説明

データ収録装置

【課題】パソコン等の解析ツールを必要とせずに、各測定場所において、他の場所に設置されている測定器の測定データを含めて解析できるようにする。
【解決手段】例えば3台の測定器10,20,30を有し、各測定器は、それぞれの被測定対象からの測定データを保存するデータ保存メモリ13,23,33と、測定データのデータ保存メモリに対する書き込み、読み出しを制御する制御部15,25,35と、測定データを表示する表示部11,21,31と、各測定器との間で通信を行う通信部14,24,34とを備え、例えば測定器10制御部15は、自己の測定器10の所定の時間軸長の測定データをデータ保存メモリ13から読み出して表示部11に表示するにあたって、他の測定器20,30のデータ保存メモリ23,33から通信部14,24,34を介して同一の時間軸長の測定データを読み出して表示部11に併せて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる場所に設置される複数の測定器を有し、通信部を介して互いにデータを送受信するデータ収録装置に関し、さらに詳しく言えば、パソコン等の上位装置(主装置)を必要とせずに、各測定場所にてデータの解析を行うことができるデータ収録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載に記載されているデータ収録装置においては、遠隔に配置された複数の測定器(子機)をネットワーク(通信部)を介してパソコン等の上位装置(親機)に接続し、各測定器にて測定された測定データをネットワークを介して上位装置に集め、共通の時間軸上に並べて比較解析を行うようにしている。
【0003】
しかしながら、この種のデータ収録装置では、もっぱら上位装置にてデータ解析を行うようにしているため、測定場所にデータ解析用の専用アプリケーションソフトや汎用のデータ解析ソフトがインストールされたパソコンがない場合には、各測定場所において、測定後すぐにデータを解析することができない、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−242882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、パソコン等の解析ツールを必要とせずに、各測定場所において、他の場所に設置されている測定器の測定データを含めて解析することのできるようにしたデータ収録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも2つの測定器を有するデータ収録装置において、上記各測定器は、それぞれの被測定対象からの測定データを保存するデータ保存メモリと、上記測定データの上記データ保存メモリに対する書き込み、読み出しを制御する制御部と、上記測定データを表示する表示部と、上記各測定器との間で通信を行う通信部とを備え、上記制御部は、自己の測定器の所定の時間軸長の上記測定データを上記データ保存メモリから読み出して上記表示部に表示するにあたって、他の測定器の上記データ保存メモリから上記通信部を介して同一の時間軸長の上記測定データを読み出して上記表示部に併せて表示することを特徴としている。
【0007】
本発明の好ましい態様によれば、上記制御部は、上記表示部の画面を時間軸と平行に上記測定器の数に対応して分割し、上記分割された画面の各々に、上記各測定データをそれぞれ表示する。
【0008】
また、上記各データ保存メモリには、上記各測定データが同一の時間軸長を1区間(測定インターバル)として、複数の区間に区切られた複数のデータ列として保存され、上記表示部には、同一区間内の自己の測定器の上記データ列と、他の測定器の上記データ列とが併せて表示される。
【0009】
また、別の態様によれば、上記表示部には、所定の区間内の自己の測定器の上記データ列とともに、異なる区間の他の測定器の上記データ列が併せて表示される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各測定器は、測定データを保存するデータ保存メモリと、測定データのデータ保存メモリに対する書き込み、読み出しを制御する制御部と、測定データを表示するための表示部と、各測定器との間で双方向通信を行う通信部とを備えており、制御部は、自己の所定の時間軸長の測定データをデータ保存メモリから読み出して表示部に表示するにあたって、他の測定器のデータ保存メモリから上記通信部を介して同一時間軸長の測定データを読み出して表示部に併せて表示することにより、パソコン等の解析ツールを必要とせずに、各測定場所において、他の場所に設置されている測定器の測定データを含めて解析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるデータ収録装置の構成を示す概略的な模式図。
【図2】各測定器の具体的な構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図1および図2により、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、この実施形態では、測定器を3台構成としているが、測定器の数を2台もしくは4台以上としたデータ収録装置も本発明に含まれる。なお、図1および図2において、被測定対象を実際に測定する測定部は図示を省略している。また、測定する物理現象は、例えば電流値、電圧値または温度等でよく、特に限定されない。
【0013】
まず、図1を参照して、この実施形態に係るデータ収録装置1には、第1の測定器10、第2の測定器20および第3の測定器30の3台が含まれ、各測定器間は、各通信部14,24,34を介して双方向通信可能となっている。
【0014】
図1,2では、各通信部14,24,34にケーブルCを接続することにより双方向通信可能とする態様が示されているが、無線によって双方向通信を実現させてもよい。
【0015】
図2を参照して、第1の測定器10には、表示部11,表示用メモリ12,データ保存メモリ13,通信部14,制御部15および操作部16が備えられている。
【0016】
また同様に、第2の測定器20にも、表示部21,表示用メモリ22,データ保存メモリ23,通信部24,制御部25および操作部26が備えられており、第3の測定器30にも、表示部31,表示用メモリ32,データ保存メモリ33,通信部34,制御部35および操作部36が備えられている。
【0017】
表示部11,21,31は、液晶表示パネル等から構成され、各表示用メモリ12,22,32に書き込まれた測定データが表示される。データ保存メモリ13,23,33には、図示しない測定部にて測定された測定データが保存される。この実施形態において、表示用メモリ12,22,32には揮発性メモリが用いられ、データ保存メモリ13,23,33には不揮発性メモリが用いられている。
【0018】
制御部15,25,35は、測定データのデータ保存メモリ13,23,33に対する書き込み、読み出しを制御する。読み出された測定データは、表示用メモリ12,22,32に書き込まれ、表示部11,21,31に表示される。
【0019】
制御部15,25,35には、CPU(中央演算処理ユニット)もしくはマイクロコンピュータ等が用いられてよい。なお、操作部16,26,36は、制御部15,25,35にデータ解析上必要な指示を与えるものである。
【0020】
また、この実施形態において、制御部15,25,35は、表示部11,21,31の各画面を時間軸と平行に測定器の数に対応して分割し、分割された各々の画面に各測定データを表示させる。
【0021】
この実施形態では測定器が3台であるから、表示部11,21,31は3つの画面に分割される。すなわち、表示部11は、第1表示画面11a,第2表示画面11bおよび第3表示画面11cに分割され、同様に、表示部21は、第1表示画面21a,第2表示画面21bおよび第3表示画面21cに分割され、表示部31は、第1表示画面31a,第2表示画面31bおよび第3表示画面31cに分割される。
【0022】
図2に示すように、測定器10,20,30の各データ保存メモリ13,23,33には、測定開始時刻t0から測定終了時刻t7までの被測定対象からの測定データ130,230,330が保存されているものとして、本発明の動作について説明する。測定時刻は測定時点と読み替えられてもよい。
【0023】
なお、説明の便宜上、測定データ130,230,330は、ともに測定開始時刻t0から測定終了時刻t7までの間、同一の時間軸長(t0〜t1,t1〜t2,t2〜t3,t3〜t4,t4〜t5,t5〜t6,t6〜t7)で区切られて保存されているものとする。
【0024】
すなわち、第1の測定器10内の測定データ130は、データ保存メモリ13内にて、t0〜t1間のデータ列130a,t1〜t2間のデータ列130b,t2〜t3間のデータ列130c,t3〜t4間のデータ列130d,t4〜t5間のデータ列130e,t5〜t6間のデータ列130fおよびt6〜t7間のデータ列130gに区切られて保存されている。
【0025】
また、第2の測定器20内の測定データ230は、データ保存メモリ23内にて、t0〜t1間のデータ列230a,t1〜t2間のデータ列230b,t2〜t3間のデータ列230c,t3〜t4間のデータ列230d,t4〜t5間のデータ列230e,t5〜t6間のデータ列230fおよびt6〜t7間のデータ列230gに区切られて保存されている。
【0026】
また、第3の測定器30内の測定データ330も、データ保存メモリ33内にて、t0〜t1間のデータ列330a,t1〜t2間のデータ列330b,t2〜t3間のデータ列330c,t3〜t4間のデータ列330d,t4〜t5間のデータ列330e,t5〜t6間のデータ列330fおよびt6〜t7間のデータ列330gに区切られて保存されている。
【0027】
第1の測定器10にて、例えばt0〜t1間の測定データを解析する場合、制御部15は、自己の測定データ130のうち、t0〜t1間のデータ列130aをデータ保存メモリ13から読み出して表示用メモリ12に書き込むとともに、第2測定器20および第3測定器30より、t0〜t1間のデータ列230a、330aをそれぞれデータ保存メモリ23,33から読み出して表示用メモリ12に書き込む。
【0028】
表示用メモリ12に書き込まれたデータ列130a,230a,330aは、表示部11に表示される。この実施形態では、図1に示すように、データ列130aが第1表示画面11aに表示され、データ列230a,330aがそれぞれ第2表示画面11b,第3表示画面11cに表示される。
【0029】
このように、第1の測定器10の表示部11に、t0〜t1間の自己のデータ列130aとともに、第2の測定器20のデータ列230aおよび第3の測定器30のデータ列330aが並べて表示されるため、特に解析ソフトがインストールされたパソコン等の解析ツールがなくても、各測定器の測定データを解析することができる。
【0030】
また、第2の測定器20にて、例えばt1〜t2間の測定データを解析する場合、制御部25は、自己の測定データ230のうち、t1〜t2間のデータ列230bをデータ保存メモリ23から読み出して表示用メモリ22に書き込むとともに、第1の測定器10および第3の測定器30より、t1〜t2間のデータ列130b,330bをデータ保存メモリ13,33から読み出して表示用メモリ22に書き込む。
【0031】
表示用メモリ22に書き込まれたデータ130b,230b,330bは、表示部21に表示される。この実施形態では、データ列130bが第1表示画面21aに表示され、データ列230b,330bがそれぞれ第2表示画面21b,第3表示画面21cに表示される(図1参照)。
【0032】
これにより、第2の測定器20の表示部21に、t1〜t2間の自己のデータ列230bとともに、第1の測定器10のデータ列130bおよび第3の測定器30のデータ列330bが並べて表示されるため、上記と同様に、特に解析ソフトがインストールされたパソコン等の解析ツールがなくても、各測定器の測定データを解析することができる。
【0033】
また、第3の測定器30にて、例えばt2〜t3間の測定データを解析する場合、制御部35は、自己の測定データ330のうち、t2〜t3間のデータ列330cをデータ保存メモリ32から読み出して表示用メモリ32に書き込むともに、第1の測定器10および第2の測定器20より、t2〜t3間のデータ列130c,230cをそれぞれデータ保存メモリ13,23から読み出して表示用メモリ32に書き込む。
【0034】
表示用メモリ32に書き込まれたデータ130c,230c,330cは、表示部31に表示される。この実施形態では、データ列130cが第1表示画面31aに表示され、データ列230c、330cがそれぞれ第2表示画面31b,第3表示画面31cに表示される(図1参照)。
【0035】
これにより、第3の測定器30の表示部31に、t2〜t3間の自己のデータ列330cとともに、第1の測定器10のデータ列130cおよび第2の測定器20のデータ列230cが並べて表示されるため、上記と同様に、特に解析ソフトがインストールされたパソコン等の解析ツールがなくても、各測定器の測定データを解析することができる。
【0036】
なお、この実施形態において、各操作部16,26,36には、右スクロールボタン16a,26a,36aと、左スクロールボタン16b,26b,36bとがそれぞれ含まれており、これらのスクロールボタンを操作することにより、表示を切り替えることができる。
【0037】
例えば、第1の測定器10において、右スクロールボタン16aをクリックすることにより、表示部11の時間軸がt0〜t1からt1〜t2に切り替わり、第1表示画面11aに測定器10のt1〜t2間のデータ列130b,第2表示画面11bに測定器20のt1〜t2間のデータ列230b,第3表示画面11cに測定器30のt1〜t2間のデータ列330bが表示される。すなわち、図1に示されている第2の測定器20の表示部21の表示内容が第1の測定器10の表示部11に表示される。
【0038】
さらに、第1の測定器10の右スクロールボタンを16aをクリックすると、表示部11の時間軸がt1〜t2からt2〜t3に切り替わり、第1表示画面11aに測定器10のt2〜t3間のデータ列130c,第2表示画面11bに測定器20のt2〜t3間のデータ列230c,第3表示画面11cに測定器30のt2〜t3間のデータ列330cが表示される。すなわち、第3の測定器30の表示部31の表示内容が第1の測定器10の表示部11に表示される。
【0039】
また、本発明は、区間(測定インターバル)の異なる他の測定器のデータ列を自己の測定器に表示させることもできる。
【0040】
例えば、第1の測定器10において、第1表示画面11aにt0〜t1間の自己のデータ列130aを表示させ、第2表示画面11bには第2の測定器20のt1〜t2間のデータ列230bを表示させ、第3表示画面11cには第3の測定器30のt2〜t3間のデータ列330cを表示させることもできる。
【0041】
この場合、第1の測定器10の制御部15は、自己のデータ保存メモリ13からt0〜t1間のデータ列130aを読み出して表示用メモリ12に書き込むとともに、第2の測定器20のデータ保存メモリ23からt1〜t2間のデータ列230bを読み出し、また、第3の測定器20のデータ保存メモリ33からt2〜t3間のデータ列330cを読み出して、それぞれ表示用メモリ12に書き込む。
【0042】
また、本発明は、自己の測定器の表示部に、自己の測定データのみを表示させることもできる。一例として、第1の測定器10の表示部11のうち、第1表示画面11aにはt0〜t1間の自己の測定データ130aを表示させ、第2表示画面11bにはt1〜t2間の自己の測定データ130bを表示させ、第3表示画面11cにはt2〜t3間の自己の測定データ130cを表示させる。
【0043】
この表示態様によれば、表示部11の限られた表示領域内にデータを圧縮することなく表示できるため、測定データを解析するうえで好都合である。
【0044】
なお、本発明は、表示部11に測定データの圧縮波形もしくは拡張(伸張)波形を表示することを排除するものではない。また、スクロールにしても、上記実施形態の区間単位のスクロールではなく、連続スクロールも可能である。
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、各測定器の測定データを測定器間で共有することができ、また、任意の区間(測定インターバル)の測定データを呼び出すことができるため、各測定器の設置場所にて特に解析ソフトがインストールされたパソコン等の解析ツールがなくても、各測定器の測定データを解析することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 データ収録装置
10,20,30 測定器
11,21,31 表示部
12,22,32 表示用メモリ
13,23,33 データ保存メモリ
14,24,34 通信部
15,25,35 制御部
16,26,36 操作部
130,230,330 測定データ
C 通信ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの測定器を有するデータ収録装置において、
上記各測定器は、それぞれの被測定対象からの測定データを保存するデータ保存メモリと、上記測定データの上記データ保存メモリに対する書き込み、読み出しを制御する制御部と、上記測定データを表示する表示部と、上記各測定器との間で通信を行う通信部とを備え、
上記制御部は、自己の測定器の所定の時間軸長の上記測定データを上記データ保存メモリから読み出して上記表示部に表示するにあたって、他の測定器の上記データ保存メモリから上記通信部を介して同一の時間軸長の上記測定データを読み出して上記表示部に併せて表示することを特徴とするデータ収録装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記表示部の画面を時間軸と平行に上記測定器の数に対応して分割し、上記分割された画面の各々に、上記各測定データをそれぞれ表示することを特徴とする請求項1に記載のデータ収録装置。
【請求項3】
上記各データ保存メモリには、上記各測定データが同一の時間軸長を1区間として、複数の区間に区切られた複数のデータ列として保存されており、
上記表示部には、同一区間内の自己の測定器の上記データ列と、他の測定器の上記データ列とが併せて表示されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデータ収録装置。
【請求項4】
上記各データ保存メモリには、上記各測定データが同一の時間軸長を1区間として、複数の区間に区切られた複数のデータ列として保存されており、
上記表示部には、所定の区間内の自己の測定器の上記データ列とともに、異なる区間の他の測定器の上記データ列が併せて表示されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデータ収録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−243167(P2010−243167A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88740(P2009−88740)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】