説明

デフィブロチド単独又は他の抗腫瘍剤との組み合わせを含む抗腫瘍製剤

抗腫瘍剤としてデフィブロチド単独又は抗腫瘍作用を有する他の活性成分との組み合わせの使用が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題はデフィブロチド(defibrotide)の有効な量を哺乳動物に投与することによって、腫瘍に冒された哺乳動物を治療する方法である。
【背景技術】
【0002】
語 デフィブロチド(以下DF)は、動物及び/又は植物組織からの抽出によって得られるポリデオキシリボヌクレオチドを通常云う(1、2);該ポリデスオキシリボヌクレオチドはアルカリ金属塩、一般にナトリウム塩の形で通常使用され、及び約45〜50 kDaの分子量を一般に有する(CAS登記簿番号:83712-60-1)。
【0003】
DFは例えば急性腎不全の治療(4)及び急性心筋虚血の治療(5)のような他の用途において使用されうるけれども、それはその抗血栓活性のために主に使用される(3)。DFはまた、例えば化学療法の高用量と関連付けられる毒性、特に肝臓の静脈閉塞症候群を抑制するために、緊急臨床症状の治療において使用される(10、11);DFは、フルダラビンの抗白血病性効果をまた変えること無しに、フルダラビンによって誘発されるアポトーシスへの並びに内皮及び上皮細胞のアロ活性化(alloactivation)への保護作用を有することが示された;臨床前データがまた、リポ多糖類によって介在された内皮損傷のモデルにおいて達成されたDFの保護効果について存在する(13)。
【0004】
DFを生成する方法であって、均一な及び十分に定義された物理的/化学的特徴を有し且つまた有りうる望ましくない副作用の無い製品を生成しうる方法が、米国特許明細書(6、7)に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
下記研究では、DFは、細胞培養におけるマウスEMT-6乳癌細胞のモデルにおいて及びウシ内皮細胞において、及び化学療法の高用量に付された担腫瘍ラットが使用された実験モデルにおいて、抗芽腫細胞毒剤と組み合わせて検査された。
【0006】
培養中のマウスEMT-6乳癌細胞の、4-ヒドロペルオキシシクロホスファミド(4HC)での暴露前及び間或いは間及び後のいずれかで、50μg/mlの濃度でのDFへの暴露は、50〜250μmolの間の4HC濃度で腫瘍細胞の死において2対数単位の増分をもたらす程度まで4HCの毒性をかなり増加させる(図1を参照)。50μg/mlの濃度でのDFへの暴露はまた、暴露の方法に基づく明らかな相違をもって、チオテパの毒性の増加をもたらす。特に、チオテパへの暴露の前及び間におけるEMT-6細胞のDFへの暴露は、100〜250μmolの間のチオテパ濃度について2対数単位だけ腫瘍細胞への細胞毒性を増加させる。出現する面白いデータは、チオテパへの暴露の間及び後におけるEMT-6細胞のDFへの暴露が細胞毒性の増加(しかしながらより少ない程度に)をもたらし、チオテパの細胞毒性において0.5〜1の間の対数単位の増加を示すということである。同様の結果がカルボプラチンで観察された;しかしながら、メルファランへの暴露前及び間或いは間及び後のDFへの暴露は、培養中のマウスEMT-6乳癌細胞へのメルファランの細胞毒性に対する有意な影響を示さなかった。
【0007】
他方では、培養中のウシ内皮細胞へのこれら抗芽腫アルキル化剤(AA)単独の細胞毒性は、EMT-6乳癌細胞において観察されたそれと同様であることが示されたけれど、このタイプの細胞培養モデルが50μg/mlの濃度のDFと組合せてAAに暴露された場合、細胞毒性における増加は示されなかった。
【0008】
肝細胞毒素 モノクロタリン及びAA カルムスチン(BCNU)は、単独で又はDFと組合せて、担乳癌13762ラットを使用した実験モデルにおいてイン ビボ(in vivo)で試験された。この実験モデルでは、該動物がDFと一緒にこれら剤へ暴露されたとき、追加の毒性が該動物において示されなかった。しかし、有意な腫瘍増殖遅延(TGD)が観察された(表1並びに図2a及び2bを参照)。
【0009】
[表1]
モノクロタリン又はBCNU単独で又はデフィブロチド(DF)と組合せて治療後の担乳癌13762ラットにおける腫瘍成長遅延。腫瘍は0日目に移植され、そして化学療法が8日目及び18日目で投与された。

【0010】
これら研究は、同じ実験モデルにおいて、モノクロタリン、BCNU及びシクロホスファミド(CTX)単独で又はDFとの組み合わせの使用で再現された。対照と比較して、有意な腫瘍成長遅延(TGD)が、DF単独の使用で観察された(p<0.05);この遅延は、DFがCTX及びBCNUと組合わされている場合に特に有意であり(p<0.04)、及び各剤の個々の使用によって得られたそれよりも顕著に大きかった。意外にも、DFが単独で使用されたとき、最初は、それが腫瘍の成長を遅延させたが、その後、腫瘍成長は再び正常になった。その上、DFがAAと組み合わされて使用されたとき、DFの共投与が終わるとすぐに腫瘍再成長が迅速になった。このデータは、DFの追加の抗腫瘍効果だけでなく、DFの直接的な抗芽腫活性自体をも示唆する。
【0011】
DFがパクリタキセルでの治療に追加されたとき、それがカルボプラチンと組合されたかどうかにかかわらず、腫瘍成長(TGD)における及び肺転移の数における減少がまた、担Lewis肺癌マウスにおいて観察され、そして細胞毒性療法単独と比較されたとき毒性の明らかな増加を示さなかった(データは示されていない)。これら効果を為すメカニズムは、不明のままである。しかし、薬剤抵抗性に関係しているメカニズムにおける細胞癒着の役割を考えると、DFの抗癒着特性が関与されることはありうることである(8、9)。
【0012】
DFが、ヒト多発性骨髄腫(MM)のマウスモデルにおいてイン ビボ(in vivo)活性を有するかどうかがまた試験された。60匹の雄のSCID/NODマウス(6〜8週齢)が照射され(450ラド)、そして24時間後、5x106個のMM-1SヒトMM細胞を用いて皮下(s.c.)注射された。明白な腫瘍を形成すると、マウスは、a)ビヒクル;b)DF(静脈内(i.v.)、450 mg/kg 1日2回(b.i.d.));c)メルファラン(MEL) 2.5 mg/kg 腹腔内(i.p.)、毎週1回;d)シクロホスファミド(CTX) 50 mg/kg i.p.、8、10、12、20、22及び24日目;e)及びf)DF(300 mg/kg i.v.)とMEL又はCTX夫々との組み合わせ、を受ける6集団(各10匹)にランダムに割り当てられた。マウスは、体重、潜在毒性及び電子キャリパに基づく腫瘍体積について、3日毎(q3 days)に監視された。
【0013】
単一剤として又はMEL若しくはCTXと組み合わせのいずれかで、DFは、全てのグループにおいて出血性合併症又は体重減少無しに(P>0.05)十分に許容された。効果についての主な終点は、a)腫瘍体積変化、及びb)全生存期間(腫瘍直径が>2cmのとき実行された犠牲までの間)だった。DF治療は、対照マウスにおけるよるも有意に低い腫瘍体積を生じた(分散、及びポスト-ホック試験の解析による全ての比較について、P<0.05);MEL又はCTXとの組み合わせで、それは夫々の単一剤細胞毒性化学療法よりも有意に低い腫瘍体積を引き起こした(全ての比較について、p<0.05)。Kaplan-Meier生存分析は、単一剤として又は細胞毒性化学療法(MEL又はCTX)との組み合わせのいずれかで、DF投与が、ビヒクル処置された対象グループ又はMEL若しくはCTX治療されたグループ夫々と比較して、全生存期間の統計的に有意な延長と関係付けられた(全ての比較について、p<0.001、ログ-ランク試験)。興味深いことに、イン ビトロ(in vitro)研究は、MM細胞に対してDFの有意な直接的イン ビトロ細胞毒性効果を示さず、観察されたイン ビボ活性はMM細胞とそれの局所的なミクロ環境との相互作用に対する効果によりうることが示唆された。
【0014】
これら有望な結果は、DFがこのMM化学療法モデルにおいて腫瘍保護を与えず及び、DFがMMに対してイン ビボ抗腫瘍活性を有するのみならず細胞毒性治療への応答をも高めるという原理の最初の証明を構成することを示す。この研究は、DFの抗MM活性が、恐らくそれらのミクロ環境とのMM細胞相互作用に対するその影響にたぶん拠ることを示唆し、そしてMM及び他の腫瘍形成の治療のために他の剤との組み合わせでDFの将来の臨床試験のための枠組を提供する。
【0015】
それ故に、DFの有効な量の投与によって、腫瘍に冒された哺乳動物、好ましくはヒトを治療する方法が本発明の目的である。DFは、抗腫瘍作用を有する少なくとも1の他の活性成分と組み合わされて投与されうる。抗腫瘍作用を有する該他の活性成分は、パクリタキセル、モノクロタリン、BCNU、メルファラン及び/又はシクロホスファミドから選択されうる。
【0016】
さらに、本発明の目的は、DF及び抗腫瘍作用を有する少なくとも1の他の活性成分を含む製剤によって示される;該製剤は、好ましくは、水性溶液の形であり、さらにより好ましくは静脈内投与に適しており、且つ当業者に知られている賦形剤及びコアジュバント(coadjuvant)を含みうる。
【0017】
本発明の目的のために、語 デフィブロチド(DF)は、すなわち、動物及び/又は植物組織からの、特に哺乳動物の器官からの抽出によって生産される何らかのオリゴヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチドであると理解されるべきである。好ましくは、DFは、参照することによって本明細書中に組み込まれる米国特許明細書(6、7)中に記載された方法に従って生成されるだろう。
【0018】
参考文献
1.米国特許第3,770,720号公報
2.米国特許第3,899,481号公報
3.米国特許第3,829,567号公報
4.米国特許第4,694,134号公報
5.米国特許第4,693,995号公報
6.米国特許第4,985,552号公報
7.米国特許第5,223,609号公報
8.Carlo-Stella, C., Di Nicola, M., Magni M.等,Defibrotide in Combination with Granulocyte Colony-stimulating Factor Significantly Enhances the Mobilization of Primitive and Committed Peripheral Blood Progenitor Cells in Mice. Cancer Research, 2002年,第62巻: 第6152-6157頁 (2002年11月1日)
9.Hazlehurst, L., Damiano, J., Buyuksal, I., Pledger, W. J., Dalton, W. S., Adhesion to fibronectin via bl integrins regulates p27 kipl levels and contributes to cell adhesion mediated drug resistance (CAM-DR). Oncogene, 2000年; 第19巻: 第4319-4327頁
10.Richardson, P. G., Elias, A. D., Krishnan, A.等, Treatment of severe veno-occlusive disease with defibrotide:compassionate use results in response without significant toxicity in a high-risk population. Blood, 1998年; 第92巻: 第737-44頁
11.Richardson, P., Murakami, C., Jin, Z.等, Multi-institutional use of defibrotide in 88 patients after stem cell transplantation with severe veno-occlusive disease and multi-system organ failure: response without significant toxicity in a high risk population and factors predictive of outcome. Blood, 2002年; 第100巻(第13号): 第4337-4343頁
12.Eissner, G., Multhoff, G., Gerbitz, A.等,Fludarabine induces apoptosis, activation, and allogenicity in human endothelial and epithelial cells: protective effect of defibrotide. Blood, 2002年; 第100巻: 第334-340頁
13.Falanga, A., Vignoli, A., Marchetti, M., Barbui, T., Defibrotide reduces procoagulant activity and increases fibrinolytic properties of endothelial cells. Leukemia, 2003年; 印刷中
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】マウスEMT-6乳癌細胞の、4-ヒドロペルオキシシクロホスファミド(4HC)での生存している画分を示すグラフである。
【図2a】マウス乳癌13762におけるデフィブロチド及び組み合わせ研究の効果すグラフである。
【図2b】マウス乳癌13762におけるデフィブロチド及び組み合わせ研究の効果すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍作用を有する製剤の製造のために、デフィブロチドを使用する方法。
【請求項2】
デフィブロチドが、抗腫瘍作用を有する少なくとも1の他の活性成分と組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗腫瘍作用を有する前記他の活性成分が、パクリタキセル、モノクロタリン、BCNU、メルファラン及び/又はシクロホスファミドから選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
哺乳動物がヒトであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物が多発性骨髄腫に冒されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
哺乳動物が乳癌に冒されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
デフィブロチドが静脈内に投与されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
活性剤として、デフィブロチド及び抗腫瘍作用を有する少なくとも1の他の活性成分を含む製剤。
【請求項9】
製剤が水性溶液であることを特徴とする、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
慣用的な賦形剤及び/又はアジュバントを含むことによって特徴付けられている、請求項8〜9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
抗腫瘍作用を有する前記他の活性成分が、パクリタキセル、モノクロタリン、BCNU、及び/又はシクロホスファミドから選択されることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
別々に投与されうる2つの別個の製剤により構成される請求項8〜11のいずれか一項に記載の製剤であって、一つはデフィブロチドを含み、他は抗腫瘍作用を有する他の活性成分を含む、製剤。
【請求項13】
組み合わされた製剤として、同時の、別個の又は逐次の投与のための請求項8〜11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
腫瘍に冒された哺乳動物を治療する方法であって、デフィブロチドの有効な量を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項15】
デフィブロチドが、抗腫瘍作用を有する少なくとも1の他の活性成分と組み合わせて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
抗腫瘍作用を有する前記他の活性成分が、パクリタキセル、モノクロタリン、BCNU、メルファラン及び/又はシクロホスファミドから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
哺乳動物がヒトである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物が多発性骨髄腫に冒されている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
哺乳動物が乳癌に冒されている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
デフィブロチドが静脈内に投与される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2007−504194(P2007−504194A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525096(P2006−525096)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009723
【国際公開番号】WO2005/023273
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(506004610)
【Fターム(参考)】