説明

トンネル工事用電気集じん器

【課題】各部の圧力損失を低減でき、ファン動力を大幅に低減することができるトンネル工事用電気集じん器を提供する。
【解決手段】このトンネル工事用電気集じん器1は、帯電させた粉じんを集じん極板に捕集する集じんユニット2と、この集じんユニット2に粉じんを誘引するファンユニット6と、このファンユニット6で誘引した空気を吐出する吐出ダクトユニット7とを備え、集じんユニット2は、その処理風量が2400m/min以上且つその誘引する処理風速が7m/s未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷台に載置して、トンネル掘削工事中に発生するコンクリート吹き付けの際の粉じんや、発破による粉じんの捕集に用いるトンネル工事用電気集じん器に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事中に発生する粉じんを捕集できる車載式の電気集じん器としては、特許文献1に示されるものが提案されている。
この種の電気集じん器は、同程度の粉じんを集じんする場合に、集じんユニットの集じん面積と、その集じんユニットに誘引する処理風量および処理風速とによって性能が決まる。例えば、同特許文献に示される既存のトンネル工事用電気集じん器は、設定される処理風量と処理風速が、「処理風量:1500m/min以上、処理風速:7m/s以上」のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−79445号公報(請求項5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧力損失は、処理風速の2乗に比例するものである。そのため、特許文献1に示される既存のトンネル工事用電気集じん器は、処理風速を7m/s以上としているので、圧力損失が大きい。したがって、その集じんユニットへの誘引に要するファン動力も大きくなるという問題がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、各部の圧力損失を低減でき、ファン動力を大幅に低減することができるトンネル工事用電気集じん器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、車両の荷台に載置して用いられて、トンネル掘削工事中に発生する粉じんを捕集するトンネル工事用電気集じん器であって、前記粉じんを帯電させて集じん極板に捕集する集じんユニットと、該集じんユニットに粉じんを誘引するファンユニットと、該ファンユニットで誘引した空気を吐出する吐出ダクトユニットとを備え、前記集じんユニットは、その処理風量が2400m/min以上且つその誘引する処理風速が7m/s未満であることを特徴とする。
【0006】
ここで、本発明に係るトンネル工事用電気集じん器において、前記ファンユニットは、接続ダクトを介して前記集じんユニットに連結されており、当該接続ダクトは、前記集じんユニット側の開口部が大きく、吐出側に向かうにつれて前記荷台上から離隔するように縮径されており、さらに前記ファンユニットおよびこれに続く前記吐出ダクトユニットは、前記荷台の前方側の上方に前記荷台から離隔して配置されるとともに、前記ファンユニット及び前記吐出ダクトユニット相互の流路が直線的に連結されていれば、各部の圧力損失を低減し、ファン動力を大幅に低減す構成として一層好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトンネル工事用電気集じん器によれば、集じんユニットは、その処理風量が2400m/min以上且つその誘引する処理風速が7m/s未満としているので、処理
風速の2乗に比例する各部の圧力損失を低減でき、ファン動力を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るトンネル工事用電気集じん器を示す図であり、同図(a)は正面図、(b)はその左側面図、(c)はその平面図、(d)はその右側面図である。
【図2】本発明のトンネル工事用電気集じん器の使用例を説明する図であり、同図(a)はトンネル工事作業中における正面図、(b)はその平面図、(c)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
本実施形態のトンネル工事用電気集じん器は、トンネル工事中に発生するコンクリート吹き付け粉じんや、発破による粉じんの捕集に用いるものであって、図1に示すように、この電気集じん器1は、集じんユニット2、ファンユニット6、および吐出ダクトユニット7を有し、これらは荷台51の後部からこの順に配置されて、車両50の荷台51上に載置固定されるようになっている。
詳しくは、集じんユニット2は、粉じんを帯電させて捕集するユニットであり、その空気吸込口3を車両50の後方側に向けて、荷台51上の後部に配置されている。この集じんユニット2の空気吸込口3側の面には、ゴミなどの大きな異物を捕集するために、保護網20(同図(b)参照)が空気吸込口3を覆うように設けられている。
【0010】
そして、この集じんユニット2に、接続ダクト21を介して粉じんを誘引するファンユニット6が連結されている。さらに、このファンユニット6には、吐出ダクトユニット7が、車両50の荷台51の長手方向に沿って略並行な姿勢で直接連結されている。そして、この吐出ダクトユニット7の空気吐出口8が、車両50の前方に向けて開口している。
上記ファンユニット6内には、ファン6Aと、このファン6Aを駆動するモータ6Bとが設けられており、このファン6Aで誘引した空気が、集じんユニット2側から吐出ダクトユニット7側に向けて吐出されるようになっている。
【0011】
ここで、この電気集じん器1は、上記接続ダクト21が、集じんユニット2側の開口部が大きく、吐出側に向かうにつれて荷台51上から離隔するように縮径されている。これにより、ファンユニット6およびこれに続く吐出ダクトユニット7は、荷台51の前方側の上方に荷台51から離隔して配置されるとともに、集じんユニット2の上部(集じん器本体2A〜Dの部分)、ファンユニット6及び吐出ダクトユニット7が、順にほぼ流路が直線的になるように連結される。
また、その離隔によって形成された荷台51上の前方の空間には、集じんユニット2用の高圧電源盤9と、ファンユニット6及び高圧電源盤9の起動停止の制御を行う制御盤10とが配設されている。そして、これら高圧電源盤9、制御盤10および上記集じんユニット2は、一の架台11上に載置されて荷台51上に固定される。そして、荷台51上から離隔されたファンユニット6(および吐出ダクトユニット7)は、高圧電源盤9および制御盤10の左右の支柱12によって下方から支持されている。なお、架台11上の略中央部には、水を噴出して、帯電部4や集じん部5に付着した粉じんを洗い流すための洗浄装置30が設けられている。
【0012】
ここで、上記集じんユニット2は、これに誘引する処理風速が7m/s未満となるように、通過断面積(図1(b)での高さH×幅Wによって規定される面積)を5.8m以上としている。また、この集じんユニット2は、複数の集じん器本体を内部に備えており、この例では、車両50の幅方向に2つ、高さ方向に4つの集じん器本体2A〜2Hを
配置している(同図(b)参照)。これにより、ファンユニット6の駆動によって、集じんユニット2に誘引される処理風量は2400m/min以上且つ処理風速が7m/s未満となるように設定されている。なお、このファンユニット6での送風能力は、上記集じんユニット2を接続した状態で、処理風量が2400m/minとなるものである。
【0013】
次に、このトンネル工事用電気集じん器の作用・効果について説明する。
図2に示すように、この電気集じん器1をトンネル掘削工事に用いる際には、車両50の荷台51に載置した状態で、トンネルT内の切羽TJ近くまで自走によって移動させる。そして、同図に示すように、車両50の後部側を切羽TJ側に向け、車両50の前部側をトンネル入口側に向けた姿勢で停車させる。この状態で電気集じん器1を稼働させる。集じんユニット2とファンユニット6の所定の運転操作は、上記制御盤10によって作業者が行う。なお、図2での符号Sは、送気管設備であり、符号S1およびS2は、この送気管設備Sによる送気のイメージを示している。
【0014】
今、電気集じん器1を稼働すると、ファンユニット6のファン6Aの駆動によって空気吸込口3から集じんユニット2内に、コンクリート吹き付け粉じんや発破による粉じんが吸い込まれる(図2での符号F1)。このとき、ゴミなどの大きな異物は、空気吸込口3を覆う上記保護網20で捕集され、集じんユニット2内への吸込みが阻止される。次いで、保護網20を通過して、集じんユニット2内に吸い込まれた粉じんは、集じんユニット2(集じん器本体2A〜H)に導かれる。集じん器本体2A〜Hでは、その帯電部4にて発生するコロナ放電によって粉じんに電荷を与えて帯電させる。帯電した粉じんは、空気の流れにより、帯電部4の下流側に配置された集じん部5に移動する。そして、帯電した粉じんは、集じん部5で形成されるクーロン力や電界の力によって不図示の集じん極板に捕集される。
【0015】
このようにして粉じんが捕集された後の空気は、上記接続ダクト21、ファンユニット6、および吐出ダクトユニット7を順に通過して、吐出ダクトユニット7の空気吐出口8から吐出される(図2での符号F2)。なお、この電気集じん器1では、上記の集じん運転が終わったときには、集じんユニット2に隣接して設けた洗浄装置30から水を噴出して、集じん器本体2A〜2Hの帯電部4や集じん部5に付着した粉じんを洗い流す。
ここで、この電気集じん器1は、集じんユニット2〜ファンユニット6〜吐出ダクトユニット7の風速を上記特許文献1に示される例よりも低く設定している。
【0016】
つまり、上述のように、この集じんユニット2は、空気の通過断面積を5.8m以上(これに対し、上記特許文献1に示される例では3.6m程度)に大型化しており、更に集じんユニット2の通過断面積だけでなくファンユニット6部の内径も併せて大型化している。具体的には、ファンユニット6は、集じんユニット2に誘引する処理風速が7m/s未満になるように設定されている。これにより、本実施形態の例では、集じんユニット2における処理風量が2400m/min以上且つ処理風速が7m/s未満に設定されるので、各部の圧力損失を一層低減でき、また、ファン動力を大幅に低減することを可能とした。
【0017】
さらに、この電気集じん器1によれば、ファンユニット6は、接続ダクト21を介して集じんユニット2に連結されており、接続ダクト21は、集じんユニット2側の開口部が大きく、吐出側に向かうにつれて荷台51上から離隔するように縮径されており、さらにファンユニット6およびこれに続く吐出ダクトユニット7は、荷台51の前方側の上方に荷台51から離隔して配置されるとともに、ファンユニット6及び吐出ダクトユニット7相互の流路が直線的に連結されているので、車両50の後部側の空気吸込口3から吸い込まれた空気(図2の符号F1)は、ほぼ直線的に、集じんユニット2の上部(集じん器本体2A〜Dの部分)、ファンユニット6、及び吐出ダクトユニット7を順に通過されて空
気吐出口8から吐出される(図2の符号F2、および図1(a)参照)。そのため、この電気集じん器1は、圧力損失を一層少なくし得て、集じん能力を一層高めることができる。
【0018】
この電気集じん器1が、どの程度圧力損失を低減しているかを具体的に示す。
上記特許文献1では、処理風量1500m/min以上、処理風速7m/s以上としているが、これによる電気集じん器は処理風量別に4機種あり、その中で処理風量2000m/minの機種が本発明の電気集じん器に最も近似する処理風量であることからこの機種と対比すると、同文献に示される集じん器本体での処理風速が約8.5m/sであったのに対し、本発明に規定する集じんユニット2での処理風速は6.7m/sであり、圧力損失は40%の低減となる。さらに、同文献に示されるファンユニットでの処理風速は18.7m/sであったのに対し、本発明に規定するファンユニット6での処理風速は12.7m/sであり、圧力損失は54%の低減となる。
【0019】
特に、この種のトンネル工事用電気集じん器の処理風速は、単に速ければよいというものではなく、トンネル内での環流効果を得るには本発明に規定する処理風量と処理風速の範囲が好ましいのである。
本実施形態の例では、ファンユニット6での処理風速を12.7m/sとすることで、処理風量が2400m/minであり、これにより、集じんユニット2での処理風速が7m/s未満に設定されるものであるが、このとき、コンピュータでのシミュレーションの結果によれば、図2に示すような、トンネルT内での環流効果が得られるという格別顕著な効果を奏する。
【0020】
つまり、この電気集じん器1に規定するように、集じんユニット2の処理風量を2400m/min以上且つ誘引する処理風速を7m/s未満とすれば、同図に示すように、空気吐出口8から吐出される空気(F2)は、その流速が遅いことにより、同図での符号F3〜F4〜F5に示すように環流されて、空気吸込口3から再び吸い込まれるのである。これにより、一度には処理しきれなかった粉じんをF3〜F4〜F5に示す環流とともに導いて、空気吸込口3から再び集じんユニット2に導入することができる。よって、トンネルT内の切羽TJ近くを巡る空気FJの清浄度を一層向上させることができるのである。
なお、本発明に係るトンネル工事用電気集じん器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0021】
1 トンネル工事用電気集じん器
2 集じんユニット
3 空気吸込口
4 帯電部
5 集じん部
6 ファンユニット
7 吐出ダクトユニット
8 空気吐出口
9 高圧電源盤
10 制御盤
11 架台
12 支柱
20 保護網
21 接続ダクト
30 洗浄装置
50 車両
51 荷台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台に載置して用いられて、トンネル掘削工事中に発生する粉じんを捕集するトンネル工事用電気集じん器であって、
前記粉じんを帯電させて集じん極板に捕集する集じんユニットと、該集じんユニットに粉じんを誘引するファンユニットと、該ファンユニットで誘引した空気を吐出する吐出ダクトユニットとを備え、
前記集じんユニットは、その処理風量が2400m/min以上且つその誘引する処理風速が7m/s未満であることを特徴とするトンネル工事用電気集じん器。
【請求項2】
前記ファンユニットは、接続ダクトを介して前記集じんユニットに連結されており、当該接続ダクトは、前記集じんユニット側の開口部が大きく、吐出側に向かうにつれて前記荷台上から離隔するように縮径されており、
さらに、前記ファンユニットおよびこれに続く前記吐出ダクトユニットは、前記荷台の前方側の上方に前記荷台から離隔して配置されるとともに、前記ファンユニット及び前記吐出ダクトユニット相互の流路が直線的に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のトンネル工事用電気集じん器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−224515(P2011−224515A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99219(P2010−99219)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(505328085)古河産機システムズ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】