージで表わす(Bergeronら、J.Med.Chem.1999,42,95−108;その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)。データを平均値±平均値の標準誤差として表わし;p値は、分散の不等が想定される片側スチューデントのt検定によって得られ;<0.05のp値は有意とみなされた。尿試料は、24時間において採取し、Bergeronら、J.Med.Chem.1991,34,2072−2078(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に以前記載されたように取り扱う。
【0233】
Cebus apellaサルモデルにおける鉄キレート剤:
鉄過負荷サルモデルにおいて、本発明化合物を使用して試験を行なう。使用したプロトコルは、Bergeronら、J.Med.Chem.2003,46,1470−1477に見出すことができ、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。簡単に言えば、静脈内投与される鉄デキストランを用いてサルに鉄過負荷して、体重1kg当たり約500mgの鉄負荷にする。鉄キレート剤を評価する実験に動物を使用する前に、少なくとも20半減期、60日が、経過している。鉄キレート剤をビヒクルに懸濁させ、経口または皮下投与する。糞および尿試料は24時間間隔で採集され、それは鉄キレート剤投与の4日前から開始して、キレート剤の投与後5日間継続される。糞および尿における鉄濃度を、フレーム原子吸光分析によって測定する。鉄キレート剤効率は、正味鉄クリアランス[全鉄排泄(糞および尿)−バックグラウンド]を、理論鉄クリアランスで割り、100を掛けることによって、算出される。鉄キレート剤の理論クリアランスは、2:1のリガンド/鉄錯体に基づいて得られる。
【0234】
ラットへの皮下投与後の組織分布:
投与後2〜8時間の時点で、皮下投与後の本発明化合物の組織および血漿濃度を評価する測定を行なう。ラットに、該化合物を300μmol/kgで皮下的に与える。組織および血漿レベルを、Bergeronら、J.Med.Chem.2005,48,821−831(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に記載のように得る。
【0235】
鉄キレート剤によるラットにおけるウラン排泄:
平均体重450gの雄Sprague−Dawleyラットに、腹腔内投与されるナトリウムペントバルビタール(55mg/kg)で麻酔をかける。胆管に、22ゲージのポリエチレンチューブを使用してカニューレ挿入する。ラットに、酢酸ウラニルを5mg/kgで皮下的に与える。その直後に、ラットに、キレート剤を300μmol/kgの用量で、腹腔内的に与える。24時間尿よび24時間胆汁の試料を採集し、2%濃度の硝酸で酸性化し、それらのウラン含有量について、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)によって評価を行なう。
【0236】
薬剤の調製および投与:
鉄除去実験において、ラットに、5〜7を、経口的に、300μmol/kgの用量で与えた。リガンド5は、胃管栄養法によって、その一ナトリウム塩(1当量のNaOHを、蒸留水中の遊離酸の懸濁液に添加することによって調製)として与え、6および7は、カプセルで与えた。霊長類に、5〜7を、経口的に、75μmol/kgで与えた。リガンド5は、霊長類に、胃管栄養法によって、その一ナトリウム塩として与えた。類似体6は、サルに、胃管栄養法によってその一ナトリウム塩として、およびカプセルで、与えた。リガンド7は、サルに、カプセルで与えた。げっ歯類毒性試験用の6および7の薬剤調製は、下記に示す。
【0237】
血漿分析法:
以前に記載されたように、310nmにおいて、Shimadzu SPD−10A UV−VIS検出器を取りつけたDiscovery RP Amide C16 HPLCシステムにおいて、分析的分離を行なった51、58。移動相およびクロマトグラフィー条件は以下の通りであった:移動相A(MPA):25mM KHPO+2.5mM 1−オクタンスルホン酸、pH3(95%)およびアセトニトリル(5%);移動相B(MPB):25mM KHPO+2.5mM 1−オクタンスルホン酸、pH3(40%)およびアセトニトリル(60%)。キレート剤濃度は、Shimadzu CLASS−NP 7.4クロマトグラフィーソフトウエアを使用して、非加重最小二乗線形回帰によって、校正曲線に適合させたピーク面積から算出した。該方法は、0.1μMの検出限界を有し、0.2〜20μMの範囲で再現性であり線形性であった。
【0238】
エチルエステル(7)を、DMSOに溶解し、さらに蒸留水で希釈して、100μM溶液を得た。100μLのラットまたは霊長類血漿を含有する遠心管に、薬剤溶液の25μLアリコートを添加した。ラットまたはサル血漿の代わりに生理食塩水を使用する対照実験も行なった。遠心管をボルテックスし、振とうインキュベーターにおいて37℃で1または2時間インキュベートした。個々の試料を、各種に関して、各時点で処理したことに留意すべきである(合計4試料)。メタノール(400μL)を、インキュベーション時間の終わりに、遠心管に添加して、反応を停止させた。該遠心管を−20℃で少なくとも0.5時間保存した。次に、該遠心管を室温に温めた。試料をボルテックスし、10,000rpmで10分間遠心分離にかけた。上澄み(100μL)を、MPA(1−オクタンスルホン酸は除く、400μL)で希釈し、ボルテックスし、通常通りHPLCにかけた。
【0239】
げっ歯類における、化合物(6)および(7)の毒性評価:
雄Sprague−Dawleyラット(300〜350g)を、一晩絶食させ、朝一番にキレート剤を与えた。ラットに、薬剤後約3時間で餌を与え、一晩絶食させる前に約5時間自由に餌を食べられるようにした。リガンド6は、ラットに、経口的に、毎日1回、384μmol/kg/日x10日の用量で与えた。この用量は、100mg/kg/日のDFTナトリウム塩と同等であることに留意すべきである。キレート剤(6)は、経口的にゼラチンカプセルにおいて(n=5)、またはその一ナトリウム塩として胃管栄養法によって(n=10)投与した。エチルエステル(7)は、経口的に、カプセルにおいて、毎日1回、192(n=6)または384μmol/kg/日(n=5)x10日の用量で投与された。年齢一致ラット(n=12)を非処置対照として使用した。ラットは、薬剤後24時間(11日目)に安楽死させ、広範囲の組織を、組織病理学的分析のために採集した。腎臓、肝臓、心臓および膵臓の試料を保存し、それらの鉄含有量について評価を行なった。
【0240】
げっ歯類組織の鉄含有量を測定するための、げっ歯類組織の調製:
組織調製の初期段階は、あらゆる明らかな膜または脂肪を除去することを含む。各組織の試料(300〜350mg)の重さを量り、酸洗浄加水分解(圧力)管に移した。各組織の同じ領域が常に使用されたことに留意すべきである。濃HNO(65%)(1.5mL)および蒸留水(2mL)を添加した。次に、該管を密閉し、120℃の油浴に5時間置き;該管を必要に応じて脱気した。次に、該管を油浴から出し、室温に冷ました。油浴の温度が100℃に下がった。試料が冷めたら、0.7mLの過酸化水素(30%)を加水分解管に添加した。試料を油浴に戻し、一晩煮沸した。次に、試料を油浴から出し、室温に冷ました。該加水分解管をボルテックスし、消化試料を50mLのメスフラスコに注いだ。蒸留水を用いて試料を多量にした。最後に、試料をシリンジに注ぎ、0.45μ、30mmのTeflonシリンジフィルターを使用して濾過した。鉄濃度を、他の刊行物に示されているフレーム吸光分析によって測定した40、41
【0241】
本発明は、前記の説明および実施例に特に記載されている以外でも実施しうることが明らかである。本開示に関する多くの変更および変形が、前記の教示に照らして可能であり、従って、それらは請求の範囲に含まれる。開示の各態様の好ましい特徴は、必要な変更を加えて、他の各態様にも当てはまる。本明細書に挙げられている特許、特許出願、学術雑誌または他の開示物を包含する文献は、それらの全内容が参照により本明細書に組み入れられる。矛盾がある場合は、明らかな誤りがある場合以外は、本出願の開示が優先される。
【0242】
参考文献
【0243】
【数1】

【0244】
【数2】

【0245】
【数3】

【0246】
【数4】

【0247】
【数5】

【0248】
【数6】

【0249】
【数7】

【0250】
【数8】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化39】

[式中、
は、−[(CH−O]−R’であり;
、RおよびRは、それぞれ独立に、−H、アルキル基、または−ORであり;
は、−H、またはアルキル基であり;
は、−H、アルキル基、O−保護基、またはアシル基であり;
各Rは、独立に、−H、アルキル基、O−保護基、またはアシル基であり;
R’は、−H、アルキル基、O−保護基、またはアシル基であり;
各nは、2であり;
xは、1または2である]
の化合物、またはその塩、溶媒和物あるいは水和物であって、
下記式(II):
【化40】

の化合物でないことを条件とする化合物。
【請求項2】
、RおよびRが、それぞれ独立に、−H、C1〜6アルキル基、または−ORであり;Rが、−H、O−保護基、またはアシル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、RおよびRが、それぞれ独立に、−H、C1〜4アルキル基、または−ORであり;Rが、−H、O−保護基、またはアシル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
xが2であり、R、R、RおよびRが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
、RおよびRがそれぞれ水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
、RおよびRが、それぞれ独立に、−HまたはC1〜4アルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
、RおよびRが、それぞれ独立に、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
、RおよびRが同じである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
、RおよびRが、それぞれ独立に、−ORである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
各Rが水素である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
各RがC1〜4アルキル基である、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
各RがO−保護基である、請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
各Rがアシル基である、請求項9に記載の化合物。
【請求項14】
各Rがアセチル基である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
、RおよびRが同じである、請求項10〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
、RおよびRが水素である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
がO−保護基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
がアシル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
がアセチル基である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
、R、RおよびRが同じである、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
、R、RおよびRが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
xが1であり、R、R、RおよびRが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
R’がC1〜4アルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
R’が、メチル、エチル、プロピルまたはブチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
R’がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
xが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
xが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項29】
xが1であり、R’がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
xが2であり、R’がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項31】
前記化合物が、
【化41】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項32】
前記化合物が、
【化42】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項33】
前記化合物が、
【化43】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項34】
前記化合物が、
【化44】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項35】
前記化合物が、
【化45】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項36】
前記化合物が、
【化46】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項37】
前記化合物が、
【化47】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項38】
前記化合物が固体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項39】
前記化合物が結晶性固体である、請求項1〜38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項40】
鏡像異性体過剰率が90%より高い、請求項1〜38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項41】
鏡像異性体過剰率が95%より高い、請求項1〜38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項42】
鏡像異性体過剰率が98%より高い、請求項1〜38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項43】
鏡像異性体過剰率が99%より高い、請求項1〜38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項44】
請求項1〜43のいずれか1項に記載の塩。
【請求項45】
対イオンがリチウムである、請求項44に記載の塩。
【請求項46】
対イオンがカリウムである、請求項44に記載の塩。
【請求項47】
対イオンがナトリウムである、請求項44に記載の塩。
【請求項48】
対イオンがマグネシウムである、請求項44に記載の塩。
【請求項49】
対イオンがバリウムである、請求項44に記載の塩。
【請求項50】
対イオンがカルシウムである、請求項44に記載の塩。
【請求項51】
下記式:
【化48】

の化合物、またはその塩、溶媒和物あるいは水和物の、固体形態。
【請求項52】
下記式:
【化49】

の化合物、またはその塩、溶媒和物あるいは水和物の、結晶形態。
【請求項53】
鏡像異性体過剰率が80%より高い、請求項51または52に記載の化合物。
【請求項54】
鏡像異性体過剰率が90%より高い、請求項51または52に記載の化合物。
【請求項55】
鏡像異性体過剰率が95%より高い、請求項51または52に記載の化合物。
【請求項56】
鏡像異性体過剰率が98%より高い、請求項51または52に記載の化合物。
【請求項57】
鏡像異性体過剰率が99%より高い、請求項51または52に記載の化合物。
【請求項58】
請求項1〜57のいずれか1項に記載の化合物、および薬学的に許容されうる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項59】
前記医薬組成物が固体形態、例えば錠剤である、請求項51または52のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項60】
被験体における三価金属のキレート化に反応性の病理学的状態を処置する方法であって、治療的または予防的有効量の請求項1〜57のいずれか1項に記載の化合物を、該被験体に投与することを含む方法。
【請求項61】
前記病理学的状態が、前記被験体の組織における前記三価金属の沈着に関連している、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記三価金属が鉄である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記三価金属がアルミニウムである、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記三価金属の沈着が、前記被験体において全体的に生じる、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記三価金属の沈着が、前記被験体において局所的に生じる、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記病理学的状態が、鉄過負荷状態である、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記病理学的状態が、過酸化的組織損傷である、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
前記病理学的状態が、再生不良性貧血である、請求項62に記載の方法。
【請求項69】
前記病理学的状態が、地中海性貧血または鎌状赤血球性貧血である、請求項62に記載の方法。
【請求項70】
前記病理学的状態が、食事性鉄過負荷型である、請求項62に記載の方法。
【請求項71】
前記病理学的状態が、バンツー鉄沈着症である、請求項62に記載の方法。
【請求項72】
前記病理学的状態が、下記から成る群から選択される新生物性疾患または状態である、請求項62に記載の方法:慢性輸液療法、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、真性赤血球増加症、肺腫瘍、頭頚部腫瘍、脳腫瘍、子宮内膜腫瘍、卵巣腫瘍、子宮頸部腫瘍、乳房腫瘍、絨毛上皮腫、精巣腫瘍、前立腺腫瘍、ウィルムス腫瘍、甲状腺腫瘍、副腎腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、結腸腫瘍、カルチノイド、インスリノーマ、骨腫瘍、肉腫および皮膚癌。
【請求項73】
前記病理学的状態が、下記から成る群から選択される前新生物性疾患または状態である、請求項62に記載の方法:光線皮膚炎、X線皮膚炎、タール皮膚炎、ヒ素皮膚炎、狼瘡性皮膚炎、老年性角化症、パジェット病、コンジローム、火傷瘢痕、梅毒性瘢痕、フィステル瘢痕、下腿潰瘍瘢痕、慢性潰瘍、静脈瘤性潰瘍、骨フィステル、直腸フィステル、バレット食道、胃潰瘍、胃炎、胆石症、外陰萎縮症、色素性母斑、ボーエン皮膚症、色素性乾皮症、紅色肥厚症、白斑症、パジェット骨病、外骨腫症、外軟骨腫、線維性骨炎、骨性獅子面症、神経線維腫症、ポリープ症、胞状奇胎、腺腫様増殖、および結節性甲状腺腫。
【請求項74】
前記病理学的状態がヘモクロマトーシスである、請求項62に記載の方法。
【請求項75】
前記病理学的状態が、下記から成る群から選択される神経性または神経変性障害である、請求項62に記載の方法:パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンティングトン病、ニューロフェリチノパチー、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症。
【請求項76】
前記病理学的状態が炎症性障害である、請求項62に記載の方法。
【請求項77】
前記病理学的状態が輸血から生じる、請求項62に記載の方法。
【請求項78】
処置を必要とする被験体における酸化的ストレスを減少させる方法であって、治療有効量の請求項1〜57のいずれか1項に記載の化合物を、該被験体に投与することを含む方法。
【請求項79】
新生物性疾患または前新生物性状態に罹患している被験体を処置する方法であって、治療有効量の請求項1〜57のいずれか1項に記載の化合物を、該被験体に投与することを含む方法。
【請求項80】
インビトロで三価金属をキレート化するかまたは封鎖する方法。
【請求項81】
前記三価金属が鉄である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記三価金属がアルミニウムである、請求項80に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−503160(P2013−503160A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526728(P2012−526728)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/002336
【国際公開番号】WO2011/028255
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(500360769)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】