トノカバー装置
【課題】トノカバーの巻き取り装置を必要とせずに、荷室用ドアの開閉状態に応じて荷室の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることを課題とする。
【解決手段】トノカバー装置30に、可撓性のトノカバー40と、該トノカバーにおける荷室用ドア20側のドア側縁部41の両端部41aを荷室用ドア20に係合させるドア側係合機構50と、トノカバー40における荷室用ドア20とは反対側の奥側縁部42の両端部42aを荷室用ドアが閉じているときに幅方向外側となり荷室用ドアが開いているときに幅方向内側となるように荷室形成部10に対して移動可能に係合させる奥側係合機構60とを設ける。荷室用ドア20が開くときに、トノカバー40のドア側縁部41が上側へ移動して荷室LR1が開放され、トノカバー40の奥側縁部42の両端部42aが幅方向内側へ移動して該奥側縁部42が奥側へ撓むようにされている。
【解決手段】トノカバー装置30に、可撓性のトノカバー40と、該トノカバーにおける荷室用ドア20側のドア側縁部41の両端部41aを荷室用ドア20に係合させるドア側係合機構50と、トノカバー40における荷室用ドア20とは反対側の奥側縁部42の両端部42aを荷室用ドアが閉じているときに幅方向外側となり荷室用ドアが開いているときに幅方向内側となるように荷室形成部10に対して移動可能に係合させる奥側係合機構60とを設ける。荷室用ドア20が開くときに、トノカバー40のドア側縁部41が上側へ移動して荷室LR1が開放され、トノカバー40の奥側縁部42の両端部42aが幅方向内側へ移動して該奥側縁部42が奥側へ撓むようにされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷室用ドアを備えた自動車に設けられるトノカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハッチバック、ステーションワゴン、等の自動車には、後部の荷室を開閉するため、上縁部を中心として外側の上方へ開動作し下方へ閉動作するバックドア(Tailgate)が設けられることがある。このような自動車等には、荷室内の荷物等が車外から視認されないようにするため、荷室の上方位置にトノカバーを略水平方向に展開して荷室の上部を遮蔽可能なトノカバー装置が設けられることがある。
【0003】
バックドアを開いて荷物を出し入れする際、トノカバーがそのまま荷室の上部を遮蔽していると、荷物の出し入れが困難となる。トノカバーを荷室の遮蔽位置から開放位置へ操作可能とする技術として、特許文献1に記載のローラブラインドが開示されている。このローラブラインドは、巻き取り装置から引き出されたブラインドシートの後縁部にある引き棒の両端を左右のガイドレールに沿って上げることにより、ブラインドシートが閉鎖位置から上方の中間位置へ移動する。ブラインドシートの後縁部を上方へ引き上げることにより、ブラインドシートを略水平な展開状態から荷室の開放状態へ切り替えることができる。
【0004】
また、特許文献2に記載のトノカバー装置は、荷室の前側に設けられる巻き取り式の前部トノカバーと、荷室の後側に設けられる巻き取り式の後部トノカバーと、前部トノカバーの後端と後部トノカバーの前端を略上下方向にスライド移動させるスライド機構を備えている。前部トノカバーと後部トノカバーは、ともに、巻き取りユニットからシート部材が引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3613581号公報
【特許文献2】特開2008−189208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したトノカバー装置は、トノカバーの巻き取り装置が必要である。
【0007】
以上を鑑み、本発明は、トノカバーの巻き取り装置を必要とせずに、荷室用ドアの開閉状態に応じて荷室の閉鎖状態と開放状態とを切り替える目的を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、閉じているときを基準とした上縁部を回動中心として外側へ開動作可能な荷室用ドアを荷室形成部に取り付けた自動車に設けられるトノカバー装置であって、
可撓性のトノカバーと、
該トノカバーにおける前記荷室用ドア側のドア側縁部の両端部を前記荷室用ドアに係合させるドア側係合機構と、
前記トノカバーにおける前記荷室用ドアとは反対側の奥側縁部の両端部を前記荷室用ドアが閉じているときに幅方向外側となり前記荷室用ドアが開いているときに幅方向内側となるように前記荷室形成部に対して移動可能に係合させる奥側係合機構とを備え、
前記荷室用ドアが閉じているときに前記奥側縁部の両端部が前記幅方向外側にある前記トノカバーが荷室の上部を覆うようにされ、
前記荷室用ドアが開くときに、前記トノカバーのドア側縁部が上側へ移動して前記荷室が開放され、前記トノカバーの奥側縁部の両端部が前記幅方向内側へ移動して該奥側縁部が奥側へ撓むようにされた態様を有する。
【0009】
荷室用ドアが閉じているとき、トノカバーの奥側縁部の両端部が幅方向外側にあり、この状態のトノカバーが荷室の上部を覆っている。荷室用ドアが開くとき、ドア側縁部の両端部が荷室用ドアに係合したトノカバーのドア側縁部が上側へ移動して荷室が開放され、トノカバーの奥側縁部の両端部が幅方向内側へ移動して該奥側縁部が奥側へ撓む。このようにして、荷室が閉鎖状態から開放状態へ切り替わる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、トノカバーの巻き取り装置を必要とせずに、荷室用ドアの開閉状態に応じて荷室の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることが可能になる。
請求項2に係る発明では、簡易な構造で荷室用ドアが開く時にトノカバーの奥側縁部を奥側へ撓ませることができる。
請求項3、請求項4に係る発明では、よりスムーズに荷室の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることができる。
請求項5に係る発明では、荷室用ドアが閉じるとき、よりスムーズに荷室を開放状態から閉鎖状態へ切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】後部扉(Tailgate)20を閉じた自動車1の後部内装を例示するための側面図である。
【図2】後部扉20を開けた自動車1の後部内装を例示するための側面図である。
【図3】後部扉20を閉じた自動車1の後部内装を例示するための斜視図である。
【図4】後部扉20を開けた自動車1の後部内装を例示するための斜視図である。
【図5】フックとともにトノカバー40の外観を例示する図である。
【図6】(a)は閉鎖状態のトノカバー40の外観を例示する平面図、(b)は開放状態のトノカバー40の外観を例示する背面図、(c)は開放状態のトノカバー40の正面側を例示する端面図、である。
【図7】トノカバー40を外した後部内装を例示するための平面図である。
【図8】後側レール51とともに後部扉20を例示する正面図である。
【図9】後部扉20を開けトノカバー40を外した後部内装を例示するための背面図である。
【図10】ガイド機構を例示するための斜視図である。
【図11】レール間の距離を例示するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下に説明する実施形態は、本発明を例示するものに過ぎない。
【0013】
(1)トノカバー装置の構成:
図1〜11は、本発明の一実施形態に係るトノカバー装置30を説明するための図であり、図示の都合上、図面間で細部が一致していないことがある。示される符号のうち、D1は前後方向、D2は前方向、D3は後方向、D4は上下方向、D5は上方向、D6は下方向、D7は車幅方向(幅方向)、D8は車幅方向外側(幅方向外側)、D9は車幅方向内側(幅方向内側)、P1は後部扉20の閉位置、P2は後部扉20の開位置、を示している。左右の位置関係を説明するときには、自動車1の後方から前方を見たときを基準として説明する。
【0014】
図1,2は、荷室形成部10の左側面部を省略して後部内装を模式的に例示している。図3,4は、ガイド機構(50,60)とトノカバー40との位置関係を模式的に例示している。図3は、荷室形成部10の左側面部及び後部扉20の図示を省略している。図4は荷室形成部10の左側面部の図示を省略している。図5は、フック(52,62)とともにトノカバー40の外観を例示する斜視図に加えて、後縁部41の拡大図及び断面図、並びに、前縁部42を前から見た正面図も例示している。図6(a),(b)は、レール(51,61)の位置を破線で例示している。図6(b)は、後部扉20の位置を二点鎖線で例示している。図6(c)は、後部扉20が閉位置P1にあるときのトノカバー前縁部42の位置を二点鎖線で例示している。図7は、前側レール61の前側端部61aの高さで荷室形成部10及び後部扉20を破断して、トノカバー40を外した後部内装を模式的に例示している。荷室形成部10の側壁部12は前側端部61aの高さから上側となるにつれ車幅方向内側D9となる部位であるため、後側端部61bが荷室形成部10の破断部から離れている。実際には、前側端部61aから高くなるにつれ車幅方向内側D9となる側壁部12に沿って前側レール61が設けられている。図8は、荷室形成部10から外した状態で後側レール51とともに後部扉20を例示している。図9は、側壁部12に対する前側レール61の位置関係を示すため、荷室形成部10の一部を破断し、後部扉20を開けトノカバー40を外した後部内装を例示している。図10は、ガイド機構(50,60)の例を説明するため、後側ガイド機構50を例示している。図11は、レール(51,61)間の距離を例示するため、荷室形成部10の左側面部を省略して後部内装を模式的に例示し、閉位置P1の後部扉20を二点鎖線で示している。
【0015】
図1,2等に示す自動車1は、道路上で使用されるように設計及び装備された路上走行自動車とされ、後席である座席2の後方に荷物を収容するための荷室LR1が形成される乗用自動車とされている。本発明を適用可能な自動車には、フロントシートとリヤシートを備える2列シートタイプのモータビークル、さらにサードシートを備える3列シートタイプのモータビークル、運転席の後方であって後席の前方に荷室が形成されるモータビークル、等があり、いわゆるステーションワゴンやワンボックスカー等が含まれる。
【0016】
荷室LR1は、概ね、リヤフロアパネル上の内装材で構成される荷室フロア3、座席2のシートバック2b、デッキサイドトリムといった内装材で構成される左右の側壁部12、後部扉(荷室用ドア)20、により区画された空間とされている。車幅方向D7に延びて略上下方向に立設されたシートバック2bにより、前側の車室と後側の荷室LR1とが仕切られている。各側壁部12は、前後方向D1及び略上下方向に広がっている。左右の側壁部12,12の後側は、後ろになるほど間隔が徐々に狭まっている。左右の側壁部12,12の上側、特に、前側レールの前側端部61aの取付位置から上側は、高くなるほど車幅方向内側D9となって間隔が徐々に狭まっている。
【0017】
車体の一部である荷室形成部10は、荷室フロア3や左右の側壁部12を有し、後部が開口部11とされている。開口部11の下部には、開口部11を塞ぐ所定の閉位置P1で後部扉20の下縁部22をロックするラッチ18が設けられている。図示を省略しているが、荷室形成部10には、後部扉20を開く方向に付勢する付勢手段や、全開に相当する所定の開位置P2で後部扉20の開動作を規制するストッパ機構等が設けられている。荷室形成部10にドア開閉装置を設けて後部扉20を電動式にしてもよい。後部扉20は、閉じているときを基準とした上縁部21を回動中心として外側へ開動作可能となるように荷室形成部10に取り付けられ、図1,3に例示する閉位置P1と、図2,4に例示する開位置P2との間で双方向に回転動作する。回動中心とは、回転動作の中心を意味する。図1,2等に示す後部扉20と荷室形成部10は上縁部21に設けられた回転軸21aにより互いに回転動作可能に繋がり、荷室形成部10が後部扉の上縁部21を軸支している。回転軸21aは、通常、別部材である軸部材で構成されるが、後部扉20と荷室形成部10との連結部に形成される分離不能の軸部でもよい。回転動作の軸の位置は、後部扉20の回転位置に応じて変わってもよい。後部扉20の内壁部23は、上縁部21から下縁部22に向かって後側(外側)となっている。内壁部23における左右の側縁部24,24に、それぞれ後側レール51が取り付けられている。
【0018】
トノカバー装置30は、トノカバー40、後側ガイド機構(ドア側係合機構)50、前側ガイド機構(奥側係合機構)60、を備えている。トノカバー装置30の概略は、以下の通りである。
【0019】
トノカバー40は、可撓性を有し、奥側縁部(前縁部42)の両端部42a,42aが幅方向内側(車幅方向内側D9)へ移動すると撓むようにされている。
ドア側係合機構(後側ガイド機構50)は、トノカバー40における荷室用ドア(後部扉20)側のドア側縁部(後縁部41)の両端部41aを荷室用ドア(後部扉20)に係合させる。
奥側係合機構(前側ガイド機構60)は、トノカバー40における荷室用ドア(後部扉20)とは反対側の奥側縁部(前縁部42)の両端部42aを荷室用ドア(後部扉20)が閉じているときに幅方向外側(車幅方向外側D8)となり荷室用ドア(後部扉20)が開いているときに幅方向内側(車幅方向内側D9)となるように荷室形成部10に対して移動可能に係合させる。
【0020】
荷室用ドア(後部扉20)が閉じているとき、奥側縁部(前縁部42)の両端部42aが幅方向外側(車幅方向外側D8)にあり、この状態のトノカバー40が荷室LR1の上部を覆うようにされている。
荷室用ドア(後部扉20)が開くときに、トノカバー40のドア側縁部(後縁部41)が上側へ移動して荷室LR1が開放される。また、荷室用ドア(後部扉20)が開くときに、トノカバー40の奥側縁部(前縁部42)の両端部42aが幅方向内側(車幅方向内側D9)へ移動して該奥側縁部(前縁部42)が奥側(前側)へ撓むようにされている。
【0021】
以上より、トノカバー装置30は、トノカバー40の巻き取り装置を必要とせずに、荷室用ドア(後部扉20)の開閉状態に応じて荷室LR1の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることができる。
【0022】
なお、車体後部の荷室は、車体デザイン等の要求により、平面視で車幅方向の長さ(車幅長)が後方及び上方に向うに従って徐々に狭まるように設定される。このため、従来の巻き取り式トノカバー装置のようにトノカバーを矩形状に形成すると、リヤピラーと後部扉の間に生じる幅狭の領域においてトノカバーが無い部分が生じて、略水平な展開状態で隙間が生じてしまう。また、後部扉の開閉動作に連動して巻き取り式トノカバーの後縁部を上方に引き上げるためには、後部扉とトノカバー後縁部との間に剛性を有する連結部材や、上方へ引き上げたトノカバー後縁部を下方へ引き戻すための付勢手段等が必要となる。これら連結部材や付勢手段を設けると、トノカバー装置近傍の見栄えの低下や、生産コストの増加や、レイアウトスペースの確保が必要となるといった問題がある。
また、特開2008-189208号公報に記載のトノカバー装置のように巻き取り式の前部トノカバーと巻き取り式の後部トノカバーとで荷室を覆うことにすると、トノカバー装置のなかでも比較的高価且つ重量の大きい巻き取りユニットが二つ必要になる。これでは、低コスト化及び軽量化の観点から問題がある。
【0023】
本トノカバー装置30は、トノカバーの巻き取り装置が不要であるので、低コスト化及び軽量化を図ることができるうえ、トノカバーを荷室の形状に合わせて形成して閉鎖状態の隙間を少なくすることができる。また、上述した連結部材や付勢手段を使用する必要が無いので、トノカバー装置近傍の見栄えを維持することができ、生産コストやレイアウトスペースの削減を図ることができる。
【0024】
次に、トノカバー装置30をより具体的に説明する。
トノカバー40は、後部扉20が閉位置P1にあるとき図1,3に例示するように荷室LR1の上部を略水平に覆う閉鎖状態となり、これにより荷室LR1内の荷物等を後部扉20の窓ガラス28等から視認し難くする。一方、後部扉20が開位置P2にあるとき図2,4に例示するように後縁部41が上がって荷室LR1を開放した状態となり、これにより荷室LR1に対して荷物等を開口部11から出し入れすることができる。
【0025】
図5に示すように、トノカバー40は、軟質のシート40Aの外周(41,42,44)にわたって鋼線(線材)46が設けられている。図5の拡大図及び断面図に示すように、シート40Aの縁部(41,42,44)は折り返されて縫製によって袋とじ状にされ、縫製部45の外側となる袋部分に鋼線46が挿入されている。
【0026】
シート40Aは、可撓性の材料が用いられ、遮光性を有する不透明の軟質材料が好ましい。シート40Aは、伸縮性に富みシワの発生し難いジャージ素材といった伸縮性素材等が好ましいものの、塩化ビニル樹脂等の樹脂成形材料を成形したシート、塩化ビニル樹脂等の樹脂材料を用いたレザー、織物、等も用いることができる。
鋼線46は、弾性を示す線材が用いられ、トノカバー40に対して車幅方向内側D9へ幅を狭める力が加わると弾性変形し、この力が無くなると元の形状に復元する。また、トノカバー全体を小さく折り畳むことを可能にさせ、トノカバー装置を使用するときにトノカバーを元の形状に復元させる。鋼線46には、自由に折り曲げ可能で復元力のあるものが好ましい。なお、弾性を示す線材であれば、鋼線46の代わりに用いてもよい。
【0027】
図5や図6(a)〜(c)等に示すトノカバー40は、後縁部(ドア側縁部)41の両端部41a,41aに後側フック(ドア側係合部)52,52が取り付けられ、前縁部(奥側縁部)42の両端部42a,42aに前側フック(奥側係合部)62,62が取り付けられている。図6(a)に示すように、前縁部の両端部42a,42a間の幅は、前側レール61の前側端部61a,61a間の幅W1に合わせられている。後縁部の両端部41a,41a間の幅は、後側レール51,51間の幅に合わせられている。前側フック62と後側フック52との前後方向D1の長さは、前側レール61の前側端部61aと後側レール51の後側端部51bとの前後方向D1の長さL1(図11参照)に合わせられている。
【0028】
後縁部41は、後部扉の内壁部23の形状に合わせて若干、後方へ膨らんでいる。前縁部42には、側縁部44,44に近い車幅方向D7の途中で段状に上がった弾性を示すクランク部(形状保持部)43,43が設けられている。前縁部42に設けられる鋼線46を車幅方向D7の途中で段状に上がった形状に形成することにより、前縁部42にクランク部43,43を形成することができる。クランク部43,43は、後部扉20が開いてくときにトノカバーの前縁部の両端部42a,42aが車幅方向内側D9へ移動するときに前縁部42を前側(奥側)へ撓ませる撓ませ手段を構成する。前縁部42をクランク状に曲げるという簡易な構造で、後部扉20が開くときにトノカバーの前縁部42を前側へ撓ませることができる。
【0029】
トノカバー40は、前後方向D1の位置に応じて幅が側壁部12,12間の距離よりも若干狭くされている。前縁部42に繋がる大半の側縁部44,44は、広幅部44b,44bとされ、該広幅部44b,44bの後側が後縁部41に繋がる狭幅部44a,44aとされている。後ろになるほど幅が狭まる荷室後部の形状に対応した狭幅部44a,44aがあり、後側ガイド機構50が後縁部の両端部41a,41aを後部扉20に係合させるので、リヤピラーと後部扉20の間に形成される幅狭の領域において、荷室LR1を覆い隠す閉鎖状態で隙間が少なくなる。
【0030】
上述したシート40A及び鋼線46により、トノカバー40は軽量かつ安価に構成されている。また、シート40Aに伸縮性素材を用いることにより、トノカバー装置の不使用時にはトノカバー全体を小さく折り畳んでトノカバーの収納スペースを極めて小さくすることができ、荷室の閉鎖状態で背の高い荷物を荷室に入れた場合でも保持ネットの代わりとしてトノカバーを活用することができる。
【0031】
図1〜4に例示する後側ガイド機構(ドア側係合機構)50は、後部扉20において上縁部21から下縁部22に向かって後側(外側)となる側縁部24に沿って、トノカバーの後縁部の両端部41aを後部扉20が閉じているときに後部扉の下縁部22側となり後部扉20が開いているときに後部扉の上縁部21側となるように後部扉20に対して移動可能に係合させている。後側ガイド機構50は、後側レール(ドア側ガイド部)51と後側フック(ドア側係合部)52とで構成され、左右に設けられている。
【0032】
図10に例示するように、各後側レール51は、概ね、後部扉20の側縁部24に沿った曲線状に形成され、該側縁部24に取り付けられている。側縁部24は下側となるほど後側となり上側となるほど前側となるため、図1,7,8に示すように、後側レール51の前側端部(上端部側端部)51aは、後側端部(下端部側端部)51bよりも上側かつ前側とされる。
各後側フック52は、一端にトノカバー40への固定部を有し他端が略C字状に形成され、該固定部でトノカバーの後縁部の両端部41a,41aに取り付けられている。後側フック52は、C字状部の開口部52bから入れた後側レール51を貫通させた状態とする挿通部52aを有している。この挿通部52aに後側レール51を通した後側フック52は、後側レール51に対してスライド可能に係合しており、トノカバーの後縁部の両端部41aを後部扉の側縁部24に沿ってガイドする。
【0033】
図1〜4に例示する前側ガイド機構(奥側係合機構)60は、トノカバーの前縁部42の両端部42aを後部扉20が閉じているときに前側(奥側)かつ下側となり後部扉20が開いているときに後側(後部扉20側)かつ上側となるように荷室形成部10に対して移動可能に係合させている。前側ガイド機構60は、前側レール(奥側ガイド部)61と前側フック(奥側係合部)62とで構成され、左右に設けられている。
【0034】
各前側レール61は、概ね、荷室形成部の側壁部12に沿った直線状又は曲線状に形成され、該側壁部12に取り付けられている。前側レール61の取付位置における側壁部12は上側となるほど車幅方向内側D9となるため、前側レール61の前側端部(奥側端部)61a,61a間の幅をW1(図6(a)参照)、前側レール61の後側端部(ドア側端部)61b,61b間の幅をW2(図6(b)参照)とすると、W1>W2とされている。従って、図1,2,7,9に示すように、前側レール61の前側端部(奥側端部)61aは、後側端部(ドア側端部)61bよりも下側かつ車幅方向外側D8とされる。
各前側フック62は、後側フック52と同様、一端にトノカバー40への固定部を有し他端が略C字状に形成され、該固定部でトノカバーの前縁部の両端部42a,42aに固定されている。前側フック62は、C字状部の開口部から入れた前側レール61を貫通させた状態とする挿通部を有している。この挿通部に前側レール61を通した前側フック62は、前側レール61に対してスライド可能に係合しており、トノカバーの前縁部の両端部42aを荷室形成部の側壁部12に沿ってガイドする。
【0035】
後側レール51及び前側レール61には、合成樹脂や金属といった棒状成形部材等を用いることができる。この棒状部材の断面形状は、円形に限定されず、楕円形、略四角形といった略多角形、等でもよい。
後側フック52及び前側フック62には、合成樹脂といった若干弾性を示す成形部材等を用いることができる。フックの開口部(52b)の間隔をレール(51,61)の直径よりも若干短くすることにより、レール(51,61)に対してフック(52,62)をガイド可能に係合させたり取り外したりすることが容易になる。また、後部扉20が開位置P2にあるときの後側レール51や、トノカバー40を使用しないときのレール(51,61)は、ハンガー代わりに利用することができ、便利である。
【0036】
本トノカバー装置30は、閉鎖状態のトノカバー40における前縁部の両端部42a,42a間の見かけ幅をW1’、開放状態のトノカバー40における前縁部の両端部42a,42a間の見かけ幅をW2’とすると、W1’>W2’であることを特徴とする。見かけ幅W1’は図6(a)に示すような前側レールの前側端部61a,61a間の幅W1に合わせられ、見かけ幅W2’は図6(b)に示すような前側レールの後側端部61b,61b間の幅W2に合わせられているからである。これにより、トノカバー40が展開状態から開放状態に切り替わる過程で、上方(D5)に向うに従って徐々に狭まる側壁部12,12に可撓性のトノカバーの前縁部42が干渉して徐々に上側へ撓んでいき、トノカバーの後縁部41が上がっていく。後部扉20が開位置P2になると、持ち上がったトノカバー40が前側の後部扉20に向かって張り付くように撓んでおり、荷室LR1の上部が大きく開放される。
【0037】
また、トノカバーの前縁部42に設けられたクランク部43により、開放状態におけるトノカバー40の撓み方向が前側とされ、後側へ撓む場合と比べて荷室LR1がより大きく開放される。さらに、図2,4に示すように、シートバック2bの上方の空間が自動車1の後方の位置から見える状態までトノカバー40が開放される。これにより、車室の様子を視認することができるため防犯上有利であり、荷室LR1から座席2に直接アクセスすることができ、車室内の照明を荷室LR1にまで取り込むことができるといった、使用性の向上を図ることができる。
【0038】
次に、レール(51,61)の端部(51a,51b,61a,61b)の好ましい位置関係を説明する。
【0039】
図11に例示する各長さは、以下の通りである。
L1は、後部扉20が閉位置P1にあるときの、前側ガイド機構60の前側端部61aと後側ガイド機構50の後側端部51bとの距離である。
L11は、後部扉20が閉位置P1にあるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の前側端部51aとの距離である。
L2は、後部扉20が開位置P2にあるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の前側端部51aとの距離である。
L3は、後部扉20が開位置P2にあるときの、前側ガイド機構60の前側端部61aと後側ガイド機構50の前側端部51aとの距離である。
L4は、後部扉20が開位置P2にあるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の後側端部51bとの距離である。
L5は、トノカバーの前縁部の両端部42aが前側ガイド機構60の後側端部61bとなり後縁部の両端部41aが後側ガイド機構50の後側端部51bとなるような中間位置P3に後部扉20があるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の後側端部51bとの距離である。
L6は、後部扉20が上記中間位置P3にあるときの、前側ガイド機構60の前側端部61aと後側ガイド機構50の後側端部51bとの距離である。
L7は、後部扉20が上記中間位置P3にあるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の前側端部51aとの距離である。
L8は、後部扉20が閉位置P1にあるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の後側端部51bとの距離である。
【0040】
好ましい位置関係は、以下の通りである。
L11<L1
L2≦L1
L3>L1
L4>L1
L6>L1
L5<L4
L7<L2
L8<L5
【0041】
上側の端部(61b,51a)間の距離L11が下側の端部(61a,51b)間の距離L1よりも小さいことにより、荷室LR1に背の高い荷物を入れて後部扉20を閉じたときにトノカバー40が荷物に引っ掛かったときにトノカバーの端部(42a,41a)がレールの下側端部(61a,51b)よりも上側にとどまる。これにより、トノカバー40が劣化し難くされている。
【0042】
開放状態における上側端部(61b,51a)間の距離L2が閉鎖状態における下側端部(61a,51b)間の距離L1以下であることにより、後部扉20を開いたときにトノカバーの端部(42a,41a)間に過度の引っ張り力が加わらない。これにより、トノカバー40が劣化し難くされている。なお、L2=L1である場合、レール(61,51)が必要最低限で済むので、レールの低コスト化を図ることができる。
【0043】
開放状態における前側端部61a,51a間の距離L3がL1よりも大きいことにより、後部扉20を開くときにトノカバーの前縁部の両端部42a,42aが前側レール61に沿って上側へ移動し車幅方向内側D9へ移動する。これにより、トノカバーの前縁部42が前側へ撓み、荷室LR1の上部が大きく開放される。
【0044】
開放状態における後側端部61b,51b間の距離L4がL1よりも大きいことにより、後部扉20を開くときにトノカバーの後縁部の両端部41a,41aが後側レール51に沿って上側へ移動する。これにより、トノカバーの後縁部41が後部扉20の開動作以上に前側へ移動し、荷室LR1の上部が大きく開放される。
【0045】
また、L6>L1であることにより後部扉20が閉位置P1から中間位置P3へ開いていくときにトノカバーの前縁部の両端部42aが前側レール61に沿って後側端部61bの方へ引っ張られて移動し、L5<L4であることにより後部扉20が中間位置P3から開位置P2へ開いていくときにトノカバーの後縁部の両端部41aが後側レール51に沿って前側端部51aの方へ引っ張られて移動する。さらに、L7<L2であることにより後部扉20が開位置P2から中間位置P3へ閉じていくときにトノカバー40の自重で後縁部の両端部41aが後側レール51に沿って後側端部51bの方へ移動し、L8<L5であることにより後部扉20が中間位置P3から閉位置P1へ閉じていくときにトノカバー40の自重等で前縁部の両端部42aが前側レール61に沿って前側端部61aの方へ移動する。このとき、前側に撓んでいるトノカバーの前縁部42は車幅方向外側D8へ拡がろうとする反発力を前側ガイド機構60に加えるので、両端部42aには前側レール61に沿って比較的幅狭に配置された後側端部61bから比較的幅広に配置された前側端部61aの方へ移動しようとする力が加わっている。この力があることにより、トノカバー40の自重だけでは前縁部の両端部42aが前側レールの前側端部61aの方へスムーズに移動しない場合であっても、トノカバーの前縁部の両端部42aが前側レールの比較的幅広に配置された前側端部61aの方へスムーズに移動する。
以上の様々な観点から、本トノカバー装置30は、よりスムーズに荷室LR1の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることができるようにされている。
【0046】
(2)トノカバー装置の動作、作用及び効果:
以下、トノカバー装置30の動作、作用及び効果を説明する。
後部扉20が閉位置P1にあるとき、図1,3に示すように、トノカバーの前縁部42の高さは前側レールの前側端部61aに合わせられ、トノカバーの後縁部41の高さは後側レールの後側端部51bに合わせられ、トノカバー40は荷室LR1の上部を略水平に覆っている。このとき、トノカバーの前縁部の両端部42aは、図6(a)に示すように、車幅方向外側D8にある。
【0047】
後部扉20が開くとき、トノカバーの後縁部41が後部扉20とともに上側へ移動するとともに、前側レールの前側端部61aから後側レールの後側端部51bが離れていく。これにより、トノカバーの前縁部42が前側レール61に沿って上側へ移動し、トノカバーの後縁部41が後側レール51に沿って後部扉の上縁部21側へ移動する。すると、トノカバー40は後縁部41が立ち上がった状態となり、荷室LR1が開放される。トノカバーの前縁部42は、上側へ移動するにつれ両端部42a,42a間が狭まるため、徐々に上側へ撓んでいく。L1=L2(図11参照)である場合、後部扉20が開位置P2になると、図2,4に示すように、トノカバーの前縁部42の位置は前側レールの後側端部61bに合わせられ、トノカバーの後縁部41の位置は後側レールの前側端部51aに合わせられる。このとき、トノカバーの前縁部の両端部42aは、図6(b),(c)に示すように、車幅方向内側D9にあり、見かけ幅が狭まっている。そのため、開放状態のトノカバー40が前側の後部扉20に向かって張り付くように前側へ撓み、荷室LR1の上部が大きく開放される。従って、荷室LR1を広く活用することができる。
【0048】
図11を参照して詳しく説明すると、後部扉20が閉位置P1から中間位置P3へ開いていくとき、L6>L1であることにより、トノカバーの前縁部の両端部42aに取り付けられた前側フック62が後側かつ上側の方へ引っ張られてスライドし、トノカバーの前縁部42がスムーズに後側かつ上側の方へ移動する。後部扉20が中間位置P3から開位置P2へ開いていくとき、L5<L4であることにより、トノカバーの前縁部の両端部42aに取り付けられた前側フック62が前側レールの後側端部61bに突き当たった状態で後縁部の両端部41aが後側レール51に沿って前側端部51aの方へ引っ張られてスムーズに移動する。
【0049】
後部扉20が閉じるとき、トノカバーの後縁部41が後部扉20とともに下側へ移動するとともに、後側レールの後側端部51bが前側レールの前側端部61aに近づいていく。すると、トノカバーの前縁部42が自重により前側レール61に沿って下側へ移動し、トノカバーの後縁部41が自重により後側レール51に沿って後部扉の下縁部22側へ移動する。可撓性のトノカバーの前縁部42は、下側へ移動するにつれ両端部42a,42a間が広がるため、上側への撓みが徐々に解消されていく。後部扉20が閉位置P1になると、図1,3に示すように、トノカバーの前縁部42の高さは前側レールの前側端部61aに合わせられ、トノカバーの後縁部41の高さは後側レールの後側端部51bに合わせられる。これにより、トノカバー40が荷室LR1の上部を覆う閉鎖状態に戻る。
【0050】
図11を参照して詳しく説明すると、後部扉20が開位置P2から中間位置P3へ閉じていくとき、L7<L2であることにより、トノカバー40の自重で後縁部の両端部41aに取り付けられた前側フック62が後側レール51に沿って後側端部51bの方へスムーズにスライドする。後部扉20が中間位置P3から閉位置P1へ閉じていくとき、L8<L5であることにより、トノカバー40の自重、及び、撓んでいる前縁部42の車幅方向外側D8への付勢力により、前縁部の両端部42aに取り付けられた前側フック62が比較的幅広となる前側かつ下側の方へスライドし、トノカバーの前縁部42がスムーズに前側かつ下側の方へ移動する。
【0051】
以上説明したように、本トノカバー装置は、略水平な閉鎖状態において荷室の上方位置をほぼ隙間なく覆い、且つ、巻き取りユニットを必要としない低コスト及び軽量の構成をもってして、荷室用ドアの開閉動作に連動して閉鎖状態と開放状態とに切り替えることができる。すなわち、トノカバーの巻き取り装置が必要とされずに、荷室用ドアの開閉状態に応じて荷室の閉鎖状態と開放状態とが切り替えられる。
【0052】
なお、本発明は、閉じているときを基準とした上縁部を回動中心として後側へ開動作可能な後部扉と、左右の側壁部間に荷室を形成する荷室形成部とを備え、前記後部扉を前記荷室形成部に取り付けた自動車に設けられるトノカバー装置であって、
可撓性を有するトノカバーと、前記左右の側壁部にそれぞれ設置される前側ガイド機構と、前記後部扉に設置される左右の後側ガイド機構と、を備え、
前記トノカバーの前側両端が前記前側ガイド機構に対してガイド可能に係合され、
前記トノカバーの後側両端が前記後側ガイド機構に対してガイド可能に係合され、
前記トノカバーが前記荷室の上部を覆う閉鎖状態から前記荷室を開放した状態に切り替わる過程で、前記該トノカバーの前側両端が前記前側ガイド機構によって上方且つ後方にガイドされ、前記トノカバーの後側両端が前記後側ガイド機構によって上方且つ前方にガイドされ、前記トノカバーの車両前後方向の見かけ長さが一定である一方、前記トノカバーの前縁部における車幅方向の見かけ長さが狭幅となる側面を有する。
【0053】
上記側面によれば、トノカバーの巻き取り装置を必要とせずに、後部扉の開閉状態に応じて荷室の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることが可能になる。
【0054】
(3)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、荷室用ドアは、荷室の側部に配置され、側方へ開くドアとされてもよい。
トノカバーの奥側縁部は、上記クランク部43が無くても、閉鎖状態を基準として上側へ若干膨らんだ形状等とされると、荷室用ドアが開いてトノカバーの奥側縁部の両端部が幅方向内側へ移動したときに奥側へ撓む。この形状等も、撓ませ手段を構成する。
また、閉鎖状態を基準としてトノカバーの奥側縁部が上側へ若干膨らむようにトノカバーの奥側縁部の両端部間を紐やばね等の端部間連結手段で連結してもよい。すると、荷室用ドアが開いてトノカバーの奥側縁部の両端部が幅方向内側へ移動したときにトノカバーの奥側縁部が奥側へ撓む。このような端部間連結手段も、撓ませ手段を構成する。
さらに、トノカバーの奥側縁部の途中、例えば、幅方向の中間位置を紐や付勢手段等の上下連結手段で荷室用ドアの閉じているときを基準とした上方の内壁部に連結してもよい。上下連結手段には、荷室用ドアの内壁部からトノカバーの奥側縁部の途中を所定の距離以上離れないようにする紐や、トノカバーの奥側縁部の途中を荷室用ドアの内壁部の方へ付勢するばね等を用いることができる。このような上下連結手段も、撓ませ手段を構成する。
【0055】
トノカバーは、シートの外周を部分的に補強する樹脂部品を取り付けたり、鋼線を棒状の押出品に代えその断面形状によって撓み方向を一定にしたりしてもよい。
前側ガイド機構及び後側ガイド機構は、溝形状のレールに係合部材を嵌め込みスライドさせる構造等でもよい。
【0056】
ドア側係合機構は、トノカバーのドア側縁部の両端部を幅方向へ移動させてもよい。例えば、後側レールの前側端部が後側端部よりも車幅方向内側とされると、後部扉が開いてトノカバーの後縁部の両端部が後部扉の上縁部側へ移動したときにトノカバーの後縁部の両端部間が狭まり、トノカバーの後縁部が撓む。このような構成は、後側ガイド機構の後側端部の高さから上側となるにつれ車幅方向内側となる側縁部を有する後部扉に設けるのが容易である。トノカバーの後縁部が閉鎖状態を基準として後方へ膨らんでいると、後部扉が開くときにトノカバーの後縁部がさらに後方へ撓む。むろん、開放状態におけるトノカバーの後縁部を前側へ撓ませるようにしてもよい。
【0057】
また、ドア側係合機構は、荷室用ドアに対して移動しないようにトノカバーの後縁部の両端部を係合させてもよい。
さらに、奥側係合機構は、荷室形成部に対して車幅方向以外には移動しないようにトノカバーの前縁部の両端部を係合させてもよい。例えば、荷室用ドアが開くときに連動して幅方向内側へ進出し荷室用ドアが閉じるときに連動して幅方向外側へ退避する棒状等の係合部材を両側壁部に設け、この係合部材の幅方向内側の端部にトノカバーの奥側縁部の両端部を係合すれば、この係合部材が奥側係合機構となる。
すなわち、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる技術等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0058】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、有用なトノカバー装置、トノカバー、係合部付きトノカバー、といった技術等を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…自動車、2…座席、2b…シートバック、3…荷室フロア、
10…荷室形成部、11…開口部、12…側壁部、
20…後部扉(荷室用ドア)、
21…上縁部、21a…回転軸、22…下縁部、
23…内壁部、24…内壁部の側縁部、
30…トノカバー装置、
40…トノカバー、40A…シート、
41…後縁部(ドア側縁部)、41a…ドア側縁部の両端部、
42…前縁部(奥側縁部)、42a…奥側縁部の両端部、
43…クランク部(形状保持部)、
44…側縁部、44a…狭幅部、44b…広幅部、
45…縫製部、46…鋼線(線材)、
50…後側ガイド機構(ドア側係合機構)、
51…後側レール(ドア側ガイド部)、
51a…前側端部(上端部側端部)、51b…後側端部(下端部側端部)、
52…後側フック(ドア側係合部)、52a…挿通部、52b…開口部、
60…前側ガイド機構(奥側係合機構)、
61…前側レール(奥側ガイド部)、
61a…前側端部(奥側端部)、61b…後側端部(ドア側端部)、
62…前側フック(奥側係合部)、
D1…前後方向、D2…前方向、D3…後方向、
D4…上下方向、D5…上方向、D6…下方向、
D7…車幅方向(幅方向)、
D8…車幅方向外側(幅方向外側)、D9…車幅方向内側(幅方向内側)、
LR1…荷室、
P1…閉位置、P2…開位置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷室用ドアを備えた自動車に設けられるトノカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハッチバック、ステーションワゴン、等の自動車には、後部の荷室を開閉するため、上縁部を中心として外側の上方へ開動作し下方へ閉動作するバックドア(Tailgate)が設けられることがある。このような自動車等には、荷室内の荷物等が車外から視認されないようにするため、荷室の上方位置にトノカバーを略水平方向に展開して荷室の上部を遮蔽可能なトノカバー装置が設けられることがある。
【0003】
バックドアを開いて荷物を出し入れする際、トノカバーがそのまま荷室の上部を遮蔽していると、荷物の出し入れが困難となる。トノカバーを荷室の遮蔽位置から開放位置へ操作可能とする技術として、特許文献1に記載のローラブラインドが開示されている。このローラブラインドは、巻き取り装置から引き出されたブラインドシートの後縁部にある引き棒の両端を左右のガイドレールに沿って上げることにより、ブラインドシートが閉鎖位置から上方の中間位置へ移動する。ブラインドシートの後縁部を上方へ引き上げることにより、ブラインドシートを略水平な展開状態から荷室の開放状態へ切り替えることができる。
【0004】
また、特許文献2に記載のトノカバー装置は、荷室の前側に設けられる巻き取り式の前部トノカバーと、荷室の後側に設けられる巻き取り式の後部トノカバーと、前部トノカバーの後端と後部トノカバーの前端を略上下方向にスライド移動させるスライド機構を備えている。前部トノカバーと後部トノカバーは、ともに、巻き取りユニットからシート部材が引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3613581号公報
【特許文献2】特開2008−189208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したトノカバー装置は、トノカバーの巻き取り装置が必要である。
【0007】
以上を鑑み、本発明は、トノカバーの巻き取り装置を必要とせずに、荷室用ドアの開閉状態に応じて荷室の閉鎖状態と開放状態とを切り替える目的を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、閉じているときを基準とした上縁部を回動中心として外側へ開動作可能な荷室用ドアを荷室形成部に取り付けた自動車に設けられるトノカバー装置であって、
可撓性のトノカバーと、
該トノカバーにおける前記荷室用ドア側のドア側縁部の両端部を前記荷室用ドアに係合させるドア側係合機構と、
前記トノカバーにおける前記荷室用ドアとは反対側の奥側縁部の両端部を前記荷室用ドアが閉じているときに幅方向外側となり前記荷室用ドアが開いているときに幅方向内側となるように前記荷室形成部に対して移動可能に係合させる奥側係合機構とを備え、
前記荷室用ドアが閉じているときに前記奥側縁部の両端部が前記幅方向外側にある前記トノカバーが荷室の上部を覆うようにされ、
前記荷室用ドアが開くときに、前記トノカバーのドア側縁部が上側へ移動して前記荷室が開放され、前記トノカバーの奥側縁部の両端部が前記幅方向内側へ移動して該奥側縁部が奥側へ撓むようにされた態様を有する。
【0009】
荷室用ドアが閉じているとき、トノカバーの奥側縁部の両端部が幅方向外側にあり、この状態のトノカバーが荷室の上部を覆っている。荷室用ドアが開くとき、ドア側縁部の両端部が荷室用ドアに係合したトノカバーのドア側縁部が上側へ移動して荷室が開放され、トノカバーの奥側縁部の両端部が幅方向内側へ移動して該奥側縁部が奥側へ撓む。このようにして、荷室が閉鎖状態から開放状態へ切り替わる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、トノカバーの巻き取り装置を必要とせずに、荷室用ドアの開閉状態に応じて荷室の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることが可能になる。
請求項2に係る発明では、簡易な構造で荷室用ドアが開く時にトノカバーの奥側縁部を奥側へ撓ませることができる。
請求項3、請求項4に係る発明では、よりスムーズに荷室の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることができる。
請求項5に係る発明では、荷室用ドアが閉じるとき、よりスムーズに荷室を開放状態から閉鎖状態へ切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】後部扉(Tailgate)20を閉じた自動車1の後部内装を例示するための側面図である。
【図2】後部扉20を開けた自動車1の後部内装を例示するための側面図である。
【図3】後部扉20を閉じた自動車1の後部内装を例示するための斜視図である。
【図4】後部扉20を開けた自動車1の後部内装を例示するための斜視図である。
【図5】フックとともにトノカバー40の外観を例示する図である。
【図6】(a)は閉鎖状態のトノカバー40の外観を例示する平面図、(b)は開放状態のトノカバー40の外観を例示する背面図、(c)は開放状態のトノカバー40の正面側を例示する端面図、である。
【図7】トノカバー40を外した後部内装を例示するための平面図である。
【図8】後側レール51とともに後部扉20を例示する正面図である。
【図9】後部扉20を開けトノカバー40を外した後部内装を例示するための背面図である。
【図10】ガイド機構を例示するための斜視図である。
【図11】レール間の距離を例示するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下に説明する実施形態は、本発明を例示するものに過ぎない。
【0013】
(1)トノカバー装置の構成:
図1〜11は、本発明の一実施形態に係るトノカバー装置30を説明するための図であり、図示の都合上、図面間で細部が一致していないことがある。示される符号のうち、D1は前後方向、D2は前方向、D3は後方向、D4は上下方向、D5は上方向、D6は下方向、D7は車幅方向(幅方向)、D8は車幅方向外側(幅方向外側)、D9は車幅方向内側(幅方向内側)、P1は後部扉20の閉位置、P2は後部扉20の開位置、を示している。左右の位置関係を説明するときには、自動車1の後方から前方を見たときを基準として説明する。
【0014】
図1,2は、荷室形成部10の左側面部を省略して後部内装を模式的に例示している。図3,4は、ガイド機構(50,60)とトノカバー40との位置関係を模式的に例示している。図3は、荷室形成部10の左側面部及び後部扉20の図示を省略している。図4は荷室形成部10の左側面部の図示を省略している。図5は、フック(52,62)とともにトノカバー40の外観を例示する斜視図に加えて、後縁部41の拡大図及び断面図、並びに、前縁部42を前から見た正面図も例示している。図6(a),(b)は、レール(51,61)の位置を破線で例示している。図6(b)は、後部扉20の位置を二点鎖線で例示している。図6(c)は、後部扉20が閉位置P1にあるときのトノカバー前縁部42の位置を二点鎖線で例示している。図7は、前側レール61の前側端部61aの高さで荷室形成部10及び後部扉20を破断して、トノカバー40を外した後部内装を模式的に例示している。荷室形成部10の側壁部12は前側端部61aの高さから上側となるにつれ車幅方向内側D9となる部位であるため、後側端部61bが荷室形成部10の破断部から離れている。実際には、前側端部61aから高くなるにつれ車幅方向内側D9となる側壁部12に沿って前側レール61が設けられている。図8は、荷室形成部10から外した状態で後側レール51とともに後部扉20を例示している。図9は、側壁部12に対する前側レール61の位置関係を示すため、荷室形成部10の一部を破断し、後部扉20を開けトノカバー40を外した後部内装を例示している。図10は、ガイド機構(50,60)の例を説明するため、後側ガイド機構50を例示している。図11は、レール(51,61)間の距離を例示するため、荷室形成部10の左側面部を省略して後部内装を模式的に例示し、閉位置P1の後部扉20を二点鎖線で示している。
【0015】
図1,2等に示す自動車1は、道路上で使用されるように設計及び装備された路上走行自動車とされ、後席である座席2の後方に荷物を収容するための荷室LR1が形成される乗用自動車とされている。本発明を適用可能な自動車には、フロントシートとリヤシートを備える2列シートタイプのモータビークル、さらにサードシートを備える3列シートタイプのモータビークル、運転席の後方であって後席の前方に荷室が形成されるモータビークル、等があり、いわゆるステーションワゴンやワンボックスカー等が含まれる。
【0016】
荷室LR1は、概ね、リヤフロアパネル上の内装材で構成される荷室フロア3、座席2のシートバック2b、デッキサイドトリムといった内装材で構成される左右の側壁部12、後部扉(荷室用ドア)20、により区画された空間とされている。車幅方向D7に延びて略上下方向に立設されたシートバック2bにより、前側の車室と後側の荷室LR1とが仕切られている。各側壁部12は、前後方向D1及び略上下方向に広がっている。左右の側壁部12,12の後側は、後ろになるほど間隔が徐々に狭まっている。左右の側壁部12,12の上側、特に、前側レールの前側端部61aの取付位置から上側は、高くなるほど車幅方向内側D9となって間隔が徐々に狭まっている。
【0017】
車体の一部である荷室形成部10は、荷室フロア3や左右の側壁部12を有し、後部が開口部11とされている。開口部11の下部には、開口部11を塞ぐ所定の閉位置P1で後部扉20の下縁部22をロックするラッチ18が設けられている。図示を省略しているが、荷室形成部10には、後部扉20を開く方向に付勢する付勢手段や、全開に相当する所定の開位置P2で後部扉20の開動作を規制するストッパ機構等が設けられている。荷室形成部10にドア開閉装置を設けて後部扉20を電動式にしてもよい。後部扉20は、閉じているときを基準とした上縁部21を回動中心として外側へ開動作可能となるように荷室形成部10に取り付けられ、図1,3に例示する閉位置P1と、図2,4に例示する開位置P2との間で双方向に回転動作する。回動中心とは、回転動作の中心を意味する。図1,2等に示す後部扉20と荷室形成部10は上縁部21に設けられた回転軸21aにより互いに回転動作可能に繋がり、荷室形成部10が後部扉の上縁部21を軸支している。回転軸21aは、通常、別部材である軸部材で構成されるが、後部扉20と荷室形成部10との連結部に形成される分離不能の軸部でもよい。回転動作の軸の位置は、後部扉20の回転位置に応じて変わってもよい。後部扉20の内壁部23は、上縁部21から下縁部22に向かって後側(外側)となっている。内壁部23における左右の側縁部24,24に、それぞれ後側レール51が取り付けられている。
【0018】
トノカバー装置30は、トノカバー40、後側ガイド機構(ドア側係合機構)50、前側ガイド機構(奥側係合機構)60、を備えている。トノカバー装置30の概略は、以下の通りである。
【0019】
トノカバー40は、可撓性を有し、奥側縁部(前縁部42)の両端部42a,42aが幅方向内側(車幅方向内側D9)へ移動すると撓むようにされている。
ドア側係合機構(後側ガイド機構50)は、トノカバー40における荷室用ドア(後部扉20)側のドア側縁部(後縁部41)の両端部41aを荷室用ドア(後部扉20)に係合させる。
奥側係合機構(前側ガイド機構60)は、トノカバー40における荷室用ドア(後部扉20)とは反対側の奥側縁部(前縁部42)の両端部42aを荷室用ドア(後部扉20)が閉じているときに幅方向外側(車幅方向外側D8)となり荷室用ドア(後部扉20)が開いているときに幅方向内側(車幅方向内側D9)となるように荷室形成部10に対して移動可能に係合させる。
【0020】
荷室用ドア(後部扉20)が閉じているとき、奥側縁部(前縁部42)の両端部42aが幅方向外側(車幅方向外側D8)にあり、この状態のトノカバー40が荷室LR1の上部を覆うようにされている。
荷室用ドア(後部扉20)が開くときに、トノカバー40のドア側縁部(後縁部41)が上側へ移動して荷室LR1が開放される。また、荷室用ドア(後部扉20)が開くときに、トノカバー40の奥側縁部(前縁部42)の両端部42aが幅方向内側(車幅方向内側D9)へ移動して該奥側縁部(前縁部42)が奥側(前側)へ撓むようにされている。
【0021】
以上より、トノカバー装置30は、トノカバー40の巻き取り装置を必要とせずに、荷室用ドア(後部扉20)の開閉状態に応じて荷室LR1の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることができる。
【0022】
なお、車体後部の荷室は、車体デザイン等の要求により、平面視で車幅方向の長さ(車幅長)が後方及び上方に向うに従って徐々に狭まるように設定される。このため、従来の巻き取り式トノカバー装置のようにトノカバーを矩形状に形成すると、リヤピラーと後部扉の間に生じる幅狭の領域においてトノカバーが無い部分が生じて、略水平な展開状態で隙間が生じてしまう。また、後部扉の開閉動作に連動して巻き取り式トノカバーの後縁部を上方に引き上げるためには、後部扉とトノカバー後縁部との間に剛性を有する連結部材や、上方へ引き上げたトノカバー後縁部を下方へ引き戻すための付勢手段等が必要となる。これら連結部材や付勢手段を設けると、トノカバー装置近傍の見栄えの低下や、生産コストの増加や、レイアウトスペースの確保が必要となるといった問題がある。
また、特開2008-189208号公報に記載のトノカバー装置のように巻き取り式の前部トノカバーと巻き取り式の後部トノカバーとで荷室を覆うことにすると、トノカバー装置のなかでも比較的高価且つ重量の大きい巻き取りユニットが二つ必要になる。これでは、低コスト化及び軽量化の観点から問題がある。
【0023】
本トノカバー装置30は、トノカバーの巻き取り装置が不要であるので、低コスト化及び軽量化を図ることができるうえ、トノカバーを荷室の形状に合わせて形成して閉鎖状態の隙間を少なくすることができる。また、上述した連結部材や付勢手段を使用する必要が無いので、トノカバー装置近傍の見栄えを維持することができ、生産コストやレイアウトスペースの削減を図ることができる。
【0024】
次に、トノカバー装置30をより具体的に説明する。
トノカバー40は、後部扉20が閉位置P1にあるとき図1,3に例示するように荷室LR1の上部を略水平に覆う閉鎖状態となり、これにより荷室LR1内の荷物等を後部扉20の窓ガラス28等から視認し難くする。一方、後部扉20が開位置P2にあるとき図2,4に例示するように後縁部41が上がって荷室LR1を開放した状態となり、これにより荷室LR1に対して荷物等を開口部11から出し入れすることができる。
【0025】
図5に示すように、トノカバー40は、軟質のシート40Aの外周(41,42,44)にわたって鋼線(線材)46が設けられている。図5の拡大図及び断面図に示すように、シート40Aの縁部(41,42,44)は折り返されて縫製によって袋とじ状にされ、縫製部45の外側となる袋部分に鋼線46が挿入されている。
【0026】
シート40Aは、可撓性の材料が用いられ、遮光性を有する不透明の軟質材料が好ましい。シート40Aは、伸縮性に富みシワの発生し難いジャージ素材といった伸縮性素材等が好ましいものの、塩化ビニル樹脂等の樹脂成形材料を成形したシート、塩化ビニル樹脂等の樹脂材料を用いたレザー、織物、等も用いることができる。
鋼線46は、弾性を示す線材が用いられ、トノカバー40に対して車幅方向内側D9へ幅を狭める力が加わると弾性変形し、この力が無くなると元の形状に復元する。また、トノカバー全体を小さく折り畳むことを可能にさせ、トノカバー装置を使用するときにトノカバーを元の形状に復元させる。鋼線46には、自由に折り曲げ可能で復元力のあるものが好ましい。なお、弾性を示す線材であれば、鋼線46の代わりに用いてもよい。
【0027】
図5や図6(a)〜(c)等に示すトノカバー40は、後縁部(ドア側縁部)41の両端部41a,41aに後側フック(ドア側係合部)52,52が取り付けられ、前縁部(奥側縁部)42の両端部42a,42aに前側フック(奥側係合部)62,62が取り付けられている。図6(a)に示すように、前縁部の両端部42a,42a間の幅は、前側レール61の前側端部61a,61a間の幅W1に合わせられている。後縁部の両端部41a,41a間の幅は、後側レール51,51間の幅に合わせられている。前側フック62と後側フック52との前後方向D1の長さは、前側レール61の前側端部61aと後側レール51の後側端部51bとの前後方向D1の長さL1(図11参照)に合わせられている。
【0028】
後縁部41は、後部扉の内壁部23の形状に合わせて若干、後方へ膨らんでいる。前縁部42には、側縁部44,44に近い車幅方向D7の途中で段状に上がった弾性を示すクランク部(形状保持部)43,43が設けられている。前縁部42に設けられる鋼線46を車幅方向D7の途中で段状に上がった形状に形成することにより、前縁部42にクランク部43,43を形成することができる。クランク部43,43は、後部扉20が開いてくときにトノカバーの前縁部の両端部42a,42aが車幅方向内側D9へ移動するときに前縁部42を前側(奥側)へ撓ませる撓ませ手段を構成する。前縁部42をクランク状に曲げるという簡易な構造で、後部扉20が開くときにトノカバーの前縁部42を前側へ撓ませることができる。
【0029】
トノカバー40は、前後方向D1の位置に応じて幅が側壁部12,12間の距離よりも若干狭くされている。前縁部42に繋がる大半の側縁部44,44は、広幅部44b,44bとされ、該広幅部44b,44bの後側が後縁部41に繋がる狭幅部44a,44aとされている。後ろになるほど幅が狭まる荷室後部の形状に対応した狭幅部44a,44aがあり、後側ガイド機構50が後縁部の両端部41a,41aを後部扉20に係合させるので、リヤピラーと後部扉20の間に形成される幅狭の領域において、荷室LR1を覆い隠す閉鎖状態で隙間が少なくなる。
【0030】
上述したシート40A及び鋼線46により、トノカバー40は軽量かつ安価に構成されている。また、シート40Aに伸縮性素材を用いることにより、トノカバー装置の不使用時にはトノカバー全体を小さく折り畳んでトノカバーの収納スペースを極めて小さくすることができ、荷室の閉鎖状態で背の高い荷物を荷室に入れた場合でも保持ネットの代わりとしてトノカバーを活用することができる。
【0031】
図1〜4に例示する後側ガイド機構(ドア側係合機構)50は、後部扉20において上縁部21から下縁部22に向かって後側(外側)となる側縁部24に沿って、トノカバーの後縁部の両端部41aを後部扉20が閉じているときに後部扉の下縁部22側となり後部扉20が開いているときに後部扉の上縁部21側となるように後部扉20に対して移動可能に係合させている。後側ガイド機構50は、後側レール(ドア側ガイド部)51と後側フック(ドア側係合部)52とで構成され、左右に設けられている。
【0032】
図10に例示するように、各後側レール51は、概ね、後部扉20の側縁部24に沿った曲線状に形成され、該側縁部24に取り付けられている。側縁部24は下側となるほど後側となり上側となるほど前側となるため、図1,7,8に示すように、後側レール51の前側端部(上端部側端部)51aは、後側端部(下端部側端部)51bよりも上側かつ前側とされる。
各後側フック52は、一端にトノカバー40への固定部を有し他端が略C字状に形成され、該固定部でトノカバーの後縁部の両端部41a,41aに取り付けられている。後側フック52は、C字状部の開口部52bから入れた後側レール51を貫通させた状態とする挿通部52aを有している。この挿通部52aに後側レール51を通した後側フック52は、後側レール51に対してスライド可能に係合しており、トノカバーの後縁部の両端部41aを後部扉の側縁部24に沿ってガイドする。
【0033】
図1〜4に例示する前側ガイド機構(奥側係合機構)60は、トノカバーの前縁部42の両端部42aを後部扉20が閉じているときに前側(奥側)かつ下側となり後部扉20が開いているときに後側(後部扉20側)かつ上側となるように荷室形成部10に対して移動可能に係合させている。前側ガイド機構60は、前側レール(奥側ガイド部)61と前側フック(奥側係合部)62とで構成され、左右に設けられている。
【0034】
各前側レール61は、概ね、荷室形成部の側壁部12に沿った直線状又は曲線状に形成され、該側壁部12に取り付けられている。前側レール61の取付位置における側壁部12は上側となるほど車幅方向内側D9となるため、前側レール61の前側端部(奥側端部)61a,61a間の幅をW1(図6(a)参照)、前側レール61の後側端部(ドア側端部)61b,61b間の幅をW2(図6(b)参照)とすると、W1>W2とされている。従って、図1,2,7,9に示すように、前側レール61の前側端部(奥側端部)61aは、後側端部(ドア側端部)61bよりも下側かつ車幅方向外側D8とされる。
各前側フック62は、後側フック52と同様、一端にトノカバー40への固定部を有し他端が略C字状に形成され、該固定部でトノカバーの前縁部の両端部42a,42aに固定されている。前側フック62は、C字状部の開口部から入れた前側レール61を貫通させた状態とする挿通部を有している。この挿通部に前側レール61を通した前側フック62は、前側レール61に対してスライド可能に係合しており、トノカバーの前縁部の両端部42aを荷室形成部の側壁部12に沿ってガイドする。
【0035】
後側レール51及び前側レール61には、合成樹脂や金属といった棒状成形部材等を用いることができる。この棒状部材の断面形状は、円形に限定されず、楕円形、略四角形といった略多角形、等でもよい。
後側フック52及び前側フック62には、合成樹脂といった若干弾性を示す成形部材等を用いることができる。フックの開口部(52b)の間隔をレール(51,61)の直径よりも若干短くすることにより、レール(51,61)に対してフック(52,62)をガイド可能に係合させたり取り外したりすることが容易になる。また、後部扉20が開位置P2にあるときの後側レール51や、トノカバー40を使用しないときのレール(51,61)は、ハンガー代わりに利用することができ、便利である。
【0036】
本トノカバー装置30は、閉鎖状態のトノカバー40における前縁部の両端部42a,42a間の見かけ幅をW1’、開放状態のトノカバー40における前縁部の両端部42a,42a間の見かけ幅をW2’とすると、W1’>W2’であることを特徴とする。見かけ幅W1’は図6(a)に示すような前側レールの前側端部61a,61a間の幅W1に合わせられ、見かけ幅W2’は図6(b)に示すような前側レールの後側端部61b,61b間の幅W2に合わせられているからである。これにより、トノカバー40が展開状態から開放状態に切り替わる過程で、上方(D5)に向うに従って徐々に狭まる側壁部12,12に可撓性のトノカバーの前縁部42が干渉して徐々に上側へ撓んでいき、トノカバーの後縁部41が上がっていく。後部扉20が開位置P2になると、持ち上がったトノカバー40が前側の後部扉20に向かって張り付くように撓んでおり、荷室LR1の上部が大きく開放される。
【0037】
また、トノカバーの前縁部42に設けられたクランク部43により、開放状態におけるトノカバー40の撓み方向が前側とされ、後側へ撓む場合と比べて荷室LR1がより大きく開放される。さらに、図2,4に示すように、シートバック2bの上方の空間が自動車1の後方の位置から見える状態までトノカバー40が開放される。これにより、車室の様子を視認することができるため防犯上有利であり、荷室LR1から座席2に直接アクセスすることができ、車室内の照明を荷室LR1にまで取り込むことができるといった、使用性の向上を図ることができる。
【0038】
次に、レール(51,61)の端部(51a,51b,61a,61b)の好ましい位置関係を説明する。
【0039】
図11に例示する各長さは、以下の通りである。
L1は、後部扉20が閉位置P1にあるときの、前側ガイド機構60の前側端部61aと後側ガイド機構50の後側端部51bとの距離である。
L11は、後部扉20が閉位置P1にあるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の前側端部51aとの距離である。
L2は、後部扉20が開位置P2にあるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の前側端部51aとの距離である。
L3は、後部扉20が開位置P2にあるときの、前側ガイド機構60の前側端部61aと後側ガイド機構50の前側端部51aとの距離である。
L4は、後部扉20が開位置P2にあるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の後側端部51bとの距離である。
L5は、トノカバーの前縁部の両端部42aが前側ガイド機構60の後側端部61bとなり後縁部の両端部41aが後側ガイド機構50の後側端部51bとなるような中間位置P3に後部扉20があるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の後側端部51bとの距離である。
L6は、後部扉20が上記中間位置P3にあるときの、前側ガイド機構60の前側端部61aと後側ガイド機構50の後側端部51bとの距離である。
L7は、後部扉20が上記中間位置P3にあるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の前側端部51aとの距離である。
L8は、後部扉20が閉位置P1にあるときの、前側ガイド機構60の後側端部61bと後側ガイド機構50の後側端部51bとの距離である。
【0040】
好ましい位置関係は、以下の通りである。
L11<L1
L2≦L1
L3>L1
L4>L1
L6>L1
L5<L4
L7<L2
L8<L5
【0041】
上側の端部(61b,51a)間の距離L11が下側の端部(61a,51b)間の距離L1よりも小さいことにより、荷室LR1に背の高い荷物を入れて後部扉20を閉じたときにトノカバー40が荷物に引っ掛かったときにトノカバーの端部(42a,41a)がレールの下側端部(61a,51b)よりも上側にとどまる。これにより、トノカバー40が劣化し難くされている。
【0042】
開放状態における上側端部(61b,51a)間の距離L2が閉鎖状態における下側端部(61a,51b)間の距離L1以下であることにより、後部扉20を開いたときにトノカバーの端部(42a,41a)間に過度の引っ張り力が加わらない。これにより、トノカバー40が劣化し難くされている。なお、L2=L1である場合、レール(61,51)が必要最低限で済むので、レールの低コスト化を図ることができる。
【0043】
開放状態における前側端部61a,51a間の距離L3がL1よりも大きいことにより、後部扉20を開くときにトノカバーの前縁部の両端部42a,42aが前側レール61に沿って上側へ移動し車幅方向内側D9へ移動する。これにより、トノカバーの前縁部42が前側へ撓み、荷室LR1の上部が大きく開放される。
【0044】
開放状態における後側端部61b,51b間の距離L4がL1よりも大きいことにより、後部扉20を開くときにトノカバーの後縁部の両端部41a,41aが後側レール51に沿って上側へ移動する。これにより、トノカバーの後縁部41が後部扉20の開動作以上に前側へ移動し、荷室LR1の上部が大きく開放される。
【0045】
また、L6>L1であることにより後部扉20が閉位置P1から中間位置P3へ開いていくときにトノカバーの前縁部の両端部42aが前側レール61に沿って後側端部61bの方へ引っ張られて移動し、L5<L4であることにより後部扉20が中間位置P3から開位置P2へ開いていくときにトノカバーの後縁部の両端部41aが後側レール51に沿って前側端部51aの方へ引っ張られて移動する。さらに、L7<L2であることにより後部扉20が開位置P2から中間位置P3へ閉じていくときにトノカバー40の自重で後縁部の両端部41aが後側レール51に沿って後側端部51bの方へ移動し、L8<L5であることにより後部扉20が中間位置P3から閉位置P1へ閉じていくときにトノカバー40の自重等で前縁部の両端部42aが前側レール61に沿って前側端部61aの方へ移動する。このとき、前側に撓んでいるトノカバーの前縁部42は車幅方向外側D8へ拡がろうとする反発力を前側ガイド機構60に加えるので、両端部42aには前側レール61に沿って比較的幅狭に配置された後側端部61bから比較的幅広に配置された前側端部61aの方へ移動しようとする力が加わっている。この力があることにより、トノカバー40の自重だけでは前縁部の両端部42aが前側レールの前側端部61aの方へスムーズに移動しない場合であっても、トノカバーの前縁部の両端部42aが前側レールの比較的幅広に配置された前側端部61aの方へスムーズに移動する。
以上の様々な観点から、本トノカバー装置30は、よりスムーズに荷室LR1の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることができるようにされている。
【0046】
(2)トノカバー装置の動作、作用及び効果:
以下、トノカバー装置30の動作、作用及び効果を説明する。
後部扉20が閉位置P1にあるとき、図1,3に示すように、トノカバーの前縁部42の高さは前側レールの前側端部61aに合わせられ、トノカバーの後縁部41の高さは後側レールの後側端部51bに合わせられ、トノカバー40は荷室LR1の上部を略水平に覆っている。このとき、トノカバーの前縁部の両端部42aは、図6(a)に示すように、車幅方向外側D8にある。
【0047】
後部扉20が開くとき、トノカバーの後縁部41が後部扉20とともに上側へ移動するとともに、前側レールの前側端部61aから後側レールの後側端部51bが離れていく。これにより、トノカバーの前縁部42が前側レール61に沿って上側へ移動し、トノカバーの後縁部41が後側レール51に沿って後部扉の上縁部21側へ移動する。すると、トノカバー40は後縁部41が立ち上がった状態となり、荷室LR1が開放される。トノカバーの前縁部42は、上側へ移動するにつれ両端部42a,42a間が狭まるため、徐々に上側へ撓んでいく。L1=L2(図11参照)である場合、後部扉20が開位置P2になると、図2,4に示すように、トノカバーの前縁部42の位置は前側レールの後側端部61bに合わせられ、トノカバーの後縁部41の位置は後側レールの前側端部51aに合わせられる。このとき、トノカバーの前縁部の両端部42aは、図6(b),(c)に示すように、車幅方向内側D9にあり、見かけ幅が狭まっている。そのため、開放状態のトノカバー40が前側の後部扉20に向かって張り付くように前側へ撓み、荷室LR1の上部が大きく開放される。従って、荷室LR1を広く活用することができる。
【0048】
図11を参照して詳しく説明すると、後部扉20が閉位置P1から中間位置P3へ開いていくとき、L6>L1であることにより、トノカバーの前縁部の両端部42aに取り付けられた前側フック62が後側かつ上側の方へ引っ張られてスライドし、トノカバーの前縁部42がスムーズに後側かつ上側の方へ移動する。後部扉20が中間位置P3から開位置P2へ開いていくとき、L5<L4であることにより、トノカバーの前縁部の両端部42aに取り付けられた前側フック62が前側レールの後側端部61bに突き当たった状態で後縁部の両端部41aが後側レール51に沿って前側端部51aの方へ引っ張られてスムーズに移動する。
【0049】
後部扉20が閉じるとき、トノカバーの後縁部41が後部扉20とともに下側へ移動するとともに、後側レールの後側端部51bが前側レールの前側端部61aに近づいていく。すると、トノカバーの前縁部42が自重により前側レール61に沿って下側へ移動し、トノカバーの後縁部41が自重により後側レール51に沿って後部扉の下縁部22側へ移動する。可撓性のトノカバーの前縁部42は、下側へ移動するにつれ両端部42a,42a間が広がるため、上側への撓みが徐々に解消されていく。後部扉20が閉位置P1になると、図1,3に示すように、トノカバーの前縁部42の高さは前側レールの前側端部61aに合わせられ、トノカバーの後縁部41の高さは後側レールの後側端部51bに合わせられる。これにより、トノカバー40が荷室LR1の上部を覆う閉鎖状態に戻る。
【0050】
図11を参照して詳しく説明すると、後部扉20が開位置P2から中間位置P3へ閉じていくとき、L7<L2であることにより、トノカバー40の自重で後縁部の両端部41aに取り付けられた前側フック62が後側レール51に沿って後側端部51bの方へスムーズにスライドする。後部扉20が中間位置P3から閉位置P1へ閉じていくとき、L8<L5であることにより、トノカバー40の自重、及び、撓んでいる前縁部42の車幅方向外側D8への付勢力により、前縁部の両端部42aに取り付けられた前側フック62が比較的幅広となる前側かつ下側の方へスライドし、トノカバーの前縁部42がスムーズに前側かつ下側の方へ移動する。
【0051】
以上説明したように、本トノカバー装置は、略水平な閉鎖状態において荷室の上方位置をほぼ隙間なく覆い、且つ、巻き取りユニットを必要としない低コスト及び軽量の構成をもってして、荷室用ドアの開閉動作に連動して閉鎖状態と開放状態とに切り替えることができる。すなわち、トノカバーの巻き取り装置が必要とされずに、荷室用ドアの開閉状態に応じて荷室の閉鎖状態と開放状態とが切り替えられる。
【0052】
なお、本発明は、閉じているときを基準とした上縁部を回動中心として後側へ開動作可能な後部扉と、左右の側壁部間に荷室を形成する荷室形成部とを備え、前記後部扉を前記荷室形成部に取り付けた自動車に設けられるトノカバー装置であって、
可撓性を有するトノカバーと、前記左右の側壁部にそれぞれ設置される前側ガイド機構と、前記後部扉に設置される左右の後側ガイド機構と、を備え、
前記トノカバーの前側両端が前記前側ガイド機構に対してガイド可能に係合され、
前記トノカバーの後側両端が前記後側ガイド機構に対してガイド可能に係合され、
前記トノカバーが前記荷室の上部を覆う閉鎖状態から前記荷室を開放した状態に切り替わる過程で、前記該トノカバーの前側両端が前記前側ガイド機構によって上方且つ後方にガイドされ、前記トノカバーの後側両端が前記後側ガイド機構によって上方且つ前方にガイドされ、前記トノカバーの車両前後方向の見かけ長さが一定である一方、前記トノカバーの前縁部における車幅方向の見かけ長さが狭幅となる側面を有する。
【0053】
上記側面によれば、トノカバーの巻き取り装置を必要とせずに、後部扉の開閉状態に応じて荷室の閉鎖状態と開放状態とを切り替えることが可能になる。
【0054】
(3)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、荷室用ドアは、荷室の側部に配置され、側方へ開くドアとされてもよい。
トノカバーの奥側縁部は、上記クランク部43が無くても、閉鎖状態を基準として上側へ若干膨らんだ形状等とされると、荷室用ドアが開いてトノカバーの奥側縁部の両端部が幅方向内側へ移動したときに奥側へ撓む。この形状等も、撓ませ手段を構成する。
また、閉鎖状態を基準としてトノカバーの奥側縁部が上側へ若干膨らむようにトノカバーの奥側縁部の両端部間を紐やばね等の端部間連結手段で連結してもよい。すると、荷室用ドアが開いてトノカバーの奥側縁部の両端部が幅方向内側へ移動したときにトノカバーの奥側縁部が奥側へ撓む。このような端部間連結手段も、撓ませ手段を構成する。
さらに、トノカバーの奥側縁部の途中、例えば、幅方向の中間位置を紐や付勢手段等の上下連結手段で荷室用ドアの閉じているときを基準とした上方の内壁部に連結してもよい。上下連結手段には、荷室用ドアの内壁部からトノカバーの奥側縁部の途中を所定の距離以上離れないようにする紐や、トノカバーの奥側縁部の途中を荷室用ドアの内壁部の方へ付勢するばね等を用いることができる。このような上下連結手段も、撓ませ手段を構成する。
【0055】
トノカバーは、シートの外周を部分的に補強する樹脂部品を取り付けたり、鋼線を棒状の押出品に代えその断面形状によって撓み方向を一定にしたりしてもよい。
前側ガイド機構及び後側ガイド機構は、溝形状のレールに係合部材を嵌め込みスライドさせる構造等でもよい。
【0056】
ドア側係合機構は、トノカバーのドア側縁部の両端部を幅方向へ移動させてもよい。例えば、後側レールの前側端部が後側端部よりも車幅方向内側とされると、後部扉が開いてトノカバーの後縁部の両端部が後部扉の上縁部側へ移動したときにトノカバーの後縁部の両端部間が狭まり、トノカバーの後縁部が撓む。このような構成は、後側ガイド機構の後側端部の高さから上側となるにつれ車幅方向内側となる側縁部を有する後部扉に設けるのが容易である。トノカバーの後縁部が閉鎖状態を基準として後方へ膨らんでいると、後部扉が開くときにトノカバーの後縁部がさらに後方へ撓む。むろん、開放状態におけるトノカバーの後縁部を前側へ撓ませるようにしてもよい。
【0057】
また、ドア側係合機構は、荷室用ドアに対して移動しないようにトノカバーの後縁部の両端部を係合させてもよい。
さらに、奥側係合機構は、荷室形成部に対して車幅方向以外には移動しないようにトノカバーの前縁部の両端部を係合させてもよい。例えば、荷室用ドアが開くときに連動して幅方向内側へ進出し荷室用ドアが閉じるときに連動して幅方向外側へ退避する棒状等の係合部材を両側壁部に設け、この係合部材の幅方向内側の端部にトノカバーの奥側縁部の両端部を係合すれば、この係合部材が奥側係合機構となる。
すなわち、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる技術等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0058】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、有用なトノカバー装置、トノカバー、係合部付きトノカバー、といった技術等を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…自動車、2…座席、2b…シートバック、3…荷室フロア、
10…荷室形成部、11…開口部、12…側壁部、
20…後部扉(荷室用ドア)、
21…上縁部、21a…回転軸、22…下縁部、
23…内壁部、24…内壁部の側縁部、
30…トノカバー装置、
40…トノカバー、40A…シート、
41…後縁部(ドア側縁部)、41a…ドア側縁部の両端部、
42…前縁部(奥側縁部)、42a…奥側縁部の両端部、
43…クランク部(形状保持部)、
44…側縁部、44a…狭幅部、44b…広幅部、
45…縫製部、46…鋼線(線材)、
50…後側ガイド機構(ドア側係合機構)、
51…後側レール(ドア側ガイド部)、
51a…前側端部(上端部側端部)、51b…後側端部(下端部側端部)、
52…後側フック(ドア側係合部)、52a…挿通部、52b…開口部、
60…前側ガイド機構(奥側係合機構)、
61…前側レール(奥側ガイド部)、
61a…前側端部(奥側端部)、61b…後側端部(ドア側端部)、
62…前側フック(奥側係合部)、
D1…前後方向、D2…前方向、D3…後方向、
D4…上下方向、D5…上方向、D6…下方向、
D7…車幅方向(幅方向)、
D8…車幅方向外側(幅方向外側)、D9…車幅方向内側(幅方向内側)、
LR1…荷室、
P1…閉位置、P2…開位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じているときを基準とした上縁部を回動中心として外側へ開動作可能な荷室用ドアを荷室形成部に取り付けた自動車に設けられるトノカバー装置であって、
可撓性のトノカバーと、
該トノカバーにおける前記荷室用ドア側のドア側縁部の両端部を前記荷室用ドアに係合させるドア側係合機構と、
前記トノカバーにおける前記荷室用ドアとは反対側の奥側縁部の両端部を前記荷室用ドアが閉じているときに幅方向外側となり前記荷室用ドアが開いているときに幅方向内側となるように前記荷室形成部に対して移動可能に係合させる奥側係合機構とを備え、
前記荷室用ドアが閉じているときに前記奥側縁部の両端部が前記幅方向外側にある前記トノカバーが荷室の上部を覆うようにされ、
前記荷室用ドアが開くときに、前記トノカバーのドア側縁部が上側へ移動して前記荷室が開放され、前記トノカバーの奥側縁部の両端部が前記幅方向内側へ移動して該奥側縁部が奥側へ撓むようにされたことを特徴とするトノカバー装置。
【請求項2】
前記トノカバーの奥側縁部には、幅方向の途中で段状に上がった弾性を示す形状保持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトノカバー装置。
【請求項3】
前記ドア側係合機構は、前記荷室用ドアにおいて上縁部から下縁部に向かって外側となる部位に沿って、前記トノカバーのドア側縁部の両端部を前記荷室用ドアが閉じているときに前記荷室用ドアの下縁部側となり前記荷室用ドアが開いているときに前記荷室用ドアの上縁部側となるように前記荷室用ドアに対して移動可能に係合させ、
前記奥側係合機構は、前記トノカバーの奥側縁部の両端部を前記荷室用ドアが閉じているときに奥側かつ下側となり前記荷室用ドアが開いているときに前記荷室用ドア側かつ上側となるように前記荷室形成部に対して移動可能に係合させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトノカバー装置。
【請求項4】
前記荷室用ドアが閉じているときの前記奥側係合機構の奥側の端部と前記ドア側係合機構の下縁部側の端部との距離をL1とするとき、前記荷室用ドアが開いているときの前記奥側係合機構の荷室用ドア側の端部と前記ドア側係合機構の上縁部側の端部との距離がL1以下であり、前記荷室用ドアが開いているときの前記奥側係合機構の奥側の端部と前記ドア側係合機構の上縁部側の端部との距離がL1よりも長く、前記荷室用ドアが開いているときの前記奥側係合機構の荷室用ドア側の端部と前記ドア側係合機構の下縁部側の端部との距離がL1よりも長くされていることを特徴とする請求項3に記載のトノカバー装置。
【請求項5】
前記トノカバーの奥側縁部は、奥側へ撓んでいるときに車幅方向外側への反発力を前記奥側係合機構に加えるようにされ、
前記荷室用ドアが閉じるときに、前記反発力により前記トノカバーの奥側縁部の両端部が前記奥側係合機構の幅方向外側へ移動するようにされたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のトノカバー装置。
【請求項1】
閉じているときを基準とした上縁部を回動中心として外側へ開動作可能な荷室用ドアを荷室形成部に取り付けた自動車に設けられるトノカバー装置であって、
可撓性のトノカバーと、
該トノカバーにおける前記荷室用ドア側のドア側縁部の両端部を前記荷室用ドアに係合させるドア側係合機構と、
前記トノカバーにおける前記荷室用ドアとは反対側の奥側縁部の両端部を前記荷室用ドアが閉じているときに幅方向外側となり前記荷室用ドアが開いているときに幅方向内側となるように前記荷室形成部に対して移動可能に係合させる奥側係合機構とを備え、
前記荷室用ドアが閉じているときに前記奥側縁部の両端部が前記幅方向外側にある前記トノカバーが荷室の上部を覆うようにされ、
前記荷室用ドアが開くときに、前記トノカバーのドア側縁部が上側へ移動して前記荷室が開放され、前記トノカバーの奥側縁部の両端部が前記幅方向内側へ移動して該奥側縁部が奥側へ撓むようにされたことを特徴とするトノカバー装置。
【請求項2】
前記トノカバーの奥側縁部には、幅方向の途中で段状に上がった弾性を示す形状保持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトノカバー装置。
【請求項3】
前記ドア側係合機構は、前記荷室用ドアにおいて上縁部から下縁部に向かって外側となる部位に沿って、前記トノカバーのドア側縁部の両端部を前記荷室用ドアが閉じているときに前記荷室用ドアの下縁部側となり前記荷室用ドアが開いているときに前記荷室用ドアの上縁部側となるように前記荷室用ドアに対して移動可能に係合させ、
前記奥側係合機構は、前記トノカバーの奥側縁部の両端部を前記荷室用ドアが閉じているときに奥側かつ下側となり前記荷室用ドアが開いているときに前記荷室用ドア側かつ上側となるように前記荷室形成部に対して移動可能に係合させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトノカバー装置。
【請求項4】
前記荷室用ドアが閉じているときの前記奥側係合機構の奥側の端部と前記ドア側係合機構の下縁部側の端部との距離をL1とするとき、前記荷室用ドアが開いているときの前記奥側係合機構の荷室用ドア側の端部と前記ドア側係合機構の上縁部側の端部との距離がL1以下であり、前記荷室用ドアが開いているときの前記奥側係合機構の奥側の端部と前記ドア側係合機構の上縁部側の端部との距離がL1よりも長く、前記荷室用ドアが開いているときの前記奥側係合機構の荷室用ドア側の端部と前記ドア側係合機構の下縁部側の端部との距離がL1よりも長くされていることを特徴とする請求項3に記載のトノカバー装置。
【請求項5】
前記トノカバーの奥側縁部は、奥側へ撓んでいるときに車幅方向外側への反発力を前記奥側係合機構に加えるようにされ、
前記荷室用ドアが閉じるときに、前記反発力により前記トノカバーの奥側縁部の両端部が前記奥側係合機構の幅方向外側へ移動するようにされたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のトノカバー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−71461(P2013−71461A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209429(P2011−209429)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(390031451)株式会社林技術研究所 (83)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(390031451)株式会社林技術研究所 (83)
【Fターム(参考)】
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