説明

デング熱の診断及び治療

(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の発現パターン又は発現レベルの変化の検出からなる、デング熱の診断又は予後において有用な指標を提供する方法を記載する。また、候補分子が、これらのタンパク質のいずれか1つ又は複数に対するアゴニスト又はアンタゴニストであるかを決定することからなる、デング熱の治療又は予防に適した分子を同定する方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、細胞生物学、分子生物学及び遺伝学に関する。さらに具体的には本発明は、個体におけるデング熱感染の診断、予後若しくは治療、及び/又はデングウイルスの複製を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
デング熱は、人に作用する最も重大な蚊由来のウイルス病である。世界人口の3分の1以上に、デング熱感染のリスクがある。デングウイルスによる感染は、一連の臨床症状をもたらす可能性がある。これらの範囲は、無症候性の感染からデング熱(DF)、デング出血熱(DHF)及びデングショック症候群(DSS)にまで至る。
【0003】
年間、DFの症例は5000万〜1億、DHFの症例は250,000〜500,000と推測されている(Rigau-Perez, 1998)。デングウイルスは、4つの異なる血清型(DEN1−4)からなるフラビウイルス科の短い一本鎖RNAウイルスである。そのゲノムは、ウイルス及び宿主のタンパク質分解酵素により10個のウイルスタンパク質に切断される、ポリペプチドを合成する一本のオープンリーディングフレームにより構成されている。これらは3つの構造タンパク質である核(c)、エンベロープ(E)及び膜(M)、合成される前駆体(prM)並びに7つの非構造(NS)タンパク質を含む(Rigau-Perez, 1998)。
【0004】
デング関連疾患の深刻さにも関わらず、デング熱発症についての完全な理解はなされていない。DFの初期における高いウイルス力価が、より深刻なDHFへの進行と相関することが報告されている(Vaughn, 2000 #708)。ところが、適切な診断及び病気の進行をモニタリングするマーカーの欠如が、重篤な結果の予測を困難にしている。有効なワクチンや特異的治療法が存在しないため、ウイルスの複製を減少させ、それによって病気のより深刻な形に関連する高ウイルス量を防ぐ薬剤は、デング熱との闘いにおいて魅力的な選択であることを示す。病気の経過及び転帰をモニタリングできるバイオマーカーもまた、病気の適切な治療を決定するのに重要な意味を持つものとなるだろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デング熱の診断において使用されている現在の方法は、ウイルスゲノムを探すアプローチに基づくPCR法(効果的だが、手技が難しく高価であり、大きな研究施設が必要とされる)又は、宿主のIgG又はIgMを探す抗体検出法(検出可能なレベルまで到達するのに発熱後3〜10日が必要)のどちらかである。どちらの方法も研究施設がなくては、発熱時に迅速かつ高感度に検出することはできない。
【0006】
当技術分野において、デング熱感染を治療するための新しい治療の選択を提供する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、デングウイルスの感染を支持する細胞におけるユビキチン−プロテアソーム経路の阻害が、これらの感染細胞から放出される感染性ウイルス粒子の存在を著しく減少させるという実証に基づく。更に本発明者らは、ユビキチン−プロテアソーム経路において活性化しているタンパク質をコードするいくつかの遺伝子は、試験管内及び人の症候性感染の両方におけるデングウイルスに感染した細胞において、特異的に上方制御されていることを実証する。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、本発明者らは、デング熱の診断又は予後において有用な指標を提供する方法であって、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質、の発現パターン又は発現レベルにおける変化を検出することを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、個体におけるデング熱の治療又は予防の方法であって、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質、の発現レベルを調節することを含む方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、本発明者らは、デング熱の治療に適している分子を同定する方法であって、候補分子が(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質のアゴニスト又はアンタゴニストであるかを決定することを含む方法を提供する。
【0011】
ある実施態様では、前記候補分子は、候補分子が(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質のアゴニスト又はアンタゴニストであるかを決定するために、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質にさらされる。
【0012】
本発明の第4の態様として、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質、をコードするポリヌクレオチドの前記方法のための使用が提供される。
【0013】
本発明の第5の態様によれば、本発明者らは、デング熱の診断又は予後において有用な指標を提供する方法であって、個体の試料においての(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質、における多型を検出することを含む方法を提供する。
【0014】
本発明の第6の態様では、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質、のアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法であって、前記候補分子をデングウイルスに感染した細胞にさらすこと、及び、ウイルス機能に対する効果を決定すること、を含む方法を提供する。
【0015】
ある実施態様では、前記ウイルス機能は、ウイルス力価、ウイルス感染力、ウイルス複製、ウイルスパッケージング及びウイルス転写から構成される群より選択される。
【0016】
本発明の第7の態様では、a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質、のアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法であって、デング熱に罹患している動物に候補物質を投与すること、及び、当該動物がデングウイルスの複製における減少又は増加を示すかどうかを決定すること、を含む方法が提供される。
【0017】
本発明の第8の態様によれば、本発明者らは、個体におけるデング熱の治療又は予防における医薬組成物の調製のための、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質、のアゴニスト又はアンタゴニストの使用を提供する。
【0018】
本発明の第9の態様によれば、本発明者らは、デングウイルスに感染した細胞におけるデングウイルス機能を下方制御する方法であって、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質、の細胞における活性を調節することを含む方法を提供する。
【0019】
ある実施態様では、前記ウイルス機能は、ウイルス力価、ウイルス感染力、ウイルス複製、ウイルスパッケージング及びウイルス転写から構成される群より選択される。
【0020】
ある実施態様では、前記方法は、当該ウイルス、当該細胞又は当該システムと、前記方法により同定される分子とを接触させることを含む方法である。
【0021】
ある実施態様では、前記ポリペプチドは、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質を含む。
【0022】
前記ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質は、ユビキチン特異的タンパク質分解酵素、ユビキチン共役酵素、ユビキチンリガーゼ及びユビキチン切断酵素からなる群より選択されてもよい。
【0023】
ある実施態様では、前記ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質は、HERC1 (U50078), HERC2 (AF071172), HERC3 (D25215), HERC4 (NM_015601), C17orf27 (AB046774), DTX3L (AK025135), HERC6 (NM_017912), RNF36 (AL360161), ITCH (NM_031483), NEDD4 (NM_006154), UBB (NM_018955), UBE2L6 (NM_004223), UBE2I (NM_003345), Hdm2 (NM_002392), UBE1C (NM_003968), CBL (NM_005188), USP15 (AF106069), USP18 (NM_017414), PSMB9 (NM_002800), UBE2 (NM 003335), UBP43 (NM_017414), HERC5 (NM_016323), ATG7 (NM_006395), DUSP1 (NM_004417.2), DUSP18 (NM_152511.2), DUSP3 (NM_004090.2), DUSP5 (NM_004419.2), EIF3S5 (NM_003754), PPP1R15A (NM_014330.2), PSMB8 (NM_148919), UBE1L (NM_003335), UBE2L6 (NM_004223), UBE2S (NM_014501), UBE2W (NM_018299), USP24 (XM_165973.4) and WWP1 (NM_007013)からなる群より選択される。
【0024】
前記ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質は、ユビキチン特異的タンパク質分解酵素18(USP18, GenBank Accession Number: NM_017414)又はユビキチン共役酵素E2L(UBE2L6, GenBank Accession Number: NM_004223)を含んでいてもよい。
【0025】
前記ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質の阻害剤は、MG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal)又はALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO)を含んでいてもよい。
【0026】
本発明の第10の態様によれば、個体におけるデング熱の治療又は予防のための薬剤の調製におけるMG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal)又はALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO)の使用が提供される。
【0027】
前記ポリペプチドは、インターフェロン介在性タンパク質を含んでいてもよい。
【0028】
ある実施態様では、前記インターフェロン介在性タンパク質は、IFNA1 (NM_024013), IFNB1 (NM_002176), IFNG (NM_000619), ATF3 (NM_004024) MKP-1 (NM_004417, AJ227912), IRF9 (NM_006084), STAT1 (AK022231, NM_007315), G1P2 (NM_005101), G1P3 (NM_002038), IFI44 (NM_006417), IFIT1 (NM_001548), IFIT2 (AF026944), IFIT3 (AF026943), ISGF3G (NM_006084), IER3 (NM_003897), IFIT5 (NM_012420), IFRG28 (AJ251832), MDA5 (AF095844), SP110 (NM_004510), STAT1 (NM_007315), OAS1 (NM_016816), SOCS1 (NM_003745), ISG15 (NM_005101), IFIH1 (AL080107), OAS3 (NM_006187), IFI44 (NM_006417), OAS2 (NM_002535), MxA (NM_002462), Viperin (AF026941, AF026942), OASL (AF063611), GBP1 (NM_002053), IRF1 (NM_002198), IRF7 (NM_004030), GBP2 (NM_004120), NMI (NM_004688), AIM2 (NM_004833), STAT2 (NM_005419), IFI16 (NM_005531), SLAMF7 (NM_021181), GBP4 (NM_052941) and GBP5 (NM_052942)からなる群より選択される
【0029】
前記インターフェロン介在性タンパク質は、ビペリン(GenBank Accession Number: AF026941, AF026942)又はインターフェロンアルファ(IFN-α, GenBank Accession Number: NM_024013)を含んでいてもよい。
【0030】
本発明の第11の態様として、本発明者らは、デングウイルスに感染した細胞のウイルス力価、ウイルス感染力、ウイルス複製、ウイルスパッケージング及びウイルス転写のようなデングウイルス機能を下方制御する方法であって、細胞内のビペリン(GenBank Accession Number: AF026941, AF026942)又はインターフェロンアルファ(IFN-α, GenBank Accession Number: NM_024013)活性を上方制御することを含む方法を提供する。
【0031】
前記方法は、さらに細胞内のIFN-β(GenBank Accession Number: NM_002176)活性を上方制御することを含んでいてもよい。
【0032】
本発明の第12の態様によれば、本発明者らは、個体におけるデング感染の治療又は緩和における、任意にIFN-β(GenBank Accession Number: NM_002176)と組み合わせたビペリン又はインターフェロンアルファの使用を提供する。
【0033】
前記ポリペプチドは、NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質を含んでいてもよい。
【0034】
ある実施態様では、前記NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質は、COX2 (NM_000963), INOS (NM_000625), IL10 (NM_000572), IL2 (NM_000586), IL6 (NM_000600), IL8 (M17017), RANTES (NM_002985), VEGF (NM_003376), NFKBIB (NM_002503), PAI1 (NM_000602), B2M (NM_004048), NFKBIA (NM_020529), TNFAIP3 (NM_006290), RIG-I (NM_014314), TNF (NM_000594), CCL4 (NM_002984), CCL5 (NM_002985), IL11b (NM_000881), IP-10 (NM_001565), I-TAC (NM_005409), CARD15 (NM_022162), CARD4 (NM_006092), CD14 (NM_000591), CD1A (NM_001763), CD2 (NM_001767), CD22 (NM_001771), CD276 (NM_025240), CD47 (NM_001777), CD59 (NM_000611), CD97 (NM_001784), CCL2 (NM_002982), CCR1 (NM_001295), CCR5 (NM_000579), CCR7 (NM_001838), CCRL2 (NM_003965), CXCL16 (NM_022059), IL1RN (NM_173842), IL10RB (NM_000628), IL13RA1 (NM_001560), IL16 (NM_004513), IL18 (NM_001562), IL18RAP (NM_003853), IL4R (NM_000418), IL8RA (NM_000634), IL8RB (NM_001557), PF4 (NM_002619), PBEF1 ( NM_182790), TNFSF10 (NM_003810), TNFRSF1A (NM_001065), TNFRSF1B (NM_001066), TNFRSF25, (NM_148970), TNFRSF7 (NM_001242), TNFAIP2 (NM_006291) and TNFAIP8 (NM_014350)からなる群より選択される。
【0035】
前記NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質は、IP-10(GenBank Accession Number: NM_001565)を含んでいてもよい。前記NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質は、I-TAC(GenBank Accession Number: NM_005409)を含んでいてもよい。
【0036】
本発明の第12の態様によれば、本発明者らは、デング熱の診断又は予後において有用な指標を提供する方法であって、IP-10(GenBank Accession Number: NM_001565)又はI-TAC(GenBank Accession Number: NM_005409)又はその両方の発現パターン又は発現レベルにおける変化を検出することを含む方法を提供する。
【0037】
本発明の第13の態様によれば、本発明者らは、デング熱の診断又は予後において有用な指標を提供する方法であって、インターフェロンアルファ(IFN-α, GenBank Accession Number: NM_024013)、IP-10(GenBank Accession Number: NM_001565)又はI-TAC(GenBank Accession Number: NM_005409)のうちいずれか1つ又は複数の発現パターン又は発現レベルにおける変化を検出することを含む方法を提供する。
【0038】
本発明の第14の態様によれば、本発明者らは、デング熱の診断又は予後のためのキットであって、取扱説明書と共に、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質、のうちいずれか1つ又は複数の発現パターン又は発現レベルにおける変化を検出する手段を含むキットを提供する。
【0039】
本発明の第15の態様によれば、本発明者らは、個体におけるデング熱の治療又は予防のためのキットであって、取扱説明書と共に、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質の発現レベルを調節するための手段を含むキットを提供する。
【0040】
前記キットは、MG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal)又はALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO)又はその両方を含んでいてもよい。
【0041】
前記キットは、5'SL及び3'CSを混合したP4-PMO、US6,777,445に記載されているフラーレンのいずれか、並びに、ヘリオキサンチン及び/又はそのアナログ(US6,306,899)、のうちのいずれか1つ又は複数をさらに含んでいてもよい。
【0042】
本発明の第16の態様によれば、本発明者らは、提供されたスクリーニング法により同定される分子を提供する。
【0043】
本発明の第17の態様によれば、本発明者らは、提供されたスクリーニング法にり同定される(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質のアゴニスト又はアンタゴニストを提供する。
【0044】
本発明の第18の態様によれば、本発明者らは、
個体におけるデング熱の治療、予防、診断又は予後のための前記分子、アゴニスト又はアンタゴニストの使用を提供する。
【0045】
本発明の第19の態様によれば、本発明者らは、個体におけるデング熱の治療、予防、診断又は予後の方法における使用のためのMG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal)の使用を提供する。
【0046】
本発明の第20の態様によれば、本発明者らは、
個体におけるデング熱の治療、予防、診断又は予後の方法における使用のためのALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO)の使用を提供する。
【0047】
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当業者の範囲内である化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の従来技術を用いる。前記技術は文献の中で説明されている。例えば、J. Sambrook, E. F. Fritsch, and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Books 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F. M. et al. (1995 and periodic supplements; Current Protocols in Molecular Biology, ch. 9, 13, and 16, John Wiley & Sons, New York, N.Y.); B. Roe, J. Crabtree, and A. Kahn, 1996, DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; J. M. Polak and James O'D. McGee, 1990, In Situ Hybridization: Principles and Practice; Oxford University Press; M. J. Gait (Editor), 1984, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, Irl Press; D. M. J. Lilley and J. E. Dahlberg, 1992, Methods of Enzymology: DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology, Academic Press; Using Antibodies : A Laboratory Manual : Portable Protocol NO. I by Edward Harlow, David Lane, Ed Harlow (1999, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN 0-87969-544-7); Antibodies : A Laboratory Manual by Ed Harlow (Editor), David Lane (Editor) (1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN 0-87969-314-2), 1855. Handbook of Drug Screening, edited by Ramakrishna Seethala, Prabhavathi B. Fernandes (2001, New York, NY, Marcel Dekker, ISBN 0-8247-0562-9); and Lab Ref: A Handbook of Recipes, Reagents, and Other Reference Tools for Use at the Bench, Edited Jane Roskams and Linda Rodgers, 2002, Cold Spring Harbor Laboratory, ISBN 0-87969-630-3を参照のこと。これら各一般的テキストは、参考文献として本文書中に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ユビキチン−プロテアソーム経路
【図2】強力な、可逆的及び細胞透過性プロテアソームインヒビターであるMG-132の構造
【図3】ユビキチン阻害化合物及びDMSOコントロールの存在下における、TSV01ウイルスのHepG2細胞への感染後のプラーク形成単位(pfu)を示すプラークアッセイ法。*)はp<0.05を示す。
【図4】ユビキチン−プロテアソーム阻害剤がHepG2細胞におけるデングウイルス複製を阻害することを示すグラフ。
【図5】a)SAM解析より選択されたデングウイルスTSV01及び熱不活性化TSV01に応答する発現差異HepG2細胞転写産物のマイクロアレイ発現プロファイルのヒートマップ。遺伝子名、遺伝子機能、SAM解析及び132個すべての転写産物の倍数変化は、付録表1に示す。ダイスワップ実験結果の相対的な発現の平均を、ユニバーサルリファレンスRNAとの比較として示す。倍数変化は上方制御されているものを赤、下方制御されているものを緑で示す。経時(感染後3,6,12,24,48,72時間)及び複製(.1,.2,.3)をTSV01(V)と熱不活性化TSV01(H)に示し、遺伝子は経路(1bより選択)により群分けし、それから発現プロファイルによりクラスター分けした。1b)Panther生物学的プロセスを用いて選定された転写物のSAMの経路解析は、2つの高い有意性をもった遺伝子クラスターを示した。
【0049】
【図6】TLDAに示される、特異的な経路に位置するすべてのシステムにおいて上方制御される共通遺伝子。(a‐c)3つの系に共通な50の遺伝子は、生物学的な機能により、3つの特異的な経路である、インターフェロン介在性遺伝子(a)、ユビキチン−プロテアソーム系の遺伝子(b)及び、NF-κB介在性又はサイトカイン/メディエーター遺伝子(c)に群分けされた。HepG2細胞、A549細胞及び患者試料(Patients)各々の系におけるこれら共通遺伝子の平均倍加は、プロットされる平均値のために組み合わされた(平均値±標準誤差,where n=3‐5及び“*”は図6Dのマップ上にある遺伝子を示す)。同経路における同じTLDAの遺伝子であるが、3つの系すべてにおいて上方制御されるわけではない遺伝子は、“+”は有意に上方制御されていたものであり “−”はそうでないものとして表に示す。(d)これら50の共通遺伝子はMetaCoreprogramを用いた直接的相互作用によりマッピングされた。矢印は直接的な相互作用を示す。緑は陽性、赤は陰性、灰色は中間又は不明を示す。青い印はタンパク質を示す。緑の印は受容体の基質を示す。赤い印は転写因子を示す。黄色い印はタンパク質分解酵素を示し、橙色の印はキナーゼ及びリン酸化酵素を示す。
【0050】
【図7】デングウイルス感染及びデングウイルス複製に続く各経路の要素の機能的な効果。(a,b)細胞の培養上清の回収及びケモカイン(a)IP-10及び(b)I-TACの放出をELISA法により解析する前に、A549細胞及びHepG2細胞をデングウイルスTSV01(MOI10)又は熱不活性化デングウイルス(HI-TSV01;MOI10)に72時間感染させた。結果は平均値±標準誤差where n=3‐5、P値は0.05以下とし、検定はstudents t‐検定を行ない、各時点でコントロールとウイルス感染したものとを比較した。(c,d)デング熱患者の1日目、3日目及び21日目並びに非デング関連発熱患者の1日目の血清試料における(c)IP-10及び(d)I-TACを、ELISA法により解析した。結果は散布点として示し、棒線は平均値を示すwhere n=10(統計比較については本文を参照)。(e,f)野生型(Wt)及びビペリンを強発現させた(Vip)A549細胞においてIFN-β(500U/ml)を12時間前処理したもの(e)又はしないもの(f)に、デングウイルスTSV01 (MOI10)を48時間感染させた。プラークアッセイによって決定されるプラーク形成単位units/mlは、平均値±標準誤差where =3で示し、P値はstudents t‐検定によって算出し、野生型細胞とビペリン発現細胞とで比較して示した。(g)HepG2細胞は、プラークアッセイによるデングウイルス分析のために細胞の培養上清を回収する前に、MG-132(DMSO中に0.04μMおよび0.4μM)、ALLN(DMSO中に1μM及び10μM)及びDMSOのみで2時間培養し、その後デングウイルスTSV01 (MOI10)に48時間感染させた。結果は、最高値のpfu/ml(DMSOのみ)の平均パーセンテージ±標準誤差(n=3)として示す。student t検定によるP値は0.05以下であり、各処理とDMSOのみを比較したものを示す。
【0051】
【図8】デングウイルスのHepG2細胞への感染。(a)HepG2細胞を、デングウイルスTSV01(MOI10)に、3,6,12,24,48及び72時間感染させた。細胞培養上清は回収し、プラークアッセイによりデングウイルスの分析を行った。1ml当たりのプラーク形成単位は、平均値±標準誤差、検体数は4として対数表記で示す。(b)HepG2細胞は、指示された時間点においてデングウイルスTSV01(MOI10)(実棒)又は培地のみ(白棒)により感染させた。その後、デングEタンパク質に対するAlexa647を結合させた4G2抗体での細胞染色を行い、FACSにより解析した。デングウイルス陽性である染色された細胞のパーセンテージは平均値±標準誤差、検体数は3で示す。(c)HepG2細胞を、デングウイルスTSV01(MOI10)に、3,6,12,24,48及び72時間感染させた。ウイルスのRNAを抽出し、リアルタイムPCR法を用いて定量した。結果は、Cp値(サイクル数)の反比として表し、3つの異なる実験を代表するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明において、本発明者らは、多くのヒト血清タンパク質、特にデング熱の診断又は予後試験に適した標的となる、NF-κBが開始させるケモカイン経路のヒト血清タンパク質を同定した。当該タンパク質は、単独、複合又はNS1のようなウイルスタンパク質と組み合わせることによって、デング感染の存在を検出することができ、本デングウイルス検出発明の根幹を成すものである。
【0053】
本発明者らはまた、デングウイルスの複製を予防し、デングウイルスの複製ひいてはデング熱を制御する新規ヒト薬剤標的となる、インターフェロンシグナル(ユビキチンとインターフェロン経路メンバー)に関連するデングウイルス感染経路に対する2つの宿主反応性経路を同定した。
【0054】
それ故、本発明者らはデングウイルスの感染が(a)ユビキチン-プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質に群分けされる多くの遺伝子の発現上昇を引き起こすことを示した。
【0055】
従って、本文書中で述べられているいずれか1つ又は複数の遺伝子の発現検出は、デングウイルスの感染の診断又は診断において有用な指標を提供することに使用できる。本文書中で使用されている「診断」という用語は、当然、診断と同時に予測も含まれる。
【0056】
特に、本文書中で述べられているいずれか1つ又は複数の遺伝子の発現検出は、デングウイルスの感染を検出すること、デングウイルス感染を同じ又は類似した症状を示すかもしれない他の疾患と鑑別すること及び、疾患の重症度を予測することに使用できる。
【0057】
本発明者らは、デング熱に罹患し発熱している患者と、デング熱には罹患せずに発熱している患者とを鑑別できる方法を構築した。
【0058】
例えば、デングウイルスを検出するために、インターフェロンアルファ(IFN-α, GenBank Accession Number: NM_024013)の発現レベル又は活性を検出してもよい。例えば、カットオフ値として389ng/マイクロリットルのインターフェロンアルファの血清中濃度を用いることができる。このように、患者が約389ng/マイクロリットル以上のインターフェロンアルファの血清中濃度をもしも示すならば、その患者は実際にデング熱(デングではない他の原因による発熱、すなわち非デングの熱病などよりもむしろ)に罹患している可能性が高い。当然のことながら、インターフェロンアルファの389ng/マイクロリットルのレベルは絶対的な値ではなく、例えば、おそらく低精度ではあるが、カットオフ値として350〜450ng/マイクロリットルのインターフェロンアルファの範囲のレベルを使用することができる。
【0059】
加えて、本発明者らはデング熱の重症度のマーカーとして使用できる遺伝子を発見した。それらの遺伝子は、例えば、患者が入院といった更なる治療を必要としているかどうかを評価するために使用してもよい。
【0060】
例えば、IP-10(GenBank Accession Number: NM_001565)の発現又は活性のレベルが、疾患の可能性や重症度の指標として検出されてもよい。例えば1679.9ng/マイクロリットルのIP-10の血清中濃度をカットオフ値として用いてもよい。患者のIP-10の血中濃度が約1679.9ng/マイクロリットル以上である場合には、その患者はデング熱の重篤な疾患へと進展しやすい傾向にある。当然のことながら、IP-10の1679.9ng/マイクロリットルのレベルは絶対的な数値ではなく、例えば、おそらく低精度ではあるが、カットオフ値として1300〜2100ng/マイクロリットルのIP-10の範囲のレベルを使用することができる。
【0061】
本書に記載されている遺伝子やタンパク質の発現又は活性は、例えば体温、脈拍、血圧、血球数、ヘマトクリット値及びヘモグロビンの値などのデング熱の他の指標と共に検出されてもよい。
【0062】
更に本発明者らは、デング熱に感染している患者においてこれらの遺伝子が活性化されていること及び試験管内モデルにおいて化合物を使用してこれらの遺伝子を阻害することがウイルス産生を大いに減少させることを発見した。それゆえ本発明者らは、デング熱の治療又は予防における、これらの遺伝子又は対応するタンパク質のいずれかの使用を提供する。例えば、当該遺伝子の活性又は発現は、デング熱の治療のために調節されてもよい。当該遺伝子やタンパク質はまた、薬剤開発の標的として用いられてもよい。それゆえ本発明者らは、3つの経路におけるこれらの遺伝子のいずれかのアゴニスト又はアンタゴニストと結合する分子の選抜を提供する。そのような選抜は、デング熱の治療又は予防に適する分子を同定するために用いられてもよい。
【0063】
故に、それらの活性を減少させるような小さい分子又は他の薬剤機構を用いて、これら3つの群(例えばユビキチン経路遺伝子又はユビキチン経路を表す)における遺伝子を正確に標的とすることは、デング疾患に対する新しい治療法を提供する可能性が高い。
【0064】
本発明は、デング疾患を予防する新規ヒト薬剤標的と共に、デング感染における初期の、迅速及び簡便な診断及び予後を可能にする機構を示す。
【0065】
本書に記載される方法及び化合物によれば、(a)ユビキチンープロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の群に含まれるいずれかのタンパク質又は活性は、デングウイルスの機能を低下させるために調節されてもよく、そのことは個体におけるデング熱の治療または緩和のためであってもよい。即ち、これらのタンパク質のうちいずれかの発現、活性又はその両者のレベルを調整することによりデング熱を治療又は予防してもよい。このように、例えばユビキチンープロテアソーム経路を調節できる化合物は、デング熱の治療に用いることができる。
【0066】
細胞内における関連経路のいくつかの要素は、タンパク質の活性又は発現レベルにおいて調節されてもよい。ある実施態様では、関連タンパク質の活性はウイルス機能を崩壊させるため又はデング熱感染を治療するために下方制御される。
【0067】
これらの遺伝子に対する1つ又は複数の阻害剤を、デング熱の治療又は緩和に有効であることが知られている又は推測されている任意の薬剤と組み合わせて用いてもよい。例として、Kinney et al., 2005, Inhibition of dengue virus serotypes 1 to 4 in vero cell cultures with morpholino oligomers, J Virol. 79(8), 5116-28にて記載されている5’SL及び3’CS(それぞれ核酸の5’末端及び3’環化配列領域を標的とする)を混合したP4‐PMOを含む。他の例として、US6,777,445にて記載されているフラーレンを含む。US6,306,899には、ヘリオキサンチン及びそのアナログによるデングウイルスを含むフラビウイルス科の抑制及び治療方法が記載されており、そのような化合物もまた、デング熱の治療又は緩和のための本書に記載されているユビキチンープロテアソーム経路タンパク質阻害剤と組み合わせて用いてもよい。
【0068】
デング熱の治療、予防、緩和及び/又は診断等のための阻害剤、アゴニスト、アンタゴニストは、キットとしてパッケージされていてもよい。
【0069】
前記キットは、取扱説明書と共に、(a)ユビキチンープロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質のうちいずれか1つ又は複数の発現のパターン又はレベルの変化を検出する手段を含んでいてもよく、デング熱の検出、診断又は予測に適しているものであってよい。
【0070】
更なるキットの例として、取扱説明書と共に、(a)ユビキチンープロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質の発現のレベルを調節する手段を含んでいてもよい。前記キットは、個体におけるデング熱の治療又は予防に対して有用であるかもしれない。
【0071】
特に、当該キットはMG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal)、ALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO)又はその両者を含んでいてもよい。これらの詳細については、本書において後述する。
【0072】
当然のことながら、デング熱の治療又は予防のため、そして当該キットに使用するために、これらの分子と同等である化合物が、MG-132及び/若しくはALLNの代わりに又は加えて用いられてもよい。特に、本発明者らはそのような目的に対して、構造的又は機能的にMG-132及び/又はALLNと同等な類似化合物の使用を提供する。これらは、特にMG-132及び/又はALLNの化学的誘導体、MG-132及び/又はALLNの化学的修飾物、MG-132及び/又はALLNの代替物、MG-132及び/又はALLNの薬理学的に許容される塩、MG-132及び/又はALLNの多形相、MG-132及び/又はALLNの同位体変異体、MG-132及び/又はALLNのプロドラッグ、MG-132及び/又はALLNのプロモイエティ並びにMG-132及び/又はALLNの塩類などを含む。前記MG-132及び/又はALLNの同等物は、下記独立章にて詳細に記載する。
【0073】
当該キットは更に、5’SL及び3’CSを混合したP4‐PMO混合物、US6,777,445に記載されている任意のフラーレン並びにヘリオキサンチン及び/又はそのアナログ(US6,306,899)を含んでいてもよい。
【0074】
デング熱
本記載の目的において、「デング(dengue)」、「デング熱(dengue fever)」及び「デング出血熱(dengue hemorrhagic fever)」の用語は同義であると考慮されるべきである。
【0075】
デング熱及びデング出血熱(DHF)は、本題にもあるようにマラリアと類似して地理的に蔓延している急性熱性の疾患である。フラビウイルス科、フラビウイルス属の、交差免疫を持たず十分に異なるが密接に関連するウイルス血清型の4つのうちの1つにより引き起こされ、多血清型による流行(超地方的流行(hyperendemicity))が起こりうる。デング熱はAedes aegypti(まれに Aedes albopictus)という蚊を介して、人に伝染する。
【0076】
症状及び症候
本疾患は、重篤な頭痛、関節及び筋肉痛(筋痛症及び関節痛‐デング熱(break−bone fever)という名前はこの重篤な痛みに由来する)及び初期に下肢及び腰部、患者のうち数名においてはほぼ全身に広がる特徴的な鮮血性出血性発疹を伴う突発性の発熱により発症する。また、腹痛、吐き気、嘔吐又は下痢のいくつかの組み合わせを伴う胃炎を起こす可能性もある。
【0077】
いくつかの症例では非常に軽度の症状を起こし、発疹が現れないと、インフルエンザ又は他のウイルス感染症と誤診されうる。このように、疾患のピークで適切な診断がなされずに、熱帯地域からの旅行者は、気付かずに母国にデング熱を伝染させる可能性がある。デング熱の患者は、蚊又はまだ熱症のある患者からの血液産物を介してのみ感染させることができる。
【0078】
典型的なデング熱は、熱の終わりで小さいピーク(いわゆる2相パターン)を伴って約6〜7日続く。臨床的には、患者の体温が正常になるまで血小板数が減少する。
【0079】
DHFの症例ではまた、高熱、出血様症状、血小板減少症及び血液濃縮が認められる。ごく一部の症例は、高い死亡率のデングショック症候群(DSS)を引き起こす。
【0080】
診断
デング熱の診断はたいてい臨床的に行われる。典型的な症状としては、感染の限局性を伴わない高熱、血小板減少及び相対的な白血球減少を伴う出血性発疹が認められる。
【0081】
臨床的に示唆されたデング熱の診断を確認するため、血清学的実験及びPCR(DNA合成酵素連鎖反応)実験が利用される。
【0082】
治療
治療の中心は、支持療法である。患者は、経口摂取特に水分の摂取を維持し続けるように指示される。患者が経口摂取を維持することができない際には、脱水症状及び重大な血液濃縮を予防するために静脈内輸液の補給が必要になる可能性がある。血小板レベルが顕著に低下している場合には、血小板輸血が指示される。
【0083】
予防
デングフラビウイルスに対する市販のワクチンは存在しない。しかしながら、多くの進行しているワクチン開発計画のうちの1つに小児デングワクチンイニシアチブ(Pediatric Dengue Vaccine Initiative (PDVI [1]))があり、これは特定の国における貧しい子どもたちにとって入手しやすく利用しやすいデングワクチンの開発及び導入を加速させることを目的として2003年に発足した。
【0084】
デング熱の第1の予防は、デングウイルスの媒介蚊の除去又は減少が主である。貯留水(植木鉢のような)を根絶させるイニシアチブは、蚊媒介性疾患を制御するのに有用であることが証明されている。ネッタイシマ蚊によるペストの根絶についての有望な新技術が、最近オックスフォード大学から報告されている。
【0085】
個人の予防は、蚊帳、防虫剤の使用及び特定の地域を避けることからなる。
【0086】
[前述の記述はWikipediaの投稿者(2006)から編集した。Dengue fever. Wikipedia, The Free Encyclopedia. Retrieved 17:08, March 8, 2006 from http://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Dengue_fever&oldid=42596229]
【0087】
デング熱(デングウイルス)の分析
デング熱(デングウイルス)感染は、ある実施態様におけるプラークアッセイ法を含む多くの方法によって分析することができる。
【0088】
デングウイルスのプラークアッセイ
Vero細胞のコンフルエントな単層は、9%の熱不活性化したウシ胎児血清(FBS)(HyClone)、ナトリウム重炭酸塩(0.75g/liter)、ペニシリンG(100U/ml)及び硫酸ストレプトマイシン(100μg/ml)を含むIscove’s培地(HyClone,Logan,Utah)(Iscove−9%FBS mediumとして示される)中で、12穴プレートにて37℃、5%二酸化炭素の条件下で培養する。本研究において、培地には4.7%のFBS(Iscove−4.7%FBS)又はFBSを含まない(Iscove−0%FBS)培地もまた使用される。
【0089】
Vero細胞は1穴当たり10の5.0〜5.5乗個の細胞を12穴プレートに播種する。ウイルス感染は、新鮮でコンフルエントなVero細胞が培養されている成長培地を吸引し、2mLのIscove−0%FBS培地によって細胞層を2度洗浄し、そして感染多重度(MOI)が1.0又は2.0PFU/細胞のデングウイルスを含むIscove−0%FBSを100μL添加することにより行う。37℃、5%の二酸化炭素条件下で2時間ウイルスを接種させた後、ウイルス接種源を吸引し、細胞層をそれぞれ2mLのPBSで3回洗浄し、適当な濃度のP4‐PMOを含んだIscove−0%FBS培地1.0mLを添加し、続いて37℃、5%二酸化炭素条件下で培養する。記載した場所を除いては、成長曲線の間は、1度も培地を置換することはしない。これらの実験のコントロールには、未処理の細胞を用いる。
【0090】
様々な時間間隔で、ウイルスを感染させた各穴から20μL等量の培地を取り除き、凍結培地(Iscove−35%FBSmedium)に1:16又は1:32で希釈し、プラーク滴定まで−80度で保存する。
【0091】
プラーク滴定は、以前に報告されている(Butrape et al 2000. J. Virol. 74:3011-3019 and Miller and Mitchell, 1986, Am. J. Trop. Med. Hyg. 35:1302-1309)に従い、6穴プレートで成長している1層のVero細胞におけるアガロースオーバーレイにより行う。それぞれのウイルス成長曲線におけるプラーク滴定の検出限界は、それぞれ6穴プレートの1つ目の穴から回収したウイルスを1:16又は1:32で希釈したものの200μLをプレートに播いた結果から、10の1.9又は2.2乗PFU/mlでの水平線によって示される。
【0092】
細胞毒性解析
細胞毒性は以前に報告されている(Zhang et al 2006)に従い、フルオレセイン2酢酸塩(FDA)を用いて測定した。
【0093】
その他のデング熱(デングウイルス)分析
Payne et al., 2006, J Virol Methods. 27において、蛍光焦点解析によるフラビウイルスの定量法が記載されている。このような解析は、標準的なプラークアッセイの代わり又は組み合わせとして用いることができる。即ち、その解析は次のものを含む。
【0094】
Vero細胞を8穴のチャンバースライドに播き、10倍ずつに連続的な希釈をしたウイルスを感染させる。感染の約1〜3日後に細胞を固定し、特異的なモノクローナル抗体と反応させて、蛍光標識された2次抗体によって染色する。感染の蛍光焦点は蛍光顕微鏡を用いて観察及びカウントし、ウイルスの力価は1mL当たりの蛍光焦点単位(FFU)として算出する。標準的なVero細胞のプラークアッセイに最大11日間かかるのに比べて、Vero細胞において蛍光焦点解析(FFA)を行なう最適時間は、デングウイルスの血清型では24時間であった。
【0095】
他の解析方法として、デングウイルス遺伝子のC末端及びNS5並びに3’の非翻訳領域それぞれに対するPCR(TaqMan)解析に基づく血清型、及び、デンググループ特異的蛍光標識プローブについてのUS6,855,521並びにフラビウイルスの検出及び定量解析についてのUS6,793,488に記載されているものを用いてもよい。
【0096】
ユビキチン−プロテアソーム経路
ユビキチン化は、細胞にとって有害となりうるミスフォールドした、傷害を受けた又は変異したタンパク質の除去と同様、細胞周期の制御に関与するような主要なシグナルタンパク質の濃度を制御するための重要な制御機構である。
【0097】
「ユビキチン−プロテアソーム経路」という用語は、後述及び図1に示すように、分解の標的となる基質のユビキチン化に関与する細胞内経路に言及すべきである。
【0098】
ユビキチンは76個のアミノ酸残基のタンパク質であり、真核生物の細胞すべてにおいて確認されており、その配列は原生動物から脊椎動物まで極めてよく保存されている。ユビキチンは、タンパク質の翻訳後の修飾(ユビキチン化)を介して作用し、これらの修飾はそのタンパク質の機能、位置若しくはは輸送を変え、又は26Sプロテアソームにより破壊される標的とする(Burger and Seth (2004) Eur J Cancer. 40(15):2217-29)。
【0099】
ユビキチンのC末端にある4つの残基における末端のグリシンは、標的タンパク質と結合するユビキチン鎖を形成するために、標的タンパク質中のリジン残基又はもう一つのユビキチン分子中のリジン残基とイソペプチド結合を形成することができる。ユビキチンは、いずれか1つがユビキチン分子同士の結合に用いられる、7つのリジン残基を有しており、異なる方法で標的タンパク質を変える異なる構造をもたらす。
【0100】
リジン(11)−,リジン(29)及びリジン(48)が結合したポリユビキチン鎖は、分解のためのプロテアソームへのタンパク質を標的とする一方、モノユビキチン化及びリジン(6)−又はリジン(63)が結合したポリユビキチン鎖は、タンパク質の活性、位置又は輸送の可逆的な修飾を行う(Passmore and Barford (2004) Biochem J. 379(Pt 3):513-25)。例えば、リジン(63)が連結したポリユビキチン化は、キナーゼ活性化を介して、DNA障害耐性、炎症性反応、タンパク質の輸送及びシグナル伝達に関与することが知られている(Pickart and Fushman (2004) Curr Opin Chem Biol. 8(6):610-6)。加えて、ユビキチン鎖の長さは、標的タンパク質の運命を変える。転写因子やヒストンのような調節タンパク質は、しばしばユビキチン化の標的となる(de Napoles et al., 2004. Dev Cell 7(5):663-76)。
【0101】
ユビキチン化は、カスケードで連続的に働く、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン共役酵素(E2)及びユビキチンリガーゼ(E3)という少なくとも3つの酵素作用を含むATP依存的なプロセスである。形成されたユビキチン鎖の種類、標的タンパク質の特異性及びユビキチン化プロセスの調節により、多くの異なるE3リガーゼが存在する(Hatakeyama and Nakayama (2003) Biochem Biophys Res Commun. 302(4):635-45)。
【0102】
特に、ユビキチン化のプロセスは典型的に次の工程を含む
1.ユビキチンの活性化−ユビキチンはATPをエネルギー源として要するプロセスで、E1ユビキチン活性化酵素による2工程の反応で活性化される。初めの工程は、ユビキチン−アデニル酸中間体の生成を含む。2つ目の工程は、AMPの放出と共に、ユビキチンをE1活性化部位であるシステイン残基へと移行させる。この工程は、ユビキチンのC末端にあるカルボキシル基とE1システインにあるメルカプト基の間で、チオエステル結合を形成する。
【0103】
2.トランス(チオ)エステル化反応を介して、E1からユビキチン共役酵素であるE2のシステイン活性部位へとユビキチンは移行する。
【0104】
3.ユビキチン化カスケードの最後の工程は、一般にE3ユビキチン付加酵素(しばしば単にユビキチンリガーゼと称する)の活性を要する。E3酵素は、本システムの基質認識モジュールとして機能し、E2と基質の間における相互作用を可能にする。E3酵素は、HECTドメイン(E6−APカルボキシル末端とのホモログ)、RINGドメイン(又は密接に関連するU−boxドメイン)の2つのドメインのうち1つを有する。
【0105】
移行は2つの経路により生じうる。E3のRINGドメインにより触媒されるE2からの直接的なものと、E3のHECTドメインにより触媒されるE3酵素を介するものである。この場合においては、E3−ユビキチン共役中間体が、基質タンパク質へユビキチンが移行する前に形成される。
【0106】
最終的に、識別されたタンパク質は26Sプロテアソーム(下記参照)中で、小さいペプチド(通常6〜7のアミノ酸残基の長さ)に分解される。ユビキチン部分はプロテアソームによりタンパク質から切り離され、更なる使用のために再利用される。
【0107】
ある実施態様では、E1ユビキチン活性化酵素の活性は負に制御される。他の実施態様では、E2ユビキチン共役酵素の活性は、下方制御される。さらに他の実施態様では、E3ユビキチン付加酵素は負に制御される。
【0108】
ある実施態様では、ユビキチン特異的タンパク質分解酵素、ユビキチン共役酵素、ユビキチンリガーゼ又はユビキチン分解酵素は調節される。有用な実施態様では、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質は、G1P2 (ISG15 IFI15, NM_005101), HERC5 (E3 Ub ligase, GenBank Accession Number: NM_016323) and USP18 (ISG15 cleavage, GenBank Accession Number: NM_017414.2)からなる群より選択される。ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質は、ユビキチン特異的タンパク質分解酵素18(USP18, GenBank Accession Number: NM_017414)又はユビキチン共役酵素E2L(UBE2L6, GenBank Accession Number: NM_004223)を含んでいてもよい。
【0109】
ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質
「ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質」という用語により、本発明者らはユビキチン−プロテアソーム経路に関連する遺伝子のうちいずれかを意味する。ある実施態様では、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質は下記表D1に記すものである。
【0110】
表D1.ユビキチン−プロテアソーム経路遺伝子



【0111】
プロテアソーム
ユビキチン化されたタンパク質を加水分解する26Sプロテアソームとして知られる多様性酵素複合体である。
【0112】
この複合体のタンパク質分解の核である20Sプロテアソームは、多種のペプチダーゼ活性を含む。この核は、円中構造を形成するリング(α7,β7,β7,α7)がぎっしり重なった4つの7量体が配置される28のサブユニットから構成されている。αサブユニットは、2つの外輪と、2つの内輪の積み重ねであるβサブユニットを構成する。複合体の活性部位への入り口は、折り畳まれておらず広がったポリペプチドのみアクセスを許可するαサブユニットによりガードされている。26Sプロテアソームの調節ユニットは、ATPアーゼ、非ユビキチン化酵素及びポリユビキチン結合サブユニットを含む約17個のサブユニットから構成される19S粒子であることが知られている。
【0113】
本文書の目的において、「ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質」という用語は、プロテアソームに言及することを含むべきであり、それゆえ「ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質阻害剤」は、例えば後述するようなプロテアソームの活性のいずれかを阻害できるものはどのようなものであっても含む。
【0114】
プロテアソーム阻害剤
更なる実施態様では、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質阻害剤は、プロテアソームの活性を阻害する化合物即ちプロテアソーム阻害化合物を含む。
【0115】
ユビキチン−プロテアソームは多くのペプチダーゼ活性を含み、プロテアソーム阻害剤はこれらの活性のうちいずれか1つ又は複数を阻害してもよい。プロテアソームのペプチダーゼ活性は、キモトリプシン様活性(疎水性側鎖の後ろを切断)、ポストグルタミルペプチダーゼ活性(酸性側鎖の後ろを切断)、トリプシン様活性(塩基性側鎖の後ろを切断)及びリソソーム外の(extra-lysosomal)ポリペプチダーゼの分解に関与し、特に正常なプロテアソームの機能の欠損時にプロテアソームのいくつかの代謝機能の代わになると思われるトリペプチヂルペプチダーゼII(TPPII)を含む。
【0116】
使用されうる化合物は、細胞における正常な生物学的プロセスに影響を及ぼさずにプロテアソームの機能を防ぐことができるものである。
【0117】
適当なユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質阻害剤の例には、プロテアソームのキモトリプシン様、ポストグルタミル及びトリプシン様活性の可逆的阻害剤として知られるトリペプチドアルデヒド化合物を含む。別の分類の化合物であるビニルスルホンは、求核試薬の活性部位に対する自殺基質として作用し、デング熱の治療又は緩和のために本書に記載のように用いられてもよい。3つ目のグループの化合物であるラクタシスチンは、プロテアソームのキモトリプシン様及びトリプシン様活性の共有結合型阻害剤である。その作用は、水性溶媒中のインキュベーションで生成されるβラクトン型の作用に起因するものと思われる。これらの阻害剤のいくつかもまた、トリペプチヂルペプチダーゼIIに対する顕著な阻害効果を有する。ラクタシスチングループの化合物もまた、デング熱の治療または緩和に使用することができる。
【0118】





**カルビオケム、サンディエゴ、アメリカ合衆国
【0119】
代替的又は追加的として、プロテアソーム阻害剤は、例えば次に記載するいずれかの、プロテアソームの構成成分に対する抗体を含んでいてもよい(括弧内はカルビオケムのカタログ番号):Anti-20S Proteasome, α-Subunit, Methanosarcina thermophila (Rabbit) (539153); Anti-20S Proteasome, β-Subunit, Methanosarcina thermophila (Rabbit) (539156); Anti-Ubiquitin, Bovine Erythrocyte (Mouse) (662097); Anti-Ubiquitin-Activating Enzyme E1A, N-Terminal, Human (Rabbit) (662102); Anti-Ubiquitin-Activating Enzyme E1B, N-Terminal, Human (Rabbit) (662104); Anti-Ubiquitin-Activating Enzyme E1A/E1B, C-Terminal, Human (Rabbit) (662106)。
【0120】
ある実施態様では、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質阻害剤はMG-132又はALLNを含む。
【0121】
MG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal)
MG-132は強力で、可逆的及び細胞浸透性のプロテアソーム阻害剤である(Ki=4nM)。MG-132は、ATPアーゼ又はイソペプチダーゼの活性に影響を及ぼすことなく、哺乳類細胞におけるユビキチン結合タンパク質の分解及び26S複合体による酵母の透過性株を減少させる。そのCAS登録番号はCAS133407‐82‐6であり、化学式はCarbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinalである。
【0122】
MG-132はZ‐LLL‐CHOとして知られている。それは白色の固体である。MG-132はアポトーシスを開始させるc−JunのN末端キナーゼ(JNK1)を活性化する。それはNF-κBの活性化(IC50=3μM)を阻害し、β‐セクレターゼ切断を保護する。
【0123】
MG-132及びその効果は、Steinhilb, M.L., et al. 2001. J. Biol. Chem. 276, 4476. Meriin, A.B., et al. 1998. J. Biol. Chem. 273, 6373. Adams, J., and Stein, R. 1996. Ann. Rep. Med. Chem. 31, 279. Klafki, H.W., et al. 1996. J. Biol. Chem. 271, 2865. Lee, D.H., and Goldberg, A.L., 1996. J. Biol. Chem. 271, 27280. Wiertz, E.J., et al. 1996. Cell 84, 769. Jensen, T.J., et al. 1995. Cell 83, 129. Read, M.A., et al. 1995. Immunity 2, 493. Rock, K.L., et al. 1994. Cell 78, 761に記述されている。
【0124】
ALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO)
ALLNはユビキチン-プロテアソーム複合体によるIkB-α及びIkB-βのタンパク質分解の阻害剤である。そのCAS登録番号はCAS110044‐82‐1であり、化学式はN-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHOである。
【0125】
ALLNはまた、Calpain Inhibitor I、LLNL及びMG 101として知られている。それは白色からオフホワイトの固体であり、カルパインI(Ki=190nM),カルパインII(Ki=220nM),カテプシンB(Ki=150nM),及びカテプシンL(Ki=500pM)の細胞透過性の阻害剤である。ALLNは中性のシステインタンパク質分解酵素及びプロテアソームを阻害し(Ki=6μM)、βアミロイド前駆体タンパク質(bAPP)からβアミロイド(Ab)へのプロセッシングを調節する。それは低酸素及び虚血によるニューロンの障害から保護し、胸腺細胞及び後骨髄球におけるアポトーシスを阻害する。ALLNはまたL929細胞におけるレオウイルス誘導性のアポトーシスも阻害する。
【0126】
ALLNは、サイクリンB分解の阻害により、CHO細胞におけるG1/S期及び中期/後期での細胞周期の進行を阻害し、また、誘導性の一酸化窒素合成酵素遺伝子の転写を妨げることににより活性化されたマクロファージにより一酸化窒素の産生を防ぐ。
【0127】
ALLN及びその効果は、Debiasi, R.L., et al. 1999. J. Virol. 73, 695. Zhang, L., et al. 1999. J. Biol. Chem. 274, 8966. Milligan, S.A., et al. 1996. Arch. Biochem. Biophys. 335, 388. Griscavage, J.M., et al. 1995. Biochem. Biophys. Res. Commun. 215, 721. Squier, M.K., et al. 1994. J. Cell Physiol. 159, 229. Rami, J., and Kreiglstein, J. 1993. Brain Res. 609, 67. Sherwood, S.W., et al. 1993. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 3353. Vinitsky, A., et al. 1992. Biochemistry 31, 9421. Sasaki, T., et al. 1990. J. Enzyme Inhib. 3, 195に記述されている。
【0128】
インターフェロン関連タンパク質
「インターフェロン関連タンパク質(interferon−related protein)」という用語は、その発現、活性及び/又は機能がインターフェロンにより介在又は調節されるどのような遺伝子によるものをも意味する。インターフェロン関連タンパク質(interferon−related protein)はインターフェロン介在性タンパク質(interferon−mediated protein)であってもよい。
【0129】
ある実施態様では、インターフェロン関連タンパク質又はインターフェロン介在性タンパク質は下記の表D2に記すものである。
【0130】
表D2.インターフェロン関連タンパク質



【0131】
例えばインターフェロン関連タンパク質はインターフェロンαを含むこともある。
【0132】
NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質
「NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質(NF-κB mediated cytokine/chemokine response protein)」という用語は、その発現、活性及び/又は機能がNF-κBにより介在又は調節されるどのような遺伝子によるものをも意味する。特に、NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質はサイトカイン又はケモカイン…を含む。
【0133】
NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質は、メディエータータンパク質を含んでいてもよい。
【0134】
ある実施態様では、NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質は下記の表D3に記すものである。
【0135】
表D3.NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質





【0136】
スクリーニングアッセイ
ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質とその相同体(ホモログ)、変異体及び誘導体(天然型であろうと組換え型であろうと)を含むものは、タンパク質に結合する化合物及びタンパク質を活性化する(アゴニスト)又は阻害する(アンタゴニスト)化合物のスクリーニング過程に用いらてもよい。そのようなアゴニスト及びアンタゴニストはデング熱の治療、予防又は緩和に用いられてもよい。
【0137】
このようにユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質は、場合によっては、例えば細胞系、無細胞系、化学ライブラリー及び天然混合産物における小分子基質及びリガンドの結合性を評価するのに用いられてもよい。これらの基質及びリガンドは天然の基質及びリガンドであってもよく、また、構造的若しくは機能的な類似物であってもよい。Coligan et al., Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5 (1991)を参照。
【0138】
本書に記載されているように、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質は、デングウイルスの機能を標的にすること及びデング熱の症状の治療又は緩和のために用いられてもよい。
【0139】
従って、一方ではユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質を刺激する化合物や薬剤の発見が望まれており、もう一方ではユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の機能を阻害することができる化合物や薬剤の発見も望まれている。概して、アゴニスト及びアンタゴニストは、デング感染に対する治療的な及び予防的な目的に使用される。
【0140】
アゴニストは、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質(場合によっては)をいかなる程度にでも活性化できる。同様に、アンタゴニストはユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質を、いかなる程度にでも不活性化又はそれらの活性を阻害することができる。それゆえ、当該タンパク質は、それ特有な部分的、基準レベル又はバックグラウンドレベルまでいかなる程度にでもアンタゴニスト(部分的アンタゴニスト)により部分的に不活性化されうる、又は、前記レベルにまで完全に不活性化されうる(アンタゴニスト又は完全アンタゴニスト)。当該アンタゴニストはさらに、例えばゼロ活性(インバースアゴニスト)にまで不活性化させることができる。
【0141】
「アゴニスト」及び「アンタゴニスト」という用語には、場合によってはそれらを調節する活性と同様、転写レベル及び/又は翻訳レベルにおいて、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の発現を調節する分子もまた含まれる。
【0142】
ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質と相互作用できる可能性がある候補化合物の合理的な設計は、ポリペプチドの分子形状の構造学的研究に基づいて行うことができる。どの部位が特異的他のタンパク質と相互作用するかを決定する1つの手段は、例えばX線結晶解析又は2次元NMR技術のような物理的な構造決定である。これらの手段は、どのアミノ酸残基が分子接触領域を形成しているかの指針を提供してくれる。タンパク質構造の決定についての詳細な説明は、例えばBlundell and Johnson (1976) Protein Crystallography, Academic Press, New Yorkを参照。
【0143】
合理的な設計に代わるものは、通常ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質を候補調節因子と接触させ、それらの効果を検出するスクリーニング手段を用いる。通常、前記方法は、任意でパートナータンパク質と共に、細胞表面に当該関連タンパク質又はポリペプチドを発現する適当な細胞を作製すること、当該タンパク質又は当該細胞又はその両方と候補調節因子とを接触させること、関連分子の細胞内レベルの変化を検出すること、を含むものである。
【0144】
候補化合物は、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の活性を阻害する能力について試験されてもよい。例えば、候補分子はプロテアソーム活性におけるその効果を分析することにより評価されてもよい。前記分析は、例えば1mgのProteasome Inhibitor I (Cat. No. 539160)1mgのMG-132(Cat. No. 474790)及び200μgのラクタシスチン(Cat. No. 426100) を含む、プロテアソーム阻害剤セットで提供される基質のような特異的基質を利用してもよい。26Sプロテアソームの活性を分析するキットは、カルビオケム(San Diego, USA)からCat. No. 539159 として市販されている。
【0145】
抗体に基づくアッセイ
本発明者らは、IP-10及びI-TACが、他の熱病患者の血清試料と比較すると、初期のデング熱患者におけるウイルス血症期のバイオマーカーとして役立つという予備実験データを提供する。当該2つのタンパク質は、当該分野にて用いられうる試験に迅速に適応可能な診断分析の基盤を形成することができるNS1(Non‐Structural protein 1)のような宿主抗原と一緒の試験に基づく高感度な抗体を用いて迅速に検出されうる。
【0146】
その濃度がユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の活性に影響を受け、タンパク質活性を検出するマーカーとして用いられうる分子は、当業者に周知である。これらは、便宜上「タンパク質高感度マーカー(protein sensitive markers)」と言い、関連タンパク質の活性を検出する手段として検出することができる。
【0147】
スクリーニングに用いられ得る細胞は、様々な種類であってよい。前記細胞は、動物、酵母、ショウジョウバエ又は大腸菌の細胞を含む。ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質を発現している細胞は、結合性又は機能的応答の刺激若しくは阻害を観察するため、試験化合物と接触せしめる。
【0148】
ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質で各候補化合物を個々に試験する代わりに、候補分子のライブラリー又はバンクが有効に作成及び選抜(スクリーニング)されてもよい。
【0149】
候補化合物がタンパク質(特に抗体又はペプチド)の場合には、候補化合物のライブラリーはファージディスプレイ技術を用いてスクリーニングされてもよい。ファージディスプレイは、組み換えバクテリオファージを利用する分子スクリーニングの手法である。当該技術は、各ファージ又は特有の候補化合物を発現するファージミドのような候補化合物のライブラリーから、ある化合物をコードする遺伝子でバクテリオファージを形質転換することを含む。形質転換されたバクテリオファージ(固相担体につながれていてもよい)は、適当な候補化合物を発現し、そのファージコートに提示する。ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質、NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質、ポリペプチド又はペプチドと結合することができる特異的な候補化合物は、アフィニティ相互作用に基づく選抜方法により濃縮される。それから、成功した候補因子は、特徴づけ(キャラクタライズ)が行われるファージディスプレイは標準的なアフィニティスクリーニング技術よりも有効である。ファージ表面は、天然で生じる配置と非常によく似た三次元配置で候補因子を提示する。このことは、スクリーニングの目的において、より特異的及びより高いアフィニティを可能にする。
【0150】
化合物のライブラリーをスクリーニングするもう一つの方法は、化合物のライブラリーを発現する組換えDNA分子で安定的に形質転換した真核生物又は原核生物の宿主細胞を利用するものである。前記細胞(生存又は固定された形)は、標準的な結合パートナー分析に用いることができる。細胞性応答を検出する高感度な方法を記述している、Parce et al. (1989) Science 246:243-247; and Owicki et al. (1990) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 87;4007-4011を参照のこと。競合アッセイは特に有用であり、化合物のライブラリーを発現する当該細胞は、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質に結合することが知られている125I標識抗体のような標識された抗体及び結合組成物に対する結合力が測定される候補化合物のような試験サンプルと、接触又はインキュベーションされる。ポリペプチドに対して結合及び遊離している標識された結合パートナーは、その後、結合の程度を評価するために分離される。結合した試験サンプルの量は、ポリペプチドと結合している標識抗体の量と反比例する。
【0151】
多くの技術のうちいずれか1つを、結合の程度を評価するため、結合していない結合パートナーから結合したものを分離するのに用いることができる。通常この分離工程は、洗浄に続くフィルターへの接着、洗浄に続くプラスチックへの接着又は当該細胞膜の遠心分離のような手順を含む。
【0152】
さらに別のアプローチは、例えば形質転換された真核生物又は原核生物の宿主細胞から抽出した、可溶化、未精製又は可溶化して精製したポリペプチド又はペプチドを用いるものである。これは、特異性の増加、自動化する能力及び薬物試験の高スループットを利点とする「分子(molecular)」結合アッセイを可能にする。
【0153】
候補化合物をスクリーニングするその他の技術は、例えば、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質に対する適した結合アフィニティを有する新規化合物をスクリーニングする高スループットを提供するアプローチを含み、詳細は国際特許出願WO 84/03564 (Commonwealth Serum Labs.), published on September 13 1984に記載されている。まず、多数の様々な小さいペプチド試験化合物を固体基板上(例えばプラスチックピン又は他の何らかの適当な表面上)で合成する;Fodor et al. (1991)を参照。それから、全てのピンを可溶化したポリペプチドと反応させ、洗浄する。次の工程は結合したポリペプチドを検出することを含む。このようにして、当該ポリペプチドと特異的に作用する化合物が同定される。
【0154】
当該アッセイは候補化合物の結合を簡便に試験できる。当該アッセイは、関連タンパク質に向かう細胞への接着が、候補化合物と直接的または間接的な標識の手段により検出され、また標識された競合物により競合させることを含むアッセイである。
【0155】
さらに当該アッセイは、混合物を形成するために、候補化合物をユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質を含む溶液と混合する工程、混合物中におけるユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質(場合によっては)の活性を測定する工程、及び、混合物のタンパク質活性と標準物を比較する工程を単に含んでいてよい。
【0156】
ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質のcDNA、タンパク質及び当該タンパク質に対する抗体は、添加した化合物の、細胞での関連mRNA及びタンパク質の産生における効果を検出するために作成したアッセイに用いられてもよい。例えば、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の分泌又は細胞結合型のレベルを測定するために、当業者に周知の標準的な方法によりモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いてELISA法が構築されてもよい。これは、適切にコントロールされた細胞又は組織から、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の産生を阻害又は促進する(それぞれいわゆるアンタゴニスト又はアゴニスト)因子の発見に用いることもできる。スクリーニングアッセイを行う標準的な方法は当業者に周知である。
【0157】
当該スクリーニングアッセイは、上述したように試験管内で行われてもよく、また、生体内で行われてもよい。生体内アッセイは特に、デングに適した動物モデル又は細胞を用いて行うことができる。
【0158】
デング熱の動物モデルはマウス及びサルを含む。そのような動物モデルについての詳細はDengue Digest, volume 2, number 4, December 2005 (MICA (P) 193/06/2005; Novartis Institute for Tropical Diseases, Singaopore); に記載されており、この文書はhttp://www.nitd.novartis.com/includes/teasers/teaser_attaches/dengue_digest/DengueDigest_v2n4.pdfで入手できる。デング熱のマウスモデルについてはSchul W, Liu W, Xu HY, Flamand M, Vasudevan SG. (2007), A dengue fever viremia model in mice shows reduction in viral replication and suppression of the inflammatory response after treatment with antiviral drugs. J Infect Dis. 2007 Mar 1;195(5):665-74. Epub 2007 Jan 23に記載されている。
【0159】
これらの文書に記載されている適切な動物モデルのいずれかを、本書に記載のスクリーニングアッセイに用いることができる。
【0160】
前記アッセイの実施は、デングに罹患した動物に候補分子を投与すること、及び、ウイルス量、ウイルス複製、デング熱のいずれかの症状等のような、デングの感染又は進行の指標となるパラメーターの変化を検出すること、を用いる。ウイルスの複製を含むデングの症状を緩和又は回復させる候補分子は、デング熱の予防、緩和又は治療に対する薬剤として有用かもしれない。
【0161】
潜在的なユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質のアンタゴニストの例としては、低分子、抗体、又は時として、ヌクレオチド並びにプリン及びプリンアナログ、オリゴヌクレオチド又はタンパク質を含むそれらのアナログを含む。
【0162】
それゆえ、本発明者らはまた、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質及び/またはペプチドに特異的に結合できる化合物を提供する。
【0163】
「複合物(compound)」の用語は、生体高分子(例えば核酸、タンパク質、非ペプチド又は有機分子)又はバクテリア、植物、菌類若しくは動物(特に哺乳類)の細胞若しくは組織のような生体材料からの抽出物又は無機の成分若しくは分子のような化合物(chemical compound)(天然に存在しているもの又は合成されるもの)を意味する。当該化合物は抗体であってもよい。
【0164】
前記スクリーニングを行うのに必要な材料は、スクリーニングキットにパッケージされていてもよい。前記スクリーニングキットは、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質又は前記ポリペプチドの産生を減少若しくは増加させる化合物に対するアゴニスト及びアンタゴニストの同定に有用である。当該スクリーニングキットは、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質、(b)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答性ポリペプチドを発現する組換え細胞、(c)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質を発現している細胞膜、又は(d)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質に対する抗体を含む。スクリーニングキットは任意に取扱説明書を含んでいてもよい。
【0165】
ALLN及びMG-132の変異体及び機能的な同等物
本発明者らは、本書に記載の目的において、MG-132及び/又はALLNの変異体又は構造的若しくは機能的に同等な類似物である化合物の使用を提供する。これらを以下に詳述する。
【0166】
ALLN及びMG-132の化学的誘導体
本書で用いられる「誘導体(derivative)」又は「誘導体化された(derivatised)」の用語は、化合物の化学的な修飾を含む。前記化学的な修飾の実例としては、ハロゲン基、アルキル基、アシル基又はアミノ基による水素の置換が挙げられる。
【0167】
ALLN及びMG-132の化学的修飾
ある実施態様では、ALLN及び/又はMG-132又はそれらの変異体は、化学的に修飾された化合物であってもよい。
【0168】
化合物の化学的な修飾は、当該化合物と標的との間の水素結合相互作用、電化相互作用、疎水性相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用又は双極子相互作用を増長または減少させるものであってよい。
【0169】
ALLN及びMG-132の置換変異体
本発明者らは、ALLN及びMG-132の置換変異体の使用を提供する。誤解を避けるため、別段の指示がなければ、置換した(substituted)という用語は1又は複数の定義された群により置換されることを意味する。多くの選択的な群から選択される場合には、選択された群は同じであっても異なっていてもよい。誤解を避けるため、独立して(independently)という用語は、多くの可能な置換基から1以上の置換基を選択することを意味し、それらの置換基は同じであっても異なっていてもよい。
【0170】
ALLN及びMG-132の薬理学的許容塩
ALLN及び/又はMG-132又はそれらの変異体は、酸付加塩又は塩基性塩のような薬理学的許容塩又はそれらの水和物を含むそれらの溶媒化合物として投与されるものであってもよい。適当な塩類に関する総説はBerge et al, J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19を参照。
【0171】
通常、薬理学的許容塩は、必要に応じて酸又は塩基を用いて容易に調製することができる。当該塩は、溶液から沈澱してろ過により回収することができ、又は溶媒の蒸発により回収することができる。
【0172】
適した酸付加塩は、無毒性の酸を形成する酸から形成され、例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸化水素塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、スルホン酸メタン、スルホン酸エタン、スルホン酸ベンゼン、パラ−スルホン酸トルエン及びパモ酸塩が挙げられる。
【0173】
適した塩基性塩は、無毒性の酸を形成する塩基から形成され、例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩及びジエタノールアミン塩が挙げられる。
【0174】
ALLN及びMG-132の多形相/不斉炭素
ALLN及び/又はMG-132又はそれらの変異体は多形相として存在していてもよい。
【0175】
前記化合物は、1つ又はそれ以上の不斉炭素原子を含んでいてもよく、それゆえ2つ又はそれ以上の立体異性体が存在していてよい。化合物がアルケニル又はアルケニレン基を含むものであるとき、シス(E)及びトランス(Z)異性体もまた生じる。ALLN及び/又はMG-132又はそれらの変異体の個々の立体異性体並びに必要に応じてはそれらの混合物と共にそれらの互変異性体もまた、本開示に含まれる。
【0176】
ジアステレオマー又はシス及びトランスの分離は、例えば、化合物又は適当な塩類又はそれらの誘導体の立体異性体混合物の、分別結晶化、クロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィー(H.P.L.C.)といった従来技術により行われてもよい。また、化合物個々のエナンチオマーは、相当する光学的に純粋な中間体から、又は、適したキラル物の支持を用いた相当するラセミ体のH.P.L.Cによるような溶解により、又は、相当するラセミ体と適当な光学活性酸若しくは塩基を反応させることにより形成されるジアステレオマー塩の分別結晶により調製されてもよい。
【0177】
ALLN及びMG-132の同位体変異体
本開示はまた、当該化合物又はそれらの薬理学的許容塩のあらゆる適した同位体を含む。
【0178】
ALLN及び/又はMG-132又はそれらの変異体又はそれらの薬理学的許容塩の同位体変異体は、少なくとも1つの原子が、同じ原子番号を持つがその原子量が通常天然で見受けられる原子量と異なる原子で置換されたもの、として定義される。化合物及びそれらの薬理学的許容塩に組み込まれる同位体の例としては、それぞれ2H, 3H, 13C, 14C, 15N, 17O, 18O, 31P, 32P, 35S, 18F 及び 36Clのような水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体が挙げられる。一部の化合物及びそれらの薬理学的許容塩の同位体変異体(例えば3H又は14Cのような放射性同位体が組み込まれているもの)は、薬剤及び/又は基質の組織分布研究に有用である。トリチウム化した同位体(即ち3H)及び炭素14同位体(即ち14C)は、特にその調整及び検出が容易であるため好ましい。更に、重水素(即ち2H)のような同位体での置換は、例えば、生体内での半減期の増大又は必要投与量の減少といった、優れた代謝的安定性に起因する一部の治療上の利点を可能にするため、状況次第では好ましい。通常、当該化合物及びそれらの薬理学的許容塩の同位体変異体は、適した薬剤の適当な同位体変異体を用いて従来手法により調製することができる。
【0179】
ALLN及びMG-132のプロドラッグ
当該化合物がプロドラッグから誘導されてもよいことは、当業者にとって当然のことである。プロドラッグの例としては、一部の保護対象となるグループを有し、薬理活性を有しないものであるが、場合によっては投与(経口又は非経口でのように)された後に薬理活性のある化合物を形成するために体内で代謝されるものが挙げられる。
【0180】
ALLN及びMG-132のプロモイエティ(pro‐moieties)
例えば、"Design of Prodrugs" by H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載されいる(その開示は参照することにより本書に組み込まれる)「プロモイエティ(pro‐moieties)」として知られる一部のモイエティが、化合物の適当な機能として位置づけられてよいことは、当然のことである。そのようなプロドラッグもまた本開示に含まれる。
【0181】
ALLN及びMG-132の塩
ALLN及び/又はMG-132又はそれらの変異体は、無機酸又は有機酸に由来する塩の形成に用いることができる。これらの塩は次のものを含むがこれらに限定されるものではない:酢酸(acetate)、アジピン酸塩(adipate)、アルギン酸塩(alginate)、クエン酸塩(citrate)、アスパラギン酸塩(aspartate)、安息香酸塩(benzoate)、安息香酸硫酸塩(benzenesulfonate)、重硫酸塩(bisulfate)、酪酸塩(butyrate)、ショウノウ塩(camphorate)、ショウノウ硫酸塩(camphorsulfonate)、ジグルコン酸塩(digluconate)、シクロペンタンプロピオン酸塩(cyclopentanepropionate)、ドデシル硫酸塩(dodecylsulfate)、エタン硫酸塩(ethanesulfonate)、グルコヘプタン酸塩(glucoheptanoate)、グリセロリン酸塩(glycerophosphate)、ヘミ硫酸塩(hemisulfate)、へプタン酸塩(heptanoate)、ヘキサン酸塩(hexanoate)、フマル酸塩(fumarate)、塩酸塩(hydrochloride)、臭化水素酸塩(hydrobromide)、ヨウ化水素酸塩(hydroiodide)、2−水酸化エタン硫酸塩(2-hydroxyethanesulfonate)、乳酸塩(lactate)、マレイン酸塩(maleate)、メタン硫酸塩(methanesulfonate)、ニコチン酸塩(nicotinate)、2−ナフタレン硫酸塩(2-napthalenesulfonate)、シユウ酸塩(oxalate)、パモ酸塩(pamoate)、ペクチン酸塩(pectinate)、硫酸塩(sulfate)、3−フェニルプロピオン酸塩(3-phenylpropionate)、ピクリン酸塩(picrate)、ピバル酸塩(pivalate)、プロピオン酸塩(propionate)、コハク酸塩(succinate)、酒石酸塩(tartrate)、チオシアン酸塩(thiocyanate)、p−トルエン硫酸塩(p-toluenesulfonate)及びウンデカン酸塩(undecanoate)。塩基性の窒素を含む群もまた、メチル、エチル、プロピル及び塩化ブチル、臭化物のような低アルキルハロゲン化物、ジメチル、ジエチル、ジブチルのような硫酸ジアルキル及び硫酸ジアミルのヨウ化物、デシル、ラウリル、ミリスチル及び塩化ステアリル、臭化物及びヨウ化物のような長鎖のハロゲン化物、ベンジル及び臭化フェネチルのアルキルハロゲン化物、及びその他のような薬剤で四級化される。それにより、水又は脂溶性又は分散性の物が取得される。
【0182】
薬理学的許容酸付加塩を形成するのに用いることができる酸の例としては、塩酸、硫酸、リン酸のような無機酸及びシュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸のような有機酸が挙げられる。塩基付加塩は、ALLN及び/若しくはMG-132若しくはそれらの変異体の最終的な分離と精製の間に、又は、カルボン酸モイエティと薬理学的許容金属カチオンの単独又はアンモニアとの水酸化物、炭酸塩、若しくは重炭酸塩又は第1級、第2級若しくは第3級有機アミンのような適した塩基とを別々に反応させることにより、調製することができる。薬理学的許容塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムのようなアルカリ金属及びアルカリ土類金属及びそれらの類似物に基づくカチオンを含むがこれらに限定されるものではなく、同様に、無毒性のアンモニウム、第4級アンモニウム及びアミンカチオンは、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン及びそれらの類似物を含むがこれらに限定されるものではない。塩基付加塩の形成に有用なその他の代表的な有機アミンとしては、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン及びそれらの類似物が挙げられる。
【0183】
(生体内における)ヒト関連遺伝子









【0184】
医薬組成物
本書で開示されるように、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト若しくはアンタゴニストは、デング熱の治療又は予防に用いることができる。
【0185】
ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質、又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト若しくははアンタゴニストは、腸内、非経口及び局所投与を含む様々な方法により投与されうる。例えば、経口、皮下、経皮、経粘膜、イオン導入、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、硬膜下、直腸内などを含む、適当な投与方法がある。
【0186】
他の実施態様によれば、デング熱の治療又は予防のための薬理学的に許容されるキャリア若しくは賦活剤と共に、ある実施態様ではMG-132又はALLNを含むユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質阻害剤を含む、組成物が提供される。
【0187】
適当な薬理学的許容賦形剤としては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、単糖類、二糖類、でんぷん、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ブドウ糖、ヒドロキシプロピル―パラ―シグロデキストリン、ポリビニルピロリジノン、低温度融解ワックス、イオン交換樹脂などのような処理剤及び薬剤到達調節剤及び促進剤が挙げられ、また、それらのうちのいずれか2つ又はそれ以上の組み合わせも含まれる。他の適当な薬理学的許容賦形剤は"Remington's Pharmaceutical Sciences,"Mack Pub. Co., New Jersey (1991)に記載されており、参考文献により本書に組み込まれる。
【0188】
MG-132又はALLNのようなユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト若しくはアンタゴニストを含む医薬組成物は、例えば溶液、懸濁液又は乳剤を含む、目的の投与方法に適したどのような形であってもよい。溶液、懸濁液又は乳剤の調製には、通常、液体キャリアが用いられる。実施に際して使用が考えられる液体キャリアとしては、例えば、水、食塩水、薬理学的許容有機溶媒、薬理学的許容オイル又は脂質などが挙げられ、また、それらのうちの2つ又はそれ以上の混合物も含まれる。液体キャリアは、例えば可溶化剤、乳化剤、中和剤、緩衝液、防腐剤、懸濁化剤、増粘剤、粘性調節剤、安定化剤などの、その他の適当な薬理学的許容添加剤を含んでいてもよい。適当な有機溶媒としては、例えばエタノールのような1価のアルコール及びグリコールのような多価アルコールが挙げられる。
【0189】
適当なオイルとしては、例えば大豆油、ココナッツ油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油などが挙げられる。非経口投与においては、当該キャリアは、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなどのような油性エステルであってもよい。組成物は、合成物は微粒子、マイクロカプセル、リポソームの封入体など、また、それらのうちのいずれか2つかそれ以上の組み合わせの形であってもよい。
【0190】
MG-132又はALLNのようなユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストは、要望に合わせて、従来の無毒性の薬理学的許容キャリア、アジュバンド及びビークル(媒体)を含む投与剤形で、経口的、非経口的、舌下、吸入噴霧、直腸内又は局所的に投与されてもよい。局所的投与方法は、経皮パッチ又はイオン導入装置のような経皮投与の使用を含んでいてもよい。本書で用いられる、非経口のという用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、イントラステマル(intrastemal)注射又は点滴の技術を含むものとして用いられる。
【0191】
例えば水溶性又は脂溶性懸濁液の滅菌注射用剤のような注射用製剤は、分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、当業者に周知の技術により形成されてもよい。滅菌注射用剤は、例えば1,3-プロパンジオールのような無毒で非経口的に許容される希釈剤若しくは溶媒での滅菌注射液又は懸濁液であってもよい。使用されうる許容できるビークル(媒体)及び溶媒には、水、リンガー液及び生理食塩水がある。加えて、許容媒体又は溶媒においては、水、リンガー液及び生理食塩水が使用されてもよい。加えて、滅菌された固定油は、溶剤又は懸濁化剤として従来使用されている。本目的において、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含むどのようなブランドの固定油が用いられてもよい。加えて、オレイン酸のような脂肪酸は注射剤の調製に用いられている。
【0192】
薬剤の直腸内投与のための坐剤は、常温では固体であるが直腸内温度では液体でありそれゆえ直腸内で溶けて薬剤を放出するココアバター及びポリエチレングリコールのような適当な無刺激性の賦活剤と、薬剤とを混合することにより調製することができる。
【0193】
経口投与のための固形剤は、カプセル、錠剤、ピル、粉末剤及び顆粒剤を含んでいてもよい。前記固形剤において、活性化合物はスクロース、ラクトース又はでんぷんのような少なくとも1つの不活性希釈剤と混ぜ合わされてもよい。前記剤形はまた、通常の慣行のように、不活性希釈剤以外に添加剤(例えばステアリン酸マグネシウムのような平滑剤)を含んでいてもよい。カプセル、錠剤及びピルの場合は、剤形は緩衝剤を含んでいてもよい。錠剤及びピルは付加的に腸溶コーティングを施すことができる。
【0194】
経口投与のための液剤は、水のように当業者に通常用いられている不活性希釈剤を含む、薬理学的に許容される乳剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤を含んでもよい。前記組成物はまた、湿潤剤並びにシクロデキストリンのような乳化剤及び懸濁化剤、並びに甘味剤、香味剤及び芳香剤、のようなアジュバンドを含んでいてもよい。
【0195】
更に他の実施態様によれば、本発明者らは、ヒト又は動物で、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質、又は、NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質のいずれかの活性を阻害する方法を提供する。当該方法は被検体に、被検体での関連活性を阻害するのに効果的な、ある態様ではMG-132又はALLN(又はそれらの化合物を含む組成物)であるユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質阻害剤を投与することを含むものである。他の実施態様では、ヒト又は動物におけるデング熱の治療方法を提供する。当該方法は、細胞又は人若しくは動物の被検体に、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の活性の阻害に効果的な化合物又は組成物を投与することを含むものである。当該被検体はヒト又はヒト以外の動物であってよい。タンパク質活性の阻害は、コントロールとの比較若しくは予想されるタンパク質活性との比較において、関連タンパク質活性の抑制を検出できることを含む。
【0196】
MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストの有効量は、一般に、本書に記載されるいずれかのアッセイ、通常当業者に用いられていることが知られているその他のアッセイ、又は、デング熱に罹患した被検体の症状の緩和の検出により、検出できる程度に関連タンパク質の活性を阻害するのに十分な量を含む。
【0197】
被検体の連続的治療は、例えばさらなる疾患の進行の停止又は疾患の予防といった、医学的又は生物学的に疾患に罹患した被検体に症状の軽減又は緩和の誘導をもたらす可能性がある。このように、例えばデング熱の治療は、発熱、重篤な頭痛、関節及び筋肉の痛み(筋肉痛及び関節痛)、発疹、胃炎、腹痛、悪心、嘔吐、下痢、出血症状、血小板減少症、血液濃縮又はデングショック症候群(DDS)のようなデングに関連した症状を軽減させることができる。
【0198】
一回分の剤形を作るためにキャリア材料と組み合わされうる有効成分の量は、治療される宿主及び投与の特有の形態により変化する。しかし当然のことながら、特定の患者に対する特定の投与量は、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、総体的な健康、性別、食事、投与時間、投与方法、排泄頻度、薬剤の組み合わせ及び治療中の特定の疾患の重症度を含む様々な因子に依存する。与えられた状況において治療効果のある量は、日常実験により容易に決定することができ、通常の臨床医の技術及び判断に基づいて行うことができるものである。
【0199】
治療効果のある量は一般に約10μg/kg/dayから100mg/kg/dayであり、例えば、MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストの約25μg/kg/dayから約20mg/kg/day又は約50μg/kg/dayから約2mg/kg/dayであり、単回又は複数回に分けて投与することができる。
【0200】
MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストは、リポソームの形で投与することもできる。当業者に公知のように、リポソームは一般にリン脂質又は他の脂質物質から得られる。リポソームは、水溶液中に分散される単一又は多重の水和液晶により形成される。リポソームを形成できる、無毒性、薬理学的許容可能である代謝可能な脂質であればどのようなものであっても用いることができる。リポソーム形である本組成物は、化合物に加えて、安定剤、防腐剤、賦形剤を含むことができる。用いられうる脂質としては、天然及び合成の両方のリン脂質及びホスファチジルコリン(レシチン)を挙げることができる。リポソームの形成方法は当業者に公知である。例えば、Prescott, Ed., Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N. W., p. 33 et seq (1976)を参照。
【0201】
MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストは、単一で活性のある医薬品として投与することができる一方、それらはまた、疾患の治療に用いられる1又は複数のその他の薬剤と組み合わせて用いることもできる。デング熱の治療において、MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストとの組合せに有用である代表的な薬剤としては、例えば、P4‐PMO化合物、5’SL 及び 3’CS(それぞれmヌクレオチドの5’末端及び3’環化配列領域を標的とする)が挙げられる。このことは、Kinney et al., 2005, Inhibition of dengue virus serotypes 1 to 4 in vero cell cultures with morpholino oligomers, J Virol. 79(8), 5116-28.に記載されている。
【0202】
追加の有効な薬剤が、MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストとの組合せで用いられる場合、一般に、追加の有効な薬剤は、参照することにより本書に組み込まれるPHYSICIANS'DESK REFERENCE (PDR) 53rd Edition (1999)に示されているような治療量又は当業者に公知であるような治療上有用量で用いることができる。
【0203】
MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニスト及びその他の治療上有効な薬剤は、臨床で推奨される最大用量又は低用量で投与することができる。当該組成物中において有効な、MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストの投与量は、投与経路、疾患の重症度及び患者の反応に依存する望ましい治療反応を得るために変化させることができる。当該組合せは、別個の組成物として又は両方の薬剤を含む一つの剤形として投与することができる。組合せて投与される場合、当該治療薬は、同時または異なる時間に投与される別個の組成物として作成することができ、又は、一つの組成物として投与することができる。
【0204】
バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)
本書で開示される化合物(及び組合せ)は、ある実施態様では経口投与可能なものである。経口バイオアベイラビリティ(Oral bioavailability)は体循環に到達する経口投与された薬剤の割合に言及する。薬剤の経口バイオアベイラビリティを決定する因子は、分解、膜透過性及び代謝的安定性である。通常、まず初めに試験管内、そして次に生体内における技術のスクリーニングカスケードが経口バイオアベイラビリティの決定に用いられる。
【0205】
消化管(GIT)の水性内容物による薬剤の可溶化である分解は、GITに似た適当なpHにて試験管内溶解度試験を行なうことにより予想することができる。ある実施態様では、MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストは、50mg/mlの最少溶解度を有する可能性がある。溶解度はAdv. Drug Deliv. Rev. 23, 3-25, 1997に記載されているような当業者に公知の標準的な手法により決定することができる。
【0206】
膜透過性はGITの細胞を通る化合物の通過に言及する。脂溶性は膜透過性を予測するうえで重要な性質であり、試験管内において有機溶媒及び緩衝液を用いたLog D7.4により定義される。MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストは、-2から+4又は−1から+2のLog D7.4を有する可能性がある。LogDはJ. Pharm. Pharmacol. 1990, 42:144に記載されているような当業者に公知の標準的な手法により決定することができる。
【0207】
CaCO2のような細胞単層アッセイは、いわゆるcaco‐2フラックスと呼ばれるp−糖タンパク質のような排出トランスポーターの存在下で有用な細胞透過性の予測を、十分に与える。MG-132又はALLNのような、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、インターフェロン関連タンパク質又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質の阻害剤、アゴニスト又はアンタゴニストは、2x10-6cms-1以上(例えば5x10-6cms-1以上)のcaco‐2を有する可能性がある。caco‐2フラックスの値は、J. Pharm. Sci, 1990, 79, 595-600に記載されているような当業者に公知の標準的な手法により決定することができる。
【0208】
代謝的安定性とは、吸収過程における、化合物を代謝する消化管又は肝臓の能力(初回通過効果)を指す。ミクロソーム、肝細胞などのようなアッセイシステムは代謝ライアビリティを予測するものである。ある実施態様では、実施例の化合物は、0.5未満の肝抽出に相当する当該アッセイシステムにおいて代謝安定性を示すことができる。アッセイシステム及びデータの扱い方の例は、Curr. Opin. Drug Disc. Devel., 201, 4, 36-44, Drug Met. Disp.,2000, 28, 1518-1523に記載されている。
【0209】
上述した過程の相互作用のため、動物における生体内実験により、ヒトに経口投与可能な薬剤となる更なる支持が得られる。絶対的バイオアベイラビリティは、これらの研究において化合物を別個に又は混合して経口投与することにより決定される。絶対測定(吸収された%)のために、静脈経路による投与も行われる。動物における経口アベイラビリティの評価例は、Drug Met. Disp.,2001, 29, 82-87; J. Med Chem , 1997, 40, 827-829, Drug Met. Disp.,1999, 27, 221-226を参照。
【0210】
「薬理学的に許容されるキャリア(pharmaceutically acceptable carrier)」という用語は、本書で用いられるように一般に、有効成分と反応することができない有機又は無機材料に言及する。当該キャリアの例としては、ラクトース、グルコース及びショ糖のような糖類;トウモロコシでんぷん及び芋でんぷんのようなでんぷん;カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、エチルセルロース及び酢酸セルロースのようなセルロース及びその誘導体;粉末tragancanth;麦芽;ゼラチン;滑石;ステアリン酸;ステアリン酸マグネシウム;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ごま油、オリーブ油、トウモロコシ油及びカカオ脂のような植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールのような多価アルコール;寒天;アルギン酸;発熱物質を含まない水;生理食塩水;リン酸緩衝液;スキムミルク粉;また、その他の無毒性適合物質が挙げられるがこれらに限定されるものではない。ラウリル硫酸ナトリウムのような湿潤剤及び潤滑油と同様に着色剤、香味剤、滑剤、賦形剤、整形剤、安定剤、抗酸化剤及び防腐剤もまた例として挙げられる。
【0211】
「治療効果のある量(therapeutically effective amount)」という用語は、本書で用いられるように一般に、薬剤の量、例えば有効成分としての化合物の量、すなわち本書で定義されるように、治療を必要とする被検体に投与する場合に十分な治療効果を示す量に言及する。本発明の化合物、塩、誘導体、異性体又はエナンチオマーの治療効果の治療効果のある量は、例えば被検体の年齢及び体重、治療を必要としている正確な状態及びその重篤さ、剤形の特質、及び投与経路を含む多くの因子に依存しており、最終的に付き添いの医師又は獣医の裁量による。しかしながら、バクテリア又はウイルス感染、特に細菌性髄膜炎に関連した疾患の治療に対する、本発明の化合物の効果的な量は、一般に、患者(哺乳類)の体重で計算し、1日に約10〜40mg/kgの範囲であり、より一般的には1日に約40mg/kg(体重)である。それゆえ、70kgの大人の被検体においては、1日の実際の用量は通常約2,800mgであり、この用量は単回投与又はより一般的には複数回投与(2,3,4,5又は6回)で1日分全体の容量が同じになるようにして与えることができる。
【0212】
「治療(treatment)」という用語は、本書で用いられるように、動物、特に哺乳類、更にはヒトにおける状態又は疾患のいかなる治療にも言及し、まだ診断は下されていないが、疾患に感染しやすくなっているかもしれない被検体の疾患又は症状を予防すること、疾患又は症状を阻害すること即ちその進行を止めること、疾患又は症状を軽減させること即ち状態の退行を引き起こすこと、又は、疾患によって引き起こされている状態即ち疾患の症状を軽減させること、を含む。
【0213】
化学的誘導体
「誘導体(derivative)」又は「誘導体化(derivatised)」という用語は、本書で用いられるように、化合物の化学修飾を含む。前記化学修飾の実例としては、ハロゲン基、アルキル基、アシル基又はアミノ基による水素の置換がある。
【0214】
化学修飾
ある実施態様では、化合物は化学的に修飾された化合物であってもよい。
【0215】
化合物の当該化学修飾は、化合物と標的との間の水素結合相互作用、電荷相互作用、疎水性相互作用、ファン・デル・ワールス力相互作用又は双極子相互作用を促進させるもの又は減少させるものであってもよい。
【0216】
ある態様においては、同定された化合物は、他の化合物の開発のためのモデル(例えば鋳型)としての機能を果たすものであってもよい。
【0217】
個体
化合物は個体へ運搬される。「個体(individual)」という用語は、脊椎動物、特に哺乳類に属するものに言及する。当該用語は、家畜、スポーツ動物、霊長類及びヒトを含むがこれらに限定されるものではない。
【0218】
その他の使用
デング熱の治療的療法の開発のための、ユビキチン又はインターフェロン経路において同定した標的の使用
【0219】
デング熱の治療的療法の開発は、ユビキチン又はインターフェロン経路において標的となる(上記記載)ポリペプチド又は遺伝子転写調節ポリペプチドと相互作用できる物質のスクリーニングのプロセスにより行うことができ、当該プロセスは、本書に記載するポリペプチドを提供する工程及び選択された物質の、そのポリペプチドと相互作用する能力を試験する工程を含む。
【0220】
本書に記載される方法及び組成物を利用することで、アゴニストやアンタゴニストのような候補物質を試験するためのスクリーニングアッセイを導き出すことができる。候補物質は結合若しくは他の分子内相互作用により、ユビキチン若しくはインターフェロン経路に属するポリペプチド又は遺伝子転写調節ポリペプチドと相互作用できる又はこれらを調節できる物質である。ある場合には、前記物質はアゴニストであり、他の場合には、受容体ポリペプチドと相互作用する際に前記物質はアンタゴニストの特性を提示することができる。その他の場合においては、前記物質はアゴニストとアンタゴニストの混合物であり又は他の方法で経路を調節することができる。
【0221】
スクリーニングアッセイは、概して、それらの阻害剤を同定するあるいはその経路の機能を変更する候補物質のスクリーニングのような、候補物質の経路に属するものへの結合能力及びその経路の活性への影響力を決定することを含んでいてよい。当該方法は、潜在的な治療のための組換え物質を調製すること、それに続いて経路の機能に影響を及ぼす物質の能力を決定することを含む。ある実施態様では、ユビキチン経路阻害剤であるMG-132及びALLNを用いた本出願における実証と同様に、本発明者らは経路の活性に影響を及ぼすものを同定するための候補物質のスクリーニングを記載する。
【0222】
当業者に周知であるように、スクリーニングアッセイは、ユビキチン又はインターフェロン経路に属するものと作用物質との結合に適した条件を提供する。これらの条件はpH、温度、緊張力、関連するコファクターの存在及びグリコシル化、パルミトイル化又はプレニル化のようなポリペプチドに対する関連修飾を含むがこれらに限定されるものではない。pHは約6.0〜8.0の値、例えば約6.8〜7.8及び、又は7.4であってよい。ある実施態様では、温度は約20℃〜50℃、例えば約30℃〜40℃又は約37℃である。オスモル濃度は1リットル当たり約5ミリオスモル(mosm/L)〜400mosm/L、例えば約200mosm/L〜400mosm/L又は約290mosm/L〜310mosm/Lであってよい。典型的なコファクターとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び塩素が挙げられる。加えて、補欠分子族として知られる、小さい、非ペプチドの分子が必要とされてもよい。機能に必要な他の生物学的条件は、当業者に周知である。
【0223】
従って、本開示は、1つ又は複数の方法においてユビキチン又はインターフェロン経路の作用を変更し、第2の分子を介して生理的効果を及ぼすことができる能力を持つ候補物質の同定を可能にする手法を当業者に提供する。
【0224】
前記スクリーニングアッセイは、実施例(ユビキチン経路阻害剤を用いて本出願において実証する)の望ましい態様を模倣し、望ましくない態様を排除するのに有用な薬剤を同定するように作られる。
【0225】
記載された遺伝子の経路に影響を及ぼす候補物質を決定するのに用いられうる多様な実施例が存在すると思われ、本発明はそのような方法のいずれか1つに限定されるものではない。しかしながら、上記で詳細に示したように、通常は、候補物質のその経路に及ぼす能力及びウイルス複製の結果を測定できるシステムを用いることが望ましい。
【0226】
薬剤、経路及びウイルス複製の間の相互作用の検出は、当業者に周知の技術により行うことができる。
【0227】
ユビキチン又はインターフェロン又はNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質において同定された標的物の、デング熱診断に有用な指標を提供する方法としての使用
【0228】
デング熱の回復期と同様、デングウイルス血症期の宿主因子を定量するためのポイント・オブ・ケア免疫分析尿検査は、患者を管理するうえで臨床医にとって非常に有用であり、治療を有効にする場合の疾患経過を示すマーカーとしても役立つ。
【0229】
当該テストは、血清試料がチャンバーA(血清試料を塗布するチャンバー)の底に塗布される固体マトリクスである「計深棒(dipstick)」を含むことができる。計深棒は、本研究で同定された他のマーカー同様、例えばNS1及び少なくともIP-10及び/又はI-TACのような他の2つの宿主因子のようなデングウイルス特異的抗原をとらえる試薬の付いたチャンバーB(試験チャンバー)を有することもできる。チャンバーB及びCに到達するための抗原の遊走のための移動相をチャンバーAに追加することができる。試験下における因子の存在は、血清中に抗原が存在する場合にチャンバーBおよびC(陽性コントロールチャンバー)におけるスポットを可視化する色素レポーター試薬により検出することができる。抗原が存在しない場合には、チャンバーCのスポットだけが可視化されるべきである。色素検出試薬は、可視化レポーターを運ぶ抗体であってもよい。血清中に抗原が存在しない場合には、チャンバーBとチャンバーCの間のスペース中に埋め込まれた抗原は、試験が遂行中であることを示す色素レポーター試薬と共に抗原と捕捉試薬とが結合するチャンバーCへと、毛細管現象により移動することができる。
【実施例1】
【0230】
デングウイルスの複製に関与する宿主因子:感染した細胞におけるユビキチン−プロテアソーム経路の遺伝子クラスターの発現差異
【0231】
デングウイルスの複製に関与するこれらの宿主因子を同定するために、本発明者らはデングウイルスに感染させたヒト肝細胞株(HepG2, ATCC# HB-8065)における遺伝子発現の変化の解析を行った。
【0232】
HepG2細胞株をデングウイルスの血清型2であるTSV01(Genbank AY037116; McBride and Vasudevan, 1995)に感染させ、感染3日後まで連続した時間点で回収した。
【0233】
本発明者らは、PCR及びプラークアッセイ技術を用いてウイルス複製を測定した。ウイルス複製に関与する因子についての情報を提供するため、生ウイルスの感染と熱不活性化ウイルスとの比較を行った。
【0234】
更に、本発明者らは19,800個のCompugenオリゴによるGIS in−houseマイクロアレイを用いて宿主反応の変化を解析し、ユニバーサル参考試料(Stratagene)と比較した宿主の相対的発現を比較した。
【0235】
生ウイルスと熱不活性化ウイルス間で有意に異なって発現する遺伝子を「マイクロアレイの統計的解析法」(SAM)法を用いて決定した。
【0236】
本リストの詳細な解析方法は、ユビキチン−プロテアソーム経路において、ウイルスの複製を伴う細胞で異なった発現をする(上方制御された)遺伝子クラスターを同定した。ユビキチン−プロテアソーム経路を図1に示す。
【実施例2】
【0237】
ユビキチン−プロテアソーム経路の機能に影響を及ぼす化合物によるウイルス複製の阻害(経時的)
【0238】
2つ目の試験では、本経路(下記表E1)において、これら(及び他の)遺伝子の機能を変化させることで知られる特異的な化合物を、試験管内実験(上述)に適用した
【0239】
表E1.ユビキチン−プロテアソーム経路に対する阻害効果を有することで知られる化合物

【0240】
これらの化合物の添加を受けてのウイルス複製の解析は、ウイルス複製の顕著な減少を示し、このことは、これらの遺伝子がウイルス複製の制御に重要であることを示している(図3A、3Bおよび3C)
【0241】
デング熱(デングウイルス)感染の初期段階におけるウイルス量は、疾患の重症度と相関することが知られており、ウイルス複製を減少させる治療的介入はDHF及びそれに続く死亡を予防する可能性を有する(Vaughn et al., 2000)。
【実施例3】
【0242】
デングウイルス産生におけるユビキチン経路を阻害する化合物の濃度依存的効果
【0243】
HepG2細胞(ATCC)を、デングウイルスで感染させる前にプロテアソーム阻害剤で処理した。次の阻害剤を用いた。
・ DMSOに溶かした0.4μM及び0.6μMのMG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal, Merck)−図2参照
・ DMSOに溶かした10μM及び15μMのALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO, Merck)
【0244】
これらの試験の対照としてDMSOを用いた。当該化合物による特異的な細胞毒性を評価するためFDAアッセイを用いた。
【0245】
プロトコルは次の通りである。
【0246】
HepG2は24穴プレートで一晩培養した。細胞は、デングウイルスTSV01(MOI10)で48時間感染させる前に、MG-132(DMSOに溶かした0.4μM及び0.6μM)及びALLN(DMSOに溶かした10μM及び15μM)及びDMSOのみで2時間インキュベーションさせた。
【0247】
細胞培養の上清を回収し、プラークアッセイによりデングウイルスについて解析した。1ml当たりのプラーク形成単位はpfu/ml(DMSOのみ)の最高値の平均パーセンテージ±標準誤差,(n=3)で表した。細胞毒性はFDAを用いて測定し、結果はDMSOのみと比較した平均パーセンテージ±標準誤差,(n=3)で表した。各処理をDMSOのみと比較したstudents t‐検定により、“*”はp<0.05を、“**”はp<0.005を示す。結果は図4A及び図4Bに示す。
【0248】
感染2日後の細胞培養上清のプラークアッセイにより、MG-132及びALLN処理はHepG2細胞株においてウイルス複製を有意に減少させることが示された(図4A)。
【0249】
FDAを用いたこれらの化合物の当該細胞に対する効果の試験は、プラーク形成単位における52%から94%の減少と比較し、細胞毒性の程度は試験化合物の濃度において5%から28%であることを明らかにした(図4B)。
【実施例4】
【0250】
デングウイルスに感染した患者の初期段階におけるユビキチン−プロテアソーム経路遺伝子の発現。
【0251】
更なる実験において、ウイルス複製がピークに達する、デングの重篤な初期段階で、上記で同定した遺伝子が、デングに罹患した患者の血液中で高い活性があることに着目した。これは、試験管内アッセイから読み出した情報の生体内宿主反応への変換を裏付けるものである。
【0252】
記載された遺伝子を効果的に阻害できる化合物は、患者におけるウイルス複製及び疾患の重篤さを減少させ、デング熱の治療に提供されるだろうと予想する。
【実施例5】
【0253】
2つ目の細胞株及びデングに罹患した患者におけるユビキチン経路活性化の確認
【0254】
デングウイルスの複製に作用する新規遺伝子を発見するためのマイクロアレイを用いた最初の実験から、デングウイルス複製中のHepG2細胞株において変化する11個のユビキチン経路の遺伝子の候補リストが同定された。
【0255】
これらの遺伝子の活性を、HepG2細胞株においてTaqman PCR法を用いて測定し(上述したように)、同様に2つ目の細胞株(A549)において測定した。また、回復してから3〜4週間後の患者を比較し、進行中の疾患の初期段階の15名のデング患者のこれらの遺伝子の発現を測定した。
【0256】
これら11遺伝子のうち3つを、3つの条件すべてにおいてデングウイルス複製により有意に上方制御されるものとして同定した。下記表E2参照。
【0257】
表E2.患者及び細胞株におけるデングウイルス複製に反応を見せるユビキチン経路遺伝子。

【実施例6】
【0258】
方法
細胞培養
すべての細胞株はATCCより入手し、10%ウシ胎児血清(FBS)及びペニシリン/ストレプトマイシン(GibcoBRL)と共に、RPMI1640(BHK−21,THP−1,C6/36)、Minimal Essential Medium(Vero,HepG2,HeLa,SK Hep−1,JAWSII)、Hams F12K(,HUV−EC−C)又はDulbecco’s Modified Eagle Medium(293T/17,J774A.1,RAW264.7,A549,A549−viperin)細胞培養培地(GibcoBRL)で維持した。すべての細胞は、5%(v/v)COの加湿インキュベータにおいて37℃で培養され、C6/36細胞は例外として28℃で培養した。細胞毒性はFDAを用いて測定した。
【0259】
ウイルスの培養、感染及び分析
2型デングウイルス株TSV01はオーストラリアのタウンズビルにおける発生から入手した(McBride and Vasudevan 1995) (GenBank, accession number AY037116)。TSV01は(ネッタイシマカ(Aedes albopictus)からの)C6/36細胞株において、T175フラスコ(MOI 0.01)中で細胞にウイルスを加え、20分ごとに軽く混ぜながら28℃で1時間反応させた。培地を除去し、細胞を新しい培地で洗浄したのち5%FBS含有培地を添加し、28℃で5日間反応させた。細胞培養上清を除去し、1000xgで10分間4℃にて遠心し、それから等分して−80℃にて保存した。熱不活性化されたウイルスは、ウイルス試料を55℃で1時間反応させることにより調整した。熱不活性化はプラークアッセイにより確認した。
【0260】
プラークアッセイにおいて、BHK−21細胞は培地を除去し、細胞培養の上清の連続希釈(10倍)を各穴に添加する前に、24穴プレートにて一晩培養した。プレートは、培地を吸引し、0.8%のメチルセルロース培地(2%FBS含有)0.5mlに置換する前に1時間インキュベーションした。プレートは、培地を除去する前に5日間インキュベーションし、その後、細胞を4%ホルムアルデヒドにて20分間固定し、水で洗浄し、クリスタルバイオレットにて20分間染色し、再度洗浄した。プラークは手作業で数え、試料の細胞培養上清1mlあたりのプラーク形成単位(pfu/ml)の濃度を計算した。
【0261】
試験管内感染システムの選択
13の哺乳類の細胞株を、デングウイルスの感染及び複製を支持する能力においてスクリーニングした。これらはハムスター(BHK−21)並びにサル(Vero)細胞、マウス単球細胞株(JAWSII,RAW264.7,J774A.1)並びにヒト上皮(HepG2,A549,Hela,293T/17)、内皮(SK Hep−1,HUV−EC−C)及び単球(K562,THP−1)細胞株を含む。細胞は24穴プレートで培養し、1又は10のMOIで、24,48及び72時間、デングウイルスTSV01で感染させた。細胞培養上清を除去し、プラークアッセイによりウイルス濃度を決定する前に−80℃にて保存した。
【0262】
ビペリンを安定発現するA549細胞の作製及びIFN‐βによる処理
A549細胞を、ビペリンをコードしている発現コンストラクトで、リポフェクタミン2000(InVitrogen)によりトランスフェクションした。細胞を500μg/mlのG418を用いて選択し、抗ビペリン抗体での免疫ブロッティングにより、ビペリン発現に関してスクリーニングした。細胞は、IFN‐β(IMCB,Singapore)を最終濃度500U/mlで各穴に添加(コントロール穴は未処理)する前に、6穴プレートにて一晩培養した。IFN‐β処理の12時間後、細胞培養培地を除去し、新鮮な培地に置換して、細胞培養上清を除去してプラークアッセイによりプラーク形成単位数を決定する前に、細胞をデングウイルス(TSV01;MOI 1)で48時間感染させた。
【0263】
ケモカインアッセイ
細胞培養上清及び患者の血清試料中のタンパク質濃度は、IP-10及びI-TAC(R&D Systems)に対する市販のELISAにより、取扱説明書に従って分析した。
【0264】
フローサイトメトリー
HepG2細胞懸濁液中のデングE‐タンパク質は、細胞内染色及び蛍光色素活性化細胞分離装置(Becton Dickinson)及びAlexa−647結合(AlexaFluor conjugation kit)したモノクローナル抗体(4G2,ATCC)により評価した。細胞はBD FACS Perm/Wash溶液(BD)で透過処理し、収集及び解析は、CellQuest software(BD)を用いて行った。
【0265】
患者試料
デング熱と一致する臨床症状及び発熱の期間が72時間以内の成人の血清(素試験管)及び総血液(PAXgene vacutainer tube,Qiagen,X)をSingapore primary healthcare clinicにおいてサンプリングした。リアルタイムPCR法によりデングウイルス1−4RNA(Taiwan,CDC)の存在を解析した。PCR陽性個体は予め本研究に含まれ、初めの熱発症後3から4週間、繰り返してサンプリングした。
【0266】
RNAプロセッシング
RNAはRNeasy Mini Kit(QIAGEN, Germany)を用いて培養細胞から抽出した。PAXgene tubesに回収した患者の血液試料のために、RNAはPAXgene Blood RNA Kit(PreAnalytiX)を用いて抽出した。RNAはRNase−Free DNase Set(QIAGEN,Germany)を用いたDNase処理を受けた。
【0267】
マイクロアレイ
ヒトの19kオリゴヌクレオチドアレイ(18861遺伝子を示す)は、60merのオリゴヌクレオチドプローブ(compugenで設計され、SigmaGenosysで製造された)を、GeneMachines OmniGrid Microarray Spotterを用いてポリ−Lリジン−コートされた顕微鏡用スライド上にスポットすることにより、Genome Institute of Singaporeで作成した。プリントされたアレイは、cDNAマイクロアレイのための標準的なプロトコル(Eisen et al 1999)に従って後処理した。
【0268】
標的cDNAに蛍光色素をラベルするため、ユニバーサルヒトリファレンス(Strategene.USA)及び実験試料の総RNA20μgを、Superscript reverse transcription kit(Invitrogen,USA)を用いてCy3−dUTP及びCy5−dUTP(Amersham Biosciences,Little Chalfont,UK)の存在下で逆転写した。ラベルされたcDNAをプールして濃縮し、DIG EasyHyb (Roche,Basel, Switzerland)緩衝液中に再懸濁し、MAUI Hybridization chamber(BioMicro, Salt Lake City, UT)中で一晩ハイブリダイズした。当該アレイを、Tiff画像を作るためにGenePix 4000B Scanner(Axon Instruments,USA)を用いてスキャンした。画像は、Cy3及びCy5の蛍光シグナル強度を測定し、データベースデポジションに形式を合わせるため、GenePix Pro 4.0 software(Axon Instruments,USA)により解析した。
【0269】
すべての時点におけるあらゆる試料において、ダイスワップ法を行い、アレイが下流解析に用いられる前に厳しい品質チェックを行った(Miller et al 2002)。アレイデータはその後、チャネル特異的バイアスを除去するためR package aromaに利用できるlowess正規化を行った(Bengtsson et al 2004, R Development Core Team 2005)。さらにデータの品質は、技術的反復の相関関係を計算することにより保証された。1つを除くすべての技術的反復において0.85以上の相関を得た。
【0270】
マイクロアレイデータからの発現差異遺伝子の選択
発現差異遺伝子を、下記に簡潔に示すように、マイクロアレイの有意差解析(Significance Analysis of Microarrays((SAM), Tusher et al 2001))として知られる手法を用いて選択した。SAMに用いられる統計値は、

として得られ、分子はグループ平均差異、sは標準誤差及びs0は正規定数である。s0=0に定めるとt-検定となる。誤差定数と呼ばれるこの値は、誤った陽性の結果を減少させるために、データ全域に広がっているsの機能としてのdの動向を除去することによって見出される[Chu et al 2005]。統計値はt分布ではないので、有意差は並べ替え検定を用いて計算される。基準よりも大きい計算された統計値を伴う遺伝子を、有意であると呼ぶ。得られた基準点と関連するfalse discovery rate(FDR)もまた、並べ替え検定を用いて計算できる。
【0271】
Taqman低密度アレイ(TLDA)
100ngの総RNAをHigh−Capacity cDNA Archive Kit(ABI)を用いて逆転写した。逆転写反応は25°Cで10分間、その後37°Cで2時間行った。50μlの緩衝液中に溶けた1μgのcDNAを50μlのTaqMan Universal Master Mix(2X)(ABI)にl加え、ABI 7900HTに入れて密閉する前に、PCR mixをカードの穴に分配するために1分間1200rpmで2度回転させたMicro Fluidic Card(3M Company,ABI)に直ちに入れた。デフォルトの温度のサイクル条件(100%の勾配で50℃で2分間、100%の勾配で94.5℃で10分間及び最後に50%の勾配で97℃で30秒を40サイクル及び100%の勾配で59.7℃で1分間)を用い、データはSDS2.2 software(ABI)を用いて解析した。細胞培養試験において3の生物学的複製物及び患者の試験において10の複製物があるため、TLDAの結果における差異発現遺伝子を選択するための上述した手順と同様のSAMを用いることができた。
【0272】
経路検出
本発明者らはApplied Biosystemオンラインプログラム“panther”遺伝子発現解析システム (http://www.pantherdb.org/)を用いて経路情報におけるSAM遺伝子リストの解析を行った。“panther”は、タンパク質又は遺伝子の大きな集団を、ロバストな及び正確な方法で、機能的な(オントロジーターム及び経路)関連に細分することができる(Huaiyu et al 2005)。本発明者らは、経路検出のために付加的な方法も使用した。
【実施例7】
【0273】
細胞及び株の選択
異なるデングウイルス株の複製を支持する能力において13の哺乳類細胞株をスクリーニングした。前記細胞株で最も容易に複製するTSV01から単離される、臨床的な2型のデングウイルスを同定し、すべての細胞株に24,48及び72時間感染させた。
【0274】
細胞株は産生される最大pfu/ml力価により;Vero>BHK−21>A549>HepG2>SK−Hep1>K562>JAWSII>293T/17>HUV−EC−C>THP−1>J774A.1>RAW264.7>HeLaの順で順位をつけた。感染期に肝臓中(HepG2細胞株)のデングウイルスの証拠(Jessie, Fong et al. 2004)のために最初に焦点をあてたHepG2と共に、最も多く産生するヒト細胞株(A549及びHepG2)をさらなる研究に用いた。
【実施例8】
【0275】
発現解析:FACS及びPCR/マイクロアレイ
デングウイルスTSV01を3,6,12,24,48及び72時間感染させたHepG2細胞におけるウイルス複製は、熱不活性化ウイルスと比較して、プラークアッセイ、FACS解析及びリアルタイムPCR解析により決定した(図8A、図8B及び図8C)。
【0276】
3つの方法すべてで、新しいウイルス複製は24時間後から始まり、72時間にピークを迎えることが示された。SAM(Statistical Analysis of Microarray)を用いたマイクロアレイの解析(各時点で3つの生物学的の複製物において2重で、感染性ウイルスと熱不活性化ウイルスを比較して、72スライドで行った)により、3,6,12及び24時間においては有意な発現差異遺伝子が存在しないことが示された。
【0277】
48時間において24の転写物、72時間において124の転写物が同定された。合わせた132の転写物(124遺伝子)のリストは、Panther経路解析(Huaiyu et al 2005)により、インターフェロン経路と、免疫及び防御に、きちんとクラスター化した(図5A、図5B及び表E3)。
【0278】
表E3.132転写物、124遺伝子、4グループ





















【実施例9】
【0279】
発現解析:TaqMan低密度アレイ(TLDA)
マイクロアレイの結果を確認及び立証するために、マイクロアレイによって同定された59遺伝子及び経路解析により選択された36遺伝子を、更に定量的TaqMan低密度アレイ(TLDA)を用いて調べた。
【0280】
HepG2モデルにおいて、48時間及び72時間で、それぞれ31及び62遺伝子が発現差異のあることをTLDAにより確認した(下記表E4)。A549感染モデルにおいては、TLDAは、48時間で63遺伝子、72時間で82遺伝子と、より高い数の発現差異遺伝子を示した(下記表E4)。シンガポールのデング熱の患者においては、急性の熱性期(1日目)における血液試料のTLDA解析は、回復期(21日目)の試料と比較して、67の発現差異遺伝子を示した(表E4を参照)。
【0281】
表E4.TLDAにより決定された遺伝子発現の倍数増加。HepG2及びA549細胞株は、熱不活性化ウイルスによる刺激とデングウイルス感染の間において倍数変化した。EDEN試料は、熱性期のピーク(1日目)における患者の試料と、同じ患者からの回復期(21日目)における試料である。上方制御されているものは黒で示し、下方制御されているもの又は有意な変化がないものは赤で示した(有意差はq値<5で決定した)。HepG2における少なくとも1つの時点、A549における少なくとも1つの時点及び患者における1つの時点で有意に上方制御される遺伝子は、SAM解析により計算したP値として示した。発現差異遺伝子は、下記に簡潔に示すように、マイクロアレイの有意差解析(Significance Analysis of Microarrays((SAM), Tusher et al 2001))として知られる手法を用いて選択した。SAMに用いられる統計値は、

として得られ、分子はグループ平均差異、sは標準誤差及びs0は正規定数である。s0=0に定めるとt-検定となる。誤差定数と呼ばれるこの値は、誤った陽性の結果を減少させるために、データ全域に広がっているsの機能としてのdの動向を除去することによって見出される[Chu et al 2005]。統計値はt分布ではないので、有意差は並べ替え検定を用いて計算される。基準よりも大きい計算された統計値を伴う遺伝子を、有意であると呼ぶ。得られた基準点と関連するfalse discovery rate(FDR)もまた、並べ替え検定を用いて計算できる。
【0282】









【実施例10】
【0283】
発現解析:50の上方制御された遺伝子
TLDAの結果から、HepG2における少なくとも1つの時点、A549における少なくとも1つの時点及び患者試料における1つの時点で有意に上方制御される遺伝子を選択し、それらを合わせて3つの系すべてにおいて有意に上方制御される50の共通遺伝子リストを同定した(表E4、図6)。
【0284】
50遺伝子のうち、その大多数は互いに排他的である3つの生物学的プロセス:インターフェロン関連遺伝子(図6A)、ユビキチン−プロテアソーム系遺伝子(図6B)及びNF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答遺伝子(図6C)と同一視されるものである。
【0285】
3つの系すべてにおける各遺伝子の倍加平均(±標準誤差,n=3‐5)をプールし、各グループにおける最も高い上方制御から最も低い上方制御までを示した(図6A、6B及び6C)。TLDAにより、3つの系すべてにおいて上方制御されないことが確認された遺伝子もまた、比較として示した(図6A、6B及び6C)。興味深いことに、各系において異なるサイトカイン応答を示す、つまりIL-8及びRANTESは患者試料ではなく細胞株において上方制御されており、一方IL-10は細胞株ではなく患者試料で上方制御されていること、は生体内における多様な細胞型における効果を示すものである。
【0286】
これら50の共通遺伝子を、NF-κB、TNF-α及びインターフェロン応答遺伝子の周囲の29の遺伝子のネットワークにおける近接したクラスタリング及び相互連結を図解するMetaCoreプログラムを用いて、直接相互作用により更にマップ化した(図6D)。NF-κB遺伝子単独を、それにより誘導される遺伝子間の関係を説明するため、共通遺伝子のリストに加えた。
【0287】
50遺伝子は次に示すものを含む:インターフェロン介在性遺伝子:IFNA1, IFNB1, IFNG, MKP-1, IRF9, STAT1, G1P3, OAS1, SOCS1, ISG15, IFIH1, OAS3, IFI44, OAS2, MxA, Viperin 及び OASL;ユビキチン−プロテアソーム系遺伝子:HERC1, HERC2, HERC3, HERC4, ITCH, NEDD4, UBB, UBE2L6, UBE2I, Hdm2, UBE1C, CBL, USP15, USP18, PSMB9 及び HERC5;NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答遺伝子:COX2, INOS, IL10, IL2, IL6, IL8, RANTES, VEGF, NFKBIB, PAI1, B2M, NFKBIA, TNFAIP3, RIG-I, TNF, IP-10及びI-TAC。
【実施例11】
【0288】
発現解析:サイトカイン/メディエーター / IP-10及びI-TAC
3つの細胞系それぞれにおいて、サイトカイン/メディエーターを最も高く上方制御するのは、IP-10及びI-TACの2つである。これらの関連ケモカインの産生は、T細胞に発現しているCXCR3のリクルートメントを導き(Loetscher, Gerber et al. 1996; Cole, Strick et al. 1998)、SARS(Tang, Chan et al. 2005)及びHCV(Helbig, Ruszkiewicz et al. 2004)を含む少数の感染とマイナスの関係を有する。
【0289】
A549及びHepG2感染モデルは、適度な濃度のIP-10(図7A)及びI-TAC(図7B)を産生した。患者の血清試料について、IP-10(図7C)及びI-TAC(図7D)の測定を行った。非デング関連熱性患者の血清(1日目P=10-9,3日目 P=10-7)また、回復期の血清と比較して、デング熱患者の1日目(P=10-15)及び3日目(P=10-11)の血清におけるIP-10は有意に多い。I-TACのレベルもまた回復期(P=10-7)及び非デング関連熱性患者(P=10-6)の両者と比較して、1日目のデング患者の血清では有意に高い。
【0290】
これらの結果は、デング感染におけるIP-10及びI-TACの特異性を示唆するものである。IP-10及びI-TACの濃度は、デング熱に対するマーカーとして使用できる可能性がある。
【0291】
IP-10及びI-TACの両者は、NF-κBの活性化によって誘導され、NF-κBのウイルス複製における効果はHepG2感染モデルへのデキサメタゾンの添加により決定される(Auphan, DiDonato et al. 1995)。デキサメタゾンはIP-10及びI-TACの産生を阻害したが、ウイルス複製には影響を及ぼさなかった(データ示さず)。これらの結果はNF-κBの活性並びにIP-10及びI-TACの産生は、試験管内におけるウイルス複製に直接的な効果を及ぼさないことを示唆するものである。
【実施例12】
【0292】
発現解析:インターフェロン/ビペリン
次のデングウイルス複製を阻害するインターフェロン前処理の能力は、以前に報告されており(Diamond, Roberts et al. 2000)、抗ウイルス応答におけるインターフェロンの重要性も報告されている(Simmen, Singh et al. 2001)。
【0293】
インターフェロン関連経路からの最も高く上方制御された共通遺伝子のうちの1つが、HCMV及びHCV感染におけるインターフェロン誘導性、抗ウイルスタンパク質として以前に同定されたビペリンである(Chin and Cresswell 2001)。IFN-β(500U/ml)の前処理を伴う(図7E)及び伴わない(図7F)感染2日後のプラークアッセイにより示されるように、A549細胞におけるビペリンの強発現株(Vip)は、野生型コントロール細胞(wt)と比較して、ウイルス複製の有意な減少をもたらした。
【0294】
優れた抗ウイルス効果はビぺリン強発現細胞とIFN-βでの前処理の組合せによりなされたが、ビペリンの強発現のみでもウイルス産生の有意な減少をもたらした(P=0.0004)(図7F)。これらの結果は、ビペリンはデングウイルスに対するインターフェロン介在性応答の一部であるが、ビペリン単独で抗デング応答における重要な要素になりうることを初めて示した。
【実施例13】
【0295】
発現解析:ユビキチン化/MG-132及びALLN阻害剤
ユビキチン化は、免疫システムの重要な要素であり、プロテアソームにおける輸送又は破壊の標的タンパク質と1又は複数のユビキチン分子との結合である((Liu, Penninger et al. 2005)において総説されている)。
【0296】
ユビキチン−プロテアソームシステムの要素は、ラウス肉腫ウイルス及びHIVといったレトロウイルスの成熟及び放出に必要であることが報告されている(Patnaik, Chau et al. 2000; Schubert, Ott et al. 2000; Strack, Calistri et al. 2000)。ユビキチン−プロテアソーム及びインターフェロンシステムは相互に連結していおり、例えばHERC5は、インターフェロンにより誘導され、ISG15の結合に必要であることが報告されている(Dastur, Beaudenon et al. 2006)。
【0297】
特異的プロテアソーム阻害剤であるMG-132及びALLNを用いた、HepG2感染モデルにおけるユビキチン−プロテアソームシステムの阻害は、有意に及び一貫して細胞株におけるウイルス複製を減少させることが、プラークアッセイにより示された(図7G)。更なる研究は、おそらくウイルス輸送又は成熟及び放出時の融合といった、デングウイルス複製におけるユビキチン−プロテアソームの正確な役割(Kuhn, Zhang et al. 2002)を明確にする可能性がある。
【0298】
参考文献
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Zhang Y, Hwang HM, Ekunwe S. Comparing cytotoxicity and genotoxicity in HaCaT cells caused by 6-aminochrysene and 5,6-chrysenequinone under ultraviolet A irradiation. Environ Toxicol Chem. 2006 Jul;25(7):1920-5.
【0299】
本書において言及した各出願と各特許、及びこれら出願と特許のそれぞれにおいて引用又は参照された各文書は、各出願と特許の手続き期間におけるもの(「出願時引用文献」)及び各出願と特許及び出願時引用文献のいずれかにおいて引用あるいは言及されるいかなる製品に関するいかなる取扱説明書又はカタログも含め、本書に参照として取り込むものとする。更に、本書にて引用する全ての文書、本書にて引用される文書にて引用又は参照される全ての文書、及び、本文において引用又は参照されるいかなる製品に関するいかなる取扱説明書又はカタログも、本書に参照として取り込むものとする。
【0300】
本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明の記載方法および発明のシステムの様々な修正及び変更が当業者に容易であることは明らかである。本発明は、特殊な好ましい実施形態と関連して記載しているが、請求の範囲に記載する発明は、そのような特殊な形態に制限されるべきではなく、本発明の範囲内で、多くの変更および追加がなされてもよいことは当然のことである。事実、分子生物学および関連の分野の当業者には明らかである発明を実施するための記載方法の様々な変更は、請求項の範囲内であることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デング熱の診断又は予後において有用な指標を提供する方法であって、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質、の発現パターン又は発現レベルにおける変化を検出することを含む方法。
【請求項2】
個体におけるデング熱の治療又は予防の方法であって、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質、の発現レベルを調節することを含む方法。
【請求項3】
デング熱の治療に適している分子を同定する方法であって、候補分子が(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質のアゴニスト又はアンタゴニストであるかを決定することを含む方法。
【請求項4】
前記候補分子は、候補分子が(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質のアゴニスト又はアンタゴニストであるかを決定するために、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質にさらされる請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の方法における、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質、をコードするポリヌクレオチドの使用。
【請求項6】
デング熱の診断又は予後において有用な指標を提供する方法であって、個体の試料においての(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質、における多型を検出することを含む方法。
【請求項7】
(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質、のアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法であって、前記候補分子をデングウイルスに感染した細胞にさらすこと、及び、ウイルス機能に対する効果を決定すること、を含む方法。
【請求項8】
前記ウイルス機能は、ウイルス力価、ウイルス感染力、ウイルス複製、ウイルスパッケージング及びウイルス転写からなる群より選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質、のアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法であって、デング熱に罹患している動物に候補物質を投与すること、及び、当該動物がデングウイルスの複製における減少又は増加を示すかどうかを決定すること、を含む方法。
【請求項10】
個体におけるデング熱の治療又は予防における医薬組成物の調製のための、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質、のアゴニスト又はアンタゴニストの使用。
【請求項11】
デングウイルスに感染した細胞におけるデングウイルス機能を下方制御する方法であって、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質、の細胞における活性を調節することを含む方法。
【請求項12】
前記ウイルス機能は、ウイルス力価、ウイルス感染力、ウイルス複製、ウイルスパッケージング及びウイルス転写からなる群より選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
当該ウイルス、当該細胞又は当該システムと、請求項3乃至5及び7乃至9のいずれかに記載の方法により同定される分子とを接触させることを含む請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチドは、ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質を含む請求項1乃至13いずれかに記載の方法又は使用。
【請求項15】
前記ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質は、ユビキチン特異的タンパク質分解酵素、ユビキチン共役酵素、ユビキチンリガーゼ及びユビキチン切断酵素からなる群より選択される請求項14に記載の方法又は使用。
【請求項16】
前記ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質は、HERC1 (U50078), HERC2 (AF071172), HERC3 (D25215), HERC4 (NM_015601), C17orf27 (AB046774), DTX3L (AK025135), HERC6 (NM_017912), RNF36 (AL360161), ITCH (NM_031483), NEDD4 (NM_006154), UBB (NM_018955), UBE2L6 (NM_004223), UBE2I (NM_003345), Hdm2 (NM_002392), UBE1C (NM_003968), CBL (NM_005188), USP15 (AF106069), USP18 (NM_017414), PSMB9 (NM_002800), UBE2 (NM 003335), UBP43 (NM_017414), HERC5 (NM_016323), ATG7 (NM_006395), DUSP1 (NM_004417.2), DUSP18 (NM_152511.2), DUSP3 (NM_004090.2), DUSP5 (NM_004419.2), EIF3S5 (NM_003754), PPP1R15A (NM_014330.2), PSMB8 (NM_148919), UBE1L (NM_003335), UBE2L6 (NM_004223), UBE2S (NM_014501), UBE2W (NM_018299), USP24 (XM_165973.4) and WWP1 (NM_007013)からなる群より選択される請求項14又は15に記載の方法又は使用。
【請求項17】
前記ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質は、ユビキチン特異的タンパク質分解酵素18(USP18, GenBank Accession Number: NM_017414)又はユビキチン共役酵素E2L(UBE2L6, GenBank Accession Number: NM_004223)を含む請求項14、15又は16に記載の方法又は使用。
【請求項18】
前記ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質の阻害剤は、MG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal)又はALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO)を含む請求項14乃至17に記載の方法又は使用。
【請求項19】
個体におけるデング熱の治療又は予防のための薬剤の調製におけるMG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal)又はALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO)の使用。
【請求項20】
前記ポリペプチドは、インターフェロン介在性タンパク質を含む請求項1乃至13に記載の方法又は使用。
【請求項21】
前記インターフェロン介在性タンパク質は、IFNA1 (NM_024013), IFNB1 (NM_002176), IFNG (NM_000619), ATF3 (NM_004024) MKP-1 (NM_004417, AJ227912), IRF9 (NM_006084), STAT1 (AK022231, NM_007315), G1P2 (NM_005101), G1P3 (NM_002038), IFI44 (NM_006417), IFIT1 (NM_001548), IFIT2 (AF026944), IFIT3 (AF026943), ISGF3G (NM_006084), IER3 (NM_003897), IFIT5 (NM_012420), IFRG28 (AJ251832), MDA5 (AF095844), SP110 (NM_004510), STAT1 (NM_007315), OAS1 (NM_016816), SOCS1 (NM_003745), ISG15 (NM_005101), IFIH1 (AL080107), OAS3 (NM_006187), IFI44 (NM_006417), OAS2 (NM_002535), MxA (NM_002462), Viperin (AF026941, AF026942), OASL (AF063611), GBP1 (NM_002053), IRF1 (NM_002198), IRF7 (NM_004030), GBP2 (NM_004120), NMI (NM_004688), AIM2 (NM_004833), STAT2 (NM_005419), IFI16 (NM_005531), SLAMF7 (NM_021181), GBP4 (NM_052941) and GBP5 (NM_052942)からなる群より選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記インターフェロン介在性タンパク質は、ビペリン(GenBank Accession Number: AF026941, AF026942)又はインターフェロンアルファ(IFN-α, GenBank Accession Number: NM_024013)を含む請求項20又は21に記載の方法又は使用。
【請求項23】
デングウイルスに感染した細胞のウイルス力価、ウイルス感染力、ウイルス複製、ウイルスパッケージング及びウイルス転写のようなデングウイルス機能を下方制御する方法であって、細胞内のビペリン(GenBank Accession Number: AF026941, AF026942)又はインターフェロンアルファ(IFN-α, GenBank Accession Number: NM_024013)活性を上方制御することを含む方法。
【請求項24】
さらに細胞内のIFN-β(GenBank Accession Number: NM_002176)活性を上方制御することを含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
個体におけるデング感染の治療又は緩和における、任意にIFN-β(GenBank Accession Number: NM_002176)と組み合わせたビペリン又はインターフェロンアルファの使用。
【請求項26】
前記ポリペプチドは、NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質を含む請求項1、5若しくは6又はそれらに従属するいずれかの請求項に記載の方法又は使用。
【請求項27】
前記NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質は、COX2 (NM_000963), INOS (NM_000625), IL10 (NM_000572), IL2 (NM_000586), IL6 (NM_000600), IL8 (M17017), RANTES (NM_002985), VEGF (NM_003376), NFKBIB (NM_002503), PAI1 (NM_000602), B2M (NM_004048), NFKBIA (NM_020529), TNFAIP3 (NM_006290), RIG-I (NM_014314), TNF (NM_000594), CCL4 (NM_002984), CCL5 (NM_002985), IL11b (NM_000881), IP-10 (NM_001565), I-TAC (NM_005409), CARD15 (NM_022162), CARD4 (NM_006092), CD14 (NM_000591), CD1A (NM_001763), CD2 (NM_001767), CD22 (NM_001771), CD276 (NM_025240), CD47 (NM_001777), CD59 (NM_000611), CD97 (NM_001784), CCL2 (NM_002982), CCR1 (NM_001295), CCR5 (NM_000579), CCR7 (NM_001838), CCRL2 (NM_003965), CXCL16 (NM_022059), IL1RN (NM_173842), IL10RB (NM_000628), IL13RA1 (NM_001560), IL16 (NM_004513), IL18 (NM_001562), IL18RAP (NM_003853), IL4R (NM_000418), IL8RA (NM_000634), IL8RB (NM_001557), PF4 (NM_002619), PBEF1 ( NM_182790), TNFSF10 (NM_003810), TNFRSF1A (NM_001065), TNFRSF1B (NM_001066), TNFRSF25, (NM_148970), TNFRSF7 (NM_001242), TNFAIP2 (NM_006291) and TNFAIP8 (NM_014350)からなる群より選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質は、IP-10(GenBank Accession Number: NM_001565)を含む請求項26又は27に記載の方法又は使用。
【請求項29】
前記NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質は、I-TAC(GenBank Accession Number: NM_005409)を含む請求項26又は27に記載の方法又は使用。
【請求項30】
デング熱の診断又は予後において有用な指標を提供する方法であって、インターフェロンアルファ(IFN-α, GenBank Accession Number: NM_024013)、IP-10(GenBank Accession Number: NM_001565)又はI-TAC(GenBank Accession Number: NM_005409)のうちいずれか1つ又は複数の発現パターン又は発現レベルにおける変化を検出することを含む方法。
【請求項31】
デング熱の診断又は予後のためのキットであって、取扱説明書と共に、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、(b)インターフェロン関連タンパク質、又は(c)NF-κB介在性サイトカイン/ケモカイン応答タンパク質、のうちいずれか1つ又は複数の発現パターン又は発現レベルにおける変化を検出する手段を含むキット。
【請求項32】
個体におけるデング熱の治療又は予防のためのキットであって、取扱説明書と共に、(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質の発現レベルを調節するための手段を含むキット。
【請求項33】
MG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal)又はALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO)又はその両方を含む請求項32に記載のキット。
【請求項34】
5'SL及び3'CSを混合したP4-PMO、US6,777,445に記載されているフラーレンのいずれか、並びに、ヘリオキサンチン及び/又はそのアナログ、のうちのいずれか1つ又は複数をさらに含む請求項32又は33に記載のキット。
【請求項35】
請求項3に記載の方法により同定される分子。
【請求項36】
請求項7又は9に記載の方法により同定される(a)ユビキチン−プロテアソーム経路タンパク質、又は(b)インターフェロン関連タンパク質のアゴニスト又はアンタゴニスト。
【請求項37】
個体におけるデング熱の治療、予防、診断又は予後のための請求項35又は36に記載の分子、アゴニスト又はアンタゴニストの使用。
【請求項38】
個体におけるデング熱の治療、予防、診断又は予後の方法における使用のためのMG-132(Carbobenzoxy-L-leucyl-L-leucyl-L-leucinal)。
【請求項39】
個体におけるデング熱の治療、予防、診断又は予後の方法における使用のためのALLN(N-Acetyl-Leu-Leu-Nle-CHO)。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図5A】
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【公表番号】特表2010−506166(P2010−506166A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531360(P2009−531360)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/SG2007/000336
【国際公開番号】WO2008/041953
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】