説明

トランス構造

【課題】センタタップを設けてもトランス単体での構造を簡略化できるトランス構造を提供する。
【解決手段】トランス1は、基板50上に載置され、基板50表面に設けられた実装パッド51,52,53,54に、二次巻線を2つに分割したものに相当する二次巻線3A,3Bの端子部23A,23B,39B,39Aがそれぞれ半田付け接続されている。基板50には、当該実装パッド51〜54に繋がる回路パターンが形成されている。実装パッド51,53間が回路パターンにより接続されており、当該回路パターンがトランス1の二次側のセンタタップに相当する。このセンタタップとしての機能を果たす回路パターンを、例えば、同基板50上に実装された他の回路部品に直接接続したり、バスバー等に接続するために外部接続端子に接続したりするなどにより、センタタップとして利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性部材を巻き回してなる巻線体にセンタタップを設けたトランス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源のフルブリッジ回路、プッシュプル回路、ハーフブリッジ回路等においては、センタタップを用いた構造を有するトランスが使用される。スイッチング電源に使用されるトランスでは、環状の金属板単体若しくは複数の環状金属板を螺旋状に連結してなる巻線体を二次巻線として構成したものが周知である。
【0003】
この種のトランスにおいては、例えば、特許文献1に開示されるように、導電板を螺旋状に形成してなる一次巻線を磁性部材に巻装して構成されるトランスを2個直列接続し、両端部に2つの端子を有する略M字状の連結片の中央部にセンタタップ端子が突設された2次巻線を、前記2個のトランスに挿入したトランス構造を採るものがある。
【特許文献1】特開平7−326518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示されるような、金属板からなる二次巻線にセンタタップを設けて構成される従来のトランス構造は、トランス単体での構造が複雑であり、組立性が悪いという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、センタタップを設けてもトランス単体での構造を簡略化できるトランス構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における請求項1のトランス構造では、導電性部材を巻回してなる第一巻線体と、導電性板状部材の一部を開口させることにより一対の端部を有する不連続な環状に形成された巻線板をコイル状に構成してなる複数の第二巻線体とを備え、基板へ面実装されることにより、前記各第二巻線体の一方の端部同士が接続手段により電気的に接続されると共に、当該接続手段がセンタタップとして利用可能に構成されている。
【0007】
本発明における請求項2のトランス構造では、磁性材料からなるコアを備え、前記第一巻線体と前記第二巻線体とを前記コアに巻装して構成されている。
【0008】
このようにすると、トランス自体の構造が複雑とならず、基板にトランスを実装することで容易にセンタタップが構成できる。
【0009】
本発明における請求項3のトランス構造では、前記接続手段は、前記基板に形成された回路パターンであることを特徴とする。
【0010】
このようにすると、基板とは別の部品を使用しなくてもセンタタップを構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1及び請求項2によると、センタタップを設けてもトランス単体での構造を簡略化できるトランス構造を提供することができる。
【0012】
本発明の請求項3によると、トランス構造をより簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明におけるトランス構造の好ましい実施例を説明する。
【0014】
図1は、本発明におけるトランス構造を実現するトランス1の構造を示す分解斜視図である。同図において、トランス1は、導電線を巻回してなる第一巻線体としての一次巻線2と、複数の導電性板状部材をコイル状に連結してなる第ニ巻線体としての二次巻線3A,3Bと、磁性材料からなる一対のE形コア4,4とから構成される。E形コア4,4は、扁平板状の主要部11に、円柱状の芯部13を一側面の中央部に、外壁部12,12を一側面の両端部にそれぞれ突設して形成される。一次巻線2は、E形コア4の芯部13が挿通可能な程度の内径(中心孔10の径)となると共に、E形コア4の芯部13と外壁12,12との間に収まるような外径で巻回される。
【0015】
二次巻線3Aは、4枚の巻線板15A,16A,17A,18Aを重ね合わせてなり、この巻線板1枚が1ターンの巻線に相当するため、二次巻線3A全体で4ターンの巻線に相当することとなる。巻線板15A〜18Aは、例えば銅,真鍮などに代表される導電性を有する金属板から形成され、該金属板を打ち抜き(プレス)あるいはワイヤーカットなどの機械的加工を施すことにより略環状に形成して得られたものである。
【0016】
巻線板15Aは、中央に貫通孔21が開口された略環状に形成された巻装部20を主要部とし、この巻装部20の一部に貫通孔21に連通する切り欠き22が巻装部20の中心線より幾分一側(図1中、左側)寄りに設けられることにより、巻装部20は対向する一対の端部を有する略C字状の不連続な環状となっている。当該一対の端部のうち、一方の端部の外周縁には突片を上方へ折り曲げ成形してなる連結部24が設けられており、他方の端部は、その外周側から前記一方の端部の延長線方向へ若干延出した後に垂下して階段状を成す端子部23Aが設けられており、端子部23Aの先端は例えば半田付けなどにより図示しない基板に設けられた実装パッドへの電気的接続(面実装)が可能なように水平方向へ折り曲げられている。
【0017】
巻線板16Aは、中央に貫通孔26が開口された略環状に形成された巻装部25を主要部とし、この巻装部25の一部に貫通孔26に連通する切り欠き27が巻装部25の中心線よりやや一側(図1中、左側)寄りに設けられることにより、巻装部25は対向する一対の端部を有する略C字状の不連続な環状となっている。当該一対の端部の外周縁には突片を上方へ折り曲げ成形してなる連結部28,29がそれぞれ設けられる。
【0018】
巻線板17Aは、中央に貫通孔31が開口された略環状に形成された巻装部30を主要部とし、この巻装部30の一部に貫通孔31に連通する切り欠き32が巻装部30の中心線よりやや他側(図1中右側)寄りに設けられることにより、巻装部30は対向する一対の端部を有する略C字状の不連続な環状となっている。当該一対の端部の外周縁には突片を上方へ折り曲げ成形してなる連結部33,34がそれぞれ設けられる。すなわち、巻線板17Aは、巻線板16Aの鏡面対称形状となる。
【0019】
巻線板18Aは、中央に貫通孔36が開口された略環状に形成された巻装部35を主要部とし、この巻装部35の一部に貫通孔36に連通する切り欠き37が巻装部35の中心線より幾分一側(図1中右側)寄りに設けられることにより、巻装部35は対向する一対の端部を有する略C字状の不連続な環状となっている。当該一対の端部のうち、一方の端部の外周縁には突片を上方へ折り曲げ成形してなる連結部38が設けられており、他方の端部は、その外周側から前記一方の端部の延長線方向へ若干延出した後に垂下して階段状を成す端子部39Aが設けられており、端子部39Aの先端は例えば半田付けなどにより図示しない基板に設けられた実装パッドへの電気的接続(面実装)が可能なように水平方向へ折り曲げられている。すなわち、巻線板18Aは、巻線板15Aの鏡面対称形状となる。
【0020】
そして、巻線板15A〜18Aを上からこの順番で同軸上に重ね合せると共に、これらの間に例えば絶縁用シートなどを配置して相互の絶縁を行う。当該絶縁処理は、巻線板15A〜18Aに絶縁塗料を塗布してもよい。このとき、巻線板15Aの連結部24と巻線板16Aの連結部28、巻線板16Aの連結部29と巻線板17Aの連結部33、巻線板17Aの連結部34と巻線板18Aの連結部38とは、それぞれ対応する位置に設けられており、これら対応する連結部同士を例えば半田や溶接などにより連結することにより、巻線板15A〜18Aが電気的に接続されると共に、巻線板15A〜18Aが一体化され、コイル状の二次巻線3Aとなる。端子部23A,39Aの高さは、巻線板15A〜18Aを重ね合せた状態で、その先端部分の高さ位置が一致するように設定されている。
【0021】
二次巻線3Bは、4枚の巻線板15B,16B,17B,18Bを同軸上に重ね合わせてなり、二次巻線3Aと略同様の構成となる。具体的な違いとしては、巻線板15Aに対応する巻線板15Bの端子部23Bの長さが端子部23Aより全体的に短くなっており、巻線板18Aに対応する巻線板18Bの端子部39Bの長さが端子部39Aより全体的に短くなっている点が挙げられる。
【0022】
トランス1を組立てる手順としては、一次巻線2の上下に、例えば絶縁用シートなどを介して、二次巻線3A,3Bを絶縁状態で重ね合わせて、さらにその上下に例えば絶縁用シートなどを配置する。続いて、同軸上に並べられた二次巻線3Aと一次巻線2と二次巻線3Bを、E形コア4,4で挟み込むように、これらの貫通孔21,26,31,36と中心孔10と貫通孔21,26,31,36へ、上下方向からE形コア4,4の芯部13,13をそれぞれ挿入し、対向するE形コア4,4の芯部13,13同士及び外壁部12,12同士を突き合わせることにより図2に示す組立体となる。
【0023】
図3は、基板に面実装された状態のトランス1を基板断面方向から見た様子を示したものである。同図において、トランス1は、基板50上に載置され、基板50表面に設けられた実装パッド51,52,53,54に、二次巻線を2つに分割したものに相当する二次巻線3A,3Bの端子部23A,23B,39B,39Aがそれぞれ半田付け接続されている。基板50には、図4に示すような回路図に合わせて、当該実装パッド51〜54に繋がる回路パターンが形成されている。同図においては、実装パッド51,53間が接続手段としての回路パターンにより接続されており、当該回路パターンがトランス1の二次側のセンタタップに相当する。もちろん、実装パッド52,54間を回路パターンにより接続して、センタタップを構成してもよい。このセンタタップとしての機能を果たす回路パターンを、例えば、同基板50上に実装された他の回路部品に直接接続したり、バスバー等に接続するために外部接続端子に接続したりするなどにより、センタタップとして利用可能である。
【0024】
以上のように本実施例のトランス構造では、導電性部材を巻回してなる第一巻線体としての一次巻線2と、導電性板状部材の一部を開口させることにより一対の端部を有する不連続な環状に形成された巻線板15A〜18A,15B〜18Bをコイル状に構成してなる複数の第二巻線体としての二次巻線3A,3Bとを備え、基板50へ面実装されることにより二次巻線3A,3Bの一方の端部同士が接続手段としての回路パターンにより接続されると共に、当該回路パターンがセンタタップとして利用可能に構成されている。
【0025】
また本実施例のトランス構造では、磁性材料からなるE形コア4,4を備え、一次巻線2と二次巻線3A,3BとをE形コア4,4に巻装して構成されている。
【0026】
このようにすると、トランス1自体の構造が複雑とならず、基板50にトランス1を実装することで容易にセンタタップが構成できる。従って、センタタップを設けてもトランス単体での構造を簡略化できるトランス構造を提供することができる。
【0027】
さらに本実施例のトランス構造では、前記接続手段は、基板50に形成された回路パターンであることを特徴とする。
【0028】
このようにすると、基板50とは別の部品を使用しなくてもセンタタップを構成することができる。従って、トランス構造をより簡略化できる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。本発明におけるセンタタップは、二次巻線側に限らず一次巻線側に設けることもでき、トランス自体の構造も様々な構造のものに適用可能である。また、センタタップは、回路パターンに限らず、例えば各種ジャンパ部品などにより分割された二次巻線の各端部を接続するよう構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例におけるトランスを構成する各部品を示す分解斜視図である。
【図2】同上、トランスの組立後の状態を示す斜視図である。
【図3】同上、トランスが基板に実装された様子を示す正面図である。
【図4】同上、トランスに設けた端子部の一接続態様を示す回路図である。
【符号の説明】
【0031】
1 トランス
2 一次巻線(第一巻線体)
3A,3B 二次巻線(第二巻線体)
4 E形コア
15A〜18A,15B〜18B 巻線板
50 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性部材を巻回してなる第一巻線体と、導電性板状部材の一部を開口させることにより一対の端部を有する不連続な環状に形成された巻線板をコイル状に構成してなる複数の第二巻線体とを備え、基板へ面実装されることにより、前記各第二巻線体の一方の端部同士が接続手段により電気的に接続されると共に、当該接続手段がセンタタップとして利用可能に構成されたことを特徴とするトランス構造。
【請求項2】
磁性材料からなるコアを備え、前記第一巻線体と前記第二巻線体とを前記コアに巻装して構成されることを特徴とする請求項1記載のトランス構造。
【請求項3】
前記接続手段は、前記基板に形成された回路パターンであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のトランス構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−108936(P2008−108936A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290831(P2006−290831)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(390013723)デンセイ・ラムダ株式会社 (272)
【Fターム(参考)】