説明

トロンボモジュリン誘導体および結合体

膜貫通型のヒトタンパク質、トロンボモジュリン(TM)は、プロテインC経路の重要なレギュレーターとして、主要な抗凝固性機構を代表する。この機構は、インビボでの生理的条件下で、正常な血管および損傷された血管の両方において作動している。トロンボモジュリンの誘導体および結合体に関する組成物および方法(例えば、短縮型トロンボモジュリン誘導体の部位特異的なPEG化のための方法および組成物を含む)が開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2004年2月20日に、Chaikofらによって出願された、米国仮出願第60/546,436号の利益を主張し、これは、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(政府により支援された研究開発に関する供述)
本発明は、少なくとも部分的に、NIHにより与えられた助成金第NIH RO1HL56819号の下で、政府の支援によりなされた。政府は、本発明においていくらかの権利を有する。
【0003】
(発明の背景)
膜貫通型のヒトタンパク質、トロンボモジュリン(TM)は、プロテインC経路の重要なレギュレーターとして、主要な抗凝固性機構を代表する。この機構は、インビボでの生理的条件下で、正常な血管および損傷された血管の両方において、作動している。効率的な血液−表面接触(blood−contacting surface)は、操作された血液−物質界面に組み込まれた、生理学的に関連する抗血栓形成性機構の存在に依存する。全長のネイティブヒトTMは、融合プロセス/吸着プロセスによって、膜を模倣するフィルムまたは表面内に組み込まれ得る;しかしながら、これらの物質の主要な欠点は、経時的な、TMの安定性および/または機能的活性の喪失である。さらに、TMのポリマー表面上への共有結合性の固定化のための既存のプロトコルにおいて、タンパク質固定化手順は、TMの自由に利用可能なアミノ官能性もしくはカルボキシル官能性を必要とし、このうちのいくつかは、生物活性部位内もしくはその近くにあり得る。このような官能性を使用することによって、表面に結合した後に、TMの機能的な生物活性を有意に減少させ得る。従って、この分野において、有効な代替物として機能する組成物および方法に対する必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本明細書中で使用される用語および語句は、一般に、当該分野で認識される意味を有し、その意味とは、当業者に公知の標準的な教科書、雑誌の参考文献、および背景を参照することによって見出され得る。以下の定義は、本発明の文脈においてその特定の使用を明確にするために提供される。
【0005】
本明細書中で使用される場合、「トロンボモジュリン」は、プロテインCの活性化されたプロテインC(プロテインCa)への変換に関与し得るタンパク質分子を指す。特定の実施形態において、この分子は、トロンビンと1:1の化学量論複合体を形成する、特定の内皮細胞レセプターに関連する。好ましい実施形態において、この分子は、ヒト分子であり、そしてまた、フェトモジュリン(fetomodulin)およびCD141抗原として知られる。特定の実施形態において、この用語は、核酸またはタンパク質の配列情報(登録番号NM_000361、バージョン:NM_000361.2 GI:40288292;またはSwiss−Prot:P07204の配列情報に対応する)を有するネイティブな分子を指す。
【0006】
本明細書中で使用される場合、「誘導体」は、基準物質に対する、バリエーションもしくはアナログ、またはその改変物を指す。例えば、トロンボモジュリン誘導体は、変異タンパク質、ネイティブなタンパク質配列の短縮形、または、合成的に改変された改変体(例えば、ポリマーもしくは表面へのPEG化もしくは結合体化による改変を含む)を指し得る。誘導体は、共有結合性に会合していようと、非共有結合性に会合していようと;そして、翻訳の間に会合していようと、翻訳後に会合していようと、翻訳とは別に(例えば、合成的なアプローチにおいて)会合していようと;本明細書中で開示されるように、または、当該分野で理解されるように、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、および/または、他の化学部分の使用を利用し得る。特定の実施形態において、誘導体は、短縮型、変異型の、PEG化、結合体化されたトロンボモジュリンである。
【0007】
以下の略語が適用される:TM、トロンボモジュリン;PEG、ポリエチレングリコール。
【0008】
あらゆる機構の説明または仮説が最終的に正されるにも関わらず、本発明の実施形態は、それでもなお、有効かつ有用であり得ることが認識される。
【0009】
一実施形態において、本発明は、新規トロンボモジュリン(「TM」)結合体(可溶性結合体を含む)の生成に関する。
【0010】
一実施形態において、本発明は、タンパク質分子のための部位特異的なPEG化の方法を提供する。好ましい実施形態において、タンパク質分子は、生物活性なトロンボモジュリンまたはその誘導体である。
【0011】
一実施形態において、TMアナログの配列は、プロテインCを活性化できる触媒的に活性な部位(EGF4−6ドメイン)、および単一もしくは複数の非天然アミノ酸を含む。特定の実施形態において、TMアナログは、非天然アミノ酸を介して、直鎖もしくは分枝の天然もしくは合成のポリマーに結合体化される。一実施形態において、本発明は、合成もしくは天然の物質の表面に、薬剤の部位特異的送達のためのターゲティング基に、および/または、1以上のさらなる抗炎症性特性/抗血栓性特性を含む化合物に対するTM結合体の結合体化のための方法を提供する。
【0012】
一実施形態において、TM結合体は、1以上の状態(例えば、微小血管もしくは大血管の血餅、脳卒中、心臓発作、播種性血管内凝固症候群、または他の炎症性もしくは血液凝固促進性(prothrombotic)の状態)の処置のための全身性の薬剤として有用であり得る。
【0013】
一実施形態において、本発明は、医学的に移植されるか、または、ヒトの組織もしくは体液に接触するデバイスの表面のコーティングを提供する。例えば、移植片またはデバイスとしては、以下が挙げられ得るがこれらに限定されない:表面特性を変更するための、脈管グラフト、ステント、心臓弁、透析膜(dialysis membrane)、膜型人工肺(membrane oxygenator)、カテーテル、およびガイドワイヤ。本発明のさらなる実施形態は、生細胞または生組織のためのコーティングを提供する。この細胞または組織としては、平滑筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、幹細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、膵島、または、細胞の抗炎症性特性を確立もしくは増強するように遺伝子操作された細胞が挙げられるがこれらに限定されない。
【0014】
一実施形態において、本発明は、スペーサーとして天然もしくは合成のポリマーを用いた、血液もしくは組織接触表面上への短縮型TM誘導体の共有結合性の結合体化を提供する。
【0015】
一実施形態において、本発明は、タンパク質の生物活性を損なうことなく、または、タンパク質の生物活性を実質的に保持したままで、合成もしくは天然の物質に対して、部位特異的にTMを共有結合性に結合体化するための新規方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、EGF様ドメイン4−6、および、必要に応じて、もしくは好ましくは、構築物のC末端部分に、単一もしくは複数の非天然アミノ酸を含む、比較的短い組換えTM構築物を提供する。特定の実施形態において、本発明は、1以上の非天然アミノ酸を介する、適切なポリマースペーサーとの反応により改変されたTMを提供する。特定の実施形態において、TMは、表面上へのさらなる固定化のため、または、他の抗炎症性特性もしくは抗血栓性特性を含む、直鎖もしくは多官能性の天然もしくは合成の化合物への結合体化のために改変される。一実施形態において、生物学的結合体化反応は、TMの生物活性を保存するために、穏やかな条件において起こる。好ましい実施形態において、ポリエチレングリコール(「PEG」)が、ポリマースペーサーとして使用される。
【0016】
一実施形態において、改変された構築物は、表面上へのさらなる固定化のため、または、抗炎症性活性もしくは抗血栓性活性であり得る、直鎖もしくは多官能性の天然もしくは合成の化合物への結合体化のために、適合される。
【0017】
一実施形態において、タンパク質のPEG化は、1以上の利点(例えば、血漿中半減期の延長、タンパク質分解性の切断に対する安定性、および、タンパク質の免疫原性の減少)を付与し得る。
【0018】
一実施形態において、本発明は、核酸分子およびタンパク質分子を含む組成物を提供する。特定の実施形態において、この組成物は、以下の表S1の配列に関する。
【0019】
表S1:選択された配列表の情報
【0020】
【表1】

一実施形態において、本発明は、非天然アミノ酸を含む、トロンボモジュリン構築物の生成に関する、方法および組成物を提供する。一実施形態において、構築物は、トロンボモジュリンまたはトロンボモジュリン誘導体である。一実施形態において、本発明は、このような構築物の組換え的な発現または合成による生成を提供する。好ましい実施形態において、構築物は、組換え的な発現により生成される。好ましい実施形態において、本発明は、トロンボモジュリンの細胞外部分を含む方法および組成物を提供する。好ましい実施形態において、トロンボモジュリンの細胞外部分は、さらに、触媒的に活性な部位を含む。好ましい実施形態において、トロンボモジュリンの細胞外部分は、プロテインCを活性化し得る。
【0021】
好ましい実施形態において、トロンボモジュリン誘導体は、単一の非天然アミノ酸または複数の非天然アミノ酸を含む。一実施形態において、非天然アミノ酸は、当該分野で理解されるようなものを含み得る。例えば、非天然アミノ酸としては、以下が挙げられ得る:メチオニンアナログ、アラニンアナログ、フェニルアラニンアナログ、ロイシンアナログ、プロリンアナログおよびイソロイシンアナログ。メチオニンアナログの例としては、L−2−アミノ−4−アジドブタン酸が挙げられる。
【0022】
好ましい実施形態において、トロンボモジュリン誘導体は、構築物のC末端部分に、単一の非天然アミノ酸を含む。
【0023】
一実施形態において、本発明は、トロンボモジュリン構築物を提供し、この構築物は、天然もしくは合成のポリマー、または、抗体もしくは他のリガンド認識分子のような、他の天然分子に結合体化される。一実施形態において、結合体化は、組換えタンパク質における、少なくとも1つの非天然アミノ酸を介する。
【0024】
一実施形態において、構築物への結合体化のための合成ポリマーとしては、直鎖もしくは分枝の合成ポリマーが挙げられ得る。例えば、直鎖もしくは分枝の合成ポリマーとしては、以下が挙げられ得る:ポリ(t−ブチルアクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、糖脂質およびその模倣物;ならびに他のポリマー。天然ポリマーの例としては、以下が挙げられる:糖タンパク質およびその模倣物、ポリ(アルギニン)、多糖類およびその模倣物;ならびに、当該分野で理解される他のポリマー。一実施形態において、リガンド認識分子は、抗フィブリン抗体である。
【0025】
一実施形態において、構築物は、直鎖もしくは分枝のポリ(エチレングリコール)分子に結合体化される。好ましい実施形態において、構築物は、直鎖のポリ(エチレングリコール)に結合体化される。
【0026】
一実施形態において、本発明は、表面への係留のために、天然もしくは合成のポリマーに結合体化されたトロンボモジュリン構築物を提供する。一実施形態において、天然もしくは合成のポリマーは、多官能性である。好ましい実施形態において、構築物は、結合体の表面への係留のために、ポリ(エチレングリコール)に結合体化される。一例において、係留基としては、以下が挙げられる:ビオチン、結合体化されたジエン、アジド、アルキン、ジフェニルホスフィン、トリアリールホスフィン;および、当該分野で理解される他の基。一例において、表面ターゲティング基としては、以下が挙げられる:シアリル−ルイスX;抗体、Fabフラグメントなど;VCAM−1、ICAM−1もしくは他の炎症性細胞表面タンパク質を認識し得る他の類似のタンパク質もしくは非タンパク質の認識分子(アプタマーを含む);抗フィブリン抗体;ストレプトアビジン、アジド、アルキン、N−(ε−マレイミドカプロイル);ならびに、当該分野で理解される他のターゲティング基。
【0027】
一実施形態において、構築物は、合成物質または天然物質の表面への係留のために、合成ポリマーに結合体化される。一例において、合成物質としては、以下が挙げられる:ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリシロキサン、ポリ(エーテルウレタンウレア)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ガラス表面および誘導体;ならびに、当該分野で理解される他の物質。一例において、天然物質としては、細胞、組織および血管が挙げられる。
【0028】
一実施形態において、本発明は、医学的に移植されるか、または、ヒトの組織もしくは体液と接触するデバイスのための表面コーティングの組成物および方法を提供し、このデバイスとしては、脈管グラフト、ステント、心臓弁、透析膜、膜型人工肺、カテーテルまたはガイドワイヤが挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態において、表面コーティングは、移植片またはデバイスの表面特性を変更する。
【0029】
一実施形態において、本発明は、生細胞または生組織の表面をコーティングするための組成物および方法を提供し、この細胞または組織としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:平滑筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、幹細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、膵島、または遺伝子操作された細胞。
【0030】
一実施形態において、本発明は、多官能性の天然もしくは合成のポリマーに結合体化された、組換えトロンボモジュリン構築物を提供し、このポリマーは、抗炎症性特性または抗血栓性特性を有し得る。一実施形態において、構築物は、1以上の抗炎症性基を含む合成ポリマーに結合体化される。一実施形態において、合成ポリマーは、1以上のさらなる抗炎症性基を含む。一例において、抗炎症性基としては、シアル酸およびその模倣物/誘導体;ならびに、当該分野で理解される他の基が挙げられる。
【0031】
一実施形態において、本発明は、抗凝固性基または抗血栓性基をさらに含む合成ポリマーに結合体化された構築物を提供する。一例において、抗凝固性基または抗血栓性基としては、ヘパリンおよびその模倣物/誘導体;ならびに、当該分野で理解される他の基が挙げられる。
【0032】
一実施形態において、本発明は、病状の処置のための全身性薬剤を提供し、この状態は、微小血管もしくは大血管の血餅、脳卒中、心臓発作、播種性血管内凝固症候群、または他の炎症性もしくは血液凝固促進性の状態に関連する。一実施形態において、本発明は、病状の処置を必要とする患者に、本発明の構築物を投与することによって、病状を処置する方法を提供する。
【0033】
一実施形態において、本発明は、短縮型トロンボモジュリンタンパク質誘導体を提供し、このタンパク質誘導体は、EGF(4−6)様ドメイン、388位のメチオニンのロイシンによる置換、およびこの誘導体のカルボキシ末端に付加されたGGMアミノ酸モチーフを含む。一実施形態において、GGMタンパク質モチーフは、Mアミノ酸残基に対応する非天然アミノ酸を有するタンパク質モチーフとして発現される。一実施形態において、本発明は、配列番号3を提供する。
【0034】
一実施形態において、本発明は、短縮型トロンボモジュリン誘導体およびポリマーを含む短縮型トロンボモジュリン誘導体の結合体を提供し、このトロンボモジュリン誘導体は、EGF(4−6)様ドメイン、388位のメチオニンのロイシンによる置換、およびこの誘導体のカルボキシ末端に付加されたGGMアミノ酸モチーフを含む。一実施形態において、ポリマーは、ポリエチレングリコールを含む。
【0035】
一実施形態において、本発明は、短縮型トロンボモジュリン核酸誘導体を提供し、この核酸誘導体は、EGF(4−6)様ドメイン、388位のメチオニンのロイシンによる置換、および、この誘導体のカルボキシ末端に付加されたGly Gly Metモチーフをコードし得る核酸配列を含む。一実施形態において、核酸配列は、配列番号1を含む。
【0036】
一実施形態において、本発明は、精製された短縮型トロンボモジュリン誘導体タンパク質を生成する方法を提供し、このタンパク質は、EGF(4−6)様ドメイン、388位のメチオニンのロイシンによる置換、および、非天然アミノ酸を含み;そして、上記方法は、短縮型トロンボモジュリン核酸配列を提供する工程;非天然アミノ酸前駆体の存在下で、上記核酸配列を組換え的に発現させる工程;および、組換え発現産物を精製する工程;それによって、精製された短縮型トロンボモジュリン誘導体タンパク質を生成する工程を包含する。一実施形態において、核酸配列は、配列番号1である。
【0037】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに理解され得る。
【実施例】
【0038】
(実施例1.完全な生物活性を有する短縮型トロンボモジュリンのC末端部位特異的PEG化)
(要旨)
生物活性タンパク質に対するポリエチレングリコールの付加(PEG化)は、その血漿中半減期を向上させ得、タンパク質分解性の切断に対する安定性を高め得、そしてまた、タンパク質の免疫原性を減少させ得る。PEG化は、利用可能なリジンアミノ基に対する反応を必要とし得、このリジンアミノ基のうちのいくつかは、生物活性部位内もしくは生物活性部位の近くにあり得る。しばしば、PEG化プロトコルは、非特異的であり、そして、タンパク質活性を損なう。本発明者らは、トロンボモジュリン誘導体(TM)のC末端における部位特異的なPEG化のための戦略を開示する。C末端アジド−メチオニンを有する上皮増殖因子(EGF)様ドメイン4−6から構成される短縮型TM変異体を、組換え技術を用いて、Escherichia coliにおいて発現させた。このTM変異体を、Staudinger反応を介して、メチル−PEG−トリアリールホスフィン化合物に対して部位特異的に結合体化させた。PEG化前後のTM構築物の酵素的活性は、実質的に同様であった。このことは、この部位特異的なPEG化方法の有用性、そして、それにより生成される分子の有用性を確実なものにする。
【0039】
(導入部)
タンパク質のPEG化は、その分子の大きさと、立体障害性の両方を増加させ、結果として、血漿中半減期の増加と、タンパク質分解性の切断に対する抵抗性をもたらし得る。さらに、タンパク質の免疫原性が減少され得る(1、2)。特徴として、PEG化は通常、利用可能なリジンアミノ基に対する反応を必要とし、このリジンアミノ基のうちのいくつかは、生物活性部位内もしくは生物活性部位の近くにあり得る。従って、プロトコルは、しばしば、非特異的であり、そして、タンパク質の活性の喪失をもたらす(3、4)。例えば、Hanら(5)は、ガラス表面上への固定化のためのカップリング剤としてトリクロロトリアジンを介して、TMをPEGに結合体化した。功を奏する固定化にも拘らず、TM活性の減少が認められ、これは、おそらくはPEG化後のタンパク質の立体構造の変質に起因するものである。現行の結合体化戦略の制限を克服するために、数種類のアプローチが提案されてきた。部位特異的なPEG化は、遊離チオールが、結合体化反応のために利用可能なように、操作されたタンパク質内にシステイン残基を導入することによって達成され得る(6、7)。結果として、数種類のPEG誘導体が、この目的のために開発されている(8、9、10、11)。しかし、このアプローチの効率は、例えば、異常なタンパク質の折りたたみが、システイン残基の導入によって誘導される場合、PEG化タンパク質の低い収率、そして、しばしば、活性の実質的な喪失によって損なわれる(12)。代替的な戦略として、Yamamotoら(13)は、リジン欠乏性の腫瘍壊死因子−αのN末端における部位特異的なPEG化を報告した。
【0040】
本発明者らは、本明細書において、ヒトトロンボモジュリンの部位特異的PEG化のための戦略の新規使用を報告する。この膜貫通型タンパク質は、プロテインC経路の重要なレギュレーターであり、インビボでの生理的条件下において有効な主要な抗凝固性機構を代表する(14、15)。TMは、プロテインCのトロンビン触媒的な活性化のための補因子であり、反応速度を1000倍高める(16)。細胞表面に現れるようなTM構造を厳密に模倣し(17、18)、結果として、その生物活性を保存するために、本発明者らは、C末端でのPEG化を研究した。Escherichia coliにおける遺伝学的に方向付けられた合成を用いて、本発明者らは、まず、EGF様ドメイン4−6、およびC末端リンカーとしてアジド官能化メチオニンアナログ(19)を含む、短いTM構築物を発現させた。次いで、適切に操作されたPEG誘導体を用いるStaudingerライゲーション(20)によって、PEG化を達成した。
【0041】
(実験手順)
(材料)
全ての化学試薬を、Sigma Chemical Corporation(St.Louis,MS)から入手した。メチル−PEG−アミン5,000を、Netkar Corp.(Hunstville,AL)から購入した。BamHIおよびエビアルカリホスファターゼ酵素を、New England Biolabs,Inc.(Beverly,MA)から入手した。Quikchange Site−Directed Mutagenesisキットは、Stratagene(La Jolla,CA)製であった。E.coli株B834(DE3)、プラスミドpET−39b(+)、S−Tag Rapid Assayキット、およびSite−Specific Enterokinase Cleavage and Captureキットは、Novagen(Madison,WI)製であった。全てのプラスミド精製キットを、QIAGEN Inc.(Chatsworth,CA)から購入した。ヒトトロンボモジュリンに対するマウスモノクローナル抗体は、COVANCE Corp.(Richmond,CA)製であった。合成オリゴヌクレオチドを、Integrated DNA Technologies,Inc.(Coralville,IA)から購入した。精製された組換えヒトPCおよびヒトαトロンビンは、Haematologic Technologies Inc.(Essex Junction,VT)製であった。ヒト抗トロンビン、組換えヒトトロンボモジュリン(推定上の膜貫通ドメインおよび細胞質内ドメインを欠き、重量約68kDの、トロンボモジュリンの可溶性短縮型形態)および色素形成基質SPECTROZYME PCaを、American Diagnostica Inc.(Stamford,CT)から購入した。DNAおよび細菌を操作するための全ての試薬は、オートクレーブ処理により滅菌した。
【0042】
(機器)
MALDI−TOF質量分析データを、2−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)安息香酸マトリクスを用いて、Applied Biosystem Voyager−DETM STR BiospectrometryTM Workstation MALDI−TOF Mass Spectrometerにて行った。H NMR、13C NMRおよび31P NMRのスペクトルを、600MHz(H、13C)および242MHz(31P)において、CDCl中、Varian INOVA(内部標準(internal)MeSi、δ(デルタ)ppm)にて記録した。光学密度を、Varian Cary 50 Bio UV−可視分光光度計にて記録した。
【0043】
(合成遺伝子の構築)
ヒトTMのEGF(4−6)ドメインをコードするDNAフラグメントを、プライマー
【0044】
【数1】

を用いるポリメラーゼ連鎖反応によって得た。一連の中間体構築物を通じて、このフラグメントを、部位指向性変異誘発を用いて、メチオニン−388(Met−388)のロイシン(Leu)での置換、N末端およびC末端のBamHI部位、ならびに、C末端リンカーGlyGlyMetを含む遺伝子を生成するために使用した。最終的な構築物(TMGGM)を、次いで、発現プラスミドpET−39b(+)のBamHI部位を用いて挿入した。全ての変異は、配列解析により確認した。
【0045】
(タンパク質の発現および精製)
pET39b(+)−TMGGMを、E.coliメチオニン栄養要求株B834(DE3)に形質転換した。1mM MgSO、0.4wt%グルコース、1mg/L 塩化チアミン、0.1mM CaCl、カナマイシン(30mg/L)および全てのタンパク質生成用アミノ酸(40mg/L)を補充したM9最小培地(500mL)を、形質転換した細胞の一晩培養物(20mL)と共に播種した。培養物の濁度が、OD600で0.8に達したときに、最終濃度0.5mMまでイソプロピル−β(ベータ)−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を加えることによって、タンパク質の発現を誘導した。5分後、培地を交換して、メチオニンを除去し、細胞を、沈降させ(4000g、20分)、そして、細胞ペレットを、200mLの1×M9塩で2回洗浄した。細胞を、メチオニンを含まないが、100mg/Lのアジド官能化メチオニンアナログ(19)を補充した上記のM9最小培地(500mL)中に再懸濁させた。メチオニンを欠く培養物を、ネガティブコントロールとして扱った。培養物を、37℃にて4.5時間増殖させた。
【0046】
TMタンパク質の発現を、4〜20%勾配のSDS−PAGEゲル電気泳動により分析し、そして、ヒトトロンボモジュリンに対するマウスモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロット分析により可視化した。標的タンパク質を、Enterokinase切断部位、ヘキサヒスチジン、およびS−タグを含むリーダー配列(タンパク質TM)に融合させたN末端Dsba酵素として発現させた。S−Tag Rapid Assayを用いてタンパク質濃度を定量し、従って、発現の収率を定量した。これは、細胞培養物1Lあたり、平均17mgであった。TMを、標的ポリペプチドの溶出のためにイミダゾール勾配を用いる、ネイティブな条件下でのTALON樹脂(Clonthech Laboratories,Inc.)上の固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを用いることにより、細胞ペレットから精製した。この細胞を、4℃、10,000gにて30分間の遠心分離により回収し、そして、25mLの溶解緩衝液(300mM NaCl、50mM NaHPO、10%グリセロール、1mg/mLリゾチーム、10μg/mL PMSF、pH8)中に再懸濁させた。氷上で30分間インキュベートした後、細胞溶解物を、10,000gにて20分間の遠心分離により浄化した。次いで、可溶性抽出物を、溶解緩衝液で予め平衡化させたTALON金属親和性樹脂(25mL)を含有するカラム上にロードした。弱く結合するタンパク質を、125mLの洗浄緩衝液(300mM NaCl、50mM NaHPO、10%グリセロール、20mMイミダゾール、pH8)でカラムをリンスすることによって除去した。TMを、50mLの溶出緩衝液(300mM NaCl、50mM NaHPO、10%グリセロール、250mMイミダゾール、pH8)を加えることによって溶出した。クロマトグラフィーの画分を、4〜20%勾配のSDS−PAGEゲル電気泳動により分析し、ヒトトロンボモジュリンに対するマウスモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロット分析により可視化した。ニトロセルロース膜を、ECL puls ウェスタンブロッティング検出キット(Amersham Biosciences,UK)を用いて発色させた。エンテロキナーゼの切断により融合タグが除去され、そして、標的タンパク質(TM)が生成した。N末端の配列決定、アミノ酸の組成および質量の分析(SELDI−TOF)により、TMの完全性を確認した:(検出された質量(m/z):16,545.2D(計算値16,540.1D))。
【0047】
(メチル−PEG−トリアリールホスフィン(2)の合成)
1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(5.7mg、27μmol)を、アルゴン下、室温にて、無水CHCl(2mL)中のホスフィノ試薬(1)(10.3mg、28μmol)の溶液に添加した。この混合物を、1時間攪拌し、その後、CHCl(2mL)に溶解させたメチル−PEG−アミン(m−PEG−NH(M 5kD))(120mg、24μmol)を添加した。その後、この混合物を、アルゴン下で2.5日間激しく攪拌した。メチル−PEG−トリアリールホスフィン結合体を、ジエチルエーテル(200mL)中で沈殿させ、そして濾過することによって回収した。この沈殿物を、水中に溶解させた。この水溶液を濾過し、そして、凍結乾燥させて、50%が置換された、最終生成物を得た。この生成物を、さらに精製することなくStaudinger反応に用いた。
【0048】
【数2】

(TM−PEG結合体化)
リン酸緩衝化生理食塩水pH7.4中のTM溶液(300〜500nM、100μL)に、大過剰(1mg)の凍結乾燥したメチル−PEG−トリアリールホスフィンを加え、その後、この混合物を、37℃にて36時間加熱し、最大の結合体化を得た。この混合物を、半分に分け、2セットの反応物を、平行してSDS/PAGEに供した。第1のゲルからのタンパク質を、ニトロセルロース膜に移して、ヒトトロンボモジュリンに対するマウスモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロット分析により可視化した。この手順により、ホスフィンと反応し、それゆえ、PEG標識されているTMタンパク質、ならびに、未反応のTMタンパク質の存在をモニターした。第2のゲルを、塩化/ヨウ化バリウム溶液で染色して、PEG化された分子のみを明らかにした(21)。
【0049】
(TM酵素活性アッセイ)
アッセイ緩衝液(20mM Tris−HCl pH7.5、100mM NaCl、2.5mM CaCl)中の飽和濃度のTM(20μL)を、10nMのヒトαトロンビンおよび可変量のヒトプロテインC(0〜8μM)と共に37℃で30分間インキュベートした。反応を、5μLのヒトアンチトロンビン(10.7μM)を添加して、5分間室温でインキュベートすることによりクエンチした。形成された活性型プロテインCの量を、275μLのSPECTROZYME PCa(218μM)を添加し、その後、室温で20分間インキュベートすることによって決定した。SPECTROZYME PCaは、溶液中の活性型プロテインCの定量のために使用される色素形成の基質である。1モルの基質は、1モルのp−ニトロアニリン(pNA)を生成する活性型プロテインCにより加水分解される。pNA濃度を、以下の等式:
OD407nm=−0.0014+0.0096[pNA] (1)
を用いて、407nmにおけるUV分光測定法(UV spectrophometry)により決定した。上記等式(1)は、既知濃度のpNA溶液の光学密度測定により求めた。形成されたp−ニトロアニリンの対応する速度(RpNA)(mol/分)を、pNA濃度を20分のアッセイ時間で割ることによって求めた。
【0050】
第2の標準的なプロットを用いて、RpNAから活性型プロテインCの濃度を決定した。
【0051】
pNA=−0.059+0.0671[APC] (2)
等式(2)を求めるために、市販の活性型プロテインCを、種々の濃度でアッセイ緩衝液中に溶解し、そして、Spectrozyme PCaと共に室温で20分間インキュベートした。TMトロンビン複合体により形成された活性型プロテインCの対応する速度(RAPC)(mol/分)を、観測されたAPC濃度を、30分のアッセイ時間で割ることによって求めた。
【0052】
TMなしのコントロール実験について得られた値を、生成された活性型プロテインCの最終速度を与えるために減算した。ミカエリス−メンテンのパラメータ(kcat、Km)を、RAPC対プロテインC濃度のプロットから計算した。
【0053】
(結果)
本発明者らのアプローチは、ヒトTMの3つの連続したEGF様ドメイン4−6(EGF4−6)を利用した。本発明者らは、対応するアミノ酸配列が、1つのメチオニン残基(Met−388)のみを含むと解析し、そして、そのタンパク質の生物活性に対する可能な影響を検討した。本発明者らはまた、Met−388のロイシン(Leu)への変異が、ネイティブなTMタンパク質よりも高い酵素活性に関する能力を可能にする一方で、酸化的不活性化に対する抵抗性に寄与し得ることに注目した。それゆえ、本発明者らは、C末端の非天然メチオニンアナログの挿入を有するEGFドメイン4−6を含む短縮型のTMフラグメントが、部位特異的PEG化のための好ましい標的を提供し得るという有意な認定を行なった。
【0054】
短い組換えの生物活性TM変異体を作製するために、本発明者らは、まず、部位指向性変異誘発を用いて、アミノ酸配列349〜492をコードするDNAフラグメントを使用して、Met−388−Leu置換およびC末端リンカーGlyGlyMetを含む遺伝子を生成した(図1)。次いで、最終的な構築物(TMGGM)を、発現プラスミドpET−39b(+)に挿入した。このプラスミドは、Dsba酵素をコードするリーダー遺伝子配列を含み、この酵素は、発現されたタンパク質のジスルフィド結合の形成および異性化を触媒する、ペリプラズム酵素である。それゆえ、本発明者らは、標的のTM変異が、適切なタンパク質の折り畳みおよび酵素活性に必要な全てのジスルフィド結合を有すると期待した。メチオニンを枯渇し、アジド官能化メチオニンアナログであるアジドホモアラニン(19)を補充した培養において、E.coliメチオニン要求性B834(DE)/pET39b(+)−TMGGMを用いる、IPTGの誘導下での発現は、エンテロキナーゼ認識配列、ヘキサヒスチジンおよびS−タグを含むリーダー配列に融合したN末端Dsba酵素として、標的タンパク質を生じた。タンパク質の発現を、SDS/PAGE分析によりモニターし、そして、ウェスタンブロット解析により可視化した。標的タンパク質は、ネガティブコントロールの培養物においては観察されなかったが、リーダー配列に融合したTM(TM)は、アジドホモアラニンを補充したポジティブコントロール培養物においては明らかに検出された。TMの蓄積を、非天然アミノ酸の取り込みについての予備的な証拠として採用した。TMを、ネイティブな条件下で、段階的なイミダゾール勾配溶出を用いる固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを使用することによって、細胞ペレットから精製した。エンテロキナーゼの切断により、融合タグが除去され、そして、標的タンパク質(TM)を生成した。N末端配列決定、アミノ酸の組成および質量の分析(検出された質量:16,545D)により、TMの完全性を確認した。TMは、ウェスタンブロット分析における33kDのバンド(図2)により特徴付けられ、これは、変性条件下でさえ、TMが二量体へと結合することと一致している(25)。
【0055】
TMのアジド改変形態を発現させると、本発明者らは、次いで、このタンパク質の、メチル−PEG−トリアリールホスフィン結合体2との選択的なStaudingerライゲーション(スキームA)を研究した。本発明者らは、TMの構造および活性を変更し得る、副反応の危険性を最小限にするために、このライゲーションプロトコルを選択した。Staudinger反応は、その古典的な形態において、細胞環境における化学選択的なライゲーションに必要とされる基準の多くを満たす。ホスフィンおよびアジドは、水中で、室温にて、迅速かつ選択的に、そして、高い収率で、反応する。本発明者らは、メチル−PEG−トリアリールホスフィン結合体2の合成において1を使用した(Kiickら(19);タンパク質−Flag結合体の調製のため、ならびに、細胞表面のアジドを有するシアル酸を、ビオチン化ホスフィンで標識するために使用された、トリアリールホスフィン化合物1の調製(20)を参照のこと)。
【0056】
1のカルボン酸基を、市販の誘導体、メチル−PEG−アミン(m−PEG−NH(5kD))のアミノ基と反応させて、アミド結合を形成させた(スキームA)。PEG中のホスフィノ基の取り込みを、H NMR、13C NMRおよび31P NMR、ならびに、MALDI−TOF分光法により評価した(図3)。メチル−PEG−トリアリールホスフィン結合体2について観測された6,034Dの平均分子量は、ホスフィノ化合物1のm−PEG−NH(観測される平均分子量:5,668D)への連結の結果としての、346Dの予想された質量の増加と一貫している。
【0057】
m−PEG−NHの1への付加は、疎水性のホスフィノ基の水溶性を劇的に高める。大過剰の、凍結乾燥したメチル−PEG−トリアリールホスフィン結合体2(1mg)を、pH7.4において、PBS中100μLのTM水溶液に加え、37℃にて24時間、Staudingerライゲーションを行なった。TM−PEG結合体を形成した後、経時的に反応混合物のウェスタンブロット分析を行なった(図2)。ゲルは、TMバンドの同時の消失を伴う、初期TMよりも高い分子量のバンドを示す。これらの結果は、Staudinger反応が、PEGポリマーのTM構築物への組み込みと共に、効率的に進行したことを示す。反応は、24時間後には完了しなかったので、本発明者らは、反応をさらに12時間進行させた。SDS−PAGEゲルのウェスタンブロット分析(図4a)および塩化/ヨウ化バリウム染色(図4b)を平行して行い、TM−PEG結合体の形成をモニターした。結合体化していないTMに特徴的なバンドの消失は、TMのPEGに対する生物学的な結合体化が、実質的に(ほぼ100%)完了したことを明らかにした。SDSゲルを、同一の条件下で平行して泳動したが、塩化/ヨウ化バリウム染色を行なって、生物学的な結合体中のPEGの存在を確認した。低分子量のバンドの存在は、未反応のメチル−PEG−トリアリールホスフィン2を表す。
【0058】
酵素活性を評価して、TMの補因子の活性に対するPEG化の影響を決定した(表1)。
【0059】
【表1A】

本発明者らは、まず、TM変異体およびTM変異体、ならびに、細胞外ドメインのみから構成される市販の組換えヒトTM変異体(American Diagnostica Inc.)の活性を研究した。Clarkeら(23)は、Met−388−Leuの変異が、トロンビン−TMフラグメント複合体によるプロテインCの活性化についての、kcatの2倍の増加をもたらすと報告している。本発明者らは、活性のこの増強は観察できなかったが、ミカエリス−メンテンのパラメータは、TMおよびTM、ならびに、市販のヒトTMタンパク質について同様であった。本発明者らは、生成されたTM変異体が、適切なトロンビンの結合およびプロテインCの活性化に必要とされる、不可欠な立体配置および構造を示したと推論した。有意なことには、PEGのTMへの組み込みは、補因子の活性には影響を与えず、この部位特異的なPEG化スキームが、トロンビンの結合およびプロテインCの活性化と干渉しなかったことを示唆している。説明すると、本発明者らのグループによる協調した努力にも拘らず、潜在的な生物学的結合部位として、C末端にシステインを有する、酵素的に活性な短縮型のTM変異体を生成するための以前の試みは、酵母およびE.coliの両方の発現系を用いても、失敗に終わった。本発明者らは、さらなる末端システインが、おそらく、EGF配列内のネイティブなジスルフィドループの存在に依存して、正常なタンパク質の折り畳みと干渉すると推測する。
【0060】
(結論)
アジド官能化メチオニンC末端リンカーを用いて設計した、EGF(4−6)様ドメインを含有するヒトトロンボモジュリン誘導体を、遺伝子操作戦略を用いて、首尾よく合成した。このタンパク質は、ネイティブなヒトTMと匹敵するプロテインCに対する生物活性を示した。このTM構築物を、穏やかな条件下でのStaudinger反応を介して、新規の操作されたメチル−PEG−トリアリールホスフィン化合物へと首尾よく結合体化した。PEG化の前後での酵素活性は、実質的に同様であり、この部位特異的なPEG化方法の有用性および功を奏する用途を示唆する。本発明者らの知る限り、この報告は、実質的に完全な生物活性を保持した、トロンボモジュリン変異体の部位特異的なPEG化を記述する、最初の報告である。
【0061】
(実施例1についての参考文献)
【0062】
【表2−1】

【0063】
【表2−2】

【0064】
【表2−3】

(実施例2.薄膜上に固定化するための、組換えトロンボモジュリン結合体の合成)
ポリマー表面上へのTMの共有結合性の固定化が研究されている(AD、AE)。全ての場合において、結合体化のスキームは、非部位特異的なカルボジイミドベースのカップリング反応を利用しており、この反応において、TMは、タンパク質表面上の任意の自由に利用可能なアミノ官能性もしくはカルボキシ官能性を介して、基質にカップリングされた。その結果として、TMの生物活性は、しばしば、表面へのカップリング後に減少した。
【0065】
本発明者らは、全長TMが、脂質/タンパク質自己アセンブリ、および、インサイチュ光重合のプロセスにより、広範囲の表面濃度にわたって、安定な膜を模倣する薄膜へと組み込まれ得ることを実証した。AA、AB、ACを参照のこと。しかし、遺伝学的に方向付けられた合成を用いる代替的な戦略として、本発明者らは、タンパク質のC末端に生合成的に組み込まれた、人工アミノ酸アナログである、アジド(N3)−アラニンと共に、EGFドメイン4−6の触媒領域を含む、短いTM構築物(rTM−N3)を作製した。適切なホスフィンPEO誘導体(MW 3000)を用いるStaudingerライゲーションにより、本発明者らは、TM−PEO結合体を生成した。アジドTMの構築物および結合体を、ウェスタンブロッティングおよびSDSPAGEにより完全に特徴付けた。この結合体の触媒活性(kcat、Km)は、rTM−N3変異体単独、ならびに、市販の水溶性ヒトTMタンパク質(SolulinTM)と匹敵するものである。注目すべきは、例えば、ビオチンまたはジエンで終結するPEG誘導体を用いることによって、TMは、表面に迅速かつ直接的にカップリングされ得、そして、TMを膜アセンブリに連結するためのさらなるアプローチを提供する。
【0066】
アジドTMのホスフィン−PEOとのStaudingerライゲーションは、限定的でないわけではない。不可欠なホスフィンは、空気による酸化に対して感受性であり、そして、その改善された水溶性および増加された反応速度のための最適化は、合成的に興味深い。こうして、本発明者らは、rTM−N3の標的表面への直接的な一段階の生体直交性(bioorthogonal)のカップリングのための代替的な戦略を研究した。具体的には、本発明者らは、rTM−N3が、「クリック」化学と呼ばれる、アジド−アルキン[3+2]環化付加を介して、表面にカップリングされ得ることを実証した(AF、AG)。有意なことには、このアプローチおよびStaudingerライゲーションの両方が、生体分子の活性を変質させない穏やかな条件下で、豊富に官能化された周囲における、複雑な生体分子を選択的に結合体化させるための手段を提供する。化学的な結合体化のスキームを図6にまとめる。(AF)を参照のこと。
【0067】
rTM−N3は、N末端のS−タグと共に発現され、このことは、表面のカップリングの有効性を、FITC標識した抗S−タグ抗体を用いて評価することを可能にした。同様に、N3誘導体化炭水化物を標的表面に連結するためにこの戦略を用いる可能性はまた、ヘパリンのようなより複雑な多糖類についてのモデルオリゴ糖として、アジドラクトースを用いて、評価した。FITCで標識したレクチンを用いて、炭水化物表面の結合体化の程度および均一性を確認した。このスキームは、rTMおよび炭水化物の両方の表面カップリングについてかなり汎用性であることが分かった。
【0068】
(実施例2についての参考文献)
【0069】
【表3】

(参考としての援用、およびバリエーションに関する陳述)
本願の全体にわたる全ての参考文献(たとえば、特許文献(発行もしくは付与された特許または等価物を含む);特許出願公報;および非特許文献または他の資料)は、あたかも、各参考文献が、少なくとも部分的に、本願における開示と矛盾しない程度に、個々に参考として援用される(例えば、部分的に矛盾した参考文献は、その参考文献の部分的に矛盾した部分を除いて、参考として援用される)かのように、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0070】
本明細書に対するあらゆる添付物は、本明細書および/または図面の一部として参考として援用される。
【0071】
本発明の化合物を含む組成物は、プロドラッグの形態を有し得る。本発明の化合物のプロドラッグは、本発明の方法において有用である。インビボにおいて、本発明の化合物の生物学的、薬学的、または、治療的に活性な形態を提供するように変換される任意化合物が、プロドラッグである。プロドラッグの種々の例および形態は、当該分野で周知である。前駆体タンパク質もしくは前駆体核酸のような生体分子は、プロドラッグであり得る。プロドラッグの例は、特に、
【0072】
【数3】

において見出される。
【0073】
用語「〜を含む(comprise)」、「〜を含む(comprises)」、「〜を含んだ(comprised)」、または「〜を含む(comprising)」が、本明細書において使用される場合、これらは、言及される、定まった特徴、数字、工程または成分の存在を特定するものとして解釈されるべきであって、その1つ以上の他の特徴、数字、工程、成分またはそれらの群の存在または追加を除外するものとして解釈されるべきではない。本発明の別の実施形態もまた、用語「〜を含む(comprising)」または「〜を含む(comprise(s))」または「〜を含んだ(comprised)」は、必要に応じて、文法上類似の用語で置き換えられ(例えば;「〜からなる(consisting/consist(s))」または「本質的に〜からなる(consisting essentially of/consist(s) essentially of)」)、それによって、必ずしも同延ではないさらなる実施形態を記述する。
【0074】
本発明は、種々の特定の、かつ好ましい実施形態および技術を参照して記載されている。しかし、本発明の精神および範囲内に留まりながら、多くのバリエーションおよび改変がなされ得ることが理解されるべきである。本明細書において具体的に記載されたもの以外の組成物、方法、デバイス、デバイスの要素、材料、手順および技術が、過度の実験に頼ることなく、本明細書中に広く開示された本発明の実施に適用され得ることは、当業者に明らかである。本明細書中に記載された、組成物、方法、デバイス、デバイスの要素、材料、手順および技術の、全ての当該分野で公知の機能的な等価物が、本発明により包含されることが意図される。ある範囲が開示されている場合は常に、全ての部分的な範囲および個々の値が包含されることが意図される。本発明は、開示される実施形態(図面に示されるもの、または、明細書中に例示されるものを含む)により制限されるべきではなく、これらの実施形態は、制限する目的ではなく、実例もしくは例示の目的で与えられている。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ制限されるはずである。
【0075】
(参考文献)
【0076】
【表4−1】

【0077】
【表4−2】

【0078】
【表4−3】

【0079】
【表4−4】

(スキームA)
メチル−PEG−トリアリールホスフィン結合体2の合成、およびそのアジド官能化TMへの結合体化。
【0080】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、そのアミノ酸配列が、遺伝子TMGGMによりコードされる、標的とされた短縮型TMの模式的な構造である。
【図2】図2は、TM誘導体のウェスタンブロット分析(4〜20% SDS−PAGEゲル)の結果を例示する:(1)精製されたTM;(2)標的タンパク質TMをもたらす、TMのエンテロキナーゼによる切断;(3〜5)経時的な、TMへの2の結合体化:それぞれ、4時間、8時間および24時間。M:分子量マーカータンパク質。
【図3】図3は、(a)出発ポリマーであるメチル−PEG−アミン(検出された平均分子量:5,668D)および(b)メチル−PEG−トリアリールホスフィン結合体2(検出された平均分子量:6,034D、計算値6014D)のMALDI−TOF質量スペクトルを例示する。
【図4】図4は、10% SDS−PAGEゲルの(a)ウェスタンブロット分析;および(b)塩化/ヨウ化バリウム染色を例示する:(1)および(3)36時間後の、2のTMBへの生体結合体化の反応混合物;(2)最初のアジド官能化TMB。M:分子量マーカータンパク質。
【図5】図5は、非天然アミノ酸を用いる、遺伝学的に方向付けられた合成、および結合体化反応を例示する。
【図6】図6は、アジド−アルキン[3+2]環化付加(「クリック」化学)による、アジドラクトース(A)およびアジドTM(B)の生体直交性の表面ライゲーションを例示する。表面に結合した炭水化物およびTMを、それぞれ、FITC−レクチン(A)およびFITC抗−S−タグMAb(B)で染色することにより可視化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短縮型トロンボモジュリンタンパク質誘導体であって、該誘導体は、EGF(4−6)様ドメイン、388位のメチオニンのロイシンによる置換、および、該誘導体のカルボキシ末端に付加されたGGMアミノ酸モチーフを含む、タンパク質誘導体。
【請求項2】
前記GGMタンパク質モチーフが、Mアミノ酸残基に対応する非天然アミノ酸を有するタンパク質モチーフとして発現される、請求項1に記載の短縮型トロンボモジュリンタンパク質。
【請求項3】
配列番号3を含む、短縮型トロンボモジュリンタンパク質。
【請求項4】
短縮型トロンボモジュリン誘導体およびポリマーを含む短縮型トロンボモジュリン誘導体の結合体であって、該トロンボモジュリン誘導体は、EGF(4−6)様ドメイン、388位のメチオニンのロイシンによる置換、および、該誘導体のカルボキシ末端に付加されたGGMアミノ酸モチーフを含む、結合体。
【請求項5】
前記ポリマーが、ポリエチレングリコールを含む、請求項4に記載の結合体。
【請求項6】
短縮型トロンボモジュリン核酸誘導体であって、該誘導体は、EGF(4−6)様ドメイン、388位のメチオニンのロイシンによる置換、および、該誘導体のカルボキシ末端に付加されたGly Gly Metモチーフをコードし得る核酸配列を含む、核酸誘導体。
【請求項7】
配列番号1を含む、請求項5に記載のトロンボモジュリン誘導体。
【請求項8】
精製された短縮型トロンボモジュリン誘導体タンパク質を生成する方法であって、該タンパク質は、EGF(4−6)様ドメイン、388位のメチオニンのロイシンによる置換、および、非天然アミノ酸を含み;該方法は、短縮型トロンボモジュリン核酸配列を提供する工程;非天然アミノ酸前駆体の存在下で、該核酸配列を組換え的に発現させる工程;および、組換え発現産物を精製する工程;それによって、精製された短縮型トロンボモジュリン誘導体タンパク質を生成する工程を包含する、方法。
【請求項9】
前記核酸配列が、配列番号1である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記非天然アミノ酸が、メチオニンアナログ、アラニンアナログ、フェニルアラニンアナログ、ロイシンアナログ、プロリンアナログおよびイソロイシンアナログからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記メチオニンアナログが、L−2−アミノ−4−アジドブタン酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非天然アミノ酸が、構築物のC末端部分に位置する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
生物活性タンパク質の部位特異的PEG化の方法であって、該方法は、変質可能なアミノ酸残基を同定する工程であって、該変質が、タンパク質の活性を実質的に損ねない、工程;該アミノ酸残基を変質させる工程;該生物活性タンパク質内のある部位に非天然アミノ酸残基を組み込む工程、および、該部位において、PEGポリマーを該非天然アミノ酸に結合体化させる工程、を包含する、方法。
【請求項14】
前記生物活性タンパク質が、トロンボモジュリンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生物活性タンパク質が、トロンボモジュリン誘導体である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
トロンボモジュリンタンパク質またはトロンボモジュリン誘導体と、ポリマーとの結合体。
【請求項17】
前記ポリマーがPEGである、請求項16に記載の結合体。
【請求項18】
請求項16に記載の結合体であって、前記ポリマーが、血漿中半減期の延長、タンパク質分解性の切断に対する安定性、および、タンパク質の免疫原性の減少、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される特性を前記結合体に付与し得る、結合体。
【請求項19】
前記結合体が可溶性である、請求項16に記載の結合体。
【請求項20】
プロテインCおよび非天然アミノ酸を活性化し得る、触媒的に活性な部位を含む、トロンボモジュリン誘導体。
【請求項21】
前記誘導体が、トロンボモジュリンの細胞外部分を含む、請求項20に記載のトロンボモジュリン誘導体。
【請求項22】
前記活性な部位が、EGF(4−6)ドメインを含む、請求項20に記載のトロンボモジュリン誘導体。
【請求項23】
前記非天然アミノ酸を介して、直鎖もしくは分枝の天然もしくは合成のポリマーに結合体化された、請求項20に記載のトロンボモジュリン誘導体。
【請求項24】
前記直鎖もしくは分枝の合成ポリマーが、ポリ(t−ブチルアクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、糖脂質およびその模倣物;ならびに他のポリマー;糖タンパク質およびその模倣物、ポリ(アルギニン)、多糖類およびその模倣物;ならびに、当該分野で理解される他のポリマーからなる群より選択される、請求項23に記載の誘導体。
【請求項25】
トロンボモジュリン誘導体を基質に結合体化させる方法であって、該基質は、合成もしくは天然物質の表面;該結合体の組織特異的もしくは部位特異的な送達のためのターゲティング基;および、1以上のさらなる抗炎症性/抗血栓性特性を有し得る化合物からなる群より選択される、方法。
【請求項26】
1以上の状態の処置のための全身性薬剤として作用し得る、トロンボモジュリン誘導体またはその結合体であって、該1以上の状態は、微小血管もしくは大血管の血餅、脳卒中、心臓発作、播種性血管内凝固症候群、および他の炎症性もしくは血液凝固促進性の状態からなる群より選択される、誘導体。
【請求項27】
医学的に移植されるか、または、ヒトの組織もしくは体液に接触するデバイスの表面のコーティングであって、トロンボモジュリン誘導体またはその結合体を含む、コーティング。
【請求項28】
前記移植されるか、または、ヒトの組織もしくは体液に接触するデバイスは、脈管グラフト、ステント、心臓弁、透析膜、膜型人工肺、カテーテルおよびガイドワイヤからなる群より選択される、請求項27に記載のコーティング。
【請求項29】
トロンボモジュリン誘導体またはその結合体を含む、生細胞または生組織のためのコーティング。
【請求項30】
前記細胞または組織が、平滑筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、幹細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、膵島、遺伝子操作された細胞、および他の細胞からなる群より選択される、請求項29に記載のコーティング。
【請求項31】
請求項27に記載のコーティングであって、該コーティングは、前記細胞または組織の抗炎症性特性を確立または増強させ得る、コーティング。
【請求項32】
短縮型TM誘導体と、血液または組織と接触する表面との共有結合性の結合体であって、該結合体は、スペーサーとして、天然もしくは合成のポリマーを含む、結合体。
【請求項33】
実質的にタンパク質の生物活性を保持したままで、合成もしくは天然の物質に対して、部位特異的にトロンボモジュリンを共有結合性に結合体化するための、方法。
【請求項34】
組換えトロンボモジュリンTM構築物であって、EGF様ドメイン4−6と、必要に応じて該構築物のC末端部分に単一もしくは複数の非天然アミノ酸を含む、構築物。
【請求項35】
請求項34に記載の構築物であって、該構築物は、1以上の非天然アミノ酸を介する、適切なポリマースペーサーとの反応により改変される、構築物。
【請求項36】
請求項35に記載の改変された構築物であって、該改変された構築物は、表面上へのさらなる固定化のため、または、抗炎症性活性もしくは抗血栓性活性であり得る、直鎖もしくは多官能性の、天然もしくは合成の化合物への結合体化のために適合される、構築物。
【請求項37】
TMまたはTM誘導体の生物学的結合体を生成する方法であって、該方法は、TMの生物活性を保存するような、中程度の結合体化反応を包含する、方法。
【請求項38】
トロンボモジュリン構築物であって、該構築物は、天然もしくは合成のポリマー;または、抗体もしくは他のリガンド認識分子のような他の天然分子に結合体化される、構築物。
【請求項39】
前記リガンド認識分子が、抗フィブリン抗体である、請求項38に記載の構築物。
【請求項40】
請求項38に記載の結合体化された構築物であって、結合体化部分は、組換えTMタンパク質における少なくとも1つの非天然アミノ酸を介して結合される、構築物。
【請求項41】
ポリ(エチレングリコール)分子に結合体化された構築物であって、該PEG分子が、直鎖状または分枝状である、構築物。
【請求項42】
前記PEGが直鎖状である、請求項41に記載の構築物。
【請求項43】
表面への係留のために、天然もしくは合成のポリマーに結合体化された、トロンボモジュリン構築物。
【請求項44】
前記天然もしくは合成のポリマーが、多官能性である、請求項43に記載の構築物。
【請求項45】
前記ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)である、請求項43に記載の構築物。
【請求項46】
請求項43に記載の構築物であって、さらに、ビオチン、結合体化されたジエン、アジド、アルキン、ジフェニルホスフィン、トリアリールホスフィン;および、当該分野で理解される他の基からなる群より選択される係留基を含む、構築物。
【請求項47】
請求項43に記載の構築物であって、さらに、シアリル−ルイスX;抗体、Fabフラグメントなど;VCAM−1、ICAM−1もしくは他の炎症性細胞表面タンパク質を認識し得るタンパク質もしくは非タンパク質の認識分子(アプタマーを含む);抗フィブリン抗体;ストレプトアビジン;アジド;アルキン;N−(ε−マレイミドカプロイル);ならびに、当該分野で理解される他のターゲティング基からなる群より選択されるターゲティング基を含む、構築物。
【請求項48】
合成物質または天然物質の表面への係留のために、合成ポリマーに結合体化された、TM構築物。
【請求項49】
前記合成物質が、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリシロキサン、ポリ(エーテルウレタンウレア)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ガラス表面および誘導体;ならびに、当該分野で理解される他の物質からなる群より選択される、請求項48に記載の構築物。
【請求項50】
前記天然物質が、細胞、組織および血管からなる群より選択される、請求項48に記載の構築物。
【請求項51】
医学的に移植されるか、または、ヒトの組織もしくは体液と接触するデバイスのための表面コーティングであって、該コーティングは、TM構築物またはその結合体を含む、コーティング。
【請求項52】
TM構築物またはその結合体を含む、生細胞または生組織のための表面コーティング。
【請求項53】
多官能性の天然もしくは合成のポリマーに結合体化された、組換えトロンボモジュリン構築物であって、該ポリマーは、抗炎症性特性または抗血栓性特性を有し得る、構築物。
【請求項54】
前記合成ポリマーが、1以上の抗炎症性基、または1以上のさらなる抗炎症性基を含む、請求項53に記載の構築物。
【請求項55】
前記抗炎症性基が、シアル酸;その模倣物/誘導体;ならびに、当該分野で理解される他の基を含む、請求項54に記載の構築物。
【請求項56】
合成ポリマーに結合体化されたTM構築物であって、該構築物は、さらに、抗凝固性基または抗血栓性基を含む、構築物。
【請求項57】
前記基が、ヘパリン;その模倣物/誘導体;ならびに、当該分野で理解される他の基を含む、請求項56に記載の構築物。
【請求項58】
病状の処置のための全身性薬剤であって、該薬剤は、TM構築物またはその結合体を含み、該状態は、微小血管もしくは大血管の血餅、脳卒中、心臓発作、播種性血管内凝固症候群、または他の炎症性もしくは血液凝固促進性の状態に関連する、薬剤。
【請求項59】
病状の処置を必要とする患者に、本発明のTM構築物またはその結合体を投与することによって、該病状を処置する方法。
【請求項60】
前記状態は、微小血管もしくは大血管の血餅、脳卒中、心臓発作、播種性血管内凝固症候群、または他の炎症性もしくは血液凝固促進性の状態に関連する、請求項59に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−522820(P2007−522820A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554285(P2006−554285)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/005554
【国際公開番号】WO2005/081926
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506282425)エモリー ユニバーシティ (4)
【Fターム(参考)】