説明

トコトリエノールの予防的使用および治療的使用

トコトリエノールを含む治療薬剤および予防薬剤、ならびにトコトリエノールを含む治療薬剤および予防薬剤の使用の方法が、増大したグルタミン酸レベルに関連する脳卒中の発症、ならびにその他の障害および疾患の処置および予防、そしてリポキシゲナーゼ(例えば、酵素12−リポキシゲナーゼ)の効果について、提供される。本発明に従って、リポキシゲナーゼ(例えば、酵素12−リポキシゲナーゼ)の活性に関連する脳卒中、ならびにその他の障害および疾患の発症の処置および予防に対する、治療方法および予防方法が提供される。また本発明に従って、胎児および新生児の脳中のトコトリエノールの濃度の特異的な増加に対する方法が提供される。また本発明に従って、受胎能を改善させる方法、または受胎能を回復させる方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本願は、2003年8月8日出願の米国仮特許出願第60/493,761号明細書の優先権を主張し、その全体を本明細書にて参考として援用する。
【0002】
(連邦政府資金による研究に関する記載)
本研究は、少なくとも一部分において、米国国立衛生研究所の米国国立神経疾患脳卒中研究所からの助成金、RO1−NS42617に支持された。本発明の特定の権利は政府が有する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
脳卒中および他の形態の傷害によりもたらされる発症および損傷は、酵素12−リポキシゲナーゼ(「12−LOX」)の活性によって媒介されると考えられる。12−LOXは、傷害による焦点障害、ならびにパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、癲癇、および関連する状態による拡散障害の結果として生じるニューロンの死に反応し得るようである。12−LOXの活性はまた、脳以外の組織における疾患(例えば、特定の皮膚癌(例えば黒色腫);心臓傷害に起因する心臓の損傷;ならびに筋肉の変性およびHIV感染に関連するほかの障害)の発達に反応し得る。従って12−LOXは、グルタミン酸誘導性細胞毒性に関連する疾患および障害を予防または処置するための抑制性因子に対する、潜在的な標的である。12−LOXの活性を標的とし、そして阻害するための因子および方法が望ましい。
【0004】
黒色腫および他の癌は、複雑な細胞機構および生化学的機構によって制御される。リポキシゲナーゼは、特定の癌に中心的な関与を有すると確認されている。12−リポキシゲナーゼ(12−LOX)は、その代謝産物である12()−ヒドロキシエイコサテトラエン酸[12()−HETE]を通して、実験的な黒色腫の侵襲および転移において中心的な役割を果たすことが立証され、そして12−LOXの発現は、早期のヒト黒色腫発癌に重要であり得る。12−LOXの発現は、ヒトメラニン細胞から良性かつ形成異常の母斑へ、そして悪性の転移性疾患への黒色腫の進行の間で研究された。12−LOXの発現は通常のヒトの皮膚のメラニン細胞では低いことが決定され、そして複合母斑、形成異常母斑および黒色腫に見られるメラニン細胞では増加した発現が観察された。黒色腫は形成異常母斑に比べてより高いレベルの12−LOX発現を有し、そして12−LOX発現は複合母斑のメラニン細胞と形成異常母斑のメラニン細胞との間で顕著に異なった。これらのデータは、黒色腫系内での癌の進行について、12−LOXが重要な新規のマーカーであり得ることを示唆し、そしてそれゆえ、黒色腫の化学防御のための有用なバイオマーカーおよび治療標的であり得る。
【0005】
12−LOXを含むリポキシゲナーゼはまた、神経性傷害および心臓の傷害を含む傷害の結果である心臓の細胞死に関係する。遍在的に発現される細胞質性ホスホリパーゼA(2)(PLA(2))によるアラキドン酸の生成は、細胞の恒常性、炎症および腫瘍形成の制御に基本的な役割を有する。12−LOXはアラキドン酸(C20:4)から12−ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸への変換を触媒し、これはグルタチオンペルオキシダーゼによって次々に12−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12−HETE)に還元される。12−LOXの活性化は、心臓の種々の病理に関係する。従って、12−LOXに抑制的な効果を有する治療薬剤が、癌、ならびに12−LOXに関与する他の障害および疾患の処置のために望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本発明に従って、リポキシゲナーゼ(例えば、酵素12−リポキシゲナーゼ)の活性に関連する脳卒中、ならびにその他の障害および疾患の発症の処置および予防に対する、治療方法および予防方法が提供される。また本発明に従って、胎児および新生児の脳中のトコトリエノールの濃度の特異的な増加に対する方法が提供される。また本発明に従って、受胎能を改善させる方法、または受胎能を回復させる方法が提供される。
【0007】
被験体内の12−リポキシゲナーゼ媒介性の細胞毒性の阻害のための方法が提供され、上記方法は以下;12−リポキシゲナーゼ媒介性細胞損傷の発達の危険性がある被験体に、生物学的有効量のトコトリエノールを投与する工程、を包含する。生物学的有効量のトコトリエノールは、12−リポキシゲナーゼの活性を阻害する。上記方法は、ニューロン損傷、心臓組織損傷、外皮損傷、癌(例えば黒色腫)の発達、および筋肉組織損傷からなる群より選択される12−リポキシゲナーゼ媒介性細胞損傷に対する保護に指向される。
【0008】
また本発明に従うのは、神経性傷害を被る被験体を処置するための方法であり、これは以下;上記被験体に、生物学的有効量のトコトリエノールを投与する工程、を包含する。上記方法は特に、脳卒中および心臓傷害のような傷害の処置に有用である。
【0009】
また本発明に従うのは、黒色腫の発達の危険性がある被験体中の黒色腫の発達を阻止するための方法であり、これは以下;上記被験体に、生物学的有効量のトコトリエノールを投与する工程、を包含する。
【0010】
また本発明に従うのは、癌の予防および処置のための養生法であり、これは癌の予防および処置を必要とする被験体に、トコトリエノールおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的処方物を投与する工程を包含する。このような処置を必要とする個体または被験体は、環境曝露(例えば、太陽に)、または癌の発達に対する他の素因に起因する癌の発達の危険性があるか、あるいは癌と診断されたと考えられる。
【0011】
また本発明に従うのは、胎児中のニューロンを保護するための方法であり、これは、上記胎児を妊娠している妊娠した女性に、少なくとも1種のトコトリエノールを含む組成物を投与する工程を包含する。
【0012】
また本発明に従うのは、少なくとも1種のトコトリエノールを含む組成物を妊娠した女性に投与することにより、ヒトの胎児の脳中のトコトリエノールの濃度を高めるための方法であり、上記組成物は実質的にトコフェロールを含まない。
【0013】
また本発明に従うのは、ヒトの乳児の脳中のトコトリエノールの濃度を高めるための方法である。いくつかの実施形態において、上記方法は、少なくとも1種のトコトリエノールを含む組成物を泌乳中の女性に投与する工程、および上記泌乳中の女性から産生された乳を上記乳児に与える工程を包含する。
【0014】
また本発明に従うのは、成人のヒト被験体の脳中のトコトリエノール濃度を高めるための方法であり、これは少なくとも1種のトコトリエノールを含む組成物を上記被験体に投与する工程を包含し、ここで上記組成物は実質的にトコフェロールを含まず、そして上記組成物はトコフェロールを含む食物または補助食品なしで投与される。好ましい実施形態において、上記ヒトがトコフェロールを含む食品または補助食品を摂取した、少なくとも1時間半後および少なくとも1時間半前に、上記混合物が投与される。補助食品であるTocominを用いて、良好な結果が得られている。
【0015】
また本発明に従うのは、受胎能の改善を必要とする動物における受胎能の改善のための方法であり、これは上記動物に毎日少なくとも1種のトコトリエノールを臨床的有効量を投与する工程を包含する。好ましくは、上記トコトリエノールは、意図される受胎に先立って2週間〜約16週間の期間、毎日投与される。より好ましくは、トコトリエノールは、意図される受胎に先立って少なくとも6〜8週間、毎日投与される。
【0016】
本発明の方法に従って用いられる場合、トコトリエノール組成物は、必要に応じて、1用量あたり約1mg〜約1000mgの単一用量または複数回用量で、被験体に毎日投与される。好ましくは、成人に対する用量は約600mgであり、そして一日あたり1〜3回投与される。投与の好ましい様式は、ゲルキャップの形態での経口的なものである。上記方法に従って用いられるトコトリエノールは、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、それらの誘導体、および1つ以上のそれらの混合物からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、本方法に従う組成物は、実質的にトコフェロールを含まない。
【0017】
また本発明に従うのは、機能的トコフェロール輸送タンパク質を欠く動物について、受胎能を回復させるための方法であって、上記動物にトコトリエノールを含む組成物を投与する工程を包含する。
【0018】
また本発明に従うのは、一次培養物中のニューロンを維持するための方法であって、以下:動物から単離された少なくとも1つのニューロンを提供する工程;少なくとも1種のトコトリエノールを含む培養培地を提供する工程;および上記培養培地を含む容器中で、上記の少なくとも1つのニューロンを維持する工程、を包含する。
【0019】
また本発明に従うのは、一次培養物中のニューロンを維持するための培養培地の形態における培養組成物であって、ここでこのような組成物は、少なくとも1種のトコトリエノールを含む。
【0020】
本発明のさらなる特徴および利点は、続く記述中に部分的に示され、そして部分的にはその記述から明白であるが、または本発明の実行によって知り得る。本発明の特徴および利点は、添付の特許請求の範囲に特に示した要素および組み合わせによって理解され、そして達成される。
【0021】
上記の一般的な記述および以下の詳細な記述はいずれも、例示的かつ説明のためのものに過ぎず、特許請求の範囲に記載されるような本発明を制限するものではないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(詳細な説明)
他に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中の本発明の説明に用いられる用語法は、特定の実施形態のみを記載するためであり、そして本発明を限定することを意図しない。本発明の記載および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「ある」および「その」は、文脈が明白に他を示さない限り、なお複数形を含むことを意図される。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が参考として援用される。
【0023】
他に示さない限り、本明細書および特許請求の範囲中で用いられる成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、全ての事例において用語「約」によって改変されるものとして理解されるべきである。従って、それと反対に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値的パラメーターは近似値であり、本発明から得られるように求められた所望の性質に依存して変化し得る。最低限でも、そして上記特許請求の範囲に相当する原則の適用を制限することを企図しないように、それぞれの数値的パラメーターは、有意な数字の数および通常の丸めアプローチの観点から解釈されるべきである。
【0024】
本発明の広い範囲を示す数値的範囲および数値的パラメーターが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら任意の数値は、本質的に、それらそれぞれの試験計測値に見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を固有に含む。本明細書全体にわたって与えられるそれぞれの数値的範囲は、このようなより広い数値的範囲中に含まれる、それぞれのより狭い数値的範囲を含み、これは、このようなより狭い数値的範囲が全て本明細書中に明白に記されるかのようである。
【0025】
本明細書中で疾患に関連して用いられる場合、用語「処置」は広範に用いられ、そして上記疾患を治療する方法に限定されない。用語「処置」は、一つ以上の疾患の病理学的効果または症状の減少、あるいは一つ以上のこのような病理学的効果または症状の発症または進行の速度の低下に役立つ、任意の方法を含む。
【0026】
本明細書中で用いられる場合、用語「ビタミンE」は、一般的に全てのトコフェロールおよびトコトリエノールを指し、トコフェロール、およびRRR−α−トコフェロールの生物学的活性を有するそれらの誘導体を含む。天然には、八つの物質がビタミンE活性を有することを見出されている:α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロールおよびδ−トコフェロール;ならびにα−トコトリエノール、βトコトリエノール、γトコトリエノールおよびδトコトリエノール。しばしば、用語ビタミンEはα−トコフェロールと同意語として用いられるが、この言及は、本明細書中での用語ビタミンEの意図された使用よりもより限定される。D−α−トコフェロール(RRR−α−トコフェロール)が最も高いバイオアベイラビリティーを有し、そして全ての他のものが一般に比較される標準を示すが、それはビタミンEの8つの天然の形態のうちの一つに過ぎない。以前はζ−トコフェロール、ε−トコフェロール、またはη−トコフェロールとして公知であったトコトリエノールは、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロールおよびδ−トコフェロールに共通である飽和フィチル尾部と対照的に、3ヶ所で不飽和であるイソプレノイド尾部を有する点を除いて、化学的にトコフェロールと類似する。α−トコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロールおよびδトコフェロールは、トウモロコシ油、ダイズ油、およびオリーブ油で主に見受けられるが、トコトリエノールは、ヤシ油、米ぬか油、およびオオムギ油で特に豊富である。
【0027】
本明細書中で用いられる場合、用語「トコトリエノール」は、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、およびδ−トコトリエノールを指し、これらは、ζ−トコフェロール、ε−トコフェロール、またはη−トコフェロールとして以前は公知であり、そして時々代替的に公知である。トコトリエノールは酸化条件下で高度に不安定であり、それゆえ、トコトリエノール調製物を低い酸化条件下に維持し、そして加熱を避けることが望ましい。好ましくは、医薬品または補助食品における使用のためのトコトリエノールは、真空の投薬ユニットに維持されるべきである。
【0028】
トコトリエノールは、大部分が、ヤシ油、米ぬか油、および大麦に生じる。合成トコフェロールおよび天然トコフェロールは、市場で容易に入手可能であるが、天然トコトリエノールの供給は限られている。トコトリエノールが豊富である(800〜1500ppm)粗製ヤシ油は、天然トコトリエノールの潜在的な供給源を提供する。Carotech,Malaysiaは、革新的かつ新しい技術を用いて、有害な環境上の影響無しに抽出率を最大化する溶媒を使用することなく、粗製ヤシ油からトコトリエノールを抽出し得、そして濃縮し得る、世界で唯一の工場である。
【0029】
トコトリエノールの別の潜在的な供給源は米ぬか油、およびその脂肪酸蒸留液由来である。しかし、粗製ヤシ油と異なり、米ぬか中のトコトリエノール含有量は非常に低く、総ビタミンE(トコフェロールおよびトコトリエノール)含有量の約45〜55%である。残りのビタミンEはトコフェロールで占められる。ヤシ油は、総ビタミンEの約75〜80%を占める、比較的高い濃度のトコトリエノールを含む点で独特である。疫学的研究から、トコトリエノールのコレステロール抑制性作用を、高濃度のトコフェロール、特にα−トコフェロールが弱らせることが示された。血中の総コレステロールの減少におけるトコトリエノールの最適な影響を有するために、このような、トコフェロールを低い含有量(総ビタミンEの30%未満)で有する調製物が好ましい。
【0030】
食餌のトコトリエノールは、循環するヒトのリポタンパク質に取り込まれることが示されており、ここでは、対応するトコフェロール異性体と同程度に効率的に、ペルオキシラジカルと反応する(Suarnaら、1993;SerbinovaおよびPacker、1994)。食餌によるトコトリエノールの追加は、ヒトにおける頸動脈のアテローム性動脈硬化症の経過に有益に影響する(Tomeoら、1995)。トコフェロールではなく、トコトリエノールのマイクロモーラー量は、コレステロール生合成に関与する肝臓性鍵酵素である、ヒドロキシ−3メチルグルタリル補酵素A還元酵素の活性を抑制することが示されている(Pearceら、1992;Pearceら、1994)。トコトリエノールは、トコフェロールに比べて優れた抗酸化効果、遊離ラジカル除去効果を有する。これは恐らく、細胞膜の脂質層におけるトコトリエノールの分布がより良いことに起因する。トコトリエノールは、α−トコフェロールよりもより有益な効果を示すが、作用の正確な機構についてはほとんど分かっていない。
【0031】
本発明の開示に先立って報告された研究の結果からは、トコフェロールおよびトコトリエノールの輸送、組織濃度、および相対的生物学的機能が、幾分異なり、そして恐らく無関係であるらしいことが示されている(Proc Soc Exp Biol Med(1993年3月)202(3):353−9を参照のこと)。α−トコフェロール輸送タンパク質(αTTP)は、家族性の隔絶したビタミンE欠乏の原因となる遺伝子の産物であるが、血漿のビタミンEレベルを決定する上で重要な役割を果たす。トコトリエノールを含むビタミンEアナログの、αTTPによる認識に必要な構造的特性の検査が報告されており、ここで、インビトロにおける膜間の輸送について、未標識のビタミンEアナログとα−[3H]トコフェロールとの競合を評価することによって、リガンド特異性が評価された(FEBS Lett 1997年6月2日;409(1):105−8を参照のこと)。種々のビタミンEアナログに対するαTTPの相対的親和性は、種々のトコフェロールの形態について測定された最も高い親和性と、トコトリエノールに対する相対的に低い親和性との競合の程度に基づいて決定された。ラットの再吸収−妊娠アッセイから得られた相対的親和性と公知の生物学的活性との間に、直線関係が存在することが示された。これらの結果は、αTTPに対するビタミンEアナログの親和性が、生物学的活性の重大な決定要因の一つであることを示す。前記、およびトコトリエノールおよびトコフェロールの活性に関して当該分野で公知の他の情報に基づき、ビタミンEのこれらの形態が異なる機能を有し、そして異なる生物学的機構系に関与する証拠がある。
【0032】
(12−リポキシゲナーゼの阻害)
本明細書中に記載されるような、出願人の努力の結果から、12−リポキシゲナーゼ(LOX)経路がトコトリエノールに感受性であることが確認されている。グルタミン酸誘導性12−LOX活性が、ナノモーラー濃度のトコトリエノールに感受性であることを示す最初の証拠を、出願人は提示する。加えて、12−LOX欠乏性の一次皮質ニューロンが、グルタミン酸による攻撃に抵抗性であることを、出願人は示す。
【0033】
本明細書中に開示されるように12LOXは、脳卒中に関連付けられるが、トコトリエノールにより効率的に阻害され、トコトリエノールが細胞死に先立って投与される場合、12−LOX活性の神経変性効果は覆され得る。トコトリエノールは、脳卒中、パーキンソン病、ALS、癲癇、ならびにその他の神経変性障害および傷害を含む、限局性傷害および散在性傷害の損傷効果に対する保護に用いられ得る。生理学的に関連する範囲に十分に含まれる濃度において、HT4および未成熟一次皮質ニューロン中でα−トコトリエノールは強い神経保護性質を示す。現在の結果は、グルタミン酸誘導性酸化的毒性を達成する上での12−LOXの中心的な役割を確認し、そしてα−トコトリエノールを栄養に基づいた治療における期待できる手段として提供する。
【0034】
(投薬量および投与)
上記トコトリエノール組成物は、傷害、癲癇、ALS、パーキンソン病、ならびにその他の傷害および障害の結果としての脳卒中、およびその他の神経性損傷(限局的であれ散在性であれ)を罹患した、または罹患する危険性がある被験体に投与される。上記トコトリエノール組成物は、損傷の逆転、およびそれ以上の12−LOX媒介性損傷からの保護を達成するために十分な量を、好ましくは傷害の発症の前に、そして連続的に投与される。上記トコトリエノール組成物は、約1mg〜1000mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に投与される。より好ましくは、約100mg〜800mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に調剤が与えられる。最も好ましくは、約600mgの投薬量が、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に提供される。好ましい送達の形態は、経口摂取のためのゲルキャップである。若年の被験体に対する投薬量は、一用量あたり約1mg〜1000mgの範囲であり、より好ましくは一用量あたり約50mg〜500mgの範囲であり、最も好ましくは一用量あたり約300mgであり、一日あたり約1〜3用量の頻度である。
【0035】
(黒色腫およびその他の癌の予防および処置)
12−LOXは、黒色腫および特定のその他の癌に直接的に関連する。トコトリエノールは、12−LOXの機能に阻害的な効果を有することが、本明細書中に開示される。従ってトコトリエノールは、黒色腫およびその他の癌の処置に対する薬学的因子として示される。
【0036】
(投薬量および投与)
上記トコトリエノール組成物は、黒色腫およびその他の癌、特にリポキシゲナーゼ(例えば、12−リポキシゲナーゼ)に関与する癌に罹患している、または罹患する危険性がある被験体に投与される。上記トコトリエノール組成物は、損傷の逆転、およびそれ以上の12−LOX媒介性損傷からの保護を達成するために十分な量を、好ましくは傷害の発症の前に、そして連続的に投与される。上記トコトリエノール組成物は、約1mg〜1000mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に投与される。より好ましくは、約100mg〜800mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に調剤が与えられる。最も好ましくは、約600mgの投薬量が、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に提供される。好ましい送達の形態は、経口摂取のためのゲルキャップである。若年の被験体に対する投薬量は、一用量あたり約1mg〜1000mgの範囲であり、より好ましくは一用量あたり約50mg〜500mgの範囲であり、最も好ましくは一用量あたり約300mgであり、一日あたり約1〜3用量の頻度である。
【0037】
(心臓組織の保護)
(投薬量および投与)
上記トコトリエノール組成物は、リポキシゲナーゼ(例えば12−リポキシゲナーゼ)に関与する、心臓の障害およびその他の傷害に罹患した、または罹患する危険性がある被験体に投与される。上記トコトリエノール組成物は、約1mg〜1000mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に投与される。より好ましくは、約100mg〜800mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に調剤が与えられる。最も好ましくは、約600mgの投薬量が、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に提供される。好ましい送達の形態は、経口摂取のためのゲルキャップである。若年の被験体に対する投薬量は、一用量あたり約1mg〜1000mgの範囲であり、より好ましくは一用量あたり約50mg〜500mgの範囲であり、最も好ましくは一用量あたり約300mgであり、一日あたり約1〜3用量の頻度である。
【0038】
(胎児の脳組織、新生児の脳組織、および成人の脳組織の保護)
トコフェロールの形態のビタミンEは、特定の形態の細胞性損傷に関連する胎児および新生児の状態を改善することが公知である。最近の科学的証拠から、トコトリエノールの形態のビタミンEが、トコフェロールの細胞性影響と異なる細胞性影響を有することが示され;ニューロン細胞において、グルタミン酸誘導性神経毒性の予防に、トコトリエノールはトコフェロールより強力であることが示された。学術的文献に従って、食餌性のα−トコトリエノールは脳(胎児および母乳で育てた新生児の脳を含む)に到達しないことが示唆された。従って、胎児および新生児中のトコトリエノールレベルの効率的な亢進のための方法の確認が望ましい。
【0039】
成人のヒトのための栄養補助食品は、長くにわたってビタミンEを有し、それは主にa−トコフェロールの形態であり、そして時折トコトリエノールの形態(代表的には、臨床的に有益であるレベルより十分に下に減少した量であるにもかかわらず)である。トコトリエノールがα−トコフェロールとは異なる利点を与えるという証拠が増加している。しかし、成人のヒトの脳中に有益なレベルのトコトリエノールを取り込み、そして維持することは、達成し難いという証拠もまたある。従って、成人のヒトの脳およびその他の重要な組織にトコトリエノールを効果的に取り込み得る方法および組成物が望まれる。
【0040】
妊娠の間のわずか2週間にわたるビタミンEの欠乏した食餌の消費が、成人の脳のビタミンEレベルに影響しない一方で、胎児の脳のビタミンEレベルを実質的に低下させ、このことは妊娠の間の食餌中のこのビタミンの適切なレベルの重要性を強調する。妊娠した母親がトコトリエノールの栄養補助食品を供給される場合、成人の脳に比べて、胎児の脳によるより高いα−トコトリエノールの形態のビタミンEの取り込みが観察される。このように、胎児の脳のトコトリエノールレベルは、母親の食餌のトコトリエノールの摂取と密接に関連する。この開示に基づき、食餌性のトコトリエノールが、胎児の脳に生物学的に有用である。胎児の脳に送達されるトコトリエノールだけでなく、食餌性トコトリエノールの物質に応答する遺伝子発現パターンは、妊娠食中のビタミンEが、発達する胎児の脳の遺伝子発現性質に有利に影響を与えることを示唆する。
【0041】
本明細書中で提供される開示はさらに、成人において、成人の脳に食餌的に補充された、または薬学的に補充されたトコトリエノールが、トコフェロールによって部分的に阻害されることを示す。これらの因子の特異な取り込みは、血液脳関門を横切る輸送のための共有されるキャリアに指向されると考えられる。トコトリエノールの取り込みは、実質的にトコフェロールを含まない、トコトリエノール組成物の食餌性および補助形態の投与を通して亢進され得る。
【0042】
(投薬量および投与)
上記トコトリエノール組成物は、傷害、酸化的ストレスおよびグルタミン酸毒性、出生傷害または仮死に起因する神経性損傷を被った、またはそれらを被る危険性がある被験体(成人、妊婦および胎児、ならびに若年者を含む)に投与される。上記トコトリエノール組成物は、グルタミン酸、酸化的ストレス、および/または12−LOX媒介性損傷の効果の結果である損傷からの保護を達成するために十分な量を、好ましくは傷害の発症の前に、そして連続的に投与される。上記トコトリエノール組成物は、約1mg〜1000mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に投与される。より好ましくは、約100mg〜800mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に調剤が与えられる。最も好ましくは、約600mgの投薬量が、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に提供される。好ましい送達の形態は、経口摂取のためのゲルキャップである。若年の被験体に対する投薬量は、一用量あたり約1〜1000mgの範囲であり、より好ましくは一用量あたり約50mg〜500mgの範囲であり、最も好ましくは一用量あたり約300mgであり、一日あたり約1〜3用量の頻度である。必要に応じて、若年者に投与される用量は、トコフェロールを欠き得る。
【0043】
(受胎能を回復、または亢進するためのトコトリエノールによる処置)
多数の研究および製品が、不妊症のための処置の栄養に基づく養生法の一部として、トコフェロールの形態でのビタミンEの使用を目的とする。しかし、トコフェロールおよび他の栄養性補助の効果が、細胞性損傷を起こす細胞上プロセスを阻害するに十分でないことの証拠がある。同様に、特定の個体は、組織中のトコフェロールの輸送および取り込みに必要な細胞性因子(すなわち、輸送タンパク質)を欠き、これらの特定の個体では、トコフェロールの有益な効果が失われている。従って、不妊症の根底にある原因は、しばしば、現在のトコフェロールの形態のビタミンEを用いた栄養に基づいた処置および薬学的処置によっては、満足には対応されない。従って、不妊症の処置のための栄養に基づいた補助を提供する、代替の物質が望ましい。
【0044】
トコトリエノールは、トコフェロールの吸収不全、あるいはトコフェロールの取り込みまたは利用可能性における他の機能不全の結果として崩壊した、受胎能の維持または回復のための食餌的養生法において、トコフェロールに代わって、またはトコフェロールの補助として用いられ得る。食餌性のトコトリエノールの効果は、受胎能に関連する組織(例えば、精巣上体または腹腔の脂肪、あるいは羊膜液)について、長く作用する。従って、トコトリエノールおよびトコフェロールの双方の共投与に関する、現行の食餌的養生法が望ましい。
【0045】
(投薬量および投与)
上記トコトリエノール組成物は、トコフェロールの吸収不全、あるいはトコフェロールの取り込みまたは利用可能性における他の機能不全の結果としての、受胎能の崩壊を経験する被験体に投与される。上記トコトリエノール組成物は、約1mg〜1000mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に投与される。より好ましくは、約100mg〜800mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に調剤が与えられる。最も好ましくは、約600mgの投薬量が、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成人の被験体に提供される。好ましい送達の形態は、経口摂取のためのゲルキャップである。好ましくは、意図する受胎に先立つ、少なくとも6〜8週間において、毎日処置が施される。
【0046】
(トコフェロール輸送タンパク質(TTP)ノックアウトマウスの繁殖を可能にするためのトコトリエノールの使用)
食餌的に、または薬学的に補われたトコフェロールの、腸から体の種々の部分への取り込み、および輸送は、TTPによって導かれる。哺乳動物におけるトコフェロールおよびトコトリエノールの重要な役割を理解し、そして識別するために、TTPの発現が除去されたノックアウトマウスが産生された。TTPの妨害は、これらのマウスにおける受胎能の欠如をもたらし、それは繁殖を不可能にし、従ってそれ以上の研究のための系の維持を不可能とする。本開示は、トコトリエノールの使用が、TTPノックアウトマウスにおけるTTP依存性不妊症の逆転をもたらすことの、最初の証拠を提供する。
【0047】
(投与および投薬量)
上記トコトリエノール組成物は、約1mg〜1000mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成体の被験体に投与される。より好ましくは、約1mg〜500mgの範囲において、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成体の被験体に経口調剤が与えられる。最も好ましくは、約50mgの投薬量が、一日あたり約2〜3用量の頻度で、成体の被験体に提供される。好ましくは、意図する受胎に先立つ、少なくとも6〜8週間において、毎日処置が施される。
【0048】
(脳細胞の培養における試薬としてのトコトリエノール)
一次ニューロンは、成人の組織および若年者の組織の双方から単離され、そして治療的な用途、および研究用の用途を含む、多数の用途がある。一次ニューロンの成功した培養物は、一次ニューロン移植の使用、および特定の神経変性疾患の処置に関連する臨床的計画の実行可能性に中心的に重要である。同様に、培養物中における一次ニューロンの確立および維持は、ニューロンの発達、分化、および刺激への応答に関連する実験の実行に必須である。これらの細胞は、その培養環境に対する極めて高い感受性に起因して、培養物中での維持が難しい。特に、より年をとった被験体から得た組織ほど、培養環境中でより損傷しやすく、そして死に易い。
【0049】
トコトリエノールは、一次培養物中の脳細胞の維持に、約0.001μM〜100μMの濃度で効果的に用いられ、より好ましくは0.01μM〜10μMの範囲であり、最も好ましくは0.5μM〜2μMの範囲である。約1μMのトコトリエノール濃度によって、良好な結果が得られた。一次ニューロンは、生物学的研究にとって、潜在的な診断用途および治療用途にとって、そして薬物のスクリーニングにとって有用である。トコトリエノールを含む培養は、高齢の被験体に由来するニューロンについて特に有用である。なぜなら、これらの他の感受性細胞の培養物についての生存度を、上記神経保護効果が増加させるからである。トコトリエノールを含む培養はまた、ニューロンの用途における使用を意図した幹細胞にとって有用である。
【0050】
(トコトリエノールの形態および投与)
本明細書中に用いられるように、用語「生物学的有効量」は、12−LOXの活性を阻害するに十分な量である。要求されるトコトリエノールの量は、処置される状態の性質および重篤度、ならびに、被験体が受けた前処置の性質、および標的とされる欠陥または疾患の型に依存する。究極的には、用量は臨床的試行を用いて決定される。最初に臨床医は、動物の研究から導かれた用量を投与する。有効量は、上記トコトリエノール組成物の一回の投与によって達成され得る。あるいは有効量は、上記トコトリエノール組成物の被験体への複数回の投与によって達成される。用語「治療有効な」および「薬学的有効な」は、疾患の重篤度および発生の頻度の改善の目標を達成する一方で、代替の治療に概して関連する有害な副作用は回避する、上記トコトリエノール組成物の量を与えることを意図する。本明細書中に用いられる場合、用語「治療的有効量」および「薬学的有効量」は、被験体に有意な利益(すなわち、神経性傷害または心臓傷害に関連した疾患の症状の低下、あるいは腫瘍の大きさの縮小、腫瘍の増殖および/または運動性もしくは転移の阻止、阻害、および/あるいはアポトーシスの増加、および/あるいは腫瘍の存在に関連した症状の低下、および不妊症の場合には、妊娠能力の回復)を示すに十分な、上記トコトリエノール組成物の総活性量を意味する。
【0051】
本発明に従う上記トコトリエノール組成物の初期用量は、一日あたり約1〜3回の頻度において、1mg〜1000mgの範囲である。本方法はトコトリエノールの使用に関連するが、明らかに、臨床的用途を広げる他の治療因子と併用し得る。投与の正確な用量および頻度が、本発明の方法において用いられる、投与される特定の化合物、処置される特定の状態、処置される状態の重篤度、特定の患者の年齢、体重、一般的な身体的状況、ならびに、当業者である投与する医師に周知である上記個体が取られ得る他の処方に依存することは、当業者にとって明白である。
【0052】
いくつかの実施形態において、上記トコトリエノール組成物は実質的にトコフェロールを含まない。本明細書において用いられる場合、「実質的に含まない」とは、1種以上のトコフェロール化合物を1重量%未満含む、1種以上のトコトリエノールを含む組成物を呼ぶ。好ましくは、上記組成物は0.5重量%未満の1種以上のトコフェロール化合物を含み、より好ましくは0.1重量%未満の1種以上のトコフェロール化合物を含み、最も好ましくは0.01重量%未満の1種以上のトコフェロール化合物を含む。
【0053】
トコトリエノールを含む組成物は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路および腹腔内経路を介して投与され得る。好ましくは上記組成物は、経口的または静脈内のいずれかによって投与され、そして最も好ましくは、上記組成物は経口的に投与される。
【0054】
注射または局所的な適用による送達もまた用いられ得るが、トコトリエノールの処方物の予防的投与および治療的投与にとって、経口投与が主要な経路であることが想像される。適切な用量のトコトリエノールを含む薬学的組成物は、一般的に用いられる希釈剤、賦形剤、ビヒクル、および添加物(例えば、充填剤、増量剤、結合剤、キャリア、塩、保湿剤、崩壊剤、崩壊遅延剤、湿潤剤、懸濁剤、界面活性剤、潤滑剤など)と共に調製され得る。上記組成物は、種々の投薬形態(例えば、ゲル錠剤、溶液、懸濁液、乳濁液、注射剤(例えば、溶液、懸濁液))を有し得る。
【0055】
通常の無毒性の個体キャリア(例えば、グルコース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、セルロースまたはセルロース誘導体、カルボン酸ナトリウムおよびカルボン酸マグネシウム)中にトコトリエノールを含む個体の組成物。局所的(すなわち経皮的)使用のための処方物としては、公知のゲル、クリーム、油、および軟膏が挙げられる。脂肪酸原料中の処方物は、生体適合性を広げるために用いられ得る。さらに上記組成物は、着色料、保存料、芳香剤、香料、甘味料、および/またはその他の薬物を含み得る。注射剤、溶液、乳濁液、および懸濁液の形態のトコトリエノールは滅菌され、そして好ましくは血液と等張性である。このような形態は、当該分野で一般に用いられる希釈剤を用いて調製され得る;例えば、水、エタノール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシイソステアリルアルコール、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル。上記組成物は、等張溶液を調整するために必要な塩化ナトリウム、グルコースまたはグリセリン、ならびに通常の可溶化剤、緩衝液、および鎮静剤を含み得る。
【0056】
乾燥充填カプセルとしても公知であるカプセルは、適切な大きさの嚥下可能な容器(代表的にはゼラチン製である)に上記組成物が含まれた、経口性の固形の投薬形態である。本発明の栄養補助的組成物を含むために適切な硬質な空のカプセルは、いくつかの原料(例えば、Tishcon Gel−Tec、2410N.Zion Rd.、Salisbury、Md.21801)から利用可能である;上記カプセルは、二分されて供給され、そして種々の大きさで供給される。その大きさは代表的には番号で表され、範囲のより大きい端の000から、範囲の最も小さい端の5の範囲である。上記カプセルの半分は適切な着色料によって着色され得、そしてそれぞれの半分にしたものは同じ色でも異なる色でもよい。
【0057】
投薬形態の中で、本発明の方法に特に適切なのは、ソフトゼラチンカプセルである。従って、1mg〜1000mgのトコトリエノールが、適切な希釈剤(例えば、野菜油)と混合され、次いでソフトゼラチンカプセルに封入される。他の投薬形態としては、例えば、トコトリエノールがアルコール中に、賦形剤(例えば香料)と共に懸濁された、または溶解された、懸濁液が挙げられる。
【0058】
注射によって投与される場合、適切なキャリアとしては、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、および濃度増加因子および可溶化剤(例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびそれらの混合物)を含む溶液が挙げられるが、これらに限定されない。組織標的リポソームを含むリポソーム懸濁液もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして適切であり得る。これらは、当該分野で公知の方法に従って調製され得る。
【0059】
本発明の化合物は、上記化合物を体からの迅速な排出から保護するキャリア(例えば、徐放性の処方物またはコーティング)と共に調製され得る。このようなキャリアは徐放性の処方物(例えば、インプラントおよびマイクロカプセルに入れた送達システム、ならびに、生分解性、生体適合性ポリマー(例えば、コラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸など)であるが、これらに限定されない)を含む。このような処方物の調製のための方法は、当業者にとって公知である。
【実施例】
【0060】
本発明は、以下の実施例を参照することでより良く理解され得、これらの実施例は例示に役立つが、本発明を限定するものではない。
【0061】
(実施例1:トコトリエノール処方物#1(TOCOMIN(登録商標)(Carotech Sdn.Bhd.によって製造)))
【0062】
【表1−1】

【0063】
【表1−2】

(実施例2:培養物中のラットおよびHT4ニューロンの保護)
α−トコトリエノールは、nM濃度において、グルタミン酸誘導性死からHT4ニューロンを保護する;この保護は、α−トコトリエノールの抗酸化性とは独立する(Senら、2000)。図1に参照されるように、一次ラット未成熟皮質ニューロン(A〜C)またはHT4(D)を、α−トコトリエノールで5分間処理するか、あるいは処理せず(示したように)、そしてグルタミン酸(10mM;A);L−ホモシステイン酸(1mM;B);またはブチオニンスルホキシイミン(0.15mM;BSO)のいずれかで24時間刺激した。アラキドン酸(0.05mM、C)は、BSO誘導性の細胞死を強化した。a−トコトリエノールは、上記の神経毒の全てに対して総合的な保護を与えた。D、100nMのトコトリエノールは、グルタミン酸誘導性毒性を阻止しただけでなく、グルタミン酸処理した細胞が、グルタミン酸処理していない細胞に匹敵する速度で増殖するようにした。細胞は、グルタミン酸刺激の12時間後、24時間後、および36時間後に計数した。A:†、コントロールのグルタミン酸非処理群に比べて低い;*、グルタミン酸処理群に比べて高い。B:†、コントロールのLホモシステイン酸未処理群に比べて低い;*、L−ホモシステイン酸処理群に比べて高い。C:†、対応するコントロールに比べて低い;*、対応する、毒に刺激された群に比べて高い。D:†、対応する、コントロールの未処理群に比べて低い;*、対応するグルタミン酸処理群に比べて高い。Pは0.05未満。
【0064】
HT4およびラットのニューロンについて行われた実験において、nM濃度のα−トコトリエノールは、標準的な神経毒(例えば、グルタミン酸、L−ホモシステイン酸、L−ブチオニン−[S,R]スルホキシイミン(BSO)、ならびにBSOとアラキドン酸との併用)により刺激された未成熟一次ニューロンを保護する(図1A〜C)。
【0065】
HT4ニューロンをグルタミン酸で刺激して行った実験から、nMレベルのα−トコトリエノールが、細胞の生存の減少から保護するだけでなく、また培養物中のこれらの細胞の通常の増殖速度を維持することが明らかになり、このことは、インタクトな細胞機能を示唆する(図1D)。
【0066】
βチューブリン、神経フィラメントの染色、および位相差顕微鏡による経時的検査から明白なように、グルタミン酸による一次ニューロンの刺激は、軸索樹状突起間の神経回路網の顕著な破壊をもたらす。図2に参照されるように、摂取の24時間後に、細胞をグルタミン酸で刺激した。示された場合、グルタミン酸処理に先立って5分間、ニューロンをaトコトリエノール(250nM)またはBL15(2.5μM)のいずれかで前処理した。a〜h、培養された神経回路網中の、ニューロン特異的なクラスIIIβ−チューブリン(位相差顕微鏡検査については、i〜pを参照)。グルタミン酸処理の24時間後、細胞を固定し、そして染色した。a、コントロール;b、グルタミン酸;c、α−トコトリエノール+グルタミン酸;d、BL15+グルタミン酸。e〜h、培養した神経回路網中の神経フィラメントの染色(位相差顕微鏡検査については、i〜pを参照)。e、コントロール;f、グルタミン酸;g、a−トコトリエノール+グルタミン酸;h、BL15+グルタミン酸。i〜p、標準(ガラスカバー片無しで(not glass cover−slip))培養条件下でグルタミン酸処理したニューロンの生細胞画像化。位相差画像を、グルタミン処理8時間後から、18時間後に渡って15分毎に一回収集した。フレームは、時間依存的な神経回路網の崩壊を示す。i、グルタミン酸処理8時間後;j、グルタミン酸処理12時間後;k、グルタミン酸処理16時間後;およびl、グルタミン酸処理26時間後。α−トコトリエノール(250nM)で前処理した、グルタミン酸刺激を受けたニューロンは崩壊に抵抗し、そして成長し続けた。m、グルタミン酸処理28時間後;n、グルタミン酸処理30時間後;o、グルタミン酸処理32時間後;そしてp、グルタミン酸処理34時間後。2つ(i〜lおよびm〜p)の.avi顕微鏡写真ビデオを、オンラインの刊行物に付属した。200×の拡大率。
【0067】
細胞のα−トコトリエノールによる前処理は、グルタミン酸誘導性神経崩壊を防ぐだけでなく、10mMのグルタミン酸があるにもかかわらずニューロンの成長を維持する(図2)。一次ニューロンにおけるグルタミン酸誘導性の構造変化に対する防御を、位相差顕微鏡による経時的な検査から観察した(図2)。標準の培養プレート中で増殖するニューロンを、ガラスカバー片上で増加させること無く、首尾良く画像化した。標準の培養条件下で、ニューロンおよびその軸索樹状突起間回路は、完全に運動能力がある。このことは、神経毒性のきっかけとなる上でグルタミン酸が効果的でない、トコトリエノール処理した細胞上の顕微鏡写真において、顕著に明白である(図2)。グルタミン酸処理したコントロールニューロンの経時的画像から、回路網の崩壊の前において細胞構造の運動における阻害が明らかとなった(データは示さず)。
【0068】
(実施例3:培養物中の12−LOXノックアウトマウスニューロン細胞の保護)
まず本発明者らは、本発明者らのモデルにおけるグルタミン酸誘導性死の遂行における12−LOXの関与について試験した。本発明者らは、12−LOX特異的インヒビターであるバイカレインまたはBL15を用いることから始めた。図3に参照されるように、HT4ニューロンを、(A)a−トコトリエノール(250nM)またはBU5(2.5μM、12−リポキシゲナーゼインヒビター)で5分間処理するか、あるいは処理せず、次いでグルタミン酸(10mM)で刺激した。細胞の生存性を、ヨウ化プロピジウム(PI)排除フローサイトメトリーアッセイを用いて決定した。PI−=生存;PI+=死。ラット一次未成熟皮質ニューロン(B〜D)を、α−トコトリエノール(100nM)またはBL15(2.5μM)で5分間処理するか、あるいは処理せず、そしてグルタミン酸(10mM;B);L−ホモシステイン酸(1mM;C)またはブチオニンスルホキシイミン(0.15mM;BSO;D)のいずれかで24時間刺激した。アラキドン酸、50μMで24時間。BL15、バイカレイン 5,6,7−トリヒドロキシフラボン。μ−トコトリエノールおよびBL15の双方は、細胞性グルタチオン(GSH;E)の減少にもかかわらず、グルタミン酸の刺激に対して、ニューロンを保護した。B〜E:†、対応するコントロール未処理群と比較して低い;*、対応する毒物処理群と比較して高い。Pは0.05未満。
【0069】
BL15で前処理した細胞は、HT4細胞のグルタミン酸誘導性死、および一次ニューロンのグルタミン酸誘導性死に対して、明白に保護した(図3AおよびB)。加えて、BL15前処理は、Lホモシステイン酸またはBSOに引き起こされる毒性に対して、一次ニューロンを保護した(図3CおよびD)。過去に本発明者らは、nMのαトコトリエノールが、HT4細胞のグルタミン酸誘導性死に対して保護するが、グルタミン酸誘導性の細胞性GSHの減少は救わないことを報告した(27)。同じように、グルタミン酸の毒性効果に対するBL15依存性保護は、グルタミン酸処理した一次ニューロン中の低下したGSHレベルに関連した(図3E)。少数の重要な論文が、グルタミン酸誘導性の12−LOX活性化が、ニューロンの死の遂行に重要な役割を果たすことを支持する薬理学的な証拠を示したが、確証的な証拠は未だない。
【0070】
(実施例4:トコトリエノールによる12−リポキシゲナーゼの阻害)
ビタミンEおよびそのアナログが、5−LOXの強力なインヒビターであることが公知である(37)。この効果は、ビタミンEの抗酸化性質とは独立する。ビタミンEはまた、15−LOXの酵素タンパク質と特異的に複合することで、15−LOXを阻害することが公知である(38)。グルタミン酸誘導性ニューロン死の遂行における、誘導性12−LOXの中心的な役割が提唱されている(16、20)。従って本発明者らは、ビタミンEαトコトリエノールが、12−LOX活性の阻害によって、グルタミン酸誘導性神経変性を保護するかどうか調べることを目指した。
【0071】
グルタミン酸誘導性ニューロン死の遂行における、誘導性12−LOXの中心的な役割が提唱されている(Liら、1997;Tanら、2001)。図4に参照されるように、マウスの一次未成熟皮質ニューロン細胞(C57BL/6、A;B6.129S2−A/ox15tmlFun、B)を、グルタミン酸(10mM)で24時間刺激した。細胞の生存性は、乳酸脱水素酵素アッセイによって評価した。処理の諸説は、図1の説明文に記される。α−トコトリエノール、100nM。†、対応するコントロール未処理群に比較して低く、また、12−リポキシゲナーゼ欠乏ニューロンにおける対応する群に比較して低い;*、対応する毒物処理群に比較して高い。Pは0.05未満。
【0072】
12−LOX欠乏マウスから単離されたニューロンは、グルタミン酸誘導性死に抵抗性である(図4)。この著しい知見は、α−トコトリエノールを、ニューロン細胞中でのグルタミン酸誘導性12−LOX活性のインヒビターとして試験するという本発明者らの興味を強化した。図5に参照されるように、グルタミン酸処理したニューロン中の12−リポキシゲナーゼ活性による産生物を、HPLCに基づいた分析アプローチを用いて評価した。パネルAは、HETEについての代表的なクロマトグラムを示し、HETEはリポキシゲナーゼ活性の主要な副産物である;パネルBは、12時間にわたるグルタミン酸処理が、12−リポキシゲナーゼ活性の産物である12(S)−HETEの、HT4ニューロン中におけるレベルの上昇をもたらした結果を示す。ND、検出されず。12−LOX活性の副産物である12(S)−HETEは、基本的な培養条件ではHT4細胞中に検出されなかったことが観察された(図5)。グルタミン酸処理は、細胞の12(S)−HETE含有量を顕著に上昇させた。しかし、このような上昇は、α−トコトリエノール処理された細胞では阻止された(図5)。この傾向の観察から、HT4細胞中における12−LOXの過剰発現が、HT4細胞をグルタミン酸誘導性細胞毒性に敏感にするのかどうか、およびα−トコトリエノールがこのような毒性に対向し得るのかどうかという疑問につながった。
【0073】
図6に参照されるように、HT4細胞に、2時間のグルタミン酸処理を与えた。処理は、細胞質における12−リポキシゲナーゼの減少(A)、および膜における上昇(B)をもたらし、このことは、この酵素の細胞質から膜への流動を示唆した。パネル(Pane)Cは、HT4細胞における12−リポキシゲナーゼのうまくいった過剰発現を示す:パネルDは、a−トコトリエノールによる、精製された12−リポキシゲナーゼ活性の、用量依存的な阻害を示す。精製された12−リポキシゲナーゼ(ブタ白血球;10ユニット)を、[14C]−アラキドン酸(25μM)と共に、37℃で30分間インキュベートした。「材料および方法」に記載するように、アラキドン酸および12−HETEを、薄層クロマトグラフィーを用いて分離した。本発明者らは、HT4細胞において、グルタミン酸による処理が、細胞質の12−LOXタンパク質を細胞膜に移動させたことを観察した(図6AおよびB)。[14C]−アラキドン酸の存在下における12−LOX活性の、薄層クロマトグラフィー解析から、α−トコトリエノールが、用量に依存して上記精製された酵素の活性を阻害したことが明らかになった(図6D)。
【0074】
(実施例5 12−LOXの三次元モデリング)
図7に参照されるように、12−リポキシゲナーゼおよびα−トコトリエノールのドッキング解析の三次元モデリングを行った。A、12−リポキシゲナーゼの三次元構造。300MHz MIPS R5000、OS IRIX リリース6.5におけるSilicon Graphics 02上で、相同性モデルの構築を行った。12−リポキシゲナーゼの理論的モデルを、Sybyl GeneFoldモジュール(v6.8、Tripos,Inc.、St.Louis、MO)を用いて構築した。BおよびC、a−トコトリエノールドッキングの理論的モデル(二部位BおよびCは、10ヶ所の異なるドッキング部位を示した)。赤いアミノ酸残基は、His−360、His−365、His−540、およびIle−663であり、隣接する鉄原子は太字で示され得る。D、10ヶ所の異なるドッキング部位について、Autodockが結合自由エネルギーを計算し、そして結合エネルギーの上昇する順に、それらを並び替える。リポキシゲナーゼのN末端ドメインは、八つの標準の逆平行βバレルを含み、その分子量は、遺伝的起源(哺乳動物または植物)によって異なる(Minorら、1996)。理論的モデルについての大きさおよび構造の記載は、1YGEの結晶構造に一致する。哺乳動物種において、タンパク質のC末端は、酵素の触媒ドメインを形成し、約18〜22のらせん、および1つの逆平行β−バレルシートを含む。二つの長い中心らせんが活性部位で交差し、そして鉄リガンドに結合するためのヒスチジンを含む(Minorら、1996)。これらのヒスチジンは、本発明者らの理論的モデルにおいて、360位、365位、および540位において観察された(図7A)。末端のイソロイシンは、活性部位空洞の大きさを維持する上で重要な役割を果たす(Borngraberら、1999)。鉄原子活性中心のためのこの空洞はまた、理論的モデルの場合においても見られ得る。これは、二原子酸素添加反応および基質結合のための中心である(Gillmorら、1997)。理論的モデルに観察され得る、30種の溶媒空洞があり、最大の空洞の大きさは124Cu.Aであり、これは活性部位の近傍に入る。理論的モデルについてのPROCHECKタンパク質幾何学的条件は、1YGEについて88%であったのに比較して、見込まれる領域内の残基の85%を計算した。残りの残基は、広く見込まれる領域に入る。10ヶ所の異なるドッキング部位について、Autodockが結合自由エネルギーを計算し、結合エネルギーの上昇する順にそれらを並べ替える(図7D)。ドッキングエネルギー(docked energy)を、結合自由エネルギーおよびリガンドの内部エネルギーから計算する。阻害定常は、引き続いてドッキングエネルギーと相関する。本発明者らは、活性部位に近い溶媒空洞の開口において、α−トコトリエノールが濃縮されることを見出した(図7BおよびC)。
【0075】
(実施例2〜5についての材料および方法)
(材料)以下の材料は、示した供給源より得た。L−グルタミン酸一ナトリウム塩;アラキドン酸;ジメチルスルホキシド;L−ブチオニン−[S,R]スルホキシミン;L−ホモシステイン酸(Sigma、St.Louis、MO);バイカレイン;5,6,7,トリヒドロキシフラボン(BL15;Oxford Biomedical Research、Oxford、MI);トコトリエノール(BASF、Germany;Carotech、Malaysia)。細胞培養のためには、ダルベッコ改変イーグル培地、最小必須培地、ウシ胎仔血清、ならびにペニシリンおよびストレプトマイシン(Gibco、Gaithersburg、MD);さらに培養皿(Nunc、Denmark)を用いた。
【0076】
(細胞培養)マウス海馬HT4細胞を、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を補ったダルベッコ改変イーグル培地中で、37℃において、95%の空気および5%のCOを含む加湿空気中にて、増殖させた。HT4細胞は、D.E.Koshland Jr.博士(University of California at Berkeley)より提供された(Senら、2000)。一次皮質ニューロン。ラット胎児の大脳皮質(Sprague Dawley;妊娠17日目)、またはマウス胎児の大脳皮質(C57BL/6マウス、妊娠14日目)から、記載されたように(Murphyら、1990)、細胞を単離した。12−LOXノックアウト研究のために、B6.129S2−Alox15tm1Funの胎児からニューロンを単離した(Jackson Laboratory、MI)。脳からの単離後、細胞を計数し、そして35mmのプレートあたり2〜3×10細胞の密度で、培養皿に播種した(Murphyら、1990)。10%の熱不活性化ウシ胎仔血清、40μMのシステイン、および抗生物質(100μg/mlのストレプトマイシン、100ユニット/mlのペニシリン、0.25μtg/mlのアンホテリシン)を補った最小必須培地(MEM)中にて、細胞を培養した。培養物を、加湿インキュベーター中で、5%COおよび95%空気中において、37℃にて維持した。全ての実験は、プレーティング後24時間に行った。
【0077】
(神経毒性因子による処理)実験の直前に、培養物の培地を、血清および抗生物質を補った新鮮な培地と交換した。上記培地に、グルタミン酸(10mM)を水溶液として加えた(Hanら、1997a;Senら、2000;Tiroshら、2000)。グルタミン酸の添加に応じた、培地のpHの変化は観察されなかった。ニューロン細胞の死の誘導に用いられる他の因子は、直接関係のある図面の説明文に記載した。ビタミンE処理。α−トコトリエノールのストック溶液(作業用濃度の10倍)をエタノール中に調製した。それぞれのコントロールを、等体積(0.1%、v/v)のエタノールで処理した。それぞれの図面の説明文に示したグルタミン酸処理の5分前、または5分後のいずれかにおいて、α−トコトリエノールを培養皿に加えた。
【0078】
(細胞生存度の決定)HT4細胞の生存度を、フローサイトメーターを用いたヨウ化プロピジウム排除アッセイを用いて、過去に本発明者らが記載したように決定した(Senら、2000;Tiroshら、2000)。一次ニューロン培養物は、フローサイトメトリーの間に凝集する傾向があるので、これらの細胞の生存度を、Sigma Chemical Co.(St.Louis、MO、USA)が提供するインビトロ毒性アッセイキット(in vitro toxicology assay kit)を用いて、グルタミン酸処理24時間後の細胞から培地中への乳酸脱水素酵素(LDH)の漏出を測定すること(Hanら、1997a)により、評価した。このプロトコールは、過去の報告(Hanら、1997a)に詳細が記載されている。手短に言えば、細胞の生存度を、以下の式を用いて決定した:生存度=単層中の細胞のLDH活性/総LDH活性(すなわち、単層中の細胞のLDH活性+分離した細胞中のLDH活性+細胞培養培地中のLDH活性)。
【0079】
(12−リポキシゲナーゼ発現)HT4において12−LOXを過剰発現させるために、プラスミドpcDNA 3.1 12−LOX(ResGen,Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)、またはFugene6(Roche Molecular Biochemical、Indianapolis、IN)を製品の指示書の通りに用いるpcDNA3.1を、細胞に一過的にトランスフェクトした。12−LOX発現のレベルを評価するために、トランスフェクション24時間後にHT4細胞を収集し、そしてBCAタンパク質試薬を用いて、タンパク質濃度を決定した。還元条件下にて、NuPAGETM4〜12%Bis−Trisゲル(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)上で、サンプル(20μgタンパク質/レーン)を分離し、PVDF膜に移し、そして12−LOXポリクローナル抗血清(Cayman chemicals、Ann Arbor、Michigan)でプローブした。充填効率を評価するために、膜を剥ぎ取り、そして抗β−アクチン抗体(Sigma St.Louis、MO)で再プローブした。
【0080】
(細胞質調製)細胞(1.7×10)を、140×20mmプレートに播種した。12〜18時間後、細胞(サンプル毎に2×プレート)を氷冷PBSで洗浄し、そして皿から削ることで収集した。サンプルを700gで回転させた(4℃、5分間)。10mM、pH7.8のHEPES、10mMのKCl、1mMのEDTA−Na、2mMのMgCl2、5%のグリセロール、1mMのジチオスレイトール、1mMのフェニルメチルスルホニルフルオライド、5μg/mlのロイペプチン、5μg/mlのアプロチニン、および5μg/mlのアンチパインを含む緩衝液(400μl)を、上記細胞ペレットに加えた。サンプルを再懸濁し、そして15分間氷中に保持した。15分後、10%のNP40を30μlをそれぞれのサンプルに加え、サンプルを30秒間ボルテックスした。続いて、14,000g、4℃にて20分間、遠心分離した。上清細胞質を収集し、そして−80℃にて保持した。タンパク質濃度を、BCAタンパク質試薬を用いて決定した。
【0081】
(総膜調製物)細胞(1.7×10)を、140×20mmプレートに播種した。12〜18時間後、細胞(サンプル毎に5プレート)を総膜調製物として収集した。総膜を、過去に記載された(Bashanら、1992)ように調製した。氷冷PBSで洗浄した後、細胞を削ることで収集した。サンプルを700gで回転させた(4℃、10分間)。20mM、pH7.4のHEPES−Na、250mMのショ糖、2mMのEGTA、1mMのアジ化ナトリウム、100μMのフェニルメチルスルホニルフルオライド、1μMのプロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma St.Louis、MO)を含む緩衝液(10ml)を、上記細胞ペレットに加えた。サンプルをモーター駆動ホモジナイザーを用いて、4℃にてホモジナイズした(15ストローク)。次いでサンプルを760gで回転させた(4℃、3分間)。遠心分離後、上清を収集し、そして190,000gで回転させた(4℃、1時間)。結果として生じる総膜ペレットを、上記の緩衝液に再懸濁し、そしてサンプルを−80℃にて保存した。タンパク質濃度を、BCAタンパク質試薬を用いて決定した。
【0082】
(12−リポキシゲナーゼ活性)トコトリエノールが直接的に12−LOX(12−LOX)の活性に影響を及ぼすかどうかを調査するために、10ユニットの12−LOX(Biomol Research labs Inc、Plymouth Meeting、PA)を、それぞれの図面の説明文に示すように、トコトリエノールと共に、またはトコトリエノール無しで、15分間室温にてインキュベートした。反応混合物は、50mM、pH7.4のTrisHCl、および1mMのEDTAを含んだ。15分後、サンプル毎に25μMの[1−14C]アラキドン酸を加えて、反応を開始した。サンプルを37℃にて30分間保持した。ジエチルエステル、メタノール、および1Mのクエン酸を、体積比で30:4:1で含む、氷冷した停止溶液を200μl加えることで、反応を停止した。混合した後、サンプルを遠心分離し、そしてエーテル抽出物をシリカゲル薄層プレートにスポットした。薄層クロマトグラフィーを、溶媒系(ジエチルエーテル、石油エーテル、および酢酸を体積比で85:15:0.1で含む)を用いて、−20℃にて45〜60分間行った。プレート上の基質および生成物の放射活性の分配を、画像分析機器を用いて定量化した。
【0083】
(グルタチオンアッセイ)グルタチオン(GSH)を、HPLC−電量分析電極アレイ検出器(12チャンネル付きCoularray Detector − model 5600;ESA Inc.、Chelmsford、MA)を用いて検出した。グルタチオンアッセイのための、サンプル調製、移動相、およびカラムは、過去に記載された(Senら、2000)。過去に報告した方法の改良として、本方法は、グルタチオンの検出のために電量分析電極アレイ検出器を導入した(Royら、2002)。このシステムは、異なる酸化還元電位に、複数のチャンネルを用いる。グルタチオンを、以下の電位に設定したチャンネルにおいて検出した:I)600mV、II)700mV;およびIII)800mV。800mVに設定したチャンネルに由来する信号を、定量化に用いた(Senら、2002)。
【0084】
(12−HETE検出)HT4細胞由来の12−ヒドロキシ−エイコサテトラエン酸(HETE)を、HPLC−UVに基づいた方法(Eberhardら、2000)を用いて検出した。
【0085】
(免疫蛍光顕微鏡検査法)免疫蛍光顕微鏡検査法のために、ラット皮質ニューロンの一次培養物を、ポリ−L−リジンで前もってコーティングした35mmプレートにプレートした。24時間後、細胞をα−トコトリエノールまたはBL15で5分間処理し、次いでグルタミン酸で刺激するか、またはグルタミン酸に曝露した。グルタミン酸への曝露の24時間後、細胞をPBSで3回洗浄し、室温にて10分間、4%のパラホルムアルデヒド中に固定し、そして室温にて20分間、PBS−T(0.2%のTriton X−100を含んだPBS)で透過化処理した。次いで、サンプルを3回、PBS−Tでリンスし、そして室温にて1時間ブロッキング(PBS−T中に2%のBSA)を行った。ブロッキングの後、サンプルを、一次抗体{抗−神経フィラメント200(1:100、Sigma St.Louis、MO)、またはニューロンのクラスIIIβ−チューブリン(1:500、Covance Berkeley、CA)}と共に、4℃で一晩インキュベートした。PBSで洗浄した後(3回、それぞれ5分間)、サンプルを、Alexa Fluor 488と結合体化したヤギ抗−マウス二次抗体またはヤギ抗−ウサギ二次抗体(Molecular Probes Eugene、OR)と共に、室温にて45分間インキュベートした。続いてPBSで3回洗浄し、水溶性培地に組み込んだ。Zeiss Axiovert 200M顕微鏡を用いて、蛍光画像を収集した。画像を、Axiovision 3.1を用いて得た。
【0086】
(生細胞の画像化)生細胞の画像化のために、ラット皮質ニューロンの一次培養物を、ポリ−L−リジンで前もってコーティングした35mmプレートにプレートした。生細胞の画像化を、8時間〜26時間(18時間の持続期間)グルタミン酸に曝露した未処理細胞について行った。なぜなら、これが、形態学的な変化が最も顕著である時間だからである。α−トコトリエノールで処理した細胞は、グルタミン酸に非感受性であった。健康な増殖のパターンを示すために、グルタミン酸処理の26時間後〜34時間後(8時間の持続期間)、これらの細胞を画像化した。ごく普通の培養プレート中での細胞増殖の画像化に適した、特殊化された位相差Zeiss光学レンズを用いて、15分毎に1回ずつ、画像を収得した。上記顕微鏡に、上記段階を37℃で、および培養インキュベーターのガス環境に匹敵するガス環境を維持するのに適切な付属物を取り付けた。画像を、Axiovision 4.0を用いて、.aviビデオ形式に書き出した。
【0087】
(12−リポキシゲナーゼモデル)ホモロジーモデルの構築を、300MHz MIPS R5000を内蔵したSilicon Graphics 02、OS IRIXリリース6.5において行った。12−LOXの理論的モデルを、Sybyl GeneFoldモジュール(v6.8、Tripos,Inc.、St.Louis、MO)を用いて構築した。このモジュールは、可能性のあるタンパク質アラインメントを探すために、RSCBタンパク質データベース(http://www.rcsb.org/pdb)に対するBLAST検索を用いる。相同なタンパク質を同定するためのモジュールは、4つのスコア付け関数を用い、この関数としては、配列類似性、局所性相互作用、潜伏類似性(burial similarity)、および二次構造類似性が挙げられる。これらの性質は、組み合わせて「アラインメントスコア」として反映され、スコアが1,000であることは、全てのスコア付け関数について完全なアラインメントを示す。血小板型12−LOXについての標的配列を、NCBIタンパク質データベースから取得した。BLAST検索から、ダイズの1−LOX(PDBコード1YGE)(Bernsteinら、1977)と、97%の配列同一性、および999.9の「アラインメントスコア」が示され、このことは、上記標的配列と類似した折り畳みパターンを反映した。引き続いて、1YGEの構造を、Sybyl中の「骨格方法」オプションを用いたモデル構築のための鋳型タンパク質として用いた。分子力学計算を、定常誘電性関数(ε2.0)および8.OAの非結合カットオフ距離を備えたTripos力場を用いて行った。ガスタイガー−ヒュッケル(Gasteiger−Huckel)電荷を割り当てた後に、エネルギー収束勾配値0.05kcal/molにて、最終構造のエネルギー最小化をした。タンパク質結合構造を、PROCHECK(Laskowski、1993)を用いて調べ、そして鋳型タンパク質構造1YGEと比較した。
【0088】
(α−トコトリエノールの12−リポキシゲナーゼへのドッキング)Autodock(v3.0.5)(Morris、2001)を用いて、リガンドの結合の研究を行った。Autodockは3つのプログラム、Autotors、Autogrid、およびAutodockの寄せ集めである(Goodsellら、1996)。Autotorsは、リガンド座標の入力を促進し、autogridは、分子座標に基づいた相互作用エネルギーの三次元格子を前もって計算し、そしてautodockは、ラマルク説遺伝的アルゴリズムを用いてドッキングシミュレーションを行う。リガンド分子であるα−トコトリエノールを、Sybyl−Sketch Moleculeオプションを用いて構築し、エネルギーを最小化し、そしてMOPAC電荷を割り当てた。次いで、AutoDockの標準の設定およびパラメーターを用いて、ドッキングを行った。理論的なモデルおよびドッキングについての図を、MOLMOL(v2K.2)(MOLecule analysis and MOLecule display)ソフトウェアを用いて生成した。
【0089】
(データ提示)棒グラフで示されるデータは、±標準偏差という結果を生じる。平均値間の相違の有意性を検定するために、スチューデントのt−検定を用いた。0.05未満のpは、平均値間の有意な相違として解釈される。
【0090】
(実施例6:トコトリエノールは、12−LOX経路の活性化により誘導される心臓の細胞死を保護する)
遍在的に発現する細胞質性ホスホリパーゼA(2)(PLA(2))によるアラキドン酸の生成は、細胞の恒常性、炎症、および腫瘍形成の制御に基本的な役割を有する。12−リポキシゲナーゼ(12−LO)は、アラキドン酸(C20:4)から12−ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸への変換を触媒し、これは、グルタチオンペルオキシダーゼによって次々に12−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12−HETE)に還元される。本発明者らは、トコトリエノールが12−LOX経路の活性化を強力に阻害することを示した。12−LOXの活性化は、心臓の種々の病理に関係する。この研究は、トコトリエノールが、12−LOX経路の活性化に対して心臓細胞を保護し得ることを導き、そして示した。
【0091】
成体(5〜6週齢)のマウスの心室から単離した、一次心臓線維芽細胞(CF)を用いて、アッセイを行った。細胞を、5%O条件下で培養した。単離から5日後、250nMのトコトリエノールの存在下、または非存在下にて、24時間、アラキドン酸(50μM)+ブチオニンスルホキシミンで細胞を処理した。Zeiss生細胞画像化顕微鏡を用いて、位相差画像化を行った。
【0092】
図8に参照されるように、単離された心臓線維芽細胞を、単離の5日後に、250nMのトコトリエノールの存在下、または非存在下にて、24時間、アラキドン酸(AA)(50μM)+ブチオニンスルホキシミン(BS)で処理した。Zeiss生細胞画像化顕微鏡を用いて、位相差画像化を行った。24時間後、AA(12−LOの基質)およびBSO(細胞性グルタチオン合成を阻害するとして公知)で処理した心臓細胞において、大規模な細胞死が観察された。細胞性グルタチオンの低下は、12−LOX経路の活性化のきっかけとして示唆された。トコトリエノールは、AA+BSOによって誘導される細胞死を完全に阻止した(図8)。
【0093】
(実施例7:胎児のラットの脳および成体の脳中のトコトリエノール濃度の亢進)
本明細書中に開示される結果は、発達中の胎児の脳中のビタミンE感受性遺伝子の、最初の全体的な評価を提供する。調査した8000遺伝子の中で、17遺伝子のみがビタミンEを母親に与えた結果として、胎児の脳中での遺伝子発現のレベルの上昇を示し、一方で、34種が発現の低下を示した。このことは、極めて特定の遺伝子のセットが、発達中の胎児の脳中のビタミンEレベルに感受性であることを示す。
【0094】
成体における主要なビタミンE欠乏の症状に基づいて、ビタミンEが、神経の構造および機能を維持する上で中心的な役割を有することが示されてきた。しかし、脳へのビタミンEの作用の分子的機序を系統的に評価する試みは成されていない。本発明者らのデータは、胎児の脳中のα−トコフェロールレベルが、母親の脳中で観察されるより幾重にも(multi−fold)低いことを示す。このデータは、胎児の脳中のα−トコフェロールレベルが、21日齢のラットの脳のα−トコフェロールレベルに比べて、より低かったという過去の研究と合致する。さらに、ヒトにおいて、月満ちて産まれた新生児の血清α−トコフェロールレベルが、その母親の血清α−トコフェロールレベルに比べて、数倍低い(0.212±0.127mg/dl対1.160±0.513mg/dl)ことが公知である。本発明者らは以前に、α−トコフェロールに比べてトコトリエノールの方が、グルタミン酸誘導性変性に対するニューロン細胞の保護において著しく強力であることを示した。しかし、脳中の食餌性のトコトリエノールの有効性を示すインビボのデータは欠けていた。本研究は、妊娠中のTRFの食餌的補充が、母親の脳および胎児の脳の双方の中におけるα−トコトリエノールの有意な向上につながることの、最初の証拠を提供する。食餌性のビタミンEは腸内で吸収され、そしてリポタンパク質によって肝臓へ送達される。肝臓内で、α−トコフェロール画分はα−トコフェロール輸送タンパク質によって、超低密度リポタンパク質(VLDL)に取り込まれ、次いで血流中に分泌される。最近の研究は、細胞選択性コレステリルエステルのリポタンパク質からの取り込みを媒介する、スカベンジャーレセプタークラスBI型(SR−BI)が、高密度リポタンパク質(HDL)から培養細胞へのα−トコフェロールの効果的な輸送を促進することを示す。さらに、SR−BI欠損変異マウスにおいて、コントロールの野生型動物に比較して、血漿中のα−トコフェロールレベルの顕著な上昇が見られ、このことは主に、変異マウスの異常に大きな血漿HDL様粒子の、α−トコフェロール含量が上昇したことにほぼ起因した。器官および組織におけるトコトリエノールの取り込みおよび輸送の機構は、成人においてほとんど分かっておらず、胎児の組織においてはより一層分かっていない。
【0095】
HO−3は、胎児の脳中で上方制御される、わずかなビタミンE感受性遺伝子の一つであった。HOのアイソザイムである、HO−1、HO−2、HO−3は、NO合成酵素の酸化を含む、ヘム分子の異性体特異的酸化を触媒する公知の機能を有する、熱ショックタンパク質32タンパク質の同族である。HO−1は高度に誘導性であるが、HO−2およびHO−3は構成的に発現する。これらのタンパク質は、細胞性防御機構において中心的な役割を果たす。HO活性は、等モル量のCO、ビリベルジン、および遊離の鉄の生成が原因である。HOに関する最近の知見からは、これらのタンパク質が、NOにとって細胞内の「吸い込み系」として役立ち得ることが示唆される。LINE1は、別のビタミンE感受性転写物として同定された。LINE−1、または分散型反復のL1ファミリーは、哺乳動物ゲノムの少なくとも10%を占める。他の生物体のゲノム中の、他の分散性の反復DNAファミリーと同様にL1は、一連の重複的遺伝子転移現象によって、ゲノムに渡って分散され、そして増幅される。ゲノム中のL1配列のコピー数が大きいので、ほとんどの細胞のRNA集団において、L1は豊富に示される。しかし、L1を含むほとんどの転写物は偶然の転写の結果であり、L1のレトロ転移の中間体ではない。L1を含む転写物(その多くは切断され、そして再編成される)の、この高いバックグラウンドは、活性のL1エレメントにコードされた転写物の識別を困難にする。ApoB mRNAは、E胎児群に比較してE群においてより低かった一番上の候補の1つであった。ApoBは、リポタンパク質の代謝の中で中心的な役割を果たし、そして血漿中で2種類のアイソフォーム、apoB−100およびapoB−48、として存在する。高レベルのapoBおよびLDLコレステロールは、冠状動脈心臓疾患の危険の増加に関連してきた。初期の研究から、TRFの投与(100mg/日)が、血清のapoBを減少させることが示された。トコフェロールは、細胞中のタンパク質キナーゼC(PKC)活性を阻害することが示された。PKC制御塩素イオンチャンネルは、E群において抑制された遺伝子の1つであった。
【0096】
母親ラットおよび胎児ラットの脳中のトコフェロールのレベルを決定した。図9に参照されるように、妊娠中のラット(3日目)にランダムに、(i)E群−α−トコフェロールが豊富である標準ラット飼料を与えた。加えてこの群に2週間の間、ビタミンEを除去したトウモロコシ油に懸濁したTRFを、毎日胃管栄養法によって補充した;および(ii)E群−ビタミンEの欠乏した食餌を与え、そしてビタミンEを除去したトウモロコシ油を同体積補充した。妊娠17日目に、脳を収集し、そしてHPLCを用いてビタミンE解析を行った。0.05未満の*Pは、E群と比較して顕著に異なることを意味する。0.05未満の#Pは、母親の脳と比較して顕著に異なることを意味する。n.d.は、検出されないことを意味する。胎児の脳中のα−トコフェロールレベルは、母親の脳中で観察されたα−トコフェロールレベルよりも複数倍低かった(図9A)。E群と比較して、妊娠中わずか2週間ビタミンEの欠乏した食餌を与えることは、成体の母親の脳中のα−トコフェロールレベルを顕著に低下させなかった。しかし、同様の条件下において、E群の母親由来の胎児は、E群由来の胎児に比べて、顕著に低い脳中のα−トコフェロールレベルを有していた(図9A)。
【0097】
群の母親および胎児の脳中において、α−トコトリエノールは検出限界を下回った。妊娠中、母親に2週間TRFを経口補充したことは、母親および胎児の脳へのα−トコトリエノールの送達をもたらした。重要なことに、胎児の脳中のトコトリエノールの取り込みは、母親の脳中のトコトリエノールの取り込みに比べて、顕著に高かった(図9B)。興味深いことに、妊娠食中における短期間のビタミンE欠乏は、子供の生命的パラメーター(例えば、体重または一般的な健康)に影響を与えなかった(出願人の公開しない知見)。
【0098】
(実施例8:トランスクリプトームプロファイリング)E群およびE群由来の、発達中の胎児の脳のトランスクリプトームを、U34Aラットゲノム高密度オリゴヌクレオチドGeneChipアレイを用いて比較した。このアレイは、約7000の全長配列、および約1000のEST集団を解析する。双方の群から入手可能な全ての複製に由来する生のデータを用いて、全てで6つのペアワイズ比較(pair−wise comparison)を生成した。異なる形で発現した全ての遺伝子の平均(6つのペアワイズ比較)倍数変化を計算した。データは、遺伝子の大部分は変化しないままであったことを示した(図10)。ビタミンE群に比較してビタミンE群において、全部で645遺伝子(7.3%)が上方制御された。その内416遺伝子が、2倍以上の規模に増加した。反対に152遺伝子(1.7%)が下方制御され、その内74遺伝子が2倍以上低くなった(図10)。本明細書中に記載したt−検定解析を用いると、ビタミンEを補充された群に比べて、ビタミンEを欠乏した群において、全部で144遺伝子が顕著に変化した(P<0.05)ことが観察された。ビタミンE感受性遺伝子の明らかな図示に対する中心の中央値に従って、データを調整した(図11A、B)。次に、ペアワイズ比較において一致が50%を超えた遺伝子を、特にその遺伝子が重複したプローブセットで検出された場合に、選択した。データ解析のこのアプローチを用いて、E群に比較してE群において、全部で19プローブセットが上方制御されていることが分かり、そして34プローブセットが抑制されていることが分かった(図12および図13)。図12に参照されるのは、その母親が妊娠中の2週間にビタミンEの食餌およびビタミンEの食餌を与えられた、個体の胎児から得られた脳についての6つペアワイズ比較。ペアワイズ比較において一致が50%を超える遺伝子を、特にその遺伝子が重複したプローブセットで検出された場合に、選択した。説明が得られなかったESTは除いた。図13に参照されるのは、その母親が妊娠中の2週間にビタミンEの食餌およびビタミンEの食餌を与えられた、個体の胎児から得られた脳についての6つのペアワイズ比較。ペアワイズ比較において一致が50%を超える遺伝子を、特にその遺伝子が重複したプローブセットで検出された場合に、選択した。説明が得られなかったESTは除いた。
【0099】
(実施例9:RT−PCRを用いたGeneChipデータの確認)GeneChipアプローチによって同定された、選択されたビタミンE感受性遺伝子を、従来の半定量的RT−PCRを用いて検証した(図14)。図14に参照されるように、発現レベルをRT−PCRを用いて独立して決定した。GeneChipマイクロアレイ解析を用いて、E群に比べてE群において異なる形で発現するとして同定された以下の遺伝子を、RT−PCRを用いて検証した:HO−3、サイクリンD1、HMG2、NOPP140、およびGAPDH。PCR産物のバンド強度を定量化し、そしてそれぞれの遺伝子についての、E群に比べたE群における倍数変化を計算した(塗りつぶした棒)。比較のために、GeneChipマイクロアレイ解析(1つ以上のプローブセット)を用いた特定の遺伝子の発現において観察された倍数変化もまたプロットした(中空の棒、および影付きの棒)。上方制御された遺伝子の内、HO−3を標的とする2つのプローブセットが、それぞれ3.9倍、および3.1倍に増加した(図14)。反対に、マスピン(maspin)遺伝子、GAPDH遺伝子、アポリポタンパク質B(apoB)遺伝子、およびGタンパク質β1サブユニット(rGb1)遺伝子の発現は、食餌性のビタミンEに応じて高度に(3倍〜5倍)抑制された。PCR産物のバンド強度を定量化し、そしてそれぞれの遺伝子についての、E群に比べたE群における倍数変化を計算した。E群対E群で上方制御された遺伝子について、GeneChipアプローチまたはRT−PCRアプローチの双方を用いて、倍数変化が検出されたことを示すデータを比較した(図14)。GAPDHについて、マイクロアレイデータおよびRT−PCRデータの双方が、E群に比べてE群において発現の減少を示した。しかし、GAPDH発現の倍数変化は、RT−PCRデータに比べて、マイクロアレイデータにおいてより高かった(図14)。
【0100】
(実施例7〜9についての材料と方法)
妊娠した(3日)ラット(10週齢;Sprague−Dawley、Harlan、Indianapolis、IN、USA)をランダムに以下の2つの群に分けた:(i)E群−α−トコフェロールが豊富な(約200nmol/g食餌)、標準ラット飼料を与えた。加えて、この群は2週間の間、ビタミンEを除去したトウモロコシ油(Harlan)に懸濁したトコトリエノールの豊富な画分(TRF)を、毎日の胃管栄養法によって補充した。妊娠したラットに、体重1kgあたり、1gのTRFを含む110mgのα−トコフェロールおよび119mgのα−トコトリエノールの混合物を与えた。TRFは、Carotech Sdn Bhd(Perak、Malaysia)から提供されるTocomin(登録商標)50%の形で提供した。;(ii)E群−ビタミンEの欠乏した食餌(TD88163、Harlan;α−トコフェロール/トコトリエノールのレベルは検出限界以下)を与え、そして同じ体積の、ビタミンEを除去したトウモロコシ油を補充した。全てのラットを、22±2℃で、12時間:12時間の暗所:明所サイクルでの標準条件下で維持した。全ての動物のプロトコールは、Ohio State University、Columbus、OH、USAのInstitutional Laboratory Animal Care and Use Committee(ILACUC)によって承認された。サンプル収集。妊娠17日目に、それぞれのラットの体重を記録した。ラットを殺した。母親の脳および胎児の脳を取り除き、pH7.4の氷冷したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)でリンスし、そして液体窒素中で急冷した。サンプルは−80℃で短時間保存した。
【0101】
(ビタミンE抽出および解析)母親の脳および胎児の脳からのビタミンEの抽出および解析を、HPLC電量分析電極アレイ検出器(12チャンネル付きCoularray Detector − model 5600;ESA Inc.、Chelmsford、MA、USA)を用いて、過去に記載されたように行った[13]。このシステムは、異なる酸化還元電位に複数のチャンネルを用いる。α−トコフェロールおよびα−トコトリエノール、γ−トコフェロールおよびγ−トコトリエノール、ならびにδ−トコフェロールおよびδ−トコトリエノールを、それぞれ200mV、300mV、および400mVに設定したチャンネルで検出した。
【0102】
(Affymetrix GeneChipプローブアレイ解析)液体N中で胎児の脳を粉砕することで全RNAを抽出し、つづいて、Trizol(Gibco BRL)を用いて抽出した[14および15]。RNAのさらなる洗浄を、RNeasyキット(Qiagen)を用いて行った。過去に記載されたプロトコールに従って、マイクロアレイハイブリダイゼーションのために、標的を調製した[14]。サンプルの品質を評価するために、サンプルをGeneChip Test−2アレイに、45℃にて16時間ハイブリダイズした。申し分のないサンプルを、Rat Genomeアレイ(U34A)とハイブリダイズした。このアレイを洗浄し、ストレプトアビジン−フィコエリトリンで染色し、次いで本発明者らの施設のGeneArrayスキャナー(Agilent Technologies)を用いて走査した。
【0103】
生のデータを収集し、そしてAffymetrix Microarray Suite 4.0(MAS)ソフトウェアおよびData Mining Tool 2.0(DMT)ソフトウェアを用いて解析した。以下の2つのアプローチを、異なる形で発現した遺伝子を同定するために使用した:(i)MASにおける比較解析を用いて、E群およびE群の双方の複製から、6つのペアワイズ比較を生成した。上方制御された遺伝子、または下方制御された遺伝子の双方について、平均倍数変化を計算した。ペアワイズ比較において一致が50%を超える遺伝子を、特にその遺伝子が重複するプローブセットで検出された場合に、選択した;(ii)DMTを用いてT−検定を行い、そしてE群と比較してE群において顕著に(P<0.05)変化した(増加または減少)遺伝子を選択した。選択した遺伝子の平均差分値を、Cluster and TreeViewソフトウェアにロードした[16]。ビタミンE感受性遺伝子の明らかな図示に対する中心の中央値に従って、データを調整した。
【0104】
(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR))ヘムオキシゲナーゼ3(HO−3)、サイクリンD1、高移動度群タンパク質2(HMG2)、核リンタンパク質p130(NOPP140)、およびグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)のmRNAの発現レベルを、過去に記載したように、RT−PCRを用いて独立に決定した[17]。手短に言うと、全RNA(1μg)を、オリゴ−dTプライマーおよびSuperscript IIを用いて、cDNAに転写した。RT−生成cDNAを、表1に記載した遺伝子特異的プライマーを用いたPCRによって増幅した。PCR反応産物を、0.25μg/mlのエチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲル中で、電気泳動した。このゲルを、紫外線徹照の条件下で、デジタル形式で画像化した。バンド強度の定量化を、NIH Imageソフトウェアに基づくScion Image(Scion Corporation)を用いて行った。
表1.RT−PCRについて用いたプライマー
【0105】
【表2】

(実施例10:トコトリエノール処方物#2)
食餌あたりの量% 1日あたりの値
ビタミンE……………………………………98.8iu 329%
混合トコフェロール
代表的な分配:
γ−トコフェロール………………………210.0mg
δ−トコフェロール…………………………78.4mg
α−トコフェロール…………………………66.3mg
β−トコフェロール……………………………3.5mg
Tocomin(登録商標)全範囲天然トコトリエノール複合体
代表的な分配:
γ−トコトリエノール………………………35.5mg
α−トコトリエノール………………………18.5mg
δ−トコトリエノール…………………………9.3mg。
【0106】
全ての特許、特許出願(および、その結果発行された任意の特許、および、対応する、公開された外国特許出願)、GenBankおよび他の受入番号ならびに関連するデータ、そして本記載を通して言及された刊行物の開示は、これによって本明細書中に参考として援用される。しかし、本明細書中に参考として援用された任意の文書が、本発明を教え、または開示することは、明白に認められない。
【0107】
本明細書を通して与えられるあらゆる最大数的限界は、あらゆるより低い数的限界を含むことが理解されるべきであり、それは、このようなより低い数的限界が明白に本明細書中に記載されているかのようである。本明細書を通して与えられるあらゆる最低数的限界は、あらゆるより高い数的限界を含み、それは、このようなより高い数的限界が明白に本明細書中に記載されているかのようである。本明細書を通して与えられるあらゆる数的範囲は、このようなより広い数的範囲内に収まる、あらゆるより狭い数的範囲を含み、それは、このようなより狭い数的範囲が全て、明白に本明細書中に記載されているかのようである。
【0108】
対象の本発明の特定の実施形態が記載される一方で、対象の本発明の種々の変化および改変が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることが、当業者にとって明白である。加えて、本発明が、そのある特定の実施形態と結びついて記載された一方で、これは例示の手段であり、および限定の手段ではなく、そして本発明は、先行技術が許容する限り広く解釈されるべき、添付の請求項によって定義されることが理解されるべきである。
【0109】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考慮、および本明細書中に開示された本発明の実行から、当業者に明白である。本発明の範囲および精神が添付の特許請求の範囲によって示されると共に、本明細書および実施例は例示的にのみ見なされることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
本明細書に取り込まれ、その一部を構成する、添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を例証し、そして記述と共に本発明の原理の説明に役立つ。
【図1】図1は、α−トコトリエノールによるニューロンの生存度の減少に対する保護を示す。
【図2−1】図2は、ラットの一次皮質ニューロンのグルタミン酸誘導性変性、およびα−トコトリエノールおよびBL15による保護の画像化を示す。
【図2−2】図2は、ラットの一次皮質ニューロンのグルタミン酸誘導性変性、およびα−トコトリエノールおよびBL15による保護の画像化を示す。
【図2−3】図2は、ラットの一次皮質ニューロンのグルタミン酸誘導性変性、およびα−トコトリエノールおよびBL15による保護の画像化を示す。
【図2−4】図2は、ラットの一次皮質ニューロンのグルタミン酸誘導性変性、およびα−トコトリエノールおよびBL15による保護の画像化を示す。
【図3】図3は、HT4および一次未成熟皮質ニューロン(B〜D)のグルタミン酸誘導性死に対する保護を与える12−リポキシゲナーゼの薬理学的阻害を示す。
【図4】図4は、12−リポキシゲナーゼノックアウトマウスから単離された一次未成熟皮質ニューロンが、グルタミン酸誘導性死に抵抗性であることを示す。
【図5】図5は、グルタミン酸処理したニューロン中の12−リポキシゲナーゼ活性の生成物を示す。
【図6】図6は、12−リポキシゲナーゼの効果:過剰発現、局在、およびα−トコトリエノールへの感度、を示す。
【図7】図7は、12−リポキシゲナーゼおよびα−トコトリエノールのドッキング解析の三次元モデル化を示す。
【図8】図8は、トコトリエノールの、12−LOXの活性からの心臓細胞の保護を示す。
【図9】胎児のラットの脳および母親のラットの脳中のビタミンEレベル。
【図10】E群およびE群において異なる形で発現された遺伝子の平均倍数変化の範囲。
【図11−1】E群の胎児の脳中で異なる形で発現された遺伝子を図示した集団イメージ。
【図11−2】E群の胎児の脳中で区別をつけて発現された遺伝子を図示した集団イメージ。
【図12】E群の胎児の脳中で上方制御された遺伝子。
【図13】E群の胎児の脳中で下方制御された遺伝子。
【図14】GeneChipマイクロアレイ発現解析のRT−PCR確認。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体中の12−リポキシゲナーゼ媒介性細胞毒性を阻害するための方法であって、以下;
生物学的有効量のトコトリエノールを該被験体に投与する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記被験体が、ニューロン損傷、心臓組織損傷、外皮損傷、筋肉組織損傷、またはそれらの組み合わせが進展する危険性がある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記トコトリエノールが、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、それらの誘導体、および1つ以上のそれらの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項4】
毎日投与される前記トコトリエノール組成物の量が約600mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が実質的にトコフェロールを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
傷害を被る被験体を処置するための方法であって、以下;
該被験体に、生物学的有効量のトコトリエノールを投与する工程
を包含する、方法。
【請求項7】
前記傷害が脳卒中である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記傷害が心臓の傷害である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
癌の予防または処置のための治療養生法であって、癌の予防または処置を必要とする被験体に、トコトリエノールおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬理学的有効量の薬学的処方物を投与する工程を包含する、治療養生法。
【請求項10】
前記被験体が黒色腫が進展する危険性がある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
胎児のニューロンを保護するための方法であって、該胎児を妊娠している妊娠中の女性に、少なくとも1種のトコトリエノールを含む組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項12】
ヒト被験体の脳中のトコトリエノール濃度を高めるための方法であって、該被験体に、少なくとも1種のトコトリエノールを含む組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項13】
前記組成物が実質的にトコフェロールを含まず、そしてトコフェロールを含む食品または補助食品なしで投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、前記ヒトがトコフェロールを含む食品または補助食品を摂取する少なくとも1時間半後、および少なくとも1時間半前に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物がTocomin(登録商標)を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項12に記載の方法であって、前記ヒト被験体が乳児であり、そして前記組成物が、少なくとも1種のトコトリエノールを含む組成物を投与された女性から得られる乳または乳抽出物である、方法。
【請求項17】
請求項12に記載の方法であって、前記トコトリエノールが、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、それらの誘導体、および1つ以上のそれらの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項18】
毎日投与される前記トコトリエノール組成物の量が、約600mgである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
受胎能を必要とする動物において受胎能を改善するための方法であって、該動物に、少なくとも1種のトコトリエノールの有効量を、毎日少なくとも2ヶ月間投与する工程を包含する、方法。
【請求項20】
毎日投与される前記トコトリエノール組成物の量が、約600mgである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記被験体における、前記トコフェロール輸送タンパク質をコードする遺伝子の発現が妨げられる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
培養物中のニューロンを維持するための方法であって、該ニューロンを、少なくとも1種のトコトリエノールを含む培地に接触させる工程を包含する、方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−501846(P2007−501846A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523272(P2006−523272)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/025725
【国際公開番号】WO2005/013911
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504325287)ザ オハイオ ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (24)
【Fターム(参考)】