説明

トイレ装置

【課題】ケーシングのノズル突出口に設けられたシャッタの清掃作業を楽に行うことができるトイレ装置を提供する。
【解決手段】洋風便器10の後部上面に上下動可能にタンクカバーユニット20が設置されている。タンクカバー50の前部下端にノズル突出口58が設けられている。トイレ装置は、ノズル32の非突出時にはノズル突出口58を閉鎖すると共に、ノズル32の突出時には開き出してノズル突出口58を開放可能なシャッタ60を備えている。シャッタ60は、シャッタ前後進駆動装置70により、ノズル突出口58を開閉可能な後退位置と、ノズル突出口58から離隔して前方へ張り出した前進位置とをとりうるように前後進可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋風便器の後部上面に設置されたケーシングの前部に、該ケーシング内に収容された温水洗浄用ノズルを便鉢内に突出させるためのノズル突出口が設けられており、ノズルの非突出時には該ノズル突出口がシャッタによって閉鎖され、ノズル突出時にはシャッタが開いて該ノズル突出口からノズルが突出するよう構成されたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温水洗浄装置は、周知の通り、洋風便器の後部上面に設置されたケーシングと、該ケーシング内に設置された洗浄ノズルとを有しており、洗浄ノズルから噴出した温水によって人体の臀部を洗浄するものである。このケーシングの前面に便座が起倒方向回動可能に取り付けられている。
【0003】
この温水洗浄装置のノズルは、ケーシングの前部に設けられたノズル突出口を通って前方へ突出可能となっている。
【0004】
i) シャッタの従来例
このノズル突出口内に尿などの汚水が入り込んでこびり付き、臭気発生の原因となることがある。このノズル突出口への汚水の侵入を防止するために、特開平10−195957号公報には、このノズル突出口に開閉式のシャッタを設けることが記載されている。
【0005】
同号公報のトイレ装置にあっては、ノズル非突出時にはノズル突出口がシャッタによって遮蔽されており、これにより、該ノズル突出口内に汚水が浸入することが防止される。また、ノズル突出時には、このシャッタが開き、ノズルが該ノズル突出口を通って前方、即ち便鉢内に突出する。
【0006】
ii) 浮上式トイレ装置の従来例
ケーシングを洋風便器の後部上面に対し上下動可能に設置したトイレ装置も公知である(例えば、特開平9−28619号公報)。このようにケーシングを洋風便器の後部上面に対し上下動可能に設置した浮上式トイレ装置にあっては、清掃時にはケーシングを洋風便器の後部上面から浮上させることにより、該ケーシングの下側に空間が生じ、該ケーシングの下側部分を清掃することができる。
【特許文献1】特開平10−195957号公報
【特許文献2】特開平9−28619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特開平10−195957号公報のように、ノズル突出口をシャッタで遮蔽した場合には、シャッタ自体に汚水が付着することとなり、このシャッタの清掃が必要となる。
【0008】
しかしながら、同号公報の第2図に示される通り、該ノズル突出口は便鉢の奥側に位置しているので、このシャッタを清掃する際には、清掃作業者は便鉢の奥側まで腕を伸ばして清掃する必要がある。そのため、このシャッタの清掃作業を行うのは楽ではない。
【0009】
本発明は、このシャッタの清掃作業を楽に行うことができるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のトイレ装置は、洋風便器の後部上面に設置され、前部にノズル突出口を有したケーシングと、該ケーシング内に配置され、該ノズル突出口を通って前方へ突出可能な温水洗浄用ノズルと、該ノズルの非突出時には該ノズル突出口を閉鎖すると共に、該ノズルの突出時には該ノズル突出口を開放可能なシャッタとを備えたトイレ装置において、該シャッタは、該ノズル突出口を開閉可能な後退位置と、該ノズル突出口から離隔して前方へ張り出した前進位置とをとりうるように、略前後方向に移動可能となっていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2のトイレ装置は、請求項1において、前記トイレ装置は、さらに、該ケーシング内に設置され、略前後方向に進退可能であり、且つ前端に前記シャッタが連結された進退部材と、該進退部材を進退させる駆動装置とを有し、該駆動装置は、電動モータの駆動力により該進退部材を進退させるものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3のトイレ装置は、請求項2において、該シャッタは、該進退部材に対し着脱可能に連結されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4のトイレ装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ケーシングは、前記洋風便器の後部上面に対し上下動可能に設置されており、該ケーシングが該洋風便器の後部上面に降下した状態となっているときには、前記シャッタは前記後退位置から前進不能となっており、該ケーシングが該洋風便器の後部上面から浮上すると、該シャッタが前後進可能となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5のトイレ装置は、請求項4において、前記トイレ装置は、前記ケーシングが前記洋風便器の後部上面に降下したときには、前記シャッタが前記後退位置に後退するように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6のトイレ装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記トイレ装置は、便器使用者の便座への着座を検知する着座検知手段を備えており、便器使用者が便座に着座しているときには、前記シャッタは前記後退位置から前進不能となっており、便器使用者が便座に着座していないときには、該シャッタが前後進可能となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7のトイレ装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ケーシングの前部に便座が起倒方向回動可能に取り付けられており、前記トイレ装置は、該便座が起立姿勢となっていることを検知する便座起立検知手段を備えており、便座が倒伏姿勢となっているときには、前記シャッタは前記後退位置から前進不能となっており、便座が起立姿勢となったときには、該シャッタが前後進可能となるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のトイレ装置にあっては、清掃時には、シャッタを前進させ、該シャッタをノズル突出口よりも手前側に位置させることができるので、清掃作業者は、腕を便鉢の奥側まで伸ばさなくてもシャッタを清掃することができる。そのため、このシャッタの清掃作業を楽に行うことができる。
【0018】
請求項2の態様によれば、シャッタをスムーズに前後進させることができる。また、その動力源として電動モータを用いているので、作動の制御が容易であると共に、作動条件を設定する際の自由度が高い。
【0019】
請求項3のように、シャッタを進退部材に対し着脱可能に連結することにより、清掃時にはシャッタを進退部材から取り外して念入りに清掃することができる。また、この際、該シャッタをノズル突出口よりも手前側に位置させることができるので、シャッタの取り付け及び取り外しも楽である。
【0020】
請求項4の態様にあっては、ケーシングが洋風便器の後部上面から浮上した状態となっているときにのみシャッタを前進させることができるので、平常のトイレ使用時にシャッタがノズル突出口から離隔して便鉢内に張り出すことが防止される。また、ケーシングの浮上に伴ってシャッタ位置も上方へ移動するので、より楽な姿勢でシャッタの清掃作業を行うことができる。
【0021】
請求項5のように、ケーシングが洋風便器の後部上面に降下したときにはシャッタが後退位置に後退するように構成することにより、清掃後にシャッタを後退し忘れることが防止される。
【0022】
請求項6の態様にあっては、便器使用者が便座に着座していないときにのみシャッタを前進させることができるので、便器使用者が便座に着座して用を足している最中にシャッタが前進して便鉢内に張り出すことが防止される。
【0023】
請求項7の態様にあっても、便座が起立姿勢となっているときにのみシャッタを前進させることができるので、便器使用者が便座に着座して用を足している最中にシャッタが前進して便鉢内に張り出すことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
第1図は実施の形態に係るトイレ装置を備えた洋風便器の斜視図、第2図(a),(b)はこのトイレ装置のタンクカバーユニット前部の昇降動作を示す側面図、第3図〜第5図は、それぞれ、このトイレ装置のシャッタ付近の構成を示すタンクカバー前部の縦断面図、第6図はシャッタ、シャッタ前後進駆動装置及びノズルユニットの斜視図、第7図は第6図のVII-VII線に沿う断面図、第8図(a)はシャッタ及びガイドロッドの斜視図、第8図(b)は第8図(a)のB−B線に沿う断面図、第9図(a)はガイドレールの斜視図、第9図(b)は第9図(a)のB−B線に沿う断面図である。
【0026】
なお、第1図、第2図(a)及び第3図はケーシングが降下した状態を示し、第2図(b)及び第4,5図はケーシングが浮上した状態を示している。また、第4図はシャッタが前進する前の状態を示し、第5図はシャッタが前進した後の状態を示している。第4図では、シャッタ前後進駆動装置のガイドロッド及びガイドレールの一部及びモータユニットの図示が省略されている。
【0027】
第1図の通り、洋風便器10の後部上面にタンクカバーユニット20が設置され、このタンクカバーユニット20の前部に便座14と便蓋16とが起倒方向回動可能に取り付けられている。
【0028】
タンクカバーユニット20は、底面部が後半側のリヤベースプレート22と前半側のフロントベースプレート24とによって構成され、このフロントベースプレート24が昇降装置26によってリヤベースプレート22に対し昇降可能となっている。このフロントベースプレート24上に、温水洗浄装置のノズルユニット30が設置されている。
【0029】
図示は省略するが、該フロントベースプレート24上には、便鉢12に洗浄水を供給するためのロータンク、ノズルユニット30に温水を供給するためのヒータ付き温水タンク並びに給水ポンプ、電源基板、制御回路基板等も設置されている。これらのノズルユニット30、温水タンク及び給水ポンプにより温水洗浄装置が構成されている。なお、タンクカバーユニット20内には、この温水洗浄装置の他に、温風乾燥装置や脱臭装置等の各種トイレ機器が設置されてもよい。
【0030】
タンクカバーユニット20の外面を囲むタンクカバー50は、フロントベースプレート24上に設置され、該フロントベースプレート24と共に昇降可能となっている。このタンクカバー50の前部に前記便座14と便蓋16が取り付けられている。この実施の形態では、タンクカバー50の上部に手洗鉢56が設けられているが、この手洗鉢56は省略されてもよい。
【0031】
この実施の形態では、該タンクカバー50、フロントベースプレート24及びリヤベースプレート22によりケーシングが構成されている。
【0032】
温水洗浄装置等は、トイレルームの壁面に取り付けられたリモコン(図示略)によって操作される。また、タンクカバー50又はこのリモコンには、タンクカバーユニット20(タンクカバー50及びフロントベースプレート24)を上昇又は下降させるように昇降装置26を作動させる浮上スイッチが設けられている。この昇降装置26は、浮上スイッチが1回押されるとタンクカバーユニット20を上昇させ、もう1回押されるとタンクカバーユニット20を降下させるように前記制御回路によって制御される。
【0033】
なお、この昇降装置26は任意に構成しうるものであり、例えばエア圧やモータ等の駆動力などによりタンクカバーユニット20を昇降させるように構成することができる。また、本発明のトイレ装置は、前述の特開平9−28619号公報のように、手動(清掃作業者等が自分でタンクカバーユニット20を持ち上げる方式)にてタンクカバーユニット20を昇降させるように構成されていてもよい。
【0034】
この実施の形態では、タンクカバーユニット20が浮上状態にあることを検知する浮上センサ(図示略)が設けられている。
【0035】
タンクカバー50の前部下端には、ノズルユニット30のノズル32(32A,32B(第1,6図))を便鉢12内へ突出させるためノズル突出口58が設けられている。
【0036】
この実施の形態では、第3,4図等に示すように、ノズルユニット30は、シャワー洗浄用及びビデ洗浄用の1対のノズル32A,32Bと、これらのノズル32A,32Bの前後進を案内するノズルガイド33と、ラックアンドピニオン機構34aを介してノズル32A,32Bをそれぞれ前後進させる電動モータ(以下、単にモータと略すことがある。)34と、ノズル32A,32Bのいずれかに温水の供給先を切り替えるノズル切替弁35等を備えている。この切り替えは、便器使用者のスイッチ操作に基づいて前記制御回路によって行われる。
【0037】
具体的には、該制御回路は、シャワー洗浄スイッチが操作されると、ノズル切替弁35からの給水先をシャワー洗浄用のノズル32Aに切り替え、ビデ洗浄スイッチが操作されると、給水先をビデ洗浄用のノズル32Bに切り替える。また、これらのスイッチ操作に伴い、該制御回路は、前記給水ポンプを作動させて給水先のノズル32A又は32Bに前記温水タンクから温水を供給すると共に、モータ34を作動させて、この給水先のノズル32A又は32Bをノズルガイド33に沿って前進させる。
【0038】
切スイッチが操作されると、該制御回路は給水ポンプを停止させると共に、モータ34を反転作動させ、前進していたノズル32A又は32Bを後退させる。
【0039】
なお、この実施の形態ではモータ34の駆動力により各ノズル32を前後進させているが、これ以外の駆動方式、例えば、各ノズル32に供給される水圧により各ノズル32を前進させる水圧駆動方式や、エア圧駆動方式、リニア駆動方式、あるいはこれらの複合式のものなどを採用してもよい。
【0040】
前記ノズルガイド33は、フロントベースプレート24に固定設置され、その先端側は、タンクカバー50の内側からノズル突出口58に臨んでいる。
【0041】
このトイレ装置は、ノズル32の非突出時には該ノズル突出口58を閉鎖すると共に、ノズル32の突出時には開き出して該ノズル突出口58を開放可能なシャッタ60を備えている。このシャッタ60は、シャッタ前後進駆動装置70により、該ノズル突出口58を開閉可能な後退位置と、該ノズル突出口58から離隔して前方へ張り出した前進位置とをとりうるように前後進可能となっている。
【0042】
この実施の形態では、該シャッタ60は、ノズル突出口58を遮蔽するためのシャッタプレート61と、該シャッタプレート61を支持する支持体62とを備えている。この実施の形態では、該支持体62は、各ノズル32A,32Bの先端側に外嵌しうる枠形のものとなっており、各ノズル32A,32Bが通過する1対のノズル通過孔62b,62bを有している。
【0043】
シャッタプレート61は、第6図及び第8図(a)の通り、支持体62の前面を覆うように配置され、その上端部が、回動軸61aを介して該支持体62に対し前後方向揺動可能に支持されている。この実施の形態では、該シャッタプレート61は、ノズル32が突出するときには、このノズル32によって後ろから押されて開き出し、ノズル32が後退すると、自重により閉じてノズル突出口58を閉鎖するように構成されている。
【0044】
この実施の形態では、支持体62の後面に、後述の進退部材としてのガイドロッド72の先端部が着脱可能に係合する係合部(図示略)が設けられている。なお、この実施の形態では、該支持体62の後面の左右両端側にそれぞれこの係合部が設けられている。
【0045】
この実施の形態では、前記シャッタ前後進駆動装置70は、シャッタ60の前後進を案内するガイドレール71及びガイドロッド72と、該ガイドロッド72に設けられたラック73及び該ラック73に噛合したピニオン74を介して該ガイドロッド72を前後進させるモータユニット75とを有している。第6図の通り、この実施の形態では、ノズルユニット30の左右両側に、それぞれ、これらのガイドレール71及びガイドロッド72並びにモータユニット75が設置されている。
【0046】
第3〜5図に示すように、該ガイドレール71は、ノズルユニット30の前記ノズルガイド33と略平行に延在しており、その前端側がタンクカバー50内からノズル突出口58に臨むように前記フロントベースプレート24に固定設置されている。この実施の形態では、第9図(a),(b)の通り、該ガイドレール71は略C字形断面形状のものとなっており、その側面(この実施の形態ではノズルユニット30と反対側の側面)には、該ガイドレール71の長手方向に延在する溝71aが設けられている。
【0047】
進退部材としてのガイドロッド72は、第4,5図の通り、このガイドレール71の前端側から進退可能に該ガイドレール71に挿入されている。詳しい図示は省略するが、このガイドロッド72の前端部が前述の支持体62の係合部に係合することにより、このガイドロッド72の前端側にシャッタ60が着脱可能に連結されている。なお、第8図(a),(b)に示すように、この実施の形態では、左右のガイドロッド72,72が該支持体62の後面の左右両端側の係合部にそれぞれ係合している。
【0048】
第8図(a),(b)の通り、このガイドロッド72の側面には、ガイドレール71の溝71aに対し摺動可能に係合した凸条72aが設けられている。この凸条72aはガイドロッド72の長手方向に延在しており、その側面(ガイドロッド72からの張り出し方向先端側の面)に前記ラック73が延設されている。即ち、このラック73は、溝71aを介してガイドレール71のノズルユニット30と反対側の側面に露呈している。
【0049】
モータユニット75は、ガイドレール71のノズルユニット30と反対側に配置され、その駆動軸75aに固着された前記ピニオン74を該ラック73と噛合させて前記フロントベースプレート24に固定設置されている。この実施の形態では、該モータユニット75は、その動力源として電動モータ(図示略)を備えている。
【0050】
タンクカバー50又は前記リモコンには、シャッタ60を前進又は後退させるようにモータユニット75を作動させるシャッタ前進スイッチが設けられている。このモータユニット75は、該シャッタ前進スイッチが1回押されると正転作動してシャッタ60を前進させ、もう1回押されると反転作動してシャッタ60を後退させるように前記制御回路によって制御される。
【0051】
なお、この実施の形態では、ガイドロッド72がガイドレール71に沿って所定距離前進したときにモータユニット75の作動を停止させる前進側リミットスイッチ(図示略)と、シャッタ60がノズル突出口58を閉鎖しうる位置まで後退したときにモータユニット75の作動を停止させる後退側リミットスイッチ(図示略)とが設けられている。
【0052】
この実施の形態では、該制御回路は、タンクカバーユニット20が浮上していない状態にあるときには、シャッタ前進スイッチが押されてもモータユニット75を作動させないように構成されている。このタンクカバーユニット20が浮上しているかいないかの判定は、前記浮上センサの検知信号に基づいて行われる。
【0053】
また、この実施の形態では、タンクカバーユニット20が浮上しており、且つシャッタ60が前進した状態にあるときに、該タンクカバーユニット20を降下させるために前記浮上スイッチが押された場合には、シャッタ前進スイッチが押されなくてもモータユニット75を反転作動させてシャッタ60を後退位置まで後退させるように構成されている。
【0054】
次に、このように構成されたトイレ装置の使用方法及び清掃手順について説明する。
【0055】
第2図(a)及び第3図の状態が平常のトイレ使用時の状態である。前記シャワー洗浄スイッチ又はビデ洗浄スイッチが操作されるまでは、シャッタプレート61がノズル突出口58を遮蔽している。これらのスイッチが操作されると、ノズル32(32A又は32B)が前進し、第3図において二点鎖線にて示すように、該ノズル32がシャッタプレート61を押し開いてノズル突出口58から便鉢12内に突出する。切スイッチが操作されてノズル32が後退すると、シャッタプレート61も復位して再びノズル突出口58を遮蔽するようになる。
【0056】
清掃時には、まず、前記浮上スイッチを押して、第4図のようにタンクカバーユニット20を浮上させる。次に、シャッタ前進スイッチを押して、第2図(b)及び第5図のようにシャッタ60を前進させる。その後、シャッタ60をガイドロッド72から取り外し、清掃する。なお、シャッタ60をガイドロッド72に連結したまま、該シャッタ60を清掃してもよい。
【0057】
清掃完了後、シャッタ60をガイドロッド72の前端部に連結する。その後、シャッタ前進スイッチを押してシャッタ60を後退させ、次いで浮上スイッチを押してタンクカバーユニット20を洋風便器10上に降下させる。これにより、第2図(b)及び第3図の状態に戻る。なお、この実施の形態では、タンクカバーユニット20を降下させる前にシャッタ前進スイッチを押さずに浮上スイッチを押しても、自動的にシャッタ60が後退するようになっているので、タンクカバーユニット20を降下させる前にシャッタ前進スイッチを押さなくてもよい。
【0058】
以上のように、このトイレ装置にあっては、清掃時には、シャッタ60を前進させ、該シャッタ60をノズル突出口58よりも手前側に位置させることができるので、清掃作業者は、腕を便鉢の奥側まで伸ばさなくてもシャッタ60を清掃することができる。そのため、このシャッタ60の清掃作業を楽に行うことができる。
【0059】
この実施の形態では、シャッタ60はガイドロッド72に対し着脱可能となっているので、清掃時にはシャッタ60をガイドロッド72から取り外して念入りに清掃することができる。また、この際、該シャッタ60をノズル突出口58よりも手前側に位置させることができるので、このシャッタ60の取り付け及び取り外しも楽である。
【0060】
この実施の形態では、タンクカバーユニット20が洋風便器10の後部上面から浮上した状態となっているときにのみシャッタ60を前進させることができるので、平常のトイレ使用時にシャッタ60がノズル突出口58から離隔して便鉢12内に張り出すことが防止される。また、タンクカバーユニット20の浮上に伴ってシャッタ60の位置も上方へ移動するので、より楽な姿勢でシャッタ60の清掃作業又は該シャッタ60のガイドロッド72への着脱作業を行うことができる。
【0061】
この実施の形態では、タンクカバーユニット20が洋風便器10の後部上面に降下したときにはシャッタ60が後退位置に後退するようになっているので、清掃後にシャッタ60を後退し忘れることが防止される。
【0062】
上記の実施の形態では、シャッタ60を前後進させる動力源として、電動モータを備えたモータユニット75を用いているが、本発明においては、シャッタ60の動力源はこれに限定されるものではない。
【0063】
第10図は、シャッタ前後進駆動用モータの別の構成例を示す断面図である。
【0064】
この第10図の実施の形態では、シャッタ60を前後進させるシャッタ前後進駆動装置70の動力源として、電動モータを備えたモータユニット75の代わりに、水力モータ80を用いている。
【0065】
この水力モータ80は、内部に羽車82を収容したハウジング81と、それぞれ該ハウジング81内に水を流入させるための第1流入口83及び第2流入口84と、該ハウジング81外に水を流出させるための流出口85等を備えている。該羽車82は、ハウジング81内を流通する水流によって回転するものであり、この水流の方向によって正転方向又は反転方向に回転する。該羽車82の回転軸82aの一端側はハウジング81外に延出しており、この回転軸82aに前記ピニオン74が接続されている。この回転軸82aは、羽車82と一体に回転する。
【0066】
この実施の形態では、第1流入口83からハウジング81内に水を流入させたときに羽車82が正転方向に回転し、該回転軸82a及びピニオン74を介してガイドロッド72を前進させると共に、第2流入口84からハウジング81内に水を流入させたときには、羽車82が反転方向に回転してガイドロッド72を後退させるように構成されている。
【0067】
なお、この実施の形態では、トイレ装置は、ノズル32の外面に洗浄水を注ぎ掛けて該ノズル32を洗浄するためのノズル洗浄装置(図示略)を備えている。図示は省略するが、このノズル洗浄装置は、ノズル洗浄水タンクと、該ノズル洗浄水タンクからのノズル洗浄水をノズル32の外面に向って吐出するノズル洗浄水吐水管と、ノズル洗浄水タンクから該吐水管への給水及び止水を切り替える給水弁等を有している。
【0068】
この実施の形態では、該ノズル洗浄装置への給水流路から水力モータ80に水を供給するための給水配管91が分岐している。この給水配管91は、途中で切替弁93を介して二手に分岐しており、この切替弁93から分岐した一方の分岐配管92aが第1流入口83に接続され、他方の分岐配管92bが第2流入管84に接続されている。流出口85には、便鉢12に水を排水するための排水配管(図示略)が接続されている。
【0069】
即ち、この水力モータ80への給水流路は、ノズル32への臀部洗浄水の給水流路や、ノズル32の外面に水を注ぎ掛けて該ノズル32を洗浄するためのノズル洗浄水吐水管への給水流路とは別流路となっている。なお、上記の構成は一例であり、水力モータ80への給水流路の構成は上記の構成に限定されない。
【0070】
この実施の形態では、シャッタ前進スイッチが1回押されると、給水配管91から分岐配管92aに水を供給するように切替弁93が切り替わると共に給水ポンプ(図示略)が作動し、第1流入口83からハウジング81内に水が流入する。これにより、羽車82が正転方向に回転してガイドロッド72が前進する。その後、シャッタ前進スイッチがもう1回押されると、給水配管91から分岐配管92bに水を供給するように切替弁93が切り替わると共に該給水ポンプが作動し、第2流入口84からハウジング81内に水が流入し、羽車82が反転方向に回転してガイドロッド72が後退する。
【0071】
なお、この実施の形態では、ガイドロッド72が所定距離前進したときに該給水ポンプの作動を停止させる前進側リミットスイッチ(図示略)と、シャッタ60がノズル突出口58を閉鎖しうる位置まで後退したときに該給水ポンプの作動を停止させる後退側リミットスイッチ(図示略)とが設けられている。
【0072】
この実施の形態のその他の構成は前述の第1〜9図の実施の形態と同様である。
【0073】
なお、本発明においては、上記のような電力モータや水力モータ以外の動力源、例えばソレノイド等によりガイドロッド72を進退させるように構成してもよい。
【0074】
上記の各実施の形態はいずれも本発明の一例を示すものであり、本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではない。
【0075】
例えば本発明は、タンクカバーユニット20が上下動しないように構成されたトイレ装置にも適用可能である。
【0076】
この場合、図示は省略するが、例えばタンクカバーユニット20又は便座14に、便器使用者の該便座14への着座を検知する着座検知センサを設け、便器使用者が便座14に着座しているときにはシャッタ60を前進不能とし、便器使用者が便座14に着座していないときにはシャッタ60を進退可能とするように、シャッタ前後進駆動装置70の制御回路を構成してもよい。
【0077】
あるいは、例えばタンクカバーユニット20又は便座14に、該便座14が起立姿勢となっていることを検知する便座起立検知センサを設け、便座14が起立姿勢となっていないときにはシャッタ60を前進不能とし、便座14が起立姿勢となったときには、シャッタ60を進退可能とするように、シャッタ前後進駆動装置70の制御回路を構成してもよい。
【0078】
このように構成することにより、便器使用者が便座に着座して用を足している最中にシャッタが前進して便鉢内に張り出すことが防止される。
【0079】
上記の実施の形態では、洋風便器10の後部上面に、ケーシングとしてタンクカバーユニット20(ロータンクカバー)が設置されているが、このタンクカバーユニット20の代わりに、便座ボックス(図示略)が設置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施の形態に係るトイレ装置を備えた洋風便器の斜視図である。
【図2】図1のトイレ装置のタンクカバーユニットの昇降動作を示す側面図である。
【図3】図1のトイレ装置のタンクカバーユニット降下時におけるシャッタ付近の断面図である。
【図4】図1のトイレ装置のタンクカバーユニット浮上時におけるシャッタ付近の断面図である。
【図5】図1のトイレ装置のシャッタ前進時における該シャッタ付近の断面図である。
【図6】図1のトイレ装置のシャッタ、シャッタ前後進駆動装置及びノズルユニットの斜視図である。
【図7】図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【図8】図1のトイレ装置のシャッタ及びガイドロッドの斜視図及び断面図である。
【図9】図1のトイレ装置のガイドレールの斜視図及び断面図である。
【図10】シャッタ前後進駆動用モータの別の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0081】
10 洋風便器
20 タンクカバーユニット
22 リヤベースプレート
24 フロントベースプレート
30 ノズルユニット
32(32A,32B) ノズル
33 ノズルガイド
50 タンクカバー
60 シャッタ
61 シャッタプレート
62 支持体
70 シート前後進駆動装置
71 ガイドレール
72 ガイドロッド
75 モータユニット
80 水力モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋風便器の後部上面に設置され、前部にノズル突出口を有したケーシングと、
該ケーシング内に配置され、該ノズル突出口を通って前方へ突出可能な温水洗浄用ノズルと、
該ノズルの非突出時には該ノズル突出口を閉鎖すると共に、該ノズルの突出時には該ノズル突出口を開放可能なシャッタと
を備えたトイレ装置において、
該シャッタは、該ノズル突出口を開閉可能な後退位置と、該ノズル突出口から離隔して前方へ張り出した前進位置とをとりうるように、略前後方向に移動可能となっていることを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記トイレ装置は、さらに、
該ケーシング内に設置され、略前後方向に進退可能であり、且つ前端に前記シャッタが連結された進退部材と、
該進退部材を進退させる駆動装置と
を有し、
該駆動装置は、電動モータの駆動力により該進退部材を進退させるものであることを特徴とするトイレ装置。
【請求項3】
請求項2において、該シャッタは、該進退部材に対し着脱可能に連結されていることを特徴とするトイレ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ケーシングは、前記洋風便器の後部上面に対し上下動可能に設置されており、
該ケーシングが該洋風便器の後部上面に降下した状態となっているときには、前記シャッタは前記後退位置から前進不能となっており、該ケーシングが該洋風便器の後部上面から浮上すると、該シャッタが前後進可能となるように構成されていることを特徴とするトイレ装置。
【請求項5】
請求項4において、前記トイレ装置は、前記ケーシングが前記洋風便器の後部上面に降下したときには、前記シャッタが前記後退位置に後退するように構成されていることを特徴とするトイレ装置。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記トイレ装置は、便器使用者の便座への着座を検知する着座検知手段を備えており、
便器使用者が便座に着座しているときには、前記シャッタは前記後退位置から前進不能となっており、便器使用者が便座に着座していないときには、該シャッタが前後進可能となるように構成されていることを特徴とするトイレ装置。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ケーシングの前部に便座が起倒方向回動可能に取り付けられており、
前記トイレ装置は、該便座が起立姿勢となっていることを検知する便座起立検知手段を備えており、
便座が倒伏姿勢となっているときには、前記シャッタは前記後退位置から前進不能となっており、便座が起立姿勢となったときには、該シャッタが前後進可能となるように構成されていることを特徴とするトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−102842(P2009−102842A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273985(P2007−273985)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】