説明

トリグリセリドから脂肪酸及びワックス代替物を生成するシステム及び方法

少なくとも1つの油脂を含む原料を反応器内で不活性真空下で加熱して脂肪酸を揮発させ、架橋された油を含む塔底残渣から揮発脂肪酸を除去することによって揮発脂肪酸を生成する方法である。トリグリセリドから脂肪酸をストリッピングするシステムであり、このシステムは、反応器と、加熱装置と、1kPa〜50kPaの範囲の真空を反応器にもたらすことができる真空ポンプとを備える。水素化物を生成するシステムであり、トリグリセリドを含んだ流れ用の入口と揮発脂肪酸用の出口と架橋生成物用の出口とを含む反応器と、加熱装置と、1kPa〜50kPaの範囲の真空を前記反応器にもたらすことができる真空ポンプと、水素化反応器とを含み、この水素化反応器の入口は架橋生成物用の出口に流体接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府から資金提供を受けた研究開発に関する記載
該当なし。
【0002】
本発明は、植物及び動物由来のトリグリセリドから脂肪酸及びパラフィンワックス代替物を生成するためのシステム及び方法に関する。具体的には、本発明は、グリセロール脂肪酸エステル含有組成物を架橋し、遊離脂肪酸を生成し、且つ架橋残渣から遊離脂肪酸を分離する方法に関する。該遊離脂肪酸は分留され得る。「塔底」架橋残渣は粗トリグリセリドへの添加物として粗トリグリセリドを水素化する前に使用され得る。架橋塔底物と粗トリグリセリドとのブレンドの水素化は、該ブレンドをパラフィンワックス代替物として使用するのに適したものにする特性を有する。
【背景技術】
【0003】
植物種子及び大豆、トウモロコシ、菜種等の農産物から抽出される油は主にトリグリセリドから構成される。トリグリセリドは3つの脂肪酸と結合したグリセリン分子から構成される。用語「脂肪酸」とは、天然の動物性脂肪、植物油、及び魚油中に見られるカルボン酸を指すものと一般に理解されている。異なる供給源に由来する植物油間の大きな違いは、トリグリセリドの脂肪酸成分である。脂肪酸は、分子の炭素原子の数及び脂肪酸の二重結合の数が多様である。植物油の脂肪酸の大半は、炭素数が約8〜約20個である。炭素原子数が同じである脂肪酸は異なる不飽和度(異なる二重結合数)を有し得る。例えば、ステアリン酸は二重結合を含まない(すなわち、ステアリン酸は飽和脂肪酸である)が、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸はそれぞれ1個の二重結合、2個の二重結合及び3個の二重結合を含んでいる。
【0004】
二重結合を有さない脂肪酸は飽和脂肪酸として知られており、他方、少なくとも1つの二重結合を有するものは不飽和脂肪酸として知られている。最も一般的な飽和脂肪酸はパルミチン酸(炭素数16個)及びステアリン酸(炭素数18個)である。オレイン酸及びリノール酸(共に炭素数18個)は最も一般的な不飽和脂肪酸である。
【0005】
トランス脂肪酸は、トランス型立体配置にある少なくとも1つの二重結合を含む不飽和脂肪酸である。二重結合がトランスの立体配置にあることにより、結合角がシス型立体配置よりも大きくなる。その結果、脂肪酸の炭素鎖はより長いものになり、シス不飽和二重結合を含む脂肪酸の炭素鎖よりもむしろ飽和脂肪酸の炭素鎖に類似したものとなる。この二重結合(複数の二重結合)の立体配座は脂肪酸の物理的特性に影響を及ぼす。トランス二重結合を含む脂肪酸は、より密に詰まったり、アシル鎖が整列する可能性があり、その結果、可動性が低下し、したがって、シス二重結合を含む脂肪酸よりも流動性が低いものになる。トランス脂肪酸は一般に、植物油の部分水素添加により生成される。飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のトランス異性体は、それらが健康によくないという何らかの示唆があるように、食品成分として好ましくない。飽和脂肪及びトランス脂肪を含む脂肪に関するこのような健康上の問題があるために、脂肪が消費されるときには、トランス脂肪含有量が低いことが好ましい。
【0006】
トリグリセリド(トリアシルグリセロールとしても知られている)を加水分解してカルボン酸及びアルコールを生成させることができる。脂肪又は油分子を完全加水分解することによって生成される反応生成物は、グリセロール分子1個と脂肪酸分子3個である。この反応はグリセリドのアシル基が段階的に加水分解されることによって進行するため、所与の時間における反応混合物はトリグリセリド、水、グリセロール及び脂肪酸だけでなくジグリセリド及びモノグリセリドも含んでいる。
【0007】
トリグリセリド分子のグリセリン骨格から分離又は分解された脂肪酸は一般に、食品、化粧品、医薬品などの種々の産業並びに化学工業において、そのまま及び/又は原料として用いられる。
【0008】
脂肪酸はいくつかの手段によってグリセリン分子から分解することができる。コストが安いことから油脂を加水分解するために広く用いられている商業的方法には、コルゲート‐エメトリー蒸気加水分解法(Colgate‐Emery Steam Hydrolysis Process)として知られている高温蒸気処理法がある。この方法並びにその変法は、240℃〜315℃の範囲の高温及び4.93MPa(700psig)〜5.17MPa(750psig)の範囲の高圧下で水と脂肪との向流反応を用いる。この方法では、加水分解反応の効率を高めるべく、塔を用いて脂肪及び水を混合する。典型的には、脂肪は高圧供給ポンプによって塔底部へ導入される。水は脂肪の40〜50重量%の比率で塔頂部付近へ導入される。下降してくる水の中を脂肪が上昇するにしたがって連続的な油−水界面が生成される。この界面で加水分解反応が起こる。高圧の水蒸気を直接注入すると、温度は約260℃まで上昇し、圧力は4.83MPa(700psig)〜4.93MPa(715psig)に維持される。圧力が上昇することによって水の沸点が上昇し、それによってより高温を用いることが可能となるため、その結果、脂肪中への水の溶解度が増大する。水の溶解度が増大すると加水分解反応効率は高くなる。この連続的な向流高圧プロセスによって、2〜3時間以内で分解収率(split yield)98〜99%の効率が達成される。この方法によって得られた脂肪酸生成物は、分離(例えば、蒸留)によって精製されることが多い。
【0009】
高圧高温により不飽和油脂を加水分解することに伴う副生成物の生成及び不飽和脂肪の劣化を避けるために、他の加水分解法も用いられる。このような方法には、不飽和油を塩基で分解し、次いで酸性化(acidulation)又は酵素的加水分解することによる加水分解を含む。同様の時間条件下では、コルゲート‐エメトリー法よりも分解収率は概ね低くなる。
【0010】
ロウソク、ボール紙コーティング及び接着剤などの用途において石油ワックスに取って代わるために、高水素化植物油(heavily hydrogenated vegetable oil)が使用されてきた。こういった用途の大半では、石油ワックスの融点は48℃(華氏120度)超である。熱帯又は暑い夏の条件において或いは加熱注入(hot pour)などの用途及びシールホットメルト接着剤用途において石油ワックスの融解を避けるためには、この最小の融点が好ましい。
【0011】
トリグリセリド由来の植物ワックスを水素化して該融点を上げることができる。水素化度は通常、ワックスのヨウ素価によって測定される。水素化植物油が48℃(華氏120度)超の融点を有するためには、非常に低いヨウ素価が必要となる。また、水素化植物油の融点が上がると、針貫入値(needle penetration value)(当業者には知られている一般的な方法)によって示されるように、水素化植物油は硬くなる。更なる水素化により植物ワックスの融点及び硬度が増大するにつれて、ワックスはより脆弱になる。脆弱なワックスは撓むと割れ易く、フレキシブルなパッケージング及び接着剤のような用途には適さない。低ヨウ素価(IV)の植物ワックスをロウソク用途に使用することは一般に好ましくない。これは、そのワックスが固化すると割れ易くなり、見かけが好ましくないためである。
【0012】
脆弱でなく、より可撓性がある高融点の製品を得るために、トリグリセリを水素化するという試みが報告されている。低IV水素化トリグリセリドワックスの欠点を克服するために、一般に、添加剤及び/又は賦形剤(diluent)を用いてグリセリドワックスを改質し、より可撓性があり、脆弱でなく及び/又は高融点にする。添加された化合物には、モノグリセリド及びジグリセリド、ビニルポリマー、石油ワックス及び微結晶ワックス、スチレンブタジエンポリマー、脂肪酸、αオレフィン、及びグリセリンがある。
【0013】
先行技術に関連する問題のいくつかには、ロウソク用途において可撓性を付与するのに使用される添加剤の燃焼特性が好ましくないこと、及び従来の添加剤は再生可能ではなく、環境上の問題を引き起こすという事実がある。また、添加物の添加により可撓性を付与し、融点を上げるには、追加の製造が必要になるために好ましくない追加の混合ステップが必要になる。
【0014】
したがって、トリグリセリドから脂肪酸を分離し、これにより製品の外観、触感、及び/又は安定性が優れた脂肪酸を生成するためのシステム及び方法、並びに油の水素化を増強するのに使用し得る副生成物が得られるその調製法を提供する必要性が依然としてある。この副生成物を用いて、石油ワックスの代替物として又は石油ワックスとの混合物成分として有用な固型植物ワックスを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5952517号明細書
【発明の概要】
【0016】
本明細書においては、少なくとも1つの油脂を含む原料を反応器内で不活性真空下で加熱して脂肪酸を揮発させるステップと、架橋された油を含む塔底残渣から揮発脂肪酸を除去するステップとを含む揮発脂肪酸を製造する方法を開示する。原料は、バター脂、カカオ脂、カカオ代用脂、イリッペ脂、コクム脂、乳脂、モーラー脂、フルワラ脂、サル脂、シア脂、ボルネオ脂、豚脂、羊毛脂、牛脂、羊脂、その他の獣脂、キャノーラ油、ヒマシ油、ヤシ油、コリアンダー油、トウモロコシ油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、麻実油、亜麻仁油、マンゴー核油、メドウフォーム油、牛脚油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、パームオレイン、パームステアリン、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、落花生油、菜種油、米ぬか油、ベニバナ油、サザンカ油、大豆油、ヒマワリ種子油、トール油、椿油、植物油、魚油、及びこれらの組み合わせから選択することができる。各種実施形態では、原料は大豆油を含む。原料は70超のヨウ素価を有し得る。原料は少なくとも1つの抗酸化剤を更に含み得る。少なくとも1つの抗酸化剤はパルミチン酸アスコルビル及びトコフェロールを含み得る。
【0017】
該方法は、加熱中に原料を架橋用触媒と接触させるステップを更に含み得る。加熱は約200℃〜約600℃の範囲の温度とし得る。真空は1.0kPa〜約50kPaの範囲とし得る。該方法は、揮発脂肪酸を凝縮して脂肪酸凝縮物を得るステップを更に含み得る。反応器内に水を導入して加水分解を促進させ得る。該方法は、前記脂肪酸を分留するステップを更に含み得る。塔底残渣から揮発脂肪酸を除去するステップは、ワイプト・フィルム・エバポレータ(wiped film evaporator)を用いて実行され得る。各種実施形態では、約6重量%未満の揮発脂肪酸がトランス異性体である。架橋することによって、低ヨウ素価により示されるような脂肪酸の二重結合数も低減され、これにより脂肪酸は熱的により安定したものになる。
【0018】
本明細書においては水素化物を生成する方法も開示され、該方法は塔底残渣を水素化して水素化物を生成するステップを含む。水素化の前に塔底残渣を約0重量%〜約99重量%の基油と混合し得る。水素化物を約1重量%〜約99重量%のパラフィンワックスとブレンドしてブレンドされたワックスを生じ得る。エチレン酢酸ビニル及びエチレンプロピレン共重合体などのエチレン共重合体のような安定化剤及び改質剤など、他の添加剤もブレンド中に使用され得る。水素化物は、1週間を超える時間放置すると、無色のままであり得る。塔底残渣を水素化するステップは、塔底残渣と水素ガスとを含んだ混合物を約20,000/秒超のせん断速度に供するステップを含み得る。塔底残渣を水素化するステップは、塔底残渣を含んだ液相に分散された水素含有気泡を含む分散物を形成するステップを含み得、該気泡は5.0μm未満の平均直径を有する。各種実施形態では、分散物を形成するステップは水素含有ガス及び液相を高せん断装置(high shear device)において接触させるステップを含み、該高せん断装置は少なくとも1つの回転子を備え、少なくとも1つの回転子は分散物の形成中に少なくとも22.9m/秒(4,500フィート/分)の先端速度で回転される。該高せん断装置は少なくとも1つの回転子の先端において少なくとも約1034.2MPa(150,000psi)の局所圧力を発生し得る。該高せん断装置のエネルギー消費量は分散物の形成中に1000W/mを超え得る。石油ワックスと水素化物とを含むブレンドされたワックスも開示する。
【0019】
トリグリセリドから脂肪酸をストリッピングするシステムも開示し、該システムは、反応器と、反応器の内容物を200℃〜600℃の範囲の温度まで加熱し得る加熱装置と、1kPa〜50kPaの範囲の真空を反応器にもたらすことができる真空ポンプとを備える。該システムは、脂肪酸を分留するようになされた精留塔を更に備え得る。該精留塔はワイプト・フィルム・エバポレータであり得る。該反応器は、トリグリセリドを含んだ流れ用の入口と、揮発脂肪酸用の出口と、塔底残渣用の出口とを備え得る。各種実施形態では、該システムは、せん断ギャップによって分離された少なくとも1つの回転子と少なくとも1つの固定子とを含む少なくとも1つの高せん断混合装置を更に備え、該せん断ギャップは少なくとも1つの回転子と少なくとも固定子との間の最小距離であり、高せん断混合装置は22.9m/s(4,500フィート/分)超の少なくとも1つの回転子の先端速度を発生することができ、高せん断装置の入口は反応器の塔底残渣用出口に流体接続されている。
【0020】
水素化物を生成するシステムが開示され、該システムは、トリグリセリドを含んだ流れ用の入口と揮発脂肪酸用の出口と架橋生成物用の出口とを含む反応器と、反応器の内容物を200℃〜600℃の範囲の温度まで加熱し得る加熱装置と、1kPa〜50kPaの範囲の真空を反応器にもたらすことができる真空ポンプとを備え、該水素化反応器の入口は架橋生成物用出口に流体接続されている。該システムは水素化反応器の上流に高せん断装置を更に備えることができ、該高せん断装置は少なくとも1つの回転子と少なくとも1つの固定子とを備える。
【0021】
これら及び他の実施形態並びに潜在的利点は以下の詳細な説明及び図面において明らかとなろう。
【0022】
本発明の好適な実施形態を更に詳細に説明するために、ここで添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る脂肪酸生成及び架橋システムを示す略図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係るワイプト・フィルム・エバポレータを備える脂肪酸生成及び架橋システムを示す略図である。
【図3】本システムの一実施形態に使用されるマルチステージ型高せん断装置を示す長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特定のシステム構成要素に言及するために、以下の説明及び特許請求の範囲を通じて特定の用語が使用される。本明細書は、名称は異なるが機能は異ならない構成要素を区別することを意図していない。以下の説明において及び特許請求の範囲においては、「含む(including)」及び「備える(comprising)」は拡張可能に使用されるため、「含むが、・・・に限定されるわけではない」ということを意味するものと解釈されるべきである。
【0025】
本明細書において用いる用語「脂肪酸」とは、動物性脂肪、植物油、及び魚油中に見られるカルボン酸(典型的には、C〜C20)に幅広く適用される。脂肪酸は、飽和、1価不飽和、又は多価不飽和の形態のものを天然に見出すことができる。脂肪酸の天然の幾何学的な立体配置はシス型配置である。シス型配置はこのような酸の流動性に大きく寄与する。用語「脂肪酸」とは、トリグリセリドの長い炭素鎖であるトリグリセリドの成分を指す。表1に一般的な脂肪酸の化学名並びに炭素原子及び二重結合の数を示す。
【0026】
本明細書において用いる用語「遊離脂肪酸」とは、脂肪を不活性条件下、高温で加熱後に得られる真空ストリッピングされた生成物を指す。
【0027】
【表1】

【0028】
本明細書において用いる用語「飽和物(saturate)」、「飽和脂肪」、及び「飽和脂肪酸」とは、指示のない限り、不飽和物を含まないC4〜C26の脂肪酸又はエステルを指す。用語「不飽和」とは、炭化水素鎖中に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合が存在することを指す。
【0029】
用語「ヨウ素価」、脂肪又は油中に存在する不飽和二重結合の総数の指標と定義される。本明細書において用いる用語「ヨウ素価」又は「IV」とは、脂肪の100グラムのサンプルにより吸収されるハロゲンと等価であるヨウ素のグラム数を指す。
【0030】
「不飽和脂肪が多い」という語句は、ウィイス(Wijs)法によって測定されたヨウ素価が110を超える油脂又はその混合物を含む。
【0031】
本明細書において用いる用語「トランス」、「トランス脂肪酸」、「トランス異性体」及び「脂肪酸のトランス異性体」とは、通常脂肪の水素化又は部分水素化により得られるトランス型配置にある二重結合を含む脂肪酸及び/又はエステルを指す。低トランス油脂においては、全脂肪酸組成の約6重量%未満がトランス脂肪を占める。
【0032】
本明細書において用いる用語「脂肪」及び「油」とは、由来或いは室温にて固体又は液体であるか否かに関係なく、食用の脂肪酸トリグリセリドを全て包含するものとする。したがって、用語「脂肪」及び用語「油」には、通常は液体及び通常は固体の植物性並びに動物性の脂肪及び油を含む。これらの用語には天然及び合成の脂肪及び油が含まれる。
【0033】
本明細書において用いる用語「食用油」又は「基油」とは、室温で実質的に液体であり、且つIVが70超、より好適には100超である油を指す。基油は非水素化油又は部分水素化油、改質油(例えば脱色及び/又は脱臭)、又はこれらの混合物とすることができる。
【0034】
本明細書において用いる「加水分解」とは、出発物質の脂肪又は油などのグリセロール脂肪酸エステル含有組成物を水と反応させることによって、この出発物質を脂肪酸成分とグリセリン成分とに分解することを指す。
【0035】
本明細書において用いる用語「分散物」とは、共に容易には混合及び溶解しない少なくとも2種の区別可能な物質(又は「相」)を含む液化混合物を指す。本明細書において用いる場合、「分散物」とは「連続」相(又は「基質」)を含み、その中にその他の相又は物質の不連続な液滴、気泡及び/又は粒子を保持する。したがって、用語「分散物」は、連続液相に懸濁された気泡を含む発砲体、第1の液体の液滴が連続相(第1の液体とは混和しない第2の液体を含む)に分散されたエマルジョン、及び固体粒子が分布した連続液相を指し得る。本明細書において用いる用語「分散物」は、気泡が分布した連続液相、固体粒子(例えば、固体触媒)が分布した連続液相、連続相に実質的に不溶性である第2の液体の液滴が分布した第1の液体の連続相、及び固体粒子、非混和性液滴及び気泡のいずれか1つ又は組み合わせが分布した液相を包含する。したがって、分散物は組み合わせとして選択される材料の性質に応じて、いくつかの場合には均質混合物(例えば、液体/液相)として、又は不均質混合物(例えば、ガス/液体、固体/液体、又はガス/固体/液体)として出て行くこができる。
【0036】
概要
本明細書においては、トリグリセリド油を処理して安定した脂肪酸を生成し、増強された植物油ワックス生成用の改質剤として有用な塔底残渣(以下、BCR‐塔底架橋残渣と呼ぶ)を創出するシステム及び方法を開示し得る。
【0037】
トリグリセリドから脂肪酸及びワックス代替物を生成するためのシステム
本開示のシステム及び方法は、主に熱及び真空を利用して脂肪酸を分解(split)及び分離(separate)し、続いて分留して種々の鎖長の成分を単離する。図1は本開示の一実施形態に係る脂肪酸生成及び架橋システム100のプロセスフロー図である。代表的なシステム100の基本構成要素には、反応器60、凝縮装置110、及び真空ポンプ180を含む。反応器60は加熱装置80を備えており、それは、例えば、内部熱交換器、加熱マントル、又は反応器60の内容物を加熱するように構成された他の既知の加熱装置であり得る。各種実施形態では、反応器60はバッチ反応器として操作され、液体入口又は液体出口を備えない。その他の実施形態では、システム100は連続操作するように設計され、反応器60は、トリグリセリドを反応器60内に導入するための入口ライン45と反応器60から塔底生成物を除去するための出口ライン90とに接続されている。揮発脂肪酸を含んだ生成物ガスを反応器60から抽出するのに、出口ライン70が使用され得る。その他の実施形態では、図2の実施形態に示すように、反応器360はガス出口ラインに流体接続されていない。反応器60内に不活性ガスを導入するために、入口ライン50が使用され得る。
【0038】
凝縮装置110は反応器60において生成された揮発脂肪酸を液化するのに適した任意の装置である。システム100は液状脂肪酸を含んだ凝縮物を蓄積するアキュムレータ130をさらに備え得る。凝縮装置110からの出口ライン115はアキュムレータ130内に液化脂肪酸生成物を導入し得る。真空ポンプ180は凝縮装置110及び反応器60を真空にする任意の適した真空ポンプである。
【0039】
システム100は、トリグリセリドを含んだ原料をライン15から反応器60内に圧送し、且つ加熱し得るポンプ25及びヒータ35をそれぞれ更に備え得る。各種実施形態では、システム100は反応器60において生成された脂肪酸を分留する装置を更に備える。例えば、図1の実施形態では、システム100はライン140、アキュムレータ130及びライン115を介して凝縮装置110に流体接続された精留塔150を更に備える。例えば内部熱交換器160により精留塔150の温度を調整することによって、沸点が低い脂肪酸は上側のライン155において除去され、沸点の高い脂肪酸はライン170を介して除去され得る。
【0040】
図2は本発明の別の実施形態に係る脂肪酸生成及び架橋システム300のプロセスフロー図である。図2の実施形態では、システム300は、反応器出口ライン385を介して反応器360及びワイプト・フィルム・エバポレータ400を備える。この実施形態では、反応器360からの生成物はワイプト・フィルム・エバポレータ400内に導入される。この実施形態では、反応器360は主に加熱式貯蔵タンク(heated holding tank)として働き、加熱装置380(図2に加熱マントルとして示す)を備える。ポンプ325及びヒータ335をそれぞれ用いて、反応器360内に導入される前に、ライン315内のトリグリセリドを含んだ原料を圧送及び予熱し得る。図2の実施形態では、反応器360において生成された脂肪酸を塔底架橋生成物残渣から分留及び分離するのに、ワイプト・フィルム・エバポレータ400が用いられる。分留された脂肪酸は出口ライン370を介してWFE400を出て、他方、BCRは出口ライン390を介してWFE400を出る。ワイプト・フィルム・エバポレータ400の内容物にライン375を介して所望の真空をもたらすために、真空ポンプ(図示せず)が使用され得る。分留された脂肪酸を除去するために、出口ライン370はWFE400に接続され、WFE400から塔底架橋残渣を除去するために、出口390はWFE400に接続され得る。熱交換器395で利用される加熱用流体に応じて、ワイプト・フィルム・エバポレータは、小数(fractional)のmmHg且つ最大約400℃の温度で動作可能である。
【0041】
図1を参照すると、以下で更に議論するように、複数回通過操作(multiple pass operation)のために、出口ライン90はライン15に流体接続され得る。
【0042】
各種実施形態では、システム100は塔底架橋残渣の少なくとも一部を水素化する水素化装置を更に備える。例えば、図1の実施形態では、システム100はポンプ5、外部高せん断混合装置(HSD)40、及び容器10を更に備える。図1に示すように、高せん断装置40は容器/反応器10の外部に位置している。これら構成要素の各々を以下で更に詳細に説明する。ライン21は水素化すべき追加の油脂を導入するポンプ5に接続され得る。ライン13はポンプ5をHSD40に接続し、ライン18はHSD40を容器10に接続する。ライン22は水素含有ガス(例えばH)を導入するライン13に接続され得る。或いは、ライン22はHSD40の入口に接続され得る。未反応の水素及び/又は他の反応又は生成ガスを除去するために、ライン17は容器10に接続され得る。
【0043】
以下に記載のプロセスの説明を読めば明らかとなるように、必要に応じて、追加の構成要素又はステップがシステム100全体に亘って組み込まれてもよい。HSD40の周囲にループをもたらすために、必要に応じて、例えば、ライン20はライン21又はライン13に接続されてもよい。
【0044】
高せん断混合装置
高せん断装置又は高せん断混合装置と呼ばれることもある外部高せん断混合装置(HSD)40は、水素化すべき油と、分子状水素とを含んだライン13を介して入口流を受け取るように構成されている。或いは、HSD40は別個の入口ライン(図示せず)を介して液状又は気体状の反応物流を受け取るように構成されてもよい。図1には高せん断装置を1つだけ示しているが、該システムのいくつかの実施形態は直流又は並流で配置された2以上の高せん断混合装置を有してもよいことを理解されたい。HSD40は各々、固定子と回転子との間にギャップを有する回転子/固定子の組み合わせを備えた1以上の発生器を使用する機械式装置である。各発生器セットにおける回転子と固定子との間のギャップは、固定でも調整可能でもよい。HSD40は、高せん断装置を流れる反応混合物中にサブミクロン及びミクロンサイズの気泡を発生させるように構成されている。該高せん断装置は反応混合物の圧力及び温度を制御することができるようにエンクロージャ又はハウジングを備える。
【0045】
高せん断混合装置は一般に、それらが流体を混合する能力に基づいて、3つの一般的なクラスに分割される。混合とは流体内の粒子又は不均一な種のサイズを低減するプロセスのことである。混合の程度又は完全性の測定基準の1つは、混合装置が流体粒子を細分化するために発生する単位体積当たりのエネルギー密度である。このクラスは伝達されるエネルギー密度に基づいて区別される。サブミクロン〜50μmの範囲の粒径を有する混合物又はエマルジョンを一貫して生成するのに十分なエネルギー密度を有する3つのクラスの工業用混合器には、均質化弁システム(homogenization valve system)、コロイドミル、及び高速混合器が挙げられる。第1のクラスの高エネルギー装置(均質化弁システムと呼ぶ)においては、処理すべき流体は非常に高圧で狭いギャップ弁(narrow‐gap valve)を通って低圧環境内に圧送される。該弁の圧力勾配及びその結果生じる乱流並びにキャビテーションは、流体中の粒子を細分化するように働く。これらの弁システムはミルク均質化において最も一般的に使用され、サブミクロン〜約1μm範囲の平均粒径を生み出すことが可能である。
【0046】
エネルギー密度スペクトルの反対端には、低エネルギー装置と呼ばれる第3のクラスの装置がある。これらのシステムは一般に、より一般的な用途の多くにおいては食品である処理すべき流体の貯蔵容器内で高速回転するパドル又は流体回転子を有する。20μmを超える平均粒径が処理流体において許容可能である場合には、これらの低エネルギーシステムは一般的に使用される。
【0047】
流体に伝達される混合用のエネルギー密度の点で、低エネルギー装置と均質化弁システムとの間には、中間エネルギー装置として分類されるコロイドミル及び他の高速回転子‐固定子装置がある。典型的なコロイドミル構成には、緊密に制御される一般に0.0254mmから10.16mm(0.001−0.40インチ)である回転子‐固定子ギャップによって相補的な液体冷却型固定子から離間された円錐状又は円盤状回転子が含まれる。回転子は通常、電動モータによって直接駆動又はベルト機構を介して駆動される。回転子が高速で回転するにつれて、回転子は回転子の外面と固定子の内面との間の流体を圧送し、該ギャップで生じたせん断力が流体を処理する。適切に調整された多数のコロイドミルにより、処理される流体においては0.1〜25μmの平均粒径が達成される。これらの能力によって、コロイドミルは、コロイド及び油性/水性エマルジョン処理例えば、化粧品、マヨネーズ又はシリコーン/銀アマルガム形成から屋根ふき材用タールの混合に必要な処理などの種々の用途に適したものになる。
【0048】
先端速度とは回転子の先端が単位時間当たりに移動する円周距離のことである。したがって、先端速度とは回転子直径と回転数との関数である。先端速度(例えば、m/分)は、回転子先端が移動(transcribed)する円周距離2πR(ここで、Rは回転子の半径(例えば、メートル))×回転数(例えば、1分当たりの回転数、rpm)によって計算され得る。コロイドミルは、例えば、22.9m/秒(4500フィート/分)超の先端速度を有し得、40m/秒(7900フィート/分)を超え得る。この開示のために、用語「高せん断」とは、5.1m/s(1000フィート/分)超の先端速度の能力があり、且つ反応させるべき生成物の流れにエネルギーを与えるための外部の機械的動力駆動装置を必要とする機械式回転子固定子装置(例えば、コロイドミル又は回転子‐固定子分散器)を指す。例えば、HSD40においては、22.9m/秒(4500フィート/分)を超える先端速度が達成可能であり、40m/秒(7900フィート/分)を超え得る。いくつかの実施形態では、HSD40は少なくとも22.9m/s(4500フィート/分)の先端速度で少なくとも300L/時を伝達することができる。この消費電力は約1.5kWとなり得る。HSD40は高い先端速度を極小のせん断ギャップと組み合わせて、処理中の材料に著しいせん断力を発生させる。せん断量は流体の速度に依存する。したがって、高せん断装置の動作中、圧力及び温度が高い局所領域は回転子の先端に生じる。ある場合には、該局所的に高い圧力は局所的に高い圧力は約1034.2MPa(150,000psi)である。ある場合には、該局所的に高い温度は約500℃である。いくつかの実施形態では、これらの局所的な圧力及び温度の上昇はナノ秒又はピコ秒の間持続し得る。
【0049】
流体に入力されるエネルギーの近似値(kW/L/分)はモータエネルギー(kW)及び流体出力(L/分)を測定することによって推定可能である。上記のように、先端速度とは、反応物に付与される機械力を発生している1以上の回転要素の末端に関連する速度(フィート/分又はm/秒)のことである。各種実施形態では、HSD40のエネルギー消費量は1000W/m超である。各種実施形態では、HSD40のエネルギー消費量は約3000W/m〜約7500W/mの範囲である。
【0050】
せん断速度は先端速度をせん断ギャップ幅(回転子と固定子との間の最小の間隙)で割ったものである。HSD40において発生されるせん断速度は20,000/秒を超える範囲になり得る。いくつかの実施形態では、せん断速度は少なくとも40,000/秒である。いくつかの実施形態では、せん断速度は少なくとも100,000/秒である。いくつかの実施形態では、せん断速度は少なくとも500,000/秒である。いくつかの実施形態では、せん断速度は少なくとも1,000,000/sである。いくつかの実施形態では、せん断速度は少なくとも1,600,000/秒である。各種実施形態では、HSD40において発生されるせん断速度は、20,000/秒〜100,000/秒の範囲である。例えば、ある用途においては、回転子先端速度は約40m/秒(7900フィート/分)、せん断ギャップ幅は0.0254mm(0.001インチ)であり、1,600,000/秒のせん断速度を発生する。別の用途においては、回転子先端速度は約22.9m/秒(4500フィート/分)であり、せん断ギャップ幅は0.0254mm(0.001インチ)であり、約901,600/秒のせん断速度を発生する。
【0051】
HSD40は、水素の少なくとも一部がトリグリセリドと反応して増強水素化物を含んだ生成物流を生成する条件では、不飽和トリグリセリドを含む主液相(連続相)内に水素を高度に分散又は輸送することが可能である(通常であれば、主液相は水素と混和しない)。各種実施形態では、不飽和水素化供給流は更に触媒を含む。いくつかの実施形態では、HSD40はコロイドミルを備える。適したコロイドミルは、例えばノースカロライナ州ウィルミントン(Wilmington,NC)のIKA(登録商標)ワークス,インコーポレーテッド(IKA(R)Works Inc.)及びマサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington,MA)のAPV ノース アメリカ,インコーポレーテッド(APV North America,Inc.)によって製造されている。いくつかの実施例において、HSD40はIKA(R)ワークス,インコーポレーテッドのディスパックス リアクター(登録商標)(Dispax Reactor(R))を備えている。
【0052】
高せん断装置は、反応物に適用される機械力を発生する少なくとも1つの回転要素を備える。高せん断装置は、少なくとも1つの固定子と間隙によって分離された少なくとも1つの回転子とを備える。例えば、回転子は円錐状又は円盤状であってもよく、相補的形状の固定子から分離されてもよい。各種実施形態では、回転子及び固定子は共に円周方向に離間された複数の歯を備える。いくつかの実施形態では、1以上の固定子は、各発生器(回転子/固定子セット)の回転子と固定子との間に所望のせん断ギャップが得られるように調整可能である。乱流の増大のために、回転子及び/又は固定子の歯間の溝は、交互になったステージにおいて方向が交互になり得る。各発生器は所要の回転をもたらすように構成された任意の適した駆動システムによって駆動され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、固定子と回転子との間の最小間隙(せん断ギャップ幅)は約0.0254mm(0.001インチ)〜約3.175mm(0.125インチ)の範囲である。ある種の実施形態では、固定子と回転子との間の最小間隙(せん断ギャップ幅)は約1.52mm(0.060インチ)である。ある種の構成においては、回転子と固定子との間の最小間隙(せん断ギャップ)は少なくとも1.78mm(0.07インチ)である。高せん断装置によって発生されるせん断速度は、流路に沿って長手方向の位置とともに変動し得る。いくつかの実施形態では、回転子は回転子の直径及び所望の先端速度に相応する速度で回転するように設定されている。いくつかの実施形態では、高せん断装置は固定子と回転子との間に固定された間隙(せん断ギャップ幅)を有する。或いは、高せん断装置は調整可能な間隙(せん断ギャップ幅)を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、HSD40は、1段式分散チャンバー(すなわち、単一の回転子/固定子の組み合わせ、単一の発生器)を備える。いくつかの実施形態では、高せん断装置40多段直列分散器であり、複数の発生器を備える。ある種の実施形態では、HSD40は少なくとも2つの発生器を備える。その他の実施形態では、高せん断装置40は少なくとも3つの高せん断発生器を備える。以下で更に説明するように、いくつかの実施形態では、高せん断装置40は多段混合器であり、これによりせん断速度(上記のように、先端速度に比例し且つ回転子/固定子ギャップ幅に反比例して変動する)は流路に沿って長手方向の位置とともに変動する。
【0055】
いくつかの実施形態では、外部高せん断装置の各ステージは相互交換可能な混合ツールを有しているので、柔軟性が得られる。例えば、ノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(R)ワークス,インコーポレーテッド及びマサチューセッツ州ウィルミントンのAPV ノース アメリカ,インコーポレーテッドのDR2000/4ディスパックスリアクター(登録商標)は3段階分散モジュールを備えている。このモジュールは、夫々の段階において細かい、中間、粗い、非常に細かいの選択肢を持った最大で3つの回転子/固定子の組み合わせ(発生器)を備えることができる。これにより、所望の気泡サイズ(例えば水素気泡)の狭い分布を有する分散体を作り出すことができる。いくつかの実施形態において、段階の各々は非常に細かい発生器を備えた状態で稼働される。いくつかの実施形態において、発生器セットの少なくとも1つは約5.08mm(0.20インチ)を超える回転子/固定子の最小限隙間(せん断ギャップ幅)を有する。代替実施形態において、発生器セットの少なくとも1つは約1.78mm(0.07インチ)を超える回転子/固定子の最小限隙間を有する。
【0056】
ここで図3を参照すると、適した高せん断装置200の長手方向断面図が示されている。図3の高せん断装置200は3つのステージ又は回転子‐固定子の組み合わせを備えた分散装置である。高せん断装置200は3つのステージ又は回転子‐固定子の組み合わせ220、230及び240を備えた分散装置である。該回転子‐固定子の組み合わせは、発生器220、230、240又は無制限のステージとして知られ得る。3つの回転子/固定子セット又は発生器220、230及び240は、駆動軸250に沿って直列に整列されている。
【0057】
第1の発生器220は回転子222及び固定子227を備える。第2の発生器230は回転子223及び固定子228を備える。第3の発生器240は回転子224及び固定子229を備える。各発生器について、回転子は入力250によって回転可能に駆動され、矢印265で示すように軸線260周囲に回転する。回転方向は矢印265で示したものと反対になり得る(例えば、回転軸線260周囲に時計回り又は反時計回り)。固定子227、228及び229は高せん断装置200の壁255に固定可能に結合されている。
【0058】
前述のように、各発生器は回転子と固定子との間が最小距離であるせん断ギャップ幅を有する。図3の実施形態では、第1の発生器220は第1のせん断ギャップ225を含み、2の発生器230は第2のせん断ギャップ235を含み、第3の発生器240は第3のせん断ギャップ245を含む。各種実施形態では、せん断ギャップ225、235、245は約0.025mm〜約10.0mmの範囲の幅を有する。或いは、当該プロセスは高せん断装置200を利用するステップを含み、ギャップ225、235、245は約0.5mm〜約2.5mmの範囲の幅を有する。ある場合には、せん断ギャップ幅は約1.5mmに維持される。或いは、せん断ギャップ225、235、245の幅は発生器220、230、240ごとに異なっている。ある場合には、第1の発生器220のせん断ギャップ225の幅は第2の発生器230のせん断ギャップ235の幅よりも大きく、また第3の発生器240のせん断ギャップ245の幅よりも大きい。上記のように、各ステージの発生器は相互交換可能であり得るので、柔軟性が得られる。高せん断装置200は、せん断速度が流れ260の方向に沿って長手方向に段階的に増大するように構成され得る。
【0059】
発生器220、230及び240は粗い、中間、微細、及び超微細という特徴を有し得る。回転子222、223及び224並びに固定子227、228及び229は歯状構造であり得る。各発生器は回転子‐固定子歯の2以上のセットを備え得る。各種実施形態では、回転子222、223及び224は各回転子の円周の周りに円周方向に離間された11以上の回転子歯を備える。各種実施形態では、固定子227、228及び229は各固定子の円周の周りに円周方向に離間された11以上の固定子歯を備える。各種実施形態では、回転子の内径は約12cmである。各種実施形態では、回転子の直径は約6cmである。各種実施形態では、固定子の外径は約15cmである。各種実施形態では、固定子の直径は約6.4cmである。いくつかの実施形態では、回転子は直径60mmであり、固定子は直径64mmであり、約4mmの間隙が得られる。ある種の実施形態では、3つのステージの各々は、約0.025mmから約4mmのせん断ギャップを含む長微細発生器を用いて操作される。固体粒子が高せん断装置40に送られる用途では、粒径の縮小及び粒子表面積の増大を適切にするために、適切なせん断ギャップ幅(回転子と固定子との間の最小間隙)が選択され得る。各種実施形態では、これは粒子をせん断して分散させることによって触媒表面積を大きくするのに好都合であり得る。
【0060】
高せん断装置200は、反応混合物をライン13から入り口205で受け取るように構成されている。この反応混合物は、分散性の相である水素と連続相である不飽和(又は部分的に飽和した)水素化フィード(feed)とを含む。この供給流は粒子状の固体触媒成分を更に含み得る。入口205に入る供給流は、生成分散物が形成されるように発生器220、230、及び次いで240に連続的に圧送される。生成分散物は出口210(及び図1のライン18)を介して高せん断装置200を出る。各発生器の回転子222、223、224は、固定された固定子227、228、229に対して高速で回転し、高いせん断速度が得られる。回転子の回転によって、流体(例えば、入口205に入る供給流など)はせん断ギャップを通って(且つ、存在する場合には、回転子歯間の空隙と固定子歯間の空隙とを通って)外方向に圧送され、局所的な高せん断条件が生まれる。流体が流れるせん断ギャップ225、235及び245(及び、存在する場合には、回転子歯と固定子歯との間のギャップ)内の流体に高せん断力が及ぶことにより、流体が処理され、生成分散物が生じる。生成分散物は高せん断出口210(図1のライン18)を介して高せん断装置200を出る。
【0061】
この生成分散物は、水素ガスの平均気泡サイズが約5μm未満である。各種実施形態では、HSD40は約1.5μm未満の平均気泡サイズを有する分散物を生成する。各種実施形態では、HSD40は1μm未満の平均気泡サイズを有する分散物を生成する。気泡は直径がサブミクロンであることが好ましい。ある場合には、平均気泡サイズは約0.1μm〜約1.0μmである。各種実施形態では、HSD40は400nm未満の平均気泡サイズを有する分散物を生成する。各種実施形態では、HSD40は100nm未満の平均気泡サイズを有する分散物を生成する。高せん断装置200は、少なくとも約15分間、大気圧にて分散状態のままであることができる気泡を含む分散物を生成する。
【0062】
理論によって拘束されるものではないが、エマルジョン化学においては、液体中に分散されたサブミクロンの粒子、又は気泡は主にブラウン運動効果によって移動することが知られている。高せん断装置200によって生成される分散体中の気泡は、固体触媒粒子の境界層を通してより大きな移動度を有し得、これにより、反応物の輸送が増強されることにより触媒反応が促進及び加速される。
【0063】
ある実施形態において、高せん断装置200はノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(登録商標)ワークス,インコーポレーテッド及びマサチューセッツ州ウィルミントンのAPV ノース アメリカ,インコーポレーテッドのディスパックス リアクター(登録商標)を備えている。様々な導入口/排出口接続、馬力、先端速度、出力rpm、及び流速を有したいくつかのモデルが利用可能である。高せん断装置の選択は、処理能力要求と外部高せん断装置200の排出口210を出るライン18(図1)の分散体における所望の粒子又は気泡サイズとに依存する。例えば、IKA(登録商標)モデルDR2000/4はベルト駆動、4M発生器、PTFEシーリングリング、25.4mm(1インチ)の導入口フランジ用衛生クランプ、19mm(3/4インチ)の排出口フランジ用衛生クランプ、2馬力の出力、7900rpmの出力速度、(発生器に依存する)約300−700L/hの(水の)流動能力、9.4−41m/s(1850ft/minから8070ft/min)の先端速度を含む。
【0064】
容器
容器又は反応器10は水素化が伝搬し得る任意のタイプの容器である。例えば、連続又は半連続攪拌式の反応器又は1以上のバッチ反応器が直列又は並列で使用され得る。ある用途では、容器10は塔型反応器であってもよく、他の用途では、管式反応器又は多管式反応器であってもよい。任意の数の反応器入口ラインが想起されるが、図1には1つを示す(ライン18)。入口ライン(図1には図示せず)を用いて触媒又は触媒スラリーを容器10内に導入し得る。ある種の実施形態では、容器10は通気ガス用の出口ライン17と水素化物流用の生成物出口ライン16とを備えてもよい。各種実施形態では、容器10は複数の反応器生成物ライン16を備える。
【0065】
水素化反応は適した時間、温度及び圧力条件が存在する場合は常に起こる。この意味では、水素化は温度及び圧力条件が適している場合はいつでも生じる可能性がある。循環スラリーをベースにした触媒を使用する場合、反応は図1に示した容器10外部の諸地点で生じ易い。それにもかかわらず、滞留時間、攪拌、並びに加熱及び/又は冷却を増大させるためには。離散した反応器/容器10が多くの場合好ましい。反応器10を用いる場合、反応器/容器10は固定層反応器、流動層反応器、又は輸送層反応器であり、触媒の存在及び水素化の速度に対するその作用に起因して、水素化反応が生じるための主要な場所になり得る。
【0066】
したがって、容器10は水素化が伝搬し得る任意のタイプの反応器であり得る。例えば、容器10は直列又は並列の1以上のタンク又は管式反応器を備え得る。水素化反応は、触媒が反応混合物の別の成分と同じ相にある均一触媒反応でもよいし、固体触媒を伴う不均一系触媒反応であってもよい。容器10を用いる場合、容器10はスラリー反応器、固定層反応器、トリクルベッド反応器、流動層反応器、気泡カラム、又は当業者に知られた他の方法として操作され得る。
【0067】
反応容器デザイン業界では知られているように、容器10は、次の構成要素:攪拌システム、加熱及び/又は冷却能力、圧力測定機器、温度測定機器、1以上の注入地点、及び水位制御装置(図示せず)のうちの1以上を含み得る。例えば、攪拌システムはモータ駆動混合器を含んでもよい。加熱及び/又は冷却装置は、例えば、熱交換器を備えてもよい。或いは、殆どの転換反応はHSD40内で生じ得るので、いくつかの実施形態では、容器10は主に保管容器として機能し得る。一般には好ましくないが、以下で更に説明するように、いくつかの用途では、特に多数の高せん断装置/反応器が直列で用いられている場合、容器10は省かれてもよい。
【0068】
伝熱装置
図1に示した実施形態の変形例では、容器10の上記の加熱/冷却能力に加えて、ヒータ35(図2の335)及び反応器60(図2の360)、プロセス流を加熱又は冷却するその他の外部又は内部伝熱装置も意図される。例えば、当業者に知られた既知の方法により、熱が容器10に加えられてもよいし、容器10から熱が除去されてもよい。外部加熱及び/又は冷却伝熱装置の使用も意図される。そのような1以上の伝熱装置に適したいくつかの場所は、ポンプ5とHSD40との間、HSD40と容器10との間、及び(高せん断水素化が複数回通過(multi‐pass)モードで操作されるときには)容器10とポンプ5との間である。そういった伝熱装置の非限定例のいくつかには、当業界では知られているように、シェル型、チューブ型、平板型、及びコイル型熱交換器がある。
【0069】
ポンプ
真空ポンプ180(図1)及び370(図2)は、反応器60又はWFE400それぞれに所望の真空をもたらすのに適した任意のポンプである。各種実施形態では、真空ポンプ180(370)は反応器60(WFE400)に1kPaから50kPaの範囲の真空をもたらすことができる。
【0070】
ポンプ5は連続又は半連続稼働のどちらかで構成されており、HSD40及びシステム1を通る制御された流れを可能にするように、202.65kPa(2気圧)の圧力、好ましくは303.975kPa(3気圧)の圧力を提供できる任意の適したポンプ装置である。例えば、ローパー ポンプ カンパニー(Roper Pump Company)(ジョージア州コマース(Commerce Georgia))のローパー タイプ 1 歯車ポンプ(Roper Type 1 gear pump)、デイトン エレクトリック コーポレーション(Dayton Electric Co)(イリノイ州ナイルズ(Niles,IL))のデイトン圧力増圧ポンプモデル2P372E(Dayton Pressure Booster Pump Model 2P372E)は1つの適したポンプである。好ましくは、ポンプの全ての接触部分は例えば316ステンレス鋼などのステンレス鋼から成る。システムのいくつかの実施形態において、ポンプ5は約2026.5kPa(20気圧)を超える圧力が可能である。ポンプ5に加えて、1つ又は複数の付加的高圧力ポンプ(図示されない)が図1及び2に図示されるシステムに含まれてもよい。例えば、ポンプ5と同様の増圧ポンプは、容器10内の圧力を増圧させるためにHSD40と容器10との間に備えられて、又はリサイクルポンプは容器10からHSD40へガスを再循環するためにライン17に配置される。他の実施例として、ポンプ5と同様の補足的な供給ポンプを備えることができる。
【0071】
ポンプ25(図2の325)は、ライン15(図2の315)から反応器60(図2の360)内に液体供給物を導入するのに適した任意のポンプである。
【0072】
トリグリセリドからの脂肪酸及びワックス代替物の生成
ここで図1を参照してトリグリセリドから脂肪酸及びワックス代替物を生成する方法を説明する。トリグリセリドを含む原料がポンプ25によりライン15から反応器60に圧送され得る。ヒータ35を用いてトリグリセリドを含む供給流を予熱し得る。
【0073】
この発明に使用してもよい出発物質は多岐にわたる。本明細書のために、出発物質には、1種以上の精製済み又は未精製、漂白済み或いは未漂白、及び/又は脱臭済み或いは未脱臭の脂肪又は油が含まれる。この脂肪又は油は、単一種の脂肪又は油、或いは2種以上の脂肪又は油の組合せを含んでもよい。供給流中の出発トリグリセリド油又は脂肪(以下、「基油」と呼ぶ)は非水素化及び/又は部分水素化油を含む。この脂肪又は油は、飽和、1価不飽和、又は多価不飽和のいずれかであっても、これらの任意の組合せであってもよい。基油は魚油、動物油、植物油、合成油、遺伝子組み換えされた植物油、並びにこれらの誘導体及び混合物からなる群より選択され得る。各種実施形態では、基油は植物油を含む。好適な実施形態では、出発原料は一価不飽和又は多価不飽和植物油である。特に好適な実施形態では、出発原料は多価不飽和植物油である。各種実施形態では、出発トリグリセリド基油は精製、漂白、脱臭(RBD)した植物油である。各種実施形態では、基油出発トリグリセリドは、高エルカ酸菜種油、大豆油、ベニバナ油、キャノーラ油、ヒマシ油、ヒマワリ油及び亜麻仁油からなる群より選択される植物油を含む。
【0074】
ライン15(図2の315)内の供給流は、バター脂、カカオ脂、カカオ代用脂、イリッペ脂、コクム脂、乳脂、モーラー脂、フルワラ脂、サル脂、シア脂、ボルネオ脂、豚脂、羊毛脂、牛脂、羊脂、獣脂、又は他の動物性脂肪、キャノーラ油、ヒマシ油、ヤシ油、コリアンダー油、トウモロコシ油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、麻実油、亜麻仁油、マンゴー核油、メドウフォーム油、牛脚油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、パームオレイン、パームステアリン、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、落花生油、菜種油、米ぬか油、ベニバナ油、山茶花油、大豆油、ヒマワリ油、ヒマワリ種子油、トール油、椿油、植物油、可塑性油脂もしくは固形脂に転化させることができる魚油(例えば、メンヘーデン、キャンドルフィッシュ油(candlefishoil)、タラ肝油、ヒウチダイ油、パイルハード(pile herd)、イワシ油、鯨及びニシン油、及びこれらの組み合わせから選択される1以上を含み得る。
【0075】
上記のように、ヨウ素価は油の不飽和度の一般的尺度である。本発明では、ヨウ素価が高いと架橋度は大きくなり、油を架橋するのに時間がかからない。各種実施形態では、基油は約70〜約170超のIVを有する。各種実施形態では、原料は室温で液体である。代替実施形態では、原料は室温で固体である。各種実施形態では、原料は室温で固体の油と室温で液体の油との混合物ある。好適実施形態では、本発明に供される基油は120超のヨウ素価を有し、より好ましくは130超、更に好ましくは135超、更にもっと好ましくは140超である。各種実施形態では、基油は、約130〜135の範囲のヨウ素価を有する粗大豆油である。各種実施形態では、基油は主に、ヨウ素価が約70超のトリグリセリド油を含む。ある種の実施形態では、このヨウ素価は約130より大きい。その他の実施形態では、ヨウ素価は約170超である。基油は漂白又は脱臭等によって改質され得る。基油は微量の遊離脂肪酸を含み得る。基油の供給源及び基油を作製するのに用いる方法は、当業者には知られている。
【0076】
各種実施形態では、基油は天然の液体油、例えば、ヒマワリ油、キャノーラ油、大豆油、オリーブ油、トウモロコシ油、落花生油、紅花油、高オレイン酸ヒマワリ油、紅花油などの精製した脂肪酸メチルエステルのグリセロールエステル、ポリグリセロールエステル、及びこれらの組み合わせから誘導される。適した液体油留分は、例えば、ヤシ油、豚脂、及び獣脂から油を直接エステル交換又は分留した後、分離することによって得られ得る。
【0077】
各種実施形態では、供給流は複数の油を含み、該供給流中の出発油の比率を修正して、所望の脂肪酸生成物組成及び生成物の最終的な性質(disposition)と調和する塔底残渣の一貫性を得る。
【0078】
基油は酸化し易い傾向がある。こういった場合、抗酸化剤がライン15(図2のライン315)内の基油に加えられてもよい。油には天然の抗酸化剤を含有するものもあるし、酸化に対して天然で安定したものもある。天然で安定した油に関しては、抗酸化剤を添加しなくてもよい。加えられる抗酸化剤の量は、油の最終用途、油が曝露される温度、圧力及び酸素量のほか曝露の持続時間などのいくつかの要因に左右される。各種実施形態では、基油は約0.1重量%〜約0.5重量%の範囲で抗酸化剤を含む。
【0079】
限定するものではないが、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、t‐ブチルヒドロキノン(TBHQ)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、没食子酸エステル(すなわち、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル等)、トコフェロール、クエン酸、クエン酸エステル(すなわち、クエン酸イソプロピル等)、グアヤクガム、ノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)、チオジプロピオン酸、アルコルビン酸、アルコルビン酸エステル(すなわち、パルミチン酸アスコルビル、オレイン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル等)、酒石酸、レシチン、メチルシリコーン、ポリマー酸化防止剤(アノキソマー(Anoxomer))、植物(又はスパイス及びハーブ)抽出物(すなわち、ローズマリー、セージ、オレガノ、タイム、マヨラナ等)、及びこれらの混合物など、多様な抗酸化剤が使用に適している。各種実施形態では、抗酸化剤はパルミチン酸アスコルビルである。各種実施形態では、抗酸化剤はトコフェロールと組み合わせたパルミチン酸アスコルビルである。
【0080】
基油を予熱するのにヒータ35(図2の335)が用いられ、反応器60(図2の360)内に基油を圧送するのにポンプ15(315)が用いられる。反応器内に導入された基油は、例えば、図1の熱交換器80又は図2の加熱マントル380により加熱される。基油は真空ポンプ180によってもたらされる真空下の不活性条件下で加熱される。不活性ガスがライン50を介して反応器60内に導入されてもよい。反応器60をパージするのに使用される不活性ガスは窒素であり得る。切断(scission)/加水分解反応で得られた脂肪酸を、架橋生成物を含む塔底残渣から真空ストリッピングするのに、真空ポンプ180が用いられる。ストリッピングされた脂肪酸はガスライン70を介して反応器60を出て行くことができ、他方、塔底生成物はライン90を介して反応器60を出て行くことができる。
【0081】
理論によって拘束するものではないが、本発明の加熱プロセスにより鎖の切断及び架橋が生じると考えられる。以下で更に説明するように、鎖切断によって低炭素数の脂肪酸の留分が得られ、次いでこの脂肪酸を分留することができる。本明細書において用いる場合、切断とは脂肪酸基の炭素‐炭素一重又は二重結合の破壊とすることができる。いくつかの実施形態では、反応器60はトリグリセリド油の架橋及び/又は脂肪酸分割を増強するのに効果的な触媒を含む。例えば米国特許第6,696,581号は、脂肪酸を架橋するために貴金属触媒を溶媒中に用いることを記載しており、そのような架橋のメカニズムを理論化している。
【0082】
加熱及び真空反応は、使用者の必要性に応じて、バッチ式、連続式、又は半連続式で行われてもよい。各種実施形態では、半連続及び連続操作によって、真空ストリッピングによる脂肪酸の反応及び抽出に出発材料(例えば、基油及び/又は触媒)を連続的に導入することにより絶え間ない処理が可能になる。例えば、図1に示すように、架橋は連続プロセスによって実行され得る。
【0083】
基油は所望の揮発脂肪酸を得るのに適した温度まで加熱されてもよい。各種実施形態では、基油は約250℃〜約450℃の範囲の温度まで加熱される。各種実施形態では、反応器60は約200℃〜約600℃の範囲の温度で操作される。代替実施形態では、反応器60内の温度は約300℃〜約400℃の範囲にある。更に別の実施形態では、反応器60内の温度は約310℃〜約375℃の範囲である。
【0084】
真空ポンプ180は1kPa(0.01気圧)から50kPa(0.5気圧)の間の真空を反応器60内に発生させる。トリグリセリドを含む原料は約0.5〜約5時間の範囲で加熱され得る。各種実施形態では、このプロセスは約0.1時間〜約8時間の時間に亘ってバッチ式で実行される。その他の実施形態では、バッチ操作の時間範囲は約1時間〜約3時間である。更に別の実施形態では、バッチ操作の時間は約2時間である。
【0085】
反応器60内では、軽量の脂肪酸は揮発され、油は架橋される。真空がより軽量の揮発性脂肪酸をストリッピングし、この脂肪酸はライン70を介して反応器60を出て行くことができる。各種実施形態では、切断反応に加えて加水分解反応を促進できるように、反応器60に水が導入される。各種実施形態では、加熱及び真空反応は、反応の効率を上げるために、水を用いた攪拌及び/又は向流を組み入れる。これは機械的手段によってもたらされてもよいし、例えばコルゲート‐エメリー法に記載された方法に類似する向流によってもたらされてもよい。
【0086】
図1の実施形態では、反応器60内の基油からストリッピングされた低分子量の揮発脂肪酸はライン70を介して凝縮装置110内に導入される。凝縮装置110の凝縮物中の凝縮された脂肪酸は、ライン115を介してアキュムレータ130内に導入される。
【0087】
真空ストリッピングされた脂肪酸生成物
ライン115内の脂肪酸生成物は、6から20の間の炭素数分布を有し得る。各種実施形態では、炭素数は8個から16個の間である。各種実施形態では、該脂肪酸凝縮物は、狭い(narrow)炭素数の生成物を生じるために、例えば熱及び真空を用いて分留される。したがって、各種実施形態では、本発明のプロセスは、当業者には知られているように、遊離脂肪酸を炭素数によって規定される留分に分離するステップを更に含む。例を挙げると、一般的な分離方法には遠心分離、蒸留、及び沈殿がある。例えば、図1に示すように、アキュムレータ130はライン140を介して精留塔150に流体接続されている。精留塔150を加熱し脂肪酸を分留するために、熱交換器160が用いられる。精留塔150内の温度未満で沸騰する脂肪酸はガスとしてライン155内を出て、脂肪酸が残っている液体はライン170を介して除去され得る。精留塔150は、例えば蒸留塔であってもよい。
【0088】
図2の実施形態では、反応器360は主に加熱式貯蔵タンクとして働く。反応器360からの生成物はライン385を介してワイプト・フィルム・エバポレータ(WFE)400内に導入される。この実施形態では、炭素鎖長が異なる脂肪酸を含む凝縮物は、ワイプト・フィルム・エバポレータを用いて分留される。入念に制御された温度及び圧力を用いて沸点に基づいて特定の炭素数範囲を分留することができるワイプト・フィルム・エバポレータ(WFE)400は、連続プロセスで使用することができる。図2の実施形態では、ライン390を介してWFE400を出て行く架橋混合物から、ライン370を介してWFE400を出て行く脂肪酸を分離するために、WFE400が用いられる。WFE400を精留塔150と組み合わせて用いてもよい。
【0089】
各種実施形態では、この発明の脂肪酸生成物をさらに処理することによって、不飽和低トランス異性体型の脂肪酸を生成させる。各種実施形態では、このさらなる処理には、本明細書に記載の切断/加水分解反応を飽和脂肪酸除去と組み合わせるステップを含む。各種実施形態では、飽和脂肪酸は低温結晶化により凝縮物140から除去される。低温結晶化においては、ライン140(図1)又はライン370(図2)内の脂肪酸生成物をポリグリセロールエステル結晶調整剤と混合し、この混合物を脱ろうに供して不飽和脂肪酸から飽和脂肪酸を分離し得る。本明細書において用いる場合、用語「脱ろう」とは、高融点分子が濾過又は遠心分離によって除去されるのに十分な大きさの固体粒子を形成するまで油を低温まで冷却する処理を指す。脱ろうは、分別結晶化工程全体の特殊な形態である。ある種の実施形態では、脱ろうはバッチ反応器、連続反応器、又は半連続反応器で行われ得る。
【0090】
代替実施形態では、本発明の方法によって生成された脂肪酸は水素化により更に処理される。本明細書において用いる水素化とは、不飽和脂肪酸の二重結合に水素を添加することを指す。これは液体脂肪酸凝縮物を高温及び高圧の水素ガスと反応させることによって実行され得る。各種実施形態では、本明細書においてはBCRの水素化に関して記載されているように、不飽和脂肪酸の水素化を増強するために、高せん断が不飽和脂肪酸の水素化に組み入れられる。
【0091】
各種実施形態では、ストリッピングされた脂肪酸は、当業者には知られている手段を用いてアルコールと反応させることによって更に脂肪酸エステルに処理される。各種実施形態では、ストリッピングされた脂肪酸は、当業者には知られている方法を用いてアミンと反応させることによって脂肪族アミンに転換される。
【0092】
各種実施形態では、脂肪酸留分を処理して、溶媒又はプレス技法を用いて植物及び動物から抽出された油に少量ある固有のステロールを分離する。レクチン又はホスファチジルコリン(リン脂質であり、加水分解されると2つの脂肪酸分子(各々グリセロリン酸とコリンの分子)を生じる)も塔底物及び/又は真空凝縮物から分離され得る。
【0093】
各種実施形態では、ストリッピングされた脂肪酸はトランス異性体脂肪酸の割合が低い。各種実施形態では、ストリッピングされた脂肪酸は約6重量%未満のトランス異性体を含む。各種実施形態では、ストリッピングされた脂肪酸は、C18含有量が約30重量%未満である。
【0094】
各種実施形態では、真空ストリッピングされた脂肪酸は、食品業界、医薬品業界、化学業界、プラスチック業界及び化粧品業界において有用である。例えば、該脂肪酸は食品グレードであり得、ピル/タブレット用の結合剤/粘着付与剤として有用であり得る。脂肪酸はエステル化、アミド化、ニトリル及び塩の形成に耐えることができる。例を挙げると、脂肪酸のナトリウム塩は固形石鹸の主成分である。脂肪酸アミド及びエステルはプラスチック処理補助剤として用いられる。
【0095】
BCRからのワックス代替物の生成
本明細書においては、反応器60又はWFE400において真空ストリッピングされない残留材料を「塔底物」、「塔底架橋残渣」又はBCRと呼ぶ。各種実施形態では、塔底架橋残渣にはモノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタグリセリド及び/又はエステルが含まれる。遊離脂肪酸基の架橋により、脂肪酸の二量体又は三量体が存在してもよい。BCRは約110未満のヨウ素価を有し得る。各種実施形態では、BCRのヨウ素価は約50未満であり、その他の実施形態では、約10未満である。
【0096】
各種実施形態では、ライン90(図2の390)内の残渣相は主にモノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド及びトリアシルグリセリドを含み、これを更に処理して追加の脂肪酸が抽出される。各種実施形態では、この処理には、ライン90(図2のライン390)内の少なくとも一部を再循環(例えば、図1の再循環流95)を介して加水分解/切断処理に再循環させるステップを更に含む。再循環流95はヒータ135の上流又は下流でライン15内に導入され得る。バッチ式の実施形態では、更に加熱する前に、バッチ反応器60に残る残渣相が追加のグリセロール脂肪酸エステル含有組成物と組み合わされてもよい。
【0097】
別の実施形態では、架橋残渣であるトリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドを含む塔底物が単独で、又は追加のトリグリセリドとブレンドして水素化のための原料として利用される。脂肪酸の真空ストリッピングにより得られる架橋塔底物を不飽和油と組み合わせ、水素化も可能で、これにより増強水素化(enhanced hydrogenated)植物油ワックスが得られる。本発明からの塔底物を水素化原料油に添加することにより、水素化された植物油生成物の特性を有利には改質し得る。増強水素化物(以下EHPと呼ぶ)は石油ワックス及び石油ワックスブレンドの部分又は完全代替物として使用され得る。各種実施形態では、塔底物を水素化原料油に添加することにより、完成された植物油ワックスが可塑化されてペトロラタム及び微結晶ワックス並びに従来のパラフィンワックスなどの石油ワックスの代替物として適したものになる。
【0098】
塔底残渣を含む原料油の水素化は、当業者には知られた任意の手段によって実行され得る。各種実施形態では、水素化は塔底物を水素ガスと高温及び高圧で反応させることによって実行される。各種実施形態では、塔底架橋残渣を含む油の水素化を増強するために高せん断が利用される。各種実施形態では、水素化反応を促進するために外部高せん断混合器が使用される。そういった実施形態では、水素、水素化原料、及び(場合によっては)触媒が高せん断混合器内で混合され、容器10(所望のIV値に達するまで反応条件が経時的に制御される)に導入される。
【0099】
ここで、図1を参照して高せん断を利用した塔底残渣を含む原料油の水素化を議論する。ライン90はライン21に流体接続されており、これによってライン90内のBCRの少なくとも一部がHSD40内に導入され得る。このように、ライン13内の水素化原料は1重量%〜100重量%のBCR及び0重量%〜約99重量%の不飽和の基油を含み得、これはライン21を介して導入され得る。BCRを含む原料の水素化のための操作においては、分散性の水素含有ガス流がライン22内に導入され、BCRを含む水素化原料とライン13内で混合される。水素含有ガスは実質的に純粋な水素であってもよいし、水素を含んだガス流であってもよい。
【0100】
各種実施形態では、水素含有ガスは、ライン13内の液状の水素化原料と混合される代わりに、HSD40内に直接送り込まれる。ポンプ5を操作して水素化原料を圧送し、圧力を上げ、HSD40に供給し、高せん断装置(HSD)40全体に亘って流れを制御してもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ5はHSD入口流の圧力を202.65kPa(2気圧)超、好ましくは約303.975kPa(3気圧)超まで増大させる。このように、高せん断を圧力と組み合わせて、反応物の入念な混合及び水素化を増強し得る。
【0101】
各種実施形態では、反応物、及び存在する場合には、触媒(例えば、水溶液及び触媒)が容器10内で最初に混合される。反応物は、例えば入口ライン(図1には示さず)を介して容器10に入る。任意数の容器10入口ラインが想起される。一実施形態では、容器10には触媒が装填され、必要に応じて、触媒は、触媒供給業者(複数の供給業者)が推奨する手順に従って活性化される。
【0102】
圧送後、ライン13内の水素及び水素化原料は、水素化原料中に水素含有ガスの微細分散物を生み出すように働くHSD40内で混合される。HSD40においては、水素のナノ気泡、サブミクロンサイズの気泡、及び/又はマイクロ気泡が形成されて、溶液への溶解が良好になり且つ反応物の混合が増強されるように、水素含有ガス及び水素化原料は高度に分散される。例えば、分散器IKA(登録商標)モデルDR 2000/4(固定子と組み合わされた3つの回転子を備えて構成された三段式高せん断分散装置)を用いて、水素化原料(すなわち「反応物」)を含んだ液相中に分散性の水素含有ガスの分散を生じさせてもよい。例えば、この回転子/固定子セットは図3に示すように構成されてもよい。混合された反応物はライン13を介して高せん断装置に入り、第1ステージの回転子/固定子の組み合わせに入る。第1ステージの回転子及び固定子は、円周方向に離間された第1ステージの回転子歯及び固定子歯をそれぞれ有し得る。第1ステージを出る粗い分散物は第2回転子/固定子ステージに入る。第2ステージの回転子及び固定子は円周方向に離間された回転子歯及び固定子歯をそれぞれ備えてもよい。第2ステージから出る気泡サイズが低減された分散物は、それぞれ回転子歯及び固定子歯を有する回転子と固定子とを備え得る第3ステージの回転子/固定子の組み合わせに入る。この分散物はライン18を介して高せん断装置を出て行く。いくつかの実施形態では、せん断速度は流れ260の方向に沿って長手方向に段階的に大きくなる。
【0103】
例えば、いくつかの実施形態では、第1の回転子/固定子ステージのせん断速度は次のステージ(複数のステージ)のせん断速度よりも大きい。その他の実施形態では、せん断速度は、各ステージのせん断速度が実質的に一定の状態で、流れの方向に沿って実質的に一定である。
【0104】
高せん断装置40がPTFEシールを含む場合、該シールは当該技術で知られている任意の適した技法によって冷却され得る。例えば、ライン13又はライン21内を流れる反応物流を用いてシールを冷却してもよく、そうする場合、該反応物流は高せん断装置40に入る前に必要に応じて予熱されてもよい。
【0105】
HSD40の回転子(複数の回転子)は、回転子の直径及び所望の先端速度に相応する速度で回転するように設定され得る。上記のように、高せん断装置(例えば、コロイドミル又は歯付きリム(toothed rim)分散器)は、固定子と回転子との間に固定された間隙を有するか、調整可能な間隙を有する。HSD40は水素含有ガスと水素化原料とを入念に(intimately)に混合するように働く。該プロセスのいくつかの実施形態では、反応物の輸送抵抗は、反応の速度が約5%超増大されるように、高せん断装置を操作することによって低減される。該プロセスのいくつかの実施形態では、反応物の輸送抵抗は、反応の速度が約5倍より大きく増大されるように、高せん断装置を操作することによって低減される。いくつかの実施形態では、反応の速度は少なくとも10倍増大される。いくつかの実施形態では、速度は約10〜約100倍の範囲で増大される。
【0106】
いくつかの実施形態では、HSD40は少なくとも4500フィート/分の先端速度で少なくとも300L/時を伝達し、先端速度は7900フィート/分(40m/秒)を超えることがある。消費電力は約1.5kWとなり得る。HSD40の回転せん断ユニット又は回転要素の先端の瞬時的な温度及び圧力を測定することは難しいが、入念に混合された反応物で観察される局所温度は、500℃超であり、キャビテーション条件下では500kg/cm超の圧力であると推定される。高せん断混合によって、ミクロンサイズ又はサブミクロンサイズの気泡の水素含有ガスの分散物が生じる。いくつかの実施形態では、得られた分散物は、平均気泡サイズが約1.5μmである。このように、ライン18を介してHSD40を出て行く分散物は、ミクロンサイズ及び/又はサブミクロンサイズの気泡を含む。いくつかの実施形態では、平均気泡サイズは約0.4μm〜約1.5μmの範囲である。いくつかの実施形態では、得られた分散物は、水素気泡の平均サイズが1μm未満である。いくつかの実施形態では、平均気泡サイズは約400nm未満であり、いくつかの場合には、約100nmであり得る。多くの実施形態では、この微小気泡分散物は、気圧にて少なくとも15分間、分散状態のままであることができる。
【0107】
一旦分散すると、生じた気体/液体又は気体/液体/固体(固体触媒スラリーループが用いられる場合)の分散物は、図1に示すように、ライン18を介してHSD40を出て、容器10内に入る。容器10に入る前に反応物を入念に混合する結果、化学反応のかなりの部分は、触媒の有無に関らずHSD40内で生じ得る。したがって、いくつかの実施形態では、主に、増強水素化物から未反応の水素ガスを加熱及び分離し、この水素をHSDの入口へ再循環させるために、反応器/容器10が使用され得る。或いは、又は付加的に、容器10は、水素化の大半が起こる一次反応容器として働き得る。例えば、各種実施形態では、容器10は水素化触媒の固定層を備えた固定層反応器である。
【0108】
容器/反応器10は連続又は半連続的な流れモードで操作されてもよいし、バッチモードで操作されてもよい。容器10の内容物は加熱及び/又は冷却能力(例えば、冷却コイル)及び温度測定機器を用いて指定の反応温度に維持され得る。容器内の圧力は適した圧力測定機を用いて監視され得、容器内の反応物のレベルは当業者には知られている技法を用いたレベル調節器(図示せず)を用いて制御され得る。内容物は連続的又は半連続的に攪拌され得る。
【0109】
触媒
水素化を促進するのに触媒を用いる場合、触媒はスラリー又は触媒流として容器10内に導入され得る。或いは、又は付加的に、触媒はどこか他の場所で加えられてもよい。例えば、各種実施形態では、触媒スラリーはライン21内に直接注入されてもよい。各種実施形態では、容器/反応器10は、当業者には知られている水素化に適した任意の触媒を含む。各種実施形態では、ニッケル水素化触媒が使用される。
【0110】
水素化原料反応物のバルク又は全体的な温度は、引火点未満に維持されることが好ましい。いくつかの実施形態では、高せん断水素化のための運転条件には、約100℃〜約230℃の範囲の温度を含む。各種実施形態では、温度は約160℃〜180℃の範囲である。特定の実施形態では、容器10内の反応温度は、特に、約155℃〜約160℃の範囲である。いくつかの実施形態では、容器10内の反応圧は約202.65kPa(2気圧)〜約5.6MPa〜6.1MPa(55〜60気圧)の範囲である。いくつかの実施形態では、反応圧は約810.6kPa〜約1.5MPa(8気圧〜約15気圧)の範囲である。各種実施形態では、容器10は気圧又は気圧付近で操作される。
【0111】
場合によっては、ライン18内の分散物は、必要に応じて、容器10に入る前に更に処理されてもよい。容器10では、水素化は水素との反応により発生/継続する。容器の内容物は連続的又は半連続的に攪拌され得、反応物の温度は(例えば、熱交換器を用いて)制御され得、容器10内の流体レベルは標準的な技法を用いて調節され得る。水素化物は、特定の用途に応じて、連続的、半連続的、又はバッチ式で生成されてもよい。未反応の過剰な水素ガスはガスライン17を介して容器10を出る。各種実施形態では、反応物及び条件は、ライン17内のガス流が約6重量%未満の未反応の水素を含むように選択される。いくつかの実施形態では、ライン17内の反応ガス流は約1重量%〜約4重量%の水素を含む。ライン17を介して除去された反応ガスは更に処理されてもよく、未反応の水素は必要に応じて、例えばHSD40へ再循環されてもよい。
【0112】
増強水素化物(以下、EHPと呼ぶ)はライン16を介して容器10から出て行く。EHPは、接着剤、ロウソク、紙コーティング、暖炉、パーチクルボード、複合板、アスファルト改質、フルーツコーティング、石膏ボード、ケーブル充填剤、化粧品などの用途におけるパラフィンワックス及び微結晶ワックスなどの石油系ワックスの代替物として、ペトロラタムの代用品として、PVC及び石油ワックスが従来のように使用される他の用途におけるプラスチック潤滑剤として、適し得る。本開示のこの態様の各種実施形態には、EHP又は架橋残渣物のトリグリセリド、ジグリセリド、及びモノグリセリドと石油ワックス又は他の天然のワックスとのブレンドを含む組成物が含まれる。EHPの添加から導かれる属性には、可撓性、粘着性(tack)及び/又は硬度改質(hardness modification)を含み得る。1重量%〜100重量%のペトロラタム又は微結晶ワックス材料が使用され得る。水素化レベルが増大するにしたがって(ヨウ素価が低下するにしたがって)硬く且つ脆弱になり易い従来の水素化トリグリセリドとは対照的に、この開示の各種実施形態に係るEHPはこれらの欠点を克服し得る。
【0113】
上記のように、EHPは1重量%〜100重量%の塔底架橋残渣(例えば、図1のライン90又は図2のライン390から、或いは脂肪酸のバッチ式除去後の反応器60から)及び0重量%〜99重量%の非水素化又は部分水素化基油を含む水素化原料の水素化によって形成され得る。BCRの量を調節して、得られたEHPの融点を所望の範囲内に変更し得る。各種実施形態では、EHPは約40℃〜50℃(華氏110度〜120度)の融点を有する;各種実施形態では、EHPは約70℃〜約75℃(華氏160度〜約165度)の融点を有する。各種実施形態では、水素化原料中にBCRが存在していることによって脆弱性が低減されるので、EHPは例えばロウソク用ワックスとして使用するのに適している。
【0114】
各種実施形態では、1重量%〜99重量%のEHPが99重量%〜1重量%の従来のパラフィンワックスとブレンドされる。EHPを従来のパラフィンワックスに添加することで、従来の粘着付与剤及び結合剤、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)に代わる粘着付与剤/結合剤として機能し得る。EHPは生分解性であるので、従来の化学結合剤の代わりにEHPを使用することが好ましい。また、EHPは食品等級であり得、生鮮食品用の箱をコーティングするような食用目的に適したワックスであり得る。
【0115】
別の実施形態では、例えば、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ‐エステルなどのエステルを加えて、最終組成物の所望の物理的特性を改質又は増強することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、容器10の内容物又は不飽和油を含んだ液体留分を、2回目の通過中にHSD40に通すことが好ましくあり得る。この場合、ライン16の内容物の少なくとも一部が容器10から再循環され、ポンプ5によってライン13内に圧送され、次いでHSD40内に圧送されるように、ライン16はライン20で示したライン21に接続されてもよい。追加の水素含有ガスがライン22を介してライン13内に注入されてもよいし、高せん断装置(図示せず)内に直接加えられてもよい。その他の実施形態では、高せん断装置40へ再循環中の生成物流中の未飽和の液体の一部を再循環させる前に、ライン16内の生成物流は更に処理され得る(例えば、生成物流からの飽和生成物の分離)。
【0117】
いくつかの実施形態では、HSD40のような又は異なった構成の2以上の高せん断装置が直列に並べられ、水素化反応を更に増強するために用いられる。多数の装置の操作はバッチ式でも連続式でもよい。1回の通過すなわち「ワンス・スルー(once through)」プロセスが望ましいいくつかの場合、直接の多数の高せん断装置の利用が有利になることもある。多数の高せん断装置が直列で操作されるいくつかの実施形態では、容器10は省略されてもよい。例えば、各種実施形態では、ライン18内の出口分散物は第2の高せん断装置内に供給され得る。多数の高せん断装置40が直列で操作される場合、追加の水素ガスが各装置の入口供給流内に注入されてもよい。いくつかの実施形態では、多数の高せん断装置40は並列で操作され、係るせん断装置からの出口分散物は1以上の容器10内に導入される。
【0118】
特徴
各種実施形態では、本開示のシステム及び方法により生成された脂肪酸及び「塔底物」は、その中の不飽和度が低減されているので、従来式で得られる生成物よりも安定している。各種実施形態では、本開示の方法により得られるストリッピングされた脂肪酸は、従来のトリグリセリド加水分解により得られる脂肪酸よりも生成物の外観が優れている。ガードナーカラースケール(ASTM試験法D1544)で測定すると、該ストリッピングされた脂肪酸は淡色になり得る。各種実施形態では、該ストリッピングされた脂肪酸は実質的に無色である。各種実施形態では、開示の方法により得られるストリッピングされた脂肪酸は、ヨウ素価により測定すると従来のトリグリセリド加水分解により得られる脂肪酸よりも安定性が優れており、それに相応して、脂肪酸中の不飽和度も小さくなる。
【0119】
HSD40内の水素及び水素化原料の混合を増強することにより、潜在的には、水素化原料の水素化はより高速且つ/及びより完全なものになる。いくつかの実施形態では、混合の増強によりプロセス流の処理量の増大が促進される。いくつかの実施形態では、高せん断混合装置は確立されたプロセスに組み込まれ、これにより生成の増大(すなわち、より大きな処理量)が可能になる。単に反応器圧力を低減することによって水素化の程度を増大しようとするいくつかの方法とは対照的に、外部高せん断混合によって得られる優れた分散物及び接触は多くの場合、反応速度を維持しながら、又は反応速度を増大もしながら、動作圧力全体を低減させ得る。特定の理論によって制限しようとするものではないが、高せん断混合のレベル又は程度は質量移動の速度を増大するのに十分なものであり、十分でなければギブスの自由エネルギー予測に基づいて生じるとは考えられない反応を発生させる局所的な非理想(non‐ideal)状態も発生すると考えられる。所的な非理想状態は高せん断装置内で起こると考えられ、その結果、温度及び圧力は増大し、最も著しい増大は局所的圧力においてであると考えられる。高せん断装置内の圧力及び温度の増大は瞬間的で局所的なものであり、一旦高せん断装置を出るとバルク条件及び平均的なシステム条件にすぐに戻る。いくつかの実施形態では、高せん断混合装置は1以上の反応物を遊離基に解離するのに十分な強度のキャビテーションを含み、このキャビテーションは化学反応の強度を増強し得るか、又は必要とされるよりも厳しくない状態で発生させ得る。局所的乱流及び液体微小循環(音響流)を発生させることによって、キャビテーションは輸送プロセスの速度を増大させることもできる。化学的/物理的処理用途におけるキャビテーション現象の適用の概要は、ゴゲート(Gogate)他「キャビテーション:技術の展望」、カレント サイエンス 91(No.1):35−46(2006)(「Cavitation:A technology on the horizon」Current Science 91(No.1):35-46(2006))によって提供されている。本発明のシステム及び方法のある種の実施形態の高せん断混合装置は、水素及びトリグリセリドを遊離基に解離するキャビテーションを含み、この遊離基は反応して増強水素化物を生成する。
【0120】
高せん断装置40内で発生されたライン18内の分散物中のマイクロメートルサイズ及び/又はサブマイクロメートルサイズの水素気泡の表面積が増大されることにより、水素ガスのライン13を介して導入された水素化原料中の不飽和油との反応はより高速になり及び/又はより完全なものとなる。上記のように、追加の利点は低い温度及び圧力で容器10を操作することができることにあり、その結果、運転コストも資本コストも抑えられる。水素化に高せん断を用いることの利点には、限定するものではないが、サイクル時間の高速化、処理量増大、水素化反応器を小型の設計にできることによる運転コストの低減及び/又は資本支出の低減、及び/又は水素化反応器の低温及び/又は低圧操作が挙げられる。
【0121】
外部高せん断機械装置を使用すれば、制御された環境で反応器/高せん断装置において水素及び水素化原料を接触及び混合することができる。高せん断装置は水素化反応への質量移動の制限を低減させ、ひいては、反応速度全体を増大し、未反応の水素量を低減し、増強水素化生成物中の飽和度を増大し、及び/又は実質的な反応が起こらないと予想され得る包括的な運転条件下で実質的な水素化を可能にし得る。
【実施例】
【0122】
実施例1:トリグリセリドからの脂肪酸の分留
反応器60と、凝縮装置110と、アキュムレータ130と、真空ポンプ180とを備えた図1に示すようなシステムを用いて、非水素化大豆油から脂肪酸を生成した。反応器60は攪拌器付きの球形の12L/3口ガラスフラスコとした。攪拌器は磁気攪拌子(3インチ×3/4インチ)とし、これを用いて、反応及び冷却中に反応器フラスコ60の内容物を混合した。フラスコ反応器60をバッチモード(この実施形態では液体ライン90はない)で操作し、加熱装置80は反応器フラスコ60本体周囲に位置決めした加熱マントルとした。
【0123】
精製済みであるが、脱臭及び漂白されていないベースとなる非水素化大豆油はADM コーポレーション(ADM Corp)(イリノイ州ジケーター(Decatur,IL))から入手した。本明細書に含まれる実施例においては、トリグリセリドの脂肪酸組成はAOCS オフィシャル メソッド(Official Method) Ce 2−66(米国 オイル ケミスト ソサイエティ(American Oil Chemists’ Society)(AOCS),2211 ダブリュ.ブラッドリー アベニュー,シャンペーン,イリノイ州(W.Bradley Ave.,Champaign,IL))を用いて得た。ヨウ素価はAOCS推奨基準(Recommended Practice)Cd 1c‐85によって決定した。基油の分析を表2に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
表2に組成が示されている体積7.57L(2ガロン)の基油を反応器60に入れた。この油を320℃まで加熱し、攪拌しながら3時間維持した。不活性ガスライン50を介して窒素を攪拌器フラスコ60に導入し、攪拌器フラスコ60に気泡を発生させて不活性状態を維持した。3時間の終わりに、加熱マントル80を停止し、真空ポンプ180を用いて凝縮装置110を101.6kPa(30インチHg)の真空にしながら、対流により油を200℃まで冷却した。
【0126】
(アキュムレータ130内で収集された)凝縮物は約700mLであった。(12L攪拌器フラスコ60に残った)凝縮物及び塔底物をAOCS法Celc 89によって分析し、ヨウ素価は方法USP/NF 401によって分析した。シス型及びトランス型の測定はAOCS オフィシャル メソッド Ce 1c−89(AOCS Official Method Ce 1c‐89)に記載された試験方法に従って行った。表3にこの結果を示す。
【0127】
【表3】

【0128】
この結果から、基油に対してヨウ素価が著しく低減したことがわかり(「塔底物」に関してはヨウ素価が77%低減、凝縮物に関しては44%低減)、存在する二重結合数が低減したことを示している。この結果からは凝縮物のC18含有量が著しく低減したこともわかる。
【0129】
実施例2:BCRを含む水素化原料油の水素化
実施例1からのBCRをRBD(精製、漂白、脱臭)大豆油と塔底架橋残渣と水素化物が様々な比率で混合した。この増強された水素化ワックス生成物の特性を調べた。純度99.9%(+)(Standard:IS:HY200)の精製等級(Purified Grade)IIの複数の水素ガスをエアガス コーポレーション(Airgas Corp)から入手した。パイプラインを介して圧力開放弁に水素を供給して、オートクレーブでコイル(coil)して油に混合した。
【0130】
以下の手順を用いてトリグリセリドのブレンドを水素化した。非水素化の植物油及び示されたレベルの塔底物を電気式加熱マントル、攪拌器(アジテータ)、ガス入口及び出口、温度プローブ及び圧力計を装備した圧力反応器に入れた。反応器(イリノイ州モリーンのパー インコーポレーテッド(Parr Inc,Moline,Illinois)の2L反応器)に植物油及びニッケル触媒2重量%(エリー,ペンシルベニア州、バスフ キャタリスト LLC(BASF Catalysts LLC,Erie,PA)からのナイソファクト(登録商標)120(NYSOFACT(R)120))を充填した。窒素及び/又は水素を用いて反応器をパージした。この植物油を反応温度まで加熱した。温度での水素注入を1時間継続した。加熱を停止し、反応器に空気をブローし、水素流を停止することによって反応器を冷却した。周囲温度に達したときに冷却を停止した。反応器から生成物を取り出し、分析した。表4には実施例1から得られた25%、10%、及び5%塔底架橋残渣とRBD油を混合した試験結果を示す。
【0131】
【表4】

【0132】
表4からわかるように、塔底物を基油とブレンドし、次いで水素化することによって生成された増強された水素化ワックスは、石油由来のワックスに匹敵する特性並びに物理的性質を示し、接着剤、ロウソク、紙コーティング、暖炉、パーチクルボード、複合板、アスファルト改質、フルーツコーティング、石膏ボード、ケーブル充填剤、化粧品における石油ワックスの代替として、ペトロラタムの代用品として、PVC及び石油ワックスが使用される他の用途におけるプラスチック潤滑剤として使用するのに適する。
【0133】
本発明の好適実施形態を示し、説明してきたが、本発明の精神及び教示から逸脱することなく、本発明の改変が当分野の熟練者によって可能である。本明細書に記載の実施形態は単なる例示であって、限定的であることを意図するものではない。本明細書に開示した多数の本発明の変形及び改変が可能であり、これらは本発明の範囲内にある。数値範囲又は限定が明示されている場合には、そういった明示の範囲又は限定は、明示されている範囲又は限定内に入る反復範囲又は同様の大きさの限定を含むと理解されるべきである(例えば、約1〜約10とは、2、3、4等を含む;0.10を超えるとは、0.11、0.12、0.13等を含む)。特許請求の範囲のあらゆる要素に関して用語「選択的(optionally)」の使用は、対象の要素は必要であるか、若しくは必要でないと意味することを意図する。両方の選択肢は請求項の範囲内であると考えられる。含む(comprises、includes)、有する(having)などの広域的用語の使用は、から成る(consisting of)、基本的に・・から成る(consisting essentially of)、実質的に・・・を含む(comprised substantially of)及びそれと同等の狭い用語の補助を提供すると解されるべきである。
【0134】
したがって、保護の範囲は上記記載によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ制限され、その範囲は特許請求の範囲の主題と等価なすべてのものを含む。すべてのクレームは本発明の一実施形態としてこの明細書中に組み込まれている。したがって、このクレームは本発明の更なる説明であり、本発明の好ましい実施形態への付加である。本明細書に引用した全ての特許、特許出願及び刊行物の開示は、本明細書中で示されているものに補助的である例示的詳細、手順上の詳細、或いは他の詳細を提供する範囲で、本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発脂肪酸を生成する方法であって、
少なくとも1つの油脂を含む原料を反応器内で不活性真空下で加熱して脂肪酸を揮発させること;及び
架橋された油を含む塔底残渣から揮発脂肪酸を除去することを含む揮発脂肪酸を生成する方法。
【請求項2】
前記原料が、バター脂、カカオ脂、カカオ代用脂、イリッペ脂、コクム脂、乳脂、モーラー脂、フルワラ脂、サル脂、シア脂、ボルネオ脂、豚脂、羊毛脂、牛脂、羊脂、その他の獣脂、キャノーラ油、ヒマシ油、ヤシ油、コリアンダー油、トウモロコシ油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、麻実油、亜麻仁油、マンゴー核油、メドウフォーム油、牛脚油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、パームオレイン、パームステアリン、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、落花生油、菜種油、米ぬか油、ベニバナ油、サザンカ油、大豆油、ヒマワリ種子油、トール油、椿油、植物油、魚油、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の方法。
【請求項3】
前記原料が70を超えるヨウ素価を有する請求項1の方法。
【請求項4】
加熱中に前記原料を架橋用触媒と接触させることを含む請求項1の方法。
【請求項5】
加熱は200℃〜600℃の範囲の温度までであり、前記真空は1.0kPa〜50kPaの範囲である請求項1の方法。
【請求項6】
前記揮発した脂肪酸を凝縮させて脂肪酸凝縮物を得ることを含む請求項1の方法。
【請求項7】
前記反応器内に水を導入して加水分解を促進することを含む請求項1の方法。
【請求項8】
前記脂肪酸を分留することを含む請求項1の方法。
【請求項9】
水素化物を生成する方法であって、請求項1に従って生成された塔底残渣を水素化して水素化物を生成させることを含む方法。
【請求項10】
水素化前に、前記塔底残渣を0重量%〜99重量%の基油と混合する請求項9の方法。
【請求項11】
前記塔底残渣の水素化は、塔底残渣と水素ガスとを含んだ混合物を20,000/秒を超えるせん断速度に供することを含む請求項9の方法。
【請求項12】
前記塔底残渣の水素化は、塔底残渣を含んだ液相に分散された水素含有気泡を含む分散物を形成することを含み、該気泡は5.0μm未満の平均直径を有する請求項9の方法。
【請求項13】
前記分散物の形成は、水素含有ガス及び前記液相を高せん断装置において接触させることを含み、該高せん断装置は少なくとも1つの回転子を備え、該少なくとも1つの回転子は前記分散物の形成中に少なくとも22.9m/秒(4,500フィート/分)の先端速度で回転される請求項12の方法。
【請求項14】
請求項9に従って生成された水素化物。
【請求項15】
石油ワックスと請求項9に従って生成された水素化物とを含むブレンドワックス。
【請求項16】
トリグリセリドから脂肪酸を揮散させる装置であって、
反応器;
前記反応器の内容物を200℃〜600℃の範囲の温度まで加熱し得る加熱装置;及び
1kPa〜50kPの範囲の真空を前記反応器にもたらすことができる真空ポンプとを備える装置。
【請求項17】
脂肪酸を分留するように構成された精留塔を備える請求項16の装置。
【請求項18】
前記反応器はトリグリセリドを含んだ流れ用の入口と、揮発脂肪酸用の出口と、塔底残渣用の出口とを備え、前記装置はせん断ギャップによって分離された少なくとも1つの回転子と少なくとも1つの固定子とを含む少なくとも1つの高せん断混合装置を備え、前記せん断ギャップは前記少なくとも1つの回転子と前記少なくとも固定子との間の最小距離であり、前記高せん断混合装置は22.9m/s(4,500フィート/分)超の少なくとも1つの回転子の先端速度を発生させることができ、前記高せん断装置の入口は前記反応器の塔底残渣用出口に流体接続された請求項16の装置。
【請求項19】
水素化物を生成する装置であって、
トリグリセリドを含んだ流れ用の入口と、揮発脂肪酸用の出口と、架橋生成物用の出口とを含む反応器;
前記反応器の内容物を200℃〜600℃の範囲の温度まで加熱し得る加熱装置;
1kPa〜50kPaの範囲の真空を前記反応器にもたらすことができる真空ポンプ;及び
水素化反応器であり、該水素化反応器の入口は前記架橋生成物用の出口に流体接続された水素化反応器を備える装置。
【請求項20】
前記水素化反応器の上流に高せん断装置を備え、該高せん断装置は少なくとも1つの回転子と少なくとも1つの固定子を備える請求項19の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−529266(P2010−529266A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511433(P2010−511433)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/068169
【国際公開番号】WO2009/017909
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(509218652)エイチ アール ディー コーポレーション (17)
【Fターム(参考)】