説明

デッキ材取付金具およびデッキ材取付構造

【課題】デッキ材の動きをある程度許容して、温度変化によるデッキ材の伸縮を吸収し、なおかつデッキ材が無制限には動くことができないようにする。
【解決手段】デッキ材取付金具1を、一枚の金属板を大略2つ折りにし、片方の部分が第一半部3、他の片方の部分が第二半部4を形成し、第一半部3の第一の対向面部5と第二半部4の第二の対向面部12とが互いにほぼ平行な状態で対向される構成のものとする。第一半部3の第一の係止部8が一方のデッキ材24の取付溝25、第二半部4の第二の係止部15が他方のデッキ材24の取付溝25にそれぞれ挿入された状態で、金具1に挿通されたビス23がデッキ材支持材26にねじ込まれることにより、第一および第二の係止部8,15に設けられた食い込み突起9,16が両側のデッキ材24の取付溝25の下面25aに食い込み、デッキ材24を係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベランダ、バルコニー、屋上、公園、遊歩道等においてデッキ床を構成するデッキ材を大引、根太等のデッキ材支持材に取り付けるためのデッキ材取付金具およびデッキ材取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のデッキ材取付構造においては、温度変化によりデッキ材が伸縮するため、デッキ材取付金具でデッキ材をデッキ材支持材に完全に固定することは避けることが好ましい。
【0003】
このため、従来のデッキ材取付金具は、該金具に設けられた係止部でデッキ材を単に上から押さえるだけで、デッキ材をデッキ材支持材に取り付けるようになっており、デッキ材は、デッキ材取付金具の係止部に対し滑ることにより、幅方向および長さ方向に動くことができるようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−264663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、デッキ材は幅方向および長さ方向に基本的に無制限に動き得るようになっていたので、デッキ材の取付位置が本来の位置からずれてしまったり、極端な場合には、デッキ材取付金具からデッキ材が外れてしまう虞があるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、デッキ材の幅方向および長さ方向の動きをある程度許容して、温度変化によるデッキ材の伸縮を吸収し、なおかつデッキ材が幅方向および長さ方向に無制限には動くことができないようにするデッキ材取付金具およびデッキ材取付構造を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるデッキ材取付金具は、
それぞれ側面に長手方向に延びる取付溝を設けられた複数のデッキ材を互いに平行に並んだ状態でデッキ材支持材上に取り付けるデッキ材取付金具において、
一枚の金属板を大略2つ折りにして、折り返し部が当該デッキ材取付金具の下端部を構成し、この折り返し部を境界として片方の部分が第一半部、他の片方の部分が第二半部を構成するようにしてなり、
前記第一半部は、それぞれ上下方向に立ち上がる一対の第一の対向面部と、これらの第一の対向面部間に設けられた、前記金属板が除去されている第一の開放部と、前記一対の第一の対向面部間に掛け渡された湾曲した帯状の第一のビス支持部と、前記第一の対向面部の上端部から折り曲げられて前記第二半部と反対側に突出する第一の係止部と、前記第一の係止部に設けられた下方に突出する第一の係止部食い込み突起とを有し、
前記第二半部は、それぞれ上下方向に立ち上がる一対の第二の対向面部と、これらの第二の対向面部間に設けられた、前記金属板が除去されている第二の開放部と、前記第一のビス支持部より上方または下方において前記一対の第二の対向面部間に掛け渡された湾曲した帯状の第二のビス支持部と、前記第二の対向面部の上端部から折り曲げられて前記第一半部と反対側に突出する第二の係止部と、前記第二の係止部に設けられた下方に突出する第二の係止部食い込み突起とを有し、
前記第一の対向面部と前記第二の対向面部とは互いにほぼ平行な状態で対向されており、
前記第一のビス支持部は、軸方向を上下方向とする円弧状かつ前記第二半部側から見て凸となるように湾曲して、前記第二の開放部へ突出しており、
前記第二のビス支持部は、軸方向を上下方向とする円弧状かつ前記第一半部側から見て凸となるように湾曲して、前記第一の開放部へ突出しており、
前記第一のビス支持部と前記第二のビス支持部との間にビスが挿通されるようになっており、前記第一の係止部が一方の前記デッキ材の前記取付溝、前記第二の係止部が他方の前記デッキ材の前記取付溝にそれぞれ挿入された状態で前記ビスが前記デッキ材支持材にねじ込まれて締め付けられることにより、前記第一および第二の係止部食い込み突起が両側の前記デッキ材の前記取付溝の下面に食い込み、前記デッキ材を前記デッキ材支持材係止するようになっているものである。
【0009】
また、本発明によるデッキ材取付構造は、
それぞれ側面に長手方向に延びる取付溝を設けられた複数のデッキ材を互いに平行に並んだ状態でデッキ材取付金具によりデッキ材支持材上に取り付けるデッキ材取付構造において、
前記デッキ材取付金具は、一枚の金属板を大略2つ折りにして、折り返し部が当該デッキ材取付金具の下端部を構成し、この折り返し部を境界として片方の部分が第一半部、他の片方の部分が第二半部を構成するようにしてなり、
前記第一半部は、それぞれ上下方向に立ち上がる一対の第一の対向面部と、これらの第一の対向面部間に設けられた、前記金属板が除去されている第一の開放部と、前記一対の第一の対向面部間に掛け渡された湾曲した帯状の第一のビス支持部と、前記第一の対向面部の上端部から折り曲げられて前記第二半部と反対側に突出する第一の係止部と、前記第一の係止部に設けられた下方に突出する第一の係止部食い込み突起とを有し、
前記第二半部は、それぞれ上下方向に立ち上がる一対の第二の対向面部と、これらの第二の対向面部間に設けられた、前記金属板が除去されている第二の開放部と、前記第一のビス支持部より上方または下方において前記一対の第二の対向面部間に掛け渡された湾曲した帯状の第二のビス支持部と、前記第二の対向面部の上端部から折り曲げられて前記第一半部と反対側に突出する第二の係止部と、前記第二の係止部に設けられた下方に突出する第二の係止部食い込み突起とを有し、
前記第一の対向面部と前記第二の対向面部とは互いにほぼ平行な状態で対向されており、
前記第一のビス支持部は、軸方向を上下方向とする円弧状かつ前記第二半部側から見て凸となるように湾曲して、前記第二の開放部へ突出しており、
前記第二のビス支持部は、軸方向を上下方向とする円弧状かつ前記第一半部側から見て凸となるように湾曲して、前記第一の開放部へ突出しており、
前記デッキ材取付金具の前記第一のビス支持部と前記第二のビス支持部との間にビスが挿通され、前記第一の係止部が一方の前記デッキ材の前記取付溝、前記第二の係止部が他方の前記デッキ材の前記取付溝にそれぞれ挿入された状態で前記ビスが前記デッキ材支持材にねじ込まれて締め付けられることにより、前記第一および第二の係止部食い込み突起が両側の前記デッキ材の前記取付溝の下面に食い込み、前記デッキ材を前記デッキ材支持材に係止されるものである。
【0010】
本発明においては、ビスを締め付けると、第一および第二の係止部の係止部食い込み突起がデッキ材の取付溝の下面に食い込み、デッキ材を係止するので、デッキ材が幅方向および長さ方向に無制限には動くことができないようにすることができる。
【0011】
その一方、デッキ材の幅方向に関しては、デッキ材取付金具が一枚の金属板を大略2つ折りにしてなるので、温度変化によってデッキ材が伸縮しても、第一の対向面部と第二半部の第二の対向面部との間の間隙の大きさが変化するようにデッキ材取付金具が弾性変形することにより、前記デッキ材の伸縮を吸収することができる。
【0012】
また、デッキ材の長さ方向に関しては、デッキ材取付金具のビスを挿通される部分の該方向の内径をビスの軸径より十分大きくしてビスとの間に遊びを持たせることにより、また第一および第二の軸支持部の弾性変形により、ビスとデッキ材取付金具との間に相対的な動きが可能になるので、温度変化によるデッキ材の伸縮を吸収することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のデッキ材取付金具およびデッキ材取付構造は、デッキ材の幅方向および長さ方向の動きをある程度許容して、温度変化によるデッキ材の伸縮を吸収し、なおかつデッキ材が幅方向および長さ方向に無制限には動くことができないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例におけるデッキ材取付金具を示す斜視図である。
【図2】前記デッキ材取付金具を示す正面図である。
【図3】前記デッキ材取付金具を示す背面図である。
【図4】前記デッキ材取付金具を示す側面図である。
【図5】前記デッキ材取付金具を示す平面図である。
【図6】前記デッキ材取付金具を示す底面図である。
【図7】図2のVII−VII線における断面図である。
【図8】図2のVIII−VIII線における断面図である。
【図9】図2のIX−IX線における断面図である。
【図10】前記デッキ材取付金具にビスを挿入した状態を示す側面図である。
【図11】前記実施例におけるデッキ材の取り付け工程を示す断面図である。
【図12】前記実施例におけるデッキ材の次の取り付け工程を示す断面図である。
【図13】前記実施例における取付作業完了後のデッキ材取付構造を示す断面図である。
【図14】図13のデッキ材取付金具付近を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1〜14は本発明の一実施例を示している。このうち図1〜9は本実施例におけるデッキ材取付金具1を示している。このデッキ材取付金具1は、一枚の鋼鉄、ステンレス鋼、真鍮等の金属板をプレス加工してなり、大づかみに言うと、一枚の金属板を大略2つ折りにして、折り返し部2がデッキ材取付金具1の下端部を構成し、この折り返し部2を境界として片方の部分が第一半部3、他の片方の部分が第二半部4を構成するようにしている。
【0017】
前記折り返し部2は、図4,7,8によく示されるように、下方に行くほど幅が広くなっており、その底部2aは平面状をなしている。
【0018】
前記第一半部3は、一対の第一の対向面部5と、第一の開放部6と、第一のビス支持部7と、第一の係止部8と、第一の係止部食い込み突起9と、一対の第一のデッキ材間隔規定片10と、第一のデッキ材間隔規定片食い込み突起11とを有している。
【0019】
前記一対の第一の対向面部5は、同一平面上にあって、それぞれ矩形状をなすとともに上下方向に立ち上がっている。前記第一の開放部6は、前記金属板が除去されている部分であって、前記一対の第一の対向面部5間の上側および下側にそれぞれ矩形状に設けられている。前記第一のビス支持部7は、湾曲した帯状をなしており、上側および下側の第一の開放部6の間において前記一対の第一の対向面部5間に掛け渡されている。前記第一の係止部8は、第一の対向面部5の上端部から直角に折り曲げられて第二半部4と反対側に突出されており、全体として矩形状をなしている。前記第一の係止部8の先端側は下方に折り曲げられており、この折り曲げ部分の下端部に、連続する三角歯状の前記第一の係止部食い込み突起9が設けられている。前記一対の第一のデッキ材間隔規定片10は、それぞれ各第一の対向面部5の外側の側端部から第二半部4と反対側に斜めに折り曲げられて設けられており、これらの第一のデッキ材間隔規定片10の先端部に、連続する三角歯状の前記第一のデッキ材間隔規定片食い込み突起11がそれぞれ設けられている。
【0020】
前記第二半部4は、一対の第二の対向面部12と、第二の開放部13と、第二のビス支持部14と、第二の係止部15と、第二の係止部食い込み突起16と、一対の第二のデッキ材間隔規定片17と、第二のデッキ材間隔規定片食い込み突起18を有している。
【0021】
前記一対の第二の対向面部12は、同一平面上にあって、それぞれ矩形状をなすとともに上下方向に立ち上がっている。前記第二の開放部13は、前記金属板が除去されている部分であって、前記一対の第二の対向面部12間の下側に矩形状に設けられている。前記第二のビス支持部14は、湾曲した帯状をなしており、第二の開放部13および第一のビス支持部7より上方において前記一対の第二の対向面部12間に掛け渡されている。前記第二の係止部15は、第二の対向面部12の上端部から直角に折り曲げられて第一半部3と反対側に突出されており、全体として矩形状をなしている。前記第二の係止部15の先端側は下方に折り曲げられており、この折り曲げ部分の下端部に、連続する三角歯状の前記第二の係止部食い込み突起16が設けられている。前記一対の第二のデッキ材間隔規定片17は、それぞれ各第二の対向面部12の外側の側端部から第一半部3と反対側に斜めに折り曲げられて設けられており、これらの第二のデッキ材間隔規定片17の先端部に、連続する三角歯状の前記第二のデッキ材間隔規定片食い込み突起18がそれぞれ設けられている。
【0022】
デッキ材取付金具1が外力を作用されておらず、自由な状態では、前記第一の対向面部5と前記第二の対向面部12とは互いに平行な状態で間隙20を介して対向されている。前記第一のビス支持部7は、軸方向を上下方向とする円弧状かつ前記第二半部4側から見て凸となるように湾曲されて、前記第二の開放部13へ突出している。前記第二のビス支持部14は、軸方向を上下方向とする円弧状かつ前記第一半部3側から見て凸となるように湾曲されて、前記第一の開放部6へ突出している。この第二のビス支持部14の上端14aは第一および第二の係止部8,15の上面と面一とされている。
【0023】
図1,5,6によく示されるように、前記第一の係止部8の第二の係止部15側の端部の中央部には半円状の凹部21が設けられており、この凹部21は第二のビス支持部14の上端14aを内部に受け入れて、第一の係止部8と第二のビス支持部14とが干渉しないようにしている。前記第二の係止部15の第一の係止部8側の端部の中央部には、第一のビス支持部7の直上に位置するようにして、半円状の凹部22が設けられている。
【0024】
前記第二のビス支持部14と凹部22および第一のビス支持部7との間には、ビス23が挿通されるようになっている。このビス23を挿通される部分は、ビス23が回転されることなく挿入されたときは、ビス23の雄ねじ部23aが該部分のいずれかの箇所に引っ掛かり、図10に示されるように、ビス23の先端が当該デッキ材取付金具の底部(折り返し部2の底部2a)に届かない状態となる一方、ビス23が締め付け方向に回転されると、該ビス23は下降して行き、デッキ材取付金具1を突き抜けるように構成されている。より詳しく言うと、前記凹部22並びに第一および第二のビス支持部7,14の内周の位置および内径の大きさは、第二のビス支持部14と凹部22との間にビス23が回転されることなく挿入されたときは、ビス23の雄ねじ部23aが第二のビス支持部14、凹部22および第一のビス支持部7のいずれか1箇所以上に引っ掛かり、ビス23の先端がデッキ材取付金具1の底部2aまで届いていない状態となる一方、ビス23が締め付け方向に回転されると、該ビス23は下降して行き、デッキ材取付金具1の底部2aを突き抜けるように定められている。
【0025】
次に、図11〜14を用いて、本実施例におけるデッキ材24の取り付け工程およびデッキ材取付構造を説明する。デッキ材24は、木粉と樹脂を混合してなる人工木材からなり、全体に中空状で、図における紙面に垂直な方向に長く延びる縦長の形状をなしており、両側面24aに長手方向に延びる断面矩形状の取付溝25を設けられている。なお、本発明において、デッキ材24の材質は、本実施例のような木粉と樹脂を混合してなる人工木材に限定されることはなく、木材、樹脂、金属等の他の材質であってもよい。
【0026】
図11〜14は、本実施例におけるデッキ材24の取り付け工程を示している。まず、第二のビス支持部14と凹部22との間にビス23を回転させることなく挿入し、図10に示されるように、ビス23の雄ねじ部23aが第二のビス支持部14、凹部22および第一のビス支持部7のいずれか1箇所以上に引っ掛かり、ビス23の先端がデッキ材取付金具1の底部(折り返し部2の底部2a)まで届いていない状態でデッキ材取付金具1にくっついている状態とする。
【0027】
次に、このようにビス23が付いている状態のまま、デッキ材取付金具1の第一の係止部8を先行のデッキ材24の取付溝25に挿入するとともに、図11のように該先行のデッキ材24を大引、根太等のデッキ材支持材26上の所定の位置に載置する(なお、デッキ材支持材26は木材、人工木材または鋼鉄等の金属等からなる)。この際、もしデッキ材取付金具1に第一の係止部食い込み突起9が設けられていないとすると、第一の係止部8がデッキ材24の取付溝25の下面25a上を滑って、デッキ材取付金具1がデッキ材24の取付溝25から脱落してしまい易いが、このデッキ材取付金具1では、第一および第二係止部食い込み突起9,16が設けられており、係止部食い込み突起9が取付溝25の下面25aに引っ掛かかるため、デッキ材取付金具1がデッキ材24の取付溝25から脱落してしまう虞を防止できる。
【0028】
続いて、図12に示されるように、後続のデッキ材24を、前記先行のデッキ材24の隣に載置し、第一のデッキ材間隔規定片食い込み突起11が先行のデッキ材24の側面24aに、第二のデッキ材間隔規定片食い込み突起18が後続のデッキ材24の側面24aにそれぞれ当接されるとともに、第二の係止部15が後続のデッキ材24の取付溝25に挿入され、第一の係止部食い込み突起9が先行のデッキ材24の取付溝25の下面25a、第二の係止部食い込み突起16が後続のデッキ材24の取付溝25の下面25aにそれぞれ当接されるようにする。
【0029】
なお、このとき、必要であれば、作業者はビス23の頭部23bを指でつまんで、ビス23とともにデッキ材取付金具1を動かして、デッキ材取付金具1の位置を調整することができる。
【0030】
また、図12の状態においては、デッキ材取付金具1の底部(折り返し部2の底部2a)はデッキ材支持材26の上面からわずかな距離だけ浮いた状態となっている。
【0031】
次に、ビス23を締め付け方向に回転すると、ビス23は下降して行き、デッキ材取付金具1の底部2aを突き抜け、デッキ材支持材26に侵入して行くので、デッキ材取付金具1を介して先行および後続のデッキ材24を締め付けることができる。これにより、第一および第二の係止部食い込み突起9,16が両側のデッキ材24の取付溝25の下面25aにそれぞれ食い込み、隣り合うデッキ材24がデッキ材支持材26に係止され、デッキ材取付金具1の底部2aはデッキ材支持材26の上面に当接される。図13は本実施例における取付作業完了後のデッキ材取付構造を示す断面図、図14は図13のデッキ材取付金具付近を示す拡大断面図である。このようにして、隣り合うデッキ材24が、互いの間の間隔(目地幅)Wを第一および第二のデッキ材間隔規定片17で規定されて、互いに平行に並んだ状態でデッキ材支持材26上に取り付けられる。
【0032】
以下同様にして、次々とデッキ材24を互いに平行に並んだ状態でデッキ材支持材26上に取り付けることができる。
【0033】
このデッキ材取付金具1およびデッキ材取付構造においては、第一および第二の係止部8,15の係止部食い込み突起9,16がデッキ材24の取付溝25の下面25aに食い込み、デッキ材24を係止するので、デッキ材24が幅方向および長さ方向に無制限には動くことができないようにすることができる。
【0034】
その一方、デッキ材24の幅方向(図13,14における左右方向)に関しては、デッキ材取付金具1が一枚の金属板を大略2つ折りにしてなり、第一半部3の第一の対向面部5と第二半部4の第二の対向面部12との間に間隙20が設けられているので、温度変化によってデッキ材24が伸縮しても、図13,14の矢印で示すように間隙20の大きさが変化するようにデッキ材取付金具1が弾性変形することにより、前記デッキ材24の伸縮を吸収することができる。
【0035】
また、デッキ材24の長さ方向(図13,14における紙面に垂直な方向)に関しては、ビス23を挿通される部分、すなわち凹部22並びに第一および第二のビス支持部7,14の該方向の内径をビス23の軸径より十分大きくしてビス23との間に遊びを持たせることにより、また第一および第二のビス支持部7,14の弾性変形により、ビス23とデッキ材取付金具1との間に相対的な動きが可能になるので、温度変化によるデッキ材24の伸縮を吸収することができる。
【0036】
なお、デッキ材24の幅方向に関しては、ビス23を挿通される部分の該方向の内径をビス23の軸径より十分大きくしてビス23との間に遊びを持たせても、温度変化によるデッキ材24の伸縮を基本的には吸収することができない。この方向に関しては、デッキ材取付金具1は温度変化に基づくデッキ材24の伸縮により両側のデッキ材24から互いに反対向きの力を作用されるからである。他方、デッキ材24の長さ方向に関しては、デッキ材取付金具1は温度変化に基づくデッキ材24の伸縮により両側のデッキ材24から同じ向きの力を作用されるので、前述のようにビス23を挿通される部分の該方向の内径をビス23の軸径より十分大きくしてビス23との間に遊びを持たせることにより、温度変化によるデッキ材24の伸縮を吸収することができるのである。
【0037】
また、本実施例においては、各第一の対向面部5の外側の側端部から第二の対向面部12と反対側に斜めに折り曲げられた第一のデッキ材間隔規定片10と、各第二の対向面部12の外側の側端部から第一の対向面部5と反対側に斜めに折り曲げられた第二のデッキ材間隔規定片17とが設けられているので、第一および第二のデッキ材間隔規定片10,17の先端が隣り合うデッキ材24の側面24aに当接されるようにすることにより、隣り合うデッキ材24間の間隔Wを容易に所定の大きさに規定することができる。
【0038】
また、必要に応じて、製造時、第一および第二の対向面部5,12に対する第一および第二のデッキ材間隔規定片10,17の曲げ角度を調整するだけで、同一の金具1により、隣り合うデッキ材24間の間隔Wの規定値を種々に変えることができる。
【0039】
また、本実施例においては、第一および第二のデッキ材間隔規定片10,17の先端部にそれぞれデッキ材間隔規定片食い込み突起11,18が設けられているので、これらの食い込み突起11,18がデッキ材24の側面24aに食い込むことによっても、デッキ材取付金具1によりデッキ材24を係止し、より確実にデッキ材24が幅方向および長さ方向に無制限には動くことができないようにすることができる。
【0040】
また、本実施例においては、前述のようにデッキ材取付金具1のうちのビス23を挿通される部分は、ビス23が回転されることなく挿入されたときは、ビス23の雄ねじ部23aが該部分のいずれかの箇所に引っ掛かり、ビス23の先端が当該デッキ材取付金具の底部(折り返し部2の底部2a)に届かないように構成されているので、前述のようにビス23を締め付ける前に、ビス23の先端がデッキ材支持材26の上面に引っ掛かることなく、ビス23を挿入した状態のままデッキ材取付金具1をデッキ材支持材26上を滑らせて、デッキ材取付金具1の位置を容易に調整できる。
【0041】
また、隣り合うデッキ材24間の間隔Wは、女性歩行者のハイヒールの踵がデッキ材24間にはまり込んでしまうのを防止する等の理由により、小さくする必要がある。このため、それに伴ってビス23の頭部23bの径も小さくする必要がある。したがって、もし仮に第二のビス支持部14の上端14aが第二の係止部15の上面より下方に位置するようにすると、ビス23の頭部23bが凹部21および22の間を突き抜けて第一および第二の対向面部5,12間に食い込んで、第一および第二の対向面部5,12間を広げてしまう虞があるが、本実施例では、第二のビス支持部14の上端14aが第二の係止部15の上面と面一とされているので、ビス23の頭部23bの座面がいずれも第二半部4に属する第二の係止部15の上面と第二のビス支持部14の上端14aとで受けられるため、上述のような不都合が生じる虞を確実に防止できる。
【0042】
なお、前記実施例においては、第一半部3が先行のデッキ材24側、第二半部4が後続のデッキ材24側に位置するようにしているが、本発明においては、勿論、逆に第二半部4が先行のデッキ材24側、第一半部3が後続のデッキ材24側に位置するようにしてしてもよい。
【0043】
また、本発明においては、第一および第二の係止部食い込み突起並びに第一および第二のデッキ材間隔規定片食い込み突起は、必ずしも本実施例のように連続する三角歯状ではなく、他の形状の突起としてもよい。
【0044】
また、前記実施例においては、デッキ材取付金具1が自由な状態では、第一の対向面部5と第二の対向面部12との間に間隙20が設けられるようにしているが、本発明においては、場合によっては、デッキ材取付金具が外力を作用されていない自由な状態では第一の対向面部と第二の対向面部との間に間隙が生じないようにしてもよい。この場合、第一の対向面部と第二の対向面部との間に間隙が存在しない状態において両側のデッキ材が温度変化により膨張しようとした場合、デッキ材取付金具はその膨張を吸収できないが、この場合はデッキ材の取付位置が本来の位置からずれてしまったり、デッキ材取付金具からデッキ材が外れてしまう向きではないので、膨張を吸収しなくてもよい場合もあるからである。ただし、本実施例の場合のように、デッキ材取付金具が自由な状態では第一の対向面部と第二の対向面部との間に間隙が設けられるようにしておけば、デッキ材の膨張および収縮の両方をデッキ材取付金具に吸収させることができるので、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように本発明によるデッキ材取付金具およびデッキ材取付構造は、ベランダ、バルコニー、屋上、公園、遊歩道等においてデッキ床を構成するデッキ材を大引、根太等のデッキ材支持材に取り付けるためのデッキ材取付金具およびデッキ材取付構造として有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 デッキ材取付金具
2 折り返し部
2a 折り返し部の底部(デッキ材取付金具の底部)
3 第一半部
4 第二半部
5 第一の対向面部
6 第一の開放部
7 第一のビス支持部
8 第一の係止部
9 第一の係止部食い込み突起
10 第一のデッキ材間隔規定片
11 第一のデッキ材間隔規定片食い込み突起
12 第二の対向面部
13 第二の開放部
14 第二のビス支持部
14a 第二のビス支持部の上端
15 第二の係止部
16 第二の係止部食い込み突起
17 第二のデッキ材間隔規定片
18 第二のデッキ材間隔規定片食い込み突起
20 間隙
21,22 凹部
23 ビス
23a ビスの雄ねじ部
23b ビスの頭部
24 デッキ材
24a デッキ材の側面
25 取付溝
25a 取付溝の下面
26 デッキ材支持材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ側面に長手方向に延びる取付溝を設けられた複数のデッキ材を互いに平行に並んだ状態でデッキ材支持材上に取り付けるデッキ材取付金具において、
一枚の金属板を大略2つ折りにして、折り返し部が当該デッキ材取付金具の下端部を構成し、この折り返し部を境界として片方の部分が第一半部、他の片方の部分が第二半部を構成するようにしてなり、
前記第一半部は、それぞれ上下方向に立ち上がる一対の第一の対向面部と、これらの第一の対向面部間に設けられた、前記金属板が除去されている第一の開放部と、前記一対の第一の対向面部間に掛け渡された湾曲した帯状の第一のビス支持部と、前記第一の対向面部の上端部から折り曲げられて前記第二半部と反対側に突出する第一の係止部と、前記第一の係止部に設けられた下方に突出する第一の係止部食い込み突起とを有し、
前記第二半部は、それぞれ上下方向に立ち上がる一対の第二の対向面部と、これらの第二の対向面部間に設けられた、前記金属板が除去されている第二の開放部と、前記第一のビス支持部より上方または下方において前記一対の第二の対向面部間に掛け渡された湾曲した帯状の第二のビス支持部と、前記第二の対向面部の上端部から折り曲げられて前記第一半部と反対側に突出する第二の係止部と、前記第二の係止部に設けられた下方に突出する第二の係止部食い込み突起とを有し、
前記第一の対向面部と前記第二の対向面部とは互いにほぼ平行な状態で対向されており、
前記第一のビス支持部は、軸方向を上下方向とする円弧状かつ前記第二半部側から見て凸となるように湾曲して、前記第二の開放部へ突出しており、
前記第二のビス支持部は、軸方向を上下方向とする円弧状かつ前記第一半部側から見て凸となるように湾曲して、前記第一の開放部へ突出しており、
前記第一のビス支持部と前記第二のビス支持部との間にビスが挿通されるようになっており、前記第一の係止部が一方の前記デッキ材の前記取付溝、前記第二の係止部が他方の前記デッキ材の前記取付溝にそれぞれ挿入された状態で前記ビスが前記デッキ材支持材にねじ込まれて締め付けられることにより、前記第一および第二の係止部食い込み突起が両側の前記デッキ材の前記取付溝の下面に食い込み、前記デッキ材を前記デッキ材支持材係止するようになっているデッキ材取付金具。
【請求項2】
外力を作用されておらず、自由な状態では、前記第一の対向面部と前記第二の対向面部とは間隙20を介して対向されている請求項1に記載のデッキ材取付金具。
【請求項3】
前記第一の係止部の先端側は下方に折り曲げられていて、この折り曲げ部分の下端部に前記第一の係止部食い込み突起が設けられており、
前記第二の係止部の先端側は下方に折り曲げられていて、この折り曲げ部分の下端部に前記第二の係止部食い込み突起が設けられている請求項1または2に記載のデッキ材取付金具。
【請求項4】
各前記第一の対向面部の外側の側端部から前記第二の対向面部と反対側に斜めに折り曲げられた第一のデッキ材間隔規定片と、
各前記第二の対向面部の外側の側端部から前記第一の対向面部と反対側に斜めに折り曲げられた第二のデッキ材間隔規定片とをさらに有し、
前記第一および第二のデッキ材間隔規定片の先端が前記デッキ材の側面に当接されて、隣り合う前記デッキ材間の間隔を規定するようになっている請求項1,2または3に記載のデッキ材取付金具。
【請求項5】
前記第一および第二のデッキ材間隔規定片の先端部にそれぞれ設けられたデッキ材間隔規定片食い込み突起をさらに有している請求項4記載のデッキ材取付金具。
【請求項6】
前記第一および第二のビス支持部を含む、前記ビスを挿通される部分は、前記ビスが回転されることなく挿入されたときは、前記ビスの雄ねじ部が該部分のいずれかの箇所に引っ掛かり、前記ビスの先端が当該デッキ材取付金具の底部に届かない一方、前記ビスが締め付け方向に回転されると、該ビスは下降して行き、当該デッキ材取付金具を突き抜けるように構成されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデッキ材取付金具。
【請求項7】
前記第一の係止部の第二の係止部側の端部に設けられ凹部と、
前記第二の係止部の前記第一の係止部側の端部に設けられており、前記ビスが挿通される凹部とをさらに有し、
前記第二のビス支持部の上端が第二の係止部の上面と面一とされるとともに、前記第一の係止部の前記凹部は前記第二のビス支持部の上端を内部に受け入れており、前記ビスの頭部の座面が前記第二の係止部の上面と前記第二のビス支持部の上端とで受けられるようになっている請求項1乃至6のいずれか1項に記載のデッキ材取付金具。
【請求項8】
それぞれ側面に長手方向に延びる取付溝を設けられた複数のデッキ材を互いに平行に並んだ状態でデッキ材取付金具によりデッキ材支持材上に取り付けるデッキ材取付構造において、
前記デッキ材取付金具は、一枚の金属板を大略2つ折りにして、折り返し部が当該デッキ材取付金具の下端部を構成し、この折り返し部を境界として片方の部分が第一半部、他の片方の部分が第二半部を構成するようにしてなり、
前記第一半部は、それぞれ上下方向に立ち上がる一対の第一の対向面部と、これらの第一の対向面部間に設けられた、前記金属板が除去されている第一の開放部と、前記一対の第一の対向面部間に掛け渡された湾曲した帯状の第一のビス支持部と、前記第一の対向面部の上端部から折り曲げられて前記第二半部と反対側に突出する第一の係止部と、前記第一の係止部に設けられた下方に突出する第一の係止部食い込み突起とを有し、
前記第二半部は、それぞれ上下方向に立ち上がる一対の第二の対向面部と、これらの第二の対向面部間に設けられた、前記金属板が除去されている第二の開放部と、前記第一のビス支持部より上方または下方において前記一対の第二の対向面部間に掛け渡された湾曲した帯状の第二のビス支持部と、前記第二の対向面部の上端部から折り曲げられて前記第一半部と反対側に突出する第二の係止部と、前記第二の係止部に設けられた下方に突出する第二の係止部食い込み突起とを有し、
前記第一の対向面部と前記第二の対向面部とは互いにほぼ平行な状態で対向されており、
前記第一のビス支持部は、軸方向を上下方向とする円弧状かつ前記第二半部側から見て凸となるように湾曲して、前記第二の開放部へ突出しており、
前記第二のビス支持部は、軸方向を上下方向とする円弧状かつ前記第一半部側から見て凸となるように湾曲して、前記第一の開放部へ突出しており、
前記デッキ材取付金具の前記第一のビス支持部と前記第二のビス支持部との間にビスが挿通され、前記第一の係止部が一方の前記デッキ材の前記取付溝、前記第二の係止部が他方の前記デッキ材の前記取付溝にそれぞれ挿入された状態で前記ビスが前記デッキ材支持材にねじ込まれて締め付けられることにより、前記第一および第二の係止部食い込み突起が両側の前記デッキ材の前記取付溝の下面に食い込み、前記デッキ材を前記デッキ材支持材に係止されるデッキ材取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−236601(P2011−236601A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107783(P2010−107783)
【出願日】平成22年5月8日(2010.5.8)
【出願人】(595042944)有限会社ユース北浦 (14)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100076266
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 泉
【Fターム(参考)】