説明

トリプレニルフェノール化合物及び血栓溶解促進剤

【課題】低分子量で高い血栓溶解促進作用を発揮することができるトリプレニルフェノール化合物の提供、及びこれを含む血栓溶解促進剤の提供。
【解決手段】下記式(II)又は(III)で表されるトリプレニルフェノール化合物。


(式(II)中、R1は、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基及び第二アミノ基からなる群より選択された少なくとも1つを置換基として若しくは置換基の一部として有する芳香族基又は第二アミノ基を含み且つ含窒素でもよい芳香族基。式(III)中R4は、式(III−1)を表し、R5は、あってもなくてもよい水酸基で、nは0又は1の整数)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリプレニルフェノール化合物及び血栓溶解促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トリプレニルフェノール骨格を有する微生物代謝産物には、重要な生理活性を有するものがある。例えば、糸状菌から得られた特定のトリプレニルフェノール化合物は、血栓溶解促進作用や、血管新生抑制作用といった生体に重要な現象に対する生理活性作用を有することが知られている(特許文献1〜3)。
また、上記トリプレニルフェノール化合物とは立体構造が異なる他のトリプレニルフェノール化合物として、特許文献4には、育毛活性を有するトリプレニルフェノール化合物が開示されている。また、非特許文献1には、抗菌活性及び抗真菌活性を有するトリプレニルフェノール化合物が開示されている。
糸状菌を用いた培養によって得られるトリプレニルフェノール化合物は、プラスミノーゲン(Plg)のコンフォメーション変化を導き、この結果、プラスミノーゲンアクチベーター(PA)による活性化の感受性とプラスミノーゲンのフィブリン結合能を増加させ、その結果血栓溶解を促進することが示唆されている(非特許文献2)。アミノ酸としてオルニチンを添加したときに得られるトリプレニルフェノール骨格を2つ有する化合物(以下、オルニプラビンという)は、特にこのような血栓溶解促進作用が顕著に強いことが知られている(特許文献2)。
このように、トリプレニルフェノール骨格を有する化合物は、その立体構造や置換基によって多様な活性を発揮するため、その利用価値が高い。
【0003】
これら多様な活性型のトリプレニルフェノール化合物は、複雑な構造を有しているためより効率よく得ることが要請されている。このような製造方法としては、微生物を培養することによって製造する方法が開発されている。しかし微生物を用いる方法では通常、数多くの類似体と共に生産されるため、効率よく大量に得るために種々の工夫がなされている。特に、血栓溶解促進作用や血管新生阻害作用といった生理活性を有する活性型トリプレニルフェノール化合物を製造するために、特許文献1〜3では、培養開始直後などの糸状菌の培養初期に、置換基に応じたアミノ酸又はアミノアルコールを添加する培養系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−65288号公報
【特許文献2】特開2004−224737号公報
【特許文献3】特開2004−224738号公報
【特許文献4】国際公開98/56940号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Org. Chem., (1992), Vol.57, pp.6700-6703
【非特許文献2】FEBS Letter, (1997) Vol.418, pp.58-62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、オルニプラビンは分子量800を超える2量体であるため、生体への吸収という観点からは不利と考えられている。
また、従来の糸状菌を利用した培養方法では、添加可能なアミノ酸及びアミノアルコールの種類に応じて、得られる生成物の種類が限定される。また、生成量も充分とは言えない。
従って、本発明の目的は、低分子量で高い血栓溶解促進作用を発揮することができる新規なトリプレニルフェノール化合物を提供すること、及びこれを含む血栓溶解促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトリプレニルフェノール化合物(以下、本明細書中では、第二のトリプレニルフェノール化合物という)は、下記一般式(II)で表されるトリプレニルフェノール化合物である。下記一般式(II)中R1は、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基及び第二アミノ基からなる群より選択された少なくとも1つを置換基として若しくは置換基の一部として有する芳香族基、又は第二アミノ基を含み且つ窒素を含んでいてもよい芳香族基を表す。Xは−CHY−C(CH32Zであり、Y及びZは、それぞれ−H又は−OHであるか、一緒になって単結合を形成する。
【0008】
【化1】

【0009】
本発明の他のトリプレニルフェノール化合物(以下、本明細書中では、第三のトリプレニルフェノール化合物という)は、下記一般式(III)で表されるトリプレニルフェノール化合物である。下記一般式(III)中R4は、下記一般式(III−1)で示される芳香族アミノ酸残基を表し、下記一般式(III−1)中R5は、あってもなくてもよい水酸基を表し、nは0又は1の整数を表す。Xは−CHY−C(CH32Zであり、Y及びZは、それぞれ−H又は−OHであるか、一緒になって単結合を形成する。
【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
本発明の血栓溶解促進剤は、上記一般式(II)又は(III)で表されるトリプレニルフェノール化合物を有効成分として含む血栓溶解促進剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低分子量で高い血栓溶解促進作用を発揮することができる新規なトリプレニルフェノール化合物を提供すること、及びこれを含む血栓溶解促進剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る各種のSMTP化合物の構造の一覧である。
【図2】本実施例1にかかるクロマトグラフィーのチャートである。
【図3】本実施例5にかかるSMTP−0及びオルニプラビン(SMTP−7)のプラスミノーゲン活性化に及ぼす影響を示すグラフである(凡例の濃度の単位はμM)。
【図4】本実施例5にかかるSMTP−0及びオルニプラビン(SMTP−7)のプラスミノーゲン断片の生成に及ぼす影響を示すグラフである(濃度の単位はμM)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<トリプレニルフェノール化合物の製造方法及び第一のトリプレニルフェノール化合物>
本発明のトリプレニルフェノール化合物を製造する製造方法は、糸状菌を、アミン化合物の種類及び量の少なくとも一方が制限された制限培地による第1の培養工程で培養し、培養中期以降に、アミン化合物を含有している生産用培地による第2の培養工程で培養すること、前記第2の培養工程後の培養物から、トリプレニルフェノール化合物を得ること、を含むことを特徴としている。
上記製造方法では、第1の培養工程で使用する培地として、アミン化合物の種類及び量の少なくとも一方が制限された制限培地を用いるので、第2の培養工程に移る培養中期以降に、従来よりも大量の中間体化合物を得ることができる。その後、アミン化合物を含む生産用培地による第2の培養工程を実行することにより、効率よく且つ選択性よく目的とするトリプレニルフェノール化合物を得ることができる。
【0016】
また本発明の第一のトリプレニルフェノール化合物は、下記式(I)で表され、旋光度(−)の化合物である。式中Xは、−CHY−C(CH32Zであり、Y及びZは、それぞれ−H又は−OHであるか、一緒になって単結合を形成する。
【0017】
【化4】

【0018】
この式(I)で表されるトリプレニルフェノール化合物は、1位の窒素原子が第二アミンあり、8位及び9位が共に(S)の絶対配置を有すると共に全体として(−)の旋光度を示す。このような光学活性及び絶対配置は、血栓溶解促進などの生理活性を有する活性型トリプレニルフェノール化合物と同一のものであるため、本化合物における1位の置換基を適宜変更することにより、多様なトリプレニルフェノール化合物を容易に得ることができる。
【0019】
以下、本発明のトリプレニルフェノール化合物の製造方法について説明する。
本発明の製造方法において、トリプレニルフェノール化合物を得るために使用される糸状菌としては、スタキボトリス属の糸状菌が選択される。特に好ましい生産菌は、スタキボトリス・ミクロスポラ(Stachybotrys microspora)などであり、より好ましくはスタキボトリス・ミクロスポラ(S. microspora)IFO30018株であるが、本発明は、この菌に限定されるものではない。
【0020】
本発明の製造方法では、上記糸状菌を、制限培地を用いた第1の培養工程と、培養中期以降の生産用培地を用いた第2の培養工程との2段階の培養工程によって培養する。
第1の培養工程では、アミン化合物の種類及び量の少なくとも一方が制限された制限培地が用いられる。ここでいう「種類及び量の少なくとも一方が制限された」とは、選択されたアミン化合物の種類に応じて制限培地への添加量が決定されることを意味する。アミン化合物の種類及び量の少なくとも一方を制限したこのような制限培地を用いることによって、培養中期以降の第2の培養工程で、効率よく且つ選択性よくトリプレニルフェノール化合物を生成することができる。
培養中期以降の第2の培養工程では、アミン化合物を含有している生産用培地が用いられる。ここで「培養中期」とは、第1の培養工程を確実に継続させるための培養開始からの所定期間、好ましくは培養開始後2日目以降、更に好ましくは4日目以降とすることができる。この期間が短すぎる、例えば培養開始直後に生産用培地による培養を開始すると、目的とするトリプレニルフェノール化合物を得るために必要な中間体化合物の量が不充分となり、効率よくトリプレニルフェノール化合物を生成することができない。
【0021】
本発明の製造方法では、第1の培養工程で使用される制限培地が0.5質量%以下のアミン化合物を含み、第2の培養工程で使用される生産用培地が有機アミン化合物を含むものとすることができる(以下、本明細書では「本発明の第一の製造方法」という)。
これにより、制限培地中における糸状菌の化合物生成能を損なうことなく、生産用培地に含まれる有機アミン化合物に対応した官能基を含む中間体化合物、例えば、下記一般式(I−B)で表される化合物を得ることができる。一般式(I−B)中、Xは前記と同様であり、式中#は生産用培地に含まれるアミン化合物に対応した所定の官能基を示す。
【0022】
【化5】

【0023】
本発明の第一の製造方法において、制限培地中のアミン化合物は、後述する有機及び無機のアミン化合物のいずれもが該当する。このアミン化合物は、制限培地での糸状菌成育のための窒素源、成育促進因子、あるいはトリプレニルフェノール化合物前駆体の生産促進因子として作用する。添加の形態としては、酵母エキス、ブイヨン、ペプトン、トリプトン、ソイビーンミール、ファーマメディア、コーンスティープリカー、魚肉エキス等の天然の混合物として、あるいは精製化合物として利用することができる。天然の混合物は多種のアミン化合物を含有するため、制限培地ではその量を制限する必要がある。この場合、制限培地の全容量に対して0.5質量%以下、菌の生育、生産量及び生産の選択性の観点から好ましくは、0.01〜0.5質量%、更に好ましくは0.1質量%〜0.3質量%とすることができる。0.5質量%を超える場合には、中間体化合物以外の化合物が同時に生成されて選択性に劣り、生産効率も下がる場合があり、好ましくない。一方、0.01質量%未満では、糸状菌の活性に劣る場合があり好ましくない。また、精製化合物をアミン化合物として添加する場合は、生産に用いる糸状菌の成育とトリプレニルフェノール化合物前駆体の生産が良好に起こる範囲の量と種類が用いられる。
【0024】
制限培地中で培養された糸状菌は、培養中期以降に、有機アミン化合物を含有する生産用培地による第2の培養工程での培養に提供される。
第2の培養工程で用いられる生産用培地は、有機アミン化合物を含有する以外は、制限培地と同一の組成で構成することができる。このため、第2の培養工程における培養は、第1の培養工程で使用した制限培地に、有機アミン化合物を添加することによって実施してもよく、改めて調製したアミン化合物含有培地をそのまま添加してもよい。
第2の培養工程での生産用培地に含有可能な有機アミン化合物は、目的とするトリプレニルフェノール化合物を得るために必要な量で培地中に存在していればよく、培地の全容量の5質量%以下、生産量の観点から好ましくは0.01質量%〜1質量%、更に好ましくは0.1質量%〜0.5質量%で用いられる。
【0025】
本発明の第一の製造方法における有機アミン化合物としては、合成品又は天然由来のアミン化合物を挙げることができる。天然由来のアミン化合物成分としては、例えば酵母エキス、ブイヨン、ペプトン、トリプトン、ソイビーンミール、ファーマメディア、コーンスティープリカー、魚肉エキス等の主としてタンパク質や天然アミノ酸を培地に添加するために従来使用されている成分を挙げることができ、生産量の観点から酵母エキス、ペプトンが好ましい。
また生成されるトリプレニルフェノール化合物の種類及び生産量から、生産用培地に添加される有機アミン化合物には、第一アミン化合物が含まれていることが好ましい。第一アミン化合物としては、天然アミノ酸、合成アミノ酸を含み、例えばα−アミノ酸として、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、シスチン、リジン、オルニチン、また、天然アミノ酸におけるカルボキシル基を水素、ヒドロキシル基叉はヒドロキシルメチル基に置き換えたもの、例えば、2−アミノエタノールなどのアミノアルコール等を挙げることができる。
【0026】
これらのうち、第2の培養工程での生産用培地に含有されるアミン化合物の種類は、目的とするトリプレニルフェノール化合物の種類に応じて適宜選択することができる。
例えば、血栓溶解促進作用を有する活性型トリプレニルフェノール化合物を得るには、D−リジン、D−フェニルアラニン、D−ロイシン、D−トリプトファン、D−オルニチンなどのアミノ酸を含有する生産用培地とすればよい。
【0027】
具体的には、SMTP−3DはD−セリンを、SMTP−4DはD−フェニルアラニンを、SMTP−5DはD−ロイシンを、SMTP−6DはD−トリプトファンを、SMTP−7DはD−オルニチンを、SMTP−8DはD−リジンを、SMTP−3はL−セリンを、SMTP−4はL−フェニルアラニンを、SMTP−5はL−ロイシンを、SMTP−6はL−トリプトファンを、SMTP−7はL−オルニチンを、SMTP−8はL−リジンを、SMTP−9LはL−シスチンを、SMTP−10LはL−イソロイシンを、SMTP−11LはL−バリンを、それぞれ含有する生産用培地を用いることによって、目的とするトリプレニルフェノール化合物を選択的に生産することができる(図1参照)。
第2の培養工程での生産用培地におけるアミノ酸の含有量は、生産培地の容量に対して0.03質量%〜0.3質量%であることが望ましい。
【0028】
また本製造方法における無機アミン化合物としては、無機塩類として含有される硝酸、無機第一アミン化合物等を挙げることができる。無機第一アミン化合物については後述する。
【0029】
制限培地及び生産用培地には、上記成分に加えて、微生物による化合物の生成を促進するためなどを目的として、上記微生物の培養に通常用いられている合成培地の添加成分を含む。本制限培地に添加可能な添加成分としては、例えばグルコース、シュークロース、デキストリン、動物油、植物油などの栄養源、ビタミン類、例えば塩素、硝酸、硫酸、リン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、及びその他のイオンを生成しうる無機塩類を挙げることができる。
【0030】
無機塩類のうち、特に金属イオンを生成しうる無機塩類、生成物の生産量の増大や生産効率の観点から、好ましく制限培地に添加することができる。このような金属イオンとしては、マグネシウムイオン、コバルトイオン、鉄イオン、カルシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン等を挙げることができる。
これらの金属イオンの添加量は、生成物の生産量や菌の生育の観点からそれぞれ培地の全容量に対して、マグネシウムイオンの場合には硫酸マグネシウム7水和物として0.001質量%〜0.5質量%(より好ましくは0.01質量%〜0.1質量%)、コバルトイオンの場合には塩化コバルト6水和物として0.00001質量%〜0.01質量%(より好ましくは0.0001質量%〜0.005質量%)、鉄イオンの場合には硫酸鉄(II)7水和物として0.0001質量%〜0.1質量%(より好ましくは0.0005質量%〜0.05質量%)、カルシウムイオンの場合には塩化カルシウム2水和物として0.00001質量%〜0.1質量%(より好ましくは0.0001質量%〜0.05質量%)、カリウムイオンの場合にはリン酸二カリウムあるいは硝酸カリウムとして0.002質量%〜2質量%(より好ましくは0.05質量%〜0.5質量%)、ナトウムイオンの場合にはリン酸二ナトウムあるいは硝酸ナトウムとして0.002質量%〜2質量%(より好ましくは0.05質量%〜0.5質量%)、とすることができる。
上記無機塩類及び金属イオンは、これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
制限培地による第1の培養工程は、効率よく目的とするトリプレニルフェノール化合物を得るために充分な量の中間体化合物が得られる培養中期まで継続する。トリプレニルフェノール化合物の効率的な製造の観点から、生産用培地による第2の培養工程は、好ましくは糸状菌の培養開始後2日以降、更に好ましくは培養開始後4日から実施される。
第2の培養工程は、生成されたトリプレニルフェノール化合物の量が最大のときに培養を停止することによって終了する。第2の培養工程の期間は、微生物の状態及び培養系の大きさによって異なるが、一般に1日〜5日、生産量の観点から好ましくは1〜3日間である。
【0032】
また、本発明の製造方法では、第1の培養工程で使用される制限培地が0.5質量%以下の有機アミン化合物を含み、第2の培養工程で使用される生産用培地が無機第一アミン化合物を含むものとすることができる(以下、本明細書では「本発明の第二の製造方法」という)。
これにより、制限培地中における糸状菌の化合物生成能を損なうことなく、生産用培地に含まれる無機第一アミン化合物に対応して第二アミンを含む下記式(I)で表され、旋光度(−)の化合物を得ることができる。式中Xは、−CHY−C(CH32Zであり、Y及びZは、それぞれ−H又は−OHであるか、一緒になって単結合を形成する。
【0033】
【化6】

【0034】
本発明の第二の製造方法において、制限培地は0.5質量%以下の有機アミン化合物を含む。ここでの有機アミン化合物は、第一の製造方法について前述したものと同様のものを挙げることができ、好ましくは天然由来のアミン化合物成分を挙げることができる。これにより、糸状菌の生産能を損なうことなく、中間体化合物を得ることができる。制限培地における有機アミン化合物の含有量は、制限培地の全容量に対して0.5質量%以下、菌の生育、生産量及び生産の選択性の観点から好ましくは、0.01〜0.5質量%、更に好ましくは0.1質量%〜0.3質量%とすることができる。0.5質量%を超える有機アミン化合物を含有すると、上記式(I)の化合物に対応した中間体化合物以外の化合物が同時に生成されて選択性に劣り、生産効率も下がる場合があり、好ましくない。
【0035】
また本製造方法の制限培地は、無機アミン化合物を含有してもよい。この無機アミン化合物は、無機塩類として含有される硝酸の他、他の無機アミンであってもよく、得られるトリプレニルフェノール化合物の構造の観点から無機第一アミン化合物が好ましく含まれる。制限培地に含有可能な無機アミン化合物の含有量は、目的とするトリプレニルフェノール化合物の種類及び量によって異なるが、菌の生育、生産量及び生産の選択性の観点から、制限培地の容量に対して1質量%以下であることが好ましく、生産性の観点から0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
本発明の第二の製造方法において、生産用培地は無機第一アミン化合物を含む。これにより、上記式(I)の化合物を効率よく得ることができる。
制限培地及び生産性培地に含有される無機第一アミン化合物としては、例えば、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩を挙げることができる。中でも、生成物の生産量の観点から、塩化アンモニウムが好ましい。
第2の培養工程での生産用培地に含有可能な無機アミン化合物は、目的とするトリプレニルフェノール化合物を得るために必要な量で培地中に存在していればよく、培地の全容量の5質量%以下、生産量の観点から好ましくは0.01質量%〜1質量%、更に好ましくは0.1質量%〜0.5質量%で用いられる。
【0037】
本発明の第二の製造方法での制限培地及び生産用培地については、本発明の第一の製造方法と同様に、糸状菌の生育及び生産される化合物の生産量の観点から、無機塩類を含有することが好ましい。含有可能な無機塩類及び金属イオンに関しては前記した内容をそのまま適用することができる。
【0038】
本発明の第一及び第二の製造方法における第1及び第2の培養工程は、通常、上記培地を用いて静置培養または振盪培養による。振盪培養を適用する場合には、真菌の培養で通常適用される速度で行えばよく、例えば高崎科学社製、TB−25S(振幅70mm)のロータリーシェイカーであれば、500ml容のフラスコ中100mlの培地量とした場合に30rpm〜240rpm、好ましくは160rpm〜200rpmとすることができる。
また第1及び第2の培養工程における培養温度は、種々の温度における真菌の生育条件に応じて適宜設定することができるが、一般に4〜50℃、好ましくは15〜37℃、より好ましくは20〜30℃、最も好ましくは室温(25℃)である。この範囲外では、効率よくトリプレニルフェノール化合物を生成することができない。またそれぞれ用いられる培地のpHは、一般に3〜9、好ましくは5〜6とすることができる。
【0039】
なお、第1及び第2の培養工程よりも前に、微生物による生成能を安定化させるために、予備培養工程を設けてもよい。予備培養工程で用いられる培地は、微生物を維持するために用いられる通常の生育培地であってもよい。
【0040】
得られたトリプレニルフェノール化合物は、培養物から回収・精製することによって得ることができる。回収・精製方法としては、培地中に放出されたトリプレニルフェノール化合物を回収・精製できる手段であればいずれであってもよく、液体クロマトグラフィー、溶媒抽出、結晶化等を挙げることができる。生成物の回収・精製は、回収効率の観点から2段階以上の多段階で行うことが好ましい。
これらの回収・精製方法においては、トリプレニルフェノール化合物が脂溶性であることを利用して、溶媒等を選択することが好ましい。
トリプレニルフェノール化合物を培養物から回収・精製する際には、予め培養物から菌体を除去することが好ましい。その際には、培養物にメタノールなどの溶媒を加えて菌体内のトリプレニルフェノール化合物を抽出し、その後の菌体の除去には、濾過等を用いればよい。
【0041】
次に本発明の第一のトリプレニルフェノール化合物、即ち前駆体トリプレニルフェノール化合物について説明する。
下記式(I)で表される前駆体トリプレニルフェノール化合物(式(I)中、Xは−CHY−C(CH32Zであり、Y及びZは、それぞれ−H又は−OHであるか、一緒になって単結合を形成する)は、前述したように、血栓溶解促進などの生理活性を有する活性型トリプレニルフェノール化合物と同一の光学活性及び絶対配置を有するため、化合物中の1位の置換基を他の置換基に適宜変更することにより、多様なトリプレニルフェノール化合物を容易に得ることができる。これは、1位が二級アミンとなっているので、1位の第二アミンを生理活性置換基で修飾することができるためである。これによって、血栓溶解促進などの生理活性を有する活性型トリプレニルフェノール化合物に誘導することができる。このとき、修飾に用いる生理活性置換基は、目的とする活性に応じて、既知の置換基から適宜選択することができる。
また、トリプレニルフェノール化合物は、抗癌作用や腎障害治療作用、また後述するように血栓溶解促進作用などをもち、また、それらの目的に適応した体内動態や吸収特性をもつので、このようなトリプレニルフェノール化合物の誘導体の合成にも、本発明の前駆体トリプレニルフェノール化合物を利用することができる。
【0042】
【化7】

【0043】
一般に生理活性物質では平面構造が同一であっても光学活性などによって性質が大きく異なることが知られている。上記トリプレニルフェノール化合物においても、8(R)、9(R)の絶対配置を有し(+)の旋光度を示すものは、8(S)、9(S)であって(−)の旋光度を示すものと異なる作用を示す。本発明のトリプレニルフェノ−ル化合物は、8(S)、9(S)であって(−)の旋光度を示し、生体において有用な生理活性を有する活性型トリプレニルフェノール化合物を効率よく得るために有用なものである。
ここで8位及び9位の絶対配置及び旋光度については、化合物の立体構造を確認するために当業界で通常用いられている周知の手段、例えば、C−NMR、H−NMR、質量分析、IR、X線結晶構造解析、比旋光度などを用いて、確認することができる。
生理活性の観点から特に好ましくは、Y及びZは、それぞれ一緒になって単結合を形成した下記式(I−A)で表され、旋光度(−)のトリプレニルフェノール化合物である。
【0044】
【化8】

【0045】
本発明の第一のトリプレニルフェノール化合物は、化学合成や微生物を用いた製造方法によって得ることができるが、本発明の第二の製造方法を用いることが、本化合物を効率よく得ることができるため特に好ましい。
【0046】
<第二のトリプレニルフェノール化合物>
本発明の第二のトリプレニルフェノール化合物は、下記一般式(II)で表される化合物である。
本第二のトリプレニルフェノール化合物は、トリプレニルフェノール骨格に加えて、後述する所定の置換基を有する芳香族基が1位の窒素原子に直接結合している単量体且つ低分子量の化合物であり、低濃度でも高いプラスミノーゲン活性化促進作用を示すことができる。
【0047】
【化9】

【0048】
式中R1は、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基及び第二アミノ基からなる群より選択された少なくとも1つを置換基として若しくは置換基の一部として有する芳香族基、又は第二アミノ基を含み且つ窒素を含んでいてもよい芳香族基を表す。即ち、本化合物は、トリプレニルフェノール骨格中の窒素原子に芳香族基が直接連結している。芳香族基の置換基が複数存在する場合には、これらは互いに同一であっても異なってもよい。このような置換基は、吸収性の観点から置換基全体として分子量200以下の芳香族基であることが好ましく、160以下であることが更に好ましく、140以下であることが特に好ましい。また、芳香族基の置換基の位置は、トリプレニルフェノール骨格の窒素原子に対してパラ位、メタ位、オルト位のいずれであってもよい。
【0049】
本化合物における芳香族基は、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基及び第二アミノ基からなる群より選択された少なくとも1つを置換基として若しくは置換基の一部として有し、或いは第二アミノ基を含み且つ窒素を含んでいてもよい芳香族基であればよく、他の置換基を追加の置換基として更に有していてもよい。このような追加の置換基としては、低級アルキル基、例えば炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができる。
【0050】
芳香族基としては、血栓溶解作用の観点から、下記一般式(II−1)で表されるものであることが好ましい。下記一般式(II−1)中R2及びR3はそれぞれ水素原子、カルボキシ基、水酸基若しくはスルホン酸基、又は互いに結合して第二アミノ基を含む環状構造基を表すが、同時に水素原子になることはない。
【0051】
【化10】

【0052】
このような芳香族基としては、下記から選択されたものであることが血栓溶解作用の観点から更に好ましい。
【0053】
【化11】

【0054】
このような芳香族基は、後述するようにアミノフェノール、アミノ安息香酸、アデニン、アデノシン、アミノジヒドロフタラジンジオン、アミノナフトールスルホン酸、スルファニル酸及びこれらの誘導体からなる群より選択された添加アミン化合物から誘導することができる。
【0055】
また式中Xは、−CHY−C(CH32Zであり、Y及びZは、それぞれ−H又は−OHであるか、一緒になって単結合を形成する。生理活性の観点から、Y及びZはそれぞれ一緒になって単結合を形成したものであることが好ましい。
【0056】
このような第二のトリプレニルフェノール化合物としては、以下のものを挙げることができる。
【0057】
【化12】

【0058】
【化13】

【0059】
【化14】

【0060】
【化15】

【0061】
【化16】

【0062】
【化17】

【0063】
上記本発明の第二のトリプレニルフェノール化合物は、化学合成によって製造することもできるが、糸状菌を用いて効率よく製造することができる。
即ち、本発明の第二のトリプレニルフェノール化合物を製造する製造方法は、後述する添加アミン化合物を含む培養液中で糸状菌を培養する培養工程と、培養工程後の培養物から、上記トリプレニルフェノール化合物を分離する分離工程とを含むものである。
本製造方法では、糸状菌が、培養液中のアミノフェノール、アミノ安息香酸、アデニン、アデノシン、アミノジヒドロフタラジンジオン、アミノナフトールスルホン酸、スルファニル酸又はそれら誘導体である添加アミン化合物を、トリプレニルフェノール骨格に直接連結する芳香族基として取り込む。これにより、効率よく第二のトリプレニルフェノール化合物を得ることができる。
【0064】
本発明のトリプレニルフェノール化合物を得るために使用される糸状菌としては、スタキボトリス属の糸状菌が選択される。特に好ましい生産菌は、スタキボトリス・ミクロスポラ(Stachybotrys microspora)などであり、より好ましくはスタキボトリス・ミクロスポラ(S. microspora)IFO30018株であるが、本発明は、この菌に限定されるものではない。
【0065】
本製造方法では、本製造方法にかかる添加アミン化合物は、糸状菌の培養工程中に存在していればよく、培養初期から存在させてもよいが、生産効率の観点から、培養中期に添加されることが好ましい。
培養中期に添加アミン化合物を添加する場合には、前記糸状菌の培養工程が、アミン化合物の含有量が0.5質量%以下の制限培地による第1の培養工程と、培養中期以降の添加アミン化合物を含有している生産用培地による第2の培養工程と、を含むことが好ましい。
第1の培養工程で使用する培地として、アミン化合物の含有量が0.5質量%に制限された制限培地を用いるので、第2の培養工程に移る培養中期以降に、従来よりも大量の中間体化合物を得ることができる。またこのように中間体化合物を大量に生成してから、第二のトリプレニルフェノール化合物を得るための添加アミン化合物を含む生産用培地による第2の培養工程を実行することにより、効率よく且つ選択性よく目的とする第二のトリプレニルフェノール化合物を得ることができる。なお、本明細書において「アミン化合物」とは、特に断らないかぎり、添加アミン化合物も包含する。
【0066】
第二のトリプレニルフェノール化合物を製造するための製造方法は、添加アミン化合物の種類以外は、前述の本発明のトリプレニルフェノール化合物の製造方法における第一の製造方法について記述したものと同様であり、前述した記載をそのまま適用することができる。
【0067】
添加アミン化合物としては、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基及び第二アミノ基の他に置換基を有していてもよく、低級アルキル基、例えば炭素数1〜5のアルキル基を有していてもよい。また添加アミン化合物は複数のアミノ基を有していてもよいが、製造効率の観点から、アミノ基を1つ有するものであることが好ましい。
このような添加可能なアミン化合物は、血栓溶解促進作用の観点から好ましくは、カルボキシ基と水酸基とを共に有するモノアミン化合物である。
【0068】
添加アミン化合物としては、アミノフェノール、アミノ安息香酸、アデニン、アデノシン、アミノジヒドロフタラジンジオン、アミノナフトールスルホン酸、スルファニル酸及びこれらの誘導体を挙げることができる。このような添加アミン化合物としては、例えば、アミノフェノール、メチルアミノフェノール、アミノ安息香酸、アミノサリチル酸、アミノヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシアントラニル酸、アデニン、アデノシン、アミノジヒドロフタラジンジオン、アミノナフトールスルホン酸、スルファニル酸を挙げることができ、例えば、p−アミノ安息香酸、3−アミノサリチル酸、o−アミノ安息香酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシアントラニル酸、5−ヒドロキシアントラニル酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−3−メチルサリチル酸、アデニン、アデノシン、5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、p−スルファニル酸及びそれらの誘導体等を挙げることができる。これらの添加アミン化合物は、1又は複数を組み合わせて使用することができる。
これらの内でも、血栓溶解促進作用の観点から、p−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、3−アミノサリチル酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシアントラニル酸、5−ヒドロキシアントラニル酸、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、が好ましい。
【0069】
第2の培養工程での生産用培地に含有可能な添加アミン化合物は、目的とするトリプレニルフェノール化合物を得るために必要な量で培地中に存在していればよく、培地の全容量の5質量%以下、生産量の観点から好ましくは0.01質量%〜1質量%、更に好ましくは0.1質量%〜0.5質量%で用いられる。
【0070】
<第三のトリプレニルフェノール化合物>
本発明の第三のトリプレニルフェノール化合物は、下記一般式(III)で表されるトリプレニルフェノール化合物である。
本第三のトリプレニルフェノール化合物は、トリプレニルフェノール骨格に、α−芳香族アミノ酸に由来する置換基が1位の窒素原子に直接結合している。このため第二のトリプレニルフェノール化合物は、この1位の窒素原子と芳香環との間に1個又は2個のメチル基のみが介在する。この結果、第二のトリプレニルフェノール化合物は単量体且つ低分子量の化合物であり、低濃度でも高いプラスミノーゲン活性化促進作用を示すことができる。
【0071】
【化18】

【0072】
式中R4は、下記一般式(III−1)で示される芳香族アミノ酸残基を表す。下記一般式(III−1)中R5はあってもなくてもよい水酸基を表し、nは0又は1の整数を表す。
【0073】
【化19】

【0074】
本化合物における芳香族アミノ酸残基は、吸収性の観点から置換基全体として分子量200以下であることが好ましく、160以下であることが更に好ましく、140以下であることが特に好ましい。本芳香族アミノ酸残基は、α位のカルボキシ基以外の他の置換基を追加の置換基として更に有していてもよい。このような追加の置換基としては、水酸基、カルボキシ基や、例えば炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができる。なお、芳香族アミノ酸残基における芳香環に連結した置換基の位置は、パラ位、メタ位、オルト位のいずれであってもよい。
【0075】
このような芳香族アミノ酸残基としては、血栓溶解作用の観点から、フェニルグリシン、チロシン又はこれらの誘導体であることが好ましい。なお、チロシン残基の場合、芳香環に連結した水酸基、カルボキシ基、低級アルキル基等の位置はパラ位、メタ位、オルト位のいずれであってもよい。このような芳香族アミノ酸残基としては、中でも、以下に挙げるものが更に好ましい。
【0076】
【化20】

【0077】
このような芳香族アミノ酸残基は、後述するようにフェニルグリシン、チロシン及びこれらの誘導体からなる群より選択された添加アミン化合物から誘導することができる。
【0078】
また式中Xは、−CHY−C(CH32Zであり、Y及びZは、それぞれ−H又は−OHであるか、一緒になって単結合を形成する。生理活性の観点から、Y及びZはそれぞれ一緒になって単結合を形成したものであることが好ましい。
【0079】
このような第三のトリプレニルフェノール化合物としては、以下のものを挙げることができる。
【0080】
【化21】

【0081】
【化22】

【0082】
【化23】

【0083】
上記本発明の第三のトリプレニルフェノール化合物は、化学合成によって製造することもできるが、糸状菌を用いて効率よく製造することができる。
即ち、本発明の第三のトリプレニルフェノール化合物を製造する製造方法は、後述する添加アミン化合物を含む培養液中で糸状菌を培養する培養工程と、培養工程後の培養物から、上記トリプレニルフェノール化合物を分離する分離工程とを含むものである。
本製造方法では、糸状菌が、培養液中の芳香族アミノ酸又はその誘導体である添加アミン化合物を、トリプレニルフェノール骨格中の窒素原子に直接連結するα−芳香族アミノ酸残基として取り込む。これにより、効率よく第三のトリプレニルフェノール化合物を得ることができる。
【0084】
本発明の第三のトリプレニルフェノール化合物を得るために使用される糸状菌としては、前記製造方法と同様にスタキボトリス属の糸状菌が選択される。特に好ましい生産菌は、スタキボトリス・ミクロスポラ(Stachybotrys microspora)などであり、より好ましくはスタキボトリス・ミクロスポラ(S. microspora)IFO30018株であるが、本発明は、この菌に限定されるものではない。
【0085】
第三のトリプレニルフェノール化合物の製造方法では、芳香族アミノ酸及びその誘導体である添加アミン化合物は、糸状菌の培養工程中に存在していればよく、培養初期から存在させてもよいが、生産効率の観点から、培養中期に添加されることが好ましい。
培養中期に添加アミン化合物を添加する場合には、前記糸状菌の培養工程が、アミン化合物の含有量が0.5質量%以下の制限培地による第1の培養工程と、培養中期以降の添加アミン化合物を含有している生産用培地による第2の培養工程と、を含むことが好ましい。
第1の培養工程で使用する培地として、アミン化合物の含有量が0.5質量%に制限された制限培地を用いるので、第2の培養工程に移る培養中期以降に、従来よりも大量の中間体化合物を得ることができる。またこのように中間体化合物を大量に生成してから、第三のトリプレニルフェノール化合物を得るための添加アミン化合物を含む生産用培地による第2の培養工程を実行することにより、効率よく且つ選択性よく目的とする第三のトリプレニルフェノール化合物を得ることができる。
なお、本明細書において「アミン化合物」とは、特に断らないかぎり、添加アミン化合物も包含する。
【0086】
第三のトリプレニルフェノール化合物を製造するための製造方法は、添加アミン化合物の種類以外は、前述の本発明のトリプレニルフェノール化合物の製造方法における第一の製造方法について記述したものと同様であり、前述した記載をそのまま適用することができる。
【0087】
添加アミン化合物としては、アミノ基、カルボキシ基の他に置換基を有していてもよく、水酸基や、例えば炭素数1〜5の低級アルキル基を有していてもよい。また添加アミン化合物中にアミノ基が複数あってもよいが、製造効率の観点から、アミノ基を1つ有するものであることが好ましい。
【0088】
添加アミン化合物としては、フェニルグリシン、ヒドロキシフェニルグリシン、チロシン及びこれらの誘導体を挙げることができる。このような添加アミン化合物としては、例えば、L−フェニルグリシン、D−フェニルグリシン、L−ヒドロキシフェニルグリシン、D−ヒドロキシフェニルグリシン、L−チロシン、D−チロシン、L−ヒドロキシメチルフェニルグリシン、D−ヒドロキシメチルフェニルグリシン、L−ヒドロキシエチルフェニルグリシン、D−ヒドロキシエチルフェニルグリシン、L−カルボキシフェニルグリシン、D−カルボキシフェニルグリシン、L−カルボキシメチルフェニルグリシン、D−カルボキシメチルフェニルグリシン、L−カルボキシエチルフェニルグリシン、D−カルボキシエチルフェニルグリシン、L−メチルチロシン、D−メチルチロシン、L−エチルチロシン、D−エチルチロシン、L−カルボキシフェニルアラニン、D−カルボキシフェニルアラニン、L−カルボキシメチルフェニルアラニン、D−カルボキシメチルフェニルアラニン、L−カルボキシエチルフェニルアラニン、D−カルボキシエチルフェニルアラニン等を挙げることができる。具体例としては、例えば、L−フェニルグリシン、D−フェニルグリシン、L−3−ヒドロキシフェニルグリシン、D−3−ヒドロキシフェニルグリシン、L−4−ヒドロキシフェニルグリシン、D−4−ヒドロキシフェニルグリシン、L−p−チロシン、D−p−チロシン、L−2−ヒドロキシフェニルグリシン、D−2−ヒドロキシフェニルグリシン、L(or D)−2(or 3 or 4)−ヒドロキシ−3(2 or 4 or 5 or 6)−メチル(or エチル)−フェニルグリシン、L(or D)−2(or 3 or 4)−カルボキシ−フェニルグリシン、L(or D)−2(or 3 or 4)−カルボキシ−3(2 or 3 or 4 or 5 or 6)−メチル(or エチル)−フェニルグリシン、L(or D)−o−チロシン、L(or D)−m−チロシン、L(or D)−2(or 3 or 4 or 5 or 6)−メチル(or エチル)−p(or o or m)−チロシン、L(or D)−2(or 3 or 4)−カルボキシフェニルアラニン、L(or D)−2(or 3 or 4)−カルボキシ−3(2 or 4 or 5 or 6)−メチル(or エチル)フェニルアラニン及びそれらの誘導体等を挙げることができる。これらの添加アミン化合物は、1又は複数を組み合わせて使用することができる。
これらの内でも、血栓溶解促進作用の観点から、L−フェニルグリシン、D−フェニルグリシン、L−3−ヒドロキシフェニルグリシン、D−3−ヒドロキシフェニルグリシン、L−p−チロシンが好ましい。
【0089】
第2の培養工程での生産用培地に含有可能な添加アミン化合物は、目的とするトリプレニルフェノール化合物を得るために必要な量で培地中に存在していればよく、培地の全容量の5質量%以下、生産量の観点から好ましくは0.01質量%〜1質量%、更に好ましくは0.1質量%〜0.5質量%で用いられる。
【0090】
<血栓溶解促進剤>
本発明の血栓溶解促進剤は、上記第二及び第三のトリプレニルフェノール化合物の少なくとも1つを有効成分として含むことを特徴とするものである。
上述した第二及び第三のトリプレニルフェノール化合物は、低分子量で効果的な血栓溶解促進作用を有する。
上記トリプレニルフェノール化合物は、本血栓溶解剤中では、遊離形態、薬学的に許容可能な塩又はエステルなど、医薬として通常適用可能な形態で本血栓溶解剤に含有されることができる。
また本血栓溶解剤は、各種投与形態に応じて適宜剤型を変更することができる。経口投与形態としては、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤又はシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与形態としては、注射剤、点滴剤、座剤、吸入剤、貼付剤等を挙げることができる。
これらの形態を維持するために、これらの用途に使用可能な周知の溶媒、賦形剤等の添加剤を含むことができる。
【0091】
本発明の血栓溶解剤は、年齢、体重、症状に応じて適切な投与量で投与することができ、例えば静脈内投与の場合には、成人1日あたり有効成分量として、1から25mg/kgの投与、経口投与の場合には、成人1日あたり有効成分量として、2から200mg/kgの投与が好ましく、投与期間は、年齢、症状に応じて任意に定めることができる。
【実施例】
【0092】
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、質量/容量基準である。
【0093】
[実施例1]
Stachybotrys microspora IFO30018株の胞子を種培養用培地100mlの入った500ml容三角フラスコに接種し、ロータリーシェイカーを用いて180rpm,25℃で4日間にわたり種培養を行った。種培養用培地は、グルコース(4%)、大豆ミール(0.5%),乾燥ブイヨン(0.3%)、粉末酵母エキス(0.3%)を水に溶かし、HClを用いてpH5.8に調製し、消泡剤CB442(0.01%)(日本油脂化学,日本)を加え、培養器に100mlずつ分注後、オートクレーブ(121℃,15min)を行ったものを使用した。
【0094】
この培養液5mlを、本培養培地100mlの入った500m1容三角フラスコに接種し、ロータリーシェイカーを用いて180rpm,25℃で4日間にわたり本培養を行った。本培養用培地(制限培地)は、スクロース(5%),粉末酵母エキス(0.1%),NaNO3(0.3%),K2HPO4(0.1%),MgSO4・7H2O(0.05%),KC1(0.05%)、CoCl2・6H2O(0.00025%),FeSO4・7H2O(0.0015%),CaCl2・2H2O(0.00065%)を水に溶かし、HClを用いてpH5.8に調製し、消泡剤CB442(0.01%)(日本油脂化学,日本)を加え培養器に100mlずつ分注後、オートクレーブ(121℃,15min)を行ったものを使用した。
接種した日を培養0日目とし、培養4日目(96時間後)に100mgの塩化アンモニウムを培地に添加(生産用培地)して培養を継続した。培養5日目にメタノールを200ml添加して、培養を終了した。その後、ロータリーシェイカーを用いて180rpm,25℃で約3時間にわたり振盪して抽出を行った。
【0095】
[実施例2]
実施例1の培養抽出液300mlから、ブフナーロートを用いて菌体を除去し、培養上清を得た。水流ポンプによる減圧下、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮を行った。残量が約50mlとなった時点で濃縮を止めた。等量の酢酸エチルで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、ろ過し、濃縮、乾固した。乾固物を、MeOH約3mlに溶解した後、ろ過した。
さらにこれを3000rpm,10minで遠心した。HPLCでの分取を行う前に、この上清をLichrolut(登録商標)RP−18(100mg)(MERCK KGaA、Darmstadt,Germany)にて前処理を行った。逆相HPLCはカラム;Inertsil PREP-ODS(直径30×250mm)(ジーエルサイエンス株式会社,東京,日本)、温度;40℃、流速;25ml/min、検出波長;260nm、展開溶媒;50mM酢酸アンモニウムを含む75%メタノールで行い、保持時間11.5分のピークを分取した(図2参照)。ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した後、等量の酢酸エチルで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水後ろ過し、濃縮した。これをメタノールに溶解してろ過し、濃縮、乾固して精製物33.23mgを得た。収率約30質量/質量%。
【0096】
[実施例3]
実施例2で得られた白固体の化合物(SMTP−0とする)の物理化学的性状を調べた。
なお、本実施例の化合物の対照物としては、下記スタキボトリン(Stachybotrin)B(旋光度は(+))を用いた。スタキボトリンBの構造は、J. Org. Chem., (1992), Vol.57, pp.6700-6703を参照したものである。(ただし、絶対立体構造が未決定であるため下記の構造は相対立体配置である。)
【0097】
【化24】

【0098】
NMRは、Alpha600(JEOL)を用い、1H 600MHz, 13C 150MHz、50℃で測定した。サンプルは約10mg/mlのDMSO−d6溶液とした。
MALDI−TOF−MSは、Voyager-DE STR(Applied Biosystem社)を用い、positive ion modeでα−シアノ−4−ヒドロキシケイヒ酸をマトリックスとして測定した。
UVは、320spectrophotometer(Hitachi)を用いた。試料はMeOHに溶解した(5μg/ml)。
FT−IRは、JIR−WINSPEC50(JEOL)を用いた。MeOHに溶解した試料750μgを岩塩に塗布して測定した。
旋光度は、DIP−360(JASCO)を用いた(27℃、Na)。試料はMeOHに溶解した(10mg/ml)。
結果を図2及び表1に示す。
【0099】
実施例2で得られたSMTP−0の物理化学的性状は、以下の通りであった。
外観:白固体
分子式:C2331NO4
MALDI−TOF−MS(M+H)+: 386.2599
理論値:386.2331(C2332NO4
UV λmax(ε)MeOH:
215(ε55,769)、251(ε10,615)、300(ε4,000)
IRスペクトル ν(cm-1):
3259.15、2917.81、1666.22、1612.22、1469.51、1359.59、1166.74、1081.88、850.46、773.32、723.18、674.97、566.98、
比旋光度[α]D27=−2.23°(c 1.0,MeOH)
【0100】
【表1】

【0101】
これらの結果から、実施例2で得られたSMTP−0は、スタキボトリンB(前述の非特許文献1参照)と同一の平面構造を有することが示唆された。しかしながら、SMTP−0は(−)の旋光度を有するのに対して、スタキボトリンBの旋光度は(+)であった。このように、下記に示される本実施例のSMTP−0は明らかにスタキボトリンBと異なる立体構造を有している。
【0102】
【化25】

【0103】
[実施例4]
実施例3で明らかになったSMTP−0とスタキボトリンBの立体構造の相違の詳細を明らかにするため、改変モッシャー法を用いた解析を行った。
SMTP−0(50mg、78μmol)をアセトニトリル(2mL)に溶解し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(50μl)とトリメチルシリルジアゾメタン(2.0M、ヘキサン溶液)(150μl)を加え室温で24時間撹拌した。反応液を濃縮することによってSMTP−0のメチルエーテル(SMTP−0−OMe)(44mg)を得た。
SMTP−0−OMe(20mg、50μmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(1mL)に溶解し、R−(−)−α−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセチルクロリド(25mg)、トリエチルアミン(30μl)、4−ジメチルアミノピリジン(2mg)を加えて室温で24時間撹拌した。反応液に水(10mL)を加え、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層は、1N HCl、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下濃縮した。残留物を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)により精製し、S−α−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセチル酢酸のSMTP−0−OMeエステル(S−MTPA−SMTP−0−OMe)(18mg)を得た。
【0104】
R−(−)−α−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセチルクロリドの代わりに、S−(+)−α−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセチルクロリドを用いた上記と同様の反応を行うことによって、SMTP−0−OMe(20mg、50μmol)からR−α−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセチル酢酸のSMTP−OMeエステル(R−MTPA−SMTP−0−OMe)(17mg)を得た。
【0105】
上記の方法により得られたR−MTPA−SMTP−0−OMe、S−MTPA−SMTP−0−OMeについて各種核磁気共鳴スペクトルを測定し、それぞれの化合物のプロトンの帰属を行った。結果を表2に示す。
S−MTPA−SMTP−0−OMeのケミカルシフトδSとR−MTPA−SMTP−0−OMeのケミカルシフトδRの差(Δδ=δS−δR)を計算した結果、7位のアキシアル位プロトンのΔδが負の値となり(Δδ=−0.12)、25位メチル基プロトンのΔδが正の値(Δδ=+0.03)となったことから、本発明のSMTP−0の絶対立体配置は、上記実施例3で示したような絶対立体配置(8位および9位の立体はともにS)と決定した。
【0106】
【表2】

【0107】
[実施例5]
実施例2で得られたSMTP−0(50μM、100μM、200μM)の線溶促進活性を、ウロキナーゼ触媒によるプラスミノーゲン活性化を促進する活性として以下のようにして評価した。
30mMのSMTP溶液(DMSO溶液)をTBS/T(50mM Tris−HCl,100mM NaCl及び0.01% Tween80,pH7.4)で希釈して1.5mM(in 5%DMSO・TBS/T)溶液を調製した。この溶液を5%DMSO in TBS/Tで希釈して上記の濃度のSMTP溶液を調製した。
【0108】
(1)プラスミノーゲン断片生成活性の測定
SMTP溶液(60μl)を240μlの1.25倍濃度反応液(VLK−pNA(Val−Leu−Lys−p−ニトロアニリド)を含まない)と混合して37℃で60分間反応させた。その後、75μlの50%トリクロロ酢酸(TCA)を加えて反応を停止して氷上で60分間放置した。TCA不溶性物質を遠心により沈殿させ、これをアセトンで2回洗浄した。得られた沈殿を乾燥後、11μlのSDSサンプルバッファー(0.125M Tris−Cl,pH6.8,4%SDS,20%グリセロール,0.02%ブロモフェノールブルー)を加えて溶解し、その10μlを用いてSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った(10%ゲル)。結果を図3に示す。
【0109】
(2)プラスミノーゲン活性化の測定
10μlのSMTP溶液(10μl)を40μlの1.25倍濃度反応液(0.0625μMのプラスミノーゲン,62.5U/mlのウロキナーゼ、0.125mMのVLK−pNA)と96穴マイクロプレート中で混合し、直ちにマイクロプレートリーダーで経時的にVLK−pNAの加水分解を405nmの吸収をモニタすることにより測定した。測定は37℃で、2分間隔で60分まで行った。結果を図4に示す。
【0110】
図3及び図4に示されるように、その結果、いずれの濃度においてもプラスミノーゲン活性化を促進する作用は示さなかった(図3参照)。また、血管新生阻害活性をもつプラスミノーゲン断片の生成に対しても作用を示さなかった(図4参照)。
このようなSMTP−0の二級アミンをD−トリプトファンなどのアミノ酸で修飾することによって、強いプラスミノーゲン活性化促進作用を示す活性型トリプレニルフェノール化合物を得ることができる。
【0111】
本実施例では、活性化トリプレニルフェノ−ル化合物を容易に誘導可能な中間体トリプレニルフェノール化合物を提供することができた。
これにより、安定して発酵法では生産できない態様な活性化トリプレニルフェノール化合物を得ることができる。
【0112】
[実施例6]
アミン化合物の添加時期について以下のように検討した。
本培養用培地(制限培地)は、スクロース(5%),NaNO3(0.3%),K2HPO4(0.1%),MgSO4・7H2O(0.05%),KC1(0.05%)を水に溶かし、HClを用いてpH5.8に調製し、消泡剤CB442(0.01%)(日本油脂化学,日本)を加え培養器に100mlずつ分注後、オートクレーブ(121℃,15min)を行ったものを使用し、実施例1と同様に培養を行った。
培養開始後、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間にそれぞれ、アミン化合物としてのL−シスチン(0.3%)を添加し、その後、24時間培養して、生産量を測定した。生産量の測定には、培養液に2倍量のメタノールを添加後1時間振とうしてSMTP化合物を抽出し、10,000rpmで遠心して上清を分離して、これを用いた。この上清の0.01mlを、シリカODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーに供し、50mM酢酸アンモニウムを含む80%メタノールで1ml/minの流速で展開し、260nmの吸光度をモニタした。標準サンプルの保持時間と一致するサンプルのピークの面積を標準サンプルのピーク面積と比較することにより定量を行った。
結果を表3に示す。
【0113】
【表3】

【0114】
表3に示されるように、アミン化合物を含有しない制限培地による培養開始直後ではなく、一定期間後に、アミノ酸を含有する生産用培地による培養を行うことによって、SMTP−9の生産量が増加した。特に、制限培地による培養開始後の培養初期ではなく、72時間以降、即ち、培養中期以降にアミノ酸を添加した場合に、SMTP−9の生産量が大幅に増加した。
また比較例として、培養初期(培養と同時〜4日目以内)に、アミン化合物の量と種類を制限しない培地にL−シスチンを添加することにより、SMTP−9を得た(特開2002−65288号及び特開2004−224737号参照)が、本実施例による製造方法と比較して、生産量は、最大で0.1mg/ml程度で、本方法の15%以下であった。また、この従来の方法では特に、アミノ酸又はアミノアルコールを培養開始後5日以降に添加すると、生成物の生産が激減したが、本実施例では5日後の添加でも高い生成量を維持することができた。
従って、本実施例の製造方法は、SMTP化合物を効率よく製造することができる。
【0115】
[実施例7]
次に、制限培地及び生産用培地に添加可能な無機塩類について以下のとおり検討した。
本培養用培地(制限培地)は、グルコース(2%),NaNO3(0.3%),K2HPO4(0.1%),MgSO4・7H2O(0.05%),KC1(0.05%),FeSO4・7H2O(0.001%)を水に溶かし、HClを用いてpH5.8に調製し、消泡剤CB442(0.01%)(日本油脂化学,日本)を加え培養器に100mlずつ分注後、オートクレーブ(121℃,15min)を行った培地(D培地)を基本培地として、表4に記載の成分および濃度を変更した。これらの培地を使用し、実施例1と同様に培養を行った。
培養開始後、72時間にアミン化合物としてのL−シスチン(0.1%)を添加し、その後、48時間培養して、生産量を実施例6に記載の方法で測定した。
結果を表4に示す。
【0116】
【表4】

【0117】
[実施例8]
さらに、金属塩、炭素源、硝酸ナトリウム、添加するアミン(以下の実施例ではL−シスチン)の濃度の検討を以下のように行った。
本培養用培地(制限培地)は、スクロース(5%),ペプトン(0.1%)、NaNO3(0.3%),K2HPO4(0.1%),MgSO4・7H2O(0.05%),KC1(0.05%)を水に溶かし、HClを用いてpH5.8に調製し、消泡剤CB442(0.01%)(日本油脂化学,日本)を加え培養器に100mlずつ分注後、オートクレーブ(121℃,15min)を行った培地(F培地)を基本培地として、表5に記載の成分および濃度を変更した。これらの培地を使用し、実施例1と同様に培養を行った。
培養開始後、72時間にアミン化合物としてのL−シスチン(表5に記載の量)を添加し、その後、24時間、48時間および72時間培養して、生産量を実施例6に記載の方法で測定した。
結果を表5に示す。
【0118】
【表5】

【0119】
これらの結果から、炭素源としてスクロース、窒素源として酵母エキスおよび硝酸ナトリウム、無機塩類としてリン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、塩化コバルトを含む培地を用いることにより、SMTP−9の生産量が、特開2004−224737号に記載された方法(2%のグルコース,0.5%のペプトン,0.3%の酵母エキス,0.3%のK2HPO4,0.01%のMgSO4・7H2Oと、L−シスチン100mgを含む培地100ml中で培養を開始する)と比較して10倍以上(0.08mg/mlから1mg/ml以上)に増加した。また、上記制限培地(F培地)で24時間、48時間、72時間、96時間、120時間培養後にそれぞれ、アミン化合物としてのL−シスチン(0.5%)を添加し、その後、48時間培養して、生産量を測定した場合、SMTP−9の生産量はそれぞれ、0.55、0.70、0.92、1.21、1.15mg/mlとなった。
【0120】
SMTP−9以外での化合物の生産を検討するため、オルニチン1mg/mlを用いて、SMTP−7を、実施例1で用いた制限培地及び生産用培地を用いた培養と(オルニチンの添加時期は培養4日目)、比較例として特開2002−65288号に記載の基本培地(グルコース(2%),ペプトン0.5%,酵母エキス0.3%,K2HPO4(0.3%),MgSO4・7H2O(0.01%)を水に溶かし、HCl又はNaOHを用いてpH5.5に調整したもの)とオルニチン1mg/mlを含む培地を用いた培養とで生産量を比較した。その結果、SMTP−7の生産量は、約5倍(0.3mg/mlから1.5mg/ml)に増加した。
これらの結果から、SMTP化合物を効率よく得るためには、制限培地による培養開始中期以降に、アミン化合物を含有する生産用培地による培養を行って生成する際に、所定の無機塩類を制限培地及び生産用培地に含有することが好ましいことがわかった。
【0121】
[実施例9]
化合物I−1の合成
Stachybotrys microspora IFO30018株(財団法人発酵研究所)の胞子を種培養用培地100mlの入った500ml容三角フラスコに接種し、ロータリーシェイカーを用いて180rpm,25℃で4日間にわたり種培養を行った。種培養用培地は、グルコース(4%)、大豆ミール(0.5%)、乾燥ブイヨン(0.3%)、粉末酵母エキス(0.3%)を水に溶かし、HClを用いてpH5.8に調製し、消泡剤CB442(0.01%)(0.1g/mlアセトン溶液を1ml/L添加)(日本油脂化学,日本)を加え、培養器に100mlずつ分注後、オートクレーブ(121℃,15min)を行ったものを使用した。
【0122】
この培養液5mlを、本培養培地100mlの入った500m1容三角フラスコに接種し、ロータリーシェイカーを用いて180rpm,25℃で5日間にわたり本培養を行った。
本培養用培地(制限培地)は、スクロース(5%),粉末酵母エキス(0.1%),NaNO3(0.3%)、K2HPO4(0.1%)、MgSO4・7H2O(0.05%)、KC1(0.05%)、CoCl2・6H2O(0.00025%)、FeSO4・7H2O(0.0015%)、CaCl2・2H2O(0.00065%)を水に溶かし、HClを用いてpH5.8に調製し、消泡剤CB442(0.01%)(0.1g/mlアセトン溶液を1ml/L添加)(日本油脂化学,日本)を加え培養器に100mlずつ分注後、オートクレーブ(121℃,15min)を行ったものを使用した。
接種した日を培養0日目とし、培養4日目(96時間後)に100mgのp−アミノフェノールを培地に添加して生産用培地とし、培養を継続した。それから約24時間後にメタノールを200ml添加して、培養を終了した。その後、ロータリーシェイカーを用いて180rpm,25℃で約3時間にわたり振盪して抽出を行った。
【0123】
得られた培養抽出液300mlから、ブフナーロートを用いて菌体を除去し、培養上清を得た。水流ポンプによる減圧下、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮を行った。残量が約100ml以下となった時点で濃縮を止め、リン酸でpHを2に調製して低温室に一晩放置した。生じた沈殿を遠心により分離し、これをアセトンに溶解した。このアセトン懸濁液を遠心して上清を分離して濃縮乾固して324.1mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に3000rpm,10minで遠心した。HPLCでの分取を行う前に、この上清をLichrolut(登録商標)RP−18(100mg)(MERCK KGaA、Darmstadt,Germany)にて前処理を行った。逆相HPLCはカラム;Inertsil PREP-ODS(直径30×250mm)(ジーエルサイエンス株式会社,東京,日本)、温度;40℃、流速;25ml/min、検出波長;260nm、展開溶媒;50mM酢酸アンモニウムを含む80%メタノールで行い、保持時間16〜17分のピークを分取した。ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した後、等量の酢酸エチルで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水後ろ過し、濃縮した。これをメタノールに溶解してろ過し、濃縮、乾固して化合物I−1の精製物99.33mgを得た。
【0124】
化合物I−1の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MSは、Voyager-DE STR(Applied Biosystem社)を用い、positive ion modeでα−シアノ−4−ヒドロキシケイヒ酸をマトリックスとして測定した。
UVは、メタノール中で320 spectrophotometer(Hitachi)を用いて測定した。
FT−IRは、JIR−WINSPEC50(JEOL)を用いた。アセトンに溶解した試料を岩塩に塗布して測定した。
【0125】
化合物I−1の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C2935NO5
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 478.4473
Calculated: 478.2593 for C2936NO5
UV λmax nm (ε) 214 (sh) (84,000), 260 (sh) (21,500), 291 (30,000)
IR νmax(NaCl) cm-1 3855, 3747, 3309, 2971, 2919, 2863, 1664, 1618, 1513, 1461, 1373, 1247, 1168, 1074, 943, 835, 765, 684
【0126】
[実施例10]
化合物I−2の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、p−アミノ安息香酸とした以外は、実施例9と同様に本培養を行った。
得られた培養抽出液300mlから、ブフナーロートを用いて菌体を除去し、培養上清を得た。水流ポンプによる減圧下、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮を行った。残量が約100ml以下となった時点で濃縮を止め、リン酸でpHを2に調製して低温室に一晩放置した。生じた沈殿を遠心により分離し、これをアセトンに溶解した。このアセトン懸濁液を遠心して上清を分離して濃縮乾固して603.3mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に3000rpm,10minで遠心した。HPLCでの分取を行う前に、この上清をLichrolut RP−18(100mg)にて前処理を行った。逆相HPLCはカラム;Inertsil PREP-ODS(直径30×250mm)、温度40℃、流速;25ml/min、検出波長:260nm、展開溶媒;50mM酢酸アンモニウムを含む70%メタノールで行い、保持時間21〜22分のピークを分取した。ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した後、等量の酢酸エチルで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水後ろ過し、濃縮した。これをメタノールに溶解してろ過し、濃縮、乾固して化合物I−2の精製物52.44mgを得た。
【0127】
化合物I−2の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、及びFT−IRは、実施例9と同様に測定した。NMRは、Alpha600(JEOL)を用い、1H 600MHz, 13C 150MHz、60℃で測定した。サンプルは約10mg/mlのDMSO−d6溶液とした。
化合物I−2の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3035NO6
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 506.2778
Calculated: 506.2543 for C30H36NO6
UV λmax nm (ε) 296 (29,300)
IR νmax(NaCl) cm-1 3853, 3739, 3392, 2969, 2915, 2858, 1691, 1610, 1513, 1463, 1429, 1365, 1303, 1267, 1187, 1076, 939, 848, 779, 676, 551
NMR
【0128】
【表6】

【0129】
[実施例11]
化合物I−3の合成
実施例10と同様に前培養を行った。
この培養液5mlを、本培養培地100mlの入った500m1容三角フラスコに接種し、ロータリーシェイカーを用いて180rpm,25℃で6日間にわたり本培養を行った。
本培養用培地(制限培地)は、スクロース(5%)、粉末酵母エキス(0.1%)、KNO3(0.7%)、K2HPO4(1.5%)、MgSO4・7H2O(0.05%)、KC1(0.05%)、CoCl2・6H2O(0.00025%)、FeSO4・7H2O(0.0015%)、CaCl2・2H2O(0.00065%)を水に溶かし、HClを用いてpH5.8に調製し、消泡剤CB442(0.01%)(0.1g/mlアセトン溶液を1ml/L添加)(日本油脂化学,日本)を加え培養器に100mlずつ分注後、オートクレーブ(121℃,15min)を行ったものを使用した。
接種した日を培養0日目とし、培養4日目(96時間後)に100mgのm−アミノ安息香酸を培地に添加して生産用培地とし、培養を継続した。それから約40時間後にメタノールを200ml添加して、培養を終了した。その後、ロータリーシェイカーを用いて180rpm,25℃で約2時間にわたり振盪して抽出を行った。
【0130】
実施例10と同様に粗精製を行い、223.1mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例10と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例10と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含むメタノールを用い、メタノール濃度を70%から90%へ、30分間かけて直線的に増加させた。保持時間17.5〜18.5分のピークを分取した。得られた画分を実施例10と同様に精製し、化合物I−3の精製物40.36mgを得た。
【0131】
化合物I−3の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、及びFT−IRは、実施例10と同様に測定した。NMRは、Alpha600(JEOL)を用い、1H 600MHz, 13C 150MHz、25℃で測定した。サンプルは約10mg/mlのアセトン−d6溶液とした。
【0132】
化合物I−3の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3035NO6
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 506.2573
Calculated: 506.2543 for C3036NO6
UV λmax nm (ε) 217 (46,786), 281 (17,583)
IR νmax(NaCl) cm-1 3352, 2970, 2920, 2858, 2634, 2540, 1693, 1616, 1593, 1462, 1367, 1290, 1244, 1155, 1072
NMR
【0133】
【表7】

【0134】
[実施例12]
化合物I−4の合成
実施例10と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、o−アミノ安息香酸とした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例10と同様に粗精製を行い、120mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例10と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例10と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含むメタノールを用い、メタノール濃度を70%から90%へ、40分間かけて直線的に増加させた。保持時間22.8〜23.8分のピークを分取した。得られた画分を実施例10と同様に精製し、化合物I−4の精製物14.58mgを得た。
【0135】
化合物I−4の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、及びFT−IRは、実施例9と同様に測定した。NMRは、40℃で実施例11と同様に測定した。
【0136】
化合物I−4の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3035NO6
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 506.2573
Calculated: 506.2543 for C3036NO6
UV λmax nm (ε) 215 (sh) (48,908), 260 (13,440), 301 (sh) (5,255)
IR νmax(NaCl) cm-1 3398, 2970, 2920, 2860, 2630, 2488, 1707, 1612, 1466, 1369, 1240, 1159, 1078, 1036
NMR
【0137】
【表8】

【0138】
[実施例13]
化合物I−5の合成
実施例10と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、4−アミノサリチル酸とした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例10と同様に粗精製を行い、408mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて150mg/mlの溶液とした後に、実施例10と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例10と同様に行った。検出波長は290nmとした。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含む70%メタノールを用い、保持時間12.7〜15分のピークを分取した。得られた画分を実施例10と同様に精製し、化合物I−5の精製物18.50mgを得た。
【0139】
化合物I−5の特性を以下のようにして確認した。
FAB−MSはJEOL SX−102Aを用いて、グリセロールをマトリックスとしてポジティブイオンモードで測定した。UV、FT−IR及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
【0140】
化合物I−5の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3035NO7
FAB-MS (m/z)
Found (M + H)+: 522
Calculated: 522.2492 for C3036NO7
UV λmax nm (ε) 212 (sh) (47,641), 288 (18,973), 306 (18,243)
IR νmax(NaCl) cm-1 3396, 2968, 2922, 2860, 2553, 1689, 1622, 1462, 1362, 1253, 1218, 1157, 1074
NMR
【0141】
【表9】

【0142】
[実施例14]
化合物I−6の合成
実施例10と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸とした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例10と同様に粗精製を行い、170mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例10と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例10と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含むメタノールを用い、メタノール濃度を70%から100%へ、40分間かけて直線的に増加させた。保持時間14.3〜15.3分のピークを分取した。得られた画分を実施例10と同様に精製し、化合物I−6の精製物9.54mgを得た。
【0143】
化合物I−6の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR、及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−6の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3035NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 522.2533
Calculated: 522.2492 for C3036NO7
UV λmax nm (ε) 206 (66,823), 263 (16,471), 297 (13,865)
IR νmax(NaCl) cm-1 3388, 2968, 2922, 2858, 2578, 1697, 1614, 1466, 1371, 1215, 1076
NMR
【0144】
【表10】

【0145】
[実施例15]
化合物I−7の合成
実施例10と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、3−ヒドロキシアントラニル酸とした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例10と同様に粗精製を行い、200mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例10と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例10と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含むメタノールを用い、メタノール濃度を70%から80%へ、10分間かけて直線的に増加させた後に80%を10分間維持した。保持時間12.4〜13.5分のピークを分取した。得られた画分を実施例10と同様に精製し、化合物I−7の精製物31.1mgを得た。
【0146】
化合物I−7の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR、及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−7の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3035NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 522.2327
Calculated: 522.2492 for C3036NO7
UV λmax nm (ε) 213 (57,753), 255 (11,155), 290 (7,714)
IR νmax(NaCl) cm-1 3356, 2968, 2920, 2858, 1697, 1616, 1470, 1294, 1159, 1076, 762
NMR
【0147】
【表11】

【0148】
[実施例16]
化合物I−8の合成
実施例10と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、3−アミノサリチル酸とした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例10と同様に粗精製を行い、280mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例10と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例10と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含む75%メタノールを用い、保持時間16.0〜18.6分のピークを分取した。得られた画分を実施例10と同様に精製し、化合物I−8の精製物23.29mgを得た。
【0149】
化合物I−8の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR、及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−8の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3035NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 522.2537
Calculated: 2492 for C3036NO7
UV λmax nm (ε) 4 (57,962), 256 (10,633), 304 (11,676)
IR νmax(NaCl) cm-1 221, 2850, 2918, 2976, 1678, 1616, 1464, 1240, 1157, 1074
NMR
【0150】
【表12】

【0151】
[実施例17]
化合物I−9の合成
実施例10と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、5−アミノサリチル酸とした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例10と同様に粗精製を行い、502mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて200mg/mlの溶液とした後に、実施例10と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例10と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含む70%メタノールを用い、保持時間22.0〜25.5分のピークを分取した。得られた画分を実施例10と同様に精製し、化合物I−9の精製物66.34mgを得た。
【0152】
化合物I−9の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR、及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−9の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3035NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 522.2505
Calculated: 522.2492 for C3036NO7
UV λmax nm (ε) 214 (50,665), 259 (sh) (9,591), 295 (14,490)
IR νmax(NaCl) cm-1 3394, 2970, 2920, 2858, 1676, 1618, 1489, 1464, 1370, 1203, 1161, 1076
NMR
【0153】
【表13】

【0154】
[実施例18]
化合物I−10の合成
実施例10と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸とした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例10と同様に粗精製を行い、420mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて150mg/mlの溶液とした後に、実施例10と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例10と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含むメタノールを用い、メタノール濃度を65%で25分間維持した後に、65%から100%へ、5分間かけて直線的に増加させた後に100%を10分間維持した。保持時間28.7〜32.5分のピークを分取した。得られた画分を実施例10と同様に精製し、化合物I−10の精製物78.94mgを得た。
【0155】
化合物I−10の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR、及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−10の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3035NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 522.2550
Calculated: 522.2492 for C3036NO7
UV λmax nm (ε) 215 (52,124), 252 (22,205), 308 (sh) (6,255)
IR νmax(NaCl) cm-1 3803, 3429, 3068, 2970, 2924, 2860, 2549, 2517, 1691, 1601, 1464, 1302, 1076, 1036
NMR
【0156】
【表14】

【0157】
[実施例19]
化合物I−11の合成
実施例10と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、5−ヒドロキシアントラニル酸とした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例10と同様に粗精製を行い、305mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例10と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、検出方法および展開条件以外は実施例10と同様に行った。検出はダイオードアレイ検出器を用い260〜350nmをモニタした。展開溶媒としては、0.1%(vol/vol)ギ酸を含む80%メタノールを用い、保持時間16.7〜17.7分のピークを分取した。得られた画分をロータリーエバポレーターで濃縮してメタノールを除去した後に凍結乾燥した。乾燥物にn−ヘキサンを加えて攪拌後遠心し、不溶物を回収した。この操作を3回行い、不溶物をメタノールで溶解後ろ過し、これを濃縮乾固して、化合物I−11の精製物43.37mgを得た。
【0158】
化合物I−11の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR、及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−11の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3035NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 522.2516
Calculated: 522.2492 for C3036NO7
UV λmax nm (ε) 214 (66,614), 260 (16,471), 297 (sh) (9,695)
IR νmax(NaCl) cm-1 3373, 3329, 2970, 2920, 2860, 1705, 1660, 1610, 1504, 1464, 1338, 1296, 1219, 1074, 1032
NMR
【0159】
【表15】

【0160】
[実施例20]
化合物I−16の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、アデニンとした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例9と同様に粗精製を行い、123mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例9と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例9と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含むメタノールを用い、メタノール濃度を70%から100%へ、30分間かけて直線的に増加させた。保持時間17.5〜18分のピークを分取した。得られた画分を実施例9と同様に精製し、化合物I−16の精製物1.66mgを得た。
【0161】
化合物I−16の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UVは、実施例9と同様に測定した。
化合物I−16の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C28H33N5O4
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M+H)+: 504.2665
Calculated: 504.2611 for C28H34N5O4
UV λ max nm (ε) 212 (43,984), 258 (9,260), 301 (3,422)
【0162】
[実施例21]
化合物I−17の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンとした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例9と同様に粗精製を行い、130mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例9と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例9と同様に行った。展開溶媒は、50mM酢酸アンモニウムを含む75%メタノールで行い、保持時間16.5〜17.5分のピークを分取した。分取画分を実施例9と同様に精製し、化合物I−17の精製物10.20mgを得た。
【0163】
化合物I−17の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、及びFT−IRは、実施例9と同様に測定した。
化合物I−17の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C31H35N3O6
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M+H)+: 546.2742
Calculated: 546.2604 for C31H36N3O6
UV λmax nm (ε) 208 (85,822), 260 (14,722), 306 (11,668)
IR ν max(NaCl) cm-1 3408, 3259, 2968, 2918, 2858, 1659, 1605, 1473, 1333, 1159,1076, 1041
【0164】
[実施例22]
化合物I−18の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸とした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例9と同様に粗精製を行い、199mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例9と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例9と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含むメタノールを用い、メタノール濃度を70%から100%へ、30分間かけて直線的に増加させた。保持時間14.5〜15.5分のピークを分取した。得られた画分を実施例9と同様に精製し、化合物I−18の精製物18.40mgを得た。
【0165】
化合物I−18の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、及びFT−IRは、実施例9と同様に測定した。
化合物I−18の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C33H37NO8S
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M+H)+: 608.2346
Calculated: 608.2318 for C33H38NO8S
UV λmax nm (ε) 217 (63,880), 234 (sh) (49,185), 260 (12,144), 285 (11,173), 296 (11,051), 326 (5,586), 338 (60,72)
IR νmax(NaCl) cm-1 3452, 3242, 2968, 2916, 2856, 2146, 1670, 1616, 1464, 1425, 1358, 1171, 1051
【0166】
[実施例23]
化合物I−19の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、p−スルファニル酸とした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例9と同様に粗精製を行い、316mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例9と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例9と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含むメタノールを用い、メタノール濃度を65%から100%まで35分間かけて直線的に増加させた。保持時間18〜18.5分のピークを分取した。得られた画分を実施例19と同様に精製し、化合物I−19の精製物12.33mgを得た。
【0167】
化合物I−19の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR及びNMRは、実施例12と同様に測定した。
化合物I−19の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C29H35NO7S
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M+H)+: 542.2233
Calculated: 542.2212 for C29H36NO7S
UV λ max nm (ε) 224 (sh) (25,112), 286 (19,484)
IR νmax(NaCl) cm-1 3188, 3057, 2972, 2918, 2856, 1697, 1606, 1460, 1367, 1174, 1132, 1080, 1036
NMR
【0168】
【表16】

【0169】
[実施例24]
化合物I−20の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、L−フェニルグリシンとした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例9と同様に粗精製を行い、270mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例9と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例9と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含むメタノールを用い、メタノール濃度を75%から90%へ、40分間かけて直線的に増加させた。保持時間15〜18.5分のピークを分取した。得られた画分を実施例9と同様に精製し、化合物I−20の精製物37.85mgを得た。
【0170】
化合物I−20の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−20の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C31H37NO6
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M+H)+: 520.2662
Calculated: 520.2699 for C31H38NO6
UV λ max nm (ε) 214 (46,214), 259 (11,112), 300 (3,012)
IR νmax(NaCl) cm-1 3423, 2968, 2920, 2864, 1726, 1660, 1620, 1464, 1350, 1205, 1169, 1074
NMR
【0171】
【表17】

【0172】
[実施例25]
化合物I−21の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、D−フェニルグリシンとした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例9と同様に粗精製を行い、150mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて75mg/mlの溶液とした後に、実施例9と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例9と同様に行った。展開溶媒としては、50mM酢酸アンモニウムを含むメタノールを用い、メタノール濃度を70%から100%へ、30分間かけて直線的に増加させた。保持時間19〜20.5分のピークを分取した。得られた画分を実施例9と同様に精製し、化合物I−21の精製物17.59mgを得た。
【0173】
化合物I−21の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR、及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−21の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C31H37NO6
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M+H)+: 520.2747
Calculated: 520.2699 for C31H38NO6
UV λ max nm (ε) 215 (44,864), 259 (11,008), 300 (3,012)
IR νmax(NaCl) cm-1 3354, 2968, 2922, 2862, 1714, 1664, 1620, 1466, 1356, 1207, 1167, 1074
NMR
【0174】
【表18】

【0175】
[実施例26]
化合物I−22の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、L−4−ヒドロキシフェニルグリシンとした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例9と同様に粗精製を行い、365mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて150mg/mlの溶液とした後に、実施例9と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例19と同様に行った。展開溶媒としては、0.1%(vol/vol)ギ酸とメタノールを用い、メタノール濃度を75%から90%へ、30分間かけて直線的に増加させた。保持時間13〜14分のピークを分取した。得られた画分を実施例19と同様に精製し、化合物I−22の精製物69.68mgを得た。
【0176】
化合物I−22の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR、及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−22の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C31H37NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M+H)+: 536.2656
Calculated: 536.2648 for C31H38NO7
UV λ max nm (ε) 216 (42,714), 262 (11,026), 300 (2,783)
IR νmax(NaCl) cm-1 3348, 2974, 2922, 2856, 1718, 1660, 1612, 1514, 1464, 1365, 1211, 1173, 1072
NMR
【0177】
【表19】

【0178】
[実施例27]
化合物I−23の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、D−4−ヒドロキシフェニルグリシンとした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例9と同様に粗精製を行い、510mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて200mg/mlの溶液とした後に、実施例9と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例19と同様に行った。展開溶媒としては、0.1%(vol/vol)ギ酸とメタノールを用い、メタノール濃度を75%から90%へ、30分間かけて直線的に増加させた。保持時間13.5〜15分のピークを分取した。得られた画分を実施例19と同様に精製し、化合物I−23の精製物150.39mgを得た。
【0179】
化合物I−23の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR、及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−23の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C31H37NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M+H)+: 536.2671
Calculated: 536.2648 for C31H38NO7
UV λ max nm (ε) 215 (52,563), 261 (13,274), 300 (5,353)
IR νmax(NaCl) cm-1 3325, 2970, 2922, 2858, 1711, 1662, 1612, 1512, 1464, 1365, 1217, 1173, 1074
NMR
【0180】
【表20】

【0181】
[実施例28]
化合物I−24の合成及び化合物I−25の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、50mgのDL−3−ヒドロキシフェニルグリシンとした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例9と同様に粗精製を行い、230mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて70mg/mlの溶液とした後に、実施例9と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例19と同様に行った。展開溶媒としては、0.1%(vol/vol)ギ酸とメタノールを用い、メタノール濃度を75%から90%へ、30分間かけて直線的に増加させた。保持時間16〜17分のピーク(化合物I−24)と、保持時間17.5〜19分のピーク(化合物I−25)を分取した。得られたそれぞれの画分を実施例19と同様に精製し、化合物I−24の精製物16.43mgと、化合物I−25の精製物22.98mgを得た。
【0182】
化合物I−24の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV及びFT−IRは、実施例9と同様に測定した。
化合物I−24の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C31H37NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M+H)+: 536.2716
Calculated: 536.2648 for C31H38NO7
UV λ max nm (ε) 215 (47,531), 261 (11,348), 299 (3,212)
IR νmax(NaCl) cm-1 3294, 2970, 2926, 2858, 1703, 1662, 1605, 1464, 1367, 1219, 1161, 1076
【0183】
化合物I−25の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV、FT−IR、及びNMRは、実施例11と同様に測定した。
化合物I−25の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C31H37NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M+H)+: 536.2723
Calculated: 536.2648 for C31H38NO7
UV λ max nm (ε) 215 (57,915), 261 (13,703), 300 (3,747)
IR νmax(NaCl) cm-1 3309, 2974, 2924, 2864, 1707, 1662, 1603, 1464, 1365, 1224, 1163, 1076
NMR
【0184】
【表21】

【0185】
[実施例29]
化合物I−26の合成
実施例9と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、L−チロシンとした以外は、実施例11と同様に本培養を行った。
実施例9と同様に粗精製を行い、310mgの乾固物を得た。これにMeOHを加えて100mg/mlの溶液とした後に、実施例9と同様に前処理を行った。逆相HPLCは、展開条件以外は実施例19と同様に行った。展開溶媒としては、0.1%ギ酸とメタノールを用い、メタノール濃度を70%から80%へ、30分間かけて直線的に増加させた。保持時間21〜23分のピークを分取した。得られた画分を実施例19と同様に精製し、化合物I−26の精製物53.94mgを得た。
【0186】
化合物I−26の特性を以下のようにして確認した。
MALDI−TOF−MS、UV及びFT−IRは、実施例9と同様に測定した。
NMRは、Alpha600(JEOL)を用い、1H 600MHz, 13C 150MHz、40℃で測定した。サンプルは約30mg/mlのDMSO−d6溶液とした。
化合物I−26の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C3239NO7
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 550.4594
Calculated: 550.2805 for C3240NO7
UV λmax nm (ε) 215 (39,050), 261 (8,690), 297 (sh) (2,530)
IR νmax(NaCl) cm-1 3379, 2922, 2854, 1707, 1664, 1514, 1464, 1363, 1221, 1167, 1074
NMR
【0187】
【表22】

【0188】
[実施例30]
上記のようにして得られた各種トリプレニルフェノール化合物について、ウロキナーゼ触媒によるプラスミノーゲン(plg)活性化を促進する活性として、血栓溶解活性を以下のように行って性能を評価した。
なお、比較例としてはオルニプラビン(SMTP−7)を用いた。各化合物は以下の通りである。
【0189】
【表23】

【0190】
【化26】

【0191】
【化27】

【0192】
【化28】

【0193】
【化29】

【0194】
【化30】

【0195】
【化31】

【0196】
プラスミンが合成発色基質VLK−pNA(Val−Leu−Lys−p−ニトロアニリド)のペプチド結合を切断し、p−ニトロアリニン(pNA)を生成することを利用し、pNAの405nmで吸収される黄色の発色を測定することにより、サンプルのプラスミノーゲン活性化促進活性を測る。測定器にはMTP−500形マイクロプレートリーダー(コロナ電気)を用い、96穴丸底マイクロプレートにて測定を行った。
測定条件はカイネティック測定37℃、デュアル波長405nm(activity)−595nm(background)で1分ごとに60回測定した。
精製したサンプルは、DMSO溶液あるいはナトリウム塩の水溶液とした。それをTBS/T(50mM Tris−HCl,100mM NaCl及び0.01% Tween80,pH7.4)で希釈して測定サンプルとした。サンプル15μlに、反応液(TBS/Tによりそれぞれ終濃度が0.1mM VLK−pNA、50nM Glu−plg、50U/ml u−PAになるように調製されたもの)を各35μl加え、50μl/ウェル、各濃度3連で測定を行った。
また、ブランクとしてu−PAを含まない反応液を用いて反応を行い、その値を上記の反応で得られた値から差し引いた。時間の二乗に対する吸光度をプロットし、その傾きを反応初速度とし、各種トリプレニルフェノール化合物を加えないものを対照として比較することで、各化合物の活性の度合いとした。
【0197】
「10倍促進活性濃度」は、SMTP化合物を含まない反応液(対照)を用いたときの値を1とした場合に10倍の促進活性となる濃度を表す。また、「最大促進活性」は、SMTP化合物によるプラスミノーゲン活性化の促進が最大となる濃度を表す。
結果を表24に示す。
【0198】
【表24】

【0199】
I−1〜I−11、I−16〜I−19のトリプレニルフェノール化合物は、アミノフェノール若しくはアミノ安息香酸、アデニン、アデノシン、アミノジヒドロフタラジンジオン、アミノナフトールスルホン酸、スルファニル酸又はそれら誘導体を添加することによって得られたものである。これらの化合物では、カルボキシ基又は水酸基等を置換基として有する芳香族基が、トリプレニルフェノール骨格に直接連結している。
またI−20〜I−26のトリプレニルフェノール化合物は、フェニルグリシン、チロシンを添加することによって得られたものである。これらの化合物では、芳香環とトリプレニルフェノール骨格との間にメチル基が1又は2個となっている。
【0200】
表24に示されるように、これらの化合物のいずれにも、プラスミノーゲン活性化促進活性が認められ、オルニプラビンと同様に血栓溶解剤として利用可能であり、また、これらの化合物はいずれも低分子量の化合物であるため、オルニプラビンよりも良好な吸収性が期待される。
また特に化合物I−2、I−5、I−8、I−20、I−24、I−26は、オルニプラビンと同等又はそれ以上の高いプラスミノーゲン活性化促進活性を示し、これらの化合物は、吸収性の観点からオルニプラビンよりも良好な血栓溶解剤として使用できることが示唆された。
これにより本実施例の化合物は、吸収が良く高い活性を有する効果的な血栓溶解剤として利用可能なことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(II)で表されるトリプレニルフェノール化合物。
【化1】


(式中Rは、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基及び第二アミノ基からなる群より選択された少なくとも1つを置換基として若しくは置換基の一部として有する芳香族基、又は第二アミノ基を含み且つ窒素を含んでいてもよい芳香族基を表す。Xは−CHY−C(CHZであり、Y及びZは、それぞれ−H又は−OHであるか、一緒になって単結合を形成する。)
【請求項2】
前記芳香族基が、下記一般式(II−1)で表されるものである請求項1記載のトリプレニルフェノール化合物。
【化2】


(式中R及びRはそれぞれ水素原子、カルボキシ基、水酸基若しくはスルホン酸基、又は互いに結合して第二アミノ基を含む環状構造基を表すが、同時に水素原子になることはない。)
【請求項3】
前記芳香族基が、下記から選択されたものである請求項1又は2記載のトリプレニルフェノール化合物。
【化3】



【請求項4】
下記一般式(III)で表されるトリプレニルフェノール化合物。
【化4】


(式中Rは、下記一般式(III−1)で示される芳香族アミノ酸残基を表し、Xは−CHY−C(CHZであり、Y及びZは、それぞれ−H又は−OHであるか、一緒になって単結合を形成する。)
【化5】


(式中Rはあってもなくてもよい水酸基を表し、nは0又は1の整数を表す。)
【請求項5】
前記式中Rが、フェニルグリシン、チロシン又はこれらの誘導体の残基である請求項4記載のトリプレニルフェノール化合物。
【請求項6】
前記式中Rが、下記から選択されたものである請求項4記載のトリプレニルフェノール化合物。
【化6】

【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のトリプレニルフェノール化合物を有効成分として含む血栓溶解促進剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−161545(P2009−161545A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44880(P2009−44880)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【分割の表示】特願2008−507449(P2008−507449)の分割
【原出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(801000072)農工大ティー・エル・オー株式会社 (83)
【Fターム(参考)】