説明

トラヒック迂回制御方式

【課題】溢れトラヒックの迂回元と迂回先との対応関係を最適化して全体の疎通トラヒック量を増加させるトラヒック迂回制御方式を提供する。
【解決手段】共通迂回先検索部141は、迂回元エリアa0に関して空き容量のある対応迂回先エリアが存在しないときに、迂回元エリアa1の溢れトラヒックが既に迂回されており、かつ迂回元エリアa0の対応迂回先エリアでもある迂回先エリアb0を検索し、これを共通迂回先エリアb0とする。再迂回先検索部142は、迂回元エリアa1に関して空き容量のある対応迂回先エリアb1を検索し、これを再迂回先エリアとする。迂回先切換部143は、迂回元エリアa1から共通迂回先エリアb0へ迂回されている溢れトラヒックを停止または減量し、その迂回先を対応迂回先エリアb1に切り換える。迂回実行部144は、迂回元エリアa0の溢れトラヒックを共通迂回先エリアb0へ迂回させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信エリアを含む通信ネットワークにおいて一の通信エリアの溢れトラヒックを他の一ないし複数の通信エリアへ迂回させるトラヒック迂回制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や台風などの災害が発生した場合、災害が発生した地域に対して、あるいは災害が発生した地域からは、安否確認や見舞いなどの呼が多数発生する。このような場合に発生する呼は通常のトラヒックの数十倍に及ぶことから、当該地域を収容している交換局に輻輳が生じて呼を接続できなくなることがある。
【0003】
このような技術課題に対して、非特許文献1には、平常時における通信エリアごとのトラヒック発生量に応じて、通信エリア間でのトラヒックの迂回方法を決定する技術が提案されている。
【非特許文献1】次世代インターネットとトラヒック工学,佐藤昌平 吉田万貴子,電子情報通信学会論文誌 B Vol.J85-B No.6 pp.875-889:2002/06/01
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発生トラヒック量が通信容量を超える通信エリアA0,A1から、通信容量に余裕のある通信エリアB0,B1の空き容量部分に溢れトラヒックを迂回させる場合、通信エリアA0からB0へは迂回できるがB1には迂回できず、通信エリアA1からはB0,B1のいずれにも迂回でき、通信エリアA1からB0へ既にトラヒックが迂回されているために通信エリアB0の空き容量が不足していると、通信エリアA0の溢れトラヒックを迂回させることができない。
【0005】
このとき、通信エリアA1の迂回先を通信エリアB0からB1へ切り換えられれば、通信エリアA0の溢れトラヒックを通信エリアB0へ迂回させることが可能になり、全体の疎通トラヒック量を増加させることができる。しかしながら、上記の従来技術では、迂回先を最適化することで全体の疎通トラヒック量を増加させることが考慮されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、溢れトラヒックの迂回元と迂回先との対応関係を最適化することで全体の疎通トラヒック量を増加させることができるトラヒック迂回制御方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数の通信エリアがトラヒックを相互に迂回できるように接続された通信ネットワークのトラヒック迂回制御方式において、各通信エリアで発生した事象の規模および平常時のトラヒック量に基づいて、当該事象後に各通信エリアで発生するトラヒック量を推定する推定手段と、前記各通信エリアを、その推定トラヒック量に基づいてトラヒックの迂回元エリアおよび迂回先エリアに分類する分類手段と、迂回元エリアごとに、迂回先エリアの中からトラヒックの迂回が可能な対応迂回先エリアを選別する選別手段と、各迂回元エリアのトラヒックを、その対応迂回先エリアに迂回させる迂回制御手段とを具備し、迂回制御手段は、一の迂回元エリアに関して空き容量のある対応迂回先エリアが存在せず、かつ他の一の迂回元エリアの迂回先エリアが前記一の迂回元エリアの対応迂回先でもある共通迂回先エリアであると、前記他の一の迂回元エリアから共通迂回先エリアへの迂回を停止または減量させ、前記一の迂回元エリアのトラヒックを前記共通迂回先エリアへ迂回させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発生トラヒック量が通信容量を超える迂回元の通信エリアで生じた溢れトラヒックの迂回先を動的に切り換えることで迂回元と迂回先との関係が最適化されるので、全体的な疎通トラヒック量を最大化できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明のトラヒック迂回制御方式が適用される通信ネットワーク1の構成を示した図であり、N個の通信エリアC1,C2…Ci…,Cnが相互に接続され、さらに各通信エリアCi間でのトラヒックの迂回を制御する迂回制御サーバPを含んでいる。
【0010】
図2は、前記各通信エリアCiおよび迂回制御サーバPの主要部の構成を示したブロック図であり、ここでは、本発明の説明に不要な構成は図示が省略されている。
【0011】
各通信エリアCiは少なくとも一つの交換局2を含み、各交換局2は無線基地局(AP)3に収容されている電話端末4からの発信呼および電話端末4への着信呼を受け付けて通話路を確立する。交換局2と無線基地局3との間には中継ノード5が接続され、各通信エリアCiおよび迂回制御サーバPは当該中継ノード5において相互に接続されている。なお、本実施形態では各電話端末4が携帯電話のような無線式であるものとして説明するが、有線式の電話端末であっても良い。
【0012】
迂回制御サーバPにおいて、トラヒック量推定部11は、各通信エリアCiで発生した事象の規模および平常時のトラヒック量に基づいて、当該事象後に各通信エリアCiで発生するトラヒック量を推定する。本実施形態では、災害発生時に各通信エリアCiのトラヒック量が大きく変動することに着目し、各通信エリアの被災規模を代表する情報が収集される。すなわち、地震災害時であれば各通信エリアCiで計測された震度が収集され、台風災害時であれば各通信エリアCiで計測された降水量や風速、あるいは気圧などが収集される。そして、これら災害規模に関する情報と平常時のトラヒック量とに基づいて通信エリアCiごとに災害時の推定トラヒック量が算出される。
【0013】
通信エリア分類部12は、各通信エリアCiを、その推定トラヒック量に基づいて迂回元エリア(集合A)および迂回先エリア(集合B)に分類する。迂回先選別部13は、迂回元エリアごとに、迂回先エリアの中からトラヒックの迂回が可能な対応迂回先エリアを選別する。本実施形態では、迂回元エリアと物理的に接続されていない通信エリア、迂回先として不適な通信エリア、あるいは迂回元エリアからの距離が基準値を超えるような通信エリアが候補から外され、それ以外の通信エリアが迂回先として好適な対応迂回先エリアに選抜される。
【0014】
迂回制御部14は、各迂回元エリアの溢れトラヒックを対応迂回先エリアの空き容量部分に迂回配分する。当該迂回制御部14はさらに、後に詳述するように、一の迂回元エリアに関して空き容量のある対応迂回先エリアが存在せず、かつ他の一の迂回元エリアの迂回先が前記一の迂回元エリアの対応迂回先でもある共通迂回先エリアであると、前記他の一の迂回元エリアから共通迂回先エリアへの迂回を停止または減量させ、前記一の迂回元エリアのトラヒックを前記共通迂回先エリアに確保された空き容量部分へ迂回配分させる。
[第1実施形態]
【0015】
図3は、本発明を適用した迂回制御サーバPの第1実施形態における前記迂回制御部14の構成を示した機能ブロック図であり、図4は、前記迂回制御部14による通信トラヒックの典型的な迂回方法を模式的に示した図である。
【0016】
ここでは、図4(a)に示したように、迂回元エリアa1の溢れトラヒックが迂回先エリアb0の空き容量部分に迂回配分されている状態において、さらに迂回元エリアa0の溢れトラヒックを迂回させる場合を考える。
【0017】
共通迂回先検索部141は、一の迂回元エリアa0に関して空き容量のある対応迂回先エリアが存在しないときに、図4(a)に示したように、他の一の迂回元エリアa1の溢れトラヒックが既に迂回されており、かつ一の迂回元エリアa0の対応迂回先エリアでもある迂回先エリアb0を検索し、これを共通迂回先エリアb0とする。再迂回先検索部142は、他の一の迂回元エリアa1に関して空き容量のある対応迂回先エリアb1を検索し、これを再迂回先エリアb1とする。
【0018】
迂回先切換部143は、図4(b)に示したように、他の一の迂回元エリアa1から共通迂回先エリアb0への迂回を一部停止し、その迂回先を対応迂回先エリアb1に切り換える。迂回実行部144は、前記迂回先の切換後に、図4(c)に示したように、一の迂回元エリアa0の溢れトラヒックを共通迂回先エリアb0へ迂回させる。
【0019】
次いで、本発明の第1実施形態の動作をフローチャートに沿って更に詳細に説明する。図5は、前記迂回制御サーバPの動作を示したフローチャートであり、ここでは、地震災害時に各通信エリアCiで発生すると推定されるトラヒック量(推定トラヒック量)に基づいてトラヒックの迂回制御が実行される。
【0020】
ステップS1では、前記通信エリア分類部12において、各通信エリアCiの推定トラヒック量Qiが各通信エリアCiの通信容量Qi_refと比較され、Qi≧Qrefの通信エリアは、トラヒックの迂回が必要な迂回元エリアと判定されて集合Aに分類される。これに対して、Qi<Qrefの通信エリアは、トラヒックの迂回が不要な迂回先エリアと判定されて集合Bに分類される。
【0021】
ステップS2では、集合Aが空集合であるか否かが判定される。集合Aが空集合であれば、トラヒックの迂回が必要となる通信エリアが存在しないと判定されて当該処理を終了する。ステップS3では、集合Bが空集合であるか否かが判定される。集合Bが空集合であれば、トラヒックの迂回先となる通信エリアが存在しないと判定されて当該処理を終了する。集合A,Bのいずれもが空集合でなければ、集合Aに分類された各通信エリアの溢れトラヒックを集合Bに分類された各通信エリアの空き容量部分へ迂回させるべくステップS4以降へ進む。
【0022】
ステップS4では、今回の迂回元エリアa0が集合Aから任意に選択される。ステップS5では、前記迂回先選別部13により、今回の迂回元エリアa0の迂回先となれる対応迂回先エリアの候補が集合Bから選別される。ステップS6では、今回の迂回元エリアa0の対応迂回先エリアが存在するか否かが判定される。対応迂回先エリアが存在すればステップS7へ進み、前記迂回制御部14により、対応迂回先エリアの空き容量部分に今回の迂回元エリアa0の溢れトラヒックが迂回配分される。
【0023】
ステップS8では、迂回元エリアa0の全ての溢れトラヒックを迂回できたか否かが判定され、迂回を完了できなければステップS9へ進む。ステップS9では、迂回元エリアa0からの迂回が可能な対応迂回先エリアb0に、集合Aの他の迂回元エリアa1の溢れトラヒックが既に迂回配分されている場合に、[共通迂回先エリアb0,再迂回元エリアa1,再迂回先エリアb1]の組が前記共通迂回先検索部141および再迂回先検索部142により検索される。
【0024】
ステップS10では、上記した通信エリアの組[b0,a1,b1]が存在するか否かが判定される。このような組が存在すればステップS11へ進み、再迂回元エリアa1から共通迂回先エリアb0へ迂回済みの溢れトラヒックの一部が再迂回先エリアb1へ再迂回配分される。ステップS12では、この再迂回により共通迂回先エリアb0に生じた空き容量に前記迂回元エリアa0の溢れトラヒックが迂回配分される。
【0025】
なお、前記ステップS6で迂回先候補が存在しないと判定されるか、あるいは前記ステップS8において今回の迂回元エリアa0の溢れトラヒックが全て迂回済みと判定されるか、あるいは前記ステップS10において前記通信エリアの組[b0,a1,b1]が存在しないと判定されるとステップS13へ進み、今回の迂回元エリアa0が集合Aから削除される。
【0026】
図6は、図5のフローチャートに従ってトラヒックが迂回される様子を模式的に表現した図であり、同図(a)に示したように、迂回元エリアa1の溢れトラヒック量は[20]、迂回元エリアa0の溢れトラヒック量は[30]である。また、迂回先エリアb0の空き容量は(10)、迂回先エリアb1の空き容量は(8)、迂回先エリアb2の空き容量が(15)、迂回先エリアb3の空き容量が(10)、迂回先エリアb4の空き容量は(7)である。
【0027】
さらに、同図(a)の破線矢印は各迂回元エリアa1,a0の対応迂回先エリアを示しており、迂回元エリアa1のトラヒックは迂回先エリアb0,b2,b4に迂回できるが迂回先エリアb1,b3には迂回できない。迂回元エリアa0のトラヒックは迂回先エリアb1,b2,b3に迂回できるが迂回先エリアb0,b4には迂回できない。
【0028】
このような構成において、既に迂回元エリアa1から迂回先エリアb0,b2へ、それぞれトラヒック量(5),(15)が迂回されている状態で、さらに迂回元エリアa0からトラヒック量(30)の迂回を開始させる場合を考える。
【0029】
始めは、同図(b)に示したように、迂回元エリアa0の対応迂回先として2つの迂回先エリアb1,b3が選抜され、前記ステップS7において、それぞれの空き容量部分に迂回元エリアa0の溢れトラヒック量(8),(10)が迂回される。しかしながら、この迂回後も迂回元エリアa0には溢れトラヒック量(12)が未だ残っているので、ステップS8では迂回が未完了と判定されてステップS9へ進む。
【0030】
ステップS9では、[迂回先エリアb2,迂回元エリアa1,迂回先エリアb0]の組が前記[共通迂回先エリア,再迂回元エリア,再迂回先エリア]の組とされ、始めに同図(c)に示したように、再迂回元エリアa1から共通迂回先エリアb2に迂回されているトラヒックのうち、トラヒック量(5)の迂回先が再迂回先エリアb0に変更される。これにより共通迂回先エリアb2には空き容量(5)が生じる。次いで、同図(d)に示したように、迂回元エリアa0からトラヒック量(5)が新たに共通迂回先エリアb2へ迂回される。しかしながら、この迂回後も迂回元エリアa0には溢れトラヒック量(7)が未だ残っているので、次のステップS8でも迂回が未完了と判定されてステップS9へ進む。
【0031】
ステップS9では、今度は[迂回先エリアb2,迂回元エリアa1,迂回先エリアb4]の組が前記[共通迂回先エリア,再迂回元エリア,再迂回先エリア]の組とされ、始めに同図(e)に示したように、再迂回元エリアa1から共通迂回先エリアb2に迂回されているトラヒックのうち、トラヒック量(7)の迂回先が再迂回先エリアb4に切り換えられる。これにより、共通迂回先エリアb2には空き容量(7)が生じる。次いで、同図(f)に示したように、迂回元エリアa0からトラヒック量(7)が新たに共通迂回先エリアb2へ迂回されて全ての溢れトラヒックの迂回が完了する。
[第2実施形態]
【0032】
図7は、本発明を適用した迂回制御サーバPの第2実施形態における前記迂回制御部14の構成を示した機能ブロック図であり、図8は、前記迂回制御部14による通信トラヒックの典型的な迂回方法を模式的に示した図である。ここでは、図8(a)に示したように、迂回元エリアa1の溢れトラヒックが迂回先エリアb0,b1の各空き容量部分に迂回配分されている状態において、さらに迂回元エリアa0の溢れトラヒックを迂回させる場合を考える。
【0033】
上記した第1実施形態では、迂回先の各通信エリアが複数の迂回元の通信エリアから迂回トラヒックを受け容れられたが、本実施形態では、迂回先の各通信エリアは一つの迂回元の通信エリアからしか迂回トラヒックを受け容れられないものとする。
【0034】
共通迂回先検索部141は、一の迂回元エリアa0に関して空き容量のある対応迂回先エリアが存在しないときに、他の一の迂回元エリアa1の溢れトラヒックが既に迂回されており、かつ一の迂回元エリアa0の対応迂回先エリアでもある迂回先エリアb0を検索し、これを共通迂回先エリアb0とする。
【0035】
迂回停止部146は、図8(b)に示した用に、他の一の迂回元エリアa1から共通迂回先エリアb0への迂回を停止させる。迂回実行部147は、前記迂回の停止後に、図8(c)に示したように、一の迂回元エリアa0の溢れトラヒックを共通迂回先エリアb0へ迂回させる。前記迂回実行部147はさらに、図8(d)に示したように、迂回停止させた他の一の迂回元エリアa1の溢れトラヒックを他の迂回先エリアb2へ改めて迂回させる。
【0036】
トラヒック量比較部145は、前記迂回停止部146により迂回を停止される停止トラヒック量と前記迂回実行部147により迂回を開始される開始トラヒック量とを比較する。前記迂回停止部146は、開始トラヒック量が停止トラヒック量を上回ることを条件に前記迂回停止を実行する。なお、前記トラヒック比較部145は、図8(d)に示したように、停止させた迂回トラヒックを他の迂回先エリアb2へ改めて迂回させた場合は、一の迂回元エリアa0から共通迂回先エリアb0へ迂回されるトラヒック量および他の一の迂回元エリアa1から他の迂回先エリアb2へ迂回されるトラヒック量の和を開始トラヒック量とする。
【0037】
次いで、本発明の第2実施形態の動作をフローチャートに沿って更に詳細に説明する。図9は、前記迂回制御サーバPの動作を示したフローチャートであり、ここでも、地震災害時に各通信エリアCiで発生すると推定されるトラヒック量(推定トラヒック量)に基づいてトラヒックの迂回制御が実行される。
【0038】
ステップS31では、前記通信エリア分類部12において、各通信エリアCiの推定トラヒック量Qiが各通信エリアCiの通信容量Qi_refと比較され、Qi≧Qrefの通信エリアは、トラヒックの迂回が必要な迂回元エリアと判定されて集合Aに分類される。これに対して、Qi<Qrefの通信エリアは、トラヒックの迂回が不要な迂回先エリアと判定されて集合Bに分類される。
【0039】
ステップS32では、集合Aが空集合であるか否かが判定される。集合Aが空集合であれば、トラヒックの迂回が必要となる通信エリアが存在しないと判定されて当該処理を終了する。ステップS33では、集合Bが空集合であるか否かが判定される。集合Bが空集合であれば、トラヒックの迂回先となる通信エリアが存在しないと判定されて当該処理を終了する。集合A,Bのいずれもが空集合でなければ、集合Aに分類された各通信エリアの溢れトラヒックを集合Bに分類された各通信エリアへ迂回させるべくステップS34以降へ進む。
【0040】
ステップS34では、今回の迂回元エリアa0が集合Aから選択され、ステップS35では、前記迂回先選別部13により、今回の迂回元エリアa0の迂回先となれる対応迂回先エリアの候補が集合Bから選別される。本実施形態では、前記ステップS34において、続くステップS35で選別される対応迂回先エリアの候補がより少ない迂回元エリアa0から順に選択されるようにすることが望ましい。
【0041】
ステップS36では、今回の迂回元エリアa0の対応迂回先エリアが存在するか否かが判定される。対応迂回先エリアが存在すればステップS37へ進み、前記迂回制御部14により、溢れトラヒックが未割り当ての対応迂回先エリアの空き容量部分に今回の迂回元エリアa0の溢れトラヒックが迂回配分される。
【0042】
ステップS38では、迂回元エリアa0の全ての溢れトラヒックを迂回できたか否かが判定され、迂回を完了できなければステップS39へ進む。ステップS39では、迂回元エリアa0の対応迂回先エリアb0に、集合Aの他の通信エリアa1の溢れトラヒックの少なくとも一部が既に迂回配分されている場合に、[共通迂回先エリアb0,再迂回元エリアa1]の組が前記共通迂回先検索部141により検索される。
【0043】
ステップS40では、上記した通信エリアの組[b0,a1]が存在するか否かが判定される。このような組が存在すればステップS41へ進み、迂回元エリアa1から共通迂回先エリアb0へ迂回されている実績トラヒック量U1と迂回元エリアa0から共通迂回先エリアb0への迂回を開始される開始トラヒック量U2とが、前記トラヒック量比較部145により比較される。U2>U1であればステップS42へ進み、迂回元エリアa1から共通迂回先エリアb0へのトラヒック迂回が前記迂回停止部146により停止される。ステップS43では、迂回元エリアa0から共通迂回先エリアb0へのトラヒック迂回が開始される。
【0044】
なお、ステップS42で迂回を停止させた溢れトラヒックの新たな迂回先を確保できるならば、前記ステップS41では、当該新たな迂回先に迂回されるトラヒックも考慮して全体の疎通トラヒック量の増減を判定することが望ましい。
【0045】
前記ステップS36で迂回先候補が存在しないと判定されるか、あるいは前記ステップS38において今回の迂回元エリアa0の溢れトラヒックが全て迂回済みと判定されるか、あるいは前記ステップS40において前記通信エリアの組[b0,a1]が存在しないと判定されるか、あるいはステップS41でトラヒック量が増加しない(U2≦U1)と判定されるとステップS44へ進み、今回の迂回元エリアa0が集合Aから削除される。
【0046】
図10は、図9のフローチャートに従ってトラヒックが迂回される様子を模式的に表現した図であり、同図(a)に示したように、迂回元エリアa1の溢れトラヒック量は[20]、迂回元エリアa0の溢れトラヒック量は[30]である。また、迂回先エリアb0の空き容量は(15)、迂回先エリアb1の空き容量は(5)、迂回先エリアb2の空き容量が(15)、迂回先エリアb3の空き容量が(10)である。
【0047】
さらに、同図(a)の破線矢印は各迂回元エリアa1,a0の対応迂回先エリアを示しており、迂回元エリアa1のトラヒックは迂回先エリアb0,b2に迂回できるが迂回先エリアb1,b3には迂回できない。迂回元エリアa0のトラヒックは迂回先エリアb1,b2,b3に迂回できるが迂回先エリアb0には迂回できない。
【0048】
このような構成において、既に迂回元エリアa1から迂回先エリアb0,b2へ、それぞれトラヒック量(15),(5)が迂回されている状態で、さらに迂回元エリアa0からトラヒック量(30)の迂回を開始させる場合を考える。
【0049】
始めは、同図(b)に示したように、2つの迂回先エリアb1,b3が選抜され、前記ステップS37において、それぞれの空き容量部分に迂回元エリアa0の溢れトラヒック量(5),(10)が迂回される。しかしながら、この迂回後も迂回元エリアa0には溢れトラヒック量(15)が未だ残っているので、ステップS38では迂回が未完了と判定されてステップS39へ進む。
【0050】
ステップS39では、[迂回先エリアb2,迂回元エリアa1]の組が前記[共通迂回先エリア,再迂回元エリア]の組とされ、再迂回元エリアa1から共通迂回先エリアb2へ迂回されている実績トラヒック量U1と迂回元エリアa0から共通迂回先エリアb2への迂回を開始する開始トラヒック量U2とがステップS41で比較される。U2>U1であればステップS42へ進み、同図(c)に示したように、再迂回元エリアa1から共通迂回先エリアb2へのトラヒック迂回が停止される。ステップS43では、同図(d)に示したように、迂回元エリアa0の溢れトラヒックが共通迂回先エリアb2へ迂回される。
【0051】
なお、迂回元エリアa1の対応迂回先が他にもあれば、同図(c)で迂回を停止させた迂回トラヒックを、同図(e)に示したように、当該他の迂回先エリアb4の空き容量部分にさらに迂回配分するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明が適用される通信ネットワークの構成を示した図である。
【図2】通信エリアCiおよび迂回制御サーバPの構成を示したブロック図である。
【図3】迂回制御サーバPの迂回制御部の第1実施形態を示したブロック図である。
【図4】第1実施形態の迂回制御部による通信トラヒックの迂回方法を示した図である。
【図5】本発明の第1実施形態の動作を示したフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートにしたがってトラヒックが迂回される様子を示した図である。
【図7】迂回制御サーバPの迂回制御部の第2実施形態を示したブロック図である。
【図8】第2実施形態の迂回制御部による通信トラヒックの迂回方法を示した図である。
【図9】本発明の第2実施形態の動作を示したフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにしたがってトラヒックが迂回される様子を示した図である。
【符号の説明】
【0053】
1…通信ネットワーク,2…交換局,3…無線基地局,4…電話端末,5…中継ノード,11…トラヒック量推定部,12…通信エリア分類部,13…迂回先選別部,14…迂回制御部,141…共通迂回先検索部,142…再迂回先検索部,143…迂回先切換部,144…迂回実行部,145…トラヒック量比較部,146…迂回停止部,147…迂回実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信エリアがトラヒックを相互に迂回できるように接続された通信ネットワークのトラヒック迂回制御方式において、
各通信エリアで発生した事象の規模および平常時のトラヒック量に基づいて、当該事象後に各通信エリアで発生するトラヒック量を推定する推定手段と、
前記各通信エリアを、その推定トラヒック量に基づいてトラヒックの迂回元エリアおよび迂回先エリアに分類する分類手段と、
迂回元エリアごとに、迂回先エリアの中からトラヒックの迂回が可能な対応迂回先エリアを選別する選別手段と、
各迂回元エリアのトラヒックを、その対応迂回先エリアに迂回させる迂回制御手段とを具備し、
前記迂回制御手段は、一の迂回元エリアに関して空き容量のある対応迂回先エリアが存在せず、かつ他の一の迂回元エリアの迂回先エリアが前記一の迂回元エリアの対応迂回先でもある共通迂回先エリアであると、前記他の一の迂回元エリアから共通迂回先エリアへの迂回を停止または減量させ、前記一の迂回元エリアのトラヒックを前記共通迂回先エリアへ迂回させることを特徴とするトラヒック迂回制御方式。
【請求項2】
前記迂回制御手段が、
一の迂回元エリアに関して空き容量のある対応迂回先エリアが存在しないときに、他の一の迂回元エリアのトラヒックが既に迂回されており、かつ前記一の迂回元エリアの対応迂回先エリアでもある共通迂回先エリアを検索する共通迂回先検索手段と、
前記他の一の迂回元エリアに関して空き容量のある他の対応迂回先エリアを検索する再迂回先検索手段と、
前記他の一の迂回元エリアから共通迂回先エリアへ迂回されているトラヒックの一部の迂回先を前記他の対応迂回先エリアに切り換える迂回先切換手段と、
前記迂回先の切換後に、前記一の迂回元エリアのトラヒックを前記共通迂回先エリアへ迂回させる迂回実行手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載のトラヒック迂回制御方式。
【請求項3】
前記迂回制御手段が、
一の迂回元エリアに関して空き容量のある対応迂回先エリアが存在しないときに、他の一の迂回元エリアのトラヒックが既に迂回されており、かつ前記一の迂回元エリアの対応迂回先エリアでもある共通迂回先エリアを検索する共通迂回先検索手段と、
前記他の一の迂回元エリアから前記共通迂回先エリアへの迂回を停止させる迂回停止手段と、
前記迂回の停止後に、前記一の迂回元エリアのトラヒックを前記共通迂回先エリアへ迂回させる迂回実行手段と、
前記迂回停止手段により迂回を停止される停止トラヒック量と前記迂回実行手段により迂回を開始される開始トラヒック量とを比較する比較手段とを具備し、
前記迂回停止手段は、前記開始トラヒック量が前記停止トラヒック量を上回るときに迂回を停止させることを特徴とする請求項1に記載のトラヒック迂回制御方式。
【請求項4】
前記迂回実行手段がさらに、前記他の一の迂回元エリアのトラヒックを他の対応迂回先へ迂回させる手段を含み、
前記比較手段は、前記一の迂回元エリアから共通迂回先エリアへの迂回を開始されるトラヒック量および前記他の一の迂回元エリアから他の対応迂回先への迂回を開始されるトラヒック量との和を開始トラヒック量とすることを特徴とする請求項3に記載のトラヒック迂回制御方式。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−154242(P2010−154242A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330377(P2008−330377)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】