説明

デラプリルの調製方法

【課題】デラプリル(delapril)、すなわちN−[N−[(S)−1−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル]−L−アラニル]−N−(インダン−2−イル)グリシン、およびその調製に有用な中間体の調製方法を提供する。
【解決手段】有機溶媒中で、N−(1−S−カルベトキシ−3−フェニルプロピル)−S−アラニンとカルボニル−ジイミダゾールを反応させ、さらに別に調製した(インダン−2−イル)グリシン酸ナトリウムを添加して反応させるデラプリルの調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デラプリル(delapril)、すなわちN−[N−[(S)−1−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル]−L−アラニル]−N−(インダン−2−イル)グリシンおよびその調製に有用な中間体の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デラプリル、特にその塩酸塩は、ACE阻害活性に伴って抗高血圧作用を有する薬剤である。
【0003】
【化1】

【0004】
例えば、EP51391およびEP281393で開示されたように、デラプリルおよびその塩を調製するためにはいくつかの合成方法が存在する。
【0005】
通例、これらの方法は高価な開始生成物を使用し、その後脱保護ステップを要するグリシンカルボキシル基の保護も必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、容易に入手できる生成物から開始し、不都合な合成ステップ、特に官能基の保護/脱保護を回避し、工業生産によく適した操作条件下において、必要とする合成ステップが少なく、それによって費用および環境への影響を削減する、デラプリルおよびその塩を調製するためのその他の方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の開示)
デラプリルおよびその調製に有用な中間体の新規調製方法を発見した。この方法は、高価で入手の難しい開始生成物および反応物の使用を回避し、必要とするステップの数を減少させる。
(発明の詳細な説明)
本発明の目的は、式(I)の化合物(デラプリル)またはその塩
【0008】
【化2】

【0009】
の調製方法であって、有機溶媒中における式(II)の化合物またはその塩
【0010】
【化3】

【0011】
と、式(III)の化合物
【0012】
【化4】

【0013】
との反応、および所望するならば、それらの塩への変換を含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
化合物(II)と化合物(III)との間の反応は、塩基性物質(basic agent)、一般的には無機塩基、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムなどの、アルカリもしくはアルカリ土類金属の、水酸化物または塩、例えば、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カルシウム;あるいは有機塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシド;含窒素有機塩基、例えば、第二級もしくは第三級アミン、特にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン;または第四級アンモニウム塩、例えば、テトラブチルアンモニウムの存在下で実施することができる。
【0015】
あるいは、化合物(III)と化合物(II)の塩との間の反応を実施することができる。化合物(II)の塩は、上記で報告した塩基性物質の1つで入手可能な、例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属の塩、特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムの塩、または第二級、第三級もしくは第四級アンモニウム塩である。式(II)の化合物は、塩化した形態(塩としての形態)、特にナトリウム塩で反応させることが好ましい。
【0016】
化合物(II)またはその塩と、化合物(III)との反応は、有機溶媒、一般的に芳香族炭化水素、例えば、トルエンもしくはキシレン、塩素化溶媒(chlorinated solvent)、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンもしくはジクロロベンゼン、エーテル溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチル−メチルエーテル、アミド溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ニトリル溶媒、例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドなどの2極性非プロトン性溶媒、または前記溶媒の2種以上、好ましくは2種または3種の混合物中で実施することができる。この反応は、テトラヒドロフラン中で実施することが好ましい。
【0017】
化合物(II)またはそれらの塩の、化合物(III)に対する化学量論比は、約0.5から約1.5の範囲、好ましくは約1であることができる。
【0018】
この反応は、約−20℃から反応混合物の還流温度まで、好ましくは約20℃から約30℃までの範囲の温度で実施することができる。
【0019】
式(I)の化合物は、公知の方法によって、その塩、一般的にEP51391で公知の薬剤として許容される塩、好ましくは塩酸塩に変換することができる。
【0020】
化合物(II)は、化合物(IV)または(V)
【0021】
【化5】

【0022】
と、化合物(VI)またはその塩
【0023】
【化6】

【0024】
と、を反応させて、式(VII)または(VIII)またはそれらの塩それぞれ
【0025】
【化7】

【0026】
を得ること、およびその後の還元を含む方法で得ることができる。
【0027】
化合物(II)、(VI)、(VII)または(VIII)の塩は、アルカリまたはアルカリ土類金属の塩、特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウムの塩、あるいは上記で例示した通りの第二級、第三級または第四級アンモニウム塩である。
【0028】
化合物(IV)または(V)と、化合物(VI)またはその塩と、の間の反応は、塩基性物質、例えば無機塩基、一般的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムの水酸化物または塩などのアルカリもしくはアルカリ土類金属の水酸化物または塩、例えば、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウム;あるいは有機塩基、一般的にはC1〜C6アルコレート、例えば、ナトリウムメトキシドもしくはカリウムtert−ブトキシド;含窒素有機塩基、例えば、第二級もしくは第三級アミン、特にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンもしくは1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタンの存在下で実施することができる。この塩基性物質は、ナトリウムメトキシドであることが好ましい。
【0029】
化合物(IV)または(V)の塩基性物質に対するモル比は、0.1から10の範囲、好ましくは約0.95であることができる。
【0030】
化合物(IV)または(V)の、化合物(VI)またはそれらの塩に対する比は、約0.1から約10の範囲、好ましくは約1から約1.1であることができる。
【0031】
この反応は、プロトン性溶媒、例えば、C1〜C6アルカノール、特に、メタノール、エタノール、イソプロパノールもしくはブタノール;有機エーテル溶媒、例えば、ジエチルエーテルもしくはテトラヒドロフラン;または水;またはそれらの2種以上、好ましくは2種または3種の混合物、好ましくはメタノール中で実施することができる。
【0032】
この反応は、約−20℃から反応混合物の還流温度まで、好ましくは約20℃から約30℃までの範囲の温度で実施することができる。
【0033】
化合物(II)をもたらす化合物(VII)の還元は、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウムおよびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムから選択される還元剤;または触媒、例えば、炭素上のパラジウムまたは白金の存在下で水素化によって実施することができる。この反応は、水素化ホウ素ナトリウムとの反応によって実施することが好ましい。
【0034】
化合物(VIII)またはその塩の還元は、上記のように、触媒の存在下で水素化することによって実施することができる。
【0035】
化合物(VII)または(VIII)の還元は、化合物(IV)と化合物(VI)との間の反応で上記の溶媒のいずれか1つまたはそれらの混合物、好ましくは水/メタノール混合物で実施することができる。
【0036】
化合物(VII)の還元剤に対する化学量論比は、約0.25から約10の範囲、好ましくは約0.28であることができる。
【0037】
この反応は、約0℃から反応混合物の還流温度まで、好ましくは約20℃から約30℃までの範囲の温度で実施することができる。
【0038】
化合物(VIII)を得るための化合物(V)と化合物(VI)との反応およびその後の還元を含む方法による化合物(II)の調製は新規方法であり、本発明の他の目的である。
【0039】
所望するならば、デラプリルまたはその塩を得るために、得られた化合物(II)を前記で報告した方法によって化合物(III)と反応させることができる。
【0040】
化合物(III)は公知で、公知の方法、例えば、N−(1−S−カルベトキシ−3−フェニルプロピル)−S−アラニンとカルボニル−ジイミダゾールと反応させることによって得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は本発明を例示する。
(実施例1)
(インダン−2−イル)グリシン酸ナトリウム(II)
窒素雰囲気下で丸底フラスコに、グリシン(280g、0.0371mol)、メタノール(30ml)中のインダノン(4.9g、0.0371mol)および30%w/wメタノール溶液中のナトリウムメトキシド(6.30g、0.0352mol)を添加する。この混合物を室温で約30分間反応させ、次に水(2.5ml)での水素化ホウ素ナトリウム(0.395g、0.0104mol)溶液をpH>12で添加する。この混合物を約30分間反応させ、次に水(50ml)で希釈し、塩酸37%でpH<2まで酸性化し、水相を塩化メチレン(150ml)で3回抽出する。pHは水酸化ナトリウムの50%w/w水溶液で12超に調節し、水相を減圧下で濃縮して、純度70%の生成物10.3gを得る、収率92%。
【0042】
1HNMR(300MHz,DMSO−d6):δ(ppm)7.15〜7.00(m,4H)、3.40(m,1H,)、2.95(dd,2H)、2.85(s,2H)、2.60(dd,2H)。
【0043】
同じように、表題化合物は、化合物(V)と化合物(VI)を上記の方法によって反応させ、このように得られた式(VIII)の化合物をその後Pt/Cで触媒的に水素化することによって還元して得ることができる。
【0044】
(実施例2)
デラプリル塩酸塩(I)
窒素流下で丸底フラスコに、N−(1−S−カルベトキシ−3−フェニルプロピル)−S−アラニン(4.60g、0.0163mol)、カルボニルジイミダゾール(2.90g、0.0179mol)およびトルエン(40ml)を添加し、この混合物を攪拌しながら室温で1時間反応させる。次に、この混合物に(インダン−2−イル)グリシン酸ナトリウム(4.90g、0.0163mol、測定値:70%)を添加し、室温で約3時間反応させる。この溶媒を減圧下で留去し、残渣を水(20ml)で希釈し、塩酸37%でpH2〜3まで酸性化し、メタノール(50ml)で希釈し、50℃に加熱し、その後室温まで冷却する。10〜15時間後、濾過した沈殿物を水/メタノール混合物(5ml、0℃まで冷却)で洗浄し、真空下において静止乾燥機によって50℃で6〜8時間乾燥させる。表題化合物5.7gが得られる、収率72%。
【0045】
1HNMR(300MHz,DMSO−d6):δ(ppm)7.36〜7.17(m,5H)、6.96(d,2H)、6.74(d,2H)、5.22(dd,1H)、3.05(m,2H)、2.65(m,2H)、2.21(s,3H)、2.15〜1.85(m,2H)、1.0(m,12H)。
【0046】
(実施例3)
デラプリル塩酸塩(I)
窒素流下で丸底フラスコに、N−(1−S−カルベトキシ−3−フェニルプロピル)−S−アラニン(4.60g、0.0163mol)、カルボニルジイミダゾール(2.90g、0.0179mol)およびテトラヒドロフラン(40ml)を添加し、この混合物を攪拌しながら室温で1時間反応させる。この溶液に(インダン−2−イル)グリシン酸ナトリウム(4.90g、0.0163mol、測定値:70%)を添加し、この混合物を室温で約3時間反応させ、次に水(20ml)で希釈し、塩酸37%でpH2〜3まで酸性化する。テトラヒドロフランを減圧下で留去し、残渣をメタノール(50ml)で希釈し、この反応混合物を50℃まで加熱し、その後室温まで冷却する。10〜15時間後、濾過した沈殿物を水/メタノール混合物(5ml、0℃まで冷却)で洗浄し、その後真空下において静止乾燥機によって50℃で6〜8時間乾燥させる。表題化合物7.2gが得られる、収率90%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物またはその塩
【化1】

の調製方法であって、有機溶媒中における式(II)の化合物またはその塩
【化2】

と、式(III)の化合物
【化3】

との反応、および所望するならば、それらの塩への変換を含む方法。
【請求項2】
反応が塩基性物質の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(II)の化合物が塩の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(II)の化合物がリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩、あるいは第二級、第三級または第四級アンモニウム塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒が、芳香族炭化水素、塩素化溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、非プロトン性溶媒または前記溶媒の混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶媒がテトラヒドロフランである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式(II)の化合物またはその塩の式(III)の化合物に対する化学量論比が、約0.5から1.5の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
化学量論比が約1である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1で定義された通りの式(II)の化合物またはその塩の調製方法であって、式(V)の化合物
【化4】

と、式(VI)の化合物またはその塩
【化5】

と、を反応させて、式(VIII)の化合物またはその塩
【化6】

を得ること、およびその還元を含む方法。
【請求項10】
式(II)の化合物またはその塩と式(III)の化合物とを反応させて式(I)の化合物またはその塩を得ることをさらに含む、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2008−69139(P2008−69139A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−182704(P2007−182704)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(507161569)ディフアルマ フランチス ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (11)
【氏名又は名称原語表記】DIPHARMA FRANCIS S.R.L.
【Fターム(参考)】