説明

トランスジェニック動物の核内受容体センサー系

動物の組織における特定の核内受容体の活性化を検出するためのセンサー系を提供する。核内受容体センサー系は、DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含むセンサー成分と、レポーター遺伝子を含むレポーター成分と、を含む。トランスジェニックブタ等のトランスジェニック動物は、ゲノム内に核内受容体センサー系の成分を含む。トランスジェニック動物の製造方法並びに生体内における核内受容体の活性を評価するためのトランスジェニック動物の使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスジェニックブタ等のトランスジェニック動物の組織に対する物理的又は化学的物質の作用を評価するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核内受容体のスーパーファミリーに属する転写因子は、細胞増殖、分化及びアポプトーシスにおいて極めて重要な役割を果たす。核内受容体は、特定の標的遺伝子の発現を活性化することによって遺伝子発現の調節に関与する。従って、核内受容体の活性化は遺伝子の発現を変化させ、様々な障害の発症に関与すると考えられている。核内受容体は様々な医薬の主要な標的である。レチノイン酸受容体やビタミンD受容体等の核内ホルモン受容体は細胞内運命を調節し、角化細胞においてはレチノイド及びビタミンD類似体は表皮障害の治療において広く使用されている。近年、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)ファミリーのメンバーは角化細胞の増殖及び分化の制御に関与することが明らかになり、PPARを標的にする医薬は潜在的な皮膚治療薬であるとみなすべきであることが示唆されている。
【0003】
核内受容体が細胞増殖、分化及びアポプトーシスに影響を与えるとすれば、特定の核内受容体の活性化を検出するための方法は非常に有用である。そのような方法は、核内受容体が媒介する遺伝子の活性化を誘発する可能性のある物質に特定の組織を暴露した場合の影響を評価するために使用することができる。これは、核内受容体の活性化に関連する様々な障害のメカニズムを解明するための非常に貴重な手段となり得る。
【0004】
核内受容体の活性化を検出するための方法は、分子生物学的研究において採用されている。この方法は、センサー成分を含むカセット及びレポーター成分を含むカセットという2つの核酸カセットを使用する。しかしながら、上記核内受容体センサー系は単細胞培養においてのみ採用されてきた。本発明では、核内受容体センサー系をトランスジェニックマウス又はブタ等のトランスジェニック動物のゲノムに機能的に導入する。
【0005】
核内受容体センサー系をトランスジェニック動物のゲノムに導入することにより、核内受容体に影響を与える可能性のある物質の生体内における時間的−空間的分析が可能となる。例えば、核内受容体センサー系をトランスジェニック動物の皮膚に導入することにより、適用された医薬又は生体異物の皮膚層への透過を調べることができる。
【0006】
動物及びヒトは、通常は皮膚又は消化管との接触によって膨大な量の様々な物理的又は化学的物質(紫外線、生体異物及び食品添加物等)に日常的に暴露されている。しかしながら、そのような暴露が潜在的に健康に及ぼす影響についてはほとんどの物質について明らかになっておらず、それらの物質が皮膚、腸壁又はその他の組織をどの程度透過するかについて評価する必要がある。非常に多くの物質が核内受容体ファミリーの活性に影響を及ぼし得ることが知られており、所与の物理的又は化学的物質が特定の組織を透過し、核内受容体を活性化する能力を効率的かつ優れた費用対効果で判定することを可能とする実験システムの開発が求められている。
【0007】
ヒトの皮膚は複雑な構造を有するため、ヒトの皮膚モデルを得ることは困難である。表皮透過は、ヒトの皮膚外植片を使用して広く評価されている。しかしながら、外植片を使用した研究のために十分な量のヒトの皮膚を得ることは困難である。また、ヒトの皮膚外植片を使用する場合には、試料のサイズ、形状及び品質が大きく異なるという欠点もある。ヒトの皮膚外植片の代わりに、採取したヒト角化細胞から得られる再構成皮膚を使用することができる。再構成された表皮モデルは良好で有用かつ実用的なツールであり、ヒトの表皮の分子的及び生物物理的特性の多くを模擬することが示されている。
【0008】
しかしながら、再構成された表皮の障壁機能は、正常な上皮及びヒトの皮膚外植片と比較して低下している。有用な代替物はブタの皮膚である。ブタの皮膚はヒトの皮膚の良好なモデルであることが証明され、真皮吸収の研究用に推奨されている(OCDE Guidance document for the conduct of skin absorption studies;Series on testing and assessment,No 28)。ブタの皮膚の組織はヒトの皮膚の組織と類似しており、高度な蛍光プロトコルと共に皮膚センサーブタ系統(pig strain)を作製することは、基本的及びより高度なin situでの目的(試験物質及び生体異物の透過)のために重要であると考えられている。近年のブタクローニング及び遺伝子移植技術の進歩により、核内受容体センサー系をブタに導入し、皮膚がセンサー系を有し、生体内の透過研究に使用することができるクローントランスジェニックブタを作製することができる。そのようなトランスジェニック動物は、医薬及び生体異物の皮膚透過を研究するための重要な技術である。そのような知識は、皮膚への薬物送達及び生体異物のリスク評価に関連して重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、組織に対する物質の作用を評価することを可能とする方法に関する。また、本発明の目的は、物理的又は化学的物質の投与前に組織に投与される付加的な化合物の効率を評価し、前記組織に対する前記物質の作用を最小化又は最大化するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本発明は、動物の組織における物質の作用を評価するための方法であって、a)i)レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii)DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物を用意し、b)前記物質を前記動物に投与し、c)レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を評価することを含み、前記工程b)の前後における前記発現産物の変化が前記組織に対する作用を示す方法に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、動物の組織における物質の作用を変化させる能力について化合物の試験を行うための方法であって、a)i)レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii)DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物に前記化合物を投与し、b)前記物質を前記トランスジェニック動物に投与し、c)レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を評価することを含み、前記化合物の存在下及び非存在下における前記発現産物の量の差が、前記化合物が前記組織における前記物質の作用を変化させることができることを示す方法に関する。
【0012】
第3の態様において、本発明は、i)レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii)DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物に関する。
【0013】
第4の態様において、本発明は、本発明に係るトランスジェニック動物に由来する細胞株に関する。
【0014】
また、本発明は、本発明のセンサー及び/又はレポーターカセットを含む非ヒトトランスジェニック動物を含む。従って、一態様において、本発明は、i.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びii.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はiii.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物に関する。
【0015】
一実施形態では、前記トランスジェニック動物は、ブタ、ミニブタ、マイクロブタ、マウス、ラット、非ヒト霊長類及び齧歯動物からなる群から選択され、好ましくはブタである。核内受容体は、好ましくは、甲状腺ホルモン受容体α(TRα;NR1A1、THRA)、甲状腺ホルモン受容体β(TRβ;NR1A2、THRB)、レチノイン酸受容体α(RARα;NR1B1、RARA)、レチノイン酸受容体β(RARβ;NR1B2、RARB)、レチノイン酸受容体γ(RARγ;NR1B3、RARG)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα;NR1C1、PPARA)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体β/δ(PPARβ/δ;NR1C2、PPARD)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ;NR1C3、PPARG)、Rev−ErbAα(Rev−ErbAα;NR1D1)、Rev−ErbAβ(Rev−ErbAβ;NR1D2)、RAR関連オーファン受容体α(RORα;NR1F1、RORA)、RAR関連オーファン受容体β(RORβ;NR1F2、RORB)、肝臓X受容体α(LXRα;NR1H3)肝臓X受容体β(LXRβ;NR1H2)、ファルネソイドX受容体(FXR;NR1H4)、ビタミンD受容体(VDR;NR1I1、VDR)(ビタミンD)、プレグナンX受容体(PXR;NR1I2)、構成的アンドロスタン受容体(CAR;NR1I3)、ヘパトサイト核因子4α(HNF4α;NR2A1、HNF4A)、ヘパトサイト核因子4γ(HNF4γ;NR2A2、HNF4G)、レチノイドX受容体α(RXRα;NR2B1、RXRA)、レチノイドX受容体β(RXRβ;NR2B2、RXRB)、レチノイドX受容体γ(RXRγ;NR2B3、RXRG)、精巣受容体2(TR2;NR2C1)、精巣受容体4(TR4;NR2C2)、ドロソフィラテイルレス遺伝子(Drosophila tailless gene)のヒト相同体(TLX;NR2E1)、光受容細胞特異的核内受容体(PNR;NR2E3)、ニワトリオボアルブミン上流プロモーター転写因子I(COUP−TFI;NR2F1)、ニワトリオボアルブミン上流プロモーター転写因子II(COUP−TFII;NR2F2)、6:V−erbA−related(EAR−2;NR2F6)、エストロゲン受容体α(ERα;NR3A1、ESR1)、エストロゲン受容体β(ERβ;NR3A2、ESR2)、エストロゲン関連受容体α(ERRα;NR3B1、ESRRA)、エストロゲン関連受容体β(ERRβ;NR3B2、ESRRB)、エストロゲン関連受容体γ(ERRγ;NR3B3、ESRRG)、グルココルチコイド受容体(GR;NR3C1)(コルチゾール)、無機質コルチコイド受容体(MR;NR3C2)(アルドステロン)、プロゲステロン受容体(PR;NR3C3、PGR)(性ホルモン:プロゲステロン)、アンドロゲン受容体(AR;NR3C4、AR)(性ホルモン:テストステロン)、神経成長因子IB(NGFIB;NR4A1)、Nuclear receptor related 1(NURR1;NR4A2)、神経細胞由来オーファン受容体1(NOR1;NR4A3)、ステロイド産生因子1(SF1;NR5A1)、肝臓受容体相同体1(LRH−1;NR5A2)、生殖細胞核因子(GCNF;NR6A1)、DAX1(Dosage−sensitive sex reversal,adrenal hypoplasia critical region,on chromosome X,gene 1(NR0B1))、小ヘテロ二量体パートナー(SHP;NR0B2)又は2つのDNA結合ドメインを有する核内受容体(2DBD−NR)であり、より好ましくは、ビタミンD受容体、肝臓X受容体、レチノイン酸受容体、レチノイドX受容体、プレグナンX受容体(promiscuous pregnane X receptor)及びPPARα、PPARβ/δ、PPARγを含むペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)からなる群から選択される。好適な実施形態では、核内受容体又はその一部は、核内受容体又はそのフラグメントのリガンド結合ドメインを含む。
【0016】
本発明の好ましいトランスジェニック動物は、a.酵母GAL4 DNA結合ドメインに結合したPPARδ又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はb.β−ガラクトシダーゼ又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む。
【0017】
本発明のトランスジェニック動物のDNA結合ドメインは、好ましくは、GAL4 DNA結合ドメイン、LexA DNA結合ドメイン及び/又はその一部である。
【0018】
また、核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部は、誘導性及び/又は組織特異的プロモーター、例えば、皮膚、表皮、真皮、皮下組織、脂肪、胸腺、腸、小腸、大腸、胃、筋肉、膵、心筋、骨格筋、平滑筋、肝臓、肺、脳、角膜及び/又は腫瘍からなる群から選択される組織に特異的であるプロモーターから発現させることが好ましい。好適な実施形態では、組織特異的プロモーターはケラチン14エンハンサー/プロモーターである。
【0019】
一実施形態では、検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする核酸配列は、酵母Gal4上流活性化配列(UASgal)、細菌LexA結合部位及び/又はその一部の少なくとも1つをさらに含む。また、検出可能なレポーター核酸転写産物又はポリペプチドをコードする核酸配列は、異種及び/又は誘導性プロモーターから発現させることが好ましい。好適な実施形態では、核内受容体又はその一部とDNA結合ドメイン又はその一部は物理的又は化学的に結合している(例えば、ポリペプチドは好ましくは融合ペプチドとして発現させる)。
【0020】
前記核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部の発現は、前記レポーターポリペプチドの発現を促進することが好ましい。前記レポーター転写産物、ポリペプチド又はそのフラグメントは、目視、光学的又はオートラジオグラフィーによって検出可能な生成物を含むことが好ましく、一実施形態では、前記レポーターポリペプチドは、β−ガラクトシダーゼ、HcRed、DsRed、DsRedモノマー、ZsGreen、AmCyan、ZsYellow、ホタルルシフェラーゼ、lac Z、ウミシイタケルシフェラーゼ、SEAP、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)、d2EGFP、強化青色蛍光タンパク質(eBFP)、強化黄色蛍光タンパク質(eYFP)、GFPuv、強化シアン蛍光タンパク質(eCFP)、シアン、緑色、黄色、赤色及び遠赤色造礁サンゴ由来蛍光タンパク質、ヒトα1−アンチトリプシン(hAAT)及び/又はそれらのフラグメント、修飾体又は機能的変異体からなる群から選択される。好適な実施形態では、前記レポーターポリペプチドはβ−ガラクトシダーゼである。レポーター転写産物又はポリペプチドの発現は当業者が利用できる適当な検出方法によって検出することができ、例えば、酵素及び分光検定法、共焦点及び多光子蛍光顕微鏡法、ウエスタンブロッティング、免疫染色、エライザ(ELISA)、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、ポリメラーゼ連鎖反応、プライマー伸長法及び/又はDNAアレイ法等の核酸検出方法を使用することができる。
【0021】
別の態様において、本発明は、非ヒト動物の組織における核内受容体の活性に対する物質の作用を評価するための方法であって、a.本発明の非ヒトトランスジェニック動物を用意し、b.物質を前記トランスジェニック動物に投与し、c.前記動物における、レポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする前記核酸配列の発現を検出することを含み、前記物質の投与による発現が、前記組織における核内受容体の活性に対する前記物質の作用を示す方法に関する。
【0022】
別の態様において、本発明は、非ヒト動物の組織における核内受容体の活性に対する物質の作用を変化させる能力について化合物の試験を行うための方法であって、a.本発明の非ヒトトランスジェニック動物を用意し、b.前記化合物を前記トランスジェニック動物に投与し、c.前記物質を前記トランスジェニック動物に投与し、d.前記動物における、レポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする前記核酸配列の発現を検出することを含み、前記物質の投与による発現が、前記組織における核内受容体の活性に対する前記物質の作用を示す方法に関する。
【0023】
本発明の方法では、レポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする核酸配列の発現は、前記物質及び/又は化合物の存在下及び非存在下において検出する。本発明の方法の好適な実施形態では、前記物質の非存在下と比較して、前記物質の存在下における、a.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現の増加は、前記核内受容体の活性に対する前記物質の促進作用を示し、b.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現の減少は、前記核内受容体の活性に対する前記物質の抑制作用を示し、c.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現が変化しないことは、前記核内受容体の活性に対して前記物質が全く又はほとんど作用しないことを示す。同様に、本発明の方法の別の好適な実施形態では、前記化合物の非存在下と比較して、前記化合物の存在下における、a.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現に対する前記物質の作用の増加は、前記核内受容体の活性に対する前記物質の作用に対する前記化合物の促進作用を示し、b.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現に対する前記物質の作用の減少は、前記核内受容体の活性に対する前記物質の作用に対する前記化合物の抑制作用を示し、c.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現に対する前記物質の作用が全く又はほとんど変化しないことは、前記核内受容体の活性に対する前記物質の作用に対して前記化合物が全く又はほとんど作用しないことを示す。
【0024】
本発明の方法によれば、前記核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部の発現は前記レポーターポリペプチドの発現を促進する。好ましくは、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列の発現は、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を検出することによって検出し、例えば、前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現の検出は、酵素又は分光検定法、共焦点又は多光子蛍光顕微鏡法、ウエスタンブロッティング、免疫染色、エライザ(ELISA)、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、ポリメラーゼ連鎖反応、プライマー伸長法及びDNAアレイ法等の核酸検出方法から選択される方法による検出を含む。
【0025】
本発明の方法及び使用における物質及び/又は化合物は、医薬組成物、化粧料、医薬、生体異物化合物、食品組成物、糖、脂質、タンパク質、栄養補助食品、放射線及び/又は電気的刺激等の物理的又は化学的物質である。好適な実施形態では、前記化合物は日焼け止めローション及び/又は前記物質は紫外線である。前記物質及び/又は化合物の形態は、例えば、溶液、クリーム、ローション、ゲル、微小粒子及び/又はナノ粒子であり、前記物質又は化合物は、口腔投与及び舌下投与を含む経口投与、筋肉内投与、動脈内投与、鞘内投与、皮下投与、静脈内投与を含む経腸投与、経鼻投与、局所投与、経肺投与、経腟投与又は非経口投与又は吸入又は吹送による投与によって投与し、好ましくは、局所投与及び/又は経肺投与によって投与する。
【0026】
本発明の方法では、前記転写及び/又は翻訳産物の検出を生きた動物に対して行う。例えば、生きた動物から組織を採取することなく、前記転写及び/又は翻訳産物の検出を行う。
【0027】
別の実施形態では、前記転写及び/又は翻訳レポーター生成物の検出を前記動物から採取した組織試料に対して行う。前記組織は、例えば、皮膚、表皮、真皮、皮下組織、胸、脂肪、胸腺、腸、小腸、大腸、胃、筋肉、膵、心筋、骨格筋、平滑筋、肝臓、肺、脳、角膜、腫瘍、卵巣組織、子宮組織、結腸組織、前立腺組織、肺組織、腎組織、胸腺組織、精巣組織、造血組織、骨髄、泌尿生殖組織、呼気、癌幹細胞を含む幹細胞、痰、尿、血液及び/又は汗等の体液からなる群から選択され、好ましくは、皮膚、表皮及び/又は真皮である。
【0028】
別の態様において、本発明は、本発明のトランスジェニック動物に由来する細胞株に関する。本発明の別の態様は、本発明の非ヒトトランスジェニック動物に由来する組み換え型非ヒト卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核、及び/又は、組み換え型ゲノムが、i.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びii.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はiii.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を含む、組み換え型非ヒト卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核に関する。
【0029】
別の態様において、本発明は、本発明の非ヒトトランスジェニック動物、卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核の製造方法であって、i.ドナー細胞を用意し、ii.i)a.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びb.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はc.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を挿入することによって前記ドナー細胞の遺伝子組み換えを行い、iii.ii)において得られた前記ドナー細胞の組み換え型ゲノムを宿主細胞に移植し、iv.胚を形成する再構築胚を得、v.前記胚を培養し、vi.前記培養した胚を遺伝子組み換え胎児となるように宿主哺乳動物に移植することを含み、前記遺伝子組み換え胚を工程i)〜v)を含む核移植によって製造し、前記遺伝子組み換え胚盤胞を工程i)〜vi)を含む核移植によって製造し、前記遺伝子組み換え胎児を工程i)〜vi)を含む核移植によって製造する方法に関する。
【0030】
また、本発明の別の態様は、本発明のトランスジェニック動物、細胞株、卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核の、核内受容体の活性を評価するための使用に関する。好適な実施形態では、前記使用は、核内受容体の活性に対する例えば上述した物質等の物質の作用の評価に関する。別の実施形態では、前記使用は、内因性アゴニスト、例えば体内における皮膚の正常な発生時に生成するアゴニストによる核内受容体の活性の評価に関する。特定の実施形態では、前記内因性アゴニストは、乾癬、各種の癌及び/又は他の過剰増殖性疾患等の疾患の進行時に生成する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】A:核内受容体センサー系の原理、C:眠れる美女(SB)遺伝子センサー。
【図2】A:pT2/UAS−d2eGFP、B:pT2/UAS−d2eGFP+pM/hVDR、C:pT2/UAS−d2eGFP+Gal4VP16、D:pT2/UAS−d2eGFP+pM/hVDR+10-6Mアルファカルシドール、E:pT2/UAS−d2eGFP+pM/hVDR+10-8Mアルファカルシドール、F:pT2/UAS−d2eGFP+pM/hVDR+10-10Mアルファカルシドール、G:pT2/UAS−d2eGFP+pM/hVDR+10-6Mカルシポトリオール、H:pT2/UAS−d2eGFP+pM/hVDR+10-8Mカルシポトリオール、I:pT2/UAS−d2eGFP+pM/hVDR+10-10Mカルシポトリオール
【図3】核内受容体センサーベクターコンストラクトをトランスフェクトさせた細胞のFACSソーティングによるGFP発現細胞の割合
【図4】核内受容体センサーベクターコンストラクトをトランスフェクトさせたGFP発現細胞の平均緑色蛍光
【図5】A:同一のプラスミド上にセンサー及び受容体成分を有するシスコンストラクト。このコンストラクトは、トランスジェニックブタの作製における本発明の好適な実施形態である。B:Aと同じコンストラクトだが、Gal4hVDRの発現のためのSV40プロモーターを有するコンストラクト。C:トランス−アクティング−コンストラクト(trans-acting constructs)。センサー及び受容体成分は別々のプラスミド上で局所化。トランスコンストラクトはシスコンストラクトの機能性が減少した場合に使用することができる。ただし、トランスベクターの使用によって成長過程で成分が失われるリスクがある。LIR:left inverted repeat;4×UAS:4×上流活性化配列;d2eGFP:非安定化緑色蛍光タンパク質;Neo:ネオマイシン耐性遺伝子;Gal4−hVDR:酵母転写活性化タンパク質;RIR:right inverted repeat;miniTK promoter:最小チミジンキナーゼプロモーター;SV40 promoter:シミアンウイルス40プロモーター;K14 promoter:ヒトケラチン14プロモーター媒介β−グロビンイントロン
【発明を実施するための形態】
【0032】
特定の核内受容体の活性化を検出するための方法は、広く適用することができる。本発明は、特定の核内受容体の活性化を検出するための方法を提供する。本発明の方法によれば、特定の核内受容体の活性に対する物理的又は化学的物質の作用を評価することができる。また、本発明の方法によれば、前記物理的又は化学的物質の投与前又は投与後又は物理的又は化学的物質と同時に組織に投与された化合物の、核内受容体の活性化に対する前記物理的又は化学的物質の作用を阻害又は増大させる能力を評価することができる。
【0033】
本発明によれば、発生の全段階時及び/又は物質の作用を変化させ得る化合物の投与後に、動物の組織における特定の核内受容体の活性化を検出することができる。本発明の方法によれば、特定の核内受容体の空間的及び時間的な活性化を検出することができる。
【0034】
本発明に係る核内受容体センサー系は、i)特定の核内受容体を活性化することが知られている医薬物質の有効性の研究、ii)組織の正常発生及びホメオスタシス時の内因性アゴニストの産生による核内受容体の活性化の判定、iii)組織への各種生体異物の透過性の研究及びiv)各種リポソーム、ナノ粒子又は他の製剤の組織内へ化合物を輸送する能力(薬物送達用途)の研究等の用途に使用することができる。公知の核内受容体活性剤を含む試験製剤で組織を処理することにより、レポーター系の活性化は製剤の透過性を反映することになる。
【0035】
従って、一態様において、本発明は、動物の組織における物質の作用を評価するための方法に関する。この方法は、a)i)レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii)DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物を用意し、b)前記物質を前記動物に投与し、c)レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を評価することを含み、前記工程b)の前後における前記発現産物の変化は前記組織に対する作用を示す。
【0036】
別の態様において、本発明は、動物の組織における物質の作用を変化させる能力について化合物の試験を行うための方法に関する。この方法は、a)i)レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii)DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物に前記化合物を投与し、b)前記物質を前記トランスジェニック動物に投与し、c)レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を評価することを含み、前記化合物の存在下及び非存在下における前記発現産物の量の差は、前記化合物が前記組織における前記物質の作用を変化させることができることを示す。
【0037】
本願明細書において使用する「変化させる」という用語は、評価対象の核内受容体に対する物理的又は化学的物質の作用を減少又は増加させることを含む。本発明のこの態様では、ゲノムが、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列と、DNA結合ドメインに結合した核内受容体をコードする付加核酸配列を含むトランスジェニック動物の組織に前記化合物を投与し、組織に投与した物理的又は化学的物質にトランスジェニック動物を暴露し、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列の発現を測定することを含む。
【0038】
本願明細書において使用する「トランスジェニック動物」という用語は、ゲノム内に外来遺伝子を含む非ヒト動物を意味する。外来遺伝子は、生殖細胞組織に含まれていてもよい(子孫に伝えられてもよい)。外来遺伝子は、公知の方法によって動物のゲノムに取り込むことができる。
【0039】
トランスジェニック動物の製造のための好適な方法及び技術は本願明細書に記載されている。
【0040】
本願明細書において使用する「生体内(in vivo)」という用語は、生きている動物の体内で何らかの過程、反応又は実験が生じる(行われる)ことを意味する。
【0041】
本願明細書において使用する「異種」という用語は、通常は自然界では密接に関連して見られない核酸配列の何らかの組み合わせを意味する。本発明に係る異種遺伝子は、好ましくは、本願明細書に規定されるレポーター遺伝子、核内受容体、プロモーター及びエンハンサーからなる群から選択される。ただし、本発明に係る異種遺伝子はこれらに限定されるものではない。
【0042】
「評価(する)」という用語は、対象となるパラメータを推定することを一般に意味する。通常、推定は、パラメータ及び/又はパラメータの指標の検出又は判定に基づく。具体的には、核内受容体の活性に対する物質の作用は、レポーター転写産物又はポリペプチドの検出に基づいて評価する。
【0043】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸配列」という用語は、少なくとも2塩基長のヌクレオチドポリマーを意味する。「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」という用語は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列又はそれらのフラグメントを意味し、天然又は合成分子を意味する。「アミノ酸配列」という用語を天然タンパク質分子の配列を意味するために使用する場合には、「アミノ酸配列」等の用語は、当該タンパク質分子の完全な天然のアミノ酸配列に限定されるものではない。本願明細書において使用する「核酸」という用語は、1以上の修飾塩基を含むDNA又はRNAを含む。従って、安定性等のために修飾された骨格を有するDNA又はRNAは「核酸配列」である。また、イノシン等の異常塩基又はトリチル化塩基等の修飾塩基を含むDNA又はRNAは核酸配列である。公知の多くの有用な目的に役立つDNA及びRNAに対して様々な修飾が行われている。本願明細書において使用する「核酸」という用語は、化学的、酵素的又は代謝的に修飾された核酸並びにウイルス及び細胞(単純細胞及び複雑細胞等)に特有のDNA及びRNAの化学形態を含む。
【0044】
本願明細書において核酸配列又はポリペプチドに関連して使用する「フラグメント」又は「一部」とは、親配列と配列は同じだが、親配列よりも長さが短い、本発明の核酸配列又はポリペプチドの特定の部分を意味する。従って、「フラグメント」又は「一部」とは、本発明の核酸配列又はポリペプチドから少なくとも1つのヌクレオチド又はアミノ酸残基が欠落した配列を含むことができる。例えば、フラグメントは、5〜100,000個の隣接するヌクレオチド又はアミノ酸残基を含むことができる。フラグメントは、分子の所定領域、例えば、リガンド結合ドメイン又はDNA結合ドメイン等の特定の機能領域から優先的に選択することができる。例えば、ポリペプチドフラグメントは、所定の配列を有するポリペプチドの最初の250又は500個のアミノ酸(又は25%又は50%)から選択される、所定の長さの隣接するアミノ酸を含むことができる。なお、これらの長さは一例であり、配列表、表及び図面を含む明細書によってサポートされる任意の長さが本発明の実施形態に含まれる。
【0045】
「相同性」という用語は、2以上のポリヌクレオチド配列又は2以上のポリペプチド配列間の配列類似性(配列相同性)を意味する。
【0046】
配列を比較するための配列アライメント法は周知である。様々なプログラム及びアライメントアルゴリズムが開示されており、配列アライメント法及び相同性演算の詳細な検討が提示されている(VECTOR NTI等)。2つの核酸配列又は2つのアミノ酸配列間の類似性は類似性(similarity)という用語で表わされ、配列相同性(sequence identity)ともいう。配列相同性は、パーセント相同性(又は類似性又はホモロジー)で測定される場合が多い。すなわち、パーセント相同性が高い程、2つの配列の類似性が高くなる。
【0047】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)は、National Center for Biotechnology Information(NBCI、メリーランド州ベセスダ)及びインターネット(配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、tblastx)等の複数のソースから利用可能である。「http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/からアクセスすることができる。上記プログラムを使用した配列相同性の判定方法に関する説明は、「http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.html」から利用可能である。
【0048】
通常、本願明細書に開示するポリペプチドの相同体は、NCBI Basic Blast 2.0(Gapped blastp、nr又はswissprotデータベース等)を使用して全長にわたってアライメントした場合に、本願明細書に開示するアミノ酸配列と少なくとも94%の配列相同性を有することによって特徴付けられる。あるいは、手動で配列をアライメントし、同一のアミノ酸の数をカウントすることもできる。カウントした数を全アミノ酸の数で除算し、100を乗算することによってパーセント相同性が得られる。
【0049】
ポリヌクレオチド配列について使用する「パーセント相同性(%相同性)」という用語は、標準化アルゴリズムを使用してアライメントした少なくとも2つのポリヌクレオチド配列間の一致する残基の割合を意味する。そのようなアルゴリズムは、2つの配列間のアライメントを最適化するために、標準化され、再現可能な方法で比較対象の配列にギャップを挿入でき、2つの配列のより有意義な比較を行う。
【0050】
高い相同性を示さない核酸配列でも、遺伝コードの縮重のために類似したアミノ酸配列をコードする場合がある。縮重を使用することによって核酸配列を変化させ、実質的に同一のタンパク質をコードする複数の核酸配列を得ることができる。
【0051】
ポリペプチド配列について使用する「パーセント相同性(%相同性)」という用語は、標準化アルゴリズムを使用してアライメントした少なくとも2つのポリペプチド配列間の一致する残基の割合を意味する。ポリペプチド配列のアライメント法は周知である。アライメント法によっては、保存的アミノ酸置換を考慮に入れる場合がある。通常、そのような保存的置換は(詳細は上述)、置換位置で電荷と疎水性を保存しており、それによってポリペプチドの構造(及び機能)を保存する。
【0052】
パーセント相同性は、例えば、特定の配列番号によって定義されるポリペプチド配列全体の長さにわたって測定するか、より短い長さ(例えば、より大きなポリペプチド配列のフラグメント)(例えば、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70又は少なくとも150個の隣接する残基)にわたって測定することができる。なお、これらの長さは一例であり、本願明細書、表、図面及び配列表に示す配列によってサポートされる任意のフラグメント長にわたってパーセント相同性を測定することができる。
【0053】
パーセント相同性は、例えば、特定の配列番号によって定義される配列全体の長さにわたって測定するか、より短い長さ(例えば、より大きなポリペプチド配列のフラグメント)(例えば、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70、少なくとも100又は少なくとも200個の隣接する残基)にわたって測定することができる。なお、これらの長さは一例であり、本願明細書、表、図面及び配列表に示す配列によってサポートされる任意のフラグメント長にわたってパーセント相同性を測定することができる。
【0054】
本願明細書において2以上のポリペプチドに関連して使用する「物理的又は化学的に結合した」という用語は、これらのポリペプチドが物理的/又は化学的相互作用によって結合していることを意味する。化学又は物理架橋剤を使用する化学架橋方法が周知である。好適な実施形態では、本発明の物理的又は化学的に結合したポリペプチドは融合ペプチドであり、ポリペプチドはペプチド結合(アミド結合)によって結合している。
【0055】
「フラグメント」という用語は、核酸又はポリペプチドの全長ではない一部を意味する。従って、フラグメント自体が核酸又はポリペプチドである。
【0056】
「機能的相同体」とは、所与の遺伝子/遺伝子産物/タンパク質/ポリペプチドの野生型/配列と少なくとも何らかの配列相同性を示し、元の配列機能性の少なくとも1つを保持している核酸/タンパク質/ポリペプチドであってもよい。HIV−1エンベロープの機能的相同体は、HIV−1エンベロープを発現する細胞に対する免疫応答を引き起こすことができる。
【0057】
「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼが結合して1以上の近接する構造遺伝子による伝令RNAの転写を開始させるDNA鎖の結合部位を意味する。
【0058】
本願明細書において使用する「生体試料」又は「試料」という用語は、RNAまたはDNA等の遺伝物質及び/又はタンパク質を含む適当な生体試料を意味する。好適な実施形態では、試料はブタ、マウス又は他の哺乳動物等の対象から採取する。好適な実施形態では、試料は、皮膚、表皮、真皮、皮下組織、胸、脂肪、胸腺、腸、小腸、大腸、胃、筋肉、膵、心筋、骨格筋、平滑筋、肝臓、肺、脳、角膜、腫瘍、卵巣組織、子宮組織、結腸組織、前立腺組織、肺組織、腎組織、胸腺組織、精巣組織、造血組織、骨髄、泌尿生殖組織、呼気、癌幹細胞を含む幹細胞、痰、尿、血液及び/又は汗等の体液からなる群から選択される組織試料である。最も簡便な試料は血液試料である。ただし、当業者には明らかなように、特定の疾患又は臨床症状及び検出方法に応じて試料を選択することができる。
【0059】
「アゴニスト」という用語は、活性化分子の機能を模擬する物質を意味する。「アンタゴニスト」という用語は、アゴニストの結合部位に対して競合するが、アクティブな反応を引き起こさない分子を意味する。アンタゴニストの例としては、医薬、ホルモン、抗体、神経伝達物質並びにそれらの類似体及びフラグメントが挙げられる。
【0060】
「リガンド」という用語は、別の分子の特定の部位(リガンド結合ドメイン(LBD))に結合する分子を意味する。従って、「リガンド結合ドメイン」という用語は、例えば、核内受容体におけるリガンドが結合する部位である。核内受容体等のポリペプチドのリガンド結合ドメインにリガンドが結合すると、ポリペプチドの構造が変化し、ポリペプチドの触媒又は調節活性が変化する場合がある。
【0061】
「調節」という用語は、適当な対照と比較した場合における、測定活性の増加、減少、刺激、阻害又は妨害を含む。発現レベルの「調節」は、試験対象の物質を含まない対照と比較した場合における、本発明のポリヌクレオチドによってコードされたmRNA又はポリペプチドのレベルの増加及び減少を含む。いくつかの実施形態では、対象となる物質は、ポリペプチドの生物学的活性を阻害及び/又は細胞におけるポリペプチドのレべルを減少及び/又は細胞における対象mRNAのレべルを減少及び/又は真核細胞からの対象ポリペプチドの放出を減少させる物質である。別の実施形態では、対象となる物質は、対象ポリペプチドの生物学的活性を増加及び/又は細胞における対象ポリペプチドのレべルを増加及び/又は細胞における対象mRNAのレべルを増加及び/又は真核細胞からの対象ポリペプチドの放出を増加させる物質である。
【0062】
本願明細書において使用する「遺伝子産物」という用語は、遺伝子の転写又は翻訳産物を意味する。転写産物は、特定の遺伝子から転写されたRNA種(RNA前駆体、mRNA、tRNA、miRNA、スプライシング及び非スプライシングRNA等)を含む。転写産物はRNA結合タンパク質に結合していてもよく、リボ核タンパク質(RNP)、例えば、mRNP分子にパッケージされていてもよい。
【0063】
本発明の遺伝子翻訳産物は、遺伝子又はそのフラグメントによってコードされたペプチド又はポリペプチドを含む。従って、「本発明の遺伝子によってコードされたポリペプチド」は、「遺伝子産物」又は「遺伝子翻訳産物」という用語に含まれる。本発明の遺伝子翻訳産物は、本発明の核酸配列によってコードされたポリペプチド種を含む。例えば、本発明の遺伝子翻訳産物は、任意の配列番号から選択される配列又はその相補体又は一部によってコードされたポリペプチド種を含む。
【0064】
本願明細書において遺伝子転写産物及び/又は遺伝子翻訳産物の発現に関連して使用する「増加」又は「減少」という用語は、当該遺伝子転写産物及び/又は遺伝子翻訳産物の上昇又は減少を意味する。すなわち、例えば、動物組織及び/又は細胞群における平均濃度と比較した場合に、所与の処理、例えば、本発明の物質又は化合物の投与の前後において遺伝子転写産物及び/又は遺伝子翻訳産物のレベルが低くなることを意味する。本発明の転写産物の場合には、転写産物のレべルは、例えば、定量的又は半定量的な逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって測定することができる。転写産物のレべルは、内因性転写産物に応じて正規化することができる。転写産物の活性低下は、例えば、RT−PCRによって測定した特定のRNA転写産物のレべルの減少によって観察される。好適な実施形態では、RNAのレべルをRT−PCRによって測定する。翻訳産物の活性低下は、レポーターポリペプチド等のポリペプチドの量/レべルの減少及び/又は前記ポリペプチドの酵素活性低下及び/又は他のポリペプチド及びシグナルカスケードと相互作用する能力の低下を含む。ポリペプチドのレべルは、例えば、ウエスタンブロッティング又はELISA等の公知の適当な方法によって測定することができる。一実施形態では、本発明の物質が存在しない場合と比較して、本発明の物質の存在下では、発現は、少なくとも10%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも100%、例えば少なくとも200%、例えば少なくとも300%、例えば少なくとも400%、例えば少なくとも500%、例えば少なくとも600%、例えば少なくとも700%、例えば少なくとも800%、例えば少なくとも900%、例えば少なくとも1000%増加する。別の実施形態では、本発明の物質が存在しない場合と比較して、本発明の物質の存在下では、発現は、95%未満、例えば90%未満、例えば80%未満、例えば70%未満、例えば60%未満、例えば50%未満、例えば40%未満、例えば30%未満、例えば20%未満、例えば10%未満、例えば9%未満、例えば8%未満、例えば7%未満、例えば6%未満、例えば5%未満、例えば4%未満、例えば3%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば0.5%未満減少する。
【0065】
核内受容体センサー系
【0066】
本発明の方法は、生体内における核内受容体の活性化を検出するための分子センサー系を含む。核内受容体系は、センサー成分及びレポーター成分を含む。核内受容体センサー系は、組織の細胞内におけるセンサー系とレポーター系との間の分子相互作用を利用する。センサー系は、物理的又は化学的に異種DNA結合ドメインに結合(例えば、融合)する核内受容体又はそのフラグメントを含む。核内受容体に結合するリガンドは、融合ポリペプチドの構造変化を引き起こし、融合ポリペプチドのDNA結合ドメインに特異的なDNA要素と連携し、下流の遺伝子群の転写を促進する。
【0067】
また、本発明は、核内受容体センサーカセット及び/又はレポーターカセットを含み、前記センサーカセットは、核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列を含み、前記レポーターカセットは、検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列を含み、前記核酸は、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む非ヒトトランスジェニック動物に関する。
【0068】
本発明の非ヒトトランスジェニック動物(好ましくはブタ)並びに卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核並びに本発明の方法及び使用の好適な実施形態では、核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部の発現により、前記レポーターポリペプチドの発現が促進される。特に、前記核内受容体のリガンド又はアゴニストが存在する場合には、核内受容体又はその一部(前記核内受容体のリガンド結合ドメイン等)は、レポーター転写産物又はポリペプチドの発現を促進する。
【0069】
センサー系
【0070】
本発明は、ゲノム内にセンサー成分及び/又はレポーター成分を含む非ヒトトランスジェニック動物(好ましくはブタ)並びに卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核に関する。通常、センサー成分は、核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又は前記核酸配列の転写又は翻訳産物を含む。
【0071】
従って、本発明は、レポーターポリペプチドをコードする1つの核酸配列と、DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含む。前記付加核酸配列は、本発明のセンサー系の一部である。一実施形態では、本発明に係るセンサー系は、DNA結合ドメイン及び核内受容体のリガンド結合ドメインを含む融合ペプチドをコードする核酸カセットを含む。
【0072】
一実施形態では、センサー系をコードする核酸配列又は付加核酸配列にプロモーターが先行する。一実施形態では、前記核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部は、誘導性プロモーター及び/又は組織特異的プロモーター又は誘導性組織特異的プロモーターから発現させる。特定の実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。一実施形態では、核酸配列又は付加核酸配列は、特定の組織に融合ペプチドを発現させるために組織特異的エンハンサー/プロモーターを含む。それにより、本発明のレポーター系は、そのような融合ペプチドを発現させることによって活性化させることができる。具体的には、組織特異的プロモーターは、皮膚、表皮、真皮、皮下組織、脂肪、胸腺、腸、小腸、大腸、胃、筋肉、膵、心筋、骨格筋、平滑筋、肝臓、肺、脳、角膜及び/又は腫瘍からなる群から選択される組織に特異的である。好適な実施形態では、プロモーターは皮膚特異的プロモーターである。別の好適な実施形態では、プロモーターはケラチン14エンハンサー/プロモーターである。
【0073】
一実施形態では、DNA結合ドメインに結合した核内受容体をコードする付加核酸配列は、組織特異的プロモーターから発現させる。一実施形態では、プロモーターはエンハンサー要素を含む。一実施形態では、プロモーターは光誘導性配列を含む。別の実施形態では、プロモーターは化学誘導性配列を含む。
【0074】
センサー成分のDNA結合ドメインは、センサー成分の核内受容体又はその一部に結合することができるポリペプチド又は他の化学基である。DNA結合ドメインの機能は、核内受容体又はその一部を標的部位(例えば、本発明のレポーター遺伝子のプロモーター領域又は上流活性化配列)に向けることである。好適な実施形態では、DNA結合ドメインは、酵母(Saccharomyces cerevisiae)Gal4上流活性化領域(GAL 4 UAS又はUASgal)又はその一部又は機能相同体である。別の好適な実施形態では、DNA結合ドメインは、細菌LexA DNA結合ドメイン又はその一部又は機能相同体である。別の実施形態では、DNA結合ドメインは、酵母UASgal、LexA DNA結合ドメイン又はその一部又は機能相同体である。
【0075】
好適な実施形態では、核内受容体又はその一部とDNA結合ドメイン又はその一部は物理的又は化学的に結合している。
【0076】
化学又は物理架橋剤を使用する各種化学架橋方法が当業者に利用可能になっている。好適な実施形態では、核内受容体又はその一部とDNA結合ドメイン又はその一部は融合ペプチドとして発現させ、ポリペプチドはペプチド結合(アミド結合)によって結合している。従って、好適な実施形態では、センサーポリペプチドは融合ペプチドとして発現させる。
【0077】
好適な実施形態では、センサー成分のDNA結合ドメインは、酵母GAL4 DNA結合ドメイン及び/又はLexA DNA結合ドメインからなる群から選択され、リガンド結合ドメインは、レチノイン酸受容体、ビタミンD受容体、肝臓X受容体、プレグナンX受容体(promiscuous pregnane X receptor)又はPPAR等の核内受容体に由来する。特定の実施形態では、皮膚特異的発現を生じさせるために、融合コンストラクトのプロモータ領域は、ケラチン14エンハンサー/プロモーター(表皮特異的発現を生じさせるプロモーター)で置換する。
【0078】
好適な実施形態では、本発明の融合ポリペプチドに含まれる核内受容体又はその一部は、以下に定義する核内受容体の少なくとも1つのリガンド結合ドメイン又はリガンド結合ドメインのフラグメントを含む。
【0079】
核内受容体又はその一部は、DNA結合ドメインに挿入及び/又はDNA結合ドメインの末端に結合させることができる。従って、一実施形態では、融合ポリペプチドは、DNA結合ドメイン又はその一部の内部及び/又はDNA結合ドメイン又はその一部のN末端及び/又はC末端に挿入された核内受容体又はその一部を含む。特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、DNA結合ドメイン又はその一部のC末端に挿入された核内受容体又はその一部を含む。
【0080】
本発明の方法、動物及び/又は細胞の好適な実施形態では、本発明の融合ポリペプチドの発現は、レポーターポリペプチドの発現を促進する。
【0081】
核内受容体
【0082】
本発明によれば、組織内の特定の核内受容体の活性化を検出することができる。検出は、当該組織の全発生段階で行うことができる。核内受容体は、ホルモン及び他の所定の分子に応答するタンパク質に分類される。核内受容体は、他のタンパク質と協働して特定の遺伝子の発現を増加させる。
【0083】
核内受容体は転写因子に分類される。核内受容体は、DNAと相互作用し、隣接する遺伝子の発現を調節する。核内受容体による遺伝子発現の調節はリガンドに依存し、核内受容体は通常はリガンドの存在下のみにおいて活性を示す。リガンドは、核内受容体に結合することによって受容体の構造変化を引き起こし、受容体の活性化及び対応する遺伝子の発現のアップレギュレーションを生じさせる化学物質である。核内受容体に結合して核内受容体を活性化させるリガンドとしては、内因性ホルモン、ビタミンA及びD、生体外物質等の親油性物質が挙げられる。
【0084】
多くの遺伝子の発現が核内受容体によって調節され、これらの受容体を活性化するリガンドは生物に影響を与える可能性がある。特に、核内受容体は、各種の癌やその他の過剰増殖性障害等の様々な障害に関連する遺伝子を調節する。従って、核内受容体は様々な医薬の共通の標的である。また、核内受容体は、生物の発生及びホメオスタシスにおいて遺伝子発現の時間−空間的制御において重要な役割を果たす。
【0085】
オーファン受容体と呼ばれる特定の核内受容体群の内因性リガンドは知られていない。これらの受容体のいくつか(FXR、LXR、PPAR等)は、比較的低い親和性で脂肪酸、胆じゅう酸及び/又はステロール等の多くの代謝中間体と結合し、代謝センサーとして機能することができる。CAR及びPXR等の他の核内受容体は、生体異物を代謝するチトクロームP450酵素の発現を刺激する生体異物センサーとして機能するようである。
【0086】
核内受容体はモジュール構造を有し、以下のドメインA〜Fを含む。
A−B)N末端調節ドメイン:リガンドに依存しないAF−1(activation function 1)を含む。AF−1の転写活性化作用は通常は非常に弱いが、AF−2(activation function 2)と共に遺伝子発現のよりロバストなアップレギュレーションをもたらす。A−Bドメインは配列が非常に変化しやすい。
C)DNA結合ドメイン(DBD):Cドメインは、ホルモン応答配列(HRE)と呼ばれる特定のDNA領域に結合する2つのジンクフィンガーを含む。DBDは高度に保存される。
D)ヒンジ領域:フレキシブルなDドメインはDBDをLBDに連結する(以下参照)。また、ヒンジ領域は細胞内移動と細胞内分布に影響を及ぼす。
E)リガンド結合ドメイン(LBD):LBDは、3つの反平行なαへリックスが2つのαへリックス及び3つのαへリックスに挟まれたαへリックスサンドイッチ構造を有する。リガンド結合ポケットは、LBDの内部において3つの反平行なαへリックスの真下に位置する。LBDは、DBDと共に受容体の二量体化及びコアクチベータとコリプレッサータンパク質の結合に寄与する。また、LBDは、その作用がリガンド結合に依存するAF−2(activation function 2)を含む。LBDは異なる核内受容体間で配列が中程度に保存され、構造が高度に保存される。
F)C末端ドメイン:このドメインは様々な核内受容体間で配列が異なる。
【0087】
通常のメカニズムにおいて、核内受容体へのリガンドの結合によって受容体の構造変化が生じ、遺伝子発現のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを生じさせる多くの下流のイベントを引き起こす。リガンドの非存在下における特定の作用機序及び細胞内分布に応じて、核内受容体は大きく2つの種類に分類することができる。タイプI核内受容体はサイトゾルに主に位置し、タイプII核内受容体は核に位置する。
【0088】
タイプI
【0089】
サイトゾル内におけるI型核内受容体へのリガンドの結合によって熱ショッ
クタンパク質の解離及びホモ二量体化が生じた後、細胞質から細胞核へのトランスロケーションが起こり、核内受容体はホルモン応答配列(HRE)として知られる特定のDNA領域に結合する。タイプI核内受容体は、可変長のDNAによって分離された2つの半部位からなるHREに結合し、第2の半部位は第1の半部位の逆方向反復配列である。そして、核内受容体/DNA複合体は他のタンパク質のリクルートを引き起こし、最終的にHREの下流に位置する遺伝子の転写を活性化させる。
【0090】
タイプII
【0091】
タイプII受容体は、リガンドの結合状態にかかわらず核内に大部分が保持される。また、タイプII核内受容体は、通常はRXRとのヘテロダイマーとしてDNAに結合する。リガンドが存在しない場合には、タイプII受容体はコリプレッサータンパク質と複合化する場合が多い。核内受容体へのリガンドの結合により、コリプレッサーの解離とコアクチベータタンパク質のリクルートが生じる。そして、RNAポリメラーゼを含む他のタンパク質が核内受容体/DNA複合体にリクルートされ、下流の遺伝子の転写を活性化させる。
【0092】
タイプIII
【0093】
タイプIII核内受容体(主にNRサブファミリー2)は、I型受容体と同
様にホモダイマーとしてDNAに結合する。しかしながら、タイプIII核内受容体は、逆方向反復配列HREではなく直接反復配列HREに結合する。
【0094】
タイプIV
【0095】
タイプIV核内受容体は、モノマー又はダイマーとして結合することができる。しかしながら、核内受容体の1つのDNA結合ドメインのみが1つの半部位HREに結合する。タイプIV受容体の例はほとんどのNRサブファミリーにおいて見られる。
【0096】
アゴニズム及び拮抗作用
【0097】
関与する受容体、リガンドの化学構造及び影響を受ける組織に応じて、核内受容体リガンドはアゴニズムから拮抗作用及び逆アゴニズムに及ぶ非常に様々な影響を示す場合がある。
【0098】
アゴニスト
【0099】
同族の核内受容体へのリガンドの結合により、遺伝子発現のアップレギュレーションが生じ得る。このようなリガンドによる遺伝子発現の刺激はアゴニスト応答(agonist response)と呼ばれる。また、ある種の合成リガンド(例えば、グルココルチコイド受容体抗炎症薬のデキサメサゾン)は、内因性ホルモンリガンドのアゴニスト作用に類似した作用を示す場合がある。アゴニストリガンドは、コアクチベータの結合に有利に作用する受容体の構造を引き起こすことによって作用する。コアクチベータは、DNAに結合すると核内受容体にリクルートされ、転写を活性化させる。コアクチベータは、ヒストンのDNAへの会合を弱め、遺伝子転写を促進する固有のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性を有する場合が多い。
【0100】
アンタゴニスト
【0101】
合成核内受容体リガンドの中には、内因性リガンドの非存在下では遺伝子転写に対する明白な作用を示さないものもある。しかしながら、それらは、核内受容体の同じ部位への競合的結合によってアゴニストリガンドの作用を妨げることができる。そのようなリガンドはアンタゴニストとして知られている。アンタゴニストは、糖質コルチコイド及びプロゲステロン受容体に結合し、内因性ホルモンであるコルチゾールとプロゲステロンの活性を妨げる拮抗性核内受容体医薬(ミフェプリストン)等の医薬として一般的に使用されている。アンタゴニストリガンドは、コアクチベータの結合を阻害し、コリプレッサーの会合を促進する受容体の構造を引き起こすことによって作用する。コリプレッサーは、ヒストンのDNAへの会合を強め、遺伝子転写を抑制するヒストンデアセチラーゼ(HDAC)をリクルートすることによって作用する場合が多い。
【0102】
インバースアゴニスト
【0103】
いくつかの核内受容体は構造的に活性を有し、アゴニストの非存在下においてDNA転写を刺激する。このような構造活性は、インバースアゴニストとして知られる合成リガンドによって抑制することができる。
【0104】
選択的受容体モジュレーター
【0105】
核内受容体に作用する医薬化合物には、ある組織においてアゴニスト応答を示し、他の組織においてアンタゴニスト応答を示す場合がある。このような挙動により、ある組織における医薬の所望の有益な治療学的作用を維持しながら、他の組織における当該医薬の望ましくない副作用を最小化することができる。このような複合アゴニスト/アンタゴニスト挙動を示す医薬は選択的受容体モジュレーター(SRM)と呼ばれる。SRMの例としては、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)及び選択的プロゲステロン受容体モジュレーター(SPRM)が挙げられる。SRMの作用機序は、リガンド及び関与する受容体の化学構造に応じて異なる。一般的には、多くのSRMは、アゴニズムと拮抗作用との間で綿密にバランスされた受容体の構造変化を促進することによって作用すると考えられている。コアクチベータタンパク質の濃度がコリプレッサーの濃度よりも高い組織では、アゴニスト方向に平衡がシフトし、コリプレッサーが支配的な組織では、リガンドはアンタゴニストとして作用する。
【0106】
各ファミリーを構成する核内受容体
【0107】
配列相同性に従って分類される48種の公知のヒト核内受容体のリストを以下に示す。
サブファミリー:名称
グループ:名称(全ての群に共通な場合には内因性リガンド)
メンバー:名称(略語;NRNC記号、遺伝子)(内因性リガンド)
サブファミリー1:甲状腺ホルモン受容体様
グループA:甲状腺ホルモン受容体(甲状腺ホルモン)
1:甲状腺ホルモン受容体α(TRα;NR1A1、THRA)
2:甲状腺ホルモン受容体β(TRβ;NR1A2、THRB)
グループB:レチノイン酸受容体(ビタミンA及び関連化合物)
1:レチノイン酸酸受容体α(RARα;NR1B1、RARA)
2:レチノイン酸酸受容体β(RARβ;NR1B2、RARB)
3:レチノイン酸酸受容体γ(RARγ;NR1B3、RARG)
グループC:ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体
1:ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα;NR1C1、PPARA)
2:ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体β/δ(PPARβ/δ;NR1C2、PPARD)
3:ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ;NR1C3、PPARG)
群D:Rev−ErbA
1:Rev−ErbAα(Rev−ErbAα;NR1D1)
2:Rev−ErbAβ(Rev−ErbAβ;NR1D2)
F群:RAR関連オーファン受容体
1:RAR関連オーファン受容体α(RORα;NR1F1、RORA)
2:RAR関連オーファン受容体β(RORβ;NR1F2、RORB)
3:RAR関連オーファン受容体γ(RORγ;NR1F3、RORC)
H群:肝臓X受容体様
3:肝臓X受容体α(LXRα;NR1H3)
2:肝臓X受容体β(LXRβ;NR1H2)
4:ファルネソイドX受容体(FXR;NR1H4)
I群:ビタミンD受容体様
1:ビタミンD受容体(VDR;NR1I1、VDR)(ビタミンD)
2:プレグナンX受容体(PXR;NR1I2)
3:構成的アンドロスタン受容体(CAR;NR1I3)
サブファミリー2:レチノイドX受容体様
グループA:肝細胞核因子4(HNF4)
1:肝細胞核因子4α(HNF4α;NR2A1、HNF4A)
2:肝細胞核因子4γ(HNF4γ;NR2A2、HNF4G)
グループB:レチノイドX受容体(RXRα)
1:レチノイドX受容体α(RXRα;NR2B1、RXRA)
2:レチノイドX受容体β(RXRβ;NR2B2、RXRB)
3:レチノイドX受容体γ(RXRγ;NR2B3、RXRG)
グループC:精巣受容体
1:精巣受容体2(TR2;NR2C1)
2:精巣受容体4(TR4;NR2C2)
E群:TLX/PNR
1:ドロソフィラテイルレス遺伝子(Drosophila tailless gene)のヒト相同体(TLX;NR2E1)
3:光受容体細胞特異的核内受容体(PNR;NR2E3)
F群:COUP/EAR
1:ニワトリオボアルブミン上流プロモータ転写因子I(COUP−TFI;NR2F1)
2:ニワトリオボアルブミン上流プロモータ転写因子II(COUP−TFII;NR2F2)
6:V−erbA−related(EAR−2;NR2F6)
サブファミリー3:エストロゲン受容体様
グループA:エストロゲン受容体(性ホルモン:エストロゲン)
1:エストロゲン受容体α(ERα;NR3A1、ESR1)
2:エストロゲン受容体β(ERβ;NR3A2、ESR2)
グループB:エストロゲン関連受容体
1:エストロゲン関連受容体α(ERRα;NR3B1、ESRRA)
2:エストロゲン関連受容体β(ERRβ;NR3B2、ESRRB)
3:エストロゲン関連受容体γ(ERRγ;NR3B3、ESRRG)
グループC:3−ケトステロイド受容体
1:グルココルチコイド受容体(GR;NR3C1)(コルチゾール)
2:無機質コルチコイド受容体(MR;NR3C2)(アルドステロン)
3:プロゲステロン受容体(PR;NR3C3、PGR)(性ホルモン:プロゲステロン)
4:アンドロゲン受容体(AR;NR3C4、AR)(性ホルモン: テストステロン)
サブファミリー4:神経成長因子IB様
グループA:NGFIB/NURR1/NOR1
1:神経成長因子IB(NGFIB;NR4A1)
2:Nuclear receptor related 1(NURR1;NR4A2)
3:神経細胞由来オーファン受容体1(NOR1;NR4A3)
サブファミリー5:ステロイド産生因子様
グループA:SF1/LRH1
1:ステロイド産生因子1(SF1;NR5A1)
2:肝臓受容体相同体1(LRH−1;NR5A2)
サブファミリー6:生殖細胞核因子様
グループA:GCNF
1:生殖細胞核因子(GCNF;NR6A1)
サブファミリー0:その他
グループB:DAX/SHP
1:DAX1,Dosage−sensitive sex reversal,adrenal hypoplasia critical region,on chromosome X,gene 1(NR0B1)
2:小ヘテロ二量体パートナー(SHP;NR0B2)
グループC:2つのDNA結合ドメインを有する核内受容体(2DBD−NR)(新しいサブファミリー)
【0108】
本発明は、特定の核内受容体の活性を検出するためのトランスジェニック動物及びそれに由来する細胞並びに特定の核内受容体の活性化又は活性を検出する方法を提供する。具体的には、本発明は、核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又は前記核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物(好ましくはブタ)並びに卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核を提供する。本発明に係る核内受容体は、上述した核内受容体等の、任意の哺乳類又は非哺乳類の核内受容体である。
【0109】
本発明の一実施形態では、核内受容体は、甲状腺ホルモン受容体α(TRα;NR1A1、THRA)、甲状腺ホルモン受容体β(TRβ;NR1A2、THRB)、レチノイン酸受容体α(RARα;NR1B1、RARA)、レチノイン酸受容体β(RARβ;NR1B2、RARB)、レチノイン酸受容体γ(RARγ;NR1B3、RARG)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα;NR1C1、PPARA)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体β/δ(PPARβ/δ;NR1C2、PPARD)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ;NR1C3、PPARG)、Rev−ErbAα(Rev−ErbAα;NR1D1)、Rev−ErbAβ(Rev−ErbAβ;NR1D2)、RAR関連オーファン受容体α(RORα;NR1F1、RORA)、RAR関連オーファン受容体β(RORβ;NR1F2、RORB)、肝臓X受容体α(LXRα;NR1H3)肝臓X受容体β(LXRβ;NR1H2)、ファルネソイドX受容体(FXR;NR1H4)、ビタミンD受容体(VDR;NR1I1、VDR)(ビタミンD)、プレグナンX受容体(PXR;NR1I2)、構成的アンドロスタン受容体(CAR;NR1I3)、ヘパトサイト核因子4α(HNF4α;NR2A1、HNF4A)、ヘパトサイト核因子4γ(HNF4γ;NR2A2、HNF4G)、レチノイドX受容体α(RXRα;NR2B1、RXRA)、レチノイドX受容体β(RXRβ;NR2B2、RXRB)、レチノイドX受容体γ(RXRγ;NR2B3、RXRG)、精巣受容体2(TR2;NR2C1)、精巣受容体4(TR4;NR2C2)、ドロソフィラテイルレス遺伝子(Drosophila tailless gene)のヒト相同体(TLX;NR2E1)、光受容細胞特異的核内受容体(PNR;NR2E3)、ニワトリオボアルブミン上流プロモーター転写因子I(COUP−TFI;NR2F1)、ニワトリオボアルブミン上流プロモーター転写因子II(COUP−TFII;NR2F2)、6:V−erbA−related(EAR−2;NR2F6)、エストロゲン受容体α(ERα;NR3A1、ESR1)、エストロゲン受容体β(ERβ;NR3A2、ESR2)、エストロゲン関連受容体α(ERRα;NR3B1、ESRRA)、エストロゲン関連受容体β(ERRβ;NR3B2、ESRRB)、エストロゲン関連受容体γ(ERRγ;NR3B3、ESRRG)、グルココルチコイド受容体(GR;NR3C1)(コルチゾール)、無機質コルチコイド受容体(MR;NR3C2)(アルドステロン)、プロゲステロン受容体(PR;NR3C3、PGR)(性ホルモン:プロゲステロン)、アンドロゲン受容体(AR;NR3C4、AR)(性ホルモン:テストステロン)、神経成長因子IB(NGFIB;NR4A1)、Nuclear receptor related 1(NURR1;NR4A2)、神経細胞由来オーファン受容体1(NOR1;NR4A3)、ステロイド産生因子1(SF1;NR5A1)、肝臓受容体相同体1(LRH−1;NR5A2)、生殖細胞核因子(GCNF;NR6A1)、DAX1(Dosage−sensitive sex reversal,adrenal hypoplasia critical region,on chromosome X,gene 1(NR0B1))、小ヘテロ二量体パートナー(SHP;NR0B2)及び/又は2つのDNA結合ドメインを有する核内受容体(2DBD−NR)からなる群から選択される。上記核内受容体のそれぞれは個別の実施形態に対応する。従って、本発明による各核内受容体の活性化の検出についてそれぞれ特許を請求することができる。
【0110】
好適な実施形態では、核内受容体は、ビタミンD受容体、肝臓X受容体、レチノイン酸受容体、レチノイドX受容体、プレグナンX受容体(promiscuous pregnane X receptor)及び/又はPPARα、PPARβ/δ、PPARγを含むペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)からなる群から選択される。好適な実施形態では、核内受容体は、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)からなる群から選択される。特に好適な実施形態では、核内受容体はPPARβ/δである。別の特に好適な実施形態では、核内受容体はPPARαである。別の特に好適な実施形態では、核内受容体はPPARβである。別の特に好適な実施形態では、核内受容体はPPARγである。別の特に好適な実施形態では、核内受容体はPPARδである。PPARδは、ヒト表皮において発現する主要なPPARサブタイプである。別の好適な実施形態では、核内受容体はプレグナンX受容体(PXR)である。PXRは、多くの生体異物の標的となる可能性が高い。別の好適な実施形態では、核内受容体はレチノイン酸受容体(RAR)から選択される。レチノイン酸受容体は、皮膚ホメオスタシスの有効な皮膚標的及び調節剤である。特に好適な実施形態では、核内受容体はレチノイン酸酸受容体α(RARα)である。別の特に好適な実施形態では、核内受容体はレチノイン酸酸受容体β(RARβ)である。別の特に好適な実施形態では、核内受容体はレチノイン酸酸受容体γ(RARγ)である。別の好適な実施形態では、核内受容体はビタミンD受容体である。ビタミンD受容体は、乾癬の治療における医薬の標的として知られる。本願明細書に記載する各核内受容体の一部又は機能相同体も本発明の範囲に含まれる。
【0111】
好適な実施形態では、核内受容体又はその一部は、上述したような核内受容体又はその一部のリガンド結合ドメインである。
【0112】
最も好適な実施形態では、本発明の非ヒトトランスジェニック動物(好ましくはブタ)並びに卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核は、酵母GAL4 DNA結合ドメインに結合したPPARδ又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はβ−ガラクトシダーゼ又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む。
【0113】
レポーター系
【0114】
本発明は、ゲノム内にセンサー成分及び/又はレポーター成分を含む非ヒトトランスジェニック動物(好ましくはブタ)並びに卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核に関する。
【0115】
通常、レポーター成分は、検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列及び/又は前記核酸配列の転写又は翻訳産物を含む。
【0116】
従って、本発明は、レポーター転写産物又はポリペプチドをコードする1つの核酸配列を含む。レポーター系は、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含むカセットを含む。レポーター系は、本願明細書に記載するベクターに含まれていてもよい。本願明細書において使用する「レポーター遺伝子」という用語は、転写活性化を検出することができる遺伝子を意味する。一実施形態では、本発明の方法、動物及び細胞は、検出可能な生成物を含むレポーターポリペプチド又はそのフラグメントを含む。転写活性化は本願明細書に記載されているように検出するが、レポーターポリペプチド又はそのフラグメントは、目視、光学的又はオートラジオグラフィーによって検出可能な生成物を通常は含む。
【0117】
動物(好ましくはブタ)並びに卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核は、検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする核酸を含む。多くの検出用レポーター遺伝子及び系が存在し、当業者によって認識される。例えば、本発明に係るレポーターポリペプチドをコードするレポーター遺伝子又は核酸は、β−ガラクトシダーゼ、HcRed、DsRed、DsRedモノマー、ZsGreen、AmCyan、ZsYellow、ホタルルシフェラーゼ、lac Z、ウミシイタケルシフェラーゼ、SEAP、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)、d2EGFP、強化青色蛍光タンパク質(eBFP)、強化黄色蛍光タンパク質(eYFP)、GFPuv、強化シアン蛍光タンパク質(eCFP)、シアン、緑色、黄色、赤色及び遠赤色造礁サンゴ由来蛍光タンパク質、ヒトα1−アンチトリプシン(hAAT)及び/又はそれらのフラグメント、修飾体及び/又は機能的変異体からなる群から選択される。
【0118】
なお、β−ガラクトシダーゼ、HcRed、DsRed、DsRedモノマー、ZsGreen、AmCyan、ZsYellow、ホタルルシフェラーゼ、lac Z、ウミシイタケルシフェラーゼ、SEAP、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)、d2EGFP、強化青色蛍光タンパク質(eBFP)、強化黄色蛍光タンパク質(eYFP)、GFPuv、強化シアン蛍光タンパク質(eCFP)、シアン、緑色、黄色、赤色及び遠赤色造礁サンゴ由来蛍光タンパク質、ヒトα1−アンチトリプシン(hAAT)及び/又はそれらのフラグメント、修飾体及び/又は機能的変異体は、個別の実施形態において使用することができる。好適な実施形態では、レポーターポリペプチドをコードするレポーター遺伝子又は核酸は、β−ガラクトシダーゼ又はその変異体又は機能相同体である。別の好適な実施形態では、レポーター遺伝子は、eGFP又はその変異体又は機能相同体である。
【0119】
本発明の好適な実施形態では、レポーターポリペプチドをコードするレポーター遺伝子又は核酸は、β−ガラクトシダーゼ遺伝子又はその機能相同体又は一部である。この酵素は大腸菌のラクトース(lac)オペロンのlacZ遺伝子によってコードされ、ラクトースをグルコースとガラクトースに分割する。また、β−ガラクトシダーゼはヒト消化管においても生成される。β−ガラクトシダーゼをレポーター遺伝子として使用することにより、公知の方法による簡単な酵素的発現検出が可能となる。本発明に係る検出及び分析方法は本願明細書に記載されている。
【0120】
本発明の別の好適な実施形態では、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質である。特に好適な実施形態では、レポーター遺伝子は、強化緑色蛍光タンパク質、強化黄色蛍光タンパク質及び強化赤色蛍光タンパク質を含む、緑色蛍光タンパク質又はその誘導体又は機能相同体である。蛍光ペプチドをコードするレポーター遺伝子を使用することにより、共焦点及び多光子蛍光顕微鏡法による直接的な蛍光検出が可能となる。
【0121】
レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含むカセットは、プロモータ要素をさらに含むことができる。一実施形態では、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列にプロモーターが先行する。特定の実施形態では、カセットは、レポーター遺伝子の発現を促進するプロモーターを含む。一実施形態では、プロモーターは異種プロモーターである。別の実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。特定の実施形態では、プロモーターは、チミジンキナーゼプロモーター又はそのフラグメント又は機能相同体である。好適な実施形態では、プロモーターはチミジンキナーゼプロモーターである。
【0122】
レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含むカセットは、少なくとも1つのエンハンサー及び/又は調節要素をさらに含むことができる。エンハンサー要素は、遺伝子の転写を促進する調節DNA配列である。エンハンサーは、同一のDNA分子において最も近接するプロモーターの活性を増加させることによって遺伝子転写速度を増加させることができる。エンハンサーは、作用する遺伝子の特に近くに存在する必要はないが、作用する遺伝子と同一の核酸配列に主に位置する(ただし、例外もある)。
【0123】
一実施形態では、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列にエンハンサーが先行する。特定の実施形態では、カセットは、レポーター遺伝子の発現を促進する少なくとも1つのエンハンサー要素を含む。一実施形態では、前記少なくとも1つのエンハンサー要素は異種エンハンサーである。特定の実施形態では、エンハンサー要素は、酵母UASgalエンハンサー及び/又は細菌LexA結合部位からなる群から選択される。好適な実施形態では、エンハンサー要素は、酵母UASgalエンハンサー又はそのフラグメント又は機能相同体である。別の好適な実施形態では、エンハンサー要素は、細菌LexA結合部位又はそのフラグメント又は機能相同体である。エンハンサー/プロモーターは、チミジンキナーゼプロモーターに融合した酵母UASgalエンハンサー又は細菌LexA結合部位の従来の組み合わせであることが好ましい。
【0124】
本発明のトランスジェニック動物、卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞、細胞核、使用及び方法の好適な実施形態では、検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする核酸配列は、酵母Gal4上流活性化配列(UASgal)、細菌LexA結合部位及び/又はその一部の少なくとも1つをさらに含む。また、検出可能なレポーター核酸転写産物又はポリペプチドをコードする核酸配列は、上述したような異種及び/又は誘導性プロモーターから発現させる。
【0125】
分析及び検出
【0126】
本発明は、動物の組織における物質又は化合物の作用を評価するための方法であって、前記物質の投与前及び投与後の発現産物の変化が前記組織に対する作用を示す方法を提供する。発現産物の量が、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも550%、少なくとも600%、少なくとも750%、少なくとも800%、少なくとも850%、少なくとも900%、少なくとも950%、少なくとも1000%、少なくとも1100%、少なくとも1200%、少なくとも1300%、少なくとも1400%、少なくとも1500%、少なくとも1600%、少なくとも1700%、少なくとも1800%、少なくとも1900%、少なくとも2000%、少なくとも2500%、少なくとも3000%、少なくとも3500%、少なくとも4000%、少なくとも4000%、少なくとも4500%、少なくとも5000%、少なくとも5500%、少なくとも6000%、少なくとも6500%、少なくとも6500%、少なくとも7000%、少なくとも7500%、少なくとも8000%、少なくとも8500%、少なくとも9000%、少なくとも10000%、少なくとも15000%又は少なくとも20000%増加又は減少した場合には、物質又は化合物は組織に対する作用を有するとみなす。
【0127】
本願明細書において使用する「評価」という用語は、本発明に係るレポーター遺伝子の活性化の検出を含む。検出は、転写又は翻訳産物(RNA及び/又はポリペプチドを含む発現産物)の量(レべル)を測定することによって行うことができる。
【0128】
通常、本発明の動物、卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核のレポーター転写産物、ポリペプチド又はそのフラグメントは、目視、光学的又はオートラジオグラフィーによって検出可能な生成物を含む。一実施形態では、本発明の方法、動物、胚、胚盤胞及び/又は細胞は、検出可能な生成物を含むレポーターポリペプチド又はそのフラグメントを含む。レポーターポリペプチド又はそのフラグメント又は機能相同体は、目視、光学的及び/又はオートラジオグラフィーによって検出可能な生成物を含む。なお、検出は公知の任意の方法によって行うことができ、例えば、酵素及び分光検定法、共焦点及び多光子蛍光顕微鏡法、ウエスタンブロッティング、免疫染色、エライザ(ELISA)、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、ポリメラーゼ連鎖反応、プライマー伸長法及び/又はDNAアレイ法等の核酸検出方法を使用することができる。また、RT−PCR及びq−PCR等のPCR法や、蛍光顕微鏡法、免疫組織化学も使用することができる。
【0129】
β−ガラクトシダーゼを本発明に係るレポーター遺伝子として使用する場合には、公知の酵素的方法によって発現産物を検出することができる。β−ガラクトシダーゼ活性を高速かつ簡便に検出及び定量するための方法及び市販のキットが知られている。一実施形態では、X−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)等の基質を使用してβ−ガラクトシダーゼ活性を測定する。X−galは、β−ガラクトシダーゼのための不活性な発色基質である。β−ガラクトシダーゼは、X−Galを無色のガラクトース及び非常に強い青色の沈殿物を形成する4−クロロ−3−ブロモ−インジゴに加水分解し、4−クロロ−3−ブロモ−インジゴは光学及び/又は顕微鏡法によって検出することができる。ただし、β−ガラクトシダーゼの発現は、ELISA、ウエスタンブロッティング、in situハイブリダイゼーション等の免疫検定法を使用し、抗β−ガラクトシダーゼ抗体によって検出することもできる。
【0130】
評価は、動物から採取した試料に対して行うことができる。一実施形態では、乳房組織、卵巣組織、子宮組織、結腸組織、前立腺組織、肺組織、腎組織、胸腺組織、精巣組織、造血組織、骨髄、泌尿生殖組織、呼気、癌幹細胞を含む幹細胞、痰、尿、血液及び汗等の体液からなる群から選択される試料に対して評価を行う。
【0131】
好適な実施形態では、試料は、表皮及び皮膚組織等の皮膚組織、乳房組織、卵巣組織、子宮組織、結腸組織、前立腺組織、肺組織、腎組織、胸腺組織、精巣組織、造血組織、骨髄、泌尿生殖組織、呼気、癌幹細胞を含む幹細胞、痰、尿、血液及び汗等の体液からなる群から選択される。別の実施形態では、試料は、乳房組織、卵巣組織、子宮組織、結腸組織、前立腺組織、肺組織、泌尿生殖組織、癌幹細胞を含む幹細胞、痰、尿、血液及び汗等の体液からなる群から選択される。別の好適な実施形態では、組織は、皮膚、表皮、真皮、皮下組織、脂肪、胸腺、腸、小腸、大腸、胃、筋肉、膵、心筋、骨格筋、平滑筋、肝臓、肺、脳、角膜、腫瘍からなる群から選択される。別の実施形態では、試料は、乳房組織、卵巣組織、子宮組織、結腸組織、前立腺組織、肺組織からなる群から選択される。別の実施形態では、試料は、幹細胞及び癌幹細胞からなる群から選択される。別の実施形態では、試料は、体液、痰、尿、血液、汗からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、試料は、卵巣組織、子宮組織、結腸組織、泌尿生殖組織からなる群から選択される。
【0132】
特に好適な実施形態では、試料は皮膚組織である。別の特に好適な実施形態では、試料は表皮組織である。別の特に好適な実施形態では、試料は真皮組織である。別の特に好適な実施形態では、試料は血液組織である。別の特に好適な実施形態では、試料は肺組織である。別の特に好適な実施形態では、試料は皮膚組織である。別の特に好適な実施形態では、試料は前立腺組織である。さらに別の特に好適な実施形態では、試料は卵巣組織である。
【0133】
一実施形態では、本発明の物質又は化合物の分析において、転写及び/又は翻訳産物の評価を生きた動物に対して行う。別の実施形態では、生きた動物から組織を採取することなく、転写及び/又は翻訳産物の評価を行う。別の実施形態では、動物から採取した試料に対して転写及び/又は翻訳産物の評価を行う。試料は、本願明細書に記載する組織に由来するものであってもよい。例えば、試料は、表皮及び皮膚組織等の皮膚組織、乳房組織、卵巣組織、子宮組織、結腸組織、前立腺組織、肺組織、腎組織、胸腺組織、精巣組織、造血組織、骨髄、泌尿生殖組織、呼気、癌幹細胞を含む幹細胞、痰、尿、血液及び/又は汗等の体液からなる群から選択される。
【0134】
本発明の方法は、1以上の評価工程を含むことができる。一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つのさらなる評価工程をさらに含む。評価は1回以上行うことができ、例えば、評価工程は、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、10日、20日、30日、60日、180日、365日又は700日間の間隔で分けることができる。
【0135】
ベクター
【0136】
本発明に係るセンサー系及びレポーター系は、1以上の組み換え型DNAベクターに含まれていてもよい。ベクターは、市販のベクター及びその他の公知のベクターを含む任意のベクターであってもよい。従って、ベクターは、レトロウイルスベクター、シャトルベクター又は哺乳類発現ベクターである。一実施形態では、ベクターは、眠れる森の美女DNAトランスポゾンに基づくベクター等のトランスポゾンベクターである。一実施形態では、ベクターは、FLP−FRTリコンビナーゼベクター等のリコンビナーゼベクターである。
【0137】
投与
【0138】
本発明の方法又は使用によって評価することができる物理的又は化学的物質及び/又は化合物は、公知の適切な投与法によって投与する。一実施形態では、投与は、口腔投与及び舌下投与を含む経口投与、筋肉内投与、動脈内投与、鞘内投与、皮下投与、静脈内投与を含む経腸投与、経鼻投与、局所投与、経肺投与、経腟投与、非経口投与、吸入又は吹送による投与を含む。好適な実施形態では、物質は局所投与によって投与する。別の実施形態では、経肺投与を使用する。
【0139】
場合によっては、本発明の方法は、物質及び/又は化合物の組織への投与を繰り返すことを含む。そのため、物質及び/又は化合物は、複数回(例えば少なくとも2回、例えば少なくとも3回、例えば少なくとも4回、例えば少なくとも5回、例えば少なくとも6回、例えば少なくとも7回、例えば少なくとも8回、例えば少なくとも9回、例えば少なくとも10回、例えば少なくとも20回、例えば少なくとも30回、例えば少なくとも40回、例えば少なくとも50回、例えば少なくとも60回、例えば少なくとも70回、例えば少なくとも80回、例えば少なくとも90回、例えば少なくとも100回)にわたって投与することができる。
【0140】
複数回の投与は、少なくとも1時間(例えば少なくとも2時間、例えば少なくとも3時間、例えば少なくとも4時間、例えば少なくとも5時間、例えば少なくとも6時間、例えば少なくとも7時間、例えば少なくとも8時間、例えば少なくとも9時間、例えば少なくとも10時間、例えば少なくとも11時間、例えば少なくとも12時間、例えば少なくとも13時間、例えば少なくとも14時間、例えば少なくとも16時間、例えば少なくとも18時間、例えば少なくとも20時間、例えば少なくとも22時間、例えば少なくとも24時間)の間隔を置いて行うことができる。別の実施形態では、複数回の投与は、少なくとも1日(例えば少なくとも2日、例えば少なくとも3日、例えば少なくとも4日、例えば少なくとも5日、例えば少なくとも6日、例えば少なくとも7日、例えば少なくとも8日、例えば少なくとも9日、例えば少なくとも10日、例えば少なくとも12日、例えば少なくとも14日、例えば少なくとも16日、例えば少なくとも18日、例えば少なくとも20日、例えば少なくとも30日、例えば少なくとも40日、例えば少なくとも50日、例えば少なくとも100日)の間隔を置いて行うことができる。
【0141】
動物
【0142】
一態様において、本発明は、i.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びii.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はiii.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物に関する。
【0143】
一実施形態では、前記トランスジェニック動物は、ブタ、ミニブタ、マイクロブタ、マウス、ラット、非ヒト霊長類及び齧歯動物からなる群から選択される。本発明のトランスジェニック動物は、好ましくはブタである。
【0144】
また、本発明は、動物の組織における物質の作用を評価するための方法に関する。一態様において、本発明は、非ヒト動物の組織における核内受容体の活性に対する物質の作用を評価するための方法であって、a.i.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びii.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はiii.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を含む非ヒトトランスジェニック動物を用意し、b.物質を前記トランスジェニック動物に投与し、c.前記動物における、レポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする前記核酸配列の発現を検出することを含み、前記物質の投与による発現が、前記組織における核内受容体の活性に対する前記物質の作用を示す方法に関する。
【0145】
別の態様において、本発明は、非ヒト動物の組織における核内受容体の活性に対する物質の作用を変化させる能力について化合物の試験を行うための方法であって、a.i.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びii.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はiii.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を含む非ヒトトランスジェニック動物を用意し、b.前記化合物を前記トランスジェニック動物に投与し、c.前記物質を前記トランスジェニック動物に投与し、d.前記動物における、レポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする前記核酸配列の発現を検出することを含み、前記物質の投与による発現が、前記組織における核内受容体の活性に対する前記物質の作用を示す方法に関する。
【0146】
本発明の方法では、レポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする核酸配列の発現は、前記物質及び/又は化合物の存在下及び非存在下において検出する。本発明の方法の好適な実施形態では、前記物質の非存在下と比較して、前記物質の存在下における、a.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現の増加は、前記核内受容体の活性に対する前記物質の促進作用を示し、b.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現の減少は、前記核内受容体の活性に対する前記物質の抑制作用を示し、c.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現が変化しないことは、前記核内受容体の活性に対して前記物質が全く又はほとんど作用しないことを示す。同様に、本発明の方法の別の好適な実施形態では、前記化合物の非存在下と比較して、前記化合物の存在下における、a.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現に対する前記物質の作用の増加は、前記核内受容体の活性に対する前記物質の作用に対する前記化合物の促進作用を示し、b.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現に対する前記物質の作用の減少は、前記核内受容体の活性に対する前記物質の作用に対する前記化合物の抑制作用を示し、c.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現に対する前記物質の作用が全く又はほとんど変化しないことは、前記核内受容体の活性に対する前記物質の作用に対して前記化合物が全く又はほとんど作用しないことを示す。
【0147】
一実施形態では、前記動物は、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ミニブタ、マイクロブタ、マウス、ラット又は齧歯動物である。特定の実施形態では、前記動物はヒトである。本発明において、ヒトを含む動物の組織における物質の作用は、レポーターポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列、及び/又はDNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物を用意することによって評価する。物質をトランスジェニック動物に投与し、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を評価する。物質の投与前及び投与後における発現産物の変化は、前記組織に対する作用を示す。
【0148】
本発明に係るトランスジェニック動物は、ゲノム内に外来遺伝子を含む非ヒト動物である。外来遺伝子は、生殖細胞組織に含まれていてもよい(子孫に伝えられてもよい)。外来遺伝子は、公知の方法によって動物のゲノムに取り込むことができる。一実施形態では、本発明のトランスジェニック動物は、非ヒト霊長類、ブタ、ミニブタ、マイクロブタ、マウス、ラット、齧歯動物からなる群から選択される。好適な実施形態では、トランスジェニック動物はブタ(Sus scrofus)である。別の好適な実施形態では、トランスジェニック動物はマウス(Mus musculus)である。
【0149】
トランスジェニック動物は、多くの公知の方法によって得ることができる。そのような方法の例としては、単一の細胞胚への微小毛細管注入(microcapillary injection)、Cre/lox又はFlp/FRT系を使用した組み換え技術、リポソーム又はエレクトロポレーションを使用したトランスフェクションが挙げられる。また、転位(例えば、眠れる美女転位)によって改変遺伝物質を得ることができる。また、ウイルス形質導入(例えば、レトロウイルス又はレンチウイルスベクター)はトランスジェニック動物の継代に適している。好適な実施形態では、体細胞核移植(SCNT)によって胚盤胞を移植する。
【0150】
一態様において、本発明は、i.レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii.DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物に関する。前記トランスジェニック動物は、組織に対する物質の作用の評価及び/又は動物の組織における物質の作用を変化させる化合物の能力の試験に好適である。一実施形態では、前記動物は、ブタ、マウス、ラット、齧歯動物、イヌ、サル、モルモット、ミニブタ及び/又はマイクロブタからなる群から選択される。好適な実施形態では、トランスジェニック動物はブタである。別の実施形態では、動物はマウスである。トランスジェニック動物のレポーターポリペプチドは、本願明細書に開示する任意のレポーターポリペプチドから選択することができる。例えば、トランスジェニック動物のレポーターポリペプチドは、β−ガラクトシダーゼ、HcRed、DsRed、DsRedモノマー、ZsGreen、AmCyan、ZsYellow、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、SEAP、EGFP、EBFP、EYFP、d2EGFP、GFPuv、シアン、緑色、黄色、赤色及び遠赤色造礁サンゴ由来蛍光タンパク質及び/又はそれらのフラグメント、修飾体及び/又は機能的変異体からなる群から選択される。好適な実施形態では、レポーターポリペプチドは、β−ガラクトシダーゼ又はそのフラグメント又は機能的変異体である。
【0151】
また、トランスジェニック動物の核内受容体は、本願明細書に開示する任意の核内受容体から選択することができる。一実施形態では、核内受容体は、ビタミンD受容体、肝臓X受容体、プレグナンX受容体(promiscuous pregnane X receptor)及び/又はPPAR及び/又はそれらのフラグメント(特にリガンド結合ドメイン)からなる群から選択される。
【0152】
トランスジェニック動物のDNA結合ドメインは、好ましくはGAL4 DNA結合ドメイン及びLexA DNA結合ドメインからなる群から選択されるが、任意のDNA結合ドメインを選択することができる。
【0153】
特定の実施形態において、本発明は、a.β−ガラクトシダーゼ又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及び/又はb.酵母GAL4 DNA結合ドメインに結合したPPARδ又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニックブタに関する。
【0154】
トランスジェニックブタ等の本発明のトランスジェニック動物は、生体内における内因性アゴニストの産生による核内受容体の活性化を判定するために使用することができる。例えば、アゴニストは皮膚の正常な発生時に生成する。別の実施形態では、内因性アゴニストは、乾癬、各種の癌及び/又は他の過剰増殖性疾患等の疾患の進行時に生成する。好適な実施形態では、疾患は乾癬である。
【0155】
トランスジェニックブタ等の本発明のトランスジェニック動物は、組織におけるin situでの物質の透過(penetration)及び/又は本願明細書に記載する物質等の物質による核内受容体の活性化の判定に好適である。
【0156】
別の態様において、本発明は、本願明細書に記載するトランスジェニック動物に由来する細胞株に関する。「由来する」とは、細胞株が本発明のトランスジェニック動物の細胞に基づくものであることを意味し、トランスジェニック動物から採取した後に細胞をさらに改変して改変型トランスジェニック細胞株を得ることができる。
【0157】
一態様において、本発明は、本発明の非ヒトトランスジェニック動物に由来する組み換え型非ヒト卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核、及び/又は、組み換え型ゲノムが、i.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びii.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はiii.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を含む、組み換え型非ヒト卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核に関する。
【0158】
また、一態様において、本発明は、本発明のトランスジェニック動物、特にトランスジェニックブタの製造並びに本発明の卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核の製造方法に関する。一態様において、本発明は、本発明の非ヒトトランスジェニック動物、卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核の製造方法であって、i.ドナー細胞を用意し、ii.i)a.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びb.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はc.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を挿入することによって前記ドナー細胞の遺伝子組み換えを行い、iii.ii)において得られた前記ドナー細胞の組み換え型ゲノムを宿主細胞に移植し、iv.胚を形成する再構築胚を得、v.前記胚を培養し、vi.前記培養した胚を遺伝子組み換え胎児となるように宿主哺乳動物に移植することを含み、前記遺伝子組み換え胚を工程i)〜v)を含む核移植によって製造し、前記遺伝子組み換え胚盤胞を工程i)〜vi)を含む核移植によって製造し、前記遺伝子組み換え胎児を工程i)〜vi)を含む核移植によって製造する方法に関する。
【0159】
本発明のトランスジェニック動物、特にトランスジェニックブタの製造では、本発明に係る細胞核移植方法に使用するドナー(体細胞又は体細胞核)及びレシピエント(細胞質体)は非ヒト哺乳動物である。本発明において再構築胚を移植する動物は非ヒト哺乳動物(好ましくはa)である。哺乳動物は、家畜又は野生のウシ科、ヒツジ科、シカ科、イノシシ科、ウマ科、ラクダ科からなる群から選択される有蹄動物であってもよい。特定の実施形態では、哺乳動物は、雌ウシ又は雄ウシ、バイソン、バッファロー、ヒツジ、オオツノヒツジ、ウマ、ポニー、ロバ、ラバ、シカ、ヘラジカ、カリブー、ヤギ、水牛、ラクダ、ラマ、アルパカ又はブタである。本発明の特定の実施形態では、哺乳動物はブタである。一実施形態では、ブタは野生のブタである。別の実施形態では、ブタは家畜ブタ(Sus scrofa又はS.domesticus)である。別の実施形態では、本発明はミニブタ及び近交系ブタに関する。特定の実施形態では、ブタは、ランドレース種、ヨークシャー種、ハンプシャー種、デュロック種、中国の梅香種、バークシャー種、ピエトレン種からなる群から選択されてもよい。別の実施形態では、本発明は、ランドレース種、ヨークシャー種、ハンプシャー種及びデュロック種からなる群のブタに関する。ただし、本発明は、ランドレース種、デュロック種及び梅香種からなる群のブタにも関する。同様に、バークシャー種、ピエトレン種、ランドレース種及び梅香種からなる群のブタも本発明の対象である。ランドレース種及び梅香種からなる群のブタも本発明の対象である。特定の実施形態では、ブタは、ランドレース種又はヨークシャー種のブタである。特定の実施形態では、本発明は、breedハンプシャー種及びデュロック種のブタに関する。別の好適な実施形態では、ブタはbreed梅香種のブタである。ただし、バークシャー種のブタも本発明の範囲に含まれ、特定の実施形態では、ピエトレン種のブタも本発明の範囲に含まれる。本発明の別の実施形態は、Goettingen、Yucatan、Bama Xiang Zhu、Wuzhishan、Xi Shuang Bannaからなる群から選択されるミニブタに関する。別の実施形態では、本発明は、Goettingen及びYucatanからなる群のミニブタに関する。あるいは、本発明は、Bama Xiang Zhu、Wuzhishan及びXi Shuang Bannaからなる群のミニブタに関する。特に、本発明はGoettingenミニブタに関する。ただし、本発明はYucatanミニブタにも関する。同様に、本発明はBama Xiang Zhu、Wuzhishan及びXi Shuang Bannaミニブタも本発明の範囲に含まれる。本発明に係るドナー哺乳動物は雌でも雄でもよい。哺乳動物の年齢は、成体又は胎児等の任意の年齢であってもよい。
【0160】
トランスジェニックブタ及びブタのクローニング
【0161】
本発明に係るトランスジェニックブタは、i)レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及び/又はii)DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含む。
【0162】
一実施形態では、レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及び/又はii)DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニックブタは、レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列を含むトランスジェニックブタを、DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列又は前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を含むトランスジェニックブタと交配させることによって得る。
【0163】
従って、本発明は、レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列を含むトランスジェニックブタにも関する。
【0164】
別の実施形態では、本発明は、DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列又は前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を含むトランスジェニックブタに関する。
【0165】
技術水準にあるブタクローニング及び遺伝子移植技術を使用することにより、i.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列と、及びii.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列等の、レポーター系及び/又はセンサー系をブタ線維芽細胞の核に導入し、卵細胞質体に移植することができる。
【0166】
好適な実施形態では、本発明に係るトランスジェニックブタは、遺伝子組み換え線維芽細胞から卵細胞質体への体細胞核移植によるクローニングによって作成する。これにより、本願明細書に記載する遺伝的レポーター系及び/又はセンサー系をゲノム内に導入し、トランスジェニックレポーター及び/又はセンサーブタを得ることができる。具体的には、体細胞核移植は、ハンドメードクローニング(HMC)(例えば、Gabor Vajta(Trends in Biotechnology、2007年を参照)によって行う。
【0167】
本発明に係る核内受容体センサー系を含むブタ系統は、内因性アゴニストの産生による核内受容体の活性化を生体内で判定するために使用することができる。一実施形態では、内因性アゴニストは皮膚の正常な発生時に生成する。別の実施形態では、内因性アゴニストは疾患状態の進行時に生成する。特定の実施形態では、前記疾患は、乾癬、各種の癌及び/又は他の過剰増殖性疾患である。一実施形態では、前記疾患は皮膚病である。別の実施形態では、前記疾患は任意の癌である。好適な実施形態では、前記疾患は乾癬である。別の好適な実施形態では、前記疾患は皮膚癌である。
【0168】
本発明の別の態様において、本発明に係る核内受容体センサー系を含むブタ系統は、組織におけるin situでの浸透及び生体異物を含む物質による核内受容体の活性化を調べるために使用することができる。
【0169】
特定の実施形態では、トランスジェニックブタ系統は、GAL4 DNA結合ドメイン又はLexA DNA結合ドメイン及びゲノムに導入され、特定の組織において発現させたPXR、レチノイン酸受容体、ビタミンD受容体又はPPARのリガンド結合ドメインの融合体(fusion)を含む。好適な実施形態では、前記組織は、皮膚、表皮、真皮、皮下組織又は表皮の基底細胞である。別の特定の実施形態では、融合ポリペプチドをコードする遺伝子の上流にケラチン14エンハンサー/プロモーターを導入して皮膚特異的発現を生じさせる。
【0170】
別の実施形態では、トランスジェニックブタは、GAL4 DNA結合ドメイン又はLexA DNA結合ドメインに結合した、プレグナンX受容体又はその一部のリガンド結合ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列又は前記核酸配列の転写又は翻訳産物を含む。別の実施形態では、トランスジェニックブタは、GAL4 DNA結合ドメイン又はLexA DNA結合ドメインに結合した、レチノイン酸受容体又はその一部のリガンド結合ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列又は前記核酸配列の転写又は翻訳産物を含む。別の実施形態では、トランスジェニックブタは、GAL4 DNA結合ドメイン又はLexA DNA結合ドメインに結合した、ビタミンD受容体又はその一部のリガンド結合ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列又は前記核酸配列の転写又は翻訳産物を含む。さらに別の実施形態では、トランスジェニックブタは、GAL4 DNA結合ドメイン又はLexA DNA結合ドメインに結合した、PPAR(PPARδ等)又はその一部のリガンド結合ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列又は前記核酸配列の転写又は翻訳産物を含む。
【0171】
体細胞核移植
【0172】
クローニングでは、核を除去(脱核)した卵細胞(卵母細胞)への体細胞(somatic (body) cell)の核又は体細胞の移植は体細胞核移植(SCNT(somatic cell nuclear transfer))と呼ばれる。新たな個体が再構築胚から発生し、遺伝学的には体細胞のドナーと同一になる。本発明では、体細胞核移植方法は、a)変性透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を用意する工程と、b)卵母細胞を少なくとも2つの部分に分離して少なくとも1つの細胞質体を得る工程と、c)所望の遺伝的性質を有する少なくとも1つのドナー細胞又は細胞核を用意する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体をドナー細胞又は細胞核を取り囲む膜と融合させる工程と、を含む細胞核移植方法である。なお、本発明は、a)少なくとも1つの卵母細胞を用意する工程と、b)卵母細胞を少なくとも3つの部分に分離して少なくとも2つの細胞質体を得る工程と、c)所望の遺伝的性質を有する少なくとも1つのドナー細胞又は細胞核を用意する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体をドナー細胞又は細胞核を取り囲む膜と融合させる工程と、を含む細胞核移植方法にも関する。所与の動物種のための最も効率的な核移植を行うために、各工程のパラメータを変更することができる。各パラメータについて以下に詳細に説明する。
【0173】
卵母細胞
【0174】
本発明に係る「卵母細胞」という用語は、卵子(配偶子)を形成する成熟過程を経ていない未成熟な雌生殖細胞を意味する。本発明では、除核卵母細胞が核移植方法における受容細胞である。
【0175】
本発明に係る卵母細胞は、哺乳動物の卵管及び/又は卵巣から採取する。通常、卵母細胞は死んだ動物から採取するが、生きた動物の卵管及び/又は卵巣から採取することもできる。一実施形態では、卵母細胞は、卵管回収法又は経腟的回収法によって採取する。好適な実施形態では、卵母細胞を吸引によって採取する。通常、卵母細胞は除核前に公知の培地内において成熟させる。また、卵母細胞は、死亡直後の動物の卵巣から採取するか、卵巣を凍結及び/又は解凍した時に採取することもできる。好ましくは、卵母細胞は卵管から新たに採取する。
【0176】
また、卵母細胞又は細胞質体は使用前に凍結(低温)保存してもよい。新たに採取された成熟した卵母細胞が好ましいが、採取後又は成熟化後に卵母細胞を凍結(低温)保存することもできる。凍結(低温)保存した卵母細胞を使用する場合には、成熟化培地に卵母細胞を配置する前に解凍する必要がある。解凍後に活性を示すように凍結(低温)保存した材料を解凍する方法は当業者に周知である。通常、卵母細胞及び細胞質体の凍結(低温)保存は非常に困難な処置であり、ブタでは特に難しく、高い脂質含有率のために凍結によって損傷(冷却及び加熱時に+15〜+5℃の間で損傷が発生する)を受けやすいため、ブタの場合には特に困難である。
【0177】
別の実施形態では、生体内で成熟させた(第二中期)卵母細胞を採取し、細胞核移植方法において使用することができる。基本的に、第二中期の卵母細胞を、発情開始又はヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)又は同様なホルモンの注射から35〜48時間後に、非過剰排卵又は過剰排卵の哺乳動物から外科的に採取する。
【0178】
卵母細胞を生体外で培養する場合には、生体内で卵母細胞を取り囲む卵丘細胞を除去して除核のためにより適した成熟期にある卵母細胞を得ることができる。卵丘細胞は、例えば、0.1〜5%、例えば0.2〜5%、例えば0.5〜5%、例えば0.2〜3%、例えば0.5〜3 %、例えば0.5〜2%、例えば0.5〜1%、例えば0.5%のヒアルウロニダーゼの存在下で、ピペット又はボルテキシングによって除去することができる。
【0179】
好適な方法による第1の工程では、受容卵母細胞を適当な動物から採取する。卵母細胞は、任意の動物から任意の成熟期において得ることができる。
【0180】
除核及び核移植における卵母細胞の成熟期は、細胞核移植方法を成功させるために重要であることが報告されている。未成熟な(前期I)卵母細胞は、哺乳動物の卵巣から吸引によって採取する場合が多い。遺伝子工学、核移植及びクローニング等の技術を採用するために、卵母細胞を核移植の受容細胞として使用する前に、採取した卵母細胞は生体外で成熟させることが好ましい。
【0181】
好ましくは、哺乳動物の胚を良好にクローニングする場合には、第二中期の卵母細胞を受容卵母細胞として使用する。すなわち、第二中期の成熟状態では、卵母細胞を十分に活性化させて受精精液であるかのように導入させた核を処理することができる。ただし、本発明は、体細胞核移植を行うために好適な卵母細胞の任意の成熟段階、本発明の体細胞核移植方法によって得られる胚、胚盤胞及び/又は動物に関する。通常、生体外での卵母細胞の成熟は、卵母細胞が第二中期に達するか、第一極体を放出するまで成熟化培地内において行う。未成熟な卵母細胞が成熟するまでに必要な時間は成熟期と呼ばれる。本発明の好適な実施形態では、卵母細胞は、成熟した雌豚(sow)又は若い雌豚(gilt)、好ましくは大人の雌豚から採取した卵母細胞である。
【0182】

【0183】
本発明によれば、再構築胚(単細胞胚)はドナー細胞の遺伝物質を含む。再構築胚は、有糸分裂開始後に次第に多細胞胚に分裂する。生体外では、有糸分裂は、本願明細書に開示する活性化によって通常は引き起こされる。
【0184】
本発明では、「胚」という用語は、活性化による有糸分裂開始後に核移植によって形成された胚である再構築胚も意味する。再構築胚は生体外において培養する。
【0185】
胚が約12〜16個の細胞を含む場合には、「桑実胚」と呼ばれる。その後、胚はさらに分裂して多くの細胞が形成され、中心部には流体が充填された卵割腔(嚢胞腔)が存在する。この段階では、胚は「胚盤胞」と呼ばれる。桑実胚から形成され、内細胞塊、内部空洞及び外部細胞層からなる、「受精した」発生段階の卵母細胞(この段階で移植に用いることができる)は、栄養外胚葉細胞と呼ばれる。
【0186】
本発明に係る胚盤胞は宿主哺乳動物の子宮に導入することができ、胎児及び動物に成長する。
【0187】
本願明細書に記載する、非ヒト哺乳動物のクローニング、再構築胚の培養及び/又はブタ胚の凍結(低温)保存のための、遺伝的組み換え又はトランスジェニック非ヒト哺乳動物の製造方法では、胚を生体外において培養することができる。例えば、胚は連続培養によって培養することができる。なお、胚は通常の胚であってもよく、本願明細書に記載する再構築胚であってもよい。
【0188】
細胞質体
【0189】
核が除去された卵母細胞又は卵母細胞の一部である。
【0190】
ドナー細胞
【0191】
本発明における「ドナー細胞」という用語は、生殖細胞系に由来する体細胞及び/又は細胞を意味する。本発明における「体細胞」という用語は、任意の発生段階の動物から採取した(体)細胞を意味する。例えば、体細胞は胎児又は成体組織に由来するものであってもよい。特に好ましい体細胞は、胎児に由来する体細胞である。ただし、生殖細胞系に由来する細胞を使用することもできる。本発明によれば、ドナー細胞は体細胞である。本発明の別の実施形態では、ドナー細胞は、生殖細胞系列に由来する細胞である。
【0192】
本発明の好適な実施形態では、ドナー細胞は所望の遺伝的性質を有する。ただし、ドナー細胞は、本願明細書に記載する遺伝子操作によって得られた所望の遺伝的性質を有することができる。体細胞は、上皮細胞、神経細胞、皮層細胞、角化細胞、造血細胞、メラニン細胞、軟骨細胞、リンパ球(B及びT細胞)、赤血球、マクロファージ、単球、単核細胞、線維芽細胞、心筋細胞及びその他の筋肉細胞からなる群から選択される。
【0193】
これらの細胞は、皮膚、肺、膵、肝臓、胃、腸、心、生殖器、膀胱、腎臓、尿道及びその他の泌尿器官等の様々な器官から得ることができる。
【0194】
体細胞を得ることができる動物については本願明細書に記載されている。本発明の好適な実施形態では、受容卵母細胞(細胞質体)と同一の種に由来する体細胞を使用する。
【0195】
好ましくは、体細胞は、発生中の胎児及び成体動物の両方から大量に得ることができる繊維芽細胞である。また、線維芽細胞は容易に生体外において増殖させることができる。最も好ましくは、体細胞は、胎児に由来し、生体外において培養した線維芽細胞である。
【0196】
好適な実施形態では、体細胞は遺伝子組み換えされている。本発明の別の好適な実施形態では、体細胞は、ブタ体細胞(好ましくはブタ胎児又は例えば成体に由来する体細胞)である。
【0197】
遺伝子組み換え細胞株
【0198】
本発明は、本願明細書に記載するトランスジェニック動物に由来する細胞株にも関する。本発明の細胞株は、i)レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及び/又はii)DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含む。特定のレポーターポリペプチド、核内受容体、融合ポリペプチド、プロモーターの例については本願明細書に記載されている。
【0199】
組織
【0200】
本発明は、トランスジェニック動物、卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核並びに組織における核内受容体の活性に対する物理及び/又は化学物質の作用を評価するための方法及び使用を提供する。本発明は、多くの組織に対して実施することができる。一実施形態では、組織は、皮膚、筋肉、肝臓、肺、腫瘍及び角膜からなる群から選択される。別の実施形態では、組織は、皮膚、表皮、真皮、皮下組織、脂肪、胸腺、腸、小腸、大腸、胃、筋肉、膵、心筋、骨格筋、平滑筋、肝臓、肺、脳、角膜、腫瘍からなる群から選択される。本発明の方法の好適な実施形態は皮膚組織に関する(すなわち、前記組織は皮膚である)。本発明の方法の特に好適な実施形態は表皮組織に関する(すなわち、前記組織は表皮である)。本発明の方法の別の特に好適な実施形態は真皮組織に関する(すなわち、前記組織は真皮である)。
【0201】
本発明の核内受容体センサー系は、多くの組織において発現させることができる。本発明によって核内受容体の活性化を検出するために好適な組織は皮膚である。皮膚は、表皮と、線維芽細胞、脂肪細胞、マクロファージを含む皮下組織の上部に埋め込まれた真皮との二つの主な層、を含む。上部皮膚層である表皮は層状の上皮からなり、細胞は最も深い層の有糸分裂を介して形成され、表面に移動し、絶え間なく脱け落ちる細胞の代わりとなる。表皮層内を移動する際に、細胞は分化し、ケラチンで満たされ(角化)ながら形状と組成が変化する。表皮の最外層は、約25層の死細胞からなる。表皮は、角質層、透明層、顆粒層、有棘層、基底層(stratum germinativum。あるいは、stratum basale、basal layer)という5つの層に分けることができる。角質層は死んだ除核角化細胞からなり、架橋した構造タンパク質が機械的に保護している。下位層内の角化細胞、顆粒層は、ほぼ水を浸透させない障壁(透過障壁)を形成するために必要な大量の脂質を合成する。透過障壁を構成する脂質は、主にコレステロール、脂肪酸及びセラミドである。脂質は、顆粒層内の完全に分化した角化細胞内の多数の脂質含有ラメラ体からなり、排出作用によって放出される。放出後、脂質は処理・再構成され、機能的透過障壁を構成するラメラ状単位構造の連続したマトリックスを形成する(Madison,K.C.(2003),Barrier function of the skin: “Ia raison d’ete” of the epidermis.J Invest Dermatol 121:231−241)。透過障壁は水分の損失から体を保護するが、局部塗布によって投与された生物学的活性分子の取り込みを抑制する。
【0202】
様々なリポソーム製剤が皮膚を介した医薬の送達に使用されており、フレキシブルリポソームに基づく新規な製剤は効率的に皮膚の深部に透過することが示されている(Application of vesicles to rat skin in vivo:a confocal laser scanning microscopy study.J Control Release 56:189−96;van Kuijk−Meuwissen,M.E.,Junginger,H.E.,Bouwstra,J.A.(1998),Interaction between liposomes and human skin in vitro,a confocal laser scanning microscopy study.Biochim Biophys Acta 1371:31−9)。最近では、ナノ粒子が効率的な皮膚透過を実現する賦形剤であると考えられている。
【0203】
真皮は、表皮の下にある皮膚層である。真皮は結合組織からなり、応力と歪みの変化から体を保護する。また、真皮は触覚及び熱覚のための神経線維を含む。真皮は、毛嚢、汗腺、皮脂腺、アポクリン腺及び血管をさらに含む。血管は、真皮細胞及び表皮の基底層(stratum germinativum)に栄養を与え、老廃物の除去を提供する。
【0204】
皮膚の各層内の核内受容体の活性化に関する情報は、本発明の核内受容体センサー系の標的をクローントランスジェニックブタ等のトランスジェニック動物の皮膚に送り届け、ヒト皮膚のin vivoモデルを確立することによって得ることができる。ブタの皮膚の組織はヒトの皮膚に類似しており、ブタの皮膚はヒトの皮膚の良好なモデルである。
【0205】
従って、好適な実施形態では、本発明に係る核内受容体センサー系は皮膚組織に導入する。別の好適な実施形態では、本発明に係る核内受容体センサー系は表皮組織に導入する。さらに別の好適な実施形態では、本発明に係る核内受容体センサー系は真皮組織に導入する。
【0206】
物質及び化合物
【0207】
本発明は、動物の組織における物質の作用を評価するための方法を提供する。また、本発明は、動物の組織における物質の作用を変化させる能力について化合物の試験を行うための方法に関する。
【0208】
本発明に係る物質及び/又は化合物は、任意の物理的又は化学的物質、化合物、混合物、複合体、複合物質、物質、材料、物、粒子、要素、単位、構成要素又は製剤を含む。一実施形態では、物質及び/又は化合物は、医薬組成物、化粧料、医薬、生体異物化合物、食品組成物、糖、脂質、タンパク質、栄養補助食品、放射線又は電気的刺激である。
【0209】
好適な実施形態では、物質及び/又は化合物は生体異物化合物である。本願明細書において使用する「生体異物化合物」という用語は、暴露される生物の天然成分ではない化合物を意味する。生体異物化合物は、異物又は外因性物質又は化合物としても知られる。また、生体異物化合物は、通常よりも非常に高い濃度で存在する天然物質も含む。
【0210】
生体異物化合物の例としては、天然化合物、医薬、抗生物質、環境化学物質、ダイオキシン及びポリ塩素化ビフェニル等の汚染物質、癌原性物質、害虫防除剤が挙げられる。好適な実施形態では、物質及び/又は化合物はビタミンD類似体である。
【0211】
別の好適な実施形態では、物質及び/又は化合物は、紫外線(UV放射線)、赤外放射、電磁放射線、ガンマ線(γ線)、X線、日光等の放射線である。特に好適な実施形態では、物質及び/又は化合物は紫外線である。
【0212】
別の好適な実施形態では、物質及び/又は化合物は、皮膚ローション、日焼けローション(sun lotion)又は日焼け止めローション等の化粧料である。一実施形態では、物質はUV−C放射線等の紫外線であり、日焼けローション(sun lotion)又は化合物は日焼け止めローションである。このようにして、本発明のトランスジェニック動物、細胞、方法及び使用は、皮膚組織等の組織における核内受容体の活性に対する紫外線の作用を打ち消す日焼け/日焼け止めローション組成物の能力を評価するために使用することができる。
【0213】
本発明の物質及び化合物は、任意の形状、サイズ又は構造を有する。一実施形態では、物質の形態は、流体、結晶、溶液、クリーム、ローション、ゲル、微小粒子又はナノ粒子である。
【0214】
特定の用途
【0215】
本発明の方法、動物及び細胞株は、多くの特定の用途に使用することができる。
【0216】
一実施形態では、本発明の方法、動物及び細胞株は、皮膚組織等の組織における核内受容体の活性に対する物理的又は化学的物質の作用を評価するために使用することができる。そのような作用は、特定の組織を透過する物質の能力を説明するために使用することができる。本発明の本態様は、動物の組織における物質の作用を評価するための方法であって、a)i)レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii)DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物を用意し、b)前記物質を前記動物に投与し、c)レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を評価することを含み、前記工程b)の前後における前記発現産物の変化が前記組織に対する作用を示す方法によってカバーされる。
【0217】
別の実施形態では、本発明の方法、動物及び細胞株は、組織における物理的又は化学的物質の作用を抑制又は増加させる化合物の能力を評価するために使用することができる。一実施形態では、化合物は日焼け止めローションである。本発明の本態様は、動物の組織における物質の作用を変化させる能力について化合物の試験を行うための方法であって、a.i.レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii.DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳生成物を含むトランスジェニック動物に前記化合物を投与し、b.前記物質を前記トランスジェニック動物に投与し、c.レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を評価することを含み、前記化合物の存在下及び非存在下における前記発現産物の量の差が、前記化合物が前記組織における前記物質の作用を変化させることができることを示す方法によってカバーされる。後者の態様の化合物は、本願明細書に記載する任意の物理的又は化学的物質であってもよい。一実施形態では、化合物は、医薬組成物、化粧料、医薬、生体異物化合物、食品組成物、糖、脂質、栄養補助食品、放射線及び/又は電気的刺激からなる群から選択される。特定の実施形態では、化合物は、溶液、クリーム、ローション、ゲル、微小粒子及び/又はナノ粒子である。好適な実施形態では、化合物は日焼け止めローションである。別の実施形態では、後者の態様の物質は、紫外線等の放射線である。
【0218】
従って、一態様において、本発明は、本発明の非ヒトトランスジェニック動物、細胞株、卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核の、核内受容体の活性を評価するための使用に関する。好適な実施形態では、前記使用は、核内受容体の活性に対する例えば上述した物質等の物質の作用の評価に関する。従って、本発明の動物、細胞株、卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核は、本願明細書に記載するように、物質の存在下及び非存在下におけるレポーター転写産物及び/又はポリペプチドの発現を比較することにより、核内受容体の活性に対する物理的又は化学的物質の作用を評価するために使用することができる。別の実施形態では、前記使用は、皮膚の正常な発生時に生成する内因性アゴニストによる体内における核内受容体の活性の評価に関する。このようにして、特定の核内受容体の時間的又は空間的活性化を、レポーター転写産物及び/又はポリペプチドの時間的又は空間的発現を検出することによって評価することができる。特定の実施形態では、内因性アゴニストは、乾癬、各種の癌及び/又は他の過剰増殖性疾患等の疾患の進行時に生成する。
【実施例】
【0219】
皮膚の各層内の核内受容体の活性化に関する情報を得るために、クローントランスジェニックブタの皮膚を標的とすることができる遺伝子レポーター系を設計し、ヒト皮膚のin vivoモデルを確立した。核内受容体センサー系は3つの目的に使用することができる。第1に、本発明は、化合物を皮膚内に送達する各種リポソーム又は製剤の能力を調べるために使用することができる。核内受容体活性剤を含む製剤で皮膚を処理することにより、レポーターの活性化は製剤の透過性を反映することになる。第2に、センサー細胞系により、様々な生体異物が表皮を透過する能力を調べることができる。最後に、センサー細胞系により、皮膚の正常な発生及びホメオスタシス時及び/又は異なる病期における内因性アゴニストの産生による核内受容体の活性化を判定することができる。
【0220】
実施例1
【0221】
核内受容体センサー系
【0222】
レポーター系は、レポーター遺伝子の発現を促すエンハンサー/プロモーターを含むカセットからなるものとした。発現を簡便に酵素的に検出できるように、従来のP−ガラクトシダーゼ遺伝子を使用した。共焦点及び多光子蛍光顕微鏡法による直接的な蛍光検出を可能とするために、緑色蛍光タンパク質(又は緑色蛍光タンパク質の誘導体)に基づくレポーターを使用した。エンハンサー/プロモーターは、チミジンキナーゼプロモーターに融合した酵母UASgalエンハンサー又は細菌LexA結合部位の従来の組み合わせとした。これらのレポーター系を活性化させるために、酵母GAL4 DNA結合ドメイン又はLexA DNA結合ドメイン及びレチノイン酸受容体、ビタミンD受容体、肝臓X受容体、プレグナンX受容体(promiscuous pregnane X receptor)、PPARのリガンド結合ドメインの融合を使用した。皮膚特異的発現を生じさせるために、これらのコンストラクトのプロモータ領域は、ケラチン14エンハンサー/プロモーター(表皮特異的発現を生じさせるプロモーター)で置換される。センサー細胞株及びクローントランスジェニックブタを作成するために、PXR(多くの生体異物の可能性の高い標的)、そしてさらにPPARδ(ヒト表皮で発現される主なPPARサブタイプ)、ビタミンD受容体(乾癬の治療における標的)、レチノイン酸受容体(有効な皮膚標的及び皮膚ホメオスタシスの調節剤)を使用する。
【0223】
実施例2
【0224】
皮膚への医薬及び生体異物の透過を調べるためのモデルとしてのトランスジェニックブタ
【0225】
ブタの皮膚はヒトの皮膚の良好なモデルである。トランスジェニックブタは、遺伝子組み換え線維芽細胞から卵細胞質への体細胞核移植によるクローニングによって作成する。これにより、本発明の遺伝的レポーター系をゲノム内に導入し、トランスジェニックレポーターブタを得る。また、皮膚特異的発現を促すK14エンハンサー/プロモーターを使用して、GAL4 DNA結合ドメイン又はLexA DNA結合ドメイン及びPXR、レチノイン酸受容体、ビタミンD受容体又はPPARのリガンド結合ドメインの融合体をゲノムに導入し、表皮の基底細胞において発現させたトランスジェニックブタ系統を作成する。トランスジェニックレポーターブタをK14核内受容体トランスジェニックブタと交配してセンサーブタ系統を作成する。これらのセンサーブタ系統は、皮膚の正常な発生時に生成する内因性アゴニストの産生による活性化を判定するために使用することができる。また、センサーブタ系統は、in situでの皮膚透過及び生体異物による核内受容体の活性化を調べるために使用することができる。皮膚透過の分析は、以下で記載するように行われる。
【0226】
例えば、試験化合物の皮膚への透過を促進する製剤の能力及び核内受容体の活性化によって判定される各種生体異物の透過が分析される。各種製剤における特定の医薬及び生体異物への暴露による核内受容体の空間的な活性化を判定できる。免疫組織化学分析によって検出される酵素を発現するレポーター遺伝子又は共焦点蛍光及び/又は多光子励起蛍光顕微鏡法によって検出される蛍光タンパク質を発現するレポーターの誘導を読み出す。また、各種リポソーム及びナノ粒子製剤の皮膚への透過を、外因性蛍光プローブの共焦点蛍光及び/又は多光子励起蛍光顕微鏡法によって直接調べることにより、製剤の空間的分布と皮膚構造の直接的な相関を得ることができる。共焦点蛍光及び/又は多光子励起蛍光顕微鏡法は、皮膚の力学的及び構造的な情報を得るために成功裏に使用されている。例えば、これら2つの方法の区分能力は、例えば、天然又は外因性蛍光プローブを使用して、非侵襲的に皮膚組織の複雑な3次元構造を解明するために非常に有益である。これは、動物及びヒトの皮膚の真皮及び皮下組織の生体内及び生体外撮像に使用することができる。
【0227】
実施例3
【0228】
一時的な生体内におけるセンサー−受容体系
【0229】
HEK細胞を、1.0μgのベクターpT2/UAS−d2eGFP又は1.0μgのpM/hVDR又はGal4VP16でトランスフェクトした。トランスフェクションの12時間前にビタミンD類似体を細胞に供給し、トランスフェクションの3時間後に再び供給した。トランスフェクションの24時間後に、細胞を蛍光顕微鏡法及びフローサイトメトリーによって分析した(図2〜4を参照)。
【0230】
ベクター
【0231】
pT2/UAS−d2eGFPは、最小チミジンキナーゼ(TK)プロモーターとUAS要素の制御下で不安定化させたGFPを有するセンサー成分を含む。
【0232】
pM/hVDR及びGal4VP16は、Gal4のUAS結合領域に融合させたhVDR又はVP16を含む。VP16は構成的に活性であり、hVDRは転写活性剤として機能するためにリガンドの結合を必要とする。
【0233】
配列


【0234】
本発明の好適な実施形態を以下に記載する。
【0235】
1.動物の組織における物質の作用を評価するための方法であって、a)i)レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii)DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物を用意し、b)前記物質を前記動物に投与し、c)レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を評価することを含み、前記工程b)の前後における前記発現産物の変化が前記組織に対する作用を示す方法。
2.前記物質が物理的又は化学的物質である、1に記載の方法。
3.前記物質又は化合物が、医薬組成物、化粧料、医薬、生体異物化合物、食品組成物、糖、脂質、タンパク質、栄養補助食品、放射線及び/又は電気的刺激である1に記載の方法。
4.前記物質の形態が溶液、クリーム、ローション、ゲル、微小粒子及び/又はナノ粒子である、3に記載の方法。
5.前記組織が、皮膚、表皮、真皮、皮下組織、脂肪、胸腺、腸、小腸、大腸、胃、筋肉、膵、心筋、骨格筋、平滑筋、肝臓、肺、脳、角膜、腫瘍からなる群から選択される、前項のいずれか1項に記載の方法。
6.前記組織が、皮膚である、前項のいずれか1項に記載の方法。
7.前記組織が表皮である、前項のいずれか1項に記載の方法。
8.前記組織が真皮である、前項のいずれか1項に記載の方法。
9.前記動物が、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ミニブタ、マイクロブタ、マウス、ラット、及び齧歯動物からなる群から選択される、前項のいずれか1項に記載の方法。
10.前記動物がヒトである、前項のいずれか1項に記載の方法。
11.前記トランスジェニック動物がブタである、前項のいずれか1項に記載の方法。
12.前記トランスジェニック動物がマウスである、前項のいずれか1項に記載の方法。
13.前記レポーターポリペプチド又はそのフラグメントが検出可能な生成物を含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
14.前記レポーターポリペプチド又はそのフラグメントが、目視、光学的又はオートラジオグラフィーによって検出可能な生成物を含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
15.前記レポーターポリペプチドが、β−ガラクトシダーゼ、HcRed、DsRed、DsRedモノマー、ZsGreen、AmCyan、ZsYellow、ホタルルシフェラーゼ、lac Z、ウミシイタケルシフェラーゼ、SEAP、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)、d2EGFP、強化青色蛍光タンパク質(eBFP)、強化黄色蛍光タンパク質(eYFP)、GFPuv、強化シアン蛍光タンパク質(eCFP)、シアン、緑色、黄色、赤色及び遠赤色造礁サンゴ由来蛍光タンパク質、ヒトα1−アンチトリプシン(hAAT)及び/又はそれらのフラグメント、修飾体及び/又は機能的変異体からなる群から選択される、前項のいずれか1項に記載の方法。
16.前記レポーターポリペプチドがβ−ガラクトシダーゼである、前項のいずれか1項に記載の方法。
17.前記評価が、酵素又は分光検定法、共焦点又は多光子蛍光顕微鏡法、ウエスタンブロッティング、免疫染色、エライザ(ELISA)、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、ポリメラーゼ連鎖反応、プライマー伸長法及びDNAアレイ法等の核酸検出方法から選択される方法による検出を含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
18.レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列にプロモーターが先行する、前項のいずれか1項に記載の方法。
19.前記プロモーターが異種プロモーターである、18に記載の方法。
20.前記プロモーターが誘導性プロモーターである、18に記載の方法。
21.前記プロモーターがチミジンキナーゼプロモーターである、18に記載の方法。
22.前記プロモーターがエンハンサー要素をさらに含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
23.前記エンハンサー要素が、酵母UASgalエンハンサー及び細菌LexA結合部位からなる群から選択される、22に記載の方法。
24.前記エンハンサー要素が酵母UASgalエンハンサーである、23に記載の方法。
25.前記融合ポリペプチドが、DNA結合ドメイン又はその一部の内部及び/又はDNA結合ドメイン又はその一部のN末端及び/又はC末端に挿入された核内受容体又はその一部を含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
26.前記融合ポリペプチドが、DNA結合ドメイン又はその一部のC末端に挿入された核内受容体又はその一部を含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
27.前記融合ポリペプチドの発現が前記レポーターポリペプチドの発現を促進する、前項のいずれか1項に記載の方法。
28.前記付加核酸配列にプロモーターが先行する、前項のいずれか1項に記載の方法。
29.前記プロモーターが誘導性プロモーターである、28に記載の方法。
30.DNA結合ドメインに結合した核内受容体をコードする前記付加核酸配列を組織特異的プロモーターから発現させる、28に記載の方法。
31.前記組織特異的プロモーターが、皮膚、表皮、真皮、皮下組織、脂肪、胸腺、腸、小腸、大腸、胃、筋肉、膵、心筋、骨格筋、平滑筋、肝臓、肺、脳、角膜及び/又は腫瘍からなる群から選択される組織に特異的である、30に記載の方法。
32.前記プロモーターが皮膚特異的プロモーターである、30に記載の方法。
33.前記プロモーターがケラチン14エンハンサー/プロモーターである、28に記載の方法。
34.前記プロモーターがエンハンサー要素を含む、28に記載の方法。
35.前記プロモーターが光誘導性配列を含む、28に記載の方法。
36.前記プロモーターが化学誘導性配列を含む、28に記載の方法。
37.前記核内受容体又はその一部が、核内受容体のリガンド結合ドメインの少なくとも1つのフラグメントを含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
38.前記核内受容体が、甲状腺ホルモン受容体α(TRα;NR1A1、THRA)、甲状腺ホルモン受容体β(TRβ;NR1A2、THRB)、レチノイン酸受容体α(RARα;NR1B1、RARA)、レチノイン酸受容体β(RARβ;NR1B2、RARB)、レチノイン酸受容体γ(RARγ;NR1B3、RARG)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα;NR1C1、PPARA)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体β/δ(PPARβ/δ;NR1C2、PPARD)、ペルオキジソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ;NR1C3、PPARG)、Rev−ErbAα(Rev−ErbAα;NR1D1)、Rev−ErbAβ(Rev−ErbAβ;NR1D2)、RAR関連オーファン受容体α(RORα;NR1F1、RORA)、RAR関連オーファン受容体β(RORβ;NR1F2、RORB)、肝臓X受容体α(LXRα;NR1H3)肝臓X受容体β(LXRβ;NR1H2)、ファルネソイドX受容体(FXR;NR1H4)、ビタミンD受容体(VDR;NR1I1、VDR)(ビタミンD)、プレグナンX受容体(PXR;NR1I2)、構成的アンドロスタン受容体(CAR;NR1I3)、ヘパトサイト核因子4α(HNF4α;NR2A1、HNF4A)、ヘパトサイト核因子4γ(HNF4γ;NR2A2、HNF4G)、レチノイドX受容体α(RXRα;NR2B1、RXRA)、レチノイドX受容体β(RXRβ;NR2B2、RXRB)、レチノイドX受容体γ(RXRγ;NR2B3、RXRG)、精巣受容体2(TR2;NR2C1)、精巣受容体4(TR4;NR2C2)、ドロソフィラテイルレス遺伝子(Drosophila tailless gene)のヒト相同体(TLX;NR2E1)、光受容細胞特異的核内受容体(PNR;NR2E3)、ニワトリオボアルブミン上流プロモーター転写因子I(COUP−TFI;NR2F1)、ニワトリオボアルブミン上流プロモーター転写因子II(COUP−TFII;NR2F2)、6:V−erbA−related(EAR−2;NR2F6)、エストロゲン受容体α(ERα;NR3A1、ESR1)、エストロゲン受容体β(ERβ;NR3A2、ESR2)、エストロゲン関連受容体α(ERRα;NR3B1、ESRRA)、エストロゲン関連受容体β(ERRβ;NR3B2、ESRRB)、エストロゲン関連受容体γ(ERRγ;NR3B3、ESRRG)、グルココルチコイド受容体(GR;NR3C1)(コルチゾール)、無機質コルチコイド受容体(MR;NR3C2)(アルドステロン)、プロゲステロン受容体(PR;NR3C3、PGR)(性ホルモン:プロゲステロン)、アンドロゲン受容体(AR;NR3C4、AR)(性ホルモン:テストステロン)、神経成長因子IB(NGFIB;NR4A1)、Nuclear receptor related 1(NURR1;NR4A2)、神経細胞由来オーファン受容体1(NOR1;NR4A3)、ステロイド産生因子1(SF1;NR5A1)、肝臓受容体相同体1(LRH−1;NR5A2)、生殖細胞核因子(GCNF;NR6A1)、DAX1(Dosage−sensitive sex reversal,adrenal hypoplasia critical region,on chromosome X,gene 1(NR0B1))、小ヘテロ二量体パートナー(SHP;NR0B2)又は2つのDNA結合ドメインを有する核内受容体(2DBD−NR)である、前項のいずれか1項に記載の方法。
39.前記核内受容体が、ビタミンD受容体、肝臓X受容体、レチノイン酸受容体、レチノイドX受容体、プレグナンX受容体(promiscuous pregnane X receptor)及び/又はPPARα、PPARβ/δ、PPARγを含むペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)からなる群から選択される、前項のいずれか1項に記載の方法。
40.前記核内受容体がPPARからなる群から選択される、前項のいずれか1項に記載の方法。
41.前記核内受容体がPPARδである、前項のいずれか1項に記載の方法。
42.前記核内受容体がプレグナンX受容体(promiscuous pregnane X receptor)である、前項のいずれか1項に記載の方法。
43.前記DNA結合ドメインが、GAL4 DNA結合ドメイン及びLexA DNA結合ドメインからなる群から選択される、前項のいずれか1項に記載の方法。
44.前記投与が、口腔投与及び舌下投与を含む経口投与、経腸投与、経鼻投与、局所投与、経肺投与、経腟投与、筋肉内投与、動脈内投与、鞘内投与、皮下投与、静脈内投与を含む非経口投与、吸入又は吹送による投与を含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
45.前記投与が局所投与である、前項のいずれか1項に記載の方法。
46.前記投与が経肺投与である、前項のいずれか1項に記載の方法。
47.前記発現産物がRNA及び/又はポリペプチドを含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
48.前記転写及び/又は翻訳産物の評価を生きた動物に対して行う、前項のいずれか1項に記載の方法。
49.生きた動物から前記組織を採取することなく、前記転写及び/又は翻訳生成物の評価を行う、前項のいずれか1項に記載の方法。
50.前記動物から採取した試料に対して前記転写及び/又は翻訳生成物の評価を行う、前項のいずれか1項に記載の方法。
51.前記試料が、表皮及び皮膚組織等の皮膚組織、乳房組織、卵巣組織、子宮組織、結腸組織、前立腺組織、肺組織、腎組織、胸腺組織、精巣組織、造血組織、骨髄、泌尿生殖組織、呼気、癌幹細胞を含む幹細胞、痰、尿、血液及び/又は汗等の体液からなる群から選択される、前項のいずれか1項に記載の方法。
52.前記物質の前記組織への投与を繰り返すことをさらに含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
53.少なくとも1つのさらなる評価工程をさらに含む、前項のいずれか1項に記載の方法。
54.前記評価工程を、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、10日、20日、30日、60日、180日、365日又は700日間の間隔で分ける、53に記載の方法。
55.動物の組織における物質の作用を変化させる能力について化合物の試験を行うための方法であって、a.i.レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii.DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳生成物を含むトランスジェニック動物に前記化合物を投与し、b.前記物質を前記トランスジェニック動物に投与し、c.レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を評価することを含み、前記化合物の存在下及び非存在下における前記発現産物の量の差が、前記化合物が前記組織における前記物質の作用を変化させることができることを示す方法。
56.2〜54のいずれか1項に記載の、55に記載の方法。
57.前記化合物が物理的又は化学的物質である、55又は56に記載の方法。
58.前記化合物が、医薬組成物、化粧料、医薬、生体異物化合物、食品組成物、糖、脂質、栄養補助食品、放射線又は電気的刺激である、57に記載の方法。
59.前記化合物の形態が溶液、クリーム、ローション、ゲル、微小粒子又はナノ粒子である、57又は58に記載の方法。
60.前記化合物が日焼けローション(sn lotion)である、55〜59のいずれか1項に記載の方法。
61.前記物質が放射線である、55〜60のいずれか1項に記載の方法。
62.前記物質が紫外線である、61に記載の方法。
63.i.レポーターポリペプチド又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はii.DNA結合ドメインに結合した核内受容体又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物。
64.組織に対する物質の作用を評価するためのものである、63に記載のトランスジェニック動物。
65.前記動物が、ブタ、マウス、ラット、齧歯動物、イヌ、サル、モルモット、ミニブタ及びマイクロブタからなる群から選択される、63に記載のトランスジェニック動物。
66.前記動物がブタである、63に記載のトランスジェニック動物。
67.前記動物がマウスである、63に記載のトランスジェニック動物。
68.前記レポーターポリペプチドが、β−ガラクトシダーゼ、HcRed、DsRed、DsRedモノマー、ZsGreen、AmCyan、ZsYellow、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、SEAP、EGFP、EBFP、EYFP、d2EGFP、GFPuv、シアン、緑色、黄色、赤色及び遠赤色造礁サンゴ由来蛍光タンパク質及び/又はそれらのフラグメント、修飾体及び/又は機能的変異体からなる群から選択される、63〜67のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
69.前記レポーターポリペプチドがβ−ガラクトシダーゼ又はそのフラグメント又は機能的変異体である、63〜68のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
70.前記核内受容体が、ビタミンD受容体、肝臓X受容体、プレグナンX受容体(promiscuous pregnane X receptor)、PPAR及びそれらのフラグメントからなる群から選択される、63〜69のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
71.前記DNA結合ドメインが、GAL4 DNA結合ドメイン及びLexA DNA結合ドメインからなる群から選択される、63〜70のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
72.a.β−ガラクトシダーゼ又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及び/又はb.酵母GAL4 DNA結合ドメインに結合したPPARδ又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする付加核酸配列又は前記付加核酸配列の転写又は翻訳生成物を含む、66に記載のトランスジェニックブタ。
73.内因性アゴニストの産生による核内受容体の活性化を生体内で判定するためのものである、63〜72のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
74.前記アゴニストが皮膚の正常な発生時に生成する、73に記載のトランスジェニック動物。
75.前記内因性アゴニストが、乾癬、各種の癌及び/又は他の過剰増殖性疾患等の疾患の進行時に生成する、73に記載のトランスジェニック動物。
76.前記疾患が乾癬である、75に記載のトランスジェニック動物。
77.組織におけるin situでの物質の透過及び/又は2〜4のいずれか1項に記載の物質による核内受容体の活性化の判定のためのものである、63〜76のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
78.63〜77のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物に由来する細胞株。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びii.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はiii.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を含むトランスジェニック動物。
【請求項2】
前記非ヒトトランスジェニック動物がブタである、請求項1に記載のトランスジェニック動物。
【請求項3】
前記非ヒトトランスジェニック動物が、ブタ、ミニブタ、マイクロブタ、マウス、ラット、非ヒト霊長類及び齧歯動物からなる群から選択される、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項4】
a.酵母GAL4 DNA結合ドメインに結合したPPARδ又はその一部を含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列及び/又はb.β−ガラクトシダーゼ又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項5】
前記核内受容体又はその一部が、核内受容体又はそのフラグメントのリガンド結合ドメインを含む、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項6】
前記核内受容体が、甲状腺ホルモン受容体α(TRα;NR1A1、THRA)、甲状腺ホルモン受容体β(TRβ;NR1A2、THRB)、レチノイン酸受容体α(RARα;NR1B1、RARA)、レチノイン酸受容体β(RARβ;NR1B2、RARB)、レチノイン酸受容体γ(RARγ;NR1B3、RARG)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα;NR1C1、PPARA)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体β/δ(PPARβ/δ;NR1C2、PPARD)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ;NR1C3、PPARG)、Rev−ErbAα(Rev−ErbAα;NR1D1)、Rev−ErbAβ(Rev−ErbAβ;NR1D2)、RAR関連オーファン受容体α(RORα;NR1F1、RORA)、RAR関連オーファン受容体β(RORβ;NR1F2、RORB)、肝臓X受容体α(LXRα;NR1H3)肝臓X受容体β(LXRβ;NR1H2)、ファルネソイドX受容体(FXR;NR1H4)、ビタミンD受容体(VDR;NR1I1、VDR)(ビタミンD)、プレグナンX受容体(PXR;NR1I2)、構成的アンドロスタン受容体(CAR;NR1I3)、ヘパトサイト核因子4α(HNF4α;NR2A1、HNF4A)、ヘパトサイト核因子4γ(HNF4γ;NR2A2、HNF4G)、レチノイドX受容体α(RXRα;NR2B1、RXRA)、レチノイドX受容体β(RXRβ;NR2B2、RXRB)、レチノイドX受容体γ(RXRγ;NR2B3、RXRG)、精巣受容体2(TR2;NR2C1)、精巣受容体4(TR4;NR2C2)、ドロソフィラテイルレス遺伝子(Drosophila tailless gene)のヒト相同体(TLX;NR2E1)、光受容細胞特異的核内受容体(PNR;NR2E3)、ニワトリオボアルブミン上流プロモーター転写因子I(COUP−TFI;NR2F1)、ニワトリオボアルブミン上流プロモーター転写因子II(COUP−TFII;NR2F2)、6:V−erbA−related(EAR−2;NR2F6)、エストロゲン受容体α(ERα;NR3A1、ESR1)、エストロゲン受容体β(ERβ;NR3A2、ESR2)、エストロゲン関連受容体α(ERRα;NR3B1、ESRRA)、エストロゲン関連受容体β(ERRβ;NR3B2、ESRRB)、エストロゲン関連受容体γ(ERRγ;NR3B3、ESRRG)、グルココルチコイド受容体(GR;NR3C1)(コルチゾール)、無機質コルチコイド受容体(MR;NR3C2)(アルドステロン)、プロゲステロン受容体(PR;NR3C3、PGR)(性ホルモン:プロゲステロン)、アンドロゲン受容体(AR;NR3C4、AR)(性ホルモン:テストステロン)、神経成長因子IB(NGFIB;NR4A1)、Nuclear receptor related 1(NURR1;NR4A2)、神経細胞由来オーファン受容体1(NOR1;NR4A3)、ステロイド産生因子1(SF1;NR5A1)、肝臓受容体相同体1(LRH−1;NR5A2)、生殖細胞核因子(GCNF;NR6A1)、DAX1(Dosage−sensitive sex reversal,adrenal hypoplasia critical region,on chromosome X,gene 1(NR0B1))、小ヘテロ二量体パートナー(SHP;NR0B2)又は2つのDNA結合ドメインを有する核内受容体(2DBD−NR)である、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項7】
前記核内受容体が、ビタミンD受容体、肝臓X受容体、レチノイン酸受容体、レチノイドX受容体、プレグナンX受容体(promiscuous pregnane X receptor)及びPPARα、PPARβ/δ、PPARγを含むペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)からなる群から選択される、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項8】
前記DNA結合ドメインが、GAL4 DNA結合ドメイン、LexA DNA結合ドメイン、及び/又はその一部である、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項9】
前記核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部が誘導性及び/又は組織特異的プロモーターから発現される、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項10】
前記組織特異的プロモーターが、皮膚、表皮、真皮、皮下組織、脂肪、胸腺、腸、小腸、大腸、胃、筋肉、膵、心筋、骨格筋、平滑筋、肝臓、肺、脳、角膜及び/又は腫瘍からなる群から選択される組織に特異的である、請求項9に記載のトランスジェニック動物。
【請求項11】
前記プロモーターがケラチン14エンハンサー/プロモーターである、請求項9に記載のトランスジェニック動物。
【請求項12】
前記核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部が物理的又は化学的に結合している、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項13】
検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする前記核酸配列が、酵母Gal4上流活性化配列(UASgal)、細菌LexA結合部位及び/又はその一部の少なくとも1つをさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項14】
検出可能なレポーター核酸転写産物又はポリペプチドをコードする前記核酸配列が異種及び/又は誘導性プロモーターから発現される、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項15】
前記核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部の発現が、前記核内受容体に特異的なリガンドの存在下における前記レポーターポリペプチドの発現を促進する、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項16】
前記レポーター転写産物、ポリペプチド又はそのフラグメントが、目視、光学的又はオートラジオグラフィーによって検出可能な生成物を含む、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項17】
前記レポーターポリペプチドが、β−ガラクトシダーゼ、HcRed、DsRed、DsRedモノマー、ZsGreen、AmCyan、ZsYellow、ホタルルシフェラーゼ、lac Z、ウミシイタケルシフェラーゼ、SEAP、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)、d2EGFP、強化青色蛍光タンパク質(eBFP)、強化黄色蛍光タンパク質(eYFP)、GFPuv、強化シアン蛍光タンパク質(eCFP)、シアン、緑色、黄色、赤色及び遠赤色造礁サンゴ由来蛍光タンパク質、ヒトα1−アンチトリプシン(hAAT)及び/又はそれらのフラグメント、修飾体及び/又は機能的変異体からなる群から選択される、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項18】
前記レポーターポリペプチドがβ−ガラクトシダーゼである、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項19】
前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現が、酵素又は分光検定法、共焦点又は多光子蛍光顕微鏡法、ウエスタンブロッティング、免疫染色、エライザ(ELISA)、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、ポリメラーゼ連鎖反応、プライマー伸長法及びDNAアレイ法等の核酸検出方法から選択される方法によって検出可能である、前記請求項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
【請求項20】
非ヒト動物の組織における核内受容体の活性に対する物質の作用を評価するための方法であって、a.請求項1〜19のいずれか1項に記載の非ヒトトランスジェニック動物を用意し、b.物質を前記トランスジェニック動物に投与し、c.前記動物における、レポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする前記核酸配列の発現を検出することを含み、前記物質の投与による発現が、前記組織における核内受容体の活性に対する前記物質の作用を示す方法。
【請求項21】
非ヒト動物の組織における核内受容体の活性に対する物質の作用を変化させる能力について化合物の試験を行うための方法であって、a.請求項1〜19のいずれか1項に記載の非ヒトトランスジェニック動物を用意し、b.前記化合物を前記トランスジェニック動物に投与し、c.前記物質を前記トランスジェニック動物に投与し、d.前記動物における、レポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする前記核酸配列の発現を検出することを含み、前記物質の投与による発現が、前記組織における核内受容体の活性に対する前記物質の作用を示す方法。
【請求項22】
レポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードする前記核酸配列の発現を、前記物質及び/又は化合物の存在下及び非存在下において検出する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記物質の非存在下と比較して、前記物質の存在下における、a.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現の増加が、前記核内受容体の活性に対する前記物質の促進作用を示し、b.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現の減少が、前記核内受容体の活性に対する前記物質の抑制作用を示し、c.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現が変化しないことが、前記核内受容体の活性に対して前記物質が全く又はほとんど作用しないことを示す、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物の非存在下と比較して、前記化合物の存在下における、a.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現に対する前記物質の作用の増加が、前記核内受容体の活性に対する前記物質の作用に対する前記化合物の促進作用を示し、b.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現に対する前記物質の作用の減少が、前記核内受容体の活性に対する前記物質の作用に対する前記化合物の抑制作用を示し、c.前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現に対する前記物質の作用が全く又はほとんど変化しないことが、前記核内受容体の活性に対する前記物質の作用に対して前記化合物が全く又はほとんど作用しないことを示す、請求項20〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部の発現が前記レポーターポリペプチドの発現を促進する、請求項20〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の発現を、前記レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の転写及び/又は翻訳発現産物を検出することによって検出する、請求項20〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記レポーター転写産物又はポリペプチドの発現の検出が、酵素又は分光検定法、共焦点又は多光子蛍光顕微鏡法、ウエスタンブロッティング、免疫染色、エライザ(ELISA)、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、ポリメラーゼ連鎖反応、プライマー伸長法及びDNAアレイ法等の核酸検出方法から選択される方法による検出を含む、請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記物質又は化合物が物理的又は化学的物質である、請求項20〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記物質又は化合物が、医薬組成物、化粧料、医薬、生体異物化合物、食品組成物、糖、脂質、タンパク質、栄養補助食品、放射線及び/又は電気的刺激である、請求項20〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物が日焼け止めローション及び/又は前記物質が紫外線である、請求項20〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記物質又は化合物の形態が、溶液、クリーム、ローション、ゲル、微小粒子及び/又はナノ粒子である、請求項20〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記物質又は化合物を、口腔投与及び舌下投与を含む経口投与、筋肉内投与、動脈内投与、鞘内投与、皮下投与、静脈内投与を含む経腸投与、経鼻投与、局所投与、経肺投与、経腟投与又は非経口投与又は吸入又は吹送による投与によって投与する、請求項20〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記物質又は化合物を局所投与及び/又は経肺投与によって投与する、請求項20〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記転写及び/又は翻訳産物の検出を生きた動物に対して行う、請求項20〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
生きた動物から前記組織を採取することなく、前記転写及び/又は翻訳産物の検出を行う、請求項20〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記転写及び/又は翻訳レポーター生成物の検出を前記動物から採取した組織試料に対して行う、請求項20〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記組織が、皮膚、表皮、真皮、皮下組織、胸、脂肪、胸腺、腸、小腸、大腸、胃、筋肉、膵、心筋、骨格筋、平滑筋、肝臓、肺、脳、角膜、腫瘍、卵巣組織、子宮組織、結腸組織、前立腺組織、肺組織、腎組織、胸腺組織、精巣組織、造血組織、骨髄、泌尿生殖組織、呼気、癌幹細胞を含む幹細胞、痰、尿、血液及び/又は汗等の体液からなる群から選択される、請求項20〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記組織が、皮膚、表皮及び/又は真皮である、請求項20〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物に由来する細胞株。
【請求項40】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物に由来する組み換え型非ヒト卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核、及び又は、組み換え型ゲノムが、i.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びii.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はiii.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を含む、組み換え型非ヒト卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核。
【請求項41】
請求項1〜19、39及び40のいずれか1項に記載の非ヒトトランスジェニック動物、卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核の製造方法であって、i.ドナー細胞を用意し、ii.i)a.核内受容体又はその一部及びDNA結合ドメイン又はその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列、及びb.検出可能なレポーター核酸転写産物及び/又はレポーターポリペプチド又はその一部をコードし、DNA結合ドメインを含むポリペプチドの少なくとも1つの結合部位をさらに含む少なくとも1つの核酸配列、及び/又はc.前記核酸配列のいずれかの転写又は翻訳産物を挿入することによって前記ドナー細胞の遺伝子組み換えを行い、iii.ii)において得られた前記ドナー細胞の遺伝子組み換えゲノムを宿主細胞に移植し、iv.胚を形成する再構築胚を得、v.前記胚を培養し、vi.前記培養した胚を遺伝子組み換え胎児となるように宿主哺乳動物に移植することを含み、前記遺伝子組み換え胚を工程i)〜v)を含む核移植によって製造し、前記遺伝子組み換え胚盤胞を工程i)〜vi)を含む核移植によって製造し、前記遺伝子組み換え胎児を工程i)〜vi)を含む核移植によって製造する方法。
【請求項42】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物、請求項39に記載の細胞株及び/又は請求項40に記載の卵母細胞、精細胞、胚盤胞、胚、胎児、ドナー細胞又は細胞核の、核内受容体の活性を評価するための使用。
【請求項43】
核内受容体の活性に対する物質の作用を評価するための、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
生体内において内因性アゴニストによる核内受容体の活性を評価するための、請求項42又は43に記載の使用。
【請求項45】
前記アゴニストが皮膚の正常な発生時に生成する、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記内因性アゴニストが、乾癬、各種の癌及び/又は他の過剰増殖性疾患等の疾患の進行時に生成する、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
前記核内受容体、評価、物質及び/又は組織が前記請求項のいずれか1項に記載されたものである、請求項42〜46のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−501629(P2012−501629A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525408(P2011−525408)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050225
【国際公開番号】WO2010/025736
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(508238358)オーフス ユニバーシティ (5)
【氏名又は名称原語表記】AARHUS UNIVERSITET
【出願人】(509251268)シダンスク ユニバーシティ (3)
【氏名又は名称原語表記】SYDDANSK UNIVERSITET
【Fターム(参考)】