説明

トリグリセリドおよびVLDLの分泌を調節する方法および化合物

本発明はトリグリセリドおよびVLDLの血中濃度を低減させる自家食作用誘導化合物の使用および薬物の調製を提供する。本発明はまた、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心筋虚血、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、または糖尿病、インシュリン抵抗性、血液透析、I型糖原病、多嚢胞性卵巣症候群、これらの組合せを治療するための自家食作用誘導化合物の使用を提供する。本発明は自家食作用を調節する化合物を同定する方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリグリセリドおよびVLDLの分泌を調節する方法および化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
高トリグリセリド血症は心血管疾患のリスクファクターあることが確認されている。高トリグリセリド血症は一般に200mg/dLを超える空腹時のトリグリセリド(TG)レベルであると定義される。TG血中濃度の上昇はTG分泌上昇またはTG分解低下のいずれかから生じるものと思われる。
【0003】
肝は大きさおよび代謝経路が異質である超低密度リポタンパク質(VLDL)の形態でTGを分泌する(PackardとShepherd、1997年、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.17号、3542〜3556)。VLDL粒子の各々はアポリポタンパク質(apo)B100の1つの複製および種々の量のTGを含んでいる(FisherとGinsberg、2002年、J.Biol.Chem.277号、17377〜17380)。ラット肝癌McA−RH7777細胞では、VLDLの組み立てはpost−小胞体(ER)区画において翻訳後に達成される(Tranら、2002年、J.Biol.Chem.277号、31187〜31200)。その合成の後、apoB100はERを出て、小さな脂質と結合した膜結合形態のシス/メディアルゴルジ体を横断する。すなわち、apoB100がディスタル−ゴルジ体に達するまでは、apoB100と共に大きなTGを完全に組み立ててVLDLが形成されない(Tranら、2002年)。ERにおける脂質の乏しい始原のリポタンパク質粒子の形成は第1段階組み立てと呼ばれ、post−ER区画内のVLDLへの大きなTGの取り込みは第2段階組み立てとして知られている(Rustaeusら、1999年、J.Nutr.、129号、463S〜466S;Stillemarkら、2000年、J.Biol.Chem.275号、10506〜10513)。第1段階組み立てに影響を及ぼす要因は、翻訳後修飾(例えば、ジスルフィド結合形成(Tranら、1998年、J.Biol.Chem、273号、7244〜7251)またはN結合型糖鎖合成(Vukmiricaら、2002年、J.Lipid Res.43号、1496〜1507))によるか、またはapoB100とミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)(Dashtiら、2002年、Biochemistry、41号、6978〜6987)との相互作用によるかのいずれかで、発生期のapoB100ポリペプチド鎖のフォールディングを支配することが多い。近年、第1段階組み立て障害を引き起こす、家族性低βリポタンパク症に関与する点変異R463Wが、apoBのMTP結合領域内に同定された(Burnettら、2003年、J.Biol.Chem、278号、13442〜13452)。第1段階組み立ての減弱に関与する特徴には、新たに合成されるapoB100の細胞内分解の増加およびapoB100タンパク質の分泌の低下が挙げられる。ERにおけるミスフォールドした新生apoB100の分解は一般に、ユビキチン−プロテオソーム系によって媒介される(FisherとGinsberg、2002年;Yaoら、1997年、Ji.Lipid Res、38号、1937〜1953)。
【0004】
他方、第2段階組み立てに影響を及ぼす要因は一般に脂質性である。実験的証拠からは、分泌経路に沿った膜のリン脂質組成は第2段階組み立ての重要な決定因子であることが次々と示唆されている。直接的(Aspら、2000年、J.Biol.Chem.、275号、26285〜26292;Nishimaki(Mogami)ら、2002年、J.Lipid Res.、43号、1035〜1045;Tranら、2000年、J.Biol.Chem.、275号、25023〜25030)または間接的(McLeodら、1996年、J.Biol.Chem.、271号、18445〜18455;Wangら、1999年、J.Biol.Chem.、274号、27793〜27800;YaoとVance、1988年、J.Biol.Chem.、263号、2998〜3004)にリン脂質を修飾する酵素の活性を改変することによって膜リン脂質組成を乱す薬剤を用いたこれまでの試験からは、そのようないくつかの要因が同定された。これらの酵素には、VLDL組み立てに許容的なミクロソーム膜環境を形成するオレオイル(18:1(n−9))鎖が補充された、ホスファチジルコリン(PC)種およびホスファチジルエタノールアミン(PE)種がある(Tranら、2000年)。18:1(n−9)リッチなリン脂質種の形成は、肝細胞中のカルシウム依存性ホスホリパーゼA(iPLA)によって一部が媒介されるリン脂質リモデリング(すなわち、脱アリル化および再アリル化)を通して達成される(Tranら、2000年)。これらのリン脂質の代謝回転も、TG合成(Tranら、2000年)および膜の移動および融合において重要な役割を果たす18:1(n−9)−ホスファチジン酸および18:1(n−9)−ジグリセリドなどのシグナリング分子の形成(Antonnyら、1997年、J.Biol.Chem.、272号、30848〜30851;Chernomordikら、1995年、J.Membr.Biol.、146号、1〜14)のための18:1(n−9)アシル鎖を提供する。McA−RH7777細胞において、オレイン酸欠乏による膜リン脂質への18:1(n−9)の取り込みを制限し(McLeodら、1996年)iPLA阻害によるリン脂質リモデリングを抑え(Tranら、2000年)、およびADPリボシル化因子依存性ホスホリパーゼの阻害によってホスファチジン酸の形成を低下(D Aspら、2000年)させれば、第2段階においてVLDL組立体は変わらず低減されることになる。第2段階組み立ての障害の顕著な特徴は、Tgの少ないapoB100を含む緻密なリポタンパク質(LpB)の分泌である。分泌不能なLpBは未だ不明な機序によって分解される運命にある。種々の条件下では、非プロテアソームおよびpost−ER分解機序は、apoBがERを出た後に(すなわち第2段階組み立てで)、形成された異常なLpBを除去すると仮定されてきた(Fisherら、2001年、J.Biol.Chem.、276号、27855〜27863;Phungら、1997年、J.Biol.Chem.、272号、30693〜30702;Wangら、1995年、J.Biol.Chem.、270号、24924〜24931)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今回、本発明者らは膜リン脂質の組成改変およびリモデリングにより、第2段階VLDL組み立てが阻害され、post−ER分解が活性化されることを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
今回、本発明者らは膜リン脂質の組成改変およびリモデリングにより、第2段階VLDL組み立てが阻害され、post−ER分解が活性化されることを確認した。
【0007】
本発明は、治療有効量の自家食作用誘導化合物を化合物を必要とする患者に投与するステップを含む、トリグリセリドおよび/またはVLDLの血中濃度を低下させる方法を教示する。
【0008】
本発明はトリグリセリドおよび/またはコレステロールの血中濃度を低下させるのに有用な医薬品を調製するための自家食作用誘導化合物の使用を教示する。
【0009】
本発明は、治療有効量の自家食作用誘導化合物を該化合物を必要とする患者に投与するステップを含む、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心筋虚血、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、再狭窄、糖尿病、インシュリン抵抗性、代謝症候群、腎疾患、血液透析、I型糖原病、多嚢胞性卵巣症候群、二次性高トリグリセリド血症、またはこれらの組合せからなる群から選択される障害を治療または予防する方法を教示する。
【0010】
本発明は、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心筋虚血、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、再狭窄、糖尿病、インシュリン抵抗性、代謝症候群、腎疾患、血液透析、I型糖原病、多嚢胞性卵巣症候群、二次性高トリグリセリド血症、またはこれらの組合せからなる群から選択される障害を治療または予防するのに有用な薬物を調製するための自家食作用誘導化合物の使用を教示する。
【0011】
本発明の一実施形態では、自家食作用誘導化合物はMap1LC3、GABARAP、GATE16、またはクラスIIIのP13’キナーゼであり得る。
【0012】
本発明は(a)対照細胞培養系および試験細胞培養系を提供するステップと、(b)前記試験細胞培養系の細胞に試験化合物を投与するステップと、(c)前記対照細胞培養系および前記試験細胞培養系の自家食作用マーカーをアッセイするステップとを含み、前記対照細胞培養系と比較したときの前記試験細胞培養系の前記自家食作用マーカーの異常値は試験化合物が自家食作用を調節することを示す、自家食作用調節化合物を同定する方法を教示する。
【0013】
本発明の一実施形態では、自家食作用マーカーはERおよびゴルジ細胞画分中のVLDLおよびVLDL前駆体である。
【0014】
本発明の別の実施形態では、VLDL前駆体はPC部分含有脂質である。該PC部分含有脂質は18:1(n−9)PCであり得る。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、VLDL前駆体はPE部分含有脂質である。該PE部分含有脂質は20:5(n−3)PEであり得る。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態では、前記自家食作用マーカーは免疫蛍光法によってapoB100およびMap1LC3の共存の程度を検出することによって決定される。
【0017】
本発明は、(a)対照細胞培養系および試験細胞培養系を提供するステップと、(b)前記試験細胞培養系の細胞に試験化合物を投与するステップと、(c)前記対照細胞培養系および前記試験細胞培養系の自家食作用マーカーをアッセイするステップとを含み、前記対照細胞培養系と比較したときの前記試験細胞培養系の前記自家食作用マーカーの異常値は試験化合物が自家食作用を調節することを示す、自家食作用誘導化合物を同定する方法を教示する。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記自家食作用マーカーはPC部分含有脂質である。該PC部分含有脂質は18:1(n−9)PCであり得る。
【0019】
本発明のさらなる実施形態では、自家食作用マーカーはPE部分含有脂質である。該PE部分含有脂質は20:5(n−3)PEであり得る。
【0020】
本発明の方法のいずれかの一実施形態では、細胞は肝細胞または肝癌細胞である。この細胞はヒトapoB100を発現するラット肝細胞またはヒトapoB100を発現するラット肝癌細胞であり得る。このラット肝癌細胞はMcA−RH7777細胞であり得る。該apoB100は蛍光タンパク質またはテトラシステインなどのタグと融合し得る。
【0021】
本発明は、トリグリセリドおよび/またはVLDLの血中濃度を低減させるための、本発明の方法によって同定される自家食作用誘導化合物の使用を教示する。
【0022】
本発明は、本発明の方法によって同定される自家食作用誘導化合物と医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物を教示する。
【0023】
本発明は、本発明の方法によって同定される自家食作用誘導化合物と医薬的に許容される担体とを含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含む、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心筋虚血、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、再狭窄、糖尿病、インシュリン抵抗性、代謝症候群、腎疾患、血液透析、I型糖原病、多嚢胞性卵巣症候群、二次性高トリグリセリド血症、またはこれらの組合せからなる群から選択される障害を治療または予防する方法を教示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
post−ER分解を活性化すれば、TGおよびVLDL分泌は低下する。
【0025】
本発明を特定の機構に限定するものではないが、TGおよびVLDL分泌は、自家食作用を促進して、脂質/リポタンパク質のpost−ER分解を促進することによって調製することができると考えられる。本発明者らは膜リン脂質の組成改変およびリモデリングにより第2段階VLDL組み立てが阻害されることを確認した。特に、本発明者らは、膜ホスホチジルコリン(PC)/ホスファチジルエタノールアミン(PE)比の改変はトリグリセリドの細胞内蓄積およびpost−ER分解の活性化に関与することを確認した。
【0026】
インビトロでのTG分泌に対する阻害作用(LangとDavis、1990年、J.Lipid Res.31号、2079〜2086;WongとNestel、1987年、Atherosclerosis、64号、139〜146)およびインビボでのエイコサペンタエン酸(EPA)の血中TG低下作用(Harris、1999年、Lipids 34 Suppl.S257〜S258)が文書化されている。しかし、EPAの高トリグリセリド血症作用の機序については明らかになっておらず、議論の余地が残されている。
【0027】
本発明者らはオレイン酸の作用とEPAの作用とを比較することによって、第2段階VLDL組み立てに対する膜リン脂質リモデリングの影響を試験した。本発明者らは20:5(n−3)をリン脂質に取り込み、次にリモデリングを介してTGに取り込めば、第2段階VLDL組み立てに好ましくないリン脂質環境が生まれると仮定した。この仮説を試験するために、apoB100の合成およびER出口がEPA処理による影響を受けない条件下でヒトapoB100を発現するMcA−RH7777細胞を培養した。本発明者らは、外来性脂肪酸によってリン脂質分子種を改変すれば、第2段階VLDL組み立て時にその合成および細胞内分布によって調製されるTGの補充に影響を及ぼすと共に、post−ER分解区画の形成が同時に生じるように見えることを見出した。
【0028】
本発明者は、VLDLの第2段階組み立ては外来性脂肪酸の流入下で膜リン脂質リモデリング(すなわち脱アリル化/再アリル化)によって調節されることを見出した。VLDL組立体に関連するリン脂質リモデリングの重要な側面の1つは、(脱アシル化時に)放出されたアシル鎖をTGの合成において利用することにある。膜PCへのオレイン酸の選択的取り込みは、PCのグリセロ骨格のsn−1およびsn−2位におけるその存在のために、デノボ経路およびリモデリング経路の両方によって媒介されると考えられる。対照的に、膜リン脂質のそのsn−2位へのEPAの選択的取り込みおよびこの後のPCからPEへのそのEPAの移動は、リモデリングプロセスの明らかな兆候である。EPA取り込みのための選択的な行き先となるプールである細胞内Ca2+依存性ホスホリパーゼAおよびPEによって媒介される脱アシル化/再アシル化を介してリン脂質へ取り込まれるポリ不飽和酸の内因性が、近年、他の細胞型において明らかとなっている(Balsinde。2002年)。外来性脂肪酸が流入した時、リン脂質リモデリングから放出されるオレイン酸およびEPAは両方共、TG合成にほとんど選択的に利用されない。しかし、本発明者らは、20:5含有TGは18:1含有TGに比べて分泌量が少ないことを見出し、このことは20:5−TGは非効率的にVLDL組立体に利用されていることを示唆している。本発明者らは膜リン脂質の脱アシル化/再アシル化の内因性およびPCおよびPEへのオレイン酸およびEPAの差別的取り込みによって、第2段階組み立てにおいて利用不可能で、有効に利用しても利用しなくてもよい異なったTGプールの形成がもたらされると考えている。
【0029】
本発明者らは、膜のPC/PE比を改変することは細胞質プールのTGの蓄積量およびpost−ER分解の活性化に関与するものと断定した。異なるTG種(すなわち、18:1−TG/20:5−TG)の形成の際のPCおよびPEのリモデリングの重要性に加えて、本発明者らはミクロソーム膜内のPC/PE比の低下が第2段階VLDL組み立ての障害および細胞質プール内のTGの蓄積に関与することを見出した。PC/PE比の改変はマイクロソーム膜のPCまたはPE含有量のいずれかを変えることによって達成することができると思われ、この改変は第2段階VLDL組み立ての効率の指標となり得る。本発明者らはMcA−RH7777細胞をオレイン酸処理したことがミクロソーム膜の、特にERおよびディスタル−ゴルジ体のPC含有量を増大させた(Wangら、1999年)と考えている。対照的に、EPA処理すれば、VLDL組立体を効果的に阻害しているディスタル−ゴルジ体の膜内のPE含有量は増大した(したがって、PC/PE比は低下した)。肝PEレベルの上昇はEPA供給ラットに関しても報告されている(Kotkatら、1999年、Comp Biochem.Physiol A Mol.Integr.Physiol.、122号、283〜289)。第2段階VLDL組み立て障害(HDL分泌ではなくVLDL分泌障害)に関与する肝ミクロソーム膜のPC/PE比が低下することは、コリン欠乏症(Ridgwayら、1989年)およびPEメチル化経路の阻害(Nishimaki(Mogami)ら、2002年)(Nogaら、2002年、J.Biol.Chem、277号、42358〜42365)などのその他のモデルで観察されている。化学的阻害(Nishimaki(Mogami)ら、2002年)またはマウス(Nogaら、2002年)を用いたPEメチルトランスフェラーゼの遺伝子破壊によるPEメチル化経路を介したPEからPCへの変換の崩壊は、apoB100−VLDL分泌障害に関与したPC/PE比が低下したことを示した。PEメチル基転移酵素欠損動物の特にオスでは、肝PEの上昇は肝TG蓄積量および血中TGの減少に関与した。ラット初代肝細胞とは異なり、McA−RH7777細胞はPEメチル基転移酵素活性が乏しく(Cuiら、1995年、Biochem.J、312号、939〜945)、外来性オレイン酸が培地に補給されなければVLDLを構築することはできない。外来性オレイン酸存在下のMcA−RH7777細胞におけるVLDL組立体の修復の一部は、VLDL組立体に許容的なPC/PE比の再確立(PC含有量の増大に起因する)によるものと思われる。McA−RH7777細胞でのPEメチル基転移酵素の再構成によって、apoB100−VLDLにおけるTG分泌量が増大し(DeLongら、1999年)、肝細胞のメチル化経路によって合成された種に似た多様なPC種が生成された(Nogaら、2002年)。膜リン脂質の非対象分布(Daleke、2003年、J.Lipid Res.44号、233〜242)(すなわち、特にゴルジ体のVLDL組立体の部位では、内腔小頭にPCが多く、ミクロソーム膜の細胞質小頭にはPEが多い)はリモデリング中脂肪酸アシル鎖を受容および提供するそれらの固有特性と共に、代謝的に明らかに異なった2つのTGプールの形成に寄与する。その結果、EPA処理で形成されたTGは、VLDL組立体は近付きにくいかもしれない細胞質プールにより多く蓄積された。異なる脂肪酸処理によって誘導されたPC/PE比の改変と共にリン脂質リモデリングは、TG合成/分布およびVLDL組立体に大きな影響を及ぼすと考えられる。
【0030】
本発明者らは、post−ER分解に関してディスタル−ゴルジ体の膜におけるPC/PE比の改変の効果について試験した。自食胞形成のプロセス全体に関与する必須タンパク質の1つはMap1LC3であり、これは2つの形態、すなわち18kDaサイトゾル型および16kDa膜結合型で存在する(Kabeyaら、2000年)。この酵母相同体Apg8/Aut7pは、自食胞膜と結合するとPEと共役になる。したがって、膜結合型Map1LC3はPE共役形態であると仮定されてきた(Ichimuraら、2000年、Nature、408号、488〜492)。自食胞形成は、「分離膜」と定義される膜構造体の形成と共に始まり、これは物質を徐々に包み込む、ER由来(Uenoら、1991年、J.Biol.Chem.、266号、18995〜18999)、トランスゴルジ体ネットワーク由来(Yamamotoら、1990年、J.Histochem.Cytochem.、38号、573〜580)、および/または固有の、未同定の細胞内区画由来(Stromhaugら1998年、Biochem.J.、335号、217〜224)であると仮定される。分離膜と液胞膜との間の融合によって自食胞が形成され、次にこの自食胞はリソソームと融合してオートファゴリソソームを形成し、その結果、内腔内容物が分解される(Yamamotoら、1990年)。トランスゴルジ体近傍の二重膜構造に包まれた脂質/リポタンパク質を含む液胞のTEMによる検出、および共焦点および蛍光顕微鏡による自家食作用マーカーMap1LC3およびMDCの点状染色の増大の検出からはそれぞれ、自家食作用がEPA処理によって誘導されることが明らかに示されている。自食胞形成の本質的性質は、細胞生存に必須であるが(KlionskyとEmr、2000年、Science、290号、1717〜1721)、オレイン酸処理細胞および対照細胞両方でも検出されたように、EPA処理における自家食作用の増加は、第2段階組み立ての機能障害の結果生じる、ディスタル−ゴルジ体中の蓄積された異常な脂質/リポタンパク質および/または細胞質中の脂質粒子の廃棄において重要な役割を果たすものと思われる。培養細胞における自食胞形成を、飢餓条件によって刺激することができるか(KlinoskyとEmr、2000年)、またはホスファチジルイノシチジル3−キナーゼの阻害剤である、ワートマニンまたは3−メチルアデニンによって阻害することができる(Mizushimaら、2001年、J.Cell.Biol.、152号、657〜668)。apoBの非プロテアソーム分解はホスファチジルイノシチド3−キナーゼ阻害を受け易いという事実(Fisherら、2001年;Phungら、1997年)を考慮して、本発明者らは自家食作用はVLDL組立体中のpost−ER分解のためのミッシングリンクを表していると考えている。したがって第1段階組み立て中のapoB分解はユビキチン−プロテアソーム経路によって媒介される(FisherとGinsberg、2002年;Yaoら、1997年)ことが知られているが、本発明者らは第2段階組み立ての障害から発生した異常な脂質/リポタンパク質は自家食作用によって少なくとも部分的には除去されると提唱する。代謝的にはっきりと区別できるTGプールのほか自食胞形成のリン脂質リモデリングと分布との関係を図11に示している。
【0031】
本発明者らは18:1(n−9)および20:5(n−3)アシル鎖を含む膜脂質はVLDL組立体において重要であることを決定した。区画化された18:1(n−9)−TGおよび20:5(n−3)−TGプールはオレイン酸処理およびEPA処理が第2段階組み立てにどのように影響するかの違いを説明するが、膜リン脂質種の改変はVLDL組立体に直接影響を及ぼす可能性もある。この分子種分析からは、EPA処理によって、18:1(n−9)を含む膜結合PC種およびPE種は著明に減少し、20:5(n−3)を含む種は著明に増加することが明らかになっている。本発明者らは、McA−RH7777細胞において、オレイン酸由来(McLeodら、1996年)またはiPLAの阻害(Tranら、2000年)のいずれかによる、膜PCおよびPE中の18:1(n−9)アシル鎖の減少は第2段階VLDL組み立ての障害と密接に関係していることを実証した。両試験からは、オレイン酸はVLDL組立体より先行するかまたはVLDL組立体と同時に起こるTG合成の基質として単に働くものではないことが示唆される。むしろ、ミクロソームリン脂質への18:1(n−9)アシル鎖の取り込みは、VLDLへTGを効果的に大きく取り込むための膜プラットフォームを確立する。特に、ミクロソーム中の膜結合apoB100は構築された/分泌されたVLDLの前駆体であるという膨大な証拠を考えれば、第2段階組み立てに適合する膜環境を確立することは重要である(Tranら、2002年;Stillemarkら、2000年;HebbachiとGibbon、2001年、J.LipidRes.、42号、1609〜1617;Rustaeusら、1998年、J.Biol.Chem.、273号、5196〜5203)。この文脈により、膜動態力学に重要なホスファチジン酸およびジグリセリドなどの18:1(n−9)を含むその他の脂質(Antonnyら、1997年;Chernomordikら、1995年)も、第2段階組み立てプロセスを促進することが予想できる。
【0032】
本発明者らはEPA処理細胞に18:1(n−9)含有PCが著しく欠乏した状態のゴルジ体にPEが大量に蓄積されていることを観察した。これらの結果はまず、脂質ドナーおよび脂質受容体の組み立て中間体がVLDL組立体部位にあることを明らかにしている。EPA処理細胞のTEM形態計測解析データからは、ディスタル−ゴルジ体および液胞において元の脂質ドナー(I型)、中間脂質ドナー(II型およびIII型)、および新生リポタンパク質(IV型およびV型)と類似した異なるタイプの脂質/リポタンパク質粒子の存在が明らかとなった。膜結合apoB100はVLDLの前駆物質であるので、第2段階組み立て障害は、apoB100がディスタル−ゴルジ体の膜内に蓄積し、中間脂質/リポタンパク質粒子を収容した分解液胞の形成によって発現することは明らかである。post−ER分解と第2段階VLDL組み立てとの間の均衡の一方または他方に向かう傾斜は、膜リン脂質種を改変することによって影響され得る。
【0033】
したがって、本発明者らは、アポリポタンパク質Bならびに脂質およびリポタンパク質粒子のpost−ER分解が生じる細胞内区画を同定し、特徴付けた。この区画の特徴は次のようなものである:
1.自家食作用経路の最近接(proximal−most)で明確な区画はトランス−ゴルジ体近傍の液胞(ゴルジ体結合液胞GAV)である。
【0034】
2.GAVはリボシル化された小胞体と連続しているように見える大槽膜によって包まれている。これらの膜は自食されることになる物質の最初の隔絶に関与する「分離膜」に類似している。
【0035】
3.GAVは脂質ドナー粒子および脂質受容体粒子の異なる成熟中間体を表すことが企てられた5種類の電子密度の高い粒子を含んでいる。同じ5種類の粒子は分泌経路(すなわち、小胞体およびゴルジ体)内にも観察されるが、その粒子は異なった粒子−粒子および粒子−膜関係を示す。
【0036】
4.免疫蛍光試験に基づけば、Map1LC3(すべての自食構造体の、ただし最も強力な初期の自食構造体のマーカー)およびアポリポタンパク質B(超低密度リポタンパク質のタンパク質成分)はGAVに共存している。
【0037】
5.緻密な液胞は、自己蛍光薬モノダンシルカダベリンに反応するより進んだ分解内容物と共に、GAV近傍に位置している。
【0038】
医薬組成物および治療方法
自家食作用がTGおよびVLDLを調節するという本発明者らの発見を考えれば、本発明は、TGおよび/またはVLDLの血中濃度を調節する自家食作用調節化合物の使用とTGおよび/またはVLDLの異常なレベルが特徴である疾患または障害の治療に有用な治療薬を調製するための自家食作用調節化合物の使用とを包含するものである。
【0039】
(TGおよびVLDLの血中濃度を低減させるのに有用な医薬組成物)
一態様では、本発明はトリグリセリドおよび/またはVLDLの血中濃度を低減させるのに有用な医薬組成物製造用の自家食作用誘導化合物の使用を提供する。
【0040】
トリグリセリドおよび/またはVLDLの血中濃度を低減させるのに有用な本発明の医薬組成物は、自家食作用誘導化合物と、薬学的に許容できる担体を含む。「自家食作用誘導化合物」という用語は、自家食作用を、特にオートファゴソームのオートファゴリソソームへの熟成を促進することのできる有機小分子、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、および、DNAおよびRNA配列を含む核酸配列を包含する。
【0041】
例えば、自家食作用阻害化合物は、自家食作用を阻害または下方制御するタンパク質の転写または発現を阻害するように設計されたアンチセンスDNAまたはRNA分子であり得る。例えば、自家食作用誘導化合物は、自家食作用の公知の阻害剤であるI型PI3’キナーゼの転写または発現を阻害するアンチセンス配列であり得る。
【0042】
自家食作用誘導化合物は自家食作用の誘導/開始を促進するタンパク質をコードする組換えDNA分子であり得る。例えば、自家食作用誘導化合物はMap1LC3、GABARAP、GATE16、またはIII型PI3’キナーゼなどの自家食作用アゴニストをコードする組換えDNA分子であり得る。
【0043】
自家食作用誘導化合物は、自家食作用を阻害または下方制御するタンパク質を選択的に認識するか、または選択的にそのタンパク質に結合する抗体または抗体断片であり得る。例えば、自家食作用誘導化合物はI型PI3’キナーゼに結合する抗体であり得る。
【0044】
自家食作用誘導化合物は自家食作用の誘導/開始を促進するタンパク質をコードする組換えDNA分子であり得る。例えば、この自家食作用誘導化合物はMap1LC3(微小管結合タンパク質1鎖3/LC3)、GABARAP(γ−アミノ酪酸(GABA)−受容体結合タンパク質)、GATE16(16kDaのゴルジ結合アデノシン三リン酸分解酵素エンハンサー)、およびIII型PI3’キナーゼなどの自家食作用アゴニストをコードする組換えDNA分子であり得る。これらのタンパク質は酵母(Mizushimaら、2003年、Int.J.Biochem.and Cell Biology、35号、553〜561)および哺乳動物細胞における自家食作用の誘導/開始のためのアゴニストとして同定されている。先に示したタンパク質各々のイソ型を用いて本発明の医薬組成物を調製することができる。例えば、Map1LC3はラットでは2つのイソ型(IおよびII)で、ヒトA、B、およびCでは3つのイソ型で存在する。
【0045】
別の場合には、自家食作用誘導化合物は、これに限らないがMap1LC3、GABARAP、GATE16、およびIII型PI3’キナーゼなどの自家食作用を促進するタンパク質であり得る。
【0046】
Map1LC3およびその酵母類似体は自家食作用膜内のPE部分に共有結合すると考えられる。このため、膜内のPEの量/濃度を変える化合物は、本発明の医薬組成物の調製用の自家食作用誘導化合物として有用である。この自家食作用誘導化合物はその他の抗高脂症薬または心血管作動薬を含む医薬組成物として調製され得る。
【0047】
(TGおよびVLDLの血中濃度を上昇させるのに有用な医薬組成物)
別の態様では、本発明はTGおよび/またはVLDLの血中濃度を上昇させるのに有用な医薬組成物の調製用の自家食作用阻害化合物の使用を提供する。本発明の医薬組成物は自家食作用阻害化合物と薬学的に許容できる担体とを含む。「自家食作用阻害化合物」という用語は、有機小分子、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、および自家食作用を完全にまたは部分的に阻害することのできるDNA配列およびRNA配列を含む核酸配列を包含するものである。
【0048】
本発明の好適な実施形態では、自家食作用阻害化合物は自家食作用の公知の阻害剤であり、およびホスファチジルイノシトール3’キナーゼ(PI3’キナーゼ)を阻害する、ワートマニン、3−メチルアデニンまたはLY294002である。
【0049】
ラパマイシンは自家食作用の公知の阻害剤であり、これを用いて本発明の医薬組成物を調製することができる。ラパマイシンはmTor(哺乳動物のラパマイシンン標的)およびPI3’キナーゼと相同性のあるSer/Thrキナーゼの機能を阻害する大環状ラクトンである。I型PI3’キナーゼも公知の自家食作用アンタゴニストであり、本発明の医薬組成物を調製するための自家食作用阻害化合物として用いることができる。
【0050】
(医薬組成物の調製および投与)
本発明の医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠剤化、微粒子化、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥手段を用いて、それ自身が公知の方法で製造することができる。
【0051】
したがって、本発明に従って使用される医薬組成物は、該活性化合物を医薬的に使用することのできる製剤に処理するのを容易にする賦形剤および佐剤を含む1つまたは複数の医薬的に許容可能な担体を用いた従来の方法で調製され得る。適した剤形は選択される投与経路に左右される。
【0052】
注入の場合、本発明の薬剤は水溶液として、好適には、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水などの生理学的に適合する緩衝液として調製され得る。経粘膜投与の場合、浸透される障壁に適した浸透剤が製剤に用いられる。そのような浸透剤は一般に当業者には知られている。
【0053】
経口投与の場合、活性化合物と当業者にはよく公知の薬学的に許容できる担体とを組み合わせることによって容易に本化合物を調製することができる。このような担体は本発明の化合物を治療される患者が経口摂取するための錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁剤等として調製できるようにする。経口用の医薬的調製物は、錠剤または糖衣錠の芯を得るために、場合によって得られる混合物を磨り潰し、必要に応じて、適した佐剤を添加した後にその顆粒混合物を処理することによって、固体賦形剤として得ることができる。適した固体賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールなどの糖:例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのナトリウムなどのセルロース調製物といった充填剤である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、あるいはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどの塩といった崩壊剤を添加してもよい。
【0054】
糖衣剤の芯には適したコーティングを施す。この目的のために、濃縮砂糖水が使用されてよく、場合によってはこの砂糖水はアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適した有機溶媒または溶媒混合液を含んでよい。識別のため、または活性化合物投与量の異なる組合せを区別するために、染料または顔料を錠剤または糖衣剤のコーティングに添加してもよい。
【0055】
経口投与に使用できる医薬製剤には、ゼラチンから作られた押し込み型カプセルのほか、グリセロールまたはソルビトールといった、ゼラチンおよび可塑剤から作られた軟らかい密閉カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、乳糖などの充填剤、でんぷんなどの結合剤、および/または滑石またはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および場合によっては安定剤などと混合した活性成分を含むことができる。軟カプセルでは、活性成分は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適した液体に溶解または懸濁されてよい。また、安定剤を添加することもできる。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に適した投与量にしなければならない。
【0056】
口腔投与の場合、該組成物は従来の方法で調製された錠剤またはトローチ剤の形態であってよい。
【0057】
吸入投与の場合、本発明に従って使用するための化合物は便宜的には、適した推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素、または他の適したガスを用いて、加圧されたパックからのエアゾールスプレーまたは噴霧器の形態で届けられる。加圧エアロゾルの場合、計量装置は計量された量を届けるために弁を設けることによって決定することができる。例えば、吸入器または送気器に使用するゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、本化合物と乳糖またはデンプンなどの適した粉末基剤の粉末混合物を含んで調製することができる。
【0058】
該化合物は、注入、例えば、ボーラス注入または持続注入による非経口投与用に調製されてよい。注入用製剤は、防腐剤を添加した状態で、単位投与形態で、例えば、アンプルまたは複数回投与用容器で提供されてよい。該組成物は油性または水性媒体を用いた懸濁剤、溶液、または乳剤などの形態を取ってよく、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの調製用薬剤を含んでもよい。
【0059】
非経口投与用の医薬製剤には水溶性形態の活性化合物の水溶液がある。また、活性化合物の懸濁剤は適した油状の注入用懸濁剤として調製され得る。適した脂溶性の溶媒または媒体には、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、あるいはリポソームが挙げられる。水性の注入用懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁剤の粘度を上げる物質を含んでよい。場合によっては、該懸濁剤は、高濃縮液の調製を可能にするために化合物の可溶性を上げる適した安定剤または薬剤を含んでもよい。
【0060】
別の場合には、該活性成分は、使用前に適した媒体、例えば、滅菌したパイロジェンフリー蒸留水と共に構成されるように粉末形態であってよい。
【0061】
該化合物は、例えばカカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐薬用基剤を含む、坐薬または滞留浣腸などの直腸用組成物として調製することもできる。
【0062】
上記調剤に加え、本化合物はデポー製剤として調製され得る。そのような長時間作用調剤は埋め込み(例えば、皮下または筋内)によって、または筋内投与によって投与され得る。したがって、例えば、本化合物は適した高分子材料または疎水性材料(例えば、許容できるオイルに溶かした乳剤として)またはイオン交換樹脂と共に、あるいは難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として調製することができる。
【0063】
本発明の疎水性化合物用の医薬的担体は、ベンジルアルコール、無極性界面活性剤、水混和性有機高分子、および水相を含む共溶媒系である。当然、共溶媒系の比率はその可溶性および毒性を壊すことなく相当に変えることがきる。さらに、該共溶媒成分の独自性を変えることができる。
【0064】
別の場合には、疎水性医薬化合物のための他の送達系を用いてよい。
【0065】
リポソームおよび乳剤は疎水性薬剤用の送達媒体または担体のよく公知の例である。ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒を用いることもできるが、通常はより高い毒性という犠牲が伴う。あるいは、該化合物は、治療薬剤を含む固体の疎水性高分子の半透性基質などの徐放系を用いて送達されてよい。種々の徐放性物質が確立されており、当業者にはよく知られている。徐放性カプセルはその化学的性質に応じて、数週間から100日間以上にわたって化合物を放出する。治療薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質を安定化させるための別の戦略を用いてよい。
【0066】
該医薬組成物は適した固相またはゲル相の担体または賦形剤を含んでもよい。
【0067】
そのような担体または賦形剤の例には、これに限らないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどの高分子が挙げられる。
【0068】
本発明の化合物の多くは、医薬的に適合性のある対イオンを有する塩として提供することができる。医薬的に適合性のある塩はこれに限らないが塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等の多くの酸を用いて形成することができる。塩はこれに相当する遊離塩基である水性溶媒または他のプロトン性溶媒中ではさらに溶け易くなる。
【0069】
適した投与経路には、例えば、経口、直腸、経粘膜、経皮、または腸管投与;筋内、皮下、骨髄内注入のほか、髄腔内、直接心室内、静脈内、腹腔内、経鼻、または眼球内注入などの非経口送達がある。
【0070】
標的薬物送達系、例えば、病的細胞のための抗体でコーティングされたリポソームを用いて薬剤を投与してよい。このリポソームは細胞に向かい、その細胞によって選択的に取り込まれる。
【0071】
該医薬組成物は一般に、特異的適応または複数の適応の治療または予防のための有効な量で投与される。最適な投与量は、各治療方法および指示のための標準的方法によって、その指示、その重篤度、投与経路、複雑な条件等を考慮した上で決定されるであろうことを理解されたい。治療において、または予防として、該活性薬剤は注入可能な組成物として、例えば、無菌水性分散剤として、好適には等張液として個人に投与することができる。さらに、治療有効投与量とは、係る疾患に関連する症状の改善をもたらすのに十分な化合物の量を指す。本出願の化合物の調製および投与のための方法は、Mack.E.W.、1990年、Remington‘s Pharmaceutical Science、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、第13版にみることができる。哺乳動物、特にヒトに投与する場合、本活性剤の1日の投与量レベルは、0.001mg/kg〜10mg/kg、典型的には0.01mg/kg〜1mg/kgであると想定される。どのような場合であっても、医師は個人に最も適し、その特定の個人の年齢、体重、および反応と共に変動する実際の投与量を決定する。上記投与量は平均的な症例の例である。当然、より多いかまたはより少ない投与量が良いという個々の例も考えられ、そのような投与量は本発明の範囲にある。
【0072】
(治療方法)
本発明はトリグリセリドおよびVLDLの血中濃度を改変する自家食作用調節化合物の使用を包含する。
【0073】
一態様では、本発明はトリグリセリドおよびVLDLの血中濃度を低下させる自家食作用誘導化合物の使用を提供する。別の態様では、本発明はトリグリセリドおよび/またはVLDLの血中濃度の上昇から生じるか、またはそれに関連する障害を治療または予防する自家食作用誘導化合物の使用を提供する。
【0074】
トリグリセリドおよびVLDLの血中濃度の低減およびトリグリセリドおよび/またはVLDLの血中濃度の上昇から生じるか、またはそれに関連する障害の治療または予防は、治療有効量の自家食作用誘導化合物をそれを必要とする患者に投与することによって達成することができる。
【0075】
自家食作用誘導化合物によって治療され得るまたは予防され得る疾患および障害は、これに限らないが、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心筋虚血、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、再狭窄、糖尿病、インシュリン抵抗性、代謝症候群、腎疾患、血液透析、I型糖原病、多嚢胞性卵巣症候群、二次性高トリグリセリド血症、またはこれらの組合せが挙げられる。一般に、自家食作用誘導化合物およびその医薬組成物は、TGおよび/またはVLDLの血中濃度を低減させる際に有益となろう疾患を有する患者を治療するのに有用である。
【0076】
医薬的活性剤の「有効量」または「治療有効量」とは、所望の効果を提供する薬または薬剤の無毒性であるが、十分な量を意味する。本発明の併用療法では、併用療法の1つの成分の「有効量」は、併用療法の他方の成分と併用して使用されるときに所望の効果を提供するのに有効な化合物の量である。「有効」である量は、個人の年齢および一般条件、特定の活性剤または複数の活性剤、等に応じて患者毎に変わる。したがって、正確な「有効量」を指定できるとは限らない。しかし、どのような個々の場合においても、適した「有効」量は通常の実験を用いて当業者によって決定され得る。
【0077】
本発明によって包含されるどの活性薬剤の治療有効量も、当業者には明白である多数の因子および本願明細書の開示を考慮して左右されよう。特にこれらの因子には、投与される化合物の同定、その調製、使用される投与経路、患者の性別、年齢および体重、治療されている状態の重篤度、および胃腸管、肝胆道系および腎臓系に影響を及ぼす合併症の存在が挙げられる。投与量および毒性を決定する方法は、一般には動物を対象に開始され、次いで、著明な動物毒性が認められない場合にはヒトを対象に開始される試験を用いて、当業者にはよく知られている。脂質レベルを監視することによって投与量の適切性を判断することができる。この投与量が治療後1〜10週間で血中TGおよび/またはVLDLレベルを改善しない場合、投与量を増やすことができる。
【0078】
投与される自家食作用誘導化合物がDNAまたはRNA配列などの核酸配列の形態である場合、従来の遺伝子治療アプローチを用いることができる。DNAまたはRNA配列形態での自家食作用誘導化合物の小胞体は、これに限らないが、送達媒体としのリポソームの使用を含む、当業者に公知の方法を用いて達成することができる。末端の修飾、環状分子の形成、またはphosphothionateおよびチオホスホリル修飾結合などの代替的結合の使用によるものなどの分解に対して抵抗性のある形態である場合には、裸のDNAまたはRNA分子を用いてもよい。また、核酸分子がポリリシンまたはトランスフェリンと共役である場合、核酸の送達は促進輸送によるものであってよい。核酸はこれに限らないが、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、AAV、およびアデノウイルスを含む種々のウイルス担体の任意のものによって細胞内へ輸送されてよい。
【0079】
有機小分子、薬理学的化合物または薬剤、ペプチド、タンパク質、抗体または抗体断片の形態で自家食作用誘導化合物を投与する場合、従来の薬物療法を用いることができる。この活性成分は上記のような適した医薬的担体を用いて投与することができる。
【0080】
本発明の好適な実施形態では、トリグリセリドおよび/またはVLDLの血中濃度の上昇から生じるか、またはそれに随伴する疾患の予防治療は、治療有効量のMap1LC3、GABARAP、GATE16、III型P13’キナーゼまたはこれらの組合せによって達成される。
【0081】
したがって本発明の組成物によって治療可能な疾患には、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心筋虚血、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、再狭窄、糖尿病、インシュリン抵抗性、代謝症候群、腎疾患、血液透析、I型糖原病、多嚢胞性卵巣症候群、二次性高トリグリセリド血症、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0082】
自家食作用調節化合物を同定する方法および同定された化合物の使用
本発明は自家食作用を増強または阻害する核酸、タンパク質、化合物または薬理学的製剤をスクリーニングする方法を含む。細胞をベースに下細胞溶解物および/または精製酵素アッセイを用いてこれらの増強化合物または阻害化合物を同定することができる。本願明細書で使用するように、「試験化合物」という用語には、これに限らないが、小分子(例えば、有機小分子)、薬理学的化合物または薬剤、ペプチド、タンパク質、抗体または抗体断片、およびDNAおよびRNA配列を含む核酸配列が挙げられる。
【0083】
一態様では、本発明は脂質の分解量および分泌量の変動をアッセイすることを伴う自家食作用調節化合物を同定する方法を提供する。本方法は(a)対照細胞培養系および試験細胞培養系を提供するステップと、(b)前記試験細胞培養系の細胞に試験化合物を投与するステップと、(c)前記対照細胞培養系および試験細胞培養系において自家食作用マーカーをアッセイするステップとを含み、前記対照細胞培養系と比較して前記試験細胞培養系における前記自家食作用マーカーの異常値が試験化合物が自家食作用を調節したことを示す。
【0084】
本発明の一実施形態では、自家食作用マーカーはVLDLまたはVLDL前駆体である。本発明の別の実施形態では、アッセイされたVLDL前駆体はPC部分含有脂質およびPE部分含有脂質を含む。さらに好適な実施形態では、PC部分含有脂質は18:1(n−9)PCであり、PE部分含有脂質は20:5(n−3)PEである。
【0085】
ERおよびゴルジ細胞画分中および試験細胞培養用の培地中のVLDLおよびVLDL前駆体のレベルが未処理の対照細胞培地と比較して異常である場合、化合物は自家食作用モジュレーターであると肯定的に同定される。(1)ERおよびゴルジ細胞画分中に観察されたVLDLおよびVLDL前駆体のレベルが未処理の対照細胞について観察されたレベルよりも高い場合、および(2)その細胞培地中のVLDLおよびVLDL前駆体のレベルが未処理の対照細胞について観察されたレベルよりも低い場合、試験化合物は自家食作用誘導剤であると同定される。逆に、(1)ERおよびゴルジ細胞画分中に観察されたVLDLおよびVLDL前駆体のレベルが未処理の対照細胞について観察されたレベルよりも低い場合、(2)その細胞培地中のVLDLおよびVLDL前駆体のレベルが未処理の対照細胞について観察されたレベルよりも高い場合、試験化合物は自家食作用阻害剤であると同定される。
【0086】
VLDLおよびVLDL前駆体は、高速液体クロマトグラフィーなどの当業者に公知のクロマトグラフィー法、より好適には公知の質量分析法を用いてアッセイすることができる。
【0087】
別の態様では、本発明は膜組成の変化の分析を伴う、自家食作用誘導化合物を同定する方法を提供する。本発明は(a)細胞培養系の細胞に試験化合物を投与するステップと、(b)ER細胞画分およびゴルジ細胞画分におけるPC部分含有脂質およびPE部分含有脂質をアッセイするステップとを含む。未処理の対照試験細胞と比較してPC部分含有脂質が減少し、PE部分含有脂質が上昇している場合、試験化合物は自家食作用誘導化合物であると同定される。本発明の一実施形態では、アッセイされるPC部分含有脂質は18:1(n−9)PE部分含有脂質であり、アッセイされるPE部分含有脂質は20:5(n−3)PEである。このPEおよびPC部分含有脂質は、公知の質量分析法を用いてアッセイすることができる。
【0088】
別の実施形態では、自家食作用バイオマーカーはapoB100およびMap1LCである。このバイオマーカーを免疫蛍光測定法を用いてアッセイして、apoB100およびMap1LCの共存の程度を決定することができる。未処理の対照細胞と比較して、apoB100およびMap1LC3の共存の程度が異常である場合、試験化合物は自家食作用モジュレーターであると同定される。共存の程度が未処理細胞で観察されるものより大きい場合、試験化合物は自家食作用誘導剤であると同定される。逆に、共存が存在しない場合または共存の程度が未処理細胞で観察されるものより小さい場合、試験化合物は自家食作用阻害剤であると同定される。
【0089】
本発明の方法のいずれも実行するのに有用な細胞培養系は真菌または哺乳動物の細胞系を含む。本発明の一実施形態では、この細胞は肝細胞または肝癌細胞であり得る。この細胞はヒトapoB100タンパク質を安定して発現するラット肝細胞または肝癌細胞であることがさらに好ましい。発現されたapoB100タンパク質は該タンパク質の検出および測定を容易にする標識融合タンパク質であってよい。例えば、本発明の方法は蛍光タグが付けられたapoB100を発現するMcA−RH7777細胞を用いて実施することができる。このような安定した細胞系を用いて、初期のヒットの化学的誘導体をスクリーニングし、最適な投与量を滴定し、市販の分子のライブラリをスクリーニングすることができる。apoB100融合タンパク質は、蛍光タグ以外に当該分野では公知の他のタグを用いて調製することもできる。例えば、apoB100タンパク質はテトラ−システイン−Cys−Cys−X−X−Cys−Cys−(Xは任意のアミノ酸)で標識化することができる。テトラ−システイン標識化タンパク質は、テトラシステイン2砒素系検出方法を用いてアッセイすることができる(Zhangら、2002年、Nar.Rev.Mol.Cell Biol.、3号、906〜918)。
【0090】
本発明の方法を用いて同定された自家食作用誘導物質を用いてTGおよびVLDLの血中濃度を低減するのに有用な医薬組成物を調製することができる。このような同定された化合物は、これに限らないが、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心筋虚血、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、再狭窄、糖尿病、インシュリン抵抗性、代謝症候群、腎疾患、血液透析、I型糖原病、多嚢胞性卵巣症候群、二次性高トリグリセリド血症、またはこれらの組合せなどの、TGおよびVLDLの血中濃度を低減させることから利益を受けるであろう疾患および障害を治療および予防するのにも有用であろう。
【0091】
逆に、本発明の方法を用いて同定された自家食作用阻害剤を用いて、これらに限らないが過敏性腸症候群およびクローン病などのTGおよびVLDLの血中濃度の上昇から利益が得られるであろう疾患および障害を治療および予防するのに有用である医薬組成物を調製することができる。
【0092】
本発明は本願明細書に記載の特定の方法、プロトコル、細胞系、および試薬に限るものではないことを理解されたい。一般に、以下に記載の細胞培養および分子遺伝学における試験手順は当該分野ではよく公知のものであり、よく用いられる。
【0093】
組換え核酸法、ポリヌクレオチド合成、微生物培養、形質転換等のための標準的な方法が用いられる。一般に、酵素反応および精製ステップは製造業者の仕様に準拠して実施される。本発明の実施および試験においては本願明細書に記載のものと類似するかまたは同等であるどのような方法および材料も用いることができるが、選択された方法、装置、および材料を以下に記載する。
【0094】
実施例試験手順
(材料)
グリセロール[14C]トリオレイン酸(57mCi/mmol)、[H]グリセロール(1.1Ci/mmol)、[14C]オレイン酸(55mCi/mmol)、[35S]メチオニン/システイン(1000Ci/mmol)、タンパク質Aセファロース(商標)CL−4Bビーズ、およびHRP結合抗マウスまたは抗ラビットIgG抗体はAmersham Pharmacia Biotech社から購入した。[H]エイコサペンタエン酸(150Ci/mmol)はAmerican Radiolabeled Chemical社から購入した。フィブロネクチン、モノダンシルカダベリン、およびオレイン酸はSigma社から入手した。トリグリセリドおよびリン脂質標準液はAvanti Polar Lipids社から入手した。エイコサペンタエン酸(過酸化物を含まない)はCayman社から入手した。モノクローナル抗体抗ヒトapoB抗体1D1はR.MilneおよびY.Marcel(オタワ心臓研究所)から提供を受けた。ポリクローナル抗MTPおよび抗ラットapoAI抗血清はC.C.Shoulders(ハマースミス病院、英国)およびJ.E.Vance(アルベルタ大学、カナダ)からそれぞれ提供を受けた。抗ラットMap1LC3抗血清はA.NaraおよびT.Yoshimori(国立遺伝研究所、日本国、三島)の好意により提供を受けた。ヒトLDLに対するポリクローナル抗血清は当研究所で作成した。プロテアーゼ阻害剤カクテルおよび化学発光ブロッティング基質はRoche Diagnostics社から購入した。培養プレートインサート(0.4μm、MILLICELL(商標)−CM、直径30mm)はMillipore社から購入した。
【0095】
(細胞培養および脂肪酸の処理方法)
ヒトapoB100を安定して発現する形質転換McA−RH7777細胞(McLeodら、1994年、J.Biol.Chem.、269号、2852〜2862)を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、10%ウマ血清、および200μg/mlのG418を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いて培養した。規定通り、実験に先立って、20%FBS存在下で0.4mM脂肪酸で16〜18時間、この細胞を培養した。実験中、20%FBSを含み、図の凡例に示した他の試薬を加えた新鮮培地に細胞を保管した。
【0096】
(パルスチェイス試験)
apoBの分泌効率を決定したパルスチェイス試験では、80%の密集度で60mmの皿で細胞を培養し、0.4mMオレイン酸またはEPAで16時間、前培養した。[35S]メチオニン/システイン(メチオニン1mlで希釈した100μCi/ml、ならびに、20%FBSおよび0.4mMオレイン酸またはEPAを含む、システインを含まないDMEM)で細胞を1時間標識し、追跡培地(20%FBSおよび0.4mMオレイン酸またはEPAを含むDMEM)で指示された回数培養した。この培地で分泌され、および細胞に結合した35SapoB100をヒトLDL由来のポリクローナル抗血清を用いて免疫沈降させ、記載(Tranら、2000年)のようなSDS−PAGE/フルオログラフィーによって解析した。異なる細胞下分画の膜および内腔内容物中のapoB100を決定したパルスチェイス試験では、[35S]メチオニン/システイン(メチオニン4mlで希釈した200μCi/ml、ならびに、20%FBSおよび0.4mMオレイン酸またはEPAを含む、システインを含まないDMEM)で100mmの皿中の細胞を20分間標識した。次いで、15、30、45分間、この細胞を追跡培地で培養した。各追跡時間が終わると、培地を収集し、累積比率浮遊遠心分離(Wangら、1999年)にかけ、他のリポタンパク質(すなわち、IDL、LDL、およびHDL)からapoB100−VLDL(S>100)およびapoB100−VLDL(S20〜100)を分離させた。各画分の35S−apoB100を免疫沈降で回収した。また、各追跡時間が終わると、この標識した細胞を氷冷ホモジネート緩衝液(10mMのTris−HCl、pH7.4、250mMショ糖、5mMのEDTA、およびセリン/システインプロテアーゼ阻害剤の混合物)中で捕獲し、2枚の100mmの皿の未標識の細胞と混合し、ボールベアリング式ホモジナイザーに10回通過させることによって均質化し、以下に記載のような細胞下分画および炭酸処理に供した。
【0097】
(細胞下分画)
3種類の細胞下分画(すなわち、ER画分1〜3;シス/メディアルゴルジ細胞画分4〜8;ディスタル−ゴルジ細胞画分9〜15)は、これまでに記載されたような(Tranら、2002年)post−nuclear浮遊物のNycodenz勾配遠心分離(HammondとHelenius、1994年、J.Cell.Biol.、126号、41〜52;Rickwoodら、1982年。Anal.Biochem.、123号、23〜31)を用いて細胞溶解物から得た。
【0098】
(apoB100結合膜およびミクロソームの内腔内容物の分析)
内腔内容物は、炭酸ナトリウム処理、その後遠心分離を行って膜から分離させた(Tranら、2002年)。膜および内腔と結合している35S標識化apoB100は免疫沈降によって回収し、これまでに記載されたような(Tranら、2002年)SDS−PAGE/フルオログラフィーによって解析した。
【0099】
(競合酵素結合免疫吸着検定法(ELISA))
ELISAプレートをヒトLDL(PBSで希釈した1mg/ml、16時間4℃)でコーティングし、脱脂粉乳(PBSで希釈5%、2時間37℃)で遮断し、0.02%Tween−20を含むPBSで3回洗浄した。連続希釈濃度のヒトLDLおよび培地サンプルの存在下で、apoBモノクローナル抗体1D1(1:64,000、16時間4℃)でプレートを培養した。このプレートを洗浄し、ホースラディシュペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG抗体(1:10,000、2時間37℃)で培養し、次に、ELISA用の液体基質系(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)を添加した。この反応物をOD655の分光光度計読取りによって比色分析法により定量化した。
【0100】
(透過型電子顕微鏡)
通常の培養培地においてフィブロネクチンで事前にコーティングしたMILLICELL(商標)−CMインサート膜上で細胞を20時間培養し、20%FBSおよび0.4mMオレイン酸またはEPAを含む新鮮DMEMを用いてさらに4時間培養した。これまでに記載したように(Tranら、2002年)透過型電子顕微鏡用にこのサンプルを処理した。単一および連続した薄片(銀/金干渉色)をHitachi H−7000透過型電子顕微鏡で可視化し、負の倍率で取り込んだ(8,000〜120,000倍)。パノラマ式チリングを用いて広い領域を取り込んだ。これまでに記載された方法(Thorne−Tjomslandら、1998年、Anat.Rec.、250号、381〜396)によって、7枚の連続像(正の倍率=70,000倍)からゴルジ体領域から3Dモデルを作成し、次のような改変を行った。この連続領域をImac 700MHz G4コンピュータのAdobe Photoshop 5.5へスキャンした。物体の輪郭作成および分離の前に、基準マーカーによる連続的な断片の位置合わせを行った。SGI−OS 2上のSynuにおいて繋ぎ合わせおよび体積レンダリングを行い、MachintoshプラットフォームでPhotoshopを用いて画像キャプチャを行った。リポタンパク質粒子と脂質液滴との組合せを表す電子密度が高い粒子の直径を、EPA処理細胞からの無作為に選択された40個のゴルジ体領域において測定した。負の倍率は40,000倍とし、ポジ画像はさらに3倍に拡大した。デジタル式測径器を用いて、測定はポジ画像から行った[所要範囲(正で0〜150mm)の技術仕様:最大解像度=0.01mm;精度=0.02mm;再現性=0.01mm]。本発明者らのシステムの精度は、2つの電子密度が高い粒子各々(直径20nmおよび40nm)の直径を40回測定することによって検証した。変換された平均測定値のSDは≦1nmであった。ゴルジ体を選択し、シス−トランス極性を確立し、脂質/リポタンパク質粒子を測定するための基準は記載(Tranら、2002年)されたようなものとした。内腔のゴルジ体小頭に直接並んでいる場合、または、内腔の場合とは異なり、膜がゴルジ体小頭から分岐している場合、脂質/リポタンパク質粒子を膜結合していると分類した。
【0101】
(免疫細胞化学)
フィブリノネクチンで事前にコーティングされたカバースリップ上に24時間置き、20%FBSを含むDMEMで希釈した0.4mMオレイン酸およびEPAで4時間培養し、PBSで希釈した3%パラホルムアルデヒドで固定した。ブロッキング緩衝液(PBSで希釈した10%FBS)中で1%TritonX−100で30分間透過処理し、一次抗体、すなわちヒトapoB用のモノクローナル抗体1D1(1:1000)およびラットMap1LC3用のポリクローナル抗体(1:200)で1時間精査した。次いで、二次抗体(1:200)の、すなわち、Alexa Fluor(商標)488(緑色)と共役であるヤギ抗マウスIgGおよびAlexa Fluor(商標)594(赤色)と共役であるヤギ抗ウサギIgGの混合物と共に1時間培養した。SlowFade AntiFadeキット(Molecular Probes社)を用いてカバースリップをスライドガラスの上に設置し、この画像をMRC−1024レーザー走査型共焦点イメージングシステムによって取り込んだ。
【0102】
(モノダンシルカダベリン(MDC)標識)
マイクロウェル皿(MatTek社)底のポリ−d−リシンでコーティングしたガラスの上に細胞を24時間載せ、20%血清を含むDMEMで希釈した0.4mMオレイン酸またはEPAで4時間培養した。次いで、細胞をDMEMで希釈した0.05mMのMDCで37℃、10分間培養した(Biederbick、1995年、Eur.J.Cell Biol.、66号、3〜14;MunafoとColombo、2001年、J.Cell Sci.、114号、3619〜3629)。培養後、細胞をPBSで3回洗浄し、3%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。固定後、細胞をPBSで4回洗浄し、12ビットIMAGO SVGA CCDカメラおよびTill PolychromeIV モノクロメータを備えたOlympus IX70倒立顕微鏡を用いて蛍光顕微鏡によって分析した。フラーフィルターセット(T.I.L.L. Photonics GmbH社)を用いてMDCを380nmで抽出した。TillVisIONソフトウェア、version4.0を用いてこの画像を処理した。
【0103】
(タンデム質量分析)
DMEM(20%FBS±0.4mMオレイン酸またはEPA)に細胞を16時間保管し、新鮮培地(20%FBS±0.4mMオレイン酸またはEPA)を用いてさらに2時間再度培養した。ER(Nycodenz画分1〜3)、シス/メディアルゴルジ体(画分4〜8)、およびディスタル−ゴルジ体(画分9〜15)からの膜調製物および内腔調製物を、8枚の100mm皿から貯蔵された細胞から抽出した。内部基準のように、230ピコモルのジミリストイル(14:0−14:0)PCおよび110ピコモルのジパルミトイル(16:0−16:0)PE存在下で、クロロホルム/メタノール/酢酸/飽和塩化ナトリウム/HO(体積比4:2:0.1:1:2)を用いてサンプルから脂質を抽出した。脂質抽出物の部分標本をタンデム質量分析に適用し、先に記載されたような(Tranら、2002年;DeLongら、1999年、J.Biol.Chem.、274号、29683〜29688)陰イオンモードで娘イオン分析によって、PCおよびPEの分子種(すなわち、脂肪酸組成)を決定した。各分子種のピークの下の統合された面積を内部基準の面積と比較することによって定量化した。
【0104】
(その他のアッセイ)
変形例(Wangら、1999年)と共に、公開されている方法(Wetterauら、1992年、Science258号、999〜1001)に従ってMTPのTG転移活性を決定した。このホスファチド酸ホスフォヒドロラーゼ活性を確立された方法(Jamalら、1991年、J.Biol.Chem.、266号、2988〜2996)によって決定した。先に記載(Tranら、2000年)されているように、TLCによって脂質の抽出および分析を行った。BCA(商標)タンパク質アッセイキット(Pierce社)を用いてタンパク質を決定した。
【実施例1】
【0105】
EPA処理によってTG分泌量は低減される
オレイン酸またはEPAで16時間事前処理した細胞を[35S]メチオニン/システインで30分間標識し、正常培地(追跡)で1時間培養した。馴化培地(図1A)またはミクロソームの内腔内容物(図1B)を比率浮遊遠心分離に供した。各画分の[35S]−apoB100を免疫沈降させ、SDS(SDS−PAGE)存在下でポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、フルオログラフィーによって可視化した。図1Aおよび1Bの上部パネルは4回以上行った試験の代表的なフルオログラムであり、同様の結果が得られた。アスタリスクでマークした帯はSDS存在下では不溶性の[35S]apoB100種を表している。図1Aおよび1Bの下部パネルは、定量化した、各画分における(不溶性の種を含む)[35S]apoB100種に関連する放射活性を示している。図1Aおよび1Bの上部パネルに示したような「HDL」は、浮遊密度が血漿HDLのものと似ているLpBを指している。
【0106】
ヒト(Fisherら、1998年、J.Lipid Res.、39号:388〜401;Hsuら、2000年、Am.J.Clin.Nutr.、71号:28〜35;Sullivanら、1986年、Atherosclerosis、61号:129〜134)およびサル(Parksら、1989年、J.Lipid Res.、30号:1535〜1544;Parksら、1990年、J.Lipid Res.、31号:455〜466)を対象にしたこれまでの試験から、EPA処理によって血漿VLDL−apoB100およびVLDL−TG濃度は低減されることが明らかとなった。血中脂質が正常なヒト被験者および高脂血症ヒト被験者では、魚油食によって血漿TGおよびVLDL−apoBは低下したが、LDL−apoBおよびLDL−コレステロールは上昇し、総血漿apoB濃度は変化しなかった(Nestelら、1984年、J.Clin.Invest、74号:82〜89;Fisherら、1998年、J.Lipid Res.、39号:388〜401)。内臓型肥満のヒトでは、n−3脂肪酸補給によって、VLDL−apoB生産速度は29%低下した(Chanら、2003年、Am.J.Clin.Nutr.、77号:300〜307)。これらのデータは魚油の特異的標的はおそらく、大きくTGの濃度が高いapoB含有リポタンパク質(LpB)の組み立てである。EPA処理を行えば、VLDLの第2段階組み立てに阻害作用に影響を及ぼすかもしれないと仮定し、モデルとしてヒトapoB100形質転換McA−RH7777を用いてこの仮説を検証した。VLDLの組み立てと分泌に関係のある一時的および空間的事象をオレイン酸処理条件とEPA処理条件との間で比較した。以下に記載のすべての実験においては、新しく合成されたapoB100のプロテアソーム媒介の細胞内分解を最小化し、および外来性のオレイン酸誘導VLDL組み立てを促進するために20%血清を補給した培地で細胞を培養した(McLeodら、1996年、J.Biol.Chem.、271号:18445〜13455)。[35S]アミノ酸で細胞を30分間パルス標識し、(炭酸処理後に)その培地へと分泌されたかまたはミクロソームの内腔内に存在するかのいずれかであるリポタンパク質と結合したapoB100結合タンパク質を、1時間の追跡終了時に決定した。30分のパルス終了時にapoB100へ取り込まれた[35S]の量は、オレイン酸処理細胞とEPA処理細胞との間で同じであった(データは示さず)。1時間の追跡終了時、EPA処理によって、その培地のVLDL(VLDLおよびVLDL)中の[35S]−apoB100は(オレイン酸処理に比して50%)減少し(図1A)、ミクロソーム内腔の高密度の画分[例えば、中間密度リポタンパク質(IDL)およびLDL)]中の[35S]−apoB100は(6倍)増加した(図1B)。内腔のVLDL結合apoB100におけるオレイン酸処理細胞とEPA処理細胞との違いは分泌されたVLDL(図1B)のものよりも著しいものではなく、このことは一部のVLDLを構築する能力がEPA処理細胞には保持されていたことを示している。
【0107】
EPA処理細胞のミクロソーム内腔(および培地においても)では、SDSサンプル緩衝液に不溶であった[35S]−apoB100種の著明な上昇が認められたことは予想外であった(図1AおよびBでアスタリスクで示した帯)。遅延している帯は、ヒトapoBを認識する抗体1D1と反応している(データは示さず)。SDS−PAGE中に6%尿素を含んでいたために、apoB100凝集を除去することはできなかった(データは示さず)。水溶性抗酸化物(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン)または脂溶性抗酸化物(例えば、α−トコフェロール)のいずれかでサンプルを処理しても、apoB100凝集を阻止できなかった(データは示さず)。EPA処理細胞のミクロソーム内腔および培地において検出された明らかに凝集したこれらのapoB100種の性質は不明である。これらのapoB100種は、分泌経路内に蓄積した組み立て中間体を表すことができる(以下に示す)。分泌された[35S]−apoB100の総量(すなわち、凝集した種を含む全画分中の[35S]−apoB100の合計)を定量化したところ、EPA処理細胞とオレイン酸処理細胞との間に同じような分泌が認められることが明らかとなった。さらに、競合ELISA法によってapoB100タンパク質を定量化したところ、16時間インキュベーション後に培地に蓄積したapoB100タンパク質の量は、オレイン酸処理細胞と比較した場合にEPA処理細胞からは僅かに減少していたが(オレイン酸、2.74±0.48;EPA、2.5±0.43μg/ml)、その差は統計学的に有意なものには達しなかったことが明らかとなった(p>0.05、n=3)。脂質を[H]グリセロールで代謝標識したところ、EPA処理細胞からの[H]グリセロール標識TGの分泌が50%減少したが、細胞TGへの[H]グリセロールの取り込みはオレイン酸処理細胞よりもEPA処理細胞において高いことが明らかとなった。分泌されたPCへの[H]グリセロールの取り込みは影響を受けなかった(表I)。
【0108】
【表1】

【0109】
これに加えて、これらの細胞培養試験のデータはインビボ試験(Nestelら、1984年、J.Clin.Invest.、74号:82〜89)と一致しており、EPA処理によって、TGの分泌は低下するが、分泌されたapoB100の量においてはごく僅かな低下であることを示している。
【実施例2】
【0110】
EPA処理はapoB100のpost−ER分解を促進する
オレイン酸およびEPAで事前処理した細胞を[35S]メチオニン/システインで1時間標識し、3時間まで追跡した。オレイン酸およびEPAはパルスおよび追跡培地の両方に存在した。全細胞溶解物(図2A)または馴化培地(図2B)からの[35S]−apoB100を免疫沈降させ、SDS−PAGEによって解析し、フルオログラフィーで可視化した。[35S]−apoB100に関連する放射活性を定量化した。図2A〜2Bの上のパネルに示したように、データは1時間のパルス終了後の[35S]−apoB100に関連する放射活性の絶対量として表している。図2A〜2Bの上部パネルに示したように、データは1時間のパルス終了後の35S−apoB100に関連する初期の数の%として表している。図2Cおよび2Dに示すように、細胞(図2C)および培地(図2D)の[35S]−apoA−Iに関連する放射活性を同様に定量化した。この試験を繰り返し行ったところ、同様の結果が得られた。
【0111】
VLDL粒子は総TGの80%を超えて担持しているが、オレイン酸処理されたMcA−RH7777細胞から分泌された総apoB100については担持しているのは10%未満であることがこれまでに明らかとなっている(Wangら、1999年、J.Biol.Chem.、274号:27793−27800)。したがって、n−3脂肪酸処理はVLDL画分中のapoB100を選択的に減少させることが報告されているため(FisherとGinsberg、2002年、J.Biol.Chem.、277号:17377〜17380)、上記パルス(30分)追跡(60分)の試験はapoB100の分泌量の減少および翻訳後の分解量の増加を検出することはできなかったかもしれないという可能性を検討した。次の試験セットでは、apoB100の[35S]標識化を最大化し、および潜在的な翻訳後の分解を検証できるようにするために、パルス標識期間を1時間まで延長した。これらの条件下では、EPA処理細胞(9.43×10cpm/皿)において1時間のパルス終了時にapoB100へ取り込まれた[35S]の量は、オレイン酸処理細胞(6.40×10cpm/皿)の場合よりも約40%大きかった(図2A上)。1時間のパルス終了時にapoB100の標識が高くなっているのは、新しく合成されたapoB100の細胞内蓄積量が増加したことおよび/または分泌障害であることを反映しているものと考えられる。3時間の追跡終了時、EPA処理細胞中の細胞結合[35S]−apoB100の量はオレイン酸処理細胞の細胞結合[35S]−apoB100の量に匹敵するレベルまで減少したが(図2A上)、1時間のパルス後に観察された過剰な細胞結合[35S]−apoB100は追跡中に培地内で回復されなかったことが顕著であった(図2B上)。追跡終了時に分泌された代謝標識した全[35S]−apoB100の比率を測定するものである分泌効率は、OA処理細胞に比してEPA処理細胞では60%〜40%まで減少した(図2B下)。追跡終了時の細胞結合[35S]−apoB100もオレイン酸処理に比して僅かに低かった(図2A下)。同試験では、apoA−Iの合成または分泌はEPA処理による影響を比較的受けなかった(図2Cおよび2D)。これらの動態試験は、EPA処理細胞McA−RH7777では、新しく合成されたapoB100部分は最初は細胞内に保持され、次いでプロテアソーム媒介のER分解よりは速くない機序を介して分解される。さらには、EPA処理細胞中のapoB100の分解は、先に報告されたpost−ER機序に類似する緩徐なプロセスを通して同様に達成される(FisherとGinsberg、2002年、J.Biol.Chem.、277号:17377〜17380)。
【実施例3】
【0112】
EPA処理はERまたはproximalゴルジ体を通って運ばれるapoB100に影響を及ぼさない
オレイン酸またはEPAで事前処理した細胞を[35S]メチオニン/システインで20分間パルス標識し、0〜45分間追跡した。細胞下分画をNycodenz勾配遠心分離によって分画し、ER、シス/メディアルゴルジ体、およびディスタル−ゴルジ体の膜(図3A、種々の追跡時間による)および内腔内容物(図3B、45分間の追跡後)を炭酸ナトリウムによって分離し、その後超遠心分離にかけた。35S−apoB100を免疫沈降させ、「実験手順」に記載のようにSDS−PAGE/フルオログラフィーによって分解した。図3Bの下部パネルに示すように、アスタリスクでマークした帯はSDS存在下で不溶性である35S−ApoB100種を表す。
【0113】
近年の試験から、apoB100のER出口はVLDL組み立てにおいて重要な段階を表すことがあきらかとなった(Gusarovaら、2003年、J.Biol.Chem.、278号:48051〜48058)。パルス中にEPA処理細胞で発生するapoB100の蓄積量が改変されたapoB100出口かまたはそのER−ゴルジ体輸送に起因するものかどうかを決定するために、パルスチェイス分析を細胞下分画試験と組み合わせた。本発明者らはMcA−RH7777細胞では、新しく合成されたapoB100は主にER/ゴルジ体区画の膜に結合していたことを明らかにした(Tranら、2002年、J.Biol.Chem.、277号:31187〜31200)。膜結合[35S]−apoB100がERを出たときの割合(4回の追跡時間点(すなわち、0、15、30、および45分)から算出)は、オレイン酸処理細胞の場合(合計/分の−0.59±0.17%)よりもEPA処理細胞では高かった(合計/分の−1.29±0.38%)(p<0.05)(図3A上のパネル)。同様に、ディスタル−ゴルジ体中に現れた膜結合[35S]−apoB100の割合は、オレイン酸処理細胞の場合(合計/分の0.39±0.11%)よりもEPA処理細胞では有意に高かった(合計/分の0.83±0.10%)(p<0.05)(図3A下部パネル)。シス/メディアルゴルジ体を通過した[35S]−apoB100の割合は、2つの処理間で類似した(図3A中間のパネル)。したがって、本発明者のデータによってER出口の障害もproximal−ゴルジ体をゆっくりと通過することも1時間のパルス終了時にEPA処理細胞にapoB100の細胞蓄積があることを説明するものではないという証拠が得られる。
【0114】
45分の追跡終了時、EPA処理細胞のディスタル−ゴルジ体(炭酸塩で処理後)の内腔画分において[35S]−apoB100の著しい蓄積を伴って、[35S]−apoB100の増加がディスタル−ゴルジ体膜(図3A)で検出され、その[35S]−apoB100の大半はIDL/LDL画分に結合していた(図3B)。このようにディスタル−ゴルジ体膜および内腔にapoB100が蓄積していることは、EPA処理細胞において1時間のパルス後にapoB100が細胞内に蓄積することを少なくとも部分的に裏付けるものである(図1A上部パネル)。これらの所見はEPA処理細胞において組み立ての中間体が増加していることを示唆している。VLDL組み立て障害がEPA処理細胞におけるMTP媒介TG移動のTG合成の減衰に起因するものであるということを除外すれば、EPA処理はホスファチド酸ホスフォヒドロラーゼ−1またはMTPの活性に影響を及ぼさなかった(データは示さず)。したがって、この結果はEPAがディスタル−ゴルジ体内および/またはディスタル−ゴルジ体の下流におけるVLDL分泌にその阻害作用を及ぼす可能性があることを示している。
【実施例4】
【0115】
EPA処理細胞のシスゴルジおよびトランスゴルジ内の粒子の大きさの分布
図4Aおよび4Bに示すように、この棒グラフはゴルジ球形嚢1〜3(シスゴルジ)(A)および球形嚢4〜6(トランスゴルジ)+TGN(B)内に貯蔵された粒子の直径を示している。図4Cに示すように、同定された5つの粒子型、すなわちI〜V型(分類スキーム用、図5Dを参照)について、棒グラフのX軸上の値を用いて、粒子径の範囲(薄い括弧)および平均径の値(目盛)±1SD(厚い括弧)をグラフにした。
【0116】
遠位の分泌区画内のリポタンパク質粒子および脂質粒子をTEMによって分析し、第2段階のVLDL組み立ての障害が形態学的に改変されたVLDL組み立て中間体に関連するかどうかを決定した。VLDLの組み立ておよび分泌を刺激するために、McArdle細胞は外来性オレイン酸で処理された。平均径が40±17nmのリポタンパク質は、ゴルジ球形嚢4〜6(すなわち、ゴルジ体のtrans側)およびトランスゴルジネットワーク(TGN)内で観察された(Tranら、2002.、J.Biol.Chem.、277号:25023〜25030)。EPA処理細胞では、これらの>80nmの粒子の集団がゴルジ体およびTGNのシス(球形嚢1〜3)およびトランス−末端(球形嚢4〜6)の両方で増加した(図4A〜B、棒グラフ)[ゴルジ球形嚢のシス−トランス極性の詳細な同定には以下の図4Aの凡例を参照のこと]。著しい数のこれらの>80nmの粒子は、さらに高い倍率のときを含む、粒子がインシチュでゴルジ体(図5A〜C)において観察されるときにはっきりとわかる形態学的特徴に基づいて、I、II、またはIII型(図4C)のいずれかとして特徴付けられる粒子から構成されていた。
【実施例5】
【0117】
ゴルジ体および関連する液胞において同定された5種類の脂質/リポタンパク質
図A、BおよびCに示したゴルジ層板は4つの球形嚢を有している(1〜4の印を付けた)。球形嚢1は特徴的な穿孔を有する(矢じり)。トランスゴルジ体ネットワーク(TGN)をパネルAおよびBに示し、パネルCには大槽膜(点線)によって部分的に包まれた大きなトランスゴルジ体結合液胞(GAV)を示している。I〜Vで示した5種類の粒子はTGNを含む、ゴルジ体およびGAVに存在する。5種類の粒子のさらに高倍率の画像をパネルDに示している。I〜III型粒子の想像上のタンパク質の外殻(括弧)およびコア(白のアスタリスク)が、それらの間にあるリン脂質のように示されている(矢印)。II型粒子では、物質の薄いストランドが、コアとリン脂質単層との間の細孔(小さいアスタリスク)にわたって存在している(矢印)。IV型粒子(白抜きやじり)およびV型粒子はそれぞれ、HDLサイズの構造体およびVLDLサイズの構造体を表している。パネルAでは、球形嚢1および3にある2つのIV型粒子(白抜き矢印)は膜結合しているが、TGNのIV型粒子(黒の矢印)の1つは腔内であることに留意されたい。ゴルジ球形嚢では、I〜V型粒子は単独であるいは対(パネルBの四角)になって発生するが、GAVではこの粒子はクラスター(パネスCの四角)として観察されることが多く、これは高倍率の写真(E)ではいくつかのIV型およびV型粒子に取り囲まれた単独のI、II、またはIII型粒子から構成されている(それぞれ左、真中、右のパネル)。
【0118】
この形態学的所見に基づき、さらに高い倍率(図5D)のときを含む、粒子がインシチュでゴルジ体(図5A〜C)において観察されるときにはっきりとわかる特徴的な形態学的特徴に基づいて、>75nmの粒子のかなりの割合をI、II、またはIII型(図4下部)として分類した。I〜III型形態の粒子も細胞質内脂質の液滴の集団内の管状の滑らかなER、および細胞質において観察された(図示せず)。EPA処理細胞のシス−mostゴルジ球形嚢におけるI型粒子の平均的大きさ(100nm)は、細胞質脂質液滴(0.1〜50μm)について測定した範囲の下端にあり(MurphyとVance、1999年、Trends Biochem.Sci.、24号:109〜115)、その形態(図5D、上部パネル)は細胞質脂質液滴のものと類似し、大きさに関係なくリン脂質単層およびタンパク質性の暈によって囲まれた電子密度が高いTG芯を有していた(Blanchette−Mackieら、1995年、J.Lipid Res.、36号:1211〜1226)。したがって、I型粒子は、HRP免疫細胞化学によりapoBに対して反応しないSERにおいて検出された粒子などのapoBを含まない脂質粒子に相当すると思われる(Alexanderら、1976年、J.Cell Biol.69号:241〜263)。IIおよびIII型粒子はそれぞれ部分的な芯または芯がないことを示しており(図5D、上部パネル)、部分的または完全に脱脂された脂質粒子に相当する。分泌経路における脂質粒子の蓄積量は、以下に記載の脂質分割試験と矛盾しないものである。これらのデータは脂質液滴はEPA処理細胞のゴルジ体内に蓄積されるという形態学的証拠を提供している。IV型粒子(図5D、真中のパネル)は小さなLpB粒子と同様の大きさ(図4)を有する(<25nm:ShelnessとSellers、2001年、Curr.Opin.Lipidol.、12号:151〜157)。ゴルジ体中で最も多くの粒子を表すV型粒子(図5D、下部パネル)は、ラット肝の分泌経路におけるapoB反応性VLDL粒子およびラット肝のゴルジ細胞画分から分離されたVLDL粒子(d<1.006g/ml)の大きさに相当する大きさ(25〜75nm;図4)を有していた(Alexanderら、1976.J.CellBiol.69:241−263)(Verkadeら、1993、J.Biol.Chem.268:24990−24996)。EPA処理細胞のV型細胞はオレイン酸処理細胞において検出されたリポタンパク質粒子(40nm;Tranら、2002年J.Bio.Chem.、277号:31187〜31200)よりも平均して大きかった(54.5nm)。大きくなったd<1.006g/mlのVLDL粒子(46.1nm)もコリン欠損ラット肝の内腔から分離された(Verkadeら、1993年、J.Biol.Chem.、268号:24990〜24996)。
【0119】
したがって、VLDL組み立て障害はリポタンパク質の形態が大きくなった(図5D、下部パネル)著しい数の粒子(図4、V型)が生成されたことに関係している。apoB100を含む完全に補充されたアポリポタンパク質を含むかどうかは未だ決定されていない。凝集したapoB100種がどのようにこれらの粒子に結合するかどうかも依然として解明されていない。
【0120】
電子密度の高い粒子の大半がシスゴルジおよびトランスゴルジの内腔では膜結合であったオレイン酸処理細胞の場合(Tranら、2002年、J.Biol.Chem.、277号:31187〜31200)とは異なり、EPA処理細胞では、同定された5種類の粒子型のうちの4種(I、II、III、およびV型)はゴルジ体を通して著しい膜結合を保持していた(表II)。より小さいIV型粒子のみが主に、シスゴルジ体およびトランスゴルジの内腔において膜結合していた(図5A、表II)。したがって、apoB100はディスタル−ゴルジ体膜中に蓄積する(図3A、下部パネル)という所見と合わせたTEMデータからは、トランスゴルジで検出されたapoB100およびより大きなリポタンパク質サイズの粒子の両方について膜結合は増加したことが示唆される。
【0121】
表IIはEPA処理細胞のゴルジ体中の粒子の膜結合の割合をまとめたものである。
【0122】
【表2】

【実施例6】
【0123】
トランスゴルジ結合液胞への脂質/リポタンパク質粒子の金属イオン封鎖
2つのゴルジ層板(GA1、GA2)はそれぞれ4個および5個の球形嚢(1〜4または5で印を付けた)からなる(パネルA)。球形嚢1は重なっているERと密接に結合しており、特徴的な穿孔(矢じり)を有し、したがって、ゴルジ体のシス末端を表している。電子密度が高い粒子(短い黒の矢印)がゴルジ体のほかTGNおよび分泌小胞(SV)に存在している。同様の粒子(長い黒矢印)が、大槽膜(点線)で包まれたGAVに認められる(小さい黒のアスタリスク)。この大槽膜はリボソーム(黒の矢じり)結合ERと連なっている。ゴルジ体からさらに離れて位置する大きな液胞(大きな黒のアスタリスク)は、高密度の分解内容物を含む。スケールバーは1μmを表す。
【0124】
パネルBは大槽膜(点線)によってゴルジ体のtrans末端(GA)近傍でGAV(黒のアスタリスク)が包み込まれているのを示している。球形の粒子(黒の矢印)はGAV内に存在する。芽(白の矢印)、およびいくつかの小さな小嚢および細管を含んでいる陥入部(白の矢印は、GAVの1つに結合している)。黒の矢じりは微小管を表す。スケールバーは0.4μmである。
【0125】
パネルCの上部は、電子密度の高い粒子を含むGAV(小さな黒のアスタリスク)とこれらの粒子を含まない高密度の分解性液胞(大きな黒のアスタリスク)との間には密接に結合し、明らかに融合していることを示す(白の矢じり)。この画像の真中は電子密度の高い粒子(矢印)を含み、および陥入部分に小嚢/細管(小さな白のアスタリスク)を有するGAV(小さな黒のアスタリスク)を示している。
【0126】
パネルDは2つのゴルジ体層板(シス−mostゴルジ球形嚢、黄色;球形嚢2〜5、灰色;TGN/SV、オレンジ色)およびこのゴルジ体層板の間にあるGAVの集団(中間の青)の3Dモデルを示している。これらの液胞のいくつかはそれらの境界膜に陥入部分があることを示しており、小嚢/細管(紺青色)を収容している。隣接する粒子含有GAVの間の同型の融合は(パネルCの異質の融合とは異なり)対になって向き合う矢じりで示されている。電子密度の高い粒子を含む膨らんだ部分(薄青)はトランスゴルジ球形嚢に連なっている;この連続性は、観察者に最も近い2つの膨らんだ部分のための区画(二重矢印)内にあることは明白である。シス−球形嚢の穿孔部分を白の矢じりで示している。
【0127】
パネルEはパネルDからの下方のゴルジ体層板を示しており、X軸に沿って180度回転させ、大槽膜(赤)を含むようにモデル化されたものである。トランスゴルジ体をわかり難くした粒子が満たされたGAV(中間の青)はこのモデルには含んでいない。赤道観で観察された2個のGAV(*1、*2)はそれらの周縁に沿って大槽膜に結合されている。「極観」で観察された他の2個のGAV(*3、*4)は大槽膜に包まれている。この大槽膜(赤)も(白色の点線)脂質/リポタンパク質を含む、トランスゴルジ液胞に直接連なっている膨張部(薄青)を包み込んでいる(二重矢印はあるセクション内にはっきり見える連続性を示す。1本矢印はセクション間にある連続性を同じく示す)。
【0128】
EPA処理細胞では、大きくて少なくとも一部が組み立てられたリポタンパク質は、PI3キナーゼの阻害を受け易い機序によってpost−ER区画において分解されるために選択的に標的にされたことがこれまでに報告されている(Fisherら、2001年、J.Biol.Chem.、276号:27855〜27863)。パルスチェイス試験(図3)は、EPA処理細胞中のディスタル−ゴルジ体のある事象において、またはディスタル−ゴルジ体の下流側において、1時間後(図2A)にapoB100の細胞内蓄積量が増加したこと、および3時間の追跡中(図2B)の培地にはこの蓄積されたapoB100の回復がないこともさらに説明することができることを指摘している。データが示すようにapoB100の分解が緩徐に生じるなら、apoB100含有リポタンパク質組み立ての前駆物質および/または生成物は細胞内で分解を行う区画においてTEMによって検出可能であると仮定された。
【0129】
分泌を行う区画(ゴルジ体、TGN、および分泌小胞;図5A、5B)で同定された5種類の電子密度の高い粒子(I〜V型)はすべて、GAV集団でも同定されたことは明らかである(図5C)。
【0130】
分泌小嚢とは異なり、GAVはリボソームが結合したER(図6A、矢じり)との連続性を示す大槽膜(点線、図6A)によって包まれていた。この大槽膜の構成は自家食作用の初期相中に形成された「分離膜」の構成と似たものであった(Mizushimaら、2001年、J.Cell Biol.、152号:657〜668)。自家食作用は細胞が細胞質タンパク質およびオルガネラを自食胞の形成を通して分解されるためにリソソームまたは液胞まで運ぶPI3キナーゼ依存性のプロセスである(Mizushimaら、2001年、J.Cell Biol.、152号:657〜6680)。自食胞形成中、ER、TGN、またはデノボで合成された「phagophore」膜由来の二重膜構造の分離膜は、標的とする膜または分子を隔離し、包み込む。この分離膜が閉じられることによって自食胞が形成されることになる。この試験で観察されたGAVは複数の芽(図6B、白の矢印)および/または小嚢/細管(図6B、C、白のアスタリスク)を収容した陥入部分を有しており、このことはオートファゴソームからオートファゴリソソームへの転換中に後期エンドソームおよび/またはリソソームと共に発生する融合を想起させる(Mizushimaら、2001年、J.Cell Biol.、152号:657〜668)。GAVとゴルジ体領域(図6A、C)近傍に位置する大きな分解液胞との間にはっきりとした融合の輪郭(図6C)が検出されたことは、GAVを分解経路と関連付け、また異型融合が生じることから自家食作用と矛盾しなかった(ReggioriとKlionsky、2002年、Eukaryot.Cell、1号:11〜21)。
【0131】
GAV区画ならびにゴルジ体および分泌小嚢とのその関係の程度を3D連続切片モデルにさらに表した(図6D、6E)。このモデルおよび本発明者らの連続切片のライブラリでは、トランスゴルジ球形嚢の粒子が満たされた膨らんだ部分(図6E、薄青)は、GAV(*3〜4)を封入している膜(赤)と連なった大槽膜(白の点線)に包まれていた。このことにより粒子が満たされたGAVはトランスゴルジから発生する可能性が高まる。
【0132】
次に、GAVがリポタンパク質代謝において機能していることを確認するために、GAVの粒子内容物をゴルジ体およびTGNの内容物と比較した。GAVにおける5種類の粒子の相対的発生(I:II:III:IV:V=12%:2%:11%:5%:70%;n=221)は、トランスゴルジ体液球形嚢4〜6+TGN/分泌胞におけるものとほぼ同じであり(I:II:III:IV:V=12%:4%:13%:5%:66%;n=284)、これは特定の粒子型のGAVへの選別が生じなかったこととを示唆している。すべての粒子型をGAVに隔離することは、この細胞小器官がリポタンパク質代謝において重要な役割を担っていることを裏付けるものである。ゴルジ体対GAVにおいて粒子−内容物が類似していることは、自家食作用性分解が典型的には「大きな」分解区画であることと一致している(Mizushimaら、2003年、Int.J.Biochem.Cell Biol.、35号:553〜561)。しかし、GAVへと隔離された粒子は、分泌経路における結合と比べて、粒子−粒子結合が変えられていることを示した。ゴルジ体では、粒子は単独か、または対になった配置で検出されたが(1個のI、II、またはIII型粒子および1個のIVまたはV型粒子、図5B)、GAVの粒子はクラスター化していることが多く見受けられた(複数のIVまたはV型粒子によって取り囲まれた1つのI、II、またはIII型粒子;図5C、E)。
【0133】
また、GAVの粒子は分泌経路における結合に比べて、膜結合が大きく変えられていた。I−III型およびV型はすべて、ゴルジ体、TGN/SVの場合よりも、GAVでは膜結合は少なかった(表II)。粒子−粒子結合および粒子−膜結合の変化の重要性は不明であるが、これらの所見によってGAVは分泌区画とは明確に異なった細胞区画を含んでいることを裏付けることができる。
【0134】
このように、TEMによってGAVの区画が同定され、この区画はいくつかの形態学的基準(ERとの周囲の関係、後生的な分解液胞との融合性、「多量の」隔離された含有物)によって自食胞と似ており、またリポタンパク質/脂質型粒子を隔離している。
【実施例7】
【0135】
apoBおよびMap1LC3の免疫蛍光局在化
事前処理無し(対照群)の細胞、オレイン酸またはEPAで事前処理した細胞を透過処理し、抗ヒトapoB抗体(apoB)および抗ラットMap1LC3抗体(Map1LC3)でそれぞれ染色した。apoB用の二次抗体をAlexa Fluor(商標)488(緑)と共役させ、Map1LC3用の二次抗体をAlexa Fluor(商標)594(赤)と共役させた。図7のマージ画像の円はオレイン酸処理またはEPA処理細胞中のapoBリッチ領域へのMap1LC3の再分布を示している。図7の矢じりはMap1LC3およびapoBの共存を示している(挿入図に拡大している)。図7のスケールバーは10μmである。
【0136】
GAVが自食胞に対応し、およびリポタンパク質組立体の前駆物質および/または生成物を隔離することを裏付けるために、間接二重免疫系蛍光試験を行ってapoB100とMap1LC3との間の共存の可能性を確立した。PI3キナーゼ依存性プロセスを介して細胞質から分離膜へと補充されるMap1LC3を含む、ある群のATG(自家食作用)遺伝子産物が自食胞形成中に必要とされた(Mizushimaら、2001年、J.Cell.Biol.、152号:657〜668;Kabeyaら、2000年、EMBO J.、19号:5720〜5728)。対照群と比較して、Map1LC3およびapoB100の部分的共存を用いてapoB100が高濃度の周囲領域へのMap1LC3染色の浸透を強化することによって、図示(図7)のように、EPAおよびオレイン酸処理は自家食作用を誘導した。apoB100およびMap1LC3の共存はオレイン酸処理細胞よりもEPA処理細胞において顕著であった。
【実施例8】
【0137】
EPA処理は自家食作用を増強する
図8Aは対照のオレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞のモノダンシルカダベリン(MDC)標識を示している。スケールバーは10μmである。
【0138】
図8Bは対照のオレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞のTEM画像である。大きな矢印はゴルジ体近傍の高密度の液胞を示す(GA;斑点)。小さな矢印はオレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞のゴルジ体領域内の高密度の小さな液胞を示す。(N)は細胞画を表し、(L)は脂質液滴を表す。
【0139】
同量のEPAまたはオレイン酸(0.4mM)で処理した細胞では、オートファゴリソソームの特異的マーカーであるMDCと反応する高密度の液胞の巨大化によって実証されるように、オートファゴリソソームの形成もオレイン酸処理細胞よりもEPA処理細胞において顕著であった(Biederbickら、1995年、Eur.J.Cell Bio.、66号:3〜14)(図8A)。EPA処理細胞中のMDCに反応する液胞の大きさおよび分布は、TEMによって可視化されたように、ゴルジ体領域の外部に位置する高密度の分解液胞の分布と似ている(図8B、矢印)。TEMおよび免疫細胞化学のデータは共に、EPA処理が自家食作用を増強すること、および脂質粒子とリポタンパク質粒子の割合は分泌経路から自食性分解区画へと転換されていることを示唆している。
【実施例9】
【0140】
18:1(n−9)TGはVLDLの組み立ておよび分泌に利用される
細胞を[14C]オレイン酸で2時間標識し、0.4mMの外来性オレイン酸の存在下または不存在下で1時間、2時間、および4時間追跡した(図9Aおよび9B、上部パネル)。同じく、細胞を[H]EPAで2時間標識し、0.4mMのEPAの存在下または不存在下で最高4時間まで追跡した(図9Aおよび9B、下部パネル)。各追跡時間に、細胞(図9A)および培地(図9B)それぞれからすべての脂質を抽出し、TLCによって分析し、PC、PE、TGおよび遊離脂肪酸(FFA)に関連する放射活性をシンチレーション計測法によって定量化した。2時間の標識終了時に取り込まれた総放射活性の割合としてデータを示した([14C]オレイン酸標識細胞中には2.4×10および[H]EPA標識細胞中には6.1×10cpm)。この結果は独立した2つの試験の平均値であり、エラーバーは偏差の範囲を示す。
【0141】
本発明者らのこれまでの研究は、リン脂質リモデリングを介して合成されたTGは第2段階VLDL組み立て中に利用されることを示唆している(Tranら、2002年、J.Biol.Chem.、277号:31187から31200)。EPA処理がVLDL組み立てを損なう機序を洞察するために、本発明者らはリン脂質リモデリングを介するTG合成をオレイン酸処理細胞とEPA処理細胞との間で比較した。細胞を[14C]オレイン酸または[H]EPAで2時間標識し、それぞれ未標識の外来性オレイン酸またはEPAの存在下で4時間まで追跡した。2時間の標識終了時(すなわち、追跡は0時間)、PC、PE、およびTGは、[14C]オレイン酸処理細胞中の[14C]で標識されたすべての細胞脂質の53%、8%、および27%をそれぞれ占め(図9A、上部パネル)、EPA処理細胞中の[H]で標識されたすべての細胞脂質の48%、36%、および3%をそれぞれ占めた(図9A、下部パネル)。したがって、[14C]オレイン酸は主としてPCおよびTGへと取り込まれたが、[H]EPAはTGではなくPCおよびPEへと取り込まれた。追跡中、[14C]オレイン酸で標識したPCおよびPEの数は、外来性オレイン酸下存在では比較的一定であり(図9A、上部パネルの黒丸)、これはこれまでの観察(Tranら、2000年、J.Biol.Chem.、275号:25023〜25030)と一致するものであり、基本条件下(すなわち、外来性オレイン酸は存在しない)ではリン脂質の代謝回転の率は低いことを示している。対照的に、外来性オレイン酸処理は、[14C]オレイン酸で標識したPCの代謝回転およびTGへの18:1(n−9)アシル鎖の移動を刺激した(図9A、上部パネルの白抜きの丸)。
【0142】
H]EPA標識細胞では、追跡中、PCに結合する数は付随するPEの増加と共に減少し(図9A、下部パネルの黒三角)、先に示されているように(Balsinde、2002年、Biochem.J.、364号:695〜702)、このことはPCからPEへの20:5(n−3)アシル鎖の移動が基本条件(すなわち、外来性EPAがない)下で生じたことを示している。外来性EPAを追跡培地に添加したところ[H]EPA標識したPCおよびPEの両方の代謝回転が刺激され、PCおよびPE由来の20:5(n−3)アシル鎖は、4時間の追跡終了時の細胞における[H]EPAの総放射活性の〜30%を占めるTGへと移動した(図9A、下部パネルの白三角)。外来性脂肪酸によって誘導されたリン脂質のリモデリングも、培地への遊離[14C]オレイン酸または[H]EPAの放出により明らかであった(図9Bの右パネルの白丸および白三角)。したがって、リン脂質のリモデリング中、個々のリン脂質の脱アシル化由来の18:1(n−9)および20:5(n−3)アシル鎖がTG合成に利用される。追跡中、[14C]オレイン酸−TGまたは[H]EPA−TGの分泌の間には著しい差が観察された。[14C]オレイン酸−TGが分泌され、その分泌はさらに外来性オレイン酸によって刺激されたが、[H]EPA−TGは外来性EPAの有無に関わらず分泌されなかった(図9B、左パネル)。これらの結果は18:1(n−9)−TGがVLDLの組み立ておよび分泌に利用されたが、20:5(n−3)TGは利用されなかったことを示唆している。
【実施例10】
【0143】
PEリモデリングを介して合成されたTGは細胞質へ選択的にシャントされる
細胞を[14C]オレイン酸で2時間標識し、0.4mMのオレイン酸の不存在下(図10Aの白い棒グラフ)または存在下(図10Aの黒い棒グラフ)で4時間追跡した。細胞を[H]EPAで2時間標識し、0.4mMのEPAの不存在下(図10Bの白い棒グラフ)または存在下(図10Bの黒い棒グラフ)で4時間追跡した。この細胞を均質化し、細胞内区画(すなわち、細胞質、ミクロソーム膜、およびミクロソーム内腔)を分画し、各画分から脂質を抽出し、TLCによって分解し、シンチレーション計測法によって定量化した。データは複製の平均値であり、2時間の標識終了時に取り込まれた総放射活性の割合で表している。偏差の範囲(図示せず)は平均値の5%未満であった。
【0144】
オレイン酸処理細胞とEPA処理細胞との間のVLDL分泌のための18:1(n−9)−TGおよび20:5(n−3)−TGの利用の違いは、VLDL組み立てが利用可能な18:1(n−9)−TGおよび20:5(n−3)−TGの区画化の違いを反映していると思われる。ミクロソーム膜上でPCおよびPEが非対称的(すなわち、内腔側ではPCがリッチで、細胞質側ではPEがリッチである)に分布していることは、EPAおよびオレイン酸処理されるとPC/PE比が変化することと共に、TGが異なるプール(例えば、貯蔵用の細胞質プールおよびVLDL組み立て用のミクロソームプール)へ分割化され得ると仮定される。
【0145】
この仮説を検証するために、放射線標識した脂質の細胞内分布を、[14C]オレイン酸または[H]EPAでそれぞれパルス標識した2群の細胞間で対比させ、培地±オレイン酸(図10A)またはEPA(図10B)で追跡した。追跡終了時、[14C]オレイン酸の大半はPCに結合していたが、[H]EPAの大半はミクロソーム膜のPEおよびPCに結合していた(図10A、Bの真中の2つのパネル)。追跡中に外来性のオレイン酸またはEPAを添加したところ、膜リン脂質に結合した[14C]オレイン酸または[H]EPAの減少および細胞質TGに結合した[14C]オレイン酸または[H]EPAの増加が生じた(上部パネル)。細胞質TGの増加の程度は18:1(n−9)−TGよりも20:5(n−3)−TGで一層大きかった。細胞を[H]グリセロールでパルス標識し、次いでオレイン酸またはEPAのいずれかの存在下で追跡した別の試験では、細胞質[H]グリセロール−TGの増加も、オレイン酸処理細胞よりもEPA処理細胞においてより顕著であった(データは示さず)。したがって、[H]EPA標識PEリモデリングを介して合成されたTGは細胞質へと選択的にシャントされる。しかし、[14C]オレイン酸標識TGおよび[H]EPA標識TGは、追跡中ミクロソーム内腔が増加したことを示し(下部パネル)、この追跡では、TEMによるゴルジ体中の脂質型液滴の検出と共に、EPA処理細胞におけるVLDL組み立て障害はTGがVLDL組み立て部位で利用できないという結果のためだけではないことを示している。
【実施例11】
【0146】
オレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞における細胞下小器官の膜中のPCおよびPE含有量
オレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞における細胞下小器官の膜中のPCおよびPE含有量を表IIIにまとめて示す。
【0147】
【表3】

【0148】
酵母ではPEによるApg8/Aut7(Map1LC3の相同分子種)の脂質化は自家食作用性の膜の最初の組み立てにとって不可欠であることが示されている(Mizushimaら、2001年、J.Cell.Biol.、152号:657〜668)。細胞内膜に結合したPCおよびPEの含有量および組成に対するEPAおよびオレイン酸処理の効果を、タンデム質量分析を用いて決定した。EPA処理細胞では総PE質量は85%だけ増加し、ディスタル−ゴルジ体およびERではそれぞれ170%および116%の増加が生じた(表III)。総PC質量は未処理の対象群に比してEPA処理による影響を受けなかったが、オレイン酸処理細胞よりも低かった。
【0149】
オレイン酸処理では総PE質量には緩やかな増加(29%)がみられ、これは主にERで生じた(72%)。細胞内ミクロソームに結合した総PC質量はオレイン酸処理によって56%増加した。この増加の大半はER(82%)およびディスタル−ゴルジ体(73%)で生じた(表III)。したがって、EPAはPE含有量を大幅に増加させた。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】Aは、オレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞の馴化培地において観察されたapoB100結合リポタンパク質の密度分布を示すグラフである。上部パネルは代表的なフルオログラムから構成されている。下部パネルは各画分に関連する[35S]apoB100の分布を示す折れ線グラフである。Bは、オレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞から得られたミクロソームの内腔含有物において観察されたapoB100結合リポタンパク質密度分布を示すグラフである。上部パネルは代表的なフルオログラムから構成されている。下部パネルは各画分に関連する[35S]apoB100の分布を示す折れ線グラフである。
【図2】Aは、オレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞の総細胞溶解物からのapoB100に関するパルスチェイス分析を示す折れ線グラフである。上部グラフは1時間のパルス終了時に[35S]apoB100に関連する放射活性の絶対量としてデータを表している。下部グラフは1時間のパルス終了時に[35S]apoB100に関連する初期カウント値の割合としてデータを表している。Bは、オレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞からの馴化培地からのapoB100に関するパルスチェイス分析を示す折れ線グラフである。上部グラフは1時間のパルス終了時に[35S]apoB100に関連する放射活性の絶対量としてデータを表している。下部グラフは1時間のパルス終了時に[35S]apoB100に関連する初期カウント値の割合としてデータを表している。Cは、オレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞の総細胞溶解物からのapoA−1に関するパルスチェイス分析を示す折れ線グラフである。上部グラフは1時間のパルス終了時に[35S]apoA−1に関連する放射活性の絶対量としてデータを表している。下部グラフは1時間のパルス終了時に[35S]apoA1に関連する初期カウント値の割合としてデータを表している。Dは、オレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞からの馴化培地からのapoA−1に関するパルスチェイス分析を示す折れ線グラフである。上部グラフは1時間のパルス終了時に[35S]apoA−1に関連する放射活性の絶対量としてデータを表している。下部グラフは1時間のパルス終了時に[35S]apoB100に関連する初期カウント値の割合としてデータを表している。
【図3】Aは、20分のパルス終了時のオレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞に関する、ER(上部パネル)、シス/メディアルゴルジ体(真中のパネル)およびディスタル−ゴルジ体(下部パネル)においてやり取りされた膜結合apoB100を比較したものを示す折れ線グラフである。Bは、20分のパルスおよび45分の追跡終了後のオレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞からのER、シス/メディアルゴルジ体、およびディスタル−ゴルジ体の内腔画分に関する、apoB100の免疫沈降およびSDS−PAGE/フルオログラフィー分析の結果を示すグラフである。
【図4】Aは、ゴルジ球形嚢1〜3(シスゴルジ体)内に貯蔵された粒子の直径を示す棒グラフである。Bは、ゴルジ球形嚢4〜6(トランスゴルジ)+TGN内に貯蔵された粒子の直径を示す棒グラフである。Cは、I〜V型粒子の粒径範囲を示すグラフである。
【図5】A〜Eは、ゴルジ体および関連する液胞において同定された5種類の脂質/リポタンパク質粒子を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図6】A〜Eは、EPA処理細胞のトランスゴルジ領域の脂質/リポタンパク質含有液胞の形成を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図7】抗ヒトapoB100抗体および抗ラットMap1LC3抗体でブロットした、未処理の細胞、オレイン酸処理細胞、およびEPA処理細胞の免疫蛍光顕微鏡分析の結果を示す写真である。マージ画像の矢じりはapoB100およびMap1LC3の共存を示している。
【図8】モノダンシルカダベリンで標識した、未処理の細胞、オレイン酸処理細胞、およびEPA処理細胞の免疫蛍光顕微鏡分析の結果を示す写真である。
【図9】Aは、オレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞からの細胞溶解物に関する、PC、PE、およびTG脂質中の[14C]オレイン酸(上部パネル)および[H]EPA(下部パネル)の分布を示す折れ線グラフである。Bは、オレイン酸処理細胞およびEPA処理細胞に関する、[14C]オレイン酸(上部パネル)および([H]EPA(下部パネル)で標識したTGおよびFFAの分泌を示す折れ線グラフである。
【図10】Aは、細胞質(上部パネル)、ミクロソーム膜(中間パネル)、およびミクロソーム内腔(下部パネル)間の[14C]オレイン酸で標識したPC、PE、およびTGの分布を示す棒グラフである。Bは、細胞質(上部パネル)、ミクロソーム膜(中間パネル)、およびミクロソーム内腔(下部パネル)間の[H]EPAで標識したPC、PE、およびTGの分布を示す棒グラフである。Cは、PC(上部)およびPE(下部)への[14C]オレイン酸および[H]EPAの取り込みを示す折れ線グラフである。
【図11】リン脂質のリモデリング/代謝回転と代謝的に区別された、TGプールの分布との間の関係を示す略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の自家食作用誘導化合物を該化合物を必要とする患者に投与するステップを含む、トリグリセリドおよび/またはVLDLの血中濃度を低下させる方法。
【請求項2】
自家食作用誘導化合物はMap1LC3、GABARAP、GATE16、およびクラスIIIのP13’キナーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トリグリセリドおよび/またはコレステロールの血中濃度を低下させるのに有用な薬物を調製するための自家食作用誘導化合物の使用。
【請求項4】
自家食作用誘導化合物はMap1LC3、GABARAP、GATE16、およびクラスIIIのP13’キナーゼからなる群から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
治療有効量の自家食作用誘導化合物を該化合物を必要とする患者に投与するステップを含む、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心筋虚血、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、再狭窄、糖尿病、インシュリン抵抗性、代謝症候群、腎疾患、血液透析、I型糖原病、多嚢胞性卵巣症候群、二次性高トリグリセリド血症、またはこれらの組合せからなる群から選択される障害を治療または予防する方法。
【請求項6】
自家食作用誘導化合物はMap1LC3、GABARAP、GATE16、およびクラスIIIのP13’キナーゼからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心筋虚血、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、再狭窄、糖尿病、インシュリン抵抗性、代謝症候群、腎疾患、血液透析、I型糖原病、多嚢胞性卵巣症候群、二次性高トリグリセリド血症、またはこれらの組合せからなる群から選択される障害を治療または予防するのに有用な薬物を調製するための自家食作用誘導化合物の使用。
【請求項8】
自家食作用誘導化合物はMap1LC3、GABARAP、GATE16、およびクラスIIIのP13’キナーゼからなる群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
(a)対照細胞培養系および試験細胞培養系を提供するステップと、
(b)前記試験細胞培養系の細胞に試験化合物を投与するステップと、
(c)前記対照細胞培養系および前記試験細胞培養系の自家食作用マーカーをアッセイするステップとを含み、
前記対照細胞培養系と比較したときの前記試験細胞培養系の前記自家食作用マーカーの異常値は試験化合物が自家食作用を調節することを示す、自家食作用調節化合物を同定する方法。
【請求項10】
前記自家食作用マーカーはERおよびゴルジ細胞画分中のVLDLおよびVLDL前駆体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
VLDL前駆体はPC部分含有脂質である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PC部分含有脂質は18:1(n−9)PCである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
VLDL前駆体はPE部分含有脂質である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
PE部分含有脂質は20:5(n−3)PEである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記自家食作用マーカーは免疫蛍光法によってapoB100およびMap1LC3の共存の程度を検出することによって決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
(a)対照細胞培養系および試験細胞培養系を提供するステップと、
(b)前記試験細胞培養系の細胞に試験化合物を投与するステップと、
(c)前記対照細胞培養系および前記試験細胞培養系の自家食作用マーカーをアッセイするステップとを含み、
前記対照細胞培養系と比較したときの前記試験細胞培養系の前記自家食作用マーカーの異常値は試験化合物が自家食作用を調節することを示す、自家食作用誘導化合物を同定する方法。
【請求項17】
前記自家食作用マーカーは、ERおよびゴルジ細胞画分中のPC部分含有脂質およびPE部分含有脂質である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PC部分含有脂質は18:1(n−9)PCである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
PE部分含有脂質は20:5(n−3)PEである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記自家食作用マーカーは免疫蛍光法によってapoB100およびMap1LC3の共存の程度を検出することによって決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
細胞は肝細胞または肝癌細胞である、請求項9から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
肝細胞はヒトapoB100を発現するラット肝細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
肝癌細胞はヒトapoB100を発現するラット肝癌細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
ラット肝癌細胞はMcA−RH−7777細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
apoB100タンパク質はタグと融合する、請求項22または23に記載の方法。
【請求項26】
タグは蛍光タンパク質である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
タグは配列Cys−Cys−X−X−Cys−Cys(Xは任意のアミノ酸)を有するテトラ−システインである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
トリグリセリドおよび/またはVLDLの血中濃度を低下させるのに有用な薬物を調製するための、請求項16から27のいずれか一項によって同定される自家食作用誘導化合物の使用。
【請求項29】
請求項16から27のいずれか一項の方法によって同定される自家食作用誘導化合物と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項30】
治療有効量の請求項25に記載の自家食作用誘導化合物を該化合物を必要とする患者に投与するステップを含む、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心筋虚血、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、再狭窄、糖尿病、インシュリン抵抗性、代謝症候群、腎疾患、血液透析、I型糖原病、多嚢胞性卵巣症候群、二次性高トリグリセリド血症、またはこれらの組合せからなる群から選択される障害を治療または予防する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−513891(P2007−513891A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543338(P2006−543338)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002119
【国際公開番号】WO2005/056049
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506198540)ザ・ユニバーシテイ・オブ・マニトバ (1)
【Fターム(参考)】