説明

デッキ連結具、デッキ材、デッキ構造、デッキ組み立て方法およびデッキフロア

【課題】高品質で、水はけがよく、安全で、耐久性に富み、かつ、組み立てが容易な、木質系のデッキフロアを実現すること。
【解決手段】隣接するデッキ材(100a,100b)の側面に設けられている嵌合溝(112,110)に、デッキ材連結具(ジョイント)の係止部(d,c)を嵌合させると共に、規制爪(e)にてデッキ材100aの位置決めをする。規制爪(e)は、作業時の圧力では降伏しないが、デッキ材の吸水による膨張圧力では降伏し、応力を吸収する。また、雨水を下に落とすための入り組んだ構造の隙間(流路)も自動的に構築され、かつ、突出片(114)によって、コインの落下も防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキ連結具、デッキ材、デッキ構造、デッキ組み立て方法およびデッキフロアに関し、特に、屋外で使用される、木質系材料(純粋な木質材料の他、木材と合成樹脂を混合した木質合成材を含む)で構成されるデッキ材を、連結具(ジョイント)を用いて相互に接続固定して、デッキフロアを構築するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
木粉と合成樹脂の混合体を成型して得られる木質合成材は、防水性、耐火性を備えると共に、温かみのある木質系の質感をもつという特徴がある。このようなデッキ材は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、連結金具(ジョイント)を用いて、隣接するデッキ材同士を連結具(ジョイント)を用いて固定したデッキ構造は、例えば、特許文献2.特許文献3に記載されている。
【特許文献1】特開2002−227291号公報
【特許文献2】特開2001−271417号公報
【特許文献3】特開2003−49526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2記載のデッキ構造では、連結具(ジョイント)を根太材にビス(ネジ)で固定すると共に、デッキ材もその連結具(ジョイント)にビス(ネジ)で固定している。デッキ材の固定もビス(ネジ)で行うため、デッキ材の組立にある程度の手間がかかるのは否めない。
【0005】
また、特許文献2記載のデッキ構造では、略T字型の断面をもつ連結具(ジョイント)の横方向に突出した係止部を、デッキ材の側面に設けられた嵌合溝に嵌合させてデッキ同士を連結しており、この点では、デッキ材の組み立ての作業性は改善される。
【0006】
ただし、このデッキ構造では、隣接するデッキ材同士の離間間隔が連結具(ジョイント)の厚みで一律に規定されてしまい、離間間隔の設定の自由度が少ない点は否めない。例えば、雨水を下に効率的に落とすために、デッキ材同士を十分に離間させたいような場合には、対応がむずかしくなる場合がないとは言えない。また、仮に、デッキ材同士を十分な間隔を保って離間させることができた場合でも、今度は、デッキ材の隙間から、コイン(例えば、100円玉)等が下に落ちてしまうことも想定され、このための対策も新たに必要となる。
【0007】
また、特許文献1および特許文献2は、木質系デッキ材が雨水等の吸水によって、その体積が膨張したとき、その膨張圧力をどのようにして逃がすかについては、何ら言及がない。本発明の発明者の検討によれば、吸水によるデッキ材の体積は相当に増加し、その際の膨張圧力は、例えば、600kgf(f:force)にも及ぶことが明らかとなっている。デッキ材の吸水による膨張圧力を適切に吸収(緩和)できなければ、最悪の場合、デッキ材自体が破壊される事態も生じ得る。
【0008】
本発明はこのような考察に基づいてなされたものであり、その目的は、高品質で、水はけがよく、安全で、耐久性に富み、かつ、組み立てが容易な、木質系のデッキフロアを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のデッキ連結具は、デッキ材同士を連結するためのデッキ連結具であって、根太材に固定される固定部と、この固定部から略垂直に立ち上がる縦条部と、この縦条部の先端の一部を、一方向に略水平に折り曲げた形状の第1の係止部と、前記縦条部の先端の他部を前記第1の係止部とは反対方向に折り曲げた形状の第2の係止部と、前記固定部(a)に連接し、かつ傾斜して立ち上がり、その先端部によってデッキ材の位置を規制する機能をもつ規制爪と、を、有する。
【0010】
この構成によれば、デッキ材連結具に規制爪が設けられることによって、デッキフロアの組立作業時には、隣接するデッキ材同士の位置決めを、極めて容易に行うことができる。したがって、熟練の作業者でなくても組み立てができ、組み立て作業の作業効率も向上する。
【0011】
また、本発明のデッキ連結具の一態様では、前記規制爪は、前記デッキ材の組み立て時の作業圧力によっては降伏せず、前記デッキ材の吸水による膨張に起因する膨張圧力によっては降伏し得る特性を有する。
【0012】
デッキ連結具の規制爪は、通常の作業圧力(50〜60kgf:500〜600N)には降伏しない。したがって、通常作業時には、この規制爪の存在によって、隣接するデッキ材の奥深くへの侵入が禁止され、適正な位置合わせを迅速かつ容易に行うことができる。また、雨水を下に落とすための隙間(流路)も確実に確保することができる。一方、デッキの吸水による膨張圧力(例えば、600kgf:6000N)には、規制爪は降伏して、傾斜している爪が反対方向に向けて変形し、その膨張圧力を吸収する。したがって、デッキ材が破壊に至ることがなく、デッキ材の信頼性、安全性が向上する。
【0013】
また、本発明のデッキ材では、本発明のデッキ材連結具における前記第1または第2の係止部と嵌合する嵌合溝が、第1の側面と、この第1の側面の反対側の第2の側面に設けられており、かつ、木質系材料からなる。
【0014】
この構成によれば、デッキ材の側面に設けられた嵌合溝に、デッキ連結具の第1および第2の係止部を嵌合することによって、デッキ材同士を効率的に連結することができる。
【0015】
また、本発明のデッキ材の一態様では、隣接するデッキ材同士を連結した場合に、水を下に落とすための隙間が形成される。
【0016】
デッキ材同士の接続部に、雨水等を下に落とすための隙間(流路)を形成するものであり、これによって、水はけをよくすることができる。また、この隙間(流路)の形成は、デッキ連結具の規制片によるデッキ材の位置決めによって、自動的に行うことができるため、組み立て作業に精通した熟練の作業者でなくても、適正な隙間(流路)を形成することができる。
【0017】
また、本発明のデッキ材の他の態様では、隣接するデッキ材同士を連結した場合に、それらのデッキ材の接続部の下側に、排水路が形成される。
【0018】
この構成によって、下に落ちた雨水等を、その排水路を経由して効率的に排出することが可能である。
【0019】
また、本発明のデッキ材の他の態様では、前記隣接するデッキ材同士の接続部に形成される前記水を下に落とすための隙間は、入り組んだ形状の流路を形成しており、これによって、前記隙間へのコインの落下が防止される。
【0020】
水を下に落とすための隙間が単純な形状の溝であれば、その隙間からコイン等が落ち込むことが想定されるため、入り組んだ構造の隙間(流路)として、コイン等の落下を確実に防止するものである。
【0021】
また、本発明のデッキ材の他の態様では、このデッキ材の前記第1の側面と第2の側面の断面形状は同じではなく、前記第1の側面は、そのデッキ材の上端部よりも内側に後退した側面をもつと共に、その後退した側面において前記嵌合溝が形成されており、一方、前記第2の側面は、前記デッキ材の上端部よりも外側に突出する2つの突出片をもち、その2つの突出片は上下の位置関係をもって配置され、その2つの突出片に挟まれて前記嵌合溝が形成され、また、前記2つの突出片のうちの上側に位置する突出片がコイン落下防止用の突出片として機能し、また、下側に位置する突出片の下には、側面を内側に大きく後退させることによって切り欠き部が形成されており、かつ、第1のデッキ材の前記第1の側面と、この第1のデッキ材に隣接する第2のデッキ材の前記第2の側面と、を、請求項1または請求項2記載のデッキ連結具を挟んで対向させ、そのデッキ連結具を根太材に固定すると共に、その第1および第2の側面に設けられている嵌合溝に、前記デッキ連結具の第1および第2の係止部を嵌合させ、この際、前記デッキ材連結具の規制爪で一方のデッキ材の位置を規制し、これによって、前記隣接する第1および第2のデッキ材同士を連結した場合には、前記水を下に落とすための入り組んだ隙間が形成され、前記コイン落下防止用の突出片によってコイン落下が防止され、また、前記切り欠き部によって前記排水路が形成される。
【0022】
一つのデッキ材の左右の側面の構造が同じではなく、各々の側面が巧みに工夫された凹凸形状を有している。すなわち、隣接する一方のデッキ材の側面は内側に後退しており、他方のデッキ材の側面は、一方のデッキの側面の後退に対応するように突出した突出片をもち、かつ、その突出片の下側には切り欠きが設けられており、したがって、隣接するデッキ材同士が連結された状態では、入り組んだ隙間(流路)が形成されることになる。また、上側の突出片がコイン落下を防止し、切り欠き部分が、落ちた雨水等を排出するための排水路を形成する。したがって、このデッキ材を使用することによって、雨水等を下に落とすための隙間(流路)の形成と、コイン等の落下防止と、下に落ちた雨水等の効率的な排出と、を同時に達成することができる。
【0023】
また、本発明のデッキ構造は、根太材上に固定されたデッキ材連結具の前記第1および第2の係止部の各々に対して、隣接する2つのデッキ材の側面の前記嵌合溝を嵌合させ、この際、前記デッキ材連結具の規制爪で一方のデッキ材の位置を規制し、これによって、各デッキ材の接続部分において、水を下に落とすための隙間を構築しつつ、デッキ材同士を連結した構造をもつ。
【0024】
この構造によれば、デッキ材連結具に規制爪が備わることによって、作業時におけるデッキ材の位置決めが容易化され、また、木質系デッキ材の吸水によって膨張圧力(破壊圧力)が生じるときは、規制爪が降伏してその圧力(応力)を逃がすため、デッキ材の破壊を確実に防止することができ、また、雨水等を下に落とすための隙間(流路)も容易に構築することができるため、水はけをよくすることができる。
【0025】
また、本発明のデッキ構造の一態様では、前記隣接する2つのデッキ材の接続部の下側には排水路が形成される。
【0026】
この構造によれば、下に落ちた雨水等を、排水路を経由して効率的に外部に排出することができる。
【0027】
また、本発明のデッキ構造の他の態様では、前記隣接するデッキ同士の接続部の上側では、コイン落下防止用の突出片が張り出し、これによって、コインの落下が防止される。
【0028】
コイン落下用の突出片の張り出しによって、コインが、雨水等を下に落とす隙間(流路)から下に落下することが確実に防止される。
【0029】
また、本発明のデッキ構造の組み立て方法は、デッキ連結具を用いてデッキ材同士を連結してデッキ構造を構築するデッキ構造の組み立て方法であって、デッキ材連結具の固定部を、根太材に固定する第1の工程と、前記デッキ材連結具の第1および第2の係止部に対して、デッキ材の側面の前記嵌合溝を合わせて押し込み、嵌合させる第2の工程と、前記第1および第2の工程を繰り返すことによって連結された一連のデッキ材の終端にあたる部分を根太材に固定する第3の工程と、を含む。
【0030】
デッキ構造の組み立て作業時には、デッキ材を押し込んで、側面の嵌合溝をデッキ連結具の係止部に嵌合させるだけでよく、これによって、デッキ材の適正な位置決めと、吸水による膨張圧力からの保護と、雨水等を下に落とすための、入り組んだ形状をもつ隙間(流路)の形成と、接続部の底部における排水路の構築と、を同時に実現することができ、作業者の熟練は不要である。
【0031】
また、本発明のデッキフロアは、本発明のデッキ構造の組み立て方法を用いて、複数個のデッキ材を二次元に配置して構築される。
【0032】
これにより、屋外の設置に適した、木質系の落ち着いた質感をもち、水はけがよく、吸水膨張による破壊がなく高信頼度かつ安全な、高品質のデッキフロア(例えば、ガーデニング用デッキ、遊歩道や公園施設等のデッキあるいはベランダのデッキ等)を、効率的に、安価に構築することが可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、特に、一つのデッキ材と、連結具と、隣のデッキ材とが係合する部分の構造に工夫が凝らされており(すなわち、一つのデッキ材の左右の側面の形状が同じではなく、各々を最適な形状としており)、また、規制爪を備える連結具(ジョイント)を使用しており、これらによって、以下の主要な効果を得ることができる。
(1)連結具(ジョイント)の規制爪によって、デッキ材同士の間隔を適正に保つことができ、水が、デッキの下側に流れ落ちるための流路が確実に確保されるため、水はけがよい。
(2)作業者の熟練に頼ることなく簡単に、上記(1)のデッキフロアを構築できるため、デッキ組立の作業効率が向上する。
(3)雨水等の吸水によって木質系デッキ材が膨張して過剰な圧力が加わったときは、連結具(ジョイント)の規制爪が降伏して、その圧力を効果的に吸収するため、デッキ材の破壊が生じることがなく、よって、安全性、信頼性が向上する。
(4)雨水の流路を構成するデッキ材の一部が、コイン等の落下を防止する突条(落下阻止片)としても機能するため、デッキ材同士の間隔を適正に保って上記(1)の効果を得ると同時に、コインがデッキ下に落ちることを効果的に防止でき、したがって、利用者の基本的な利便性が向上する。
(5)デッキ材同士の接続部分の下部には、デッキ材の幅方向(接続方向とは垂直な方向)に沿って中空の溝が形成され、この溝は、連結具(ジョイント)を、表面に出ないように埋設する働きをもつと共に、デッキ下に落ちた雨水を排水するための排水路としても機能し、したがって、デッキ下に雨水が滞留することがない。
(6)本発明によって、高品質で、水はけがよく、信頼性が高く安全であり(膨張による破壊が生じない)、耐久性に富み、かつ組み立て容易な、アウトドアに適したデッキ構造ならびにデッキフロアが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
本実施形態では、デッキ材の構造について説明する。
【0036】
図1は、本発明の木質系材料からなるデッキ材の斜視図(底面側から見た斜視図)である。
【0037】
図1のデッキ材は、木粉と合成樹脂(ABS樹脂等)の混合体を成型して得られる木質合成材からなる、アウトドアの設置に適したデッキ材である(但し、純粋な木質材料からなるものでもよく、また、アウトドア用途に限定されるものではない)。
【0038】
図示されるように、デッキ材100は、上面(k)と底面(s)、互いに異なる断面形状(凹凸形状)を備える左右の側面(第1および第2の側面)と、幅方向(上面kや底面sの長手方向とは垂直な方向)に延在する複数の中空部101と、を備える。
【0039】
デッキ材の第1の側面(図中、向かって左側の側面)においては、内側に後退した側面109が設けられ、嵌合溝110は、その後退した側面109において、設けられている。嵌合溝110は、デッキ連結具(ジョイント)の第1の係止部(図1では不図示)が差し込まれる凹部である。
【0040】
デッキ材の第2の側面(図中、向かって右側の側面)においては、外側に突出する突出片(突起)114,113が設けられ、これらの突出片(114,113)の突出長は、第1の側面における側面109の内側への後退長に対応するように(つまり、バランスがとれるように)設計されている。そして、突出片(114,113)に挟まれた部分が、第2の側面における嵌合溝112となる。この嵌合溝112は、デッキ連結具(ジョイント)の第2の係止部(図1では不図示)が差し込まれる凹部である。
【0041】
また、この第2の側面の底面(s)には、内側に大きく後退する(切り込む)切り欠き108が設けられている。この切り欠き108が存在することによって、デッキ材同士が連結された場合に、下に落ちた雨水等を外部に速やかに排出するための排水路が構築されることになる(この点は後述する)。
【0042】
図2は、図1のデッキ材を矢印のX1方向から見た場合の断面図である。
【0043】
図1でも説明したように、デッキ材100の第1の側面(図中、向かって右側の側面)と第2の側面(図中、向かって左側の側面)の断面形状は左右対称ではなく、バランスが取れた、巧みな凹凸形状となっている。このことが、デッキ材が連結されたときに、デッキ材の適正な位置決めと、吸水による膨張圧力からの保護と、雨水等を下に落とすための、入り組んだ形状をもつ隙間(流路)の形成と、接続部の底部における排水路の構築と、を同時に実現するのに役立つ(この点は後述する)。
【0044】
(第2の実施形態)
本実施形態では、デッキ連結具の構造について説明する。
【0045】
図3は、本発明のデッキ連結具(ジョイント)の構造を示す図であり、(a)はデッキ連結具の斜視図であり、(b)は、デッキ連結具の、(図中の矢印X2方向から見た)背面図である。また、図4は、図3のデッキ材連結具(ジョイント)の平面からみた形状(左上)と、正面からみた形状(右上)と、側面の形状(右下)と、を示す図である。
【0046】
図3(a),(b)ならびに図4に示されるデッキ連結具(ジョイント)106は、図1,図2に示されるデッキ材100同士を連結するために使用されるものである。
【0047】
このデッキ連結具(ジョイント)106は、例えば、鉄板材を切り出して、折り曲げ整形して形成されるものであり、根太材(支持材)に固定される固定部(a)と、この固定部から略垂直に立ち上がる縦条部(b)と、この縦条部(b)の先端の一部を、一方向に略水平に折り曲げた形状の第1の係止部(c)と、縦条部(b)の先端の他部を第1の係止部(c)とは反対方向に折り曲げた形状の第2の係止部(d)と、固定部(a)に連接し、かつ傾斜して立ち上がり、その先端部によって隣接するデッキ材の位置を規制する機能をもつ規制爪(e)と、を、有する。
【0048】
固定部(f)には、そのデッキ連結具(ジョイント)106を根太材(支持材)にビス固定するためのビス穴(Y1,Y2)が設けられている。また、規制爪(e)は、図3,図4では、縦条部(b)の端部に設けられているが、この位置に限定されるものではない。
【0049】
図3,図4に示されるデッキ連結具(ジョイント)106の大きな特徴は、規制爪(e)を備える点であり、デッキ材100同士が連結された状態では、この規制爪(e)の先端部は、図1(図2)に示されるデッキ材100の突出片113の一部に当接し、これによって、デッキ材100の位置決めが行われる。
【0050】
また、規制爪(e)は斜めに傾いているため、組み立て作業時に、デッキ材100が強く押し込まれた場合でも、その斜めに傾いて前進している分だけ、デッキ材100が内側に深く侵入することが防止され、このことが、隣接するデッキ材100同士の接続部において適切な隙間(雨水等を下に落とす流路となる:後述)を形成することに役立つ。
【0051】
さらに、規制爪(e)は、木質系デッキ材が吸水によって膨張したときに生じる膨張圧力(破壊圧力)を、効果的に吸収するという、重要な機能も併せ持つ。すなわち、規制爪(e)は、デッキ材100の組み立て時の作業圧力(50kgf〜60kgf(500N〜600N))によっては降伏せず、デッキ材100の吸水による膨張に起因する膨張圧力(例えば、600kgf(6000N))によっては降伏し得る、応力・ひずみ特性を有している。
【0052】
規制爪(e)は、通常の作業圧力(50〜60kgf:500〜600N)には降伏しないため、通常作業時には、この規制爪(e)の存在によって、隣接するデッキ材の奥深くへの侵入が禁止され、適正な位置合わせを自由に、迅速かつ容易に行うことができ、一方、デッキ材100の吸水による膨張圧力(例えば、600kgf:6000N)には、規制爪(e)は降伏して、傾斜している爪が反対方向に向けて変形し、その膨張圧力を吸収し、したがって、デッキ材100が破壊に至ることがなく、デッキ材100の信頼性、安全性が向上する。
【0053】
このように、デッキ連結具(ジョイント)106に規制爪(e)が設けられることによって、デッキフロアの組立作業時には、隣接するデッキ材100同士の位置決めを、極めて容易に行うことができ、したがって、熟練の作業者でなくても組み立てができ、組み立て作業の作業効率が向上するという効果が得られ、雨水を下に落とすための隙間(流路)も確実に確保することができるという効果が得られ、一方、デッキ材100の吸水による膨張圧力(破壊圧力)は、その規制爪(e)によって効果的に吸収されるため、デッキ材100を破壊から保護することができるという効果も得られる。
【0054】
(第3の実施形態)
本実施形態では、図1.図2のデッキ材を、図3,図4のデッキ連結具(ジョイント)によって相互に連結して構成される本発明のデッキ構造と、その組み立て方法について説明する。
【0055】
図5は、図1,図2のデッキ材を、図3,図4のデッキ連結具(ジョイント)によって相互に連結して構成される本発明のデッキ構造の組み立て方法を説明するための図である。
【0056】
図5において、デッキ材連結具(ジョイント)106は、下地の根太材(不図示)にビスにて固定されている。そして、デッキ材100aの嵌合溝112には、デッキ材連結具(ジョイント)の第2の係止部(d)が差し込まれており、かつ、規制爪(e)の先端部が、デッキ材100aの突出片113の一部に当接している。
【0057】
この状態で、作業者が、デッキ材100bを、図中の矢印のとおり押し込む。これによって、デッキ材100bの嵌合溝110には、デッキ材連結具(ジョイント)106の第1の係止部(c)が差し込まれ、これによって、デッキ材100a,100bが、デッキ材連結具(ジョイント)106を介して連結されたことになる。
【0058】
この作業を繰り返すことによって、デッキ材を順次、連結していき、最後に、端部のデッキ材を、例えば、長いビスにて根太材に固定することによって、デッキ材の組み立て(一列の組み立て)が終了する。
【0059】
図6は、組みたてられたデッキ構造の、端部付近の断面図である。
【0060】
図示されるように、最端部のデッキ材100bは、脳天ビス102によって、根太材104に固定されている。
【0061】
デッキ材100a,100bを連結するデッキ連結具(ジョイント)106は、ビス107によって根太材104に固定されている。
【0062】
そして、各デッキ材100a,100bの嵌合溝(112,110)には、デッキ連結具(ジョイント)106の第2の係止部(d)と第1の係止部(c)が各々嵌合しており、かつ、規制爪(e)の先端部が、デッキ材100aの突出片113の先端面に当接し、これによって、デッキ材100aが、デッキ材100bの方に深く入り込まないように規制されている。これによって、双方のデッキ材(100a,100b)間に、雨水等を下に落とすための、所定間隔の、複雑な断面形状をもつ隙間(雨水等の流路)が自動的に形成される。
【0063】
また、図示されるように、仮に、コイン200が、その隙間に落ちたとしても、デッキ材100aの側面に形成されている突出片114によって、コインの落下が妨げられることになり、歩行者等がコインを失くしてしまうという事態が生じない。このように、デッキ材100aの側面に形成される2つの突出片(113,114)のうちの上側の突出片114は、コインの落下防止機能をもつ突出片ということができる。
【0064】
図7は、本発明のデッキ構造において形成される、デッキ材間の隙間(雨水等を下に落とすための流路となる入り組んだ隙間)について説明するための断面図である。
【0065】
図7で注目すべき点は、隣接するデッキ材100a,100b間に、適切な間隔の隙間が形成され、これによって、雨水等を下に直接的に落とすための流路(P1)が形成されている点、ならびに、デッキ材100a,100bの連結部の下側には、空洞部108が形成され(この部分は、本来は、デッキ材100bの側面の切り欠き部分である)、この空洞部108は、デッキ連結具106の固定部(a)を収納するという働きと共に、下に落ちた雨水等を外部に排出するための排水路としても機能する点、である。
【0066】
雨水等を下に直接的に落とすための流路(P1)が形成されるため、例えば、ガーデンデッキとして使用した場合には、非常に水はけがよく、しかも、下に落ちた(大量の)雨水等は、排水路108を経由して外部に向けて排出されるため、この点でも水はけがよく、したがって、例えば、デッキの下側に、水が長時間に渡って滞留するような事態が生じない。
【0067】
また、隣接するデッキ材100a,100b間に形成される隙間は、上記のとおり、デッキ材連結具(ジョイント)の規制片(e)の位置決め作用によって、熟練の作業者でなくても容易に(自動的に)形成することができる。排水路108も同様に、容易に構築される。したがって、本発明のデッキ材100とデッキ材連結具106を用いると、高品質のデッキ構造を簡易に構築することができる。
【0068】
(第4の実施形態)
図8は、本発明のデッキ材を2次元に配置して構成されるデッキフロアの平面図である。
【0069】
図示されるように、本発明のデッキフロア500は、本発明のデッキ材(100a〜100d等)を二次元に配置して構成されている。図面から明らかなように、デッキフロア500を上から見た場合には、デッキ材の連結部分の隙間には突出片114が張り出しており、したがって、コイン等が下に落下することがないように配慮されている。
【0070】
このように、本発明によれば、水はけがよく、コイン等の落下防止策も講じられており、信頼性が高く安全であり(膨張による破壊が生じず)、耐久性に富み、かつ組み立て容易な、アウトドアに適した高品質なデッキフロア500を、容易に構築することができる。
【0071】
以上説明したように、本発明は、特に、一つのデッキ材と、連結具と、隣のデッキ材とが係合する部分の構造に工夫が凝らされており(すなわち、一つのデッキ材の左右の側面の形状が同じではなく、各々を最適な形状としており)、また、規制爪を備える連結具(ジョイント)を使用しており、これらによって、以下の主要な効果を得ることができる。
(1)連結具(ジョイント)の規制爪によって、デッキ材同士の間隔を適正に保つことができ、水が、デッキの下側に流れ落ちるための流路が確実に確保されるため、水はけがよい。
(2)作業者の熟練に頼ることなく簡単に、上記(1)のデッキフロアを構築できるため、デッキ組立の作業効率が向上する。
(3)雨水等の吸水によって木質系デッキ材が膨張して過剰な圧力が加わったときは、連結具(ジョイント)の規制爪が降伏して、その圧力を効果的に吸収するため、デッキ材の破壊が生じることがなく、よって、安全性、信頼性が向上する。
(4)雨水の流路を構成するデッキ材の一部が、コイン等の落下を防止する突条(落下阻止片)としても機能するため、デッキ材同士の間隔を適正に保って上記(1)の効果を得ると同時に、コインがデッキ下に落ちることを効果的に防止でき、したがって、利用者の基本的な利便性が向上する。
(5)デッキ材同士の接続部分の下部には、デッキ材の幅方向(接続方向とは垂直な方向)に沿って中空の溝が形成され、この溝は、連結具(ジョイント)を、表面に出ないように埋設する働きをもつと共に、デッキ下に落ちた雨水を排水するための排水路としても機能し、したがって、デッキ下に雨水が滞留することがない。
(6)本発明によって、高品質で、水はけがよく、信頼性が高く安全であり(膨張による破壊が生じない)、耐久性に富み、かつ組み立て容易な、アウトドアに適したデッキ構造ならびにデッキフロアが実現される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、高品質で、水はけがよく、信頼性が高く安全であり、耐久性に富み、かつ組み立て容易な木質系デッキフロアを実現するという効果を奏し、したがって、デッキ連結具、デッキ材、デッキ構造、デッキ組み立て方法およびデッキフロアとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の木質系材料からなるデッキ材の斜視図(底面側から見た斜視図)である。
【図2】図2は、図1のデッキ材を矢印のX1方向から見た場合の断面図である。
【図3】本発明のデッキ連結具(ジョイント)の構造を示す図であり、(a)はデッキ連結具の斜視図であり、(b)は、デッキ連結具の、(図中の矢印X2方向から見た)背面図である。
【図4】また、図4は、図3のデッキ材連結具(ジョイント)の平面からみた形状(左上)と、正面からみた形状(右上)と、側面の形状(右下)と、を示す図である。
【図5】図1,図2のデッキ材を、図3,図4のデッキ連結具(ジョイント)によって相互に連結して構成される本発明のデッキ構造の組み立て方法を説明するための図である。
【図6】組みたてられたデッキ構造の、端部付近の断面図である。
【図7】本発明のデッキ構造において形成される、デッキ材間の隙間(雨水等を下に落とすための流路となる入り組んだ隙間)について説明するための断面図である。
【図8】本発明のデッキ材を2次元に配置して構成されるデッキフロアの平面図である。
【符号の説明】
【0074】
100(100a〜100d) デッキ材
101 中空部
102 脳天ビス
104 根太材
106 デッキ材連結具(ジョイント)
107 ビス
108 切り欠き(空洞部、排水路)
109 第1の側面における内側に後退した側面
110,112 嵌合溝
113 突出片
114 突出片(コイン落下防止用突出片)
200 コイン
500 デッキフロア
k デッキ材の上面
s デッキ材の底面
a デッキ連結具の固定部
b デッキ連結部の縦条部
c 第1の係止部
d 第2の係止部
e 規制爪
Y1,Y2 デッキ連結具のビス固定用穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキ材同士を連結するためのデッキ連結具であって、
根太材に固定される固定部と、
この固定部から略垂直に立ち上がる縦条部と、
この縦条部の先端の一部を、一方向に略水平に折り曲げた形状の第1の係止部と、
前記縦条部の先端の他部を前記第1の係止部とは反対方向に折り曲げた形状の第2の係止部と、
前記固定部に連接し、かつ傾斜して立ち上がり、その先端部によって隣接するデッキ材の位置を規制する機能をもつ規制爪と、
を、有することを特徴とするデッキ連結具。
【請求項2】
請求項1記載のデッキ連結具であって、
前記規制爪は、前記デッキ材の組み立て時の作業圧力によっては降伏せず、前記デッキ材の吸水による膨張に起因する膨張圧力によっては、降伏し得る特性を有することを特徴とするデッキ連結具。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のデッキ材連結具における前記第1または第2の係止部と嵌合する嵌合溝が、第1の側面と、この第1の側面の反対側の第2の側面に、設けられており、かつ、木質系材料からなることを特徴とするデッキ材。
【請求項4】
請求項3記載のデッキ材であって、
隣接するデッキ材同士を連結した場合に、水を下に落とすための隙間が形成されることを特徴とするデッキ材。
【請求項5】
請求項3記載のデッキ材であって、
隣接するデッキ材同士を連結した場合に、それらのデッキ材の接続部の下側に、排水路が形成されることを特徴とするデッキ材。
【請求項6】
請求項5記載のデッキ材であって、
前記隣接するデッキ材同士の接続部に形成される前記水を下に落とすための隙間は、入り組んだ形状の流路を形成しており、これによって、前記隙間へのコインの落下が防止されることを特徴とするデッキ材。
【請求項7】
請求項6記載のデッキ材であって、
このデッキ材の前記第1の側面と第2の側面の断面形状は同じではなく、
前記第1の側面は、そのデッキ材の上端部よりも内側に後退した側面をもつと共に、その後退した側面において前記嵌合溝が形成されており、
一方、前記第2の側面は、前記デッキ材の上端部よりも外側に突出する2つの突出片をもち、その2つの突出片は上下の位置関係をもって配置され、その2つの突出片に挟まれて前記嵌合溝が形成され、また、前記2つの突出片のうちの上側に位置する突出片がコイン落下防止用の突出片として機能し、また、下側に位置する突出片の下には、側面を内側に大きく後退させることによって切り欠き部が形成されており、
かつ、第1のデッキ材の前記第1の側面と、この第1のデッキ材に隣接する第2のデッキ材の前記第2の側面と、を、請求項1または請求項2記載のデッキ連結具を挟んで対向させ、そのデッキ連結具を根太材に固定すると共に、その第1および第2の側面に設けられている嵌合溝に、前記デッキ連結具の第1および第2の係止部を嵌合させ、この際、前記デッキ材連結具の規制爪で一方のデッキ材の位置を規制し、これによって、前記隣接する第1および第2のデッキ材同士を連結した場合には、前記水を下に落とすための入り組んだ隙間が形成され、前記コイン落下防止用の突出片によってコイン落下が防止され、また、前記切り欠き部によって前記排水路が形成される、ことを特徴とするデッキ材。
【請求項8】
根太材上に固定された、請求項1または請求項2記載のデッキ材連結具の前記第1および第2の係止部の各々に対して、隣接する2つのデッキ材の側面の前記嵌合溝を嵌合させ、この際、前記デッキ材連結具の規制爪で一方のデッキ材の位置を規制し、これによって、各デッキ材の接続部分において、水を下に落とすための隙間を構築しつつ、デッキ材同士を連結してなるデッキ構造。
【請求項9】
請求項8記載のデッキ構造であって、
前記隣接する2つのデッキ材の接続部の下側には排水路が形成されることを特徴とするデッキ構造。
【請求項10】
請求項9記載のデッキ構造であって、
前記隣接するデッキ同士の接続部の上側では、コイン落下防止用の突出片が張り出し、これによって、コインの落下が防止されることを特徴とするデッキ構造。
【請求項11】
請求項1または請求項2記載のデッキ連結具を用いて、請求項3〜請求項7のいずれか記載のデッキ材同士を連結して、請求項8〜請求項10のいずれか記載のデッキ構造を構築するデッキ構造の組み立て方法であって、
請求項1または請求項2記載のデッキ材連結具の固定部を、根太材に固定する第1の工程と、
前記デッキ材連結具の第1および第2の係止部に対して、デッキ材の側面の前記嵌合溝を合わせて押し込み、嵌合させる第2の工程と、
前記第1および第2の工程を繰り返すことによって連結された一連のデッキ材の終端にあたる部分を、根太材に固定する第3の工程と、を含むことを特徴とするデッキ構造の組み立て方法。
【請求項12】
請求項11記載のデッキ構造の組み立て方法を用いて構築された、複数個のデッキ材を二次元に配置してなるデッキフロア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−314947(P2007−314947A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142555(P2006−142555)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】