説明

デンドリマー−アミノブタジエンをベースとするUV遮断剤

本発明は、一般式(I)で表されるアミノブタジエンに共有結合する、アミンに富む合成ポリマーを含む、UV吸収性ポリマーに関し、
前記UV吸収性ポリマーは、数平均分子量M1000g/mol〜100000g/molを有し、375nmで少なくとも 5.6a.u./g.LのUV吸収率を有する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に日焼け防止用組成物に有用な、UV吸収性ポリマー分野に存する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のUV光への暴露の有害な影響は多種多様であり、従来技術において十分に立証されている。波長290〜315nmのUV−B放射は、紅班性の障害又は日焼けを引き起こすことが久しく以前から認識されている。およそ1980年まで、波長315〜400nmのUV−A放射が、光毒性及び光化学反応を引き起こすことが見出されなかった。
【0003】
約70%のUV−B放射は外皮又は角質層によって遮断されるが、これはUV−A放射の場合には当てはまらず、後に、生体真皮に深くに浸透することがある。UV−Aの周知の破壊的影響は、酸化的ストレスである。UV−A放射によって形成されるスーパーオキシドは、皮膚の線維芽細胞中に存在する鉄貯蔵タンパク質であるフェリチンから鉄を放出させることができる(Pourzand et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, June 1999, Vol 96, p. 6751-56)。非常に破壊的なヒドロキシル基及び過酸化水素の生成に至るFenton又はHaber Weis反応での鉄の役割は周知である。銅イオンのような他の金属イオンも、酸素ラジカル形成の触媒となることが報告されている。DNAに損傷を与えるこれらの破壊的生成物の役割は、例えば、Sestili等(Free Radical Biology & Medicine [US], July 15 1998, 25, [2] p.196-200)に記載のように周知である。
【0004】
スーパーオキシドジスムターゼのような酵素による通常の生化学的保護は、UV−A放射によって誘発される反応を効果的に阻止するのに十分ではない。したがって、皮膚をこれらの有害な影響から保護する必要性は、今だ必須である。他の酸化ストレス現象は、例えば、皮膚の老化及び白班の促進又は脂質過酸化による細胞壁の損傷に至る、コラーゲンの損傷である。
【0005】
日焼け防止適用のための有機UV吸収剤の使用は、広く知られている。有機UV吸収性化合物の欠点は、その水溶性の低さである。脂溶性のUV吸収性化合物は、有機溶媒と併用してもしなくても血流に入る危険性を伴って、いわゆる角質層を通過することができる。
【0006】
UV吸収性化合物のさらなる欠点は、UV光のもとでは不安定であるということである。UV暴露は、UV吸収性ポリマーを破壊し、それによってUV放射に対する保護力を低下させる光化学反応を引き起こすことがある。
【0007】
米国特許第4839160号には、C−C12アルコキシ鎖を有するベンジリデンボルナノン単位のポリマーを含む、UV放射から皮膚を保護するための化粧用配合物が開示されている。この手法は、複合物の親水性を高めるには至らない。皮膚への浸透の影響が開示されているが、疎水性が高められると、逆に脂質要素による角質層中の可動性が増大することになる。
【0008】
実質上不溶性の粒子を形成する、UV−A及びUV−B吸収性化合物とポリアクリル酸との酸素原子又は窒素原子を介する結合は、国際公開WO01/08647号に開示されており、無極化合物を取り込むために特別に設計された分子複合体を生成して、屈折率を所望の方向に適応させている。しかし、この複合物はUV吸収率が限られており、油性化合物との混合は、より小さいMWの複合体の場合には、皮膚への浸透の危険性があり、望ましくない免疫原性の反応を生ずる可能性がある。
【0009】
国際公開WO02/92668号には、官能基を結合させることができるプラスチック性又は被覆用添加剤としての超分岐又はデンドリマー性ポリマーが開示されているが、化粧適用に関しては触れていない。
【0010】
国際公開WO00/65142号には、広範なUV吸収率のポリマーを織物繊維に接着させることによって、繊維製品又は皮膚を保護するためのポリマーが開示されているが、皮膚への直接適用に関しては触れておらず、デンドリマーについては、UV吸収性モノマーを空間的に分布させる可能性にしか言及していない。
【0011】
欧州特許A1172399号には、有機化合物を、少なくとも1種の反応性アミン基を有するポリマーと結合させる方法が開示されている。この文献には、日焼け防止適用のための合成材料の使用が言及されていない。
【0012】
フランス特許A2757389号には、UV吸収剤と超分岐又はデンドリマー性ポリマーとを、日焼け防止処方剤において併用することが開示されている。
【0013】
国際公開WO04/006878号には、化粧品用、特に日焼け防止処方剤用のメロシアニン誘導体が開示されている。
【0014】
国際公開WO04/075871号には、例えば、アミノブタジエンと遊離アミノ基を有するポリマーとを結合させることによって得られる生成物を含む、UV放射から保護するための化粧品用組成物が開示されている。
【0015】
これらの試みにもかかわらず、日光からその放射を遮断することによって十分な直接的保護を提供し、皮膚への浸透を示さず、可視光放射に対しては完全に透明であるUVフィルタが依然として必要とされている。
【0016】
【特許文献1】米国特許第4839160号
【特許文献2】国際公開WO01/08647号
【特許文献3】国際公開WO02/92668号
【特許文献4】国際公開WO00/65142号
【特許文献5】欧州特許A1172399号
【特許文献6】フランス特許A2757389号
【特許文献7】国際公開WO04/006878号
【特許文献8】国際公開WO04/075871号
【非特許文献1】Pourzand et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, June 1999, Vol 96, p. 6751-56
【非特許文献2】Free Radical Biology & Medicine [US], July 15 1998, 25, [2] p.196-200
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の一目的は、非常に効果的な新規UV吸収性ポリマーを提供することである。
【0018】
本発明のさらなる一目的は、粘性及び/又は安定性の問題を生ずることなく、容易に日焼け防止用組成物に配合することができるUV吸収性ポリマーを提供することである。
【0019】
本発明のさらなる一目的は、可視光領域において実質上透明である、UV吸収性ポリマーを含む日焼け防止用組成物を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、高濃度で適用することができ、UV光のもとでの破壊に対して安定なUV吸収性ポリマーを含む日焼け防止用組成物を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、皮膚に浸透することができず、その後いかなる免疫原性又はアレルギー性副反応の危険性をも最小限に抑えるUV吸収性ポリマーを含む日焼け防止用組成物を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる一目的は、化粧油などの化粧成分に対して可溶性が高く、皮膚への浸透性が低いUV吸収性ポリマーを提供することである。
【0023】
驚くべきことには、一般式(I)のアミノブタジエンを、アミンに富む適切な合成ポリマーと結合させることによって、予想外に高く効果的なUV吸収性のUV吸収性ポリマーが得られることが見出された。日焼け防止用組成物中で適切に機能するためには、このUV吸収性ポリマーは、375nmで少なくとも5.6a.u./g.LのUV吸収率を有するべきであることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって本発明は、一般式(I)によって表されるアミノブタジエンに共有結合するアミンに富む適切な合成ポリマーを含む、UV吸収性ポリマーに関する。
【化1】

式中、R及びRは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアシル基、又は6〜20個の炭素原子を有するアリール基を表し(但し、R及びRは同時に水素原子を表さず、場合によってはR及びRは組み合わさって環状アミノ基を形成することができ、或いはR1又はR2は、C(1)と組み合わさって環状アミノ基を形成することができる)、
及びRのそれぞれは、1又は複数のカルボン酸部分によって置換されていてもよく、
は、−COOH、−COOR、−COR、−CN、又はSOを表し、Rは、−COOH、−COOR、−COR、−CN、又は−SOを表し、R及びRは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、或いは1〜25個の炭素原子及び1又は複数の炭素原子二重結合を有するアルキル基を表し、前記アルキル基は、O、N、Si及びS、からなる群から選択される1又は複数のヘテロ原子又は6〜20個の原子を有するアリール基を場合によっては含み、場合によってはR及びRが組み合わさって環状構造を形成することができ、前記環状構造は、好ましくは5〜7員環の構造であり、場合によっては置換されており、N、O、及び/又はカルボニル基を場合によっては含み、
前記ポリマーは、375nmで少なくとも5.6a.u./g.LのUV吸収率を有する。
【0025】
さらに本発明は、一般式(I)のアミノブタジエンをカルボン酸と接触させること、及び得られた生成物をアミンに富む合成ポリマーと結合させることを含む、本発明のUV吸収性ポリマーの調製方法に関する。
【0026】
さらに本発明は、一般式(I)のアミノブタジエンの誘導体をアミンに富む合成ポリマーと結合させることを含む、本発明のUV吸収性ポリマーの調製方法に関する。
【0027】
また本発明は、UV放射から保護するための化粧品用組成物を調製するためにUV吸収性ポリマーを使用することに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、日光への暴露の有害な影響からヒトの皮膚又は毛髪を保護するために、組成物中に使用することができるUV放射吸収性ポリマーに関する。UV放射に対する十分な保護力を有する日焼け防止処方剤に有用とされるUV吸収性ポリマーについては、ポリマーのUV吸収率は、375nmで少なくとも5.6a.u./g.Lであるべきである。吸収率が低いと、日焼け防止用組成物中のUV吸収性ポリマーの量が多くなり、安定性及び粘性の問題などの処方上の問題を生じる。
【0029】
一般式(I)のアミノブタジエンを、アミンに富む適切な合成ポリマーと結合させてUV吸収性ポリマーを提供することによって、一般式(I)のアミノブタジエンの高い吸収性が保持されること、及びアミンに富む合成ポリマーを、375nmで少なくとも5.6a.u./g.LというUV吸収性ポリマーのUV吸収率を実現するのに十分な量で取り込むことができることが見出された。この最小UV吸収率は、日焼け防止処方剤の安定性及び粘性に対する有害な影響を回避するために必要とされる。
【0030】
一般式(I)のアミノブタジエン
本発明のアミノブタジエンは、上に開示した一般式(I)を有する。好ましいクラスのアミノブタジエンは、式中、Rが、−COOH、−COOR、−COR、又はSOを表し、Rが、カルボキシル基、−COOR、−COR、又は−SOを表し、R、R、R、及びRが、先に示した意味を有するものである。一般式(I)のアミノブタジエンの具体例は、例えば、米国特許第4195999に開示されている。表1には、メタノール(又は、メタノールに溶解しない場合にはエタノール)中での吸収極大を含めて、アミンに富むポリマーと結合することができる本発明のいくつかのアミノブタジエンをリストする。
【0031】
【表1】



【0032】
一般式(I)のアミノブタジエンの中でも、さらにより好ましいクラスは、以下の一般式(II)によって表されるものである。
【化2】

式中、R、R、R、及びRは、一般式(I)における意味と同じである。−SO基の存在によって、UV光のもとでの化合物の安定性が向上することが見出された。
【0033】
式(II)のさらにより好ましいクラスのアミノブタジエンは、式中、Rが−COORであり、Rが先に同定した意味を有するものである。
【0034】
本発明の最も好ましいクラスのアミノブタジエンは、一般式(III)によって表され、式中、R、R、及びRは、先に定義した通りであり、Rは、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖の、10〜20個の炭素原子、さらにより好ましくは12〜20個の炭素原子、最も好ましくは12〜18個の炭素原子を有するアルキル基である。
【化3】

【0035】
一般式(I)及び(II)のアミノブタジエンの一例は、
【化4】

である。
式中、Rは、一般式(I)における意味と同じである。以下、Rがエチルである化合物UV0を、UV1と呼ぶ。
【0036】
本発明のアミノブタジエンの別の例は、以下の構造式を有する。
【化5】


式中、Rは、一般式(I)における意味と同じである。例えば、基Rがエチルである化合物UV2を、UV3と呼ぶ。UV2及びUV3のような化合物は、以下に詳述されるように、本発明のアミノブタジエンをアミンに富む合成ポリマーと結合させるのに非常に適している。
【0037】
アミンに富む合成ポリマー
本発明のアミンに富む合成ポリマーは、少なくとも5.6a.u./g.LのUV吸収率を有するUV吸収性ポリマーを生成するのに十分な量のアミノブタジエンと結合することができる、アミンに富むポリマーであればいずれでもよい。好ましくは、化粧品用組成物、特に日焼け防止用組成物に適した、アミンに富むポリマーが使用される。このようなポリマーは、当分野の技術者には周知であり、超分岐及びデンドリマー性ポリマーを含む。好ましくは、超分岐ポリマー及びデンドリマー性ポリマーは、末端に第1級又は第2級、好ましくは第1級アミノ基を有する。超分岐ポリマーは、分岐を導入することができる少なくとも1種の多官能性モノマーの存在下で、モノマーを任意重合させることによって得られる。このような合成スキームは、Hawker及びDevonportによる"Step-Growth Polymers for High-Performance Materials : New Synthetic Methods," Hedrick, J. L.及びLabadie, J.W., Eds., Am. Chem. Soc., Washington, D.C., 1996, pp. 191-193に見られる。Hult等は、"Advances in Polymer Science," Vol. 143(1999), Roovers, J., Ed., Springer, New York, pp. 1-34の中で、超分岐ポリマーの総説を提示している。
【0038】
高度に分岐したデンドリマー性ポリマーは、例えば、”Polymeric Materials Encyclopedia", Vol.5(1996), J.C. Salamone, Ed., CRC Press, New York, pp. 3049-3053に議論されるように周知である。デンドリマー性ポリマーは、非直鎖構造であり、本質的に球形である。段階的な個々の合成方法を使用して、高度に分岐した純粋化合物又はデンドリマーを調製する。Hawker及びDevonportによって"Step-Growth Polymers for High-Performance Materials: New Synthetic Methods", Hedrick, J. L. and Labadie, J. W., Eds., Am. Chem. Soc., Washington, D. C., 1996, pp. 186-196に議論されているように、高分子が厳密な幾何パターンに従う通常の高度分岐を有する場合、それはデンドリマーである。デンドリマーは、一般に単分散し、各段階に精製が伴う多段階手法で調製される。デンドリマーの構造は、Roovers及びComanitaによって"Advances in Polymer Science", Vol.142(1999), Roovers, J., Ed., Springer, New York, pp. 179-228にも議論されている。デンドリマーは、分子の対称中心を画定するコア分子、及び分岐層からなる。Tomalia等の、Angew. Chem. Int. Ed. Eng., 29(1990), 138-175には、開始コア及び分岐基からなる「星型」デンドリマーが開示されている。
【0039】
球形のデンドリマーが好ましい。というのは、球形の場合、濃度に伴う溶液粘度の増大が、直鎖ポリマーよりも低いからである。超分岐ポリマーは不規則であり、球形の特徴並びに直鎖の特徴も有する。
【0040】
一実施形態では、アミンに富む合成ポリマーは、一般式(I)のアミノブタジエンと結合するための遊離アミン基を有するデンドリマーである。このデンドリマーは、発散性成長又は収斂性成長、或いはこれらの組合せによって生成することができる。皮膚への透過を防ぐのに十分高い分子量を得るために、好ましくは少なくとも第1世代デンドリマーが使用される。より好ましくは少なくとも第2世代で、さらにより好ましくは第4世代より上(higher)ではないデンドリマーが使用される。但し、デンドリマーを構築するために使用されるコア分子から開始することも可能ではあるが、今や、脂肪族鎖を有し、これによって高い分子量を実現する付加型UV吸収剤にこのコアを使用することが可能となっている。合成のコスト及び複雑性は、世代が上がるにつれて増大することになる。分子量が高すぎると、例えば可溶性及び粘性のような諸特性への影響から、あまり好ましくない。樹枝状結晶の分岐度は、モノマーに存在する官能基の数に依存する。好ましくは、1つの付加あたり2つの分岐を生ずるABと称するモノマーが使用される。より好ましくは、1つの付加あたり3つの分岐を生ずるモノマーABが使用される。デンドリマーのコア分子即ちゼロ世代は官能基を2つ有することができ、かかる官能基にモノマーABが付加されるが、好ましくは少なくとも3つの官能基、さらにより好ましくは少なくとも4つ有する。
【0041】
アミンに富む適切なポリマー、特に、末端にアミン官能基を有するデンドリマーは、米国特許第4694064号、同4507466号、同4631337号、同4558120号、同4568737号、同4587329号;国際公開WO95/02008号、同93/14147号、欧州特許A234408号、米国特許第4289872号、同4360646号、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,85 5409-5413(1988)に開示されており、その全体を参照によって本明細書に組み込む。
【0042】
市販の適切なデンドリマーは、例えば、DSM社製Astramol(商標)及びDow Chemical社製Starburst(商標)である。
【0043】
アミノブタジエンをデンドリマーの外部末端基と結合させることに加えて、デンドリマー内部修飾を行うことができる。例えば、ヒドロキシル基を導入して、デンドリマー−アミノブタジエン複合体の親水性を高めることができる。
【0044】
別の一実施形態では、アミンに富む合成ポリマーは、一般式(I)のアミノブタジエンと結合する遊離アミン基を有する超分岐ポリマーである。
【0045】
本発明によれば、アミンに富む合成ポリマーは、最も好ましくは一般式(IV)〜(VII)によって表される。
N{(R3−n[(CR−N(R10)]
(IV)
[(R10)N−(CRN−P−N[(CR−N(R10)]
(V)
N{(R3−n[(CHCHC(O)NH−(CR−N(R1920)]
(VI)
[(R1920)N−(CR−NHC(O)CHCHN−P−N[(CHCHC(O)NH−(CR−N(R1920)]
(VII)
式中、Rは水素原子、直鎖又は分岐のC−C20アルキル基、或いは−[(CR17−X]−R18基であり、Xは、O又はNHであり、
mは、2、3、又は4であり、
nは、2又は3であり、
oは、1〜10であり、
qは、2又は3であり、
Pは、−(CR−、C−C12アリーレン基、C−C12シクロアルキレン基、又は−[(CR17−X]−C(R17]−基であり、Xは、O又はNHであり、pは1〜10であり、
は、水素原子、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であり、
及びR10は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−(CR17NR1112の基であり(但し、R及びR10は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
11及びR12は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−(CR17NR1314の基であり(但し、R11及びR12は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
13及びR14は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−(CR17NR1516の基であり(但し、R13及びR14は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
15及びR16は、独立に水素原子、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であり(但し、R15及びR16は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
17は、水素原子又はメチル基であり(但し、少なくとも1つのR17が水素原子である)、
18は、水素、或いは直鎖又は分岐のC−C20アルキル基、或いは上で定義された−[(CR17−X]−R18基であり、
19及びR20は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−CHCHC(O)NH−(CR−N(R2122)の基であり(但し、R19及びR20は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
21及びR22は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−CHCHC(O)NH−(CR−N(R2324)の基であり(但し、R21及びR22は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
23及びR24は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−CHCHC(O)NH−(CR−N(R2526)の基であり(但し、R23及びR24は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
25及びR26は独立に、水素原子、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基である(但し、R25及びR26は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)。
【0046】
一般に、qが2であることが好ましい。
【0047】
式(IV)の、アミンに富む好ましいクラスの合成ポリマーは、式中、Rが水素原子であり、nが3であり、mが2であり、R及びR10が、先に定義されたものである。
【0048】
式(IV)の、アミンに富むより好ましいクラスの合成ポリマーは、式中、Rが水素原子であり、nが3であり、mが2であり、R及びR10が独立に水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−(CR17NR1112の基であり(但し、R及びR10は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、R11及びR12は独立に、水素原子、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基である(但し、R11及びR12は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)ものである。
【0049】
式(V)の、アミンに富む好ましいクラスの合成ポリマーは、式中、Rが水素原子であり、mが2であり、R及びR10が先に定義されたものである。
【0050】
式(V)の、アミンに富むより好ましいクラスの合成ポリマーは、式中、Rが水素原子であり、mが2であり、R及びR10が独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−(CR17NR1112の基であり(但し、R及びR10は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、R11及びR12は独立に、水素原子、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基である(但し、R11及びR12は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)ものである。
【0051】
式(VI)の、アミンに富むより好ましいクラスの合成ポリマーは、式中、Rが水素原子であり、mが2であり、nが3であり、R19及びR20が、先に定義されたものである。
【0052】
式(VI)の、アミンに富むより好ましいクラスの合成ポリマーは、式中、Rが水素原子であり、mが2であり、nが3であり、R19及びR20が独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−CHCHC(O)NH−(CR−N(R2122)の基であり(但し、R19及びR20は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、R21及びR22は独立に、水素原子、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基である(但し、R21及びR22は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)ものである。
【0053】
式(IV)の、アミンに富む好ましいクラスの合成ポリマーは、Rが水素原子であり、mが2であり、R19及びR20が先に定義されたものである。
【0054】
式(VI)の、アミンに富むより好ましいクラスの合成ポリマーは、式中、Rが水素原子であり、mが2であり、R19及びR20が独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−CHCHC(O)NH−(CR−N(R2122)の基であり(但し、R19及びR20は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、R21及びR22は独立に、水素原子、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基である(但し、R21及びR22は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)ものである。
【0055】
最も好ましくは、アミンに富む合成ポリマーは、一般式(IV)及び(V)によって表される。
【0056】
上で議論されるように、皮膚への浸透は制限されるべきであることから、UV吸収性ポリマーは高い分子量を有するべきであり、これは、多くのUV吸収性分子を低分子量のデンドリマーと結合させることによって得ることができる。或いは、アミンに富む合成ポリマーそれ自体が既に高い分子量を有することができることから、ごく限られた数のUV吸収性分子のみをアミンに富むこのような合成ポリマーに添加することによって、UV吸収性ポリマーを得ることもできる。したがって、アミンに富む合成ポリマーは、最小の数平均分子量Mが1000g/molであり、又は好ましくは10000g/molであり、80000g/molもの大きさにすることもできる。但し、最大の数平均分子量Mは100000である。
【0057】
UV吸収性ポリマー
本発明のUV吸収性ポリマーは、アミノブタジエンをアミンに富む合成ポリマーと結合させることによって調製される。好ましくは本発明のUV吸収性ポリマーは、UV吸収率が少なくとも5.6a.u./g.L、好ましくは20a.u./g.L、より好ましくは少なくとも40a.u./g.L、さらにより好ましくは少なくとも60a.u./g.L、最も好ましくは少なくとも80a.u./g.Lである。
【0058】
一般式(I)及び(II)のアミノブタジエンは、当業者には周知の方法を使用し、好ましくはアミノブタジエン中のカルボン酸基を介して、アミンに富む合成ポリマーと結合させることができる。アミノブタジエンが、カルボン酸基を含有しない場合には、このような基は当分野の技術者に周知の方法によって導入することができる。追加のカルボン酸基の導入は、明らかにUV吸収特性に対して影響を与えるべきでなく、したがって好ましくは、本質的にはアミノブタジエンのπ系を妨害しないアミノブタジエンの位置に導入される。
【0059】
本発明の第1の好ましい方法によれば、一般式(I)のアミノブタジエンはアミノ基(NR)の修飾を介して結合するが、その修飾によって、追加のカルボン酸官能基がこの基に導入される。特にアミノ基は、イソニペコチン酸(4−ピペリジンカルボン酸)によって置換される。この置換によって、アミンに富む合成ポリマーとのさらなる効果的な結合が可能になり、その結果、予想外に高い吸収性がもたらされるように思われる。したがって、一般式(I)のアミノブタジエンを、場合によっては、好ましくは塩基を用いて処理し、得られた生成物をイソニペコチン酸と接触させると、追加のカルボン酸官能基が導入されて、それがカルボン酸官能基を介する結合を伴うそれ自体周知の方法によってアミンに富む適切な合成ポリマーと結合することができる。好ましい結合方法は、活性化エステル、好ましくはNHSエステルを介して、アミンに富むポリマーのアミン官能基と結合させることである。その結果、UV吸収性ポリマーの第1の好ましい調製方法によれば、一般式(VII)のアミノブタジエンは、以下のステップにかけられる。
(a)式(VII)のアミノブタジエンを、場合によっては、好ましくは塩基の存在下で、式(VIII)のカルボン酸誘導体と反応させて、式(IX)のアミノブタジエン誘導体を形成するステップ
【化6】

(式中、R27及びR28は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R28が水素原子を表すこともでき、場合によってはR27及びR28が組み合わさって環状アミノ基、好ましくは5〜7員アミノ基を形成することができる)、並びに
(b)式(IX)のアミノブタジエン誘導体を、−NHR末端基を有する式(IV)〜(VI)のいずれか1つのアミンに富む合成ポリマーと反応させて、式(X)のUV吸収性ポリマーを形成するステップ(式中、Rは、水素、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基である)。
【化7】

【0060】
カルボン酸誘導体(VIII)の適切な具体例は、イソニペコチン酸(4−ピペリジンカルボン酸)及びピペラジンカルボン酸である。
【0061】
第1の好ましい方法の好ましい一実施形態によれば、式(IX)のアミノブタジエン誘導体は、まずアミンに富む合成ポリマーと反応する前に、活性化エステルに変換される。好ましい活性化エステルは、式(XI)のNHSエステルである。
【化8】

【0062】
本発明によれば、式(VIII)のカルボン酸誘導体がイソニペコチン酸であることが最も好ましい。
【0063】
第2の好ましい方法によれば、一般式(I)のアミノブタジエン、好ましくは式(VII)のアミノブタジエンは、先に定義した−NHR末端基を有する本発明のアミンに富むポリマーと混合されることによって直接結合する。しかし、この第2の好ましい方法は、アミノブタジエンのNHS活性化を含む方法と同じく、いくらか低い効率で進行する。
【0064】
式(VII)のアミノブタジエンが自然に結合する理由は明らかではない。芳香族性を有する少なくとも一置換又は非置換部分を窒素基に結合した構造、及び/又は電子吸引性を有する少なくとも1つの部分を該窒素に結合した類似の構造が、適切な収率で自然に結合できると予測することができる。今やこの簡単な方法が発見されたために、ポリマーのアミン基に直接結合することができる類似の構造を見出すことは、単純な試行錯誤法となっている。
【0065】
本発明はまた、日光への暴露の有害な影響からヒトの皮膚又は毛髪を保護するための本発明のUV吸収性ポリマーの使用に関する。本発明は特に、皮膚を介して血流に浸透することができない安定なUV吸収性ポリマーを含む日焼け防止用組成物を対象とする。UV吸収性ポリマーが血流に入るのを防ぐことによって、免疫反応の危険性又は他の有害な影響が軽減される。
【0066】
好ましい一実施形態では、UV吸収性ポリマーは、400nm超でその全吸収量の10%未満を吸収する。このことは、UV吸収性ポリマーが、可視光に対して実質的に透明であることを意味する。好ましい一実施形態では、UV吸収性ポリマーは、315〜400nmのUV−A領域においてその全吸収量の75%又はそれ以上を有する。したがって、本発明は、前記UV吸収性ポリマーの400nm超での吸収量が、250〜600nm間の全吸収量の10%未満である、上に定義したUV吸収性ポリマーに関する。また本発明は、前記UV吸収性ポリマーの315〜400nm間の吸収量が、250〜600nm間の全吸収量の少なくとも75%である、上に定義したUV吸収性ポリマーに関する。
【0067】
好ましい一実施形態では、一般式(I)、或いは式(VII)、(IX)、又は(XI)のアミノブタジエンは、アミンに富むポリマー100グラムあたり少なくとも約40mmolの量、好ましくはアミンに富むポリマー100グラムあたり少なくとも約155mmolの量、より好ましくはアミンに富むポリマー100グラムあたり少なくとも約350mmolの量、さらにより好ましくはアミンに富むポリマー100グラムあたり少なくとも約605mmolの量、最も好ましくはアミンに富むポリマー100グラムあたり少なくとも約955mmolの量でアミンに富む合成ポリマーと結合する。使用されるアミノブタジエンの量は、アミノブタジエンに結合するアミンに富む合成ポリマー中のアミン基のパーセンテージとして表すこともできる。最も好ましくは、100%のアミン基がアミノブタジエンに結合する。一般には、50%より多くのアミン基がアミノブタジエンと結合するときに、良好な結果が既に得られている。好ましいUV吸収率を達成するのに必要な結合量は、様々なアミノブタジエンの構造によって明らかに変わり得る。というのは、前記アミノブタジエンの構造は、変動する吸光係数を有すると予測することができるからである。
【0068】
別の好ましい実施形態では、一般式(I)のアミノブタジエンと、デンドリマー又は超分岐ポリマーとの結合は、非制御方式でUV吸収性ポリマーのMWを増加させながら、ポリマー架橋結合の危険性を示さない方法を用いて実施される。特に、カルボジイミド活性剤と一般式(I)のアミノブタジエンのカルボキシ基との反応後、反応中間体を、アミンに富むポリマー中のアミノ基と反応するはずのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに変換することによって、所望の仕様のUV吸収性ポリマーを生成することができる。このような反応は、当分野の技術者には周知である(例えば、J. March, Advanced Organic Chemistry, 4th Ed., page 395, 1992を参照のこと)。
【0069】
皮膚への浸透深度は、デンドリマー又は超分岐ポリマーの分子量を制御することによって有利に調整し、それが血流に入るのを防ぐ。好ましくは、UV吸収性ポリマーは、分子量が少なくとも1000g/molである。数平均分子量Mは、広い制限内で変わることができ、100000g/molもの大きさでもよい。例えば処方剤の粘性等、実質上の理由から、1000〜10000g/molの分子量が好ましい。UV吸収性ポリマーの従来技術の適用例には、皮膚への浸透を制御する方法は含まれず、自由に皮膚に浸透させている。本発明では、皮膚への浅い浸透でさえ防止することができる。
【0070】
皮膚への浸透を調整する別の方法は、アミンに富む合成ポリマーの親水性を、親水性又は疎水性基とポリマーとを共有結合させながら前記ポリマーを化学修飾することによって調節することである。
【0071】
UV吸収性ポリマーは、皮膚又は毛髪をUV放射から保護するために、化粧品用又は日焼け防止用組成物の調製に有利に使用することができる。
【0072】
UV吸収性ポリマーを含む、皮膚の保護用の様々な形態の化粧用組成物は、ローション、エマルジョン、クリーム、乳液、ジェル等として市場で入手可能である。これらは、油及び/又はアルコールを含有してよい。エアロゾル又はスティックが使用されることも知られている。このようなあらゆる形態の化粧用組成物は、UV吸収性ポリマーを塗布するための媒体として機能することができる。
【0073】
当分野の技術者は、本発明の日焼け防止用組成物中に使用することができる、化粧上及び皮膚科学上許容される適切な担体を選択することができるはずである。
【0074】
UV吸収性ポリマーを含む日焼け防止用組成物は、結合したアミノブタジエンに加えて、アミンに富む合成ポリマーに結合した添加剤として第2のUV吸収基又は化合物を含有することができる。この第2のUV吸収基は、例えば、欧州特許A1.055.412号に記載のように、UV−A、UV−B、又は広帯域のUVを吸収する化合物とすることができる。第2のUV吸収基はまた、第1の結合したアミノブタジエンと相補的な特性を有するアミノブタジエンでもよい。例えば、UV−A吸収性ブタジエンが結合することができ、UV−B吸収性アミノブタジエンも結合することができる。当分野で適用される他の添加剤を使用することもできる。
【0075】
これらの化合物を、デンドリマー又は超分岐ポリマーのようなアミンに富む合成ポリマーと有利に結合されるのは、一般式(I)のアミノブタジエンに限定されないことが、当分野の技術者には明らかとなるはずである。例えば、ビタミンC及びビタミンEのようなビタミンは、通常、抗酸化物として化粧用調製物に添加される。これらは、人体には危険を与えないが、このようなビタミンが皮膚を通って拡散させられるときに、それらの機能は低下する。このような化合物は、場合によってはアミノブタジエンとの組合せで、例えば超分岐又はデンドリマー性ポリマーと有利に結合することもできる。
【0076】
本発明の化粧用組成物は、UV吸収性ポリマーに加えて、従来このタイプの化粧用組成物中に存在する様々な補助剤、例えば、水和剤、皮膚軟化剤又は増粘剤、界面活性剤、保存剤、香料、染料等を含有することができる。
【0077】
一態様では、本発明は、日焼け防止用組成物の全重量に対して本発明のUV吸収性ポリマーを18重量%未満、好ましくは13重量%未満、より好ましくは10重量%未満含む日焼け防止用組成物に関する。しかし、有効であるためには、日焼け防止用組成物は、その全重量に対して本発明のUV吸収性ポリマーを少なくとも0.1重量%含まなければならない。
【実施例】
【0078】
[実施例1]
イソニペコチン酸を使用するUV1とAstramol(商標)(AM)32デンドリマーとの結合
UV1のNHSエステルを、以下の反応に従って調製する。
【0079】
UV1 3.64g及びイソペコチン酸1.18gを、ジメチルスルホキシド(DMSO)20mlに溶かした。反応混合物を、80℃で3時間加熱し、次いで室温に冷却した。この反応混合物に、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)1.05g及びN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)1.88gを添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。形成したジシクロヘキシル尿素を濾別した。このようにして、UV1のNHSエステルをDMSO溶液として得た。
【0080】
UV1とAstramol(商標)(AM)32デンドリマーとの結合
Astramol(商標)(Am)32 1.0gを、DMSO10mlに溶かし、DMSO溶液としてのUV1のNHSエステルに添加した。室温で終夜撹拌した後、その混合物を炭酸ナトリウムの飽和水溶液150mlに滴加した。その溶液を濾過し、残渣を脱イオン水で洗浄した。真空乾燥後、DMSOブランクに対してサンプル濃度1g/L及び光路1cmで、HP8452Aダイオードアレイ分光光度計で測定して波長375ナノメートルにおけるDMSO中のUV吸収率が110吸収単位/グラムリットル(A.U./gL)のUV吸収性ポリマー5gを得た。
【0081】
[実施例2]
UV3とAstramol(商標)(AM)との直接結合
DMSO20mlに入れたAstramol(商標)(Am)32 1.0gの溶液に、UV3 3.58gを添加した。終夜撹拌した後、その反応混合物を、炭酸ナトリウム飽和水溶液150mlに滴加した。その溶液を濾過し、残渣を脱イオン水で洗浄した。真空乾燥後、DMSOブランクに対してサンプル濃度1g/l及びサンプル光路1cmで、HP8452Aダイオードアレイ分光光度計で測定して波長375ナノメートルにおけるDMSO中のUV吸収率が130吸収単位/グラムリットル(A.U./gL)のUV吸収性ポリマー4gを得た。
【0082】
[実施例3]
UV1と直鎖ポリアリルアミンとの結合
DMSO溶液としてのUV1のNHSエステルを、実施例1のように調製する。
【0083】
ポリアリルアミン(Sigma Aldrich;65,000g/mol)の20%溶液2.6gをDMSOに溶かし、DMSO溶液としてのUV1のNHSエステルに添加した。室温で終夜撹拌した後、反応混合物を炭酸ナトリウム飽和水溶液150mlに滴加した。その溶液を濾過し、残渣を脱イオン水で洗浄した。真空乾燥後、DMSOブランクに対してサンプル濃度1g/l及びサンプル光路1cmで、HP8452Aダイオードアレイ分光光度計で測定して、波長375ナノメートルにおけるDMSO中のUV吸収率が108吸収単位/g.L(A.U./gL)のUV吸収性ポリマー5gを得た。
【0084】
[実施例4]
アミノブタジエン−デンドリマーの皮膚への浸透深度
EtOH4ml中UV1 30mgを、pH7.4のリン酸緩衝液(=PBS)7ml中に溶かすことによって、UV1−ドナー溶液を調製した。
【0085】
また、UV1−デンドリマー80mgを、PBS緩衝液7ml及びエタノール3mlに溶かすことによって、異なる世代のデンドリマーと結合したUV(1)のドナー溶液を調製した。
【0086】
ヒトの皮膚の4つの小片(φ約3cm、主として表皮)を、透析膜上に適用し、図に示す拡散セルに埋め込んだ。図は拡散セルの略図であり、1=ドナー化合物、2=レセプター区画、3=レセプターインプット、4=化合物及びレセプターの分析用アウトプット、5=1/8”ODx1/32”壁の管である。そのセルを温度自動調節撹拌装置に搭載した。温度を37°に維持した。レセプター液は、PBS緩衝液とした。レセプター区画を磁気撹拌した。ドナー溶液400μlを適用した。1ml/時の速度のレセプター液流を、ガラス管に収集した(1管/2時間)。
【0087】
20時間後、浸透実験を停止した。収集したレセプター液のUV分析によって、明らかにUVモノマーUV1の皮膚への浸透が示されたが、UVデンドリマーに関しては浸透が測定されなかった(表2参照)。
【0088】
【表2】

【0089】
さらに、皮膚の各部分をDMSOで抽出して、任意のUV吸収剤を表皮に溶かした。各抽出物をUVによって分析した。表Iの第2列に示すそれらの結果によって、UVデンドリマーは皮膚中に又は皮膚を通って浸透しないが、UVモノマーは皮膚サンプル中に観測される可能性があるという各レセプター液からの結論が支持される。
【0090】
上の表において、「+」は、その物質の50%より多くが皮膚に浸透することを意味している。「−」は、皮膚に浸透した物質の量が検出不可能であったことを意味する。「±」は、その物質のいくらかが皮膚への浸透するのが観測されたが、レセプター液には入らなかったことを意味する。
【0091】
これらのデータから、MWが5kDを超えるデンドリマーと結合したアミノブタジエンは表皮に浸透しないが、分子量が5kDより低いデンドリマーと結合したアミノブタジエンは限定的に浸透することが明らかである。未結合のアミノブタジエンは、表皮に最も強い浸透を示した。
【0092】
[実施例5]
一般式(II)のアミノブタジエンの安定性
アミノブタジエン分子を許容される日焼け防止用配合物に適用し、湿潤厚みが24μmの透明な支持体を被覆した。アミノブタジエン分子の濃度は、乾燥後(40℃で2時間)に、吸収率がそれらの1.0吸収単位(A.U.)の吸収率最大値(λmax)に達するように選択した。各サンプルを、Xe光(0.25W/m2、Atlas)に6時間暴露した後、Hewlett Packardダイオードアレイ分光光度計を使用して吸収率を再び測定した。6時間後に残った各サンプルの吸収量を、Xe光に暴露していない、対照としての透明な支持体上の日焼け防止用処方剤と比較した。以下の表3に示すそれらの結果は、アミノブタジエンUV吸収剤の光安定性に対するSO基の存在の有益な影響を明らかに示している。
【0093】
【表3】

[実施例6]
【0094】
以下のUV吸収性ポリマーを、一般に40℃で日焼け防止用処方剤に使用されるC12−C15安息香酸アルキル油へのそれらの溶解度に関して、そのUVポリマーを飽和するまで油に溶解させ、溶解した量を測定することによって試験した。「+」は、10重量%より高い溶解度を示し、「−」は、1重量%未満の溶解度を示し、「+/−」は、1〜10重量%の溶解度を示す。データを表4にまとめる。
【0095】
【表4】

【0096】
アミンに富む合成ポリマーの構造(表4)
【化9】

【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるアミノブタジエンに共有結合する、アミンに富む合成ポリマーを含む、UV吸収性ポリマーであって、
【化1】

式中、R及びRは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアシル基、又は6〜20個の炭素原子を有するアリール基を表し(但し、R及びRは、同時には水素原子を表さず、場合によってはR及びRは組み合わさって環状アミノ基を形成し、或いはR又はRは、C(1)と組み合わさって環状アミノ基を形成することができる)、
及びRのそれぞれは、1又は複数のカルボン酸部分によって置換されていてもよく、
は、−COOH、−COOR、−COR、−CN、又はSOを表し、Rは、−COOH、−COOR、−COR、−CN、又は−SOを表し、R及びRは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ、1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、又は1〜25個の炭素原子及び1又は複数の炭素−炭素二重結合を有するアルキル基を表し、前記アルキル基が、O、N、Si及びSからなる群から選択される1若しくは複数のヘテロ原子又は6〜20個の原子を有するアリール基を場合によっては含み、場合によってはR及びRが組み合わさって環状構造を形成することができ、その環状構造が、場合によっては置換されており、N、O、及び/又はカルボニル基を場合によっては含み、
数平均分子量M1000g/mol〜100000g/molを有し、
375nmで少なくとも5.6a.u./g.LのUV吸収率を有する
UV吸収性ポリマー。
【請求項2】
アミノブタジエンが、以下の一般式(II)で表される、請求項1に記載のUV吸収性ポリマー
【化2】

(式中、R、R、R、及びRは、請求項1で定義された通りである)。
【請求項3】
アミノブタジエンが、以下の一般式(III)で表される、請求項1又は2に記載のUV吸収性ポリマー。
【化3】

(式中、R、R、及びRは、請求項1で定義された通りであり、Rは、10〜20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル基である)。
【請求項4】
アミンに富む合成ポリマーが、一般式(IV)〜(VI)で表される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のUV吸収性ポリマーであって、
N{(R3−n[(CR−N(R10)]
(IV)
[(R10)N−(CRN−P−N[(CR−N(R10)]
(V)
N{(R3−n[(CHCHC(O)NH−(CR−N(R1920)]
(VI)
[(R1920)N−(CR−NHC(O)CHCHN−P−N[(CHCHC(O)NH−(CR−N(R1920)]
(VII)
式中、Rは水素原子、直鎖又は分岐のC−C20アルキル基、或いは−[(CR17−X]−R18基であり、Xは、O又はNHであり、
mは、2、3、又は4であり、
nは、2又は3であり、
oは、1〜10であり、
qは、2又は3であり、
Pは、−(CR−、C−C12アリーレン基、C−C12シクロアルキレン基、又は−[(CR17−X]−C(R17]−基であり、Xは、O又はNHであり、pは1〜10であり、
は、水素原子、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であり、
及びR10は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−(CR17NR1112の基であり(但し、R及びR10は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
11及びR12は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−(CR17NR1314の基であり(但し、R11及びR12は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
13及びR14は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−(CR17NR1516の基であり(但し、R13及びR14は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
15及びR16は独立に、水素原子、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であり(但し、R15及びR16は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
17は、水素原子又はメチル基であり(但し、少なくとも1つのR17が水素原子である)、
18は、水素、或いは直鎖又は分岐のC−C20アルキル基、或いは前記に定義された−[(CR17−X]−R18基であり、
19及びR20は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−CHCHC(O)NH−(CR−N(R2122)の基であり(但し、R19及びR20は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
21及びR22は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−CHCHC(O)NH−(CR−N(R2324)の基であり(但し、R21及びR22は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
23及びR24は独立に、水素原子、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基、或いは式−CHCHC(O)NH−(CR−N(R2526)の基であり(但し、R23及びR24は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)、
25及びR26は独立に、水素原子、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基である(但し、R25及びR26は両方が、直鎖又は分岐のC−Cアルキル基であることはない)
UV吸収性ポリマー。
【請求項5】
アミンに富む合成ポリマーが、式(IV)又は(V)を有する、請求項4に記載のUV吸収性ポリマー。
【請求項6】
化合物が、375nmで少なくとも20a.u./g.LのUV吸収率を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のUV吸収性ポリマー。
【請求項7】
UV吸収性ポリマーの400nm超での吸収量が、250〜600nm間の全吸収量の10%未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のUV吸収性ポリマー。
【請求項8】
UV吸収性ポリマーの315〜400nm間の吸収量が、250〜600nm間の全吸収量の少なくとも75%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のUV吸収性ポリマー。
【請求項9】
アミンに富む合成ポリマーがデンドリマーである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のUV吸収性ポリマー。
【請求項10】
UV吸収性ポリマーが、数平均分子量M1000〜10000g/molを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のUV吸収性ポリマー。
【請求項11】
請求項1に定義の一般式(I)のアミノブタジエンを、数平均分子量M1000g/mol〜100000g/molを有する、アミンに富む合成ポリマーと接触させるステップを含む、UV吸収性ポリマーの調製方法。
【請求項12】
式(VII)のアミノブタジエンが、以下の
(a)式(VII)のアミノブタジエンを、式(VIII)のカルボン酸誘導体と反応させて、式(IX)のアミノブタジエン誘導体を形成するステップ
【化4】

(式中、R27及びR28は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Rは、水素原子を表すこともでき、場合によってはR27及びR28が組み合わさって環状アミノ基を形成することもできる)、並びに
(b)式(IX)のアミノブタジエン誘導体を、アミンに富む合成ポリマーと反応させるステップ
にかけられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アミノに富む合成ポリマーが、請求項4に定義の式(IV)〜(VI)のいずれか1つによって表され、前記アミノに富む合成ポリマーが−NHR末端基を有する式(X)のUV吸収性ポリマーを形成し、Rが、水素、或いは直鎖又は分岐のC−Cアルキル基である、請求項11又は12に記載の方法。
【化5】

【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項の方法によって得られるUV吸収性ポリマー。
【請求項15】
UV放射から保護するための化粧品用組成物を調製するための、請求項1〜10又は14のいずれか一項に記載のUV吸収性ポリマーの使用。
【請求項16】
請求項1〜10又は14のいずれか一項に記載のUV吸収性ポリマー化合物を18重量%未満含む、日焼け防止用組成物。


【公表番号】特表2008−507606(P2008−507606A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522454(P2007−522454)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000538
【国際公開番号】WO2006/009451
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(505232782)フジフィルム マニュファクチャリング ユーロプ ビー.ブイ. (50)
【Fターム(参考)】