説明

トロンビンペプチド誘導体ダイマー

配列番号:2のアミノ酸配列:Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val、または少なくとも6個のアミノ酸を有する該ポリペプチドのC−末端切断フラグメントを有する2つのポリペプチドを含むトロンビンペプチド誘導体ダイマーが開示される。該ポリペプチドまたはポリペプチドフラグメント中の0、1、2、または3個のアミノ酸は、配列番号:2の対応する位置と異なる。トロンビンレセプターアゴニストを用いた治療を必要とする被験体の治療方法もまた開示される。該方法は上記のトロンビンペプチド誘導体の有効量を投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本出願は2002年7月2日に出願された米国仮出願第60/393,579号の利益を主張し、その全教示は参照により本明細書中に援用されるものとする。
【0002】
発明の背景
トロンビンは、その血液凝固活性が既に知られている多機能酵素であり、近年重要な細胞成長因子として報告されている。例えば、トロンビンは血管形成、新たな血管の発達を促進すること、および内皮細胞増殖を刺激することが示されている。これらの過程は、創傷治癒の中枢部分である。
【0003】
トロンビンペプチド誘導体は、トロンビンの部分に少なくとも由来するアミノ酸配列を有する分子であり、特定のトロンビンレセプターで活性である。例えば、ヒトプロ−トロンビンのアミノ酸508〜530由来のトロンビンペプチド誘導体は、トロンビンレセプター媒介細胞刺激の促進について、ならびに創傷の治療および血管形成の刺激におけるそれらの使用について、本発明者らにより詳述されている(例えば、米国特許第5,500,412号または第5,352,664号参照、その内容は全体として参照により本明細書中に援用される)。これらのトロンビンペプチド誘導体は、その生物学的活性のために、医薬としての優れた可能性を示す。TP508はかかるトロンビンペプチド誘導体の一例であり、H−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−NH(配列番号:1)のアミノ酸配列を有する。
【0004】
食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)による厳格な規制は、医薬として使用する場合、生物学的に活性な薬剤の高度な純度を必要とする。そのため、これらの化合物がヒトを治療するために使用される場合、長期にわたって純度を維持する活性なトロンビンペプチド誘導体を得ることが必要である。例えば、TP508の純度は、ダイマー化のために経時的に減少する。例えば、TP508は中性pHの緩衝溶液中で約2〜約4時間の半減期を有する。
【0005】
発明の要旨
現在、トロンビンペプチド誘導体ダイマーはトロンビンレセプターに対する活性を保持していることが見出されている。トロンビンペプチド誘導体ダイマーはモノマーを実質的に含まずに調製され得、トロンビンレセプターに対してTP508とほぼ同じレベルの活性を有する(実施例3参照)。トロンビンペプチド誘導体ダイマーはまた、モノマーへの最小限の転換を有し、その純度を保持する(実施例2参照)。この発見に基づき、本発明は新規のペプチドダイマー、これらのペプチドダイマーを含む医薬組成物、およびトロンビンレセプターアゴニストを用いた治療を必要とする被験体を治療するための有用な方法を提供する。
【0006】
本発明の1つの態様は、2つのトロンビンペプチド誘導体を含むトロンビンペプチド誘導体ダイマーである。それぞれのトロンビンペプチド誘導体は独立して配列番号:2のアミノ酸配列:Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Valを有するポリペプチドまたは少なくとも6個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを含む。ポリペプチド中の0、1、2、または3個のアミノ酸は配列番号:2の対応する位置と異なる。好ましくは、この差異は保存的である。トロンビンペプチド誘導体は任意にC−末端でアミド化されるか、および/またはN−末端でアシル化される。
【0007】
本発明の別の態様はまた、トロンビンレセプターアゴニストまたは本明細書中に記載されるトロンビンペプチド誘導体ダイマー、および薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含むダイマーを含む医薬組成物に関する。
【0008】
本発明の別の態様は更に、トロンビンレセプターアゴニストを用いた治療を必要とする被験体を治療する方法に関する。該方法は、本明細書中に記載されるトロンビンペプチド誘導体ダイマーの有効量を投与することを含む。
【0009】
本発明のトロンビンペプチド誘導体ダイマーの利点として、モノマーTP508と比較して、溶液中でのより長い貯蔵寿命が挙げられる。そのため、長期の貯蔵後でも、開示されるペプチドを用いた正確なおよび再現性のある投薬を送達することが可能である。本明細書中に記載されるトロンビンペプチド誘導体ダイマーはまた、生産するための費用がかからない。トロンビンペプチド誘導体ダイマーは血管形成および細胞増殖が有益な疾患および/または状態の治療および/または予防において使用され得る。トロンビンペプチド誘導体ダイマーは、例えば、糖尿病性潰瘍、骨折、および軟骨損傷などの創傷の治療を助けるために使用され得る。トロンビンペプチド誘導体ダイマーはまた、心臓組織における血管形成および血管再生後の患者における再狭窄を予防するためにも使用され得る。
【0010】
発明の詳細な説明
出願人らは、本発明のトロンビンぺプチド誘導体ダイマーが実質的にモノマーに戻らず、なお、先行技術のトロンビンペプチド誘導体とほぼ同じ生物学的活性を有することを見出している。「トロンビンペプチド誘導体ダイマー」は、共有結合、好ましくはシステイン残基間のジスルフィド結合により連結されている2つのトロンビンペプチド誘導体を含む分子である。トロンビンペプチド誘導体ダイマーは典型的には対応するモノマーを実質的に含まず、例えば、95重量%よりもフリーであり、好ましくは99重量%よりもフリーである。好ましくは、該ポリペプチドは同じであり、ジスルフィド結合を介して共有的に結合される。
【0011】
本明細書中に開示されるトロンビンペプチド誘導体はC−末端アミドを有し得ることが理解されるであろう。「C−末端アミド」はαカルボン酸がアミドで置換されているC−末端アミノ酸残基におけるアミドである。例えば、C−末端アミノ酸アミド残基は式:−NH−CH(R)−C(O)−NRを有する。Rはアミノ酸側鎖である。アミノ酸側鎖は水素、置換もしくは非置換C〜C10脂肪族基、または置換もしくは非置換C〜C10芳香族基であり得る。好ましくは、Rは天然に生じるアミノ酸に対応するアミノ酸側鎖である。RおよびRは独立して水素、C〜C10置換もしくは非置換脂肪族基であるか、またはRおよびRはそれらが結合する窒素と共に、C〜C10非芳香族複素環基を形成する。好ましくは、C−末端アミドは−C(O)NH(カルボキサミド)である。本明細書中で使用される場合、C−末端の「−NH」はC−末端カルボキサミドを示し;C−末端の「−OH」はペプチドが遊離C末端を有することを示し;C−末端の非指示は、ペプチドがC−末端でアミド化されているか、遊離C−末端を有すること示す。
【0012】
本明細書中に開示されるトロンビンペプチド誘導体はアシル化N−末端を有しえることもまた理解されるであろう。「アシル化N−末端」はN−末端アミノ酸残基の窒素がアシル化されているN−末端アミノ酸残基である。例えば、アシル化N−末端アミノ酸残基は式:RC(O)−NH−CHR−C(O)−を有する。Rは水素、C〜C10置換もしくは非置換脂肪族基、またはC〜C10置換もしくは非置換芳香族基である。アセチルは好ましいアシル基である。N−末端の「−H」はN−末端が非置換であることを示し;N−末端の非明示は該末端がアシル化されているかまたは非置換であることを示す。
【0013】
好ましくは、トロンビンペプチド誘導体のN−末端は遊離(すなわち、非置換)であり、C−末端は遊離(すなわち、非置換)であるかまたはアミド化されており、好ましくはカルボキサミド(すなわち、−C(O)NH)である。
【0014】
トロンビンペプチド誘導体は、非タンパク質分解活性化トロンビンレセプターとして知られる高親和性細胞表面トロンビンレセプター(以下、「NPAR」)に結合することにより細胞を活性化すると考えられている(R.Horvatら、J.Cell Sci.108,1155−1164,1995)。NPARを刺激する化合物はトロンビンレセプターアゴニストと呼ばれる。NPARの活性化は、米国特許第5,352,664号および第5,500,412号、ならびにGlennら,J.Peptide Research 1:65(1988)に開示される通り、分裂促進(submitogenic)濃度のトロンビンまたはプロテインキナーゼCを活性化するかもしくはトロンビンレセプターへの高親和性結合に関して125I−トロンビンと競合する分子の存在下で線維芽細胞に添加した場合の細胞増殖を刺激する分子の能力に基づいて分析され得る。
【0015】
トロンビンペプチド誘導体はNPARを刺激し、約50個より少ないアミノ酸、好ましくは約33個より少ないアミノ酸を有する。トロンビンペプチド誘導体はまた、プロトロンビンアミノ酸508〜530:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号:3)に対応するヒトトロンビンのフラグメントと充分な相同性を有し、その結果、該ポリペプチドはNPARを活性化する。本明細書中に記載されるトロンビンペプチド誘導体ダイマーは典型的に少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは約12〜33個のアミノ酸、より好ましくは約12〜23個のアミノ酸を有するポリペプチドから形成される。
【0016】
第1の好ましい態様として、各トロンビンペプチド誘導体は、配列番号:4のアミノ酸配列:Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Valを有するポリペプチド、または少なくとも6個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを含む。より好ましくは、各トロンビンペプチド誘導体は配列番号:5のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val、または配列番号:5のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを有する。更により好ましくは、トロンビンペプチド誘導体は配列番号:6のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val、または配列番号:6のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを有する。XはGluまたはGlnであり、XはPhe、Met、Leu、HisまたはValである。好ましくはXはGluであり、XはPheである。このタイプのトロンビンペプチド誘導体の一例は、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号:3)を有するポリペプチドである。このタイプのトロンビンペプチド誘導体の更なる例は、アミノ酸配列H−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−NH(配列番号:1)を有するポリペプチドである。該トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2または3個のアミノ酸は、配列番号:1、3、4、5または6の対応する位置のアミノ酸と異なる。好ましくは、該差異は保存的である。
【0017】
本発明のトロンビンペプチド誘導体ダイマーの一例は、式I:
【0018】
【化1】

【0019】
で表される。
【0020】
第2の好ましい態様において、各トロンビンペプチド誘導体は、配列番号:7のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyrを有するポリペプチド、または少なくとも23個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを含む。より好ましくは、各トロンビンペプチド誘導体は配列番号:8のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X―Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr、または少なくとも23個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを有する。XはGluまたはGlnであり、XはPhe、Met、Leu、HisまたはValである。好ましくはXはGluであり、XはPheである。このタイプのトロンビンペプチド誘導体の一例は、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr(配列番号:9)を有するポリペプチドである。このタイプのトロンビンペプチド誘導体の更なる例は、アミノ酸配列H−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu―Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr−NH(配列番号:10)を有するポリペプチドである。該トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2または3個のアミノ酸は、配列番号:7、8、9または10の対応する位置のアミノ酸と異なる。好ましくは該差異は保存的である。
【0021】
「保存的置換」とは、あるアミノ酸の、同じ正味電化ならびにおよそ同じサイズおよび形状を有する別のアミノ酸との置換である。脂肪族または置換脂肪族アミノ酸側鎖を有するアミノ酸は、その側鎖中の炭素およびヘテロ原子の合計数が約4個までしか異ならない場合は、およそ同じサイズを有する。それらの側鎖中の分枝数が1個までしか異ならない場合は、それらはおよそ同じ形状を有する。その側鎖中にフェニルまたは置換フェニル基を有するアミノ酸は、およそ同じサイズおよび形状を有すると考えられる。アミノ酸の5つのグループを以下に列挙する。ポリペプチド中のアミノ酸を、同じグループ由来の別のアミノ酸と置換することで、保存的置換を生じる:
グループI:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、およびC1〜C4脂肪族またはC1〜C4水酸基置換脂肪族側鎖(直鎖または一分枝)を有する天然に存在しないアミノ酸。
グループII:グルタミン酸、アスパラギン酸およびカルボキシル酸置換C1〜C4脂肪族側鎖(無枝または一分枝点)を有する天然に存在しないアミノ酸。
グループIII:リジン、オルニチン、アルギニンおよびアミンまたはグアニジン(guanidino)置換C1〜C4脂肪族側鎖(無枝または一分枝点)を有する天然に存在しないアミノ酸。
グループIV:グルタミン、アスパラギンおよびアミド置換C1〜C4脂肪族側鎖(無枝または一分枝点)を有する天然に存在しないアミノ酸。
グループV:フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシンおよびトリプトファン。
【0022】
「高度な保存的置換」は、あるアミノ酸の、側鎖に同じ官能基を有し、ほぼ同じサイズおよび形状を有する別のアミノ酸との置換である。それらの側鎖中の炭素およびヘテロ原子の合計数が2個までしか異ならない場合、脂肪族または置換脂肪族アミノ酸側鎖を有するアミノ酸は、ほぼ同じサイズを有する。側鎖中に同数の分枝を有する場合は、それらはほぼ同じ形状を有する。高度な保存的置換の例としては、ロイシンの代わりにバリン、セリンの換わりにスレオニン、グルタミン酸の換わりにアスパラギン酸およびフェニルアラニンの換わりにフェニルグリシンが挙げられる。高度に保存的ではない置換の例としては、バリンの換わりにアラニン、セリンの換わりにアラニンおよびセリンの換わりにアスパラギン酸が挙げられる。
【0023】
「N−末端切断フラグメント」とは、N−末端から1つのアミノ酸またはアミノ酸のブロック、好ましくはせいぜい6個のアミノ酸のブロック、より好ましくはせいぜい3個のアミノ酸のブロックの除去後に残るフラグメントをいう。任意に、N−末端切断フラグメントは、上記の通りアシル化および/またはアミド化される。
【0024】
「C−末端切断フラグメント」とは、C−末端から1つのアミノ酸またはアミノ酸のブロック、好ましくはせいぜい6個のアミノ酸のブロック、より好ましくはせいぜい3個のアミノ酸ブロックの除去後に残るフラグメントをいう。任意に、C−末端切断フラグメントは、上記の通りアミド化および/またはアシル化される。
【0025】
「非芳香族複素環基」は、本明細書中で使用される場合、3〜10個の原子を有し、窒素、酸素、または硫黄などの少なくとも1つのヘテロ原子を含む非芳香族炭素環式環系である。非芳香族複素環基の例としては、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニルおよびチオモルホリニルが挙げられる。
【0026】
用語「アリール基」は、本明細書中で使用される場合、炭素環式および複素環式芳香族環系の両方を含む。アリール基の例としては、フェニル、インドリル、フラニルおよびイミダゾリルが挙げられる。
【0027】
「脂肪族基」は、直鎖、分枝または環式非芳香族炭化水素である。脂肪族基は、完全に飽和されるか、または1以上の不飽和の単位(例えば、二重および/または三重結合)を含み得るが、好ましくは飽和、すなわちアルキル基である。典型的に、直鎖または分枝鎖脂肪族基は1〜約10個、好ましくは1〜約4個の炭素原子を有し、環式脂肪族基は、3〜約10個の、好ましくは3〜約8個の炭素原子を有する。脂肪族基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、へキシル、シクロへキシル、オクチルおよびシクロオクチルが挙げられる。
【0028】
脂肪族基、アリール基または非芳香族複素環基に対する適切な置換基は、トロンビンペプチド誘導体の治療活性を有意に低下させない置換基であり、例えば、天然に存在するアミノ酸に見出されるものである。例としては−OH、ハロゲン(−Br、−Cl、−Iおよび−F)、−O(R)、−O−CO−(R)、−CN、−NO、−COOH、=O、−NH、−NH(R)、−N(R、−COO(R)、−CONH、−CONH(R)、−CON(R、−SH、−S(R)、脂肪族基、アリール基および非芳香族複素環基が挙げられる。各Rは独立してアルキル基またはアリール基である。置換脂肪族基は1以上の置換基を有し得る。
【0029】
「被験体」は、好ましくはヒトであるが、トロンビンレセプターアゴニストを用いた治療を必要とする動物、例えば伴侶動物(例えば、イヌ、ネコなど)、農場動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマなど)、および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)でもあり得る。
【0030】
トロンビンレセプターアゴニストを用いた「治療を必要とする」被験体は、有益な治療および/また予防結果を達成するためにトロンビンレセプターアゴニストおよびトロンビンペプチド誘導体ダイマーを用いて処置され得る疾患および/または症状を有する被験体である。有益な結果としては、病徴の重篤度の低減または病徴の開始の遅延、延命および/またはより迅速なもしくはより完全な疾患または症状の消散が挙げられる。例えば、治療を必要とする被験体は、軟骨細胞を含む細胞増殖、血管形成、骨成長、心臓修復、創傷治癒または再狭窄の抑制を必要とする。
【0031】
トロンビンペプチド誘導体は、内皮細胞、線維芽細胞、およびケラチン生成細胞の増殖を刺激することが示されている(例えば、米国特許第5,500,412号または第5,352,664号参照、その内容は全体として参照により本明細書中に援用される)。従って、開示されたトロンビンペプチド誘導体ダイマーは火傷、真皮創傷、外科的創傷および骨折などの急性創傷における治癒を促進するために使用され得る。更に、トロンビンペプチド誘導体は、近年、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、および床ずれなどの慢性創傷の治癒の促進に特に有効であることが示されている(例えば、WO03/013569参照、その内容は全体として参照により本明細書中に援用される)。トロンビンペプチド誘導体はまた、軟骨細胞の成長を刺激することが示されている(例えば、WO02/07748、その内容は全体として参照により本明細書中に援用される)。従って、本発明の化合物を含むトロンビンペプチド誘導体は、例えば骨関節症または関節損傷を有する患者において軟骨細胞成長および修復を刺激するために使用され得る。本発明のものを含む、トロンビンペプチド誘導体の他の使用としては、単純骨折、非癒合骨折、骨の空隙および間隙、ならびに骨移植の治癒を促進するための骨成長を刺激すること、血管形成後の患者における再狭窄を予防すること、ならびに心臓組織における血管の再生を促進することが挙げられる(例えば、WO02/005836およびWO02/004008参照、その内容は全体として参照により本明細書中に援用される)。
【0032】
「有効量」は、トロンビンペプチド誘導体ダイマーで処置された症状に関して、処理しないものと比較して改善された臨床結果を生じるトロンビンペプチド誘導体ダイマーの量である。投与されるトロンビンペプチド誘導体ダイマーの量は、疾患または症状の程度、重篤度、およびタイプ、所望される治療量、ならびに医薬製剤の放出特性に依存するであろう。これはまた、被験体の健康状態、大きさ、体重、年齢、性別および薬剤耐性にも依存するであろう。典型的には、アゴニストは望ましい治療効果を達成するために充分な期間投与される。典型的には、約1μg/日〜約1mg/日(好ましくは約5μg/日〜約100μg/日)のトロンビンペプチド誘導体が、治療を必要とする被験体に投与される。
【0033】
トロンビンペプチド誘導体ダイマーは、局部的にまたは全身的に、例えば非経口投与を含む任意の適切な経路によって投与され得る。非経口投与としては、例えば、筋肉内、静脈内、皮下、または腹腔内注射が挙げられ得る。創傷を処置するための局所投与としては、例えば、クリーム、ゲル、軟膏またはエアゾールが挙げられ得る。呼吸性投与としては、例えば、吸入または鼻腔内滴剤が挙げられ得る。骨成長、軟骨修復、心臓修復および再狭窄の処置などの特定の適用のためには、トロンビンペプチド誘導体を処置部位へ直接、注射するかまたは植込むことが有利である。トロンビンペプチド誘導体ダイマーはまた、徐放性製剤において有利に投与され得る。
【0034】
トロンビンペプチド誘導体ダイマーは医薬組成物の一部として許容され得る医薬担体と共に被験体に投与され得る。医薬組成物の製剤は、選択される投与経路によって変化するであろう。適切な医薬担体は該化合物と反応しない不活性成分を含み得る。担体は生体適合性、すなわち、非毒性、非炎症性、非免疫原性、および投与部位において他の所望されない反応を生じない、であるべきである。薬学的に許容され得る担体としては、例えば、食塩水、エアゾール、市販の不活性ゲル、またはアルブミン、メチルセルロースもしくはコラーゲンマトリックスを補充された液体が挙げられる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA中に記載されるもののような、標準的な医薬製剤技術が使用され得る。
【0035】
骨成長、軟骨修復、心臓修復および再狭窄の抑制などの適用のためには、徐放性製剤中でトロンビンペプチド誘導体を投与することが有利であり得る。ポリマーが、しばしば徐放性製剤を形成するために使用される。これらのポリマーの例としては、ポリ乳酸/ポリグリコール酸ホモポリマーおよびコポリマーなどのポリα−ヒドロキシエステル、ポリホスファゼン(polyphosphazene)(PPHOS)、ポリアンハイドライド(polyanhydride)およびポリ(プロピレンフマレート)が挙げられる。
【0036】
ポリ乳酸/ポリグリコール酸(PLGA)ホモポリマーおよびコポリマーは、徐放性ビヒクルとして当該分野で周知である。放出速度は、ポリ乳酸とポリグリコール酸の割合および該ポリマーの分子量の変化により当業者によって調整され得る(Andersonら、Adv.Drug Deliv.Rev.28:5(1997)参照、その全教示は参照により本明細書中に援用される)。微粒子担体を形成するためにポリマー中に混合物としてポリ(エチレングリコール)を組み込むと、活性成分の放出プロフィールを更に変化させる(Cleekら、J.Control Release 48:259(1997)参照、その全教示は参照により本明細書中に援用される)。リン酸カルシウムおよびヒドロキシアパタイトなどのセラミックスもまた、機械的な特性を改善するために製剤に組み込まれ得る。
【0037】
PPHOSポリマーは、構造式(II):
【0038】
【化2】

【0039】
において以下に示されるとおり、ポリマー主鎖(backbone)において交互に窒素およびリンを含み、炭素を含まない。ポリマーの性質は、ポリマー主鎖に結合される側鎖基RおよびR’の適切な変化によって調整され得る。例えば、PPHOSの分解および薬剤放出は、加水分解的に不安定な側鎖基の量を変化させることで制御され得る。イミダゾリルまたはエチルグリコールのいずれかで置換されたPPHOSをより大量に組み込むと、例えば、分解速度の増加が観察され(Laurencinら、J Biomed Mater.Res.27:963(1993)参照、本明細書中においてその全教示が参考として援用される)、それにより薬剤放出の速度が増加する。
【0040】
構造式(III)に示されるポリアンハイドライドは、セバシン酸および1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンなどの疎水性または親水性モノマーの量を変化させることを含むことにより制御され得る、かなり明確な分解および放出特徴を有する(Leongら、J Biomed.Mater.Res.19:941、(1985)参照、本明細書中においてその全教示が参考として援用される)。機械的強度を改善するために、無水物はしばしばイミドと共重合化し、ポリアンハイドライド−コ−イミドを形成する。整形外科の適用に適したポリアンハイドライド−コ−イミドの例は、ポリ(トリメリチルイミド−グリシン−コ−1,6−ビス(カルボキシフェノキシ)ヘキサンおよびピロメリチイミドアラニン(pyromellityimidoalanine):1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサンコポリマーである。
【0041】
【化3】

【0042】
次に、骨または軟骨成長を刺激するための担体は、骨および組織成長用の足場として働くことが出来、その中に骨前駆細胞および骨生成細胞が移動し付着出来る多孔性マトリックスを有利に含む。係る担体は、骨伝導性(osteoconductive)であると言われる。特定の適用に対して、担体はその三次構造を維持するために充分な機械的強度を有し、共に接合または移植される骨または組織の分節の固定化を補助するべきである。
【0043】
適切な骨伝導性担体の例としては、コラーゲン(例えばウシコラーゲン)、フィブリン、リン酸カルシウムセラミックス(例えばヒドロキシアパタイトおよびリン酸三石灰)、硫酸カルシウム、グアニジン抽出同種異系骨およびその組合せが挙げられる。ヒドロキシアパタイト、リン酸三石灰および筋原線維性コラーゲンの混合物であるCOLLAGRAFT(登録商標)(Cohension Technologies、Inc.、Palo Alto、CA)ならびに海産サンゴ炭酸カルシウムを結晶性ヒドロキシアパタイトに変換することにより形成したヒドロキシアパタイトバイオマトリックスであるPRO OSTEON500TM(Interpore Cross International、Irvine、CA)などの多くの適切な担体が市販されている。
【0044】
徐放性特性を有する骨伝導性担体として働き得る合成生分解性ポリマーの記載は、Behraveshら、Clinical Orthopaedics 367:S118(1999)および「Controlled Drug Delivery−Designing Technologies for the future」ParkおよびMrsny編、American Chemical Society、Washington、DC(2000)中のLichunら、Polymeric Delivery Vehicles for Bone Growth Factorsにおいて見出され得る。本明細書中においてこれらの参考文献の全教示が参考として援用される。これらのポリマーの例としては、上記で詳述されたポリ乳酸/ポリグリコール酸ホモポリマーおよびコポリマーなどのポリα−ヒドロキシエステル、ポリホスファゼン(PPHOS)、ポリアンハイドライドおよびポリ(プロピレンフマレート)が挙げられる。
【0045】
本発明の植込み可能な医薬組成物は、骨成長の必要がある部位に投与され得ることから、特に有用である。「植込み」または「部位に投与」とは、トロンビンペプチド誘導体ダイマーが医薬組成物から放出されるときに該部位で骨成長が生じる(例えば薬剤の存在下における非存在下よりも良好な骨成長)ように、処置を必要とする部位に充分近接していることを意味する。これらの医薬組成物は、手術を見越して所望の通りに形作られるかまたは手術の間に医師もしくは専門技術者により形作られることが出来る。組織欠損部をまたいで新組織の所望する形状をとるようにマトリックスを形作ることが好ましい。非癒合欠損部の骨修復の場合は、例えば、非癒合部をまたぐ寸法を使用することが望ましい。骨形成過程では、材料は身体にゆっくり吸収され、当該インプラントの形状または当該インプラントの形状に極めて近い形状の骨に置き換わる。あるいは、医薬組成物は微粒子またはマイクロスフェアの形態で部位に投与され得る。微粒子は、外科的に部位を露出させて微粒子を適用するか、または微粒子を該部位の近傍に塗布、ピペッティング、噴霧、注射などにより適用するかのいずれかにより、骨誘導の必要がある部位に接触または近接して配置される。微粒子はまた、内視鏡検査法または腹腔鏡検査法により部位に送達され得る。
【0046】
ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)は、注射可能で、インサイチュで重合可能で、生分解性の物質であるので骨欠損の修復における使用に関して非常に所望される生体適合性の植込み可能な担体である。「注射可能」とは、物質がペーストおよびゲルの注射に使用される標準的なニードルを介してシリンジによって注射され得ることを意味する。ビニルモノマー(N−ビニルピロリジノン)および開始剤(ベンゾイルペルオキシド)と組み合わせたPPFは、インサイチュで重合され得る注射可能溶液を形成する。それは、広範な種々のサイズおよび形状の骨格の欠損を充填するのに特に適している(Suggsら、Macromolecules 30:4318(1997)、Peterら、J.Biomater.Sci.Poly,.Ed.10:363(1999)およびYaszemskiら、Tissue Eng.1:41(1995)参照、本明細書中においてその全教示が参考として援用される)。リン酸β−トリカルシウムおよび塩化ナトリウムなどの固相成分の添加は、PPFポリマーの機械的特性を改善し得る(Peterら、J.Biomed.Mater.Res.44:314(1999)参照、本明細書中においてその全教示が参考として援用される)。
【0047】
さらに別の選択肢では、医薬組成物は、骨成長の必要がある部位に投与する前に、メッシュ、ワイヤーマトリックス、ステンレススチールケージ、糸状椎体間融合ケージ(threaded interbody fusion cage)などの物理的支持構造体内に部分的に封入され得る。
【0048】
注射可能な送達製剤は、静脈内にまたは処置の必要がある部位に直接投与され得る。注射可能な担体は、粘性溶液またはゲルであってもよい。
【0049】
送達製剤としては、生理食塩水、静菌性食塩水(約0.9%mg/mLのベンジルアルコールを含む食塩水)、リン酸緩衝食塩水、ハンクス液、乳酸リンゲル液、またはアルブミン、メチルセルロース、もしくはヒアルロン酸が補充された液体が挙げられる。注射可能なマトリックスとしては、ポリ(エチレンオキシド)のポリマーならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマーが挙げられる(Caoら、J.Biomater.Sci 9:475(1998)およびSimsら、Plast Reconstr.Surg.98:843(1996)参照、本明細書中においてその全教示が参考として援用される)。
【0050】
注射可能なマトリックスである他の組成物としては、上記のポリ(プロピレンフマレート)コポリマーの溶液およびリン酸カルシウムセラミックスのペーストが挙げられる(Schmitzら、J.Oral Maxillofacial Surgery 57:1122(1999)参照、本明細書中においてその全教示が参考として援用される)。注射可能なマトリックスは、骨成長の必要がある部位に直接注射され得、侵襲性手術の必要なく空隙を充填し、骨を融合させるために簡便に使用され得る。
【0051】
組成物をカプセル化する方法(硬いゼラチンまたはシクロデキストランの被覆内に入れるなど)は、当該技術分野において公知である(Bakerら、「Controlled Release of Biological Active Agents」、John Wiley and Sons、1986)。
【0052】
軟膏は典型的には、例えば固定油または炭化水素を含む、白ワセリンもしくはミネラルオイルなどの油性ベース、あるいは、例えば1つまたは複数の吸湿性物質からなる、例えば無水ラノリンのような吸湿性ベースを用いて調製される。以下のベースの製剤では、活性成分は所望される濃度で添加される。
【0053】
クリームは一般的に、固定油、炭化水素などを典型的に含む、ワックス、ワセリン、ミネラルオイルなどの油相(内部相)、ならびに水および添加される塩などの任意の水溶性物質を含む、水相(連続相)を含む。該二相は、例えばラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤;アカシアコロイド状粘土、蜂の巣(beegum)などの親水性コロイドといった乳化剤の使用により安定化される。エマルジョンの形成に際して、活性成分は所望される濃度で添加される。
【0054】
ゲルは、前記のような油性ベース、水、またはエマルジョン懸濁ベースより選択されるベースからなる。ベース中にマトリックスを形成するゲル化剤をベースへ添加すると、粘性が半固体の硬さへ増加する。ゲル化剤の例は、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリル酸ポリマーなどである。活性成分は、ゲル化剤の添加に先立つ時点で所望される濃度で製剤へ添加される。
【0055】
トロンビンペプチド誘導体ダイマーを用いて治療し得る疾患および病状、例えば創傷および血管形成部位はしばしば、痛みおよび感染などの病徴ならびに虚弱を伴う。特定の場合において、この課題に取り組むには、トロンビンペプチド誘導体ダイマーに加えて1以上のさらなる薬理学的に活性な薬剤を共投与することが有利であるかもしれない。例えば、痛みおよび炎症を処理するには、鎮痛薬または抗炎症剤との共投与が要求され得る。感染を処理するには、抗菌性、抗生物質性または殺菌性薬剤との共投与が要求され得る。
【0056】
トロンビンペプチド誘導体は固相ペプチド合成(例えばBOCまたはFMOC)法、液相合成、または前述の方法の組み合わせを含む他の適切な技術によって合成され得る。確立され、広く使用されているBOC法およびFMOC法は、Merrifield、J.Am.Chem.Soc.88:2149(1963);Meienhofer、Hormonal Proteins and Peptides、C.H.Li編、Academic Press、1983、48〜267頁;ならびにThe Peptides、E.GrossおよびJ.Meienhofer編、Academic Press、New York、1980、3〜285頁中のBaranyおよびMerrifieldに記載されている。固相ペプチド合成の方法は、Merrifield,R.B.、Science、232:341(1986);Carpino,L.A.およびHan,G.Y.、J.Org.Chem.、37:3404(1972);ならびにGauspohl,H.ら、Synthesis、5:315、(1992)に記載されている。本明細書中においてこれら6つの文献の教示はその全体が参考として援用される。
【0057】
トロンビンペプチド誘導体ダイマーは、モノマーの酸化により調製され得る。トロンビンペプチド誘導体ダイマーは、トロンビンペプチド誘導体を過剰の酸化剤と反応させることにより調製され得る。周知の適切な酸化剤はヨウ素である。特定の条件は実施例1および2において提供される。
【0058】
本発明は以下の実施例によって例証されるが、これはなんら限定を意図するものではない。
【実施例】
【0059】
実施例1 トロンビンペプチドダイマーの形成
TP508を酢酸6部および水1部の溶液中に溶解した。10倍モル過剰のヨウ素を添加し、室温で90分間撹拌して反応を進行させた。過剰のヨウ素は、CCl4を用いた抽出(3〜4回) により除去した。未反応モノマーを除去するために、ダイマー化したペプチドをC18逆相カラムのHPLCにより精製した。
【0060】
実施例2 TP508-ダイマー
TP508の経時的なダイマーへの変換
TP508を食塩水(滅菌した0.9%塩化ナトリウム注射可能溶液)中に5mg/mLで溶解し、4℃でインキュベートした。6ヵ月に渡って、溶液から時々三連のサンプルを採取した。TP508-モノマー、TP508-ダイマーおよび未同定物質(unknown)を分離するためにHPLCによってサンプルを分析した。TP508-ダイマーのピーク面積は、3ヶ月後において経時的な減少を示さなかった。未同定ピーク(unknown peak)では増加は見られなかった。図1の結果は、TP508-ダイマーは経時的にモノマーに復帰しないことを示す。
【0061】
各HPLCピークの面積パーセントを図1に表示した。ピーク面積パーセントは、溶液中における物質のパーセントに直接対応する。TP508-ダイマーのピーク面積が経時的に増加したのに対して、TP508-モノマーのピーク面積は経時的に減少した。未同定ピークでは増加は見られなかった。図1の結果は、TP508が経時的にダイマーに変換することを示す。
【0062】
TP508-ダイマーは経時的にモノマーへ復帰しない
TP508-ダイマーのピーク面積は、3ヶ月後において経時的な減少を示さなかった。未同定ピークでは増加は見られなかった。図1の結果は、TP508−ダイマーは経時的にモノマーに復帰しないことを示す。
【0063】
実施例3 トロンビンペプチドダイマーの創傷治癒活性
方法および研究計画
この研究の目的は、トロンビンペプチドTP508のダイマー化形態の創傷治癒活性を評価することである。該研究はトロンビンペプチドダイマーの創傷閉鎖上の効果を評価する。
【0064】
雄スプレイグーダウリー(Sprague-Dawley)ラットの背部の二箇所を充分深く、直径2cmで切開した。所定のラットの双方の創傷を、低用量のトロンビンペプチドダイマー含有ビヒクル、高用量のトロンビンペプチドダイマー含有ビヒクル、ビヒクルのみ(ネガティブコントロール)、またはTP508含有ビヒクル(ポジティブコントロール)のいずれかを用いて共に処置し、合計4つの処置群を生じた。各群には6匹のラットが含まれる。高および低用量のトロンビンペプチドダイマーの活性を、ビヒクルのみおよびTP508と比較した。創傷後3、7、および10日後にアセテートシート上で創傷の周囲長を記録し、各創傷の表面面積を計算するためにデジタル分析を使用することにより創傷サイズを測定した。
【0065】
処置液の調製
食塩水溶液
D-マンニトール(20mg)を12.5mLの食塩水(滅菌した0.9%塩化ナトリウム注射可能溶液)中に溶解し、8.9mM D-マンニトール食塩水溶液を生成した。本実験に関してこの溶液をビヒクルコントロールとして使用した。
【0066】
TP508溶液
凍結乾燥したTP508(1mg)を1mLのD-マンニトール/食塩水ビヒクル中に溶解した。ストック溶液(1mg/mL)をビヒクル中にさらに希釈して、2.5μg/mLのワーキング溶液を生じた。ワーキング溶液を実験の間ずっと氷上で保持した。
【0067】
トロンビンペプチドダイマー溶液
高用量
TP508(12.5μg)および2mg D-マンニトールを1.25mLの食塩水(D-マンニトール非含有)中に溶解し、10μg TP508/mL(8.9mM D-マンニトール食塩水)であるストック溶液を生じた。ストック溶液を高処置用量(0.4μg/40μL/創傷)として直接使用した。ストック溶液を実験の間ずっと氷上で保持した。
【0068】
低用量
2.5μg/mLのワーキング溶液を得るために、ストックダイマー溶液をD-マンニトール/食塩水ビヒクル中へさらに希釈して低処置用量(0.1μg/40μL/創傷)を調製した。ワーキング溶液を実験の間ずっと氷上で保持した。
【0069】
創傷処置
所定の動物の双方の創傷に同じ処置:ビヒクルのみ、TP508含有ビヒクル(0.1μg/mL)、またはトロンビンペプチドダイマー含有ビヒクル(0.1μg/mLまたは0.4μg/mL)を含む40μL容量の単回、局所適用を施した。
【0070】
観察および創傷サイズ分析
ラットを創傷後10日間観察したが、異常行動、感染または毒性といった臨床徴候は見られなかった。創傷後3、7、および10日に柔軟なアセテートシート上で創傷の周囲長を記録し、次にデジタル分析ソフトウェアを用いて創傷面積を測定することにより創傷を評価した。
【0071】
実験結果を図2に表す。図2は、創傷後7日および10日の創傷面積測定値を示す。創傷後3日では群間に創傷サイズの違いは無かった。各データポイントは、ラット6匹由来の創傷12個の平均および平均の標準誤差を表す。群間の統計学上の比較を分散の反復測定分析(a repeated measures analysis of variance)を用いて行った;群間の事後的検定(post hoc testing)にはフィッシャーの最小有意差法を用いた。
【0072】
この実験において、TP508およびトロンビンペプチドダイマーの双方が、創傷後7日でビヒクルのみよりも有意に小さい創傷を生じた。同用量のトロンビンペプチドダイマー(0.1μg/創傷)を用いて処置した創傷がビヒクル-コントロールよりも面積で29.2%小さかったのに対し、TP508−処置創傷はビヒクル-コントロールよりも面積で21.3%小さかった。TP508およびトロンビンペプチドダイマー処置間の差は、統計学上有意ではなかった。
【0073】
10日目では、7日目同様、TP508および双方の用量のトロンビンペプチドダイマーが、コントロールの創傷よりも有意に小さい創傷を生じた。さらに、10日目ではTP508処置群およびトロンビンペプチドダイマーでの処置群間に統計学上有意な差が見られた(p<0.05)。10日目では、同用量のトロンビンペプチドダイマー(0.1μg/創傷)を用いて処置した創傷がビヒクル-コントロールよりも面積で41.4%小さかったのに対し、TP508処置創傷はビヒクル-コントロールよりも面積で23.1%小さかった。
【0074】
低用量群においては、トロンビンペプチドダイマーをTP508群と等しい重量で投与した。つまり、これらの群の各々は、創傷あたり0.1μgのペプチドを受容し、これら2群において創傷に投与されたモノマーの半分のモル数のダイマーに帰着する。
【0075】
結果からトロンビンペプチドダイマーが創傷閉鎖促進において生物学的に活性であることが示唆された。「創傷閉鎖」として考察した場合、トロンビンペプチドダイマーはTP508の効果と等価である統計学上有意な治癒効果を生じる。
【0076】
本発明は、その好ましい態様が参考文献と共に詳細に示され、記載されているが、ここで形式および詳細部分における種々の変化が、添付された特許請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることが、当業者によって理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1はTP508のダイマーへの経時的な転換を示すグラフである。該グラフは、6ヶ月の期間にわたって時々採取された、TP508食塩水溶液(5mg/mL、4℃でインキュベートされた)の試料中に見出されたTP508−モノマー、TP508−ダイマーおよび未同定(unknown)のHPLCピーク面積測定値を示す。ピーク面積はパーセントで示される。時間は日で示される。モノマーは(−●−)で示される。ダイマーは(…○…)で示される。未同定は(--▼--)で示される。
【図2】図2はトロンビンペプチドダイマーが創傷治癒の加速に関してTP508の生物学的活性を保持していることを示すグラフである。該グラフは、雄Sprague−Dawleyラットの背における、創傷後7日目および10日目由来の創傷面積測定値(mmで示される)を示す。食塩水ビヒクルコントロールは「ビヒクル」と示され、TP508コントロールは「TP508」と示され、低用量トロンビペプチドダイマーは「lo−di」と示され、高用量トロンビンペプチドダイマーは「hi−di」と示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立して、配列番号:2(Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val)のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは少なくとも6個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを含む2つのトロンビンペプチド誘導体を含むペプチドダイマーであって、ただし、該ポリペプチド中の0、1、2または3個のアミノ酸は配列番号:2の対応する位置と異なり;該トロンビンペプチド誘導体は任意にC−末端アミドを含み;該トロンビンペプチド誘導体は任意にアシル化N−末端を含む、ペプチドダイマー。
【請求項2】
モノマーを実質的に含まない、請求項1記載のダイマー。
【請求項3】
トロンビンペプチド誘導体が同じである、請求項2記載のダイマー。
【請求項4】
トロンビンペプチド誘導体がジスルフィド結合を介して共有的に連結されている、請求項3記載のダイマー。
【請求項5】
トロンビンペプチド誘導体が約12〜約23個のアミノ酸からなる、請求項4記載のダイマー。
【請求項6】
トロンビンペプチド誘導体がC−末端アミドを含み、任意にアシル化N−末端を含み、ここでC−末端アミドは−C(O)NR(式中、RおよびRは独立して水素、C〜C10置換もしくは非置換脂肪族基であるか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素と共にC〜C10非芳香族複素環基を形成する)で表され、N−末端アシル基はRC(O)−(式中、Rは水素、C〜C10置換もしくは非置換脂肪族基、またはC〜C10置換もしくは非置換芳香族基である)で表される、請求項5記載のダイマー。
【請求項7】
トロンビンペプチド誘導体が、非置換であるN−末端および非置換であるC−末端または−C(O)NHで表されるC−末端アミドを含む、請求項6記載のダイマー。
【請求項8】
トロンビンペプチド誘導体が約12〜約33個のアミノ酸からなる、請求項4記載のダイマー。
【請求項9】
トロンビンペプチド誘導体がC−末端アミドを含み、任意にアシル化N−末端を含み、ここで、C−末端アミドは−C(O)NR(式中、RおよびRは独立して水素、C〜C10置換もしくは非置換脂肪族基であるか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素と共にC〜C10非芳香族複素環基を形成する)で表され、N−末端アシル基はRC(O)−(式中、Rは水素、C〜C10置換もしくは非置換脂肪族基、またはC〜C10置換もしくは非置換芳香族基である)で表される、請求項8記載のダイマー。
【請求項10】
トロンビンペプチド誘導体が、非置換であるN−末端および非置換であるC−末端または−C(O)NHで表されるC−末端アミドを含む、請求項9記載のダイマー。
【請求項11】
トロンビンペプチド誘導体が、配列番号:2(Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val)のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または少なくとも6個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを含み、ただし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1または2個のアミノ酸が配列番号:2中の対応するアミノ酸の保存的置換である、請求項7記載のダイマー。
【請求項12】
トロンビンペプチド誘導体が、配列番号:4(Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val、ここでXはGluまたはGlnであり、XはPhe、Met、Leu、HisまたはValである)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む、請求項7記載のダイマー。
【請求項13】
トロンビンペプチド誘導体が、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号:5)、または配列番号:5のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを有し、ただし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2または3個のアミノ酸が配列番号:5の対応する位置のアミノ酸と異なる、請求項7記載のダイマー。
【請求項14】
トロンビンペプチド誘導体が、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号:5)、または配列番号:5のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを有し、ただし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1または2個のアミノ酸が配列番号:5の対応する位置のアミノ酸の保存的置換である、請求項7記載のダイマー。
【請求項15】
トロンビンペプチド誘導体が、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号:6)、ここでXはGluまたはGlnであり、XはPhe、Met、Leu、HisまたはValである)または配列番号:6のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを有する、請求項7記載のダイマー。
【請求項16】
トロンビンペプチド誘導体が、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号:6)を有し、ここでXはGluまたはGlnであり、XはPhe、Met、Leu、HisまたはValである、請求項7記載のダイマー。
【請求項17】
がGluであり、XがPheである、請求項16記載のダイマー。
【請求項18】
トロンビンペプチド誘導体が、アミノ酸配列H−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val−NH(配列番号:11)を有し、ここで、XはGluまたはGlnであり、XはPhe、Met、Leu、HisまたはValである、請求項7記載のダイマー。
【請求項19】
がGluであり、XがPheである、請求項18記載のダイマー。
【請求項20】
それぞれがアミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号:3)を有する2つのトロンビン誘導体を有するペプチドダイマーであって、ここで該トロンビンペプチド誘導体はジスルフィド結合により共有的に連結され;該トロンビンペプチド誘導体は任意にC−末端アミドを含み;該トロンビンペプチド誘導体は任意にアシル化N−末端を含む、ペプチドダイマー。
【請求項21】
以下の構造式:
【化1】

により表されるペプチドダイマー。
【請求項22】
トロンビンペプチド誘導体が、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr(配列番号:7)、または少なくとも23個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを含み、だだし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2、3個のアミノ酸が配列番号:9中の対応するアミノ酸と異なる、請求項10記載のダイマー。
【請求項23】
トロンビンペプチド誘導体が、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr(配列番号:7)、または少なくとも23個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを有し、だだし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1または2個のアミノ酸が配列番号:9中の対応するアミノ酸の保存的置換である、請求項10記載のダイマー。
【請求項24】
トロンビンペプチド誘導体がアミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr(配列番号:7)、または少なくとも23個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを有する、請求項10記載のダイマー。
【請求項25】
トロンビンレセプターアゴニストを用いた治療を必要とする被験体の治療方法であって、該方法は、配列番号:2(Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val)のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または少なくとも6個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを独立して含む、2つのトロンビンペプチド誘導体を含むペプチドダイマーの有効量を投与することを含み、ただし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2、または3個のアミノ酸が配列番号:2の対応する位置と異なり;該トロンビンペプチド誘導体が任意にC−末端アミドを含み;該トロンビンペプチド誘導体が任意にアシル化N−末端を含む、方法。
【請求項26】
被験体が心臓修復を促進するための治療を必要とする、請求項25記載の方法。
【請求項27】
被験体が軟骨成長または修復を促進するための治療を必要とする、請求項25記載の方法。
【請求項28】
被験体が骨成長を必要とする、請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記部位が骨移植を必要とする、請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記部位が単純骨折、骨の分節間隙、骨空隙または非癒合骨折である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
被験体が創傷治癒を促進するための治療を必要とする、請求項25記載の方法。
【請求項32】
被験体が再狭窄を阻害するための治療を必要とする、請求項25記載の方法。
【請求項33】
ダイマーがモノマーを実質的に含まない、請求項25記載の方法。
【請求項34】
トロンビンペプチド誘導体が同じである、請求項25記載の方法。
【請求項35】
トロンビンペプチド誘導体がジスルフィド結合を介して共有的に連結している、請求項25記載の方法。
【請求項36】
トロンビンペプチド誘導体が約12〜約23個のアミノ酸からなる請求項25記載の方法。
【請求項37】
トロンビンペプチド誘導体がC−末端アミドを含み、任意にアシル化N−末端を含み、C−末端アミドは−C(O)NR(式中、RおよびRは独立して水素、C〜C10置換もしくは非置換脂肪族基であるか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素と共にC〜C10非芳香族複素環基を形成する)で表され、N−末端アシル基はRC(O)−(式中、Rは水素、C〜C10置換もしくは非置換脂肪族基、またはC〜C10置換もしくは非置換芳香族基である)で表される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
トロンビンペプチド誘導体が非置換であるN−末端および非置換であるC−末端または−C(O)NHで表されるC−末端アミドを含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
トロンビンペプチド誘導体が約12〜約33個のアミノ酸からなる、請求項25記載の方法。
【請求項40】
トロンビンペプチド誘導体がC−末端アミドを含み、任意にアシル化N−末端を含み、ここでC−末端アミドは−C(O)NR(式中、RおよびRは独立して水素、C〜C10置換もしくは非置換脂肪族基であるか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素と共にC〜C10非芳香族複素環基を形成する)で表され、N−末端アシル基はRC(O)−(式中、Rは水素、C〜C10置換もしくは非置換脂肪族基、またはC〜C10置換もしくは非置換芳香族基である)で表される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
トロンビンペプチド誘導体が非置換であるN−末端および非置換であるC−末端または−C(O)NHで表されるC−末端アミドを含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
配列番号:2(Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val)のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または少なくとも6個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを含み、ただし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1または2個のアミノ酸が配列番号:2中の対応するアミノ酸の保存的置換である、請求項38記載の方法。
【請求項43】
トロンビンペプチド誘導体が、配列番号:4(Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val、ここでXはGluまたはGlnであり、XはPhe、Met、Leu、HisまたはValである)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む、請求項38記載の方法。
【請求項44】
トロンビンペプチド誘導体が、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号:5)、または配列番号:5のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを有し、ただし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2、または3個のアミノ酸が配列番号:5の対応する位置のアミノ酸と異なる、請求項38記載の方法。
【請求項45】
トロンビンペプチド誘導体がアミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号:5)、または配列番号:5のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを有し、ただし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1または2個のアミノ酸が配列番号:5の対応する位置のアミノ酸の保存的置換である、請求項38記載の方法。
【請求項46】
トロンビンペプチド誘導体がアミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号:6)、ここでXはGluまたはGlnであり、XはPhe、Met、Leu、HisまたはValである)または配列番号:6のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを有する、請求項38記載の方法。
【請求項47】
トロンビンペプチド誘導体が、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号:6)を有し、ここでXはGluまたはGlnであり、XはPhe、Met、Leu、HisまたはValである、請求項38記載の方法。
【請求項48】
がGluであり、XがPheである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
トロンビンペプチド誘導体が、アミノ酸配列H−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val−NH(配列番号:11)を有し、ここで、XはGluまたはGlnであり、XはPhe、Met、Leu、HisまたはValである、請求項38記載の方法。
【請求項50】
がGluであり、XがPheである、請求項49記載の方法。
【請求項51】
トロンビンレセプターアゴニストを用いた治療を必要とする被験体の治療方法であって、該方法は、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号:3)を有する、2つのトロンビンペプチド誘導体を有するペプチドダイマーの有効量を投与することを含み、ここで、該トロンビンペプチド誘導体はジスルフィド結合により共有的に連結され;該トロンビンペプチド誘導体は任意にC−末端アミドを含み;該トロンビンペプチド誘導体は任意にアシル化N−末端を含む、方法。
【請求項52】
以下の構造式:
【化2】

で表されるペプチドダイマーの有効量を投与することを含む、トロンビンレセプターアゴニストを用いた治療を必要とする被験体の治療方法。
【請求項53】
トロンビンペプチド誘導体がアミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr(配列番号:7)、または少なくとも23個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを有し、ただし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2、3個のアミノ酸が配列番号:9中の対応するアミノ酸と異なる、請求項41記載の方法。
【請求項54】
トロンビンペプチド誘導体がアミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr(配列番号:7)、または少なくとも23個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを有し、ただし、該トロンビンペプチド誘導体中の0、1または2個のアミノ酸が配列番号:7中の対応するアミノ酸の保存的置換である、請求項41記載の方法。
【請求項55】
トロンビンペプチド誘導体がアミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr(配列番号:7)、または少なくとも23個のアミノ酸を有するそのC−末端切断フラグメントを有する、請求項41記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−507229(P2006−507229A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−519705(P2004−519705)
【出願日】平成15年7月1日(2003.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2003/020626
【国際公開番号】WO2004/005317
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(501100582)ザ ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム (19)
【Fターム(参考)】