説明

データを取り出す回路及び方法

データオブジェクトの非連続的格納は、該データオブジェクト(202)の取り出し速度を深刻に阻害する。更に、いくつかが断片化されているような複数のデータオブジェクトが取り出されるとき、すべてのデータオブジェクトを取り出す時間はさらに予測しにくくなる。それゆえ、断片化されていないデータオブジェクトのみを取り出すことが望ましい。ある場合では、必ずしもある特定のデータオブジェクトが取り出されなければならないというわけではないので、これは可能である。そのような場合、同じタイプの似たようなデータオブジェクトを取り出せば十分である。このため、本発明は、中でもデータを取り出すための回路(124)及び方法を提供する。本発明は、特にトリックプレイのためにオーディオビジュアルデータを取り出すことに適している。レンダリングするために選択された第1フレームが断片化されて格納されているとき、断片化されていない第2フレームが選択され、上記第1フレームの代わりに取り出される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、割り当て単位で編成されて記憶装置内に格納されたデータオブジェクトを取り出す方法に関する。本発明は更に、割り当て単位で編成されて記憶装置内に格納されたデータオブジェクトを取り出す回路にも関する。
【0002】
本発明は、更に、割り当て単位で編成されて記憶装置内に格納されたデータオブジェクトを取り出すための回路を有する、オーディオビジュアルデータをレンダリングするための装置にも関する。
【0003】
本発明は、割り当て単位で編成されて記憶装置内に格納されたデータオブジェクトを取り出す方法を実行するように処理ユニットをプログラムするコンピュータプログラムにも関する。
【0004】
本発明は、そのようなコンピュータプログラムを格納する記録担体にも関する。
【0005】
本発明は、更に、割り当て単位で編成されて記憶装置内に格納されたデータオブジェクトを取り出す方法を実行することを可能にされたプログラムされたコンピュータにも関する。
【背景技術】
【0006】
メモリに格納されるデータは、好ましくは連続的に格納される。このようにデータは読み込みユニットにより一つの読込動作において取り出されうる。しかしながら、データファイル及びオーディオビジュアルデータのストリームのようなさらなるデータオブジェクトの格納及びファイルの削除により、データオブジェクト間に比較的小さなギャップが起こる。これは空の空間であるが、通常は完全なデータオブジェクトを格納するには十分な空間ではない。それでも、この空の空間から恩恵を被るためには、データオブジェクトは、断片で格納されなければならない。これは不利である。この理由は、取り出す間読込ユニットは断片から断片へと切り替わらなければならないからである。この切り替わりの間、データを読み込むことはできない。実行可能なコンピュータプログラム及びテキストファイルのようなデータオブジェクトの取り出しにとって、そのようなデータオブジェクトの完全な取り出しの方が通常実際の取り出し速度よりも重要であるので、これは必ずしも問題にはならない。
【0007】
一方、ビデオストリームのようなオーディオビジュアルデータを取り出すとき、適時な供給が重要である。通常ビデオデータは、格納前に圧縮される。MPEG−2のようなもっとも頻繁に使われる圧縮アルゴリズムは、予測圧縮に基づいており、これは、ビデオフレームの少なくともいくつかを伸張するために、複数の(圧縮されていない)他のフレームのデータが必要とされることを意味する。データが間に合って渡されないとき、オーディオビジュアルデータのレンダリングにおいて問題が起こり、ビデオのギクシャク又はスクリーンのブラックアウトさえ起こるかもしれない。映画を見る消費者にとって、これはとても不快なものになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
データオブジェクトの断片化により起こる取り出し時間の増大は、データ取り出し要求をスケジュールする際に考慮されうるが、これはかなり困難である。これは特に、比較的少数のフレームのみが取り出される高速トリックプレイ再生の場合にあてはまる(トリックプレイ再生は、高速及び低速の早送り/巻き戻しと同様に非実時間再生である)。一つのオブジェクトの取り出し時間の大きな増加は、スケジュールにより考慮されていないとき、システムの実時間動作を深刻に妨げうる。
【0009】
この問題は、例えばデータオブジェクトの断片化が良く知られた問題であるハードディスクドライブ上ばかりでなく光学ドライブ上に格納されたビデオデータでも起こる。というのはDVD+RWのような個々のファイルを格納及び削除することができる書き換え可能な光学ドライブが民生電子装置の世界で急速に進歩しているためである。
【0010】
米国特許第5842046号は、トリックプレイにおけるデータ取り出しを容易にするため、別の割り当て単位で断片化されていないIフレームを格納する方法を提案している。しかしながら、Iフレームはサイズが異なるので、いつも空の記憶空間が割り当て単位で残されていることになり、結果として記憶空間の浪費となっている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
それゆえ、データオブジェクトの断片化の、これらのデータオブジェクトのデータ取り出しに対する不都合な影響を減少させる方法を提供することが、本発明の目的である。この目的は、本発明によれば、取り出しのために特定のタイプの複数の既定のデータオブジェクトを選択するステップと、選択された第1データオブジェクトが複数の割り当て単位にまたがって断片化されて格納されているかどうかを判定するステップと、もし前記選択された第1データオブジェクトが複数の割り当て単位にまたがって格納されている場合は、前記選択された第1データオブジェクトの近くに格納された前記特定のタイプの第2データオブジェクトであって、複数の割り当て単位にまたがって断片化されて格納されていないような第2データオブジェクトを選択するステップと、前記選択された第1データオブジェクトの選択を取り消すステップと、前記選択されたデータオブジェクトを取り出すステップとを有する方法により成し遂げられる。
【0012】
すべてのデータオブジェクトがある特定のタイプであるような、選択されたデータオブジェクトのシーケンスが取り出されなければならないとき、ある特定の選択されたデータオブジェクトが取り出されなければならないかが重要ではないような場合が想像され得る。このオブジェクトは、該選択されたデータオブジェクトの近くの前記の特定のタイプの他のデータオブジェクトでもあり得る。これは、例えば、別の問題への解決策を提供する未公開の欧州特許出願第EP−03100973.1号(出願整理番号PHNL030361)によっても提案されている。この出発点から推察すると、選択という観点からは、最初に選択された断片化されたデータオブジェクトが取り出されるか、又は当該シーケンスにおける上記最初に選択されたデータオブジェクトの近くの2番目に選択された断片化されていないデータオブジェクトが取り出されるかは、ほとんど違いはないだろう。しかしながら、データ取り出しという観点からは、大きな違いとなる。というのは、2番目に選択された断片化されていないデータオブジェクトの取り出しは、最初に選択された断片化されたデータオブジェクトを取り出しよりも極めて少ない時間しかかからないからである。それゆえ本発明による方法は大きな利点を提供する。
【0013】
本発明の一実施例において、前記データオブジェクトはシーケンスで格納され、前記第2データオブジェクトは、前記選択された第1データオブジェクトより前の最も近くで選択されたデータオブジェクトであるような選択された第3データオブジェクトと、前記選択された第1データオブジェクトとの間の及びこれらを含むデータオブジェクトのグループから選択される。
【0014】
前記第2データオブジェクトは、前記選択された第1データオブジェクトより前又は後の何れかで選択されることがありうるが、通常の場合、大きな違いはない。しかしながら、選択された第1データオブジェクトよりも後に位置された特定のタイプのデータオブジェクトが、選択された第1データオブジェクトよりも前に位置された特定のタイプのデータオブジェクトよりも、選択された第1データオブジェクトからより多く外れるとき、選択された第1データオブジェクトよりも前の第2データオブジェクトを選択するのが望ましい。このようにして、最も代表的なトリックプレイストリームが、視聴者に提供される。
【0015】
これまでに説明された実施例に基づいたさらなる実施例では、前記第2データオブジェクトは前記選択された第3データオブジェクトとなる。
【0016】
本発明による方法のこの実施例では、取り出しのために必要な時間がさらに低減される。しかしながら、レンダリング及び表示のためのオーディオビジュアルデータのストリームを取り出すために本発明を利用するとき、これには、トリックプレイストリームの表示においていくらかジッタをもたらすという不都合な点がある。一方、トリックプレイ速度が一層高ければこれは問題にならない。更に、割り当て単位のサイズが取り出すデータオブジェクトのサイズよりも大幅に大きいとき、選択されたデータオブジェクトが断片化されている確率はかなり低くなる。
【0017】
本発明による回路は、取り出しのための特定のタイプの複数の既定のデータオブジェクトを選択し、選択された第1データオブジェクトが複数の割り当てユニットにわたって断片化されて格納されているかどうかを判定し、もし選択された第1データオブジェクトが複数の割り当てユニットにわたって断片化されて格納されているならば、前記選択された第1データオブジェクトより前又は後の近くに格納された特定のタイプの第2データオブジェクトであって、複数の割り当てユニットにわって断片化されて格納されていないような第2データオブジェクトを選択し、前記選択された第1データオブジェクトの選択を取り消し、前記選択されたデータオブジェクトを取り出すように構成された処理ユニットを有する。
【0018】
本発明による装置は、オーディオビジュアルデータを格納するメモリ、このメモリからオーディオビジュアルデータを取り出すための請求項9に記載の回路及び取り出されたオーディオビジュアルデータをレンダリングする手段を有する。
【0019】
本発明によるコンピュータプログラムは、処理ユニットを、請求項1に記載の方法を実行するようにプログラムするように構成される。
【0020】
本発明による記録担体は、請求項11に記載のコンピュータプログラムを担持する。
【0021】
本発明によるプログラムされたコンピュータは、請求項1に記載の方法を実行することが可能なようにされる。
【0022】
本発明の実施例は、図により詳細に説明されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明による装置の一実施例としての民生電子装置110、ユーザー制御装置160及びTVセット150を有する民生エンタテイメントシステム100を示す。
【0024】
前記装置110は、オーディオビジュアルデータを格納する記憶装置(好ましくはハードディスクドライブ)122、当該装置を制御するための処理ユニット124、該処理ユニット124をプログラムするためのプログラムデータを格納する本発明による記録担体の一実施例としての読み込み専用メモリ(ROM)126、ハードディスクドライブ122からビデオレンダリングユニット130(同様に、当該装置に含まれる)へ高速にデータを伝送するためのDMAコントローラ128及びユーザーコマンドを受け取るユーザーコマンドコントローラ134を有する。ROM126は、ソリッドステートROM、EEPROM、磁気データ担体、光学データ担体又は他の担体のような様々な方法で実施化されうる。処理ユニット124及びROM126は、本発明による回路の一実施例を形成する。
【0025】
TVセット150は、スクリーン152を有する。TVセットは、第1コネクタ132により民生電子装置110に接続される。
【0026】
ユーザー制御装置160は、民生電子装置110によりオーディオビジュアルデータのストリームの再生の速度及び向きを制御するために、再生ボタン162、巻き戻しボタン164及び早送りボタン166を有する。ユーザー制御装置160は、第2コネクタ136により民生電子装置110に接続されている。該接続は有線又は無線になりうるが、これは本発明の動作とは無関係である。
【0027】
民生電子装置110は、ハードディスクドライブ122に格納されたオーディオビジュアルデータのストリームの再生を意図されている。別の実施例において、これは光学ディスクがありうる。再生は、例えば再生ボタン162を押す等の、ユーザーコマンドにより開始される。これはユーザー制御装置160において制御信号を発生させ、その制御信号は、ユーザーコマンドコントローラ134により受信され処理ユニット124に伝送される。
【0028】
上記制御信号を受け取ると、ROM126内のプログラムによりプログラムされた処理ユニット124は、ハードディスクドライブ122からのオーディオビジュアルデータの取り出しを開始し、取り出されたデータのDMAコントローラ128を介してのビデオレンダリングユニット130への伝送を準備する。ビデオレンダリングユニット130は、この実施例ではMPEG(Motion Pictures Expert Group)2規格により圧縮されたオーディオビジュアルデータを復号する。該ビデオレンダリングユニットの出力は、知られたフォーマット(例えばSECAM又はPAL)によるビデオ信号であり、TVセット150で見ることができる。該ビデオ信号は、第1コネクタ132を介して供給される。
【0029】
図2は、MPEG2規格により圧縮された圧縮ビデオデータのストリーム200を示す。ストリーム200は、3つの異なるタイプの圧縮されたフレームからなる。これらフレームは、いわゆるGroup of Pictures、即ちGOPにグループ化されている。この例の場合、6なるGOPサイズがとられているが、当業者は、ほかのGOPサイズもまた許容されると理解するであろう。
【0030】
「I」フレームはイントラ符号化されており、これは、これらフレームが適切な伸張アルゴリズムと、このフレーム自身からのデータとを用いて伸張されうることを意味する。「B」及び「P」フレームはインター符号化されており、これは、これらフレームを伸張するためには、他の(デコードされた)フレームからのデータも必要とされることを意味する。圧縮されたPフレームのデコードには、直前のIフレーム又はPフレームからのデータが必要とされる。Bフレームの伸張には、先行する及び/又は後続するIフレーム又はPフレームからのデータが必要とされる。
【0031】
当該データの通常の実時間再生の間においてすべての画像を見せることは、前の段落で説明されたすべてのデコードを実時間で実行することができるので、TVセット150(図1)のディスプレイ152(図1)上に滑らかなビデオ映画をレンダリングする。例えば実時間再生中にユーザーが巻き戻しボタン164又は早送りボタン166を押した場合のような、当該ビデオデータの高速再生の場合、全てのフレームを該高速再生と同期してデコードすることは、もはや不可能になる。そのような場合には、ヒトの目及び脳により処理することができるより多くのフレームがレンダリングされるので、これは必要というわけでもない。
【0032】
それゆえ、通常Iフレームのみがレンダリングされる。ストリーム200の場合、これは、高速再生では第1Iフレーム202、第2Iフレーム204、第3Iフレーム206及び第4Iフレーム208がトリックプレイ220へと結合されることを意味するだろう。ストリーム200と同じフレームレートでのトリックプレイストリーム220の再生は、結果として6倍の速度の増加となる。すべてのフレームが3倍長く表示されると、これは2倍の速度増加という結果になるだろう。
【0033】
例えば実時間の12倍等の一層高速なレンダリング速度の場合、いくつかのIフレームのレンダリングはスキップすることができ、選択された数のIフレームのみがレンダリングされうる。これが、ストリーム300を示す図3に図示されている。ストリーム300は、MPEG2規格を用いて圧縮されている。単純化のためにIフレームのみが示され、GOPサイズは6である(1つのIフレームに対して、各Iフレーム後の1つのPフレームと4つのBフレームとが伴う)。GOPサイズが6であり、それぞれのGOPが1つのIフレームを持つので、図3において矢印で示された2つ置きのIフレームがレンダリングされなければならない。この場合において、各フレームは通常の再生速度間と同じ長さで示され、再生の速度上昇係数は12となる。
【0034】
ハードディスクドライブ122のようなハードディスクドライブは、割り当て単位で編成される。ビデオ記憶のような民生電子アプリケーションでは、割り当て単位は比較的大きい。割り当て単位がセクターと同じではないと理解することが重要である。ビデオ記憶に対しては、それらはIフレームのサイズよりも少なくとも大幅に(少なくとも10倍)大きい。にもかかわらず、1つのIフレームのデータは、2つの連続しない割り当て単位にわたって断片化されるように格納されうる。これは、そのようなIフレームの取り出しには、断片化されていないIフレームの取り出しに必要な時間の2倍の時間がかかることを意味する。
【0035】
実際に追加される時間は、2つの割り当て単位の間のシーク距離と回転遅れとに依存する。この理由は、1つのディスク要求の間では、少なくとも1つの割り当て単位の1つの連続するブロックのみのデータが取り出されうるからである。2つの連続していない割り当て単位にわたって分散されたIフレームのような、断片化されたデータオブジェクトが、(1つの)ファイル要求の命令により取り出されなければならないとき、2つのディスク要求が発せられ、実行されなければならない。ファイル要求からディスク要求への変換は、ホストソフトウェアスタックの一部であるファイルシステムにより実行される。
【0036】
バー350は、ハードディスクドライブ122の一部を模式的にあらわしたものであり、第1割り当て単位352、第2割り当て単位354、第3割り当て単位356及び第4割り当て単位358に分けられている。1つの割り当て単位のサイズは1つのIフレームのサイズよりも大きいが、1つのIフレームが2つの割り当て単位に断片化されて格納されることも依然として可能性である。更に、これら割り当て単位は連続して描かれているが、斯かる割り当て単位はディスク上で必ずしも連続して位置されていなければならないわけではない。
【0037】
割り当て単位がディスク上で連続して位置していないとき、1つのIフレームの取り出しのために、2つの割り当て単位からのデータが取り出されなければならないという問題が起きる。これは、1つのファイル要求に対して、2つのディスク要求が実行されなければならない(1つのディスク要求により、多くて1つの割り当て単位のデータが取り出されうる)ということを意味している。これは、断片化されたIフレームの取り出し時間を、断片化されていないIフレームのデータ取り出しと比較して増大させる。
【0038】
オーディオビジュアルデータの再生では、データがハードディスクドライブ122(図1)から時間内に取り出され、ビデオレンダリングユニット130(図1)により時間内にレンダリングされることが重要である。更に、ハードディスクドライブが2つ以上のアプリケーションにより使われるとき、ディスク要求の数を限定してデータは効率よく取り出されるべきである。
【0039】
例えば当該ビデオストリームの実時間再生と比較して10なる速度上昇係数より高いような、本当に高速でのビデオストリームのトリックプレイ(より速い又はより遅いの何れかの非実時間速度でのビデオストリームのレンダリング)の場合、Iフレームが厳密に周期的に選ばれるかどうかは重要ではない。図3に図示された例の場合、これは、レンダリングのために4番目のIフレームの代わりに3番目のIフレームが選ばれるか又は5番目のIフレームが選ばれるかどうか、及びレンダリングのために8番目のIフレームの代わりに7番目のIフレームが選ばれるか又は9番目のIフレームが選ばれるかということに違いはほとんどないだろうということを意味している。
【0040】
上記の理由のため、本発明による方法の一実施例を用いれば、ストリーム300の高速再生は、図4に示されたフローチャート400により描写された方法を用いて、第1、第5、第8、第12番目のIフレームが取り出されレンダリングされることになるであろう。レンダリングのために4番目のIフレームの代わりに5番目のIフレームを取り出すことにより、必要とされるディスク要求が1つ少なくなり、ストリーム300の高速再生のためのデータの取り出しに必要とされる時間も少なくなる。
【0041】
上述した本発明による方法の実施例を、フローチャート400により一層詳細に説明する。フローチャート400は、トリックプレイコマンドを受ける出発点402から開始される。次に404の処理において、取り出し及びレンダリングのために第1の複数のフレームが選択される。どのフレームが選択されるかは、主にユーザーにより選択されたトリックプレイの速度に依存する。トリックプレイの速度が速いときは、トリックプレイの速度が遅いときよりも、互いからは長い距離で、少ないフレームが選択される。図3に図示された例では、4つ置きのフレームが選択される。
− 次に、判定406において、上記の選択された第1フレームの何れかが断片化されて格納されているか、即ち複数の連続しない割り当て単位上に分散されているかどうかを調べる。これは様々な方法で実行されうる。
通常、ファイルシステムは、ファイルデータが格納されるディスク位置のリストを保持している。従って、取り出されるべきファイルの断片のような如何なるデータオブジェクトに対しても、(例えば、バイトでのスタートオフセット及びバイトの長さで)位置が見つかりうる。データオブジェクトに対するすべてのディスク位置が連続的ではないとき、このデータオブジェクトは断片化されて格納される。このように、あるデータオブジェクトが断片化されているかどうかを判明させるのは些細なことである。
ビデオアプリケーションは、Iフレームのようなビデオセグメント及びそれらの当該ファイル(又はビデオストリーム)内での位置を記述したリストを保持しており、例えばCPI(Characteristic Point of Information)ファイルは、各Iフレームに対してバイト単位のスタートオフセット及びバイト単位の長さを持っている。それゆえ、所与のIフレームに対して、取り出されるべきファイルの断片を見つけるのはきわめて単純である。上記の2つの方法を組み合わせて、Iフレームの取り出しが断片化されているか否かを直接得る。
− Iフレームのようなデータオブジェクトは、割り当て単位のリンクされたリストに格納される。当該データオブジェクトが割り当てられる2つの順次の割り当て単位は、連続しているか又は連続していない。データが連続せずに格納されるポイント(箇所)は、ファイルのスタートからの距離として(ビット又はメガビットで)表現されてリストに保持される。その上、Iフレームの各々のスタート及び長さもまたリストに格納され、該リストにおいてもスタートはファイルのスタートからの距離として(ビット及びメガビットで)表され、同様に長さもビット又はメガビットで表されうる。両方のリストを組み合わせてれば両方のリストを並行して調べる(走査する)ことにより、Iフレームのどれが連続して格納されているかどうかを容易に判定することができる。
p_1、p_2、p_3、...、p_nが、データが連続せずに格納されているファイル内の位置を指すとする。(s_1、l_1)、(s_2、l_2)、(s_3、l_3)、...、(s_m、l_m)が、順次のIフレームのスタート位置及び長さのリストであるとする。この場合、1.s_j<p_1<s_j+l_j又は2.s_j+l_j<p_1<s_(j+l)となるjが見つかるまで2番目のリストを調べることができる。
最初のケースでは、当該ファイル内の最初の連続していない部分がIフレーム、すなわち正確にはj番目のIフレームを断片化することがわかる。2番目のケースでは、それはIフレームを断片化しない。この手順は、すべての連続していない部分を調べるために続けられうる。
【0042】
少なくとも1つの選択されたIフレームが断片化されているとき、処理ステップ412において、断片化された第1フレームの近くで、第2Iフレームが選択される。これは、断片化されたIフレームの直前又は直後のIフレームとすることができるが、第1のIフレームのグループからの上記断片化されたIフレームより前又は後の第2Iフレームとすることもできる。これは、「近く」という言葉が、時間的に近く(再生時間の意味で)として又は論理的に近く(ビット単位での距離という意味で)として定義されていることを意味する。これは、ディスクプラッタ上で空間的に近いということは必ずしも意味しているわけではない。
【0043】
有利な実施例においては、断片化されたIフレームの直前又は直後の選択された第1Iフレームが選択される。言い換えると、最後に表示されたIフレームが再び表示され、断片化されたIフレームの表示の代わりになる。この実施例の利点は、2のディスク要求さえ節約されることである。さらなる実施例では、断片化されたIフレームの直後の選択されたIフレームが表示され、該断片化されたIフレームの表示を置換する。
【0044】
ステップ412で第2Iフレームが選択された後、ステップ414において、断片化された第1Iフレームの選択は取り消される。次に、処理はステップ408へと継続し、該ステップにおいて上記の選択された第1及び第2Iフレームがレンダリングのために取り出される。判定406において、選択されたフレームがどれも断片化されて格納されてないことが検出されるとき、当該処理は直接ステップ408に続く。最後に、最終ステップ410において、上記の取り出されたIフレームはTVセット150(図1)のスクリーン152(図1)に表示するためにレンダリングされる。
【0045】
本発明の実施例は、すべてMPEG−2規格により圧縮されたビデオストリームが格納されているハードディスクを用いて説明されているが、本発明は他の状況にもまた応用することができる。これの例としては、MPEG−4及びDVのようなほかのビデオ記憶規格が挙げられる。本発明の範囲から逸脱することなく様々な変形例が可能である。前記ハードディスクドライブは、光学若しくは光磁気ディスク、又はソリッドステートメモリによってさえ置き換えられうる。他の圧縮アルゴリズムもまた利用されうる。更に、取り出されるべきデータは、ビデオデータ以外でもありうる。これの例としては、高速トリックプレイのためにスーパー・オーディオ・コンパクト・ディスクからオーディオバーストが取り出されるべき場合が挙げられる。
【0046】
本発明の実施例は、トリックプレイの間にIフレームのみを取り出すことにより説明されている。しかしながら、先行するIフレーム又はPフレームをデコードしておけば(Pフレームをデコードするには、このフレームが必要であるので)、Pフレームも同様に取り出すことができる。理論的に、これは、Bフレームもまた取り出されうることを意味しているが、高速トリックプレイモードでは、おそらく過度に大きな処理能力が必要とされると共に、過度に多くの他のフレームが取り出され、デコードされなければならないので、この実施例を非効率にさせてしまう。従って、本発明によれば「特定のタイプ」のフレームが取り出されるべきであるが、本発明を高速トリックプレイのためにMPEG2でエンコードされたデータの取り出しに適用する場合は、該「特定のタイプ」はIフレームに限定されるものではない。
【0047】
また、本発明は、非オーディオビジュアルデータの選択された部分を取り出すときにも利用されうる。もっとも、このような場合には実時間要件は通常より緩やかになる。例えば平均値、中央値又は標準偏差を決定するために測定値のシーケンスから選択がなされ、選択された部分から選択された部分への変動が高すぎないとき、本発明は同様に利用されうる。
【0048】
更に、単一の処理ユニットにより実行されるように説明されている様々なタスクは、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明のほかの実施例において複数のモジュールにより同様に実行されることがありうる。一方、複数のモジュールによって実行されると説明されているタスクもまた、1つの処理モジュールにおいて同様に一緒にされうる。
【0049】
本発明は以下のように要約されうる。データオブジェクトの非連続的格納は、前記データオブジェクトの取り出し速度を深刻に阻害する。更に、いくつかが断片化されている複数のデータオブジェクトが取り出されるとき、すべてのデータオブジェクトの取り出し時間は予測しにくい。それゆえ、断片化されていないデータオブジェクトのみを取り出すのが望ましい。ある特定のデータオブジェクトが必ずしも取り出されなければならないわけではないので、ある場合ではこれは可能である。そのような場合、同じタイプの似たようなデータオブジェクトの取り出しで十分である。このため、本発明は、中でもデータを取り出すための方法及び回路を提供する。本発明は、トリックプレイのためにオーディオビジュアルデータを取り出すのに特にふさわしい。レンダリングのために選択される第1フレームが断片化されて格納されているとき、第1フレームの代わりに断片化されていない第2フレームが選択され、取り出される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明による回路の一実施例を有する装置を示す。
【図2】図2は、選択されたフレームのストリーム及びオーディオビジュアルデータのストリームを示す。
【図3】図3は、割り当て単位に分割された記憶媒体の概略図及びオーディオビジュアルデータの他のストリームを示す。
【図4】図4は、本発明による方法の一実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
割り当て単位で編成されて記憶装置に格納されたデータオブジェクトを取り出す方法であって、
a)取り出すために特定のタイプの複数の既定のデータオブジェクトを選択するステップと、
b)選択された第1データオブジェクトが複数の割り当て単位にわたって断片化されて格納されているかどうかを判定するステップと、
c)もしこの選択された第1データオブジェクトが複数の割り当て単位にわたって断片化されて格納されている場合に、
i)前記選択された第1データオブジェクトの近くに格納されている前記特定のタイプの第2データオブジェクトであって、複数の割り当て単位にわたって断片化されて格納されていないような第2データオブジェクトを選択し、
ii)前記選択された第1データオブジェクトの選択を取り消す、
ようなステップと、
d)前記選択されたデータオブジェクトを取り出すステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記データオブジェクトがシーケンスで格納され、前記第2データオブジェクトが、
a)前記選択された第1データオブジェクトより前の、前記シーケンスにおける最も近くの選択されたデータオブジェクトであるような選択された第3データオブジェクトと、
b)前記選択された第1データオブジェクトと、
の間の及びこれらを含むデータオブジェクトのグループから選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2データオブジェクトが、前記選択された第3データオブジェクトである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記データオブジェクトがシーケンスで格納され、前記第2データオブジェクトが、
a)前記選択された第1データオブジェクトよりも後の、前記シーケンスにおける最も近くの選択されたデータオブジェクトであるような選択された第4データオブジェクトと、
b)前記選択された第1データオブジェクトと、
の間の及びこれらを含むデータオブジェクトのグループから選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2データオブジェクトが前記選択された第4データオブジェクトである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記データオブジェクトがビデオストリームに含まれるフレームである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ストリームがコード化されていると共に、イントラコード化及びインターコード化されたフレームを有し、前記特定のタイプのデータオブジェクトがイントラコード化されたフレームである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記記憶装置がディスク型媒体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
割り当て単位で編成されて記憶装置に格納されたデータオブジェクトを取り出す回路であって、該回路が、
a)取り出すために特定のタイプの複数の既定のデータオブジェクトを選択し、
b)選択された第1データオブジェクトが、複数の割り当て単位にわたって断片化されて格納されているかどうかを判定し、
c)前記選択された第1データオブジェクトが、複数の割り当て単位にわたって断片化されて格納されている場合、
i)前記選択された第1データオブジェクトより前又は後で近くに格納された前記特定のタイプの第2データオブジェクトであって、複数の割り当て単位にわたって断片化されて格納されてないような第2データオブジェクトを選択し、
ii)前記選択された第1データオブジェクトの選択を取り消し、
d)前記選択されたデータオブジェクトを取り出す、
ように構成された処理ユニット(124)を有する回路。
【請求項10】
オーディオビジュアルデータを格納するためのメモリ、このメモリからオーディオビジュアルデータを取り出すための請求項9に記載の回路及びこの取り出されたオーディオビジュアルデータをレンダリングするための手段を有する、オーディオビジュアルデータをレンダリングする装置。
【請求項11】
請求項1に記載の方法を実行するように、処理ユニットをプログラムするコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムを担持する記録担体。
【請求項13】
請求項1に記載の方法を実行することを可能にされたプログラムされたコンピュータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−515739(P2007−515739A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542079(P2006−542079)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052547
【国際公開番号】WO2005/055600
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】