説明

トランス及び放電灯点灯装置

【課題】コアの電位を効果的に検出可能なトランスを提供する。
【解決手段】保持部Fは、コア11を保持するとともに、平板電極131,132とコア11の間に所定の結合容量が発生するように、平板電極131,132を、コア11の表面に非接触で対向させた状態に保持する。外部接続端子142は、平板電極131,132と電気的に接続され、外部に露出している。コア11と平板電極131,132は非接触であるから、コア11の電位が低くなることはない。したがって、トランスの2次側巻線N2の端子の一方が接地されている不平衡回路においても、コアの電位に基づいて異常状態を検出することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に液晶パネルのバックライトに用いられるトランス及び放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、液晶板の背後から冷陰極管等の放電灯により光を照射することによって画像を映し出す。放電灯を点灯するための放電灯点灯装置は、一般には、電源からの直流電圧をインバータと昇圧トランスにより高圧(例えば、1500V)の交流電圧に変圧し、この交流電圧を放電灯の電極に供給することによって放電灯を点灯させる。このような放電灯点灯装置の多くは、作業員が感電しないように、電圧値の異常などを検出して交流電圧の発生を停止させるための保護回路を備えている。
【0003】
例えば、特許文献1では、インバータに備えられたトランスのコアの電位を検出し、この電位が所定値以上のときに、トランスの2次側に異常が発生したと判断し、交流電圧の出力を停止する保護回路を備えた放電灯駆動用の高周波電源装置が開示されている。この電源装置では、1次側での電流検出を行なわず、コアの電位を検出するようにしたから、負荷側(放電灯側)の異常を確実に検出できるとされている。しかし、この高周波電源装置では、以下のような理由から上記のコアの電位を効果的に検出できず、ひいては、負荷側の異常を効果的に検出できないという問題が存在する。
【0004】
第一に、上記のコアは、電位検出用の抵抗を介して接地されており、その電位が低くなってしまうから、2次側巻線の両端子とコアの間の電圧バランスが崩れているようなトランスの2次側巻線の端子の一方が接地されている不平衡回路の異常状態を検出することは不可能である。
【0005】
第二に、トランスの2次側巻線に発生した高電圧がコアに放電されたとき、上記の抵抗に大きな負荷がかかって故障する可能性がある。特許文献1には定格1/2(W)で抵抗値10(kΩ)の抵抗が例示されており、例えば、2(kV)の高電圧がコアに放電されたとすると、この抵抗に発生する損失は、(2k)2/10k=400(W)であって、定格値をはるかに上回る値となるからである。
【0006】
第三に、コアが1次側巻線又は回路のGNDパタンと近づいたり、あるいは接触してショートすることによって、コアとGNDの間のインピーダンスが上記の抵抗よりも低くなってしまう可能性があるから、抵抗において電位を正常に検出できなくなる場合が考えられる。
【0007】
第四に、コアと上記の抵抗を電気的に接続するにあたり、コアの固定用金具とリードピンを導電性テープにより機械的に繋いでいるから、衝撃や振動を受けたときにコアと抵抗の導通が影響を受け、上記の抵抗において電位を正常に検出できなくなる場合が考えられる。
【特許文献1】特開平9−215342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、コアの電位を効果的に検出可能なトランスを提供することである。
【0009】
また、本発明のもう1つの課題は、このトランスを用いて、放電灯側の異常を効果的に検出し、動作を停止する放電灯駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明に係るトランスは、コアと、平板電極と、ボビンと、複数の外部接続用端子とを含む。前記ボビンには、保持部が形成されており、前記保持部は、前記コアを保持するとともに、前記平板電極と前記コアの間に所定の結合容量が発生するように、前記平板電極を、前記コアの表面に非接触で対向させた状態に保持する。前記外部接続用端子の一部は、前記平板電極と電気的に接続されている。
【0011】
このように、コアと平板電極は、保持部によって互いに非接触に保たれており、互いの結合容量があるから、外部接続用端子において検出した平板電極の電位に基づいて、コアの電位を測定することができる。この電位の測定に依れば、次のような利点が得られる。
【0012】
第一に、コアと平板電極が非接触であるから、コアの電位が低くなることはない。したがって、トランスの2次側巻線の端子の一方が接地されている不平衡回路においても、コアの電位に基づいて異常状態を検出することが可能である。
【0013】
第二に、従来技術と異なり、コアと電気的に接続する回路素子を用いていないので、トランスの2次側巻線に発生した高電圧がコアに放電された場合であっても、故障が発生することがない。
【0014】
第三に、コアと平板電極が非接触であるから、コアが1次側巻線又は回路のGNDパタンと近づいたり、あるいは接触してショートしても、コアの電位を検出できる。
【0015】
第四に、コアと平板電極は、保持部によって保持されているから、衝撃や振動を受けたときに、平板電極における導通が悪影響を受けることがない。よって、本発明に係るトランスは、コアの電位を効果的に検出することができる。
【0016】
また、本発明に係る放電灯点灯装置は、DC−DCコンバータと、DC−ACインバータと、放電灯接続端子と、電位検出部と、制御部とを含む。前記DC−DCコンバータは、直流入力電圧を変換して、所定の直流出力電圧を生成する。前記DC−ACインバータは、トランスを含み、前記直流出力電圧を変換して交流電圧を生成して、この交流電圧を前記放電灯接続端子に供給する。
【0017】
ここまで述べた放電灯点灯装置に係る構成は従来の技術に見られるが、本発明に係る放電灯点灯装置の特徴は、以下の構成にある。すなわち、前記トランスは、上述した本発明に係るトランスであり、前記電位検出部は、前記平板電極の電位を検出して、前記電位が所定の範囲内でないと判定したときに異常通知信号を前記制御部に送信する。前記制御部は、前記異常通知信号を受信したときに前記DC−DCコンバータの動作を停止制御する。
【0018】
よって、この放電灯点灯装置に依れば、トランスのコアの電位に基づいて、放電灯側の異常を効果的に検出し、動作を停止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、コアの電位を効果的に検出し得るトランスを提供することができる。
【0020】
また、このトランスを用いて、放電灯側の異常を効果的に検出し、動作を停止し得る放電灯駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係るトランスTの斜視図である。トランスTは、コア11と、平板電極131,132と、ボビン12と、複数の外部接続用端子141,142,143とを含む。さらに、トランスTは、1次巻線N11、帰還巻線N12、2次巻線N2と、これらの巻線N11,N12,N2を巻きつけるためのボビン12とを含む。
【0022】
ボビン12には、保持部Fが形成されている。保持部Fは、コア11を保持するとともに、平板電極131,132とコア11の間に所定の結合容量が発生するように、平板電極131,132を、コア11の表面に非接触で対向させた状態に保持する。外部接続用端子142は、平板電極131,132と電気的に接続されている。また、その他の外部接続用端子141,143は、巻線N11,N12,N2にそれぞれ接続されている。
【0023】
図2は、図1のII−II線断面図である。コア11は、少なくとも一部において、互いに平行な両端面を有している。具体的には、コア11は、上方から見て「日」の字形状をなすように、3つの足部が設けられたE字形状のフェライトコア2個を対向させて、両端の足部同士を接合したものである(図1の符号Pを参照)。コア11の各部は、上記の3つの足部のうち中央の中足部111,112を除いて、その断面が方形状に形成されている。したがって、上面S1及び下面S2、並びに両側面S3,S4が、互いに平行である。また、コア11が取り囲む中央部の空間では、巻線N11,N12,N2がボビン12に巻きつけられている。
【0024】
巻線N11,N12,N2は、ボビン12の中央に形成された、円筒形状の巻きつけ部Cに巻きつけられる。この巻きつけ部Cの外周には、所定の間隔をおいて、鍔状の隔壁Wが形成され、巻線N11,N12,N2を互いに隔てている。
【0025】
巻きつけ部Cの中央には、Y方向に沿って貫通孔126が形成されている。この貫通孔126には、コア11の中足部111,112が挿入されている。中足部111,112は、X方向の断面が円形(図3の符号111を参照)であって、貫通孔126の中心において、ギャップGを挟んで対向している。
【0026】
また、保持部Fは、断面がコ字形状をなし、巻きつけ部Cの一端に連なって一体形成されている。保持部Fは、一対の平板部121,122と、連結部123とからなる。保持部Fは、コア11の一辺(以下、辺Aと呼称する。)において、上側の平板部121は上面S1と、下側の平板部122は下面S2と各々対向することによって、コア11を挟み込むようにして保持する。ここで、下側の平板部122は下面S2と接している。
【0027】
また、連結部123は、前面側(図中、Y軸正方向)の上下部において一対の平板部121,122とそれぞれ連なり、背面側(図中、Y軸負方向)のほぼ中央部において巻きつけ部Cの一端に連なっている。この連結部123の前面には、辺Aの内側面S4が対向する。
【0028】
一方、巻きつけ部Cの他端には、断面がL字形状の保持座Rが連なって形成されている。保持座Rは、板部125と、連結部124とからなる。板部125には、辺Aと対向する他の一辺(以下、辺Bと呼称する。)の下面S5が接し、また、連結部124の背面には、辺Bの内側面S6が対向する。
【0029】
次に、図3は、図1のIII−III線断面図である。連結部123の両側端面の中央部は、上述したコア11の辺A及び辺Bと直交する他の二辺の内側面S7,S8とそれぞれ対向している。なお、連結部124についても同様である。
【0030】
このように、コア11は、一対の平板部121,122により垂直方向(図中、Z方向)における移動が制限されるとともに、連結部123,124により前後水平方向(図中、Y方向)における移動、並びに、左右水平方向(図中、X方向)における移動が制限され、ボビン12に固定されている。
【0031】
平板電極131,132は、互いに電気的に接続された一対の電極である。平板電極131,132は、矩形状に形成された上部電極131及び下部電極132とからなる。接続部133は、これらの電極131,132を電気的に接続するコ字形状の金属板である。
【0032】
平板電極131,132、並びに接続部133は、保持部Fの内部に埋設されることによって保持される。すなわち、上部電極131は上側の平板部122に、下部電極132は下側の平板部121に、接続部133は連結部123に、それぞれ埋設されており、一対の平板部121,122によって、上部電極131は、辺Aの上面S1と対向して保持され、下部電極132は、辺Aの下面S2と対向して保持される。このとき、上部電極131と上面S1とのZ方向の距離、下部電極132と下面S2とのZ方向の距離、上部電極131及び下部電極132の面積は、平板電極131,132とコア11の間に所定の結合容量が発生するように決定される。
【0033】
このように、コア11と平板電極131,132は、保持部Fによって互いに非接触に保たれており、互いの結合容量があるから、外部接続用端子142において検出した平板電極131,132の電位に基づいて、コア11の電位を測定することができる。この電位の測定に依れば、次のような利点が得られる。
【0034】
第一に、コア11と平板電極131,132が非接触であるから、コア11の電位が低くなることはない。したがって、トランスの2次側巻線N2の端子の一方が接地されている不平衡回路においても、コアの電位に基づいて異常状態を検出することが可能である。
【0035】
第二に、従来技術のように、コア11と電気的に接続する回路素子を用いていないので、トランスの2次側巻線N2に発生した高電圧がコア11に放電された場合であっても、故障が発生することがない。
【0036】
第三に、コア11と平板電極131,132が非接触であるから、コア11が1次側巻線N11又は回路のGNDパタンと近づいたり、あるいは接触してショートしても、コアの電位を検出できる。
【0037】
第四に、コア11と平板電極131,132は、保持部Fによって保持されているから、衝撃や振動を受けたときに、平板電極131,132における導通が悪影響を受けることがない。とりわけ、保持部Fはボビン12の一部に形成されており、また、平板電極131,132は保持部Fの内部に埋設されているため、その効果は大きい。
【0038】
以上のように、本発明に係るトランスは、コア11の電位を効果的に検出し得る。
【0039】
次に、この実施形態における、コア11と平板電極131,132の結合容量について説明する。上述したように、コア11と平板電極131,132は、保持部Fによって保持されている。しかし、実際には、コア11と保持部Fの間には設計上のマージンとして隙間が設けられており、コア11の平板電極131,132に対する相対位置が微小に変化するから、結合容量のばらつきが懸念される。したがって、コア11の位置が変化してもばらつきが発生しないように、平板電極131,132の寸法等を定めることが望ましい。以下に、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれに着目して、順次、説明する。
【0040】
まず、X方向について、コア11は、連結部123の両側端面により移動が制限されている。また、平板電極131,132は、一対の平板部121,122の内部に埋設されている。したがって、平板電極131,132は、コア11のX方向における位置のずれに関わらず、常に全体にわたってコア11の上面S1及び下面S2と対向する(図3参照)。よって、平板電極131,132の幅Dxは、任意に決定すればよい。
【0041】
次に、Y方向について、保持部Fの拡大図である図4を用いて説明する。ここで、コア11の中心は、基準位置において、平板電極131,132の中心位置と一致しているものとし、また、コア11の断面の幅をLとしたとき、平板電極131,132の長さDy<Lであるものとする。
【0042】
Y方向において、コア11は、連結部123,124により移動が制限されているから、コア11の定位置からの誤差ΔYは、連結部123,124とコア11の内側面S4,S6の各距離をKy1とすれば−Ky1≦ΔY≦Ky1となる。したがって、平板電極131,132の両端とコア11の両側面S3,S4とのY方向の位置の差をKy2としたとき、平板電極131,132が、常に全体にわたってコア11と対向するためには、Ky1≦Ky2となる必要がある。よって、平板電極131,132の長さDyは、Ky1≦Ky2を満たすように決定すればよい。
【0043】
一方、図5に示すように、Dy>Lの場合、コア11の上面S1及び下面S2が、常に全体にわたって平板電極131,132と対向するためには、Ky1≦Ky3となる必要がある。よって、この場合は、平板電極131,132の長さDyは、Ky1≦Ky3を満たすように決定すればよい。
【0044】
次に、Z方向について、図4を用いて説明する。ここで、コア11の中心は、基準位置において、上部電極131と下部電極132の中心位置と一致しているものとする。Z方向において、コア11は、下面S2が平板部122と接することにより位置決めされた状態で保持されるから、コア11の定位置からの誤差ΔZは、基本的には0とみなすこともできる。しかしながら、保持部Fの製造時の寸法誤差などによって、誤差ΔZが0とみなせないケースも起こりうる。さらに、誤差ΔZは、平板電極131,132とコア11の距離に影響するから、これらの結合容量にも大きな影響を与える。したがって、誤差ΔZの影響は、慎重に検討する必要がある。
【0045】
下部電極132とコア11の結合容量をC1(F)、上部電極131とコア11の結合容量をC2(F)、コア11の電位をVcore(V)とすると、結合容量についての等価回路は図6のようなコンデンサの並列回路となるから、全体の結合容量はC1+C2(F)である。
【0046】
図7は、誤差ΔZ(mm)に応じた結合容量C1(F),C2(F),C1+C2(F)の特性変化の計算値を示している。ここで、ボビン12の素材を溶融液晶全芳香性ポリエステルとして、比誘電率を約5としている。また、コア11の高さLを10(mm)、基準位置における平板電極131,132とコア11の上面S1及び下面S2の距離Kz1をそれぞれ1(mm)とし、平板電極131,132の面積を100(mm)としている。なお、上側の平板部121とコア11の上面S1との距離をKz2(mm)とすると、Kz1>>Kz2であるものとして、平板部121とコア11の隙間の影響は、計算上、無視している。
【0047】
図7からわかるように、結合容量C1(F)は、−1≦ΔZ≦0.5の範囲では緩やかな増加を、0.5<ΔZの範囲では急峻な増加を示しており、結合容量C2(F)についても、これと対称な特性を示している。このように、結合容量C1(F)又はC2(F)は誤差ΔZ(mm)の影響を受けて変化するから、仮に、上部電極131又は下部電極132の何れか一方のみを用いた場合、コア11のZ方向の位置の誤差によっては結合容量がばらつき、電位Vcore(V)の測定精度が低下することがある。
【0048】
しかしながら、全体の結合容量C1+C2(F)は、およそ−0.4≦ΔZ≦0.4の範囲(図中、符号αを参照)において、変化なく、ほぼ一定の値を示している。したがって、保持部Fの製造時の寸法誤差などを考慮して、−0.4≦ΔZ≦0.4の範囲となるように設計すれば、全体の結合容量C1+C2(F)が一定となり、電位Vcore(V)を高精度に測定することができる。
【0049】
このように、単一の電極を用いた場合と比べると、一対の電極131,132を用いることによって、コア11の位置の誤差に対して、結合容量が格段に安定する。したがって、電位Vcore(V)の測定精度を向上させることができる。本実施形態では、Z方向において電極131,132を対向させるようにしたが、これに限定されるものではなく、トランスの形状に応じて、X方向又はY方向において対向させるようにしてもよい。
【0050】
次に、これまで述べたトランスTを適用した放電灯点灯装置について説明する。図8に、本発明に係る放電灯点灯装置の構成を示す。放電灯点灯装置6は、DC−DCコンバータ4と、DC−ACインバータ1と、放電灯接続端子Tbと、電位検出部2と、制御部3とを含む。
【0051】
DC−DCコンバータ4は、入力端子Taを介して電源Eから供給される直流入力電圧Vinを変換して、所定の直流出力電圧Vdcを生成する。詳細な説明は省略するが、DC−DCコンバータ4は、公知技術であるスイッチング回路、トランス、平滑回路などで構成されている。
【0052】
DC−ACインバータ1は、ロイヤー発振回路とトランスTを含み、直流出力電圧Vdcを変換して交流電圧Voutを生成して、この交流電圧Voutを放電灯接続端子Tbに供給する。交流電圧Voutは、例えば1500(V)程度の高電圧である。
【0053】
具体的には、DC−ACインバータ1は、抵抗R11,R12と、トランジスタQ11,Q12と、キャパシタC11,C12と、トランスTとを含む。上述したように、トランスTは、一次巻線N11と、二次巻線N2と、帰還巻線N12とを含む。
【0054】
トランジスタQ11,Q12のエミッタは、接地されている。トランジスタQ11,Q12のコレクタは、トランスTの一次巻線N11の両端に接続されている。トランスT1の一次巻線N11は中間タップを有し、この中間タップは、DC−DCコンバータ4の出力端に接続されている。
【0055】
抵抗R11、R12の一端は、DC−DCコンバータ4の出力端に接続されている。抵抗R11の他端は、トランジスタQ11のベースと帰還巻線N12の一端に接続されている。抵抗R12の他端は、トランジスタQ12のベースと帰還巻線N12の他端に接続されている。キャパシタC11は、一次巻線N11の両端に接続されている。キャパシタC12は、二次巻線N2の一端と、放電灯接続端子Tbとの間に接続されている。
【0056】
また、トランスTの二次巻線N2の他端は接地されている。このため、本実施形態のトランスTのように、一次巻線N11と二次巻線N2の間隔を狭くして、全体を小型化することが可能である。さらに、上述したように、このような回路であっても、トランスTのコア11と平板電極131,132が非接触であるから、コア11の電位Vcoreが低くなることはなく、この電位Vcoreに基づいて異常状態を検出することが可能である。
【0057】
トランスTの一次巻線N11には、DC−DCコンバータ4から電力が供給される。トランジスタQ11,Q12のスイッチング作用により、一次巻線N11に供給された電力は、二次巻線N2に伝送される。帰還巻線N12には、自励発振を継続するための帰還信号が供給される。トランジスタQ11,Q12は、帰還巻線N12から供給された帰還信号により、自励発振動作を継続する。二次巻線N12に伝送された電力は、放電灯接続端子Tbに供給される。
【0058】
放電灯5は、冷陰極管であり、一端が放電灯接続端子Tbに接続され、他端は接地されている。図8では単一の放電灯5を示しているが、コンデンサC12と放電灯5の組み合わせを複数接続してもよい。放電灯5は、放電灯接続端子Tbに供給される交流電圧Voutによって点灯される。
【0059】
ここまで述べた放電灯点灯装置6に係る構成は従来の技術に見られるが、本発明に係る放電灯点灯装置の特徴は、以下の構成にある。すなわち、トランスTは、上述した本発明に係るトランスであり、電位検出部2は、平板電極131,132の電位を検出して、この電位が所定の範囲内でないと判定したときに異常通知信号SG1を制御部3に送信する。制御部3は、異常通知信号SG1を受信したときにDC−DCコンバータ4の動作を停止制御する。具体的には、次の通りである。
【0060】
電位検出部2は、増幅部HFとウィンドウコンパレータCMPを含む。増幅部HFは、平板電極131,132によって検出した電圧を、例えば約3倍に増幅する回路である。
【0061】
増幅部HFは、アンプIC21、抵抗R21〜R24、コンデンサC21,C22、ツェナーダイオードD21を含む。アンプIC21の(+)端子には、抵抗R23,R24の直列回路によって直流入力電圧Vinを分圧した電圧が与えられる。コンデンサC22は、一端が抵抗R23と抵抗R24の接続点に接続され、他端が接地されている。
【0062】
アンプIC21の(−)端子には、抵抗R21を介して、コア11の電位Vcoreを結合容量C1+C2とコンデンサC21で分圧した電圧が与えられる。コンデンサC21は、一端が平板電極131,132と接続され、他端が接地されている。コンデンサC21としては、例えば結合容量C1+C2が10(pF)程度であれば、1000(pF)のものを用いる。
【0063】
ここで、コア11の電位Vcoreについて説明する。図9に示すトランスTの等価回路のように、コア11と一次側の巻線N11,N12の間と、コア11と二次側の巻線N2の間は絶縁されているから、容量結合されている。したがって、電位Vcoreは、二次側の出力電圧Voutを、コア11と二次側の巻線N2の間の結合容量と、コア11と一次側の巻線N11,N12の間の結合容量とで分圧した電圧値となる。
【0064】
図10に、図9に基づき、電位Vcoreを表した等価回路を示す。これによると、通常時の電位Vcoreは、コア11と二次側の出力端(電圧Vout側)との結合容量をCq1、二次側のGNDとの結合容量をCq2、一次側のGNDとの結合容量をCq3として、それぞれのインピーダンスをZCq1、ZCq2、ZCq3、としたとき、次のように表される。
Vcore=Vout×[(ZCq2//ZCq3)/{ZCq1+(ZCq2//ZCq3)}]
【0065】
一方、埃などによりコア11と二次側の出力端がショート又は放電したような異常状態の場合、結合容量Cq1を迂回して放電電流が流れることになるから、結合容量Cq1と並列に抵抗を接続した状態とみなすことができる。したがって、インピーダンスZCq1が低下したことと同じであるから、電位Vcoreは、通常時よりも高くなる。また、コア11と一次側又は二次側のGNDがショート又は放電した場合、インピーダンスZCq2又はZCq3が低下したことと同じであるから、電位Vcoreは、通常時よりも低くなる。よって、このような異常状態を検出するためには、上述したように、コア11の電位Vcoreを結合容量C1+C2とコンデンサC21で分圧した電圧として検出する方法が好適である。
【0066】
また、ツェナーダイオードD21は、アンプIC21に過大な入力電圧が印加されたときに、アンプIC21の(−)端子の入力電圧を基準電圧にクランプするものであって、カソードがアンプIC21の(−)端子に接続され、アノードが接地されている。抵抗R22は、アンプIC21の(−)端子と出力端子の間に接続されている。
【0067】
一方、ウィンドウコンパレータCMPは、増幅部HFで増幅した電圧を、所定の上限値及び下限値と比較することによって、その電圧値が所定の範囲内にあるか否かを判別する回路である。ウィンドウコンパレータCMPは、アンプIC22,IC23、抵抗R25〜R27、ダイオードD22,D23とを含む。
【0068】
抵抗R25〜R27は、直列接続されており、抵抗R25の一端に直流入力電圧Vinが供給され、他端は抵抗R26の一端と接続されている。抵抗R26の他端は抵抗R27の一端と接続され、抵抗R27の他端は接地されている。アンプIC22の(+)端子は、抵抗R25と抵抗R26の接続点と接続され、電圧Vinを抵抗R25と抵抗R26及びR27の合成抵抗とで分圧した電圧が上限値として与えられる。アンプIC23の(−)端子は、抵抗R26と抵抗R27の接続点と接続され、電圧Vinを抵抗R25及びR26の合成抵抗と抵抗R27とで分圧した電圧が下限値として与えられる。
【0069】
一方、アンプIC22の(−)端子とアンプIC23の(+)端子は、ともにアンプIC21の出力端子と接続される。したがって、増幅部HFから入力された電圧が、上限値よりも大きい場合、もしくは下限値よりも小さい場合、それぞれアンプIC22もしくはIC13が異常通知信号SG1を出力する。なお、本実施形態では、電位Vcoreが高くなったときと、低くなったときの両方の異常状態を検出できるように、上限値と下限値の2つの閾値を用いたが、何れか一方だけでもよい。
【0070】
また、ダイオードD22,D23のカソードはアンプIC22,IC23の出力端と各々接続されてワイヤードオアを構成し、ダイオードD22,D23のアノードはともに制御部3に接続されている。
【0071】
制御部3は、入力端子Taと接続され、直流入力電圧Vinが供給される。制御部3は、DC−DCコンバータ4の動作を制御する回路であって、異常通知信号SG1を受信したときにDC−DCコンバータ4に停止信号SG2を出力し、その動作を停止制御する。
【0072】
また、制御部3は、起動時において、少なくともDC−ACインバータ1が定常状態になるまで、異常通知信号SG1の受信の有無に関わらず、一定時間、DC−DCコンバータ4の動作の停止制御を行わない。すなわち、制御部3は、タイマ回路を含んでおり、起動時、DC−ACインバータ1が定常状態に達するのに十分な設定時間までカウントし、タイマが満了するまでは停止信号SG2の出力を停止する。したがって、DC−ACインバータ1が過渡状態にあるときに、異常状態を誤検出することを防止できる。なお、本実施形態では、タイマ回路を用いるようにしたが、これに限定されるものではなく、直接、DC−ACインバータ1の出力電圧Voutを監視するようにしてもよい。
【0073】
このように、この放電灯点灯装置に依れば、トランスTのコア11の電位Vcoreに基づいて、放電灯側の異常を効果的に検出し、動作を停止し得る。したがって、メンテナンスにおける作業員の感電事故などを効果的に防止することができる。
【0074】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係るトランスTの斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】保持部Fの拡大図である。
【図5】他の実施形態に係る保持部Fの拡大図である。
【図6】結合容量についての等価回路である。
【図7】誤差ΔZ(mm)に応じた結合容量C1(F),C2(F),C1+C2(F)の特性変化の計算値である。
【図8】本発明に係る放電灯点灯装置の構成を示す。
【図9】トランスTの等価回路である。
【図10】電位Vcoreを表した等価回路である。
【符号の説明】
【0076】
1 DC−ACインバータ
2 電位検出部
3 制御部
4 DC−DCコンバータ
31 演算増幅器
5 スイッチ回路
6 放電灯点灯装置
11 コア
12 ボビン
121,122 一対の平板部
131,132 平板電極
141,142,143 外部接続用端子
T トランス
F 保持部
Tb 放電灯接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、平板電極と、ボビンと、複数の外部接続用端子とを含むトランスであって、
前記ボビンには、保持部が形成されており、
前記保持部は、前記コアを保持するとともに、前記平板電極と前記コアの間に所定の結合容量が発生するように、前記平板電極を、前記コアの表面に非接触で対向させた状態に保持し、
前記外部接続用端子の一部は、前記平板電極と電気的に接続されている、
トランス。
【請求項2】
請求項1に記載されたトランスであって、
前記コアは、少なくとも一部において、互いに平行な両端面を有し、
前記保持部は、
一対の平板部を含み、
前記一対の平板部が前記両端面と各々対向することによって、前記コアを挟み込むようにして保持し、
前記平板電極は、
互いに電気的に接続された一対の電極であり、
前記一対の平板部によって、前記平板電極の一方は、前記両端面の一方と対向して保持され、前記平板電極の他方は、前記両端面の他方と対向して保持される、
トランス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたトランスであって、
前記平板電極は、前記保持部の内部に埋設されることによって保持される、
トランス。
【請求項4】
DC−DCコンバータと、DC−ACインバータと、放電灯接続端子と、電位検出部と、制御部とを含む放電灯点灯装置であって、
前記DC−DCコンバータは、直流入力電圧を変換して、所定の直流出力電圧を生成し、
前記DC−ACインバータは、トランスを含み、前記直流出力電圧を変換して交流電圧を生成して、この交流電圧を前記放電灯接続端子に供給し、
前記トランスは、請求項1乃至3の何れかに記載されたトランスであり、
前記電位検出部は、前記平板電極の電位を検出して、前記電位が所定の範囲内でないと判定したときに異常通知信号を前記制御部に送信し、
前記制御部は、前記異常通知信号を受信したときに前記DC−DCコンバータの動作を停止制御する、
放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項4に記載された放電灯点灯装置であって、
前記制御部は、起動時において、少なくとも前記DC−ACインバータが定常状態になるまで、前記異常通知信号の受信の有無に関わらず、一定時間、前記DC−DCコンバータの動作の停止制御を行わない、
放電灯点灯装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−231504(P2009−231504A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74477(P2008−74477)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】