説明

データ処理装置およびプログラム

【課題】個人情報を含むデータを適切に変換可能なデータ処理装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】データ処理装置が,個人情報を含むデータの変換規則を記憶する変換規則記憶部と,個人情報を含むデータを取得するデータ取得部と,前記記憶される変換規則に基づいて,前記取得されるデータを変換するデータ変換部と,前記変換されるデータを出力するデータ出力部と,を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,データ処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
バグの無いコンピュータプログラムの作成は困難であることから,アプリケーションプログラムの使用時に動作不良が発生する可能性がある。アプリケーションプログラムの動作不良が発生した場合,その原因解明のために出力したデータを参照することがある(例えば,画面表示,ファイル出力)。
【0003】
ところで,『個人情報保護』が叫ばれている現在,個人を特定できる内容が含まれているデータを外部に提示する際は,出力したデータをツール等によって加工(個人情報部分のデータ削除やマスキング)する必要がある。ユーザにとって,この加工は煩雑であり,手間が掛かる。また,ユーザが任意にデータを加工すると,加工前後でのデータの相違に起因してアプリケーションプログラムの不良解析が難しくなることがあった。
以上のように,従来の処理では,個人データを含むデータを外部に提示する際,データの出力後に,ユーザがデータを変換する作業が発生していた。また,このデータ変換の結果,プログラムの動作不良解析に時間を要する場合が生じていた。
ここで,文書管理システムのログファイル出力に暗号化機能を付加することで,トラブル時の復旧作業の効率化を図る技術が公開されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開20007−58423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,上記特許文献1の技術は,必ずしも個人情報に着目した技術ではなく,個人情報を適切に暗号化することは必ずしも容易ではない。
上記に鑑み,本発明は,個人情報を含むデータを適切に変換可能なデータ処理装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るデータ処理装置は,個人情報を含むデータの変換規則を記憶する変換規則記憶部と,個人情報を含むデータを取得するデータ取得部と,前記記憶される変換規則に基づいて,前記取得されるデータを変換するデータ変換部と,前記変換されるデータを出力するデータ出力部と,を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,個人情報を含むデータを適切に変換可能なデータ処理装置およびプログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下,図面を参照して,本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るデータ処理システム100を表すブロック図である。データ処理システム100は,クライアントコンピュータ110,サーバコンピュータ120,データベース130を有する。
【0008】
クライアントコンピュータ110は,中央処理装置(CPU),入力部,表示部を有し,サーバコンピュータ120に所定の処理を指示し,処理結果が表示される。
【0009】
サーバコンピュータ120は,クライアントコンピュータ110からの要求に応じて,後述の個人情報データベース131にアクセスし,図示しないアプリケーションプログラムによる業務処理を実行する。また,サーバコンピュータ120は,データ取得部121,データ変換部122,データ出力部123,データ表示部124を有する。サーバコンピュータ120は,中央処理装置(CPU),およびコンピュータプログラムの組み合わせによって実現できる。
データベース130は,個人情報データベース131,変換規則データベース132,変換前データベース133,変換済データベース134を有する。
【0010】
データ取得部121は,クライアントコンピュータ110からの指示により個人情報データベース131から個人情報を含むデータを取得し,変換前データベース133に格納する。
データ変換部122は,変換規則データベース132に記憶された変換規則に基づき,変換前データベース133に格納されたデータを変換し,変換済データベース134に格納する。
データ出力部123は,変換済データベース134に格納されたデータをファイルとしてクライアントコンピュータ110に出力する。
データ表示部124は,変換済データベース134に格納されたデータをクライアントコンピュータ110の表示部に表示させる。
【0011】
個人情報データベース131は,人事給与システムのような個人情報を含むデータベースである。このデータベースには,前述のアプリケーションプログラムによる業務処理の結果が蓄積される。従って,この個人情報データベース131の内容を解析することで,アプリケーションプログラムの動作不良の原因を突き止めることが可能である。
【0012】
図2は,個人情報データベース131に記憶される個人情報を含むデータの一例を表す模式図である。項目A,B,C,D,…にそれぞれ対応して,社員コード,氏名,住所,電話番号,…が表される。
【0013】
変換規則データベース132は,変換(マスキング)の規則を管理するデータベースである。変換規則を例えば,「B,氏名,*」とすると,個人情報データベース131の項目B(氏名)の1バイトの構成要素を1つの「*」で変換(マスク)することを意味する。このとき,例えば,4文字の氏名「山田太郎」は8つの「*(アスタリスク)」(「********」)に変換される。全角文字は1文字が2バイトであることから,2個の「*」に変換される。
【0014】
この変換規則は,適宜に設定できる。例えば,「B,氏名,*,C,住所,*,D,電話番号,*」とすると,項目B〜Dの氏名,住所,電話番号それぞれの1バイト要素それぞれが「*」に変換される。即ち,複数の項目を一括して変換(マスク)できる。
【0015】
また,例えば,「B,氏名,$,C,住所,#,D,電話番号,*」とすると,項目B〜Dの氏名,住所,電話番号それぞれの1バイト要素が「$」,「#」,「*」に変換される。即ち,複数の項目それぞれに対して異なる変換規則を適用できる。
さらには,複数の変換規則を切り替えて適用することも可能である。この切り替えは,ユーザからの指示(手動),自動の何れでも差し支えない。例えば,出力が指定される項目の組み合わせによって,変換規則を切り替えることが考えられる。
【0016】
変換前データベース133は,変換前のデータを格納するデータベースである。図3は,変換前データベース133に格納される変換前データの一例を表す図である。図2に表される個人情報データベース131から項目A,Bの「社員コード」,「氏名」のデータのみが抽出されている。
【0017】
変換済データベース134は,変換(マスキング)されたデータを格納するデータベースである。図4は,変換済データベース134に格納される変換済データの一例を表す図である。図3に表される変換前データが変換規則「B,氏名,*」で変換された結果が表わされている。
【0018】
図5は,データ処理システム100の動作手順の一例を表すフロー図である。
(1)データの出力指示(ステップS11)
クライアントコンピュータ110からサーバコンピュータ120へと,出力するデータを指定する。例えば,項目A,Bのリスト出力が指示される。
【0019】
(2)変換前データの取得・登録(ステップS12)
データ出力指示を受け取ったサーバコンピュータ120のデータ取得部121は,個人情報データベース131からデータを取得して変換前データベース133へと登録(格納)する。例えば,図2のデータが変換前データベース133に格納される。
【0020】
(3)データの変換・登録(ステップS13)
変換規則データベース132の変換規則に基づいて,データ変換部122が,変換前データベース133に格納されたデータを変換する。
変換規則で変換対象とされている項目が変換前データベース133に含まれている場合,その項目の内容を変換前後で同一のバイト数となるように変換(マスキング)する。変換規則で変換対象とされている項目が変換前データベース133に含まれていない場合,変換はなされない。
以上のようにして,データ変換部122で処理された(変換,未変換双方を含む)データが変換済データベース134に格納される。例えば,図3のデータが変換済データベース134に格納される。
【0021】
(4)データの出力・表示(ステップS14)
データ出力部123が,クライアントコンピュータ110に出力するデータを変換済データベース134から取得し,ファイルを作成,出力する。ほぼ同時に,データ表示部124が,変換済データベース134から変換済データを取得し,クライアントコンピュータ110の表示部上に表示させる。なお,データの出力,画面表示の有無は個別に指示可能である。
【0022】
データ処理システム100の利点として,以下の(1)〜(3)を挙げることができる。
(1)単一の指示で,データの変換(マスキング)および出力が可能となる。ユーザがデータ出力,データ変換を個別に指示する手間が不要となる。
【0023】
(2)変換前後の項目でデータのバイト数が変化しないので,アプリケーションプログラムの動作不良の発生時における動作確認が正確かつ短時間で行うことができる。プログラムには,処理対象データのバイト数が規定され,この規定からバイト数が外れたデータでは正常に動作しない場合がある。変換前後でバイト数が変化すると,検査対象のプログラムの動作不良が処理対象データのバイト数の関係で発生しているのか否かの判断を誤り,動作解析に多大な時間を要する可能性がある。変換前後でデータのバイト数が変化しないので,このようなバイト数に起因する動作不良の見誤りを防止できる。
【0024】
(3)変換されたデータがファイル出力,画面表示されるので,変換結果の確認(正しくマスキングされたか否かの確認)が容易である。
【0025】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態を説明する。
図6は本発明の第2実施形態に係るデータ処理システム200を表すブロック図である。
データ処理システム200は,クライアントコンピュータ110,サーバコンピュータ220,データベース230を有する。
【0026】
サーバコンピュータ220は,データ取得部121,データ変換部122,データ出力部123,データ表示部124,バイト数確認部225を有する。
データベース230は,個人情報データベース131,変換規則データベース132,変換前データベース133,変換済データベース134,バイト数データベース235を有する。
【0027】
データ処理システム200は,データ処理システム100にバイト数確認部225およびバイト数データベース235が付加されている。
バイト数確認部225は,個人情報データベース131(または変換前データベース133)と変換済データベース134に基づいて,バイト数確認用データを生成しバイト数データベース235に格納する。
【0028】
バイト数データベース235は,バイト数確認部225によって生成されるバイト数確認用データを格納する。
図7は,バイト数データベース235に格納されるバイト数確認用データの一例を表す模式図である。ここでは,変換前後のデータが図3,図4で表される場合を想定している。図7では,変換対象が項目Bであることから,項目Bについて変換前後でのバイト数が表されている。
【0029】
図8は,データ処理システム200の動作手順の一例を表すフロー図である。
ステップS21〜S23はそれぞれ図5のステップS11〜S13と特に変わりがないので,詳細な説明を省略する。
【0030】
(1)バイト数確認用データの生成・登録(ステップS24)
バイト数確認部225が,個人情報データベース131と変換済データベース134の変換済みの項目(カラム)のバイト数を算出することで,バイト数確認用データを生成し,バイト数データベース235に格納する。
【0031】
(2)データの出力・表示(ステップS25)
データ出力部123が,クライアントコンピュータ110にデータ出力するデータを変換済データベース134からデータを取得し,ファイルを作成,出力する。ほぼ同時に,データ表示部124が,変換済データベース134から変換済データを取得し,クライアントコンピュータ110の表示部上に表示させる。
【0032】
以上のデータ出力部123,データ表示部124の動作はデータ処理システム100と特に変わるところがない。
データ表示部124は,変換済データの表示制御と併せて,バイト数データベース235からバイト数確認用データを取得し,クライアントコンピュータ110の表示部上に表示させる。結果として,クライアントコンピュータ110の表示部上に変換後のデータ,および変換前後でのバイト数が表示される。
【0033】
データ処理システム200の利点として,データ処理システム100での利点(1)〜(3)に加えて,次の(4)を挙げることができる。
(4)変換前後のバイト数が対比して表示されるため,変換(マスキング)が正しく行われたか否かを容易に確認することができる。
【0034】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るデータ処理システムを表すブロック図である。
【図2】個人情報データベースに記憶される個人情報を含むデータの一例を表す模式図である。
【図3】変換前データベースに格納される変換前データの一例を表す図である。
【図4】変換済データベースに格納される変換済データの一例を表す図である。
【図5】データ処理システムの動作手順の一例を表すフロー図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るデータ処理システムを表すブロック図である。
【図7】バイト数データベースに格納されるバイト数確認用データの一例を表す模式図である。
【図8】データ処理システム200の動作手順の一例を表すフロー図である。
【符号の説明】
【0036】
100…データ処理システム,110…クライアントコンピュータ,120…サーバコンピュータ,121…データ取得部,122…データ変換部,123…データ出力部,124…データ表示部,130…データベース,131…個人情報データベース,132…変換規則データベース,133…変換前データベース,134…変換済データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人情報を含むデータの変換規則を記憶する変換規則記憶部と,
個人情報を含むデータを取得するデータ取得部と,
前記記憶される変換規則に基づいて,前記取得されるデータを変換するデータ変換部と,
前記変換されるデータを出力するデータ出力部と,
を具備することを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記記憶される変換規則が,変換前後のデータのバイト数が等しくなるようにデータを変換する変換規則である
ことを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記変換前後のデータのバイト数を対応して表示するデータ表示部
をさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のデータ処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−287396(P2008−287396A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130336(P2007−130336)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】