説明

デンドリマー内部標準を使用する質量分析による生体分子検体の定量化

本発明は、サンプル又は抽出物中の少なくとも一つの生体分子検体の濃度を、図1に示すように少なくとも一つのデンドリマー内部標準を使用する質量分析により定量化するための方法及び組成物に関する。適切なデンドリマー標準の具体例は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)デンドリマー及びポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーである。一実施形態においては、熱やプロテアーゼに弱い不安定な内部標準をデンドリマー標準と共に使用する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析を使用して、既知量の少なくとも一つの内部標準をサンプル又は抽出物に添加することを含む、サンプル又は抽出物中の少なくとも一つの検体の濃度を定量化する方法に関する。また、本発明はそれらの組成物と同様に、質量分析において使用される内部標準にも関する。さらに、本発明は、標本収集器における少なくとも一つの内部標準の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、以下に引用する任意の文献及び方法が先行技術である旨を認めず、及び適切な場合には、これらの文献及び方法が適用される法定条文に対して先行技術を構成しないことを示す権利を明示的に保持する。
【0003】
ヒトゲノム地図作製の完成が近づいて、科学者らは遺伝子生成物(gene product)に関心を向け始めている。遺伝子の表現型生成物のように、蛋白質は、スプライシング、メチル化、リン酸化、グリコシル化などの翻訳後修飾によって、さらにより複雑化される複雑な構造である。これらの翻訳後修飾のために、1000万以上の蛋白質が、1万強の遺伝子から生み出されている。蛋白質は、生体内の生化学プロセスの大半に関与している。したがって、蛋白質は種々の病気のバイオマーカーと同様に、医薬及び医薬標的としても多大な臨床学的興味がある。現在研究者らは、プロテオミクス(proteomics)分析を使用して、病気及び病状を、蛋白質又は蛋白質のサブセット、及びそれらの翻訳修飾後生産物の存在の有無と相関付けようと試みている。このプロテオミック研究の最終目標は、診断用標的及び治療用標的を発見することとなる新規なバイオマーカーを見出すことである。
【0004】
エレクトロスプレーイオン化法(ESI)及びマトリックス支援レーザー脱離/イオン化法(MALDI)のようなイオン化技術の進歩に伴い、質量分析(MS)は蛋白質分析のための強力な道具として登場してきた。1次元(1−D)及び2次元(2−D)ゲル電気泳動、又は液体クロマトグラフィー(LC)ならびにキャピラリー電気泳動(CE)と組合わせて、質量分析は、2〜3例を挙げると、ペプチドマスフィンガープリント、ペプチドシークエンス、またはMS/MSイオンサーチ分析などのインフォマティックツールを用いて、新規な蛋白質を同定するのにうまく使用されてきた。
【0005】
しかし、2−Dゲル電気泳動、LC又はCEによるMALDI及びESI質量分析用の面倒で複雑なサンプルの前調製により、MS用途は、ほとんど研究業界に限定されていた。表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間(surface enhanced laser desorption/ionization time−of−flight)質量分析(SELDI−TOF−MS)を基にした代替技術が、潜在的な臨床用途のために開発されてきている。SELDIチップ技術を使用して、オンチップリテンテート(on−chip retentate)クロマトグラフィーによりサンプル調製が行われ、そしてTOF−MSにより検出が行われる。アニオン交換、金属親和力、及び逆相等の様々なクロマトグラフィー表面を有するSELDIチップは、ある種類の蛋白質と選択的に結合し、SELDI−TOF分析のために蛋白質を提供することができる。
【0006】
SELDI−TOF−MS技術は、卵巣がん事例を見事に同定した。(E.F.Petricoinら、非特許文献1)
蛋白質の定量的同定に加えて、MSは組織又は血漿中の蛋白質発現濃度(expression level)を定量化するのに使用されてきた。同位体コードアフィニティタグ法(Isotope−coded affinity tags:ICAT)(S.P.Gygiら、非特許文献2)は、同一タグの安定同位体バージョン(version)の相対的な存在度を比較することにより、二つ又はそれ以上のサンプル間の相対的な蛋白質発現を直接定量的に比較することができる差異ディスプレイの一種である。しかし、ICATはシステイン残基を標的とするため、システインを欠く蛋白質(全蛋白質の約10%)は、この方法からは除外される。包括的内部標準化技術(global internal standardization technology:GIST)(F.E.Regnierら、非特許文献3)と称される代替的な同位体標識化法も開発されてきた。GIST法は、対照及び試験プロテオームのトリプシンの消化と、続く差異同位体標識化(differential isotopic labeling)とを含む。
【0007】
GISTに対する一般的な研究方法は、消化中の18O導入、又は消化後のN−アセトキシ−13−スクシンイミドアルキル化を含む。標識化後、消化された蛋白質の二つの個体群(population)を一つに混合して、1−D又は2−D液体クロマトグラフィー−質量分析により分析する。続いて、軽い同位体標識化ペプチドから重い同位体標識化ペプチドまで共溶離しているペプチドの強度比を測定する。そして、単一体よりも大きい比率か、又は小さい比率を有するペプチド対は、バイオマーカー候補として印をつける。面倒な同位体標識化プロセスのために、GISTは、ICATのように研究業界に限定されていた。
【0008】
標的とされた蛋白質と類似した構造を有する内部標準(IS)の添加による定量MALDI技術を開発するためのその他の取り組みが開発されてきた。ウシのインシュリンを定量化するために、ウマ心臓シトクロムCを含む一連の内部標準、ウシインシュリン連鎖Bなどが研究されてきた(W.R.Wilkinsonら、非特許文献4)。また、シトクロムCは、ペプチド及び蛋白質の定量MALDI−TOF質量分析における内部標準として、特許文献1に開示されている。同様に、試験サンプル中のスフィンゴリピドの濃度を測定するために、試験スフィンゴリピドと異なる質量を有するが、類似の構造を持つ内部標準が用いられている(特許文献2参照)。報告されている内部標準の多くは、それらの種特異的性質のために、臨床業界に用途が限定されることが判明している。
【0009】
したがって、当技術分野には、新進の蛋白質分析技術基盤のために信頼しうる万能な内部標準の必要性がある。
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0031773号明細書
【特許文献2】国際公開第03/048784号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4036808号明細書
【特許文献4】米国特許第4102827号明細書
【特許文献5】米国特許第4141847号明細書
【特許文献6】米国特許第6455071号明細書
【特許文献7】米国特許第4507466号明細書
【特許文献8】米国特許第4568737号明細書
【特許文献9】米国特許第4694064号明細書
【特許文献10】米国特許第5418301号明細書
【特許文献11】米国特許第5276110号明細書
【特許文献12】米国特許第5760142号明細書
【特許文献13】米国特許第6350384号明細書
【特許文献14】米国特許第6417339号明細書
【特許文献15】米国特許第6376637号明細書
【特許文献16】米国特許第6440405号明細書
【特許文献17】米国特許第5622687号明細書
【特許文献18】米国特許第4558120号明細書
【特許文献19】米国特許出願第10/436236号明細書
【特許文献20】米国特許第6579719号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2002/0177242号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2002/0155509号明細書
【非特許文献1】Lancet 359:572(1992)
【非特許文献2】Nature Biotech.17:994−999(1999)
【非特許文献3】J.Mass Spectrom.37:133(2002)
【非特許文献4】J.Anal.Chem.357:241(1997)
【非特許文献5】Polymer2:295−314(1961)
【非特許文献6】J.Polymer Sci.,Part A,Vol.3,pp4131−51(1965)
【非特許文献7】Preparative Methods of Polymer Chemistry,2nd Ed,.Interscience Publishers、213−214(1968)
【非特許文献8】Macromolecules,Vol.I,Plenum Press,New York(1977)
【非特許文献9】Macromolecules,36:1829−35(2003)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、既知量の少なくとも一つの内部標準をサンプル又は抽出物に添加することを含む、質量分析を使用してサンプル又は抽出物中の少なくとも一つの検体の濃度を定量化する方法に関する。また、本発明は質量分析のための内部標準にも関する。本発明に係る質量分析のための内部標準は、それぞれに内部標準を含む二つの異なるサンプルから得られたマススペクトルを整合させるのを助けることを含む多くの目的のために使用することができる。また、本発明は、少なくとも一つの検体と、少なくとも一つの内部標準と、少なくとも一つのマトリックス分子とを含む組成物及び、固体担体上にあるこの組成物にも関する。
【0012】
一実施形態において、内部標準はデンドリマーである。デンドリマーは、ポリマー構成単位(building block)から反応ステップの反復シーケンスにより形成され、有利で一定の大きさ、形態及び化学反応性をデンドリマー巨大分子に与える。デンドリマーはプロテアーゼ耐性であり、そして本発明の一実施形態において、デンドリマーは、プロテアーゼを含む生物学的サンプル中の内部標準として使用される。デンドリマー内部標準は、これらに限定されないが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)又はポリ(アミドアミン)(PAMAM)を含む構成単位から構成されてもよい。
【0013】
一形態によれば、本発明は、サンプル中の少なくとも一つの検体の濃度を定量化する方法であって、
(a)既知量の少なくとも一の内部標準をサンプルに添加するステップ、
(b)質量分析を用いて検体とデンドリマーの濃度を定量化するステップ、
(c)(a)のデンドリマーの既知量と(b)の定量化されたデンドリマーの濃度との間の差異を決定するステップ、及び
(d)(c)の決定したデンドリマーの差異と(c)における検体の濃度とを相関させるステップ、
を含む方法を提供する。
【0014】
本発明の他の実施形態において、サンプルはデンドリマー内部標準を含み、且つ、熱、pH,プロテアーゼなどに弱い不安定な内部標準をさらに含んでもよい。もしサンプル又は抽出物がこの不安定な内部標準の分解が生じる環境にさらされた場合には、不安定な内部標準は部分的に分解される。不安定な内部標準の分解の程度は、サンプル又は抽出物が不安定な内部標準の分解が生じる環境にさらされた程度を反映する。
【0015】
本発明の別の形態によれば、組成物は、デンドリマーと質量分析に適切な少なくとも一つのマトリックス分子とを含む。一実施形態において、組成物はポリ(エチレングリコール)(PEG)デンドリマー又はポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーを含む。
【0016】
さらに別の実施形態において、装置は組成物及び標本収集容器を含み、この組成物はデンドリマー内部標準を含み、この標本収集容器は部分的に真空にするか又は滅菌した内部室を含む。
【0017】
さらに本発明は、少なくとも一つの内部標準を標本収集器内に組み込んだプロテオミック分析法または他の分析法に関する。また、本発明は、少なくとも一つの検体と保持、反応、又は結合しうるプロテインチップと、少なくとも一つの内部標準とを組合せて使用するプロテオミック分析法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、サンプル又は抽出物中の少なくとも一つの検体の濃度を定量化する方法に関する。本発明の方法は、既知量の少なくとも一つの内部標準をサンプル又は抽出物に添加するステップと、サンプル又は抽出物中の少なくとも一つの検体及び添加された内部標準の濃度を一般に質量分析を用いて決定するステップとを含む。内部標準と検体の濃度を決定後、サンプル又は抽出物に添加された内部標準の濃度と決定された内部標準の濃度との間の差異を決定し、検体の濃度と相関させる。
【0019】
また、本発明は、異なるサンプルから得られたマススペクトルを整合させる方法に関する。それぞれに内部標準を含む二つ又はそれ以上のサンプルからのスペクトルは、内部標準の飛行時間又はm/Z値などの内部標準の既知の物理的特徴に対する照会により整合される。
【0020】
本明細書内において、「定量化する」という用語は、特定の検体の絶対又は相対濃度を決定すると意味するのに用いることができる。この量は、検体の二つもしくはそれ以上の実験変数間、又は絶対もしくは相対濃度間の二つの値の差異、パーセンテージ、比率あるいは絶対的変化として表すことができる。この量を、任意の測定単位で表しても、表さなくてもよい。
【0021】
定量化される検体は、既知でも未知でもよい。すなわち、定量化される検体、例えば蛋白質は、本発明の方法の前に既知の特定の生物学的特徴を有する必要はない。実際上、本明細書に記載の方法は、未知検体の生物学的特徴を述べるのに用いることができる。代わりに、本明細書に記載の方法は、一部又は全てがあらかじめ特徴付けられている検体を定量化するのに用いることができる。本明細書に記載の方法は同時に一つ以上の検体を定量化するのに用いることができるため、定量化される検体は純粋である必要がない。本明細書に記載の方法を用いて定量化できる検体の具体例は、これらに限定されないが、蛋白質、ポリペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸、単糖、二糖、多糖、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プロテオグリカン、糖蛋白質、脂質、リポ蛋白質、天然ポリマー、及び可溶性合成ポリマーを含む。定量化される単一のサンプル又は抽出物中には、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ又はそれ以上の検体があってもよい。
【0022】
本明細書に記載の方法は、多数のサンプル又は抽出物にわたる絶対的又は相対的定量化を可能にする。例えば、測定された内部標準に対する測定された検体の比又はその逆数を計算して、同一もしくは異なるサンプル内又はサンプル間で比較してもよい。使用される多数のサンプル又は抽出物は単に一つ以上の同一サンプル又は抽出物、例えば一つの同一細胞培養物又は体内組織であってもよく、あるいはそれらは異なるサンプル又は抽出物、例えば二つの異なる細胞培養物又は二つの異なる細胞体内組織もしくは体液であってもよい。さらに、異なるサンプル又は抽出物を、一つ以上の個別の動物、植物、又は微生物種から取り出すことができる。そのため、サンプルもしくは抽出物の濃度又は比率の差異は、例えば、実験変数、異なる個体又は同一個体内の異なる組織もしくは体液から得ることができる。
【0023】
本明細書内において、「サンプル」という用語は、分析される固体、液体、又は気体の少なくとも一部を意味するために使用されている。「標本(specimen)」及び「サンプル」という用語は、本明細書において互換性があるように使用されている。サンプルは、生物学的、化学的、又は環境的な性質であってもよい。環境的なサンプルの具体例は、これらに限定されないが、油、土壌、及び水から得られるサンプルを含む。化学的サンプルは有機であっても、無機であってもよい。また、化学的サンプルの具体例は、食品や化粧品などの人間が使用又は消費するための化学品をも含む。一実施形態において、サンプルは生物学的サンプルである。生物学的サンプルの具体例は、これらに限定されないが、細胞培養物、動物組織、及び体液を含む。細胞培養物中の細胞は、動物細胞、植物細胞、バクテリア細胞、及び菌細胞であってもよい。もしサンプルが一部又は全て動物細胞から作られる場合には、最終的に細胞が得られる動物は、これらに限定されないが、げっ歯類、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒト及びヒト以外の霊長類を含む哺乳類などの脊椎動物又は無脊椎動物であってもよい。
【0024】
また、サンプルを使用するときには、本発明は、サンプルから抽出物を製造する処理ステップをも包含する。もし抽出物が定量化される検体を含むならば、この抽出物を必要な任意の手段により製造することができる。抽出物は固体、液体又は気体の形態であってもよく、純粋である必要はない。さらに、この抽出物製造処理ステップにより、定量化される検体の濃度が高められ、もしくは薄められてもよく、又はそれにより、例えば、親水性をより高めるか、もしくはより低めるか、親油性をより高めるか、もしくはより低めるか、イオン性をより高めるか、もしくはより低めるように、検体を化学的に修飾してもよい。本明細書内に記載の抽出物製造処理の前か、後か、その間に、本発明に使用される内部標準をサンプル内に置くことができる。
【0025】
本明細書内において、「内部標準」という用語は、サンプル又は抽出物に添加され、次いで検出され、定量化されるものをいう。内部標準の添加は、サンプルもしくは抽出物の収集又は処理の前か、後か、又はその間であってもよい。さらに、本明細書内に論じるとおり、「内部標準の添加」は、収集器であって、それらを使用する前に内部標準を含むように製作され、それらに含まれるか、ないしはそれらに関連する(例えばキットのような)収集器も包含する。本発明により意図されるような内部標準は、サンプル又は抽出物に添加される化合物であり、そしてこの同一の化合物を本明細書内に記載の方法を使用して定量化する。
【0026】
本発明の一実施形態において、使用される内部標準は、デンドリマーである。当技術分野において理解されているように、「デンドリマー」は、例えばポリマーのような主要な構成単位から、反応ステップの反復シーケンス)により構築される規則的で高度に分岐している3次元構造を有する不連続な大きさの巨大分子である。
【0027】
デンドリマーの構成単位として機能しうるポリマーは、一般的に直鎖状又は分岐状という構造上の意味で分類される。直鎖状ポリマーの場合には、繰り返し単位(多くは「メル(mers)」と呼ばれる)は二価であり、直鎖状配列中で、ある一つを別なものに結び付ける。分岐状ポリマーの場合には、少なくともいくつかのメルは、そのメルが非直鎖状配列中で連結されるように2より大きい原子価を所有する。通常、「分岐している」という用語は、分岐物の個々の分子単位がポリマー主鎖から分離しており、さらに、ポリマー主鎖と同一の化学的構造を有していることを意味する。そのため、モノマー構造に固有であるか、及び/又はポリマー主鎖とは異なる化学的構造である、規則正しく繰り返す側鎖基、例えば直鎖ポリプロピレンに従属するメチル基は、分岐とはみなされない。分岐されたポリマーを製造するために、開始剤、モノマー、「機能性コア(functional core)」、又はポリマー化反応において機能する少なくとも三つの部分を所有するそれらの任意の組合せを必要とすることもある。そのようなモノマーや開始剤は、多くは多官能性と呼ばれる。最も単純な分岐ポリマーは、鎖分岐ポリマーであって、直鎖状主鎖が一つ又はそれ以上の実質的に直鎖状の側鎖基を支えるものである。多くは「櫛形分岐」と呼ばれる、この単純な形状の分岐は、分岐がポリマー主鎖上に均一で規則正しく分配されるように規則的であってもよいし、分岐がポリマー主鎖状に不均一で不規則な形式で分配されるように不規則的であってもよい。T.A.Orofinoの非特許文献5、T.Altoresらの非特許文献6及びSorensonらの非特許文献7を参照し、これらの全てが参照により本明細書中に組み込まれる。
【0028】
別のタイプの分岐は、ポリマー鎖が4価の化合物を介して連結されている架橋又は網目状分岐ポリマー、例えばジビニルベンゼンを用いて橋かけ又は架橋させたポリスチレン分子により例示されている。このタイプの分岐において、個々の分岐の多くは直鎖状ではなく、各分岐はそれ自身は直鎖からぶら下がる側鎖基を含んでもよい。網目状の分岐においてより重要なことには、各ポリマー巨大分子(主鎖)は、二つの他のポリマー巨大分子と二つ又はそれ以上の位置で架橋されている。また、この架橋結合の化学的構造は、ポリマー巨大分子の化学的構造とは異なってもよい。このいわゆる架橋又は網目状分岐ポリマーにおいて、種々の分岐又は架橋は、構造上類似(「規則的架橋」と呼ばれる)であってもよいし、又はそれらが構造上非類似(「不規則的架橋」と呼ばれる)であってもよい。規則的架橋ポリマーの具体例は、Sorensonらの上述の非特許文献7の390により記載されているとおり、はしご型ポリ(フェニルシルセスキノン)(poly(phenylsilsesquinone))である。前述の、及び別のタイプの分岐ポリマーは、H.G.Eliansにより非特許文献8に記載されており、それらは参照により本明細書中に組み込まれる。
【0029】
加えて、個々の分岐が中心部から放射状に広がり、中心部ごとに少なくとも3つの分岐が存在するいわゆる星型構造分岐を有するポリマーがある。星型デンドリマーの最も外側の層又は世代は、種々の他の分子と化学的反応性がある官能基で終わっている。そのため、星型デンドリマーは3つに区別される構造上の特徴、すなわち(a)開始コア(initiator core)、(b)開始コアに放射状に付けられた繰り返し単位からなる内部層(世代)、(c)各分岐の末端である最外部又は末端部付けられた活性化官能基の外部表面を有する単一の分子集合体である。そのような星型分岐ポリマーは、特許文献3及び特許文献4(参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されるポリ四級組成物(polyquaternary composition)により例示されている。オレフィンと不飽和酸から調製された星型分岐ポリマーは特許文献5に記載され、参照により本明細書中に組み込まれる。星型分岐ポリマーは、多くは分解に対してそれほど弱くない。加えて、星型分岐ポリマーは、高い分子量でも相対的に低い固有粘度を有する。
【0030】
デンドリマーの大きさ、形、及び反応性を、開始コアの選択、デンドリマーを作るのに用いられる世代の数、コア世代に用いられる繰り返し単位の選択により制御することができる。デンドリマーの不連続な大きさは、用いられる世代数が増加するに従い、容易に得られる。本発明の方法で使用できるデンドリマーの具体例は、これらに限られないが、参照により本明細書中に組み込まれる特許文献6に記載されているものを含む。
【0031】
それらの本質による球状デンドリマーは、より多くの予期及び再現しうる方法で、プロテインチップ表面上の基質と、相互に作用するか、結合してもよい。本発明の使用に適切な構造の球状デンドリマーの具体例は、特許文献7及び特許文献8に開示されており、どちらも参照により本明細書中に組み込まれる。代わりに、特許文献9(参照により本明細書中に組み込まれる)において開示されるような非球状構造のデンドリマーを、本発明の使用に適用してもよい。
【0032】
本発明に従い使用できるデンドリマーは、これらに限定されないが、特許文献10に開示されているようなポリエステルタイプの樹枝状巨大分子、特許文献11に開示されているようなカルボシランベースハイブリッド星型ポリマー、特許文献12に開示されているようなエポキシド−アミン・デンドリマー、特許文献13に開示されているようなシリコン含有分岐(multi−arm)星型ポリマー、特許文献14に開示されている糖類含有デンドリマー、特許文献15において開示される樹枝状で高分岐のポリウレタン、特許文献16において開示される四級アンモニウム官能基化デンドリマー、特許文献17に開示されるカリックスアレーン共役物、特許文献18において開示されるポリペプチド・デンドリマー、及びそれらの任意の組合せを含む。また、本発明は引用したデンドリマーの任意の化学的修正及び変形をも包含する。
【0033】
本発明の別の実施形態において、デンドリマーではない「不安定な内部標準」がデンドリマーのように同一のサンプル又は抽出物中で使用される。不安定な内部標準は、デンドリマー内部標準よりも熱、pH,プロテアーゼなどにより弱い。そのため、不安定な内部標準は、サンプル又は抽出物が不安定な内部標準の分解が生じる状態にさらされた場合に部分的に分解する。不安定な内部標準の分解の程度は、サンプル又は抽出物が不安定な内部標準が分解する状態にさらされた程度を反映する。不安定な内部標準を、サンプル又は抽出物になされるモニタープロセシング方法、取り扱い方法、収集方法、保管方法、輸送方法、及び/又は抽出方法に対して使用してもよい。例えば、不安定な内部標準は、プロテアーゼの存在により部分的に分解することがある。そのため、サンプル又は抽出物中の不安定な内部標準の分解により、サンプル又は抽出物がプロテアーゼにさらされたことが示されることとなる。さらに、不安定な内部標準は、これらに限定されないが、高pHあるいは低pH,極端な塩濃度、熱、及びサンプルもしくは抽出物がさらされる処理又は濃縮方法中に生じるその他の状態などの状態に応じて部分的に分解することがある。本発明に係る不安定な内部標準は、これらに限定されないが、[Arg8]−バソプレシン、[Glu1]−フィブリノゲン、ACTH[1−24]、アルブミン、アンギオテンシン、β−エンドルフィン[61−91]、β―ガラクトシダーゼ、β―ラクトグロブリンA、炭酸脱水酵素、卵アルブミン、シトクロムC、ダイノルフィンA[209−225]、GAPDH、ヒルジンBKHV、IgG、インシュリン、インシュリンB鎖、ミオグロビン、ペルオキシダーゼ、ソマトスタチン、超酸化ジスムターゼ、ユビキチン、及び/又はそれらの任意の組合せを含む。
【0034】
本明細書中において、「プロテオミック分析」は、サンプルもしくは抽出物中の未知又は既知の蛋白質の特定、同一性の確認、同定、あるいは存在を発見する分析のことである。さらに、「質量分析」は、サンプルの分離した個々の構成要素を、それらの相対質量又は絶対質量を基に検出する任意の技術基盤を意味することを意図している。そして、それらの質量を基にしたサンプルの構成要素の検出は、サンプルの少なくとも一つの構成要素の同定、特定、同一性の確認に使用することができる。サンプル構成要素の検出は、例えば、個々の構成要素の電荷、及び個々の構成要素が少なくとも2地点間を進むのに必要な時間に基づいてもよい。一般的に言えば、質量分析は、サンプル構成要素を、それが検出されうるような方法で最初に分離することとなる追加的な技術基盤と連結される。この追加の技術基盤は、より基底にある状態からサンプル構成要素を刺激するエネルギー源を多くは含む。サンプルにエネルギーを与えるこれらの追加の技術基盤の具体例は、これらに限定されないが、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)及びレーザー脱離/イオン化型分光測定法を含む。
【0035】
本明細書中において、「レーザー脱離/イオン化型分光測定法」は、担体から分子を分離(脱離)させるか、強制的に分離させるように、エネルギー源、例えばレーザーを使用する任意の分析手段を意味するために使用されている。例えば、レーザーは固体担体から分子を脱離させるのに使用することができる。担体から分子を分離させるためにレーザーを使用する追加的な具体例は、蒸発及び昇華を含む。分子が分離する担体は、固体担体又は液体担体であってもよい。したがって、レーザー脱離/イオン化型分光測定法の具体例は、これらに限定されないが、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化型(MALDI)及び表面増強レーザー脱離/イオン化型(SELDI)を含む。そして、レーザー脱離/イオン化型分光測定法は、担体から分離された分子を分析する任意の種類の分析方法と組合せることができる。例えば、本明細書中において、レーザー脱離/イオン化型分光測定法は、これらに限定されないが、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、四重極分光計(Q)、及び飛行時間分光法(TOF)を含むような種類の分析とさらに組合せてもよい。他の種類の分析と組合せたレーザー脱離/イオン化型分光測定法の具体例は、これらに限定されないが、MALDI−TOF、SELDI−TOF、MALDI−TOF−MS、SELDI−TOF−MS、SELDI−Q−TOF、及びMALDI−MS/MSを含む。
【0036】
本発明によれば、レーザー脱離/イオン化型分光測定法を使用して検体及び内部標準の濃度を決定することは、レーザー脱離/イオン化型分光測定法が決定の少なくとも一つのステップで使用されうることを意味する。例えば、質量分析が、検体及び内部標準の濃度を決定するために実際に定量的なデータを生み出す道具になることも可能である。しかし、もし質量分析が、多少ともレーザー脱離/イオン化型分光測定法、例えばMALDIと連結されていた場合には、このタイプのMALDI−MS分析は、用語「レーザー脱離/イオン化型分光測定法」により意図される範囲内である。
【0037】
代わりに、エレクトロスプレーイオン化法は、サンプルに対して、それが固体であろうが、液体であろうが、非常に高圧まで電荷を通す。サンプルの電圧が時間及び電流と共に増加するにつれ、サンプルは次第に不安定になる。最終的に、増加した不安定性により、サンプルが非常に微細な霧に分解する結果となり、この霧粒は約10μmよりも小さい。
【0038】
本発明において使用できる追加的な技術基盤又は分析法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動、ガスクロマトグラフィー(GS)、赤外分光光度法(IR)、紫外線分光光度法(UV)、核磁気共鳴分光法(NMR)、SDS−PAGE、等電点電気泳動法、ウェスタンブロット法及びキャピラリー電気泳動法などの技術を含む。
【0039】
本明細書中において、「差異(difference)」とは、それが相対的な差異であろうと、絶対的な差異であろうと、内部標準と検体との濃度差異、認識可能又は統計的な差異である。濃度差異は、統計的に有意であることを必要とはしない。さらに、測定された内部標準の差異を、数値的に、又は定量的に、又は、例えば、検体に対する内部標準の割合もしくは別の内部標準に対するある内部標準の割合のように表すことができる。本発明の請求の範囲を、内部標準を含む認識可能な差異又は割合を生じさせる統計的な方法により限定すべきではない。
【0040】
次いで、内部標準の濃度の差異を、検出された検体の濃度と相関させる。相関プロセスは、内部標準と検体の濃度との間の関係を作るのに用いられる任意のプロセスであってもよい。例えば、この相関関係は、数値計算的、幾何学的又は対数関数的であってもよい。この相関関係は二つの値の間の単純な割合であってもよく、又は内部標準の差異をより複雑なアルゴリズムに使用して、検体の濃度を決定してもよい。この差異又は割合は、検体の絶対又は相対濃度を決定するのに有用であり同様に、例えばサンプル収集、サンプル処理及び又はサンプル試験の種々の品質制御の態様を監視するのに有用であってもよい。
【0041】
また、本発明は、レーザー脱離/イオン化型分光測定法で使用される内部標準にも関する。本発明により意図されるように、「内部標準」の範囲は、本明細書内に予め記載されている。一実施形態において、内部標準は、これらに限定されないが、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、ポリ(エチレングリコール)もしくはそれらの組合せの種々のデンドリマーなどのポリマー又はデンドリマーである。
【0042】
一実施形態において、内部標準は、異なるサンプルから得られたマススペクトルを整合させるのを助ける。少しの装置上の変化により、例えば、ある実験から次の実験までに、イオンがわずかに異なる飛行時間を有する結果となるかもしれない。本発明の内部標準を異なる時間に分析されるサンプルに添加することにより、研究者は内部対照として内部標準の飛行時間を参照することで、これらの装置のばらつきを校正することができる。この実施形態は、研究者がイオンの異なる補足物を含むサンプルを比較する場合に特に有益である。
【0043】
本明細書において、「PAMAMデンドリマー」は、世代数、分岐数、及び分岐の構造にかかわらず、ポリ(アミドアミン)がコア分子である任意のデンドリマーを意味するために用いられる。さらに、PAMAMデンドリマーは、これらに限定されないが、星型又は星型分岐ポリマーのような形状又は構造であってもよい。同様に、「PEGデンドリマー」は、世代数、分岐数、及び分岐構造にかかわらず、ポリ(アミドアミン)がコア分子である、任意のデンドリマーを意味するために用いられる。また、本発明に使用されるPEGデンドリマーも任意の形状又は構造であってもよい。PAMA/PEGデンドリマーの調製と化学的分析は、Hedden及びBauerの非特許文献9に記載され、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0044】
続く表は、商業的に入手可能な(Aldrich、Milwaukee、Wisconsin)PAMAMデンドリマーとその分子量を列挙している。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
一実施形態において、PAMAMの末端基を合成中に修飾して、得られるデンドリマーを、例えば親水性、疎水性、アニオン性、カチオン性、又は金属結合性などの表面特性を有するプロテインチップと結合することができるようにする。例えば、以下の式:
N(CHCHCONHCHCHN(CHCHCONHCHCHN(CHCHCONHCHCHCHCHCHCH)CHCHN(CHCHCONHCHCHN(CHCHCONHCHCHN(CHCHCONHCHCHCHCHCHCH
を有するヘキシルアミンキャップした1.5世代のPAMAM、及び以下の式:
N(CHCHCONHCHCHN(CHCHCONHCHCHN(CHCHCONHCH)CHCHN(CHCHCONHCHCHN(CHCHCONHCHCHN(CHCHCONHCH
を有するメチルアミンキャップした1.5世代のPAMAMの両方は、弱カチオン交換性プロテインチップ(CiphergenからのWCX−2)及び親水性チッププロテインチップ(CiphergenからのH50)の両方と安定的に結合することができる。メチルアミンキャップポリ(アミドアミン)デンドリマーを内部標準として使用する実施例は、本発明において提供されることとなる。
【0048】
また、本発明は、本明細書内に上述したような、少なくとも一つの内部標準と少なくとも一つのマトリックス分子とを含む、固体担体上で検出される物質の組成物に関する。
【0049】
本明細書内において、「マトリックス分子」は、天然もしくは合成の分子、又は固体表面上で結晶化できる化合物もしくはポリマーのことをいう。この結晶化を固体担体上で行ってもよく、又は固体担体に対する結晶として、マトリックス分子を施してもよい。一実施形態において、マトリックス分子は有機分子である。マトリックス分子の具体例は、これらに限定されないが、シナピン酸(sinapinic acid:SPA)、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、3−ヒドロキシピコリン酸、2’,4’,6’−トリヒドロキシアセトフェノン(THAP)、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸、コハク酸、アントラニック酸(anthranic acid)、ニコチン酸、サリチルアミド、イソバニリン、3−アミノキノリン、1−シオキノリノール(1−sioquinolinol)及びディスラノールを含む。
【0050】
固体担体の具体例は、これらに限定されないが、チップ(例えば、シリコンベース、金属、セラミック、ガラス、もしくは金のチップ)、スライドガラス、メンブレン、ビーズ、固体粒子(例えば、アガロース、セファローズ、もしくは磁性ビーズ)、カラム(もしくはカラム材料)、試験管、マイクロタイター皿などを含む。固体担体は、これらに限定されないが、ガラス、ナイロン、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ラテックス、化学修飾プラスチック及びゴムを含む種々の材料から作られてもよい。
【0051】
また、本発明は、標本収集する前に、少なくとも一つの内部標準を標本収集器中に直接組み込むプロテオミック分析法にも関する。内部標準の標本収集器内への組み込みは、標本収集器が製造される前か、その間か、その後に行われる。標本収集器は、生物学的、化学的、又は環境学的性質の標本を収集するのに用いることができる。一実施形態において、標本収集器はデンドリマーである内部標準を含む。別の実施形態において、標本収集器は、不安定な内部標準である追加の内部標準をさらに含む。
【0052】
内部標準は、収集器の任意の表面上に設置されてもよい。また、内部標準を、そのような収集器を閉じるためのストッパー及びシールの上に設置してもよく、又はそのような収集器内に配置された機械的な、もしくはその他の挿入物(insert)上に設置してもよい。収集器の少なくとも一つの内部壁沿いのいずれの場所にも、又は貯蔵部内のいずれの場所にも、内部標準を設置することができる。また、内部標準が光感受性である場合には、内部標準を光から保護することが望ましいこともある。そのような内部標準に対して、不透明なチューブ、例えば琥珀色管を使用することは、本明細書内の発明により包含されるであろう。代わりに、露光から保護するために、例えば粉末形状で、カプセル中に内部標準を配置し、その後カプセルを試験管内に配置することも本発明の請求の範囲内であろう。
【0053】
内部標準を、様々な方法により収集器に施してもよい。例えば、内部標準を収集器の内壁表面一面に、噴霧乾燥させたり、疎に施したり、凍結乾燥させてもよい。代わりに、例えば、ゲル又は液体状態の場合などは、内部標準を収集器の貯蔵部に配置してもよい。また、収集器に内部標準を供給するための追加的な方法も可能である。収集器内に所望の量の内部標準を堆積させる一つの方法は、固体形状の内部標準を溶媒内で再構築又は溶解させ、次いで収集器内に溶液を分配することである。この溶液を、噴霧乾燥させても、容器の底部に配置させても、又はその後凍結乾燥させてもよい。
【0054】
内部標準の量と場所は、適用方法、使用される特定の内部標準、収集器の内部容量及び内圧、ならびに容器内に引き込まれた生物学的サンプルの量を含むいくつかの変数により決定される。
【0055】
一実施形態において、内部標準を含む標本収集器は、少なくとも一つの防腐剤、添加剤、及び/又は安定剤をさらに含む。防腐剤、添加剤、及び/又は安定剤の具体例は、EDTA、ヘパリン、シトラートのような抗凝血剤、凝血促進剤、殺菌剤、抗酸化剤、及びプロテアーゼ阻害物質を含む。本発明の便宜上「EDTA」は、EDTAの遊離酸、金属キレート、及び二ナトリウム塩、二カリウム塩、三カリウム塩などの塩を含む。内部標準は、防腐剤、添加剤、及び/又は安定剤と、物理的且つ化学的に適合するように選択される。内部標準と適合する防腐剤、添加剤、及び/又は安定剤を選択することは、当分野における日常的な最適化ならびに実験の問題である。標本収集器中の内部標準は、防腐剤、添加剤、及び/又は安定剤と混合もしくは組合せてもよく、この同じものから分割してもよい。一実施形態において、内部標準は、標本収集器の製造、輸送、及び最終的な使用に組み込まれるのに十分安定である。プロテアーゼ阻害物質を含む、そのような標本収集器の具体例は特許文献19に論じられており、参照により本明細書中に組み込まれる。本発明によるその他の防腐剤、添加剤、及び/又は安定剤の使用は、当業者に明らかであろう。
【0056】
一実施形態において、安定剤はプロテアーゼ阻害物質である。適切な具体例は、これらに限定されないが、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、金属プロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、エキソペプチダーゼなどの阻害物質を含む。セリンプロテアーゼ阻害物質の非限定的な具体例は、アンチパイン、アプロチニン、キモスタチン、エラスタチナール(elastatinal)、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、APMSF、TLCK、TPCK,ロイペプチン及び大豆トリプシン阻害物質を含む。システインプロテアーゼの阻害物質は、例えばIAA(インドール酢酸)、及びE−64を含む。適切なアスパラギン酸プロテアーゼ阻害物質の具体例は、ペプスタチン及びVdLPFFVdLを含む。金属プロテアーゼの阻害物質の非限定的な具体例は、EDTA、ならびに1,10−フェナントロリン及びフォスフォラモドン(phosphoramodon)を含む。エキソペプチダーゼの阻害物質は、例えば、アマスタチン(amastatin)、ベスタチン(bestatin)、ジプロチンA(diprotin A)、ジプロチンB(diprotin B)を含む。適切なプロテアーゼ阻害物質の追加的な具体例は、α−2−マクログロブリン、大豆又はライマメトリプシン阻害物質、すい臓プロテアーゼ阻害物質、卵白オボスタチン(ovostatin)及び卵白シスタチン(cystatin)を含む。また、「プロテアーゼ阻害物質カクテル」と呼ばれるプロテアーゼ阻害物質の組合せも、安定化剤として使用してもよい。一般的に、そのような「カクテル」は、一連のプロテアーゼに対して安定化をもたらすのに有利である。したがって、一般的に、二つ以上のプロテアーゼ阻害物質を含む安定化剤が好ましい。
【0057】
本発明のサンプル収集システムは、これらに限定されないが、試験管及び遠心分離管などのような管;収集袋のような閉鎖系血液収集器;注射器(特にすでに充填剤が詰まった注射器);マルチタイタープレート又はその他のマルチウエルプレート;アレイ;フラスコ、攪拌フラスコ、回転ビン、バイヤルなどの実験容器;組織又はその他の生物学的サンプル収集容器;及び生物学的サンプルを収容するのに適切なその他の容器、ならびにサンプルを移動させるのに関連する容器及び構成部品を含む任意の収集器を包含することができる。本明細書中において、「収集器」及び「収集容器」は互換性があるように用いられる。本発明の一実施形態において、サンプル収集システムは、血液成分を分離するために、分離部材、例えば機械的な分離要素又はゲルなどを含む。そのような態様において、管の内部及び/又は分離部材の外部を、内部標準及び/又は安定剤、防腐剤、もしくは添加剤などの他の化合物で処理してもよい。遠心分離によって、血漿、血清又は特定の細胞型などを分離するのに、分離器を使用してもよい。また他の分離部材を含む管も適している。
【0058】
本発明に係る収集器を作製する有益な方法は、収集容器を調達する工程、少なくとも一つの内部標準を容器に添加する工程、この少なくとも一つの内部標準を凍結乾燥させる工程、容器を真空にする工程、及び容器を滅菌する工程を含む。この少なくとも一つの内部標準を、溶液状態で容器に分配してもよい。安定剤などの追加の試薬も、このときに容器に添加することができる。収集容器に内部標準を添加した後、所望により、分離部材を容器に添加してもよい。適切な凍結乾燥/真空プロセスの具体例は、以下のとおりである。容器を約−40℃で、約760mmの圧力において、約6〜8時間凍結させる。この容器を、約0.05mmの圧力で約8〜10時間の間、温度を約−40℃から約25℃まで勾配させながら乾燥させる。次いで、約25度の温度と約120mmの圧力で約0.1時間の間、容器を真空にさせる。滅菌方法は、例えば、コバルト−60照射で行うことができる。
【0059】
少なくとも一つの内部標準を含む収集器は、サンプル内に存在する検体の量を定量化するための、例えば本明細書中に列記されている任意の分析技術において有用である。サンプル収集前に収集器内に内部標準を存在させることにより、サンプルを分析するのに必要な取り扱いステップ数又はプロセスステップ数が減少され、それにより、サンプルを損失又は汚染する回数が減少される。例えば、少なくとも一つの内部標準を含有する収集器を、HPLC、GC、又はMSに関する分析により分析される生物学的サンプル(例えば血液)を収集するのに用いることができるであろう。
【0060】
プラスチック又はガラスは、収集器を製造するのによく用いられる。しかしながら、本明細書中の収集器の範囲は、それらの製造に使用される材料により制限されない。収集器の製造に用いられる材料の具体例は、これらに限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、セルロース誘導体、ポリテトラフルオロエチレン及びその他のフッ化ポリマー、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、シリコン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリメタクリレート、PEEK、ポリイミドならびにPTFEテフロン(登録商標)、FEPテフロン(登録商標)、テフゼル(登録商標)、ポリ(フッ化ビニリデン)、PVDF及びパーフルオロアルコキシ樹脂などのフルオロポリマーを含む。また、収集器は、これに限定されないが、シリカガラスを含むガラスで構成されてもよい。例えば、パイレックス(登録商標)(Corning Glass,Corning,New Yorkから入手可能)を収集器の製造に使用してもよい。さらに、セラミック製品ならびに、紙及び強化紙容器などのセルロース製品を、標本収集器の製造に用いてもよい。
【0061】
また、本発明は、蛋白質などの少なくとも一つの検体を保持するか、それと反応するか、又は結合することのできるプロテインチップと組合せて内部標準を使用するプロテオミック分析法も提供する。そのようなプロテインチップの具体例は、特許文献20、特許文献21、特許文献22において見出すことができ、それらの全ては本明細書中に参照により組み込まれる。一実施形態において、チップは、少なくとも一種の検体と結合、保持、又は反応しうるリテンテートクロマトグラフィー表面(retentate chromatographic surface)を有する。プロテインチップを含むリテンテート表面の具体例は、これらに限定されないが、アニオン、カチオン、疎水性相互作用吸着、金属イオン、還元剤、ポリペプチド、核酸、炭水化物、レクチン、染料、炭化水素、ポリマー又はこれらの組合せを含む。一実施形態において、内部標準は、標的の検体と混合されたときに、プロテインチップと常に相互作用することとなる。リテンテート表面と内部標準とを含有するプロテインチップを、これらに限定されないが、MALDI−TOF、SELDI−TOF、MALDI−TOF−MS、SELDI−TOF−MS、SELDI−Q−TOF、MALDI−MS/MS、もしくはそれらの任意の修正又は組合せなどの質量分析法により読み取ることができる。プロテインチップ間で内部標準の量及び濃度を一定に保つことにより、質量分析法間と同様に、チップ間で検体を定量的に比較することができる。
【実施例1】
【0062】
(実施例1−内部標準を有する血漿の調製)
ポリ(アミドアミン)(「PAMAM」)、(第二世代、メチルアミン表面(13.8%w/w)を有する)は、Dentritech、Midland、Michiganから購入できる。血液サンプルに添加するためのデンドリマー作業溶液を調整するため、100μLの1.4%デンドリマーを900μLの50%アセトニトリルに添加した。
【0063】
一般的なプロトコルに従ってBD Vacutainer(登録商標)PPT(商標)チューブ(Becton,Dickinson and Company,Franklin Lakes, New Jerseyから入手可能)で収集された血液から血漿(500μL)を調製し、−80℃で保存した。解凍後、血漿を分割し、WCX−2結合緩衝液(binding buffer)(20mM酢酸アンモニウム及び0.1%TFA、pH6)で、表3に従って希釈した。希釈後、アセトニトリル/脱イオン水(1:1)中の内部標準デンドリマー(1.38%)10μLをこの血漿に添加した。内部標準の最終濃度は、全ての血漿希釈サンプルに対して一定に保った。
【0064】
【表3】

【0065】
使用前に、水で1:10に希釈した血漿
WCX−2チップ(Ciphergen,Biosystems,Inc.,Fremont,カリフォルニア)を、Biomek2000ロボット(Beckman Coulter)上で、メーカープロトコル(manufacturer protocol)に従い、Ciphergenバイオプロセッサー中で調製した。一つのWCX−2チップは8つの連結するスポットを有する。チップ上のスポットを、50μLの50%アセトニトリルで5分間、連続して二回洗浄し、次いで50μLの10mM塩酸で10分間、そして50μLの脱イオン水で5分間洗浄した。洗浄後、血漿サンプルを導入する前に、このチップを二回、50μLのWCX2緩衝液で5分間調節した。
【0066】
調節されたWCX−2チップ上の各スポットに、100μLの調製された血漿サンプルを手動で加えた。振とうさせながら室温で30分間インキュベートした後、このスポットを100μLのWCX−2結合緩衝液で二回洗浄し、続いて100μLの脱イオン水で二回洗浄した。次いで、このチップを乾燥させ、α−シアノヒドロキシ桂皮酸(99%)(CHCA)又はシナピン酸(SPA)の飽和溶液(50%アセトニトリル、0.5%TFA水溶液)0.75μLで二回スポットした。
【0067】
次いで、結合された血漿蛋白質を有するチップを、表4に示す実験条件を用いてSELDI−TOF−MSにより読み取った。
【0068】
【表4】

【0069】
図1に見られるように、マススペクトルにおける血漿タンパク質のイオン電流強度は、血漿サンプルの濃度に正比例していた。2715Da付近を中心とした三重線ピーク(m/Z)はデンドリマーである。このピークは、星型分岐PAMAMデンドリマーG(2.0)のメチル化が不完全であるため、三重線になっている。三重線のデンドリマーピークが全ての5つのスペクトルで現れ、意図したとおり、デンドリマーが常にWCX−2チップ上に固定されて、続いてSELDI−TOF−MS中に検出されることを明らかに示したことに注目せよ。全ての5つのスペクトルにおけるデンドリマーに対するピーク高さの一致により、デンドリマーが内部標準として使用できることを示す。また、単一ピークを生じるデンドリマーを内部標準として使用してもよい。さらに、内部標準は、本明細書内で示すように、任意の数の多重線ピークを有してもよい。
【実施例2】
【0070】
(実施例2−内部標準としたデンドリマーに対するプロテアーゼの影響)
一般的なプロトコルに従ってBD Vacutainer(登録商標)PPT(商標)チューブ(Becton,Dickinson and Company,Franklin Lakes, New Jersey)で収集された血液から血漿(500μL)を調製し、−80℃で保存した。解凍した後、血漿を分割し、WCX−2結合緩衝液(20mM酢酸アンモニウム及び0.1%TFA,pH6)で、表5に従って希釈した。次いで、アセトニトリル/脱イオン水(1:1)中の内部標準デンドリマー10μLを使用した。0.1%トリフルオロ酢酸中のプロテアーゼ溶液(10%)を、血漿及びデンドリマーの各溶液に添加した。表3に従い調製した4つのサンプルを、室温で3時間インキュベートし、次いで、Biomek Coulter2000ロボットを用いてWCX2プロトコルを行った。
【0071】
【表5】

【0072】
調整されたWCX−2チップ上の各スポットに、100μLの血漿又はデンドリマーサンプルを手動で添加した。振とうしながら室温で30分間インキュベートした後、スポットを100μLのWCX−2結合緩衝液で二回洗浄し、その後、100μLの脱イオン水で二回洗浄した。次いで、このチップを乾燥させ、CHCA又はSPAの飽和溶液(50%アセトニトリル、0.5%TFA水溶液)0.75μLで二回スポットした。
【0073】
次いで表面上を血漿蛋白質で処理されたチップを、上記の表4に示した実験条件を用いて、SELDI−TOF−MSにより読み取った。
【0074】
デンドリマー、10%プロテアーゼ含有デンドリマー、血漿、及び10%プロテアーゼ含有血漿のSELDIスペクトルを図2に示す。比較すると、最初の二つのスペクトルは、デンドリマーがプロテアーゼと共に3時間インキュベートした後も変化しないでいたことを示す。一方、血漿を同じ濃度のプロテアーゼと共に同じ時間インキュベートした場合には、著しい分解が起こった。このように、血漿蛋白質はプロテアーゼにより分解されたが、デンドリマーが安定性を保持したので、プロテアーゼの添加により、内部標準としてのデンドリマーの定量的な判断には影響はなかった。
【0075】
前述した本発明の好ましい実施形態の詳細な説明により本発明の原理は例示されたが、開示された特定の実施形態に本発明を制限するものではない。当業者は、本発明の精神から離れることなく、これらの実施形態を多数変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】一定濃度のデンドリマーを内部標準として含む異なる血漿濃度のマススペクトルを表す。
【図2】10%プロテアーゼを添加した血漿サンプルと、10%プロテアーゼを添加したデンドリマーサンプルとのマススペクトルを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の少なくとも一つの検体の濃度を定量化する方法であって、
既知量の少なくとも一つのデンドリマーをサンプル中に添加するステップ、
質量分析を用いて、サンプル中の前記少なくとも一つの検体と前記少なくとも一つのデンドリマーの濃度を定量化するステップ、
a)の前記少なくとも一つのデンドリマーの既知量と、b)の定量化された前記少なくとも一つのデンドリマーの濃度との間の差異を決定するステップ、及び
c)の前記少なくとも一つのデンドリマーの差異を、c)の少なくとも一つの検体の濃度と相関させるステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
b)の前にサンプルから少なくとも一つの検体の抽出物を調製するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルは生物学的サンプルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的サンプルは、細胞培養物、動物組織、又は体液であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的サンプルは、動物細胞、植物細胞、バクテリア細胞、又は菌細胞を含む細胞培養物であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも一つの検体は、蛋白質、ポリペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸、単糖、二糖、多糖、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プロテオグリカン、糖蛋白質、脂質、リポ蛋白質、天然ポリマー、又は可溶性合成ポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記デンドリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)デンドリマー又はポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップb)の前記質量分析は、レーザー脱離/イオン化型分光測定法を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザー脱離/イオン化型分光測定法は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化法(MALDI)、表面増強レーザー脱離/イオン化法(SELDI)、MALDI−飛行時間法(MALDI−TOF)、SELDI−TOF、MALDI−TOF−質量分析(MS)、SELDI−TOF−MS、SELDI−Q−TOF、SELDI−MS/MS、又はそれらの任意の組合せを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記質量分析は、エレクトロスプレーイオン化法を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
デンドリマーと、質量分析に適切な少なくとも一つのマトリックス分子とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項12】
前記組成物は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)デンドリマー又はポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーを含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも一つのマトリックス分子は、シナピン酸(SA)、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、3−ヒドロキシピコリン酸、2’,4’,6’−トリヒドロキシアセトフェノン(THAP)、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸、コハク酸、アントラニック酸、ニコチン酸、サリチルアミド、イソバニリン、3−アミノキノリン、1−シオキノリノール、又はディスラノールを含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
マトリックス分子ではない少なくとも一つの化合物をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも一つの化合物は、蛋白質、ポリペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸、単糖、二糖、多糖、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プロテオグリカン、糖蛋白質、脂質、リポ蛋白質、天然ポリマー、又は可溶性合成ポリマーを含むことを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
固体担体をさらに含み、その固体担体上に前記組成物が配置されることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記固体担体は、質量分析に適切なサンプル基盤であることを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
安定剤、添加剤、又は防腐剤をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
前記安定剤、添加剤、又は防腐剤は、抗凝血剤、凝血促進剤、殺菌剤、抗酸化剤、又はプロテアーゼ阻害剤であることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記安定剤はプロテアーゼ阻害剤であることを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記抗凝血剤は、EDTA、ヘパリン、又はシトラートであることを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
不安定な内部標準をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項23】
前記不安定な内部標準は、熱又はプロテアーゼに弱いことを特徴とする請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
組成物及び標本収集容器を含む装置であって、前記組成物はデンドリマーを含み、前記標本収集容器は部分的に真空にされる内部室を含むことを特徴とする装置。
【請求項25】
前記組成物は不安定な内部標準をさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記不安定な内部標準は熱又はプロテアーゼに弱いことを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記組成物は、安定剤、添加剤又は防腐剤をさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項28】
前記安定剤、添加剤又は防腐剤は、抗凝血剤、凝血促進剤、殺菌剤、抗酸化剤、及びプロテアーゼ阻害剤であることを特徴とする請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記抗凝血剤は、EDTA、ヘパリン、シトラートであることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記デンドリマーはポリ(エチレングリコール)(PEG)デンドリマー又はポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーであることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項31】
マススペクトルを整合させる方法であって、
デンドリマーを含む第一のサンプルから第一のマススペクトルを得るステップ、
デンドリマーを含む第二のサンプルから第二のマススペクトルを得るステップ、及び
第一及び第二のマススペクトルにおけるデンドリマーのm/Z値又は飛行時間を参照することにより第一のスペクトルと第二のスペクトルとを整合させるステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
前記デンドリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)デンドリマー又はポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーであることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップb)の前記質量分析はレーザー脱離/イオン化型分光測定法を含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記レーザー脱離/イオン化型分光測定法は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化法(MALDI)、表面増強レーザー脱離/イオン化法(SELDI)、MALDI−飛行時間法(MALDI−TOF)、SELDI−TOF、MALDI−TOF−質量分析(MS)、SELDI−TOF−MS、SELDI−Q−TOF、SELDI−MS/MS、又はそれらの任意の組合せを含むことを特徴とする請求項33の記載の方法。
【請求項35】
前記質量分析はエレクトロスプレーイオン化法を含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−524844(P2007−524844A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528131(P2006−528131)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/031046
【国際公開番号】WO2005/031304
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】