説明

トナーの製造方法、トナー製造装置およびトナー

【課題】帯電特性に優れ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供すること、また、このようなトナーを環境に優しい方法で効率良く製造することが可能なトナーの製造方法、トナー製造装置を提供すること。
【解決手段】本発明のトナーの製造方法は、樹脂材料を含む分散質が分散媒中に分散し、かつ、分散質の分散性を向上させる機能を有する分散剤を含む分散液を用いてトナーを製造する方法であって、樹脂材料は主としてアクリル系樹脂で構成されたものであり、分散剤として、ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、および、ニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの部分構造を備えた分子構造を有するものを用い、分散液を液滴状の吐出物として吐出した後に、吐出物に紫外線を照射することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの製造方法、トナー製造装置およびトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真法としては、多数の方法が知られているが、一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成する工程(露光工程)と、該潜像をトナー(樹脂微粒子)を用いて現像する現像工程と、紙等の転写材にトナー画像を転写する転写工程と、定着ローラを用いた加熱、加圧等により、前記トナー画像を定着する工程とを有している。
このような電子写真法で用いられるトナーの製造方法としては、粉砕法、重合法が用いられている。
【0003】
粉砕法は、主成分である樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう。)と、着色剤とを含む原料を、樹脂の軟化点以上の温度で混練して混練物を得、その後、前記混練物を冷却、粉砕する方法である。このような粉砕法は、原料の選択の幅が広く、比較的容易にトナーを製造することができる点で優れている。しかしながら、粉砕法で得られるトナーは、各粒子間での形状のばらつきが大きく、その粒径分布も広くなりやすいという欠点を有している。その結果、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のばらつきが大きくなり、トナー全体としての信頼性が低下する。
【0004】
重合法は、樹脂の構成成分である単量体を用いて、液相中等で、重合反応を行い、目的とする樹脂を生成することにより、トナー粒子を製造するものである。このような重合法においては、通常、分散質(トナー粒子となるべき分散質)の分散性を向上させる、単分散させる、分子量分布をコントロールする等の目的で、分散剤が含まれる液相中で重合反応を行う。このような重合法は、得られるトナー粒子の形状を、比較的真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることができるという点で優れている。しかしながら、従来の重合法では、最終的に得られるトナーにおいて、帯電特性に優れたトナーを得るのが困難であった。すなわち、従来の重合法では、最終的に得られるトナーにおいて、トナー粒子の帯電量の絶対値を十分に大きなものとするのが困難であったり、各トナー粒子間での帯電特性(帯電量)のばらつきが大きくなり易いという問題点があった。
【0005】
また、近年、いわゆる、インクジェット法を用いて、トナー製造用の原料を含む分散液を吐出して、トナー粒子を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法においては、通常、吐出液滴中における分散質の含有率を均一にしたり、または、分散液を吐出可能とする目的で、分散液として分散剤が添加されたものを用いる。言い換えると、分散剤が含まれていない分散液を用いると、均一な形状、大きさのトナーを得ることができず、さらには、分散液の吐出そのものが不可能になる。このような方法を採用した場合、各粒子間での形状、大きさのばらつきを比較的小さくできるものの、前述した重合法と同様に、帯電特性に優れたトナーを得るのが困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−70303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、帯電特性に優れ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供すること、また、このようなトナーを効率良く製造することが可能なトナーの製造方法、トナー製造装置を提供することにある。特に、環境に優しい方法で、トナーの構成材料(トナー中に含まれるべき成分)の特性(例えば、帯電特性、定着性等)が十分に発揮され、かつ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のトナーの製造方法は、樹脂材料を含む分散質が分散媒中に分散し、かつ、前記分散質の分散性を向上させる機能を有する分散剤を含む分散液を用いてトナーを製造する方法であって、
前記樹脂材料は、主としてアクリル系樹脂で構成されたものであり、
前記分散剤として、ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、および、ニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの部分構造を備えた分子構造を有するものを用い、
前記分散液から前記分散媒を除去する分散媒除去工程中および/または前記分散媒除去工程の後に紫外線を照射することを特徴とする。
【0009】
これにより、帯電特性に優れ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナー粒子を、効率良く(生産性良く)製造することが可能なトナーの製造方法を提供することができる。特に、環境に優しい方法で、トナーの構成材料(トナー中に含まれるべき成分)の特性(例えば、帯電特性、定着性等)が十分に発揮され、かつ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【0010】
本発明のトナーの製造方法は、樹脂材料を含む分散質が分散媒中に分散し、かつ、前記分散質の分散性を向上させる機能を有する分散剤を含む分散液を用いてトナーを製造する方法であって、
前記樹脂材料は、主としてアクリル系樹脂で構成されたものであり、
前記分散剤として、ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、および、ニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの部分構造を備えた分子構造を有するものを用い、
前記分散液を液滴状の吐出物として吐出した後に、前記吐出物に紫外線を照射することを特徴とする。
【0011】
これにより、帯電特性に優れ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナー粒子を、効率良く(生産性良く)製造することが可能なトナーの製造方法を提供することができる。特に、環境に優しい方法で、トナーの構成材料(トナー中に含まれるべき成分)の特性(例えば、帯電特性、定着性等)が十分に発揮され、かつ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【0012】
本発明のトナーの製造方法では、前記吐出物は複数個の前記分散質を含むものであることが好ましい。
これにより、各粒子間(トナー粒子間)での形状、大きさ等のばらつきが特に小さいトナーを得ることができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記分散液から前記分散媒を除去する分散媒除去工程の後、前記吐出物を構成する複数個の前記分散質を接合する工程において、前記紫外線を照射することが好ましい。
これにより、紫外線の照射時間が比較的短い場合や、紫外線の照射強度が比較的弱い場合であっても、効率良く分散剤を分解することができる。
【0013】
本発明のトナーの製造方法では、前記紫外線の照射時間は、0.01〜60分間であることが好ましい。
これにより、トナーの構成成分(特に、結着樹脂としての樹脂材料)の劣化をより確実に防止しつつ、分散剤をより効率良く分解することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記紫外線のピーク波長は、200〜400nmであることが好ましい。
これにより、トナーの構成成分(特に、結着樹脂としての樹脂材料)の劣化をより確実に防止しつつ、分散剤をより効率良く分解することができる。
本発明のトナーの製造方法では、圧電パルスにより、前記分散液を間欠的に吐出することが好ましい。
これにより、各粒子間(トナー粒子間)での形状、大きさ等のばらつきが特に小さいトナーを、より効率良く得ることができる。
【0014】
本発明のトナーの製造方法は、樹脂材料を含む分散質が分散媒中に分散し、かつ、前記分散質の分散性を向上させる機能を有する分散剤を含む分散液を用いてトナーを製造する方法であって、
前記樹脂材料は、主としてアクリル系樹脂で構成されたものであり、
前記分散剤として、ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、および、ニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの部分構造を備えた分子構造を有するものを用い、
前記分散液に紫外線を照射する工程を有することを特徴とする。
【0015】
これにより、帯電特性に優れ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナー粒子を、効率良く(生産性良く)製造することが可能なトナーの製造方法を提供することができる。特に、環境に優しい方法で、トナーの構成材料(トナー中に含まれるべき成分)の特性(例えば、帯電特性、定着性等)が十分に発揮され、かつ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【0016】
本発明のトナーの製造方法では、前記分散液は、前記分散剤としてアニオン系分散剤および/またはノニオン系分散剤を含むものであることが好ましい。
これにより、紫外線の照射条件が比較的温和なものであっても、最終的に得られるトナーの帯電特性をより確実に優れたものとすることができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記分散剤中における前記分散剤の含有率は、0.001〜10wt%であることが好ましい。
これにより、各粒子間(トナー粒子間)での形状、大きさ等のばらつきを特に小さいものとしつつ、トナーの帯電特性を特に優れたものとすることができる。また、トナーの生産性を特に高いものとすることができる。
【0017】
本発明のトナーの製造方法では、前記分散媒は、主として水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであることが好ましい。
これにより、より環境に優しい方法でトナーを製造することができる。また、例えば、分散媒中における分散質の分散性を高めることができ、分散液中における分散質を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきが特に小さいものとすることができる。その結果、各粒子間(トナー粒子間)での形状のばらつきや、大きさのばらつきが特に小さいトナーを、効率良く製造することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記分散液は、帯電制御剤を含むものであることが好ましい。
これにより、トナーの帯電特性を特に優れたものとすることができる。
【0018】
本発明のトナー製造装置は、本発明の製造方法に用いられることを特徴とする。
これにより、帯電特性に優れ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナー粒子を、効率良く(生産性良く)製造することが可能なトナー製造装置を提供することができる。特に、環境に優しい方法で、トナーの構成材料(トナー中に含まれるべき成分)の特性(例えば、帯電特性、定着性等)が十分に発揮され、かつ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを製造することが可能な製造装置を提供することができる。
【0019】
本発明のトナー製造装置では、前記分散液を吐出する吐出部と、
前記吐出部から吐出された前記分散液から前記分散媒が除去された、複数個の前記分散質で構成される粒状の前記分散媒除去物に対して、紫外線を照射する紫外線照射手段とを備えていることが好ましい。
これにより、紫外線の照射時間が比較的短い場合や、紫外線の照射強度が比較的弱い場合であっても、効率良く分散剤を分解することができる。
【0020】
本発明のトナー製造装置では、前記分散媒除去物を構成する複数個の前記分散質を接合する領域を備えていることが好ましい。
これにより、トナー(トナー粒子)の機械的強度を特に優れたものとすることができる。また、接合をする領域において紫外線を照射することにより、紫外線と分散剤との反応性をさらに高めることができ、紫外線の照射時間をより短くしたり、紫外線の照射強度をより弱いものとしても、効率良く分散剤を分解することができる。
【0021】
本発明のトナーは、本発明の方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、帯電特性に優れ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供することができる。
本発明のトナーは、本発明の装置を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、帯電特性に優れ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
《本発明の概要》
電子写真法としては、多数の方法が知られているが、一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成する工程(露光工程)と、該潜像をトナー(樹脂微粒子)を用いて現像する現像工程と、紙等の転写材にトナー画像を転写する転写工程と、定着ローラを用いた加熱、加圧等により、前記トナー画像を定着する工程とを有している。
このような電子写真法で用いられるトナーの製造方法としては、粉砕法、重合法が用いられている。
【0023】
粉砕法は、主成分である樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう。)と、着色剤とを含む原料を、樹脂の軟化点以上の温度で混練して混練物を得、その後、前記混練物を冷却、粉砕する方法である。このような粉砕法は、原料の選択の幅が広く、比較的容易にトナーを製造することができる点で優れている。しかしながら、粉砕法で得られるトナーは、各粒子間での形状のばらつきが大きく、その粒径分布も広くなりやすいという欠点を有している。その結果、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のばらつきが大きくなり、トナー全体としての信頼性が低下する。
【0024】
重合法は、樹脂の構成成分である単量体を用いて、液相中等で、重合反応を行い、目的とする樹脂を生成することにより、トナー粒子を製造するものである。このような重合法においては、通常、分散質(トナー粒子となるべき分散質)の分散性を向上させる等の目的で、分散剤が含まれる液相中で重合反応を行う。このような重合法は、得られるトナー粒子の形状を、比較的真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることができるという点で優れている。しかしながら、従来の重合法では、最終的に得られるトナーにおいて、帯電特性に優れたトナーを得るのが困難であった。すなわち、従来の重合法では、最終的に得られるトナーにおいて、トナー粒子の帯電量の絶対値を十分に大きなものとするのが困難であったり、各トナー粒子間での帯電特性(帯電量)のばらつきが大きくなり易いという問題点があった。
【0025】
また、近年、いわゆる、インクジェット法を用いて、トナー製造用の原料を含む分散液を吐出して、トナー粒子を製造する方法が提案されている。このような方法においては、通常、吐出液滴中における分散質の含有率を均一にしたり、または、分散液を吐出可能とする目的で、分散液として分散剤が添加されたものを用いる。言い換えると、分散剤が含まれていない分散液を用いると、均一な形状、大きさのトナーを得ることができず、さらには、分散液の吐出そのものが不可能になる。このような方法(インクジェット法)を採用した場合、各粒子間での形状、大きさのばらつきを比較的小さくできるものの、前述した重合法と同様に、帯電特性に優れたトナーを得るのが困難であった。
【0026】
上記のように、分散液を用いた方法を採用した場合、各粒子間(トナー粒子間)での形状のばらつきを小さくすることはできるものの、帯電特性に優れたトナーを得るのが困難であった。また、従来においては、分散液を用いた方法を採用した場合、得られるトナーは、環境特性(耐水性、保存性)に劣り、カートリッジ内で保存していると(特に、多湿条件下で保存しておくと)、トナー粒子間での凝集が起こり、いわゆる、ダマを生じやすくなるという問題点があった。そこで、本発明者は、上記のような問題を解決する目的で鋭意研究を行った。その結果、本発明者は、分散液中に含まれる分散剤がトナー中に残存することにより、トナーの帯電特性に悪影響を与えることを見出し、さらに、分散質を構成する樹脂材料と分散剤とが所定の条件を満足するように材料を選択し(より詳しくは、樹脂材料として主としてアクリル系樹脂で構成されたものを用い、分散剤として後に詳述するような所定の部分構造(化学構造)を有するものを用い)、かつ、紫外線を照射することにより、前記分散剤を選択的に除去することができ、優れた特性のトナーが得られることを見出した。
以下、本発明のトナーの製造方法、トナー製造装置およびトナーの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
《第1実施形態》
図1は、本発明のトナーの製造に用いられるトナー製造装置の第1実施形態を模式的に示す縦断面図、図2は、図1に示すトナー製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
[分散液]
まず、本発明で用いる分散液について説明する。本発明のトナーは、分散剤を含む分散液を用いて製造されるものである。分散液としては、例えば、懸濁液(サスペンション)や乳化液(エマルション、乳濁液、乳状液)等が挙げられる。なお、本明細書中において、「懸濁液」とは、液状の分散媒中に、固体(固形)の分散質(懸濁粒子)が分散した分散液(懸濁コロイドを含む)のことを指し、「乳化液(エマルション、乳濁液、乳状液)」とは、液状の分散媒中に、液状の分散質(分散粒子)が分散した分散液のことを指す。また、分散液中には、固体状の分散質と、液状の分散質とが併存していてもよい。このような場合、分散液中における分散質のうち、固体状の分散質の占める割合が液状の分散質の占める割合よりも大きいものを懸濁液といい、液状の分散質の占める割合が固体状の分散質の占める割合よりも大きいものを乳化液という。また、特に、本発明で用いる分散液は脱気処理が施されたものであるのが好ましい。脱気処理については、後に詳述する。
分散液6は、分散媒62中に分散質(分散相)61が微分散した構成となっている。そして、分散液6は、分散質61の分散性を向上させる機能を有する分散剤を含むものである。
【0028】
<分散媒>
分散媒62は、後述する分散質61を分散可能なものであればいかなるものであってもよいが、主として、一般に溶媒として用いられているような材料(以下、「溶媒材料」ともいう)で構成されたものであるのが好ましい。
このような材料としては、例えば、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0029】
上記の材料の中でも、分散媒62としては、主として水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたものであるのが好ましい。これにより、例えば、分散媒62中における分散質61の分散性を高めることができ、分散液6中における分散質61を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナー(トナー粒子)は、粒子間での大きさ、形状のばらつきが小さく、円形度の大きいものとなる。また、特に、分散媒62が、水で構成されたものであると、例えば、トナーの製造工程において、実質的に有機溶媒を揮発しないようにすることができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法、すなわち、環境に優しい方法でトナーを製造することができる。また、分散媒62が主として水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであると、分散液6中において後に詳述するような分散剤を分散質61の表面付近に効率良く偏在させることができる。その結果、後に詳述するような紫外線の照射により、トナーの構成材料である結合樹脂(樹脂材料)等の分解劣化等を十分に防止しつつ、分散剤を選択的に分解除去することができる。その結果、最終的に得られるトナーは、特に優れた特性を有するものとなる。
【0030】
また、分散媒62の構成材料として複数の成分の混合物を用いる場合、分散媒の構成材料としては、前記混合物を構成する少なくとも2種の成分の間で、共沸混合物(最低沸点共沸混合物)を形成し得るものを用いるのが好ましい。これにより、後述するトナー製造装置の搬送部において、分散媒62を効率良く除去することが可能となる。また、後述するトナー製造装置の搬送部において、比較的低い温度で分散媒62を除去することが可能となり、最終的に得られるトナー(トナー粒子)の特性の劣化をより効果的に防止できる。例えば、水との間で、共沸混合物を形成し得る液体としては、二硫化炭素、四塩化炭素、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサン、アニソール、2−メトキシエタノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン、アクリロニトリル、アセトニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、アクリルアルデヒド等が挙げられる。
【0031】
また、分散媒62の沸点は、特に限定されないが、180℃以下であるのが好ましく、150℃以下であるのがより好ましく、35〜130℃であるのがさらに好ましい。このように、分散媒62の沸点が比較的低いものであると、後述するトナー製造装置の搬送部において、分散媒62を比較的容易に除去することが可能となる。また、分散媒62としてこのような材料を用いることにより、最終的に得られるトナー粒子中における分散媒62の残留量を特に少ないものにすることができる。その結果トナーとしての信頼性がさらに高まる。
なお、分散媒62中には、上述した材料以外の成分が含まれていてもよい。例えば、分散媒62中には、後に分散質61の構成成分として例示する材料や、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等の各種添加剤等が含まれていてもよい。
【0032】
<分散質>
分散質61は、通常、少なくとも、主成分としての樹脂またはその前駆体(以下、これらを総称して、「樹脂材料」とも言う)を含む材料で構成されている。樹脂の前駆体としては、例えば、当該樹脂のモノマー、ダイマー、オリゴマー、プレポリマー等が挙げられる。
【0033】
以下、分散質61の構成材料について説明する。
1.樹脂(バインダー樹脂)
分散質61に含まれる樹脂材料(バインダー樹脂)は、主として、アクリル系樹脂で構成されたものである。樹脂材料が主としてアクリル系樹脂で構成されたものであると、顔料やWAX(特にエステル系のWAX)が分散しやすく、またポリエステル系樹脂などと比べて透明性が高いため、このような樹脂材料で構成されたトナーによる画像は、特に彩度のよいものとなる。また、樹脂材料が主としてアクリル系樹脂で構成されたものであると、後に詳述するような分散剤を分散質の表面付近により効果的に偏在させることができる。その結果、後述する紫外線照射工程において、樹脂材料が分解劣化するのをより効果的に防止しつつ、後に詳述するような分散剤を選択的に分解除去することができる。
【0034】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸またはその誘導体(例えば、アクリル酸エステル)を構成モノマーとしたアクリル樹脂、メタクリル酸またはその誘導体(例えば、メタクリル酸エステル)を構成モノマーとしたメタクリル樹脂の他に、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等の(メタ)アクリル酸またはその誘導体を構成モノマーとして含む共重合体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記のように、樹脂材料は、主としてアクリル系樹脂で構成されたものであるが、他の樹脂成分(またはその前駆体)を含むものであってもよい。このような樹脂成分としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、後述するトナー製造装置の搬送部において、分散質61中の原料を重合反応させることによりトナーを製造する場合には、通常、上記の樹脂(アクリル系樹脂を含む)の前駆体(例えば、モノマー、ダイマー、オリゴマー、プレポリマー等)を用いる。なお、アクリル系樹脂は樹脂材料中に含まれる成分のうち最も含有率の高いものであればよいが、樹脂材料全体に占めるアクリル系樹脂の含有率は、50wt%以上であるのが好ましく、70wt%以上であるのがより好ましく、90wt%以上であるのがさらに好ましく、95〜100wt%であるのが最も好ましい。これにより、本発明の効果は、特に顕著なものとして発揮される。
分散質61中における樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、2〜98wt%であるのが好ましく、5〜95wt%であるのがより好ましい。
【0036】
樹脂材料をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、後に詳述する紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての樹脂材料の室温でのモル吸光係数ε[mol−1・dm・cm−1]は、特に限定されないが、8,000以下であるのが好ましく、5,000以下であるのがより好ましく、10〜2,000であるのがさらに好ましい。これにより、後に詳述する紫外線を照射する工程(紫外線照射工程)において、樹脂材料の劣化をより確実に防止しつつ、分散剤をより効率良く分解することができる。また、最終的に得られるトナーの耐久性(耐光性)を特に優れたものとすることができる。
【0037】
また、樹脂材料についての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、200〜400nmであるのが好ましく、200〜350nmであるのがより好ましく、200〜250nmであるのがさらに好ましい。これにより、後に詳述する紫外線を照射する工程(紫外線照射工程)において、樹脂材料の劣化をより確実に防止しつつ、分散剤をより効率良く分解することができる。また、最終的に得られるトナーの耐久性(耐光性)を特に優れたものとすることができる。なお、本発明において、紫外線領域とは、100〜400nmの波長領域のことを指す。
【0038】
また、分散質61を構成する樹脂材料のガラス転移点は、50〜70℃であるのが好ましい。これにより、構成材料の劣化が少なく、形状、大きさの均一性に優れ、機械的強度に優れたトナーを効率良く得ることができる。なお、分散質61を構成する樹脂材料が複数種の樹脂材料(樹脂成分)で構成されたものである場合、樹脂材料のガラス転移点として、これらの各成分の重量基準の加重平均値として求められる値を採用することができる。
【0039】
また、分散質61を構成する樹脂材料の融点は、90〜150℃であるのが好ましい。これにより、後述する接合工程を効率良く行うことができる。なお、分散質61を構成する樹脂材料が複数種の樹脂材料(樹脂成分)で構成されたものである場合、樹脂材料の融点として、これらの各成分の重量基準の加重平均値として求められる値を採用することができる。
【0040】
2.溶媒
分散質61中には、その成分の少なくとも一部を溶解する溶媒が含まれていてもよい。これにより、例えば、分散液6中における分散質61の流動性を高めることができ、分散液6中における分散質61を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナーを、粒子間(トナー粒子間)での大きさ、形状のばらつきが小さく、円形度の比較的大きいものとすることができる。
【0041】
溶媒としては、分散質61を構成する成分の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、後述するようなトナー製造装置の搬送部において、容易に除去されるもの(例えば、沸点が150℃以下のもの)であるのが好ましい。
また、溶媒は、前述した分散媒62との相溶性が低いもの(例えば、25℃における分散媒100gに対する溶解度が30g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、分散液6中において、分散質61を安定した状態で微分散させることができる。
【0042】
また、溶媒の組成は、例えば、前述した樹脂、着色剤の組成や、分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
例えば、溶媒としては、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。この中でも特に、有機溶媒を含むものであるのが好ましく、エーテル系溶媒、セロソルブ系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、芳香族複素環化合物系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化合物系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、アルデヒド系溶媒から選択される1種または2種以上を含むものであるのがより好ましい。このような溶媒を用いることにより、分散質61中において、比較的容易に、前述したような各成分を十分均一に分散させることができる。
【0043】
また、分散液6中(特に、分散質61中)には、通常、着色剤が含まれている。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このような着色剤は、通常、分散液6においては、分散質61中に含まれる。
【0044】
分散質61中における着色剤の含有量は、特に限定されないが、0.1〜10wt%であるのが好ましく、0.3〜3.0wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有量が前記下限値未満であると、着色剤の種類によっては、十分な濃度の可視像を形成するのが困難になる可能性がある。一方、着色剤の含有量が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナーの定着特性や帯電特性が低下する可能性がある。
【0045】
また、分散液6中には、ワックスが含まれていてもよい。ワックスは、通常、離型性を向上させる目的で用いられるものである。このようなワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、綿ロウ、木ロウ等の植物系ワックス・ロウ、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス・ロウ、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス・ロウ、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油ワックス・ロウ等の天然ワックス・ロウや、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス(ポリエチレン樹脂)、ポリプロピレンワックス(ポリプロピレン樹脂)、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス・ロウ等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ワックスとしては、さらに低分子量の結晶性高分子樹脂を使用してもよく、例えば、ポリn−ステアリルメタクリレート、ポリn−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等を使用することもできる。
【0046】
分散液6中におけるワックスの含有量は、特に限定されないが、1.0wt%以下であるのが好ましく、0.5wt%以下であるのがより好ましい。ワックスの含有量が多すぎると、最終的に得られるトナー粒子中において、ワックスが遊離、粗大化して、トナー粒子表面へのワックスのしみ出し等が顕著に起こり、トナーの転写効率が低下する傾向を示す。
ワックスの軟化点は、特に限定されないが、50〜180℃であるのが好ましく、60〜160℃であるのがより好ましい。
【0047】
また、分散液6中には、分散剤が含まれている。このように、分散液6が分散剤を含むものであることにより、分散液中における分散質61の分散性が向上する。その結果、各粒子間(トナー粒子間)での大きさ、形状のばらつきが小さいトナーを得ることができる。なお、本明細書中において、「分散剤」は、分散液中における分散質の分散性を向上させる機能を有するもののことを指し、狭義の分散剤に加え、乳化剤、分散助剤等を含む概念である。
【0048】
特に、本発明で用いる分散剤は、ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、および、ニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの部分構造を備えた分子構造を有するものである。このような分散剤は、分散液中においては、分散質の分散性を向上させる機能を十分に有しており、かつ、後述するような紫外線の照射により、容易かつ確実に分解除去されるものであり、最終的に得られるトナー中に極めて残存し難いものである。
また、前述したように、本発明で用いる樹脂材料は、主としてアクリル系樹脂で構成されたものである。このように、樹脂材料が主としてアクリル系樹脂で構成されたものであると、分散液中において、上記のような所定の部分構造を備えた分散剤が、分散質の表面付近に偏在し易くなることを、本発明者は見出した。
【0049】
このように、本発明は、紫外線により分解除去され易い分散剤を、分散質の表面付近に効果的に偏在させることにより、樹脂材料等のトナーの構成成分(トナー中に含まれるべき成分)が劣化分解するのを防止しつつ、分散剤を選択的に除去することができる点に特徴を有する。その結果、帯電特性に優れ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナー粒子を、効率良く(生産性良く)製造することができる。特に、環境に優しい方法で、トナーの構成材料(トナー中に含まれるべき成分)の特性(例えば、帯電特性、定着性等)が十分に発揮され、かつ、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを製造することができる。
【0050】
本発明において用いる分散剤は、上記のような部分構造を備えた分子構造を有するものであればいかなるものであってもよいが、前記部分構造の中でも、特に、ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、および、アルデヒド基よりなる群から選択される少なくとも1つの部分構造を備える分子構造のものであるのが好ましく、ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)を備える分子構造のものであるのがより好ましい。これにより、本発明の効果はさらに顕著なものとして現れる。
【0051】
なお、本発明において、「置換ベンゼン環」とは、ベンゼンの分子内に存在する少なくとも1つの水素原子が他の原子、原子団で置換されたもののことを指す。前記原子、前記原子団としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、スルホン基、カルボニル基、カルボキシル基等が挙げられる。また、置換ベンゼン環の具体例としては、例えば、メシチル基等のアルキル化フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ニトロフェニル基等が挙げられる。なお、本発明においては、ナフタレン、ビフェニル等の多環構造も置換ベンゼン環に含まれる。
また、本発明において、「カルボキシル基」とは、−COOHの構造を有するもののほか、金属塩等の各種塩構造を有するもの等も含む。
【0052】
また、本発明で用いる分散剤は、前述した樹脂材料との間で、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、本発明においては、分散剤についての紫外線領域での吸光度が最大となる波長をλ[nm]、樹脂材料についての紫外線領域での吸光度が最大となる波長をλ[nm]としたとき、λ>λの関係を満足するのが好ましい。このような関係を満足する材料を選択することにより、後述する紫外線照射工程等において、トナーの構成材料(トナー中に含まれるべき成分)が紫外線により分解劣化するのをさらに効果的に防止しつつ、分散剤を選択的に分解除去することができる。より詳しく説明すると、後述する紫外線照射工程等において、エネルギーの比較的小さい(光子1個当たりのエネルギーが比較的小さい)、長波長側の紫外線を用いることができ、トナーの構成材料(トナー中に含まれるべき成分)が紫外線により分解劣化するのをより効果的に防止しつつ、分散剤を選択的に分解除去することができる。
【0053】
このように、本発明においては、λ>λの関係を満足するのが好ましいが、λ−λ>10の関係を満足するのがより好ましく、λ−λ>30の関係を満足するのがさらに好ましく、40≦λ−λ≦200の関係を満足するのがもっとも好ましい。このような関係を満足することにより、トナーの構成成分(特に、結着樹脂としての樹脂材料)の劣化をより確実に防止しつつ、後述する紫外線照射工程において、分散剤をより効率良く分解することができる。また、最終的に得られるトナーの耐久性(耐光性)を特に優れたものとすることができる。
【0054】
また、λの具体的な値は、特に限定されないが、220nm以上であるのが好ましく、230nm以上であるのがより好ましく、240〜400nmであるのがさらに好ましい。これにより、トナーの構成成分(特に、結着樹脂としての樹脂材料)の劣化をより確実に防止しつつ、後述する紫外線照射工程において、分散剤をより効率良く分解することができる。
【0055】
また、分散剤は、紫外線のエネルギーを効率良く吸収し、比較的容易に分解するものであるのが好ましい。
例えば、分散剤をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての分散剤の室温でのモル吸光係数ε[mol−1・dm・cm−1]は、10,000以上であるのが好ましく、12,000以上であるのがより好ましく、13,000〜100,000であるのがさらに好ましい。これにより、トナーの構成成分(特に、結着樹脂としての樹脂材料)の劣化をより確実に防止しつつ、後述する紫外線照射工程において、分散剤をより効率良く分解することができる。
【0056】
また、分散剤をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての分散剤の室温でのモル吸光係数をε[mol−1・dm・cm−1]、樹脂材料をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての樹脂材料の室温でのモル吸光係数をε[mol−1・dm・cm−1]としたとき、ε/ε>1.25の関係を満足するのが好ましく、ε/ε>1.6の関係を満足するのがより好ましく、2≦ε/ε≦100の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、トナーの構成成分(特に、結着樹脂としての樹脂材料)の劣化をより確実に防止しつつ、後述する紫外線照射工程において、分散剤をより効率良く分解することができる。また、最終的に得られるトナーの耐久性(耐光性)を特に優れたものとすることができる。
【0057】
本発明で用いる分散剤は、前述したような条件を満足するものであればいかなるものであってもよいが、例えば、非イオン系(ノニオン系)分散剤、アニオン系分散剤、カチオン系分散剤、両性分散剤等が挙げられる。
非イオン系(ノニオン系)分散剤としては、例えば、エーテル系分散剤、エステル系分散剤、エーテルエステル系分散剤、含窒素系分散剤等が挙げられ、より具体的には、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、セルロース等が挙げられる。
【0058】
アニオン系分散剤としては、例えば、各種ロジン、各種カルボン酸塩、各種硫酸エステル塩、各種スルホン酸塩、各種リン酸エステル塩等が挙げられ、より具体的には、ガムロジン、重合ロジン、不均一化ロジン、マレイン化ロジン、フマール化ロジン、アクリル化ロジン、ロジンジオール、マレイン化ロジンペンタエステル、マレイン化ロジングリセリンエステル、トリステアリン酸塩(例えば、アルミニウム塩等の金属塩等)、ジステアリン酸塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等の金属塩等)、ステアリン酸塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、リノレン酸塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、オクタン酸塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等の金属塩等)、オレイン酸塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等の金属塩等)、パルミチン酸塩(例えば、亜鉛塩等の金属塩等)、ナフテン酸塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、レジン酸塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等の金属塩等)、ポリアクリル酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、ポリメタクリル酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、ポリマレイン酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、ドデシルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、アルキルスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩等の金属塩等)等が挙げられる。
【0059】
カチオン系分散剤としては、例えば、1級アンモニウム塩、2級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩等の各種アンモニウム塩等が挙げられ、より具体的には、(モノ)アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、テトラアルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0060】
両性分散剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン等の各種ベタイン、各種アミノカルボン酸、各種リン酸エステル塩等が挙げられる。
特に、上記の中でもアニオン系分散剤を含むものを用いた場合、後に詳述するような紫外線を用いた処理の条件が比較的温和なもの(例えば、紫外線の照射強度が比較的弱い場合)であっても、最終的に得られるトナーの帯電特性をより確実に優れたものとすることができる。
【0061】
また、分散剤としてカチオン系分散剤を含むものを用いた場合、本発明による効果を特に顕著に発揮させることができる。すなわち、トナーとしては、通常、負帯電性のものが広く用いられているが、このようなトナーの製造においてカチオン系分散剤を用いた場合、最終的なトナー中におけるカチオン系分散剤の含有量が比較的少量であってもトナーの帯電特性に与える悪影響は大きいものとなる。したがって、分散剤が除去されない従来の方法(分散液を用いる方法)では、カチオン系分散剤の悪影響は顕著なものとして現れるが、これに対し、本発明では、後に詳述するように、分散液中に含まれる分散剤を、トナーの製造工程において効率良く除去することができるため、カチオン系分散剤を用いた場合であっても、上記のような問題の発生を十分に防止することができる。
また、分散剤としてノニオン系分散剤を含むものを用いた場合、後に詳述するような紫外線を用いた処理の条件が比較的温和なもの(例えば、紫外線の照射強度が比較的弱い場合)であっても、最終的に得られるトナーの帯電特性をより確実に優れたものとすることができる。
【0062】
分散液6中における分散剤の含有量は、特に限定されないが、0.001〜10wt%であるのが好ましく、0.005〜5wt%であるのがより好ましく、0.01〜3wt%であるのがさらに好ましい。分散剤の含有量が前記範囲内の値であると、分散液6中における分散質61の分散性を十分に優れたものとしつつ、最終的に得られるトナー中において、分散剤が実質的に残存しない、または、分散剤の含有量(残留量)を十分に小さいものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナーにおいて各粒子間(トナー粒子間)での形状、大きさ等のばらつきを特に小さいものとしつつ、トナーの帯電特性を特に優れたものとすることができる。また、トナーの生産性を特に高いものとすることができる。
【0063】
また、分散液6中には、帯電制御剤が含まれているのが好ましい。これにより、最終的に得られるトナーの帯電特性を特に優れたものとすることができる。また、従来の分散液を用いたトナーの製造方法では、分散液として帯電制御剤を含むものを用いても当該帯電制御剤の機能を十分に発揮させることができなかった。これは分散液中に含まれる分散剤は、トナー粒子表面全体に偏在して分布しているためであると考えられる。これに対し、本発明では、最終的なトナーにおいて分散剤が残存するのを効果的に防止することができるため、帯電制御剤の機能をより効果的に発揮させることができる。
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフミン酸等が挙げられる。
【0064】
また、分散液6中には、これら以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、磁性粉末等が挙げられる。
前記磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
【0065】
また、分散液6中には、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等が添加されていてもよい。
また、分散液6中には、分散質61以外の成分が、不溶分として分散していてもよい。例えば、分散液6中には、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等が分散していてもよい。
【0066】
分散液6では、分散質61が分散媒62中に微分散した状態となっている。
分散液6中における分散質61の平均粒径は、特に限定されないが、0.05〜1.0μmであるのが好ましく、0.1〜0.8μmであるのがより好ましい。分散質61の平均粒径がこのような範囲の値であると、最終的に得られるトナー粒子は、十分に円形度が高く、各粒子間での特性、形状の均一性に優れたものとなる。
【0067】
分散液6中における分散質61の含有量は、特に限定されないが、1〜99wt%であるのが好ましく、5〜95wt%であるのがより好ましい。分散質61の含有量が前記下限値未満であると、最終的に得られるトナー粒子の円形度が低下する傾向を示す。一方、分散質61の含有量が前記上限値を超えると、分散媒62の組成等によっては、分散液6の粘性が高くなり、最終的に得られるトナー(トナー粒子)の形状、大きさのばらつきが大きくなる傾向を示す。
【0068】
分散液6中においては、分散質61は、固体状のものであってもよいし、液状のものであってもよいし、これらが併存していてもよい。すなわち、分散液6は懸濁液であってもよいし、乳化液であってもよい。
分散質61が液状(例えば、溶液状態、溶融状態)のものである場合、分散媒62中に微分散した分散質61の平均粒径を、比較的容易に、上記のような範囲の値にすることができる。また、分散質61が液状のものである場合、各分散質61間での形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができるため、最終的に得られるトナーは、各トナー粒子間での形状、大きさのばらつきが特に小さいものとなる。
【0069】
また、分散質61が固体状のものである場合、最終的に得られるトナー中に溶媒等の不要成分が残存するのをより効果的に防止することができる。その結果、トナーの信頼性は特に優れたものとなる。また、分散質61が固体状のものである場合、すなわち、分散液6が懸濁液である場合、例えば、分散液6としての懸濁液は、乳化液を経由して調製されたものであってもよい。これにより、上述したような、分散質61が固体状のものである場合の利点を十分に発揮しつつ、分散質61が液状のものである場合の利点も効果的に発揮される。
また、分散媒62中に分散している分散質61は、例えば、各粒子間で、ほぼ同一の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、分散液6は、分散質61として、主として樹脂材料で構成されたものと、主としてワックスで構成されたものとを含むようなものであってもよい。
【0070】
また、分散液6が乳化液(エマルション)である場合、当該分散液6は、O/W型エマルション、すなわち、水性の分散媒62中に、油性(ここでは、水に対する溶解度が小さい液体のことを指す)の分散質61が分散したものであるのが好ましい。これにより、各粒子間(トナー粒子間)での形状、大きさのばらつきが小さいトナーを安定的に製造することができる。また、分散媒62に水性の液体を用いることにより、後述するようなトナー製造装置の搬送部における有機溶媒の揮発量を少なく、または実質的に有機溶媒を揮発しないものとすることができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。
【0071】
また、分散液6中における分散質61の平均粒径をDm[μm]、トナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.005≦Dm/Dt≦0.5の関係を満足するのが好ましく、0.01≦Dm/Dt≦0.2の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、各粒子間(トナー粒子間)での、形状、大きさのばらつきが特に小さいトナーを得ることができる。
【0072】
以上説明したような分散液6は、例えば、以下のような方法(第1の方法)を用いて調製することができる。
まず、水または水との相溶性に優れる液体(水溶性の液体)と、分散剤とを含む水性溶液を用意する。
一方、トナーの主成分となる樹脂材料を含む樹脂液を調製する。樹脂液の調製には、例えば、樹脂材料に加えて前述した溶媒を用いてもよい。また、樹脂液は、樹脂材料を加熱することにより得られる溶融した液体であってもよい。
【0073】
次に、上記樹脂液を、攪拌した状態の水性溶液中に、徐々に滴下しながら加えていくことにより、水性の分散媒62中に、樹脂材料を含む分散質61が分散した分散液6が得られる。このような方法で、分散液6を調製することにより、分散液6中における分散質61の円形度をさらに高めることができる。その結果、最終的に得られるトナー粒子は、円形度が特に高く、各粒子間(トナー粒子間)での形状のばらつきが特に小さいものとなる。なお、樹脂液の滴下を行う際、水性溶液および/または樹脂液を加熱してもよい。また、樹脂液の調製に溶媒を用いた場合、例えば、上記のような滴下を行った後に、得られた分散液6を加熱したり、減圧雰囲気下に置くこと等により、分散質61中に含まれる溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。例えば、分散質61中に含まれる溶媒の大部分を除去することにより、分散液6を懸濁液として得ることができる。このような方法を採用した場合、溶媒の回収を、容易かつ確実に行うことができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。
【0074】
以上、分散液6の調製方法の一例について説明したが、分散液はこのような方法により調製されたものに限定されない。例えば、分散液6は、以下のような方法(第2の方法)によっても、調製することができる。
まず、水または水との相溶性に優れる液体と、分散剤とを含む水性溶液を用意する。
一方、樹脂材料を含む、粉末状または粒状の材料を用意する。
次に、この粉末状または粒状の材料を、攪拌した状態の水性溶液中に、徐々に投入していくことにより、水性の分散媒62中に、樹脂材料を含む分散質61が分散した分散液6が得られる。このような方法で、分散液6を調製した場合、後述するようなトナー製造装置の搬送部において、実質的に有機溶媒を揮発しないようにすることができる。その結果、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。なお、前記材料を投入する際、例えば、水性溶液を加熱しておいてもよい。
【0075】
また、分散液6は、以下のような方法(第3の方法)によっても、調製することができる。
まず、少なくとも樹脂材料を分散してなる樹脂分散液と、少なくとも着色剤を分散してなる着色剤分散液とを調製する。
次に、樹脂分散液と、着色剤分散液とを混合・攪拌する。このとき、必要に応じて、攪拌しながら無機金属塩等の凝集剤を加えてもよい。
所定時間、攪拌することにより、樹脂材料、着色剤等が凝集した凝集物が形成される。その結果、前記凝集物が分散質61として分散した分散液6が得られる。
【0076】
また、上記のような分散液の調製方法において、樹脂材料(結着樹脂)を含む混練物を用いてもよい。すなわち、上述した第1の方法、第3の方法での「樹脂材料」として、樹脂材料を含む混練物を用いてもよいし、第2の方法での「粉末状または粒状の材料」として、樹脂材料を含む混練物を用いてもよい。これにより、例えば、トナー粒子を、各構成成分がより均一に混ざり合ったものとして得ることができる。特に、トナーの構成成分として、分散性、相溶性に劣る2種以上の成分を含む場合であっても、上記のような効果を得ることができる。なお、混練物としては、例えば、樹脂成分以外の成分(例えば、着色剤、ワックス、帯電制御剤等の成分)を含むものを用いることができる。これにより、上記のような効果はさらに顕著なものとなる。
【0077】
また、分散液6の調製には、例えば、特願2003−113428号明細書に記載された方法を適用してもよい。すなわち、粉末状または粒状の樹脂材料(混練物)を含む液体を複数のノズルから噴射させ、各ノズルから噴射した前記液体同士を衝突させて、前記樹脂材料(混練物)を微粒化させ、微粒化した分散質61を含む分散液6を得る方法を適用してもよい。これにより、分散液6中に含まれる分散質61の大きさを、容易に、比較的小さいもの(前述した範囲の大きさ)とすることができ、また、各分散質61の大きさのばらつきを小さくすることができる。
【0078】
また、上記のような方法で得られた分散液6を、後述するトナー製造装置での吐出に供する前に、脱気処理を施す(脱気工程に供する)のが好ましい。これにより、分散液6中の気体の溶存量を低減させることができ、後述するトナー製造装置の搬送部において、液滴状に吐出された分散液6から分散媒62を除去する際に、当該分散液6中に気泡等が発生するのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られるトナー中に異形状のトナー粒子(中空粒子、欠落粒子等)が混入するのを効果的に防止することができる。したがって、各トナー粒子が均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを容易かつ確実に得ることができる。また、これにより、最終的に得られるトナーを、転写性、流動性、クリーニング性等の特性が特に優れたものとすることができる。また、分散液6に脱気処理を施すことにより、最終的に得られるトナー粒子中における空孔(空隙)の割合を小さいものとすることができる。その結果、トナーの信頼性はさらに向上する。
【0079】
脱気処理の方法は、特に限定されないが、例えば、分散液に超音波振動を与える方法(超音波振動法)や、分散液を減圧雰囲気中に置く方法(減圧法)等を用いることができる。
脱気処理の方法として減圧法を用いる場合、分散液が置かれる雰囲気の圧力は、80kPa以下であるのが好ましく、0.1〜40kPaであるのがより好ましく、1〜27kPaであるのがさらに好ましい。脱気処理時における雰囲気圧力がこのような範囲内の値であると、分散液6中における分散質61の形状を十分に保持しつつ、溶存する気体を効率良く除去することができる。
【0080】
以下、上記のような分散液を用いるトナーの製造方法、トナーの製造装置について、詳細に説明する。
[トナー製造装置]
トナー製造装置1は、上述したような分散液6(特に、脱気処理を施した分散液6)を吐出物として吐出するヘッド部2と、ヘッド部2に分散液6を供給する分散液供給部4と、ヘッド部2から吐出された分散液6(吐出物)が搬送される搬送部3と、搬送部3で形成された凝集体90に紫外線を照射する紫外線照射手段12と、製造されたトナー粒子9を回収する回収部5とを有している。そして、搬送部3は、液滴状の分散液6から分散媒62を除去し(分散媒除去工程を行い)凝集体90を得る第1の領域32と、凝集体90を構成する複数個の分散質同士を接合させる(接合工程を行う)とともに、凝集体90(吐出物)に紫外線を照射する(紫外線照射工程を行う)第2の領域33とを有している。なお、本明細書中においては、「吐出物」とは、液滴状に吐出された分散液またはそれに由来するもの(粒状体)のことを指し、例えば、液滴状に吐出された分散液そのものの他、当該分散液から分散媒が除去されたもの、分散液を構成する分散質が変性したもの(例えば、分散質の構成材料の少なくとも一部が重合反応をしたもの)等を含む概念である。また、本明細書中においては、接合工程で接合(例えば、溶融接合)される「分散質」は、分散液を構成する分散質またはそれに由来するもののことを指し、例えば、分散液を構成する分散質そのものの他、当該分散質からその成分の一部(例えば、溶媒等)が除去されたもの、分散質の構成成分の少なくとも一部が変性したもの(例えば、分散質の構成材料の少なくとも一部が重合反応をしたもの)等を含む概念である。
【0081】
分散液供給部4には、上述したような分散液6が蓄えられており、当該分散液6は、ヘッド部2に送り込まれる。
分散液供給部4は、ヘッド部2に分散液6を供給する機能を有するものであればよいが、図示のように、分散液6を攪拌する攪拌手段41を有するものであってもよい。これにより、例えば、分散質61が分散媒中に分散しにくいものであっても、分散質61が十分均一に分散した状態の分散液6を、ヘッド部2内に供給することができる。
ヘッド部2は、分散液貯留部21と、圧電素子22と、吐出部23とを有している。
分散液貯留部21には、上述したような分散液6が貯留されている。
分散液貯留部21に貯留された分散液6は、圧電素子22の圧力パルス(圧電パルス)により、吐出部23から、液滴状の吐出物として搬送部3に吐出される。
【0082】
このように、本発明では、分散液を用いる点に特徴を有する。これにより、例えば、以下のような効果が得られる。
すなわち、吐出液として分散液を用いることにより、吐出部から吐出液(分散液)を吐出する際に、微視的に粘度の低い分散媒の部分で選択的に切断され、液滴として吐出される。このため、吐出される分散液の大きさは、各液滴で大きさのばらつきが小さいものとなる。したがって、最終的に得られるトナーは、各粒子(トナー粒子)間での大きさのばらつきが小さいものとなる。
【0083】
そして、吐出部から吐出された液滴は、分散媒の表面張力により、吐出後速やかに球形状となる。さらに、分散液で構成された液滴は、搬送部内を搬送される際においても、形状の安定性に優れており、略球形状を保持した状態で固化する。したがって、最終的に得られるトナー(トナー粒子)は、円形度が大きく、各粒子間(トナー粒子間)での形状のばらつきが小さいものとなる。
【0084】
これに対し、吐出液として溶液や溶融液を用いた場合、このような効果は得られない。すなわち、このような吐出液は、微視的に見ても一様な粘度を有しているため、吐出部から吐出される際に、いわゆる液切れが悪い状態になり易く、液滴が尾を引くような形状になりやすい。また、搬送部内を搬送される際においても、上記のような尾を引いたような形状になり易い。したがって、吐出液として溶液や溶融液を用いた場合、最終的に得られるトナーは、各粒子間(トナー粒子間)での大きさ、形状のばらつきが大きく、トナー粒子の円形度が小さいものになり易い。
【0085】
また、吐出液として分散液を用いることにより、製造するトナー粒子の粒径が十分に小さい場合であっても、容易に、その円形度を十分に高いものとし、かつ、粒度分布がシャープなものとすることができる。これにより、得られるトナーは、各粒子間での帯電の均一性が特に高く、かつ、トナーを印刷に用いたときに、現像ローラ上に形成されるトナーの薄層が平準化、高密度化したものとなる。その結果、カブリ等の欠陥を生じ難く、よりシャープな画像を形成することができる。また、トナー粒子の形状、粒径が揃っているため、トナー全体(トナー粒子の集合体)としての嵩密度を大きくすることができる。その結果、同一容積のカートリッジ内へのトナーの充填量をより多くしたり、カートリッジの小型化を図る上でも有利である。
【0086】
吐出部23の形状は、特に限定されないが、略円形状であるのが好ましい。これにより、吐出される分散液6や、搬送部3内において形成される凝集体90、さらには、最終的に得られるトナー粒子9の真球度を高めることができる。
吐出部23が略円形状のものである場合、その直径(ノズル径)は、例えば、5〜500μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。吐出部23の直径が前記下限値未満であると、目詰まりが発生し易くなり、吐出される分散液6(吐出物)の大きさのばらつきが大きくなる場合がある。一方、吐出部23の直径が前記上限値を超えると、分散液貯留部21の負圧と、ノズルの表面張力との力関係によっては、吐出される分散液6が気泡を抱き込んでしまう可能性がある。
【0087】
また、ヘッド部2の吐出部23付近(特に、吐出部23の開口内面や、ヘッド部2の吐出部23が設けられている側の面(図中の下側の面))は、分散液6に対し撥液性を有するのが好ましい。これにより、分散液6が吐出部付近に付着するのを効果的に防止することができる。その結果、いわゆる、液切れの悪い状態になったり、分散液6の吐出不良が発生するのを効果的に防止することができる。また、吐出部付近への分散液6の付着が効果的に防止されることにより、吐出される液滴の形状の安定性が向上し(各液滴間での形状、大きさのばらつきが小さくなり)、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのばらつきも小さくなる。
このような撥液性を有する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂や、シリコーン系材料等が挙げられる。
【0088】
また、ヘッド部2の吐出部23付近(特に、吐出部23の開口内面や、ヘッド部2の吐出部23が設けられている側の面(図中の下側の面))は、疎水化処理が施されているのが好ましい。これにより、例えば、分散液6の分散媒62が主として水で構成されたものである場合に、上記のような撥液性をより好適に発揮することができ、上記のような効果がより顕著なものとして現れる。疎水化処理の方法としては、例えば、疎水性材料(例えば、前述した撥液性を有する材料)で構成された被膜の形成等が挙げられる。ところで、水は、各種液体の中でも比較的高い粘性を有するものであるが、このような水を分散媒62の構成材料として用いても、分散液6が吐出部付近に付着すること等による不都合の発生が効果的に防止される。したがって、ヘッド部2の吐出部23付近に疎水化処理が施されていると、有機溶媒を実質的に含まない、または、ほとんど含まない分散液6を好適に用いることができ、環境に対して悪影響を極めて与えにくい方法でトナーを製造することができる。
【0089】
図2に示すように、圧電素子22は、下部電極(第1の電極)221、圧電体222および上部電極(第2の電極)223が、この順で積層されて構成されている。換言すれば、圧電素子22は、上部電極223と下部電極221との間に、圧電体222が介挿された構成とされている。
この圧電素子22は、振動源として機能するものであり、振動板24は、圧電素子(振動源)22の振動により振動し、分散液貯留部21の内部圧力を瞬間的に高める機能を有するものである。
【0090】
ヘッド部2は、圧電素子駆動回路(図示せず)から所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子22の下部電極221と上部電極223との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体222に変形が生じない。このため、振動板24にも変形が生じず、分散液貯留部21には容積変化が生じない。したがって、吐出部23から分散液6は吐出されない。
【0091】
一方、圧電素子駆動回路から所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子22の下部電極221と上部電極223との間に所定の電圧が印加された状態では、圧電体222に変形が生じる。これにより、振動板24が大きくたわみ(図2中下方にたわみ)、分散液貯留部21の容積の減少(変化)が生じる。このとき、分散液貯留部21内の圧力が瞬間的に高まり、吐出部23から粒状の分散液6が吐出される。
【0092】
1回の分散液6の吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極221と上部電極223との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子22は、ほぼ元の形状に戻り、分散液貯留部21の容積が増大する。なお、このとき、分散液6には、分散液供給部4から吐出部23へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気が吐出部23から分散液貯留部21へ入り込むことが防止され、分散液6の吐出量に見合った量の分散液6が分散液供給部4から分散液貯留部21へ供給される。
上記のような電圧の印加を所定の周期で行うことにより、圧電素子22が振動し、粒状の分散液6が繰り返し吐出される。
【0093】
このように、分散液6の吐出(噴射)を、圧電体222の振動による圧力パルスで行うことにより、分散液6を一滴ずつ間欠的に吐出することができ、また、吐出される分散液6の形状が安定する。その結果、各粒子(各トナー粒子)間での形状、大きさのばらつきの小さいトナーを得ることができるとともに、製造されるトナー粒子を真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることが比較的容易にできる。
【0094】
また、上記のようの分散液の吐出によりトナーを製造する場合、各粒子間で粒径のばらつきを特に小さいものとすることができるとともに、トナーの構成材料(特にバインダー樹脂)の選択の幅を広げることができる。
また、上記のようにして分散液(吐出物)を吐出(噴射)することにより、圧電体の振動数、吐出部の開口面積(ノズル径)、分散液の温度・粘度、分散液の一滴分の吐出量、分散液中に占める分散質の含有率、分散液中における分散質の粒径等を比較的正確にコントロールすることができ、製造すべきトナー粒子を所望の形状、大きさに制御することが容易にできる。また、これらの条件等をコントロールすることにより、例えば、トナーの製造量等を容易かつ確実に管理することができる。
また、分散液の吐出に圧電体の振動を用いることにより、より確実に分散液を所定間隔で吐出することができる。このため、吐出される粒状の分散液(吐出物)同士が、衝突、凝集するのを効果的に防止することができ、異形状のトナー粒子の形成をより効果的に防止することができる。
【0095】
ヘッド部2から搬送部3に吐出される分散液6(吐出物)の初速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、2〜8m/秒であるのがより好ましい。分散液6の初速度が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、分散液6の初速度が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナー粒子の真球度が低下する傾向を示す。
また、ヘッド部2から吐出される分散液6の粘度は、特に限定されないが、例えば、0.5〜200[mPa・s]であるのが好ましく、1〜25[mPa・s]であるのがより好ましい。分散液6の粘度が前記下限値未満であると、吐出される分散液6の大きさを十分に制御するのが困難となり、最終的に得られるトナー粒子のばらつきが大きくなる場合がある。一方、分散液6の粘度が前記上限値を超えると、形成される粒子の径が大きくなり、分散液6の吐出速度が遅くなるとともに、分散液6の吐出に要するエネルギー量も大きくなる傾向を示す。また、分散液6の粘度が特に大きい場合には、分散液6を液滴として吐出できなくなる。
【0096】
また、ヘッド部2から吐出される分散液6は、予め加温されたものであってもよい。このように分散液6を加温することにより、例えば、分散質61が室温で固体状態(または粘度が比較的高い状態)のものであっても、吐出時において、分散質を溶融状態(または粘度が比較的低い状態、軟化状態)にさせることができる。その結果、後述する搬送部3において、粒状の分散液6中に含まれる分散質61の凝集や、分散質61の接合が円滑に進行し、形成される凝集体90の円形度が特に高いものとなり、その結果、最終的に得られるトナー粒子についても円形度が高いものとすることができる。
【0097】
また、ヘッド部2から吐出される分散液6は、予め冷却されたものであってもよい。このように分散液6を冷却することにより、例えば、吐出部23付近における分散液6からの分散媒62の不本意な蒸発(揮発)を効果的に防止することができる。その結果、吐出部の開口面積が経時的に小さくなることによる分散液6の吐出量変化等を効果的に防止することができ、各粒子間での大きさ、形状のばらつきが特に小さいトナーを得ることができる。
【0098】
また、分散液6の一滴分の吐出量は、分散液6中に占める分散質61の含有率等により若干異なるが、0.05〜500plであるのが好ましく、0.5〜5plであるのがより好ましい。分散液6の一滴分の吐出量をこのような範囲の値にすることにより、形成される凝集体90、トナー粒子9を適度な粒径のものにすることができる。
また、ヘッド部2から吐出される分散液6(吐出物)の平均粒径は、分散液6中に占める分散質61の含有率等により若干異なるが、2〜50μmであるのが好ましく、4〜15μmであるのがより好ましい。分散液6(吐出物)の平均粒径をこのような範囲の値にすることにより、形成される凝集体90、トナー粒子9を適度な粒径のものにすることができる。
【0099】
ところで、ヘッド部2から吐出される粒状の分散液6は、一般に、分散液6中の分散質61に比べて十分に大きいものである。すなわち、粒状の分散液6中には、多数個の分散質61が分散した状態となっている。このため、分散質61の粒径のばらつきが比較的大きいものであっても、吐出される粒状の分散液6中に占める分散質61の割合は、各液滴でほぼ均一である。したがって、分散質61の粒径のばらつきが比較的大きい場合であっても、分散液6の吐出量をほぼ均一とすることにより、トナー粒子9は、各粒子間で粒径のばらつきの小さいものとなる。このような傾向は、以下のような関係を満足する場合に、より顕著なものとなる。すなわち、吐出される分散液6の平均粒径をDd[μm]、分散液6中における分散質61の平均粒径をDm[μm]としたとき、Dm/Dd<0.5の関係を満足するのが好ましく、Dm/Dd<0.2の関係を満足するのがより好ましい。
【0100】
また、吐出される分散液6の平均粒径をDd[μm]、製造されるトナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.05≦Dt/Dd≦1.0の関係を満足するのが好ましく、0.1≦Dt/Dd≦0.8の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、十分に微細で、かつ、円形度が大きく、粒度分布がシャープなトナーを比較的容易に得ることができる。
【0101】
圧電素子22の振動数(圧電パルスの周波数)は、特に限定されないが、1kHz〜500MHzであるのが好ましく、5kHz〜200MHzであるのがより好ましい。圧電素子22の振動数が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、圧電素子22の振動数が前記上限値を超えると、粒状の分散液6の吐出が追随できなくなり、分散液6一滴分の大きさのばらつきが大きくなる可能性がある。
【0102】
図示の構成のトナー製造装置1は、ヘッド部2を複数個有している。そして、これらのヘッド部2から、それぞれ、粒状の分散液6が搬送部3に吐出される。
各ヘッド部2は、ほぼ同時に分散液6を吐出するものであってもよいが、少なくとも隣り合う2つのヘッド部で、分散液6の吐出タイミングが異なるように制御されたものであるのが好ましい。これにより、隣接するヘッド部2から吐出された粒状の分散液6(吐出物)が固化する前(凝集体90になる前)に、粒状の分散液(吐出物)同士が衝突し、これらが凝集するのをより効果的に防止することができる。
【0103】
また、図2に示すように、トナー製造装置1は、ガス流供給手段10を有しており、このガス流供給手段10から供給されたガスが、ダクト101を介して、ヘッド部2−ヘッド部2間に設けられた各ガス噴射口7から、ほぼ均一の圧力で噴射される構成となっている。これにより、吐出部23から間欠的に吐出された粒状の吐出物(分散液6)の間隔を保ちつつ、吐出物を搬送し、凝集体90、トナー粒子9を得ることができる。その結果、吐出される粒状の分散液6(液滴)同士の衝突、凝集がより効果的に防止される。
【0104】
また、ガス流供給手段10から供給されたガスをガス噴射口7から噴射することにより、搬送部3において、ほぼ一方向(図中、下方向)に流れるガス流を形成することができる。このようなガス流が形成されると、搬送部3内の粒状の吐出物(分散液6、凝集体90)をより効率良く搬送することができる。
また、ガス噴射口7からガスが噴射されることにより、各ヘッド部2から吐出される粒子(吐出物)の間に気流カーテンが形成され、例えば、隣り合うヘッド部から吐出された各粒子間での衝突、凝集をより効果的に防止することが可能となる。
【0105】
また、ガス流供給手段10には、熱交換器11が取り付けられている。これにより、ガス噴射口7から噴射されるガスの温度を好ましい値に設定することができ、搬送部3に吐出された粒状の分散液6を効率良く固化させることができる。
また、このようなガス流供給手段10を有すると、ガス流の供給量を調整すること等により、吐出部23から吐出された分散液6の固化速度(分散液6からの分散媒の除去速度等)等を容易にコントロールすることも可能となる。
【0106】
ガス噴射口7から噴射されるガスの温度は、分散液6中に含まれる分散質61、分散媒62の組成等により異なるが、通常、0〜70℃であるのが好ましく、15〜60℃であるのがより好ましい。ガス噴射口7から噴射されるガスの温度がこのような範囲の値であると、得られる凝集体90、トナー粒子9の形状の均一性、安定性を十分に高いものとしつつ、分散液6中に含まれる分散媒62を効率良く除去することができる。
【0107】
また、ガス噴射口7から噴射されるガスの湿度は、例えば、50%RH以下であるのが好ましく、10%RH以下であるのがより好ましい。ガス噴射口7から噴射されるガスの湿度が50%RH以下であると、後述する搬送部3(特に、第1の領域32)において、分散液6に含まれる分散媒62を効率良く除去することが可能となり、トナーの生産性がさらに向上する。
【0108】
搬送部3は、筒状のハウジング31で構成されており、吐出物の搬送方向に沿って(吐出部23から回収部5の方向に向かって)、第1の領域32と、第2の領域33とを有している。第1の領域32においては、液滴状の分散液6から分散媒62を除去し、凝集体90を形成する分散媒除去工程(分散媒除去処理)が行われる。また、第2の領域33においては、凝集体90を構成する複数個の分散質同士を接合させる接合工程(接合処理)が行われる。特に、本実施形態では、前述したように、第2の領域33において、接合工程(接合処理)が行われるとともに、吐出物(凝集体90)に紫外線を照射する紫外線照射工程(紫外線照射処理)が行われる。すなわち、本実施形態では、接合処理と紫外線照射処理とを同一の工程(同じ第2の領域)で行う。
【0109】
第1の領域32は、通常、第2の領域33の温度より低い温度に設定されている。
第1の領域(低温領域)32の温度(分散媒除去工程における処理温度)は、分散液6中に含まれる分散質61、分散媒62の組成等により異なるが、通常、0〜50℃であるのが好ましく、15〜40℃であるのがより好ましい。第1の領域32の温度(雰囲気温度)がこのような範囲の値であると、得られる凝集体90の形状の均一性、安定性を十分に高いものとしつつ、分散液6中に含まれる分散媒62を効率良く除去することができ、結果として、トナーの生産性を特に優れたものとすることができる。また、凝集体90の形成をより円滑に進行させることができるため、トナー製造装置1の小型化に寄与することができる。
【0110】
また、第1の領域32の温度(分散媒除去工程における処理温度)をT[℃]、分散質61を構成する樹脂材料のガラス転移点をT[℃]としたとき、0≦T−T≦70の関係を満足するのが好ましく、0≦T−T≦50の関係を満足するのがより好ましく、10≦T−T≦40の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、得られる凝集体90の形状の均一性、安定性を十分に高いものとしつつ、分散液6中に含まれる分散媒62を効率良く除去することができ、結果として、トナーの生産性を特に優れたものとすることができる。なお、分散質61が複数種の樹脂材料(樹脂成分)で構成されたものである場合、Tとして、これらの各成分の重量基準の加重平均値として求められる値を採用することができる。
【0111】
上記のような分散媒除去工程の処理時間(分散液6液滴状に噴射されてから凝集体90が形成されるまでの時間)は、5〜120秒であるのが好ましく、10〜60秒であるのがより好ましく、10〜20秒であるのがさらに好ましい。分散媒除去工程の処理時間がこのような範囲内の値であると、得られる凝集体90の強度を十分なものとしつつ(トナー粒子9が製造されるまでに凝集体90が分解、崩壊するのを十分に防止しつつ)、トナーとしての生産性を十分に高めることができる。
【0112】
ヘッド部2から吐出された粒状の分散液6は、第1の領域32を搬送されつつ分散媒62が除去されることにより、複数個の分散質61が凝集した凝集体90となる。すなわち、吐出された分散液6中の分散媒62が除去されるのに伴い、分散液6中に含まれる分散質61が凝集し、その結果、凝集体90が得られる。なお、分散質61中に前述したような溶媒が含まれる場合には、通常、当該溶媒も第1の領域32において除去される。
【0113】
本工程で得られる凝集体90(分散媒除去処理を施された吐出物)は、分散媒62の大部分が除去されているため、後述する接合工程に供されるまでの間、その形状を十分に保持することができる。言い換えると、本工程で得られる凝集体90は、接合工程に供されるまでの間、その形状を保持するだけの安定性を有していればよく、例えば、その内部に分散媒62の一部が残存していてもよい。このような場合であっても、後述するような接合工程等を行うことにより、残存する分散媒等を十分に除去することができる。通常、本工程で得られる凝集体90中に含まれる分散媒の構成成分の割合は、15wt%以下となっている。
【0114】
分散液6中に含まれる分散質61の粒径は、通常、得られる凝集体90(吐出される粒状の分散液6)に比べて、十分に小さいものである。言い換えると、得られる凝集体90(吐出される粒状の分散液6)中には、多数個の分散質61が含まれている。したがって、得られる凝集体90は、比較的円形度の大きいものとなる。
また、搬送部3(第1の領域32)内において分散媒62が除去されるため、得られる凝集体90は、通常、吐出部23から吐出される液滴状の分散液6(吐出物)に比べて小さいものとなる。このため、吐出部23の面積(開口面積)が比較的大きい場合であっても、得られる凝集体90の大きさを比較的小さいものとすることができる。したがって、ヘッド部2が、特別な精密加工を施すことにより得られたものでなくても(比較的容易に製造できるものであっても)、十分に微細な凝集体90、トナー粒子9を得ることができる。
また、上記のように、吐出部23の面積を極端に小さくする必要がないので、比較的容易に、各ヘッド部2から吐出される分散液6の粒度分布を、十分にシャープなものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナーも、各粒子間(トナー粒子間)での粒径のばらつきの小さいもの、すなわち、粒度分布がシャープなものとなる。
【0115】
第1の領域32で形成された凝集体90(分散媒62が除去された吐出物)は、第2の領域(高温領域)33に送り込まれ、この領域で、凝集体90を構成する複数個の分散質61が接合される(接合工程)。このような処理(接合処理)が施されることにより、機械的安定性に優れたトナー粒子9を得ることができる。すなわち、前述した凝集体90は、それを構成する分散質61間の結合の強度(分散質61−分散質61間の結合強度)が比較的小さいため、比較的小さな外力が加わった場合であっても、崩壊(分解)が起こり易いが、接合処理を施すことにより、機械的安定性に優れたトナー粒子9を得ることができる。また、凝集体90は、その表面付近に、分散液6中の分散質61の形状に対応する多数の凹凸を有しており、このため、凝集体90の円形度は比較的大きいものであるが、凝集体90に接合処理を施すことにより、上記のような凹凸を緩和することができ、最終的に得られるトナー粒子9の円形度をより大きなものとすることができる。
【0116】
接合処理(接合工程)は、前述した分散媒除去工程における処理温度以上の温度で、凝集体90に熱処理を施すことにより行うのが好ましい。これにより、容易かつ確実に、凝集体90を構成する複数個の分散質61の接合をより効果的に進行させることができる。
より具体的には、分散媒除去工程における処理温度(第1の領域32の温度)をT[℃]、接合工程における処理温度(第2の領域33の温度)をT[℃]としたとき、0≦T−T≦200の関係を満足するのが好ましく、10≦T−T≦200の関係を満足するのがより好ましく、20≦T−T≦100の関係を満足するのがさらに好ましく、25≦T−T≦80の関係を満足するのが最も好ましい。このような関係を満足することにより、構成成分の劣化、変性を十分に防止しつつ、得られるトナー粒子9の形状の均一性、安定性を十分に高いものとし、さらに、トナー粒子9の円形度を比較的大きいものとすることができる。
【0117】
また、接合工程(接合処理)における処理温度をT[℃]、分散質61(凝集体90を構成する分散質61)を構成する樹脂材料の融点をT[℃]としたとき、−100≦T−T≦110の関係を満足するのが好ましく、−80≦T−T≦80の関係を満足するのがより好ましく、−50≦T−T≦70の関係を満足するのがさらに好ましく、−40≦T−T≦30の関係を満足するのが最も好ましい。このような関係を満足することにより、構成成分の劣化、変性を十分に防止しつつ、得られるトナー粒子9の形状の均一性、安定性を十分に高いものとし、さらに、トナー粒子9の円形度を比較的大きいものとすることができる。なお、分散質61(凝集体90を構成する分散質61)を構成する樹脂材料が複数種の樹脂材料(樹脂成分)で構成されたものである場合、Tとして、これらの各成分の重量基準の加重平均値として求められる値を採用することができる。
【0118】
また、接合工程(接合処理)における処理温度(第2の領域33の温度)の具体的な値は、特に限定されないが、接合工程(接合処理)の処理時間が後述するような範囲内の値である場合、通常、50〜200℃であるのが好ましく、60〜150℃であるのがより好ましい。このような関係を満足することにより、構成成分の劣化、変性を十分に防止しつつ、得られるトナー粒子9の形状の均一性、安定性を十分に高いものとし、さらに、トナー粒子9の円形度を比較的大きいものとすることができる。
【0119】
上記のような接合工程(接合処理)の処理時間は、特に限定されないが、接合工程(接合処理)の処理温度が前述したような範囲内の値である場合、0.01〜10秒であるのが好ましく、0.05〜10秒であるのがより好ましく、0.1〜5秒であるのがさらに好ましい。接合工程の処理時間がこのような範囲内の値であると、トナーの構成材料の劣化、変性等を十分に防止しつつ、トナー粒子9の円形度を十分に大きいものとすることができる。
また、上述したように、第2の領域においては、上記のような接合工程(接合処理)を行うとともに、吐出物(凝集体90または凝集体90を構成する複数の分散質が接合した接合体)に紫外線を照射する(紫外線照射処理)。
【0120】
このように、本発明では、分散液を用いた製造方法において、紫外線を照射する点に特徴を有する。上述したように、トナーの構成材料を含む分散液においては、一般に、分散剤が含まれているが、当該分散剤を紫外線の照射で分解除去することにより、帯電特性に優れ、かつ、均一な形状を有し、粒度分布の小さいトナーを、効率良く、また、環境に優しい方法で製造することができる。また、分散剤を紫外線の照射で分解することにより、最終的に得られるトナーは、環境特性(耐水性、保存性)にも優れたものとなる。
【0121】
これに対し、分散剤の除去を行わないと、最終的に得られるトナーにおいて、満足のいく帯電特性を得るのが困難となり(より具体的には、トナー粒子の帯電量の絶対値を十分に大きなものとするのが困難であったり、各トナー粒子間での帯電特性(帯電量)のばらつきが大きくなり易くなり)、また、環境特性(耐水性、保存性)にも劣ったものとなる。これは、残存する分散剤が、トナー樹脂や帯電制御剤等の帯電を中和(阻害)してしまうこと等によるものと考えられる。
【0122】
ところで、紫外線を用いない方法でも、例えば、得られたトナー粒子に対して、水洗等の処理を施すことにより、前述したような帯電量の絶対値の低下の度合いを抑制することも考えられるが、このような場合、トナー粒子の洗浄には、多量の水(洗浄剤)が必要になり、環境への負荷が大きい。また、上記のような洗浄を十分に行ったとしても、上記のような問題を十分に解決することは困難であり、また、各粒子間での帯電量のばらつきが大きくなってしまう。
【0123】
また、分散剤の除去に紫外線を用いることにより、以下のような効果も得られる。
すなわち、分散剤の除去に紫外線を用いた場合、分散剤は、通常、低分子量化合物(例えば、二酸化炭素、水、窒素等)まで分解(低分子化)される。このため、分散剤の分解物は、容易に揮発してしまい、最終的に得られるトナー中に分解物が残存することによる悪影響も極めて起こり難い。
【0124】
また、分散剤は、分散液中における分散質の分散性を向上させる機能を有するものであり、一般に、分散質の表面付近に偏在している。特に、本発明では、アクリル系樹脂と、所定の部分構造を備えた分子構造を有する分散剤とを併用することにより、分散剤を分散質の表面付近により効率良く偏在させることができる。言い換えると、分散剤は、分散質の内部や、分散媒中での濃度に比べて、分散質の表面付近における濃度(存在確率)が高くなっている。したがって、吐出物(複数個の分散質の集合体としての凝集体等)に紫外線を照射することにより、分散質(吐出物を構成する分散質)の表面付近に偏在する分散剤を選択的に分解除去し、分散質を構成するトナーの構成材料(トナー中に含まれるべき成分)が劣化分解するのを、容易かつ確実に防止することができる。
【0125】
また、本発明では、分散剤として、紫外線による分解反応を受け易い分子構造を有するものを用いることにより、紫外線照射による樹脂材料への悪影響(分解劣化等)の発生をより効果的に防止しつつ、分散剤を効率良く(選択的に)除去することができる。すなわち、紫外線照射処理において、樹脂材料の分解劣化等が実質的に生じないような条件で紫外線を照射し、分散剤を選択的に分解することができる。
【0126】
また、特に、本実施形態のように、吐出物(分散液6)から分散媒62を除去した後、吐出物(凝集体90)を構成する複数個の分散質を接合する工程において紫外線を照射する、すなわち、接合処理と紫外線照射処理とを同一工程で行うことにより、紫外線のエネルギーを、より効率良く分散剤の分解除去に利用することができる。すなわち、紫外線は、分散媒62として用いられる水等の媒体中での透過率が比較的低いものであるが、凝集体90や接合体では、水等の分散媒62として用いられた成分の含有率(特に分散剤が付着している凝集体90を構成する分散質61や接合体の表面付近における含有率)が低くなっているため、紫外線のエネルギーを、より効率良く分散剤の分解除去に利用することができ、結果として、照射する紫外線の照射強度を比較的弱くしたり、紫外線の照射時間を短くしたりすることができる。したがって、トナーの製造コストの低減を図ることができる。また、紫外線の照射による分散剤の分解除去が行われる際、一般に、反応熱が発生する。したがって、本実施形態のような構成にすることにより、前記反応熱を分散質61の接合に有効利用することができ、トナーの製造コストの更なる低減を図ることができ、また、省エネの観点からも有利である。
【0127】
紫外線は、紫外線照射手段(光源)12により、搬送部3内を搬送される吐出物、特に、第2の領域33に搬送された吐出物に照射されるような構成になっている。
吐出物に照射される紫外線のピーク波長(紫外線の照射スペクトルにおいて最大照射強度を示す波長)は、100〜400nmであるのが好ましく、200〜400nmであるのがより好ましく、200〜350nmであるのがさらに好ましく、200〜300nmであるのがもっとも好ましい。紫外線のピーク波長が前記範囲内の値であると、トナーの構成成分(特に、結着樹脂等)の劣化をより確実に防止しつつ、分散剤をより効率良く分解することができる。これに対し、紫外線のピーク波長が前記下限値未満であると、分散剤の含有率、種類等によっては、樹脂材料の分解劣化等を十分に防止するのが困難になる可能性がある。また、紫外線のピーク波長が前記上限値を超えると、分散剤の含有率、種類等によっては、分散剤を十分に分解除去するのが困難となる可能性がある。
【0128】
また、照射する紫外線のピーク波長をλ[nm]としたとき、前記λ[nm]との間で、−100≦λ−λ≦200の関係を満足するのが好ましく、−50≦λ−λ≦100の関係を満足するのがより好ましく、0≦λ−λ≦50の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、樹脂材料の劣化をより確実に防止しつつ、分散剤をより効率良く分解することができる。これに対し、λ−λの値が前記下限値未満であると、分散剤の含有率、種類、λの値等によっては、樹脂材料の分解劣化等を十分に防止するのが困難になる可能性がある。また、λ−λの値が前記上限値を超えると、分散剤の含有率等によっては、分散剤を十分に分解除去するのが困難となる可能性がある。
【0129】
また、紫外線の照射時間は、0.01〜60分間であるのが好ましく、0.1〜8分間であるのがより好ましく、1〜5分間であるのがさらに好ましい。紫外線の照射時間が前記範囲内の値であると、トナーの構成成分(特に、結着樹脂等)の劣化をより確実に防止しつつ、分散剤をより効率良く分解することができる。これに対し、紫外線の照射時間が前記下限値未満であると、分散剤の含有率、種類等によっては、分散剤を十分に分解除去するのが困難となる可能性がある。また、紫外線の照射時間が前記上限値を超えると、分散剤の含有率、種類等によっては、トナーの構成成分(特に、結着樹脂等)の劣化等を起こす可能性がある。
また、紫外線の照射は、連続的に行うものであっても、間欠的(非連続的)に行うものであってもよい。
【0130】
搬送部3を構成するハウジング31の内壁面(特に、第2の領域33を構成する部分の内壁面)は、紫外線の反射率の高い材料(紫外線反射材料)で構成されているのが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリカーボネート、酸化チタン等が挙げられる。搬送部3を構成するハウジング31の内壁面(特に、第2の領域33を構成する部分の内壁面)が、上記のような材料で構成されることにより、紫外線照射手段12から出射された紫外線を効率良く吐出物(凝集体90、接合体、液滴状の分散液6)に照射することができ、分散剤をより効率良く除去することができる。また、同様に、ヘッド部2の吐出部(吐出口)23が形成されている側の面も、上記と同様な材料で構成されていてもよい。これにより、前述した効果はさらに顕著なものとなる。また、ハウジング31の内壁面のうち、紫外線を照射すべき領域(本実施形態では第2の領域33)の内壁面を上記のような紫外線の反射率の高い材料(紫外線反射材料)で構成し、それ以外の領域の内壁面を紫外線の反射率の低い材料で構成することにより、吐出物に対する紫外線の照射時間等の制御をより確実に行うことができる。
【0131】
第1の領域32、第2の領域33の温度を所定の範囲に保つ目的で、例えば、ハウジング31(第1の領域32、第2の領域33)の内側または外側に熱源、冷却源を設置したり、ハウジング31を、熱媒体または冷却媒体の流路が形成されたジャケットとしてもよい。
また、ハウジング31(第1の領域32、第2の領域33)内の圧力は、前述したガス流供給手段10により供給されるガスの供給量や、後述する排気手段14の吸気量(排気量)等により、調整される構成になっている。このように、ハウジング31内の圧力を調整することにより、より効率良く凝集体90、トナー粒子9を形成することができ、結果として、トナーの生産性が向上する。
【0132】
ハウジング31内の圧力は、特に限定されないが、150kPa以下であるのが好ましく、100〜120kPaであるのがより好ましく、100〜110kPaであるのがさらに好ましい。ハウジング31内の圧力が前記範囲内の値であると、例えば、吐出物からの急激な分散媒62の除去(突沸現象)等を効果的に防止することができ、異形状のトナー粒子9の発生等を十分に防止しつつ、より効率良くトナー粒子9を製造することができる。なお、ハウジング31内の圧力は、各部位でほぼ一定であってもよいし、各部位で異なるものであってもよい。例えば、第1の領域32と第2の領域33とで、圧力が異なるような構成であってもよい。
また、ハウジング31には、電圧を印加するための電圧印加手段8が接続されている。電圧印加手段8で、ハウジング31の内面側に、粒状の吐出物(分散液6、凝集体90)と同じ極性の電圧を印加することにより、これにより、以下のような効果が得られる。
【0133】
通常、トナー粒子や、その製造中間体としての凝集体90等は、正または負に帯電している。このため、凝集体90と異なる極性に帯電した帯電物があると、凝集体90は、当該帯電物に、静電的に引き付けられ付着するという現象が起こる。一方、凝集体90と同じ極性に帯電した帯電物があると、当該帯電物と凝集体90とは、互いに反発しあい、前記帯電物表面に凝集体90が付着するという現象を効果的に防止することができる。したがって、ハウジング31の内面側に、粒状の吐出物(分散液6、凝集体90)と同じ極性の電圧を印加することにより、ハウジング31の内面に吐出物(分散液6、凝集体90)が付着するのを効果的に防止することができる。これにより、異形状のトナー粒子の発生をより効果的に防止することができるとともに、トナー粒子9の回収効率も向上する。
【0134】
また、ハウジング31は、回収部5側(吐出物の搬送方向の下流側)に、図1中の下方向(吐出物の搬送方向の下流側)に向けて、その内径が小さくなる縮径部311を有している。このような縮径部311が形成されることにより、トナー粒子9の回収を効率良く回収することができる。なお、前述したように、吐出部23から吐出された分散液6(吐出物)は、搬送部3において、凝集体90を経て、トナー粒子9となるが、縮径部311付近においてはこのようなトナー粒子9の形成はほぼ完全に完了しており、各粒子が接触しても凝集等の問題はほとんど発生しない。
【0135】
そして、上記のようにして形成されたトナー粒子9は、サイクロン15に導入される。サイクロン15は、回収部5に接続されるとともに、トナー粒子9等の吸い込みを防止するバグフィルタ16を介して排気手段14にも接続されている。このような構成により、搬送部3内での吐出物の搬送速度をより好適に調整することができ、製造されたトナー粒子9を回収部5で効率良く回収することができる。
【0136】
以上のようにして得られたトナーに対しては、必要に応じて、熱処理等の各種処理を施してもよい。これにより、トナー粒子9を構成する分散質の接合を進行させ、トナー粒子9の機械的強度(機械的安定性)をさらに優れたものとしたり、トナー粒子9中に含まれる含水量を低下させることができる。また、得られたトナーに対してエアレーション等の処理を施したり、トナーを減圧雰囲気下に放置すること等によっても、上記と同様に、トナー粒子9中に含まれる含水量を低下させることができる。
【0137】
また、上記のようなトナーに対しては、必要に応じて、分級処理、外添処理等の各種処理を施してもよい。
分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
また、外添処理に用いられる外添剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、チタニア、酸化亜鉛、アルミナ、マグネタイト等の金属酸化物、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、脂肪族金属塩等の無機材料で構成された微粒子(無機微粒子)、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族金属塩等の有機材料で構成された微粒子(有機微粒子)やこれらの複合物で構成された微粒子(複合微粒子)等が挙げられる。前記複合微粒子としては、前記無機材料で構成された微粒子(粒状体)に前記有機材料で構成された被覆層が設けられた微粒子や、前記有機材料で構成された微粒子(粒状体)に前記無機材料で構成された被覆層が設けられた微粒子等が挙げられる。
また、外添剤としては、その表面に、HMDS、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、フッ素含有シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施したものを用いてもよい。
【0138】
以上のようにして製造される本発明のトナーは、均一な形状を有し、粒度分布のシャープな(幅の小さい)ものである。特に、本発明では、真球に近い形状のトナー粒子を得ることができる。
具体的には、トナー(トナー粒子)は、下記式(I)で表される平均円形度Rが0.95以上であるのが好ましく、0.96以上であるのがより好ましく、0.97以上であるのがさらに好ましく、0.98以上であるのが最も好ましい。平均円形度Rが0.95以上であると、トナーの転写効率は、さらに優れたものとなる。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円(完全な幾何学的円)の周囲長を表す。)
【0139】
また、トナーは、各粒子間(トナー粒子間)での平均円形度の標準偏差が0.02以下であるのが好ましく、0.015以下であるのがより好ましく、0.01以下であるのがさらに好ましい。各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.02以下であると、帯電特性、定着特性等のばらつきが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
【0140】
以上のようにして得られるトナーの重量基準の平均粒径は、2〜20μmであるのが好ましく、4〜10μmであるのがより好ましい。トナーの平均粒径が前記下限値未満であると、均一に帯電させるのが困難になるとともに、静電潜像担持体(例えば、感光体等)表面への付着力が大きくなり、結果として、転写残トナーの増加を招く場合がある。一方、トナーの平均粒径が前記上限値を超えると、トナーを用いて形成される画像の輪郭部分、特に文字画像やライトパターンの現像での再現性が低下する。
【0141】
また、トナーは、各粒子間(トナー粒子間)での粒径の標準偏差が1.5μm以下であるのが好ましく、1.3μm以下であるのがより好ましく、1.0μm以下であるのがさらに好ましい。各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下であると、帯電特性、定着特性等のばらつきが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
また、トナー粒子9の含水量(含水率)は、特に限定されないが、5wt%以下であるのが好ましく、0.01〜4wt%であるのがより好ましく、0.02〜1wt%であるのがさらに好ましい。トナー粒子9中の含水量が多過ぎると、帯電が不安定になるという問題を生じる可能性がある。なお、トナー粒子9中の含水量を極端に少なくしようとすると、トナーの構成材料の劣化、変性等を招きやすくなるため、必要以上に含水量を少なくする必要はない。
【0142】
《第2実施形態》
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、本実施形態について、前述した実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図3は、本発明のトナーの製造に用いられるトナー製造装置の第2実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【0143】
本実施形態のトナー製造装置1’では、搬送部3’が、液滴状の分散液6から分散媒62を除去し凝集体90を得る(分散媒除去工程を行う)第1の領域32と、凝集体90を構成する複数個の前記分散質同士を接合させ、接合体95を得る第2の領域33’とを有しており、第2の領域33’で形成された接合体95がサイクロン15に導入される構成になっている。また、本実施形態のトナー製造装置1’では、サイクロン15から排出された接合体95が、ダブルダンパー18を介して搬送手段17に供給され、搬送手段17で搬送される接合体95に対して、紫外線照射手段12により紫外線を照射することによりトナー粒子9を製造し、製造されたトナー粒子9を回収部5で回収する構成になっている。このように、一旦、接合体95を回収することにより、紫外線照射手段から出射される紫外線をより効率良く粒子(接合体)に照射することができる。すなわち、一旦、接合体95を回収することにより、接合体95−接合体95間の距離を小さくすることができ、紫外線照射手段12から出射される紫外線の照射範囲が比較的狭い場合であっても、各接合体95に効率良く紫外線を照射することができる。言い換えると、接合体95を一旦回収することにより、紫外線照射手段12と接合体95との距離が比較的短い場合であっても、各接合体95に効率良く紫外線を照射することができる。したがって、紫外線照射手段12から出射される紫外線の強度が比較的弱い場合であっても、効率良く分散剤を分解除去することができる。また、搬送手段17で搬送される接合体95には、例えば、図示しない振動手段により、微振動を与えてもよい。これにより、接合体95の外表面全体に対して、より均等に紫外線を照射することができる。その結果、分散剤をより確実に除去することができ、得られるトナーはより信頼性に優れたものとなる。
【0144】
《第3実施形態》
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下、本実施形態について、前述した実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図4は、本発明のトナーの製造に用いられるトナー製造装置の第3実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【0145】
本実施形態のトナー製造装置1’’は、接合体95を収納する(貯留する)接合体収納部19と、接合体95に紫外線照射処理を施す紫外線照射処理部20とを備えている。
トナー製造装置1’’では、サイクロン15から排出された接合体95が、ダブルダンパー18を介して接合体収納部19に供給され、この接合体収納部19に蓄えられる。そして、接合体収納部19に所定量の接合体95が貯まったら、閉じられていた弁191を開くことにより、接合体収納部19内の接合体95が紫外線照射処理部20に供給される。次に、再び弁191を閉じ、その後紫外線照射処理部20内の攪拌手段(プロペラ)201を回転させつつ、紫外線照射手段12から紫外線を照射する。これにより、接合体95に付着している分散剤が分解除去され、トナー粒子9となる。このように、本実施形態では、一旦回収した(貯留された)所定量の接合体95に対して、バッチ式で紫外線照射処理を行う。これにより、所定量のトナーを製造する場合における紫外線の照射時間を短縮し、紫外線の照射量を少なくすることができる。また、紫外線照射手段12から出射する紫外線のエネルギーを接合体95に効率良く付与することができるため、省エネや、トナー製造装置の構成部材の長寿命化等の観点からも優れている。また、本実施形態では、接合体95を攪拌しつつ、紫外線を照射するため、接合体95の外表面全体に対して、より均一に紫外線を照射することができる。その結果、最終的に得られるトナーの信頼性はさらに向上する。
【0146】
所定時間紫外線を照射した後、紫外線照射手段12からの紫外線の照射、および、攪拌手段201による攪拌を停止させる。その後、注入弁202、輸送弁203を開き、注入弁202側から輸送弁203側への気流(ガス流)を発生させ、紫外線照射処理部20内のトナー粒子9を回収部5に送り込む。紫外線照射処理部20内における気流(注入弁202側から輸送弁203側への気流)は、例えば、注入弁202側に設けられたガス供給手段30から、紫外線照射処理部20内にガスを送り込んだり、輸送弁203側に設けられた排気手段40により、紫外線照射処理部20内のガスを排気すること等により、形成することができる。なお、ガス供給手段30と紫外線照射処理部20内との間には、異物の混入を防止するためのフィルタ(図示せず)が設けられている。また、排気手段40と紫外線照射処理部20内との間には、トナー粒子の吸い込みを防止するためのフィルタ(図示せず)が設けられている。
【0147】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、トナー製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、前記第1実施形態では、搬送部の第2の領域において、紫外線を吐出物(分散液、凝集体)に照射するものとして説明したが、例えば、紫外線は、搬送部のほぼ全長にわたって、吐出物(分散液、凝集体等)に紫外線を照射するような構成にしてもよい。また、トナー製造装置は、複数の紫外線照射手段を備えるものであってもよい。例えば、トナー製造装置は、第1の領域において吐出物に紫外線を照射する第1の紫外線照射手段と、第2の領域において吐出物に紫外線を照射する第2の紫外線照射手段とを備えるものであってもよい。
【0148】
また、前述した実施形態では、分散媒除去処理(分散媒除去工程)、紫外線照射処理(紫外線照射工程)、接合処理(接合工程)を同一の装置を用いて連続的に行うものとして説明したが、これらの処理のうち少なくとも1つは、別の装置で行ってもよい。例えば、微粒子状に吐出した分散液から分散媒を除去して得られる凝集体を一旦回収し、当該凝集体に対して、他の装置を用いて紫外線照射処理を施してもよい。同様に凝集体を構成する分散質(分散質由来の微粒子)を接合して接合体とし、これを一旦回収した後、当該接合体に対して、他の装置を用いて紫外線照射処理を施してもよい。また、同様に、紫外線が照射された(分散剤が除去された)凝集体を一旦回収した後、当該凝集体に対して、他の装置を用いて接合処理を施してもよい。これらの場合であっても、上記と同様な効果が得られる。また、製造工程の中間体として得られる凝集体等を一旦回収した後、再度、同一の装置を用いて後の処理を行ってもよい。
【0149】
また、前述した実施形態では、紫外線照射工程(紫外線照射処理)を、接合工程(接合処理)とともに、または、接合工程(接合処理)の後に、行うものとして説明したが、紫外線照射工程(紫外線照射処理)のタイミングは、上記のようなものに限定されない。例えば、紫外線照射工程(紫外線照射処理)は、分散媒除去工程(分散媒除去処理)の前工程(前処理)として行うものであってもよい。すなわち、分散液の吐出後、実質的に分散媒が除去する前に(冷却等により、分散媒が実質的に除去されないような条件に保持しつつ)、吐出された分散液に紫外線を照射するような構成にしてもよい。また、紫外線照射工程(紫外線照射処理)は、分散媒除去工程(分散媒除去処理)とともに行うものであってもよいし、分散媒除去工程(分散媒除去処理)と接合工程(接合処理)との中間工程(中間処理)として行うものであってもよい。
また、前述した第3実施形態では、トナー製造装置が、攪拌手段としてプロペラを有するものとして説明したが、攪拌手段はこれに限定されず、気流を発生させる気流発生手段であってもよい。言い換えると、紫外線照射処理は、例えば、流動層中(気流中)で粉体を攪拌する装置、いわゆる、エアレーション装置等を用いて行ってもよい。
【0150】
また、本発明においては、分散剤として、上述したような部分構造を備えた分子構造を有するものを用いればよく、例えば、上述したような部分構造を備えていない分子構造の物質を分散剤の構成成分として併用してもよい。このような場合、分散剤全体における、上述したような部分構造を備えた分子構造を有するものの含有率は、50wt%以上であるのが好ましく、80wt%以上であるのが好ましく、90〜100wt%であるのがさらに好ましい。
【0151】
また、図5に示すように、ヘッド部2に、音響レンズ(凹面レンズ)25が設置されていてもよい。このような音響レンズ25が設置されることにより、例えば、圧電素子22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)を、吐出部23付近の圧力パルス収束部26で収束させることができる。その結果、圧電素子22が発生した振動エネルギーを、分散液6を吐出させるためのエネルギーとして、効率よく利用することができる。したがって、分散液貯留部21に貯留された分散液6が比較的高粘度のものであっても、確実に吐出部23から吐出させることができる。また、分散液貯留部21に貯留された分散液6が凝集力(表面張力)の比較的大きいものであっても、微細な液滴として吐出することが可能となるため、容易かつ確実に、トナー粒子9の粒径を比較的小さい値にコントロールすることができる。
このように、図示のような構成とすることにより、分散液6として、より粘度の高い材料や、凝集力の大きい材料を用いた場合であっても、トナー粒子9を所望の形状、大きさにコントロールすることができるので、材料選択の幅が特に広くなり、所望の特性を有するトナーをさらに容易に得ることができる。
【0152】
また、図示のような構成とした場合、収束した圧力パルスにより分散液6を吐出させるため、吐出部23の面積(開口面積)が比較的大きい場合であっても、吐出する分散液6の大きさを比較的小さいものにすることができる。すなわち、トナー粒子9の粒径を比較的小さくしたい場合であっても、吐出部23の面積を大きくすることができる。これにより、分散液6が比較的高粘度のものであっても、吐出部23における目詰まりの発生等をより効果的に防止することができる。
【0153】
音響レンズとしては、凹面レンズに限定されず、例えば、フレネルレンズ、電子走査レンズ等を用いてもよい。
さらに、図6〜図8に示すように、音響レンズ25と吐出部23との間に、吐出部23に向けて、収斂する形状を有する絞り部材13等を配置してもよい。これにより、圧電素子22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)の収束を補助することができ、圧電素子22が発生した圧力パルスをさらに効率よく利用することができる。
また、前述した実施形態では、トナーの構成成分が固形成分として、分散質中に含まれるものとして説明したが、トナーの構成成分の少なくとも一部は、分散媒中に含まれていてもよい。
【0154】
また、前述した実施形態では圧電パルスによりヘッド部から分散液を間欠的に吐出するものとして説明したが、分散液の吐出方法(噴射方法)としては、他の方法を用いることもできる。例えば、分散液を吐出(噴射)する方法としては、スプレードライ法や、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法等の方法のほか、「分散液を、ガス流で平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄層流とし、当該薄層流を前記平滑面から離して微小な液滴として噴射するようなノズルを用いて、分散液を液滴状に噴射する方法(特願2002−321889号明細書に記載されたような方法)」等を用いてもよい。スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、液体(分散液)を噴射(噴霧)させることにより、液滴を得る方法である。また、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法を適用した方法としては、特願2002−169348号明細書に記載された方法等が挙げられる。すなわち、分散液を吐出(噴射)する方法として、「気体の体積変化によりヘッド部から分散液を間欠的に吐出する方法」を適用することができる。
【0155】
また、上記の説明では、分散媒除去工程中および/または分散媒除去工程の後に(分散液を液滴状の吐出物として吐出した後に)紫外線を照射するものとして説明したが、例えば、分散液の吐出物ではなく、容器内の分散液に紫外線を照射してもよい(バッチ式で紫外線を照射してもよい)。より具体的には、所望の大きさの分散質(製造すべきトナー母粒子に相当する大きさに調節された分散質)を含む容器内の分散液(例えば、重合法等により調製されたトナー粒子に相当する分散質を含む分散液)に対して紫外線を照射してもよい。これにより、分散液中の分散剤は、分解除去される。このように、容器内の分散液中において分散剤が除去されると、分散質は、分散状態を保持することができず、沈降または液面付近に浮上することになるが、例えば、その後、分散質を濾別することにより、トナー粒子(トナー母粒子)に相当する粒子を得ることができる。その後、必要に応じて、乾燥等の各種処理を施してもよい。このような方法を採用することにより、より単純な構成の装置を用いて(大型の装置を用いることなく)、トナーを効率良く製造することができる。
【0156】
また、前述した実施形態では、本発明のトナー製造装置は、トナーそのものの製造に用いるものとして説明したが、これに限定されず、トナー製造用の粉末の製造に用いることができるものであればよい。例えば、本発明のトナー製造装置は、トナー母粒子となるべき粉末を製造するもの(トナー母粒子製造装置)、分散液から分散剤が除去された凝集体を製造するもの(凝集体製造装置)、分散剤が除去されていない凝集体から分散剤が除去された接合体を製造するもの(接合体製造装置)等であってもよい。
【実施例】
【0157】
[1]トナーの製造
(実施例1)
まず、結着樹脂としてのアクリル系樹脂(ガラス転移点Tg:56℃、降下式フローテスター軟化温度:115℃、融点:240℃):200重量部と、着色剤としてのフタロシアニン顔料(大日精化社製、フタロシアニンブルー):12重量部と、帯電制御剤としてのボントロンE−84(オリエント化学工業社製):3重量部との混合物を用意した。
一方、ポリアクリル酸ナトリウム:30重量部と、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム:0.5重量部とをイオン交換水:569.5重量部に溶解した水溶液(水性溶液)を用意した。
【0158】
次に、この水溶液:600重量部を3リットルの丸底ステンレス容器に入れ、100℃となるように加熱しつつ、回転数:4000rpmで攪拌した。この状態の水溶液中に、前記混合物(アクリル系樹脂、着色剤および帯電制御剤の混合物):215重量部を少量づつ投入し、混合物の投入完了後、さらに5分間攪拌した。その後、攪拌を続けながら、室温まで冷却したところ、固形の分散質が分散した結着樹脂懸濁液(分散液)が得られた。
【0159】
なお、分散剤として用いた、ポリアクリル酸ナトリウム:30重量部とアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム:0.5重量部との混合物についての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、225nmであった。また、この分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム:30重量部と、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム:0.5重量部との混合物)をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての分散剤の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、7,000[mol−1・dm・cm−1]であった。
【0160】
また、結着樹脂(樹脂材料)として用いたアクリル系樹脂についての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、210nmであった。また、このアクリル系樹脂をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての結着樹脂(樹脂材料)の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、1,000[mol−1・dm・cm−1]であった。
【0161】
その後、得られた結着樹脂懸濁液(分散液)に脱気処理を施した。脱気処理は、攪拌した状態の結着樹脂懸濁液(分散液)を、14kPaの雰囲気中に10分間置くことにより行った。脱気処理時における雰囲気温度は、25℃であった。このようにして得られた結着樹脂懸濁液(分散液)中における固形分(分散質)濃度は、38wt%であった。また、結着樹脂懸濁液(分散液)の25℃における粘度は、180cpsであった。また、結着樹脂懸濁液を構成する分散質の平均粒径Dmは、0.5μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−700)を用いて行った。
【0162】
脱気処理済みの分散液(結着樹脂懸濁液)を、図1、図2に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の分散液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から搬送部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。また、ヘッド部としては、吐出部付近に、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)コートによる疎水化処理が施されたものを用いた。
【0163】
分散液の吐出は、ヘッド部内における分散液温度を40℃、圧電体の振動数を30kHz、吐出部から吐出される分散液の初速度を3m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量を4pl(粒径Dd:10μm、重量:約4ng)に調整した状態で行った。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0164】
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口から温度:40℃、湿度:27%RH、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射した。また、ハウジング内の温度(雰囲気温度)は、吐出部に近い側の領域である第1の領域が35〜40℃、回収部に近い側の領域である第2の領域が70〜75℃となるように設定した。また、ハウジング内の圧力は、約101kPaであった。第1の領域の長さ(搬送方向の長さ)は2m、第2の領域の長さ(搬送方向の長さ)は3mであった。また、ハウジングの内壁面のうち、第2の領域に相当する部位は、酸化チタンで構成されるものとし、それ以外の部位は、ベンゾフェノン誘導体(紫外線吸収材料)で構成されるものとした。また、ハウジングの内径(縮経部を除く部位の内径)は、50cmであった。
一方、紫外線照射手段(紫外線ランプ)からは、紫外線を出射し、第2の領域において吐出物に紫外線を照射した(図1参照)。紫外線ランプが出射する紫外線のピーク波長λは、250nmであった。また、紫外線ランプのランプ強度は0.5kWであった。各吐出物に対する紫外線の照射時間は、0.3分間であった。
【0165】
その結果、搬送部内に向けて吐出された液滴状の分散液は、第1の領域において、分散媒が除去され、複数個の分散質が凝集した凝集体になった(分散媒除去工程)。その後、引き続き、凝集体は第2の領域に搬送され、この領域において、凝集体を構成する複数個の分散質が接合されるとともに、紫外線が照射され、吐出物(凝集体、接合体)の表面付近に存在する分散剤が選択的に分解除去され、トナー粒子が形成された(紫外線照射、接合工程)。そして、当該トナー粒子は、サイクロンに導入され、その後、回収部に回収された。また、個々の粒子(液滴および該液滴から形成される凝集体)についての、分散媒除去工程の処理時間(吐出物が第1の領域内を通過するのに要する時間)は、12秒、紫外線照射、接合工程の処理時間(吐出物が第2の領域内を通過するのに要する時間)は、0.5分であった。また、得られたトナー粒子の含水量は、3wt%であった。なお、水分量は、カールフィッシャー法により測定した。
その後、得られたトナー粒子に、50℃で、1時間のエアレーションを行うことにより、トナー粒子の含水量を低下させた。
【0166】
上記のようにして得られたトナー粒子は、含水量が0.6wt%、平均円形度Rが標準偏差が0.97であった。重量基準の平均粒径Dtは、8.3μmであった。重量基準の粒径標準偏差は0.30μmであった。なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を用いて、水分散系で行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象の粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象の粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0167】
(実施例2〜4)
搬送部(第2の領域)の長さを変更することにより、紫外線照射、接合工程の処理時間(吐出物への紫外線照射時間)を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例5)
紫外線照射手段(紫外線ランプ)として、出射する紫外線のピーク波長λが400nmのものを用いた以外は、前記実施例2と同様にしてトナーを製造した。
(実施例6)
紫外線照射手段(紫外線ランプ)として、出射する紫外線のピーク波長λが200nmのものを用いた以外は、前記実施例2と同様にしてトナーを製造した。
【0168】
(実施例7)
水性溶液の調製において、ポリアクリル酸ナトリウム:30重量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム:0.5重量部の代わりに、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:30重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
なお、分散剤として用いた、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムについての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、250nmであった。また、この分散剤をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての分散剤の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、15,000[mol−1・dm・cm−1]であった。
【0169】
また、結着樹脂(樹脂材料)として用いたアクリル系樹脂についての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、210nmであった。また、このアクリル系樹脂をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての結着樹脂(樹脂材料)の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、1,000[mol−1・dm・cm−1]であった。
【0170】
(実施例8)
結着樹脂溶液(樹脂液)の調製において、帯電制御剤としてのボントロンE−84を用なかった以外は、前記実施例7と同様にしてトナーを製造した。
(実施例9、10)
搬送部(第2の領域)の長さを変更することにより、紫外線照射、接合工程の処理時間(吐出物への紫外線照射時間)を表1に示すように変更した以外は、前記実施例8と同様にしてトナーを製造した。
【0171】
(実施例11)
まず、前記実施例1と同様にして、脱気処理が施された結着樹脂懸濁液(分散液)を調製した。
脱気処理済みの分散液(結着樹脂懸濁液)を、図2、図3に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の分散液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から搬送部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。また、ヘッド部としては、吐出部付近に、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)コートによる疎水化処理が施されたものを用いた。
【0172】
分散液の吐出は、ヘッド部内における分散液温度を40℃、圧電体の振動数を30kHz、吐出部から吐出される分散液の初速度を3m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量を4pl(粒径Dd:10μm、重量:約4ng)に調整した状態で行った。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0173】
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口から温度:40℃、湿度:27%RH、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射した。また、ハウジング内の温度(雰囲気温度)は、吐出部に近い側の領域である第1の領域が35〜40℃、回収部に近い側の領域である第2の領域が70〜75℃となるように設定した。また、ハウジング内の圧力は、約101kPaであった。第1の領域の長さ(搬送方向の長さ)は2m、第2の領域の長さ(搬送方向の長さ)は3mであった。
【0174】
その結果、搬送部内に向けて吐出された液滴状の分散液は、第1の領域において、分散媒が除去され、複数個の分散質が凝集した凝集体になった(分散媒除去工程)。その後、引き続き、凝集体は第2の領域に搬送され、この領域において、凝集体を構成する複数個の分散質が接合され、接合体が形成された(接合工程)。また、個々の粒子(液滴および該液滴から形成される凝集体)についての、分散媒除去工程の処理時間(吐出物が第1の領域内を通過するのに要する時間)は、12秒、接合工程の処理時間(吐出物が第2の領域内を通過するのに要する時間)は、0.5分であった。
そして、搬送部で形成された接合体は、サイクロンに導入され、その後、搬送手段(ベルトコンベア)上に供給された。
【0175】
搬送手段上においては、前記実施例1で用いたのと同様の紫外線照射手段(紫外線ランプ)を用いて、接合体に紫外線を照射し、接合体の表面付近に存在する分散剤を分解除去し、トナー粒子とした。紫外線照射手段(紫外線ランプ)が出射する紫外線のピーク波長λは、250nmであった。また、各接合体に対する紫外線の照射時間は、0.3分間であった。なお、接合体を搬送する際、搬送手段には、振動手段により微振動を与えた。
【0176】
以上のようにして製造されたトナー粒子は、回収部に回収された。得られたトナー粒子の含水量は、3wt%であった。なお、水分量は、カールフィッシャー法により測定した。
その後、得られたトナー粒子に、50℃で、1時間のエアレーションを行うことにより、トナー粒子の含水量を低下させた。
上記のようにして得られたトナー粒子は、含水量が0.6wt%、平均円形度Rが0.97、円形度標準偏差が0.011であった。重量基準の平均粒径Dtは、8.0μmであった。重量基準の粒径標準偏差は0.29μmであった。
【0177】
(実施例12〜14)
搬送手段による接合体の搬送速度を変更することにより、紫外線照射工程の処理時間(接合体への紫外線照射時間)を表2に示すように変更した以外は、前記実施例11と同様にしてトナーを製造した。
(実施例15)
紫外線照射手段(紫外線ランプ)として、出射する紫外線のピーク波長λが400nmのものを用いた以外は、前記実施例12と同様にしてトナーを製造した。
(実施例16)
紫外線照射手段(紫外線ランプ)として、出射する紫外線のピーク波長λが200nmのものを用いた以外は、前記実施例12と同様にしてトナーを製造した。
【0178】
(実施例17)
水性溶液の調製において、ポリアクリル酸ナトリウム:30重量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム:0.5重量部の代わりに、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:30重量部を用いた以外は、前記実施例11と同様にしてトナーを製造した。
【0179】
なお、分散剤として用いた、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムについての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、250nmであった。また、この分散剤をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての分散剤の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、15,000[mol−1・dm・cm−1]であった。
【0180】
また、結着樹脂(樹脂材料)として用いたアクリル系樹脂についての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、210nmであった。また、このアクリル系樹脂をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての結着樹脂(樹脂材料)の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、1,000[mol−1・dm・cm−1]であった。
【0181】
(実施例18)
結着樹脂溶液(樹脂液)の調製において、帯電制御剤としてのボントロンE−84を用なかった以外は、前記実施例17と同様にしてトナーを製造した。
(実施例19、20)
搬送手段による接合体の搬送速度を変更することにより、紫外線照射の処理時間(吐出物への紫外線照射時間)を表2に示すように変更した以外は、前記実施例18と同様にしてトナーを製造した。
【0182】
(実施例21)
まず、前記実施例1と同様にして、脱気処理が施された結着樹脂懸濁液(分散液)を調製した。
脱気処理済みの分散液(結着樹脂懸濁液)を、図2、図4に示すようなトナー製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の分散液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部の分散液貯留部に供給し、吐出部から搬送部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。また、ヘッド部としては、吐出部付近に、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)コートによる疎水化処理が施されたものを用いた。
【0183】
分散液の吐出は、ヘッド部内における分散液温度を40℃、圧電体の振動数を30kHz、吐出部から吐出される分散液の初速度を3m/秒、ヘッド部から吐出される分散液の一滴分の吐出量を4pl(粒径Dd:10μm、重量:約4ng)に調整した状態で行った。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0184】
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口から温度:40℃、湿度:27%RH、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射した。また、ハウジング内の温度(雰囲気温度)は、吐出部に近い側の領域である第1の領域が35〜40℃、回収部に近い側の領域である第2の領域が70〜75℃となるように設定した。また、ハウジング内の圧力は、約101kPaであった。第1の領域の長さ(搬送方向の長さ)は2m、第2の領域の長さ(搬送方向の長さ)は3mであった。
【0185】
その結果、搬送部内に向けて吐出された液滴状の分散液は、第1の領域において、分散媒が除去され、複数個の分散質が凝集した凝集体になった(分散媒除去工程)。その後、引き続き、凝集体は第2の領域に搬送され、この領域において、凝集体を構成する複数個の分散質が接合され、接合体が形成された(接合工程)。また、個々の粒子(液滴および該液滴から形成される凝集体)についての、分散媒除去工程の処理時間(吐出物が第1の領域内を通過するのに要する時間)は、12秒、接合工程の処理時間(吐出物が第2の領域内を通過するのに要する時間)は、0.5分であった。
そして、搬送部で形成された接合体は、サイクロンに導入され、その後、紫外線照射処理部内に供給された。
【0186】
紫外線照射処理部においては、攪拌手段(プロペラ)により接合体を攪拌しつつ、前記実施例1で用いたのと同様の紫外線照射手段(紫外線ランプ)を用いて、接合体に紫外線を照射し、接合体の表面付近に存在する分散剤を分解除去し、トナー粒子とした。紫外線照射手段(紫外線ランプ)が出射する紫外線のピーク波長λは、250nmであった。また、各接合体に対する紫外線の照射時間は、0.3分間であった。なお、攪拌手段(プロペラ)の回転数は、300rpmとした。
【0187】
以上のようにして製造されたトナー粒子は、回収部に回収された。得られたトナー粒子の含水量は、3wt%であった。なお、水分量は、カールフィッシャー法により測定した。
その後、得られたトナー粒子に、50℃で、1時間のエアレーションを行うことにより、トナー粒子の含水量を低下させた。
上記のようにして得られたトナー粒子は、含水量が0.6wt%、平均円形度Rが0.96、円形度標準偏差が0.011であった。重量基準の平均粒径Dtは、8.1μmであった。重量基準の粒径標準偏差は0.45μmであった。
【0188】
(実施例22〜24)
紫外線照射処理部における処理時間を変更することにより、紫外線の照射時間(接合体への紫外線照射時間)を表3に示すように変更した以外は、前記実施例21と同様にしてトナーを製造した。
(実施例25)
紫外線照射手段(紫外線ランプ)として、出射する紫外線のピーク波長λが400nmのものを用いた以外は、前記実施例22と同様にしてトナーを製造した。
(実施例26)
紫外線照射手段(紫外線ランプ)として、出射する紫外線のピーク波長λが200nmのものを用いた以外は、前記実施例22と同様にしてトナーを製造した。
【0189】
(実施例27)
水性溶液の調製において、ポリアクリル酸ナトリウム:30重量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム:0.5重量部の代わりに、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:30重量部を用いた以外は、前記実施例21と同様にしてトナーを製造した。
【0190】
なお、分散剤として用いた、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムについての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、250nmであった。また、この分散剤をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての分散剤の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、15,000[mol−1・dm・cm−1]であった。
【0191】
また、結着樹脂(樹脂材料)として用いたアクリル系樹脂についての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、210nmであった。また、このアクリル系樹脂をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての結着樹脂(樹脂材料)の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、1,000[mol−1・dm・cm−1]であった。
【0192】
(実施例28)
結着樹脂溶液(樹脂液)の調製において、帯電制御剤としてのボントロンE−84を用なかった以外は、前記実施例27と同様にしてトナーを製造した。
(実施例29、30)
搬送部(第2の領域)の長さを変更することにより、紫外線照射、接合工程の処理時間(吐出物への紫外線照射時間)を表3に示すように変更した以外は、前記実施例28と同様にしてトナーを製造した。
【0193】
(比較例1)
紫外線照射手段を有していない以外は前記実施例1で用いたトナー製造装置と同様の構成を有するトナー製造装置を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(比較例2)
分散液(結着樹脂懸濁液)として、前記実施例7で調製したものを用いた以外は、前記比較例1と同様にして、トナーを製造した。
【0194】
(比較例3)
紫外線照射手段を有していない以外は前記実施例21で用いたトナー製造装置と同様の構成を有するトナー製造装置を用いた以外は、前記実施例21と同様にしてトナーを製造した。
(比較例4)
分散液(結着樹脂懸濁液)として、前記実施例27で調製したものを用いた以外は、前記比較例3と同様にして、トナーを製造した。
【0195】
(比較例5)
ポリアクリル酸ナトリウム:30重量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム:0.5重量部の代わりに、ジデシルホスフェートナトリウム:30重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
なお、分散剤として用いたジデシルホスフェートナトリウムについての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、150nmであった。また、この分散剤をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての分散剤の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、30[mol−1・dm・cm−1]であった。また、ジデシルホスフェートナトリウム樹脂は、分子内に所定部分構造(ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、および、ニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの部分構造)を有していなかった。
また、結着樹脂(樹脂材料)として用いたアクリル系樹脂をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての結着樹脂(樹脂材料)の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、1,000[mol−1・dm・cm−1]であった。
【0196】
(比較例6)
アクリル系樹脂の代わりに、ポリウレタン樹脂(ガラス転移点Tg:59℃、降下式フローテスター軟化温度:115℃、融点:251℃)を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
なお、結着樹脂(樹脂材料)として用いたポリウレタン樹脂についての紫外線領域での吸光度が最大となる波長λは、250nmであった。また、このアクリル系樹脂をジメチルホルムアミド溶液としたときに求められる、紫外線照射工程で照射する紫外線のピーク波長λ[nm]についての結着樹脂(樹脂材料)の室温(25℃)でのモル吸光係数εは、12,000[mol−1・dm・cm−1]であった。
(比較例7)
前記実施例7で調製した結着樹脂溶液(樹脂液)を、そのまま、トナー製造用の吐出液として用いた以外は、前記比較例2と同様にしてトナーの製造を試みたところ、樹脂液の吐出は不能であった。すなわち、比較例7では、トナーの製造ができなかった。
【0197】
(比較例8)
前記比較例1で得られたトナーについて、イオン交換水による洗浄(水洗)を施し、その後、乾燥を行うことにより、最終的なトナーとした。
イオン交換水による洗浄、および、乾燥は、以下のようにして行った。
まず、イオン交換水による洗浄は、トナー:1重量部に、イオン交換水:100重量部を加え、これを、回転数:4000rpmで1分間回転させた。その後、減圧濾過により、洗浄水を除去した。このような一連の操作(洗浄水の付与、回転、洗浄水の除去)を2回繰り返し行った。
上記のような操作により洗浄を終えた後、真空乾燥機を用いて、減圧度2torr、40℃で5時間保持することにより、含水量が0.7wt%以下となるまで乾燥処理を行った。
上記のような洗浄、乾燥には、約6時間を要した。
【0198】
(比較例9)
ポリアクリル酸ナトリウムおよびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムを用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして吐出用の液体(結着樹脂懸濁液)を調製した。この液体は、比較的強い攪拌力で攪拌した状態では、分散質が、分散媒中に分散した構成をかろうじて保持することができるものの、攪拌を停止すると、分散質に相当する固体粒子が液面付近に浮上してしまい、分散状態を保持することができなかった。また、前記実施例1で用いたトナー製造装置を用いて、当該液体の吐出を試みたところ、初期の段階では、分散媒に相当する水のみが吐出され、分散質に相当する固体粒子は吐出されなかった。また、液体の吐出を連続して行っていくと、液体の液面付近に浮遊していた分散質に相当する固体粒子により、吐出部が目詰まりを起こしてしまい、液体の吐出が不能となった。すなわち、比較例9では、トナーの製造ができなかった。
【0199】
前記実施例1〜30で得られたトナー粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、これらの表面形状を観察した。実施例1〜30のトナー粒子では、その表面に比較的大きな凹凸は認められず、略球形状をなしていることが確認された。
以上の各実施例および各比較例について、トナーの製造条件を表1、表2、表3、表4に示した。なお、表1〜表4中、アクリル系樹脂をAc、ポリウレタン樹脂をPU、ポリアクリル酸ナトリウムをA、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムをB、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムをC、ジデシルホスフェートナトリウムをD、帯電制御剤をCCA、紫外線照射処理部をUV照射処理部で示した。
【0200】
【表1】

【0201】
【表2】

【0202】
【表3】

【0203】
【表4】

【0204】
[2]評価
上記のようにして得られた各トナーについて、帯電特性、保存性、耐久性、および、転写効率の評価を行った。
[2.1]帯電特性
各実施例および各比較例のトナーについて、帯電量の測定を行い、さらにその標準偏差を求めた。帯電量の測定は、吸引式小型帯電量測定装置(トレックジャパン社製)を用いて、20℃、62%RHの条件で行った。
【0205】
[2.2]保存性(環境特性)
各実施例および各比較例のトナーを、それぞれ10gずつサンプル瓶に入れ、50℃、85%RHの恒温槽内に48時間放置した後、固まり(凝集)の有無を目視で確認し、以下の3段階の基準に従い評価した。
◎:固まり(凝集)の存在が全く認められなかった。
○:固まり(凝集)の存在がほとんど認められなかった。
△:小さい固まり(凝集)がわずかに認められた。
×:固まり(凝集)がはっきりと認められた。
【0206】
[2.3]耐久性
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーを、カラーレーザープリンタ(セイコーエプソン社製:LP−2000C)の現像機にセットした。その後、印字しないように、現像機を連続回転させた。12時間後、現像機を取り出し、現像ローラ上のトナー薄層の均一性を目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:薄層に乱れがまったく認められない。
○:薄層に乱れがほとんど認められない。
△:薄層に多少の乱れが認められる。
×:薄層に筋状の乱れがはっきりと認められる。
【0207】
[2.4]転写効率
以上のようにして得られた各トナーについて、転写効率の評価を行った。
転写効率は、カラーレーザープリンタ(セイコーエプソン社製、LP−2000C)を用いて、以下のように評価した。
感光体への現像工程直後(転写前)の感光体上のトナーと、転写後(印刷後)の感光体上のトナーとを、別々のテープを用いて採取し、それぞれの重量を測定した。転写前の感光体上のトナー重量をW[g]、転写後の感光体上のトナー重量をW[g]としたとき、(W−W)×100/Wとして求められる値を、転写効率とした。
これらの結果を、トナー粒子の平均円形度R、円形度標準偏差、重量基準の平均粒径Dt、粒径標準偏差とともに表5、表6、表7に示す。
【0208】
【表5】

【0209】
【表6】

【0210】
【表7】

【0211】
表5〜表7から明らかなように、本発明(実施例1〜33)のトナーは、いずれも、帯電量の絶対値が大きく、かつ、帯電量のばらつきが小さかった。また、本発明のトナーは、保存性(環境特性)にも優れていた。また、本発明のトナーは、耐久性、転写効率等の特性にも優れていた。また、本発明のトナーは、各粒子間での大きさ、形状のばらつきが小さく、トナー全体としての信頼性の高いものであった。
【0212】
これに対し、各比較例のトナーでは、満足な結果が得られなかった。
特に、比較例1〜4では、トナー粒子の帯電量の絶対値が非常に小さかった。これは、トナー中(特に、トナー粒子の表面付近)に、多量の分散剤が含まれている(残存している)ためであると考えられる。
また、比較例5でも、トナー粒子の帯電量の絶対値が非常に小さかった。これは、比較例5では、紫外線の照射を行っているものの、分散剤が所定の部分構造を備えた分子構造を有するものではないため、分散剤の除去を十分に行うことができなかったためであると考えられる。
【0213】
また、比較例6のトナーでは、帯電特性、保存性、耐久性、転写効率等の特性が特に劣っていた。これは、紫外線の照射により分散剤の選択的な除去を行うことができず、紫外線の照射により、樹脂材料(結着樹脂)の分解劣化等が発生したためであると考えられる。
また、比較例8では、トナー粒子の帯電量の絶対値は比較的大きいものの、各粒子間での帯電量のばらつきが大きく、トナー全体としての信頼性が低かった。また、トナーの製造に、非常の長い時間を要し、生産性に劣るとともに、大量の排水を生じてしまうため、環境への負荷も大きい。
【0214】
また、トナー製造装置のヘッド部付近の構造を、図2に示すような構成のものから、図5〜図8に示すような構成のものに変更して、上記と同様にトナーの製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。また、図5〜図8に示すようなヘッド部を備えたトナー製造装置では、比較的高粘度(分散質の含有率の高い)分散液でも好適に吐出することができた。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】本発明のトナーの製造に用いられるトナー製造装置の第1実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1に示すトナー製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【図3】本発明のトナーの製造に用いられるトナー製造装置の第2実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図4】本発明のトナーの製造に用いられるトナー製造装置の第3実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図5】トナー製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図6】トナー製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図7】トナー製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図8】トナー製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0216】
1、1’、1’’…トナー製造装置 2…ヘッド部 21…分散液貯留部 22…圧電素子 221…下部電極 222…圧電体 223…上部電極 23…吐出部 24…振動板 25…音響レンズ(凹面レンズ) 26…圧力パルス収束部 3、3’…搬送部 31…ハウジング 311…縮径部 32…第1の領域(低温領域) 33、33’…第2の領域(高温領域) 4…分散液供給部 41…攪拌手段 5…回収部 6…分散液 61…分散質 62…分散媒 7…ガス噴射口 8…電圧印加手段 90…凝集体 95…接合体 9…トナー粒子 10…ガス流供給手段 101…ダクト 11…熱交換器 12…紫外線照射手段(光源) 13…絞り部材 14…排気手段 15…サイクロン 16…バグフィルタ 17…搬送手段 18…ダブルダンパー 19…接合体収納部 191…弁 20…紫外線照射処理部 201…攪拌手段(プロペラ) 202…注入弁 203…輸送弁 30…ガス供給手段 40…排気手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を含む分散質が分散媒中に分散し、かつ、前記分散質の分散性を向上させる機能を有する分散剤を含む分散液を用いてトナーを製造する方法であって、
前記樹脂材料は、主としてアクリル系樹脂で構成されたものであり、
前記分散剤として、ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、および、ニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの部分構造を備えた分子構造を有するものを用い、
前記分散液から前記分散媒を除去する分散媒除去工程中および/または前記分散媒除去工程の後に紫外線を照射することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
樹脂材料を含む分散質が分散媒中に分散し、かつ、前記分散質の分散性を向上させる機能を有する分散剤を含む分散液を用いてトナーを製造する方法であって、
前記樹脂材料は、主としてアクリル系樹脂で構成されたものであり、
前記分散剤として、ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、および、ニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの部分構造を備えた分子構造を有するものを用い、
前記分散液を液滴状の吐出物として吐出した後に、前記吐出物に紫外線を照射することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項3】
前記吐出物は複数個の前記分散質を含むものである請求項2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記分散液から前記分散媒を除去する分散媒除去工程の後、前記吐出物を構成する複数個の前記分散質を接合する工程において、前記紫外線を照射する請求項3に記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
前記紫外線の照射時間は、0.01〜60分間である請求項1ないし4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
前記紫外線のピーク波長は、200〜400nmである請求項1ないし5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
圧電パルスにより、前記分散液を間欠的に吐出する請求項1ないし6のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項8】
樹脂材料を含む分散質が分散媒中に分散し、かつ、前記分散質の分散性を向上させる機能を有する分散剤を含む分散液を用いてトナーを製造する方法であって、
前記樹脂材料は、主としてアクリル系樹脂で構成されたものであり、
前記分散剤として、ベンゼン環(ただし、置換ベンゼン環を含む)、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、および、ニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの部分構造を備えた分子構造を有するものを用い、
前記分散液に紫外線を照射する工程を有することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項9】
前記分散液は、前記分散剤としてアニオン系分散剤および/またはノニオン系分散剤を含むものである請求項1ないし8のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
前記分散剤中における前記分散剤の含有率は、0.001〜10wt%である請求項1ないし9のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
前記分散媒は、主として水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものである請求項1ないし10のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項12】
前記分散液は、帯電制御剤を含むものである請求項1ないし11のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の製造方法に用いられることを特徴とするトナー製造装置。
【請求項14】
トナー製造装置は、前記分散液を吐出する吐出部と、
前記吐出部から吐出された前記分散液から前記分散媒が除去された、複数個の前記分散質で構成される粒状の前記分散媒除去物に対して、紫外線を照射する紫外線照射手段とを備えている請求項13に記載のトナー製造装置。
【請求項15】
前記分散媒除去物を構成する複数個の前記分散質を接合する領域を備えている請求項13または14に記載のトナー製造装置。
【請求項16】
請求項1ないし12のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするトナー。
【請求項17】
請求項13ないし15のいずれかに記載の装置を用いて製造されたことを特徴とするトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−53291(P2006−53291A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234134(P2004−234134)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】