トランスポンダ送信信号2値化処理装置及びトランスポンダ送信信号2値化処理方法
【課題】簡易的且つ長期間にわたって正確な2値化処理を行うことを可能とする。
【解決手段】
応答信号のLOGビデオ信号を増幅するアンプ13と、増幅されたLOGビデオ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部14と、デジタル変換された信号に対して一次信号補正処理を行う一次信号補正処理部15と、一次信号補正処理がなされた信号に対して2値化処理を行う2値化処理部16とを設ける。
【解決手段】
応答信号のLOGビデオ信号を増幅するアンプ13と、増幅されたLOGビデオ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部14と、デジタル変換された信号に対して一次信号補正処理を行う一次信号補正処理部15と、一次信号補正処理がなされた信号に対して2値化処理を行う2値化処理部16とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスポンダから送信された信号を受信し、これに対して2値化処理を行うためのトランスポンダ送信信号2値化処理装置及びトランスポンダ送信信号2値化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制に使用される航空機監視用レーダは、一次監視レーダ(PSR:Primary Surveillance Radar)と二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)とに大別される。
【0003】
上記のPSRは、地上から電波を発し、これの反射波を受信処理することにより航空機の位置情報を取得するものである。
【0004】
一方、SSRは、航空機に搭載されたトランスポンダに質問信号を送信し、これに対する応答信号(トランスポンダ送信信号)を受信することにより航空機に関する各種情報を得るものである。
【0005】
なお、このSSRは、得ようとする情報の種別によりモードA、モードCに分類され、モードAは航空機の識別情報を得るためのものであり、モードCは高度情報を得るためのものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
また、以降の説明においては、上記のモードAとモードCを“モードA/C”と総称する。
【非特許文献1】Michael C. Stevens “Secondary Surveillance Radar” 1998, ISBN 0-89006-292-7.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のSSRにおいては、トランスポンダから送信された応答信号を地上に設置されたアンテナにより受信し、信号処理部により2値化する。
【0008】
この信号処理部2は、図10に示すように、アンプ101、ディレイライン102、立ち上がり/立ち下がり検出回路103、ピークホールド回路104、閾値設定回路105、レベル比較回路106からなる。
【0009】
なお、アンプ101に入力されるLOGビデオ信号(RF信号)のパルス幅は一定であるものの信号振幅は地上局と航空機の距離等により大きく変動する
このため、モードA/Cにおける2値化処理においては、前記の振幅の変動を吸収し、常に一定振幅の2値化値(“0”また“1”)を得る必要があり、これにあたっては、検出回路103によりLOGビデオ信号の立ち上がり/立ち下がり点及びピーク値を検出し、このピーク値からの一定の値(一般的には6dB)を減じた値を閾値とし、レベル比較後の値を2値化値とする。
【0010】
しかしながら、上記の処理はアナログ処理であり、信号処理部2の大型化を招いている。
【0011】
また、LOGビデオ信号のノイズや素子の変動等により装置自体の調整が必要であり、設計段階においても経年変化により性能の悪化を考慮する必要がある。
【0012】
このような事情に鑑み本発明は、簡易的且つ長期間にわたって正確な2値化処理を行うことが可能なトランスポンダ送信信号2値化処理装置及びトランスポンダ送信信号2値化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダから送信されたモードA/Cトランスポンダ送信信号を受信し、これに対して2値化処理を行うためのトランスポンダ送信信号2値化処理装置であって、トランスポンダ送信号を増幅する増幅手段と、増幅された信号をデジタル変換するデジタル変換手段と、デジタル化された信号に基づいてオフセット値を決定するオフセット値決定手段と、航空機との距離に応じた補正値を決定する補正値決定手段と、オフセット値と補正値とをデジタル化された信号に加算する加算手段と、加算処理がなされたデジタル信号からノイズを除去するノイズ除去手段と、ノイズが除去されたデジタル信号に対して遅延処理を施す遅延処理手段と、遅延処理がなされたデジタル信号に基づいてピーク値を決定するピーク値決定手段と、遅延処理がなされたデジタル信号の立ち上がり及び立ち下がりを検出する検出手段と、ピーク値と検出手段の検出結果に基づいて閾値を決定する閾値決定手段と、遅延処理がなされたデジタル信号と閾値とを比較することにより2値化処理を行う2値化処理実行手段とを有することを要旨とする。
【0014】
請求項2に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダから送信されたモードA/Cトランスポンダ送信信号を受信し、これに対して2値化処理を行うためのトランスポンダ送信信号2値化処理方法であって、トランスポンダ送信号を増幅する増幅工程と、増幅された信号をデジタル変換するデジタル変換工程と、デジタル化された信号に基づいてオフセット値を決定するオフセット値決定工程と、航空機との距離に応じた補正値を決定する補正値決定工程と、オフセット値と補正値とをデジタル化された信号に加算する加算工程と、加算処理がなされたデジタル信号からノイズを除去するノイズ除去工程と、ノイズが除去されたデジタル信号に対して遅延処理を施す遅延処理工程と、遅延処理がなされたデジタル信号に基づいてピーク値を決定するピーク値決定工程と、遅延処理がなされたデジタル信号の立ち上がり及び立ち下がりを検出する検出工程と、ピーク値と検出工程の検出結果に基づいて閾値を決定する閾値決定工程と、遅延処理がなされたデジタル信号と閾値とを比較することにより2値化処理を行う2値化処理実行工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易的且つ長期間にわたって正確な2値化処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を提示しつつ本発明のトランスポンダ送信信号2値化処理装置及びトランスポンダ送信信号2値化処理方法について説明する。
なお、以下の実施例は、あくまでも本発明の説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素又は全要素を含んだ各種の実施例を採用することが可能であるが、これらの実施例も本発明の範囲に含まれる。
また、以下の実施例を説明するための全図において、同一の要素には同一の符号を付与し、これに関する反復説明は省略する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例に係るSSR(二次監視レーダ)システム1の構成図である。このSSRシステム1は、航空機2に搭載されるトランスポンダ3及びアンテナ6と、地上に設置されるインタロゲータ7及び水平方向に360°回転可能に構成されたアンテナ10とからなる。
【0018】
トランスポンダ3は、アンテナ6に接続された送受信部4と、これに接続された信号処理部5とからなり、インタロゲータ7は、アンテナ10に接続された送受信部8と、これに接続された信号処理部(2値化処理部)9からなる。なお、本図においては、ユーザによる操作や各種情報の表示等を行うためのインタフェース部などの記載は省略している。
【0019】
モードA/C質問信号11は、送受信部8及びアンテナ10により送信され、これを受信したトランスポンダ3は、これに対するモードA/C応答信号12(トランスポンダ送信信号)を送信し、この応答信号12は、アンテナ10及び送受信部8により受信され、信号処理部9により2値化処理される。
【0020】
図2は、図1の信号処理部9の構成図である。この信号処理部は、アンプ13、A/D変換部14、一次信号補正処理部15、プログラマブル・デバイス化された2値化処理部16からなる。
【0021】
アンプ13は、図1の送受信部8により受信された応答信号12のLOGビデオ信号(RF信号)を増幅する。
【0022】
A/D変換部14は、増幅されたLOGビデオ信号をデジタル信号に変換する。
【0023】
一次信号補正処理部15は、デジタル変換された信号に対して一次信号補正処理を行う。なお、この一次信号補正処理については後述する。
【0024】
2値化処理部16は、一次信号補正処理がなされた信号に対して2値化処理を行う。なお、この2値化処理の詳細については後述する。
【0025】
図3は、図2の一次信号補正処理部の構成図である。この一次信号補正処理部15は、オフセット測定部17、選択器18、加算器19、20及び21、FIRフィルタ部22からなる。
【0026】
オフセット測定部17には、A/D変換部14によりデジタル化されたLOGビデオ信号(図4にこの際<図中のA>の波形を示す)の一系統が入力される。また、質問信号11の受信および応答信号の送信のスケジュールに基づいて、応答信号12が受信されない期間(例えば、質問信号11の送信時)にデータのサンプリングを行い、その平均値を受信からA/D変換までの測定オフセット値とする。
【0027】
選択器18は、上記のオフセット値に基づいて自動調整を行うか否かをユーザが設定するためのものである。つまり、自動オフセット調整を有効にした場合は前記のオフセット値が設定され、一方、自動オフセット調整を有効にした場合は、値が“0”となる。
【0028】
加算器19は、外部から直接的にオフセット値を設定するためのものである。つまり、外部設定のノイズオフセット値を“0”以外とすると、その値が反映される。
【0029】
加算器20は、上記の処理において決定されたオフセット値にSTCを加算する。これにより航空機2とアンテナ10の距離に応じたレベル補正が行われる。なお、ここで算出された値が最終的な補正値となる。
【0030】
加算器21は、もう一系統のLOGビデオ信号に前記の最終的な補正値を加算する。これにより、LOGビデオ信号のオフセットノイズ成分及びSTCによるレンジ補正が行われる。なお、図5は、図3のBにおける波形、つまり補正値が加算される前の波形を示し、図6は、図3のCにおける波形、つまり補正値が加算された後の波形を示している。
【0031】
FIRフィルタ部22は、補正されたLOGビデオ信号からインパルス系ノイズを除去する。なお、図7は、図3のDにおける波形、つまり、インパルス系ノイズが除去された波形を示す図である。
【0032】
以上の処理を経たLOGビデオ信号は、2値化処理部16に送られる。
【0033】
図8は、図2の2値化処理部16の構成図である。この2値化処理部16は、3点微分検索法により2値化を行うものであり、シフトレジスタ部23、減算器24、25、26及び29、検出部27、平均処理部28、閾値選択部30、レベル比較部31からなる。
【0034】
シフトレジスタ部23は、12個のフリップ・フロップ回路からなり、入力されたLOGビデオ信号に遅延処理を施す。
【0035】
減算器24は、シフトレジスタ部23の最新サンプルポイントの微分値(ΔV1)は算出する。
【0036】
減算器25及び26は、シフトレジスタ部23の中間遅延ポイントの微分値(ΔV2及びΔV3)を算出する。
【0037】
検出部27は、ΔV1<K1且つΔV2>K2且つΔV3>K2の条件にて立ち上がり及びピークを検出する。
【0038】
なお、上記のK1はピークの検定数を指し、K2は立ち上がり/立ち下がりの検出定数を指す。
【0039】
上記の条件は、最新サンプルポイントの信号傾斜が小であり、それ以前の2箇所のサンプルポイントの信号傾斜が増加していることを意味し、検出部27はこの条件を満たすポイントが立ち上がりのピークであると判定する。
【0040】
また、検出部27は、ΔV1<K1且つ−ΔV2>K2且つ−ΔV3>K2の条件にて立ち下がりを検出する。
【0041】
また、K1及びK2は変更可能であり、これによりデジタル的に検出性能の調整が可能となる。
【0042】
平均処理部28は、シフトレジスタ部23の最新サンプルポイントの値と、その前の値とを平均化する。
【0043】
減算器29は、上記の平均値(Vpk)から16dBを減じる。
【0044】
閾値選択部30は、ピークが検出されると、真の閾値をVthpkに定め、立ち下がりが検出された際には、閾値をリセットし、これに代えて量子化ビット数の最大値が設定される。この場合、2値化の結果は常に“0”となり、それ以外はVthの値が保持される。
【0045】
レベル比較部31は、シフトレジスタ部23の最大遅延データ(V11)と、閾値選択部30から出力された閾値とを比較し、これにより2値化データを生成し、出力する。
【0046】
なお、図9は、上記の2値化処理のタイミングを示す図である。
【0047】
また、本実施例においては、LOGビデオ信号をアンプ13により増幅しているため、立ち上がり/立ち下がりの曲線が滑らかであり、上記の装置の構成もそれに適応したものとなっている。
【0048】
この一例としては、シフトレジスタ部23の段数(本実施例では11)、サンプルポイント数(本実施例では2)が挙げられる。
【0049】
本実施例においては、FFのクロックが40MHzで、ピークまでの信号傾斜が150ns前後であることを想定している。
【0050】
このため、シフトレジスタ部23の段数は信号傾斜の全ての部分をサンプリングできる数
となっており、急峻なエッジの語検出を防止するためにサンプル数を2点としている。
【0051】
以上のとおり、本発明においては、LOGビデオ信号をデジタル化し、2値化処理をデジタル信号処理により行うため、装置の簡略化及び小型化を実現でき、耐久性も付与できる。
【0052】
また、2値化処理において3点検索微分法を用いるため、LOGビデオ信号の特性に適合したリーディングエッジ検出を行うことができる。
【0053】
また、各種パラメータもデジタル化されているため、調整作業も簡略化でき、再現性の高い2値化処理を行うことができる。
【0054】
なお、上記のような装置を用いるトランスポンダ送信信号2値化処理方法も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例に係る二次監視レーダシステムの構成を示す図である。
【図2】図1の信号処理部の構成図である。
【図3】図2の一次信号補正処理部の構成図である。
【図4】図3のAにおける信号波形を示す図である。
【図5】図3のBにおける信号波形を示す図である。
【図6】図3のCにおける信号波形を示す図である。
【図7】図3のDにおける信号波形を示す図である。
【図8】図2の2値化処理部の構成図である。
【図9】2値化処理のタイミングを示す図である。
【図10】従来の信号処理部の構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1…SSR(二次監視レーダ)システム、2…航空機、3…トランスポンダ、4…送受信部、5…信号処理部、6…アンテナ、7…インタロゲータ、8…送受信部、9…信号処理部、10…アンテナ、11…質問信号、12…応答信号、13…アンプ、14…A/D変換部、15…一次信号補正処理部、16…2値化処理部、17…オフセット測定部、18…選択器、19…加算器、20…加算器、21…加算器、22…FIRフィルタ部、23…シフトレジスタ部、24…減算器、25…減算器、26…減算器、27…検出部、28…平均処理部、29…減算器、30…閾値選択部、31…レベル比較部
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスポンダから送信された信号を受信し、これに対して2値化処理を行うためのトランスポンダ送信信号2値化処理装置及びトランスポンダ送信信号2値化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制に使用される航空機監視用レーダは、一次監視レーダ(PSR:Primary Surveillance Radar)と二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)とに大別される。
【0003】
上記のPSRは、地上から電波を発し、これの反射波を受信処理することにより航空機の位置情報を取得するものである。
【0004】
一方、SSRは、航空機に搭載されたトランスポンダに質問信号を送信し、これに対する応答信号(トランスポンダ送信信号)を受信することにより航空機に関する各種情報を得るものである。
【0005】
なお、このSSRは、得ようとする情報の種別によりモードA、モードCに分類され、モードAは航空機の識別情報を得るためのものであり、モードCは高度情報を得るためのものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
また、以降の説明においては、上記のモードAとモードCを“モードA/C”と総称する。
【非特許文献1】Michael C. Stevens “Secondary Surveillance Radar” 1998, ISBN 0-89006-292-7.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のSSRにおいては、トランスポンダから送信された応答信号を地上に設置されたアンテナにより受信し、信号処理部により2値化する。
【0008】
この信号処理部2は、図10に示すように、アンプ101、ディレイライン102、立ち上がり/立ち下がり検出回路103、ピークホールド回路104、閾値設定回路105、レベル比較回路106からなる。
【0009】
なお、アンプ101に入力されるLOGビデオ信号(RF信号)のパルス幅は一定であるものの信号振幅は地上局と航空機の距離等により大きく変動する
このため、モードA/Cにおける2値化処理においては、前記の振幅の変動を吸収し、常に一定振幅の2値化値(“0”また“1”)を得る必要があり、これにあたっては、検出回路103によりLOGビデオ信号の立ち上がり/立ち下がり点及びピーク値を検出し、このピーク値からの一定の値(一般的には6dB)を減じた値を閾値とし、レベル比較後の値を2値化値とする。
【0010】
しかしながら、上記の処理はアナログ処理であり、信号処理部2の大型化を招いている。
【0011】
また、LOGビデオ信号のノイズや素子の変動等により装置自体の調整が必要であり、設計段階においても経年変化により性能の悪化を考慮する必要がある。
【0012】
このような事情に鑑み本発明は、簡易的且つ長期間にわたって正確な2値化処理を行うことが可能なトランスポンダ送信信号2値化処理装置及びトランスポンダ送信信号2値化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダから送信されたモードA/Cトランスポンダ送信信号を受信し、これに対して2値化処理を行うためのトランスポンダ送信信号2値化処理装置であって、トランスポンダ送信号を増幅する増幅手段と、増幅された信号をデジタル変換するデジタル変換手段と、デジタル化された信号に基づいてオフセット値を決定するオフセット値決定手段と、航空機との距離に応じた補正値を決定する補正値決定手段と、オフセット値と補正値とをデジタル化された信号に加算する加算手段と、加算処理がなされたデジタル信号からノイズを除去するノイズ除去手段と、ノイズが除去されたデジタル信号に対して遅延処理を施す遅延処理手段と、遅延処理がなされたデジタル信号に基づいてピーク値を決定するピーク値決定手段と、遅延処理がなされたデジタル信号の立ち上がり及び立ち下がりを検出する検出手段と、ピーク値と検出手段の検出結果に基づいて閾値を決定する閾値決定手段と、遅延処理がなされたデジタル信号と閾値とを比較することにより2値化処理を行う2値化処理実行手段とを有することを要旨とする。
【0014】
請求項2に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダから送信されたモードA/Cトランスポンダ送信信号を受信し、これに対して2値化処理を行うためのトランスポンダ送信信号2値化処理方法であって、トランスポンダ送信号を増幅する増幅工程と、増幅された信号をデジタル変換するデジタル変換工程と、デジタル化された信号に基づいてオフセット値を決定するオフセット値決定工程と、航空機との距離に応じた補正値を決定する補正値決定工程と、オフセット値と補正値とをデジタル化された信号に加算する加算工程と、加算処理がなされたデジタル信号からノイズを除去するノイズ除去工程と、ノイズが除去されたデジタル信号に対して遅延処理を施す遅延処理工程と、遅延処理がなされたデジタル信号に基づいてピーク値を決定するピーク値決定工程と、遅延処理がなされたデジタル信号の立ち上がり及び立ち下がりを検出する検出工程と、ピーク値と検出工程の検出結果に基づいて閾値を決定する閾値決定工程と、遅延処理がなされたデジタル信号と閾値とを比較することにより2値化処理を行う2値化処理実行工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易的且つ長期間にわたって正確な2値化処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を提示しつつ本発明のトランスポンダ送信信号2値化処理装置及びトランスポンダ送信信号2値化処理方法について説明する。
なお、以下の実施例は、あくまでも本発明の説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素又は全要素を含んだ各種の実施例を採用することが可能であるが、これらの実施例も本発明の範囲に含まれる。
また、以下の実施例を説明するための全図において、同一の要素には同一の符号を付与し、これに関する反復説明は省略する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例に係るSSR(二次監視レーダ)システム1の構成図である。このSSRシステム1は、航空機2に搭載されるトランスポンダ3及びアンテナ6と、地上に設置されるインタロゲータ7及び水平方向に360°回転可能に構成されたアンテナ10とからなる。
【0018】
トランスポンダ3は、アンテナ6に接続された送受信部4と、これに接続された信号処理部5とからなり、インタロゲータ7は、アンテナ10に接続された送受信部8と、これに接続された信号処理部(2値化処理部)9からなる。なお、本図においては、ユーザによる操作や各種情報の表示等を行うためのインタフェース部などの記載は省略している。
【0019】
モードA/C質問信号11は、送受信部8及びアンテナ10により送信され、これを受信したトランスポンダ3は、これに対するモードA/C応答信号12(トランスポンダ送信信号)を送信し、この応答信号12は、アンテナ10及び送受信部8により受信され、信号処理部9により2値化処理される。
【0020】
図2は、図1の信号処理部9の構成図である。この信号処理部は、アンプ13、A/D変換部14、一次信号補正処理部15、プログラマブル・デバイス化された2値化処理部16からなる。
【0021】
アンプ13は、図1の送受信部8により受信された応答信号12のLOGビデオ信号(RF信号)を増幅する。
【0022】
A/D変換部14は、増幅されたLOGビデオ信号をデジタル信号に変換する。
【0023】
一次信号補正処理部15は、デジタル変換された信号に対して一次信号補正処理を行う。なお、この一次信号補正処理については後述する。
【0024】
2値化処理部16は、一次信号補正処理がなされた信号に対して2値化処理を行う。なお、この2値化処理の詳細については後述する。
【0025】
図3は、図2の一次信号補正処理部の構成図である。この一次信号補正処理部15は、オフセット測定部17、選択器18、加算器19、20及び21、FIRフィルタ部22からなる。
【0026】
オフセット測定部17には、A/D変換部14によりデジタル化されたLOGビデオ信号(図4にこの際<図中のA>の波形を示す)の一系統が入力される。また、質問信号11の受信および応答信号の送信のスケジュールに基づいて、応答信号12が受信されない期間(例えば、質問信号11の送信時)にデータのサンプリングを行い、その平均値を受信からA/D変換までの測定オフセット値とする。
【0027】
選択器18は、上記のオフセット値に基づいて自動調整を行うか否かをユーザが設定するためのものである。つまり、自動オフセット調整を有効にした場合は前記のオフセット値が設定され、一方、自動オフセット調整を有効にした場合は、値が“0”となる。
【0028】
加算器19は、外部から直接的にオフセット値を設定するためのものである。つまり、外部設定のノイズオフセット値を“0”以外とすると、その値が反映される。
【0029】
加算器20は、上記の処理において決定されたオフセット値にSTCを加算する。これにより航空機2とアンテナ10の距離に応じたレベル補正が行われる。なお、ここで算出された値が最終的な補正値となる。
【0030】
加算器21は、もう一系統のLOGビデオ信号に前記の最終的な補正値を加算する。これにより、LOGビデオ信号のオフセットノイズ成分及びSTCによるレンジ補正が行われる。なお、図5は、図3のBにおける波形、つまり補正値が加算される前の波形を示し、図6は、図3のCにおける波形、つまり補正値が加算された後の波形を示している。
【0031】
FIRフィルタ部22は、補正されたLOGビデオ信号からインパルス系ノイズを除去する。なお、図7は、図3のDにおける波形、つまり、インパルス系ノイズが除去された波形を示す図である。
【0032】
以上の処理を経たLOGビデオ信号は、2値化処理部16に送られる。
【0033】
図8は、図2の2値化処理部16の構成図である。この2値化処理部16は、3点微分検索法により2値化を行うものであり、シフトレジスタ部23、減算器24、25、26及び29、検出部27、平均処理部28、閾値選択部30、レベル比較部31からなる。
【0034】
シフトレジスタ部23は、12個のフリップ・フロップ回路からなり、入力されたLOGビデオ信号に遅延処理を施す。
【0035】
減算器24は、シフトレジスタ部23の最新サンプルポイントの微分値(ΔV1)は算出する。
【0036】
減算器25及び26は、シフトレジスタ部23の中間遅延ポイントの微分値(ΔV2及びΔV3)を算出する。
【0037】
検出部27は、ΔV1<K1且つΔV2>K2且つΔV3>K2の条件にて立ち上がり及びピークを検出する。
【0038】
なお、上記のK1はピークの検定数を指し、K2は立ち上がり/立ち下がりの検出定数を指す。
【0039】
上記の条件は、最新サンプルポイントの信号傾斜が小であり、それ以前の2箇所のサンプルポイントの信号傾斜が増加していることを意味し、検出部27はこの条件を満たすポイントが立ち上がりのピークであると判定する。
【0040】
また、検出部27は、ΔV1<K1且つ−ΔV2>K2且つ−ΔV3>K2の条件にて立ち下がりを検出する。
【0041】
また、K1及びK2は変更可能であり、これによりデジタル的に検出性能の調整が可能となる。
【0042】
平均処理部28は、シフトレジスタ部23の最新サンプルポイントの値と、その前の値とを平均化する。
【0043】
減算器29は、上記の平均値(Vpk)から16dBを減じる。
【0044】
閾値選択部30は、ピークが検出されると、真の閾値をVthpkに定め、立ち下がりが検出された際には、閾値をリセットし、これに代えて量子化ビット数の最大値が設定される。この場合、2値化の結果は常に“0”となり、それ以外はVthの値が保持される。
【0045】
レベル比較部31は、シフトレジスタ部23の最大遅延データ(V11)と、閾値選択部30から出力された閾値とを比較し、これにより2値化データを生成し、出力する。
【0046】
なお、図9は、上記の2値化処理のタイミングを示す図である。
【0047】
また、本実施例においては、LOGビデオ信号をアンプ13により増幅しているため、立ち上がり/立ち下がりの曲線が滑らかであり、上記の装置の構成もそれに適応したものとなっている。
【0048】
この一例としては、シフトレジスタ部23の段数(本実施例では11)、サンプルポイント数(本実施例では2)が挙げられる。
【0049】
本実施例においては、FFのクロックが40MHzで、ピークまでの信号傾斜が150ns前後であることを想定している。
【0050】
このため、シフトレジスタ部23の段数は信号傾斜の全ての部分をサンプリングできる数
となっており、急峻なエッジの語検出を防止するためにサンプル数を2点としている。
【0051】
以上のとおり、本発明においては、LOGビデオ信号をデジタル化し、2値化処理をデジタル信号処理により行うため、装置の簡略化及び小型化を実現でき、耐久性も付与できる。
【0052】
また、2値化処理において3点検索微分法を用いるため、LOGビデオ信号の特性に適合したリーディングエッジ検出を行うことができる。
【0053】
また、各種パラメータもデジタル化されているため、調整作業も簡略化でき、再現性の高い2値化処理を行うことができる。
【0054】
なお、上記のような装置を用いるトランスポンダ送信信号2値化処理方法も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例に係る二次監視レーダシステムの構成を示す図である。
【図2】図1の信号処理部の構成図である。
【図3】図2の一次信号補正処理部の構成図である。
【図4】図3のAにおける信号波形を示す図である。
【図5】図3のBにおける信号波形を示す図である。
【図6】図3のCにおける信号波形を示す図である。
【図7】図3のDにおける信号波形を示す図である。
【図8】図2の2値化処理部の構成図である。
【図9】2値化処理のタイミングを示す図である。
【図10】従来の信号処理部の構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1…SSR(二次監視レーダ)システム、2…航空機、3…トランスポンダ、4…送受信部、5…信号処理部、6…アンテナ、7…インタロゲータ、8…送受信部、9…信号処理部、10…アンテナ、11…質問信号、12…応答信号、13…アンプ、14…A/D変換部、15…一次信号補正処理部、16…2値化処理部、17…オフセット測定部、18…選択器、19…加算器、20…加算器、21…加算器、22…FIRフィルタ部、23…シフトレジスタ部、24…減算器、25…減算器、26…減算器、27…検出部、28…平均処理部、29…減算器、30…閾値選択部、31…レベル比較部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に搭載されるトランスポンダから送信されたモードA/Cトランスポンダ送信信号を受信し、これに対して2値化処理を行うためのトランスポンダ送信信号2値化処理装置であって、
前記トランスポンダ送信号を増幅する増幅手段と、
増幅された信号をデジタル変換するデジタル変換手段と、
デジタル化された信号に基づいてオフセット値を決定するオフセット値決定手段と、
前記航空機との距離に応じた補正値を決定する補正値決定手段と、
前記オフセット値と前記補正値とをデジタル化された信号に加算する加算手段と、
加算処理がなされたデジタル信号からノイズを除去するノイズ除去手段と、
ノイズが除去されたデジタル信号に対して遅延処理を施す遅延処理手段と、
前記遅延処理がなされたデジタル信号に基づいてピーク値を決定するピーク値決定手段と、
前記遅延処理がなされたデジタル信号の立ち上がり及び立ち下がりを検出する検出手段と、
前記ピーク値と前記検出手段の検出結果に基づいて閾値を決定する閾値決定手段と、
遅延処理がなされたデジタル信号と前記閾値とを比較することにより2値化処理を行う2値化処理実行手段と
を有することを特徴とするトランスポンダ送信信号2値化処理装置。
【請求項2】
航空機に搭載されるトランスポンダから送信されたモードA/Cトランスポンダ送信信号を受信し、これに対して2値化処理を行うためのトランスポンダ送信信号2値化処理方法であって、
前記トランスポンダ送信号を増幅する増幅工程と、
増幅された信号をデジタル変換するデジタル変換工程と、
デジタル化された信号に基づいてオフセット値を決定するオフセット値決定工程と、
前記航空機との距離に応じた補正値を決定する補正値決定工程と、
前記オフセット値と前記補正値とをデジタル化された信号に加算する加算工程と、
加算処理がなされたデジタル信号からノイズを除去するノイズ除去工程と、
ノイズが除去されたデジタル信号に対して遅延処理を施す遅延処理工程と、
前記遅延処理がなされたデジタル信号に基づいてピーク値を決定するピーク値決定工程と、
前記遅延処理がなされたデジタル信号の立ち上がり及び立ち下がりを検出する検出工程と、
前記ピーク値と前記検出工程の検出結果に基づいて閾値を決定する閾値決定工程と、
遅延処理がなされたデジタル信号と前記閾値とを比較することにより2値化処理を行う2値化処理実行工程と
を有することを特徴とするトランスポンダ送信信号2値化処理方法。
【請求項1】
航空機に搭載されるトランスポンダから送信されたモードA/Cトランスポンダ送信信号を受信し、これに対して2値化処理を行うためのトランスポンダ送信信号2値化処理装置であって、
前記トランスポンダ送信号を増幅する増幅手段と、
増幅された信号をデジタル変換するデジタル変換手段と、
デジタル化された信号に基づいてオフセット値を決定するオフセット値決定手段と、
前記航空機との距離に応じた補正値を決定する補正値決定手段と、
前記オフセット値と前記補正値とをデジタル化された信号に加算する加算手段と、
加算処理がなされたデジタル信号からノイズを除去するノイズ除去手段と、
ノイズが除去されたデジタル信号に対して遅延処理を施す遅延処理手段と、
前記遅延処理がなされたデジタル信号に基づいてピーク値を決定するピーク値決定手段と、
前記遅延処理がなされたデジタル信号の立ち上がり及び立ち下がりを検出する検出手段と、
前記ピーク値と前記検出手段の検出結果に基づいて閾値を決定する閾値決定手段と、
遅延処理がなされたデジタル信号と前記閾値とを比較することにより2値化処理を行う2値化処理実行手段と
を有することを特徴とするトランスポンダ送信信号2値化処理装置。
【請求項2】
航空機に搭載されるトランスポンダから送信されたモードA/Cトランスポンダ送信信号を受信し、これに対して2値化処理を行うためのトランスポンダ送信信号2値化処理方法であって、
前記トランスポンダ送信号を増幅する増幅工程と、
増幅された信号をデジタル変換するデジタル変換工程と、
デジタル化された信号に基づいてオフセット値を決定するオフセット値決定工程と、
前記航空機との距離に応じた補正値を決定する補正値決定工程と、
前記オフセット値と前記補正値とをデジタル化された信号に加算する加算工程と、
加算処理がなされたデジタル信号からノイズを除去するノイズ除去工程と、
ノイズが除去されたデジタル信号に対して遅延処理を施す遅延処理工程と、
前記遅延処理がなされたデジタル信号に基づいてピーク値を決定するピーク値決定工程と、
前記遅延処理がなされたデジタル信号の立ち上がり及び立ち下がりを検出する検出工程と、
前記ピーク値と前記検出工程の検出結果に基づいて閾値を決定する閾値決定工程と、
遅延処理がなされたデジタル信号と前記閾値とを比較することにより2値化処理を行う2値化処理実行工程と
を有することを特徴とするトランスポンダ送信信号2値化処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−10365(P2007−10365A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188835(P2005−188835)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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