説明

トランスバーサルフィルタおよび等化器

【課題】調整により遅延時間の誤差を回避してフィルタ特性の劣化を少なくすることができるトランスバーサルフィルタおよび等化器を提供する。
【解決手段】入力信号に対して所定の時間遅延を施す遅延器10、20と、この遅延器10、20の入力信号および出力信号にそれぞれ外部から与えられるタップ係数T0、T1、T2を乗算して出力する乗算器30、31、32と、この乗算器30、31、32の出力を加算する加算器51、52とを有し、遅延器10、20は、それぞれ遅延時間が異なるM系列(Mは2以上の整数)の回路手段(11〜13、21〜23)と、この回路手段から1系列を選択する選択手段(14、24)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスバーサルフィルタおよびトランスバーサルフィルタを用いて光ファイバ通信などの通信方式における信号波形劣化を電気回路により改善する等化器に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、3タップで構成されたトランスバーサルフィルタの構成例を示す図である。信号入力端子1から入力された信号は、直列接続された第1、第2の遅延器110、210に入力される。遅延器110、210の遅延時間はそれぞれτl、τ2とする。これらの遅延時間τ1、τ2は、実用上同じ値に設計することが多いが、一般的には必ずしも同じ値である必要はない。信号入力端子1から入力された信号および第1、第2の遅延器110、210の出力信号は、それぞれ第0、第1、第2の乗算器30、31、32に入力され、タップ係数入力端子40、41、42から与えられるタップ係数T0、Tl、T2によって適当に重み付けされた後、第1、第2の加算器51、52により加算され、信号出力端子2から出力される。
【0003】
図7は、トランスバーサルフィルタを用いた等化器の構成例を示す図である。良く知られているように、このようなトランスバーサルフィルタは、情報通信の各種通信方式において、伝送媒体の伝達により劣化した信号を整形する「等化器」として機能する。トランスバーサルフィルタを用いた等化器には、主として、フィードフォワード型等化器またはディシジョン・フィードバック(判定帰還)型等化器あるいはそれらを組み合わせた型の等化器がある。図7には、フィードフォワード型等化器(FFE)61とディシジョン・フィードバック型等化器(DFE)62を組み合わせた型の等化器の構成例を示す。
【0004】
FFE61は、入力信号をトランスバーサルフィルタにより等化する等化器であり、図6に示すトランスバーサルフィルタの回路構成がそのまま用いられる。ただし、図7では、2つの遅延器の遅延時間をそれぞれτfl、τf2とし、タップ係数をTf0、Tfl、Tf2としている。DFE62は、入力信号の符号判定を行う識別器63の出力をトランスバーサルフィルタに通して識別器63の入力信号から減算する等化器であり、図6に示すトランスバーサルフィルタの回路構成における2つの遅延器の遅延時間をそれぞれτd2、τd3、タップ係数をTd0、Tdl、Td2とし、さらに、そのトランスバーサルフィルタの入力に遅延時間τd1の遅延器を設けた回路構成が用いられる。
【0005】
図8は、等化器を用いた一般的な光ファイバ伝送装置の構成例を示す図である。この光ファイバ伝送装置は、変調データ入力端子301、電気光変換器302、光ファイバ303、光電気変換器304、等化器305、識別器306および復調データ出力端子307を有する。変調データ入力端子301には、光ファイバ伝送系の変調データが入力される。電気光変換器302は、光送信器として動作し、変調データ入力端子301に入力された変調データを光信号に変換して、光ファイバ303に送出する。光電気変換器304は、光受信器として動作し、光ファイバ303から光信号を受信して、電気信号に変換する。等化器305は、光ファイバ303の伝達により劣化した信号を整形する。識別器306は、信号の符号判定を行い、復調データ出力端子307に復調データを出力する。
【0006】
光ファイバ伝送における信号劣化の要因は、主として、光ファイバの分散特性にある。光ファイバの分散特性には、波長分散、偏波分散、モード分散などがあり、分散により光信号の帯域や波形が劣化して、アイパタン開口率の低下や符号誤り率増大を招き、光伝送の高速化あるいは長距離伝送化を制限する。この分散の影響を低減する技術として等化器が用いられ、等化器によって、光ファイバ伝送後の周波数応答や波形形状が改善される(例えば非特許文献2参照)。したがって、光ファイバ伝送方式の等化器は、(電気)分散補償器とも呼ばれる。
【0007】
ところで、半導体集積回路によって実現されるトランスバーサルフィルタを用いた通信方式用等化器の場合、トランスバーサルフィルタの遅延器は、一般的には複数の遅延バッファの多段接続によって構成される(非特許文献1参照)。図6の構成例を用いて説明すると、遅延器110、210は、所望の遅延時間を得るために必要な段数だけ遅延バッファ111、211を直列に多段接続することによって構成される。通信速度が高速化すると等化器の周波数特性に対しても高速化が要求されるが、そのためには、トランスバーサルフィルタを構成する半導体集積回路のトランジスタの動作速度向上が必要となる。
【0008】
一方で、最先端の半導体プロセスを用いて集積回路を製造する場合、トランジスタの動作速度向上のために半導体プロセスの微細加工が必要となるため、トランジスタ動作速度の向上に反比例して、半導体プロセスの製造ばらつきが増加する。このため、図6で示されるような多段の遅延バッファ111、211で構成される遅延器110、210では、半導体プロセスの製造ばらつきによって遅延器110、210遅延時間が設計値から外れることにより、フィルタの特性が劣化する(所望の特性が得られない)ことがある。遅延時間が可変なトランスバーサルフィルタ構成が提案され、例えば特許文献1あるいは特許文献2に示されているが、回路構成が複雑であったり、集積回路の構成としては実現困難である
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平8−8462号公報
【特許文献2】特公平7−83303号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】小西良弘監著、「通信用フィルタ回路の設計とその応用」、75−95頁、総合電子出版社、1994年
【非特許文献2】H.Buelow,”Electronic dispersion compensation”, Proceedings for Optical Fiber Communication Conference and National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC), OMG5,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、調整により遅延時間の誤差を回避してフィルタ特性の劣化を少なくすることができるトランスバーサルフィルタおよび等化器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のトランスバーサルフィルタは、入力信号に対して所定の時間遅延を施す遅延器と、この遅延器の入力信号および出力信号にそれぞれ外部から与えられるタップ係数を乗算して出力する乗算器と、この乗算器の出力を加算する加算器とを有するトランスバーサルフィルタにおいて、遅延器は、それぞれ遅延時間が異なるM系列(Mは2以上の整数)の回路手段と、この回路手段から1系列を選択するセレクタとを有することを特徴とする。
【0013】
M系列の回路手段は、半導体集積回路上で互いに異なる数の遅延バッファが直列多段接続された遅延部の並列回路により構成されることができる。また、M系列の回路手段は、半導体集積回路上で1または複数の遅延バッファが直列多段接続された直列回路部と、この直列回路部の出力を分岐して互いに異なる遅延を施す並列回路部とを有することもできる。この場合、並列回路部が多段に接続され、前段の出力を分岐して互いに異なる遅延を施すこともできる。選択手段は、多段に接続され各段で2系列から1系列を選択するセレクタを有することができる。
【0014】
本発明の等化器は、入力信号をトランスバーサルフィルタにより等化するフィードフォワード型等化器、または入力信号の符号判定を行う識別器の出力をトランスバーサルフィルタに通して前記識別器の入力信号から減算するディシジョン・フィードバック型等化器、あるいはフィードフォワード型等化器とディシジョン・フィードバック型等化器とを組み合わせた等化器であり、この等化器を構成する少なくとも一部のトランスバーサフィルタが上述のトランスバーサルフィルタにより構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、遅延時間が異なるM系列の回路手段を設け、その1系列を選択することで、遅延器の遅延時間の誤差を回避し、フィルタ特性の劣化を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るトランスバーサルフィルタの構成例を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るトランスバーサルフィルタの構成例を示す図である。
【図3】図1または図2に示すトランスバーサルフィルタ内の遅延器の他の構成例を示す図である。
【図4】トランスバーサルフィルタの遅延特性のシミュレーション結果を示す図であり、半導体プロセスの製造ばらつきを考慮して設計された、図3に示す遅延器構成を有する図1に示すトランスバーサルフィルタの遅延特性を示す。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るトランスバーサルフィルタの構成例を示す図である。
【図6】3タップで構成されたトランスバーサルフィルタの構成例を示す図である。
【図7】トランスバーサルフィルタを用いた等化器の構成例を示す図である。
【図8】等化器を用いた一般的な光ファイバ伝送装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態に係るトランスバーサルフィルタの構成例を示す図である。ここでは、図6に示す構成例と同様に3タップの構成例を示す。このトランスバーサルフィルタは、遅延器10、20、乗算器30、31、32および加算器51、52を備える。遅延器10、20は、信号入力端子1から入力される入力信号に対して、所定の時間遅延を施す。乗算器30、31、32は、遅延器10、20の入力信号および出力信号に、それぞれ外部からタップ係数入力端子40、41、42に与えられるタップ係数T0、T1、T2を乗算して出力する。加算器51、52は、乗算器30、31、32の出力を加算して信号出力端子2に出力する。遅延器10は、それぞれ遅延時間が異なるM系列(Mは2以上の整数、この実施の形態では3)の回路手段としての遅延部11、12、13と、遅延部11、12、13から1系列を選択する選択手段としてのセレクタ14とを有する。遅延器20も同様に、それぞれ遅延時間が異なるM系列の回路手段としての遅延部21、22、23と、遅延部21、22、23から1系列を選択するセレクタ24とを有する。
【0019】
図1に示すトランスバーサルフィルタが図6に示す構成例と異なる点は、図6に示す遅延器110の代わりに、遅延時間の異なる3個並列の遅延部1l、12、13およびそれらの後に続くセレクタ(3入力マルチプレクサ)14によって構成される遅延器10を用い、遅延器210の代わりに、遅延時間の異なる3個並列の遅延部21、22、23およびそれらの後に続くセレクタ(3入力マルチプレクサ)24によって構成される遅延器20を用いることにある。
【0020】
[動作の説明]
図1に示すトランスバーサルフィルタにおいて、信号入力端子1から入力される信号が並列化された遅延部11、12、13のうちいずれを通過するかは、セレクタ切替端子15に入力される選択信号S1により、セレクタ14で選択される。同様に、セレクタ14を通過した信号が並列化された遅延部21、22、23のうちいずれを通過するかは、セレクタ切替端子25に入力される選択信号S2により、セレクタ24で選択される。信号入力端子1から入力された信号およびセレクタ14、24の出力信号は、それぞれ第0、第1、第2の乗算器30、31、32に入力され、タップ係数入力端子40、41、42から与えられるタップ係数T0、Tl、T2によって適当に重み付けされた後、第1、第2の加算器51、52により加算され、信号出力端子2から出力される。
【0021】
[遅延部の構成およびその選択]
遅延部11、12、13はそれぞれ、半導体集積回路上で互いに異なる数の遅延バッファ111が直列多段接続されて構成される。遅延部21、22、23も同様に、半導体集積回路上で互いに異なる数の遅延バッファ211が直列多段接続されて構成される。遅延時間の差は、遅延バッファ111、211の段数の違いによって生成される。例えば、図1で示すように、遅延部11、12、13を構成する遅延バッファ111の段数をそれぞれ2段、3段、4段とし、遅延部12の遅延時間をτl、遅延バッファ1段当たりの遅延時間をΔτ1とすると、遅延部11、13の遅延時間はそれぞれτ1−Δτ1、τ1+Δτ1となる。また、τ1=3Δτ1である。
【0022】
図1に示すトランスバーサルフィルタを半導体集積回路によって実現する際に、その設計時において、遅延部11、12、13の中から遅延部12が、遅延部21、22、23の中から遅延部22がそれぞれ選択された場合に、フィルタの特性が最適化されるように設計されたとする。集積回路が製造された結果、半導体プロセス、特にトランジスタが当初の設計通りの特性を有している場合には、遅延部12および22を選択することにより、当初の設計通りのフィルタ特性が得られる。ところが、半導体プロセスに製造ばらつきが生じ、実際のトランジスタの特性が回路設計に用いた特性から外れた場合には、遅延バッファ111、211の遅延時間に設計値との誤差が生じる。このような場合においても、製造後の検査時において、並列化された遅延部11、12、13および遅延部21、22、23の中でどれを通過させるかをそれぞれセレクタ14、24で切り替えながらフィルタ特性を確認することによって、遅延時間の設計値との誤差を補正して、フィルタ特性を所望の特性に近づけることが可能となる。例えば、遅延バッファ111、211の1段当たりの遅延時間が設計値より長い場合には、遅延部12および22の代わりに遅延部11および21を、設計値より短い場合には遅延部12および22の代わりに、遅延部13および23を選択すれば良い。
【0023】
[効果]
以上説明した本発明の第1の実施の形態によれば、集積回路の回路規模増大を抑えつつ、設計時には予測不可能な半導体プロセスの製造ばらつきがあっても、製造後の調整により遅延器の遅延時間の誤差を回避し、フィルタ特性の劣化が少ないトランスバーサルフィルタを提供することができる。また、半導体プロセスの製造ばらつきの問題とは無関係に、製造後においてもフィルタ特性が可変なため、トランスバーサルフィルタの性能向上や適用範囲の拡大が可能であるという効果も有している。
【0024】
[第2の実施の形態]
図2は本発明の第2の実施の形態に係るトランスバーサルフィルタの構成例を示す図である。ここでは、図1に示す第1の実施の形態と同様に、3タップの構成例を示す。図1に示す第1の実施の形態では、遅延器10、20の段数N(Nは2以上の整数、第1の実施の形態ではN=2)に対して、乗算器30、31、32の出力を加算するために、N個の2入力1出力加算器51、52を用いる構成としている。これに対し、第2の実施の形態では、乗算器30、31、32の出力を、l個の(N+1)入力1出力加算器53で加算する構成とする。この構成においても、第1の実施の形態と同等の効果が得られる。
【0025】
[遅延器の他の構成例]
図3は、図1または図2に示すトランスバーサルフィルタ内の遅延器10、20の他の構成例を示す図である。図3では、遅延器10として示す。図3に示す遅延器10は、半導体集積回路上で1または複数の遅延バッファ111が直列多段(図3に示す例では2段)接続された直列回路部112と、この直列回路部112の出力を分岐して互いに異なる遅延を施す並列回路部113、114とを有し、並列回路部113、114が2段に接続され、前段の出力を分岐して互いに異なる遅延、すなわち、一方はそのまま出力し、他方には遅延バッファ111による遅延を施す構成となっている。また、図1または図2に示すセレクタ14、24に代えて、選択手段として、多段(図3に示す例では2段)に接続され各段で2系列から1系列を選択するセレクタ16を有する。セレクタ16は、セレクタ切替端子17、18に入力される選択信号S11、S12により、信号が通過する経路を選択する。
【0026】
実際に遅延器10、20を半導体集積回路によって構成しようとする場合、遅延バッファ111の数が増えると、回路規模が大きくなり消費電力も増加する。また、多入力1出力のセレクタ14、24を1つの要素回路で実現することが難しい場合がある。そこで、図3に示す構成により、遅延時間の異なる複数の遅延部11、12、13による並列回路と同等の機能を、1つのセルの遅延器10によって実現する。これにより、なるべく遅延バッファ111の総数を減らすことができる。また、セレクタ14、24として、2入力1出力のセレクタ16のみで構成されたものを用いる。2入力1出力のセレクタ16は、3入力1出力のセレクタ14、24に比べて、実現が容易である。
【0027】
[遅延特性]
図4は、トランスバーサルフィルタの遅延特性のシミュレーション結果を示す図であり、半導体プロセスの製造ばらつきを考慮して設計された、図3に示す遅延器構成を有する図1に示すトランスバーサルフィルタの遅延特性を示す。
【0028】
集積回路の設計段階において、既に半導体プロセスの製造ばらつき範囲が予測可能な場合には、トランジスタ特性変動の予測偏差に基づいて、遅延器10、20によって得られる遅延時間の差を設定することが望ましい。図4には、遅延器10、20の遅延時間の設計目標を65psとし、半導体プロセスの製造ばらつきによるトランジスタのパラメータ変動予測値が標準(TYP)、最悪(WORST)、最良(BEST)の場合における群遅延特性および電圧利得特性を示す。パラメータ変動の条件に応じて、信号が通過する経路をセレクタ16により適切に切り替える。これにより、TYP、WORST、BESTにおける遅延時間は、それぞれ65.45ps、65.84ps、62.48psとなり、トランジスタのパラメータ変動によらず゛ほぼ一定の遅延特性が得られることがわかる。
【0029】
また、半導体プロセスの製造ばらつきの問題とは無関係に、製造後においてもフィルタ特性が可変なため、適用状況に応じて例えば特性の微調整に用いることで、フィルタ性能の向上や適用範囲の拡大といった効果も期待できる。
【0030】
[第3の実施の形態]
図5は本発明の第3の実施の形態に係るトランスバーサルフィルタの構成例を示す図であり、遅延器の段数がN(タップ数がN+1)の構成例を示す。第1および第2の実施の形態においては、それぞれ遅延時間が異なるM系列から1系列を選択する遅延器11、21として、M=3の例について説明したが、Mが2または4以上の整数となる構成とすることもできる。また、第1および第2の実施の形態においては、3タップ構成(遅延器11、21の段数が2)のトランスバーサルフィルタを例に説明したが、広くN+1タップ構成(Nは遅延器の段数で2以上の整数)のトランスバーサルフィルタとすることができる。実際の回路設計において、Mの値は、回路規模の増大対効果(フィルタ特性)を勘案して、最適値となるように決定する。また、Nの値は、動作帯域対効果(フィルタ特性)を勘案して、最適値となるように決定する。
【0031】
[等化器としての実施の形態]
以上説明したトランスバーサルフィルタは、図7を参照して説明したようなフィードフォワード型等化器(FFE)、またはディシジョン・フィードバック型等化器(DFE)、あるいはFFEとDFEとを組み合わせた型の等化器として利用することができる。このような等化器は、設計時には予測不可能な半導体プロセスの製造ばらつきがあっても、製造後の調整により遅延器の遅延時間の誤差を回避し、フィルタ特性の劣化が少ない等化器を実現することができる。また、半導体プロセスの製造ばらつきの問題とは無関係に、製造後においてもフィルタ特性が可変である。このような等化器は、フィルタ性能向上や適用範囲の拡大といった効果も期待できる。
【符号の説明】
【0032】
1 信号入力端子
2 信号出力端子
10、20 遅延器
11〜13、21〜23 遅延部(回路手段)
14、16、24 セレクタ(選択手段)
15、17、18、25 セレクタ切替端子
30〜32 乗算器
40〜42 タップ係数入力端子
51〜53 加算器
61 フィードフォワード型等化器(FFE)
62 ディシジョン・フィードバック型等化器(DFE)
63 識別器
111、211 遅延バッファ
112 直列回路部
113、114 並列回路部
301 変調データ入力端子
302 電気光変換器(光送信器)
303 光ファイバ
304 光電気変換器(光受信器)
305 等化器
306 識別器
307 復調データ出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に対して所定の時間遅延を施す遅延器と、
この遅延器の入力信号および出力信号にそれぞれ外部から与えられるタップ係数を乗算して出力する乗算器と、
この乗算器の出力を加算する加算器と
を有するトランスバーサルフィルタにおいて、
上記遅延器は、それぞれ遅延時間が異なるM系列(Mは2以上の整数)の回路手段と、この回路手段から1系列を選択する選択手段とを有する
ことを特徴とするトランスバーサルフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載のトランスバーサルフィルタにおいて、前記回路手段は、半導体集積回路上で互いに異なる数の遅延バッファが直列多段接続された遅延部の並列回路により構成されたことを特徴とするトランスバーサルフィルタ。
【請求項3】
請求項1記載のトランスバーサルフィルタにおいて、前記回路手段は、半導体集積回路上で1または複数の遅延バッファが直列多段接続された直列回路部と、この直列回路部の出力を分岐して互いに異なる遅延を施す並列回路部とを有することを特徴とするトランスバーサルフィルタ。
【請求項4】
請求項3記載のトランスバーサルフィルタにおいて、前記並列回路部が多段に接続され、前段の出力を分岐して互いに異なる遅延を施すことを特徴とするトランスバーサルフィルタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のトランスバーサルフィルタにおいて、前記選択手段は、多段に接続され各段で2系列から1系列を選択するセレクタを有することを特徴とするトランスバーサルフィルタ。
【請求項6】
入力信号をトランスバーサルフィルタにより等化するフィードフォワード型等化器、または入力信号の符号判定を行う識別器の出力をトランスバーサルフィルタに通して前記識別器の入力信号から減算するディシジョン・フィードバック型等化器、あるいはフィードフォワード型等化器とディシジョン・フィードバック型等化器とを組み合わせた等化器であり、
この等化器を構成する少なくとも一部のトランスバーサフィルタが請求項1から4のいずれか1項記載のトランスバーサルフィルタにより構成された
ことを特徴とする等化器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−161470(P2010−161470A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−910(P2009−910)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】