説明

トラニラストの易溶性粉末吸入製剤

【課題】 トラニラストの粉末吸入製剤を提供する。
【解決手段】 本発明は、トラニラストの結晶を分散剤と共に粉砕し、その懸濁液を凍結乾燥して得られる固体分散体と、吸入用担体とを含有する粉末吸入製剤等を提供する。本発明の粉末吸入製剤は、溶解性が改善され、均一性や光安定性に優れるなど、吸入剤として望ましい物性を有する。また、本発明の粉末吸入製剤は、良好な肺到達率をも示すことにより、低用量で、優れた有効性を発揮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末吸入製剤に用いられるトラニラスト固体分散体、及びそれを含有する粉末吸入製剤等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸入療法は、局所投与を目的とした気道疾患の予防・治療、診断等のほか、経気道全身薬剤投与、経気道免疫減感作療法などに適応されている。吸入剤としては、ネブライザー剤、エアロゾル吸入剤(定量的噴霧式吸入器、Metered Dose Inhaler、 MDI)、粉末吸入剤(Dry Powder Inhaler、DPI)が各種市販されている。一般的に、吸入療法には、標的部位となる肺が広い表面積を有していることや、薬物が吸収された後、初回通過効果を受けない等の望ましい特徴が知られている。しかしながら、ある特定の薬物について、どのような吸入剤を選択・設計するかについては、疾患に対する有効性、薬剤粒子の発生法(吸入器の選択)と到達部位、ならびにそれらと薬剤の基礎物性の適合性等、種々の検討を行う必要がある。
【0003】
DPI は、包装形態が異なるカプセルタイプおよびブリスタータイプ、リザーバータイプ等があるが、いずれも吸入により粉末状の薬物が放出され、気管支や肺等に投与される。薬物の沈着部位と、吸入する薬物粒子の粒子径には密接な関係があり(非特許文献1参照)、気管支や肺胞の部位まで到達できる薬物粒子の最適サイズは約 1〜6 μm の空気力学的粒径を有する粒子であることが一般的に知られている(非特許文献2参照)。例えば、全身的な作用を期待する場合には、薬物を肺胞まで到達させる必要があり、数μmの粒子サイズが必要となるが、粒径が小さいほど、粉体の流動性は悪化し、製造時の充填精度やハンドリング性の低下、投与時のデバイス・カプセル内部への付着等が問題となるため、流動性を改善するために、薬物を造粒するなど種々の工夫がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
トラニラスト(化学名:N-(3,4-dimethoxycinnamoyl anthranilic acid)は、抗アレルギー作用を有し、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、ケロイド・肥厚性瘢痕等の治療剤として、点眼剤、経口投与剤が広く使用されている(例えば、特許文献2参照)。局所投与又は全身投与方法としてのトラニラスト吸入剤のニーズは非常に高いものの、未だ吸入剤の開発には至っていない。
【0005】
上記の文献のいずれにも、トラニラストを局所刺激性を有するような可溶化剤や特殊な造粒技術等を用いずに溶解性を改善し、低用量で薬効を発揮しうる吸入投与用のトラニラスト粉末製剤については、記載も示唆もない。
【特許文献1】国際公開第99/27911号パンフレット
【特許文献2】特開昭52−65279号公報
【非特許文献1】芦ヶ野孝則、Pharm Tech Japan、1995年、第11巻、第6号、p.103−107
【非特許文献2】M.P.Timsina、外4名、Int.J.Pharm.、1994年、第101巻、p.1−13
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、難溶性薬物であるトラニラストを有効成分とし、優れた物性と有効性を発揮しうる吸入投与用の粉末製剤、及びそれを製造するための固体分散体等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、トラニラストの難溶解性を改善し、光分解性の問題なく、DPI製剤として有用なトラニラストの粉末製剤を作製することに成功した。すなわち、トラニラストを高分子化合物等の共存下、一定条件下で微細化することにより、微細化トラニラスト含有固体分散体とし、これに適宜賦形剤を添加して混合・粉砕した後、これを吸入用担体と混和することにより、溶解性、粒子径均一性、光安定性に優れ、吸入投与により極めて良好な薬効を発揮しうる粉末吸入製剤を得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕微細化トラニラスト結晶及び分散剤を含有する固体分散体;
〔2〕分散剤が糖アルコール類である、前記〔1〕に記載の固体分散体;
〔3〕分散剤が高分子化合物である、前記〔1〕に記載の固体分散体;
〔4〕トラニラストを分散剤と混合し、湿式微粉砕法によりナノ粉砕加工を行い、その懸濁液を凍結乾燥して得られる、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の固体分散体;
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の固体分散体と吸入用担体とを含有する粉末吸入製剤;
〔6〕トラニラストを分散剤と混合し、湿式微粉砕法によりナノ粉砕加工を行い、その懸濁液を凍結乾燥して得られる固体分散体を、必要に応じて賦形剤を添加して混合・粉砕した後、吸入用担体と混合して得られる前記〔5〕に記載の粉末吸入製剤;
〔7〕呼吸器疾患治療用である、前記〔5〕又は〔6〕に記載の粉末吸入製剤;
〔8〕以下の工程を含むトラニラスト粉末吸入製剤の製造方法:(a)トラニラストを分散剤と混合し、湿式微粉砕法によりナノ粉砕加工を行い、その懸濁液を凍結乾燥して固体分散体を得る工程;(b)これに必要に応じて、賦形剤を添加して混合・粉砕する工程;及び(c)これを吸入用担体と混合する工程;等に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、溶解性が改善され、均一性や光安定性に優れるなどの吸入剤として望ましい物性を有するトラニラスト含有粉末製剤を提供することができる。また、本発明の粉末製剤は、吸入投与による良好な肺到達率をも示すことにより、低用量で、優れた有効性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるトラニラストは、結晶又は結晶性粉末である。非晶質である場合は、常法(再結晶法等)により、容易に結晶又は結晶性粉末とすることができる。
【0011】
本発明において、「微細化トラニラスト結晶を含有する固体分散体」とは、トラニラスト結晶が分散剤中に微細結晶状態(平均粒子径が約1nm〜1μm(好ましくは200nm以下)の結晶)で分散された固体を意味する。分散剤としては、医薬品に使用可能な種々の添加物を用いることができ、例えば、軽質無水ケイ酸;糖アルコール類;高分子化合物;等が挙げられる。
【0012】
糖アルコール類としては、マンニトール、エリスリトール、トレハロース等が挙げられる。
【0013】
高分子化合物としては、医薬として許容されるものであればこれに限定されないが、例えば、合成高分子類、ポリアミノ酸、多糖類、タンパク質、セルロース類、又はそれらの組み合わせが挙げられ、水溶性の高分子化合物が好ましい。
合成高分子類としては、例えば、ポリアルキレングリコール類(ポリエチレングリコール等)、ポリビニルピロリドン(プラスドンC−15(ISP TECHNOLOGIES社製)、コリドン(登録商標)VA64、コリドン(登録商標)K−30、コリドン(登録商標)CL−M(KAWARLAL社製)、コリコート(登録商標)IR(BASF社製)等)、ポリビニルアルコール、アミノアルキルメタクリレート、ゼラチン誘導体等が挙げられる。ゼラチン誘導体とは、ゼラチン分子に疎水性基を共有結合させて誘導体化したゼラチンを表す。疎水性基としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンなどのポリエステル類、コレステロールやホスファチジルエタノールアミンなどの脂質、アルキル基、ベンゼン環を含む芳香族基、複素芳香族基など、およびこれらの混合物が挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール及びこれらの共重合体)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアリルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、生分解性ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクトン、サクシネート系重合体、ポリヒドロキシアルカノエート)、ポリグリコール酸、ポリリンゴ酸、ポリジオキサノン、およびポリアミノ酸、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。またこのうち、ポリアミノ酸としてはポリαグルタミン酸、ポリγグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリセリン等の酸性、塩基性、非荷電親水性および疎水性アミノ酸単独重合体及び共重合体が挙げられる。サクシネート系重合体として、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等が挙げられ、ポリヒドロキシアルカノエートとして、ポリヒドロキシプロピオナート、ポリヒドロキシブチラート、ポリヒドロキシパリラート等が挙げられる。ゼラチンの誘導体化に利用される天然高分子化合物としては、タンパク質、多糖、核酸などが挙げられ、それらの誘導体、あるいは上記合成高分子化合物との共重合体も含まれる。
ポリアミノ酸としては、ポリグルタミン酸、ポリ−γ−グルタミン酸、ポリ−L−リジン、ポリアルギニン、及びそれらの誘導体が挙げられる。
多糖類としては、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、デンプン、ペクチン等が挙げられる。
タンパク質としては、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、アルブミン等が挙げられる。
セルロース類としては、メチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース等が挙げられる。ヒドロキシプロピルセルロースとしては分子量や置換度(ならびに分子量や置換度に依存すると考えられる粘度)が異なる種々の製品が各社から市販されており、いずれも本発明に使用することができる。ヒドロキシプロピルセルロースとして分子量15,000〜400,000の範囲のものを好適に使用することができ、典型的には分子量15,000〜30,000(例えば、日本曹達製HPC−SSL)、分子量30,000〜50,000(例えば、日本曹達製HPC−SL)、分子量55,000〜70,000(例えば、日本曹達製HPC−L)、分子量110,000〜150,000(例えば、日本曹達製HPC−M)、分子量250,000〜400,000(例えば、日本曹達製HPC−H)等の種々の分子量範囲のものを使用することができる。また、ヒドロキシプロピルセルロースとして2%水溶液(20℃)粘度が2.0〜4000センチポイズ(cps)のものを好適に使用することができ、典型的には該粘度が2.0〜2.9 cps(例えば上記HPC−SSL)、3.0〜5.9 cps(例えば上記HPC−SL)、6.0〜10.0 cps(例えば上記HPC−L)、150〜400 cps(例えば上記HPC−M)、1000〜4000 cps(例えば上記HPC−H)等の種々の粘度範囲のものを使用することができる。
以上の分散剤において、特にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール又はヒアルロン酸が溶解度向上の面で好ましい。
【0014】
本発明の医薬分散体は、ナノ粉砕加工により、調製することができる。本発明において、「ナノ粉砕加工」とは、トラニラストを上記分散剤と共に混合した後、トラニラストが微細結晶状態となるように粉砕する方法をいう。
ナノ粉砕加工においては、トラニラストと分散剤に、更に溶媒を加えて混合物として粉砕し(以下、「湿式微粉砕法」ということがある。)、得られた懸濁液を凍結乾燥又はスプレードライすることによって行うこともできる。湿式微粉砕法に用いられる溶媒及び分散剤としては、通常、トラニラストが難溶であり、分散剤が可溶である溶媒を用いることができ、水と水溶性高分子化合物がより好ましい。湿式微粉砕法に用いられる溶媒の量は、そのミルの性能に依存するが、トラニラストの最終濃度が0.1mg/mL から1g/mL程度になるよう調整することが望ましい。
ナノ粉砕加工における混合および粉砕は、混合機および粉砕器を用いて常法で行うことができ、シンキーミキサー、ウェットミル、カッターミル、ボールミル、ビーズミル、ハンマーミル、ナノミル(登録商標)、乳鉢等により行うことが好ましい。特にビーズミルは、液体中の粒子をナノメートルサイズまで粉砕・分散する装置であり、粉砕室と呼ばれる容器の中に、ビーズ(粉砕メディア)を充填し粉砕室中央の回転軸を高速で回転させることにより、ビーズに運動を与え、ここに原料(粉体)を貧溶媒に懸濁させたスラリーを導入し、ビーズを衝突させることによって微粉砕・分散することができる。スラリーとビーズの分離は、粉砕室の出口にある、遠心分離やスクリーン等が行う。また、シンキーミキサーのチャンバー内にジルコニアビーズやポリスチレンビーズを入れて攪拌することによりビーズミルと同様の効果が得られる。
ミル内設定温度は、0〜60℃の範囲が望ましく、非晶質化を防ぐためには、可能な限り低温に制御することが望ましい。
トラニラストと分散剤の重量比は、1:5000〜10:1の範囲で、投与量、分散剤の種類、粉砕器の種類等に応じて適宜定めればよいが、1:5〜10:1の範囲がより好ましい。
【0015】
また、ナノ粉砕加工において、分散剤に加えて、界面活性剤を用いることもできる。界面活性剤としては、分散安定化を目的として医薬品に使用可能な界面活性剤であればよく、アニオン性界面活性剤として、脂肪酸ナトリウム類、モノアルキル硫酸塩類、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、モノアルキルリン酸塩類等;カチオン性界面活性剤として、アルキルトリメチルアンモニウム塩類、ジアルキルジメチルアンモニウム塩類、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩類等;両性界面活性剤として、アルキルジメチルアミンオキシド類、アルキルカボキシベタイン類等;非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸ソルビタンエステル類、アルキルポリグルコシド類、脂肪酸ジエタノールアミド類、アルキルモノグリセリルエーテル類等が挙げられる。具体的にはドデシル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤や tween などの中性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の使用により、固体分散体の水への再分散性における製造ロット間でばらつきが生じたり低下したりするのを回避できる場合がある。
【0016】
本発明の固体分散体を、その剤型に応じ調剤学上使用される手法により適当な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤等の医薬品添加物と適宜混合または希釈・溶解し、常法に従い調剤することにより、経口投与剤、吸入投与剤等の医薬組成物を製造することができる。
【0017】
例えば、本発明の固体分散体を、吸入用担体と混合することにより、経肺投与、経鼻投与等の吸入用粉末製剤に製剤化することもできる。この場合、本発明の固体分散体に、更に適当な賦形剤を添加して混合・粉砕し、二次粒子とした後に、吸入用担体と混合してもよい。二次粒子の平均粒子径は、0.1〜20μmの範囲とするのが好ましい。二次粒子中の上記固体分散体と賦形剤の重量比は、1:5000〜10:1の範囲で、投与量、吸入器の種類、適用する疾患等に応じて適宜定めればよい。
【0018】
上記医薬組成物の製造に用いられる賦形剤は、医薬品に使用可能な賦形剤であればよく、例えば、デンプン類、乳糖、ブドウ糖、白糖、結晶セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、蔗糖、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、寒天、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ステアリン酸等の脂肪酸あるいはその塩、及びワックス類等が挙げられ、好ましくは、乳糖又はエリスリトールである。
また、必要に応じて、DPI の吸収率を向上させる技術として知られるようになったエンハンサー(クエン酸、カプリン酸等の有機酸、バシトラシンのような酵素阻害剤、NO発生剤等(Drug Delivery System (2001) 16, 297; Drug Delivery System (2001) 16, 299))を加えた製剤技術や薬物を脂質の層に封入した製剤処方を組み合せて用いることもできる。
【0019】
本発明において、「吸入用担体」とは、吸入用医薬品に使用可能な不活性な担体をいい、薬剤の凝集・付着を防ぐと共に、吸入器を用いた吸入操作の際に効率良く薬剤と分離して、薬剤の吸収効率を高めるために使用される。本発明において用いられる吸入用担体としては、これに限定されないが、乳糖、ブドウ糖、果糖、マンニトール、蔗糖、麦芽糖及びデキストラン類の糖類、並びに硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等を挙げることができ、乳糖、エリスリトール、マンニトール等の糖アルコール類が好ましい。特に問題が認められない場合は、上記賦形剤と同様の材質の担体を用いてもよい。吸入用担体の平均粒子径は、10〜200μmの範囲とするのが好ましい。粉末吸入製剤中の固体分散体と吸入用担体の重量比は、1:100〜10:1の範囲で、投与量、吸入器の種類、適用する疾患等に応じて適宜定めればよい。
【0020】
本発明の固体分散体と上記賦形剤との混合・粉砕は、一般的に知られている乾燥粉砕器を用いて行うことができる。少量用の乾燥粉砕器としては、乳鉢、ボールミル等が知られている。ボールミルとしては、転動ボールミル、遠心ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミルが知られている。工業用としては、媒体撹拌型ミル、高速回転摩砕ミル(ディスクミル、ローラーミル)、高速回転衝撃ミル(カッターミル(ナイフミル)、ハンマーミル(アトマイザー)、ピンミル、スクリーンミル等)、ジェットミル(粒子・粒子衝突型、粒子・衝突板衝突型、ノズル吸い込み型(吹き出し)型)等が知られている。媒体撹拌型ミル、高速回転摩砕ミル、高速回転衝撃ミル、ジェットミル等の空気力学的粉砕器が好ましい。
【0021】
上記固体分散体もしくは上記二次粒子と吸入用担体との混合は、一般的に知られている混合機を用いて行うことができる。混合機には、主に回分式と連続式があり、回分式として、回転型(水平円筒型混合機、V 型混合機、二重円錐型混合機、立方体型混合機)と固定型(スクリュー型(垂直、水平)混合機、旋回スクリュー型混合機、リボン型(垂直、水平)混合機)等が知られている。また、連続式として、回転型(水平円筒型混合機、水平円錐型混合機)と固定型(スクリュー型(垂直、水平)混合機、リボン型(垂直、水平)混合機、回転円盤型混合機)等が知られている。その他、上記の空気力学的粉砕器を利用した混合方法、ナイロン性又はそれに準ずる性質からなる袋を利用し、撹拌することにより均一に混合することもできる。
【0022】
本発明の粉末吸入製剤は、経肺投与、経鼻投与などの経粘膜投与により患者に投与することができる。経肺投与する場合、当分野で使用される種々の吸入器を使用すればよい。吸入器としては、例えば、ジェットヘラー(登録商標)等が挙げられる。
【0023】
本発明の粉末吸入製剤は、特に、呼吸器疾患の治療に有用である。呼吸器疾患としては、例えば、気管支喘息、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、間質性肺炎等が挙げられる。
【0024】
本発明の粉末吸入製剤を実際の治療に用いる場合、その有効成分であるトラニラストの投与量は、患者の年齢、性別、体重、疾患及び治療の程度等により適宜決定されるが、成人1日当たり概ね0.1〜30mgの範囲で、一回又は数回に分けて適宜投与することができる。また、他の薬剤と組み合わせて使用する場合、本発明の有効成分の投与量は、他の薬剤の投与量に応じて減量することもできる。
【実施例】
【0025】
実施例1
(トラニラスト固体分散体の作製例)
約 1 g の結晶トラニラスト粉末を 100 mL のステンレスチャンバーに入れ、さらに47 g のポリスチレンビーズ(粒径 0.5 mm)と 44 mL のメチルセルロース水溶液(5 mg/mL,0.2 mg/mL SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)含有)を加えた。ステンレスチャンバーを NanoMill-01 システム(Elan Drug Technologies, Dublin, Ireland)にセットし、冷却状態(5℃)で約 90 分間、3600 rpmで処理した。このトラニラスト分散物を凍結乾燥し、トラニラストの固体分散体Aを得た(収率約90%)。
メチルセルロースに代えて、表1記載の各種分散剤(44 mL、5 mg/mL; 0.2 mg/mL SDS含有)を用いて、固体分散体B〜Mの固体分散体を得た。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例2
(トラニラスト固体分散体を用いた粉末吸入製剤の作製例)
実施例1で作製した各トラニラスト固体分散体(約10 mg)を、エリスリトール(約60 mg)と混和後、ジェットミルによって下記条件により粉砕し、微粉化された二次粒子を調製した。それぞれの微粉化された二次粒子をレーザー回折装置(セイシン企業)にて評価したところ、平均粒径は1.4〜6.1μm の範囲であった。これらは吸入時に気道及び肺に到達しうる粒子径と考えられた。次いで、この微粉化された二次粒子を5倍量の乳糖(平均粒径50μm、Respitose(登録商標)(DMV Japan))と混和することにより、粉末製剤A1〜M1を得た。収率を表2に示す。

(粉砕条件)
使用機器: A-O-Jet Mill (セイシン企業)
原料供給方法: オートフィーダー
供給エアー圧力: 6.0 kg/cm2G
粉砕エアー圧力: 6.5 kg/cm2G
集塵方法: アウトレットバグ(ポリエチレン)

【0028】
【表2】

【0029】
比較例1
(トラニラスト単純混合物を用いた粉末吸入製剤の作製)
トラニラスト固体分散体に代えて、結晶トラニラスト粉末とHPC-SLとを乳鉢にて単純に混合したもの(以下、「単純混合物」という。)を用いて、実施例2記載の方法で、微粉化された二次粒子を調製した(収率76%)。次いで、この微粉化された二次粒子を5倍量の乳糖(平均粒径50μm、Respitose(登録商標)(DMV Japan))と混和することにより、粉末製剤(以下、「単純混合製剤」という。)を得た。
【0030】
比較例2
結晶トラニラスト粉末に代えて、非晶質トラニラストを用いて、実施例1記載の方法で固体分散体を得た(以下、「非晶質固体分散体」という。)。非晶質トラニラストは、ジオキサンに完全溶解後、凍結乾燥することによって作製した。
【0031】
試験例1 固体分散体の粒度分布
固体分散体D、単純混合物及び結晶トラニラスト粉末を脱イオン水に懸濁し、レーザー回折ならびに動的光散乱法によって、それぞれの検体中のトラニラストの粒径を評価した。その結果、固体分散体Dは、平均粒径が122nm、SPAN factor は0.6であり、非常に均一性の高い微粒子の懸濁状態が得られることが示された。一方、単純混合物は、平均粒径が8.5μm、SPAN factorが2.2であった。また、結晶トラニラスト粉末は、平均粒径が61.4μm、SPAN factorが2.6であり、非常に大きな粉体となっていて、その粒度分布は比較的広いことが明かとなった。なお、SPAN factorが1以下であることは、粒子サイズの均一性が高いことを示す。
【0032】
試験例2 固体分散体の結晶性
固体分散体D、単純混合物、結晶トラニラスト粉末及び非晶質固体分散体について、粉末X線回折による結晶性の評価を行った。図1に示す通り、非晶質固体分散体以外の検体はいずれも高い結晶性を示した。すなわち、固体分散体Dは、非晶質化していないことが示された。一方、非晶質固体分散体は、典型的なハロパターンを示し、結晶でないことが確認された。
【0033】
試験例3 固体分散体の溶解性
固体分散体D、トラニラスト原末及び単純混合物について、マグネチックスターラーを用い、溶出試験を行った。トラニラストは、UPLC-MSを用いて定量した。なお、採取後の析出防止のため、等量のエタノールを加えたものを定量用サンプルとし、試験終了時に、試験液中のトラニラスト量を求めるため、残った試験液と等量のエタノールを加えたものを全量サンプルとした。溶出試験方法及びトラニラスト定量方法を以下に示す。

(溶出試験方法)
溶出試験液 :精製水(900 mL)
試験に用いた製剤量:トラニラスト量として 3 mg
攪拌速度 :300 rpm
温度 :室温
サンプル採取 :1、5、10、20、40、60 分 (200μL)
フィルター :0.22μm
(トラニラスト定量方法)
使用カラム :Acuity UPLC BEH C 18 カラム (Waters)
検出器 :SQ Detector (Waters)
ポンプ :Binary Solvent Manager (Waters)
移動相流速 :0.25mL/min
移動相: A: 100 % メタノール、B: 5mM 酢酸アンモニウム
0〜1 分: A 30%
1〜3 分: A 30〜75%
カラム温度 :40℃

【0034】
その結果、図2に示すとおり、固体分散体Dは優れた溶解性を示した。このことから、湿式微粉砕法によるナノ粉砕処理によって、トラニラストの溶解性が顕著に改善されていることが確認された。このような溶解速度の著しい向上により、薬物投与時の吸収速度の増大、薬効発現の速効性が強く期待される。また、単純混合物はトラニラスト原末と殆ど差異がなかったことから、固体分散体Dの溶解性は、HPC-SLの溶解補助作用によるものではないと考えられた。
【0035】
試験例4 固体分散体の光安定性
Suntest CPS plus(米国Atlas社、XeランプにUVフィルター)を用いて、UVA/UVBを照射(250 W/m2、25℃)して、固体分散体D、非晶質固体分散体、単純混合物及びトラニラストDMSO溶液(2 mg/mL)中のトラニラストの残存率を、試験例3記載の定量方法に従い、照射開始5、10、20及び30分後まで測定し、光安定性を検討した。
その結果、図3に示すように、トラニラストDMSO溶液は光照射に伴い、経時的な著しい分解を認めた。非晶質固体分散体は約10%の分解を示した。これに対して、トラニラストの結晶性が保たれている固体分散体Dならびに結晶トラニラスト粉末はともに分解を認めなかった。本結果より、本発明の固体分散体Dは、光安定性及び溶解性に優れたトラニラスト粉末製剤を提供できることが示された。
また、同様にして、粉末製剤1を検討した結果、30分間光照射後に約98%のトラニラストが残存し、高い光安定性を有していた。
【0036】
試験例5 粉末吸入製剤のカスケードインパクターによる評価
人工気道および肺モデルであるカスケードインパクターを用いて、粉末製剤1の空気力学的粒径を検討した。本体は8段のステージと最終フィルターを重ねたものであり、これに流速計と吸引ポンプを組み合わせたものである。粉末製剤1を日局2号カプセルに約40mg充填し、デバイスに設置した。測定は、USP 2000 "Physical Tests and Determinations/Aerosols"、"Multistage Cascade Impactor Apparatus"記載の方法により、以下の測定条件で行った。各ステージのトラニラストの量を試験例3記載の方法により測定した(図4)。

(測定条件)
装置:アンダーセンサンプラー(AN-200、柴田化学製)
ポンプ流量:28.3 L/min
使用デバイス:ジェットヘラー(登録商標)(ユニシアジェックス製)
検体:粉末製剤1
【0037】
その結果、カスケードインパクターによる空気力学的粒径の評価から、粉末製剤1は、主にステージ1とステージ3 〜 4に分布していることが示された。ステージ1に分布する粒子は担体から解離していない微粒子中に含まれるトラニラストであると推測される。解離した微粒子は主にステージ3〜4に分布していることが示された。ステージ2〜7に分布する粒子のパーセント量は、「標的部位である気管支や肺胞にたどりつく割合」として Respirable fraction(RF)値で定義される。本実施例におけるRF値は約60% であり、気管支および肺胞などの標的部位に十分に到達し、局所的に効果を発現するものと考えられる。また、カプセルから、製剤の約98%が放出されていることが確認され、その高い流動性・分散性も示された。
【0038】
試験例6
1)喘息モデル動物の作製
卵白由来ovalbumin (OVA) 感作による喘息動物モデルを作製した。具体的には、8〜11週齢のSprague-Dawleyラットに、0、7及び14日目にOVA溶液(OVA(SIGMA): 100μg及び水酸化アルミニウム(SIGMA): 5 mgを含む)を腹腔内投与した。最終感作の 24 時間後に、OVA粉末吸入剤6 mg(OVA量として100μg)を、ペントバルビタール麻酔下、吸入器(DP-4(株式会社イナリサーチ))を気道内に挿入し、圧縮空気を送って気道内投与した。OVA粉末吸入剤の代わりに乳糖粉末吸入剤を投与した群を正常群とした。
1)で作製したOVA感作喘息モデルを用いて、表3に示す各薬物について、各種抗喘息作用を評価した。OVA粉末吸入剤の投与1時間前に、粉末製剤1(100μgトラニラスト相当量、製剤1群)、固体分散体Dの代わりに乳糖を用いて作製した乳糖粉末吸入剤(約 6 mg、OVA群)、又はトラニラスト単純混合物を用いて作製した単純混合製剤(100μgトラニラスト相当量、混合製剤群)を、DP-4を用いて気道内投与した。
【0039】
【表3】

【0040】
試験例7 肺組織浸潤炎症性細胞の計数
試験例6記載の方法で、OVA感作喘息モデルラット(各群4例)を作製し、各種製剤を気道内投与した。OVA粉末吸入剤の投与24時間後に、肺を摘出し、10%中性緩衝性ホルマリンにて固定した。固定後、30%スクロース溶液に24時間浸し、OCT compound に包埋し、液体窒素を用いて瞬間凍結した。切片は厚さ12μmに薄切した後、顆粒球特異的に染色が可能なペルオキシダーゼ・ヘマトキシリン染色を行った。鏡検により気道組織への浸潤炎症性細胞を計数し、肺上皮の厚さを測定した(表4)。
その結果、OVA群において、顆粒球の顕著な浸潤と肺・気道上皮の肥厚が確認された。炎症反応と関連する細胞の浸潤と上皮の肥厚は、製剤1群、混合製剤群ともに、有意な抑制が認められたが、製剤1群では、混合製剤群と比較して、より強い抑制効果が認められた。

【0041】
【表4】

【0042】
試験例8 気管支肺胞洗浄液(BALF)中総細胞数
試験例6記載の方法で、OVA感作喘息モデルラット(各群4例)を作製し、各種製剤を気道内投与した。OVA粉末吸入剤の投与24時間後に、ネンブタール麻酔下、腹部大動脈より脱血させた後、気道にカニューレを挿入し生理食塩水 5 mLにて洗浄を行い、BALFを採取した。採取したBALFは1,000 rpmで5 分間遠心にかけ上清を除き、PBS(1 mL)に懸濁させた。手動血球計数器を用いて鏡検により、BALF中の総細胞数、マクロファージ、好酸球及び好中球の計数をそれぞれ行った(表5)。その結果、OVA群においては総細胞数が増大し、製剤1群、混合製剤群ともに、その上昇が抑制される傾向が確認されたが、製剤1群では、混合製剤群と比較して、より強い抑制効果が認められた。
【0043】
【表5】

【0044】
試験例9 炎症性マーカーに対する影響
試験例6記載の方法で、OVA感作喘息モデルラット(各群6例)を作製し、各種製剤を気道内投与した。OVA粉末吸入剤の投与24時間後に、肺を摘出し、RT-PCR 法により炎症性マーカーの変動を評価した。評価項目はNF-kBとCOX-2とし、それぞれのmRNAに特異的なprimer を設計してPCR産物の検出を行った。作製したPrimerは、配列番号1〜4に示す通りである(配列1:NF-κB、forward;配列2:NF-κB、reverse;配列3:COX-2、forward;配列4:COX-2、reverse)。アガロースゲル電気泳動にて PCR 産物を分離後、理論分子量に対応するバンドの強度を求め、mRNA発現比をそれぞれ算出した(表6)。その結果、OVA感作によっていずれのmRNAも上昇を認めたが、製剤1群、混合製剤群ではOVA群に比べ、有意に低下した。製剤1群と混合製剤群では顕著な差を認めなかった。
【0045】
【表6】

【0046】
試験例10 血中バイオマーカー評価
試験例6記載の方法で、OVA感作喘息モデルラット(各群4例)を作製し、各種製剤を気道内投与した。OVA粉末吸入剤投与後、経時的に採血し、血中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を測定した。炎症時には細胞障害が起こり、それに伴いLDHが上昇することが知られている。その結果、図5に示すとおり、OVA感作によって著しいLDH増加を認め、6時間でいったん最大値に到達し、その後24時間付近でまた上昇する傾向を認めた。このことは OVA感作によって二相性の炎症が引き起こされることを意味している。以上の血中LDHモニタリング結果から、製剤1群では早期の炎症と遅延型の炎症を共に抑えていることが示唆されるが、混合製剤群では遅延型の炎症のみを抑制することが明らかとなった。これは両製剤中のトラニラストの溶出速度の違いとよい対応を示しており、ナノ結晶固体分散体製剤の有用性を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、各種検体の粉末X線回折パターンを示す。横軸は回折角(2θ)(°)を、縦軸は、強度をそれぞれ表す。図は上から順に、(a) (I) 固体分散体D、(II)単純混合物、(III) 結晶トラニラスト粉末、(b) 非晶質固体分散体の粉末X線回折パターンである。
【図2】図2は、各種検体の溶出試験の結果を示す。横軸は試験開始からの経過時間(分)を、縦軸はトラニラストの溶出率(%)をそれぞれ表す。図中、○は固体分散体D;◇は単純混合物;□は結晶トラニラスト粉末の溶出率をそれぞれ表す。
【図3】図3は、各種検体の光安定性試験の結果を示す。横軸は試験開始からの経過時間(分)を、縦軸はpotency(残存率)(%)をそれぞれ表す。図中、○は固体分散体D;△は非晶質固体分散体;□は結晶トラニラスト粉末;▽はトラニラストDMSO溶液の結果をそれぞれ表す。
【図4】図4は、カスケードインパクターによる粉末製剤1の空気力学的粒径の測定結果を示す。横軸はカスケードインパクターの各ステージを、縦軸はトラニラストの量(%)をそれぞれ表す。
【図5】図5は、血中LDH測定の結果を示す。横軸はOVA粉末吸入剤投与後の経過時間(時間)を、縦軸は0時間後を100%としたLDH量をそれぞれ表す。図中、○は正常群;□はOVA群;◇は製剤1群;△は混合製剤群の結果をそれぞれ表す。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、難溶性薬物であるトラニラストを有効成分とし、優れた物性と有効性を発揮しうる粉末吸入製剤及びそれを製造するための固体分散体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細化トラニラスト結晶及び分散剤を含有する固体分散体。
【請求項2】
分散剤が糖アルコール類である、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項3】
分散剤が高分子化合物である、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項4】
トラニラストを分散剤と混合し、湿式微粉砕法によりナノ粉砕加工を行い、その懸濁液を凍結乾燥して得られる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体分散体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体分散体と吸入用担体とを含有する粉末吸入製剤。
【請求項6】
トラニラストを分散剤と混合し、湿式微粉砕法によりナノ粉砕加工を行い、その懸濁液を凍結乾燥して得られる固体分散体を、必要に応じて賦形剤を添加して混合・粉砕した後、吸入用担体と混合して得られる請求項5に記載の粉末吸入製剤。
【請求項7】
呼吸器疾患治療用である、請求項5又は6に記載の粉末吸入製剤。
【請求項8】
以下の工程を含むトラニラスト粉末吸入製剤の製造方法:(a)トラニラストを分散剤と混合し、湿式微粉砕法によりナノ粉砕加工を行い、その懸濁液を凍結乾燥して固体分散体を得る工程;(b)これに必要に応じて、賦形剤を添加して混合・粉砕する工程;及び(c)これを吸入用担体と混合する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−93849(P2011−93849A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249949(P2009−249949)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000104560)キッセイ薬品工業株式会社 (78)
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【Fターム(参考)】