説明

データ送信装置及びプログラム

【課題】データの送信時間を短くする。
【解決手段】テンプレートデータ生成部が、画像データにおける各ノズルに対応する画像ドット列において最も発生頻度が高い画像ドットに関するドットデータ要素を配列したテンプレートデータを生成する。データブロック生成部が、画像データにおける各インク吐出周期に対応する各ドットデータ要素の、当該ドットデータ要素に対応するテンプレートデータのドットデータ要素に対する変化を示す符号が配列されたヘッドデータブロックを生成する。結合部が、生成したヘッドデータブロックを順に結合してヘッドデータブロック群を生成する。データ圧縮部が、ヘッドデータブロック群をデータ圧縮して送信する圧縮ファイルを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に関するデータをインクジェット記録装置に送信するデータ送信装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタによる印刷画像の高解像度化が進むに伴って、インクジェットプリンタが取り扱う画像データの大容量化が進んでいる。一方、用紙の搬送方向に直交する方向に関して搬送された用紙を横切るように延在するライン式のインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタのように(例えば、特許文献1参照)、高速印刷を行うインクジェットプリンタにおいては、画像データの送信時間を短くする必要がある。そこで、画像データを圧縮してインクジェットプリンタに送信することによって、データの転送量を少なくして画像データの送信時間を短くすることが行われている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−008175号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像データにおいては、インクジェットヘッドの全てのノズルに関する複数のドットデータ要素が、印刷周期毎に配列されている。このドットデータ要素の配列は、インクジェットヘッドのノズルの配列形態から影響を受ける。上記の文献では、搬送方向と直交する方向の解像度を、この方向に延びる12本のノズル列を平行に配置することで実現している。1本のノズル列中では、この方向に関して、隣接するノズル同士が他のノズル列に属する11個分のノズルを介して離れている。このため、画像データの互いに隣接するドットデータ要素同士の間で値が異なる頻度が高くなり、画像データの圧縮効率が低下することがある。この結果、データの送信時間が長くなる。
【0005】
そこで、本発明は、データの送信時間を短くすることができるデータ送信装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のデータ送信装置は、被記録媒体を搬送する搬送装置、及び、前記搬送装置によって搬送された被記録媒体を搬送方向に直交する方向に横切るように延在しており、複数のインク吐出口が開口しているインク吐出面が形成されたライン式のインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置に、前記被記録媒体に記録すべき画像に関するデータを送信するデータ送信装置であって、前記記録すべき画像に関する画像データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記画像データから、前記記録すべき画像において前記搬送方向に沿って配列された複数の画像ドットで形成されているとともに互いに異なる前記インク吐出口に関連付けられた画像ドット列毎に、当該画像ドット列において最も発生頻度が高い前記画像ドットに関するドットデータ要素が配列されたテンプレートデータを生成するテンプレートデータ生成手段と、前記記憶手段に記憶された前記画像データを構成する各ドットデータ要素の、当該ドットデータ要素に対応する前記テンプレートデータを構成するドットデータ要素に対する変化を示す符号が、前記インクジェット記録装置において前記被記録媒体に前記記録すべき画像を記録するときの前記インク吐出周期に対応するように配列されたデータブロックを生成するデータブロック生成手段とを備えている。さらに、前記データブロック生成手段によって生成された前記データブロックを圧縮する圧縮手段と、前記圧縮手段によって生成された圧縮ファイルを前記インクジェット記録装置に送信する送信手段とを備えている。
【0007】
本発明のプログラムは、被記録媒体を搬送する搬送装置、及び、前記搬送装置によって搬送された被記録媒体を搬送方向に直交する方向に横切るように延在しており、複数のインク吐出口が開口しているインク吐出面が形成されたライン式のインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置に、前記被記録媒体に記録すべき画像に関するデータを送信するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、前記記録すべき画像に関する画像データを記憶する記憶手段、前記記憶手段に記憶された前記画像データから、前記記録すべき画像において前記搬送方向に沿って配列された複数の画像ドットで形成されているとともに互いに異なる前記インク吐出口に関連付けられた画像ドット列毎に、当該画像ドット列において最も発生頻度が高い前記画像ドットに関するドットデータ要素が配列されたテンプレートデータを生成するテンプレートデータ生成手段、前記記憶手段に記憶された前記画像データを構成する各ドットデータ要素の、当該ドットデータ要素に対応する前記テンプレートデータを構成するドットデータ要素に対する変化を示す符号が、前記インクジェット記録装置において前記被記録媒体に前記記録すべき画像を記録するときの前記インク吐出周期に対応するように配列されたデータブロックを生成するデータブロック生成手段、前記データブロック生成手段によって生成された前記データブロックを圧縮する圧縮手段、及び、前記圧縮手段によって生成された圧縮ファイルを前記インクジェット記録装置に送信する送信手段としてコンピュータを機能させる。
【0008】
これら本発明によると、テンプレートデータに、インク吐出口に関連付けられた各画像ドット列において最も発生頻度が高い画像ドットに関するドットデータ要素が配列されており、データブロックが、画像データにおけるドットデータ要素の、これに対応するテンプレートデータのドットデータ要素に対する変化を示す符号で構成されているため、データブロックにおいて同一の符号が発生する頻度が高くなり、圧縮手段によってデータブロックを効率良く圧縮することができる。これにより、インクジェット記録装置に対するデータの送信時間を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る好適な実施形態のデータ送信装置である制御装置の機能ブロック図である。図1に示すように、制御装置16は、PC(パーソナルコンピュータ)上で起動する制御プログラムによって実現される。なお、PCは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard disk drive)などを含んでおり、CPUが制御プログラムを実行することによって、後述する制御装置16の各機能部を実現する。また、制御装置16は、インクジェットプリンタ101を制御するものであり、インクジェットプリンタ101とUSB(Universal Serial Bus)を介して通信可能に接続されている。また、制御装置16は、インクジェットプリンタ101において用紙P(図2参照)に印刷すべき画像に係る画像データをインクジェットプリンタ101に送信する(データ送信装置としての機能)とともに、ユーザからの指示に基づいて当該画像データに係る画像が印刷されるように、インクジェットプリンタ101を制御する。なお、以下の説明においては、制御装置16のデータ送信装置としての機能を中心に説明する。
【0011】
まず、図2を参照しつつ、制御装置16の制御対象であるインクジェットプリンタ101について説明する。図2は、インクジェットプリンタ101の全体的な構成を示す概略側面図である。図2に示すように、インクジェットプリンタ101は、4つのインクジェットヘッド1を有するカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ101には、図中左方に給紙部11が、図中右方に排紙部12がそれぞれ構成されている。
【0012】
インクジェットプリンタ101の内部には、給紙部11から排紙部12に向かって用紙(被記録媒体)Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙部11のすぐ下流側には、用紙を狭持搬送する一対の送りローラ5a、5bが配置されている。用紙搬送経路の中間部には、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7の間に架け渡されるように巻き回されたエンドレスの搬送ベルト8と、搬送ベルト8によって囲まれた領域内においてインクジェットヘッド1と対向する位置に配置されたプラテン15とを含むベルト搬送機構(搬送装置)13が設けられている。プラテン15は、インクジェットヘッド1と対向する領域において搬送ベルト8が下方に撓まないように搬送ベルト8を支持するものである。ベルトローラ7と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙部11から送りローラ5a、5bによって送り出された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。
【0013】
図示しない搬送モータがベルトローラ6を回転させることによって、搬送ベルト8が駆動される。これにより、搬送ベルト8が、ニップローラ4によって外周面8aに押さえ付けられた用紙Pを粘着保持しつつ排紙部12に向けて搬送する。
【0014】
用紙搬送経路に沿った搬送ベルト8のすぐ下流側には、剥離機構14が設けられている。剥離機構14は、搬送ベルト8の外周面8aに粘着されている用紙Pを外周面8aから剥離して、図中左方の右方の排紙部12に向けて送るように構成されている。
【0015】
4つのインクジェットヘッド1は、4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)に対応して、搬送方向に沿って4つ並べて設けられている。つまり、このインクジェットプリンタ101は、ライン式プリンタである。4つのインクジェットヘッド1は、その下端にヘッド本体2をそれぞれ有している。ヘッド本体2は、搬送された用紙Pを搬送方向に直交する方向に横切るように延在した長尺な細長い直方体形状となっている。また、ヘッド本体2の底面が外周面8aに対向するインク吐出面2aとなっている。搬送ベルト8によって搬送される用紙Pが4つのヘッド本体2のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙Pの上面すなわち印刷面に向けてインク吐出面2aから各色のインクが吐出されることで、用紙Pの印刷面に所望のカラー画像を形成できるようになっている。
【0016】
次に、図3及び図4を参照しつつインクジェットヘッド1について詳細に説明する。図3は、インクジェットヘッド1の平面図である。図4は、図3の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。なお、図4では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及びノズル108を実線で描いている。インクジェットヘッド1は、ヘッド本体2と、ヘッド本体2の上面(搬送ベルト8の反対側の面)に配置されていると共に、ヘッド本体2にインクを供給するリザーバユニット(図示せず)とを有している。
【0017】
図3及び図4に示すように、ヘッド本体2は、流路ユニット9、及び、流路ユニット9の上面(搬送ベルト8の反対側の面)9aに固定された4つのアクチュエータユニット21を含んでいる。流路ユニット9は、長方形の平面形状を有する直方体形状となっている。流路ユニット9の上面9aには、リザーバユニットからインクが供給される計10個のインク供給口105bが開口している。また、流路ユニット9内には、インク供給口105bに連通するマニホールド流路105及びマニホールド流路105から分岐した副マニホールド流路105aと、副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経てノズル108に至る多数の個別インク流路とが形成されている。そして、流路ユニット9の下面(搬送ベルト8側の面)には、多数のノズル108がマトリクス状に配置されたインク吐出面2aが形成されている。
【0018】
なお、流路ユニット9の上面9aには、圧力室110となる空孔が等間隔にマトリックス状配置されている。各空孔は、角の丸い菱形形状を有し、ヘッド本体2の長手方向(搬送方向に直交する方向)に延びた16本の空孔列を作っている。各空孔は、ヘッド本体2の短手方向に千鳥状配置され、隣接する空孔列中で互いに隣接する2つの空孔に挟まれている。1つのアクチュエータユニット21に対して、16本の空孔列が対向し、これらに含まれる全空孔は、アクチュエータユニット21と相似の外形形状を有する領域内に分布している。
【0019】
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。リザーバユニットからインク供給口105bを介して流路ユニット9内に供給されたインクは、マニホールド流路105から副マニホールド流路105aに分岐される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に流れ込み、絞りとして機能するアパーチャ112及び圧力室110を介してノズル108に至る。
【0020】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図3に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は流路ユニット9の長手方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は流路ユニット9の幅方向(副走査方向)に沿って互いにオーバーラップしている。
【0021】
アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。具体的には、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シートから構成されている。各圧電シートは、いずれも複数の圧力室110に跨るサイズを有した連続平板である。最上層の圧電シート上における圧力室110に対向する位置には、個別電極が形成されている。最上層の圧電シートとその下側の圧電シートとの間にはシート全面に形成された共通電極が介在している。
【0022】
共通電極はすべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。一方、個別電極は図示しないドライバICからの駆動信号が選択的に入力されるようになっている。アクチュエータユニット21において、個別電極と圧力室110とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータとして働き、圧力室110の数に対応した複数のアクチュエータが作り込まれている。
【0023】
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。アクチュエータユニット21は、圧力室110から離れた上側1枚の圧電シートを活性層とし、且つ圧力室110に近い下側2枚の圧電シートを非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータである。個別電極にパルスを出力することにより、これに対応する圧電シートが変形して圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、ノズル108からインク滴が吐出される。
【0024】
次に、図5を参照しつつ、インク吐出面2aにおけるノズル108の位置について説明する。図5はノズル108の位置関係を示したインク吐出面2aの部分拡大平面図である。なお、図5の左右方向が主走査方向(搬送方向に直交する方向)となっており、上下方向が副走査方向(搬送方向)となっている。さらに、図5においては、説明の都合上、主走査方向及び副走査方向の縮尺を変更している。
【0025】
図5に示すように、インク吐出面2aにおいて、ノズル108が、主走査方向及び副走査方向に関してマトリックス状に配置されている。いずれの仮想線上においても、ノズル108は主走査方向に等間隔で配置されている。図5に示すのは、このようなノズル108の基本的な配置形態である。具体的には、図5中最上段の仮想線上で、互いに隣接する2つのノズル108(#101と#117)との間には、15個のノズル108(#102〜#116)が配置され、それぞれ他の仮想線上に位置している。つまり、各ノズル108(#101〜#116)が、主走査方向に沿って互いに平行に延在する16本の仮想線のいずれかの上に配置されている。いずれも、互いに異なる仮想線上に配置している。そして、主走査方向に関して互いに重なり合うことなく、且つ、全体としても等間隔で配列しているこれら16個のノズル108が、主走査方向解像度の最高解像度である600dpiで画像形成する基本単位を形成している。ノズル108は、この基本単位が主走査方向に連続して繰り返すように配置されている。なお、副走査方向に関しては、図示したように、各仮想線が、等間隔に配列されているわけではないが、所定の位置関係で配置されている。
【0026】
上述したように、インクジェットヘッド1においては、4つのアクチュエータユニット21が配置されており、各アクチュエータユニット21と対向する下方において、ノズル108が、主走査方向に関して664個(#1〜#664)配列されている。4つの各アクチュエータユニット21に対応する664個のノズル108のそれぞれがノズル群u1〜u4を形成している(図7参照)。したがって、各インクジェットヘッド1のインク吐出面2aには、4つのノズル群u1〜u4のノズル108、すなわち、664×4=2656個のノズル108が開口している。
【0027】
さらに、1つのノズル108に対して主走査方向に隣接する2つのノズル108が、副走査方向には上方又は下方(搬送方向に関する上流側又は下流側)のいずれかにのみ配置されている。つまり、ノズル108が主走査方向に沿って千鳥状に配置されている。これにより、流路ユニット9において、ノズル108を含む個別インク流路を高密度に配置することができる。
【0028】
図1に戻って、制御装置16について説明する。制御装置16は、画像記憶部(記憶手段)31と、テンプレートデータ生成部(テンプレートデータ生成手段)32と、データブロック生成部(データブロック生成手段)33と、結合部34と、データ圧縮部(圧縮手段)35と、USBコントローラ(送信手段)36とを有している。
【0029】
画像記憶部31は、インクジェットプリンタ101で用紙Pに印刷すべき画像に係る画像データを記憶するものである。この画像データは、メモリーカード(図示せず)などを介して外部から供給される。図6及び図7を参照しつつ、画像データのデータ構造について説明する。図6は、画像データのデータ構造を示す図である。なお、図6においては、1つのインクジェットヘッド1に係る1つのノズル群u1〜u4に対応する画像データの一部を示している。また、図7は、画像データと搬送された用紙Pに形成される画像との関係を説明するための図である。なお、図7においては、ノズル群u1〜u4の各ノズル108の配置を模式的に示している。また、図6及び図7において示されている1回目〜n回目・・・は、印刷が開始されたときからのインク吐出周期の回数をそれぞれ示している。したがって、画像記憶部31に記憶された画像データは、図6に示すデータ構造が4×4=16個接合されたものとなる。
【0030】
画像データは、ドットデータ要素が配列されたものである。ドットデータ要素は、ノズル108から吐出されるインク滴の数によって決定される画像ドットの種類(インク濃度)を示す2ビットの符号である。本実施形態においては、ノズル108から吐出されるインク滴が1滴の場合のドットデータ要素をSingle(S)と称し、インク滴が2滴の場合のドットデータ要素をDouble(D)と称し、インク滴が3滴の場合のドットデータ要素をTriple(T)と称し、インク滴が吐出されない場合のドットデータ要素をNone(0)と称する。図6及び図7に示すように、画像データにおいては、用紙Pに印刷を行うときの各インク吐出周期に対応するように、インクジェットヘッド1の全てのノズル108(すなわち、1つのノズル群u1〜u4においては、#1〜#664)のそれぞれに係るドットデータ要素が配列されている。
【0031】
なお、インク吐出周期は、用紙Pに印刷すべき画像の副走査方向解像度を決定する。このとき、インク吐出周期の回を重ねる毎に、各ノズル108に対応して画像ドットがそれぞれ副走査方向に順次配置されていく。このとき、各画像ドットは、副走査方向解像度に対応する等間隔で配列し、副走査方向に延びる画像ドット列を形成する。このような用紙P上で隣接配置する画像ドットに対応して、画像記憶部31ではドットデータ要素がインク吐出周期順に配列して記憶されている。
【0032】
図1に戻って、テンプレートデータ生成部32は、画像記憶部31に記憶された画像データからテンプレートデータを生成するものである。テンプレートデータは、画像データの画像ドット列毎に、当該画像ドット列において最も発生頻度が高い画像ドットに関するドットデータ要素を配列したものである。したがって、テンプレートデータの各ドットデータ要素は、互いに異なるノズル108に対応している。テンプレートデータ生成部32は、画像データの画像ドット列毎に全てのドットデータ要素を抽出し、抽出したドットデータ要素のうち、最も発生頻度の高いドットデータ要素を順に配列することによってテンプレートデータを生成する。
【0033】
データブロック生成部33は、画像記憶部31に記憶された画像データ、及び、テンプレートデータ生成部32が生成したテンプレートデータからヘッドデータブロック(データブロック)を生成するものである。ヘッドデータブロックは、インクジェットヘッド1において、用紙Pに画像を印刷するときの各インク吐出周期に対応する全てのノズル108に関する各ドットデータ要素の、当該ドットデータ要素に対応するテンプレートデータのドットデータ要素に対する変化を示す符号が配列されたものである。ヘッドデータブロックは、テンプレートデータを基準として作られ、インク吐出周期毎にまとまっている。ヘッドデータブロックを構成する符号は、ノズル108に対応して、テンプレートデータと画像データとの違いを2値化したものである。ヘッドデータブロックは、このように符号化された違いを、インク吐出周期に関して全てのノズル108についてまとめたデータである。
【0034】
ここで、図8及び図9を参照しつつデータブロック生成部33の動作について説明する。図8は、データブロック生成部33が、ヘッドデータブロックを生成する過程を示す図である。なお、図8においては、1つのインク吐出周期に対応する画像データの一部を示している。図9は、データブロック生成部33がヘッドデータブロックを生成するときに行う動作内容を示すブロック図である。図8に示すように、データブロック生成部33は、各インク吐出周期に対応する画像記憶部31に記憶された画像データ、及び、テンプレートデータ生成部32が生成したテンプレートデータを比較する。このとき、同一のノズル108(#1〜#664)に対応するドットデータ要素同士を比較して、画像データを構成するドットデータ要素の、テンプレートデータを構成するドットデータ要素に対する変化を示す符号を生成する。この変化を示す符号は2ビットで表される。
【0035】
図9に示すように、この変化を示す符号は、インクの吐出状態であるSingle(S)、Double(D)、Triple(T)及びNone(0)を順に時計回りに配置したとき、ドットデータ要素が変化していないときの符号「00」を基準として、時計回りについて吐出状態が1つ変化する毎に符号「00」に1を加算し、反時計回りについて1つ変化する毎に符号「00」から1を減算することによって決定される。例えば、テンプレートデータのドットデータ要素がSingle(S)であり、対応する画像ドットのドットデータ要素が、Double(D)であるときは、時計回りに1つ変化しているため、変化を示す符号が「01」に決定される。また、テンプレートデータのドットデータ要素がSingle(S)であり、対応する画像ドットのドットデータ要素が、Triple(T)であるときは、時計回りに2つ変化しているため、変化を示す符号が「10」に決定される。さらに、テンプレートデータのドットデータ要素がSingle(S)であり、対応する画像ドットのドットデータ要素が、None(0)であるときは、反時計回りに1つ変化しているため、変化を示す符号が「11」に決定される。
【0036】
このように、本実施形態では、複数のインク吐出状態を持ち、印刷時の吐出状態を特定するのに、テンプレートデータの吐出状態との違いの方向とその度合いとを使っている。この違いの方向と度合いとは、吐出状態同士に特定の関連付けをされた関係を持たせることで、その数値化が実現されている。
【0037】
ここでは、1つの吐出状態は、特定の他の2つの吐出状態とのみ直接的に関連付けられており、それ以外の吐出状態とは直接的に関連付けられた状態を介してのみ関連付けられるとした。そのため、ある吐出状態(基準状態)と異なる吐出状態(変化状態)を特定するとき、互いに直接的に関連付けられた吐出状態を順に辿ることになる。このとき、辿り方には2つあり、いずれの辿り方を採用しても元の基準状態を特定することができる。このように、異なる吐出状態同士がリング状に関連付けられた関係の輪を想定したとき、テンプレートデータの吐出状態(基準状態)との違いの方向を辿り方の違い(時計回りと反時計回り)として表し、その度合いを基準状態と変化状態との間に介在する別の吐出状態の数として表すことができる。例えば、時計回りに辿る場合は正の数値が付与され、介在する吐出状態の数がnのときはには違いの度合いとして数値:(n+1)が付与されることになる。
【0038】
図8の例の場合、#1〜#5、#663及び#664のノズル108に対応する画像データ及びテンプレートデータを比較すると、各ドットデータ要素の値が同じであるため、データブロック生成部33が、変化を示す符号を「00」に決定する。そして、#6、#7及び#642のノズル108に対応する画像データ及びテンプレートデータにおいては、画像ドットのドットデータ要素が、対応するテンプレートデータのドットデータ要素に対して、図9のブロック図において時計回りに1つ変化しているため(#6、#7においては、Single(S)→Double(D)、#662においては、None(0)→Single(S)に変化)、データブロック生成部33が、変化を示す符号を「01」に決定する。このように、全てのドットデータ要素について変化を示す符号が決定されることによって、ヘッドデータブロックの生成が完了する。上述したように、テンプレートデータは、各ノズル108に対応する画像ドット列について最も発生頻度が高いドットデータ要素を配列したものであるため、ヘッドデータブロックにおいては、変化を示す符号「00」の発生頻度が高くなる。
【0039】
図1に戻って、結合部34は、データブロック生成部33が各インク吐出周期に対応するように生成した画像データ分のヘッドデータブロックを順に結合することによってヘッドデータブロック群を生成するものである。なお、ヘッドデータブロックの結合順序は、インク吐出周期に対応する順に限られるものではない。また、画像データの一部に相当するヘッドデータブロックを順に結合することによってヘッドデータブロック群を生成してもよい。上述したように、ヘッドデータブロックにおいては、変化を示す符号「00」の発生頻度が高くなるため、ヘッドデータブロック群においても、変化を示す符号「00」の発生頻度が高くなる。データ圧縮部35は、結合部34が生成したヘッドデータブロック群をランレングス方式によりデータ圧縮するものである。ランレングス方式は、データ圧縮法の1つであり、データの中に同じ符号が連続しているときに、その符号と符号の数とでデータを表現する方法である。USBコントローラ36は、データ圧縮部35が生成した圧縮ファイルをインクジェットプリンタ101に送信するものである。
【0040】
以上、説明したように、制御装置16においては、テンプレートデータ生成部32が画像データからテンプレートデータを生成し、データブロック生成部33が画像データ及びテンプレートデータから各インク吐出周期に対応するヘッドデータブロックを生成し、結合部34が、ヘッドデータブロックを各インク吐出周期に対応するように結合してヘッドデータブロック群を生成する。そして、データ圧縮部35が、ヘッドデータブロック群をデータ圧縮して圧縮ファイルを生成し、USBコントローラ36が、データ圧縮部35が生成した圧縮ファイルをインクジェットプリンタ101に送信する。
【0041】
以上、説明した本実施形態によると、テンプレートデータが、各ノズル108に対応する画像ドット列について最も発生頻度が高いドットデータ要素を配列したものであるため、ヘッドデータブロックにおいては、変化を示す符号「00」の発生頻度が高くなり、さらに、ヘッドデータブロック群においても、変化を示す符号「00」の発生頻度が高くなる。このように、ヘッドデータブロック群において、同一の符号の発生頻度が高くなることによって、データ圧縮部35によりヘッドデータブロック群を効率良く圧縮することができる。これにより、インクジェットプリンタ101に対するデータの送信時間を短くすることができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した実施形態においては、ヘッドデータブロックにおける変化を示す符号が、Single(S)、Double(D)、Triple(T)及びNone(0)を順に時計回りに配置したとき、ドットデータ要素が変化していないときの符号「00」を基準として、時計回りについて1つ変化する毎に「00」に1を加算し、反時計回りについて1つ変化する毎に「00」から1を減算することによって決定される構成であるが、他の方法により変化を示す符号を決定する構成であってもよい。例えば、変化するすべてのパターンに対して予め決定された符号を選択する構成であってもよい。また、この変化を示す符号が1ビットまたは3ビット以上で構成されていてもよい。
【0043】
また、上述した実施形態においては、ヘッドデータブロックが順に結合されたヘッドデータブロック群を圧縮して送信する構成であるが、ヘッドデータブロックを結合することなく、1つのヘッドデータブロックを圧縮して送信する構成であってもよい。
【0044】
さらに、上述した実施形態においては、各インク吐出周期に対応して生成されたヘッドデータブロックを順に結合してヘッドデータブロック群を生成する構成であるが、画像データにおいて互いに異なる全てのノズル108に対応するドットデータ要素で構成される任意のデータ群を抽出し、各データ群を構成する各ドットデータ要素の、当該データ要素に対応するテンプレートデータのドットデータ要素に対する変化を示す符号を配列してデータブロックを生成してもよい。
【0045】
また、上述した実施形態においては、データ圧縮部35が、ランレングス方式のデータ圧縮を行う構成となっているが、他の方式でデータ圧縮を行う構成となっていてもよい。例えば、エントロピー符号方式やユニバーサル符号方式でデータ圧縮を行う構成であってもよい。これらの方式でデータ圧縮を行った場合であっても、同一の符号の発生頻度が高いデータブロックにおいては、圧縮効率が高くなる。
【0046】
加えて、上述した実施形態においては、インクジェットヘッド1のインク吐出面2aにおいて、ノズル108がマトリックス状に配置される構成であるが、ノズルの配置パターンは任意のものであってよい。例えば、ノズルが主走査方向に関して直線状に配置されていてもよい。
【0047】
さらに、上述した実施形態においては、制御装置16がUSBコントローラ36を介して圧縮ファイルをインクジェットプリンタ101に送信する構成であるが、圧縮ファイルを、USB以外の通信手段によってインクジェットプリンタ101に送信する構成であってもよい。
【0048】
加えて、上述した実施形態においては、制御装置16が、PC上で起動するプログラムによって実現される構成であるが、PC以外のコンピュータ上で起動するプログラムによって実現される構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタの外観側面図である。
【図3】図2に示すヘッド本体の平面図である。
【図4】図3に示す一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図5】図4に示すインク吐出面の部分拡大図である。
【図6】図1に示す画像記憶部が記憶する画像データのデータ構造を示す図である。
【図7】図6に示す画像データと搬送された用紙Pに形成される画像との関係を説明するための図である。
【図8】図1に示すデータブロック生成部がヘッドデータブロックを生成するときに行うデータ変換の内容を示すブロック図である。
【図9】図1に示すデータブロック生成部がヘッドデータブロックを生成するときに行う動作内容を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1 インクジェットヘッド
2a インク吐出面
16 制御装置(データ送信装置)
31 画像記憶部(記憶手段)
32 テンプレートデータ生成部(テンプレートデータ生成手段)
33 データブロック生成部(データブロック生成手段)
34 結合部
35 データ圧縮部(圧縮手段)
36 USBコントローラ(送信手段)
101 インクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)
108 ノズル(インク吐出口)
u1〜u4 ノズル群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を搬送する搬送装置、及び、前記搬送装置によって搬送された被記録媒体を搬送方向に直交する方向に横切るように延在しており、複数のインク吐出口が開口しているインク吐出面が形成されたライン式のインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置に、前記被記録媒体に記録すべき画像に関するデータを送信するデータ送信装置であって、
前記記録すべき画像に関する画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記画像データから、前記記録すべき画像において前記搬送方向に沿って配列された複数の画像ドットで形成されているとともに互いに異なる前記インク吐出口に関連付けられた画像ドット列毎に、当該画像ドット列において最も発生頻度が高い前記画像ドットに関するドットデータ要素が配列されたテンプレートデータを生成するテンプレートデータ生成手段と、
前記記憶手段に記憶された前記画像データを構成する各ドットデータ要素の、当該ドットデータ要素に対応する前記テンプレートデータを構成するドットデータ要素に対する変化を示す符号が、前記インクジェット記録装置において前記被記録媒体に前記記録すべき画像を記録するときの前記インク吐出周期に対応するように配列されたデータブロックを生成するデータブロック生成手段と、
前記データブロック生成手段によって生成された前記データブロックを圧縮する圧縮手段と、
前記圧縮手段によって生成された圧縮ファイルを前記インクジェット記録装置に送信する送信手段とを備えていることを特徴とするデータ送信装置。
【請求項2】
被記録媒体を搬送する搬送装置、及び、前記搬送装置によって搬送された被記録媒体を搬送方向に直交する方向に横切るように延在しており、複数のインク吐出口が開口しているインク吐出面が形成されたライン式のインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置に、前記被記録媒体に記録すべき画像に関するデータを送信するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記記録すべき画像に関する画像データを記憶する記憶手段、
前記記憶手段に記憶された前記画像データから、前記記録すべき画像において前記搬送方向に沿って配列された複数の画像ドットで形成されているとともに互いに異なる前記インク吐出口に関連付けられた画像ドット列毎に、当該画像ドット列において最も発生頻度が高い前記画像ドットに関するドットデータ要素が配列されたテンプレートデータを生成するテンプレートデータ生成手段、
前記記憶手段に記憶された前記画像データを構成する各ドットデータ要素の、当該ドットデータ要素に対応する前記テンプレートデータを構成するドットデータ要素に対する変化を示す符号が、前記インクジェット記録装置において前記被記録媒体に前記記録すべき画像を記録するときの前記インク吐出周期に対応するように配列されたデータブロックを生成するデータブロック生成手段、
前記データブロック生成手段によって生成された前記データブロックを圧縮する圧縮手段、及び、
前記圧縮手段によって生成された圧縮ファイルを前記インクジェット記録装置に送信する送信手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−37298(P2009−37298A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198901(P2007−198901)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】