説明

デトミジンを含む経粘膜動物用組成物

本発明は、活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む、馬や牛などの大型動物において鎮静および鎮痛を与えるために経粘膜投与用に適合させた半固形動物用組成物に関する。本発明の半固形経粘膜組成物は、デトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を活性成分として含有する。組成物は、作用の急速な発現とその上口腔粘膜における低刺激性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に馬および牛などの大型動物に、鎮静、鎮痛(analgesia)、抑制および抗不安作用を与えるための方法、ならびに特に馬および牛などの大型動物に、鎮静、鎮痛、抑制および抗不安作用を与えるために動物に投与される医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
式I
【化1】

の4−[(2,3−ジメチルベンジル)]イミダゾールであるデトミジンは、近年よく知られた薬剤であり、動物用用途においてはその塩酸塩として使用される。デトミジンの注射剤(Domosedan(登録商標)、Dormosedan(登録商標))は、種々の実験や治療の間の馬や牛の鎮静および鎮痛のために使用される。デトミジンおよびその製剤は、米国特許第4,443,466号明細書および同第4,584,383号明細書に記載されている。
【0003】
塩酸デトミジンの注射による投与は、大型動物において急速で確実な鎮静を与えるが、この剤形は獣医のような熟練した動物介護者によって投与されなければならない。さらに、一部の大型動物は、「注射嫌い(needle shy)」であり、注射による投与を難しくしている。したがって、デトミジンの他の投与方法が試みられている。
【0004】
デトミジンの注射剤を舌下で「噴射させる」ことによる経粘膜投与が記載されている(Malone, J. H. および Clarke K. W., J. Vet. Anaest., 20, Dec 1993, 73-77)。この方法では、用量40μg/kgで有用な鎮静が達成されたが、鎮静が現れる速度は(最大効果に対して45分)、筋肉内注射後のものより実質的に遅かった。
【0005】
もう1つの研究では、デトミジンの注射剤がプラスチックのシリンジから馬の頬または口腔に、そのまま、またはアップルソースおよびガム混合物または糖液などの種々の食品媒体と混合して送達された(Ramsay, E. C. ら, Veterinary Anaesthesia an Analgesia, 2002, 29, 219-222)。充分な鎮静を生むためには用量60μg/kgが必要とされ、その場合約45分で馬が深く頭を垂れた。
【0006】
最終的には、動物用の経粘膜接着パッチが国際公開第00/19987号に記載されており、デトミジンは、好適な活性薬剤の1つとして言及されている。しかしながら、本出願人は、そのようなデトミジンの経粘膜パッチの剤形は、馬などの大型動物の口腔粘膜に適用する場合、実質的に受け入れ難い局所的な刺激を引き起こすことを見出した。この刺激は、たいてい活性成分であるデトミジン自体により引き起こされるようであり、したがって、それが経粘膜パッチ製剤によるデトミジンの治療上の投与に対する主要な障害であることを見出した。
【0007】
よって、作用の急速な発現、簡単な投与および低刺激性を提供する、馬や牛などの大型動物におけるデトミジンの投与のための製品の改良が、なお必要である。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む、動物において鎮静、鎮痛、抑制および抗不安作用を与えるために経粘膜投与用に適合させた半固形医薬組成物に関する。とりわけ、該組成物は、経粘膜ゲルまたはエマルジョンの形状である。
【0009】
予期せぬことに、本発明の半固形組成物は、馬などの大型動物の口腔粘膜に適用した場合、筋肉内注射に匹敵する作用の急速な発現を与えることができ、そのうえ繰り返し投与した後でさえ口腔粘膜において低刺激を期待できることを見出した。本組成物はまた、静脈内注射または筋肉内注射よりも長い作用持続時間を提供する。したがって、本発明は、馬および牛などの大型動物へのデトミジンの既存の投与方法に対して有意な改良を提供する。
【0010】
よって、本発明の1つの実施態様によれば、本発明は活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む経粘膜投与用に適合させた半固形動物用医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明のもう1つの実施態様によれば、本発明は、経粘膜ゲルまたはエマルジョンの形状で、活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む動物用医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明は、経粘膜ゲルの形状で、活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む動物用医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明の他の実施態様によれば、本発明は、a)活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む経粘膜投与用に適合させた半固形組成物、b)該組成物を収容するためのパッケージ、およびc)該組成物を動物の粘膜上、特に口腔粘膜上に投与するための使用説明書を含む動物用キットを提供する。
【0014】
本発明の他の実施態様によれば、本発明は、a)活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む、経粘膜ゲルまたはエマルジョンの形状の組成物、b)該組成物を収容するためのパッケージ、およびc)該組成物を動物の粘膜上、特に口腔粘膜上に投与するための使用説明書を含む動物用キットを提供する。
【0015】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明は、a)活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む、経粘膜ゲルの形状の組成物、b)該組成物を収容するためのパッケージ、およびc)該組成物を動物の粘膜上、特に口腔粘膜上に投与するための使用説明書を含む動物用キットを提供する。
【0016】
本発明の他の実施態様によれば、本発明は、活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む経粘膜投与用に適合させた半固形組成物の有効量を、動物の粘膜上、特に口腔粘膜上に適用することを含む動物の鎮静方法を提供する。
【0017】
本発明のさらに他の実施態様によれば、本発明は、動物の粘膜上、特に口腔粘膜上に投与するための医薬の製造における、活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む経粘膜投与用に適合させた半固形組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む経粘膜投与用に適合させた半固形動物用医薬組成物に関する。用語「半固形」とは、本明細書において、中程度の応力下で流動性を示す機械−物理(mechano-physical)状態を意味する。好ましくは、本組成物は、容易に注入できる(syringable)ものである。つまり局所製剤用の周知の種類の従来のチューブ、または針の無いシリンジから容易に施すことができることを意味する。半固形組成物は、動物の口にとどまることができるのに充分なくらい粘ばり気があるが、その粘度は、組成物が飲み込まれ得るほど高すぎるべきではない。好ましくは、半固形材料は、約500〜約200,000mPas、好ましくは約1,000〜100,000mPas、より好ましくは約5,000〜50,000mPas、例えば約8,000〜30,000mPasの間の粘度を有するべきである。
【0019】
本発明の半固形組成物は、投与の際に広げられる粘度(spreadable consistency)を有する。したがって、本組成物は、潜在的な刺激という障害を有する剤形であるパッチ、マトリックス、フィルムまたはウエハーの形状ではないという点で初期の試みとは異なる。
【0020】
本発明の組成物は、口腔、鼻腔、膣および直腸粘膜などの動物の任意の適切な粘膜上に適用することができる。特に、本発明の組成物は、動物の口腔粘膜、たとえば頬、舌、舌下または歯茎粘膜上に適用される。好ましくは、舌下に適用され、そこからデトミジンが口腔の粘膜を通して循環に吸収され、所望の薬理効果を誘導する。経粘膜、たとえば舌下経路は、皮膚を針で刺すことにより生じる痛みを排除し、どういうわけか馬などの動物に注射できない(注射嫌いの患畜)場合に特に適した経路である。本発明の組成物は、シリンジなどの適した塗布器を用いて少量で舌下に好適に適用される。組成物は、適用箇所にとどまり、容易に飲み込まれない。それは、大型動物、具体的には馬、ポニーおよび牛において、種々の実験、処置および輸送のあいだ、抑制、鎮静、鎮痛および/または抗不安作用を提供するために特に有用である。半固形薬剤の投与は、容易であり、非経口薬の投与に熟練していない動物の飼い主または訓練者により行うことができる。効果、たとえば鎮静の発現は、急速であり、通常、馬では投与時から30分以内、好ましくは25分以内、より好ましくは20分以内に始まる。鎮静効果の持続時間は、好ましくは約180〜約300分である。
【0021】
組成物中のデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩の量は、所望の薬理効果を提供するように選択される。投与される薬物の正確な量は、処置される対象の種、年齢および体重、好ましい使用期間ならびに達成されるべき効果といった多数の因子に依存し得る。本発明は、アドレナリンα2受容体アゴニストとしてのデトミジンの活性に由来する本組成物の可能性のあるすべての用途、たとえば鎮静、抗不安、鎮痛などとしてのその用途を包含することを意図するということに注意すべきである。典型的には、デトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩、好ましくは塩酸塩は、約1〜約200μg/kg、より一般的には約10〜約100μg/kg、好ましくは約20〜80μg/kgの用量範囲で対象に投与される。
【0022】
デトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩の濃度は、通常、組成物の重量に対して約0.1〜約5%(w/w)、好ましくは約0.2〜約2%(w/w)、好適には約0.5〜約1%(w/w)の範囲内である。
【0023】
デトミジンの薬学的に許容され得る塩は、既知の方法により製造することができる。好適な塩としては、たとえば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸などの有機酸による酸付加塩があげられる。デトミジン塩酸塩が好ましい塩である。
【0024】
本発明の半固形組成物は、たとえば、ゲル、クリーム、軟膏またはペーストであり得る。好ましくは、本発明の組成物は、ゲルまたはエマルジョンの形状である。ゲル形状が特に好ましい。
【0025】
本発明の半固形剤形は、当該技術分野における既知の方法で製造することができる。それらは、薬物物質を従来の薬学的な希釈剤および半固形製剤において広く使用される担体と組み合わせることにより製造することができる。
【0026】
本発明のエマルジョンは、水相および油相から構成される。組成物は、油中水(W/O)エマルジョン、または好ましくは水中油(O/W)エマルジョンの形態を取り得る。好適には、エマルジョンは、組成物の重量に対し、水約50〜約95%(w/w)、好ましくは約70〜約90%(w/w)を含む。エマルジョンの油相は、たとえばペトロラタム、液体パラフィン、ピーナッツ油やヒマシ油などの植物油、ワックス、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ステアリルアルコールまたはセチルアルコールなどの脂肪アルコールなどを含み得る。好適には、油相は、組成物の重量に対して約1〜約30%(w/w)、好ましくは約3〜約20%(w/w)をとる。
【0027】
エマルジョンはさらに、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、安定剤、保存料、増粘剤などの種々の添加剤を含み得る。
【0028】
安定なエマルジョンを形成するために乳化剤を用いることが望まれても良い。好適な乳化剤は、たとえばアニオン性、カチオン性または非イオン性乳化剤である。典型的な乳化剤としては、ポリオキシエチレン化脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化脂肪アルコールエーテル、グリセリルエステル、ソルビタンエステル、ポリエチレングリコールステアレート、およびソルビタンエステルのポリオキシエチレン誘導体があげられる。特別な例としては、ポリエチレングリコール100ステアレート(PEG−100ステアレート)、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノレート、ステアリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレート、およびポリソルベート60があげられる。好適には、乳化剤は組成物の重量に対して、約0.5〜約10%(w/w)、好ましくは約1〜約3%(w/w)で用いられる。
【0029】
エマルジョンは、軟パラフィン、セルロース誘導体、カルボマー、セテアリルアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、水添ラノリン、蜜蝋などの増粘剤も含み得る。
【0030】
薬物物質は、本発明のエマルジョンにおいて水相に含まれることが好ましい。
【0031】
本明細書において引用される場合、ゲルは、分散したマクロ分子と液体との間に明らかな境界が存在しないように液体の全体に渡って均一に分布する有機マクロ分子(ゲル化剤)で構成される単相の半固形系である。ゲルの形状の動物用経粘膜組成物は、本発明の特に好適な実施態様であることがわかっている。
【0032】
ゲル構造は、好適なゲル化剤を用いることにより得られ得る。ゲル化剤の量は、得られるゲルが所望のレオロジー特性を有するように選択される。本発明のゲルは、好ましくは液体溶媒が水を含む水性ゲル(ハイドロゲル)である。しかしながら、水性ゲル製剤は適切な水混和性共溶媒をも含み得る。活性成分は、ゲル組成物に均一に溶解されるか分散される。
【0033】
好ましくは、本発明の経粘膜ゲル製剤は、デトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩、ゲル化剤、経粘膜浸透向上剤、水混和性有機共溶媒および水を含む。
【0034】
ゲル化剤は、任意の適切な親水性ゲル形成ポリマーであり得る。好ましくは、ゲル化剤は、セルロース誘導体、ポリアクリル酸およびポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーから選択される。セルロース誘導体およびポリアクリル酸が特に好ましいゲル化剤である。
【0035】
ゲル化剤として使用するための好適なセルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシセルロースなどのセルロースエーテルがあげられる。好ましいセルロースエーテルとしては、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースがあげられる。
【0036】
ゲル化剤として使用するための好適なポリアクリル酸としては、カルボマー(カルボキシビニルポリマーとも呼ばれる)があげられる。カルボマーは、アクリル酸のポリアルケニルポリエーテル架橋ポリマー、通常アクリル酸のポリアリルスクロースまたはポリアリルペンタエリスリトール架橋ポリマーである。それらは、たとえば商品名カルボポールとして種々の等級で市販されている。水性カルボマー分散体は、カルボマーポリマーの遊離のカルボキシル基により酸性である。カルボマーポリマーの水性分散体の中和は、ポリマー樹脂の水溶性塩の形成を通して自発的に濃厚化(thickening)を引き起こす。
【0037】
ゲルは、動物の口にとどまることができるのに充分なくらい粘ばり気があるべきであるが、その粘度は、ゲルが飲み込まれ得るほど高すぎるべきではない。
【0038】
ゲル化剤は、通常、約500〜約200,000mPas、好ましくは約1,000〜約100,000mPas、より好ましくは約5,000〜約50,000mPas、例えば約8,000〜約30,000mPas(Brookfield Digital Viscometer DV−II、LV−4(円筒形スピンドル)、スピンドル因子64、12rpm、25℃で測定)の間の粘度を有するゲルを提供するのに適した量で使用される。
【0039】
このような好適な粘度は、ゲル化剤の量を調整すること、および/または組成物のpHを調整することにより得ることができる。これは、ゲル化剤が、カルボマーなどのポリアクリル酸の場合、その粘度は組成物のpHに依存するので特に関係する。
【0040】
ゲル化剤の量は、ゲル化剤の性質と所望の粘度に依存する。ゲルは、シリンジなどから少量のゲルの容易な舌下投与を可能にするような広げられる粘度を有することが好ましい。好ましくは、本発明のゲル組成物は、エラストマーなどの生接着性成分がない。さらに、本発明のゲル組成物は、好ましくはフィルム形成型ゲル組成物ではない。
【0041】
通常、本発明の組成物におけるゲル化剤の量は、組成物の重量に対して約0.3〜約40%(w/w)である。ゲル化剤がセルロース誘導体の場合、ゲル化剤の量は、一般的に組成物の重量に対し約0.5〜約40%(w/w)、より好ましくは約1〜約30%(w/w)である。ゲル化剤がカルボマーなどのポリアクリル酸の場合、ゲル化剤の量は、一般的に組成物の重量に対し約0.3〜約5.0%(w/w)、より好ましくは約0.5〜約3.0%(w/w)である。
【0042】
ゲル化剤がヒドロキシプロピルセルロースの場合、組成物の重量に対して約5〜約40%(w/w)、好ましくは約10〜約25%(w/w)の範囲の量で好適に使用される。
【0043】
組成物のpHは、約4〜約8、好ましくは約5〜約7、より好ましくは約5.5〜約6.5、特には約5.8と6.2の間の範囲内が適切である。pHは、水酸化ナトリウム、脂肪アミンもしくは四級アミンなどの好適な塩基性化合物または塩酸などの酸性化合物で調整され得る。ゲル化剤は通常、わずかに酸性の物質である。
【0044】
経粘膜浸透向上剤は、薬物が粘膜を通して浸透し血流に入る速度を増加することのできる物質である。好適な経粘膜浸透向上剤としては、たとえば、炭素数5〜30の脂肪酸の塩(たとえば、ラウリル硫酸ナトリウムおよび脂肪酸の他の硫酸塩)などのアニオン性界面活性剤、炭素数8〜22のアルキルアミン(たとえばオレイルアミン)などのカチオン性界面活性剤およびポリソルベートおよびポロキサマーなどの非イオン生界面活性剤などの界面活性剤;デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、リノレニルアルコールおよびオレイルアルコールなどの炭素数8〜22の脂肪族一価アルコール;オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸およびカプリン酸などの炭素数5〜30の脂肪酸およびそれらのエステル(エチルカプリレート、イソプロピルミリステート、メチルラウレート、ヘキサメチレンパルミテート、グリセリルモノラウレート、ポリプロピレングリコールモノラウレートおよびポリエチレングリコールモノラウレートなど);ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol);メンソールおよび他の植物性揮発性油;サリチル酸およびその誘導体;デシルメチルスルホキシドおよびジメチルスルホキシド(DMSO)などのアルキルメチルスルホキシド;商標AZONEで販売されている1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オンなどの1−置換アザシクロアルカン−2−オン;オクチルアミド、オレイン酸アミド、ヘキサメチレンラウリン酸アミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリエチレングリコール3−ラウリン酸アミド、N,N−ジエチル−m−トルエン酸アミド(toluamide)およびクロタミトンなどのアミド;およびデトミジンと適合し、経粘膜浸透向上活性を有する任意の他の化合物があげられる。1つまたはいくつかの前記経粘膜浸透向上剤が使用できる。組成物中の経粘膜浸透向上剤の量は、通常、組成物の重量に対して約0.1〜約20%(w/w)、好ましくは約0.2〜約15%(w/w)、より好ましくは約0.5〜約10%(w/w)であり、使用する経粘膜浸透向上剤に依存する。
【0045】
好ましい経粘膜浸透向上剤は、炭素数5〜30の脂肪酸、特にイソプロピルミリステート;炭素数5〜30の脂肪酸の硫酸塩、特にラウリル硫酸ナトリウム;およびDMSOである。ラウリル硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0046】
経粘膜浸透向上剤がラウリル硫酸ナトリウムである場合、組成物の重量に対して約0.1〜約5%(w/w)、好ましくは約0.2〜約3%(w/w)、好適には約0.5〜約2%(w/w)の範囲の量で使用される。
【0047】
本発明のゲル組成物における使用に適した水混和性有機共溶媒としては、ポリアルコールまたはプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールなどのグリコールがあげられ、好ましくはプロピレングリコールまたはエタノール、イソプロパノール、n−プロパノールまたはブタノールなどのC2〜C4アルカノール;またはそれらの組み合わせがあげられる。不揮発性の有機共溶媒、特にプロピレングリコールが好ましい。組成物中の水混和性有機共溶媒の量は、通常、組成物の重量に対して約5〜約50%(w/w)、好ましくは約10〜約45%(w/w)、より好ましくは約15〜約40%(w/w)、たとえば約20〜約35%(w/w)である。
【0048】
ゲル組成物中の水の量は、通常、組成物の重量に対して約15〜約90%(w/w)、好ましくは約20〜約80%(w/w)、より好ましくは約30〜約75%(w/w)、たとえば約40〜約70%(w/w)である。
【0049】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、本発明の経粘膜ゲル製剤は、組成物の重量に対して、デトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩0.1〜5%(w/w);ゲル化剤0.3〜40%(w/w);経粘膜浸透向上剤0.2〜15%(w/w);水混和性有機共溶媒5〜50%(w/w);および水30〜80%(w/w)を含む。
【0050】
本発明のゲル組成物は、本技術分野において一般に使用されている他の賦形剤、たとえば、ベンジルアルコール、メチルおよびプロピルパラベン、ブチルヒドロキシトルエンまたはブチルヒドロキシアニソールなどの防腐剤および/または抗酸化剤;甘味料;着色料;香料;緩衝剤;pH調整剤;およびグリセロールなどの可溶化剤を任意に含むことができる。
【0051】
本発明の組成物は、約1〜10ml、より好ましくは約2〜5mlの範囲の容量、たとえば3mlであらかじめ充填したシリンジから対象動物の舌下に投与されるのが好ましい。
【0052】
本発明の組成物は、好ましくは着色料を含む。たとえば、着色ゲルは投与後の唾液から容易に区別することができる。ゲル製品が動物の口から排出された場合、飼い主はゲルのおおよその損失に注意することができるであろう。飼い主は、製品がその皮膚に接触する状態に鳴る場合の任意の不測の事態にも容易に気付くであろう。
【0053】
好ましくは、本発明の組成物は、本質的には非食品成分で構成されている。用語「非食品成分」は、本明細書において、従来からヒトまたは動物用の食品物質または栄養素として使用されていない成分を意味する。
【0054】
組成物は、本発明の組成物、該組成物を収容するためのパッケージ、および該組成物を動物の口腔粘膜上に投与するための使用説明書を含む動物用キットの形態で提供できる。好ましくは、該パッケージは、固定した容量の本発明の組成物を投薬することができるシリンジなどの塗布器である。シリンジは、好ましくはHDPEなどのポリマー材料から製造されたものである。好適には、シリンジの容量は、約1〜20ml、より好ましくは約2〜10mlで変化する。たとえば、本発明の組成物は、4ml、5mlまたは10mlHDPEシリンジに収容することができる。
【0055】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、実施例は本発明の範囲を限定することを意味するものではない。
【実施例】
【0056】
実施例1

【0057】
実施例1のゲル製剤は、薬物物質を水に溶解することにより製造した。この混合物にプロピレングリコール、ジメチルスルホキシドおよび水酸化ナトリウムを攪拌しながら添加した。最後にヒドロキシプロピルセルロースを添加し、製剤を攪拌により均質化した。
【0058】
実施例2

【0059】
実施例2のゲル製剤は、薬物物質を水に溶解することにより製造した。この混合物にプロピレングリコールおよびラウリル硫酸ナトリウムを攪拌しながら添加した。最後にヒドロキシエチルセルロースを添加し、水酸化ナトリウムの添加によりpHを調整した後、製剤を攪拌により均質化した。
【0060】
実施例3

【0061】
実施例3のゲル製剤は、薬物物質を水に溶解することにより製造した。この混合物にプロピレングリコールを攪拌しながら添加した。カルボポールおよびイソプロピルミリステートを最初に乳棒と乳鉢で混合し、ついで溶液中に攪拌しながらゆっくりと添加した。最後に水酸化ナトリウムの添加によりpHを調整した後、製剤を攪拌により均質化した。
【0062】
実施例4

【0063】
実施例4のゲル製剤は、容器の中にプロピレングリコール、パラベン、ラウリル硫酸ナトリウムおよび水を加えることにより製造した。この混合物を混和し均質化するまで攪拌した。薬物物質と着色剤とを攪拌しながら添加した。混合物を50℃まで温めた。ヒドロキシプロピルセルロースを攪拌しながらゆっくりと添加した。ゲルを静かに攪拌しながら室温まで冷却し、組成物のpHをHCl溶液の滴下により6.0に調整した。静置し、透明の青色ゲルを得た。ゲルを5mlHDPEシリンジに詰めた。
【0064】
実施例5

【0065】
実施例5のエマルジョン製剤は、容器の中にブチレングリコール、デシルオレート、セテアリルアルコール、PEG−6ステアレート、グリコールステアレート、PEG−32ステアレートおよびセテアリル硫酸ナトリウムを加えることにより製造する。この混合物を80℃まで温め、均質化する。水(一部)を添加し、混合物を攪拌しながら100℃まで温める。混合物を80℃まで冷却し、残りの水に溶解した薬物物質を混合物に添加する。混合物を真空下で均質化し、冷却した。
【0066】
実施例6

【0067】
実施例6のエマルジョン製剤は、容器の中にポリデセン、ペトロラタム、セテアリルアルコール、グリセリルステアレート、PEG−100ステアレートおよびカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを加えることにより製造する。この混合物を80℃まで温め、均質化する。グリセリン、フェノキシエタノールおよび一部の水に溶解した薬物物質を混合し、75℃まで温め、ついで攪拌しながら混合物に添加する。混合物を40℃まで冷却する。カルボマーナトリウムおよび残りの水(20℃)を他の容器中で混合、均質化し、ついで混合物に添加する。pHを6に調整し、混合物を真空下で均質化し、冷却した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む経粘膜投与用に適合させた半固形動物用医薬組成物。
【請求項2】
経粘膜ゲルまたはエマルジョンの形状で、活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む動物用医薬組成物。
【請求項3】
経粘膜ゲルの形状である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
経粘膜ゲルの形状で、デトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩、ゲル化剤、経粘膜浸透向上剤、水混和性有機共溶媒および水を含む動物用医薬組成物。
【請求項5】
組成物の重量に対し、デトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩0.1〜5%(w/w);ゲル化剤0.3〜40%(w/w);経粘膜浸透向上剤0.2〜15%(w/w);水混和性有機共溶媒5〜50%(w/w);および水30〜80%(w/w)を含む請求項4記載の動物用医薬組成物。
【請求項6】
前記水混和性有機共溶媒がグリコールまたはC2〜C4アルコールである請求項4または5記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記水混和性有機共溶媒がプロピレングリコールである請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
プロピレングリコールの量が、組成物の重量に対して約10〜約45%(w/w)、好ましくは約15〜約40%(w/w)である請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ゲル化剤がセルロース誘導体、ポリアクリル酸およびポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーから選択される請求項4または5記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ゲル化剤がヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースである請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ゲル化剤の量が、組成物の重量に対して約0.5〜約40%(w/w)、より好ましくは約1〜約30%(w/w)である請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ゲル化剤がカルボマーである請求項9記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記カルボマーの量が、組成物の重量に対して約0.3〜約5.0%(w/w)、より好ましくは約0.5〜約3.0%(w/w)である請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記経粘膜浸透向上剤が、炭素数5〜30の脂肪酸、炭素数5〜30の脂肪酸の硫酸塩またはDMSOである請求項4または5記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記経粘膜浸透向上剤の量が、組成物の重量に対して約0.5〜約10%(w/w)である請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
約5〜約7、より好ましくは約5.5〜6.5のpH値を有する請求項4または5記載の医薬組成物。
【請求項17】
a)活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む経粘膜投与用に適合させた半固形組成物、b)該組成物を収容するためのパッケージ、およびc)該組成物を動物の粘膜上に投与するための使用説明書を含む動物用キット。
【請求項18】
前記粘膜が口腔粘膜である請求項17記載の動物用キット。
【請求項19】
前記組成物が、経粘膜ゲルまたはエマルジョンの形状である請求項17記載の動物用キット。
【請求項20】
前記組成物が、経粘膜ゲルの形状である請求項19記載の動物用キット。
【請求項21】
前記パッケージがシリンジの形状である請求項17〜20のいずれかに記載の動物用キット。
【請求項22】
活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む経粘膜投与用に適合させた半固形組成物の有効量を、動物の粘膜上に適用することを含む動物の鎮静方法。
【請求項23】
前記粘膜が口腔粘膜である請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記適用される組成物が経粘膜ゲルまたはエマルジョンの形状である請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
前記適用される組成物が経粘膜ゲルの形状である請求項24記載の方法。
【請求項26】
動物の粘膜上に投与するための医薬の製造における、活性成分としてデトミジンまたは薬学的に許容され得るその塩を含む経粘膜投与用に適合させた半固形組成物の使用。
【請求項27】
前記粘膜が口腔粘膜である請求項26記載の使用。
【請求項28】
前記組成物が経粘膜ゲルまたはエマルジョンの形状である請求項26または27記載の使用。
【請求項29】
前記組成物が経粘膜ゲルの形状である請求項28記載の使用。

【公表番号】特表2008−519012(P2008−519012A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539597(P2007−539597)
【出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000470
【国際公開番号】WO2006/048501
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(300046083)オリオン コーポレーション (31)
【Fターム(参考)】