説明

トリフルオロメチル置換ピロリン化合物の触媒的エナンチオ選択的製造法

【課題】トリフルオロメチル置換ピロリン化合物の触媒的エナンチオ選択的製造法
【解決手段】発明者らは鍵反応として,シンコナアルカロイド誘導体を用いて,ニトロアルカンのβ−トリフルオロメチルエノンへの高エナンチオ選択的共役付加反応に成功した。また得られた化合物のニトロ基の還元/縮合/脱水の連続反応を行うことで,高エナンチオ選択的にトリフルオロメチル置換ピロリンを得ることに成功した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,トリフルオロメチル置換ピロリン化合物の触媒的エナンチオ選択的製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリフルオロメチル基を有する複素環化合物は医薬・農薬分子の骨格として多く見られ,このため簡便かつ広範囲な合成法の開発が望まれている。特に近年,トリフルオロメチル基を有するジヒドロアゾール化合物は有害生物防除剤として注目を集めており, また医薬品や電子材料等の機能性材料の製造中間体としても有用な化合物である。トリフルオロメチル置換ジヒドロアゾール化合物群の中でも,トリフルオロメチル置換ピロリンはイソキサゾリン化合物と同様に高い殺虫活性を示す農薬候補化合物群として知られ,その有用性から非常に多くの誘導体が合成されている。一方で,市場に出ている農薬分子でも光学活性体の場合は,片方のエナンチオマーがもう一方のエナンチオマーの活性を低下させる,あるいは片方のエナンチオマーには農薬活性が皆無である場合が非常に多い。実際に,トリフルオロメチル置換ジヒドロアゾール化合物の一つであるイソキサゾリン化合物は,2つの鏡像異性体のうち,片方のエナンチオマーのみが強い殺虫活性を示すことが明らかにされている(非特許文献1,2)。しかし以前までの報告に,トリフルオロメチル置換ピロリン化合物の不斉合成の報告例はされていない(特許文献1,2,3,4,5および非特許文献3)。よって,農薬の実用化に向けて,トリフルオロメチル置換ピロリン化合物の触媒的不斉合成法の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−133273号公報
【特許文献2】国際公開公報 WO 2009/072621号公報
【特許文献3】国際公開公報 WO 2009/097992号公報
【特許文献4】国際公開公報 WO 2010/133336号公報
【特許文献5】国際公開公報 WO 2011/054871号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ozoe, Y.; Asahi, M.; Ozoe, F.; Nakahira, K.; Mita, T. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2010, 391, 744.
【非特許文献2】Matoba, K.; Kawai, H.; Furukawa, T.; Kusuda, A.; Tokunaga, E.; Nakamura, S.; Shiro, M.; Shibata, N. Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49, 5762.
【非特許文献3】Marrec O.; Christophe, C.; Billard, T.; Langlois, B.; Vors, J.-P.; Pazenok, S. Adv. Synth. Catal. 2010, 352, 2825.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記点に鑑みて,ニトロアルカンのβ−トリフルオロメチルエノンに対するエナンチオ選択的共役付加反応を鍵反応とした,トリフルオロメチル置換ピロリン化合物の触媒的エナンチオ選択的合成法の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、発明者らは鍵反応として,シンコナアルカロイド誘導体を用いて,ニトロアルカンのβ−トリフルオロメチルエノンへの高エナンチオ選択的共役付加反応に成功した。また得られた化合物のニトロ基の還元/縮合/脱水の連続反応を行うことで,高エナンチオ選択的にトリフルオロメチル置換ピロリンを得ることに成功した。すなわち
請求項1に記載の発明は,下記の一般式(1)で表されるβ−トリフルオロメチルエノンと,下記の一般式(2)で表されるニトロアルカンを溶媒中,触媒量のシンコナアルカロイド誘導体存在下で反応させることにより,高エナンチオ選択的に下記一般式(3)で表される,g−ニトロ−b−トリフルオロメチル化合物が得られることを特徴とする製造方法にある。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中,R及びR2は置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アラルキル基,アリール基を示す。)

【0009】
【化2】

【0010】
(式中,R3及びR4は置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アラルキル基,アリール基を示す。)

【0011】
【化3】

【0012】
(式中,R,R2,R3及びR4は式(1)及び式(2)と同じである。)
【0013】
請求項2に記載の発明は,上記の一般式(3)で表されるg−ニトロ−b−トリフルオロメチル化合物のニトロ基の還元/縮合/脱水の連続反応を行うことで,高エナンチオ選択的に,下記の一般式(4)で表されるトリフルオロメチル置換ピロリンを得ることを特徴とする製造方法にある。

【0014】
【化4】

【0015】
(式中,R,R2,R3及びR4は式(1)及び式(2)と同じである。)

【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において,R1及びR2のアルキル基としては,例えば,炭素数1乃至20程度のアルキル基を用いることができる。具体的には,メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,ヘプチル基,オクチル基,ノニル基,デシル基,ウンデシル基,ドデシル基,トリデシル基,テトラデシル基,ペンタデシル基,ヘキサデシル基,ヘプタデシル基,オクタデシル基,ノナデシル基,イコシル基,又はこれらの環状アルキル基,分鎖アルキル基などを用いることができる。
R1及びR2のアルケニル基又はアルキニル基に含まれる不飽和結合の数は特に限定されないが,好ましくは1乃至2個程度である。該アルケニル基又はアルキニル基は,直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよい。
R及びRが示すアリール基としては,ヘテロアリール基も含有し,具体例としては,例えば炭素数2〜30のアリール基,具体的にはフェニル基,ナフチル基,アンスラニル基,ピレニル基,ビフェニル基,インデニル基,テトラヒドロナフチル基,ピリジル基,ピリミジニル基,ピラジニル基,ピリダニジル基,ピペラジニル基,ピラゾリル基,イミダゾリル基,キニリル基,ピロリル基,インドリル基,フリル基などが挙げることができる。
アルキル基はフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
アルケニル基はフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
アルキニル基はフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
アラルキル基は,例としてベンジル基,ペンタフルオロベンジル基,o−メチルベンジル基,m−メチルベンジル基,p−メチルベンジル基,p−ニトロベンジル基,ナフチルメチル基,フルフリル基,α−フェネチル基等が挙げられる。
アリール基はアルキル基,フッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
【0017】

本明細書において,R3及びR4のアルキル基としては,例えば,炭素数1乃至20程度のアルキル基を用いることができる。具体的には,メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,ヘプチル基,オクチル基,ノニル基,デシル基,ウンデシル基,ドデシル基,トリデシル基,テトラデシル基,ペンタデシル基,ヘキサデシル基,ヘプタデシル基,オクタデシル基,ノナデシル基,イコシル基,又はこれらの環状アルキル基,分鎖アルキル基などを用いることができる。
R3及びR4のアルケニル基又はアルキニル基に含まれる不飽和結合の数は特に限定されないが,好ましくは1乃至2個程度である。該アルケニル基又はアルキニル基は,直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよい。
R3及びR4が示すアリール基としては,ヘテロアリール基も含有し,具体例としては,例えば炭素数2〜30のアリール基,具体的にはフェニル基,ナフチル基,アンスラニル基,ピレニル基,ビフェニル基,インデニル基,テトラヒドロナフチル基,ピリジル基,ピリミジニル基,ピラジニル基,ピリダニジル基,ピペラジニル基,ピラゾリル基,イミダゾリル基,キニリル基,ピロリル基,インドリル基,フリル基などが挙げることができる。
アルキル基はフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
アルケニル基はフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
アルキニル基はフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
アラルキル基は,例としてベンジル基,ペンタフルオロベンジル基,o−メチルベンジル基,m−メチルベンジル基,p−メチルベンジル基,p−ニトロベンジル基,ナフチルメチル基,フルフリル基,α−フェネチル基等が挙げられる。
アリール基はアルキル基,フッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
【0018】

シンコナアルカロイド触媒は特に限定されないが,下記の一般式(5),(6),(7)及び(8)で表される。
【0019】
【化5】

【0020】
(式中,R5は,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基,アリール基,アルコキシ基またはアミノ基を示す。式中,R6は置換もしくは未置換のアルコキシ基またはアミノ基,ウレア基,チオウレア基を示す。R7は,エチル基もしくはビニル基を示す。)
本明細書において,R5のアルキル基としては,例えば,炭素数1乃至20程度のアルキル基を用いることができる。具体的には,メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,ヘプチル基,オクチル基,ノニル基,デシル基,ウンデシル基,ドデシル基,トリデシル基,テトラデシル基,ペンタデシル基,ヘキサデシル基,ヘプタデシル基,オクタデシル基,ノナデシル基,イコシル基,又はこれらの環状アルキル基,分鎖アルキル基などを用いることができる。
5のアルケニル基又はアルキニル基に含まれる不飽和結合の数は特に限定されないが,好ましくは1乃至2個程度である。該アルケニル基又はアルキニル基は,直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよい。
5が示すアリール基としては,ヘテロアリール基も含有し,具体例としては,例えば炭素数2〜30のアリール基,具体的にはフェニル基,ナフチル基,アンスラニル基,ピレニル基,ビフェニル基,インデニル基,テトラヒドロナフチル基,ピリジル基,ピリミジニル基,ピラジニル基,ピリダニジル基,ピペラジニル基,ピラゾリル基,イミダゾリル基,キニリル基,ピロリル基,インドリル基,フリル基などが挙げることができる。
アルキル基はフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
アルケニル基はフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
アルキニル基はフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
アラルキル基は,例としてベンジル基,ペンタフルオロベンジル基,o−メチルベンジル基,m−メチルベンジル基,p−メチルベンジル基,p−ニトロベンジル基,ナフチルメチル基,フルフリル基,α−フェネチル基等が挙げられる。
アリール基はアルキル基,フッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく,2個以上の置換基を有する場合には,それらは同一でも異なっていてもよい。
5およびR6が示すアミノ基は,N上に水素,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基,アリール基の置換基が1つか2つ置換しているものが挙げられる。置換基はそれぞれ独立しており,同一である必要はない。アミノ基は,置換基を組み合わせて形成されうる環状構造を形成することができる。特に3員環から20員環でなる単環,双環,またはそれ以上の多環の構造を示すことができる。また,ヘテロ原子の介在もしくは非介在で環状構造の一部を形成してもよい。
5およびR6が示すアルコキシ基は炭素数が1〜20のアルコキシ基が好ましく,炭素数が1〜10のアルコキシ基がさらに好ましい。アルコキシ基の場合も上記のアルキル基の場合と同様の置換基により置換されていてもよい。
が示すウレア基は置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アラルキル基,アリール基有する。
が示すチオウレア基は置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アラルキル基,アリール基有する。
市販されているシンコナアルカロイドとしては,キニン,キニジン,シンコニン,シンコニジン以外に(DHQD)2PYR,(DHQD)2PHAL,(DHQD)2AQN,(DHQ)2PYR,(DHQ)2PHAL,(DHQ)2AQNなども用いることができる。以上のシンコナアルカロイド誘導体が挙げられるが,チオウレア型の触媒が最も好ましい。
【0021】

溶媒の種類は特に限定されないが,ジエチルエーテル,ジイソプロピルエーテル,n−ブチルメチルエーテル,tert−ブチルメチルエーテル,テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘプタン,ヘキサン,シクロペンタン,シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;クロロホルム,四塩化炭素,塩化メチレン,ジクロロエタン,トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ベンゼン,トルエン,キシレン,クメン,シメン,メシチレン,ジイソプロピルベンゼン,ピリジン,ピリミジン,ピラジン,ピリダジン等の芳香族系溶媒;ジメチルスルホキシド,ジメチルホルムアミド等の溶媒;メタノール,エタノール,プロパノール,i-プロピルアルコール,アミノエタノール,N,N-ジメチルアミノエタノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。これらは単独で使用し得るのみならず,2種類以上を混合して用いることも可能である。g−ニトロ−b−トリフルオロメチル化合物のエナンチオ選択的合成にはトルエンが最も好ましく,ニトロ基の還元/縮合/脱水の連続反応による,トリフルオロメチル置換ピロリンの合成にはテトラヒドロフラン/メタノール(2/1)の混合溶媒が好ましい。
【0022】
一般式(3)で表されるg−ニトロ−b−トリフルオロメチル化合物のニトロ基の還元/縮合/脱水の連続反応による,トリフルオロメチル置換ピロリンの合成には,還元剤の種類は特に限定されないが,水素/Raney-Ni,水素/Pd-C,水素/Pt2O,水素化ホウ素ナトリウム/Pd-C, 水素化アルミニウムリチウム,亜鉛/塩化水素,錫/塩化水素,鉄/塩化水素,鉄/酢酸などが挙げられが,Fe/酢酸の反応系が最も好ましい。
本発明の化合物の絶対配置は(S,S),(S,R),(R,S)及び(R,R)配置のいずれであってもよく,光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体はいずれも本発明の範囲に包含される。光学的に純粋な形態の異性体は本発明の好ましい態様である。また,立体異性体の任意の混合物,ラセミ体なども本発明の範囲に包含される。
反応温度は特に限定されるものではないが、通常−80℃〜120℃であり,より好ましくは室温付近である。反応器は大気開放型の反応器,またはオートクレーブ等の密閉型の反応器のいずれも可能である。反応圧力は大気圧下,または加圧下のいずれも可能である。反応時間は特に限定されるものではないが,通常5時間〜5日で反応は完結する。
反応後,前記一般式(3)で示されるg−ニトロ−b−トリフルオロメチル化合物は一般的な手法によって反応液から単離および精製することができ,例えば反応液を濃縮した後,シリカゲル,アルミナ等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフ法での精製,塩析,再結晶等が挙げられる。
【0023】
反応後,前記一般式(4)で示されるトリフルオロメチル置換ピロリン化合物は一般的な手法によって反応液から単離および精製することができ,例えば反応液を濃縮した後,シリカゲル,アルミナ等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフ法での精製,塩析,再結晶等が挙げられる。

【0024】
以下,実施形態により本発明をさらに具体的に説明するが,本発明の範囲は下記の実施形態に限定されることはない。


【実施例1】
【0025】
前記一般式(3)の一般的な製造方法:
β−トリフルオロメチルエノン(0.20 mmol),下記の構造式8aで示すシンコナアルカロイドチオウレア触媒(0.004 mmol)をトルエン1mLに溶かし,室温で,ニトロメタン(58.8 μL, 1.00 mmol)を加えた。20〜96時間撹拌した後,減圧下で溶媒を留去し,シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、g−ニトロ−b−トリフルオロメチル化合物3を得た。
【0026】
【化6】



【0027】
【化7】

【0028】
Compound 3a: 4,4,4−トリフルオロメチル−3−(ニトロメチル) −1−フェニルブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.35 (dd, J = 9.0, 18.6 Hz, 1H), 3.47 (dd, J = 3.9, 18.3 Hz, 1H), 3.88-3.99 (m, 1H), 4.63 (dd, J = 4.8, 13.8 Hz, 1H), 4.72 (dd, J = 6.8, 13.8 Hz, 1H), 7.51 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.64 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.97 (d, J = 7.5 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 34.2 (m), 37.9 (q, J = 28.2 Hz), 72.3 (m), 126.1 (q, J = 280.0 Hz), 128.1, 128.9, 134.2, 135.5, 194.7; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -71.3 (d, J = 9.0 Hz, 3F) ; IR (KBr) 3068, 2962, 1691, 1558, 1451, 1396, 1172, 1102, 959, 930, 897, 799, 758, 724, 690, 653, 552, 510 cm-1; mp = 48.0-49.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 300 [(M+K)+]; The ee of the product was determined by HPLC using an IB column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 16.1 min, τmin = 12.3 min); 99%収率,98% ee.

【0029】
【化8】

【0030】
Compound 3b: 4,4,4−トリフルオロメチル−3−(ニトロメチル) −1−o−トリルブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 2.52 (s, 3H), 3.26 (dd, J = 8.7, 18.3 Hz, 1H), 3.40 (dd, J = 4.2, 18.3 Hz, 1H), 3.85-3.96 (m, 1H), 4.62 (dd, J = 4.8, 13.8 Hz, 1H), 4.73 (dd, J = 6.6, 13.8 Hz, 1H), 7.31 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.42-7.47 (m, 1H), 7.69 (d, J = 7.5 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 21.6, 36.6 (m), 38.0 (q, J = 28.7 Hz), 72.5 (m), 126.0, 126.1 (q, J = 280.0 Hz), 128.7, 132.45, 132.49, 135.7, 139.3, 197.7; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -71.2 (d,J = 7.9 Hz, 3F) ; IR (NaCl) 2971, 2930, 1687, 1602, 1564, 1434, 1381, 1337, 1255, 1199, 1175, 1123, 968, 910, 757, 735, 632, 486 cm-1; MS (ESI, m/z) 298 [(M+K)+]; The ee of the product was determined by HPLC using an IB column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 13.0 min, τmin = 10.9 min); 73%収率, 86% ee.

【0031】
【化9】

【0032】
Compound 3b: 4,4,4−トリフルオロメチル−3−(ニトロメチル) −1−m−トリルブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 2.43 (s, 3H), 3.32 (dd, J = 9.3, 18.3 Hz, 1H), 3.45 (dd, J = 4.1, 18.5 Hz, 1H), 3.87-3.98 (m, 1H), 4.62 (dd, J = 4.5, 14.1 Hz, 1H), 4.70 (dd, J = 6.5, 14.1 Hz, 1H), 7.36-7.46 (m, 2H), 7.74-7.77 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 21.3, 34.2 (m), 37.9 (q, J= 28.7 Hz), 72.4 (m), 125.2, 126.1 (q, J= 280.0 Hz), 128.6, 128.8, 134.9, 135.6, 138.8, 194.8; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -71.3 (d,J = 7.9 Hz, 3F) ; IR (KBr) 3018, 2928, 1681, 1562, 1430, 1385, 1300, 1251, 1173, 1115, 972, 872, 798, 724, 686, 630, 597, 549, 505, 464 cm-1; mp = 49.0-50.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 298 [(M+K)+]; The ee of the product was determined by HPLC using an IB column (n-hexane/i-PrOH = 70/30, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 14.5 min, τmin = 15.9 min); 95%収率, 98% ee.

【0033】
【化10】

【0034】
Compound 3b: 4,4,4−トリフルオロメチル−3−(ニトロメチル) −1−p−トリルブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 2.43 (s, 3H), 3.30 (dd, J = 9.3, 18.3 Hz, 1H), 3.43 (dd, J = 3.9, 18.3 Hz, 1H), 3.86-3.97 (m, 1H), 4.62 (dd, J = 4.5, 14.1 Hz, 1H), 4.69 (dd, J = 6.9, 13.7 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 14.4 Hz, 2H), 7.86 (d, J = 8.1 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 21.7, 34.0 (m), 37.9 (q, J= 28.7 Hz), 72.4 (m), 126.1 (q, J = 280.0 Hz), 128.2, 129.6, 133.1, 145.2, 194.2; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -71.4 (d, J = 9.0 Hz, 3F) ; IR (KBr) 3022, 2922, 1683, 1556, 1345, 1119, 972, 919, 891, 846, 808, 764, 730, 651, 590, 567, 506, 459 cm-1; mp = 43.0-44.5 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 298 [(M+K)+]; The ee of the product was determined by HPLC using an OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 70/30, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 18.2 min, τmin = 14.9 min); 96%収率, 96% ee.

【0035】
【化11】

【0036】
Compound 3e: 4,4,4−トリフルオロメチル−1−(4-メトキシフェニル) −3−(ニトロメチル) ブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.27 (dd, J = 9.2, 18.5 Hz, 1H), 3.40 (dd, J = 4.1, 18.2 Hz, 1H), 3.83-3.97 (m, 1H), 3.89 (s, 3H), 4.63 (dd, J = 5.0, 14.3 Hz, 1H), 4.69 (dd, J = 6.8, 14.0 Hz, 1H), 6.94-6.99 (m, 2H), 7.91-7.96 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 33.7 (m), 37.9 (q, J = 28.2 Hz), 55.5, 72.0 (m), 114.0, 126.2 (q, J = 280.0 Hz), 128.6, 130.4, 164.3, 193.0; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -71.3 (d,J = 7.9 Hz, 3F) ; IR (KBr) 2965, 2844, 1667, 1550, 1255, 1120, 1030, 968, 919, 842, 818, 733, 652, 603, 569, 499, 419 cm-1; mp = 90.0-92.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 314 [(M+Na)+]; The ee of the product was determined by HPLC using an OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 70/30, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 41.2 min, τmin = 31.6 min); 96%収率, 97% ee.

【0037】
【化12】

【0038】
Compound 3f: 4,4,4−トリフルオロメチル−1−(4-フルオロフェニル) −3−(ニトロメチル) ブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.33 (dd, J = 9.0, 18.3 Hz, 1H), 3.44 (dd, J = 4.1, 18.5 Hz, 1H), 3.85-3.97 (m, 1H), 4.63 (dd, J = 4.8, 13.8 Hz, 1H), 4.72 (dd, J = 6.8, 14.0 Hz, 1H), 7.18 (t, J = 8.6 Hz, 2H), 8.01 (dd, J= 5.3, 8.9 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 34.1 (m), 37.9 (q, J = 28.2 Hz), 72.3 (m), 116.1 (d, J = 22.6 Hz), 126.0 (q, J = 280.0 Hz), 130.9 (d, J = 9.1 Hz), 132.0 (d, J = 3.0 Hz), 166.3 (q, J = 256.5 Hz), 193.1; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -103.5 (m, 1F), -71.3 (d, J = 7.9 Hz, 3F) ; IR (NaCl) 2928, 1688, 1599, 1562, 1508, 1380, 1342, 1301, 1228, 1176, 1124, 1003, 973, 911, 837, 735, 651, 587, 548, 474 cm-1; MS (ESI, m/z) 318 [(M+K)+]; The ee of the product was determined by HPLC using an OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 70/30, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 18.8 min, τmin = 15.1 min); 88%収率, 97% ee.

【0039】
【化13】

【0040】
Compound 3g: 1−(4-クロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロメチル−3−(ニトロメチル) ブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.32 (dd, J = 9.2, 18.5 Hz, 1H), 3.43 (dd, J = 4.5, 18.3 Hz, 1H), 3.85-3.96 (m, 1H), 4.63 (dd, J = 4.8, 13.8 Hz, 1H), 4.72 (dd, J = 6.6, 13.8 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.91 (d, J = 8.7 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 34.2 (m), 37.8 (q, J = 28.7 Hz), 72.3 (m), 126.0 (q, J = 280.0 Hz), 129.2, 129.5, 133.8, 140.7, 193.5; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -71.3 (d, J = 9.0 Hz, 3F) ; IR (KBr) 3097, 2947, 1927, 1691, 1554, 1380, 1308, 1265, 1227, 1121, 1029, 948, 890, 821, 781, 715, 621, 553, 499, 456 cm-1; mp = 45.0-46.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 334 [(M+K)+]; The ee of the product was determined by HPLC using an IB column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 17.7 min, τmin = 19.7 min); 99%収率, 97% ee.
【0041】
【化14】

【0042】
Compound 3h: 1−(4-ブロモフェニル)−4,4,4−トリフルオロメチル−3−(ニトロメチル) ブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.32 (dd, J = 8.9, 18.5 Hz, 1H), 3.43 (dd, J = 4.4, 18.2 Hz, 1H), 3.85-3.96 (m, 1H), 4.63 (dd, J = 4.8, 13.8 Hz, 1H), 4.72 (dd, J = 6.6, 13.8 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.91 (d, J = 8.4 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 34.2 (m), 37.8 (q, J = 28.2 Hz), 72.2 (m), 126.0 (q, J = 280.0 Hz), 129.5, 132.2, 134.2, 193.7; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -71.3 (d,J = 7.9 Hz, 3F) ; IR (KBr) 3032, 2974, 1928, 1676, 1558, 1487, 1344, 1172, 1121, 973, 895, 817, 784, 737, 704, 637, 564, 509, 472 cm-1; mp = 40.0-41.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 338 [(M+K)+]; The ee of the product was determined by HPLC using an IB column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 12.7 min, τmin = 13.8 min); 92%収率, 98% ee.

【0043】
【化15】

【0044】
Compound 3i: 4,4,4−トリフルオロメチル−3−(ニトロメチル)−1−(4−ニトロフェニル) ブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.44 (dd, J = 8.4, 18.6 Hz, 1H), 3.53 (dd, J = 4.5, 18.6 Hz, 1H), 3.88-3.98 (m, 1H), 4.66 (dd, J = 5.0, 14.0 Hz, 1H), 4.77 (dd, J = 6.5, 14.0 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.91 (d, J = 8.4 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 34.9 (m), 37.8 (q, J = 28.7 Hz), 72.1 (m), 124.1, 125.8 (q, J = 280.0 Hz), 129.2, 139.8, 150.8, 193.4; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -71.2 (d,J = 7.9 Hz, 3F) ; IR (KBr) 3113, 2931, 1687, 1563, 1525, 1345, 1254, 1217, 1125, 1059, 1006, 952, 851, 788, 748, 723, 687, 642, 489 cm-1; mp = 80.0-81.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 305 [M-H]-; The ee of the product was determined by HPLC using an OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 70/30, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 48.6 min, τmin = 65.0 min); 94%収率, 93% ee.

【0045】
【化16】

【0046】
Compound 3j: 4,4,4−トリフルオロメチル−1−(ナフタレン−2−イル) −3−(ニトロメチル) ブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.46 (dd, J = 9.2, 18.2 Hz, 1H), 3.58 (dd, J = 4.1, 18.5 Hz, 1H), 3.96-4.01 (m, 1H), 4.66 (dd, J = 4.7, 14.0 Hz, 1H), 4.74 (dd, J = 6.5, 14.0 Hz, 1H), 7.55-7.66 (m, 2H), 7.87-7.92 (m, 2H), 7.95-8.00 (m, 2H), 8.46 (s, 1H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 34.2 (m), 38.0 (q, J = 28.2 Hz), 72.4 (m), 123.3, 126.1 (q, J = 281 Hz), 127.2, 127.8, 128.9, 129.1, 129.6, 130.1, 132.3, 132.8, 135.9, 194.5; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -71.2 (d, J = 8.7 Hz, 3F) ; IR (KBr) 3035, 2931, 1675, 1569, 1469, 1430, 1384, 1254, 1168, 1117, 974, 941, 857, 823, 748, 625, 592, 549, 474 cm-1; mp = 74.5-76.5 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 350 [(M+K)+]; The ee of the product was determined by HPLC using an IB column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 17.1 min, τmin = 14.9 min); 97%収率, 97% ee.

【0047】
【化17】

【0048】
Compound 3k: 4,4,4−トリフルオロメチル−1−(フラン−2−イル) −3−(ニトロメチル) ブタ−1−オン
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.20 (dd, J = 9.0, 18.0 Hz, 1H), 3.35 (dd, J = 4.4, 18.2 Hz, 1H), 3.83-3.94 (m, 1H), 4.64 (dd, J = 5.1, 13.8 Hz, 1H), 4.71 (dd, J = 6.5, 14.0 Hz, 1H), 6.61 (dd, J = 1.7, 3.8 Hz, 1H), 7.29 (dd, J = 0.8, 4.1 Hz, 1H), 7.64-7.65 (m, 1H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 33.8 (m), 37.5 (q, J = 28.7 Hz), 72.3 (m), 112.8, 118.2, 125.9 (q, J = 280.0 Hz), 147.2, 151.6, 183.6; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -71.4 (d, J = 9.0 Hz, 3F) ; IR (NaCl) 3142, 2929, 1681, 1567, 1469, 1386, 1254, 1176, 1126, 1037, 974, 914, 883, 838, 767, 735, 639, 594 cm-1; MS (ESI, m/z) 274 [(M+Na)+]; The eeof the product was determined by HPLC using an IB column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 23.3 min, τmin = 20.0 min); 95%収率, 98% ee.

【実施例2】
【0049】
前記一般式(4)の一般的な製造方法:
β−トリフルオロメチルエノン(0.10 mmol),上記の構造式8aで示すシンコナアルカロイドチオウレア触媒(0.002 mmol)をトルエン0.5mLに溶かし,室温で,ニトロメタン(26.9 μL, 0.50 mmol)を加えた。20〜96時間撹拌した後,減圧下で溶媒を留去し,残渣をテトラヒドロフラン1.0mL,メタノール0.5mLに溶かし,酢酸(90.0 μL, 1.6 mmol) ,鉄(251 mg, 4.5 mmol)を加え65℃で10時間撹拌した。室温に冷却後,セライトろ過を行い,酢酸エチルで洗い流した。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液,飽和食塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を留去し,シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、トリフルオロメチル置換ピロリン化合物4を得た

【0050】
【化18】

【0051】
Compound 4a: 5−フェニル−3−(トリフルオロメチル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.12-3.32 (m, 3H), 4.20-4.37 (m, 2H), 7.26-7.50 (m, 3H), 7.78-7.84 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 35.9 (m), 40.9 (q, J = 28.2 Hz), 61.2 (m), 127.5 (q, J = 277.2 Hz), 127.6, 128.6, 131.0, 133.4, 170.9; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -72.2 (d,J = 8.7 Hz, 3F) ; IR (KBr) 3032, 2944, 1628, 1578, 1496, 1439, 1385, 1351, 1276, 1108, 1024, 928, 797, 764, 694, 553, 520.7, 458 cm-1; mp = 61.0-62.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 214 [M+H]+; The ee of the product was determined by HPLC using an OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 0.5 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 14.9 min, τmin = 19.6 min); 89%収率, 98% ee.

【0052】
【化19】

【0053】
Compound 4b: 5−p−トリル−3−(トリフルオロメチル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 2.39 (s, 3H), 3.10-3.26 (m, 3H), 4.18-4.35 (m, 2H), 7.23 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.71 (d, J = 8.1 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 21.5, 35.9 (m), 40.8 (q, J = 28.2 Hz), 61.1 (m), 127.57 (q, J = 277.2 Hz), 127.57, 129.3, 130.7, 141.3, 170.8; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -72.2 (d, J = 7.9 Hz, 3F) ; IR (KBr) 2950, 2879, 1924, 1622, 1569, 1514, 1459, 1387, 1343, 1320, 1109, 960, 821, 714, 609, 554, 517, 468 cm-1; mp = 62.0-64.5 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 228 [M+H]+; The ee of the product was determined by HPLC using an OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 0.5 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 15.9 min, τmin = 23.2 min); 92%収率, 98% ee.

【0054】
【化20】

【0055】
Compound 4c: 5−(4−メトキシフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.10-3.24 (m, 3H), 3.85 (s, 3H), 4.16-4.32 (m, 2H), 6.93 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 8.7 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 35.8 (m), 40.9 (q, J = 28.2 Hz), 55.3, 61.0 (m), 113.9, 126.2, 127.6 (q, J = 276.7 Hz), 129.3, 161.8, 170.2; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -72.2 (d, J = 8.7 Hz, 3F) ; IR (KBr) 2962, 2841, 1623, 1575, 1516, 1462, 1385, 1345, 1319, 1158, 1111, 1037, 845, 821, 556 cm-1; mp = 79.5-81.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 244 [M+H]+; The ee of the product was determined by HPLC using an AD-3 column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 0.5 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 26.9 min, τmin = 25.7 min); 97%収率, 98% ee.

【0056】
【化21】

【0057】
Compound 4d: 5−(4−クロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.12-3.25 (m, 3H), 4.19-4.37 (m, 2H), 7.40 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.75 (d, J = 8.7 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 35.9 (m), 40.9 (q, J = 28.2 Hz), 61.3 (m), 127.4 (q, J = 277.2 Hz), 128.86, 128.91, 131.8, 137.1, 169.8; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -72.3 (d, J = 8.7 Hz, 3F) ; IR (KBr) 2955, 2880, 1625, 1492, 1439, 1387, 1321, 1274, 1116, 1034, 1014, 957, 828, 714, 553, 528, 455 cm-1; mp = 67.0-68.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 248 [M+H]+; The ee of the product was determined by HPLC using an OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 0.5 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 14.6 min, τmin = 22.6 min); 94%収率, 98% ee.

【0058】
【化22】

【0059】
Compound 4e: 5−(4−ブロモフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.12-3.24 (m, 3H), 4.18-4.36 (m, 2H), 7.56 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.69 (d, J = 8.4 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 35.9 (m), 40.9 (q, J = 28.7 Hz), 61.3 (m), 125.6, 127.4 (q, J = 277.2 Hz), 129.1, 131.8, 132.2, 169.9; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -72.3 (d, J = 7.9 Hz, 3F) ; IR (KBr) 2956, 2877, 1624, 1590, 1564, 1488, 1438, 1385, 1343, 1321, 1272, 1114, 1072, 1033, 825, 709, 551, 456 cm-1; mp = 78.0-79.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 292 [M+H]+; The ee of the product was determined by HPLC using an OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 0.5 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 16.0 min, τmin = 28.2 min); 91%収率, 98% ee.

【0060】
【化23】

【0061】
Compound 4f: 5−(ナフタレン−2−イル)−3−(トリフルオロメチル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 3.17-3.43 (m, 3H), 4.25-4.43 (m, 2H), 7.50-7.57 (m, 2H), 7.84-7.91 (m, 3H), 8.06 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 8.13 (s, 1H); 13C NMR (CDCl3, 150.9 MHz) δ 36.0 (m), 40.9 (q, J = 28.2 Hz), 61.3 (m), 124.2, 126.6, 127.4, 127.6 (q, J = 277.2 Hz), 127.8, 128.41, 128.44, 128.7, 130.9, 132.8, 134.5, 170.9; 19F NMR (CDCl3, 282 MHz) δ -72.1 (d, J = 9.9 Hz, 3F) ; IR (KBr) 3071, 2934, 1620, 1436, 1379, 1320, 1270, 1204, 1155, 1106, 1022, 960, 897, 869, 826, 754, 623, 576, 480 cm-1; mp = 91.0-92.0 oC (CHCl3); MS (ESI, m/z) 264 [M+H]+; The ee of the product was determined by HPLC using an AD-3 column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 0.5 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 23.9 min, τmin = 33.6 min); 95%収率, 97% ee.





【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3)で表されるg−ニトロ−b−トリフルオロメチル化合物のエナンチオ選択的合成法による製造方法。
【化3】


(式中,R,R2,RおよびRは置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アラルキル基,アリール基を示す。)
【請求項2】
上記の一般式(3)で表されるg−ニトロ−b−トリフルオロメチル化合物のニトロ基の還元/縮合/脱水の連続反応を行うことで,高エナンチオ選択的に,下記の一般式(4)で表されるトリフルオロメチル置換ピロリンを得ることを特徴とする製造方法にある。
【化4】


(式中,R,R2,R3及びR4は式(1)及び式(2)と同じである。)



【公開番号】特開2013−35813(P2013−35813A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175587(P2011−175587)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】