説明

トンネル内の掘削ズリ搬出工法

【目的】切羽付近の掘削設備などに対し電源供給を行う電源供給設備の設置を切羽付近から近い箇所とし、延伸ベルトコンベアを延伸するだけで、電源供給設備の移動も同時に行えるトンネル内の掘削ズリ搬出工法を提供することを目的とする。
【構成】少なくともトンネル掘削設備及び照明に供給する電源設備を搭載した電源車両は、テールピース台車の後方に配置させてなるトンネル内の掘削ズリ搬出工法において、クラッシャーコンベア上に載置されたズリを、中継コンベアが省略され、中継コンベアより幅狭に形成された延伸ベルトコンベア上へ直接搬送出来るようテールピース台車を構成すると共に、電源車両に搭載された電源設備をテールピース台車に搭載可能に構成して、電源車両使用をカットし、 クラッシャーコンベアから幅狭な延伸コンベア上へズリをスムーズ搬送可能にした延伸コンベヤ先端側にガイド部材を装着した、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ベルトコンベア方式を採用したトンネル掘削ズリ搬出工法にかかり、特に、テールピース台車により誘導された延伸ベルトコンベアを使用してのトンネル内の掘削ズリ搬出工法に関するものである。

【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削において発生するズリの搬送手法としては、いわゆるタイヤ方式とベルトコンベア方式とが存在している。
【0003】
ここで、タイヤ方式とは、トラクタショベル車両やダンプ車両などを用いてズリを搬送するものであるが、いわゆるこのタイヤ方式では、ダンプ車両などによる坑内での車両災害の発生が懸念される。また、ダンプ車両など車両からの排ガスや走行時の粉塵による空気汚染の発生が懸念される。
【0004】
さらに、ダンプ車両などの頻繁な坑内走行によって路盤損傷が発生(トンネル延長が長くなると顕著)することが懸念される。
【0005】
これに対し、ベルトコンベア方式では、坑内走行車両が少ないため、前記のような坑内での車両災害の危険性が低いものとなっている。また、前記車両走行による排ガス汚染も少なく、良好である。さらには、路盤についても通行車両が少なく路盤の損傷は小さいものとなる。
【0006】
また、ベルトコンベアの稼動音や振動は、比較的小さく、作業環境上も好ましいものである。
【0007】
よって、近年では、ベルトコンベア方式、特に、延長したベルトコンベアの使用、いわゆる延伸ベルトコンベアを使用しての掘削ズリ搬出工法が近年、数多く採用されるに至っている(特開平11−294082号公報)。
【0008】
しかしながら、前述したベルトコンベア方式においても、トンネル工事の機械0化施工が進む中で、坑内での機械設備の配置台数が多くなり、作業スペースを確保することが安全上重要となってきているのが現状である。
【0009】
ここで、従来のテールピース台車に誘導された延伸ベルトコンベアを使用してのズリ出し工法では、いわゆるトンネル稼動機械の電源供給として、電源設備の坑内設置が必要とされ、例えば、4tトラックなどの電源車両に電源設備を搭載するものとしていたが、その電源車両は、トンネル掘削作業の関係上、少なくとも前記テールピース台車の後方以降の延伸ベルトコンベア脇に配置せざるを得ないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−294082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように、従来掘削設備などに電源供給する電源車両はいわゆるテールピース台車の後方に配置せざるを得ないため、切羽付近の掘削設備から電源車両まで略100m以上の距離があり、その中間地点に電源中継ボックスを配置するなど大規模な電源供給設備となってしまっていた。
【0012】
また、前記電源車両の移動が、延伸ベルトコンベアを延伸する毎に必要となってしまい、全体的なトンネル掘削設備の移動作業がきわめて労力を要するものとなっていた。
【0013】
かくして、本発明は、前記従来の課題を解消するために創案されたものであって、従来の電源車両を用いず、いわゆるテールピース台車の構造を見直し、切羽付近の掘削設備などに対し電源供給を行う電源供給設備の設置を前記切羽付近から近い箇所とし、しかも安定的な電源供給が行える設備を構築し、延伸ベルトコンベアを延伸するだけで、前記電源供給設備の移動も同時に行えるトンネル内の掘削ズリ搬出工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によるトンネル内の掘削ズリ搬出工法は、
トンネル掘削設備により掘削されたズリをクラッシャーコンベア上に載置し、該クラッシャーコンベアより前記ズリを搬送してテールピース台車に備えられた、前記クラッシャーンベアのコンベア幅より幅狭に形成された中継コンベア上へ搬送し、中継コンベアから前記ズリを搬送して、前記中継コンベアのコンベア幅より幅狭の延伸ベルトコンベア上へ搬送しており、少なくとも前記トンネル掘削設備及び照明に供給する電源設備を搭載した電源車両は、前記テールピース台車の後方に配置させているトンネル内の掘削ズリ搬出工法において、
前記クラッシャーコンベア上に載置されたズリを、中継コンベアが省略され、該中継コンベアより幅狭に形成された延伸ベルトコンベア上へ直接搬送出来るようテールピース台車を構成すると共に、前記電源車両に搭載された電源設備を前記テールピース台車に搭載可能に構成して、前記電源車両使用をカットし、
前記クラッシャーコンベアから幅狭な延伸コンベア上へズリをスムーズ搬送可能にした延伸コンベヤ先端側にホッパー状のガイド部材を装着した、
ことを特徴とし、
または、
前記テールピース台車には、防振部材を介して電源設備を搭載した、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるトンネル内の掘削ズリ搬出工法であれば、トンネル掘削作業に電源を供給する電源設備を搭載した、いわゆる電源のみを搭載した電源車両を用いず、テールピース台車に電源車両を兼用する様に構成し、もって切羽付近の掘削設備などから電源供給設備までの距離を短くできて、かつ安定的な電源供給を行える電源供給設備を提供出来ると共に、トンネル掘削作業の進展に伴い、電源供給設備の移動については、テールピース台車が備える延伸ベルトコンベアを延伸するだけで、前記電源供給設備の移動さえも同時に行えるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による掘削刷り搬出工法の概略構成を説明する説明図(その1)である。
【図2】本発明による掘削刷り搬出工法の概略構成を説明する説明図(その2)である。
【図3】本発明による掘削刷り搬出工法の概略構成を説明する説明図(その3)である。
【図4】本発明による掘削刷り搬出工法の概略構成を説明する説明図(その4)である。
【図5】従来の掘削刷り搬出工法の概略構成を説明する説明図(その1)である。
【図6】従来の掘削刷り搬出工法の概略構成を説明する説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、従来の一般的なトンネル内の掘削ズリ搬出工法の概略構成につき図5、図6を参照して説明しておく。
【0018】
トンネル1内において、符号2は切羽を示したものであり、符号3はトンネル掘削に使用される油圧ジャンボである。また、該油圧ジャンボ3の後方位置には、吹付システム機4が配置され、さらにその後方には油圧ブレーカ5、油圧ショベル6が配置されている。
【0019】
さらに、油圧ショベル6の後方には自走クラッシャー7とサイドダンプ8が並んで配置されている。なお、符号20は電源中継ボックスを示し、後述する電源車両21からの電源ケーブルなどを該電源中継ボックス20で中継するものとしている。すなわち電源車両21からの電源ケーブルは100m長が最大の長さのものであり、前記トンネル1内では電源を供給する機器と100m以上離れている。その為前記電源中継ボックス20を用い、該機器で接続せざるを得ないからである。
【0020】
符号22は従来のテールピース台車であり、その後方位置には集塵機11が延伸ベルトコンベア9の脇に設置され、さらにその後方に前記した電源車両21が延伸ベルトコンベア9の脇に配置されている。
【0021】
なお、前記テールピース台車22はこの延伸ベルトコンベア9の先端部を保持し、トンネル掘削が進行するにつれ、切羽2側に延伸ベルトコンベア9を牽引するように構成されているものである。
【0022】
しかして、トンネル掘削により発生したズリは、油圧ブレーカ5で破砕され、破砕されたズリはサイドダンプ8に積載され、サイドダンプ8は積載されたズリを自走クラッシャー7に移送し、自走クラッシャー7内でさらに破砕される。
【0023】
その後、破砕されたズリは、自走クラッシャー7のクラッシャーコンベア12上に載置され、該クラッシャーコンベア12から従来のテールピース台車22に設けられた中継コンベア23上(図6参照)に移送される。
【0024】
そして、前記中継コンベア23上に載置されたズリは、図6から理解されるように、延伸ベルトコンベア9上に移送され、該延伸ベルトコンベア9上に搬送されたズリは、トンネル1外部へ排出されるものとなる。
【0025】
このように従来は、クラッシャーコンベア12、中継コンベア23、そして延伸ベルトコンベア9と3つのベルトコンベアを介してズリを外部へ排出するものとしていた。
【0026】
これは、延伸ベルトコンベア9のコンベア幅が例えば610mmとされており、これに対し、クラッシャーコンベア12のコンベア幅は900mmとなっている。その為、従来のテールピース台車22にコンベア幅750mmの中継コンベア23を設けてズリ搬送をスムーズに行うよう構成していることが要因としてあげられる。
【0027】
しかしながら、これにより従来、電源設備を搭載した電源車両21は、きわめて後方位置に配置せざるを得ず、その為、電源中継ボックス20を設けたり、トンネル掘削が進行するにつれ、トンネル掘削設備全体を移動しなければならないが、電源車両を含め、その移動が大規模になり作業手間となるなどの課題があったことなどはすでに述べたとおりである。
【0028】
しかるに本発明では上記を解消するズリ搬出工法を提案するに至った。
本発明を図1乃至図4に基づいて説明すると、トンネル1内において、切羽2に対向してトンネル掘削に使用される油圧ジャンボ3が配置され、該油圧ジャンボ3の後方位置には、吹付システム機4が配置され、さらにその後方には油圧ブレーカ5、油圧ショベル6が配置されている。
【0029】
さらに、油圧ショベル6の後方には自走クラッシャー7とサイドダンプ8が並んで配置されている。
そして、その後方には、本発明によるテールピース台車10が配置され、さらにその後方に集塵機11が設置される。
【0030】
なお、本発明によるテールピース台車10についても延伸ベルトコンベア9の先端部を保持し、トンネル掘削が進行するにつれ、切羽2側に延伸ベルトコンベア9を牽引するように構成されている。
【0031】
しかして、本発明によるトンネル掘削で発生したズリの搬出工法につき説明すると、トンネル掘削により発生したズリは、油圧ブレーカ5で破砕され、破砕されたズリはサイドダンプ8に積載され、サイドダンプ8は積載されたズリを自走クラッシャー7に移送し、自走クラッシャー7内でさらに破砕される。
【0032】
その後、破砕されたズリは、自走クラッシャー7のクラッシャーコンベア12上に載置され、該クラッシャーコンベア12から本発明によるテールピース台車10に接続されている延伸ベルトコンベア9上にダイレクトに移送され、該延伸ベルトコンベア9によって搬送されたズリは、トンネル1外部へ排出されるものとなっている。
【0033】
このように本発明では、クラッシャーコンベア12、そして延伸ベルトコンベア9と2つのベルトコンベアを介してズリを外部へ排出するものとした。
【0034】
ところで前述したように、延伸ベルトコンベア9のコンベア幅が例えば610mmとされており、これに対し、クラッシャーコンベア12のコンベア幅は900mmである。
その為、従来では、従前のテールピース台車22にコンベア幅750mmの中継コンベア23を設けてズリ搬送をスムーズに行うよう構成していた。
【0035】
しかし、本発明では、まず第1に幅狭の延伸ベルトコンベア9上にクラッシャーコンベア12からのズリがスムーズに搬送できるよう構成した。すなわち、まずクラッシャーコンベア12の後端部に接続される延伸ベルトコンベア9の先端側にホッパー状のガイド部材16を形成したのである。これにより幅広のクラッシャーコンベア12から幅狭の延伸ベルトコンベア9上にスムーズにズリを搬送できるものとした。
【0036】
すなわち、従来、クラッシャーコンベア幅900mm〜テールピースコンベア幅750mm〜延伸ベルトコンベア幅610mmへと乗り継ぎをしていたが、乗り継ぎ回数が増えることでシュートのズリ詰りや、乗り継ぎシュートの磨耗頻度が激しいこともあり、テールピースコンベアである中継コンベアを省きクラッシャーコンベア12から直接延伸ベルトコンベア9に乗り継ぐ設備へと構成変更したのである。
【0037】
次に、本発明のテールピース台車10では、上部に電源設備搭載部13を形成し、従来の電源車両を使用しないものとした。これにより、切羽2から電源供給設備までの距離を100m以内とすることが出来、従来用いられていた電源中継ボックス20も省略できるものとなった。
【0038】
図4は本発明によるテールピース台車10を平面で表したものであり、上部に形成された電源設備搭載部13には、トランス14,通信・アースケーブル15が搭載されており、当該箇所から、切羽2側の油圧ジャンボ3や吹付システム機4,そして坑内を照らす照明などに電源が供給される。
【0039】
なお、本発明によるテールピース台車10は、その電源設備搭載部13に例えば重量が3t程度のトランス14や重量が1t程度の各種のケーブル15類が搭載されるため、テールピース台車10を構成する各構成フレームを補強してあり、また電源設備搭載部13の床部には防振ゴムなどの防振部材を介してトランス14などを固定するものとした。
【0040】
テールピース台車10には延伸ベルトコンベア9が搭載されており、クラッシャーコンベア12からのズリ乗り継ぎによる振動等が発生するため、電源トランス配置面に前述の防振ゴムなど防振部材を配置したのである。また、自走クラッシャー7による破砕からの破砕粉塵対策として、各ケーブルにはシートによる覆いをして、粉塵飛散養生を施し、後方に自走式集塵機11を配置してある。
【0041】
このように、本発明を特有の構成としたことによって、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0042】
後方の電源車両がなくなることにより、坑内のスペースが大きく確保される。また、二次側供給電源供給長が極端に短く出来る。切羽2までの電源供給移動がベルトコンベアの延伸作業の1週間隔(約30m)となり短期間の移動であり安全に施工できるようになる。

【符号の説明】
【0043】
1 トンネル
2 切羽
3 油圧ジャンボ
4 吹付システム機
5 油圧ブレーカ
6 油圧ショベル
7 自走クラッシャー
8 サイドダンプ
9 延伸ベルトコンベア
10 テールピース台車
11 集塵機
12 クラッシャーコンベア
13 電源設備搭載部
14 トランス
15 高圧ケーブル、通信・アースケーブル
16 ガイド部材
20 電源中継ボックス
21 電源車両
22 従来のテールピース台車
23 中継コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削設備により掘削されたズリをクラッシャーコンベア上に載置し、該クラッシャーコンベアより前記ズリを搬送してテールピース台車に備えられた、前記クラッシャーコンベアのコンベア幅より幅狭に形成された中継コンベア上へ搬送し、中継コンベアから前記ズリを搬送して、前記中継コンベアのコンベア幅より幅狭の延伸ベルトコンベア上へ搬送してなり、少なくとも前記トンネル掘削設備及び照明に供給する電源設備を搭載した電源車両は、前記テールピース台車の後方に配置させてなるトンネル内の掘削ズリ搬出工法において、
前記クラッシャーコンベア上に載置されたズリを、中継コンベアが省略され、該中継コンベアより幅狭に形成された延伸ベルトコンベア上へ直接搬送出来るようテールピース台車を構成すると共に、前記電源車両に搭載された電源設備を前記テールピース台車に搭載可能に構成して、前記電源車両使用をカットし、
前記クラッシャーコンベアから幅狭な延伸コンベア上へズリをスムーズ搬送可能にした延伸コンベヤ先端側にガイド部材を装着した、
ことを特徴とするトンネル内の掘削ズリ搬出工法。

【請求項2】
前記テールピース台車には、防振部材を介して電源設備を搭載した、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル内の掘削ズリ搬出工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−196050(P2011−196050A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62149(P2010−62149)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【出願人】(594145297)タグチ工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】