説明

トイレ装置

【課題】ティッシュペーパーなどでも粉砕して排出できるようにする。
【解決手段】便器本体20の溜まり部18に粉砕手段40を設ける。粉砕手段は粉砕機構部40Aを有する。粉砕機構部はカッタ機構であって、カッタ部材41を有する。カッタ部材はその回転軸方向に複数のカッタ刃を有する。隣接するカッタ部材のカッタ刃同士が少許の間隙を保持して噛み合うようになっている。このカッタ部材の作用でティッシュペーパーなどを含む排泄物等を細かく裁断し、破砕できるので、この粉砕処理で排泄物等(固形物)が流状物となる。流状物であるため排出が容易になり、排出管の詰まりを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は固定式の洋式トイレや、可搬型の簡易洋式トイレなどに適用できるトイレ装置に関する。詳しくは、便器本体の溜まり部に排泄物等を粉砕処理する粉砕手段を設けると共に、この粉砕手段として裁断・破砕できるカッタ機構を採用することで、排便に限らず、難溶性のティッシュペーパーなどであっても、これらを下水管などへの排出に適するように裁断・破砕できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
現在の洋式トイレは、便器本体の底部にトラップ水を溜める溜まり部が設けられ、トラップされたトラップ水内に排便すると共に、水溶性のトイレットペーパーと共に排泄物(以下排泄物等という)を、トラップ水と一緒に下水管側に排出するようにしている(例えば特許文献1)。
【0003】
洋式トイレで使用するペーパーに関しては、できるだけ備え付けのトイレットペーパー(水溶性のペーパー)を使用するように、注意を喚起するようになされていることが多い。これは便器本体内での詰まりや下水管での詰まりを防止するために、ペーパーとして水溶性のトイレットペーパーの使用を推奨するためである。最近では、この種トイレットペーパーの他に、水溶性のペーパーであれば、洋式トイレでも使用できるようになってきている。例えば洋式トイレでも使用できるような水溶性のティッシュペーパーなどが市販されている。
【0004】
一方、固定式の洋式トイレではなく、可搬型の簡易洋式トイレも知られている(例えば特許文献2)。この可搬型の簡易洋式トイレは、介護を必要とする老人や、身体が不自由で家屋内の既設トイレ(洋式トイレなど)まで出向くことが困難な人のために開発されたものである。
【0005】
この可搬型簡易洋式トイレは、容易に居室内に設置できるように椅子型に構成され、椅子に座って用を足すことができる。簡易洋式トイレもその構造は固定式の洋式トイレと殆ど変わりはない。そのため、簡易洋式トイレもトラップ水を溜める溜まり部を有する便器本体が使用され、使用後はトラップ水と共に排泄物等を排出する。
【0006】
このような簡易洋式トイレにあっても、排泄物等が便器本体に詰まったり、排出管に詰まったりしないように、使用できるペーパー類はトイレットペーパーなどのような水溶性のペーパーである。また、排出を容易にするため、便器本体内に粉砕手段を設けるものもある(例えば特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−308404号公報
【特許文献2】特開2000−325258号公報
【特許文献3】特開2001−275885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したように洗浄水を使用する洋式トイレでは、トラップ水と共に排泄物等を粉砕することなく便器本体外に排出するために、備え付けのトイレットペーパー以外は使用しないように使用上の注意および喚起を行なっているが、それでも備え付け以外の物を使用してしまう場合がある。
【0009】
例えば、ティッシュペーパーがある。ティッシュペーパーを丸める等して凝縮した状態で便器本体内に廃棄すると、便器本体や下水管が詰まってしまう事故が起き易い。
【0010】
水溶性のティッシュペーパーでもこれを大量に使用した場合には同様な事故が起き易い。また、公共の場におけるトイレ設備等、不特定多数の人々が利用するトイレ設備にあっては、使用済みの生理用品の処置方法についての改善策が求められている。この改善策の一例として、使用済みの生理用品を既存のトイレ設備に破棄できる水溶性の生理用品が販売されているが、トイレットペーパーなどと一緒に使用した場合には、水溶性品であったとしても、これに水(トラップ水などの洗浄水)が浸透するまでの時間がかかるため、固形性が崩れず、安全に排出できるとは限らないからである。この問題は簡易洋式トイレの場合でも同じである。
【0011】
特許文献3には、簡易洋式トイレに粉砕手段を備える構成が開示されているので、この構成を上述した固定式の洋式トイレに採用することが考えられる。しかし、この粉砕手段は回転羽根を横に倒して使用するようになっているが、回転羽根のみで粉砕するものであるから、排泄物はもちろんのことトイレットペーパーなどの水溶性ペーパー類を粉砕するのには不十分である。したがって、通常のティッシュペーパーなどを一緒に使用した場合には、粉砕能力を遙かに超えた処理状態となるおそれがある。そのため、排泄物を含めて固形状態で排出されるおそれが高く、それがため便器本体や下水管(排出管)の詰まりを改善するには不十分である。
【0012】
固定式ではなく、簡易式の洋式トイレの場合でも、特許文献3のような粉砕手段を採用しただけでは、固定式洋式トイレと同じような問題を惹起するものと考えられる。
【0013】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、特に便器本体の溜まり部に排便などの排泄物等を粉砕処理する粉砕手段を設けると共に、この粉砕手段として裁断・破砕できるカッタ機構(粉砕機構部)を採用することで、排便に限らず、難溶性のティッシュペーパーなどが使用された場合であっても、これらを下水管(排出管)への排出に適するように裁断・破砕できるようにしたトイレ装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載したこの発明に係るトイレ装置は、底部に溜まり部を有する便器本体と、
上記溜まり部内にトラップされたトラップ水内に水没するように設けられた粉砕手段とからなり、
上記粉砕手段は、カッタ刃を有する粉砕機構部と、その駆動手段とで構成され、上記粉砕機構部を駆動することで、上記溜まり部内に落下した排泄物等を裁断・破砕するようになされたことを特徴とする。
【0015】
この発明に係るトイレ装置は、固定式の洋式トイレの他に、室内での使用を前提とした可搬型の簡易洋式トイレにも適用できる。このトイレ装置は、便器本体の底部に排泄物等を裁断・破砕する粉砕手段が設けられる。本発明では、底部に溜まり部が設けられた便器本体を使用した場合であるので、溜まり部に溜まったトラップ水内に水没するように粉砕手段が設けられる。
【0016】
粉砕手段は、カッタ機能を有するもので、粉砕機構部(カッタ機構部)とその駆動手段とで構成される。粉砕機構部は、2種類に大別できる。その1つは、粉砕機構部が、互いに回転する複数のカッタ部材で構成される場合であり、他の1つは粉砕機構部として、固定されたガイド部材と、これに取り付けられたカッタ部材(回転部材)とで構成される場合である。
【0017】
その1つについてのみ説明すると、互いに噛み合うように並設配置された4つのカッタ部材で粉砕機構部が構成される。カッタ部材はその長手方向(回転軸方向)に複数の円板状カッタ刃が所定の間隔を保持して取り付けられて構成されたもので、隣接するカッタ部材のカッタ刃同士が互いにその側面部側で噛み合うように配置される。
【0018】
噛み合う程度は任意である。カッタ部材としてほぼストレート型のものを使用するときは、カッタ刃の大きさはほぼ同じであるので、長手方向に亘って同じ噛合深さをもって噛み合う。カッタ部材がほぼストレート型とほぼ糸巻型の組み合わせでは、カッタ刃の噛み合い方が長手方向に向かって漸次変わるので、この場合にはカッタ部材の中央部が最も浅く噛み合う。この組み合わせは、ほぼ糸巻型形状を成すカッタ部材が、他のカッタ部材と噛合することで、カッタ部材同士の噛合部位のほぼ中央部にストレート型形状を成すカッタ部材同士が噛合する場合よりも深い凹所が形成されるとともに、ほぼ糸巻型形状を成すカッタ部材の歯先外形が全体として、両端側から中央部へ向かって湾曲することになる。このため、排泄物等は、この凹所に寄せ集められ易くなり、排泄物等を効果的に裁断および破砕できる。
【0019】
粉砕機構部のカット方式は、ストレートカット、クロスカット又はスパイラルカットである。何れの方式によるカッタ刃を使用するかは任意であるが、クロスカット方式を例示した。このカッタ刃を使用することで、排泄物等として排便の他に、ティッシュペーパーなど比較的破砕し難い物が含まれている場合でも、これら排泄物等を効果的に裁断し、破砕できる。したがって、便器本体や下水管(排出管)などが詰まったりする事故を未然に防止できる。
【0020】
便器本体には、汚物の溜まり部の上部に、便器本体の開口部よりも径小な縮径部(環状フランジ部)を設け、この縮径部を閉塞する開閉蓋と、排泄物等を圧送するための圧送手段を設けることができる。この場合、汚物などが開閉蓋に落下すると、その重みで開閉蓋の先端部が縮径部の縁部から離れて、汚物はその自重によって自動的に溜まり部内に落下するような構造の開閉蓋が好ましい。圧送手段によって排泄物等を、既設トイレの下水管に連結された排出管に圧送できる。開閉蓋は特に簡易洋式トイレなどに適用すると、便臭の漂よいをなくせるので都合がよい。
【発明の効果】
【0021】
この発明では、便器本体溜まり部に汚物の粉砕手段を設けると共に、この粉砕手段として裁断・破砕できるカッタ機構を採用したものである。
【0022】
これによれば、排便に限らず、難溶性のティッシュペーパーなどが使用された場合であっても、これらを裁断し、破砕することができるので、固形物の大きさが小さくなる。そのため排泄物等を排出するとき、便器本体や下水管(排出管)に、これらが詰まるような事態を未然に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
続いて、この発明に係るトイレ装置の好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
以下に示す実施例は、この発明に係るトイレ装置を居室内で使用することを前提とした簡易洋式トイレに適用した場合である。居室内で使用する場合であっても、固定式の洋式トイレと同様に、お尻洗浄機能の付いた、いわゆる温水洗浄便座の設備が付いた洋式トイレが好ましい。ただし、以下の説明ではこの温水洗浄便座の設備についての説明は省いてある。
【実施例1】
【0025】
図16はこの発明の適用例である。この例は家屋1の廊下2に面して既設トイレ(固定式の洋式トイレ)3が設置された例である。既設トイレ3内には便器4と洗浄用注水タンク5が設置されている。廊下2に沿ってこの例では寝室としての部屋6が位置し、部屋6内には例えばベッド7が置かれている。
【0026】
簡易洋式トイレ10には、給水手段と排出手段が設けられ、給水手段は上水道に連結され、排出手段は下水管(下水道)に連結される。通常では給水手段(給水ホース12)と排出手段(排出ホース14)の連結は、それぞれ既設便器4の給水管と排出管(下水管)が利用される。
【0027】
図1はこの発明を簡易洋式トイレ10に適用したときの一例を示す要部断面図である。この簡易洋式トイレ10は便器本体20を有する。便器本体20は通常の水洗式トイレ(洋式トイレ)とほぼ同じ漏斗状の断面形状をなすが、その全体形状は箱型として構成される。近年はインテリア要素も要望され必ずしも箱形だけではなく、例えば肘掛けのある椅子型のものも利用されている。
【0028】
便器本体20を軽量化するため、この例では便器本体20はプラスチックによる成型品であるが陶器等の他の素材を使用して成形してもよい。便器本体20の上部開口部側には便座21が位置すると共に、この便座21および上部開口部を閉塞するような便蓋23が設けられている。
【0029】
便器本体20の底部がトラップ水(溜まり水)や排泄物等の溜まり部18となる。溜まり部18に連通して断面がほぼ「へ」の字状をなすS字トラップ部(排出部)22が設けられ、その末端の排出口27に排出ホース14が連結される。便器本体20の背面部20bに、排出口27に関連した連結部26が設けられると共に、便器本体20の内部には開閉弁として機能する電磁弁24が連結部26に近接して設けられている。溜まり部18に連通するS字トラップ部22のほぼ「へ」の字状の形状は、図示の形状の他にP型、U型、椀型などが考えられる。これらの形状はいずれも同様な作用効果が得られる。
【0030】
電磁弁24は、溜まり部18内のトラップ水(排泄物を含んだ水)を便器外に排出するときだけ開くように制御され、トイレを使用していないときは閉じられている。主として漏水を防止するために設けられている。
【0031】
便器本体20の上部近辺で、S字トラップ部22側の壁面18aには洗浄水の給水口28が設けられている。本体背面部20bに設けられた連結部34とこの給水口28との間には連結管30が配される。連結管30は分岐管が使用され、給水口28に向かう一方の連結管30に洗浄水を制御するための電磁弁32が取り付けられている。連結部34に連結される給水ホース12からの給水をこの電磁弁32によって制御できるようにするためである。
【0032】
分岐された他方の連結管30にも電磁弁33を介して洗浄ホース(洗浄管)240が連結されている。洗浄ホース240の先端部は溜まり部18のトラップ水の水面よりも上側に突出するように設けられている。この洗浄ホース240による注水(実際には噴射)によって、後述するように溜まり部18内と開閉蓋212の裏面の洗浄が行われる。
【0033】
なお、給水口28と壁面18aとの間にはゴム状の漏水防止管29が介挿され、洗浄ホース240が貫通する溜まり部18にも漏水防止管242が介挿され、外部への漏水を防止している。
【0034】
溜まり部18のトラップ水が貯えられる部位には排泄物等の粉砕手段40が設けられる。粉砕手段40は溜まり部18内に溜まった排泄物やトイレットペーパーなど(以下排泄物等と総称する)を裁断・破砕して、できるだけ固形物を小さく、できれば流状物とするためのもので、粉砕した排泄物等は粉砕手段40と溜まり部18の底壁との間の空間を経て、トラップ水と混合して排出される。排泄物のみならず、溜まり部18内に投下されたその他の物(トイレットペーパー、水溶性を含めたティッシュペーパー、生理用品など)を適当な大きさに裁断し、破砕するため、粉砕手段40としてはカッタ機構(粉砕機構部)が採用される。
【0035】
そのため、この粉砕手段40は粉砕機構部40Aと、その駆動手段40B(図3参照)とで構成される。粉砕機構部40Aは、図2に示すように複数のカッタ部材41(41A,41B,・・・)で構成される。図3および図4に示すようにカッタ部材41はその回転軸42の軸方向(長手方向)に対して複数のカッタ刃43(43a、43B、43C、・・・)が所定の間隔ΔLを保持して多数配列されて構成される。
【0036】
カッタ刃43は図4に示すように円板状をなし、その円周方向に向かって所定の間隔で形成されたくさび状をなす複数の刃部47(47a,47b,・・・)を有する。刃部47a、47b、・・・の先端部にはこの例では鋼が使用されているが、その全体をステンレス鋼で構成してもよい。
【0037】
カッタ刃43の夫々には、刃部47の内側であって、その円周方向に所定の間隔を保持して複数の透孔48が設けられている。これら透孔48によってカッタ刃43の左右両側面の間で、トラップ水を始めとして粉砕された流状物を流通させることができるので、排泄物等の排出をスムーズに行うことができる。
【0038】
このように複数のカッタ刃43で構成されたカッタ部材41が図2に示すように連立して並設される。連立数は溜まり部18の内部空間の大きさによって定まり、カッタ刃43の外径は溜まり部18の深さなどによって定まる。図2の例ではカッタ部材41を4連並設することで粉砕機構部40Aが構成されている。
【0039】
カッタ部材41を連立させる場合、隣接するカッタ部材41、41同士のカッタ刃43、43は、互いにその側面部において少許の間隙を空けて噛み合う(擦り合う)ように、互いのカッタ刃43は互い違いとなるように配置されている。互い違いに噛み合うカッタ刃43同士の噛合深さは任意であるが、効率よく裁断し、破砕するためには適当な深さをもって噛み合うように配置される。例えば刃部47の長さ(半径方向)の1/3〜1/2となるように相互が配置される。
【0040】
複数のカッタ部材41A〜41Dに設けられた回転軸42は、図3に示すように溜まり部18の側壁に設けられた軸受け部42a、42bを介して外部に導出される。軸受け部42a、42bには漏水しないような措置が施されているものとする。
【0041】
軸受け部42b側の回転軸42には図3に示すような駆動手段40Bが設けられる。駆動手段40Bはこの回転軸42に設けられた回転伝達手段44と、駆動モータ46とで構成される。駆動モータ46は便器本体20の底面板20cに固定され、モータ軸46aの回転力が回転伝達手段44を介して複数のカッタ部材41に伝達される。回転伝達手段44は、図5に示すようにカッタ部材41A〜41Dのそれぞれの回転軸に設けられたギア44A〜44Dが互いに歯合するように配置されると共に、駆動モータ46に関連したギア44Eは特に中間のギア、この例ではギア44Bに歯合されている。
【0042】
回転伝達手段44をこのように構成すると、ギア44Eが矢印のように時計方向に回転すると、他のギア44A〜44Dはそれぞれ矢印のように回転する。つまり、カッタ部材41Aと41Bが対のカッタ機構として作用し、互いに物をかみ砕く方向(食い込む方向)に回転する。同様に他のカッタ部材41Cと41Dとの間でもこれらが対のカッタ機構として機能し、物を食い込む方向に回転する。
【0043】
また、カッタ刃43同士は少許の間隙をもって互いに噛み合うようになされ、しかもカッタ部材41のそれぞれのカッタ刃43には複数の刃部47が設けられているので、粉砕機構部40Aはクロスカット機構部として機能する。カッタ部材41を回転駆動すると、排泄物等はカッタ刃43の内部に食い込まれながら裁断・破砕されるため、排泄物等は非常に細かく裁断され、そして細かに破砕される。その結果、溜まり部18内に投下されたトイレットペーパーはもちろんのこと、ティッシュペーパーなども細かく裁断(クロスカット)される。
【0044】
これに加えて粉砕手段40、特に粉砕機構部40Aはトラップ水内に水没した状態にあるので、粉砕機構部40Aは水中で駆動されていることになる。その結果、排泄物等にはトラップ水が浸透しており、トラップ水が浸透した状態で粉砕されるので、排泄物等を一層粉砕し易くなる。生理用品などでも水溶性のものであれば、この浸透水の作用を利用して裁断すれば比較的容易に裁断できる。
【0045】
図1に示すように、底面板20cの内側(上面側)にはCPUなどで構成された制御部50が配される。上述した排出用電磁弁24、給水用電磁弁32、33、モータ46などの各駆動が、制御部50によって所定のタイミングで所定の時間だけ制御される。制御部50用の電源スイッチ52は本体背面部20bに設けられ、本体上面部であって、便蓋23の下面には開閉スイッチ55(後述する)が設けられている。
【0046】
図1に示した簡易洋式トイレ10にはさらに以下の機構が採用されている。図1に示すように、便器本体20における溜まり部18の上部であって、給水口28よりも下側の所定位置には、溜まり部18に所定の圧縮空気を送給するための粉砕物用圧送手段200が設けられる。この溜まり部18の上部であって、圧送手段200の取り付け位置よりも若干上部側には縮径部230が設けられている。この縮径部230を閉塞し、溜まり部18を密閉できるように、縮径部230の下面には開閉蓋機構210が設けられる。
【0047】
圧送手段200はエアコンプレッサで構成することができ、このエアコンプレッサ200用の送給管204が取り付け手段206を介して溜まり部18側に導出される。取り付け手段206は溜まり部18のトラップ水の水面より上部に設けられる。エアコンプレッサ200は便器本体20の背面空間部20a内に設けられた取り付け板202に固定される。
【0048】
便器本体20にエアコンプレッサ200を備えるのではなく、簡易洋式トイレ本体の外部より圧縮空気を取り入れるような機構であっても、同様の作用を期待できる。
【0049】
縮径部230は環状フランジ部として構成され、溜まり部18の内面に向かうように所定長だけ突出している。上述した送給管204は溜まり部18のトラップ水と縮径部230との間に位置している。
【0050】
縮径部230は図1からも明らかなように、その全体が多少S字トラップ部22側に傾斜するように設けられている。縮径部230の下面側には、この縮径部230を閉塞できるような開閉蓋機構210が設けられている。開閉蓋機構210としては、回動式とスライド式が考えられる。図1の例は回動式である。
【0051】
この例では、回動式であるため、開閉蓋機構210を構成する蓋本体212を有し、この蓋本体212の一端、図の例では右端部が回動軸部214となされ、この回動軸部214が縮径部230の下面部232に位置するように、便器本体20に対して回動自在に軸支される。この軸支部は便器本体20に対して水密的に軸支されている。
【0052】
蓋本体212は、その周面が縮径部230の下面縁部234と当接した状態となるように付勢される。蓋本体212は下面縁部234に沿った形状をなすと共に、通常はこの下面縁部234に接触して溜まり部18内を密閉できるように、回動軸部214と下面部232の壁面との間には付勢用のバネ216が巻き付けられている。このため、蓋本体212によって粉砕手段40が遮蔽され、粉砕手段40が配設されていることによって生じる危害感の発生を抑止できる。
【0053】
ここで、上述したように縮径部230はS字トラップ部22側に多少傾斜するように設けられているので、開閉蓋機構210を構成する蓋本体212自体も、S字トラップ部22側に傾いて取り付けられる。このように蓋本体212を傾けて取り付けるようにすれば、図6に示すように蓋本体212の上面に落下した排泄物等(破線図示)を残らず、溜まり部18内に落とし込むことができる。
【0054】
上述した洗浄ホース240は、蓋本体212の裏面側と溜まり部18の周面の一部の双方に、洗浄水を噴射できるような角度をもってその先端部が溜まり部18内に取り付けられる。この例では図1に示すように、蓋本体212の回動軸部214の近傍であって、その下部側に液密的に取り付け固定される。
【0055】
このように構成された便器本体20には給水ホース12と排出ホース14とが連結されると共に、それらは既設トイレ3に導かれる。
【0056】
図7は既設トイレ3の概要を示す。
図7は温水洗浄便座80を備えた既設便器4を例示する。この場合には水道管(上水道管)82に分岐管84が連結され、この分岐管84のうち水道管82側に第1の分岐口86が設けられ、ここに温水洗浄便座用のホース87が連結される。第1の分岐口86より末端に近い方に第2の分岐口88が設けられ、ここに洗浄水用のホース89が連結される。
【0057】
この例では、このような分岐構成の分岐管84が使用されると共に、第1と第2の分岐口86,88との間に逆止弁90が設置されると共に、分岐管84の末端部に給水ホース12に対する連結部92が設けられる。この連結部92に給水ホース12の先端に設けられた連結部60Aが連結される。逆止弁90はその機能が判る程度に略して図示されている。
【0058】
このように新たな分岐管84を設け、ここに給水ホース12を取り付けることによって簡易洋式トイレ10に洗浄水を供給できる。なお、第1と第2の分岐口86,88との間に逆止弁90を設置したのは、万が一ホース89や給水ホース12側からの水が逆流して温水洗浄便座側に供給する水と混じり合わないようにするためである。
【0059】
分岐管84の末端部分にはさらに消毒液用の連結部に消毒液を満たしたタンク96が挿着される。消毒液を使用することで、既設トイレ3はもちろんのこと簡易洋式トイレ10の衛生状態を改善できる。更に、排出ホース14も同時に洗浄できるものである。なお、タンク96は必ずしも備えられていなくてはならないものではなく、必要に応じて適宜設けるようにしてもよい。
【0060】
このように既存のトイレの配水系を流用すれば、分岐管84を付設するだけの簡単な増設工事で簡易洋式トイレ10を使用することができる。
【0061】
排出ホース14は、排出管例えば既設トイレ3内の排出管に直接排出できるように配管してもよいが、簡単には排出ホース14を便器4内まで導き、汚水などを便器4内に直接流し込むことである。あるいは、便器4に排出用の排出口を設け、ここに排出ホース14を連結して便器4内に排出することである。
【0062】
図8に示す実施例は、便器4に設けられた連結部114に連結した例である。この場合には便器本体108を改良する。図8に示すように、便器本体108には排出管110を有するが、この便器本体108であって、その溜まり部よりも上部側に排出導出口112を設け、その背面側に設けられた連結部114に排出ホース14の連結部62Bが連結される。
【0063】
このように既設便器4を改良する場合、簡易洋式トイレ10とこの既設便器4には高低差があり、便器4の方が高い位置に位置するときには、排出ホース14内に流状物が滞留するおそれがある。そのため、排出ホース14内から流状物を完全に排出できるように、上述したエアコンプレッサ200の圧力が調整される。
【0064】
なお、図示はしないが、排出導出口112を含めて溜まり部の上部を閉塞する閉塞蓋を設け、簡易洋式トイレ10の排出処理に関連してこの閉塞蓋を閉じるように構成することもできる。その場合には、この閉塞蓋は電動式による閉塞操作が好ましい。
【0065】
このように既設トイレ3を利用して給水と排出を行うときには図9以下の給排出管が使用される。図9は給水ホース12の一例を、図10は排出ホース14の一例を示す。給水ホース12の一端部12aを上水道管側に接続される端部とし、他端部12bを簡易洋式トイレ10に接続される端部としたとき、一端部12a及び他端部12bに各々逆止弁付きの連結部60A,60Bが取り付けられている。
【0066】
排出ホース14にも同様に一端部14a及び他端部14bに逆止弁付きの連結部62A,62Bが設けられている。この場合の一端部14aは簡易洋式トイレ10側に連結される端部であり、他端部14bは下水道管側などに接続される端部である。
【0067】
給水ホース12は便器本体20に供給される洗浄水用として使用されるものであるから、小径のビニルホースなどを使用することができる。これに対して、排出ホース14は、その管内を汚物などを粉砕した流状物が流れるものであるから、給水ホース12と同径か僅かに太い径のビニルホースなどを使用することができる。これは固まった汚物ではなく、洗浄水と混合した流状物を取り扱うためである。図10は、給水ホース12よりも大径の排出ホース14を使用した場合である。
【0068】
給水ホース12と排出ホース14の管径を、例えば上述したような管径に選定すると、元々太さが違うために、給水ホース12を排出ホースとして使用したり、排出ホース14を給水ホースと間違って連結したりする、初歩的な誤連結作業を確実に防止できる。もちろん、異なる管径のものを使用する場合に限らず、同じ管径のものを使用する場合でも、図9および図10に示すように、目印となる名称例えば「給水ホース」や「排出ホース」という名称をホースの表面に刻印することで、誤連結を確実に防止できる。また、連結部の接合金具形状を非共通化すことで誤連結防止を行うこともできる。更に、給水ホース12と排出ホース14との色を変え色別により誤連結を防止することもできる。
【0069】
逆止弁付きの連結部60(62)は、例えば図11のように本体63の中空内部に断面矩形状の弁作動室64が設けられ、ここに弁作用をなす球体65とそれに対する押圧バネ66とが設けられ、水圧が矢印a方向に作用することで弁が開くようになっている。これにより簡易洋式トイレ側と上下水道管側からの双方の逆流防止を行っている。
【0070】
一方、連結部60(62)のうちの他方の連結部60B(62B)にあっては、これを簡易洋式トイレ側と例えば既設便器の下水道管側に連結したとき、逆止弁の球体65が押圧バネ66に抗して後退する凸部(図示せず)を、簡易洋式トイレ側と下水道管側のそれぞれに設けることで、連結部60(62)を連結したときには内部の弁が開放されて連通状態となり、連結を外したときには内部の弁が閉じ、ホース内の液体が外部に漏れ出さないように構成されている。
【0071】
したがって、上水道管に給水ホース12の連結部60Aを取り付け、便器本体20側に連結部60Bを取り付けた状態で、連結部60Aを取り外しても管内部の水は流れ出ず、他方の連結部60Bを外しても管内部の水が流れ出すことはない。同じように使用状態の排出ホース14を外しても、管内部の汚水が外部に流れ出るようなことはない。
【0072】
図12は簡易洋式トイレ10に設けられた制御部50における制御例を示す。上述した便器本体20には電源スイッチ52と開閉スイッチ55が設けられ、それらのオンオフ信号が制御部50に供給される。
【0073】
電源スイッチ52は簡易洋式トイレ10を設置するときにスイッチが投入される。これに対し、開閉スイッチ55は便座21の上部を閉蓋するための便蓋23の開閉に関連してオンオフするスイッチである。したがって、図1に示すようにこの例では便蓋23と対向するように便蓋23の下面に開閉スイッチ55(開閉検知センサースイッチなど)が取り付けられる。図1の例ではさらに便器本体20の上面後部側に水抜きスイッチ244が設けられている。
【0074】
CPUで構成されたこの制御部50からの制御信号によって上述した排出用電磁弁24、給水用電磁弁32、洗浄用電磁弁33、粉砕用駆動モータ46およびエアコンプレッサ200の各駆動状態が制御される。
【0075】
図13はその制御タイミング例を示す。この簡易洋式トイレ10の場合には、トイレが使用されていないときは開閉蓋である蓋本体212は閉じられた状態にあるものとする。
【0076】
簡易洋式トイレ10は便蓋23を開けて使用する。便蓋23の開操作は開閉スイッチ55(開閉検知センサースイッチなど)によって検出される(図13A)。便蓋23を開けているうちに用を足す。排泄物等が蓋本体212に落下すると、その自重によって蓋本体212が開いて、排泄物等は溜まり部18のトラップ水内に落下する(図6参照)。排泄物が落下すると、蓋本体212は自動的に閉じる。これは蓋本体212が常時縮径部230側に付勢されているからである。
【0077】
排便の用が済んだら便蓋23を閉じる(図13A)。閉蓋と判断されると、期間Taに亘って排泄物に対する粉砕処理(裁断および破砕処理)がなされる(図13B)。便蓋23を閉じる動作を検出する代わりに、手動操作によって開閉スイッチ55に相当するような始動スイッチを作動させて粉砕処理の開始がなされるようにしてもよい。粉砕処理時間Taは汚物やトイレットペーパー、ティッシュペーパーなどを充分粉砕できる時間に選定される。通常は20秒以下、好ましくは5〜10程度の時間に設定される。充分に裁断・破砕し、固形物などが残滓しないようにするためである。
【0078】
粉砕処理が終了すると、エアコンプレッサ200が駆動されて、溜まり部18の内部に圧縮空気が送給されて加圧される(図13E)。加圧処理時間Tbは溜まり部18内の内圧が所定値(例えば2気圧)まで上昇する時間に設定される。内圧の所定値とは、排出ホース14を介して既設便器4内に流状物を確実に圧送して排出できる程度の圧力を言う。溜まり部18の内圧が所定値となる時間Tbは、予め設定されており、この時間Tbがカウントされる。
【0079】
加圧時間Tbが経過すると、エアコンプレッサ200を駆動した状態で、つまり圧縮空気を溜まり部18の内部に送給した状態で、排出用電磁弁24が駆動される(図13D)。排出用電磁弁24が駆動されて排出口27が開けられると、溜まり部18内の排泄物等(流状物)はトラップ水と共に、圧縮空気によって一気に圧送されて、排出ホース14側へと排出される。排出ホース14は既設便器4に連結されているので、粉砕手段40によって裁断・破砕された排泄物等が既設便器4側に排出される。
【0080】
圧送期間Tcは排出ホース14の設置長によっても相違するが、排出ホース14内に排泄物等が残留しないようにするため、通常の場合には比較的長めの時間、例えば10〜30秒程度に設定される。
【0081】
圧送期間Tcが経過すると、排出用電磁弁24への通電が解除されると共に、エアコンプレッサ200の駆動を停止する(図13D,E)。これで、排出口27が閉じられる。その後、給水用電磁弁32が作動して溜まり部18内への給水が開始される(図13C)。その給水時間Tdは、溜まり部18内のトラップ水が所定量となる注水時間に設定される。ここに、所定量とはトラップ水の水面がS字トラップ部22の屈曲部を超えるまでの貯水量を言う。溜まり部18への注水が完了することで、待機状態となる。
【0082】
なお、この例では、図13Cに示すように給水用の電磁弁32の作動に同期して洗浄用の電磁弁33も作動させている(図示はしない)。この電磁弁33が作動すると、洗浄ホース240を介して溜まり部18内への注水、具体的には蓋本体212の裏面への噴射および溜まり部18の壁面への噴射が行われる。この洗浄水の噴射によって、蓋本体212の裏面および溜まり部18の壁面の洗浄が行われるから、蓋本体212と溜まり部18内を常に清潔に保つことができる。
【0083】
溜まり部18内への給水と蓋本体212などに対する洗浄とを同時に行うのではなく、溜まり部18内への給水を行う前、つまり排泄物等の圧送・排出処理が終了してから洗浄処理を行って、そのときの洗浄水も同時に圧送・排出するようにしてもよい。この場合には、溜まり部18内への給水はその後、電磁弁24を閉じてから行うことになる。
【0084】
可搬型の簡易洋式トイレ10を移動したり、撤去するときには、溜まり部18内のトラップ水は排出しておいた方が好ましい。この水抜き処理は、上述した排出処理とは独立して行われる。その場合には、図14に示すように水抜きスイッチ244をオンにして、エアコンプレッサ200を作動させる(図14A,B)。エアコンプレッサ200の始動によって溜まり部18内は加圧される(図14C)。期間Tfに亘る加圧処理が終了すると、排出用電磁弁24が作動して所定期間Tgに亘り排出口が開けられる(図13B)。
【0085】
この加圧圧送によってトラップ水を溜まり部18内から排出することができる。そして、エアコンプレッサ200の駆動が停止されてから若干時間ΔTfをおいて排出用電磁弁24を閉じる。こうすることで、トラップ水の排出処理(水抜き処理)が完了する。ここで、期間Tfは上述した時間Tbに、期間Tgは時間Tcにセットすればよい。
【0086】
図7および図8では既設便器4に連結部114を設け、ここに排出ホース14を連結した例であるが、最も簡単な例としては図15に示すように排出ホース14自体を便座118の下面を潜らせて便器本体108内に導くことである。この場合には排出ホース14の先端部は図15に示すように拡幅しておくことで、排出圧力を軽減できる。
【実施例2】
【0087】
図17はカッタ部材41の他の組み合わせ例を示す。図2の場合には、4つともほぼストレート型のカッタ部材41を使用した例である。ここに、ほぼストレート型とは、カッタ部材41を構成するカッタ刃43の大きさ(外形)が同じもので構成されている場合を総称した。
【0088】
図17はこのほぼストレート型のカッタ部材と、いわゆるほぼ糸巻型のカッタ部材とを使用して粉砕機構部40Aを構成した場合である。ここに、ほぼ糸巻型とはカッタ部材41を構成するカッタ刃43の大きさ(外径)が長手方向(回転軸方向)に向かって、カッタ部材41の両端側が大径を成し、この両端側からカッタ部材41の中央部にかけてカッタ部材41の直径が漸次小径となるように変化しているタイプのカッタ部材を総称している。
【0089】
図17の例では、第1と第3のカッタ部材41A、41Cがほぼストレート型であり、第2と第4のカッタ部材41B、41Dがほぼ糸巻型である。この場合においても溜まり部18の形状に合わせて、第4のカッタ部材41Dの長さは、他のものよりも短い。また、隣接するカッタ部材41同士はそれぞれのカッタ刃43が互いに噛み合うように配置されるは言うまでもない。
【0090】
このように形の違うカッタ部材41を使用することによって、カッタ刃43の噛み合う度合いが長手方向に沿って変化する。この例では中央部の噛み合いが浅く、両端に向かうにしたがって漸次深くなる。このため、ほぼ糸巻型形状を成すカッタ部材41とストレート型のカッタ部材41と噛合しあう部位のほぼ中央部に、ストレート型形状を成すカッタ部材41同士が噛合する実施例1の場合よりも深い凹所が形成されるから、裁断・破砕処理を効率的に行うことができる。
【実施例3】
【0091】
図18はカッタ部材41の別の組み合わせ例を採用した粉砕機構部40Aの例である。この例では、図18Aに示すように4つのカッタ部材41とも全てほぼ糸巻型のカッタ部材を使用した場合である。噛合状態を明瞭にするため、図18Aでは奇数番目のカッタ部材41B,41Dは破線で示した。
【0092】
この場合においても、カッタ部材41の歯合状態は図18Aのように中央部が最も浅く、両端部が最も深い。このため、ほぼ糸巻型形状を成すカッタ部材41同士が噛合しあう部位のほぼ中央部に、実施例1や実施例2に示す場合よりも深い凹所900(図18B参照)が形成されるとともに、ほぼ糸巻型を成すカッタ部材41の歯先外形が全体として両端側から中央部へ向かって湾曲形状を成す。このため、排泄物等が凹所900に寄せ集められ易くなり、排泄物等を効果的に裁断・破砕できる。
【実施例4】
【0093】
図19は、粉砕手段40の取り付け場所の変形例である。図1の場合は溜まり部18に粉砕手段40を取り付けた場合で、複数のカッタ部材41は横方向に並設されている。
【0094】
図19の実施例は、溜まり部18に連なるS字トラップ部22の開口部(連結部)22a近傍に粉砕手段40を設けた場合を示す。この場合には、縦方向に粉砕手段40が並設される。粉砕機構部40Aを構成するカッタ部材41の連立数やカッタ部材41の形状(カッタ刃43の外径)やカッタ刃43の個数などは、開口部22aの口径や開口面積によっても相違する。
【0095】
本例では、ほぼストレート型のカッタ部材41を2本(一対)使用して粉砕機構部40Aを構成した場合を示す。カッタ部材41は図2の場合のほぼ半分以下の長さである。便器本体20の外側に粉砕機構部40Aの駆動手段40Bが配置されるのは図3の場合と同じである。
【0096】
このようにS字トラップ部22の開口部22aに粉砕手段40を配置しても図1と同様に排泄物等を裁断・破砕できるので、排泄物等によって排出管などが詰まったりすることはない。なお、この場合には粉砕手段40としては図1の場合よりも小型のものを使用せざるを得ないので、粉砕処理時間Taは図1の場合よりも長目(ほぼ2倍程度)に設定することになる。なお、この粉砕処理は、排泄物等の排出およびトラップ水のトラップ処理と同時に行うこともできる。
【実施例5】
【0097】
図20は、粉砕手段40の他の例を示す。この例は、一対のガイド部材70(70A、70B)と、カッタ部材41(41A、41B)とで粉砕機構部40Aを構成した場合である。粉砕手段40は溜まり部18に設けられている場合である。
【0098】
図21にも示すように、互いに向き合うように一対のガイド部材70A、70Bが所定の間隙を保持して対向配置され、その間に一対のカッタ部材41A,41Bが回転自在に配置されている。
【0099】
一方のガイド部材70Aは図22に示すように、その長手方向(カッタ部材41の回転軸方向)に複数のガイド板48(48A,48b,・・・)が所定の間隙(ピッチ)を保持して配列されて構成される。その相互固定は図21に示す固定ガイド軸45aによって行っている。
【0100】
このガイド部材70Aに対する他方のガイド部材70Bも同様に複数のガイド板49(49a、49b、・・・)を有し、これらが所定のピッチで配列されたもので、固定ガイド軸45bによって相互固定が行われる。そして、一方のガイド部材70Aのガイド板48とは半ピッチずれた状態でガイド板49が配列される。また、ガイド板48と49は図21に示すように、その上部が互いに内側に向かうようなテーパー部51a、51bとなされている。一対のカッタ部材41A,41Bは、共にほぼストレート型のカッタ部材が使用されている。
【0101】
一方のカッタ部材41Aの回転軸42aは、一方のガイド部材70Aにおける両端ガイド板48a、48nとによってその両端部が軸支される。そのため、両端ガイド板48aと48b内に存在する複数のガイド板の回転軸42aに対応した部分はこの例では回転軸42aの回転を阻害しない孔径となっている。回転軸42aの部分を切り欠いてもよい。カッタ部材41Aを構成する複数のカッタ刃43はガイド板48(48a,48b,48c,・・・48n)の間隙内に少許の間隙を空けた状態で収まるようにその配置ピッチが規制される。
【0102】
同様に、他方のカッタ部材41Bにあってもその回転軸42bが他方のガイド部材70Bを構成する両端ガイド板49aと49nとによって軸支されると共に、複数のカッタ刃43はガイド板49の間隙内に、少許の間隙を空けた状態で収まるように配置ピッチが規制される。
【0103】
一方のカッタ部材41Aのカッタ刃43と、他方のカッタ部材41Bのカッタ刃43とは図21に示すように、互いに一部が重なるように配置されている。カッタ刃43の刃部(刃先)形状としては図21のようなのこぎり歯を例示したが、これに拘泥されない。
【0104】
このように粉砕機構部40Aを構成した場合でも、ガイド板48とカッタ刃43との間(ガイド板49とカッタ刃43との間)には少許の間隙がそれぞれ形成されており、しかもカッタ部材41A,41B同士も互いに一部重なるようにしてあるので、重なり合うカッタ刃43,43の各側面と側面との間にも少許の間隙が形成されているので、一対のカッタ部材41A,41Bを互いに食い込む方向に回転させることで、排泄物等を細かく裁断し(クロスカットし)、破砕して流状物とすることができる。
【0105】
互いに対向するガイド板48と49はカッタ部材41A,41B側に向かって落ち込むようなテーパー部51a,51bが形成されているため、溜まり部18内に落下した排泄物等は中央部に集まり易くなっている。これで、排泄物等を効果的に裁断・破砕できる。
【実施例6】
【0106】
今までの実施例は何れもこの発明を可搬型の簡易洋式トイレに適用した場合である。以下に説明するのは、固定式の洋式トイレにこの発明を適用した場合である。
【0107】
この場合においても、溜まり部18内に上述した粉砕手段40が配置される。図23は実施例1に示した粉砕機構部40Aを備えた粉砕手段40を適用した場合である。
溜まり部180の上部には、この溜まり部180の一部を閉塞する閉塞蓋250が設けられる。閉塞蓋250の中央部は所定の開口部250aとなされ、閉塞蓋250の他端は便器本体108の内周壁108aに取着できるようなフランジ部255がその上下両端面側に設けられている。
【0108】
このフランジ部255を接着剤などを用いて内周壁108aに貼着することで、閉塞蓋250を便器本体108に取着(固定)できる。開口部250aを閉塞蓋250のほぼ中央に位置させることで、排泄物等を閉塞蓋250に接触させることなく溜まり部180内に落下させることができる。
【0109】
閉塞蓋250を着脱式に内周壁108aに取り付けることもできる。こうすれば、閉塞蓋250を取り外して定期的に洗浄したりすることが可能になるので、衛生的である。
【0110】
便器本体108の上部にはCPUを備えた制御部300が取り付けられている。この制御部300によって粉砕手段40に対する制御などが実行される。図24はその一例を示す制御回路系であって、電源スイッチ225と開閉スイッチ226(図24参照)のオンオフ信号が制御部300に供給される。制御部300では、駆動モータ46を始めとして、電磁ソレノイド117および電磁弁113の制御が行われる。
【0111】
図26はその制御タイミング例を示すもので、閉塞蓋250は通常は開状態に制御されているものとする。便蓋230の開閉に伴って開閉スイッチ226が作動(オンオフ)する(図25A,B)。便蓋230が空いている間に排便が行われ、その後便蓋230が閉じられる。便蓋230が閉じられたことが検知されると、閉塞蓋250が閉じられる(図25C)。この閉蓋が検知されると、駆動モータ46への通電が行われて粉砕処理が開始される(図25D)。ここで言う粉砕処理は上述したと同じく、裁断および破砕処理である。
【0112】
所定時間の粉砕処理が終了すると、電磁弁113を開き、閉塞蓋250に対する洗浄処理が行われる(図25E)。洗浄処理が終了すると、閉塞蓋250を開く(図25C)。その後洋式トイレに設置された既存の操作ボタン(図示はしない)を操作して排泄物等に対する排出処理(トラップ水のトラップ処理を含む)が行われる(図25F)。
【0113】
このように固定式の既設洋式トイレにもこの発明を適用した場合でも、上述したようにトイレットペーパーやティッシュペーパー、使用済み生理用品などを含んだ排泄物等を裁断・破砕して排出できるから、下水管の詰まりなどを一掃できる。
【実施例7】
【0114】
図26は、この発明を適用した固定式洋式トイレの他の例を示す。図26に示す実施例は閉塞蓋250に代えて回動式の開閉蓋機構260が採用されている。この例では、溜まり部180の上部側に縮径部270が設けられ、この縮径部270を閉塞し、溜まり部180を密閉できるように、縮径部270の下面には開閉蓋機構260が設けられる。
【0115】
縮径部270は環状フランジ部として構成され、溜まり部180の内面に向かうように所定長だけ突出している。縮径部270は図26からも明らかなように、その全体が多少排出部182側に傾斜するように設けられる。縮径部270の下面側には、この縮径部270を閉塞できるような開閉蓋機構260が設けられる。
【0116】
開閉蓋機構260は、回動式であって、開閉蓋機構260を構成する蓋本体262を有し、この蓋本体262の一端、図の例では右端部が回動軸部264となされ、この回動軸部264が縮径部270の下面部272に位置するように、便器本体108に対して回動自在に軸支される。この軸支部は便器本体108に対して水密的に軸支されている。
【0117】
蓋本体262は、その周面が縮径部270の下面縁部274と当接した状態となるように付勢される。蓋本体262は下面縁部274に沿った形状をなすと共に、通常はこの下面縁部274に接触して溜まり部180内を密閉できるように、回動軸部264と下面部272の壁面との間には付勢用のバネ276が巻き付けられている。
【0118】
固定式の洋式トイレをこのように構成した場合、排泄物が蓋本体262に落下すると、その自重によって蓋本体262の先端部側が開くので、排泄物は溜まり部180のトラップ水内に落下する。排泄物が落下すると、蓋本体262はバネの作用で原位置に自動的に復帰して溜まり部180の上部を閉塞する。
【0119】
洗浄用操作ボタン(フラッシュバルブ操作ボタン)280が操作されると洗浄水が便器本体108の内周面108aを周回しながら蓋本体262の上面を通って溜まり部180内に流れ込む。洗浄用操作ボタン280の操作状況は、制御部30によって管理されているので、この洗浄処理が行われると、これと同時に粉砕手段40が駆動され、粉砕手段40に落下した排泄物や洗浄水と共に流れ込んだトイレットペーパーなどが粉砕(裁断・破砕)される。生理用品なども洗浄水と一緒に溜まり部180内に流れ込むから、洗浄処理に関連して粉砕手段40を所定時間駆動するようにすれば、これらを裁断し、破砕して排出できる。
【0120】
なお、図26においては、蓋本体262が閉状態においてほぼ水平となるように設けた例を示したが、上述したように縮径部270は排出部182側に多少傾斜するように設けられているので、開閉蓋機構260を構成する蓋本体262自体を、排出部182側に傾けて取り付けるようにすれば、蓋本体262の上面に落下した排泄物等を残らず、溜まり部180内に落とし込むことができる。
【0121】
なお、洗浄水用タンク5と便器本体108との間に設けられた送水管(図示しない)の経路中に、フラッシュバルブ280に代えて、制御部300からの遠隔操作が可能なバルブ装置部材(電磁弁等)を配設する場合も考えられる。この場合には、他の実施例の如く、粉砕手段40の駆動開始時期と洗浄水の供給時期とを、適宜異ならせることができる。これにより、粉砕手段40が所定時間作動して、粉砕処理が完了した後に洗浄水を供給することが可能となる。
【0122】
また、本実施例においても、粉砕機構部40Aは、その他の実施例に示した種々の粉砕機構を適用可能であることは言及するまでもない。開閉蓋機構260についても同様である。要は、固定式の洋式トイレに本発明を適用する場合、便器本体108の溜まり部180に上述したカッタ部材41を少なくとも一組配設することで、溜まり部180に溜まった排便やトイレットペーパー、使用済み生理用品といった汚物の粉砕処理が行なえる。また、溜まり部180の上方に開閉蓋機構260を備えることで、カッタ部材41が溜まり部180に配設されていることに起因する、本洋式トイレ装置の使用者が受ける危害感の発生を抑制することができる。
【0123】
なお、実施例2〜5に示した種々の粉砕手段40を、実施例6および7に示した固定式の洋式トイレにも適用できることは、詳述するまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0124】
この発明では、既存の洋式トイレや、介護施設や在宅介護などの介護補助装置としての簡易洋式トイレに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】この発明に係るトイレ装置を簡易洋式トイレに適用したときの一例を示す要部の断面図である。
【図2】その要部を示す平面図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】粉砕機構部を構成するカッタ部材の一例を示す要部斜視図である。
【図5】駆動手段の一例を示すギア配列図である。
【図6】図1に示す簡易洋式トイレの使用状態を示す断面図である。
【図7】既設の洋式トイレに、簡易洋式トイレの給排出ホースを連結したときの例を示す概念図である。
【図8】その要部断面図である。
【図9】給水ホースの構成例を示す図である。
【図10】排出ホースの構成例を示す図である。
【図11】逆止弁の一例を示す要部断面図である。
【図12】簡易洋式トイレに使用される制御系の一例を示す系統図である。
【図13】その動作説明に供する波形図である。
【図14】水抜きの動作説明に供する波形図である。
【図15】排出ホースを既存の洋式トイレに接続するときの例を示す既設洋式トイレの要部断面図である。
【図16】既設洋式トイレと可搬型簡易洋式トレイとの連結例を示す概念図である。
【図17】粉砕機構部の他の例を示す要部構成図である。
【図18】粉砕機構部のさらに他の例を示す要部構成図及びその概略斜視図である。
【図19】この発明を適用した簡易洋式トイレの他の例を示す要部断面図である。
【図20】この発明を適用した簡易洋式トイレのさらに他の例を示す要部断面図である。
【図21】粉砕機構部の他の例を示す正面図である。
【図22】その一部省略した要部平面図である。
【図23】この発明を固定式洋式トイレに適用した場合の一例を示す要部断面図である。
【図24】その制御系の一例を示す要部ブロック図である。
【図25】その制御タイミング例を示すタイミングチャート図である。
【図26】開閉部機構の他の例を示す固定式洋式トイレの断面図である。
【符号の説明】
【0126】
10・・・簡易洋式トイレ
12・・・給水ホース
14・・・排出ホース
18・・・溜まり部
19・・・外壁
20・・・便器本体
24,32・・・電磁弁
22・・・S字トラップ部
28・・・給水口
40・・・粉砕手段
40A・・・粉砕機構部
40B・・・駆動手段
41・・・カッタ部材
43・・・カッタ刃
44・・・ギア
47a、47b・・・刃部
200・・・粉砕物圧送手段
210・・・開閉蓋機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に溜まり部を有する便器本体と、
上記溜まり部内にトラップされたトラップ水内に水没するように設けられた粉砕手段とからなり、
上記粉砕手段は、カッタ刃を有する粉砕機構部と、その駆動手段とで構成され、
上記粉砕機構部を駆動することで、上記溜まり部内に落下した排泄物等を裁断・破砕するようになされた
ことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
上記粉砕機構部は、複数の円板状カッタ刃が回転軸方向に連なって構成される複数のカッタ部材を有し、
互いに隣接するカッタ部材のカッタ刃同士は互いに少許の間隙を保持して噛み合うようになされた
ことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
上記カッタ部材は、大きさが漸次変化するカッタ刃が順次並設されて、両端側が大径を成して該両端側から中央部にかけて漸次小径と成るほぼ糸巻型形状をなすカッタ部材と、大きさがほぼ同一である複数のカッタ刃が順次並設されてほぼストレート型形状をなすカッタ部材との何れか一方若しくはその双方が使用される
ことを特徴とする請求項2記載のトイレ装置。
【請求項4】
上記粉砕機構部は、一対のガイド部材と一対のカッタ部材で構成され、
上記一対のガイド部材は、長手方向に所定のピッチで配置された複数のガイド板で構成され、
上記カッタ部材は、上記ガイド部材のそれぞれに設けられると共に、上記カッタ部材を構成する複数のカッタ刃は、対向する上記ガイド部材のガイド板の間に入るように組み合わされた
ことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項5】
上記カッタ刃は、ストレートカット、クロスカット、スパイラルカットの少なくとも何れか1つのカット方式を採る構造である
ことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項6】
上記便器本体は、固定式の洋式トイレ又は可搬式の簡易洋式トイレである
ことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2006−336429(P2006−336429A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166005(P2005−166005)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】