説明

トラクタの操作部

【課題】従来の主変速レバーは前後方向に回動するため、レバー位置によりレバーの把持部に設けてある速度設定スイッチまたはダイヤルの位置が変わってしまい、設定する毎に速度が変わり、オペレータの操作が煩雑になり、また、スイッチ類が主変速レバーグリップに集中配置されているため混同を生じるおそれがあった。
【解決手段】アクチュエータにより無段変速機8を変速可能とし、該アクチュエータの操作手段を操作部14に備えるトラクタ10において、主変速レバー42近傍のレバーガイド部43に速度設定手段である速度設定ダイヤル40を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機を備えるトラクタ等の作業車両の操作部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両の走行系操作部においては、それぞれの用途に対応したレバー類が設けられている為、レバー類の数が多く、操作が大変になるという問題があったが、例えば特許文献1に示すように、主変速レバーに速度設定スイッチと副変速切換スイッチ及び四輪駆動入切スイッチとを設けて、主変速レバーに走行系操作部を構成し、操作性と作業能率を向上したという技術が公知となっている。
【特許文献1】特開2003−127692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記特許文献1に記載されているような従来の主変速レバーは前後方向に回動するため、レバー位置によりレバーの把持部に設けてある速度設定スイッチまたはダイヤルの位置が変わってしまい、設定する毎に速度が変わり、オペレータの操作が煩雑になり、また、スイッチ類が主変速レバーグリップに集中配置されているため混同を生じるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、アクチュエータにより無段変速機を変速可能とし、該アクチュエータの操作手段を操作部に備えるトラクタにおいて、主変速レバー近傍のレバーガイド部に速度設定手段を設けたものである。
【0006】
請求項2においては、前記速度設定手段をダイヤルとし、主変速レバーの低速側変速位置の近傍に配置したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、アクチュエータにより無段変速機を変速可能とし、該アクチュエータの操作手段を操作部に備えるトラクタにおいて、主変速レバー近傍のレバーガイド部に速度設定手段を設けたので、変速位置により回動する主変速レバー部分にではなく、固定された部位で速度設定ができ、オペレータは肘をレバーガイド部にあずけた状態でダイヤル操作が可能となり、快適に作業ができる。
【0009】
請求項2においては、ダイヤルで速度設定ができるので、ダイヤルの回動位置を見ることで設定した位置を目視で容易に認識でき、次回に設定する場合にも、容易に設定位置を再現することができ、その確認も容易にできる。主変速レバーを高速側に回動しても主変速レバーでダイヤルが隠れることがなく、確実に速度設定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の操作部を装備したトラクタの平面図、図2は制御ブロック図、図3は操作部における速度設定ダイヤルの取付位置を示す斜視図である。
【0011】
まず、本発明に係る操作部を備える一実施例であるトラクタ10の概略構成について、図1、図2を用いて説明する。
トラクタ10には、本機の前下部に前輪1・1、後下部に後輪2・2をそれぞれ懸架して配設されており、前部のボンネット3内にエンジン6が配設されている。機体中央には運転部30が配置されており、前記ボンネット3の後部にはステアリングハンドル4が配設されている。ステアリングハンドル4の後方には運転席5が配設され、該運転席5の下方にはミッションケース9が配置され、該ミッションケース9の後方には作業機装着装置7が配置されている。
【0012】
前記ボンネット3後部にはダッシュボード11が配置され、該ダッシュボード11上にステアリングハンドル4が突設されている。ステアリングハンドル4のステアリング軸前方であって、ダッシュボード11の上部には、メータパネル12が配置されている。そして、ステアリングハンドル4の下方であって、ダッシュボード11の左側面には、前後進切換レバー15が配置されている。
【0013】
また、運転席5と右側のフェンダー16Rとの間には、作業機の昇降レバー17と高さ設定レバー24が配置されており、該昇降レバー17の前方に本発明に係る操作部14となる主変速レバー42及び副変速レバー19が配置されている。また運転席5と左側のフェンダー16Lとの間には、PTO変速レバー25とが配置されている。また、ダッシュボード11と運転席5の間にはステップ20が配置されて、該ステップ20の右側上にはアクセルペダル21と左右のブレーキペダル22L・22Rが配置されている。左右のブレーキペダル22L・22Rは、各々踏むことによって独立して制動可能であり、一方のブレーキペダルに設けた連結板23を操作することにより左右のブレーキペダル22L・22Rを連結可能とし、路上走行や移動等時は連結し、作業時は各々独立して制動するようにしている。
このように、運転部30は、各種のレバーやペダルが配置されて構成されている。但し、レバーやペダルの配置構成は、前述の構成に限定するものではない。
【0014】
トラクタ10の制御手段としてのコントローラ50の入力側は、後述する操作部14の各操作スイッチ、アクセルペダル21の回動角度を検出するための角度センサ21a、前後進切換レバー15の切換位置(前進・中立・後進)を検出するためのレバーセンサ15a、主変速レバー42の切換位置を検出するためのレバーセンサ42a、副変速レバー19の切換位置を検出するためのレバーセンサ19a、速度設定ダイヤル40の切換位置を検出するためのダイヤルセンサ(または切換スイッチ)40aと接続されている。
【0015】
また、コントローラ50の出力側は、メータパネル12の各種のメータやランプ、電子ガバナコントローラ51、油圧式無段変速装置(又は電子制御油圧式無段変速機。以下では、「HST」という。)8の油圧ポンプ27の前進用ソレノイドバルブ52および後進用ソレノイドバルブ53、同じくHST8の油圧モータ28のモータ用ソレノイドバルブ54と接続されている。
【0016】
前述したようにコントローラ50は、エンジン6の燃料噴射量を電子的に制御する電子ガバナコントローラ51と接続されており、該電子ガバナコントローラ51に制御信号を出力する。電子ガバナコントローラ51は、コントローラ50からの制御信号に基づいて、エンジン6の燃料噴射量を制御し、これにより、エンジン6の出力(回転数)を調節する(増減させる)。このように、本実施例では、電子的な作用によって電子ガバナコントローラ51を制御して、エンジン6の回転数を調節することとしている。
【0017】
エンジン6の出力は、エンジン出力軸から無段変速装置であるHST8に伝達される。HST8は、それぞれ可変容量型の油圧ポンプ27および油圧モータ28より構成されており、それぞれの可動斜板27a・28aを傾動操作することにより、ポンプ吐出量およびモータ出力を変化させて、ミッションケース9に入力されるエンジン出力を変速する。
【0018】
油圧ポンプ27の可動斜板27aには、モータまたはシリンダまたはソレノイドよりなるアクチュエータが連結され、該アクチュエータの駆動により回動されて無段階に変速する構成としている。本実施例では油圧サーボシリンダを用いて変速する構成とし、該油圧サーボシリンダが前進用ソレノイドバルブ52および後進用ソレノイドバルブ53の切換により伸縮構成としている。該前進用ソレノイドバルブ52および後進用ソレノイドバルブ53はコントローラ50と接続されており、該コントローラ50はそれぞれのソレノイドバルブ52・53に対して、制御信号を出力する。コントローラ50から制御信号に基づいて、それぞれのソレノイドバルブ52・53が作動することにより、油圧ポンプ27の可動斜板27aを前進側若しくは後進側へ傾動させて、油圧モータ28に対する作動油の流出入の方向および流量を制御することとしている。
【0019】
また、油圧モータ28の可動斜板28aには、モータ用ソレノイドバルブ54が設けられており、該モータ用ソレノイドバルブ54はコントローラ50と接続されている。コントローラ50からの制御信号に基づいて、モータ用ソレノイドバルブ54が作動することにより、油圧モータ28の可動斜板28aを傾動させて、油圧ポンプ27の作動油の流出入により回転駆動する油圧モータ28の回転速度を変速することとしている。
【0020】
こうして、HST8において変速されたエンジン出力は、ミッションケース9を介してトラクタ10の前後に配置される前輪用の差動装置および後輪用の差動装置にそれぞれ伝達され、さらに車軸を介して前輪1および後輪2を駆動するようにしている。また、エンジン出力軸は、前記油圧ポンプ27を貫通してミッションケース9内に延設され、該ミッションケース9内においてPTOクラッチ、PTO変速装置を介した後、PTO軸に連結されている。そして、PTO軸の端部に連結される作業機を駆動するようにしている。
【0021】
このように、油圧ポンプ27の可動斜板27aの傾動操作によって機体の走行速度を主変速し、油圧モータ28の可動斜板28aの傾動操作によって走行速度を副変速することとしている。つまり、電子的な作用によってそれぞれのソレノイドバルブ52・53・54を制御して、可動斜板27a・28aの傾動角度を変化させることにより、HST8における変速比を切り換えて、機体の走行速度を変速することとしている。そして、このようなHST8の変速比の調節は、操作部14に配置される主変速レバー42を操作することにより行うこととしている。また、副変速レバー19を操作することによっても、HST8の変速比を調節することができる。
なお、HST8は、油圧ポンプ27および油圧モータ28をともに可変容量型としているが、油圧ポンプ27のみを可変容量型とする構成としてもよい。また、前輪1および後輪2を駆動可能とした四輪駆動としているが、後輪2のみを駆動する構成としてもよい。
【0022】
次に、本発明に係る操作部14について、図2、図3を用いて説明する。
操作部14は、運転席5の右側部前方に配置されており(図1)、ダッシュボード11上に突設されるステアリングハンドル4の右斜め後方に位置している。そして、前記操作部14には、レバーガイド部43のガイド溝43a・43bに略前後方向に回動操作される主変速レバー42と副変速レバー19とが左右に並べて突出されている(図3)。そして前記レバーガイド部43のガイド溝43a近傍に速度設定手段である速度設定ダイヤル40を設けている。更に詳しく説明すると、速度設定ダイヤル40は主変速レバー42のガイド溝43aの低速側近傍、つまり、低速変速位置の後方に配置されており、主変速レバー42がどの位置に回動されていても速度設定ができ、オペレーターが座席に座った位置で視認できる位置に配設されている。また、該速度設定ダイヤル40は、ダイヤル式のスイッチであり、一定量回動されるとダイヤルセンサ40aがその切換位置を検出しコントローラ50に信号を出力するものである。そしてコントローラ50により、速度設定値における変速比を任意の値に調整できるようにしている。つまり片方(例えば、時計回り方向)に速度設定ダイヤル40を一定量回動させることにより、一つ高速側の速度設定となる。そして、もう片方へ一定量回動させることにより、一つ低速側の速度設定となる。
【0023】
前記速度設定ダイヤル40により変更可能な速度設定値は、例えば、速度設定値0から速度設定値3まで設けられ、各速度設定値に応じて変速比が予め割り当てられており、主変速レバー42により速度が調整されるように構成されている。
具体的には前記速度設定ダイヤル40は、エンジン回転を最高にし、主変速レバー42をいっぱいに前方に倒したときの最高速度を設定できるものであり、つまり速度設定ダイヤル40を回動させると、エンジン最高回転時の最高速度を任意に設定できる。この最高速度の設定値については、メータパネル12の所定の位置に表示されるようにしている。
また、操作部14は、作業者にとって見やすく、各操作手段を操作しやすいように、その上面を後下がりに傾けて配置されている。
なお、操作部14は、運転席5の近傍に配置されていれば、その配置位置は特に限定されるものではなく、ステアリングハンドル4下方のステアリング軸の後方や左側、または、メータパネル12側方等であってもかまわない。ただし、作業者にとってメータパネル12を見ながら、操作部14を操作しやすい位置が望ましい。
【0024】
このような構成において、従来では、主変速レバー42の位置が前後に移動するためオペレータは、その位置を確認してから速度設定ダイヤル40を操作しなければならず、煩雑となり作業の集中を妨げる原因となっていたが、本発明においては、主変速レバー42下方のレバーガイド部43の所定位置に速度設定ダイヤル40を配置したため、オペレータは感覚的に、かつ手探りで速度設定の操作が可能となるのである。こうしてエンジン回転を最高にする、つまり主変速レバー42前方いっぱいに回動したときの速度設定が可能となるのである。
【0025】
すなわち、上述したようにアクチュエータにより無段変速機8を変速可能とし、該アクチュエータの操作手段を操作部14に備えるトラクタ10において、主変速レバー42近傍のレバーガイド部43に速度設定手段である速度設定ダイヤル40を設けたので、変速位置により回動する主変速レバー42部分にではなく、固定された部位に速度設定ダイヤル40を設置することとなり、オペレータは肘をレバーガイド部43にあずけた状態でダイヤル操作が可能となり、快適に作業ができる。
なお、本実施例では操作部14は、運転席5の右側前方に配置したが、運転席5近傍に配置されていれば、その配置位置は特に限定されるものではない。また、本実施例では、速度設定手段の一例としてダイヤル式のスイッチを設けて、速度設定値を調整できるように構成したが、特にこれに限定するものではなく、速度設定スイッチとして速度設定値アップ用のスイッチと速度設定値ダウン用のスイッチとを代わりに設けても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の操作部を装備したトラクタの平面図。
【図2】制御ブロック図。
【図3】速度設定ダイヤルの取付位置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0027】
8 油圧式無段変速装置
10 トラクタ
14 操作部
40 速度設定ダイヤル
42 主変速レバー
43 レバーガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータにより無段変速機を変速可能とし、該アクチュエータの操作手段を操作部に備えるトラクタにおいて、主変速レバー近傍のレバーガイド部に速度設定手段を設けたことを特徴とするトラクタの操作部。
【請求項2】
前記速度設定手段をダイヤルとし、主変速レバーの低速側変速位置の近傍に配置したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタの操作部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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