説明

トランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体の製造方法

【課題】塩化メチレン等の環境負荷の大きい溶媒を使用することなく、トランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体を、簡便に、かつ、収率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】工程(a):2−アミノシクロヘキサノールとジ−tert−ブチル−ジ−カーボネートを反応させ、次いで無水酢酸を反応させて、(2)で表される化合物のラセミ体を得る工程と、


工程(b):当該ラセミ体をリパーゼで処理して不斉加水分解する工程と、を含む、下記式(3)


及び、そのアセチル化光学異性体の混合物を得る工程からなる、トランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学活性なトランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体の製造方法としては、特許文献1で報告されているようにリパーゼ等の酵素を用いた不斉加水分解を経る方法が知られている。当該文献においては、下記式(7)で示されるスキームに従って光学活性なトランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体を製造している。
【0003】
【化1】

【0004】
しかしながら、上記製造方法においては、式(1)で表される化合物から式(2)で表される化合物を製造する工程において、ジ−tert−ブチル−ジ−カーボネートによるtert−ブチルオキシカルボニル化(以下、Boc化とも言う。)及び無水酢酸によるアセチル化をそれぞれ別工程で実施し、各工程で単離、精製を行っているため、非効率的な製造方法であった。
また、上記製造方法においては、Boc化反応において、式(1)で表される化合物に対して塩化メチレンを約26倍容量使用している。ここで、化学物質管理促進法(PRTR法)によると、(i)人の健康や動植物の生息、生育に支障を及ぼすおそれがあるもの、(ii)化学変化により容易に生成する化学物質が人の健康や動植物の生息、生育に支障を及ぼすおそれがあるもの、(iii)オゾン層を破壊するおそれがあるもの等として規定された第1種指定化学物質に塩化メチレンが挙げられている。従って、上記製造方法は、特に工業的規模で行った場合には、環境に対する負荷が増大するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2846770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、塩化メチレン等の環境負荷の大きい溶媒を使用することなく、光学活性なトランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体を、簡便に、かつ、収率良く製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして本発明者は、上記課題に対して鋭意研究を行った結果、式(1)で表される化合物から、Boc化及びアセチル化を経て式(2)で表される化合物のラセミ体を製造する工程において、式(1)及び(2)で表される化合物の両方を溶解する溶媒を使用して反応を行い、その後、リパーゼを加えて式(2)で表される化合物のラセミ体の不斉加水分解を行うことにより、塩化メチレン等の環境負荷の大きい溶媒を使用することなく、光学活性なトランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体を、簡便に、かつ、収率良く製造できることを見いだし本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
工程(a):下記式(1)
【0009】
【化2】

【0010】
及び、下記式(2)
【0011】
【化3】

【0012】
で表される化合物を溶解する溶媒に、前記式(1)で表される化合物を溶解した後、前記式(1)で表される化合物とジ−tert−ブチル−ジ−カーボネートを反応させ、次いで無水酢酸を反応させて、前記式(2)で表される化合物のラセミ体を得る工程と、
工程(b):前記式(2)で表される化合物のラセミ体をリパーゼで処理して不斉加水分解する工程と、
を含む、
下記式(3)
【0013】
【化4】

【0014】
及び、下記式(4)
【0015】
【化5】

【0016】
で表される、トランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体の製造方法。
[2]
前記工程(a)で用いられる溶媒は、環状エーテル系溶媒及び/又は脂肪族ケトン系溶媒である、上記[1]記載の製造方法。
[3]
前記工程(a)終了後に水を添加して、式(2)で表される化合物のラセミ体を析出させる工程(c)をさらに含む、上記[1]又は[2]記載の製造方法。
[4]
前記工程(b)における前記式(2)で表される化合物のラセミ体は、水に湿潤した状態である、上記[1]〜[3]のいずれか記載の製造方法。
[5]
前記工程(b)において、反応媒体にC3以下の低級アルコールを加える工程(d)をさらに含む、上記[1]〜[4]のいずれか記載の製造方法。
[6]
前記C3以下の低級アルコールは、メチルアルコール及び/又はエチルアルコールである、上記[5]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、塩化メチレン等の環境負荷の大きい溶媒を使用することなく、光学活性なトランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体を、簡便に、かつ、収率良く製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
本実施の形態のトランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体の製造方法は、
工程(a):下記式(1)
【0020】
【化6】

【0021】
及び、下記式(2)
【0022】
【化7】

【0023】
で表される化合物を溶解する溶媒に、前記式(1)で表される化合物を溶解した後、前記式(1)で表される化合物とジ−tert−ブチル−ジ−カーボネートを反応させ、次いで無水酢酸を反応させて、前記式(2)で表される化合物のラセミ体を得る工程と、
工程(b):前記式(2)で表される化合物のラセミ体をリパーゼで処理して不斉加水分解する工程と、
を含む、
下記式(3)
【0024】
【化8】

【0025】
及び、下記式(4)
【0026】
【化9】

【0027】
で表される、トランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体の製造方法である。
【0028】
本実施の形態の製造方法は、下記式(8)で示されるスキームに従った方法である。
【0029】
【化10】

【0030】
以下、各工程について説明する。
[工程(a)]
工程(a)は、式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)とも言う。)及び式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)とも言う。)の両方を溶解することのできる溶媒に、化合物(1)を溶解した後、化合物(1)とジ−tert−ブチル−ジ−カーボネートを反応させ、次いで無水酢酸を反応させて、化合物(2)のラセミ体を得る工程である。
【0031】
本工程においては、反応溶媒として、化合物(1)及び化合物(2)の両方を溶解する溶媒を使用することにより、ジ−tert−ブチル−ジ−カーボネートによるBoc化と、無水酢酸によるアセチル化を、同一容器内で連続的に行う(ワンポット反応)させることができる。このことにより、従来の複数工程で行う方法と比較して、化合物(2)のラセミ体を簡便に、かつ、高収率で得ることが可能となった。
【0032】
さらに、本工程においては、反応溶媒として化学物質管理促進法(PRTR法)で第1種指定化学物質に指定されている塩化メチレン等を使用しないため、従来法と比較して、環境に対する負荷を顕著に低減することを可能とした。
【0033】
本工程に用いる、化合物(1)及び化合物(2)の両方を溶解することのできる溶媒としては、特に限定されず、例えば、環状エーテル系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒等を好適に用いることができる。
【0034】
環状エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、4−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、モルフォリン等を用いることができ、好ましくは、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンであり、より好ましくは、テトラヒドロフランである。
【0035】
脂肪族ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−sec−ブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、エチルプロピルケトン、ブチルエチルケトン等を用いることができ、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトンである。
【0036】
本工程においては、まず、化合物(1)及び化合物(2)を溶解する溶媒に、化合物(1)((±)トランス−2−アミノシクロヘキサノール)を溶解した後、ジ−tert−ブチル−ジ−カーボネートを加えてBoc化反応を行う。
【0037】
ジ−tert−ブチル−ジ−カーボネートの使用量は、化合物(1)に対して、好ましくは1.0〜1.3当量であり、より好ましくは1.0〜1.1当量である。
【0038】
溶媒の使用量は、化合物(1)に対して、2〜20倍容量であり、好ましくは3〜5倍容量であり、より好ましくは約4倍容量である。
【0039】
ジ−tert−ブチル−ジ−カーボネートによるBoc化反応における反応温度は、通常15〜50℃であり、好ましくは25〜45℃、より好ましくは30℃〜40℃である。また、反応時間は、通常0.5〜3時間であり、より好ましくは1.5〜2.5時間である。
【0040】
本工程においては、上記Boc化反応終了後に、無水酢酸及び塩基を同一容器内に連続的に加えてアセチル化反応を行うことにより、中間体を単離、精製することなくワンポット反応で、化合物(2)のラセミ体を得ることができる。
【0041】
無水酢酸によるアセチル化反応における反応温度は、通常20〜60℃であり、好ましくは30〜55℃であり、より好ましくは40〜50℃である。また、反応時間は、通常6〜24時間であり、好ましくは8〜16時間であり、より好ましくは8〜12時間である。
【0042】
アセチル化に用いる塩基としては、特に限定されず、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等を用いることができる。塩基の使用量としては、無水酢酸に対して、好ましくは1〜2当量、より好ましくは1.0〜1.1当量である。
【0043】
化合物(2)のラセミ体の単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留、再結晶等の当該分野で公知の方法によって、化合物(2)のラセミ体を単離、精製することができる。
【0044】
[工程(c)]
本実施の形態の製造方法においては、前記工程(a)終了後に水を添加して、式(2)で表される化合物のラセミ体を析出させる工程(c)をさらに含んでいてもよい。
【0045】
工程(a)で得られた化合物(2)は、水への溶解性が極めて低いため、工程(a)終了後に反応系に水を加えることにより、化合物(2)のラセミ体を良好に析出させることができる。特に本工程は、工程(a)において水との親和性が高い環状エーテル系溶媒や脂肪族ケトン系溶媒を用いた場合に有効である。本工程は、シリカゲルカラムによる精製等を行うことなく、化合物(2)のラセミ体を高純度で析出させることが可能であるため、工業的に極めて効率的な方法であると言える。
【0046】
[工程(b)]
工程(b)は、前記式(2)で表される化合物のラセミ体をリパーゼで処理して不斉加水分解する工程である。
【0047】
不斉加水分解には、通常使用されているリパーゼを用いればよく、例えば、Pseudomonas cepacia lipaseを起源とするリパーゼPS「アマノ」SDや、Aspergillus nigerを起源とするリパーゼA6が具体例として挙げられる。
【0048】
リパーゼの使用量は、化合物(2)に対して、好ましくは0.1〜0.5倍質量、より好ましくは約0.125倍質量である。
【0049】
この酵素反応は、反応を阻害しない適宜の媒体中で行うことができ、例えば、0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH6.0〜7.0)中で行うことができる。媒体の使用量は、化合物(2)に対して、好ましくは10〜100倍容量であり、であり、より好ましくは20〜25倍容量である。反応温度は、通常30〜50℃であり、好ましくは約45℃である。反応時間(攪拌時間)は、通常6〜24時間であり、好ましくは約20時間である。
【0050】
酵素反応における撹拌速度は、好ましくは30〜300rpmであり、より好ましくは約100rpmである。攪拌速度が上記範囲であることにより、酵素の失活が低減され、不斉加水分解反応がより良好に進行する傾向にある。
【0051】
また、工程(b)においては、式(2)で表される化合物のラセミ体は、水に湿潤した状態であるのが好ましい。化合物(2)が乾燥した状態であると、基質である化合物(2)の疎水性が強いため反応媒体として使用するリン酸緩衝液等との混合が困難となり、不斉加水分解反応が良好に進行しないおそれがある。
【0052】
[工程(d)]
工程(b)においては、C3以下の低級アルコールを反応媒体に加える工程(d)をさらに含んでいてもよい。反応媒体にC3以下の低級アルコールを加えると、化合物(2)のラセミ体が反応媒体に溶解し易くなるため、不斉加水分解がより良好に(定量的に)進行する傾向にある。
【0053】
C3以下の低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等を挙げることができ、好ましくはメタノール、エタノールであり、より好ましくはメタノールである。上記アルコールは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
C3以下の低級アルコールの使用量は、反応媒体に対して、好ましくは0.02〜0.2倍容量であり、より好ましくは0.05〜0.15倍容量である。
【0055】
本実施の形態の製造方法においては、上記工程(a)及び(b)(必要に応じて、工程(c)及び(d))を実施することにより、下記式(3)
【0056】
【化11】

【0057】
及び、下記式(4)
【0058】
【化12】

【0059】
で表される、光学活性なトランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体を得ることができる。
【0060】
化合物(3)及び(4)の単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留、再結晶等の当該分野で公知の方法によって、化合物(3)及び(4)をそれぞれ単離、精製することができる。
【0061】
工程(b)の後、単離、精製して得られた式(3)で表される光学活性ヒドロキシ体は、下記式(9)で示すように、塩酸等の酸で処理することにより、下記式(5)で表される(1R,2R)トランス−2−アミノシクロヘキサノール塩酸塩等の適宜の塩に変換することができる。
【0062】
【化13】

【0063】
本実施の形態の製造方法を用いて得られた式(5)で表される(1R,2R)トランス−2−アミノシクロヘキサノール塩酸塩を、下記式(10)で示すように、2,4−ジニトロフルオロベンゼンで処理し下記式(11)で表される化合物を得て、高速液体クロマトグラフィーで光学純度を測定したところ100%e.e.であることが判明した。化合物(11)の絶対配置は特許第2846770号公報を参照した。
【0064】
【化14】

【0065】
工程(b)の後、単離、精製して得られた式(4)で表される光学活性アセテートを、下記式(12)で示すように、メタノール溶媒中1.0〜3.0当量のナトリウムメチラートで処理して下記式(13)で表される光学活性ヒドロキシ体に導き、次いで、1.0〜3.0当量の塩酸等の適宜の酸を用いてtert−ブチルオキシカルボニルを除去して、下記式(6)で表される(1S,2S)トランス−2−アミノシクロヘキサノール塩酸塩等の適宜の塩に変換することができる。
【0066】
【化15】

【実施例】
【0067】
以下に本実施の形態を具体的に説明した実施例を例示するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
(±)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキシルアセテートの製造
テトラヒドロフラン42mLにジ−tert−ブチル−ジ−カーボネート18.9g(86.8mmol)を加え、次いで(±)2−アミノシクロヘキサノール10.0g(86.8mmol)を30分かけて加えて35℃で2時間反応させた後、トリエチルアミン17.6g(174mmol)と、無水酢酸17.7g(174mmol)を加えて45℃で10時間反応させた。反応終了後、反応溶液を水245mLに加え、30分間撹拌し、析出した結晶をろ過して、(±)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキシルアセテート20.7g(80.34mmol、収率92.6%)を得た。
得られた化合物のNMRスペクトルは、特許第2846770号の実施例2のデータと一致した。
【0069】
(実施例2)
(1S,2S)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキシルアセテート及び(1R,2R)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキサノールの製造
(±)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキシルアセテート1.0g(3.9mmol)を0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)100mLに懸濁させ、次いでPseudomonas cepacia lipase(天野製薬社製 リパーゼPS「アマノ」SD)500mgを加えた。この反応溶液を30℃で、マグネチックスターラーを用いて13時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を桐山濾紙で濾過した。この濾紙上に残った結晶をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒、酢酸エチル:ヘキサン混合溶媒)に付し、(1S,2S)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキシルアセテート490mg(49.0%)を得た。
得られた化合物のNMRスペクトルは、特許第2846770号の実施例2のデータと一致した。
また母液をクロロホルム100mLにて3回抽出し、有機層を溶媒留去後、残留物をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒、酢酸エチル:ヘキサン混合溶媒)に付し、(1R,2R)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキサノール408.9mg(49.0%)を得た。
得られた化合物のNMRスペクトルは、特許第2846770号の実施例1のデータと一致した。
【0070】
(比較例1)
(±)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキサノールの製造
(±)トランス−2−アミノシクロヘキサノール23.0g(0.2mol)の塩化メチレン600mL溶液へ、トリエチルアミン27.8mL(0.2mol)を加えて均一溶液とした後、ジ−tert−ブチル−ジ−カーボネート43.6g(0.2mol)を加えて1時間室温で攪拌した。次に、水300mLで3回水洗後、硫酸マグネシウムで30分間乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた白色固体をキシレンで再結晶し、(±)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキサノール41.3g(96.0%)を得た。
得られた化合物のNMRスペクトルは、特許第2846770号の実施例1のデータと一致した。
【0071】
(比較例2)
(±)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキシルアセテートの製造
(±)トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキサノール33.0g(0.15mol)を無水酢酸15.9mL(0.17mol)及びトリエチルアミン23.4mL(0.17mol)の混合液に溶解し、4時間室温で攪拌した。反応終了後、水100mLを加え、析出した白色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、クロロホルム:ヘキサン混合溶媒)に付し、トランス−2−tert−ブトキシカルボアミドシクロヘキシルアセテート16.6g(96.0%)を得た。
得られた化合物のNMRスペクトルは、特許第2846770号の実施例2のデータと一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(a):下記式(1)
【化1】


及び、下記式(2)
【化2】


で表される化合物を溶解する溶媒に、前記式(1)で表される化合物を溶解した後、前記式(1)で表される化合物とジ−tert−ブチル−ジ−カーボネートを反応させ、次いで無水酢酸を反応させて、前記式(2)で表される化合物のラセミ体を得る工程と、
工程(b):前記式(2)で表される化合物のラセミ体をリパーゼで処理して不斉加水分解する工程と、
を含む、
下記式(3)
【化3】


及び、下記式(4)
【化4】


で表される、トランス−2−アミノシクロヘキサノール誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)で用いられる溶媒は、環状エーテル系溶媒及び/又は脂肪族ケトン系溶媒である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)終了後に水を添加して、式(2)で表される化合物のラセミ体を析出させる工程(c)をさらに含む、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(b)における前記式(2)で表される化合物のラセミ体は、水に湿潤した状態である、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(b)において、反応媒体にC3以下の低級アルコールを加える工程(d)をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
前記C3以下の低級アルコールは、メチルアルコール及び/又はエチルアルコールである、請求項5記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−193747(P2010−193747A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40616(P2009−40616)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】