説明

トレイタイプのカード用コネクタ

【課題】トレイからカードを取り出すことが容易なトレイタイプのカード用コネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、トレイ3、ハウジング4、カバー板5及び複数の片持ち状のコンタクト61・62を備える。トレイ3は、カード1が載置される第1凹部31を有する。ハウジング4は、プリント基板1pの端部に配置され、トレイ3が進退可能な第2凹部42を有する。カバー板5は、第2凹部42を覆っている。複数のコンタクト61・62は、カード1の接続端子1aとプリント基板1pとを電気的に接続する。トレイ3を終端まで引き出すと、カード1の前端縁13b側を支点にして、カード1が傾動する力をカード1の前端縁13bに付勢しているので、カード1の後端縁13aが第1凹部31の底面から離反するように、カード1を傾動できる。そして、トレイ3からカード1を容易に取り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイタイプのカード用コネクタに関する。特に、SIM(Subscriber Identity Module:加入者識別モジュール)カードなどのメモリカードと電気的に接続するトレイタイプのコネクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カード型の記憶装置であるメモリカードは、記憶媒体としてフラッシュメモリを採用している。メモリカードは非常に小型であり、データの読み書きにほとんど電力を消費しないため、例えば、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistance)に代表される携帯型情報機器用の記録メディアとして普及している。
【0003】
近年においては、携帯電話機には、情報管理用のメモリカードと記録用のメモリカードとが搭載されている。前者の情報管理用のメモリカードは、例えばSIMカードであり、後者の記録用のメモリカードは、例えばSD(Secure Digital)カードである。
【0004】
SIMカードには、携帯電話会社と契約した契約者情報が記録されている。そして、SIMカードを携帯電話機に差し込むと、利用者を識別できる。つまり、SIMカードを差し替えることにより、同じ契約者扱いで機種の異なる携帯電話機を利用できる。
【0005】
一般に、SIMカードの一方の面上には、複数の接続端子が露出している。そして、SIMカード用コネクタに備わるベローズ形のコンタクトがこれらの接続端子を付勢することにより、SIMカードとカード用コネクタとが電気的に接続している。
【0006】
前述したカード用コネクタとしては、トレイへのカードの出し入れを容易にすると共に、カードが入っていないトレイをコネクタへ収容した時に、イジェクト機構を動作させないトレイタイプのカード用コネクタが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1によるカード用コネクタは、凹部を形成したハウジング、ハウジングの凹部を覆うカバー、カードを収容して凹部を進退可能なトレイ、及びカードを排出するイジェクト機構を備えている。そして、イジェクト機構は、トレイにカードが収容されているときのみ、カードに追従して移動可能なスライダを有している。
【0008】
又、前述したカード用コネクタとしては、携帯電話機などの側面に設けた開閉蓋の内側に配設されたトレイタイプのカード用コネクタであって、カード用コネクタの小型化を図ることができると共に、トレイの出し入れの操作性に優れたトレイタイプのカード用コネクタが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2によるカード用コネクタは、携帯電話機などの側面に設けた開閉蓋の内側に配設され、カードを収容するトレイと、カードが収容されたトレイを開閉蓋が開いた状態でトレイをスライド可能に保持するコネクタ本体とを備え、トレイは、開閉蓋を開く動作に伴ってコネクタ本体から引き出されると共に、開閉蓋を閉じる動作に伴ってコネクタ本体に押し込まれるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−351426号公報
【特許文献2】特開2009−81022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1によるカード用コネクタは、イジェクト機構を備えているので、外形寸法を大きなものとしている。したがって、イジェクト機構付きのカード用コネクタは、近年の携帯電話機などのように、小型化及び薄型化が求められる携帯型情報機器に搭載するには適切でない。
【0012】
一方、特許文献2によるカード用コネクタは、構成が簡易であり、外形寸法を小さなものとしている。したがって、特許文献2によるカード用コネクタは、小型化及び薄型化が求められる携帯型情報機器に搭載するのに適している。
【0013】
しかし、特許文献2によるカード用コネクタは、トレイを引き出すための爪を開閉蓋の内側に設ける必要があるなど、携帯型情報機器の設計の自由度が制約される、という問題がある。
【0014】
更に、特許文献2によるカード用コネクタは、カードの端部の表面を指先で押さえつけて、トレイからカードを引き出す必要がある。このため、指で押え付ける領域が狭い場合や指先が乾燥している場合は、トレイからカードを取り出すことが困難である、という問題がある。
【0015】
簡易な構成のトレイタイプのカード用コネクタであって、トレイからカードを取り出すことが容易なカード用コネクタが実現できれば、携帯型情報機器の小型化が図れると共に、カードの取り出しが容易になって便利である。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成のトレイタイプのカード用コネクタであって、トレイからカードを取り出すことが容易なトレイタイプのカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、リバースタイプのカード用コネクタにおいて、コネクタ本体からトレイを引き出したときに、コンタクトの付勢力でカードが傾斜するように、カード用コネクタを構成することにより、トレイからカードを取り出すことが容易なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たなトレイタイプのカード用コネクタを発明するに至った。
【0018】
(1) カードが載置される略方形の第1凹部を有する平板状のトレイと、プリント基板の端部に配置され、前記トレイが進退可能な第2凹部を有する平板状のハウジングと、このハウジングの第2凹部を覆うカバー板と、前記ハウジングに配列され、前記カードの一方の面に設けた接続端子と前記プリント基板とを電気的に接続する複数の片持ち状のコンタクトと、を備え、前記トレイの第1凹部は、前記トレイが前記ハウジングに進出したときに前記カードの移動を阻止する後縁と、前記トレイが前記ハウジングから後退したときに前記カードの移動を阻止する前縁と、を有し、前記コンタクトは、前記トレイが前記ハウジングから所定の位置まで引き出されたときに、前記カードの後端縁が前記第1凹部の底面から離反するように、前記カードの前端縁側を支点にして前記カードが傾動する力を前記カードの前端縁に付勢する弾性斜片を有するトレイタイプのカード用コネクタ。
【0019】
(1)の発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、平板状のトレイ、平板状のハウジング、カバー板、及び複数の片持ち状のコンタクトを備えている。トレイは、カードが載置される略方形の第1凹部を有している。ハウジングは、プリント基板の端部に配置され、トレイが進退可能な第2凹部を有している。カバー板は、ハウジングの第2凹部を覆っている。コンタクトは、ハウジングに配列され、カードの一方の面に設けた接続端子とプリント基板とを電気的に接続している。
【0020】
トレイの第1凹部は、後縁と前縁を有している。後縁は、トレイがハウジングに進出したときに、カードの移動を阻止している。前縁は、ハウジングから後退したときに、カードの移動を阻止している。
【0021】
コンタクトは、弾性斜片を有している。この弾性斜片は、トレイがハウジングから所定の位置まで引き出されたときに、カードの後端縁が第1凹部の底面から離反するように、カードの前端縁側を支点にしてカードが傾動する力をカードの前端縁に付勢している。
【0022】
トレイは、厚さ方向に曲げ変形(たわみ)が容易な弾性部材からなってもよく、絶縁性を有する合成樹脂を成形して、所望の形状のトレイを得てもよく、導電性を有する剛体の金属板を加工して、所望の形状のトレイを得てもよい。
【0023】
ハウジングは、絶縁性を有している。絶縁性のハウジングとは、非導電性の材料からなるハウジングのことであってよく、合成樹脂を成形して、所望の形状の絶縁性のハウジングを得ることができる。
【0024】
ハウジングには、トレイの両側面を案内する一対の対向する側壁を設けることが好ましく、これらの側壁で囲まれた空間をトレイが進退可能な第2凹部とすることができる。トレイの前部に当接して、トレイの進出を停止させる停止壁を第2凹部に設けてもよく、この停止壁をカバー板に設けてもよい。第2凹部にトレイが進退するとは、トレイにカードを載置して、このトレイをカードと共にハウジングに進出、又はハウジングから後退できることを意味している。
【0025】
プリント基板は、硬質のリジッド基板を含み、片面のみにパターンがある片面基板を含むことができ、両面にパターンがある両面基板を含むことができ、絶縁体とパターンを積み重ねた多層基板を含むことができる。
【0026】
ハウジングがプリント基板の端部に配置されるとは、プリント基板に対して、このカード用コネクタとカードの結合方向が水平になるように取り付ける、水平取付形コネクタであることを意味している。水平取付形コネクタは、サイドコネクタとも呼ばれ、プリント基板への実装高さを低くできることから、薄型化が求められる携帯型情報機器に搭載するのに適している。
【0027】
カバー板は、導電性の金属板からなることが好ましく、展開された金属を成形して所望の形状の導電性のカバー板を得ることができる。カバー板は、カードを包囲して不要な電磁波か防護するシールド板として機能でき、第2凹部を覆って、カード用コネクタの外殻を構成する導電性のシェルとして機能することもできる。
【0028】
カードの一方の面とは、接続端子となる区画されたパターンが露出している面を示し、コンタクトに付勢されたカード及びトレイが板厚方向の移動をカバー板に規制されて、コンタクトに所定の接触圧を得させることができる。
【0029】
コンタクトは導電性を有しており、導電性の金属板を打ち抜き加工又は折り曲げ加工して、所望の形状の導電性のコンタクトを得ることができる。コンタクトは加工の容易性や、ばね特性、導電性などを考慮すれば、例えば、銅合金が好ましく用いられるが、銅合金に限定される訳ではない。
【0030】
コンタクトは、ベローズ形コンタクト、又はカンチレバーコンタクトと呼ばれる、片持ち状の板ばねからなっている。コンタクトは、ハウジングに固定される固定片を有し、この固定片は、ハウジングに圧入される形態を含み、この固定片は、ハウジングにモールドされる一体成形の形態を含むことができる。固定片には、プリント基板にハンダ接合されるリード部を形成することが好ましい。
【0031】
弾性斜片は、固定片から上り傾斜するように延びる弾性片となっている。又、弾性斜片は、カードの接続端子に接触する接点を頂き部に設けている。トレイをハウジングに進出させると、カードに押されて弾性斜片が傾倒し、弾性斜片の反力(弾性復帰力)で接点が所定の接触圧をカードの接続端子に付与することができる。
【0032】
(1)の発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、トレイ、ハウジング、カバー板、及び複数のコンタクトを備え、構成が簡易である。又、(1)の発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、小型化及び薄型化が求められる携帯型情報機器に搭載するのに適している。
【0033】
(1)の発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、コンタクトが弾性斜片を有し、この弾性斜片は、トレイがハウジングから所定の位置まで引き出されたときに、カードの後端縁が第1凹部の底面から離反するように、カードの前端縁側を支点にしてカードが傾動する力をカードの前端縁に付勢している。したがって、トレイからカードを取り出すことが容易である。
【0034】
(2) 前記カードは、誤装着を防止するための切り欠き斜辺を後端縁側の一方の隅部に有し、前記トレイは、前記接続端子を設ける前記カードの一方の面が当該第1凹部の底面と反対側に配置されるように、前記切り欠き斜辺に係合して前記カードの装着の向きを規定する斜辺壁を前記第1凹部の後縁の隅部に有する(1)記載のトレイタイプのカード用コネクタ。
【0035】
(2)の発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、接続端子を設けるカードの一方の面がトレイの第1凹部の底面と反対側に配置される、いわゆる、リバースタイプのカード用コネクタに適している。
【発明の効果】
【0036】
本発明によるトレイタイプのカード用コネクタは、構成が簡易であり、トレイを引き出すと、カードの後端縁が第1凹部の底面から離反するように、カードの前端縁側を支点にしてカードが傾動するので、カードの取り出しが容易になって便利である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、リバースタイプのカード用コネクタを示している。
【図2】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタに備わるリバースタイプ用のトレイの外観を示す斜視図である。
【図3】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、リバースタイプ用のトレイが引き出された状態図である。
【図4】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの本体の構成を示す斜視分解組立図であり、トレイの図示を省略している。
【図5】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの本体の構成を示す図であり、図5(A)は、本体の平面図、図5(B)は、本体の正面図、図5(C)は、本体の右側面図、図5(D)は、本体の下面図である。
【図6】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの縦断面図であり、図6(A)は、リバースタイプ用のトレイが本体に挿入された状態図、図6(B)は、リバースタイプ用のトレイが本体から引き出されて、カードが傾動した状態図である。
【図7】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの斜視図であり、リバースタイプ用のトレイが本体から引き出された状態図である。
【図8】前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの斜視図であり、カードが傾動した状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0039】
[トレイタイプのカード用コネクタの構成]
(カード用コネクタの全体構成)
最初に、本発明の一実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、リバースタイプのカード用コネクタを示している。
【0040】
図2は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタに備わるリバースタイプ用のトレイの外観を示す斜視図である。図3は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、リバースタイプ用のトレイが引き出された状態図である。
【0041】
又、図4は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの本体の構成を示す斜視分解組立図であり、トレイの図示を省略している。図5は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの本体の構成を示す図であり、図5(A)は、本体の平面図、図5(B)は、本体の正面図、図5(C)は、本体の右側面図、図5(D)は、本体の下面図である。
【0042】
図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタ(以下、コネクタと略称する)10は、平板状のリバースタイプ用のトレイ3、平板状のハウジング4、及びカバー板5を備えている。
【0043】
図1又は図4を参照すると、コネクタ10は、ハウジング4の前列に配置された四つの片持ち状のコンタクト61、及びハウジング4の後列に配置された三つの片持ち状のコンタクト62を備えている。これらのコンタクト61・62は、カード1の一方の面11に設けた接続端子1aとプリント基板1pとを電気的に接続している。
【0044】
図1から図4を参照すると、トレイ3は、カード1が載置される略方形の第1凹部31を有している。ハウジング4は、プリント基板1pの端部に配置されている。又、ハウジング4は、トレイ3が進退可能な第2凹部42を有している。カバー板5は、ハウジング4の第2凹部42を覆っている。
【0045】
図1から図3を参照すると、トレイ3の第1凹部31は、部分的に形成された後縁31aと、離間した一対の前縁31b・31bを有している。後縁31aは、トレイ3がハウジング4の内部に進出したときに、カード1の移動を阻止している。一対の前縁31b・31bは、ハウジング4から後退したときに、カード1の移動を阻止している。
【0046】
図1から図3を参照すると、カード1は、誤装着を防止するための切り欠き斜辺1bを後端縁13a側の一方の隅部に有している。一方、トレイ3は、斜辺壁3bを第1凹部31の後縁31aの隅部に有している。斜辺壁3bは、切り欠き斜辺1bに係合して、カード1の装着の向きを規定できる。
【0047】
図1から図3を参照すると、図示されたコネクタ10は、接続端子1aを設けるカード1の一方の面11がトレイ3の第1凹部31の底面と反対側に配置される、いわゆる、リバースタイプのカード用コネクタとなっている。
【0048】
図1から図3を参照すると、トレイ3は、第1凹部31に載置されたカード1を指で持ち上げるための切り欠き部32を後縁31a側に形成している。又、トレイ3は、ハウジング4から引き出したときに、カード1の前端縁13bが傾倒するための逃げ部33を前縁31b側に形成している。更に、トレイ3の両側面には、ハウジング4の内部に進出させたときに、ハウジング4に当接して、トレイ3の押し込み深さを規定する、一対の段差34・34を形成している。
【0049】
(カード用コネクタの本体の構成)
次に、実施形態によるコネクタ10の本体10Bの構成を説明する。図4又は図5を参照すると、本体10Bは、ハウジング4、カバー板5、及び複数のコンタクト61・62で構成されている。
【0050】
図1を参照すると、実施形態による本体10Bは、プリント基板1pの他方の面12pに実装している。本体10Bは、プリント基板1pの一方の面11pに実装することも可能である。実施形態による本体10Bは、リバースタイプのカード用コネクタを示しているが、プリント基板1pへの実装の向きを変えることによって、ノーマルタイプのカード用コネクタとすることもできる。
【0051】
図2又は図4を参照すると、ハウジング4には、トレイ3の両側面31c・31cを案内する一対の対向する側壁41・41を設けているそして、これらの側壁41・41で囲まれた空間をトレイ3が進退可能な第2凹部42とした。そして、カバー板5で囲われた開口(スロット)からカード1を載置したトレイ3を挿入できる(図1参照)。
【0052】
図4又は図5を参照すると、カバー板5は、第2凹部42と対向する面積の大きい主面板50を有している。又、カバー板5は、主面板50の両翼を略直角に折り曲げた一対の対向する折り曲げ片51・51を有している。
【0053】
図4又は図5を参照すると、一対の折り曲げ片51・51には、一組の係止孔51a・51aを開口している。一方、ハウジング4には、一組の係合突起41a・41aを設けている。そして、係合突起41aに係止孔51aを係合して、カバー板5をハウジング4に係止している。
【0054】
図4又は図5を参照すると、カバー板5は、対向する一対の片持ち状の板ばね片51b・51bを有している。これらの板ばね片51b・51bは、トレイ3の両側面31c・31cを挟持している(図2参照)。
【0055】
図2又は図4を参照すると、トレイ3の両側面31c・31cの前縁31b側には、一対の窪み31d・31dを形成している。トレイ3を本体10Bから引き出して、一対の板ばね片51b・51bの屈曲部が一対の窪み31d・31dに陥没すると、トレイ3のそれ以上の引き出しを困難としている。
【0056】
図4又は図5を参照すると、コンタクト61は、固定片6a、弾性変形が可能な弾性斜片6b、及び延在片6cを有している。同様に、コンタクト62は、固定片6a、弾性変形が可能な弾性斜片6b、及び延在片6cを有している。又、コンタクト61の弾性斜片6b及び延在片6cは、固定片6aから二股に分岐している。同様に、コンタクト62の弾性斜片6b及び延在片6cは、固定片6aから二股に分岐している。
【0057】
図4又は図5を参照すると、コンタクト61の固定片6aは、ハウジング4に固定されている。コンタクト61の固定片6aは、その一部がハウジング4の前方に突出して、プリント基板1pにハンダ接合されるリード部61fを形成している。
【0058】
図4又は図5を参照すると、コンタクト62の固定片6aは、ハウジング4に固定されている。コンタクト62の固定片6aは、その一部がハウジング4の後方に突出して、プリント基板1pにハンダ接合されるリード部62rを形成している。又、コンタクト62の固定片6aは、その一部がハウジング4の前方に突出して、プリント基板1pにハンダ接合されるリード部62fを形成している。そして、リード部61fとリード部62fは、交互に一列に配置されている。
【0059】
図4又は図5を参照すると、コンタクト61とコンタクト62とは、固定片6a、弾性斜片6b、及び延在片6cで構成される本体部が同じであるので、以下、コンタクト62を代表して説明する。
【0060】
図4を参照すると、弾性斜片6bは、固定片6aから上り傾斜するように延びる弾性片となっている。又、弾性斜片6bは、カード1の接続端子1aに接触する接点を延在片6cの頂き部に設けている。トレイ3をハウジング4に進出させると、カード1に押されて弾性斜片6bが傾倒し、弾性斜片6bの反力(弾性復帰力)で接点が所定の接触圧をカード1の接続端子1aに付与することができる。
【0061】
[トレイタイプのカード用コネクタの作用]
次に、実施形態によるコネクタ10の動作を説明しながら、コネクタ10の作用及び効果を説明する。
【0062】
図6は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの縦断面図であり、図6(A)は、リバースタイプ用のトレイが本体に挿入された状態図、図6(B)は、リバースタイプ用のトレイが本体から引き出されて、カードが傾動した状態図である。
【0063】
又、図7は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの斜視図であり、リバースタイプ用のトレイが本体から引き出された状態図である。図8は、前記実施形態によるトレイタイプのカード用コネクタの斜視図であり、カードが傾動した状態図である。
【0064】
図6(A)を参照すると、トレイ3が本体10Bに挿入され、複数のコンタクト61・62は、カード1の一方の面11に設けた接続端子1aとプリント基板1pとを電気的に接続している。
【0065】
図6(A)の状態から、図7に示されるように、トレイ3を本体10Bから終端(所定の位置)まで引き出すと、複数のコンタクト61・62とカード1の接続端子1aとの接続が解除されている。
【0066】
図6(B)又は図8に示された状態では、後列のコンタクト62の弾性斜片6bは、カード1の他方の面12の前端縁13b側を支点にして、カード1が傾動する力をカード1の一方の面11の前端縁13bに付勢している。したがって、カード1の後端縁13aが第1凹部31の底面から離反するように、カード1を傾動できる。そして、トレイ3からカード1を容易に取り出すことができる。
【0067】
図6(A)を参照して、コンタクト62の頂き部(接点)とプリント基板1pの端縁との距離Lは、例えば、5mm程度に短くすることが好ましい。又、図6(B)を参照して、トレイ3を本体10Bから終端まで引き出した状態では、カード1の前端縁13bがコンタクト62の頂き部(接点)を僅かに超えるように、カード1とコンタクト62の位置関係を設定しておくことが好ましい。これにより、カード1を確実に傾動できる。
【0068】
以上のように、実施形態によるコネクタ10は、トレイ3、ハウジング4、カバー板5、及び複数のコンタクト61・62を備え、構成が簡易である。そして、実施形態によるコネクタ10は、小型化及び薄型化が求められる携帯型情報機器に搭載するのに適している。
【0069】
又、実施形態によるコネクタ10は、構成が簡易であり、トレイ3を引き出すと、カード1の後端縁13aがトレイ3の底面から離反するように、傾動するので、カードの取り出しが容易になって便利である。
【符号の説明】
【0070】
1 カード
1a 接続端子
1p プリント基板
3 トレイ
4 ハウジング
5 カバー板
6b 弾性斜片
10 コネクタ(トレイタイプのカード用コネクタ)
13a 後端縁(カード1の後端縁)
13b 前端縁(カード1の前端縁)
31 第1凹部
31a 後縁(トレイ3の後縁)
31b 前縁(トレイ3の前縁)
42 第2凹部
61・62 コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが載置される略方形の第1凹部を有する平板状のトレイと、
プリント基板の端部に配置され、前記トレイが進退可能な第2凹部を有する平板状のハウジングと、
このハウジングの第2凹部を覆うカバー板と、
前記ハウジングに配列され、前記カードの一方の面に設けた接続端子と前記プリント基板とを電気的に接続する複数の片持ち状のコンタクトと、を備え、
前記トレイの第1凹部は、前記トレイが前記ハウジングに進出したときに前記カードの移動を阻止する後縁と、前記トレイが前記ハウジングから後退したときに前記カードの移動を阻止する前縁と、を有し、
前記コンタクトは、前記トレイが前記ハウジングから所定の位置まで引き出されたときに、前記カードの後端縁が前記第1凹部の底面から離反するように、前記カードの前端縁側を支点にして前記カードが傾動する力を前記カードの前端縁に付勢する弾性斜片を有するトレイタイプのカード用コネクタ。
【請求項2】
前記カードは、誤装着を防止するための切り欠き斜辺を後端縁側の一方の隅部に有し、
前記トレイは、前記接続端子を設ける前記カードの一方の面が当該第1凹部の底面と反対側に配置されるように、前記切り欠き斜辺に係合して前記カードの装着の向きを規定する斜辺壁を前記第1凹部の後縁の隅部に有する請求項1記載のトレイタイプのカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−233455(P2011−233455A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104902(P2010−104902)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】