デバイスの製造方法、EL装置の製造方法、EL装置、電子機器
【課題】 溶解性の異なる2つの膜を形成する際に、膜の抜け等の欠陥が生じ難い方法を提供する。
【解決手段】 本発明のデバイスの製造方法は、第1膜110aを形成する工程と、形成した第1膜110a上に第2膜110bを形成する工程とを有し、前記第2膜110bを形成する工程は、当該第2膜110bを構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第1溶液を前記第1膜110a上に塗布する工程と、塗布した第1溶液を乾燥して仮塗膜を形成する工程と、前記仮塗膜上に、当該第2膜110bを構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第2溶液を前記仮塗膜上に塗布する工程と、塗布した第2溶液を乾燥して本塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【解決手段】 本発明のデバイスの製造方法は、第1膜110aを形成する工程と、形成した第1膜110a上に第2膜110bを形成する工程とを有し、前記第2膜110bを形成する工程は、当該第2膜110bを構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第1溶液を前記第1膜110a上に塗布する工程と、塗布した第1溶液を乾燥して仮塗膜を形成する工程と、前記仮塗膜上に、当該第2膜110bを構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第2溶液を前記仮塗膜上に塗布する工程と、塗布した第2溶液を乾燥して本塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスの製造方法、EL装置(エレクトロルミネッセンス装置)の製造方法、その製造方法により得られるEL装置、及び該EL装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機又は無機のEL材料(エレクトロルミネッセンス材料)をインク化し、このインクを基体上に吐出するインクジェット法により、EL装置を製造する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。このようなインクジェット法を用いて、マイクロオーダーの液滴を画素領域に配することにより、EL装置を製造することは、材料の利用効率を考えると、スピンコートなどの方法に比べて有効である。
【0003】
一般的な有機EL素子の構造においては、ホール輸送層と電子輸送性発光層とが分けられて積層されている。ホール輸送層の形成は、水溶性のポリマー(PEDOT)の水溶液を塗布して行い、その後、ホール輸送層上に有機溶媒溶解性(油溶性)の電子輸送性発光ポリマー溶液を塗布して、電子輸送性発光層を形成する。
【0004】
しかしながら、水溶性のポリマーであるPEDOT層上に、有機溶媒溶解性の発光ポリマー溶液を塗布すると、発光ポリマー溶液の濡れ性が悪く、画素内部において濡れ広がらない箇所が発生し、点灯時において欠陥箇所となる(輝点/暗点)。
【0005】
そのような問題を解決するために、例えば特許文献2では、発光ポリマー溶液の塗布前に溶液と同一の溶媒若しくは低濃度の発光ポリマー溶液を発光ポリマー溶液塗布前に、画素内全面に塗布し、それら液滴を呼び水とすることで、発光ポリマーを画素内に均一に塗布する方法が提案されている。また、特許文献3では、発光ポリマー溶液の塗布前に溶液と同一の溶媒をPEDOT上に塗布後乾燥し、PEDOT膜表面の濡れ性を向上させる方法(膜表面の濡れ改質方法)が提案されている。
【特許文献1】特許第3328297号公報
【特許文献2】特開2002−122727号公報
【特許文献3】特開2003−19731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に開示された方法では、画素内に均一に発光ポリマー溶液を塗布することは可能であるが、発光ポリマー溶液を乾燥させる際に、溶液量が減少するに伴いPEDOT層と発光ポリマー溶液との間で撥液が生じ、最終的に発光ポリマー膜に変換した際に濡れ広がっていない箇所(膜が存在しない箇所)が発生してしまう。つまり、特許文献2の方法では、溶液の濡れ広がりを促進できるが、溶媒を揮発する過程において濡れ広がらない(膜が存在しない箇所)箇所が撥液により発生し、膜とする際の欠陥を防ぐことは困難である。また、この手法では、先行して発光ポリマー溶液溶媒若しくは低濃度発光ポリマー溶液を塗布するために、後から塗布する発光ポリマー溶液は高濃度の溶液となり、溶液として発光ポリマーが溶解しない若しくは高濃度(高粘度)であるがために吐出不良(ノズル詰まり、飛行曲がり、サテライト)を発光させ、製品に欠陥を発生させる。
【0007】
さらに、上記特許文献3では、発光ポリマー溶液と同一の溶媒を塗布後乾燥させ、その後、発光ポリマー溶液を塗布した場合においても、PEDOT膜上の発光ポリマー溶液の濡れ性は改善されず、画素内部において濡れ広がらない箇所が生じる。また、濡れ広がっても、乾燥時における溶液量が減少するに伴いPEDOT層と発光ポリマー溶液との間で撥液性が生じ、最終的に発光ポリマー膜に変換した際に濡れ広がっていない箇所(膜が発生していない箇所)が発生してしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、EL装置に限らず電子デバイス全般において、溶解性の異なる2つの膜を形成する際に、膜の抜け等の欠陥が生じ難い方法を提供することを目的としている。同様に、溶解性の異なる2つの膜を好適に形成することができ、信頼性の高いEL装置を製造することが可能なEL装置の製造方法と、該製造方法により製造されたEL装置と、さらには該EL装置を備えた電子機器とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のデバイスの製造方法は、第1膜を形成する工程と、形成した第1膜上に第2膜を形成する工程とを有し、前記第2膜を形成する工程は、当該第2膜を構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第1溶液を前記第1膜上に塗布する工程と、塗布した第1溶液を乾燥して仮塗膜を形成する工程と、前記仮塗膜上に、当該第2膜を構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第2溶液を前記仮塗膜上に塗布する工程と、塗布した第2溶液を乾燥して本塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
このような製造方法によると、膜形成時に塗布むらが生じ難く、膜厚むらや膜抜け(膜が部分的に形成されていないこと)等の欠陥が少ない第2膜を形成することができ、ひいては信頼性の高いデバイスを提供することが可能となる。特に第1膜と第2膜の物性が異なる場合、具体的には第1膜と第2膜の溶解性がそれぞれ異なる場合(例えば第1膜が水溶性で第2膜が油溶性)にも、第2膜形成時において塗布むらが生じ難く、膜厚むらや膜抜けの発生を防止ないし抑制できるものとなる。つまり、第1溶液により仮塗膜を形成した後、第2溶液により本塗膜を形成することで、仮塗膜により第1膜が覆われた状態(仮塗膜には膜厚むらや膜抜けがあっても良い)で第2溶液を用いて本塗膜を形成することとしているため、第2膜には欠陥が殆ど発生しないのである。具体的には、第2溶液の塗布工程では、仮塗膜の全面に対して当該第2溶液が好適に濡れ広がり、その後の乾燥工程では、第1膜上に仮塗膜が残っていることに起因して乾燥過程において膜厚むらや膜抜け等が発生し難いものとなる。なお、第2膜の形成工程は、仮塗膜と本塗膜の形成工程を含むが、これらは2段階で行うものに限ることなく、例えば仮塗膜を2段階ないし複数段階で形成するものとし、最後に本塗膜の形成を行うものとしても良い。
【0011】
前記第1溶液は、前記第2膜の形成領域全面に塗布することが好ましい。このように第1溶液を第2膜の形成領域全面に塗布した場合、第2膜を形成する領域において第1膜の表面が漏れなく改質され、第2溶液の塗布工程時の濡れ広がり性、及び第2溶液の乾燥工程時の塗膜欠陥(膜厚むらや膜抜け等)の発生防止を確実に行うことができるようになる。
【0012】
前記第1溶液と前記第2溶液は同一の濃度であることが好ましい。この場合、第1溶液と第2溶液とで同一の塗布装置により当該塗布工程を行うことができ、つまり塗布装置を複数台用意する必要がなくなり経済的となる。
【0013】
なお、本発明に言うデバイスは、少なくとも第1膜と第2膜とを積層して有するもので、配線基板、半導体装置、液晶装置、EL装置等、その他の電子部品、電気光学装置全般を言うものである。
【0014】
次に、上記課題を解決するために、本発明のEL装置の製造方法は、正孔注入層を形成する工程と、形成した正孔注入層上に発光層を形成する工程とを有し、前記発光層を形成する工程は、当該発光層を構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第1溶液を前記正孔注入層上に塗布する工程と、塗布した第1溶液を乾燥して仮塗膜を形成する工程と、前記仮塗膜上に、当該発光層を構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第2溶液を前記仮塗膜上に塗布する工程と、塗布した第2溶液を乾燥して本塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
このような製造方法によると、膜形成時に塗布むらが生じ難く、膜厚むらや膜抜け(膜が部分的に形成されていないこと)等の欠陥が少ない発光層を形成することができ、ひいては発光むら等が生じ難い発光特性の良好なEL装置を提供することが可能となる。特に正孔注入層と発光層の物性が異なる場合、具体的には正孔注入層と発光層の溶解性がそれぞれ異なる場合(例えば正孔注入層が水溶性で発光層が油溶性)にも、発光層形成時において塗布むらが生じ難く、膜厚むらや膜抜けの発生を防止ないし抑制できるものとなる。つまり、第1溶液により仮塗膜を形成した後、第2溶液により本塗膜を形成することで、仮塗膜により正孔注入層が覆われた状態(仮塗膜には膜厚むらや膜抜けがあっても良い)で第2溶液を用いて本塗膜を形成することとしているため、発光層には欠陥が殆ど発生しないのである。具体的には、第2溶液の塗布工程では、仮塗膜の全面に対して当該第2溶液が好適に濡れ広がり、その後の乾燥工程では、正孔注入層上に仮塗膜が残っていることに起因して乾燥過程において膜厚むらや膜抜け等が発生し難いものとなる。
【0016】
前記第1溶液は、前記発光層の形成領域全面に塗布することが好ましい。このように第1溶液を発光層の形成領域全面に塗布した場合、発光層を形成する領域において正孔注入層の表面が漏れなく改質され、第2溶液の塗布工程時の濡れ広がり性、及び第2溶液の乾燥工程時の塗膜欠陥(膜厚むらや膜抜け等)の発生防止を確実に行うことができるようになる。
【0017】
前記第1溶液と前記第2溶液は同一の濃度であることが好ましい。この場合、第1溶液と第2溶液とで同一の塗布装置により当該塗布工程を行うことができ、つまり塗布装置を複数台用意する必要がなくなり経済的となる。
【0018】
また、前記発光層は、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層が、それぞれ赤色画素、緑色画素、青色画素に形成されてなるものであって、前記発光層を形成する工程において、前記仮塗膜を形成する工程では、前記第1溶液として青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた青色発光層形成溶液を用いて、該青色発光層構成材料からなる仮塗膜を各色画素に対して形成した後、前記本塗膜を形成する工程では、前記第2溶液として、前記赤色画素に対しては赤色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた赤色発光層形成溶液を用いて、前記緑色画素に対しては緑色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた緑色発光層形成溶液を用いて、前記青色画素に対しては青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた青色発光層形成溶液を用いて、各色発光層からなる本塗膜を各色画素に対して形成することができる。
【0019】
このような方法によると、青色発光層が仮塗膜として各色画素に形成されるが、該青色発光層は、より高波長の色である赤色、緑色の画素においては当該色に吸収されるため、青色の仮塗膜の影響で赤色画素や緑色画素において混色を生じることがない。その上、青色発光層の仮塗膜が、上述した通り各色の本塗膜の形成時に濡れ広がり性向上や塗膜欠陥防止に寄与することとなり、ひいては発光特性に優れたEL装置を好適に製造することが可能となる。
【0020】
次に、上記課題を解決するために、本発明のEL装置は、上記方法を用いて製造されたことを特徴とする。このようなEL装置は、発光むら等が生じ難く、発光特性が優れたものとなる。また、本発明の電子機器は、上記EL装置を備えることを特徴とする。このようなEL装置を例えば表示部に具備した電子機器は、表示特性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、本発明に係る製造方法により製造されるEL装置の一例として有機EL装置の構成について説明した後、その製造方法を説明するものとする。また、本実施の形態では、各図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0022】
(EL装置)
図1は、本発明に係る製造方法により製造された有機EL装置について、その配線構造を示す説明図であって、図2は、該有機EL装置の平面模式図、図3は、該有機EL装置の表示領域の断面模式図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101及び信号線102の各交点付近に、画素領域Pが設けられている。
【0024】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。
更に、画素領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ122と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(陽極)111と、この画素電極111と対向電極(陰極)12との間に挟み込まれた有機EL層110とが設けられている。画素電極111と対向電極12と有機EL層110により、発光素子が構成されている。
【0025】
走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ122がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、更に有機EL層110を介して陰極12に電流が流れる。有機EL層110では、流れる電流量に応じて発光が生じる。
【0026】
本実施形態の有機EL装置は、図3に示すように、ガラス等からなる透明な基板2と、マトリックス状に配置された発光素子を具備して基板2上に形成された発光素子部11と、発光素子部11上に形成された陰極12とを具備している。ここで、発光素子部11と陰極12とにより表示素子10が構成される。
基板2は、例えばガラス等の透明基板であり、図2に示すように、基板2の中央に位置する表示領域2aと、基板2の周縁に位置して表示領域2aを囲む非表示領域2cとに区画されている。なお、表示領域2aは、マトリックス状に配置された発光素子によって形成される領域であり。
【0027】
また、非表示領域2cには、前述の電源線103(103R、103G、103B)が配線されている。表示領域2aの両側には、前述の走査側駆動回路105、105が配置されている。更に、走査側駆動回路105、105の両側には、走査側駆動回路105、105に接続される駆動回路用制御信号配線105aと駆動回路用電源配線105bとが設けられている。表示領域2aの図示上側には製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行う検査回路106が配置されている。
【0028】
図3の断面構成図には、3つの画素領域Aが図示されている。本実施形態の有機EL装置では、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、有機EL層110が形成された発光素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されており、有機EL層110から基板2側に発せられた光が、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、有機EL層110から基板2の反対側に発せられた光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。なお、上記陰極12として、透明な材料を用いるならば、陰極側から発光する光を出射させることができる。透明な陰極材料としては、ITO(インジウムスズ酸化物)、Pt、Ir、Ni、もしくはPdを挙げることができる。
【0029】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度リンイオン打ち込みにより形成されている。前記リンイオンが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
【0030】
また、前記下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
【0031】
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール146が電源線103に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。
【0032】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された有機EL層110と、各画素電極111及び有機EL層110の間に備えられて各有機EL層110を区画するバンク(隔壁)部112とを主体として構成されている。有機EL層110上には陰極12が配置されている。これら画素電極111、有機EL層110及び陰極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形状にパターン形成されている。この各画素電極111…を仕切る形にてバンク部112が備えられている。
【0033】
バンク部112は、図3に示すように、基板2側に位置する第1隔壁部としての無機物バンク層(第1バンク層)112aと、基板2から離れて位置する第2隔壁部としての有機物バンク層(第2バンク層)112bとが積層された構成を備えている。無機物バンク層112aは、例えばTiO2やSiO2等により形成され、有機物バンク層112bは、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等により形成される。
【0034】
無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bは、画素電極111の周縁部上に乗り上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが部分的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bの縁端よりも画素電極111の中央側に更に突出するように形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部(突出部)112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
【0035】
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図3に示すように、下部開口部112cより間口が広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図3に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜した形状となる。このようにして、バンク部112には、下部開口部112c及び上部開口部112dが連通された開口部112gが形成されている。
【0036】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面であり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、テトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。
【0037】
有機EL層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層(第1膜、若しくは正孔注入層)110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層(第2膜)110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入/輸送層110a内部において正孔を輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子が再結合し、発光が行われる。
【0038】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極111上に形成されている。また、発光層110bは、正孔注入/輸送層110a上に形成されており、その厚さが50nm〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3の3種類を有し、図2に示したように、各発光層110b1〜110b3がストライプ配置されている。そして、図3に示すように、赤色発光層110b1は赤色画素ARを、緑色発光層110b2は緑色画素AGを、青色発光層110b3は青色画素ABを構成している。
【0039】
なお、正孔注入/輸送層110aを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層110bを形成する材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。このような材料の採用により、正孔注入/輸送層110aは水溶性(親水性)を示す一方、発光層110bは油溶性(疎水性)を示すこととなる。
【0040】
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって有機EL層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。
【0041】
また、発光層110bと陰極12との間に発光効率を高めるためのLiFを形成する場合もある。なお、赤色及び緑色の発光層110b1、1110b2にはフッ化リチウムに限らず、他の材料を用いても良い。従ってこの場合は青色(B)発光層110b3のみにフッ化リチウムからなる層を形成し、他の赤色及び緑色の発光層110b1、110b2にはフッ化リチウム以外のものを積層しても良い。また、赤色及び緑色の発光層110b1、110b2上にはフッ化リチウムを形成せず、カルシウムのみを形成しても良い。
【0042】
また、陰極12を形成するアルミニウムは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等からなることが好ましい。更にアルミニウム上にSiO、SiO2、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
【0043】
図3に示す発光素子部11上には、実際の有機EL装置では封止部が備えられる。この封止部は、例えば基板2の周囲に環状に封止樹脂を塗布し、さらに封止缶により封止することにより形成することができる。前記封止樹脂は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。この封止部は、陰極12または発光素子部11内に形成された発光層の酸化を防止する目的で設けられる。また、前記封止缶の内側には水、酸素等を吸収するゲッター剤を設け、封止缶の内部に侵入した水又は酸素を吸収できるようにしてもよい。
【0044】
(有機EL装置の製造方法)
次に、上記有機EL装置を製造する方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の製造方法は、(1)バンク部形成工程、(2)バンク部表面処理工程(撥液化工程)、(3)正孔注入/輸送層形成工程、(4)発光層形成工程、(5)陰極形成工程及び(6)封止工程等を有する。
なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じてその他の工程が追加されたり、上記の工程の一部が除かれたりする。また、(3)正孔注入/輸送層形成工程、(4)発光層形成工程は、液滴吐出装置を用いた液体吐出法(インクジェット法)を用いて行われる。
【0045】
(1)バンク部形成工程
バンク部形成工程では、基板2の所定位置に図4に示すようなバンク部112を形成する。バンク部112は、第1のバンク層として無機物バンク層112aが形成され、第2のバンク層として有機物バンク層112bが形成された構造を有している。なお、基板2には、薄膜トランジスタ(TFT)123及びこれに接続された画素電極111を予め形成しておくものとする。
【0046】
(1)−1 無機物バンク層112aの形成
まず、図4に示すように、基板上の所定位置に無機物バンク層112aを形成する。無機物バンク層112aが形成される位置は、第2層間絶縁膜144b及び画素電極111上である。なお、第2層間絶縁膜144bは薄膜トランジスタ、走査線、信号線、等が配置された回路素子部14上に形成されている。無機物バンク層112aは、例えば、SiO2、TiO2等の無機物材料にて構成することができる。これらの材料は、例えばCVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によって形成される。更に、無機物バンク層112aの膜厚は50nm〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。
【0047】
無機物バンク層112aは、層間絶縁層144及び画素電極111の全面に無機物膜を形成し、その後無機物膜をフォトリソグラフィ法等によりパターニングすることにより、開口部(下部開口部112c)を有する形にて形成される。なお、このとき、無機物バンク層112aは画素電極111の周縁部と一部重なるように形成され、これにより有機EL層110の平面的な発光領域が制御される。
【0048】
(1)−2 有機物バンク層112bの形成
次に、第2のバンク層としての有機物バンク層112bを形成する。
具体的には、図4に示すように、無機物バンク層112a上に有機物バンク層112bを形成する。有機物バンク層112bを構成する材料として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する材料を用いる。これらの材料を用い、有機物バンク層112bをフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。なお、パターニングする際、有機物バンク層112bに上部開口部112dを形成する。
【0049】
上部開口部112dは、図4に示すように、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cより広く形成する事が好ましい。更に、有機物バンク層112bは断面形状がテーパー状をなすことが好ましく、有機物バンク層112bの最底面では画素電極111の幅より狭く、有機物バンク層112bの最上面では画素電極111の幅とほぼ同一の幅に形成する事が好ましい。これにより、無機物バンク層112aの下部開口部112cを囲む第1積層部112eが、有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に突出された形になる。このようにして、有機物バンク層112bに形成された上部開口部112d、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cを連通させることにより、無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bを貫通する開口部112gが形成される。
【0050】
また、有機物バンク層112bの厚さは、0.1μm〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。このような範囲とする理由は以下の通りである。
すなわち、厚さが0.1μm未満では、後述する正孔注入/輸送層110a及び発光層110bの合計厚より有機物バンク層112bが薄くなり、発光層110bが上部開口部112dから溢れてしまうおそれがあるので好ましくない。また、厚さが3.5μmを超えると、上部開口部112dによる段差が大きくなり、上部開口部112dにおける陰極12のステップカバレッジが確保できなくなるので好ましくない。また、有機物バンク層112bの厚さを2μm以上とすれば、陰極12と駆動用の薄膜トランジスタ123との絶縁を高めることができる点で好ましい。
【0051】
(2)バンク部表面処理工程
さらに、形成されたバンク部112、及び画素電極111の表面は、プラズマ処理により適切な表面処理が施される。具体的には、バンク部112表面の撥液化処理、及び画素電極111の親液化処理を行う。
【0052】
まず、画素電極111の表面処理は、酸素ガスを用いたO2プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、酸素ガス流量50ml/min〜100ml/min、板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、画素電極111表面を含む領域を親液化することができる。また、このO2プラズマ処理により画素電極111表面の洗浄、及び仕事関数の調整も同時に行われる。
【0053】
次いで、バンク部112の表面処理は、テトラフルオロメタンを用いたCF4プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、テトラフルオロメタンガス流量50ml/min〜100ml/min、基板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、バンク部112の上部開口部112d及び上面112fを撥液化することができる。
【0054】
(3)正孔注入/輸送層形成工程
次に、発光素子を形成するために、まず画素電極111上に正孔注入/輸送層を形成する。本実施の形態の正孔注入/輸送層形成工程では、インクジェット法を採用しているが、スピンコート法等、その他の液相による塗布法を採用することができる。
【0055】
上述した通り、正孔注入/輸送層形成工程ではインクジェット法により、つまり液滴吐出装置として例えばインクジェット装置を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を画素電極111上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上に正孔注入/輸送層110aを形成する。本工程で用いる液状組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
【0056】
より具体的な組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、上記液状組成物の粘度は1mPa・s〜20mPa・s程度が好ましく、特に4mPa・s〜15mPa・s程度が良い。
【0057】
吐出された組成物の液滴110cは、図5に示すように、親液処理された画素電極111上に広がり、下部、上部開口部112c、112d内に充填される。仮に、第1組成物滴110cが所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが第1組成物滴110cで濡れることがなく、弾かれた第1組成物滴110cが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0058】
画素電極111上に吐出する組成物の量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、液状組成物中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により決定される。また、液状組成物の液滴110cは1回のみならず、数回に分けて同一の画素電極111上に吐出しても良い。この場合、各回における液状組成物の量は同一でも良く、各回毎に液状組成物を変えても良い。更に電極111の同一箇所のみならず、各回毎に電極111内の異なる箇所に前記液状組成物を吐出しても良い。
【0059】
次に、図6に示すような乾燥工程を行う。つまり、吐出後の第1組成物を乾燥処理し、第1組成物に含まれる溶媒を蒸発させ、正孔注入/輸送層110aを形成する。乾燥処理を行うと、液状組成物に含まれる溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bに近いところで起き、溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。これにより図6に示すように、画素電極111上に正孔注入/輸送層110aが形成される。
【0060】
上記の乾燥処理は、例えば窒素雰囲気中、室温で圧力を例えば133.3Pa(1Torr)程度にして行う。圧力が低すぎると組成物の液滴110cが突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、極性溶媒の蒸発速度が高まり、平坦な膜を形成する事ができない。乾燥処理後は、窒素中、好ましくは真空中で200℃で10分程度加熱する熱処理を行うことで、正孔注入/輸送層110a内に残存する極性溶媒や水を除去することが好ましい。
【0061】
上記の正孔注入/輸送層形成工程では、吐出された組成物の液滴110cが、下部、上部開口部112c、112d内に満たされる一方で、撥液処理された有機物バンク層112bで液状組成物がはじかれて下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。これにより、吐出した組成物の液滴110cを必ず下部、上部開口部112c、112d内に充填することができ、電極面111a上に正孔注入/輸送層110aを形成することができる。
【0062】
(4)発光層形成工程
発光層形成工程は、発光層形成材料塗布工程及び乾燥工程とからなる。
ここでは、発光層形成材料塗布工程に先立って、上述したバンク部表面処理工程と同様に、図6に示すように形成された正孔注入/輸送層110aの表面を酸素プラズマ処理により親液化する一方、周縁部110a2及びバンク部112表面についてはCF4プラズマ処理により撥液化するものとしている。そして、表面処理工程後、前述の正孔注入/輸送層形成工程と同様、インクジェット法により発光層形成用の液状組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。その後、吐出した液状組成物を乾燥処理(及び熱処理)して、正孔注入/輸送層110a上に発光層110bを形成する。
【0063】
ここで、本実施の形態では、発光層110bを形成するために2段階の成膜工程を施すものとしている。つまり、第1段階として正孔注入/輸送層110a上に仮塗膜を形成した後、第2段階として当該仮塗膜上に液状組成物を塗布して本塗膜を形成する手法を採用している。以下、各段階の工程について説明する。なお、本実施の形態では、仮塗膜の形成と本塗膜の形成の2段階を行うが、例えば仮塗膜を2段階ないし複数段階で形成するものとし、最後に本塗膜の形成を行うものとして、当該発光層110bを3段階以上の工程により形成するものとしても良い。
【0064】
(4)−1 仮塗膜形成工程
図7に、仮塗膜形成工程におけるインクジェット法による発光層形成用材料を含む液状組成物(仮塗膜形成用液状組成物)の塗布工程を示す。図示の通り、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対的に移動し、インクジェットヘッドに形成された吐出ノズルH6から各色(例えばここでは青色(B))発光層形成材料を含有する液状組成物(仮塗膜形成用液状組成物)が吐出される。吐出の際には、下部、上部開口部112c、112d内に位置する正孔注入/輸送層110aに吐出ノズルを対向させ、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対移動させながら仮塗膜形成用液状組成物が吐出される。吐出ノズルH6から吐出される液量は1滴当たりの液量が制御されている。このように液量が制御された液が吐出ノズルから吐出され、仮塗膜形成用液状組成物の液滴を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。
【0065】
本実施形態では、上記青色画素ABに対して青色発光層形成材料を含む仮塗膜形成用液状組成物110e1を配置した後、他の発光層用の仮塗膜形成用液状組成物110f1,110g1の吐出を行う。
つまり、図8に示すように、基板2上に滴下された青色画素AB用の仮塗膜形成用液状組成物110e1を乾燥させることなく、緑色画素AG用の液状組成物110f1及び赤色画素AR用の液状組成物110g1の吐出配置を行うようになっている。このように各色画素AR,AG,ABに対して仮塗膜を形成するための液状組成物110e1〜110g1の滴下を行うに際しては、各色用の液状組成物をそれぞれ充填した複数の吐出ヘッドを、それぞれ独立に走査して基板2上への液状組成物110e1〜110g1の配置を行ってもよく、前記複数の吐出ヘッドを一体的に走査することにより、ほぼ同時に液状組成物110e1〜110g1の配置を行うようにしてもよい。
【0066】
図8に示すように、吐出された各液状組成物110e1〜110g1は、正孔注入/輸送層110a上の全面に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。その一方で、撥液処理された上面112fでは各液状組成物110e1〜110g1が所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが液状組成物110e1〜110g1で濡れることがなく、液状組成物110e1〜110g1が下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0067】
各正孔注入/輸送層110a上に吐出する液状組成物量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする発光層110bの厚さ、液状組成物中の発光層材料の濃度、仮塗膜形成時と本塗膜形成時との間の発光層材料の振り分け比率等により決定される。また、液状組成物110e1〜110g1は1回のみならず、数回に分けて同一の正孔注入/輸送層110a上に吐出しても良い。この場合、各回における液状組成物の量は同一でも良く、各回毎に液状組成物の液量を変えても良い。更に正孔注入/輸送層110aの同一箇所のみならず、各回毎に正孔注入/輸送層110a内の異なる箇所に液状組成物を吐出配置しても良い。
【0068】
発光層形成材料としては、ポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いる事ができる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープすることにより用いることができる。そして、これら発光層形成材料を溶解ないし分散させるための溶媒は、各色毎に同じ種類のもの、具体的にはトリメチルベンゼンとフルオロベンゼン(フッ素基含有溶媒)との混合溶媒(トリメチルベンゼン:フルオロベンゼン=3:7(体積比))を用いた。
【0069】
次に、上記各色画素AR,AG,ABの仮塗膜形成用液状組成物110e1〜110g1を所定の位置に配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより仮塗膜110d1〜110d3が正孔注入/輸送層110a上の全面に形成される。すなわち、乾燥により液状組成物110e1〜110g1に含まれる溶媒が蒸発し、図9に示すような赤色(R)仮塗膜110d1、緑色(G)仮塗膜110d2、青色(B)仮塗膜110d3が形成される。
【0070】
また、各仮塗膜形成用液状組成物110e1〜110g1の乾燥は、真空乾燥により行うことが好ましく、具体例を挙げるならば、窒素雰囲気中、室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度とした条件により行うことができる。圧力が低すぎると液状組成物110e1〜110g1が突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、溶媒の蒸発速度が高まり、仮塗膜形成材料(すなわち発光層形成材料)が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。
【0071】
(4)−2 本塗膜形成工程
次に、形成した仮塗膜110d上に本塗膜形成用液状組成物を塗布した後、これを乾燥することで本塗膜を形成し、最終的に発光層を得る。図10に、本塗膜形成工程におけるインクジェット法による発光層形成用材料を含む液状組成物(本塗膜形成用液状組成物)の塗布工程を示す。図示の通り、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対的に移動し、インクジェットヘッドに形成された吐出ノズルH6から各色(例えばここでは青色(B))発光層形成材料を含有する液状組成物(本塗膜形成用液状組成物)が吐出される。吐出の際には、下部、上部開口部112c、112d内に位置する仮塗膜110dに吐出ノズルを対向させ、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対移動させながら本塗膜形成用液状組成物が吐出される。吐出ノズルH6から吐出される液量は1滴当たりの液量が制御されている。このように液量が制御された液が吐出ノズルから吐出され、本塗膜形成用液状組成物の液滴を仮塗膜110d上に吐出する。なお、ここでは本塗膜形成用液状組成物と仮塗膜形成用液状組成物とは、同一組成物が同一濃度からなるもので、色毎に同じ吐出ノズルから吐出されるものである。
【0072】
本実施形態では、上記青色画素ABに対して青色発光層形成材料を含む本塗膜形成用液状組成物110e1を配置した後、他の発光層用の本塗膜形成用液状組成物110f1,110g1の吐出を順次行うものとしている。
つまり、図11に示すように、仮塗膜110d3上に滴下された青色画素AB用の本塗膜形成用液状組成物110e2を乾燥させることなく、緑色画素AG用の液状組成物110f2及び赤色画素AR用の液状組成物110g2の吐出配置を行うようになっている。このように各色画素AR,AG,ABに対して本塗膜を形成するための液状組成物110e2〜110g2の滴下を行うに際しては、各色用の液状組成物をそれぞれ充填した複数の吐出ヘッドを、それぞれ独立に走査して基板2上への液状組成物110e2〜110g2の配置を行ってもよく、前記複数の吐出ヘッドを一体的に走査することにより、ほぼ同時に液状組成物110e2〜110g2の配置を行うようにしてもよい。
【0073】
図11に示すように、吐出された各液状組成物110e2〜110g2は、仮塗膜110d上に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。その一方で、撥液処理された上面112fでは各液状組成物110e2〜110g2が所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが液状組成物110e2〜110g2で濡れることがなく、液状組成物110e2〜110g2が下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0074】
各仮塗膜110d上に吐出する液状組成物量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする発光層110bの厚さ、液状組成物中の発光層材料の濃度、仮塗膜形成時と本塗膜形成時との間の発光層形成材料の振り分け比率等により決定される。ただし、本実施形態では、仮塗膜と本塗膜とで、その液状組成物を同一組成及び同一濃度で構成するものとしているため、その液量は形成する仮塗膜及び本塗膜の膜厚で決定される。
【0075】
次に、上記各色画素AR,AG,ABの本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2を所定の位置に配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより、図12に示すように発光層110bが形成される。すなわち、乾燥により液状組成物110e2〜110g2に含まれる溶媒が蒸発し、図12に示すような各色発光層110b1,110b2,110b3が形成される。
【0076】
なお、各本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2の乾燥は、真空乾燥により行うことが好ましく、具体例を挙げるならば、窒素雰囲気中、室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度とした条件により行うことができる。圧力が低すぎると液状組成物110e2〜110g2が突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、溶媒の蒸発速度が高まり、本塗膜形成材料(すなわち発光層形成材料)が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。
【0077】
次いで、上記真空乾燥が終了したならば、ホットプレート等の加熱手段を用いて発光層110bのアニール処理を行うことが好ましい。このアニール処理は、各有機EL層の発光特性を最大限に引き出せる共通の温度と時間で行う。このようにして、画素電極111上に正孔注入/輸送層110a及び発光層110bが形成される。
【0078】
ここで、本実施形態の発光層形成工程では、当該発光層110bを構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた仮塗膜形成用の液状組成物(第1溶液)110e1〜110g1を正孔注入/輸送層110a上に塗布し、該塗布した液状組成物110e1〜110g1を乾燥することで仮塗膜110d1〜110d3を形成した後、該仮塗膜110d1〜110d3上に、当該発光層110bを構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた本塗膜形成用の液状組成物(第2溶液)110e2〜110g2を仮塗膜110d(110d3〜110d1)上に塗布し、これを乾燥して本塗膜(すなわち発光層110b)を形成するものとしている。このような方法の採用により、発光層110bにおいて膜厚むらが生じたり、膜が部分的に形成されない等の欠陥が生じ難くなり、ひいては発光むら等が生じ難い発光特性の良好な有機EL装置を提供することが可能となる。
【0079】
特に本実施形態では正孔注入/輸送層110aが水溶性で、発光層110bが油溶性を示すものであるにも拘らず、本塗膜形成用液状組成物の塗布時において塗布むらが生じ難く、最終的に膜厚むらや膜抜けの発生を防止ないし抑制できるものとなる。つまり、仮塗膜形成用液状組成物110e1〜110g1により仮塗膜110dを形成した後、本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2により本塗膜(発光層)110bを形成することで、仮塗膜1110dにより正孔注入/輸送層110aが覆われた状態(仮塗膜110dには膜厚むらや膜抜けがあっても良い)で本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2を用いて本塗膜(発光層)110bを形成することとしているため、当該発光層110bには欠陥が殆ど発生しないのである。具体的には、本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2の塗布工程では、仮塗膜110d上全面に対して当該本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2が好適に濡れ広がり、その後の乾燥工程では、正孔注入/輸送層110a上に仮塗膜110dが残っていることに起因して乾燥過程において膜厚むらや膜抜け等が発生し難いものとなる。
【0080】
(5)陰極形成工程
次に、図13に示すように、画素電極(陽極)111と対をなす陰極12を形成する。即ち、各色発光層110b及び有機物バンク層112bを含む基板2上の領域全面に、例えばカルシウム層とアルミニウム層とを順次積層した構成の陰極12を形成する。これにより、各色発光層110bの形成領域全体に、陰極12が積層され、赤色、緑色、青色の各色に対応する有機EL素子がそれぞれ形成される。
【0081】
陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による発光層110bの損傷を防止できる点で好ましい。また陰極12上に、酸化防止のためにSiO2、SiN等の保護層を設けても良い。
【0082】
(6)封止工程
最後に、有機EL素子が形成された基板2と、別途用意した封止基板とを封止樹脂を介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止基板を配置する。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極12にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極12に侵入して陰極12が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0083】
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置が完成する。
【0084】
以上のような製造方法によると、形成される発光層110bにおいて膜厚むらが少なく、膜の一部が抜ける等の不具合が少ない有機EL装置を提供でき、ひいては当該有機EL装置の発光特性を高めることが可能となる。
【0085】
なお、本実施形態では、赤色画素AR、緑色画素AG、青色画素ABに対して、それぞれ赤色仮塗膜110d1、緑色仮塗膜110d2、青色仮塗膜110d3を形成するものとしたが、全画素に対して共通の仮塗膜110dを形成するものとしても良い。具体的には、各画素AR,AG,ABに対して青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた仮塗膜形成用液状組成物を用いて、該青色発光層形成材料からなる仮塗膜110dを各色画素AR,AG,ABに対して形成する。そして、その後、赤色画素ARに対しては赤色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた本塗膜形成用液状組成物を用いて、緑色画素AGに対しては緑色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた本塗膜形成用液状組成物を用いて、青色画素ABに対しては青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた本塗膜形成用液状組成物を用いて、各色発光層構成材料からなる本塗膜(発光層)110bを各色画素AR,AG,ABに対して形成することができる。
【0086】
このような方法によると、青色発光層が仮塗膜110dとして各色画素AR,AG,ABに形成されるが、該青色発光層は、より高波長の色である赤色、緑色の画素AR,AGにおいては当該色に吸収されるため、青色の仮塗膜110dの影響で赤色画素ARや緑色画素AGにおいて混色を生じることはない。その上、全画素共通に青色発光層の仮塗膜110dを形成することで、製造効率が格段に向上するとともに、上述した通り各色の本塗膜(発光層)110bの形成時に濡れ広がり性向上や塗膜欠陥防止に寄与することができ、ひいては発光特性に優れた有機EL装置を好適に製造することが可能となる。
【0087】
また、図14に示すように、正孔注入/輸送層110a上に電子ブロック層113を形成した場合にも、上記同様の本発明に係る方法を採用することができる。このような方法の採用により、電子ブロック層113上に形成される発光層110bの膜厚が均一となるとともに、当該発光層11bにおける膜の抜けが殆ど生じないものとなる。
【0088】
また、本実施形態では、仮塗膜形成用液状組成物110e1〜110g1の濃度を本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2の濃度と同一のものとしたが、これらを異ならせ、例えば仮塗膜形成用液状組成物110e1〜110g1の濃度を相対的に小さくすることができる。
【0089】
さらに、本実施形態では有機EL装置を例に説明したが、上述の製造方法を無機EL装置の製造時に採用できることは言うまでもない。或いは、第1の膜と第2の膜とを積層してなる構造を有する半導体装置、その他のデバイスにおいて、第2の膜を2段階以上に分けて形成することで、該第2の膜の膜厚均一化、膜の抜け等の不良発生防止を実現することが可能となる。
【0090】
(電子機器)
図15は、本発明の方法により製造された有機EL装置を具備した電子機器の一実施形態を示している。本実施形態の電子機器は、上述した方法により製造された有機EL装置を表示手段として備えている。ここでは、携帯電話の一例を斜視図で示しており、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置を用いた表示部を示している。このように有機EL装置を表示手段として備える電子機器では、良好な表示特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る方法により製造された有機EL装置の回路図。
【図2】同、平面構成図。
【図3】同、表示領域の断面構成図。
【図4】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図5】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図6】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図7】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図8】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図9】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図10】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図11】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図12】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図13】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図14】有機EL装置の一変形例を模式的に示す断面構成図。
【図15】電子機器の一例を示す斜視構成図。
【符号の説明】
【0092】
2…基板、110…有機EL層、110a…正孔注入/輸送層(正孔注入層,第1膜)、110b…発光層(第2膜)、111…画素電極、112…バンク部(隔壁部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスの製造方法、EL装置(エレクトロルミネッセンス装置)の製造方法、その製造方法により得られるEL装置、及び該EL装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機又は無機のEL材料(エレクトロルミネッセンス材料)をインク化し、このインクを基体上に吐出するインクジェット法により、EL装置を製造する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。このようなインクジェット法を用いて、マイクロオーダーの液滴を画素領域に配することにより、EL装置を製造することは、材料の利用効率を考えると、スピンコートなどの方法に比べて有効である。
【0003】
一般的な有機EL素子の構造においては、ホール輸送層と電子輸送性発光層とが分けられて積層されている。ホール輸送層の形成は、水溶性のポリマー(PEDOT)の水溶液を塗布して行い、その後、ホール輸送層上に有機溶媒溶解性(油溶性)の電子輸送性発光ポリマー溶液を塗布して、電子輸送性発光層を形成する。
【0004】
しかしながら、水溶性のポリマーであるPEDOT層上に、有機溶媒溶解性の発光ポリマー溶液を塗布すると、発光ポリマー溶液の濡れ性が悪く、画素内部において濡れ広がらない箇所が発生し、点灯時において欠陥箇所となる(輝点/暗点)。
【0005】
そのような問題を解決するために、例えば特許文献2では、発光ポリマー溶液の塗布前に溶液と同一の溶媒若しくは低濃度の発光ポリマー溶液を発光ポリマー溶液塗布前に、画素内全面に塗布し、それら液滴を呼び水とすることで、発光ポリマーを画素内に均一に塗布する方法が提案されている。また、特許文献3では、発光ポリマー溶液の塗布前に溶液と同一の溶媒をPEDOT上に塗布後乾燥し、PEDOT膜表面の濡れ性を向上させる方法(膜表面の濡れ改質方法)が提案されている。
【特許文献1】特許第3328297号公報
【特許文献2】特開2002−122727号公報
【特許文献3】特開2003−19731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に開示された方法では、画素内に均一に発光ポリマー溶液を塗布することは可能であるが、発光ポリマー溶液を乾燥させる際に、溶液量が減少するに伴いPEDOT層と発光ポリマー溶液との間で撥液が生じ、最終的に発光ポリマー膜に変換した際に濡れ広がっていない箇所(膜が存在しない箇所)が発生してしまう。つまり、特許文献2の方法では、溶液の濡れ広がりを促進できるが、溶媒を揮発する過程において濡れ広がらない(膜が存在しない箇所)箇所が撥液により発生し、膜とする際の欠陥を防ぐことは困難である。また、この手法では、先行して発光ポリマー溶液溶媒若しくは低濃度発光ポリマー溶液を塗布するために、後から塗布する発光ポリマー溶液は高濃度の溶液となり、溶液として発光ポリマーが溶解しない若しくは高濃度(高粘度)であるがために吐出不良(ノズル詰まり、飛行曲がり、サテライト)を発光させ、製品に欠陥を発生させる。
【0007】
さらに、上記特許文献3では、発光ポリマー溶液と同一の溶媒を塗布後乾燥させ、その後、発光ポリマー溶液を塗布した場合においても、PEDOT膜上の発光ポリマー溶液の濡れ性は改善されず、画素内部において濡れ広がらない箇所が生じる。また、濡れ広がっても、乾燥時における溶液量が減少するに伴いPEDOT層と発光ポリマー溶液との間で撥液性が生じ、最終的に発光ポリマー膜に変換した際に濡れ広がっていない箇所(膜が発生していない箇所)が発生してしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、EL装置に限らず電子デバイス全般において、溶解性の異なる2つの膜を形成する際に、膜の抜け等の欠陥が生じ難い方法を提供することを目的としている。同様に、溶解性の異なる2つの膜を好適に形成することができ、信頼性の高いEL装置を製造することが可能なEL装置の製造方法と、該製造方法により製造されたEL装置と、さらには該EL装置を備えた電子機器とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のデバイスの製造方法は、第1膜を形成する工程と、形成した第1膜上に第2膜を形成する工程とを有し、前記第2膜を形成する工程は、当該第2膜を構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第1溶液を前記第1膜上に塗布する工程と、塗布した第1溶液を乾燥して仮塗膜を形成する工程と、前記仮塗膜上に、当該第2膜を構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第2溶液を前記仮塗膜上に塗布する工程と、塗布した第2溶液を乾燥して本塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
このような製造方法によると、膜形成時に塗布むらが生じ難く、膜厚むらや膜抜け(膜が部分的に形成されていないこと)等の欠陥が少ない第2膜を形成することができ、ひいては信頼性の高いデバイスを提供することが可能となる。特に第1膜と第2膜の物性が異なる場合、具体的には第1膜と第2膜の溶解性がそれぞれ異なる場合(例えば第1膜が水溶性で第2膜が油溶性)にも、第2膜形成時において塗布むらが生じ難く、膜厚むらや膜抜けの発生を防止ないし抑制できるものとなる。つまり、第1溶液により仮塗膜を形成した後、第2溶液により本塗膜を形成することで、仮塗膜により第1膜が覆われた状態(仮塗膜には膜厚むらや膜抜けがあっても良い)で第2溶液を用いて本塗膜を形成することとしているため、第2膜には欠陥が殆ど発生しないのである。具体的には、第2溶液の塗布工程では、仮塗膜の全面に対して当該第2溶液が好適に濡れ広がり、その後の乾燥工程では、第1膜上に仮塗膜が残っていることに起因して乾燥過程において膜厚むらや膜抜け等が発生し難いものとなる。なお、第2膜の形成工程は、仮塗膜と本塗膜の形成工程を含むが、これらは2段階で行うものに限ることなく、例えば仮塗膜を2段階ないし複数段階で形成するものとし、最後に本塗膜の形成を行うものとしても良い。
【0011】
前記第1溶液は、前記第2膜の形成領域全面に塗布することが好ましい。このように第1溶液を第2膜の形成領域全面に塗布した場合、第2膜を形成する領域において第1膜の表面が漏れなく改質され、第2溶液の塗布工程時の濡れ広がり性、及び第2溶液の乾燥工程時の塗膜欠陥(膜厚むらや膜抜け等)の発生防止を確実に行うことができるようになる。
【0012】
前記第1溶液と前記第2溶液は同一の濃度であることが好ましい。この場合、第1溶液と第2溶液とで同一の塗布装置により当該塗布工程を行うことができ、つまり塗布装置を複数台用意する必要がなくなり経済的となる。
【0013】
なお、本発明に言うデバイスは、少なくとも第1膜と第2膜とを積層して有するもので、配線基板、半導体装置、液晶装置、EL装置等、その他の電子部品、電気光学装置全般を言うものである。
【0014】
次に、上記課題を解決するために、本発明のEL装置の製造方法は、正孔注入層を形成する工程と、形成した正孔注入層上に発光層を形成する工程とを有し、前記発光層を形成する工程は、当該発光層を構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第1溶液を前記正孔注入層上に塗布する工程と、塗布した第1溶液を乾燥して仮塗膜を形成する工程と、前記仮塗膜上に、当該発光層を構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第2溶液を前記仮塗膜上に塗布する工程と、塗布した第2溶液を乾燥して本塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
このような製造方法によると、膜形成時に塗布むらが生じ難く、膜厚むらや膜抜け(膜が部分的に形成されていないこと)等の欠陥が少ない発光層を形成することができ、ひいては発光むら等が生じ難い発光特性の良好なEL装置を提供することが可能となる。特に正孔注入層と発光層の物性が異なる場合、具体的には正孔注入層と発光層の溶解性がそれぞれ異なる場合(例えば正孔注入層が水溶性で発光層が油溶性)にも、発光層形成時において塗布むらが生じ難く、膜厚むらや膜抜けの発生を防止ないし抑制できるものとなる。つまり、第1溶液により仮塗膜を形成した後、第2溶液により本塗膜を形成することで、仮塗膜により正孔注入層が覆われた状態(仮塗膜には膜厚むらや膜抜けがあっても良い)で第2溶液を用いて本塗膜を形成することとしているため、発光層には欠陥が殆ど発生しないのである。具体的には、第2溶液の塗布工程では、仮塗膜の全面に対して当該第2溶液が好適に濡れ広がり、その後の乾燥工程では、正孔注入層上に仮塗膜が残っていることに起因して乾燥過程において膜厚むらや膜抜け等が発生し難いものとなる。
【0016】
前記第1溶液は、前記発光層の形成領域全面に塗布することが好ましい。このように第1溶液を発光層の形成領域全面に塗布した場合、発光層を形成する領域において正孔注入層の表面が漏れなく改質され、第2溶液の塗布工程時の濡れ広がり性、及び第2溶液の乾燥工程時の塗膜欠陥(膜厚むらや膜抜け等)の発生防止を確実に行うことができるようになる。
【0017】
前記第1溶液と前記第2溶液は同一の濃度であることが好ましい。この場合、第1溶液と第2溶液とで同一の塗布装置により当該塗布工程を行うことができ、つまり塗布装置を複数台用意する必要がなくなり経済的となる。
【0018】
また、前記発光層は、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層が、それぞれ赤色画素、緑色画素、青色画素に形成されてなるものであって、前記発光層を形成する工程において、前記仮塗膜を形成する工程では、前記第1溶液として青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた青色発光層形成溶液を用いて、該青色発光層構成材料からなる仮塗膜を各色画素に対して形成した後、前記本塗膜を形成する工程では、前記第2溶液として、前記赤色画素に対しては赤色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた赤色発光層形成溶液を用いて、前記緑色画素に対しては緑色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた緑色発光層形成溶液を用いて、前記青色画素に対しては青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた青色発光層形成溶液を用いて、各色発光層からなる本塗膜を各色画素に対して形成することができる。
【0019】
このような方法によると、青色発光層が仮塗膜として各色画素に形成されるが、該青色発光層は、より高波長の色である赤色、緑色の画素においては当該色に吸収されるため、青色の仮塗膜の影響で赤色画素や緑色画素において混色を生じることがない。その上、青色発光層の仮塗膜が、上述した通り各色の本塗膜の形成時に濡れ広がり性向上や塗膜欠陥防止に寄与することとなり、ひいては発光特性に優れたEL装置を好適に製造することが可能となる。
【0020】
次に、上記課題を解決するために、本発明のEL装置は、上記方法を用いて製造されたことを特徴とする。このようなEL装置は、発光むら等が生じ難く、発光特性が優れたものとなる。また、本発明の電子機器は、上記EL装置を備えることを特徴とする。このようなEL装置を例えば表示部に具備した電子機器は、表示特性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、本発明に係る製造方法により製造されるEL装置の一例として有機EL装置の構成について説明した後、その製造方法を説明するものとする。また、本実施の形態では、各図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0022】
(EL装置)
図1は、本発明に係る製造方法により製造された有機EL装置について、その配線構造を示す説明図であって、図2は、該有機EL装置の平面模式図、図3は、該有機EL装置の表示領域の断面模式図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101及び信号線102の各交点付近に、画素領域Pが設けられている。
【0024】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。
更に、画素領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ122と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(陽極)111と、この画素電極111と対向電極(陰極)12との間に挟み込まれた有機EL層110とが設けられている。画素電極111と対向電極12と有機EL層110により、発光素子が構成されている。
【0025】
走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ122がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、更に有機EL層110を介して陰極12に電流が流れる。有機EL層110では、流れる電流量に応じて発光が生じる。
【0026】
本実施形態の有機EL装置は、図3に示すように、ガラス等からなる透明な基板2と、マトリックス状に配置された発光素子を具備して基板2上に形成された発光素子部11と、発光素子部11上に形成された陰極12とを具備している。ここで、発光素子部11と陰極12とにより表示素子10が構成される。
基板2は、例えばガラス等の透明基板であり、図2に示すように、基板2の中央に位置する表示領域2aと、基板2の周縁に位置して表示領域2aを囲む非表示領域2cとに区画されている。なお、表示領域2aは、マトリックス状に配置された発光素子によって形成される領域であり。
【0027】
また、非表示領域2cには、前述の電源線103(103R、103G、103B)が配線されている。表示領域2aの両側には、前述の走査側駆動回路105、105が配置されている。更に、走査側駆動回路105、105の両側には、走査側駆動回路105、105に接続される駆動回路用制御信号配線105aと駆動回路用電源配線105bとが設けられている。表示領域2aの図示上側には製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行う検査回路106が配置されている。
【0028】
図3の断面構成図には、3つの画素領域Aが図示されている。本実施形態の有機EL装置では、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、有機EL層110が形成された発光素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されており、有機EL層110から基板2側に発せられた光が、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、有機EL層110から基板2の反対側に発せられた光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。なお、上記陰極12として、透明な材料を用いるならば、陰極側から発光する光を出射させることができる。透明な陰極材料としては、ITO(インジウムスズ酸化物)、Pt、Ir、Ni、もしくはPdを挙げることができる。
【0029】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度リンイオン打ち込みにより形成されている。前記リンイオンが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
【0030】
また、前記下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
【0031】
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール146が電源線103に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。
【0032】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された有機EL層110と、各画素電極111及び有機EL層110の間に備えられて各有機EL層110を区画するバンク(隔壁)部112とを主体として構成されている。有機EL層110上には陰極12が配置されている。これら画素電極111、有機EL層110及び陰極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形状にパターン形成されている。この各画素電極111…を仕切る形にてバンク部112が備えられている。
【0033】
バンク部112は、図3に示すように、基板2側に位置する第1隔壁部としての無機物バンク層(第1バンク層)112aと、基板2から離れて位置する第2隔壁部としての有機物バンク層(第2バンク層)112bとが積層された構成を備えている。無機物バンク層112aは、例えばTiO2やSiO2等により形成され、有機物バンク層112bは、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等により形成される。
【0034】
無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bは、画素電極111の周縁部上に乗り上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが部分的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bの縁端よりも画素電極111の中央側に更に突出するように形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部(突出部)112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
【0035】
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図3に示すように、下部開口部112cより間口が広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図3に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜した形状となる。このようにして、バンク部112には、下部開口部112c及び上部開口部112dが連通された開口部112gが形成されている。
【0036】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面であり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、テトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。
【0037】
有機EL層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層(第1膜、若しくは正孔注入層)110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層(第2膜)110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入/輸送層110a内部において正孔を輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子が再結合し、発光が行われる。
【0038】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極111上に形成されている。また、発光層110bは、正孔注入/輸送層110a上に形成されており、その厚さが50nm〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3の3種類を有し、図2に示したように、各発光層110b1〜110b3がストライプ配置されている。そして、図3に示すように、赤色発光層110b1は赤色画素ARを、緑色発光層110b2は緑色画素AGを、青色発光層110b3は青色画素ABを構成している。
【0039】
なお、正孔注入/輸送層110aを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層110bを形成する材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。このような材料の採用により、正孔注入/輸送層110aは水溶性(親水性)を示す一方、発光層110bは油溶性(疎水性)を示すこととなる。
【0040】
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって有機EL層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。
【0041】
また、発光層110bと陰極12との間に発光効率を高めるためのLiFを形成する場合もある。なお、赤色及び緑色の発光層110b1、1110b2にはフッ化リチウムに限らず、他の材料を用いても良い。従ってこの場合は青色(B)発光層110b3のみにフッ化リチウムからなる層を形成し、他の赤色及び緑色の発光層110b1、110b2にはフッ化リチウム以外のものを積層しても良い。また、赤色及び緑色の発光層110b1、110b2上にはフッ化リチウムを形成せず、カルシウムのみを形成しても良い。
【0042】
また、陰極12を形成するアルミニウムは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等からなることが好ましい。更にアルミニウム上にSiO、SiO2、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
【0043】
図3に示す発光素子部11上には、実際の有機EL装置では封止部が備えられる。この封止部は、例えば基板2の周囲に環状に封止樹脂を塗布し、さらに封止缶により封止することにより形成することができる。前記封止樹脂は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。この封止部は、陰極12または発光素子部11内に形成された発光層の酸化を防止する目的で設けられる。また、前記封止缶の内側には水、酸素等を吸収するゲッター剤を設け、封止缶の内部に侵入した水又は酸素を吸収できるようにしてもよい。
【0044】
(有機EL装置の製造方法)
次に、上記有機EL装置を製造する方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の製造方法は、(1)バンク部形成工程、(2)バンク部表面処理工程(撥液化工程)、(3)正孔注入/輸送層形成工程、(4)発光層形成工程、(5)陰極形成工程及び(6)封止工程等を有する。
なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じてその他の工程が追加されたり、上記の工程の一部が除かれたりする。また、(3)正孔注入/輸送層形成工程、(4)発光層形成工程は、液滴吐出装置を用いた液体吐出法(インクジェット法)を用いて行われる。
【0045】
(1)バンク部形成工程
バンク部形成工程では、基板2の所定位置に図4に示すようなバンク部112を形成する。バンク部112は、第1のバンク層として無機物バンク層112aが形成され、第2のバンク層として有機物バンク層112bが形成された構造を有している。なお、基板2には、薄膜トランジスタ(TFT)123及びこれに接続された画素電極111を予め形成しておくものとする。
【0046】
(1)−1 無機物バンク層112aの形成
まず、図4に示すように、基板上の所定位置に無機物バンク層112aを形成する。無機物バンク層112aが形成される位置は、第2層間絶縁膜144b及び画素電極111上である。なお、第2層間絶縁膜144bは薄膜トランジスタ、走査線、信号線、等が配置された回路素子部14上に形成されている。無機物バンク層112aは、例えば、SiO2、TiO2等の無機物材料にて構成することができる。これらの材料は、例えばCVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によって形成される。更に、無機物バンク層112aの膜厚は50nm〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。
【0047】
無機物バンク層112aは、層間絶縁層144及び画素電極111の全面に無機物膜を形成し、その後無機物膜をフォトリソグラフィ法等によりパターニングすることにより、開口部(下部開口部112c)を有する形にて形成される。なお、このとき、無機物バンク層112aは画素電極111の周縁部と一部重なるように形成され、これにより有機EL層110の平面的な発光領域が制御される。
【0048】
(1)−2 有機物バンク層112bの形成
次に、第2のバンク層としての有機物バンク層112bを形成する。
具体的には、図4に示すように、無機物バンク層112a上に有機物バンク層112bを形成する。有機物バンク層112bを構成する材料として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する材料を用いる。これらの材料を用い、有機物バンク層112bをフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。なお、パターニングする際、有機物バンク層112bに上部開口部112dを形成する。
【0049】
上部開口部112dは、図4に示すように、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cより広く形成する事が好ましい。更に、有機物バンク層112bは断面形状がテーパー状をなすことが好ましく、有機物バンク層112bの最底面では画素電極111の幅より狭く、有機物バンク層112bの最上面では画素電極111の幅とほぼ同一の幅に形成する事が好ましい。これにより、無機物バンク層112aの下部開口部112cを囲む第1積層部112eが、有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に突出された形になる。このようにして、有機物バンク層112bに形成された上部開口部112d、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cを連通させることにより、無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bを貫通する開口部112gが形成される。
【0050】
また、有機物バンク層112bの厚さは、0.1μm〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。このような範囲とする理由は以下の通りである。
すなわち、厚さが0.1μm未満では、後述する正孔注入/輸送層110a及び発光層110bの合計厚より有機物バンク層112bが薄くなり、発光層110bが上部開口部112dから溢れてしまうおそれがあるので好ましくない。また、厚さが3.5μmを超えると、上部開口部112dによる段差が大きくなり、上部開口部112dにおける陰極12のステップカバレッジが確保できなくなるので好ましくない。また、有機物バンク層112bの厚さを2μm以上とすれば、陰極12と駆動用の薄膜トランジスタ123との絶縁を高めることができる点で好ましい。
【0051】
(2)バンク部表面処理工程
さらに、形成されたバンク部112、及び画素電極111の表面は、プラズマ処理により適切な表面処理が施される。具体的には、バンク部112表面の撥液化処理、及び画素電極111の親液化処理を行う。
【0052】
まず、画素電極111の表面処理は、酸素ガスを用いたO2プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、酸素ガス流量50ml/min〜100ml/min、板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、画素電極111表面を含む領域を親液化することができる。また、このO2プラズマ処理により画素電極111表面の洗浄、及び仕事関数の調整も同時に行われる。
【0053】
次いで、バンク部112の表面処理は、テトラフルオロメタンを用いたCF4プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、テトラフルオロメタンガス流量50ml/min〜100ml/min、基板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、バンク部112の上部開口部112d及び上面112fを撥液化することができる。
【0054】
(3)正孔注入/輸送層形成工程
次に、発光素子を形成するために、まず画素電極111上に正孔注入/輸送層を形成する。本実施の形態の正孔注入/輸送層形成工程では、インクジェット法を採用しているが、スピンコート法等、その他の液相による塗布法を採用することができる。
【0055】
上述した通り、正孔注入/輸送層形成工程ではインクジェット法により、つまり液滴吐出装置として例えばインクジェット装置を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を画素電極111上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上に正孔注入/輸送層110aを形成する。本工程で用いる液状組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
【0056】
より具体的な組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、上記液状組成物の粘度は1mPa・s〜20mPa・s程度が好ましく、特に4mPa・s〜15mPa・s程度が良い。
【0057】
吐出された組成物の液滴110cは、図5に示すように、親液処理された画素電極111上に広がり、下部、上部開口部112c、112d内に充填される。仮に、第1組成物滴110cが所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが第1組成物滴110cで濡れることがなく、弾かれた第1組成物滴110cが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0058】
画素電極111上に吐出する組成物の量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、液状組成物中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により決定される。また、液状組成物の液滴110cは1回のみならず、数回に分けて同一の画素電極111上に吐出しても良い。この場合、各回における液状組成物の量は同一でも良く、各回毎に液状組成物を変えても良い。更に電極111の同一箇所のみならず、各回毎に電極111内の異なる箇所に前記液状組成物を吐出しても良い。
【0059】
次に、図6に示すような乾燥工程を行う。つまり、吐出後の第1組成物を乾燥処理し、第1組成物に含まれる溶媒を蒸発させ、正孔注入/輸送層110aを形成する。乾燥処理を行うと、液状組成物に含まれる溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bに近いところで起き、溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。これにより図6に示すように、画素電極111上に正孔注入/輸送層110aが形成される。
【0060】
上記の乾燥処理は、例えば窒素雰囲気中、室温で圧力を例えば133.3Pa(1Torr)程度にして行う。圧力が低すぎると組成物の液滴110cが突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、極性溶媒の蒸発速度が高まり、平坦な膜を形成する事ができない。乾燥処理後は、窒素中、好ましくは真空中で200℃で10分程度加熱する熱処理を行うことで、正孔注入/輸送層110a内に残存する極性溶媒や水を除去することが好ましい。
【0061】
上記の正孔注入/輸送層形成工程では、吐出された組成物の液滴110cが、下部、上部開口部112c、112d内に満たされる一方で、撥液処理された有機物バンク層112bで液状組成物がはじかれて下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。これにより、吐出した組成物の液滴110cを必ず下部、上部開口部112c、112d内に充填することができ、電極面111a上に正孔注入/輸送層110aを形成することができる。
【0062】
(4)発光層形成工程
発光層形成工程は、発光層形成材料塗布工程及び乾燥工程とからなる。
ここでは、発光層形成材料塗布工程に先立って、上述したバンク部表面処理工程と同様に、図6に示すように形成された正孔注入/輸送層110aの表面を酸素プラズマ処理により親液化する一方、周縁部110a2及びバンク部112表面についてはCF4プラズマ処理により撥液化するものとしている。そして、表面処理工程後、前述の正孔注入/輸送層形成工程と同様、インクジェット法により発光層形成用の液状組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。その後、吐出した液状組成物を乾燥処理(及び熱処理)して、正孔注入/輸送層110a上に発光層110bを形成する。
【0063】
ここで、本実施の形態では、発光層110bを形成するために2段階の成膜工程を施すものとしている。つまり、第1段階として正孔注入/輸送層110a上に仮塗膜を形成した後、第2段階として当該仮塗膜上に液状組成物を塗布して本塗膜を形成する手法を採用している。以下、各段階の工程について説明する。なお、本実施の形態では、仮塗膜の形成と本塗膜の形成の2段階を行うが、例えば仮塗膜を2段階ないし複数段階で形成するものとし、最後に本塗膜の形成を行うものとして、当該発光層110bを3段階以上の工程により形成するものとしても良い。
【0064】
(4)−1 仮塗膜形成工程
図7に、仮塗膜形成工程におけるインクジェット法による発光層形成用材料を含む液状組成物(仮塗膜形成用液状組成物)の塗布工程を示す。図示の通り、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対的に移動し、インクジェットヘッドに形成された吐出ノズルH6から各色(例えばここでは青色(B))発光層形成材料を含有する液状組成物(仮塗膜形成用液状組成物)が吐出される。吐出の際には、下部、上部開口部112c、112d内に位置する正孔注入/輸送層110aに吐出ノズルを対向させ、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対移動させながら仮塗膜形成用液状組成物が吐出される。吐出ノズルH6から吐出される液量は1滴当たりの液量が制御されている。このように液量が制御された液が吐出ノズルから吐出され、仮塗膜形成用液状組成物の液滴を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。
【0065】
本実施形態では、上記青色画素ABに対して青色発光層形成材料を含む仮塗膜形成用液状組成物110e1を配置した後、他の発光層用の仮塗膜形成用液状組成物110f1,110g1の吐出を行う。
つまり、図8に示すように、基板2上に滴下された青色画素AB用の仮塗膜形成用液状組成物110e1を乾燥させることなく、緑色画素AG用の液状組成物110f1及び赤色画素AR用の液状組成物110g1の吐出配置を行うようになっている。このように各色画素AR,AG,ABに対して仮塗膜を形成するための液状組成物110e1〜110g1の滴下を行うに際しては、各色用の液状組成物をそれぞれ充填した複数の吐出ヘッドを、それぞれ独立に走査して基板2上への液状組成物110e1〜110g1の配置を行ってもよく、前記複数の吐出ヘッドを一体的に走査することにより、ほぼ同時に液状組成物110e1〜110g1の配置を行うようにしてもよい。
【0066】
図8に示すように、吐出された各液状組成物110e1〜110g1は、正孔注入/輸送層110a上の全面に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。その一方で、撥液処理された上面112fでは各液状組成物110e1〜110g1が所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが液状組成物110e1〜110g1で濡れることがなく、液状組成物110e1〜110g1が下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0067】
各正孔注入/輸送層110a上に吐出する液状組成物量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする発光層110bの厚さ、液状組成物中の発光層材料の濃度、仮塗膜形成時と本塗膜形成時との間の発光層材料の振り分け比率等により決定される。また、液状組成物110e1〜110g1は1回のみならず、数回に分けて同一の正孔注入/輸送層110a上に吐出しても良い。この場合、各回における液状組成物の量は同一でも良く、各回毎に液状組成物の液量を変えても良い。更に正孔注入/輸送層110aの同一箇所のみならず、各回毎に正孔注入/輸送層110a内の異なる箇所に液状組成物を吐出配置しても良い。
【0068】
発光層形成材料としては、ポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いる事ができる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープすることにより用いることができる。そして、これら発光層形成材料を溶解ないし分散させるための溶媒は、各色毎に同じ種類のもの、具体的にはトリメチルベンゼンとフルオロベンゼン(フッ素基含有溶媒)との混合溶媒(トリメチルベンゼン:フルオロベンゼン=3:7(体積比))を用いた。
【0069】
次に、上記各色画素AR,AG,ABの仮塗膜形成用液状組成物110e1〜110g1を所定の位置に配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより仮塗膜110d1〜110d3が正孔注入/輸送層110a上の全面に形成される。すなわち、乾燥により液状組成物110e1〜110g1に含まれる溶媒が蒸発し、図9に示すような赤色(R)仮塗膜110d1、緑色(G)仮塗膜110d2、青色(B)仮塗膜110d3が形成される。
【0070】
また、各仮塗膜形成用液状組成物110e1〜110g1の乾燥は、真空乾燥により行うことが好ましく、具体例を挙げるならば、窒素雰囲気中、室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度とした条件により行うことができる。圧力が低すぎると液状組成物110e1〜110g1が突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、溶媒の蒸発速度が高まり、仮塗膜形成材料(すなわち発光層形成材料)が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。
【0071】
(4)−2 本塗膜形成工程
次に、形成した仮塗膜110d上に本塗膜形成用液状組成物を塗布した後、これを乾燥することで本塗膜を形成し、最終的に発光層を得る。図10に、本塗膜形成工程におけるインクジェット法による発光層形成用材料を含む液状組成物(本塗膜形成用液状組成物)の塗布工程を示す。図示の通り、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対的に移動し、インクジェットヘッドに形成された吐出ノズルH6から各色(例えばここでは青色(B))発光層形成材料を含有する液状組成物(本塗膜形成用液状組成物)が吐出される。吐出の際には、下部、上部開口部112c、112d内に位置する仮塗膜110dに吐出ノズルを対向させ、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対移動させながら本塗膜形成用液状組成物が吐出される。吐出ノズルH6から吐出される液量は1滴当たりの液量が制御されている。このように液量が制御された液が吐出ノズルから吐出され、本塗膜形成用液状組成物の液滴を仮塗膜110d上に吐出する。なお、ここでは本塗膜形成用液状組成物と仮塗膜形成用液状組成物とは、同一組成物が同一濃度からなるもので、色毎に同じ吐出ノズルから吐出されるものである。
【0072】
本実施形態では、上記青色画素ABに対して青色発光層形成材料を含む本塗膜形成用液状組成物110e1を配置した後、他の発光層用の本塗膜形成用液状組成物110f1,110g1の吐出を順次行うものとしている。
つまり、図11に示すように、仮塗膜110d3上に滴下された青色画素AB用の本塗膜形成用液状組成物110e2を乾燥させることなく、緑色画素AG用の液状組成物110f2及び赤色画素AR用の液状組成物110g2の吐出配置を行うようになっている。このように各色画素AR,AG,ABに対して本塗膜を形成するための液状組成物110e2〜110g2の滴下を行うに際しては、各色用の液状組成物をそれぞれ充填した複数の吐出ヘッドを、それぞれ独立に走査して基板2上への液状組成物110e2〜110g2の配置を行ってもよく、前記複数の吐出ヘッドを一体的に走査することにより、ほぼ同時に液状組成物110e2〜110g2の配置を行うようにしてもよい。
【0073】
図11に示すように、吐出された各液状組成物110e2〜110g2は、仮塗膜110d上に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。その一方で、撥液処理された上面112fでは各液状組成物110e2〜110g2が所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが液状組成物110e2〜110g2で濡れることがなく、液状組成物110e2〜110g2が下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0074】
各仮塗膜110d上に吐出する液状組成物量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする発光層110bの厚さ、液状組成物中の発光層材料の濃度、仮塗膜形成時と本塗膜形成時との間の発光層形成材料の振り分け比率等により決定される。ただし、本実施形態では、仮塗膜と本塗膜とで、その液状組成物を同一組成及び同一濃度で構成するものとしているため、その液量は形成する仮塗膜及び本塗膜の膜厚で決定される。
【0075】
次に、上記各色画素AR,AG,ABの本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2を所定の位置に配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより、図12に示すように発光層110bが形成される。すなわち、乾燥により液状組成物110e2〜110g2に含まれる溶媒が蒸発し、図12に示すような各色発光層110b1,110b2,110b3が形成される。
【0076】
なお、各本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2の乾燥は、真空乾燥により行うことが好ましく、具体例を挙げるならば、窒素雰囲気中、室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度とした条件により行うことができる。圧力が低すぎると液状組成物110e2〜110g2が突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、溶媒の蒸発速度が高まり、本塗膜形成材料(すなわち発光層形成材料)が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。
【0077】
次いで、上記真空乾燥が終了したならば、ホットプレート等の加熱手段を用いて発光層110bのアニール処理を行うことが好ましい。このアニール処理は、各有機EL層の発光特性を最大限に引き出せる共通の温度と時間で行う。このようにして、画素電極111上に正孔注入/輸送層110a及び発光層110bが形成される。
【0078】
ここで、本実施形態の発光層形成工程では、当該発光層110bを構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた仮塗膜形成用の液状組成物(第1溶液)110e1〜110g1を正孔注入/輸送層110a上に塗布し、該塗布した液状組成物110e1〜110g1を乾燥することで仮塗膜110d1〜110d3を形成した後、該仮塗膜110d1〜110d3上に、当該発光層110bを構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた本塗膜形成用の液状組成物(第2溶液)110e2〜110g2を仮塗膜110d(110d3〜110d1)上に塗布し、これを乾燥して本塗膜(すなわち発光層110b)を形成するものとしている。このような方法の採用により、発光層110bにおいて膜厚むらが生じたり、膜が部分的に形成されない等の欠陥が生じ難くなり、ひいては発光むら等が生じ難い発光特性の良好な有機EL装置を提供することが可能となる。
【0079】
特に本実施形態では正孔注入/輸送層110aが水溶性で、発光層110bが油溶性を示すものであるにも拘らず、本塗膜形成用液状組成物の塗布時において塗布むらが生じ難く、最終的に膜厚むらや膜抜けの発生を防止ないし抑制できるものとなる。つまり、仮塗膜形成用液状組成物110e1〜110g1により仮塗膜110dを形成した後、本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2により本塗膜(発光層)110bを形成することで、仮塗膜1110dにより正孔注入/輸送層110aが覆われた状態(仮塗膜110dには膜厚むらや膜抜けがあっても良い)で本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2を用いて本塗膜(発光層)110bを形成することとしているため、当該発光層110bには欠陥が殆ど発生しないのである。具体的には、本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2の塗布工程では、仮塗膜110d上全面に対して当該本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2が好適に濡れ広がり、その後の乾燥工程では、正孔注入/輸送層110a上に仮塗膜110dが残っていることに起因して乾燥過程において膜厚むらや膜抜け等が発生し難いものとなる。
【0080】
(5)陰極形成工程
次に、図13に示すように、画素電極(陽極)111と対をなす陰極12を形成する。即ち、各色発光層110b及び有機物バンク層112bを含む基板2上の領域全面に、例えばカルシウム層とアルミニウム層とを順次積層した構成の陰極12を形成する。これにより、各色発光層110bの形成領域全体に、陰極12が積層され、赤色、緑色、青色の各色に対応する有機EL素子がそれぞれ形成される。
【0081】
陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による発光層110bの損傷を防止できる点で好ましい。また陰極12上に、酸化防止のためにSiO2、SiN等の保護層を設けても良い。
【0082】
(6)封止工程
最後に、有機EL素子が形成された基板2と、別途用意した封止基板とを封止樹脂を介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止基板を配置する。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極12にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極12に侵入して陰極12が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0083】
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置が完成する。
【0084】
以上のような製造方法によると、形成される発光層110bにおいて膜厚むらが少なく、膜の一部が抜ける等の不具合が少ない有機EL装置を提供でき、ひいては当該有機EL装置の発光特性を高めることが可能となる。
【0085】
なお、本実施形態では、赤色画素AR、緑色画素AG、青色画素ABに対して、それぞれ赤色仮塗膜110d1、緑色仮塗膜110d2、青色仮塗膜110d3を形成するものとしたが、全画素に対して共通の仮塗膜110dを形成するものとしても良い。具体的には、各画素AR,AG,ABに対して青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた仮塗膜形成用液状組成物を用いて、該青色発光層形成材料からなる仮塗膜110dを各色画素AR,AG,ABに対して形成する。そして、その後、赤色画素ARに対しては赤色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた本塗膜形成用液状組成物を用いて、緑色画素AGに対しては緑色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた本塗膜形成用液状組成物を用いて、青色画素ABに対しては青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた本塗膜形成用液状組成物を用いて、各色発光層構成材料からなる本塗膜(発光層)110bを各色画素AR,AG,ABに対して形成することができる。
【0086】
このような方法によると、青色発光層が仮塗膜110dとして各色画素AR,AG,ABに形成されるが、該青色発光層は、より高波長の色である赤色、緑色の画素AR,AGにおいては当該色に吸収されるため、青色の仮塗膜110dの影響で赤色画素ARや緑色画素AGにおいて混色を生じることはない。その上、全画素共通に青色発光層の仮塗膜110dを形成することで、製造効率が格段に向上するとともに、上述した通り各色の本塗膜(発光層)110bの形成時に濡れ広がり性向上や塗膜欠陥防止に寄与することができ、ひいては発光特性に優れた有機EL装置を好適に製造することが可能となる。
【0087】
また、図14に示すように、正孔注入/輸送層110a上に電子ブロック層113を形成した場合にも、上記同様の本発明に係る方法を採用することができる。このような方法の採用により、電子ブロック層113上に形成される発光層110bの膜厚が均一となるとともに、当該発光層11bにおける膜の抜けが殆ど生じないものとなる。
【0088】
また、本実施形態では、仮塗膜形成用液状組成物110e1〜110g1の濃度を本塗膜形成用液状組成物110e2〜110g2の濃度と同一のものとしたが、これらを異ならせ、例えば仮塗膜形成用液状組成物110e1〜110g1の濃度を相対的に小さくすることができる。
【0089】
さらに、本実施形態では有機EL装置を例に説明したが、上述の製造方法を無機EL装置の製造時に採用できることは言うまでもない。或いは、第1の膜と第2の膜とを積層してなる構造を有する半導体装置、その他のデバイスにおいて、第2の膜を2段階以上に分けて形成することで、該第2の膜の膜厚均一化、膜の抜け等の不良発生防止を実現することが可能となる。
【0090】
(電子機器)
図15は、本発明の方法により製造された有機EL装置を具備した電子機器の一実施形態を示している。本実施形態の電子機器は、上述した方法により製造された有機EL装置を表示手段として備えている。ここでは、携帯電話の一例を斜視図で示しており、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置を用いた表示部を示している。このように有機EL装置を表示手段として備える電子機器では、良好な表示特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る方法により製造された有機EL装置の回路図。
【図2】同、平面構成図。
【図3】同、表示領域の断面構成図。
【図4】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図5】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図6】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図7】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図8】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図9】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図10】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図11】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図12】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図13】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図14】有機EL装置の一変形例を模式的に示す断面構成図。
【図15】電子機器の一例を示す斜視構成図。
【符号の説明】
【0092】
2…基板、110…有機EL層、110a…正孔注入/輸送層(正孔注入層,第1膜)、110b…発光層(第2膜)、111…画素電極、112…バンク部(隔壁部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1膜を形成する工程と、
形成した第1膜上に第2膜を形成する工程とを有し、
前記第2膜を形成する工程は、当該第2膜を構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第1溶液を前記第1膜上に塗布する工程と、塗布した第1溶液を乾燥して仮塗膜を形成する工程と、前記仮塗膜上に、当該第2膜を構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第2溶液を前記仮塗膜上に塗布する工程と、塗布した第2溶液を乾燥して本塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1膜と前記第2膜は、一方が水溶性を示し、他方が油溶性を示すことを特徴とする請求項1に記載のデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1溶液と前記第2溶液は、同一の濃度であることを特徴とする請求項1又は2に記載のデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1溶液は、前記第2膜の形成領域全面に塗布することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項5】
正孔注入層を形成する工程と、
形成した正孔注入層上に発光層を形成する工程とを有し、
前記発光層を形成する工程は、当該発光層を構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第1溶液を前記正孔注入層上に塗布する工程と、塗布した第1溶液を乾燥して仮塗膜を形成する工程と、前記仮塗膜上に、当該発光層を構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第2溶液を前記仮塗膜上に塗布する工程と、塗布した第2溶液を乾燥して本塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項6】
前記正孔注入層が水溶性を示し、前記発光層が油溶性を示すことを特徴とする請求項5に記載のEL装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1溶液と前記第2溶液は、同一の濃度であることを特徴とする請求項5又は6に記載のEL装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1溶液は、前記発光層の形成領域全面に塗布することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項9】
前記発光層は、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層が、それぞれ赤色画素、緑色画素、青色画素に形成されてなるものであって、
前記発光層を形成する工程において、前記仮塗膜を形成する工程では、前記第1溶液として青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた青色発光層形成溶液を用いて、該青色発光層構成材料からなる仮塗膜を各色画素に対して形成した後、前記本塗膜を形成する工程では、前記第2溶液として、前記赤色画素に対しては赤色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた赤色発光層形成溶液を用いて、前記緑色画素に対しては緑色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた緑色発光層形成溶液を用いて、前記青色画素に対しては青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた青色発光層形成溶液を用いて、各色発光層構成材料からなる本塗膜を各色画素に対して形成することを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載のEL装置の製造方法。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれか1項に記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするEL装置。
【請求項11】
請求項10に記載のEL装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
第1膜を形成する工程と、
形成した第1膜上に第2膜を形成する工程とを有し、
前記第2膜を形成する工程は、当該第2膜を構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第1溶液を前記第1膜上に塗布する工程と、塗布した第1溶液を乾燥して仮塗膜を形成する工程と、前記仮塗膜上に、当該第2膜を構成する第2膜構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第2溶液を前記仮塗膜上に塗布する工程と、塗布した第2溶液を乾燥して本塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1膜と前記第2膜は、一方が水溶性を示し、他方が油溶性を示すことを特徴とする請求項1に記載のデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1溶液と前記第2溶液は、同一の濃度であることを特徴とする請求項1又は2に記載のデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1溶液は、前記第2膜の形成領域全面に塗布することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項5】
正孔注入層を形成する工程と、
形成した正孔注入層上に発光層を形成する工程とを有し、
前記発光層を形成する工程は、当該発光層を構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第1溶液を前記正孔注入層上に塗布する工程と、塗布した第1溶液を乾燥して仮塗膜を形成する工程と、前記仮塗膜上に、当該発光層を構成する発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた第2溶液を前記仮塗膜上に塗布する工程と、塗布した第2溶液を乾燥して本塗膜を形成する工程と、を有することを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項6】
前記正孔注入層が水溶性を示し、前記発光層が油溶性を示すことを特徴とする請求項5に記載のEL装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1溶液と前記第2溶液は、同一の濃度であることを特徴とする請求項5又は6に記載のEL装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1溶液は、前記発光層の形成領域全面に塗布することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項9】
前記発光層は、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層が、それぞれ赤色画素、緑色画素、青色画素に形成されてなるものであって、
前記発光層を形成する工程において、前記仮塗膜を形成する工程では、前記第1溶液として青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた青色発光層形成溶液を用いて、該青色発光層構成材料からなる仮塗膜を各色画素に対して形成した後、前記本塗膜を形成する工程では、前記第2溶液として、前記赤色画素に対しては赤色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた赤色発光層形成溶液を用いて、前記緑色画素に対しては緑色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた緑色発光層形成溶液を用いて、前記青色画素に対しては青色発光層構成材料を溶媒に溶解ないし分散させた青色発光層形成溶液を用いて、各色発光層構成材料からなる本塗膜を各色画素に対して形成することを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載のEL装置の製造方法。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれか1項に記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするEL装置。
【請求項11】
請求項10に記載のEL装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−278126(P2006−278126A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95184(P2005−95184)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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