説明

データ書込制御装置

【課題】 各々異なるデータを格納する異なる記憶部にデータ格納不能が発生しても、速やかにデータ格納可能状態に復帰させることができるようにする。
【解決手段】 EEPROM5はIICバス3を介して機器動作上の重要データの読み書き可能なメモリである。RFIDモジュール7はEEPROM5と同じIICバス3を介してそれ以外のデータが書込まれるメモリである。CPU1はEEPROM5及びRFIDモジュール7に対してIICバス3を介してデータを選択的に書込制御する。また、CPU1は書込先のEEPROM5及びRFIDモジュール7について書込終了情報が得られないとき、RFIDモジュール7への駆動電源V2を瞬断制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ書込制御装置に係り、特に、各々異なるバックアップデータを格納する異なる記憶部を書込制御するデータ書込制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のデータ書込制御装置としては、例えば図3に示すように、CPU1にIICバス(I2Cバス)3を介してEEPROM5およびRFIDモジュール7を接続し、EEPROM5に対してCPU1からIICバス3を介してバックアップデータを記憶制御するとともに、RFIDモジュール7内の記憶部に対して異なるデータをCPU1から同じIICバス3を介して各々個別に記憶制御する構成が知られている。
【0003】
図3中の符号V1、V2はCPU1、EEPROM5およびRFIDモジュール7の駆動電源であり、符号9はRFIDモジュール7との間で非接触でデータを送受信するRFIDタグである。
【0004】
そのようなデータ書込制御装置では、EEPROM5に、機械性能上重要なバックアップデータやユーザー設定データ等の装置動作上重要なバックアップデータを記憶保持し、RFIDモジュール7に、それら以外の比較的重要でないデータやRFIDタグ9に送信するデータを記憶保持するようになっている。
【0005】
なお、RFIDモジュール7は内蔵するマイコンによって記憶制御するとともに、RFIDタグ9との間で送受信制御するようになっている。
【0006】
特開2005−234873号公報(特許文献1)はこの種のものである。
【特許文献1】特開2005−234873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したデータ書込制御装置では、静電ノイズなどの外乱によりRFIDモジュール7、特に内蔵したマイコンに誤動作が発生すると、IICバス3の状態が「H」又は「L」に固定され、正常に動作しているEEPROM5に対するCPU1からのデータ格納が不能になり易い難点がある。
【0008】
しかも、上述したようにEEPROM5には重要なデータが保存されるので、データ格納不能等のようなアクセス不能状態が発生すると、データ書込制御装置を搭載した電子機械の稼働を続けることができなくなる心配がある。
【0009】
そのため、EEPROM5に対するデータ格納不能等が発生した場合、表示手段にエラーメッセージを表示して電子機器の再起動を促し、IICバス3を正常に復帰させる必要があるものの、IICバス3のロック状態すなわちEEPROM5のアクセス不能状態にあった期間のデータバックアップができない欠点が改善されない。
【0010】
本発明はそのような課題を解決するためになされたもので、各々異なるデータを格納する異なる記憶部にデータ格納不能等の不具合が発生しても、速やかにデータ格納可能状態に復帰させることが可能なデータ書込制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのような課題を解決するために本発明に係るデータ書込制御装置は、第1のデータの読み書き可能な第1の記憶部と、この第1の記憶部と同じデータバスを介して第2のデータが書込まれる第2の記憶部と、それら第1および第2の記憶部に対してそのデータバスから第1および第2のデータを選択的に書込制御するデータ書込制御部とを具備し、そのデータ書込制御部が、書込先のそれら第1および第2の記憶部について書込終了情報が得られないときその第2の記憶部への駆動電源を瞬断制御する機能を有している。
【0012】
そして、本発明では、複数回の書込制御によってもその書込完了情報が得られないとき、その第2の記憶部への駆動電源を瞬断制御するよう上記データ書込制御部を形成する構成も可能である。
【0013】
また、本発明では、その第2の記憶部への駆動電源の瞬断後にその書込制御をするよう上記データ書込制御部を形成する構成も可能である。
【0014】
さらに、本発明では、その第1の記憶部への駆動電源から第2の記憶部へ供給される駆動電源ラインを瞬断するよう上記データ書込制御部を形成する構成も可能である。
【発明の効果】
【0015】
このような本発明に係るデータ書込制御装置では、同じデータバスに接続され異なる第1および第2のデータを読み書きする第1および第2の記憶部と、これら第1および第2の記憶部に対してそのデータバスを介して第1および第2のデータを選択的に書込制御するデータ書込制御部とを有し、書込先のそれら第1および第2の記憶部について書込終了情報が得られないとき、そのデータ書込制御部がその第2の記憶部への駆動電源を瞬断制御するよう構成されているから、それら第1および第2の記憶部についてデータ格納不能等の不具合が発生しても、速やかにデータ格納可能状態に復帰させることが可能となる。
【0016】
そして、複数回の書込制御によってもその書込完了情報が得られないとき、その第2の記憶部への駆動電源を瞬断制御するよう上記データ書込制御部を形成する構成では、不用意に駆動電源を瞬断させずにデータ格納を可能にできる。
【0017】
また、その第2の記憶部への駆動電源の瞬断後にその書込制御をするよう上記データ書込制御部を形成する構成では、第2の記憶部への駆動電源の瞬断後にその書込が自動的かつ確実に行える。
【0018】
さらに、その第1の記憶部への駆動電源からその第2の記憶部へ供給される駆動電源ラインを瞬断するよう上記データ書込制御部を形成する構成では、共通電源から第2の記憶部への駆動電源が得られるとともに瞬断可能であって、瞬断回路が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明に係るデータ書込制御装置を示すブロック図であり、従来例と共通する部分には同一の符号を付す。
【0021】
図1において、駆動電源V1で動作するCPU1は、IICバス3を介してEEPROM5およびRFIDモジュール7その他が接続されており、駆動電源V1の電源ラインに直列的に挿入された無接点スイッチSWをオンオフする機能を有するとともに、駆動電源V2の供給制御をする機能を有している。CPU1の動作機能の詳細は後述する。
【0022】
IICバス3は、CPU1とEEPROM5およびRFIDモジュール7との間でデータのやり取りをする公知のデータバスであり、CPU1に接続されるEEPROM5およびRFIDモジュール等の種類や目的によって種々のデータバスが使用される。
【0023】
EEPROM5は、当該データ書込制御装置動作上のバックアップデータやRFIDモジュール7に関するユーザー設定データ等の重要なバックアップデータ等を記憶保持するもので、従来公知の読み書き可能な第1の記憶部としての機能を有し、例えばCPU1と同じ駆動電源V1で動作する。
【0024】
EEPROM5は、データの書込が完了したとき、書込完了情報であるアクノリッジ(ACK)をIICバス3を介してCPU1へ送出する機能を有している。
【0025】
なお、EEPROM5の内部構成は本発明の要部ではないから、その構成の図示や説明を省略する。
【0026】
RFIDモジュール7は、EEPROM5に格納されるデータとは異なるバックアップデータ、すなわち後述するRFIDタグ9に送信するデータ等を記憶保持するメモリ(図示省略)を内蔵し、本発明では第2の記憶部として機能するものである。
【0027】
RFIDモジュール7は、CPU1でオンオフ制御される無接点スイッチSWを介して駆動電源V1から供給される駆動電源V2によって動作し、CPU1のオンオフ制御によって駆動電源V2が印加、切断されるようになっている。なお、通常は無接点スイッチSWがオンになって駆動電源V1から駆動電源V2がRFIDモジュール7に供給されるようになっている。
【0028】
RFIDモジュール7は、内蔵するマイコンの動作の下、所定の周波数の微弱電波に乗せて個体ID番号、文書名、作成者等のデータを内蔵メモリ(第2の記憶部)に書込む機能や、それらを微弱電波に乗せRFIDタグ9に向けて発射する機能、更に、RFIDタグ9からの微弱電波を受信してRFIDタグ9からのデータを読取り解読してCPU1に送信する機能を有する。
【0029】
RFIDモジュール7は、データの書込が完了したとき、IICバス3を介して書込完了情報であるアクノリッジ(ACK)をCPU1へ送出する機能を有している。
【0030】
RFIDタグ9は、例えば、アンテナとこれに接続されたICチップ(何れも図示省略)を有して種々の商品に埋設又は付着され、RFIDモジュール7の制御の下、RFIDモジュール7からの微弱電波を受信しこれを駆動電源として動作し、上述した個体ID番号、文書名、作成者等の種々のデータをそのICチップに格納するととともに、読み出し要求に応じデータを微弱電波に乗せて発射する機能を有している。
【0031】
CPU1は、外部からの所定の指示に基づき、IICバス3を介してEEPROM5又はRFIDモジュール7を選択的にアクティブにして種々のデータを書込み制御するデータ書込制御部として機能を有するとともに、以下の制御機能を有している。
【0032】
すなわち、CPU1は、EEPROM5にデータを書き込む際に、下記(1)又は(2)が発生し、例えば5回程度のリトライ処理をしても書込終了情報が得られず正常な書き込みができなかったとき、RFIDモジュール7の誤動作が原因であると判断してスイッチSWを瞬間的(120μ秒程度)にオフしてからオンし、RFIDモジュール7の電源を瞬断してRFIDモジュール7のみを瞬間的にリセットする機能を有している。
【0033】
(1)EEPROM5にデータを書き込んでも、EEPROM5からIICバス3を介してアクノリッジ(ACK)が返ってこなかった場合。
【0034】
(2)EEPROM5にデータを書き込み後、CPU1からそれを確認しても書込確認情報が得られずにエラーが発生した場合。
【0035】
さらに、CPU1は、RFIDモジュール7にデータを書き込む際に、下記(3)又は(4)が発生し、例えば5回程度のリトライ処理をしても書込終了情報が得られず正常な書き込みができなかったとき、RFIDモジュール7の誤動作が原因であると判断してスイッチSWを瞬間的(120μ秒程度)にオフしてからオンし、RFIDモジュール7の電源を瞬断してRFIDモジュール7のみを瞬間的にリセットする機能を有している。
【0036】
(3)RFIDモジュール7にデータを書き込んでも、RFIDモジュール7からIICバス3を介してアクノリッジ(ACK)が返ってこなかった場合。
【0037】
(4)RFIDモジュール7にデータを書き込み後、CPU1からそれを確認しても書込確認情報が得られずにエラーが発生した場合。
【0038】
そして、CPU1は、RFIDモジュール7への駆動電源V2の瞬断後に、RFIDモジュール7に駆動電源V2が供給されると、EEPROM5又はRFIDモジュール7にデータを書き込み制御するように形成されている。
【0039】
次に、本発明に係るデータ書込制御装置の動作を図2のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
なお、図2はEEPROM5への書込みについての動作であるが、RFIDモジュール7への書込みについての動作についてはステップS4においてEEPROM5をRFIDモジュール7と読み替えればよく、RFIDモジュール7への書込みについてのフローチャートは省略する。
【0041】
CPU1に内蔵されたプログラムがスタートすると、ステップS1で書込みデータ更新処理がスタートし、ステップS2でリセット回数用のフラグ(FLAG)が「0」にセットされ、ステップS3で書込みリトライ用のカウンタ(COUNT)が「0」にセットされてステップS4に移り、EEPROM5への書込みが完了したか判別される。
【0042】
EEPROM5への書込みが完了してステップS4がYESであれば、ステップS1に戻って次の書込みデータ更新処理に移る。
【0043】
EEPROM5への書込みが完了せずにステップS4がNOであれば、ステップS5に移ってカウンタ(COUNT)を1つ進めて、例えば所定の設定値「5」と比較し、カウンタ値が5未満でステップS5がNOであればステップS4に戻り、ステップS4、S5を繰返しながらカウンタ値を1つずつ進める。これらのステップはEEPROM5への書込みリトライ処理である。
【0044】
そして、ステップS5がYESになると、ステップS6でフラグ(FLAG)が「0」か否か判別され、フラグ(FLAG)が「0」であってステップS6がYESであれば、ステップS7でRFIDモジュール7の電源瞬断処理がなされる。
【0045】
続く、ステップS8ではフラグ(FLAG)を「1」進めてステップS3に戻り、ステップS3〜ステップS6を繰返す。これらのステップはRFIDモジュール7への駆動電源V2の瞬断後のリトライ処理である。
【0046】
ステップS6がNOの場合、ステップS9において、EEPROM5への書込みが不能であったとして適当な表示手段に書込みエラーを表示するとともに装置の動作を停止させ、ステップS10で終了する。
【0047】
このように本発明に係るデータ書込制御装置では、機器動作上の重要なデータ(第1のデータ)の読み書き可能なEEPROM(第1の記憶部)5と、このEEPROM5と同じIICバス(データバス)3を介してそれ以外のデータ(第2のデータ)が書込まれるRFIDモジュール(第2の記憶部)7と、それらEEPROM5およびRFIDモジュール7に対してそのIICバス3からそれらデータを選択的に書込制御するCPU(データ書込制御部)1とを具備し、このCPU1では、書込先のそれらEEPROM5およびRFIDモジュール7について書込完了情報や書込確認情報等の書込終了情報が得られないとき、そのRFIDモジュール7への駆動電源V2を瞬断制御するよう形成されて構成されている。
【0048】
そのため、例えば静電ノイズ等によってRFIDモジュール7に内蔵したマイコンに誤動作が発生し、これに起因してIICバス3が「H」又は「L」に固定されてEEPROM5又はRFIDモジュール7に対するデータ格納が不能になっても、速やかにRFIDモジュール7をリセットしてデータ格納可能状態に復帰させることが可能となる。
【0049】
しかも、CPU1では、複数回の書込制御によってもその書込終了情報が得られないとき、そのRFIDモジュール7への駆動電源V2を瞬断制御するよう形成されているから、単なる一過性のノイズ等に対して不用意に駆動電源V2を瞬断させずに速やかにデータ格納ができる。
【0050】
さらに、そのRFIDモジュール7への駆動電源V2の瞬断後にその書込制御をするよう形成するから、RFIDモジュール7への駆動電源V2の瞬断後に、データを自動的に書込める。
【0051】
さらにまた、EEPROM5への駆動電源V1からRFIDモジュール7に供給される駆動電源ラインの途中をCPU1によって瞬断するから、EEPROM5への駆動電源V1からRFIDモジュール7への駆動電源V2が共通して得られるし、その途中に瞬断回路を形成すれば良いから、瞬断回路構成が簡単になる。
【0052】
なお、CPU1にてRFIDモジュール7への駆動電源V2を瞬断する期間は、ごく短い期間であって搭載する他の電子回路や電子部品(センサ等)の動作に影響を与えない程度に設定される。
【0053】
ところで、本発明のデータ書込制御装置では、記憶部として上述したEEPROM5やRFIDモジュール7に限定されず、データ書込制御部としてのCPU1からデータバスを介して読み書き可能な複数の記憶部において実施可能である。
【0054】
また、RFIDモジュール7に供給される駆動電源V2を瞬断するスイッチSWも、上述した回路に限定されず、種々の無接点スイッチ又は機械的スイッチを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るデータ書込制御装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】図1のデータ書込制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】従来のデータ書込制御装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
1 CPU(データ書込制御部)
3 IICバス(データバス)
5 EEPROM(第1の記憶部)
7 RFIDモジュール(第2の記憶部)
9 RFIDタグ
SW スイッチ
V1、V2 駆動電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のデータの読み書き可能な第1の記憶部と、
この第1の記憶部と同じデータバスを介して第2のデータが書込まれる第2の記憶部と、
前記第1および第2の記憶部に対して前記データバスから前記第1および第2のデータを選択的に書込制御するデータ書込制御部と、
を具備し、
前記データ書込制御部は、書込先の前記第1および第2の記憶部について書込終了情報が得られないとき、前記第2の記憶部への駆動電源を瞬断制御する機能を有することを特徴とするデータ書込制御装置。
【請求項2】
前記データ書込制御部は、複数回の書込制御によっても前記書込終了情報が得られないとき、前記第2の記憶部への駆動電源を瞬断制御する機能を有する請求項1記載のデータ書込制御装置。
【請求項3】
前記データ書込制御部は、前記第2の記憶部への駆動電源の瞬断後に前記書込制御をする請求項1又は2記載のデータ書込制御装置。
【請求項4】
前記データ書込制御部は、前記第1の記憶部への駆動電源から前記第2の記憶部へ供給される駆動電源ラインを瞬断する請求項1〜3のいずれか1項記載のデータ書込制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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