説明

データストリーム信号の評価用RFIDリーダ及び評価方法

無線識別タグリーダ(1)によって、データストリーム信号(DS)をデータ及び/または衝突に関して評価する方法が、データストリーム信号(DS)を少なくとも1つのしきい値レベル、特にデータビットレベル及び/または衝突レベルと比較するステップと、比較の結果を評価するステップとを具え、上記しきい値レベル及びその適応速度(α(n))を共に、データストリーム信号(DS)の経過及び/または上記しきい値レベルの経過に依存して適応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、無線識別タグ(無線ICタグ)リーダによってデータストリーム信号をデータ及び/または衝突に関して評価する方法に関するものであり、この方法は、データストリーム信号を少なくとも1つのしきい値レベル、特にデータビットレベル及び/または衝突レベルと比較するステップ、及び比較の結果を評価するステップを具えている。
【0002】
本発明はさらに、データストリーム信号を少なくとも1つのしきい値レベル、特にデータビットレベル及び/または衝突レベルと比較し、比較の結果を評価することによって、データストリーム信号をデータ及び/または衝突に関して評価するように構成された無線識別タグリーダに関するものである。
【0003】
本発明はさらに、プログラマブルな無線識別タグリーダのメモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品に関するものであり、このコンピュータプログラム製品は、上記無線識別タグリーダ上で実行した際に、最初の段落に記載のステップを実行するためのソフトウェアコード部分を具えている。
【0004】
(発明の背景)
既知の無線識別タグ(RFID:Radio Frequency Identification)システムでは、固定しきい値レベルを用いて、RFIDリーダによって受信したデータストリーム信号中のデータ及び衝突を検出している。この関係では、「固定しきい値レベル」とは、このしきい値レベルが事前に設定されるか、あるいは入力ノイズ信号の所定倍数として選択されるかのいずれかであることを意味する。
【0005】
しかし、これらの既知のRFIDシステムは、信号レベルが変動する場合に、データ及び衝突の検出に用いるしきい値レベルを適応させることができず、このことは検出エラーを生じさせ得る、という欠点を示している。変動する信号レベルは例えば、RFIDリーダ及びRFIDタグのそれぞれのアンテナ間の信号ビートまたは結合の変動から生じ得る。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5300922号明細書
【0007】
米国特許第5300922号明細書より、電子品目監視システムと共に用いる周期パルス弁別システムが知られ、このシステムは、共振及び妨害キャリア(搬送波)並びにランダムノイズによって生じる周期パルスを区別しつつ有効なタグパルスを検出することができる。パルス信号の周期性を判別し、連続して検出したパルス間の振幅差に応答する回路が、適応しきい値及びサンプリング・ウィンドウ(標本化窓)を制御して、不適正な周期性及び不適切なエンベロープ上昇時間を有する信号を区別する。この特許文献は全般的に、周期信号及びノイズの適応検出に関する題目を説明しているが、適応しきい値レベルの使用によって、複数のRFIDタグの信号間でデータストリーム信号中のデータ及び衝突を検出する処理または手段は開示していない。
【0008】
(発明の目的及び概要)
本発明の目的は、冒頭段落に規定する方法及び第2段落に規定する装置において、上述した欠点を回避した方法及び装置を提供することにある。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による方法によっていくつかの特徴が提供され、本発明による方法は以下に規定するように特徴付けることができる:
【0010】
無線識別タグリーダによって、データストリーム信号をデータ及び/または衝突に関して評価する方法は、このデータストリーム信号を少なくとも1つのしきい値レベル、特にデータビットレベル及び/または衝突レベルと比較するステップと、比較の結果を評価するステップとを具え、上記しきい値レベル及びその適応速度を共に、データストリーム信号の経過及び/または上記しきい値レベルの経過に依存して適応させる。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によるRFIDリーダによって提供される特徴として、本発明によるRFIDリーダは、本発明による方法の各ステップを実行する。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によるコンピュータプログラム製品によって提供される特徴として、本発明によるコンピュータプログラム製品はプログラマブルRFIDリーダのメモリに直接ロード可能であり、このコンピュータプログラム製品は、RFIDリーダ上で実行した際に、本発明による方法の各ステップを実行するためのソフトウェアコード部分を具えている。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によるRFIDリーダは数値演算ユニット(演算論理装置)及びメモリを具えて、上の段落に記載のコンピュータプログラム製品の処理を実行する。
【0014】
本発明による特徴は、RFIDリーダのデータストリーム信号中のデータ及び衝突の検出率及び検出速度を大幅に改善する。本発明は、信号レベルが時間と共に変化し得る環境内及び/または条件下で動作するRFIDシステムにとって特に有利である。こうした環境。条件は、アンテナの離調(同調ずれ)、ノイズ、あるいはRFIDリーダとRFIDタグとの間の磁気結合の変化によるものである。
【0015】
請求項2に記載の方策は、適切に設定された基本適応速度により、高速なしきい値レベルの初期適応を達成することができる、という利点を提供する。この基本適応速度は時間と共に変化させることができ、従って学習モードを可能にする。このことは学習曲線を用いて行うことができる。
【0016】
請求項3または請求項4に記載の方策はそれぞれ、データストリーム信号のサンプルが高い分散を有する場合に、上記しきい値レベルをより高速に適応させることができ、あるいはこの分散が高過ぎる場合に、しきい値レベルを「凍結」させることができる、という利点を提供する。
請求項5に記載の方策は、ビットレベルの衝突または異常値への適応が防止される、という利点を有する。さらに、しきい値レベルのステップへの迅速な適応を達成することができる。
【0017】
請求項6に記載の方策は、しきい値レベルの適応が選択的に開始または中止される、という利点を提供する。例えば、”1”のビットレベルは”0”のビットレベルに適応しようとすべきでない。さらに、データストリーム信号の実際のサンプル値からしきい値レベルまでの距離が大き過ぎる際に、適応を防止することができる。
【0018】
請求項7に記載の方策は、信号衝突の場合に信号レベルの増加を生じさせる妨害に対処することができる、という利点を提供する。
【0019】
請求項8に記載の方策は、信号衝突の場合に、データを復旧させることができるか否かの判定を迅速に行うことができる、という利点を提供する。
【0020】
さらに、本発明の方法の特徴はRFIDリーダにおいて直接実現することができる。
【0021】
本発明の上述した態様及び他の態様は、以下に好適な実施例を参照して説明し、これらの好適な実施例より明らかになる。
【0022】
以下、本発明を好適な実施例を参照しながらより詳細に説明する。しかし、本発明はこの好適な実施例に限定されない。
【0023】
(実施例の説明)
図1に、RFIDリーダ1及び複数のRFIDタグ2a、2bを具えたRFID(Radio Frequency Identification:無線識別タグ、無線ICタグ)システムの概略ブロック回路図を示し、明瞭にするためにRFIDタグ2a及び2bのみを示す。RFIDリーダ1は、変調した電磁信号を介する非接触の方法で2つのRFIDタグ2a及び2bと通信し、RFIDタグ2a、2bはRFIDリーダ1の送信及び受信範囲内にあるものとする。RFIDリーダ1は、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラのような制御手段3を具え、制御手段3はデータバス経由でプログラム記憶手段4と通信する。プログラム記憶手段4は、制御手段3の基本動作用のオペレーティングシステムOS、及び制御手段3によって処理されるアプリケーションプログラムコードSWを記憶するように構成されている。プログラム記憶手段4は、PROM、EPROM等のような不揮発性メモリとして構成することができ、本実施例の場合はROMを利用する。プログラム記憶手段4はユーザ定義可能なASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向けIC)、PAL(Programmable Array Logic:プログラマブルアレイ論理回路)等として構成することもできる。さらに、制御手段3及びプログラム記憶手段4は単一チップ内に集積することができる。なお、アプリケーションプログラムコードSWとオペレーティングシステムOSとは統合することができる。制御手段3はさらに、ランダムアクセスメモリ5と通信する。制御手段3は、プログラムコードSWを処理する際に、入力/出力手段8と協働し、この協働は例えば、コンピュータへのリンクインタフェースとして構成することができる。
【0024】
RFIDリーダ1はさらに、電磁信号SSをRFIDタグ2a及び2bに送信するためのアンテナ7を具えている。これらの電磁信号SSは、データをRFIDタグ2a及び2bに送信するため、及びRFIDタグ2a及び2bが受動タグとして構成されている場合に、これらのタグにエネルギー供給するための両方に使用することができる。RFIDタグ2a及び2bはRFIDリーダに応答信号RS1、RS2で応答する。RFIDリーダ1とRFIDタグ2a、2bとの間のデータ交換は、標準的なデータ伝送プロトコル及び標準的な変調法で達成することができる。例えば、RFIDリーダ1からRFIDタグ2a、2bに送信される電磁信号SSは、国際規格ISO 15693によるパルス位置変調信号であるが、他の伝送方法も考えられる。RFIDタグ2a、2bからRFIDリーダへの応答信号RS1、RS2は例えば負荷変調信号であり、電磁信号SSに含まれるキャリア(搬送波)信号及びサブキャリア(副搬送波)信号を、RFIDタグ2a、2bのアンテナに接続された負荷インピーダンスを切り替えることによって変調し、これにより、変化するエネルギーをこれらのキャリア信号またはサブキャリア信号から引き出す。RFIDタグにおける負荷インピーダンスを切り替えることは、RFIDリーダ1のアンテナ7のインピーダンスの変化を生じさせ、従って、RFIDリーダ1のアンテナ7における電圧振幅の変動を生じさせ、この電圧振幅の変動が入力信号ISを表現する。入力信号IS中に含まれるデータの復元のために、入力信号ISを整流または復調し、それぞれがデータストリーム信号DSを生じさせる。RFIDリーダ1は、データストリーム信号DSを、規定したビットレベルと比較することによって、データストリーム信号DS中に符号化されたデータを抽出する。抽出におけるエラーを低減するために、データ衝突レベルを追加的に規定して比較に使用し、このことは以下で詳細に説明する。
【0025】
図2に、RFIDタグ2a、2bの好適な実施例の概略ブロック回路図を示す。なお、RFIDタグ2a、2bの構成は本発明の一部ではなく、本発明の総合的な理解のために説明するに過ぎない。各RFIDタグ2a、2bは受動タグとして構成され、アンテナ10、アンテナ10に接続されたアナログ無線インタフェース11、アナログ無線インタフェース11に接続されたディジタル制御ユニット12、及びディジタル制御ユニット12に接続されたメモリ13を具えている。メモリ13はEEPROMのような不揮発性メモリであり、このため、RFIDリーダ1との通信中にメモリ13に書き込まれたデータは、RFIDタグ2a、2bがスイッチオフされた際にも記憶されたままであり、RFIDタグ2a、2bは例えば、RFIDリーダ1の送信範囲を離れ、従ってもはやRFIDリーダ1によってエネルギー供給されないことによりスイッチオフされる。メモリ13は、ディジタル制御ユニット12を動作させるためのプログラムコード、及び一意的な識別番号も含むことができる。アンテナ10はRFIDリーダ1からの電磁信号SSを受信し、これらの信号をアナログ無線インタフェース11に渡す。一般に、アナログ無線インタフェース11は、整流器RECT及び電圧調整器VREGをキャパシタのような総合エネルギー蓄積素子と共に具えて、受信した電磁信号SSから、ディジタル制御ユニット12及びメモリ13に必要な動作電圧VDDを導出する。さらに、アナログ無線インタフェース11は復調器DEMODを具えて、電磁信号SSからデータDINを抽出し、これらのデータをディジタル制御ユニット12に渡す。ディジタル制御ユニット12は受信したデータDINを処理し、出力データDOUTを生成し、これらのデータをアナログ無線インタフェース11に渡すことによってRFIDリーダ1に応答することができる。アナログ無線インタフェース11は、出力データDOUTを変調し、変調信号を応答信号RS1、RS2としてアンテナ10経由で送信する変調器MODを具えている。
【0026】
RFIDリーダ1とRFIDタグ2a、2bとの間の良好な通信のために、これらの装置間で頻繁に同期を実行する必要がある。さらに、頻繁な時間間隔において、RFIDリーダは、すべてのRFIDタグに、当該タグの識別番号を返送することによって当該タグの存在を確認応答することを要求する同報所在確認コマンドを送出することによって、その受信範囲内に存在するRFIDタグを探索する。この所在確認処理は、2つ以上のRFIDタグが同時に応答した際に、RFIDリーダ1のアンテナ7において信号衝突を生じさせ得る。このことを以下に図3及び4を参照しながら説明する。
【0027】
図3に示す線図は、その上2本の線に、それぞれRFIDタグ2a及び2bによって送信される応答信号RS1、RS2を示す。応答信号RS1、RS2はそれぞれ、マンチェスター符号化におけるビットストリーム”1−1”(RS1)及び”1−0”(RS2)を含む。マンチェスター符号化はデータ通信線符号化の一形態であり、データの各ビットを少なくとも1つの遷移によって表す。各ビットは所定期間にわたって伝送される。応答信号RS1、RS2の重畳は、図の一番下の線に示す入力信号ISをRFIDリーダ1のアンテナに生じさせ、この入力信号ISはデータストリーム信号DSに復調される。入力信号ISまたはデータストリーム信号DSのそれぞれに関しては、信号振幅は信号RS1、RS2の信号振幅の約2倍に増加しているが、第1ビットは遷移を含んだままであることがわかる。しかし、データストリーム信号DSを適切に設定されたビットレベルと比較すると、RFIDリーダ1はまだ、正しいビット値”1”を正しく復元し、これらのビット値を応答信号RS1、RS2に割り当てることができる。これとは対照的に、信号RS1、RD2の第2ビットが重畳されて入力信号IS及び復調されたデータストリーム信号DSの信号形態となり、それぞれに遷移がなく、このことはマンチェスター符号化に違反する。この遷移の欠如は、RFIDリーダがデータビットを復元することができないので、いわゆる「強い」衝突を構成する。
【0028】
図4の線図は、RFIDリーダ1が受信したRFIDタグ2a、2bからの応答信号RS1、RS2を示す。応答信号RS1、RS2は、(例えばRFIDリーダからの距離が異なることにより)異なる振幅でRFIDリーダに現われ、図の一番下の線に示す入力信号IS及び復調されたデータストリーム信号DSのそれぞれを生じさせることがわかる。RFIDリーダ1のアンテナ7における応答信号RS1、RS2の重畳はデータストリーム信号DS中に信号衝突を生じさせるが、この場合には、衝突は「弱い」ものに過ぎない、というのは、データストリーム信号DSは、これを適切に設定したビットレベルと比較するものとすれば、データの正しい復元(RS1については”1”、RS2については”0”)を可能にする信号遷移を示したままであるからである。
【0029】
データ検出率及び速度を改善してエラーレート(誤り率)を低減するために、本発明は、データストリーム信号DSと比較するための適応しきい値レベルを用いることを提案する。こうした適応しきい値レベルは、しきい値レベルを表す値が時間と共に変化する際に常に有用である。このことはアンテナの離調、ノイズ、あるいは磁気結合の変化(例えば、移動する近接型集積回路(IC)カード(VICC:Vicinity Integrated Circuit Card))によるものである。最良の結果を達成するために、本発明はさらに、しきい値レベルを適応的な適応速度で適応させることを提案し、これについては以下で説明する。
【0030】
本発明の一実施例では、しきい値レベルの適応は指数平滑化に基づく。その適応速度α(α,αvar:0...1∈R)は、分散(Lvar)、新たなサンプルからのしきい値レベルに対する相対距離
【数1】

、外部値(α0)、及びオン/オフ変数(∈{0,1})の関数である。項thisは、データストリーム信号DSの実際のサンプルx(n)を表す。係数Fは各部分の重みを制御する。
【0031】
この分散は次式によって推定される。これらの式は基本的に、適応レベル自体についての式と同じである。
【数2】

【数3】

【0032】
最大分散Lvar,maxは、適正に設定されていれば、正のFΔ,varについての発散効果(より大きな分散→より速いレベル適応→次のサンプルに対するより大きい設定誤り→より大きい分散...)を防止する。
【0033】
主なレベルは次式のように計算される:
【数4】

【数5】

【0034】
適応速度は種々のパラメータによって制御される。次の表はこれらのパラメータを、短い説明付きで挙げたものである。
【0035】
【表1】

【0036】
次に、本発明の応用の一例を説明する。
(例1)
RFIDリーダがRFIDタグから受信した入力信号中のビット”1”とビット”0”とを区別するために、ビット”1”用のビットしきい値レベル(L”1”で表す)及びビット”0”用のビットしきい値レベル(L”0”で表す)を定義する。さらに、次式のように定義する:
【数6】

【数7】

【数8】

【0037】
上記しきい値レベルは例えば、図5中にサンプルxに対して示す。このビット判定は次式のように定義される:
【数9】

【0038】
(例2)
データストリーム信号DSの評価を、ビット”1”と”0”とを区別することができるだけでなく、衝突を見つけることができる方法に強化するために、2つの衝突レベルLcoll,”1”(n)及びLcoll,”0”(n)、即ちビットレベル毎に1つの衝突レベルを次式により定義する:
coll,”1”(n)=L”1”(n)−Lvar,”1”(n)・Fcoll,”1” (式9)
coll,”0”(n)=L”0”(n)−Lvar,”0”(n)・Fcoll,”0” (式10)
【0039】
上記しきい値レベルは、例えば図6中にサンプルxに対して示す。衝突の発生は次式により判定する:
【数10】

【0040】
(例3)
なお、衝突の場合には、妨害がレベルの低下の代わりにレベルの増加を生じさせる。この問題に対処するために、2つの追加的な衝突しきい値レベルを導入しなければならず、結果的に次の4つの、上限(u)及び下限(l)の衝突しきい値レベルになる:
coll,”1”,u(n)=L”1”(n)−Lvar,”1”(n)・Fcoll,”1” (式12)
coll,”1”,l(n)=L”1”(n)−Lvar,”1”(n)・Fcoll,”1” (式13)
coll,”0”,u(n)=L”0”(n)−Lvar,”0”(n)・Fcoll,”0” (式14)
coll,”0”,l(n)=L”0”(n)−Lvar,”0”(n)・Fcoll,”0” (式15)
【0041】
上記しきい値レベルは、例えば図7中にサンプルxに対して示す。衝突の発生は次式により判定する:
【数11】

【0042】
(例4)
次式のように、ビットレベル毎に異なる2つのしきい値レベルを用いることは、システムが「弱い(weak)」衝突を「強い(strong)」衝突から区別することを可能にする
coll,”1”,strong(n)=L”1”(n)−Lvar,”1”(n)・Fcoll,”1”,strong (強い衝突)(式17)
coll,”1”,weak(n)=L”1”(n)−Lvar,”1”(n)・Fcoll,”1”,weak (弱い衝突)(式18)
coll,”0”,strong(n)=L”0”(n)−Lvar,”0”(n)・Fcoll,”0”,strong (強い衝突)(式19)
coll,”0”,weak(n)=L”0”(n)−Lvar,”0”(n)・Fcoll,”0”,weak (弱い衝突)(式20)
【0043】
上記しきい値レベルは、例えば図8中にサンプルxに対して示す。強い衝突及び弱い衝突の発生は次式により判定する:
【数12】

【数13】

ここに、Fcoll,”1”,strong>Fcoll,”1”,weakかつFcoll,”0”,strong>Fcoll,”0”,weakである。例3と例4とを組み合わせて、即ち、ビットレベル毎に2つの衝突レベルと弱い/強い衝突のレベルとを組み合わせて、8つの衝突レベルが得られる。
【0044】
図9に、データストリーム信号DSのサンプルの振幅、及び適応ビットレベル及び衝突レベルの線図を示す。この例は上記(式1)〜(式11)の実現であり、ここで(式6)及び(式7)はそれぞれ次式に置き換わっている:
【数14】

【数15】

図9の線図を次の表によって説明する:
【0045】
【表2】

【0046】
図10に、本発明の実現のブロック回路図を示す。なお、この実現はハードウェア実現(RFIDリーダ1の制御手段3の一部分としてのレベル適応手段LA、図1参照)またはソフトウェア実現の形で組み込むことができ、ソフトウェア実現では、ソフトウェアはRFIDリーダ1のプログラム記憶手段4に記憶されているか、あるいはRFIDリーダ1のプログラム記憶手段4及び/またはメモリ5にロード可能である。多くの状況において、本発明による方法の各ステップを実行するためのソフトウェアコード部分を具えたコンピュータプログラム製品が既にこうしたRFIDリーダに、例えばROMまたはEPROM、あるいは他の半永久記憶装置に予め記憶されている。このコンピュータプログラム製品は、このコンピュータプログラム製品を記憶したデータ担体(データキャリア)を利用することによってRFIDリーダに供給することもできる。
【0047】
図10のブロック回路図では、各ブロックと式との関連は次のように与えられる:
“1”レベル: (式3)、(式4)
“0”レベル: (式3)、(式4)
“1”分散レベル: (式1)、(式2)
“0”分散レベル: (式1)、(式2)
“center”(中心)レベル:(式5)
右部分: (式17)〜(式20)
比較器: (式5)、(式21)〜(式24)
【0048】
いわゆるRFIDシステムは、物品または動物の識別に用いられるシステムである、ということが言える。しかし、いわゆる近接場通信デバイス(NFCデバイス)も考えられる。一般に、本発明の思想は常に、ビットストリーム及び衝突検出が必要な通信システムに適用することができる。本発明の思想は、動作中の(例えばノイズによって生じる)レベルの分散が問題となる信号についての判定を行うことを可能にする。
【0049】
なお、上述した実施例は本発明を限定するものではなく例示するものであり、当業者は、請求項に記載の範囲から外れることなしに多くの代案実施例を設計することができる。「具えている」等の文言は、請求項中に挙げた以外の要素またはステップの存在を排除するものではない。各要素は複数存在し得る。本発明は、いくつかの別個の要素を具えたハードウェア、及び/または適切にプログラムしたプロセッサによって実現することができる。いくつかの手段を挙げた装置の請求項では、これらの手段のいくつかは同一のハードウェア・アイテムによって具体化することができる。単に、互いに異なる従属請求項中に特定の方策を挙げているということは、これらの方策の組合せを有利に用いることができないことを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】RFIDシステムの概略ブロック回路図である。
【図2】RFIDタグの概略ブロック回路図である。
【図3】強い信号衝突を説明する信号図である。
【図4】弱い信号衝突を説明する信号図である。
【図5】本発明により規定される種々の適応しきい値レベルの好例を示す図である。
【図6】本発明により規定される種々の適応しきい値レベルの好例を示す図である。
【図7】本発明により規定される種々の適応しきい値レベルの好例を示す図である。
【図8】本発明により規定される種々の適応しきい値レベルの好例を示す図である。
【図9】データストリーム信号及び適応ビットレベル及び衝突レベルの振幅を示す図である。
【図10】本発明の実現のブロック回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線識別タグリーダによって、データストリーム信号をデータ及び/または衝突に関して評価する方法において、
前記データストリーム信号を、少なくとも1つのしきい値レベル、特にデータビットレベル及び/または衝突レベルと比較するステップと;
前記比較の結果を評価するステップとを具え、
前記しきい値レベル、及び前記しきい値レベルの適応速度を共に、前記データストリーム信号の経過及び/または前記しきい値レベルの経過に依存して適応させることを特徴とするデータストリーム信号の評価方法。
【請求項2】
基本適応速度を設定し、前記基本適応速度は時間と共に可変であり、特に、所定の学習曲線に従って可変であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記適応速度を、前記しきい値レベルの分散に依存して適応させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記適応速度の前記分散への依存性を、非線形関数によって計算することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記適応速度を、前記しきい値レベルから前記データストリーム信号の実際のサンプル値までの距離に依存して適応させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記しきい値レベルの適応を、前記データストリーム信号の実際のサンプル値、または前記しきい値レベルから前記データストリーム信号の実際のサンプル値までの距離に依存して開始及び中止することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記データビットレベル毎に、上限及び下限の前記衝突レベルを規定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記しきい値レベルが、データ復元が不可能な強い衝突を規定する強衝突レベルと、データ復元がまだ可能な弱い衝突を規定する弱衝突レベルを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
データストリーム信号を少なくとも1つのしきい値レベル、特にデータビットレベル及び/または衝突レベルと比較し、この比較の結果を評価することによって、前記データストリーム信号をデータ及び/または衝突に関して評価する無線識別タグリーダにおいて、
前記無線識別タグリーダが、請求項1〜8のいずれかに記載の方法を実行するように構成されていることを特徴とする無線識別タグリーダ。
【請求項10】
数値演算ユニット及びメモリを有する制御手段を具え、請求項11に記載のコンピュータプログラム製品の処理を実行するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の無線識別タグリーダ。
【請求項11】
プログラマブルな無線識別タグリーダのメモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品において、
前記無線識別タグリーダ上で実行した際に、請求項1〜8のいずれかに記載の方法を実行するためのソフトウェアコード部分を具えていることを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項12】
コンピュータ可読媒体上に記憶されている、請求項11に記載のコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−506620(P2009−506620A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527579(P2008−527579)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052955
【国際公開番号】WO2007/023472
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(507219491)エヌエックスピー ビー ヴィ (657)
【Fターム(参考)】