説明

トンネル用作業車両

【課題】坑内の空気の汚染を防止または抑制するとともに、使用範囲を拡大し得るトンネル用作業車両を提供する。
【解決手段】このドリルジャンボ1(トンネル用作業車両)は、油圧ポンプ3と、その油圧ポンプ3からの圧油で駆動する走行用の油圧モータ4とを備えており、さらに、油圧ポンプ3を駆動可能な電動モータおよび発電機を兼ねる電動機5と、その電動機5との間で電気エネルギーを受け渡しするバッテリ8と、前記電動機5に、クラッチ6を介して動力伝達を断続可能に接続されたディーゼルエンジン7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内での作業に用いられるトンネル用作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のトンネル用作業車両では、坑内の空気を汚染しないように、動力源として電動モータで作業するものが採用されている。その多くは、バッテリのみによる駆動や、ケーブルリールを介して外部から供給された電源によって駆動する外部電源駆動である。これにより、主要作業時には、電動モータのみを動力源として、坑内の空気の汚染を防止している。
【0003】
しかし、例えば換気が十分になされる条件下での作業や、比較的に作業時間が短い補助的な作業(例えば自車両の走行時など)には、車載されたディーゼルエンジン等のエンジン(内燃機関)を動力源として使用することは合理的な場合がある。
そこで、例えば特許文献1に記載の技術では、エンジン(内燃機関)および電動モータのそれぞれによって負荷を駆動可能な、いわゆるハイブリッド方式を備える建設機械用モータが提案されている。なお、同文献に記載の建設機械用モータは、回生エネルギー制御等に係る構成は特に有しない。
【特許文献1】特表平8−503276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、建設機械用モータを電動モータで動作させる場合に、例えばバッテリのみで駆動するときには、バッテリが放電しきれば停止してしまうし、また、例えば外部電源駆動のときには、ケーブルがとどく限られた範囲内のみでの作業となり、外部からの電源の取得が困難な状況での使用においては使用範囲に制限がある。なお、必要な電源を確保するために、発電機を別途に用意したり、あるいは、外部電源を供給可能な範囲を拡大したりすることも考えられるものの、このような方法では、その分の費用が嵩むことになる。
【0005】
また、建設機械用モータをディーゼルエンジンで動作させる場合には、上述のように、例えば換気が十分になされる条件下での作業や、比較的に作業時間が短い補助的な作業(例えば自車両の走行時など)等、内燃機関を使用しても差し支えのない環境に使用範囲が制限されてしまう。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、坑内の空気の汚染を防止または抑制するとともに、使用範囲を拡大し得るトンネル用作業車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、トンネル内での作業に用いられ、油圧ポンプと、その油圧ポンプからの圧油で駆動する走行用の油圧モータとを備える作業車両であって、前記油圧ポンプを駆動可能な電動モータおよび発電機を兼ねる電動機と、その電動機との間で電気エネルギーを受け渡しするバッテリと、前記電動機に、クラッチを介して動力伝達を断続可能に接続されたエンジンとを備えていることを特徴としている。なお、バッテリには大容量のものを採用することは好ましい。また、エンジン(内燃機関)には、ディーゼルエンジンを好適に採用することができる。
【0007】
本発明に係るトンネル用作業車両によれば、油圧ポンプと、その油圧ポンプからの圧油で駆動する走行用の油圧モータと、前記油圧ポンプを駆動可能な電動モータおよび発電機を兼ねる電動機と、その電動機との間で電気エネルギーを受け渡しするバッテリとを備えているので、バッテリから供給された電力で電動機を電動モータとして動作させて油圧ポンプを駆動して走行することができる(第一の走行状態という)。したがって、第一の走行状態では、バッテリから供給された電力で電動機を電動モータとして駆動して走行するので、坑内の空気の汚染を防止または抑制しつつ必要な作業を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係るトンネル用作業車両によれば、電動モータおよび発電機を兼ねる電動機は、エンジンに、クラッチを介して動力伝達を断続可能に接続されているので、エンジンを運転し且つクラッチを接続することで電動機を介して油圧ポンプを駆動して走行することができる(第二の走行状態という)。さらに、エンジンを運転し、電動機を発電機とした状態でバッテリを充電することも可能である。したがって、第二の走行状態では、エンジンを動力源として使用するものの、例えば外部からの電源の取得が困難な状況での使用も可能である。そして、電動機を発電機とした状態とすればバッテリを充電することができるため、電源が無い場所での放電に備えた再充電も可能である。したがって、その活動範囲をより広域なものとすることができる。そして、一つの電動機を電動モータ兼発電機として用いることができるので、電動モータと発電機とを別個に搭載する場合に比べて、コストを低減することが可能である。
【0009】
ここで、本発明に係るトンネル用作業車両において、前記油圧ポンプの圧油が給排される油圧回路は、アンロード手段を備え、当該アンロード手段は、前記エンジンを運転し且つ前記クラッチを接続するとともに前記電動機を発電機として動作させた状態のときにアンロード作動可能に構成されていることは好ましい。このような構成であれば、走行が不要なときに、上記第二の走行状態とした上で、更にアンロード手段を作動させることによって、油圧ポンプからの圧油をアンロードした非走行状態でバッテリに充電することができる。したがって、発電中の動力のロスを抑制し、充電の効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係るトンネル用作業車両において、外部電源を前記バッテリおよび電動機に供給可能なケーブルリールを更に有することは好ましい。このような構成であれば、外部電源をバッテリおよび電動機の両方に給電できるため、例えば電動機を電動モータとして動作させた第一の走行状態で走行しつつ、バッテリへの充電が可能である。したがって、その活動範囲をより一層広域なものとする上で好適である。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、本発明によれば、坑内の空気の汚染を防止または抑制するとともに、使用範囲を拡大し得るトンネル用作業車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るトンネル用作業車両の一実施形態であるドリルジャンボの走行系統について、図1および図2を適宜参照しつつ説明する。なお、以下説明する走行系統以外の構成については周知のドリルジャンボと同様なため、その説明は省略する。
図1に示すように、このドリルジャンボ1は、走行用の車輪9を備えた台車2内の後部中央に、エンジン(内燃機関)としてディーゼルエンジン7を備えている。そして、このディーゼルエンジン7には、その出力軸に、動力伝達を断続可能なクラッチ6を介して電動機5が接続されている。ここで、この電動機5の動力伝達軸は、その軸端が自身の両側に張り出すとともに各軸端に負荷をそれぞれ接続可能になっており、その動力伝達軸の一端にディーゼルエンジン7が接続されており、他端には、同図に示すように、油圧ポンプ3が接続されている。さらに、この油圧ポンプ3は、台車2内の中央に配置されている油圧モータ4に油圧回路30を介して接続されており、この油圧モータ4は、油圧ポンプ3からの圧油で駆動し、ドリルジャンボ1を走行可能になっている。
【0013】
さらに、このドリルジャンボ1は、図1に示すように、台車2内の後部右側に、大容量のバッテリ8を備えている。この大容量のバッテリ8は、図2に走行系統のブロック図を示すように、ディーゼルエンジン7用のバッテリ7aとは別個に設けられたバッテリであり、上記の電動機5との間で電気エネルギーを受け渡し可能に接続されている。つまり、この電動機5は、電動モータおよび発電機を兼ねており、発電機として動作する際には、ディーゼルエンジン7の回転が電動機5のロータ(不図示)に伝えられ、電動機5のステータコイル(不図示)に所定電流を発生する。そして、電動機5による交流発電は、不図示のインバータにより直流に変換された後にバッテリ8に導かれ、バッテリ8を充電する。また、電動モータとして動作する際には、バッテリ8からの電流が不図示のインバータにて所定電流に変換され、その変換された後の電流が電動機5に供給されることで、要求に対応した回転数およびトルクにて電動機5のロータを回転させるようになっている。
【0014】
また、このドリルジャンボ1は、図1に示すように、台車2の後部左側に、ケーブルリール22を有している。このケーブルリール22は、図2に示すように、上記バッテリ8および電動機5それぞれに対し、外部電源24を供給可能に接続されるようになっている。また、このドリルジャンボ1は、同図に示すように、油圧ポンプ3の圧油が給排される油圧回路30に、アンロード手段としてアンロード弁31を備えている。そして、このアンロード弁31は、ディーゼルエンジン7を運転し且つクラッチ6を接続するとともに電動機5を発電機として動作させた状態のときに、油圧ポンプ3の圧油をアンロードするアンロード作動可能に構成されている。なお、図2では図示を省略しているが、各装置間には、制御用ないし駆動用の電気回路が介在しており、制御用の回路は、不図示の制御部に接続され、各装置および制御部相互は、必要な信号の授受が可能になっており、また、駆動用の電気回路は、各装置のアクチュエータ等に必要な電力の供給が可能に構成されている。
【0015】
次に、このドリルジャンボ1の走行系統の動作、およびその作用・効果について図3〜図7を適宜参照しつつ説明する。
上述したように、このドリルジャンボ1は、油圧ポンプ3と、その油圧ポンプ3からの圧油で駆動する走行用の油圧モータ4とを備えており、さらに、油圧ポンプ3を駆動可能な電動モータおよび発電機を兼ねる電動機5と、その電動機5との間で電気エネルギーを受け渡しする大容量のバッテリ8と、電動機5に、動力伝達を断続可能なクラッチ6を介して接続されたディーゼルエンジン7とを備えているので、例えば図3に示すように、ディーゼルエンジン7を停止し且つクラッチ6を分離し、さらに、大容量のバッテリ8によって電動機5に電力を供給することによって電動機5を電動モータとして動作させ、その電動機5で油圧ポンプ3を駆動して必要な圧油を油圧モータ4に供給することによって油圧モータ4で走行することができる(第一の走行状態)。したがって、この第一の走行状態では、大容量のバッテリ8から供給された電力で電動機5を電動モータとして動作させて走行するので、坑内の空気の汚染を防止または抑制しつつ必要な作業を行うことができる。
【0016】
また、このドリルジャンボ1によれば、例えば図4に示すように、ディーゼルエンジン7を運転し且つクラッチ6を接続するとともに電動機5の動力伝達軸を介して油圧ポンプ3を駆動して必要な圧油を油圧モータ4に供給することによって油圧モータ4で走行することができる(第二の走行状態)。なお、この第二の走行状態の際には、電動機5内の回転子は回転しているが、発電は行わずディーゼルエンジン7の動力のロスとならないようになっている。
【0017】
さらに、このドリルジャンボ1によれば、電動機5の動力伝達軸は、その軸端が自身の両側に張り出すとともに各軸端に負荷をそれぞれ接続可能になっており、その動力伝達軸の一端にディーゼルエンジン7が接続され、他端に油圧ポンプ3が接続されているので、ディーゼルエンジン7、電動機5および油圧ポンプ3を直列に接続可能であり、一つの電動機5を電動モータ兼発電機として用いる構成を、コンパクトに装備することを可能としている。
【0018】
また、このドリルジャンボ1によれば、油圧ポンプ3の圧油が給排される油圧回路30は、アンロード手段としてアンロード弁31を備えており、このアンロード弁31は、ディーゼルエンジン7を運転し且つクラッチ6を接続するとともに電動機5を発電機として動作させた状態のときにアンロード作動可能に構成されているので、走行が不要なときに、図5に示すように、上記第二の走行状態とした上で、更にアンロード弁31を作動させることによって、油圧ポンプ3からの圧油をアンロードした非走行状態でバッテリ8に充電することができる。したがって、発電中の動力のロスを抑制し、充電の効率を向上させることができる。
【0019】
また、このドリルジャンボ1によれば、外部電源24をバッテリ8および電動機5に供給可能なケーブルリール22を有するので、例えば図6に示すように、外部電源24からの電力を電動機5に直に供給しつつ、電動機5を電動モータとした第一の走行状態で走行可能である。あるいは、例えば図7に示すように、外部電源24によってバッテリ8を充電することもできる。したがって、その活動範囲をより一層広域なものとすることができる。
【0020】
以上説明したように、このドリルジャンボ1によれば、坑内の空気の汚染を防止または抑制するとともに、使用範囲を拡大することができる。
なお、本発明に係るトンネル用作業車両は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、本発明に係るトンネル用作業車両として、ドリルジャンボを例に説明したが、これに限定されず、本発明に係るトンネル用作業車両としては、例えば、コンクリート吹付機、支保工エレクター、ローディングショベル、ロードヘッダ、ブームヘッダ、シャフトローダ、または高所作業車等にも適用可能である。
【0021】
また、例えば、上記実施形態では、ケーブルリール22は、外部電源24をバッテリ8および電動機5に供給可能に装備されている例で説明したが、これに限定されず、ケーブルリール22を装備しない構成であってもよい。また、ケーブルリール22を装備する場合において、外部電源24をバッテリ8または電動機5のいずれか一方に供給可能に装備されているものであってもよい。しかし、トンネル用作業車両の活動範囲をより一層広域なものとする上では、ケーブルリール22を装備し、外部電源24をバッテリ8および電動機5に供給可能になっていることは好ましい。
【0022】
また、例えば、上記実施形態では、油圧ポンプ3の圧油が給排される油圧回路30は、アンロード手段としてアンロード弁31を備える例で説明したが、これに限定されず、アンロード手段を有しない構成としてもよい。しかし、ディーゼルエンジン7を運転しつつも、走行が不要なときに、発電中の動力のロスを抑制し、充電の効率を向上させる上では、上記例示したように、アンロード手段を有する構成とすることは好ましい。また、アンロード手段としてアンロード弁31を備える例で説明したが、アンロード手段は、これに限らず、例えば油圧ポンプ3の作動油吐出量を無くしたり、油圧回路の圧力を無くしたりすることが可能な構成であれば、種々の機構を採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るトンネル用作業車両の一実施形態であるドリルジャンボの概略説明図であり、同図(a)はその平面図、同図(b)はその正面図である。
【図2】走行系統の構成を説明するブロック図である。
【図3】走行系統の動作を説明するブロック図である。
【図4】走行系統の動作を説明するブロック図である。
【図5】走行系統の動作を説明するブロック図である。
【図6】走行系統の動作を説明するブロック図である。
【図7】走行系統の動作を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ドリルジャンボ(トンネル用作業車両)
2 台車
3 油圧ポンプ
4 油圧モータ
5 電動機
6 クラッチ
7 ディーゼルエンジン(エンジン)
8 バッテリ
9 車輪
22 ケーブルリール
24 外部電源
30 油圧回路
31 アンロード弁(アンロード手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内での作業に用いられ、油圧ポンプと、その油圧ポンプからの圧油で駆動する走行用の油圧モータとを備える作業車両であって、
前記油圧ポンプを駆動可能な電動モータおよび発電機を兼ねる電動機と、その電動機との間で電気エネルギーを受け渡しするバッテリと、前記電動機に、クラッチを介して動力伝達を断続可能に接続されたエンジンとを備えていることを特徴とするトンネル用作業車両。
【請求項2】
前記油圧ポンプの圧油が給排される油圧回路は、アンロード手段を備え、当該アンロード手段は、前記エンジンを運転し且つ前記クラッチを接続するとともに前記電動機を発電機として動作させた状態のときにアンロード作動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のトンネル用作業車両。
【請求項3】
外部電源を前記バッテリおよび電動機に供給可能なケーブルリールを更に有することを特徴とする請求項1または2に記載のトンネル用作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−231762(P2008−231762A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72183(P2007−72183)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(594149398)古河ロックドリル株式会社 (50)
【Fターム(参考)】