説明

トナープロセス

【課題】樹脂エマルジョンの貯蔵寿命及び安定性を増大させることができる、樹脂エマルジョンを製造するプロセスを提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂エマルジョンを形成し、エマルジョンのpHをモニターし、エマルジョンに塩基を添加して、エマルジョンを約6.5乃至約8のpHに維持するステップを含むプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電写真装置に適したトナー及びそのトナーを製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、結晶性又は半結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性樹脂を含有するトナー混合物が、高速印刷及び低い定着電力消費の両方のために重要な非常に望ましい超低温溶融定着をもたらすことが見出されている。結晶性ポリエステルを含有するこれらの種類のトナーは、エマルジョン凝集(EA)トナー及び従来のジェット噴射トナーの両方で実証されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,063,827号明細書
【特許文献2】米国特許第5,290,654号明細書
【特許文献3】米国特許第5,302,486号明細書
【特許文献4】米国特許第3,590,000号明細書
【特許文献5】米国特許第3,800,588号明細書
【特許文献6】米国特許第6,214,507号明細書
【特許文献7】米国特許第5,236,629号明細書
【特許文献8】米国特許第5,330,874号明細書
【特許文献9】米国特許第4,295,990号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリエステルEA超低温溶融(ULM)トナーの調製に用いられる樹脂エマルジョンに関する1つの問題は、トナーを調製する前に、それが時間とともに劣化し得る可能性である。この劣化を避ける方法が依然として望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、樹脂エマルジョンを製造するプロセスを提供する。この樹脂エマルジョンは次にトナー粒子を形成するのに用いることができる。実施形態において、樹脂エマルジョンのpHをモニターし、そのpHを所望のレベルに維持するように調整することで、樹脂エマルジョンの貯蔵寿命及び安定性を増大させることができる。実施形態において、本開示のプロセスは、ポリエステル樹脂エマルジョンを形成すること、このエマルジョンのpHをモニターすること、及びこのエマルジョンに塩基を添加してエマルジョンを約6.5乃至約8のpHに維持することを含むことができる。
【0006】
他の実施形態において、本開示のプロセスは、ポリエステル樹脂エマルジョンを形成すること、このエマルジョンのpHをモニターすること、このエマルジョンに、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸リチウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、及びこれらの組合せのような塩基を添加してこのエマルジョンを約6.5乃至約8のpHに維持することを含むことができ、ここでエマルジョンへの塩基の添加は、エマルジョン中の樹脂の分子量の低下を防ぐ。
【0007】
さらに他の実施形態において、本開示のプロセスは、ポリエステル樹脂エマルジョンを形成すること、このエマルジョンのpHをモニターすること、このエマルジョンに、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸リチウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、及びこれらの組合せのような塩基を添加してこのエマルジョンを約6.5乃至約8のpHに維持すること、この樹脂エマルジョンを少なくとも1つの界面活性剤、随意の着色剤及び随意のワックスと接触させて小粒子を形成すること、この小粒子を凝集させること、この凝集した粒子を融合させてトナー粒子を形成すること、及びこのトナー粒子を回収することを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本開示によるpH調整により処理した樹脂エマルジョンのMw及びMnを、未処理の樹脂エマルジョン対照と比較するグラフである。
【図2】本開示によるpH調整により処理した樹脂エマルジョンの粘度を、未処理の樹脂エマルジョン対照と比較するグラフである。
【図3】本開示によるpH調整により処理した樹脂エマルジョンのpH変化を、未処理の樹脂エマルジョン対照と比較して示すグラフである。
【図4】非晶性のポリエステル樹脂エマルジョンに関するデータのグラフであり、明線は本開示によるpH調整により処理されないものの、及び暗線は処理されたもののpH、Mw及び粒径(Pサイズ)を示す。
【図5】本開示によるpH調整により処理された不飽和結晶性ポリエステル(UCPE)樹脂エマルジョンのpH測定値を、未処理の樹脂エマルジョン対照と比較して示すグラフである。
【図6】本開示によるpH調整により処理された不飽和結晶性ポリエステル(UCPE)樹脂エマルジョンの粒径測定値を、未処理の樹脂エマルジョン対照と比較して示すグラフである。
【図7】本開示によるpH調整により処理された不飽和結晶性ポリエステル樹脂(UCPE)エマルジョンの粘度測定値を、未処理の樹脂エマルジョン対照と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示により、ポリエステル樹脂エマルジョンを安定化してその寿命を延ばすpH調整プロセスが提供され、このエマルジョンは次いでトナー粒子の形成に用いることができる。このpH調整プロセスは、溶媒フラッシング、転相、押出のような溶融混合、及び/又は無溶剤乳化などを含む多くの種類の乳化処理と共に用いることができる。
【0010】
次に、得られた樹脂を樹脂エマルジョンから回収し、着色剤、随意のワックス及び他の随意の添加剤とのラテックス樹脂の凝集及び融合を含む化学プロセスを含んだプロセスによるトナーの製造に用いることができる。こうして製造されたトナー粒子は、トナー・サイズの凝集体を形成し得る。凝集の後、得られた凝集体を加熱することによって融合又は融着させてトナー粒子を形成することができる。
【0011】
樹脂
本開示により処理される樹脂は、トナー形成に用いるのに適した任意のラテックス樹脂を含むことができる。次に、このような樹脂は、任意の適切なモノマーから作成することができる。樹脂を形成するのに有用な適切なモノマーには、それらに限定されないが、アクリロニトリル、ジオール、二酸、ジアミン、ジエステル、これらの混合物などが含まれる。用いる任意のモノマーは、用いられる特定のポリマーに応じて選択することができる。
【0012】
結晶性樹脂は、例えば、トナー成分の約5乃至約50重量%、実施形態においてはトナー成分の約10乃至約35重量%の量存在することができるが、この量はこれらの範囲外であってもよい。結晶性樹脂は、例えば、約30℃乃至約120℃、実施形態においては約500℃乃至約90℃の種々の融点を有し得るが、融点はこれらの範囲外であってもよい。結晶性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって測定される数平均分子量(Mn)が、例えば約1,000乃至約50,000、実施形態においては約2,000乃至約25,000を有することができ(Mnはこれらの範囲外であってもよい)、また、ポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィによって測定される重量平均分子量(Mw)は、約2,000乃至約100,000、実施形態においては約3,000乃至約80,000を有することができる(Mwはこれらの範囲外であってもよい)。結晶性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、約2乃至約6、実施形態においては約3乃至約4とすることができるが、この分子量分布はこれらの範囲外であってもよい。
【0013】
実施形態において、適切な非晶性ポリエステル樹脂は、次式(I)を有するポリ(プロポキシル化ビスフェノールAコ−フマレート)樹脂とすることができる。
【化1】

(I)
式中、mは約5乃至約1000とすることができるが、mはこの範囲外であってもよい。こうした樹脂及びそれらの製造プロセスの例は、特許文献1に開示されているものを含む。
【0014】
実施形態において、適切な結晶性樹脂は、エチレングリコールと、次式を有するドデカン二酸及びフマル酸コモノマーの混合物から構成することができる。
【化2】

(II)
式中、bは5乃至2000であり、dは5乃至2000であるが、b及び/又はdの値はこれらの範囲外であってもよい。
【0015】
1つ、2つ又はそれ以上のトナー樹脂を用いることができる。2つ又はそれ以上のトナー樹脂を用いる実施形態において、トナー樹脂は、任意の適切な比(例えば重量比)、例えば約10%の第1樹脂/90%の第2樹脂から約90%の第1樹脂/10%の第2樹脂までとすることができるが、この比はこれらの範囲外であってもよい。実施形態において、コア内に用いられる非晶性樹脂は鎖状とすることができる。
【0016】
上記のように、実施形態において樹脂は、重縮合反応法によって形成することができる。この方法を用いると、樹脂は樹脂エマルジョン中に存在することになり、これは次に本開示のpH調整により安定化することができる。
【0017】
pH調整
水の存在下で高温に曝されるポリエステルでは、ポリエステル鎖が、ルシャトリエの原理によって、加水分解して分裂(又は解重合)し易い。こうした加水分解は、樹脂の分子量(Mw)及び/又は粘度を減少させることを含む、幾つかの望ましくない影響を樹脂に与える。
【0018】
本開示により、樹脂のMwの減少を含む、樹脂の経時劣化に関連する問題は、樹脂エマルジョンの形成中及び/又は形成後の塩基の添加により防止及び/又は最小限にすることができ、この塩基添加は本明細書では、実施形態において、pH調整と呼ぶことができる。
【0019】
高温(90℃未満)において水中で樹脂を単に攪拌することによって乳化が行われる高度にスルホン化したポリエステルに対して、乳化中及び/又は乳化後の塩基の添加によるpH制御は、従って樹脂の経時安定性を改善することができる。
【0020】
スルホン化レベルの低いポリエステルに対しは、他の乳化方法、例えば溶媒フラッシングを用いることができる。例えば、実施形態において、溶媒フラッシングをスルホン化した結晶性及び非晶性(分岐)ポリエステルに用いることができ、約50℃においてアセトン中に樹脂を溶解させ、次いでこの樹脂溶液を、蒸留装置を用いて約80℃に加熱した脱イオン水(DIW)中に計量しながら添加し、アセトン溶媒を急速蒸発させることにより樹脂エマルジョンを形成することができる。
【0021】
非スルホン化ポリエステルに対しては、溶媒フラッシュ、転相乳化、押出しのような溶融混合、及び/又は無溶剤乳化を用いてエマルジョンを調製することができる。転相乳化法においては、非スルホン化ポリエステル樹脂(結晶性又は非晶性)を適切な溶媒、実施形態においてはメチルエチルケトン(MEK)及びイソプロピルアルコール(IPA)の混合物に、約45℃乃至約80℃の温度(この範囲外の温度を用いてもよい)において溶解させて樹脂溶液を形成することができる。塩基溶液、実施形態において上述の塩基、実施形態においては水酸化アンモニウムと混合させた加熱DIWを形成し、次にこの塩基溶液を樹脂溶液に添加することができる。樹脂及び塩基溶液の混合後、溶媒は当業者の認識範囲内の任意の方法によって除去することができる。
【0022】
上述のように、実施形態において、樹脂エマルジョンのpH調整に用いる塩基は溶液にすることができる。このような溶液を形成するのに適した溶媒には、脱イオン水があるが、これに限定されない。他の実施形態においては、溶媒を用いずに塩基は乾燥粉末とすることができる。
【0023】
樹脂エマルジョンの形成方法に関らず、樹脂エマルジョンは、次いで、室温付近、実施形態においては約20℃乃至約35℃に冷却することができ、この時又はその前に塩基を添加することができる。乳化中及び/又は乳化後の最適なpHレベルは、部分的に樹脂の構造に依存する可能性がある。実施形態において、樹脂エマルジョンのpHを約6.5乃至約8、実施形態においては約7のレベルに調整することが望ましく、これは、さもなければ時間経過により生じることになる樹脂の分子量の低下を減少させることを含む、エマルジョンの安定性及び貯蔵寿命にたいする望ましい効果を有する。
【0024】
上述のように、pH調整は、樹脂エマルジョンの形成時及び/又はその後の両方において行うことができる。樹脂エマルジョンのpHは、時間毎、日毎、週毎、月毎、これらの組合せなどのような任意の所望の間隔でモニターし、必要に応じてそれに塩基を添加して樹脂エマルジョンのpHを約6.5乃至8に維持することができるが、この範囲外のpHを用いてもよい。実施形態においては、樹脂エマルジョンのpHは日毎にモニターすることができる。pHのモニタリングは、当業者の認識範囲内の任意のpH指示薬を用いて行うことができる。
【0025】
樹脂エマルジョンのpHを調整するために添加する塩基の量は、樹脂成分、用いる塩基、その濃度、必要なpH調整の程度又は量(即ち、この量は、試験時に樹脂エマルジョンがどの程度酸性であるかによって変化することになる)などに応じて変化することになる。
【0026】
用いられる塩基の量は、用いられる樹脂エマルジョンの量に基づいて約0.001%乃至約10%の1モル溶液、実施形態においては用いられる樹脂エマルジョンの量に基づいて約0.0015%乃至約1%の1モル溶液とすることができる。
【0027】
上述のように、本開示のpH調整は、樹脂エマルジョンに含有される樹脂のMwの低下を防止するのに有用であり得る。例えば、本開示によるpH調整を施さない樹脂に関しては、樹脂エマルジョン中の樹脂は、形成時に、約2,000乃至約100,000、実施形態においては約30,000乃至約80,000のMwを有し得るが、約3日乃至30日後、実施形態においては約5日乃至20日後に、約8%乃至約50%、実施形態においては約10%乃至約25%のMwの低下を経験する可能性がある。これとは反対に、樹脂エマルジョンのpHを約6.5乃至約8、実施形態においては約7に維持するように本開示に従って処理した樹脂エマルジョン中の樹脂は、時間によるMwの減少を示さないか、又は、約3日乃至約30日後、実施形態においては約5日乃至約20日後に、約0.05%乃至約10%、実施形態においては約0.1%乃至約5%のMwの減少を示すのみである。
【0028】
トナー
上述の樹脂エマルジョンの樹脂、実施形態においてはポリエステル樹脂、を用いてトナー組成物を形成することができる。このようなトナー組成物は、随意の着色剤、ワックス及び他の添加剤を含むことができる。トナーは、当業者の認識範囲内の任意の方法を用いて形成することができる。
【0029】
界面活性剤
実施形態において、トナー組成物を形成するのに用いられる着色剤、ワックス及び他の添加剤は、界面活性剤を含む分散液に入れることができる。さらに、トナー粒子は、樹脂及びトナーの他の成分を1つ又はそれ以上の界面活性剤中に入れ、エマルジョンを形成し、トナー粒子を凝集させ、融合させ、随意に洗浄及び乾燥し、回収する、エマルジョン凝集法によって形成することができる。
【0030】
1つ、2つ又はそれ以上の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤は、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選択することができる。陰イオン及び陽イオン界面活性剤は、用語「イオン性界面活性剤」により包含される。実施形態において、界面活性剤は、トナー組成物の約0.01重量%乃至約5重量%、例えばトナー組成物の約0.75重量%乃至約4重量%、実施形態においてはトナー組成物の約1重量%乃至約3重量%の量で存在するように用いることができるが、この量はこれらの範囲外であってもよい。
【0031】
着色剤
添加する随意の着色剤として、種々の既知の適切な着色剤、例えば染料、顔料、染料混合物、顔料混合物、染料と顔料の混合物など、をトナーに含めることができる。着色剤は、例えば、トナーの約0.1乃至約35重量%、又はトナーの約1乃至約15重量%、又はトナーの約3乃至約10重量%の量をトナーに含めることができるが、この量はこれらの範囲外であってもよい。
【0032】
ワックス
随意に、ワックスもまたトナー粒子形成の際に樹脂及び随意の着色剤と共に混合させることができる。含まれる場合、ワックスは、例えば、トナー粒子の約1重量%乃至約25重量%、実施形態においてはトナー粒子の約5重量%乃至約20重量%の量で存在することができるが、この量はこれらの範囲外であってもよい。
【0033】
選択することができるワックスは、例えば、約500乃至約20,000、実施形態においては約1,000乃至約10,000の重量平均分子量を有するワックスを含むが、分子量はこれらの範囲外であってもよい。
【0034】
トナー調製
トナー粒子は、当業者の認識範囲内の任意の方法によって調製することができる。トナー粒子の製造に関連する実施形態は、以下でエマルジョン凝集プロセスに関して説明するが、特許文献2及び特許文献3に開示される懸濁及び封入プロセスのような化学的プロセスを含む任意の適切なトナー粒子調製方法を用いることができる。実施形態において、トナー組成物及びトナー粒子は、小さい粒径の樹脂粒子を凝集させて適切なトナー粒径にし、次いで融合させて最終的なトナー粒子形状及びモルホロジーを達成する、凝集及び融合プロセスによって調製することができる。
【0035】
実施形態において、トナー組成物は、随意の着色剤、随意のワックス及び任意の他の所望の又は必要な添加剤の混合物と、上述の樹脂を含むエマルジョンとを、随意に上述のように界面活性剤中において凝集させること、次いで凝集混合物を融合させることを含むプロセスのようなエマルジョン凝集プロセスによって調製することができる。混合物は、着色剤及び随意にワックス又は他の材料、これらはまた随意に界面活性剤を含む分散液にすることができるが、これらを、樹脂を含んだ2つ又はそれ以上のエマルジョンの混合物とすることができるエマルジョンに加えることによって調製することができる。得られた混合物のpHは、酸、例えば酢酸、硝酸などによって調整することができる。実施形態においては、混合物のpHは、約2乃至約4.5に調整することができるが、このpHはこの範囲外であってもよい。さらに、実施形態において、混合物を均質化することができる。混合物を均質化する場合、均質化は、毎分約600乃至約4,000回転で混合することによって達成できるが、混合速度はこの範囲外であってもよい。均質化は、例えばIKA ULTRA TURRAX T50プローブ型ホモジナイザを含む任意の適切な手段により達成することができる。
【0036】
上記混合物の調製後、凝集剤を混合物に添加することができる。任意の適切な凝集剤を用いてトナーを形成することができる。
【0037】
凝集剤は、トナーを形成するのに用いられる混合物に、例えば、混合物中の樹脂の約0.1重量%乃至約8重量%、実施形態においては約0.2重量%乃至約5重量%、他の実施形態においては約0.5重量%乃至約5重量%の量を添加することができるが、この量はこれらの範囲外であってもよい。これは凝集に十分な量の凝集剤を供給する。
【0038】
粒子の凝集及び融合を制御するために、実施形態において、凝集剤を混合物に時間をかけて計量しながら添加することができる。例えば、凝集剤は、約5乃至約240分、実施形態においては約30乃至約200分かけて混合物に計量しながら添加することができるが、所望により又は必要に応じてこれより長い又は短い時間をかけてもよい。凝集剤の添加はまた、混合物を攪拌条件、実施形態において約50rpm乃至約1,000rpm、他の実施形態においては約100rpm乃至約500rpm(混合速度はこれらの範囲外であってもよい)、及び、上述の樹脂のガラス転移点より低い温度、実施形態において約30℃乃至約90℃、実施形態においては約35℃乃至約70℃(この温度はこれらの範囲外であってもよい)に維持しながら行うことができる。
【0039】
粒子は、所定の所望の粒径が得られるまで凝集させることができる。所定の所望の粒径とは、形成前に定められた得られるべき所望の粒径を指し、この粒径に達するまで成長プロセス中に粒径がモニターされる。成長プロセス中にサンプルを採取し、例えばCoulter Counterを用いて平均粒径を分析することができる。従って凝集は、攪拌を続けながら、高温を維持するか、又は温度を例えば約40℃から約100℃(温度はこの範囲外であってもよい)まで徐々に上昇させて、混合物をこの温度に約0.5時間乃至約6時間、実施形態においては約1時間乃至約5時間(時間はこれらの範囲外であってもよい)維持することにより進行させて凝集粒子をもたらすことができる。一旦、所定の所望の粒径に達すると、成長プロセスを停止させる。実施形態において、所定の所望の粒径は上述のトナー粒径の範囲内である。
【0040】
凝集剤添加後の粒子の成長及び成形は、任意の適切な条件下で達成することができる。例えば、成長及び成形は、融合とは別に凝集が起る条件下で行うことができる。別々の凝集及び融合段階に関して、凝集プロセスは、高温、例えば、約40℃乃至約90℃、実施形態においては約45℃乃至約80℃で、上述の樹脂のガラス転位温度より低くすることができる温度における剪断条件下で行うことができる。
【0041】
シェル樹脂
実施形態において、隋意のシェルを形成された凝集トナー粒子に塗布することができる。コア樹脂に適した上述のいずれの樹脂も、シェル樹脂として用いることができる。シェル樹脂は、当業者の認識範囲内の任意の方法によって凝集粒子に塗布することができる。実施形態において、シェル樹脂は、上述のいずれかの界面活性剤を含むエマルジョンにすることができる。このエマルジョンと上述の凝集粒子を混合して、形成された凝集体の上に樹脂がシェルを形成するようにすることができる。実施形態において、非晶性ポリエステルを用いて凝集体の上にシェルを形成し、コア・シェル構造を有するトナー粒子を形成することができる。
【0042】
一旦トナー粒子の所望の最終粒径に達したら、混合物のpHは、塩基を用いて約6乃至約10、実施形態においては約6.2乃至約7の値に調整することができるが、これらの範囲外のpHを用いてもよい。pHの調製はトナーの成長を凍結、即ち停止させるのに用いることができる。トナーの成長を停止させるために用いる塩基は、任意の適切な塩基とすることができる。塩基は、混合物の約2乃至約25重量%、実施形態においては混合物の約4乃至約10重量%の量を添加することができるが、これらの範囲外の量を用いてもよい。
【0043】
融合
上述の隋意のシェル構造を伴う所望の粒径への凝集後、粒子は次に融合させて所望の最終形状にすることができ、この融合は、例えば、約55℃乃至約100℃、実施形態において約65℃乃至約75℃、実施形態においては約70℃(これらの範囲外の温度を用いてもよい)の温度であって、可塑化を防ぐために結晶性樹脂の融点より低くすることができる温度に混合物を加熱することによって達成される。より高温度又はより低温度を用いることができ、温度は結合剤に用いられる樹脂の関数であることを理解されたい。
【0044】
融合は、約0.1乃至約9時間、実施形態においては約0.5乃至約4時間にわたって進行させ達成することができるが、これらの範囲外の時間を用いてもよい。
【0045】
融合後、混合物を室温、例えば約20℃乃至約25℃(この範囲外の温度を用いてもよい)まで冷却することができる。冷却は、所望により速くても遅くてもよい。適切な冷却法は、反応器の周りのジャケットに冷水を導入することを含むことができる。冷却後、トナー粒子を隋意に水洗し、次いで乾燥させることができる。乾燥は、例えば凍結乾燥を含む任意の適切な乾燥法で達成することができる。
【0046】
添加剤
実施形態において、トナー粒子はまた、所望により又は必要に応じて他の随意の添加剤を含むことができる。例えば、トナーは、正電荷又は負電荷制御剤を、例えばトナーの約0.1乃至約10重量%、実施形態においてトナーの約1乃至約3重量%の量含むことができるが、これらの範囲外の量を用いてもよい。このような電荷制御剤は、上述のシェル樹脂と同時に又はシェル樹脂の塗布後に塗布することができる。
【0047】
トナー粒子に、流動補助添加剤を含む外部添加剤粒子を混ぜることもでき、この添加剤はトナー粒子の表面上に存在させることができる。これらの外部添加剤のそれぞれは、トナーの約0.1重量%乃至約5重量%、実施形態においてトナーの約0.25重量%乃至約3重量%の量存在させることができるが、これらの範囲外の量を用いてもよい。適切な添加剤には、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6に開示されるものが含まれる。この場合も同様に、これらの添加剤は、上述のシェル樹脂と同時に又はシェル樹脂の塗布後に塗布することができる。
【0048】
実施形態において、本開示のトナーは、超低温溶融(ULM)トナーとして用いることができる。実施形態において、外部表面添加剤を除いた乾燥トナー粒子は、次の特性を有することができる。
【0049】
(1)約3乃至約20μm、実施形態においては約4乃至約15μm、他の実施形態においては約5乃至約9μmの体積平均直径(「体積平均粒径」とも呼ばれる)。但し、これらの範囲外の体積平均直径を得てもよい。
【0050】
(2)約1.05乃至約1.55、実施形態においては約1.1乃至約1.4の数平均幾何標準偏差(GSDn)及び/又は体積平均幾何標準偏差(GSDv)。但し、これらの範囲外のGSDvを得てもよい)。
【0051】
(3)約0.9乃至約1、実施形態においては約0.95乃至約0.985、他の実施形態においては約0.96乃至0.98の真円度(例えばSysmex FPIA2100分析器を用いて測定される)。但し、これらの範囲外の真円度を得てもよい。
【0052】
(4)約40℃乃至約65℃、実施形態において約55℃乃至約62℃のガラス転移点。但し、これらの範囲外のガラス転移点を得てもよい。
【0053】
トナー粒子の特性は、任意の適切な技法及び装置によって測定することができる。体積平均粒子直径D50v、GSDv、及びGSDnは、製造業者の使用説明書に従って操作されるBeckman Coulter Multisizer3のような計測機器によって計測することができる。代表的なサンプリングは、次のように行うことができる。少量のトナー・サンプル約1グラムを取得し、25マイクロメートルのスクリーンを通してろ過し、次いで等張溶液に入れて約10%濃度にし、次いでそのサンプルをBeckman Coulter Multisizer3に通す。本開示によって製造されるトナーは、極端な相対湿度(RH)条件に曝されたときに優れた帯電特性を有することができる。低湿度領域(C領域)は約10℃/15%RHとすることができ、高湿度領域(A領域)は約28℃/85%RHとすることができる。本開示のトナーはまた、約−3μC/g乃至約−35μC/gの親トナー電荷/質量比(Q/M)を有することができ、表面添加剤を混合した後に約−10μC/g乃至約−45μC/gの最終的なトナー帯電性を有することができるが、これらの範囲外の値が得られてもよい。
【0054】
本開示により、トナー粒子の帯電性を向上させることができ、それゆえに必要な表面添加剤がより少量になり、従って最終的なトナーの帯電性は機械の帯電要件を満たすように高くすることができる。
【0055】
現像剤
トナー粒子は、現像剤組成物に配合することができる。トナー粒子は、キャリア粒子と混合して2成分現像剤組成物を達成することができる。現像剤中のトナー濃度は、現像剤総重量の約1重量%乃至約25重量%、実施形態において現像剤総重量の約2重量%乃至約15重量%とすることができるが、これらの範囲外の量を用いてもよい。
キャリア
【0056】
キャリア
選択されたキャリア粒子は、コーティングの有無に関らず用いることができる。実施形態において、キャリア粒子は、帯電列内であまり近くない位置にあるポリマーの混合物から形成することができるコーティングを有するコアを含むことができる。実施形態において、ポリフッ化ビニリデン及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)を、約30重量%対約70重量%から約70重量%対約30重量%まで、実施形態においては約40重量%対約60重量%から約60重量%対約40重量%までの割合で混合させることができるが、これらの範囲外の量を用いてもよい。コーティングは、例えば、キャリアの約0.1乃至約5重量%、実施形態においてはキャリアの約0.5乃至約2重量%のコーティング重量を有することができるが、これらの範囲外の量を用いてもよい。
【0057】
実施形態において、PMMAは、結果として得られるコポリマーが適切な粒径を保持する限り、隋意に、任意の所望のコモノマーを用いて共重合することができる。キャリア粒子は、キャリアコアを、コーティングされたキャリア粒子の重量に基づいて約0.05乃至約10重量%、実施形態においては約0.01乃至約3重量%の量(これらの範囲外の量を用いてもよい)のポリマーと混合し、機械的衝撃及び/又は静電引力によってポリマーがキャリアコアに付着するまで混合することによって調製することができる。
【0058】
種々の有効で適切な手段、例えば、カスケード・ロール・ミキシング、タンブリング、ミリング、振とう、静電パウダー・クラウド噴霧、流動床、静電ディスク処理加工、静電カーテン、これらの組合せなど、を用いてポリマーをキャリアコア粒子の表面に塗布することができる。次いで、キャリアコア粒子及びポリマーの混合物を加熱して、ポリマーが融解してキャリアコア粒子に融着できるようにすることができる。コーティングされたキャリア粒子は、次いで冷却され、その後所望の粒径に分類される。
【0059】
実施形態において、適切なキャリアはスチールコアを含むことができ、これは、例えば、粒径が約25乃至約100μm、実施形態においては粒径が約50乃至約75μm(これらの範囲外の粒径を用いてもよい)であり、約0.5重量%乃至約10重量%、実施形態においては約0.7重量%乃至約5重量%(これらの範囲外の量を用いてもよい)の、例えばアクリル酸メチル及びカーボンブラックを含む導電性ポリマー混合物で、特許文献7及び特許文献8に記載のプロセスを用いてコーティングされたスチールコアである。
【0060】
キャリア粒子は、トナー粒子と種々の適切な組合せで混合することができる。その濃度は、トナー組成物の約1重量%乃至約20重量%とすることができる(これらの範囲外の量を用いてもよい)。しかし、異なるトナー及びキャリアの割合を用いて、所望の特性を有する現像剤組成物を達成することができる。
【0061】
画像形成
トナーは、特許文献9に開示されるプロセスを含む静電写真又は電子写真プロセスに用いることができる。実施形態において、例えば、磁気ブラシ現像法、ジャンピング単成分現像法、ハイブリッド・スキャベンジレス現像法(HSD)などを含む何れかの既知の種類の画像現像システムを画像現像装置内で用いることができる。これら及び類似の現像システムは、当業者の認識範囲内にある。
【0062】
画像形成プロセスは、例えば、帯電コンポーネント、画像形成コンポーネント、光伝導コンポーネント、現像コンポーネント、転写コンポーネント、及び定着コンポーネントを含む電子写真式装置を用いて画像を作成することを含む。実施形態において、現像コンポーネントは、キャリアを本明細書に記載のトナー組成物と混合することによって調製された現像剤を含むことができる。電子写真式装置は、高速印刷機、白黒高速印刷機、カラー印刷機などを含むことができる。
【0063】
上述の方法のいずれか1つのような適切な画像現像法によりトナー/現像剤を用いて画像が一旦形成されると、次に画像は紙などの受像媒体に転写することができる。実施形態において、トナーは、定着ロール部材を使用する画像現像装置内で画像を現像するのに用いることができる。定着ロール部材は、当業者の認識範囲内にあり、ロールからの熱及び圧力を用いてトナーを受像媒体に定着させることができる接触定着装置である。実施形態において、定着部材は、トナーが受像基材上で溶融した後又は溶融中に、トナーの融解温度を超える温度、例えば約70℃乃至約160℃、実施形態において約80℃乃至約150℃、他の実施形態においては約90℃乃至約140℃(これらの範囲外の温度を用いてもよい)に加熱することができる。
【0064】
トナー樹脂が架橋性である実施形態においては、その架橋は任意の適切な方法で達成することができる。例えば、トナー樹脂は、トナー樹脂が定着温度において架橋性である場合、基材へのトナーの定着中に架橋させることができる。架橋はまた、例えば定着後操作において、定着した画像を、トナー樹脂が架橋することになる温度まで加熱することによって達成することができる。実施形態において、架橋は、約160℃又はそれ以下、実施形態においては約70℃乃至約160℃、他の実施形態においては約80℃乃至約140℃の温度で達成することができるが、これらの範囲外の温度を用いてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂エマルジョンを形成し、
前記エマルジョンのpHをモニターし、
前記エマルジョンに塩基を添加して、前記エマルジョンを約6.5乃至約8のpHに維持する、
ステップを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記樹脂エマルジョンを、少なくとも1つの界面活性剤、随意の着色剤及び随意のワックスと接触させて小粒子を形成し、
前記小粒子を凝集させ、
前記凝集した粒子を融合させてトナー粒子を形成し、
前記トナー粒子を回収する、
ステップを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス
【請求項3】
ポリエステル樹脂エマルジョンを形成し、
前記エマルジョンのpHをモニターし、
前記エマルジョンに、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸リチウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、及びこれらの組合せから成る群から選択される塩基を添加して、前記エマルジョンを約6.5乃至約8のpHに維持する、
ステップを含み、
前記塩基を前記エマルジョンに添加することは、前記エマルジョン中の前記樹脂の分子量の減少を防ぐ、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項4】
ポリエステル樹脂エマルジョンを形成し、
前記エマルジョンのpHをモニターし、
前記エマルジョンに、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸リチウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、及びこれらの組合せから成る群から選択される塩基を添加して、前記エマルジョンを約6.5乃至約8のpHに維持し、
前記樹脂エマルジョンを、少なくとも1つの界面活性剤、随意の着色剤及び随意のワックスと接触させて小粒子を形成し、
前記小粒子を凝集させ、
前記凝集した粒子を融合させてトナー粒子を形成し、
前記トナー粒子を回収する、
ステップを含むことを特徴とするプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−140025(P2010−140025A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274153(P2009−274153)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】