説明

トランスバースリンクおよびトランスバースリンクの製造方法

【課題】少ない重量と特に簡単な製造可能性を、同時に高い耐久性のもと有するトランスバースリンクを提供する。
【解決手段】自動車の軸に配置するためのトランスバースリンク1であって、このトランスバースリンク1が一部品の薄板部材として薄板プレートから製造されており、かつこれに接して形成された三つの支承部分3a,3b,3cを有するベースボディ部分2を備えており、その際ベースボディ部分2が二つのアーム4を備え、かつベースボディ平面がアーム4によって形成されている前記トランスバースリンク1において、一つの支承部分3cが、二つの収容開口部6を備える支承部収容部5を有し、収容開口部6がそれぞれ一つの開口部平面内にあり、そしてこれら開口部平面が互いに間隔を有しており、かつベースボディ平面に対して基本的に垂直であることを特徴とする前記トランスバースリンクによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の軸に配置するためのトランスバースリンク(Querlenker)であって、このトランスバースリンクは一部品の薄板部材として薄板プレートから製造されており、かつこれに接して形成された三つの支承部分を有するベースボディ部分を備えており、その際ベースボディ部分が二つのアームを備え、かつベースボディ平面がアームによって形成されている前記トランスバースリンクに関する。
【0002】
本発明は、更に、請求項5の特徴に従うトランスバースリンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車製造においてトランスバースリンクは、車輪のガイドと操舵のために使用される。トランスバースリンクは、一方では車輪の支承装置との接続を築き、他方では車両のシャシーとの接続を築く。支承装置は、車輪支承部と駆動軸の他に、特に、旋回支承部(Schwenklager)、軸脚部との接続部およびガイドジョイント(Fuehrungsgelenk)、タイロッド、操縦のための他の要素、駆動装置、サスペンションおよび車両ブレーキを有している。
【0004】
車両の運転状態では、トランスバースリンクは多方面にわたる負荷にさらされる。したがって、車輪につき一つより多いトランスバースリンクが設けられることがしばしばである。トランスバースリンクの高い要求は、特に強固で頑丈な構造によって対処されることが可能である。しかしながらそのような構造は、しばしば大きな重量を伴い、これは高い燃料消費へと通ずる。
【0005】
重量面で最善のデザインは、特に高い強度の材料によってか、または様々な材料の組合せによって可能である。特に高い負荷がかかる支承部連結部分は、薄鋼板製のベースボディと接続される鋳造部品または切削部品(Fraesbauteilen)から成っている。ただしハイブリット構造は、個々の部材が互いにつなぎ合わされなければならないというデメリットを有しており、これは製造コスト上不利に働く。
【0006】
特にトランスバースリンクの耐久性と、これに伴う車両の安全性は、別の本質的なポイントであり、このポイントはトランスバースリンクの設計および製造の際に考慮されなければならない。ハイブリットトランスバースリンクの様々なコンポーネントの接続部分は、特に入念に形成されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、少ない重量と特に簡単な製造可能性を、同時に高い耐久性のもと有するトランスバースリンクを提供することである。さらにこのようなトランスバースリンクのコストが安価な製造方法が示されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の物としての(gegenstaendlich)部分は、請求項1に記載の特徴により解決される。
【0009】
この課題の方法技術に関する部分は、請求項5に記載の特徴により解決される。
【0010】
有利な実施バリエーションは、各従属請求項の構成要素である。
【0011】
一つの実施バリエーションでは、トランスバースリンクにおいて支承部分に支承部収容部が形成され、この支承部収容部は一部品としてトランスバースリンクとともに一つの製造ステップで製造される。支承部収容部は、収容開口部を有し、この開口部は、ベースボディ平面に対して基本的に直角に存在する一つの開口部平面内にある。その際、収容開口部は、これが断面において円形の輪郭を有するように形成され、この輪郭内に支承部が配置可能である。特に支承部は、収容開口部内にはめ込むことが可能である(einpressbar)。支承部収容部とともに一部品として製造された薄板部材は、コスト面で安価に製造可能であり、低い部材重量のもと高い耐久性を有する。
【0012】
自動車の軸に配置するためのトランスバースリンクの製造は、形成ツール中で行われ、その際トランスバースリンクは一部品の薄板部材として薄板プレートから製造される。トランスバースリンクは、ベースボディおよびこれと隣接する支承部分からなり、一つの支承部分には一つの支承部のための一つの支承部収容部が、薄板プレートの形成によって形成ツール中で製造される。支承部収容部は、開口部平面内にある収容開口部を備え、この収容開口部はベースボディ平面に対して基本的に垂直に存在している。
【0013】
有利な実施バリエーションでは、支承部分は二つの収容開口部を有し、これら収容開口部は、ある間隔で平行に直接(unmittelbar)向かい合っている。それぞれ一つの収容開口部を有する二つの支承部収容部によって、支承部による特に高い力の吸収が可能である。二つの支承部収容部は、力を、移行部分を介してトランスバースリンク内に導く。移行部分は、支承部分の更なる強化のために複数のくぼみ形状を有している。これらは例えば、条溝またはくぼみ部の形式で形成され、移行部分からベースボディ部分へと及んでいる。
【0014】
同様に、二つの支承部収容部の配置によって、連結部分におけるトランスバースリンクの改善された回転防止がもたらされる。平行かつ直接向かい合った収容開口部のもと、本発明の枠内において、軸対称の、つまり一列にならんだ収容開口部の配置がわかる。はめ込まれるべき支承部において、はめ込みキャップが、製造プロセスの間容易にはめ込まれる(einsetzen)ことができるよう、一列にならぶ収容開口部の前にあることは、特に重要である。軸対称であることは、その上さらに、支承部の位置決めのために需要である。特に有利な実施バリエーションでは、支承部収容部は更に、円形の内部輪郭を有する収容開口部を有する。はめ込まれる支承部は、例えば流体支承部(Hydrolager)またはエラストマー材からなる支承部である。この支承部は、支承部収容部の開口部平面のベースボディ平面に対する垂直な配置に基づいて、水平な組み込み方向で配置される。このようにトランスバースリンクと接続される支承部の回転方向は、基本的に、車両座標システム(Fahrzeugskoordinatensystem)のX軸とY軸によって張られる平面内にあり、その際、X軸は進行方向に向き、そしてY軸は進行方向に対して横切っている。トランスバースリンクの配置バリエーションと、これに伴い予め定められる回転方向に応じて、支承部の回転軸は、X/Y平面に対してもベースボディ平面に対しても、特に0°から60°のある角度に配置されている。この角度は可変である。
【0015】
好ましくは、収容開口部は、カラー部を有している。カラー部は、製造プロセスにおいて特に容易に製造可能である。カラー部は、好ましくは、ベースボディ部に向かう丸められた移行部分を備えている。これは、更に、支承部のはめ込みの際に、支承部のはめ込み過程のための中心軸合わせ補助として使用される。カラー部自体は、支承部収容部表面として使用される。ここで、一つの支承部を、外側にある支承部キャップによって(とともに)はめ込むということが想定可能であるが、しかしまたは、カラー部を相応して長く形成し、これ自体が支承部ブッシュとして使用されるということも想定可能である。
【0016】
二つの収容開口部のカラー部は、その際、好ましくは同じ方向を向いてか、または反対の方向を向いて配置されている。同じ方向に配置されたカラー部は、カラー部が、製造プロセスの間に一つの形成マンドレルによって製造可能であるというメリットを有している。同時に、位置決めと、これに伴う収容開口部の特に正確な軸対称性の保持が行われる。一列にならべて整列させるための独立した調整は省略することが出来る。反対の方向に配置されたカラー部においては、カラー部が内側を向いているとき、特にコンパクトな構造形式が実現可能である。収容部分に対して相対的に幅の広い支承部を収容するための、特に正確な支承部ガイドは、外側に向けられたカラー部によって実現可能である。
【0017】
本発明の別のメリットは、本課題の方法技術上の解決アプローチによって生じる。ここにおいて支承部収容部は、トランスバースリンクとともに一部品として薄板プレートの形成によって形成ツール内で製造される。これは特に、このように製造されたトランスバースリンクが特にコスト面で安価に製造可能であるというメリットを呈し、というのはこれが、その全形成プロセスのために一つのツール応力(Werkzeugspannung)のみしか必要としないからである。
【0018】
好ましくは、薄板プレートは、支承部分をつくり出すために二つの脚部を備えており、この脚部内に、支承部の収容のためのカラー部がもたらされる。この際、事前製造技術的な段階中で、収容開口部をもたらすために薄板プレートの打ち抜きが可能である。これはまず単に打ち抜くことが可能であるし、またはヘッド(Durchzug)を有する形成機械中で直接カラー部に形成することも可能である。
【0019】
一つの実施バリエーションでは、脚部は、形成ツールによって曲げられる。この際、トランスバースリンクは薄板プレートの一つのツール応力によって製造され、そして同時にこれとともに一部品に接続される支承部分が支承部収容部とともに製造される。ここに記載される方法においては、個々の支承部分を、それぞれ一つの収容開口部を有している二つの支承部収容部とともに製造することが重要である。曲げられた脚部によって、支承部分に基本的にU形状の断面が生じる。薄板部材の壁部厚さ(又は強度)は様々であり、よって部分によって異なることがある。
【0020】
本発明に係る方法の別の有利な実施形においては、支承部収容部の収容開口部が基本的に向かい合っているように、形成ツールまたは追加ツールが脚部を形成する。基本的に平行に向かい合った支承部収容部は、この方法ステップによって、支承部または支承部キャップをはめ込むための軸対称に存在する収容開口部を有する。形成ツールと今しがたもたらされた収容開口部またはカラー部によって脚部を形成する場合、位置ゲージによって、後から手を加える必要がある。形成ツールによって脚部を形成し、そして支承部収容部及びカラー部を追加ツールによってもたらす際、追加ツールはこの場合、位置ゲージに相当する。
【0021】
製造は、冷間形成および形成された薄板部材の引き続いての焼入れ焼き戻しによって行われることが可能であるが、熱間形成とプレス硬化(Presshaerten)によっても行われることができる。支承部収容部は、硬化プロセス中に移行部分を介してベースボディと一体に硬化される。トランスバースリンクの特に高い強度がこれによって図られる。
【0022】
本発明の別の利点、特徴、特性および観点は、以下の記載、簡略図に基づく有利な実施形から生じる。これらは本発明の簡単な理解に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】発明にかかるトランスバースリンクの斜視上面図
【図2】発明にかかる支承部収容部の軸対称な断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図中では、同じかまたは同様な部材に対しては、同一の参照符号が付されている。その際、繰り返しての説明が簡単の理由から省略されていたとしても、対応するかまたは比較可能なメリットが達成される。
【0025】
図1は、発明に係るトランスバースリンク1の上面斜視図を示す。このトランスバースリンクは、ベースボディ部分2と三つの支承部分3a,3b,3cを備えている。その際トランスバースリンク1は、本質的には二つのアーム4を備えており、これらアームは、図1中では図示されていないベースボディ平面を形成する(aufspannen)。このベースボディ平面内にトランスバースリンク1のベースボディ部分2が存在する。その際アーム4は、ここに表わされているように、ベースボディ部分2を補強し強化するための、条溝(Sicke)、くぼみ部または開口部を備えている。
【0026】
支承部分3a,3b,3cは、図平面内においてトランスバースリンク1の上側および左右側にある。左右の側にある支承部分3a,3b,3cは、例えば、ここでは図示されていないボールジョイントの収容に使用される。図版の上側の支承部分3cは、発明に従いトランスバースリンク1の形成プロセスによってつくり出される。支承部分3cは別体の部材でないものが取り扱われる。
【0027】
支承部分3cは、ここで現された実施例においては二つの支承部収容部5を備えている。これら支承部収容部5は、それぞれ円形の外部輪郭と円形の収容開口部6を有しており、これら収容開口部は、支承部の収容のために、円形の内部輪郭7を有している(図2)。支承部収容部5は、移行部分8を介してトランスバースリンク1のベースボディと接続されている。その際、移行部分8は、漏斗形状(trichterfoermig)にベースボディ部2から支承部分3へと広がっており、そして、その断面においては基本的にU形状を備えている。移行部分8のこの実施例は、支承力のベースボディ部2内への特に良好な力の吸収を可能とする、というのは漏斗形状の推移に基づいて応力ピークが発生しないからである。
【0028】
図2は、互いに間隔Aを置く二つの支承部収容部5を有する、図1に表わされた上側の支承部分3cの断面を示している。断面平面は、ベースボディ部2の視線方向からみて、支承部の回転軸内にある。ここでわかるのは、支承部分3c内に形成された収容開口部6は、カラー部9として形成されている点である。ここで示される実施例ではカラー部9は、反対方向の向きを有しており、その際カラー部9は互いに通じ合うように(zulaufend)形成されている。
【符号の説明】
【0029】
1 トランスバースリンク
2 ベースボディ部分
3a 支承部分
3b 支承部分
3c 支承部分
4 アーム
5 支承部収容部
6 収容開口部
7 内部輪郭
8 移行部分
9 カラー部


A 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の軸に配置するためのトランスバースリンク(1)であって、このトランスバースリンク(1)は一部品の薄板部材として薄板プレートから製造されており、かつこれに接して形成された三つの支承部分(3a,3b,3c)を有するベースボディ部分(2)を備えており、その際ベースボディ部分(2)が二つのアーム(4)を備え、かつベースボディ平面がアーム(4)によって形成されている前記トランスバースリンク(1)において、
一つの支承部分(3c)が、二つの収容開口部(6)を備える支承部収容部(5)を有し、収容開口部(6)がそれぞれ一つの開口部平面内にあり、そしてこれら開口部平面が互いに間隔(A)を有しており、かつベースボディ平面に対して基本的に垂直であることを特徴とする前記トランスバースリンク。
【請求項2】
収容開口部(6)が、円形の内部輪郭(7)を備えることを特徴とする請求項1に記載のトランスバースリンク。
【請求項3】
収容開口部(6)が、カラー部(9)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
カラー部(9)が、同じ方向または反対の方向に向けられて配置されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
自動車の軸に配置するためのトランスバースリンク(1)を製造するための方法であって、このトランスバースリンク(1)が一部品の薄板部材として薄板プレートから製造され、そしてトランスバースリンク(1)は、ベースボディとこれに接する支承部分(3a,3b,3c)からなり、かつ一つの支承部分(3c)に、一つの支承部のための支承部収容部(5)が薄板プレートの形成によって形成ツール内で製造され、その際、支承部収容部(5)が、それぞれ一つの開口平面内にある二つの収容開口部(6)を備え、その際、開口平面が互いに間隔(A)を有し、ベースボディ平面に対して基本的に垂直であることを特徴とする前記方法。
【請求項6】
収容部をつくり出すための薄板プレートが、支承部分(3c)に二つの脚部を備え、この脚部内に支承部を収容するためのカラー部(9)がもたらされることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
脚部が、形成ツールによって曲げられることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
形成ツールまたは追加ツールが脚部を形成し、支承部収容部(5)の収容開口部(6)が基本的に平行に向かい合っていることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
形成が、引き続く焼入れ焼き戻しを伴う冷間形成によって行われるか、またはプレス硬化による熱間形成によって行われることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
支承部収容部(5)の形成が、薄板部材が形成ツールのツール応力中にある間に、追加ツールによって行われることを特徴とする請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−162188(P2011−162188A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26848(P2011−26848)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】