説明

トリグリセリド方法

(a)トリグリセリドの全アシル基に基づいて、少なくとも40モル%のオレイン酸残基を含む第一のトリグリセリドを、1から6の炭素原子を有するアルコールでのアルコール分解反応に供し、2-オレオイルモノグリセリドと前記アルコールの少なくとも一つのアシルエステルとを含む組成物を得る工程;
(b)少なくとも一つのC12からC24飽和脂肪酸、前記脂肪酸の少なくとも一つのエステル、またはそれらの混合物を含むアシル化剤と、前記2-オレオイルモノグリセリドとを反応させ、1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドを得る工程;
(c)工程(a)または工程(b)の後または間で、少なくとも一つの前記アシルエステルの少なくとも一部を分離する工程;ならびに
(d)前記アシルエステルを第二のグリセリドと反応させ、1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドを形成する工程
を含む、トリグリセリドの生産方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は方法に関する。とりわけ本発明は、トリグリセリド、特に1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセリド(OPO)及び1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリグリセリドは、多くの製品、特に食料品の重要な成分である、トリグリセリド、1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセリドは、ヒト乳脂肪の重要なグリセリド成分である。
【0003】
ヒト乳脂肪で見出される主な脂肪酸と同量を含む脂肪組成物は、植物起源のオイルと脂肪から由来しても良い。しかしながら、天然のソースから由来する乳代替脂肪と、ヒト乳脂肪の間では、組成に顕著な差異が存在したままである。植物起源のほとんどのグリセリドが2位で不飽和であるため、この差異は生じる。対照的に、ヒト乳脂肪中のグリセリドの2位では、かなりの量のパルミチン酸が占める。
【0004】
グリセリド位置に沿った酸の分布の差異は、重要な食事の結果を有すると解される。栄養学的に重要ないくつかの乳脂肪のトリグリセリド中の酸の分布は、Freeman等(J. Dairy Sci., 1965, p. 853)によって研究されており、ヒト乳脂肪は、2位でパルミチン酸の割合を、1及び3位でステアリン酸とオレイン酸の割合を、反芻動物の乳脂肪より多く含むことが報告されている。乳児によるトリグリセリドの2位におけるパルミチン酸のより多い吸収がFiler等(J. Nutrition, 99, pp. 293-298)により報告されており、ヒト乳脂肪と比較した乳児によるバター脂肪の比較的貧弱な吸収が、脂肪のグリセリド位置の間のパルミチン酸の実質的に均一な分布に由来していることが示唆されている。
【0005】
それ故、天然ソースから得られるトリグリセリド脂肪またはオイルの化学的及び/または物理的特性を、ヒト乳脂肪のものに最も良く適合させるために、グリセリド位置の脂肪酸残基の分布を制御することが必要とされている。
【0006】
EP-A-0209327は、トリグリセリド1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセリドを含む乳代替脂肪組成物を開示している。EP-A-0209327によれば、これらの脂肪組成物は、より飽和した2-パルミトイルグリセリドから実質的になるグリセリドを含む脂肪混合物を、グリセリドの1及び3位で領域特異的に活性であるリパーゼのような再整列触媒に供することによって得ることができる。この種の酵素的方法はまたGB 1577933にも記載されている。触媒の影響下で、不飽和遊離脂肪酸またはそれらのアルキルエステルで交換することにより、不飽和脂肪酸残基は、2-パルミトイルグリセリドの1及び3位に導入されて良い。
【0007】
US 6090598は、蒸留を使用する脂肪及びオイルの内部エステル化のための酵素的方法を開示している。
【非特許文献1】Freeman等, J. Dairy Sci., 1965, p. 853
【非特許文献2】Filer等, J. Nutrition, 99, pp. 293-298
【特許文献1】EP-A-0209327
【特許文献2】GB 1577933
【特許文献3】US 6090598
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセリド(OPO)の生産のためのより効率的な方法を提供する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一つの特徴点では、
(a)トリグリセリドの全アシル基に基づいて、少なくとも40モル%のオレイン酸残基を含む第一のトリグリセリドを、1から6の炭素原子を有するアルコールでのアルコール分解反応に供し、2-オレオイルモノグリセリドと前記アルコールの少なくとも一つのアシルエステルとを含む組成物を得る工程;
(b)少なくとも一つのC12からC24飽和脂肪酸、前記脂肪酸の少なくとも一つのエステル、またはそれらの混合物を含むアシル化剤と、前記2-オレオイルモノグリセリドとを反応させ、1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドを得る工程;
(c)工程(a)または工程(b)の後または間で、少なくとも一つの前記アシルエステルの少なくとも一部を分離する工程;ならびに
(d)前記アシルエステルを第二のグリセリドと反応させ、1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドを形成する工程
を含む、トリグリセリドの生産方法を提供する。
【0010】
別の特徴点では、本発明は、1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドと1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドの両者を生産するための方法における、トリグリセリド中の全アシル基に基づいて、少なくとも40モル%のオレイン酸残基を含むトリグリセリドの使用を提供する。
【0011】
また更な特徴点では、2-オレオイルモノグリセリドがトリグリセリドのアルコール分解によって形成される、1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドを生産するための2-オレオイルモノグリセリドの使用が本発明により提供される。
【0012】
更にまた別の特徴点では、アシルエステルがトリグリセリドのアルコール分解によって形成される、1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドの生産のためのアシルエステルの使用が本発明により提供される。
【0013】
本発明の方法は、OPOグリセリドの生産のための有効な方法である。驚くべきことに、他のトリグリセリドの製造で有用である副産物を生産する、OPOの生産のための方法が発見された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書で使用される用語「ステアリン」は、より低い溶融成分の少なくとも10重量%が、ある種の分画法、例えばドライ分画法、ランザ分画法、または溶媒分画法によって除去されているトリグリセリド混合物または脂肪ブレンドを含む。
【0015】
用語「脂肪酸」、「脂肪アシル基」、またはここで使用される関連用語は、4から24の炭素原子、好ましくは12から22の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖状カルボン酸を指す。不飽和酸は、一つ、二つ、またはそれ以上の二重結合、好ましくは一つまたは二つの二重結合を含んで良い。
【0016】
ここで使用される用語「アルキル」は、1から6の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の飽和炭化水素を指す。
【0017】
本発明の工程(a)で使用される第一のトリグリセリドは、好ましくは高オレイン酸ヒマワリオイル(HOSF)またはその分画である。分画は、製品の組成を改変する溶媒またはドライ分画法のような分画法によってHOSFから得られる製品を含む。高オレイン酸ヒマワリオイルまたはその分画は、トリグリセリド中の全アシル基に基づいて、少なくとも40モル%、好ましくは少なくとも50モル%、例えば60モル%、最も好ましくは少なくとも70モル%のオレイン酸残基を有する。
【0018】
第一のトリグリセリドを本発明の方法の工程(a)でアルコールと反応させる前に、第一のトリグリセリドは、当該技術分野で既知の標準法を使用して、任意にゴム除去及び/または精製される。
【0019】
本発明の方法の工程(a)及び/または(d)は好ましくは、酵素、より好ましくはリパーゼの存在下で実施される。
【0020】
工程(a)は典型的に、バイオ触媒のような1,3特異的リパーゼの存在下で実施される。工程(a)の間で、第一のグリセリドの2位の脂肪酸は典型的に変化しない(例えば、2位の脂肪アシル基の10数量(またはモル)%未満、より好ましくは5%未満、たとえば1%未満しかこの方法の間で変化しない)。
【0021】
本発明の方法の工程(a)において(即ちアルコール分解反応において)、1,3特異的リパーゼの影響下では、1及び3位の脂肪アシル基が、対応するヒドロキシル基に加水分解される。それ故1,3特異的リパーゼは選択的に、2位よりむしろ1及び3位のアシル基を加水分解する。
【0022】
アルコール分解反応は、当該技術分野で既知の標準法を使用して実施されて良い。好ましくは前記反応は、溶媒、好ましくは有機溶媒、例えばCからC10ケトン、例えばアセトンの存在下で実施される。
【0023】
本発明の方法によってアルコール分解反応で使用されるアルコールは、1から6の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルコール、例えばメタノール、エタノール、及びプロパン-1-オールであって良い。アルコールは、単一の化合物でも、2種以上の異なる化合物の混合物でも良い。好ましくはアルコールはエタノールである。
【0024】
本発明の方法の工程(a)で得られるアシルエステルは、好ましくはエチルオレエートである。
【0025】
工程(a)で得られる組成物は好ましくは、組成物中のトリグリセリドに基づいて、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の2-オレオイルモノグリセリドを含む。
【0026】
本発明の方法の工程(a)の後、アルコール及び/またはいずれかの溶媒の少なくとも一部が、例えば減圧を使用して好ましくは除去される。前記分離は、65℃以下、より好ましくは60℃以下、例えば55℃以下、最も好ましくは50℃以下、例えば20℃から50℃の温度での真空蒸留を使用して実施されて良い。
【0027】
アシルエステルは、工程(a)または工程(b)の後または間、好ましくは工程(a)の後または工程(b)の後に、反応混合物から分離される。工程(a)の後の2-モノグリセリドからのアシルエステルの分離、及び工程(b)の後のトリグリセリドからのアシルエステルの分離は、当該技術分野で既知のいずれかの方法、例えば分画蒸留によって達成されて良い。
【0028】
好ましくは、アシルエステルと2-オレオイルモノグリセリドとの混合物は工程(b)で反応され、アシルエステルの分離は工程(b)の後に生ずる。
【0029】
工程(a)の後に得られる2-オレオイルモノグリセリドを含む組成物は、任意にアシルエステルの一部の除去の後、アシル化剤で反応させられる。アシル化剤は、一つ以上の飽和脂肪酸、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、及びそれらの混合物を含んで良い。別法としてまたは付加的に、アシル化剤は一つ以上の飽和脂肪酸のエステルを含んで良い;好ましいエステルはCからCアルキルエステル及びトリグリセリド(モノ、ジ、及びトリグリセリドを含む)である。酸及びエステルは、単一でまたは混合物として使用されても良く、一つ以上の酸が一つ以上のエステルと共に使用されても良い。好ましくは、アシル化剤はステアリン酸を含む。アシル化剤は典型的に、2-オレオイルグリセリドに基づいて過剰に、例えば1.1モル対10モル過剰で存在する。
【0030】
工程(b)は好ましくは、酵素、好ましくは1,3特異的リパーゼの存在下で実施される。工程(b)のアシル化反応の間で、2-オレオイルモノグリセリドの2位の脂肪酸は典型的に変化しない(例えば、2位の脂肪アシル基の10数量(またはモル)%未満、より好ましくは5%未満、たとえば1%未満しかこの方法の間で変化しない)。
【0031】
アシル化反応の間の1,3リパーゼの影響下で、飽和脂肪酸残基は、モノグリセリドの1及び3位に導入されて良い。
【0032】
本発明の方法の工程(b)で得られた1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドは好ましくは、例えばいずれかのアシルエステルと過剰のアシル化剤とを分画的に蒸留することによって、反応混合物から分離される。水も典型的に除去されて、50重量%より多い、好ましくは60重量%より多い、例えば70重量%より多い、最も好ましくは75重量%より多い1,3-飽和脂肪酸アシルエステル2-オレオイルグリセリドを含む組成物が生産される。
【0033】
本発明の方法の工程(b)で生産される好ましい1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドは、1,3-ジステアロイル2-オレオイルグリセリドである。1,3-ジステアロイル2-オレオイルグリセリド(StOStとしても既知)は価値のある市販品である。例えば、それは単独で、または他のグリセリド、例えば1,3-ジパルミトイル2-オレオイルグリセリドと共にのいずれかで、ココアバター同等品または置換品として使用されて良い。
【0034】
本発明の方法の工程(d)において、他の開始材料として使用されるトリグリセリドは好ましくは、全アシル基に基づいて、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、最も好ましくは少なくとも70モル%のパルミチン酸残基を含む。好ましくは工程(d)で使用されるトリグリセリドは、ヤシオイルの高溶融分画から得られて良い、グリセロール骨格の2位でパルミチン酸を含むグリセリドを含む。ヤシオイルは、トリパルミチンを含む12重量%のまでのトリ飽和酸グリセリドを含む。一般的に、トップ分画は、4重量部のトリパルミチンと1重量部の対称ジ飽和トリグリセリドを含む。ヤシオイルの高溶融分画は好ましくは、典型的に60重量%より多い、例えば70重量%より多い、または75重量%より多い量で、飽和2-パルミトイルグリセリドを好ましくは含むヤシオイルステアリンを得るために分画化される。ヤシオイルの分画化は、ヤシオイルの溶媒(ウエット)分画化、ランザ分画化、またはドライ分画化、例えば多工程逆流ドライ分画化によって実施されて良い。ヤシオイルは、粗ヤシオイル、精製ヤシオイル、ヤシオイルの分画、またはそれらの混合物であることができる。好ましくはヤシオイルは、有機溶媒(例えばCからC10ケトン、例えばアセトン)または界面活性剤を含む水性溶媒を使用するウエット分画化に供される。ヤシオイルは典型的に精製されており、それは好ましくは漂白及び脱臭を含む。ヤシオイルの漂白は好ましくは、高温、典型的に100℃より高い、例えば110℃で実施される。脱臭工程では、揮発性不純物が200℃より高温でヤシオイルステアリンから除去され、脱臭ヤシオイルステアリンを生成する。脱臭工程で除去される不純物は一般的に、遊離脂肪酸、アルデヒド、ケトン、アルコール、及び他の炭化水素不純物を含む。漂白及び脱臭は、当該技術分野で既知の標準条件下で実施され、単一の方法工程、または二以上の方法工程で実施されて良い。例えば前記工程は減圧(例えば10mmHg以下)で実施されて良く、ヤシオイルステアリンはスチームと接触されて、不純物の蒸発を補助され、または別法として、脱臭工程は例えば10mmHg以下の圧力で高温で実施されても良い。
【0035】
本発明の方法の工程(d)は好ましくは、酵素、好ましくは1,3特異的リパーゼの存在下で実施される。第二のグリセリドのアシルエステルでの反応の間、第二のグリセリドの2位の脂肪酸は変化しない(例えば、2位の脂肪アシル基の10数量(またはモル)%未満、より好ましくは5%未満、たとえば1%未満しかこの方法の間で変化しない)。
【0036】
工程(d)の間の1,3リパーゼの影響下で、アシルエステル由来のオレオイル残基が、トリグリセリドの脂肪酸残基との交換によって、トリグリセリドの1及び3位に導入される。この態様で変性された2-パルミトイルグリセリドが、反応混合物から分離されて良い。
【0037】
本発明の方法の工程(d)での反応は、2位よりもむしろ1と3位でパルミチン酸をオレイン酸で選択的に交換する。前記反応は、第二のグリセリドに基づいて最小50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、最も好ましくは少なくとも70モル%の1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドへの変換率で平衡に達するまたは近づくように実施される。
【0038】
好ましくは工程(d)では、トリグリセリドとしてのヤシオイルステアリンは例えば、アシルエステルと混合される(それは65重量%より高い、好ましくは70重量%より高い、最も好ましくは75重量%より高い濃度でエチルオレエートを含む)。ヤシオイルステリン:エチルオレエートの比は、好ましくは重量に基づいて0.1:1から2:1、より好ましくは0.4:1から1.2:1、更により好ましくは0.4:1から1:1、最も好ましくは1:1.1から1:2である。前記反応は好ましくは30から90℃、好ましくは50から80℃、例えば約60から70℃の温度で実施され、水不混和性有機溶媒ありまたはなしで、バッチ様または連続態様で実施されて良い。
【0039】
工程(d)の反応の前で、使用されるバイオ触媒酵素システムのタイプに依存して、0.05から0.55の間、好ましくは0.1から0.5の間の水活性に湿度が好ましくは制御される。前記反応は、例えばリパーゼD(Amano Enzyme Inc., Japan社製の、以前にRhizopus delemarとして分類されていたRhizopus oryzae)、またはRhizomucor mieheiの固定化濃縮物(Novozymes, Denmark社製のLipozyme RM IM)に基づくバイオ触媒について、攪拌タンクまたは固定層リアクターで60℃で実施されて良い。
【0040】
工程(d)で得られた1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドは好ましくは、それを精製する更なる工程に供される。生成物トリグリセリド分画から脂肪酸とエステルを分離するために、工程(d)で得られた組成物(任意に更なる処理、例えば脂肪相の単離の後)は、低圧(<10mbar)と高温(>200℃)で蒸留されて良い。
【0041】
工程(d)で得られた1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドの蒸留の後、トリグリセリド分画は好ましくは分画化され、OPOグリセリドが回収される。これは、単一の、二工程の、または多工程の分画化方法を使用する溶媒分画化またはドライ分画化を使用して実施できるが、好ましくは単一工程ドライ分画化を使用して実施される。分画化は好ましくは、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは6重量%未満の濃度まで非変換トリパルミチンを除去する。OPO分画は典型的に十分に精製され、全ての残余の脂肪酸と混在物が除去され、精製OPO分画が生成する。
【0042】
本発明は、1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドを更に精製する一つ以上の更なる工程を含んでも良い。
【0043】
前記方法は、工程(a)から(d)の前、間、または後で更なる工程、例えば所望の成分の生成物の部分的精製または富化を任意に含んで良い。
【0044】
本発明の方法によって生産されるOPOグリセリドを含む組成物は、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%の量でOPOグリセリドを含んでも良い。バランスは他の非OPOトリグリセリドを含む。前記組成物は、不飽和脂肪酸残基を含む各種の脂肪酸残基が、1位と3位の間でランダムに分布しており、2位の脂肪酸残基の少なくとも半分が、C16及び/またはC18飽和であり、好ましくは実質的にパルミチン酸残基からなり、好ましくは2位の脂肪酸の全部の特に60−90重量%がパルミチン酸残基からなるトリグリセリドの混合物を含む。好ましくは脂肪酸残基の全部、または実質的に全部(例えば99重量%より高い)が偶数である。1位と3位の不飽和脂肪酸残基は、主にオレイン酸、リノール酸、及びパルミチン酸からなる。前記組成物は好ましくは、2位での飽和脂肪酸を、1位と3位を併せたのと少なくとも同じくらいの量(モル基準で)、より好ましくは少なくとも二倍まで(モル基準で)含む。好ましくは1,3-位は、飽和C18脂肪酸と、飽和C4からC14脂肪酸の両者を含む。これらの脂肪酸の割合とタイプは、必要とされる組成物の食事及び物理的条件によって決定されて良い。例えば、乳代替脂肪は、液体の食事中で血の温度で乳化できるべきであり、それ故好ましくは、この温度(37℃)で溶融することができるべきである。脂肪の溶融点は、従って選択されて良い脂肪酸組成物によって決定される。それ故、正しい脂肪酸組成を有する脂肪は、特定の所望される物理的特徴を有する脂肪組成物を生産する観点で、本発明における使用のために選択されて良い。
【0045】
本発明によって生産される最も好ましい組成物は、2位に存在する少なくとも50重量%のパルミチン酸、8重量%未満のSSS(式中、Sは少なくとも18の炭素原子、好ましくは18の炭素原子を有する飽和脂肪酸を表す)、及び1位と3位に存在する少なくとも40重量%のオレイン酸残基を含むOPOグリセリドを含むものである。
【0046】
本発明の方法によって得られる組成物は、好ましくは10重量%未満の1,2,3-トリ飽和グリセリド、好ましくは8重量%未満のトリ飽和グリセリドを含む。
【0047】
本発明の方法は、OPO分画を、他の脂肪及び/またはオイル、好ましくは少なくとも一つの植物オイルとブレンドする更なる工程を含み、脂肪ブレンドを形成しても良い。適切な脂肪は、40重量%までの中鎖トリグリセリド;30重量%までのラウリン脂肪;50重量%までの他の植物脂肪;または40重量%までのバター脂肪;またはこれらの脂肪の分画または混合物を含む脂肪である。特に、ラウリン脂肪、好ましくはヤシ種オイルはが組成物に含まれ、乳脂肪の組成またはその溶融特性に適合したブレンドが提供されて良く、及び/または植物オイル、例えばヒマワリオイル、高オレイン酸ヒマワリオイル、ヤシ種オイル、レープシードオイル、高オレイン酸サフラワーオイル、ココナッツオイル、及びダイズオイルは、高含量の多不飽和脂肪酸グリセリドを有し、組成物の食事の利益を改善するので含まれても良い。この態様では、本発明の方法によって生産される組成物は好ましくは、乳脂肪の組成またはその溶融特性に適合したブレンドを提供する。非安定化脂肪に対するNMRパルスによって測定される固形分含量指数が以下の範囲内:NO=35-55;N10=25-50及びN30</=10である場合に、最適な組成物が得られる。これらの値は、80℃での脂肪の溶融、60℃以上で少なくとも10分間の脂肪の保持、0℃への冷却、0℃で16時間の保持、測定温度Nへの脂肪の加熱、当該温度で30分間の保持、その後のN値の測定によって得られた。
【0048】
本発明の方法によって生産される脂肪組成物または脂肪ブレンドは、乳児食品製剤中の脂肪の少なくとも一部を代替するのに適している。それ故本発明はまた、脂肪、タンパク質、及び炭水化物成分を、2.5:1:5のおよその相対量で含む乳児食品組成物であって、そのような製剤で通常使用される脂肪の少なくとも一部が、本発明によって製造された脂肪組成物または脂肪ブレンドによって代替されたものの生産のための方法を提供する。そのような製剤で通常の更なる成分と共にこの混合物を含む乾燥製剤は、十分な水中に使用のために分散され、100mlの分散物あたり約3と1/2グラムの脂肪のエマルションを生産する。
【0049】
以下の非制限的な実施例は本発明を説明するものであり、如何なる態様でも本発明の範囲を制限するものではない。実施例において、及び本明細書を通じて、全てのパーセンテージ、部、及び比は、他に記載がなければ重量基準である。
【実施例】
【0050】
トリオレインをアセトンに溶解し、0.43の所定の水活性に平衡化する。無水エタノールを添加し、混合物を52℃で攪拌する。次いで2%(トリオレインの重量に基づく)の固定化1,3特異的リパーゼ、例えばRML(Rhizomocur miehei由来のリパーゼ)またはRDL(Rhizopus delemar由来のリパーゼ)の添加により、反応を開始する。変換が約90%の2-モノグリセリド(約48時間)となった際に、固定化リパーゼの除去によって反応を停止する。真空蒸留における50℃未満の温度での過剰のアセトンとエタノールの除去の後、2-モノオレインとエチルオレエートとからなる残余物を、2重量%(2-モノグリセリドの重量に基づく)の1,3特異的酵素の存在下で60℃でステアリン酸と反応させ、1,3-ジステアロイル-2-オレイルグリセリドを形成する(第一の生成物)。水活性は0.11であるはずである。エステル化反応の間で形成された水を真空によって除去する。エチルオレエートと過剰なステアリン酸を、分画蒸留によって除去する。回収したエチルオレエートを、トリパルミチンと1,3-特異的リパーゼとで酵素的反応に供し、1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセリドを形成する(第二の生成物)。リパーゼはRMLまたはRDLである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トリグリセリドの全アシル基に基づいて、少なくとも40モル%のオレイン酸残基を含む第一のトリグリセリドを、1から6の炭素原子を有するアルコールでのアルコール分解反応に供し、2-オレオイルモノグリセリドと前記アルコールの少なくとも一つのアシルエステルとを含む組成物を得る工程;
(b)少なくとも一つのC12からC24飽和脂肪酸、前記脂肪酸の少なくとも一つのエステル、またはそれらの混合物を含むアシル化剤と、前記2-オレオイルモノグリセリドとを反応させ、1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドを得る工程;
(c)工程(a)または工程(b)の後または間で、少なくとも一つの前記アシルエステルの少なくとも一部を分離する工程;ならびに
(d)前記アシルエステルを第二のグリセリドと反応させ、1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドを形成する工程
を含む、トリグリセリドの生産方法。
【請求項2】
工程(a)及び/または(c)及び/または(d)が、触媒として酵素の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素がリパーゼである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールがエタノールである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アシルエステルがエチルオレエートを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)が溶媒の存在下で実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)の後、前記アルコールの少なくとも一部が前記組成物から除去される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)で得られる前記1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドが精製される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第二のグリセリドが、全アシル基に基づいて少なくとも50モル%のパルミチン酸残基を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(d)で得られる前記1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドが精製される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(c)で得られる前記1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドが、1,3-ジステアロイル2-オレオイルグリセリドである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第一のトリグリセリドが、高オレイン酸ヒマワリオイル(HOSF)またはその分画である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドと1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドの両者を生産するための方法における、トリグリセリド中の全アシル基に基づいて、少なくとも40モル%のオレイン酸残基を含むトリグリセリドの使用。
【請求項14】
2-オレオイルモノグリセリドがトリグリセリドのアルコール分解によって形成される、1,3-飽和脂肪酸アシル2-オレオイルグリセリドを生産するための2-オレオイルモノグリセリドの使用。
【請求項15】
アシルエステルがトリグリセリドのアルコール分解によって形成される、1,3-ジオレオイル2-パルミトイルグリセリドの生産のためのアシルエステルの使用。
【請求項16】
トリグリセリドが高オレイン酸ヒマワリオイル(HOSF)またはその分画である、請求項13から15のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2009−507481(P2009−507481A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529695(P2008−529695)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003345
【国際公開番号】WO2007/029020
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(503352660)ローダース・クロクラーン・ベスローテンフェンノートシャップ (10)
【住所又は居所原語表記】Hogeweg 1, NL−1521 AZ Wormerveer, Netherlands
【Fターム(参考)】