説明

データ記録装置

【課題】データ記録装置において、ハウリングを確実に防止する。
【解決手段】マルチトラックレコーダなどのデータ記録装置はCPUを有し、スピーカスイッチ12やインプットセッティングスイッチ14、アサインスイッチ16などの操作に応じて入力音源からの音声信号を処理してメモリに記録する。CPUは、内蔵マイクと内蔵スピーカの同時オンを禁止するとともに、録音スタンバイ状態に移行したトラックの入力音源がライン入力端子から内蔵マイクに切り替わったタイミングで内蔵スピーカをオンからオフに強制的に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ記録装置に関し、特にハウリングの防止に関する。
【背景技術】
【0002】
内蔵スピーカと内蔵マイクを搭載した録音装置などにおいて、内蔵スピーカから出力された音声を内蔵マイクが拾ってしまうことでノイズが発生するハウリングを防止するために各種の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、内蔵マイクと、内蔵スピーカと、マイクのオンオフを切り替えるスイッチ手段と、スイッチ手段により内蔵マイクがオンにされている場合に内蔵スピーカをオフにし、スイッチ手段により内蔵マイクがオフにされている場合に内蔵スピーカをオンにする制御手段を備えることが記載されている。また、これ以外にも、録音ボタンが押されて録音が開始されるタイミングで内蔵スピーカをオフにする技術も提案されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3700680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、マルチトラックレコーダのように複数のトラックに音声データを記録でき、かつ入力音源として複数の内蔵マイクや複数のライン入力を備える場合、入力音源の組み合わせが多岐にわたることとなり、ユーザを徒に混乱させることなく、簡易な操作でハウリングを防止できることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、複数の入力音源を備えるデータ記録装置において、確実にハウリングを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、データ録音装置であって、内蔵マイクと、ライン入力端子と、内蔵スピーカと、入力音源を切り替えるスイッチと、録音スタンバイ状態において前記スイッチにより入力音源が前記ライン入力端子から前記内蔵マイクに切り替わった場合、切り替わりのタイミングにおいて前記内蔵スピーカをオフ制御する制御手段とを有する。
【0007】
本発明において、前記制御手段は、録音スタンバイ状態において前記スイッチにより入力音源が前記内蔵マイクから前記ライン入力端子に切り替わった場合、前記内蔵スピーカをそのままの状態に維持してもよい。
【0008】
また、本発明において、前記内蔵スピーカのオンオフを手動で切り替える手動操作スイッチを有し、前記制御手段は、録音スタンバイ状態において前記手動操作スイッチにより前記内蔵スピーカがオンされた場合、前記録音スタンバイ状態を解除するとともに前記内蔵マイクをオフ制御してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の入力音源を備えるデータ記録装置において、確実にハウリングを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1A〜図1Dに、本実施形態におけるデータ記録装置としてのマルチトラックレコーダ(MTR)の外観構成を示す。図1AはMTRの平面図、図1BはMTRの正面図、図1CはMTRの背面図、図1DはMTRの底面図である。
【0012】
図1Aに示すように、MTRは、電源スイッチ10、内蔵スピーカのオンオフを切り替えるスピーカスイッチ12、入力音源を切り替えるインプットセッティング(INPUT SETTING)スイッチ14、入力音源を複数のトラック(本実施形態では4トラック)のそれぞれに割り当てるアサイン(ASSIGN)スイッチ16、LCDなどの表示部18、各トラック毎に設けられ、各トラックの録音スタンバイを行うRECスタンバイスイッチ20、録音を開始する録音ボタン22、音声データの再生を開始する再生ボタン34を備える。
【0013】
また、図1Bに示すように、MTRの正面には内蔵マイクとして内蔵マイク24及び内蔵マイク26が設けられる。
【0014】
また、図1Cに示すように、MTRの背面にはライン入力端子28及びライン入力端子30が設けられる。
【0015】
さらに、図1Dに示すように、MTRの底面部には内蔵スピーカ32が設けられる。
【0016】
このように、本実施形態のMTRは、入力音源として2つの内蔵マイク24、26及び2つのライン入力28、30を備え、各入力音源をトラック1からトラック4のいずれかに割り当てて録音することができる。入力音源はインプットセッティングスイッチ14で選択され、各トラックへの割り当てはアサインスイッチ16により実行される。例えば、インプットセッティングスイッチ14により内蔵マイク24を選択し、アサインスイッチ16により内蔵マイク24からの音声信号をトラック1に割り当てる。また、インプットセッティングスイッチ14によりライン入力端子28を選択し、アサインスイッチ16によりライン入力端子28からの音声信号をトラック2に割り当てるなどである。各トラックに入力音源を割り当てた後、RECスタンバイスイッチ20を操作することにより当該トラックが録音スタンバイ状態に移行する。所望のトラックを録音スタンバイ状態に移行させた後、録音ボタン22を押下操作しながら再生ボタン34を押下操作することで録音が開始される。なお、まずRECスタンバイスイッチ20を操作して該当するトラックを録音スタンバイ状態に移行させた後で、当該トラックに所望の入力音源をアサインすることもできる。例えば、トラック1のRECスタンバイスイッチ20を操作してトラック1を録音スタンバイ状態に移行させた後、インプットセッティングスイッチ14及びアサインスイッチ16を操作して内蔵マイク24からの音声をトラック1に割り当てることもできる。
【0017】
図2に、MTRの内部構成ブロック図を示す。操作部50は、図1Aにおけるスピーカスイッチ12やインプットセッティングスイッチ14、アサインスイッチ16、RECスタンバイスイッチ20などであり、操作部50からの操作信号はバスを介してCPU60に供給される。
【0018】
ADC(アナログデジタルコンバータ)52は、入力アナログ信号をデジタル信号に変換してCPU60に供給する。ADC52には、2つの内蔵マイク24、26からの音声信号、あるいは2つのライン入力端子28、30からの音声信号が供給される。
【0019】
DAC(デジタルアナログコンバータ)54は、デジタル信号をアナログ信号に変換して内蔵スピーカ32に出力する。
【0020】
表示部18は、図1Bに示すようにMTRの所定位置に設けられ、入力音源や録音状態などを表示する。
【0021】
ROM56は、処理プログラムを記憶する。RAM58はワーキングメモリとして機能し、入力音声信号のミキシング処理やエフェクト処理時、エンコードあるいはデコード処理時に用いられる。
【0022】
CPU60は、ROM56に記憶された処理プログラムに従って各部の動作を制御する。本実施形態においては、特にハウリングを防止するために内蔵スピーカ32の動作や各トラックの録音スタンバイ状態などを制御する。CPU60における基本的な制御動作は、内蔵マイク24、26と内蔵スピーカ32を同時にオンしないように制御することである。すなわち、内蔵マイク24、26のいずれかがオンする場合には内蔵スピーカ32を自動的にオフし、内蔵スピーカ32がオンする場合には内蔵マイク24、26を自動的にオフする。CPU60におけるハウリング防止のためのその他の制御については後述する。
【0023】
メモリコントローラ62は、外部メモリとしてのフラッシュメモリ64を制御し、録音時にはミキシング処理やエフェクト処理されたデジタル音声データをフラッシュメモリ64に記憶する。また、再生時にはフラッシュメモリ64に記憶されたデジタル音声データを読み出してCPU60に供給する。本実施形態では外部メモリとしてフラッシュメモリ64を例示しているが、ハードディスクや光ディスク装置、各種カード媒体を用いることもできる。なお、メモリコントローラ62はCPU60に内蔵してもよい。
【0024】
以上のような構成において、CPU60は、上述したように内蔵マイク24、26と内蔵スピーカ32とが同時にオンしないように内蔵マイク24、26あるいは内蔵スピーカ32の動作を制御する。例えば、スピーカスイッチ12を操作して内蔵スピーカ32をオンにすると、CPU60は内蔵マイク24、26がオンされているか否かを検知し、オンされていれば強制的にオフ制御する。
【0025】
より具体的に説明すると以下のとおりである。すなわち、トラック1に入力音源として内蔵マイク24が割り当てられ、かつ、トラック1のRECスタンバイスイッチ20が操作されてトラック1が録音スタンバイ状態に移行しているものとする。この状態で、ユーザがスピーカスイッチ12を操作して内蔵スピーカ32をオフからオンに切り替えると、CPU60はトラック1に内蔵マイク24が割り当てられ、しかもトラック1が録音スタンバイ状態に移行していることを検知して、トラック1の録音スタンバイ状態を強制的に解除するとともに、内蔵マイク24をオンからオフに切り替える。ここで、内蔵マイクをオフにするとは、マイクの機能を停止する他、内蔵マイクからの音声信号を遮断することを意味する。すなわち、マイクの機能は停止させず、内蔵マイクからの音声信号をスピーカ32へ出力しないようにする。したがって、図示しないヘッドホン出力端子へは内蔵マイク24からの音声信号が出力され、ヘッドホンで聴くことができる。
【0026】
また、録音ボタン22が操作されて既に録音動作を実行中にユーザによりスピーカスイッチ12がオン操作された場合、CPU60は、このスピーカスイッチ12のオン操作を無視してスピーカ32をオフのまま維持する。CPU60は、録音中は常に内蔵スピーカ32をオフ制御する。
【0027】
また、内蔵スピーカ32がオンしているときにトラック1に入力音源として内蔵マイク24あるいは内蔵マイク26が割り当てられ、トラック1のRECスタンバイスイッチ20が操作されてトラック1が録音スタンバイ状態に移行した場合、CPU60は、内蔵スピーカ32を自動的にオンからオフに切り替える。
【0028】
さらに、CPU60は、入力音源の切り替えに応じても内蔵スピーカ32の動作を制御する。すなわち、トラック1のRECスタンバイスイッチ20が操作されてトラック1が録音スタンバイ状態に移行している場合において、インプットセッティングスイッチ14及びアサインスイッチ16により入力音源が内蔵マイク24あるいは内蔵マイク26からライン入力端子28あるいはライン入力端子30に切り替わった場合、CPU60は、内蔵スピーカ32をオフ状態のまま維持する。入力音源が内蔵マイクである場合には、内蔵スピーカ32は常にオフでなければならないが、入力音源がライン入力端子である場合にはハウリングのおそれがないため内蔵スピーカ32をオンにしてもよいが、内蔵スピーカ32をオンするか否かはユーザの操作に委ねる方が好適であるため、オフ動作のまま維持しておく。もちろん、この状態でユーザがスピーカスイッチ12をオン操作すると、CPU60はこの操作を許容して内蔵スピーカ32をオンに切り替える。但し、録音ボタン22が操作されて録音が開始した場合、上述したとおり、CPU60は、内蔵スピーカ32がオンであれば強制的にオフに切り替える。
【0029】
一方、トラック1のRECスタンバイスイッチ20が操作されてトラック1が録音スタンバイ状態に移行している場合において、インプットセッティングスイッチ14及びアサインスイッチ16によりトラック1の入力音源としてライン入力端子28あるいはライン入力端子30から内蔵マイク24あるいは内蔵マイク26に切り替わった場合、CPU60は、内蔵スピーカ32をオンからオフに強制的に切り替える。
【0030】
このように、あるトラックが録音スタンバイ状態に移行している状態で入力音源が切り替わる場合、その切り替えのタイミング及び録音開始のタイミングにおいて内蔵スピーカ32のオンオフ動作を自動的に切り替えることで、ユーザはハウリングについて特に考慮する必要なく入力音源の切り替え及び録音を行うことができる。また、内蔵スピーカ32のオンオフ状態にかかわらず、ヘッドホン端子への音声出力は常に有効にする。これにより、録音中、録音前のスタンバイ状態であっても、ヘッドホンで録音レベルなど音声信号のレベルを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】マルチトラックレコーダの平面図である。
【図1B】マルチトラックレコーダの正面図である。
【図1C】マルチトラックレコーダの背面図である。
【図1D】マルチトラックレコーダの底面図である。
【図2】マルチトラックレコーダの構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
10 電源スイッチ、12 スピーカスイッチ、14 インプットセッティングスイッチ、16 アサインスイッチ、18 表示部、20 RECスタンバイスイッチ、22 録音ボタン、24,26 内蔵マイク、28,30 ライン入力端子、32 内蔵スピーカ、34 再生ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ録音装置であって、
内蔵マイクと、
ライン入力端子と、
内蔵スピーカと、
入力音源を切り替えるスイッチと、
録音スタンバイ状態において前記スイッチにより入力音源が前記ライン入力端子から前記内蔵マイクに切り替わった場合、切り替わりのタイミングにおいて前記内蔵スピーカをオフ制御する制御手段と、
を有することを特徴とするデータ記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記制御手段は、録音スタンバイ状態において前記スイッチにより入力音源が前記内蔵マイクから前記ライン入力端子に切り替わった場合、前記内蔵スピーカをそのままの状態に維持することを特徴とするデータ記録装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記内蔵スピーカのオンオフを手動で切り替える手動操作スイッチ
を有し、
前記制御手段は、録音スタンバイ状態において前記手動操作スイッチにより前記内蔵スピーカがオンされた場合、前記録音スタンバイ状態を解除するとともに前記内蔵マイクをオフ制御することを特徴とするデータ記録装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−98440(P2010−98440A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266440(P2008−266440)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】