説明

データ処理装置、プログラムおよび記録媒体

【課題】本発明は、印刷指示を行うユーザとその印刷物を受け取るユーザが異なる場合であっても、煩雑な手間をかけることなく、当該印刷物を相手に確実に受領させることができる新規な印刷システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
ジョブデータに含まれるジョブ情報データが指定する宛先ユーザがネットワーク内のいずれかのクライアントにログインしているか否かを判定し、ログインしていると判定された宛先ユーザに紐付けられたリモートプリンタを印刷先プリンタとして決定するとともに、当該宛先ユーザに紐付けられたクライアントに対して決定した印刷先プリンタのプリンタ名を指定可能に表示する印刷ダイアログを表示して、宛先ユーザに注意を喚起する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷出力のためのデータ処理技術に関し、より詳細には、プリントジョブを指定した宛先ユーザに対応付けられた出力装置に出力させるためのデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザがアプリケーションから仮想プリンタドライバを選択して印刷を実行する際に、振り分けのためのルールが記載された設定ファイルの情報に基づいて印刷先のプリンタを自動的に選択する印刷システムが知られている。この点につき、特開2011−8582号公報(特許文献1)は、印刷指示を行った要求元に対してジョブデータごとに決定された印刷先を表示する印刷システムを開示する。
【0003】
しかしながら、特許文献1の印刷システムは、印刷指示を行うユーザと出力された印刷物を受け取るユーザが同一であることを前提とするものであり、両者が異なる場合には十分な利便性を発揮できなかった。例えば、医局から離れた場所に薬局が設置された病院において、医局内にあるクライアントPCが持つ処方箋データを紙出力ベースで薬局の人間に受領させたい場合、特許文献1の印刷システムでは、依然として、医局内で印刷した処方箋を薬局まで持ち運んで直接手渡しするか、医局内にあるクライアントPCから薬局内にあるプリンタに対して処方箋の印刷指示をした後に、医局から電話などを使ってその旨を薬局に連絡するといった方法を取るしかなかった。
【0004】
しかしながら、印刷物を持ち運んで直接手渡しする方法は、効率が悪い上に持ち運んでいる間の紛失リスクが生じ、一方で、相手先と連絡を取り合いながらのリモート印刷は、これもまた煩雑な手間である。最も手間のかからない方法は、処方箋の電子文書を医局から添付メールで薬局に送り、薬局側で当該電子文書を印刷してもらう方法であるが、この場合には、インターネット上の情報漏洩リスクが生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、印刷指示を行うユーザとその印刷物を受け取るユーザが異なる場合であっても、煩雑な手間をかけることなく、当該印刷物を相手に確実に受領させることができる新規な印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、印刷指示を行うユーザとその印刷物を受け取るユーザが異なる場合であっても、煩雑な手間をかけることなく、当該印刷物を相手に確実に受領させることができる新規な印刷システムにつき鋭意検討した結果、自分以外のユーザを宛先に指定した場合、宛先ユーザがネットワーク上のクライアントにログインしているか否かを判定した上で、宛先ユーザがログインしているクライアントに対して印刷ダイアログを表示させることによって注意を喚起する構成に想到し、本発明に至ったのである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、ネットワークを介して複数のクライアントおよび複数のリモートプリンタに接続され、アプリケーション実行部から受領したジョブデータに基づいて印刷ジョブを実行するデータ処理装置であって、該データ処理装置は、前記ジョブデータごとに作業空間を生成して、該ジョブデータに含まれるイメージデータを描画データにイメージ変換する仮想プリンタドライバと、前記ジョブデータごとにプライベートインスタンスとして生成される発送処理部を含み、前記ジョブデータに含まれるジョブ情報データは、宛先ユーザを指定するための宛先ユーザ指定情報を含み、前記発送処理部は、前記宛先ユーザがネットワーク内のいずれかのクライアントにログインしているか否かを判定するログイン判定部と、前記ログイン判定部がログインしていると判定した場合に、前記宛先ユーザに紐付けられたリモートプリンタを印刷先プリンタとして決定する発送先制御部と、前記発送先制御部が印刷先プリンタとして決定した前記リモートプリンタのプリンタ名を指定可能に表示する印刷ダイアログを生成して前記宛先ユーザに紐付けられたクライアントに表示させるUI表示部とを含む、データ処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のネットワークプリントシステムを示す図。
【図2】本実施形態における印刷プロパティダイアログを示す図。
【図3】本実施形態のデータ処理装置の機能ブロック図を示す図。
【図4】本実施形態における発送管理テーブルを示す図。
【図5】本実施形態における対応付けテーブルを示す図。
【図6】本実施形態における表示先管理テーブルを示す図。
【図7】本実施形態のデータ処理装置が実行する処理のフローチャートを示す図。
【図8】本実施形態における印刷ダイアログを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0010】
図1は、本発明の実施形態であるデータ処理装置110を含んで構成されるネットワークプリントシステム100を示す。ネットワークプリントシステム100は、データ処理装置110と、パーソナルコンピュータとして参照される複数のクライアント112と、複数のリモートプリンタ122とを含んで構成され、各装置がLANやVPNなどとして参照されるネットワーク130を介して相互に接続されている。
【0011】
ネットワークプリントシステム100においては、各クライアント112に対して少なくとも1台のリモートプリンタ122が割り当てられており、図1に示す例においては、部署単位(A〜C課)で、クライアント112とリモートプリンタ122が対応付けられている。
【0012】
本実施形態のデータ処理装置110は、好ましくは、サーバ装置として実装され、シングルコア、マルチコアのCPU、ROM、実行空間を提供するRAM、ハードディスク装置などを含み、Windows(登録商標)200Xサーバ、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)、Solaris(登録商標)などのOSによる制御の下、印刷データの印刷先を制御する。また、データ処理装置110とクライアント112の間は、RDP(Remote Desktop Protocol)などの適切な遠隔接続プロトコルを使用してトランザクションが可能とされている。
【0013】
各クライアント112は、クライアント・サーバ環境においては、それぞれがアプリケーションプログラムを実装し、各種処理を完結するファットクライアントとして実装される。また、クライアント112をシンクライアントとして実装することもできる。この場合、クライアント112は、専ら、アプリケーションを搭載するデータ処理装置110に対してサービス要求を発行し、処理結果を受領し、処理結果の印刷要求をデータ処理装置110に対して発行する機能のみを実装する。
【0014】
本実施形態のデータ処理装置110は、クライアント112からの印刷要求および印刷データを受領すると、印刷先となるリモートプリンタ122を決定し、当該印刷データに対応するRAWデータを作成した後、これに、PDL(Page Description Language)コマンドの追加処理などを行って出力データを生成して決定した印刷先に宛てて送信する。
【0015】
ここで、本実施形態のネットワークプリントシステム100によれば、他のユーザに割り当てられたリモートプリンタ122から文書を印刷出力させたいユーザは、その旨を当該他のユーザに通知した上で、当該文書を印刷出力させることができる。本実施形態のこのような印刷方式を、以下の説明においては「宛先通知モード」と呼ぶ。
【0016】
本実施形態によれば、ユーザは、図2に例示するような印刷プロパティダイアログ20を介して宛先となるユーザを設定することができる。印刷プロパティダイアログ20の一つのタブとして開かれる宛先設定画面には、宛先の設定方法を選択するためのラジオボタン22と、それに対応するテキストフィールド24が表示される。本実施形態においては、宛先の設定方法として「直接設定」と「自動検索」の2つのモードが用意されており、「直接設定」の場合には、テキストフィールド24に宛先を特定するための識別子(ユーザ名など)を入力することによって宛先を設定することができる。一方、「自動検索」の場合には、印刷対象文書の内容に応じた適切な宛先が自動的に設定される。以上、本実施形態のネットワークプリントシステム100の基本構成について説明してきたが、次に、本実施形態のデータ処理装置110について、より詳細に説明する。
【0017】
図3は、本実施形態のデータ処理装置110の機能ブロック図を示す。図3に示すように、データ処理装置110は、データ処理部210と、アプリケーション実行部212とを含んで構成される。なお、図3は、シンクライアント環境におけるデータ処理装置110を例示しており、データ処理部210とアプリケーション実行部212とが一体化してデータ処理装置110を構成しているが、クライアント112がファットクライアントとして実装される場合には、クライアント112が、図3に示すアプリケーション実行部212の機能を保有するように構成してもよく、ネットワークプリントシステム100内に別途ターミナルサーバを設ける場合には、図3に示す破線をネットワーク境界として、左手側の機能部212をターミナルサーバとして実装してアプリケーション実行部212を実装し、データ処理装置110は、データ処理部210のみを含むプリンタサーバとして実装してもよい。
【0018】
アプリケーション実行部212は、アプリケーション214と、印刷要求元通知部216とを含んで構成されており、ネットワーク130を介してクライアント112の処理要求や印刷要求を受領して処理を実行する。実行結果は、アプリケーション214によるプリント指令イベントの発生に応答して、GDI(Graphical Device Interface)などのAPIコールを経てプリントジョブ(以下、単にジョブとして参照する。)とした後、ジョブデータをデータ処理部210に送付する。
【0019】
アプリケーション214は、クライアント112からの印刷要求を受領すると、データ処理部210に対して、新たなジョブが開始したことを通知する。
【0020】
印刷要求元通知部216は、印刷要求元を特定する情報(以下、印刷要求元情報として参照する)をクライアント112から受領し、データ処理部210の発送処理部240が含む後述するUI表示部248に対して、当該印刷要求元情報およびプロセスIDを送付する。ここで、印刷要求元情報には、ログインに使用するユーザID、ユーザ権限、セッションIDなどが含まれる。
【0021】
データ処理部210は、仮想プリンタドライバ218と、アプリケーション214から送付されたジョブデータをスプールファイルとして格納するためのジョブ格納部226と、イメージ処理部236と、印刷要求元に応じて印刷先を決定するとともに、当該印刷先に対応するリモートドライバ250A〜250Cに印刷出力すべきデータを送付するための発送処理部240とを含んでいる。
【0022】
仮想プリンタドライバ218は、仮想プリント管理部220と、ジョブ情報データ抽出部222と、仮想描画部224とを含んで構成されている。仮想プリンタドライバ218は、アプリケーション214からジョブデータを受領すると、仮想プリント管理部220を呼出し、当該ジョブデータを、アプリケーション214がジョブを仮想プリンタドライバ218に依頼した時点で生成されたプロセスIDと関連付けてジョブ格納部226に格納する。
【0023】
本実施形態におけるジョブデータは、イメージデータとジョブ情報データを含んで構成される。イメージデータは、ビットマップ、JPEG、GIFなどの低次イメージフォーマットデータ、描画コードを含むEMF、Postscript(登録商標)、PDF、XPSなどの高次イメージフォーマットデータとして参照することができる。一方、ジョブ情報データは、印刷要求元識別子(印刷要求元であるクライアント112のユーザIDやIPアドレスなど)、イメージデータの面付け情報、マージン、サイズ設定、ページ数、文書名などの印刷情報の他、宛先通知モード設定情報を含む。
【0024】
本実施形態における宛先通知モード設定情報は、宛先通知モードの設定の有無と、宛先ユーザ指定情報を含む。ここで、宛先ユーザ指定情報とは、宛先ユーザを指定するために用いられる情報をいい、図2に示した印刷プロパティダイアログ20を介して設定される宛先識別子(ユーザID)または自動検索依頼をその内容とする。
【0025】
一方、仮想プリント管理部220は、仮想描画部224とジョブ情報データ抽出部222を呼出す。呼び出された仮想描画部224は、ジョブ格納部226からジョブデータが含むイメージデータ234をジョブ毎に処理するために、作業空間230a〜230cを確保し、それぞれにジョブ毎のイメージデータ234を移動する。
【0026】
一方、呼び出されたジョブ情報データ抽出部222は、ジョブ格納部226に格納されたジョブデータからジョブ情報データを抽出して作業空間230に格納する。以上、仮想プリンタドライバ218の基本構成とこれがジョブ毎に展開する作業空間230a〜230cについて説明してきたが、続いて、発送処理部240について、以下説明する。
【0027】
仮想プリンタドライバ218は、アプリケーション実行部212からジョブデータを受領すると、当該ジョブのための発送処理部240としてプライベートインスタンス240a〜240cを生成する。プライベートインスタンス240a〜240cは、発送先制御部242と、データ発送部244と、対応付けテーブル246と、UI表示部248と、ログイン判定部249を含んで構成される。
【0028】
データ発送部244は画像処理モジュールとして実装されるイメージ処理部236に対して、自身のジョブに対応する作業空間230のイメージデータ234を取得させ、当該作業空間230内のジョブ情報データ232に含まれる印刷情報に基づいて、ページ割り当て、面付けなどの処理を実行させる。その後、データ発送部244は、発送先制御部242が後述した手順で決定した印刷先リモートプリンタ122に対応するリモートドライバ250A〜250Cに対して、当該作業空間230内のイメージデータ234の印刷指令を発行する。
【0029】
なお、データ発送部244は、図4に例示する発送管理テーブル300を管理する。発送管理テーブル300は、アプリケーション214がジョブを仮想プリンタドライバ218に依頼した時点で生成されたプロセスIDと、発送先制御部242が後述した手順で決定した印刷先プリンタIDと、ジョブ情報データ232に含まれる印刷情報とが対応付けて登録されている。印刷情報には、印刷要求元のユーザID、IPアドレス、印刷設定情報、ジョブ情報等が含まれる。
【0030】
データ発送部244から印刷指令を受けた出力先のリモートドライバ250A〜250Cは、当該、ポートモニタなどへとRAW形式の出力データを送付し、決定された出力先に印刷出力させる。その後、出力先から印刷完了の通知を受けてジョブ毎に生成された発送処理部240のインスタンスは終了する。
【0031】
以上、説明したように、本実施形態のデータ処理部210においては、仮想プリンタドライバ218と発送処理部240が分担してジョブ単位で処理を実行するために、作業空間230a〜230cは、仮想プリンタドライバ218および発送処理部240の両方からアクセス可能な記憶領域として、ジョブ毎に独立したスプール空間を構成する。
【0032】
次に、上述した発送先制御部242とログイン判定部249が協働することにっよって実現される本実施形態の「宛先通知モード」について説明する。
【0033】
発送先制御部242は、図5に示す対応付けテーブル246を管理する。対応付けテーブル246は、クライアント112にアカウントを有するユーザのユーザID(ユーザ名など)を格納するフィールド1002と、検索キーワードを格納するフィールド1004と、クライアント112のMACアドレスを格納するフィールド1006と、クライアント112に割り当てられたリモートプリンタの識別子であるプリンタIDを格納するフィールド1008から構成されており、各フィールドに格納される値を紐付けて管理している。
【0034】
発送先制御部242は、印刷先とすべきリモートプリンタ122を決定するにあたり、まず、ジョブ情報データ232に含まれる宛先通知モード設定情報に基づいて、宛先通知モードの設定の有無を判断する。その結果、宛先通知モードが設定されていない場合(すなわち、通常モードの場合)には、同じくジョブ情報データ232に含まれる印刷要求元識別子(印刷要求元であるクライアント112のユーザID)をキーとして対応付けテーブル246を参照し、印刷要求元識別子に紐付けられたプリンタIDを持つリモートプリンタ122を印刷先として決定する。
【0035】
一方、宛先通知モードが設定されており、且つ、宛先通知モード設定情報に宛先識別子(ユーザID)が含まれている場合には、発送先制御部242は、当該宛先識別子(ユーザID)を取得する。宛先識別子(ユーザID)の代わりに自動検索依頼が含まれていた場合には、発送先制御部242は、予め定義された検索規則(例えば、「描画データ」の中の「“担当”:の後の文字列」を対象にしたキーワード検索を実行する等)にしたがい、対応付けテーブル246の「キーワード」フィールドに含まれる全ての文字列(「A課AAA様」、「B課XXX係」…)を検索キーとして使用してキーワード検索を実行する。その結果、ヒットしたキーワードに紐付けられた宛先識別子(ユーザID)を取得する。
【0036】
発送先制御部242は、上述した手順で宛先識別子(ユーザID)を取得すると、ログイン判定部249に対して当該宛先識別子(ユーザID)に対応するユーザがネットワーク130内のいずれかのクライアント112にログインしているか否かの確認を依頼する。
【0037】
ネットワークプリントシステム100がシンクライアント環境の場合には、アプリケーション実行部212が各ユーザのログイン状況を把握しているので、ログイン判定部249は、宛先ユーザのログイン状況をアプリケーション実行部212に問い合わせて確認する。
【0038】
一方、ネットワークプリントシステム100がクライアント・サーバ環境の場合には、ログイン判定部249は、対応付けテーブル246に格納されたMACアドレスを用いてRARP(Reverse Address Resolution Protocol)により宛先ユーザのクライアント112のIPアドレスを取得した後、当該IPアドレスにPINGコマンドを送信して応答確認することにより、宛先ユーザがログインしているか否かを取得することができる。
【0039】
ログイン判定部249は、判定結果を発送先制御部242に通知する。宛先ユーザがログインしていない場合には、発送先制御部242は、先に説明した通常モード時と同様の処理を行って印刷要求元に紐付けられたリモートプリンタ122を印刷先として決定する。一方、宛先ユーザがログインしている場合には、発送先制御部242は、当該宛先ユーザのユーザIDをキーとして再び対応付けテーブル246を参照し、当該宛先ユーザIDに紐付けられたプリンタIDを有するリモートプリンタ122を印刷先として決定する。
【0040】
なお、宛先ユーザIDに紐付けられたプリンタIDが複数ある場合には、全てのプリンタIDを印刷先候補とした上で、ユーザに選択に委ねるようにしてもよいし、宛先ユーザのクライアント112のIPアドレスと印刷先候補である複数のリモートプリンタ122のIPアドレスを比較して、もっとも位置的に近いと思われるIPアドレスを持つリモートプリンタ122を自動的に印刷先として決定してもよい。
【0041】
発送先制御部242は、上述した手順で決定した印刷先のプリンタIDと、プロセスIDおよびジョブ情報データ232とをデータ発送部244に通知する。データ発送部244は、発送先制御部242から通知された情報を図4に例示する発送管理テーブル300において集約して管理する。
【0042】
さらに、発送先制御部242は、UI表示部248に対して、プロセスIDおよび決定された印刷先のプリンタIDを通知して、印刷要求元のクライアント112に対して印刷用GUI(以下、印刷ダイアログとして参照する)を表示するよう指令する。
【0043】
ここで、UI表示部248は、アプリケーション実行部212の印刷要求元通知部216から印刷要求元情報およびプロセスIDを受領した際に、当該印刷要求元情報およびプロセスIDを表示先管理テーブルに登録する。図6は、表示先管理テーブル400を例示する。表示先管理テーブル400には、プロセスIDと印刷要求元情報(ログインユーザID、ユーザ権限、セッションID)が紐付けられて管理されている。UI表示部248が、セッションIDで特定されるセッションに対して、印刷ダイアログの表示指令に印刷要求元と同一のアクセス権限を添付して送信する。この場合、印刷ダイアログの表示指令を送付する前に、添付されるアクセス権限がクライアント112のユーザ権限に変更される。
【0044】
UI表示部248は、発送先制御部242から印刷ダイアログの表示指令を受領すると、同時に通知されたプロセスIDをキーとしてデータ発送部244が管理する発送管理テーブル300を参照し、印刷要求元のユーザIDと各種印刷情報を取得して、当該プロセスIDに紐付けられたクライアント112に対し、印刷先のリモートプリンタ122の名前および各種印刷情報が記述された印刷ダイアログを表示させる。印刷要求元であるクライアント112のユーザは、このようにして表示された印刷ダイアログを介して印刷指示を行う。
【0045】
UI表示部248は、クライアント112に印刷ダイアログを表示させた後、当該クライアント112からの指示を待機する。そして、UI表示部248がクライアント112から印刷決定指示を受領すると、データ発送部244は、作業空間230a〜230c内に生成されたイメージフォーマットのデータを取得し、印刷先として決定されたリモートプリンタ122に対応するリモートドライバ250にデータを出力する。一方、UI表示部248がクライアント112から印刷取り消し指示を受領すると、データ発送部244は、作業空間230a〜230cから受領した出力データを消去して印刷処理を取り消す。
【0046】
以下、本実施形態のデータ処理装置110が実行する処理について、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。ここで再び、図1を併せて参照されたい。
【0047】
図1において、A課のユーザAが他の課のユーザに渡すための文書を印刷する場合を考える。ユーザAは、自身がアカウントを有するクライアント112にログインした後、アプリケーションの処理結果の印刷出力をデータ処理装置110に依頼する。
【0048】
データ処理装置110は、クライアント112からの印刷要求に含まれる宛先通知モード設定情報に基づいて、宛先通知モードの設定の有無を判断する(ステップ501)。ここで、ユーザAが宛先通知モードを設定していない場合(ステップ501、No)、ユーザAに割り当てられた「Printer A」が印刷先として決定され、ユーザAがログインしているクライアント112a(印刷要求発行元)に印刷ダイアログが表示される(ステップ508)。図8(a)は、クライアント112aに表示される印刷ダイアログ30を示す。印刷ダイアログ30には「Printer A」が印刷先として表示されている。
【0049】
その後、データ処理装置110は、ユーザAからの印刷指示を待機し、印刷取り消し指示を受領した場合には(ステップ505、印刷取消)、印刷処理を中止して(ステップ509)、印刷要求発行元であるクライアント112aに印刷取り消し通知を表示させ(ステップ510)、処理を終了する。
【0050】
一方、印刷決定指示を受領した場合には(ステップ505、印刷決定)、出力データを「Printer A」に送信して印刷処理を実行させた後(ステップ506)、クライアント112aに印刷完了通知を表示させ(ステップ507)、処理を終了する。上述したように、宛先通知モードを設定していない場合、ユーザAは、「Printer A」が出力した文書を自身の手で他のユーザに渡さなければならない。
【0051】
一方、ユーザAが宛先通知モードを設定している場合(ステップ501、Yes)、データ処理装置110は、クライアント112からの印刷要求に含まれる宛先通知モード設定情報に基づいて宛先ユーザIDを取得した後(ステップ502)、宛先ユーザがネットワーク130内のいずれかのクライアント112にログインしているか否かを判定する。ここで、宛先がC課のユーザCであった場合には、図1に示すように、ユーザCは、ネットワーク130内のいずれのクライアント112にもログインしていないので(ステップ503、No)、印刷要求発行元であるクライアント112aに図8(a)に示す印刷ダイアログ30を表示させた後(ステップ508)、上述したのと同様の手順を実行して処理を終了する。この場合もユーザAは、「Printer A」が出力した文書を自身の手でユーザCに渡さなければならない。
【0052】
一方で、宛先がB課のユーザBであった場合には、図1に示すように、ユーザBは、ネットワーク130内のクライアント112bにログインしているので(ステップ503、Yes)、クライアント112bに図8(b)に示す印刷ダイアログ40を表示させる(ステップ504)。印刷ダイアログ40にはユーザBがログインしているクライアント112bに一番近い「Printer B1」が印刷先として表示されるとともに、プルダウンリストには、クライアント112bに割り当てられたもう一つのリモートプリンタ122である「Printer B2」が選択可能に表示されている。
【0053】
その後、データ処理装置110は、ユーザBからの印刷指示を待機し(ステップ505)、印刷取り消し指示を受領した場合には、印刷処理を中止して(ステップ509)、印刷要求発行元であるクライアント112aに印刷取り消し通知を表示させる(ステップ510)。これによって、ユーザAは、ユーザBが印刷を拒否したことを知ることができる。この場合、ユーザAは、再度、ユーザB宛ての宛先通知モード印刷を試みることもできるし、印刷プロパティ画面で宛先通知モードを解除して通常印刷に切り替え、自身の「Printer A」で出力することもできる。
【0054】
一方、ユーザBからの印刷決定指示を受領した場合には、データ処理装置110は、出力データをB課に設置された「Printer B1」に送信して印刷処理を実行させた後(ステップ506)、出力要求元であるクライアント112aに印刷完了通知を表示させる(ステップ507)。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態によれば、ユーザAは、A課にいながら、所望の文書をユーザBに渡すことができるので、自身の手で印刷文書を届ける手間を省くことができ、また、移送中の紛失リスクも無くなる。また、本実施形態によれば、所望の文書を電子文書によらず紙ベースで渡すことができるので、電子文書がネットワーク上で漏えいするといったことを心配する必要が無くなる。一方、ユーザBは、自分宛の文書があることを印刷ダイアログによって把握することができるので、文書の取り忘れが防止され、また、当該文書がユーザBの手近なリモートプリンタ122を選んで自動的に出力されるので、これを確実に受け取ることができる。
【0056】
本実施形態の上記機能は、C、C++、C#、Java(登録商標)などのオブジェクト指向プログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、本実施形態のプログラムは、ハードディスク装置、CD−ROM、MO、DVD、フレキシブルディスク、EEPROM、EPROMなどの装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が可能な形式でネットワークを介して伝送することができる。
【0057】
以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
20…印刷プロパティダイアログ
22…ラジオボタン
24…テキストフィールド
30,40…印刷ダイアログ
100…ネットワークプリントシステム
110…データ処理装置
112…クライアント
122…リモートプリンタ
130…ネットワーク
210…データ処理部
212…アプリケーション実行部
214…アプリケーション
216…印刷要求元通知部
218…仮想プリンタドライバ
220…仮想プリント管理部
222…ジョブ情報データ抽出部
224…仮想描画部
226…ジョブ格納部
230…作業空間
232…ジョブ情報データ
234…イメージデータ
236…イメージ処理部
240…発送処理部
240…プライベートインスタンス
242…発送先制御部
244…データ発送部
246…対応づけテーブル
248…UI表示部
249…ログイン判定部
250…リモートドライバ
300…発送管理テーブル
400…表示先管理テーブル
1002〜1008…フィールド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2011−8582号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して複数のクライアントおよび複数のリモートプリンタに接続され、アプリケーション実行部から受領したジョブデータに基づいて印刷ジョブを実行するデータ処理装置であって、該データ処理装置は、
前記ジョブデータごとに作業空間を生成して、該ジョブデータに含まれるイメージデータを描画データにイメージ変換する仮想プリンタドライバと、
前記ジョブデータごとにプライベートインスタンスとして生成される発送処理部を含み、
前記ジョブデータに含まれるジョブ情報データは、宛先ユーザを指定するための宛先ユーザ指定情報を含み、
前記発送処理部は、
前記宛先ユーザがネットワーク内のいずれかのクライアントにログインしているか否かを判定するログイン判定部と、
前記ログイン判定部がログインしていると判定した場合に、前記宛先ユーザに紐付けられたリモートプリンタを印刷先プリンタとして決定する発送先制御部と、
前記発送先制御部が印刷先プリンタとして決定した前記リモートプリンタのプリンタ名を指定可能に表示する印刷ダイアログを生成して前記宛先ユーザに紐付けられたクライアントに表示させるUI表示部と、
を含む、
データ処理装置。
【請求項2】
前記発送先制御部は、前記宛先ユーザに紐付けられた複数のリモートプリンタを印刷先候補として決定し、
前記UI表示部は、前記印刷先候補である複数のリモートプリンタのプリンタ名を指定可能に表示する印刷ダイアログを生成する、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記発送先制御部は、前記宛先ユーザに紐付けられたリモートプリンタが複数ある場合に、該複数のリモートプリンタの中から、前記宛先ユーザに紐付けられたクライアントに位置的に最も近いリモートプリンタを印刷先プリンタとして決定する、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記発送処理部は、クライアントのアカウントを有するユーザのユーザIDと、該クライアントのMACアドレスと、該クライアントに割り当てられたリモートプリンタの識別子とを紐付けたテーブルを管理し、
前記発送先制御部は、
前記テーブルを参照して前記宛先ユーザに紐付けられたリモートプリンタを印刷先プリンタとして決定する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記ログイン判定部は、
前記テーブルを参照し、前記宛先ユーザに紐付けられたMACアドレスを用いて該宛先ユーザのクライアントのIPアドレスを取得した後、該IPアドレスにPINGコマンドを送信することにより、宛先ユーザが該クライアントにログインしているか否かを判定する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
ネットワークを介して複数のクライアントおよび複数のリモートプリンタに接続され、アプリケーション実行部から受領したジョブデータに基づいて印刷ジョブを実行するデータ処理装置に対して、
前記ジョブデータごとに作業空間を生成して、該ジョブデータに含まれるイメージデータを描画データにイメージ変換する仮想プリンタドライバと、
前記ジョブデータごとにプライベートインスタンスとして生成される機能手段であって、
前記ジョブデータに含まれるジョブ情報データが含む宛先ユーザ指定情報によって指定される宛先ユーザがネットワーク内のいずれかのクライアントにログインしているか否かを判定するログイン判定手段と、
前記ログイン判定部がログインしていると判定した場合に、前記宛先ユーザに紐付けられたリモートプリンタを印刷先プリンタとして決定する発送先制御手段と、
前記発送先制御手段が印刷先プリンタとして決定した前記リモートプリンタのプリンタ名を指定可能に表示する印刷ダイアログを生成して前記宛先ユーザに紐付けられたクライアントに表示させるUI表示手段と、
を含む機能手段
を実現させるためのコンピュータ実行可能なプログラム。
【請求項7】
前記発送先制御手段は、前記宛先ユーザに紐付けられた複数のリモートプリンタを印刷先候補として決定し、
前記UI表示手段は、前記印刷先候補である複数のリモートプリンタのプリンタ名を指定可能に表示する印刷ダイアログを生成する、請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記発送先制御手段は、前記宛先ユーザに紐付けられたリモートプリンタが複数ある場合に、該複数のリモートプリンタの中から、前記宛先ユーザに紐付けられたクライアントに位置的に最も近いリモートプリンタを印刷先プリンタとして決定する、請求項6に記載のプログラム。
【請求項9】
前記発送処理手段は、クライアントのアカウントを有するユーザのユーザIDと、該クライアントのMACアドレスと、該クライアントに割り当てられたリモートプリンタの識別子とを紐付けたテーブルを管理し、
前記発送先制御手段は、
前記テーブルを参照して前記宛先ユーザに紐付けられたリモートプリンタを印刷先プリンタとして決定する、
請求項6〜8のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項10】
前記ログイン判定手段は、
前記テーブルを参照し、前記宛先ユーザに紐付けられたMACアドレスを用いて該宛先ユーザのクライアントのIPアドレスを取得した後、該IPアドレスにPINGコマンドを送信することにより、宛先ユーザが該クライアントにログインしているか否かを判定する、
請求項6〜9のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載されたプログラムを記録したコンピュータ可読な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−194940(P2012−194940A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60177(P2011−60177)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】