説明

トンネル掘削機及びトンネル施工方法

【課題】従来、胴筒の後方で支保を組んでコンクリート吹き付けによる覆工工事を行っているため、トンネル掘削機を前進させようとする場合に、胴筒が地山の圧力で圧迫されて、トンネル掘削機が前進できなくなる。
【解決手段】胴筒2と胴筒2の前側に設けられたカッタヘッド3と胴筒2の後側に設けられたジャッキとを備え、ジャッキの駆動により推進しながらカッタヘッド3を回転駆動させることによってカッタヘッド3で地山44を掘削するトンネル掘削機において、カッタヘッド3の周縁部9の後端10と胴筒2の周縁部11の前端12との間に形成されたトンネル空洞部の内壁面42に支保材6を吹き付けるための吹付けノズル32を備えるとともに、胴筒2の外周面と対向するトンネル空洞部41の内壁面42に覆工部69を形成するための型枠装置50を取付可能な取付部49を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機の胴筒が地山の圧力で圧迫されないようにしてトンネル掘削機をスムーズに掘進させることができ、かつ、地山の土質に合った合理的な掘削作業の可能なトンネル掘削機及びトンネル施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胴筒と胴筒の前側に回転可能に設けられたカッタヘッドと胴筒の後側に設けられたジャッキとを備え、ジャッキの駆動により推進しながらカッタヘッドを回転駆動させることによりカッタヘッドで地山を掘削するトンネル掘削機において、トンネル掘削機の胴筒が前進する前に、胴筒の外周面とトンネル空洞部の内壁面との間に覆工コンクリートのような覆工部を形成することにより、掘削機の胴筒の外周面と覆工部の内壁面との間に隙間を形成することで、胴筒を前進させやすくすることが知られている。
上記覆工部は、地山の土質が軟弱地山であれば必要であるが、地山の土質が岩盤層や山岳層である場合には、厚さの厚い覆工部の形成は不経済となる。そこで、岩盤層や山岳層である場合には、胴筒の後方で支保を組んでコンクリート吹き付けによる覆工工事を行うことも知られている。
しかしながら、胴筒の後方で支保を組んでコンクリート吹き付けによる覆工工事を行う場合には、胴筒が地山の圧力で圧迫されて、トンネル掘削機が前進できなくなることがある。
【特許文献1】特開2004−124697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明が解決しようとする課題は、従来は、胴筒の後方で支保を組んでコンクリート吹き付けによる覆工工事を行っているため、トンネル掘削機を前進させようとする場合に、胴筒が地山の圧力で圧迫されて、トンネル掘削機が前進できなくなるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係るトンネル掘削機は、胴筒と胴筒の前側に設けられたカッタヘッドと胴筒の後側に設けられたジャッキとを備え、ジャッキの駆動により推進しながらカッタヘッドを回転駆動させることによってカッタヘッドで地山を掘削するトンネル掘削機において、カッタヘッドの周縁部の後端と胴筒の周縁部の前端との間に形成されたトンネル空洞部の内壁面に支保材を吹き付けるための吹付けノズルを備えるとともに、胴筒の外周面と対向するトンネル空洞部の内壁面に覆工部を形成するための型枠装置を取付可能な取付部を備えたことを特徴とする。
吹付けノズルが、カッタヘッドの後面又はカッタヘッドと一緒に回転する回転体に、カッタヘッドや回転体の周方向に沿って間隔を隔てて複数又は一つ配置されたことも特徴とする。
カッタヘッドを左回り方向及び右回り方向に所定角度だけ回転させる揺動駆動機構を備えたことも特徴とする。
吹付けノズルをカッタヘッド又は回転体の前後方向に沿って所定の範囲で往復移動させる前後方向揺動装置を備えたことも特徴とする。
本発明に係る別のトンネル掘削機は、胴筒と胴筒の前側に設けられたカッタヘッドと胴筒の後側に設けられたジャッキとを備え、ジャッキの駆動により推進しながらカッタヘッドを回転駆動させることによってカッタヘッドで地山を掘削するトンネル掘削機において、胴筒の前端側の周縁部には、カッタヘッドの周縁部の後端と胴筒の周縁部の前端との間に形成されたトンネル空洞部の内壁面に支保材を吹き付けて支保層を形成する吹付けノズル又は胴筒の周面と対向するトンネル空洞部の内壁面に覆工部を形成する型枠装置のいずれか一方を取付可能な取付部を備えたことを特徴とする。
取付部が、胴筒の周縁部に近い前端部に、胴筒の周方向に沿って複数設けられたことも特徴とする。
本発明に係るトンネル施工方法は、上記トンネル掘削機を用い、地山の土質に応じて、吹付けノズルによる支保層又は型枠装置による覆工部を選択して形成することを特徴とする。
トンネル掘削機を用い、掘削対象の土質が岩盤層のように崩落の危険が少ない場合には、吹付けノズルによる支保層を形成し、掘削対象の土質が軟弱土砂層のように崩落の危険がある場合には、型枠装置による覆工部を形成することも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のトンネル掘削機及びトンネル施工方法によれば、吹付けノズルによる支保材の吹き付けによってカッタヘッドの周縁部の後端と胴筒の周縁部の前端との間に形成されたトンネル空洞部の内壁面に支保層を形成するか、胴筒の外周面と対向するトンネル空洞部の内壁面に覆工部を形成できるので、胴筒が地山の圧力で圧迫されず、胴筒をスムーズに前進させることができるので、トンネル掘削作業を効率的に行える。
吹付けノズルをカッタヘッド又は回転体に設けたので、吹付けノズルがカッタヘッドや回転体と一緒に回転するため、吹付けノズルをカッタヘッド又は回転体の周方向に沿って移動させるためだけの専用の駆動装置を不要とできる。また、吹付けノズルがカッタヘッドや回転体と一緒に回転するため、カッタヘッドや回転体に吹付けノズルを1つだけ設けた構成とした場合でも、上記トンネル空洞部の内壁面に支保層を形成することが可能となる。複数の吹付けノズルがカッタヘッド又は回転体の周方向に沿って間隔を隔てて配置された構成とすれば、複数の吹付けノズルにより上記トンネル空洞部の内壁面に支保層を形成できるので、吹付け時間を短くでき、トンネル施工時間を短くできる。
カッタヘッドを左回り方向及び右回り方向に所定角度だけ回転させる揺動駆動機構を備えた構成とすれば、インバートの形成される部分に支保材の吹き付けを行わないようにでき、支保材の無駄を省けるとともに、インバートブロック敷設時において余分な支保材のはつり作業のような余分な作業を回避できる。
吹付けノズルをカッタヘッドの前後方向に沿って所定の範囲で往復移動させる前後方向揺動装置を備えれば、上記トンネル空洞部の内壁面におけるカッタヘッドの回転中心軸に沿った方向に渡って支保層を形成できる。
取付部を胴筒の周縁部に近い前端部に胴筒の周方向に沿って複数設けたことで、トンネル空洞部の内壁面に環状の覆工部を形成できたり、インバートの形成される部分を除いたトンネル空洞部の内壁面に覆工部を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1及び図2は最良の形態を示し、図1はトンネル掘削機の構成を断面で示し、図2はトンネル掘削機の岩盤層掘削形態と軟弱層掘削形態とを示す。
【0007】
図1を参照し、トンネル掘削機1の構成を説明する。
掘削対象の土質が岩盤層や山岳層のように崩落の危険が少ない場合の掘削の際には、トンネル掘削機1は、円筒状の胴筒2、地山掘削用のカッタヘッド3、カッタヘッド駆動機構4、推進用のジャッキ5、モルタルやコンクリートのような支保材6の吹付け装置7、着脱部49を備えた形態である(以下、岩盤層掘削形態という)。即ち、岩盤層掘削形態のトンネル掘削機1による掘削の際には、塞板48が取付部49に取付けられる(図2(a)参照)。
【0008】
カッタヘッド3の周縁部9の後端10と胴筒2の周縁部11の前端12とが所定の間隔Hを隔てて配置される。所定の間隔Hは50cm程度以上に設定される。即ち、カッタヘッド3の周縁部9の後端10と胴筒2の周縁部11の前端12との間(以下、カッタ胴筒間という)が間隔Hに設定される。
胴筒2の内側には、図外の、スクリューコンベア、支保工やセグメントの組立装置、反力受板保持装置などを備える。胴筒2は、スキンプレートやテールプレートなどと呼ばれる部分である。
【0009】
カッタヘッド3は、円盤状の面盤13の前面14に複数のカッタビット15を備えた構成であり、胴筒2の前側に、中心軸16を回転中心として回転可能に設けられる。
カッタヘッド3を回転させるためのカッタヘッド駆動機構4は、胴筒2の前側に中心軸16を回転中心として回転可能に設けられた回転盤17と、回転盤17の周縁部18に沿って後方に突出して設けられたリング体19の内側(あるいは外側)に内歯ギヤ20が形成されたリングギヤ21と、複数の駆動モータ22と、駆動モータ22のモータ軸23に設けられてリングギヤ21の内歯ギヤ20に噛み合う駆動ギヤ24と、回転盤17の前面25とカッタヘッド3の後面26とを連結する複数の連結部材27とで形成される。複数の駆動モータ22のモータ軸23が回転すると、駆動ギヤ24の回転力がリングギヤ21に伝達されて回転盤17及びカッタヘッド3が回転する。尚、回転盤17とリングギヤ21とにより形成される回転体17Aは、胴筒2の前部に形成された回転収容部17Bに前後移動が規制された状態で回転可能に収容される。
ジャッキ5は、胴筒2の後側の内面に周方向に沿って複数個設けられる。
【0010】
吹付け装置7は、材料圧送装置30、混合機31、吹付けノズル32を備える。
吹付けノズル32と混合機31とがホース33で互いに繋がれ、混合機31と材料圧送装置30とがホース34で互いに繋がれる。
尚、吹付け方式には、乾式と湿式とがある。
乾式の場合、図外の吹付け材料生成部から材料圧送装置30に供給されたドライモルタルやドライコンクリートなどの吹付け材料が材料圧送装置30から混合機31及び吹付けノズル32に向けて圧送されるとともに、急結材が混合機31に供給され、水が混合機31に供給されることによって、吹付け材料と水と急結材とが混合されて生成された支保材6が吹付けノズル32を経由して噴射される。
湿式の場合、図外の吹付け材料生成部から材料圧送装置30に供給された生モルタルや生コンクリートなどの吹付け材料が材料圧送装置30から混合機31及び吹付けノズル32に向けて圧送されるとともに、急結材が混合機31に供給されることによって、水分を含んだ吹付け材料と急結材とが混合されて生成された支保材6が吹付けノズル32を経由して噴射される。
【0011】
吹付けノズル32は、カッタヘッド3の周縁部9に近い後面26に1つだけ設けられる。吹付けノズル32には、ジャッキなどを用いた図外の前後揺動装置が設けられる。前後方向揺動装置は、吹付けノズル32をカッタヘッド3の前後方向に沿って所定の範囲で往復移動させるアクチュエータであり、図外の制御装置により制御される。つまり、吹付けノズル32は、前後揺動装置によって矢印Aの如くカッタヘッド3の前後方向に所定の範囲で首振りのように揺動可能に構成されるとともに、カッタヘッド3と一緒に回転する。例えば、吹付けノズル32を前後揺動装置によって前後に揺動させながらカッタヘッド3をゆっくりと回転させることによって、カッタ胴筒間のトンネル空洞部41の内壁面42に支保層43を形成できる。特に、吹付けノズル32を前後揺動装置によって前後方向に首振りのように揺動駆動する構成としたことで、カッタ胴筒間(間隔H)が長い場合であっても、カッタ胴筒間のトンネル空洞部41の内壁面42におけるカッタヘッド3の中心軸16に沿った方向に渡って支保層43を形成できる。
【0012】
また、胴筒2の周縁部11の前端部には、前方に尖った形状に形成された支保材はつり部2aが形成される。支保材はつり部2aは、胴筒2の周縁部11の前端12から胴筒2の中心に向けて胴筒2の後方に傾斜する傾斜面2bを備え、傾斜面2bと胴筒2の周面とのなす角度が鋭角に形成された形状である。支保材はつり部2aは、胴筒2の前方から見た場合に、胴筒2の周縁部11に沿って円環状に形成される。この支保材はつり部2aを備えているため、トンネル空洞部41の内壁面42に吹き付けられた支保材6の余盛部分が、胴筒2の前進に伴って支保材はつり部2aの先鋭な前端12により削られる。
【0013】
掘削対象の土質が岩盤層のように崩落の危険が少ない場合のトンネル掘削方法を説明する。
ジャッキ5のピストン40の反力受けを設置し、ジャッキ5のピストン40を駆動するとともにカッタヘッド3を駆動することによってトンネル掘削機1で地山44を掘削して掘進する。トンネル掘削機1の掘進によって、カッタ胴筒間に素掘り状態のトンネル空洞部41を形成し、そのトンネル空洞部41の内壁面42に、吹付けノズル32から支保材6を噴射して吹き付けることにより支保層43を形成する。以後、トンネル掘削機1をそのまま掘進させながら、掘進によりカッタ胴筒間に形成される素掘り状態のトンネル空洞部41の内壁面42に支保材6を噴射して吹き付けることにより支保層43を形成していく。即ち、トンネル掘削機1と吹付け装置7とをともに駆動し、トンネル掘削機1を掘進させながらカッタ胴筒間に形成されたトンネル空洞部41の内壁面42に吹付け装置7により支保材6を吹き付けて支保層43を形成する。つまり、トンネル掘削機1の掘進によりカッタ胴筒間に素掘り状態のトンネル空洞部41が形成された直後に、このトンネル空洞部41の内壁面42に吹付け装置7によって支保層43を形成する。
【0014】
したがって、トンネル掘削機1を前進させる前に、胴筒2の前方に形成されたトンネル空洞部41の内壁面42に支保層46を形成できるため、トンネル掘削機1を前進させる際には、支保層46によって胴筒2の前方の地山40が支持されていることによって、胴筒2が地山40の圧力で圧迫されず、トンネル掘削機1がスムーズに前進する。したがって、トンネル掘削作業を効率的に行える。
【0015】
掘削対象の土質が軟弱土砂層のように崩落の危険がある場合の掘削の際には、トンネル掘削機1は、図2(b)に示すように、取付部49に型枠装置50が取付けられた形態である(以下、軟弱層掘削形態という)。
【0016】
取付部49は、胴筒2の周縁部11に近い前端部45に、胴筒2の周方向に沿って間隔を隔てて複数設けられる。岩盤層掘削形態のトンネル掘削機1による掘削の際には、塞板48が取付部49に取付けられ、塞板48によって胴筒2の内側と外側とが遮断された状態である(図2(a)参照)。一方、軟弱層掘削形態のトンネル掘削機1による掘削の際には、型枠装置50が取付部49に取付けられ、型枠装置50によって胴筒の内側と外側とが遮断された状態である(図2(b)参照)
【0017】
型枠装置50は、取付基盤51、内枠52、前枠53、左右仕切枠54、後部遮蔽構成体55、前部遮蔽構成体56、支保材注入装置57、前方塞体58、内枠用ジャッキ59などを備える。後部遮蔽構成体55は、後部遮蔽板60、後部遮蔽板を昇降するジャッキ61を備える。後部遮蔽板60はジャッキ61のピストン62に取付けられて、ピストン62の伸縮作動によって内壁面42の方向に進退可能である。内枠52は内枠用ジャッキ59のピストン63に取付けられて、ピストン63の伸縮作動によって内壁面42の方向に進退可能である。前部遮蔽構成体56は、エアチューブ64、エア供給管65を備え、エアチューブ64がエアにより内壁面42の方向に膨らんで前部を遮蔽する。支保材注入装置57は注入口66が内枠52の内面67に露出する。支保材注入装置57と混合機31とが支保材供給管58aによって互いに繋がれる。取付基盤51には、支保材注入装置57、内枠用ジャッキ59、ジャッキ61などが取り付けられる。取付基盤51は止ねじ68などで取付部49に取付けられる。前方塞体58は、カッタヘッド3が回転可能なように、カッタヘッド3の周縁部9の後端10と胴筒2の周縁部11の前端12との間を塞ぐ。
【0018】
軟弱層掘削形態のトンネル掘削機1による掘削の際には、胴筒2が前進する前に、胴筒2の外周面と内壁面42との間に、型枠装置50によって直打ち支保材ライニングと呼ばれるような覆工部69を形成する。
【0019】
型枠装置50による覆工部69の形成方法を説明する。まず、後部遮蔽板60を内壁面42の方向に出し、エアチューブ64にエアを供給してエアチューブ64を膨らますことによって、内壁面42、内枠の内面67、左右仕切枠54、エアチューブ64、後部遮蔽板60によって囲まれた空間70を形成する。図外の開閉弁を開けると混合機31から支保材供給管58aを経由して支保材注入装置57に支保材が供給され、支保材注入装置57により空間70内に支保材が注入される。空間70内に支保材を注入した後、内枠用ジャッキ59を伸ばすように駆動して内枠52の内面67で支保材を内壁面42に押圧して固めることによって、胴筒2との覆工部69の内面との間に胴筒2が前に推進しやすいように隙間を形成する。以上の動作をトンネル掘削機1が所定の距離だけ前進する毎に行う。尚、後方にすでに覆工部69形成された後は、後部遮蔽板60を作動させる必要はない。
【0020】
したがって、トンネル掘削機1の胴筒2が前進する前に、胴筒2の外周面と内壁面42との間に、型枠装置50によって直打ちモルタルライニングと呼ばれるような覆工部69を形成できるので、胴筒2が地山40の圧力で圧迫されず、トンネル掘削機1がスムーズに前進する。したがって、トンネル掘削作業を効率的に行える。
【0021】
最良の形態によれば、吹付けノズル32による支保材6の吹き付けによってカッタヘッド3の周縁部9の後端10と胴筒2の周縁部11の前端12との間に形成されたトンネル空洞部41の内壁面42に胴筒2が前進する前に支保層43を形成するか、胴筒2の外周面と対向するトンネル空洞部41の内壁面42に覆工部69を形成できるので、地山の条件にかかわらず、胴筒2が地山の圧力で圧迫されず、胴筒2をスムーズに前進させることができるので、トンネル掘削作業を効率的に行える。
また、トンネル掘削機1と吹付け装置7とをともに駆動し、トンネル掘削機1の掘削作業と吹付け装置7による吹付け作業とを一緒に行えるので、作業時間を短くできる。
また、吹付けノズル32がカッタヘッド3と一緒に回転するので、吹付けノズル32を胴筒2の周方向に沿って移動させるためだけの専用の駆動装置を不要とでき、経済的である。
また、吹付けノズル32がカッタヘッド3と一緒に回転するため、カッタヘッド3に吹付けノズル32を1つだけ設けた構成としても、カッタ胴筒間のトンネル空洞部41の内壁面42の周方向に渡って支保層43を形成できる。
また、前後方向揺動装置を備えたことで、カッタ胴筒間のトンネル空洞部41の内壁面42におけるカッタヘッド3の中心軸16に沿った方向に渡って支保層43を形成できる。
また、取付部49を、胴筒2の周縁部11に近い前端部45に胴筒2の周方向に沿って複数設けたことで、複数の型枠装置50を用いて、トンネル空洞部41の内壁面42に環状の覆工部69を容易に形成できる。
【0022】
他の形態1
吹付けノズル32を、回転体17Aの前面25における周縁部18に近い位置に1つだけ設け、かつ、吹付けノズル32に上述した前後揺動装置を設けた構成とした場合でも、上述した最良の形態と同じ効果が得られる。
【0023】
他の形態2
吹付けノズル32が、カッタヘッド3の後面26又は回転体17Aの前面25に、カッタヘッド3や回転体17Aの周方向に沿って間隔を隔てて配置された構成とすれば、複数の吹付けノズル32によりトンネル空洞部41の内壁面42に支保層43を形成でき、複数の吹付けノズル32による吹付け時間を短くできるので、トンネル施工時間を短くできる。
【0024】
他の形態3
一緒に回転するカッタヘッド3と回転体17Aとを中心軸16を回転中心として左回り方向及び右回り方向に所定角度αだけ回転させる揺動駆動機構を設ける。例えば、カッタヘッド3と回転体17Aとを左回り方向及び右回り方向にそれぞれα=140°だけ回転させる、所謂、揺動構成とする(即ち、揺動角度範囲は2α=280°)。この構成において、例えば、図3に示すように、カッタヘッド3の後面26や回転体17Aの前面25の回転初期位置における時計の12時の位置を揺動基準点Gと決めておき、揺動基準点Gの位置に吹付けノズル32を1つ取付けたことによって、図3に示すインバート46の形成される部分に支保材6の吹き付けを行わないようにする。つまり、インバート46の形成される部分は胴筒2の下部の外周面に対向する地山部分であり、この地山部分は胴筒2を圧迫しないので、インバート46の形成される部分に支保材6を吹き付けないようにすることは、支保材6の無駄を省けるとともに、インバートブロック敷設時において余分な支保材のはつり作業のような余分な作業を回避できる。
【0025】
即ち、カッタヘッド3の後面26や回転体17Aの前面25における揺動基準点Gの位置に吹付けノズル32を1つだけ取付け、カッタヘッド3の揺動角度範囲を、インバート46の形成される部分以外のトンネル空洞部41の内壁面42の周面の角度範囲に合わせることによって、インバート46の形成される部分を除いたトンネル空洞部41の内壁面42に支保材6を吹き付けて支保層43を形成できる。
【0026】
揺動駆動機構は、駆動モータを正逆回転制御して中心軸16を回転させるモータ制御方式、油圧ジャッキのようなジャッキを用いて中心軸16を回転させるジャッキ方式、中心軸16に設けたピニオンとこのピニオンを往復直線運動させるラックとの噛み合いによって中心軸16を回転させるラックピニオン方式などによって実現可能である。尚、ジャッキ方式、ラックピニオン方式の場合、図1の駆動モータ22及びリングギヤ21は不要である。ジャッキ方式において吹付け範囲に対応する揺動角度範囲が不足する場合は、カッタヘッド3の後面26や回転体17Aの前面25における周方向において吹付けノズル32を間隔を隔てて複数設ければよい。例えば、揺動基準点Gから左回り方向及び右回り方向にそれぞれ140°の角度範囲の周面に吹き付けを行いたい場合において、ジャッキ方式によりカッタヘッド3が揺動基準点Gから左回り方向及び右回り方向にそれぞれ70°しか回転させることができない場合は、カッタヘッド3の後面26や回転体17Aの前面25において揺動基準点Gから左回り方向及び右回り方向にそれぞれ70°の位置に吹付けノズル32を1つずつ取付ければよい。
【0027】
尚、他の形態3において、取付部49を、インバート46の形成される部分に対応する部分を除いて胴筒2の周縁部11に近い前端部45に胴筒2の周方向に沿って複数設けることで、インバート46の形成される部分を除いたトンネル空洞部41の内壁面42に、複数の型枠装置50を用いて覆工部69を容易に形成できる。
【0028】
他の形態4
カッタヘッド3の後面26や回転体17Aの前面25に吹付けノズル32を設けずに、取付部49に吹付けノズル32及び型枠装置50のいずれか一方を選択的に取付可能とした構成としてもよい。換言すれば、吹付けノズル32及び型枠装置50のいずれか一方を選択的に取付けることの可能な取付部49を備えたトンネル掘削機1としても最良の形態や他の形態と同じ効果を得ることができる。
【0029】
尚、吹付けノズル32、型枠装置50、塞板48の取付部49への取付けは、胴筒の内側である取付部49の後方の蓋75を取り外して取り付けようとするものを取付部49の後部開口76から進入させ、取付部49に胴筒2の内側から嵌め込むようにして取り付ける。
【産業上の利用可能性】
【0030】
吹付けノズル32の前後方向の吹付け幅をカッタ胴筒間(間隔H)に合わせれば前後揺動装置は不要とできて、かつ、トンネル空洞部41の内壁面42におけるカッタヘッド3の中心軸16に沿った方向に渡って支保層43を形成できる。特に、カッタ胴筒間(間隔H)が短いトンネル掘削機の場合は、吹付けノズル32の前後方向の吹付け幅をカッタ胴筒間(間隔H)に合わせやすく前後揺動装置を不要とできる。
【0031】
また、上記では円形断面孔を掘削するトンネル掘削機を用いた方法を説明したが、本発明は、複円形断面孔、矩形断面孔を掘削するトンネル掘削機を用いる場合にも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】トンネル掘削機の構成を示す断面図(最良の形態)。
【図2】トンネル掘削機の岩盤層掘削形態と軟弱層掘削形態とを示す断面図(最良の形態)。
【図3】支保層の形成範囲を示す説明図(他の形態3)。
【符号の説明】
【0033】
1 トンネル掘削機、2 胴筒、3 カッタヘッド、
4 カッタヘッド駆動機構、5 ジャッキ、7 吹付け装置、6 支保材、
10 カッタヘッドの周縁部の後端、12 胴筒の周縁部の前端、
17A 回転体、26 カッタヘッドの後面、32 吹付けノズル、
41 トンネル空洞部、42 内壁面、43 支保層、44 地山、
49 取付部、50 型枠装置、69 覆工部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴筒と胴筒の前側に設けられたカッタヘッドと胴筒の後側に設けられたジャッキとを備え、ジャッキの駆動により推進しながらカッタヘッドを回転駆動させることによってカッタヘッドで地山を掘削するトンネル掘削機において、カッタヘッドの周縁部の後端と胴筒の周縁部の前端との間に形成されたトンネル空洞部の内壁面に支保材を吹き付けるための吹付けノズルを備えるとともに、胴筒の外周面と対向するトンネル空洞部の内壁面に覆工部を形成するための型枠装置を取付可能な取付部を備えたことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】
吹付けノズルが、カッタヘッドの後面又はカッタヘッドと一緒に回転する回転体に、カッタヘッドや回転体の周方向に沿って間隔を隔てて複数又は一つ配置されたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
カッタヘッドを左回り方向及び右回り方向に所定角度だけ回転させる揺動駆動機構を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
吹付けノズルをカッタヘッド又は回転体の前後方向に沿って所定の範囲で往復移動させる前後方向揺動装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
胴筒と胴筒の前側に設けられたカッタヘッドと胴筒の後側に設けられたジャッキとを備え、ジャッキの駆動により推進しながらカッタヘッドを回転駆動させることによってカッタヘッドで地山を掘削するトンネル掘削機において、胴筒の前端側の周縁部には、カッタヘッドの周縁部の後端と胴筒の周縁部の前端との間に形成されたトンネル空洞部の内壁面に支保材を吹き付けて支保層を形成する吹付けノズル又は胴筒の周面と対向するトンネル空洞部の内壁面に覆工部を形成する型枠装置のいずれか一方を取付可能な取付部を備えたことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項6】
取付部が、胴筒の周縁部に近い前端部に、胴筒の周方向に沿って複数設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のトンネル掘削機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のトンネル掘削機を用い、地山の土質に応じて、吹付けノズルによる支保層又は型枠装置による覆工部を選択して形成することを特徴とするトンネル施工方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のトンネル掘削機を用い、掘削対象の土質が岩盤層のように崩落の危険が少ない場合には、吹付けノズルによる支保層を形成し、掘削対象の土質が軟弱土砂層のように崩落の危険がある場合には、型枠装置による覆工部を形成することを特徴とするトンネル施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−106457(P2008−106457A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287963(P2006−287963)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(507137634)三菱重工地中建機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】