トール様受容体を用いた細胞による発熱試験
本発明は、様々なエンドトキシンおよび他の発熱原に基づいて諸種の病原体および病原スペクトルを定性的および定量的に検出および同定するための諸種の方法、試薬ならびにキットに関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の記載】
【0001】
本発明は、様々なエンドトキシンおよび他の発熱原に基づいて諸種の病原体および病原スペクトルを定性的および定量的に検出および同定するための諸種の方法、試薬ならびにキットに関する。
【0002】
[背景技術]
病院内での臨床診断において病原スペクトルを迅速かつ確実に同定することは、目的に適った感染症治療を、例えば敗血症患者に実施するために非常に意義深い。
【0003】
敗血症および敗血症関連の多臓器不全は世界的に重大な死亡要因であって、医学の未解決問題に属する。入念な推定では、現在もなお世界中で毎年500,000人の患者が「敗膿血症」により死亡しており、その数は1日当たり1,400人である。重症敗血症患者の治療費によって毎年、合衆国における保険衛生予算の負担は1,700万ドルと推定されている。
【0004】
敗血症(敗血病、膿血症)の特徴は、生命にかかわる病状と病態生理学的変化が合わさることである。敗血症は、感染源から血中に侵入する病原菌およびその生成物によって引き起こされる。敗血症で生じる免疫反応によって、様々な内分泌性媒介因子(サイトカイン類)が生成される。それらの因子により炎症カスケードが活性化され、結果として抑制の効かない全身の炎症反応に至る。集中的な処置が行われても、予後は不良であって死亡率は約50%に達する。特に予後は、治療開始が遅れた場合、感染源が非局在の場合または病原体が同定不可の場合に悪くなる。
【0005】
敗血症を引き起こす病原体はほとんどが細菌類であり、大腸菌、その他の腸内細菌、クレブシェラ属細菌、プロテウス属細菌、エンテロバクター属細菌、緑膿菌、髄膜炎菌およびバクテロイド属などの主なグラム陰性菌、ならびに黄色ブドウ球菌、肺炎双球菌、その他の連鎖球菌などの一般的なグラム陽性菌であって、まれに真菌類、各種ウイルスまたは寄生生物である(細菌血症、真菌血症、ウイルス血症、寄生生物血症)。いわゆる微生物構造体(例えば、エンドトキシン、エクソトキシン、スーパー抗原)の放出により、それぞれ各種のインターロイキン、腫瘍壊死因子、ヒスタミン、セロトニン、酸素ラジカルおよびプロテアーゼのような内因性媒介因子の分泌が刺激される。これは、白血球および体液性防御機構の活性化を経て敗血症性ショックで典型的にみられる変化にいたる。体内の循環微生物抗体への反応として生じる全身性炎症は、敗血症および敗血症性ショックの病態生理学の本質的特徴である。非特異的免疫防御細胞と、リポ多糖類(LPS)、細菌の細胞壁成分、ペプチドグリカンまたはリポテイコ酸(LTA)との接触により先天的免疫性が活性化され、感染の初期では様々な免疫細胞からサイトカイン類が分泌される。これらのサイトカインは免疫防御において重要な役割を演じるだけでなく、例えば活性化された好中球が炎症部位へ誘導され、血液中でサイトカインおよび細菌性物質が循環され、好ましくない病態生理学的事象が連鎖的に生じる。この炎症反応と同時に現れる臨床症状は、全身性炎症反応症候群 (SIRS)と呼ばれる。
【0006】
敗血症の病状が現れた場合または既にそのような病状が疑われた場合、治療を早期に実施しなければならない。これまでは敗血症患者の病原スペクトルを迅速かつ確実に同定し得る可能性はなかった。従来の敗血症の診断は、抗生物質治療を開始する前に病原体同定用の臨床検体(血液および尿培養物、痰、便、傷口分泌物)を何回か採取し、耐性を評価することにある。今までの方法を用いて「敗血症」病原体の検出に至る確率は 30 〜 50%である。これは、静脈血検体または尿により細菌学的試験、菌培養試験を行うため何回も継代培養できる装置にたよるしかなかった。この検体は液体栄養培地に接種され、インキュベーションされる。この方法は、貴重な時間を犠牲にするだけでなく、生きた病原体でのみ可能である。すなわち、抗生物質治療の間に検体が採取されるので、培養試験はほとんど無効である。従って、一般的な抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルスおよび/または抗寄生生物剤による療法が今も実施される。この方法では、細胞壁成分のような病原体の発熱物質を捕捉することはできない。
【0007】
従って、敗血症病原体および敗血症病原スペクトルの検出および識別を可能にする迅速かつ簡易な試験系に関して要求がある。発熱原はいわゆる発熱物質であって、貪食可能な体細胞(免疫細胞)に対して炎症誘発性インターロイキン(特にIL-1 および IL-6)ならびに腫瘍壊死因子-α (TNF-α)の生合成を刺激し、これらは「真性発熱原」として生体の温度中枢に影響を与えるので、発熱の上昇および放熱の低下をきたす。最も強力な作用を有する発熱原は、グラム陰性菌に由来する。発熱原とは一様な物質群のことではない。ほかに、各種の微生物(非病原性細菌および病原性細菌、真菌およびウイルス)ならびに寄生生物からの細胞壁成分および代謝産物、例えばエンドトキシン、エクソトキシンまたはスーパー抗原が挙げられる。
【0008】
特に、安定剤溶液のような発熱原含有液体を注射または注入する場合、細菌汚染された保存血、無発熱原性でない注射器、注入容器などを使用する場合、発熱原は臨床的に意味がある。無発熱原性を欠くことは、高熱、ショック、消費性凝固傷害および急性腎不全を併発した、いわゆる「輸血事故」の主因となる。特に今日、発熱原が中心静脈カテーテル、長期の経管栄養および長期の人工呼吸などで体内に侵入する場合に、危険因子がさらに加わる。
【0009】
発熱原は、ほとんどが耐熱性および透析可能な物質、例えばリポ多糖-タンパク質-脂質-複合体(LPS)である。従って、ヒトまたは動物への使用が検討される輸液、器具および容器を滅菌する通常の方法は、発熱原を除去するには充分でない。更なる洗浄工程が求められる。無発熱原性は、そのような製品を生体に使用するのに欠かせない前提条件である。ヒトまたは動物の身体と頻繁に接触するような製品は、それが血流に適用されるものであっても体内に長期間滞留するものであっても、すべて充分に無発熱原性でなければならない。
【0010】
現れる発熱物質のスペクトルは、病原体または病原スペクトルに依存する。特定の病原体は、病原体に典型的または病原体に特異的な発熱原パターン、いわゆる「病原体関連微生物パターン(PAMP)を形成する。PAMPの同定および鑑別のために、特定の病原体または病原スペクトルの分類を行うこともある。
【0011】
検体中の発熱原またはPAMPを検出する(発熱試験)ために今日、特に市販されている3種類の検出方法または試験を利用することができる。既知の試験にはウサギ発熱試験がある。これは発熱原に対する動物の「発熱反応」に基づいている。動物試験では、被験物質をウサギの耳静脈に投与する。その物質に対する動物の生体防御反応を検出するには、数時間後に直腸温度を測定する。この試験は時間と軽費がかかり、動物に苦痛を与えると予測される。エンドトキシンの有無により発熱原を検出することはできても同定することはできない。ウイルスに対する試験は不可能である。PAMPを特定することは不可能である。その他、ヒトへの感染性も問題である。
【0012】
さらに既知の試験には「リムルス変形細胞溶解試験 (Limulus Amobocyten Lysat Test: LAL) 」(例えば Cambrex Bioscience 社または Charles River社)がある。この試験は、発熱原として既知の物質に対する類人猿の防御反応に基づく。LAではカブトガニの血液細胞から、グラム陰性細菌のエンドトキシンを介して活性型酵素へ変換される酵素前駆体が得られる。酵素基質の変換によって、例えば分光計によりエンドトキシン量を定量的に測定することができる。この方法は、既知のウサギ試験より感度が高くて標準化に優れているが、グラム陰性生物のエンドトキシン(例えばリポ多糖(LPS)、検出限界: 3 pg/ml)にのみ適用される。そのようなエンドトキシンは、既知の発熱物質のうちほんの少しである。他の発熱原は認識されない。しかし近年、グラム陰性菌よりグラム陽性病原体が益々重視されるようになった。
【0013】
他の既知の試験としては最後に、免疫発熱試験、例えば「Endosafe - IPT」 (Charles River社)が挙げられる。この試験は、既存の発熱原に対するヒト細胞の「発熱反応」に依存している。ヒト全血試験では、血液の生細胞から生じる発熱物質への応答としてサイトカイン IL-1 が放出され、これをELISAにより定量的に測定することができる(検出限界:20〜50 pg/ml)。この系は、グラム陽性病原体の発熱原も捕らえられる。しかしこの試験は、時間と労力がかかる。ヒトの全血が調製されなければならず、これは潜在的に病原性である。PAMP特定は不可能である。
【0014】
こういった既存の試験は長時間かかり、機器の整備された実験室(ELISA試験、ヒト血液調製、動物実験)が当然必要となる。発熱原の検出に関して迅速かつ簡便に実施できる試験系に対する要求がある。その他、病原体または病原スペクトルの逆推論を引き出せるように、発熱パターンPAMPを特定化する試験系に対する要求がある。これらは、発熱原の発現が役割をなす感染症、とりわけ敗血症の診断および治療にとって好都合である。
【0015】
さらに、医療器具、ドナーの組織、注射用薬剤、および移植物または装置(カテーテルなど)のような医薬用製品において発熱性残留物に対する改良型試験への要求もある。さらにまた、食品業界および医薬品業界における発熱物質および菌類に対する改良型の検出法に対する要求もあり、食品、食品成分、食品または薬品用の原料および出発物質において改良型の同定法に対する要求もある。
【0016】
生体内での発熱原の出現とともに現れる敗血症および敗血症類似の病状がみられる場合、病態生理学的過程と関連して、いわゆるトール様受容体[TLR(1種または複数種)]が関与することが知られている。TLRは発熱原に対する体性免疫反応に介在する。微生物が引き起こす敗血症の場合、細菌の成分がTLRを介して宿主の免疫細胞を刺激する。
【0017】
TLR は、約200個のアミノ酸からなるロイシンに富んだ細胞外ドメインおよび細胞質ドメインを有する、保存性の高い膜貫通タンパク質である。これは、細胞質ドメインにおける相同性に基づいて、インターロイキン-1受容体/トール様受容体-スーパーファミリーに属する。特徴的な細胞質TIRドメインは、シグナル伝達に必須である。細胞外ドメインは、様々な病原体分子構造の認識に直接関与し、IL-1 受容体の分子構造と極めて異なる。IL-1 受容体の細胞外部分は3つの免疫グロブリンドメインからなるが、各TLRはそれぞれ24〜29アミノ酸残基からなる18〜26の LRRを有する。TLR は、ショウジョウバエで既知のタンパク質「トール(Toll)」とは逆に、未知の構造体により直接活性化される。 今日まで、ヒトで10種の異なるTLR が同定され、マウスで13種 のTLR が同定されている。それらは、免疫系の様々な細胞型、主に単球、マクロファージ、樹状細胞ならびにB細胞およびT細胞上で発現される。TLR は原形質膜上に局在しており、TLR-3、TLR-7 およびTLR-9 は核酸モチーフにより活性化され、細胞内のコンパートメントに存在する。
【0018】
TLR-2 は、細菌のリポタンパク質およびリポテイコ酸を含む、グラム陽性菌に由来する多くのPAMPの認識にとって本質的である。TLR-3は二本鎖ウイルスRNAの認識に関与している。TLR-4 は主にLPSによって活性化される。TLR-5 は、細菌のフラジェリンを検知する。TLR-7 およびTLR-8は、合成の小さな抗ウイルス分子および一本鎖RNAを認識する。TLR-9は、小胞体(ER) 中で検出され、CpG-モチーフ含有DNA、例えばCpG-オリゴデオキシヌクレオチドによる刺激の後、エンドソーム/リソゾームのコンパートメント中に回収される。CpG-モチーフは、核酸の内側領域であり、そこでは成分シトシン(C)およびグアニン(G)が予想外に多く現れる(ここで「p」は、両成分「C」 および「G」 を連結するリン酸基を示す)。そのようなCpG-モチーフは、細菌およびウイルスのゲノムで特に頻繁にみられるが、脊椎動物のゲノムではみられない。
【0019】
トール様受容体のアンタゴニスト類は、皮膚科領域、例えばウイルス誘導性乳頭腫の治療に益々使用されている。新しいTLRアンタゴニストをスクリーニングするための試験系に対する要求がある。
【0020】
ヒト免疫系の活性化に対する共通認識は、癌化学療法に際しての利点にある。CPG 7909 (Coley Pharmaceutical Group社)のような物質群は、このように免疫調節効果を導くので、化学療法の有効性を高めることができる。新たなCpG-モチーフ(オリゴデオキシヌクレオチド)をスクリーニングするための試験系に対する要求がある。
【0021】
[発明の開示]
本発明は特に、発熱原を特異的に検出するための方法および試薬(特異的発熱試験)を提供するという技術的課題に基づくものである。これに関連して、人体または動物の感染に際して病原体または病原スペクトルを特異的に検出するための方法および試薬を提供する上で更なる技術的課題がある。これに関連して、新たなTLR アンタゴニスト および/または新たなCpG-モチーフをスクリーニングするための方法および試薬を提供する上で更なる技術的問題がある。
【0022】
前記課題は、請求項1に記載の特徴を有する、検体中の発熱原を特異的に検出するための遺伝子導入細胞および細胞系の提供によって本質的に解決される。その細胞は接着状態にあることが好ましい。変形例として、その細胞は懸濁状態にあることが好ましい。
【0023】
本発明に基づく遺伝子導入細胞または細胞系は、(a)少なくとも1のトール様受容体(TLR)をコードする遺伝子(単数または複数)、および(b) NF-κB により誘導可能なプロモーターの発現制御下にある少なくとも1のレポーター遺伝子を有する。前記細胞または細胞系は、前記ゲノム中にCD14受容体をコードする更なる遺伝子を有することが好ましい。本発明の細胞または細胞系は、線維芽細胞、好ましくは哺乳動物の線維芽細胞、特にはマウスのNIH-3T3型線維芽細胞に基づくことが好ましい。このTLRは、特にプラスミドを介して共受容体CD14 (MD2)と一緒に導入されることが好ましい。
【0024】
本発明はまた、少なくとも1のTLRを発現する(好ましくはCD14共受容体を共発現する)、線維芽細胞NIH-3T3に基づく遺伝子導入細胞系を提供することを目的とする。TLR-4とCD-14との共発現が特に好ましい。本発明者らは驚くべきことに、発現TLRを特異的に活性化する発熱原と接触した遺伝子導入細胞は、レポーター遺伝子にコードされた酵素活性を発現し、この活性を例えば発色反応により検出して一定条件下で定量し得ることを見いだした。さらに、発熱原、PAMPおよび他のTLRを活性化する有効成分を検出するための細胞試験系も提供される。
【0025】
前記試験系の選択性および感度は高い。感度はLPS濃度で1〜10 pg/ml程度 である。それに比較して、従来の発熱試験の感度は3〜10 pg/ml 程度(LAL) または20〜50 pg/ml 程度(IPT)である。
【0026】
本発明の試験系は、CO2通気装置などの細胞培養実験用機器なしに行うことができ、いかなる使用者でも特殊な実験装置なしに簡単に使用することができる。
【0027】
本発明の教示により原理的に特徴づけられた試験方法は、すべてのTLR (例えば、ヒトTLR 1〜10)に拡張することができ、その結果、あらゆるPAMPを選択的に認識および同定することができる。従って好都合なことに、1種もしくは多種の発熱原または(病原体関連微生物パターン)PAMPの特異的検出、ならびにその定量化を可能とする簡便かつ迅速な細胞試験系を提供することができる。理論に束縛されず、TLRの活性化は転写因子NF-κBを利用して様々なサイトカインの産生に至るシグナル伝達系を誘導する。シグナルカスケードには、MyD88 およびIRAK1などのタンパク質が多数関与している。このシグナルカスケードは、転写因子NF-κBの活性化を経て炎症性サイトカインの誘導および産生につながる。これらのサイトカイン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン1(IL-1)およびインターロイキン6(IL-6)は、この過程において最重要でかつ最初に関与する媒介因子として機能する。TLR活性化の後、アタプター分子の補充および炎症性サイトカインの産生が起きる。これらのサイトカイン分泌は、免疫系の刺激をもたらし、微生物の侵入を防御する。しかし、極度の過剰産生は敗血症または敗血症ショックにつながることもある。敗血症の診断との関連では、特にTLR-2およびTLR-4が好ましい。TLR-2がペプチドグリカン、リポペプチドおよびTLAのグラム陽性菌成分を認識する一方で、TLR-4はLPS(グラム陰性菌細胞壁の主成分)に対する受容体である。TLR-2およびTLR-4はまた、グラム陽性菌およびグラム陰性菌による敗血症においてシグナル伝達の受容体として核心であり、好ましくは病原スペクトルの識別に利用されるべきである。表1は、いくつかのヒトTLRの特異性を示す。
【表1】
【0028】
前記の病原特異的PAMPの同定により、敗血症を引き起こす病原体群を迅速に同定できる可能性が得られる。本発明の細胞試験系を用いれば、敗血症患者へ早期にかつ目的に合った治療を行うことができる。好ましい変形例で提案されるのは、遺伝子導入細胞が少なくとも2つの異なるTLRを共発現する結果、それぞれ独自の特異性を有するTLRヘテロ二量体が形成されるものである(表1参照)。従って好ましくは、その細胞は、第一のトール様受容体型(TLR-Typ)をコードする1または複数の遺伝子、および第二のトール様受容体型(TLR-Typ)をコードする1または複数の遺伝子を更に有する。
【0029】
「レポーター遺伝子」とは、宿主生物において誘導可能なプロモーターの制御下で、構成的に発現されない又は若干のみが構成的に発現される酵素活性をコードする1または複数の遺伝子または遺伝子構造体を意味する。コードされた酵素活性の発現は、レポーター遺伝子プロモーターが誘導されたことを示す。レポーター遺伝子および誘導可能なプロモーターは、レポーター遺伝子プラスミド上にあることが好ましい。理論に拘束されず、TLR誘導細胞内シグナルカスケードの成分である転写因子によってレポーター遺伝子プロモーターを誘導することが提供される。好ましくは、本発明に基づいて提供される少なくとも1のレポーター遺伝子は、転写因子「核因子カッパB(NF-κB)」の制御下にある。TLRの活性化に際し、細胞質内で局在化して結合するNF-κBは遊離し、細胞の核内へ移動する。好ましいNF-κB誘導可能プロモーターは、セレクチンすなわちELAM-1 (内皮細胞白血球接着分子1)プロモーターである。
【0030】
好ましいレポーター遺伝子は、好ましくはELAM-1 プロモーターの制御下で好ましくはレポーター遺伝子プラスミドの形をとるSEAP (分泌アルカリホスファターゼ)である。さらに好ましいレポーター遺伝子は、好ましくはELAM-1 プロモーターの制御下で好ましくはレポーター遺伝子プラスミドの形をとるβ-ガラクトシダーゼ遺伝子lacZである。さらに好ましいレポーター遺伝子は、好ましくはELAM-1 プロモーターの制御下で好ましくはレポーター遺伝子プラスミドの形をとるルシフェラーゼ遺伝子である。さらに好ましいレポーター遺伝子は、 好ましくはELAM-1 プロモーターの制御下で好ましくはレポーター遺伝子プラスミドの形をとるGFP (緑色蛍光タンパク質)である。自明のことではあるが、TLRの活性化または結合に際して生じるシグナルカスケードによって調節可能な性質を有するプロモーターであれば、いかなる適切なプロモーターもそれぞれの用途に使用することができる。
【0031】
そのTLRは現在知れている10個のヒトTLRから選択されることが好ましい。本発明はこれら既知のヒトTLRに限定されないことは言うまでもない。さらにこれから命名されるTLRも本発明に組み入れられる。従って本発明の目的は、今まで詳しく特徴付けられていないTLR変異体の少なくとも1の遺伝子を有し、このTLR変異体を発現する遺伝子導入細胞または細胞系である。
【0032】
本発明の好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR1型(TLR-1)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR2型(TLR-2)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR3型(TLR-3)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR4型(TLR-4)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR5型(TLR-5)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR6型(TLR-6)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR7型(TLR-7)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR8型(TLR-8)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR9型(TLR-9)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR10型(TLR-10)を発現する。好ましい変異体では、前記細胞または細胞系はヒトTLR1型(TLR-1) およびヒトTLR2型 (TLR-2)からなる少なくともヘテロ二量体受容体を発現する。さらに好ましい変異体では、前記細胞または細胞系はヒトTLR7型(TLR-7) およびヒトTLR8型 (TLR-8)からなる少なくともヘテロ二量体受容体を発現する。さらに好ましい変異体では、前記細胞または細胞系はヒトTLR6型(TLR-6) およびヒトTLR2型 (TLR-2)からなる少なくともヘテロ二量体受容体を発現する。本発明は、TLR-1 、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8、TLR-9およびTLR-10からなる群から選択される更なるTLRの共発現にも関する。本発明は好ましくは、次のヘテロ二量体: TLR-1/TLR-2、TLR1-TLR-3、TLR-1/TLR-4、TLR-1/TLR-5、TLR-1/TLR-6、TLR-1/TLR-7、TLR-1/TLR-8、TLR1/TLR-9、TLR-1/TLR-10、TLR-2/TLR-3、TLR-
2/TLR-4、TLR-2/TLR-5、TLR-2/TLR-6、TLR-2/TLR-7、TLR-2/TLR-8、TLR-2/TLR-9、TLR2/TLR-10、TLR-3/TLR-4、TLR-3/TLR-5、TLR-3/TLR-6、TLR-3/TLR-7、TLR-3/TLR-8、TLR-3/TLR-9、TLR-3/TLR-10、TLR-4/TLR-5、TLR4/TLR-6、TLR-4/TLR-7、TLR-4/TLR-8、TLR-4/TLR-9、TLR-4/TLR-10、TLR-5/TLR-6、TLR-5/TLR-7、TLR-5/TLR-8、TLR-5/TLR-9、TLR5/TLR-10、TLR-6/TLR-7、TLR-6/TLR-8、TLR-6/TLR-9、TLR-6/TLR-10、TLR-7/TLR-8、TLR-7/TLR-9、TLR-7/TLR-10、TLR-8/TLR-9、TLR-8/TLR-10、TLR-9/TLR-10にも関する。これらのTLRはそれぞれ、単独でまたは少なくともその1に他のTLRもしくはTLRヘテロ二量体を組み合わせて共発現させることもできる。
【0033】
しかし本発明は、ヒトTLRに限定されるものではない。特に動物実験への適用および獣医学的目的、動物感染症の治療目的で本発明の細胞が、動物のTLR、特に哺乳動物のTLRを発現することが提示される。TLRはマウスのTLRから選ばれることが特に好ましい。本発明の好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR1型(mTLR-1)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR2型(mTLR-2)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR3型(mTLR-3)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくとも1のマウスTLR4型(mTLR-4)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR5型(mTLR-5)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系が少なくともマウスTLR6型(mTLR-6)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR7型(mTLR-7)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系が少なくともマウスTLR8型(mTLR-8)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR9型(mTLR-9)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系が少なくともマウスTLR10型(mTLR-10)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR11型(mTLR-11)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR12型(mTLR-12)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR13型(mTLR-13)を発現する。
【0034】
本発明の好ましい実施態様において、少なくとも1のTLRまたはTLRヘテロ二量体が特異的に発現され調製され、以下に「細胞型」として特徴付けられる本発明に基づく遺伝子導入細胞または細胞系が提供される。特に好ましくは、それぞれ異なるTLRまたはTLRヘテロ二量体を発現している3、4、5、6、7、8、9、10または11以上の異なる本発明の細胞型からなる「セット」である。理論に束縛されず、ある発熱原群の各発熱原は、1または数種の特定TLRおよび/またはTLRヘテロ二量体にそれぞれ特異的に結合する。このようにして、検体における数種の発熱原および/または発熱原スペクトルの簡便な性質決定が可能となる。例えば、TLR-2およびTLR-6からなるヘテロ二量体を発現する細胞型によって、マイコプラズマ発熱原および酵母発熱原を特異的に検出することができる。例えば、TLR-3を発現する細胞型およびTLR-9を発現する細胞型からなる「セット」によって、二本鎖RNAを有するウイルスを特異的に検出することができる。
【0035】
従って本発明の目的は、少なくとも1の細胞型、好ましくは数種の異なる細胞型が添加され接着させ、又は懸濁物としてインキュベーションされる細胞培養容器、好ましくは細胞培養プレート(マルチウエルプレート: Multiwellplatte)を提供することである。最も単純な場合、それらの細胞は細胞培養容器の表面、例えばコラーゲンフィルムに接着している。さらに懸濁培養も好ましい。インキュベーション/培養は、三次元的生物基材の上または中でも可能である。さらに、細胞培養担体をアドレス指定可能なサブコンパートメントに区切って、その上または中にそれぞれ異なる細胞型を添加することも可能である。本発明は、細胞をプレート、容器またはウエル(Well)上に播種して、更なる利用にそなえて低温保存するための保存(好ましくは凍結)することに関する。従って、発熱原およびTLRを活性化または調節する他の有効成分(TLRアンタゴニスト) を短時間内で試験する必要のある場合、調製されたプレート、容器またはウエルを使用することができる。最も単純な場合、細胞を含むプレートなどは解凍され被験検体とともにインキュベーションされる。このレポーター遺伝子を介した酵素活性は既存の方法を用いて検出され、その細胞型において試験用基質、発熱原またはPAMPによるTLRの特異的な活性化の有無が示される。
【0036】
細胞培養用の容器はキットで調製されることが好ましい。このキットは、前記の細胞培養容器またはアッセイ担体中に前記の特性決定された細胞を含み、特に試験実施の直前に凍結状態で提供されることが好ましい。このキットの使用に際して好都合にも、CO2恒温槽などのコスト高となる細胞培養条件は不要である。キットは例えば、色の変化を検知するための機器を用いて病院の簡易な検査室でも実施することができる。最も単純な場合、外観で認識可能な色の変化をもって特異的なTLR活性化の識別に十分である。キットの使用者は、その色変化のパターンから発熱原スペクトルおよび/または病原体の型を突き止めることができる。
【0037】
検体中の発熱原を特異的に検出するための本発明のキットは、培養容器中に前記の請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1の遺伝子導入細胞、および誘導可能なレポーター遺伝子によりコードされた酵素に対する少なくとも1の基質を含有する検出培地を含む。好ましくは、少なくとも2つのコンパートメントまたはウエルを有する細胞培養容器またはプレートを含むキットであって、第1のウエルには少なくとも1の第1のTLR型もしくはヘテロ二量体を発現する少なくとも1の第1の遺伝子導入細胞、および少なくとも1の第2のTLR型もしくはヘテロ二量体を発現する第2のウエルには第1の遺伝子導入細胞とは異なる第2の遺伝子導入細胞を含むキットである。
【0038】
本発明に基づき、以下の特に好ましい例が提示される。好ましくは少なくともヒトTLR-1を発現する第1の遺伝子導入細胞を含む第1のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-2を発現する第2の遺伝子導入細胞を含む第2のウエル、および好ましくは少なくともヒトTLR-3を発現する第3の遺伝子導入細胞を含む第3のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-4を発現する第4の遺伝子導入細胞を含む第4のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-5を発現する第5の遺伝子導入細胞を含む第5のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-6を発現する第6の遺伝子導入細胞を含む第6のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-7を発現する第7の遺伝子導入細胞を含む第7のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-8を発現する第8の遺伝子導入細胞を含む第8のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-9を発現する第9の遺伝子導入細胞を含む第9のウエル、および好ましくは少なくともヒトTLR-10を発現する第10の遺伝子導入細胞を含む第10のウエル、ならびに好ましくは検出用培地を有する1または複数の細胞培養容器からなるキットである。
【0039】
本発明の更なる目的はまた、検体中の発熱原を特異的に検出するための方法を提供することである。本発明に基づく方法は、少なくとも以下の工程:
検体を調製する工程、少なくとも1の特異的TLRまたは少なくとも1の特異的TLRヘテロ二量体を発現する本発明の少なくとも1の遺伝子導入細胞もしくは細胞系を調製する工程、
前記細胞への特に検体成分との結合により特徴付けられる「検体-細胞-複合体」を生じるように前記検体を前記細胞と接触させる工程、好ましくは約37℃にて約3〜約24時間で酵素活性を誘導するために前記の検体-細胞-複合体をインキュベーションする工程、ならびにレポーター遺伝子により誘導された酵素活性を検知または検出する工程を含み、
前記酵素活性は、TLR型またはTLRヘテロ二量体に特異的な発熱原もしくはアゴニスト有効成分の存在を表わすことを特徴とする。
【0040】
好ましくは前記のレポーター遺伝子により誘導された酵素活性の検知または検出は、細胞の誘導可能なレポーター遺伝子によりコードされた酵素に対する基質を含む検出培地を調製すること、ならびに好ましくは37℃にて約30〜240分間前記検出培地中で誘導された検体-細胞-複合体をインキュベーションすることによって行われる。前記酵素活性は酵素的に転換された基質により検出され、好ましくは定量されることを特徴とする。酵素的に転換された基質およびそれを用いた酵素活性の定量によって、特異的発熱原またはTLR活性化有効成分(TLR-アゴニスト、CPG-モチーフなど)の活性または濃度を逆算することができる。
【0041】
前記酵素活性は、アルカリホスファターゼ活性、特にSEAPにより媒介されることが好ましい。アルカリホスファターゼとは、アルカリ環境でリン酸エステルの加水分解を触媒する酵素である。基質として、好ましくは5-ブロモ-4-クロロ-インドイルホスフェート (BICP)が使用される。従って酵素活性の検知は、青色変化および/または青色沈殿物(濃青色、不溶性、容易に認識可能なインジゴの沈殿物)に基づいて行われる。
【0042】
別の変形例において、前記基質は、p-ニトロフェニルリン酸(pNPP)であり、アルカリホスファターゼ活性はpNPPの加水分解および溶液の黄色変化によって示される。溶液色の黄色変化は、好ましくは測光的に検知および定量される。測光分析は約405nmで行われることが好ましい。その吸光から、検体中の発熱原またはTLR活性化有効成分の濃度を測定することができる。細胞内で検出されるレポーター遺伝子を定量可能とするために、細胞を溶解し、そこから色素を遊離させねばならない。細胞内での直接検出はNaOH上において細胞色素の溶出によって行われ、それによって細胞中の定量的測定が可能となる。定量のために濃度計による評価(網掛けにより)も可能なことは自明である。
【0043】
他の好ましい変形例において、酵素活性はβ-ガラクトシダーゼ活性であり、基質は特に5-ブロモ-4-クロロ-3-インドシル-β-D-ガラクトピラノシド(X-GaI)であることが好ましい。酵素活性の検知は青色変化および/または青色沈殿物によって行われる。
【0044】
他の好ましい変形例において酵素活性はルシフェラーゼ活性であり、基質は好ましくはルシフェリンである。必要に応じて添加されるATPおよびMg 2+の存在下では、その酵素活性は発光によって示される(化学発光アッセイ)。
【0045】
本発明の方法または試験系を用いて分析することができる検体は、特に人体または動物個体から得られる臨床検体である。特に敗血症の場合では、検体は血液、特に全血が好ましい。特に感染症のタイプ分類では、更なる臨床検体は、血清、血漿、尿、痰、便、生検組織片、気管支洗浄液、中枢神経液、脊髄液、リンパ液、滑液などである。従って本発明の目的は、好ましくは本発明の方法および/または好ましくは本発明のキットの使用下で、臨床検体中の発熱原を特異的に検出するための遺伝子導入細胞の使用である。
【0046】
驚くべきことに、本発明の遺伝子導入細胞または細胞系は無発熱原性を調べるための試験系に使用し得ることが分かった。無発熱原性を証明するために、または発熱原汚染を測定するために前記方法を使用する場合、その検体は好ましくは、医療機器もしくは医薬品(MP)または生体外診断薬(IVD)用の試料片(標本)、あるいは薬剤、薬剤成分、食品、食品成分、または食品もしくは薬剤の原料もしくは出発物質である。例えば、それぞれ各種の外科用機材、カニューレ、注射器、輸液機器、採血器具および輸血機器、透析用器械および装置、創傷被覆物、縫合材料、インプラント、人工装具、カテーテル、輸液、洗浄液などが挙げられる。さらに前記検体は、ヒト由来の移植片、組織および細胞、およびその内容物またはそれに由来の製品、ならびに動物由来の移植片、組織および細胞、およびその内容物またはそれに由来の製品から選ばれることが含意される。さらに前記検体は、化粧品原料および化粧品から選択されることが含意される。よって本発明の更なる目的は、好ましくは本発明の方法および/または好ましくは本発明のキットの使用下で、無発熱原性を証明する試験のために遺伝子導入細胞を使用することである。
【0047】
さらに驚くべきことに、一群の候補物質においてTLRアンタゴニストの特性を有する有効成分を見付るため、およびその有効性を定量するための試験系に本発明の遺伝子導入細胞または細胞系を使用し得ることが分かった。従って本発明の更なる目的は、好ましくは本発明の方法および/または好ましくは本発明のキットの使用下で、TLRアンタゴニストの特性を有する有効成分をスクリーニングするために遺伝子導入細胞を使用することである。
【0048】
なお驚くべきことに、特定のTLR、特にはTLR-9を活性化するCpG-モチーフを有するオリゴヌクレオチド類を一群の候補物質から見付けるため、およびその有効性を定量するために、本発明の遺伝子導入細胞または細胞系を使用し得ることが分かった。従って最後に本発明の更なる目的は、好ましくは本発明の方法および/または好ましくは本発明のキットの使用下で、CpG-モチーフを有するオリゴヌクレオチド類をスクリーニングするために遺伝子導入細胞を使用することである。
【0049】
[例]
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の試験方法[リガンドLPSを用いたTLR4/CD14 (MD2)の例]を示す略図である。
【図2】解凍し、100 ng/mlのLPS(右側の4穴(ウエル))およびBCIP基質を含有する検出培地を添加した後、SEAPレポータープラスミドを有するNIH-3T3クローン4/5 TLR-4/CD14を示す。
【図3】10 pg/ml〜100 pg/mlのLPS、基質BCIPを含有するNIH-3T3 TLR-4/CD14試験系の誘導(ネガティブコントロールは誘導されないか又はssRNA40で誘導された)を示す。
【図4】NIH-3T3クローン4/5 TLR4/CD14感度の検出[検出培地の添加後2時間、LPS は10 pg/mlまで特異的(測光分析)]を示す。
【図5】NIH-3T3クローン4(5) TLR4/CD14感度の検出[検出培地の添加後2時間、LPS は1 pg/mlまで特異的に検出可能(測光分析)]を示す。
【図6】HEKブルー(blue)293 線維芽細胞および他の293 線維芽細胞を用いたTLR-4試験の比較実験(TLR4/CD14 SEAPを導入し100 ng/mlのLPSで誘導した。誘導細胞と同様に非誘導の対照も青色変化した。これらの細胞を用いた特異的検出は不可能)を示す。
【図7】HEKブルー(blue)293 線維芽細胞および他の293 線維芽細胞を用いたTLR-4試験の比較実験(TLR4/CD14 SEAPを導入し100 ng/mlのLPSで誘導した。誘導細胞と同様に非誘導の対照も青色変化した。これらの細胞を用いた特異的検出は不可能)を示す。
【図8】HEKブルー293 線維芽細胞および他の293 線維芽細胞を用いたTLR-4試験の比較実験[TLR4/CD14 SEAPを導入し100 ng/mlのLPSで誘導した。細胞ペレットのSDS-PAGE/ウエスタン法であって、一次抗体=抗SEAPおよび抗マウスPOD 複合二次抗体、マーカー=予備染色SeeBlue(登録商標) Plus 2 、標準=アルカリホスファターゼ(SAEP)である。HEK293 および他の293 細胞(K2 およびK4)では、誘導細胞と同様に非誘導対照細胞も同量発現した。これらの細胞を用いた特異的検出は不可能]を示す。
【図9】試験系の特異性[NIH-3T3 TLR-4/CD14 試験系を非特異的発熱原、ODN (TLR-9に対するリガンド)、PGN (TLR-2に対するリガンド)、ポリIC−で誘導した(各25 μg/ml)。試験の特異的反応を表わす色変化は認められない]を示す。
【図10】NIH-3T3 TLR-4/CD14クローン4/5の位相差顕微鏡撮影図[30% FCS、80 mmol/l HEPES および5% DMSOの培地100 μlに1穴あたり30,000 細胞を播種し、3日〜4 週間80 ℃にて凍結状態に置き、CO2非含有湿潤雰囲気の37℃で一夜かけて接着させた]を示す。
【図11】本発明のTLR-4試験(凍結して再解凍したNIH-3T3 TLR-4/CD14 SEAP P40にて実施した。100 pg/mlのLPSおよび100 pg/mlのssRNA40で誘導、24時間後に誘導、3時間後に検知。導入細胞に特異的な青色変化が観察される)を示す。
【図12】本発明のTLR-5試験(NIH3T3 クローンTLR-5 SEAPにて実施し、2 μg/mlのフラジェリンで誘導した。導入細胞に特異的な青色変化が観察される)を示す。
【図13】ヒーラ細胞を用いたTLR-5試験の比較実験(TLR-5 SEAPを導入し、2 μg/mlのフラジェリンで誘導した。導入細胞と同様に非導入対照も濃い青色を呈する。この細胞系では特異的な遺伝子導入は不可能である)を示す。
【0051】
例1: TLR-4特異的試験系
方法
TLR-4を用いた遺伝子導入(トランスフェクション)
細胞系NIH-3T3に、TLR4/CD14複合体 およびレポーター遺伝子プラスミド SEAP/ELAM-1 を導入した。
【0052】
TLR-4のエンドトキシン (LPS)媒介型誘導は、シグナルカスケードを経て転写因子NF-κBの活性化に至った。レポーター遺伝子のSEAPの発現は、NF-κB 誘導可能ELAM-1プロモーターにより抑制される。従って、TLR-4 の誘導に際し、エンドトキシンのリポ多糖 (LPS)によりNF-κB活性化およびSEAPの特異的分泌が生じる。
【0053】
試験の実施
NIH-3T3 TLR-4/CD14クローン4/5 P35を、500 μl/ウエル中に1ウエル当たり30,000〜200,000 細胞(24穴)の密度で0,5% FCS 培地に播種(他のウエル容積では適切な細胞数)し、一夜接着させる。
【0054】
翌日、LPS で一夜誘導させる(ネガティブコントロールのssRNA40ではTLR-4/CD14によって誘導されない)。
【0055】
翌日、300 μl/ウエルの検出培地を用いたインキュベーションにより検知を行い、誘導細胞を直接呈示する。誘導細胞では SEAP-活性により検出培地中の基質BCIPが深青の不溶性最終産物(インジゴ)に転化される。また誘導細胞では、SEAP-活性は検出培地中の基質pNPPが淡黄色の可溶性色素複合体に転化され、これを約405 nmで光学的に測定する。測光分析は検出培地添加の約2時間後に行う。
【0056】
24穴プレートを用いた試験キットの凍結および利用
変形例として、遺伝子導入細胞系を適切なアッセイ形式(細胞培養用ウエルプレート: マルチウエルプレート)中で適切な密度(24穴では500 μl 毎に200,000 細胞/ウエル)にて凍結する。使用者は、試験プレート中で凍結乾燥された8〜10種の異なる細胞系を有する「アッセイキット」を入手する。アッセイではキットを開封し、37℃恒温槽中で直接インキュベーションすることができる。
【0057】
キットを解凍した後、細胞接着用のDMEM培地の添加を一夜かけて行う。HEPES緩衝液を含む培地では、細胞試験のインキュベーションをCO2非通気の恒温槽中で行うことができる。100 ng/ml LPSの添加により試験的に誘導する。検知は24時間後、300 μl/ウエルのBCIP検出培地の添加により行う。
【0058】
結果
(a) 解凍試験系
図2は、解凍後に本発明の3T3 NIHクローン4/5 TLR4/CD14に対して行った、100 ng/ml LPSおよびネガティブコントロールでの結果を示す。誘導細胞では、SEAP活性により検出培地中の基質BCIPが濃青色の不溶性最終産物(インジゴ)へ転化されている。
【0059】
TLR 4/CD14を安定的に導入された細胞に基づいて、大型の装備および培養実験室(滅菌ベンチおよびCO2恒温槽)を使わず迅速かつ簡便に操作できるLPS検出系が開発された。迅速な実施が可能であり、取り扱いが簡単である。
【0060】
(b)感度
図3は、10 pg/ml〜100 pg/mlのLPSを用いた、NIH-3T3クローン4(5) TLR4/CD14 SEAP試験系の誘導を示す。検出培地に含まれる基質はBCIPである。ネガティブコントロールでは誘導されず、 ssRNA40を用いた別のネガティブコントロール では非特異的に誘導された。
【0061】
図4は、10 pg/ml 未満のLPSで特異的に反応する、NIH-3T3クローン4(5) TLR4/CD14 SEAP の検出感度を示す。図5は、1 pg/ml 未満のLPSで特異的に反応する、NIH-3T3クローン4(5) TLR4/CD14 SEAP の検出感度を示す。
【0062】
この試験系の感度は約1〜2 pg/ml LPSにある。
【0063】
(c) 特異性
前記のNIH-3T3 TLR-4/CD14 SEAP 試験系は、TLR-4が結合しない高用量の非特異的発熱原(それぞれ25 μg/mlのODN、PGN、ポリIC)で誘導した(ODN、PGN、ポリICは、TLR-9、TLR-2およびTLR-3によって認識されるが、TLR-4では認識されない)。図5は、極めて高濃度の非特異的発熱分画を用いてもTLR-4特異的試験系で色変化が認められず、TLR-4試験は特異的であることを示している。
【0064】
例2: 比較実験
方法
HEK ブルー(blue) 293 線維芽細胞および他の 293 線維芽細胞にTLR-4/CD14 SEAP を導入し、100 ng/ml LPS により誘導した。方法の更なる変量はすべて、本発明の例1と同様に選んだ。
【0065】
さらに、遺伝子発現を調べるウエスタン分析法は既に公知の方法(第1抗体=抗SEAP抗体、複合第2抗体=抗マウスPOD抗体、マーカー=SeeBlue(登録商標) Plus2、着色標準)により実施した。
【0066】
結果
図6および図7は、発色試験の結果を示す。すなわち、誘導細胞だけでなく非誘導の対照も青色変化することを示している。HEK blue 293 細胞およびクローン4(K4)などの他の293細胞を用いると特異的な誘導は見られず、試験系の樹立は不可能である。
【0067】
図8は、100 ng/ml LPSを用いた誘導後における細胞ペレットをSDS-PAGE/ウエスタン分析法にかけた結果を示す。HEK293 および他の293 細胞(K2 およびK4)のアルカリホスファターゼは、誘導細胞の場合と同じ量で非誘導対照細胞でも発現される。これらの細胞を用いても、TLR活性化の有効成分、発熱原、PAMPを特異的に検出することは不可能である。
【0068】
例3: 96穴プレートおよびCO2非含有における培養アッセイ
方法
マルチウエルプレート(96穴)上で、NIH 3T3 TLR4 CD14 SEAP P40 細胞を、培地(DMRM、80 mmol/l HEPES、30% FCS)100μl中に1穴あたり30,000 細胞の密度で懸濁液として−8O℃にて凍結した。
【0069】
−80 ℃にて72 時間〜4 週間経過後、これらの細胞へ37℃培地(10% FCS)100 μl を添加して解凍した(CO2非含有)。
【0070】
接着の24 時間後に培地(DMEM、 0.5% FCS)への交換を行い、100 μl中の細胞を30 pg/ml LPS または30 pg/ml ssRNA33 (対照)により誘導した。
【0071】
誘導期間の24 時間後、検出培地へと培地交換を行った。または、誘導期間後に1穴あたり検出培地100 μlを直接添加する。
【0072】
結果
結果を図11に示す。誘導された酵素活性の検知は、遅くとも3〜24 時間後に現れる。誘導期間の後に検出培地をウエルに直接添加すれば、1〜3 時間後にシグナルが検出可能である。
【0073】
例4: CO2非含有培養での組織学
方法
マルチウエルプレート(96穴)上で、NIH 3T3 TLR4 CD14 SEAP 細胞を1穴あたり30,000 細胞の密度にて培地(30% FCS、80 mmol/l HEPES)100μlに播種した。接着はCO2を含まない湿潤雰囲気下の37℃にて一夜かけて行った。
【0074】
結果
図10は、ウエルに接着した細胞の位相差顕微鏡撮影を示す。すなわち、これらの細胞はHEPES緩衝培地にて37℃恒温槽中の培養により増殖する。画像はインタクトな単層細胞を示す。
例5: TLR-5特異的試験系
方法
TLR-5を用いた遺伝子導入
細胞系NIH-3T3に、TLR-5およびレポーター遺伝子プラスミド SEAP を導入した。この方法は例1に対応する。
【0075】
試験の実施
NIH-3T3クローンTLR-5を、1穴あたり30,000〜200,000細胞の密度(24穴)で0.5% FCS培地の500 μl/ウエルに播種し、2 μg/ml フラジェリンによる誘導を行い、検知はBCIP含有の検出培地300 μl/ウエルでのインキュベーションにより行う。
【0076】
結果
図12は、色試験の結果を示す。すなわち、誘導細胞では特異的な青色変化が起きるものの、非誘導の対照細胞では青色変化は認められない。
【発明の記載】
【0001】
本発明は、様々なエンドトキシンおよび他の発熱原に基づいて諸種の病原体および病原スペクトルを定性的および定量的に検出および同定するための諸種の方法、試薬ならびにキットに関する。
【0002】
[背景技術]
病院内での臨床診断において病原スペクトルを迅速かつ確実に同定することは、目的に適った感染症治療を、例えば敗血症患者に実施するために非常に意義深い。
【0003】
敗血症および敗血症関連の多臓器不全は世界的に重大な死亡要因であって、医学の未解決問題に属する。入念な推定では、現在もなお世界中で毎年500,000人の患者が「敗膿血症」により死亡しており、その数は1日当たり1,400人である。重症敗血症患者の治療費によって毎年、合衆国における保険衛生予算の負担は1,700万ドルと推定されている。
【0004】
敗血症(敗血病、膿血症)の特徴は、生命にかかわる病状と病態生理学的変化が合わさることである。敗血症は、感染源から血中に侵入する病原菌およびその生成物によって引き起こされる。敗血症で生じる免疫反応によって、様々な内分泌性媒介因子(サイトカイン類)が生成される。それらの因子により炎症カスケードが活性化され、結果として抑制の効かない全身の炎症反応に至る。集中的な処置が行われても、予後は不良であって死亡率は約50%に達する。特に予後は、治療開始が遅れた場合、感染源が非局在の場合または病原体が同定不可の場合に悪くなる。
【0005】
敗血症を引き起こす病原体はほとんどが細菌類であり、大腸菌、その他の腸内細菌、クレブシェラ属細菌、プロテウス属細菌、エンテロバクター属細菌、緑膿菌、髄膜炎菌およびバクテロイド属などの主なグラム陰性菌、ならびに黄色ブドウ球菌、肺炎双球菌、その他の連鎖球菌などの一般的なグラム陽性菌であって、まれに真菌類、各種ウイルスまたは寄生生物である(細菌血症、真菌血症、ウイルス血症、寄生生物血症)。いわゆる微生物構造体(例えば、エンドトキシン、エクソトキシン、スーパー抗原)の放出により、それぞれ各種のインターロイキン、腫瘍壊死因子、ヒスタミン、セロトニン、酸素ラジカルおよびプロテアーゼのような内因性媒介因子の分泌が刺激される。これは、白血球および体液性防御機構の活性化を経て敗血症性ショックで典型的にみられる変化にいたる。体内の循環微生物抗体への反応として生じる全身性炎症は、敗血症および敗血症性ショックの病態生理学の本質的特徴である。非特異的免疫防御細胞と、リポ多糖類(LPS)、細菌の細胞壁成分、ペプチドグリカンまたはリポテイコ酸(LTA)との接触により先天的免疫性が活性化され、感染の初期では様々な免疫細胞からサイトカイン類が分泌される。これらのサイトカインは免疫防御において重要な役割を演じるだけでなく、例えば活性化された好中球が炎症部位へ誘導され、血液中でサイトカインおよび細菌性物質が循環され、好ましくない病態生理学的事象が連鎖的に生じる。この炎症反応と同時に現れる臨床症状は、全身性炎症反応症候群 (SIRS)と呼ばれる。
【0006】
敗血症の病状が現れた場合または既にそのような病状が疑われた場合、治療を早期に実施しなければならない。これまでは敗血症患者の病原スペクトルを迅速かつ確実に同定し得る可能性はなかった。従来の敗血症の診断は、抗生物質治療を開始する前に病原体同定用の臨床検体(血液および尿培養物、痰、便、傷口分泌物)を何回か採取し、耐性を評価することにある。今までの方法を用いて「敗血症」病原体の検出に至る確率は 30 〜 50%である。これは、静脈血検体または尿により細菌学的試験、菌培養試験を行うため何回も継代培養できる装置にたよるしかなかった。この検体は液体栄養培地に接種され、インキュベーションされる。この方法は、貴重な時間を犠牲にするだけでなく、生きた病原体でのみ可能である。すなわち、抗生物質治療の間に検体が採取されるので、培養試験はほとんど無効である。従って、一般的な抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルスおよび/または抗寄生生物剤による療法が今も実施される。この方法では、細胞壁成分のような病原体の発熱物質を捕捉することはできない。
【0007】
従って、敗血症病原体および敗血症病原スペクトルの検出および識別を可能にする迅速かつ簡易な試験系に関して要求がある。発熱原はいわゆる発熱物質であって、貪食可能な体細胞(免疫細胞)に対して炎症誘発性インターロイキン(特にIL-1 および IL-6)ならびに腫瘍壊死因子-α (TNF-α)の生合成を刺激し、これらは「真性発熱原」として生体の温度中枢に影響を与えるので、発熱の上昇および放熱の低下をきたす。最も強力な作用を有する発熱原は、グラム陰性菌に由来する。発熱原とは一様な物質群のことではない。ほかに、各種の微生物(非病原性細菌および病原性細菌、真菌およびウイルス)ならびに寄生生物からの細胞壁成分および代謝産物、例えばエンドトキシン、エクソトキシンまたはスーパー抗原が挙げられる。
【0008】
特に、安定剤溶液のような発熱原含有液体を注射または注入する場合、細菌汚染された保存血、無発熱原性でない注射器、注入容器などを使用する場合、発熱原は臨床的に意味がある。無発熱原性を欠くことは、高熱、ショック、消費性凝固傷害および急性腎不全を併発した、いわゆる「輸血事故」の主因となる。特に今日、発熱原が中心静脈カテーテル、長期の経管栄養および長期の人工呼吸などで体内に侵入する場合に、危険因子がさらに加わる。
【0009】
発熱原は、ほとんどが耐熱性および透析可能な物質、例えばリポ多糖-タンパク質-脂質-複合体(LPS)である。従って、ヒトまたは動物への使用が検討される輸液、器具および容器を滅菌する通常の方法は、発熱原を除去するには充分でない。更なる洗浄工程が求められる。無発熱原性は、そのような製品を生体に使用するのに欠かせない前提条件である。ヒトまたは動物の身体と頻繁に接触するような製品は、それが血流に適用されるものであっても体内に長期間滞留するものであっても、すべて充分に無発熱原性でなければならない。
【0010】
現れる発熱物質のスペクトルは、病原体または病原スペクトルに依存する。特定の病原体は、病原体に典型的または病原体に特異的な発熱原パターン、いわゆる「病原体関連微生物パターン(PAMP)を形成する。PAMPの同定および鑑別のために、特定の病原体または病原スペクトルの分類を行うこともある。
【0011】
検体中の発熱原またはPAMPを検出する(発熱試験)ために今日、特に市販されている3種類の検出方法または試験を利用することができる。既知の試験にはウサギ発熱試験がある。これは発熱原に対する動物の「発熱反応」に基づいている。動物試験では、被験物質をウサギの耳静脈に投与する。その物質に対する動物の生体防御反応を検出するには、数時間後に直腸温度を測定する。この試験は時間と軽費がかかり、動物に苦痛を与えると予測される。エンドトキシンの有無により発熱原を検出することはできても同定することはできない。ウイルスに対する試験は不可能である。PAMPを特定することは不可能である。その他、ヒトへの感染性も問題である。
【0012】
さらに既知の試験には「リムルス変形細胞溶解試験 (Limulus Amobocyten Lysat Test: LAL) 」(例えば Cambrex Bioscience 社または Charles River社)がある。この試験は、発熱原として既知の物質に対する類人猿の防御反応に基づく。LAではカブトガニの血液細胞から、グラム陰性細菌のエンドトキシンを介して活性型酵素へ変換される酵素前駆体が得られる。酵素基質の変換によって、例えば分光計によりエンドトキシン量を定量的に測定することができる。この方法は、既知のウサギ試験より感度が高くて標準化に優れているが、グラム陰性生物のエンドトキシン(例えばリポ多糖(LPS)、検出限界: 3 pg/ml)にのみ適用される。そのようなエンドトキシンは、既知の発熱物質のうちほんの少しである。他の発熱原は認識されない。しかし近年、グラム陰性菌よりグラム陽性病原体が益々重視されるようになった。
【0013】
他の既知の試験としては最後に、免疫発熱試験、例えば「Endosafe - IPT」 (Charles River社)が挙げられる。この試験は、既存の発熱原に対するヒト細胞の「発熱反応」に依存している。ヒト全血試験では、血液の生細胞から生じる発熱物質への応答としてサイトカイン IL-1 が放出され、これをELISAにより定量的に測定することができる(検出限界:20〜50 pg/ml)。この系は、グラム陽性病原体の発熱原も捕らえられる。しかしこの試験は、時間と労力がかかる。ヒトの全血が調製されなければならず、これは潜在的に病原性である。PAMP特定は不可能である。
【0014】
こういった既存の試験は長時間かかり、機器の整備された実験室(ELISA試験、ヒト血液調製、動物実験)が当然必要となる。発熱原の検出に関して迅速かつ簡便に実施できる試験系に対する要求がある。その他、病原体または病原スペクトルの逆推論を引き出せるように、発熱パターンPAMPを特定化する試験系に対する要求がある。これらは、発熱原の発現が役割をなす感染症、とりわけ敗血症の診断および治療にとって好都合である。
【0015】
さらに、医療器具、ドナーの組織、注射用薬剤、および移植物または装置(カテーテルなど)のような医薬用製品において発熱性残留物に対する改良型試験への要求もある。さらにまた、食品業界および医薬品業界における発熱物質および菌類に対する改良型の検出法に対する要求もあり、食品、食品成分、食品または薬品用の原料および出発物質において改良型の同定法に対する要求もある。
【0016】
生体内での発熱原の出現とともに現れる敗血症および敗血症類似の病状がみられる場合、病態生理学的過程と関連して、いわゆるトール様受容体[TLR(1種または複数種)]が関与することが知られている。TLRは発熱原に対する体性免疫反応に介在する。微生物が引き起こす敗血症の場合、細菌の成分がTLRを介して宿主の免疫細胞を刺激する。
【0017】
TLR は、約200個のアミノ酸からなるロイシンに富んだ細胞外ドメインおよび細胞質ドメインを有する、保存性の高い膜貫通タンパク質である。これは、細胞質ドメインにおける相同性に基づいて、インターロイキン-1受容体/トール様受容体-スーパーファミリーに属する。特徴的な細胞質TIRドメインは、シグナル伝達に必須である。細胞外ドメインは、様々な病原体分子構造の認識に直接関与し、IL-1 受容体の分子構造と極めて異なる。IL-1 受容体の細胞外部分は3つの免疫グロブリンドメインからなるが、各TLRはそれぞれ24〜29アミノ酸残基からなる18〜26の LRRを有する。TLR は、ショウジョウバエで既知のタンパク質「トール(Toll)」とは逆に、未知の構造体により直接活性化される。 今日まで、ヒトで10種の異なるTLR が同定され、マウスで13種 のTLR が同定されている。それらは、免疫系の様々な細胞型、主に単球、マクロファージ、樹状細胞ならびにB細胞およびT細胞上で発現される。TLR は原形質膜上に局在しており、TLR-3、TLR-7 およびTLR-9 は核酸モチーフにより活性化され、細胞内のコンパートメントに存在する。
【0018】
TLR-2 は、細菌のリポタンパク質およびリポテイコ酸を含む、グラム陽性菌に由来する多くのPAMPの認識にとって本質的である。TLR-3は二本鎖ウイルスRNAの認識に関与している。TLR-4 は主にLPSによって活性化される。TLR-5 は、細菌のフラジェリンを検知する。TLR-7 およびTLR-8は、合成の小さな抗ウイルス分子および一本鎖RNAを認識する。TLR-9は、小胞体(ER) 中で検出され、CpG-モチーフ含有DNA、例えばCpG-オリゴデオキシヌクレオチドによる刺激の後、エンドソーム/リソゾームのコンパートメント中に回収される。CpG-モチーフは、核酸の内側領域であり、そこでは成分シトシン(C)およびグアニン(G)が予想外に多く現れる(ここで「p」は、両成分「C」 および「G」 を連結するリン酸基を示す)。そのようなCpG-モチーフは、細菌およびウイルスのゲノムで特に頻繁にみられるが、脊椎動物のゲノムではみられない。
【0019】
トール様受容体のアンタゴニスト類は、皮膚科領域、例えばウイルス誘導性乳頭腫の治療に益々使用されている。新しいTLRアンタゴニストをスクリーニングするための試験系に対する要求がある。
【0020】
ヒト免疫系の活性化に対する共通認識は、癌化学療法に際しての利点にある。CPG 7909 (Coley Pharmaceutical Group社)のような物質群は、このように免疫調節効果を導くので、化学療法の有効性を高めることができる。新たなCpG-モチーフ(オリゴデオキシヌクレオチド)をスクリーニングするための試験系に対する要求がある。
【0021】
[発明の開示]
本発明は特に、発熱原を特異的に検出するための方法および試薬(特異的発熱試験)を提供するという技術的課題に基づくものである。これに関連して、人体または動物の感染に際して病原体または病原スペクトルを特異的に検出するための方法および試薬を提供する上で更なる技術的課題がある。これに関連して、新たなTLR アンタゴニスト および/または新たなCpG-モチーフをスクリーニングするための方法および試薬を提供する上で更なる技術的問題がある。
【0022】
前記課題は、請求項1に記載の特徴を有する、検体中の発熱原を特異的に検出するための遺伝子導入細胞および細胞系の提供によって本質的に解決される。その細胞は接着状態にあることが好ましい。変形例として、その細胞は懸濁状態にあることが好ましい。
【0023】
本発明に基づく遺伝子導入細胞または細胞系は、(a)少なくとも1のトール様受容体(TLR)をコードする遺伝子(単数または複数)、および(b) NF-κB により誘導可能なプロモーターの発現制御下にある少なくとも1のレポーター遺伝子を有する。前記細胞または細胞系は、前記ゲノム中にCD14受容体をコードする更なる遺伝子を有することが好ましい。本発明の細胞または細胞系は、線維芽細胞、好ましくは哺乳動物の線維芽細胞、特にはマウスのNIH-3T3型線維芽細胞に基づくことが好ましい。このTLRは、特にプラスミドを介して共受容体CD14 (MD2)と一緒に導入されることが好ましい。
【0024】
本発明はまた、少なくとも1のTLRを発現する(好ましくはCD14共受容体を共発現する)、線維芽細胞NIH-3T3に基づく遺伝子導入細胞系を提供することを目的とする。TLR-4とCD-14との共発現が特に好ましい。本発明者らは驚くべきことに、発現TLRを特異的に活性化する発熱原と接触した遺伝子導入細胞は、レポーター遺伝子にコードされた酵素活性を発現し、この活性を例えば発色反応により検出して一定条件下で定量し得ることを見いだした。さらに、発熱原、PAMPおよび他のTLRを活性化する有効成分を検出するための細胞試験系も提供される。
【0025】
前記試験系の選択性および感度は高い。感度はLPS濃度で1〜10 pg/ml程度 である。それに比較して、従来の発熱試験の感度は3〜10 pg/ml 程度(LAL) または20〜50 pg/ml 程度(IPT)である。
【0026】
本発明の試験系は、CO2通気装置などの細胞培養実験用機器なしに行うことができ、いかなる使用者でも特殊な実験装置なしに簡単に使用することができる。
【0027】
本発明の教示により原理的に特徴づけられた試験方法は、すべてのTLR (例えば、ヒトTLR 1〜10)に拡張することができ、その結果、あらゆるPAMPを選択的に認識および同定することができる。従って好都合なことに、1種もしくは多種の発熱原または(病原体関連微生物パターン)PAMPの特異的検出、ならびにその定量化を可能とする簡便かつ迅速な細胞試験系を提供することができる。理論に束縛されず、TLRの活性化は転写因子NF-κBを利用して様々なサイトカインの産生に至るシグナル伝達系を誘導する。シグナルカスケードには、MyD88 およびIRAK1などのタンパク質が多数関与している。このシグナルカスケードは、転写因子NF-κBの活性化を経て炎症性サイトカインの誘導および産生につながる。これらのサイトカイン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン1(IL-1)およびインターロイキン6(IL-6)は、この過程において最重要でかつ最初に関与する媒介因子として機能する。TLR活性化の後、アタプター分子の補充および炎症性サイトカインの産生が起きる。これらのサイトカイン分泌は、免疫系の刺激をもたらし、微生物の侵入を防御する。しかし、極度の過剰産生は敗血症または敗血症ショックにつながることもある。敗血症の診断との関連では、特にTLR-2およびTLR-4が好ましい。TLR-2がペプチドグリカン、リポペプチドおよびTLAのグラム陽性菌成分を認識する一方で、TLR-4はLPS(グラム陰性菌細胞壁の主成分)に対する受容体である。TLR-2およびTLR-4はまた、グラム陽性菌およびグラム陰性菌による敗血症においてシグナル伝達の受容体として核心であり、好ましくは病原スペクトルの識別に利用されるべきである。表1は、いくつかのヒトTLRの特異性を示す。
【表1】
【0028】
前記の病原特異的PAMPの同定により、敗血症を引き起こす病原体群を迅速に同定できる可能性が得られる。本発明の細胞試験系を用いれば、敗血症患者へ早期にかつ目的に合った治療を行うことができる。好ましい変形例で提案されるのは、遺伝子導入細胞が少なくとも2つの異なるTLRを共発現する結果、それぞれ独自の特異性を有するTLRヘテロ二量体が形成されるものである(表1参照)。従って好ましくは、その細胞は、第一のトール様受容体型(TLR-Typ)をコードする1または複数の遺伝子、および第二のトール様受容体型(TLR-Typ)をコードする1または複数の遺伝子を更に有する。
【0029】
「レポーター遺伝子」とは、宿主生物において誘導可能なプロモーターの制御下で、構成的に発現されない又は若干のみが構成的に発現される酵素活性をコードする1または複数の遺伝子または遺伝子構造体を意味する。コードされた酵素活性の発現は、レポーター遺伝子プロモーターが誘導されたことを示す。レポーター遺伝子および誘導可能なプロモーターは、レポーター遺伝子プラスミド上にあることが好ましい。理論に拘束されず、TLR誘導細胞内シグナルカスケードの成分である転写因子によってレポーター遺伝子プロモーターを誘導することが提供される。好ましくは、本発明に基づいて提供される少なくとも1のレポーター遺伝子は、転写因子「核因子カッパB(NF-κB)」の制御下にある。TLRの活性化に際し、細胞質内で局在化して結合するNF-κBは遊離し、細胞の核内へ移動する。好ましいNF-κB誘導可能プロモーターは、セレクチンすなわちELAM-1 (内皮細胞白血球接着分子1)プロモーターである。
【0030】
好ましいレポーター遺伝子は、好ましくはELAM-1 プロモーターの制御下で好ましくはレポーター遺伝子プラスミドの形をとるSEAP (分泌アルカリホスファターゼ)である。さらに好ましいレポーター遺伝子は、好ましくはELAM-1 プロモーターの制御下で好ましくはレポーター遺伝子プラスミドの形をとるβ-ガラクトシダーゼ遺伝子lacZである。さらに好ましいレポーター遺伝子は、好ましくはELAM-1 プロモーターの制御下で好ましくはレポーター遺伝子プラスミドの形をとるルシフェラーゼ遺伝子である。さらに好ましいレポーター遺伝子は、 好ましくはELAM-1 プロモーターの制御下で好ましくはレポーター遺伝子プラスミドの形をとるGFP (緑色蛍光タンパク質)である。自明のことではあるが、TLRの活性化または結合に際して生じるシグナルカスケードによって調節可能な性質を有するプロモーターであれば、いかなる適切なプロモーターもそれぞれの用途に使用することができる。
【0031】
そのTLRは現在知れている10個のヒトTLRから選択されることが好ましい。本発明はこれら既知のヒトTLRに限定されないことは言うまでもない。さらにこれから命名されるTLRも本発明に組み入れられる。従って本発明の目的は、今まで詳しく特徴付けられていないTLR変異体の少なくとも1の遺伝子を有し、このTLR変異体を発現する遺伝子導入細胞または細胞系である。
【0032】
本発明の好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR1型(TLR-1)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR2型(TLR-2)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR3型(TLR-3)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR4型(TLR-4)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR5型(TLR-5)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR6型(TLR-6)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR7型(TLR-7)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR8型(TLR-8)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR9型(TLR-9)を発現する。本発明の更に好ましい変異体では、前記細胞または細胞系は少なくともヒトTLR10型(TLR-10)を発現する。好ましい変異体では、前記細胞または細胞系はヒトTLR1型(TLR-1) およびヒトTLR2型 (TLR-2)からなる少なくともヘテロ二量体受容体を発現する。さらに好ましい変異体では、前記細胞または細胞系はヒトTLR7型(TLR-7) およびヒトTLR8型 (TLR-8)からなる少なくともヘテロ二量体受容体を発現する。さらに好ましい変異体では、前記細胞または細胞系はヒトTLR6型(TLR-6) およびヒトTLR2型 (TLR-2)からなる少なくともヘテロ二量体受容体を発現する。本発明は、TLR-1 、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8、TLR-9およびTLR-10からなる群から選択される更なるTLRの共発現にも関する。本発明は好ましくは、次のヘテロ二量体: TLR-1/TLR-2、TLR1-TLR-3、TLR-1/TLR-4、TLR-1/TLR-5、TLR-1/TLR-6、TLR-1/TLR-7、TLR-1/TLR-8、TLR1/TLR-9、TLR-1/TLR-10、TLR-2/TLR-3、TLR-
2/TLR-4、TLR-2/TLR-5、TLR-2/TLR-6、TLR-2/TLR-7、TLR-2/TLR-8、TLR-2/TLR-9、TLR2/TLR-10、TLR-3/TLR-4、TLR-3/TLR-5、TLR-3/TLR-6、TLR-3/TLR-7、TLR-3/TLR-8、TLR-3/TLR-9、TLR-3/TLR-10、TLR-4/TLR-5、TLR4/TLR-6、TLR-4/TLR-7、TLR-4/TLR-8、TLR-4/TLR-9、TLR-4/TLR-10、TLR-5/TLR-6、TLR-5/TLR-7、TLR-5/TLR-8、TLR-5/TLR-9、TLR5/TLR-10、TLR-6/TLR-7、TLR-6/TLR-8、TLR-6/TLR-9、TLR-6/TLR-10、TLR-7/TLR-8、TLR-7/TLR-9、TLR-7/TLR-10、TLR-8/TLR-9、TLR-8/TLR-10、TLR-9/TLR-10にも関する。これらのTLRはそれぞれ、単独でまたは少なくともその1に他のTLRもしくはTLRヘテロ二量体を組み合わせて共発現させることもできる。
【0033】
しかし本発明は、ヒトTLRに限定されるものではない。特に動物実験への適用および獣医学的目的、動物感染症の治療目的で本発明の細胞が、動物のTLR、特に哺乳動物のTLRを発現することが提示される。TLRはマウスのTLRから選ばれることが特に好ましい。本発明の好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR1型(mTLR-1)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR2型(mTLR-2)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR3型(mTLR-3)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくとも1のマウスTLR4型(mTLR-4)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR5型(mTLR-5)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系が少なくともマウスTLR6型(mTLR-6)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR7型(mTLR-7)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系が少なくともマウスTLR8型(mTLR-8)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR9型(mTLR-9)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系が少なくともマウスTLR10型(mTLR-10)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR11型(mTLR-11)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR12型(mTLR-12)を発現する。さらに好ましい変形例では、前記細胞または細胞系は少なくともマウスTLR13型(mTLR-13)を発現する。
【0034】
本発明の好ましい実施態様において、少なくとも1のTLRまたはTLRヘテロ二量体が特異的に発現され調製され、以下に「細胞型」として特徴付けられる本発明に基づく遺伝子導入細胞または細胞系が提供される。特に好ましくは、それぞれ異なるTLRまたはTLRヘテロ二量体を発現している3、4、5、6、7、8、9、10または11以上の異なる本発明の細胞型からなる「セット」である。理論に束縛されず、ある発熱原群の各発熱原は、1または数種の特定TLRおよび/またはTLRヘテロ二量体にそれぞれ特異的に結合する。このようにして、検体における数種の発熱原および/または発熱原スペクトルの簡便な性質決定が可能となる。例えば、TLR-2およびTLR-6からなるヘテロ二量体を発現する細胞型によって、マイコプラズマ発熱原および酵母発熱原を特異的に検出することができる。例えば、TLR-3を発現する細胞型およびTLR-9を発現する細胞型からなる「セット」によって、二本鎖RNAを有するウイルスを特異的に検出することができる。
【0035】
従って本発明の目的は、少なくとも1の細胞型、好ましくは数種の異なる細胞型が添加され接着させ、又は懸濁物としてインキュベーションされる細胞培養容器、好ましくは細胞培養プレート(マルチウエルプレート: Multiwellplatte)を提供することである。最も単純な場合、それらの細胞は細胞培養容器の表面、例えばコラーゲンフィルムに接着している。さらに懸濁培養も好ましい。インキュベーション/培養は、三次元的生物基材の上または中でも可能である。さらに、細胞培養担体をアドレス指定可能なサブコンパートメントに区切って、その上または中にそれぞれ異なる細胞型を添加することも可能である。本発明は、細胞をプレート、容器またはウエル(Well)上に播種して、更なる利用にそなえて低温保存するための保存(好ましくは凍結)することに関する。従って、発熱原およびTLRを活性化または調節する他の有効成分(TLRアンタゴニスト) を短時間内で試験する必要のある場合、調製されたプレート、容器またはウエルを使用することができる。最も単純な場合、細胞を含むプレートなどは解凍され被験検体とともにインキュベーションされる。このレポーター遺伝子を介した酵素活性は既存の方法を用いて検出され、その細胞型において試験用基質、発熱原またはPAMPによるTLRの特異的な活性化の有無が示される。
【0036】
細胞培養用の容器はキットで調製されることが好ましい。このキットは、前記の細胞培養容器またはアッセイ担体中に前記の特性決定された細胞を含み、特に試験実施の直前に凍結状態で提供されることが好ましい。このキットの使用に際して好都合にも、CO2恒温槽などのコスト高となる細胞培養条件は不要である。キットは例えば、色の変化を検知するための機器を用いて病院の簡易な検査室でも実施することができる。最も単純な場合、外観で認識可能な色の変化をもって特異的なTLR活性化の識別に十分である。キットの使用者は、その色変化のパターンから発熱原スペクトルおよび/または病原体の型を突き止めることができる。
【0037】
検体中の発熱原を特異的に検出するための本発明のキットは、培養容器中に前記の請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1の遺伝子導入細胞、および誘導可能なレポーター遺伝子によりコードされた酵素に対する少なくとも1の基質を含有する検出培地を含む。好ましくは、少なくとも2つのコンパートメントまたはウエルを有する細胞培養容器またはプレートを含むキットであって、第1のウエルには少なくとも1の第1のTLR型もしくはヘテロ二量体を発現する少なくとも1の第1の遺伝子導入細胞、および少なくとも1の第2のTLR型もしくはヘテロ二量体を発現する第2のウエルには第1の遺伝子導入細胞とは異なる第2の遺伝子導入細胞を含むキットである。
【0038】
本発明に基づき、以下の特に好ましい例が提示される。好ましくは少なくともヒトTLR-1を発現する第1の遺伝子導入細胞を含む第1のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-2を発現する第2の遺伝子導入細胞を含む第2のウエル、および好ましくは少なくともヒトTLR-3を発現する第3の遺伝子導入細胞を含む第3のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-4を発現する第4の遺伝子導入細胞を含む第4のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-5を発現する第5の遺伝子導入細胞を含む第5のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-6を発現する第6の遺伝子導入細胞を含む第6のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-7を発現する第7の遺伝子導入細胞を含む第7のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-8を発現する第8の遺伝子導入細胞を含む第8のウエル、好ましくは少なくともヒトTLR-9を発現する第9の遺伝子導入細胞を含む第9のウエル、および好ましくは少なくともヒトTLR-10を発現する第10の遺伝子導入細胞を含む第10のウエル、ならびに好ましくは検出用培地を有する1または複数の細胞培養容器からなるキットである。
【0039】
本発明の更なる目的はまた、検体中の発熱原を特異的に検出するための方法を提供することである。本発明に基づく方法は、少なくとも以下の工程:
検体を調製する工程、少なくとも1の特異的TLRまたは少なくとも1の特異的TLRヘテロ二量体を発現する本発明の少なくとも1の遺伝子導入細胞もしくは細胞系を調製する工程、
前記細胞への特に検体成分との結合により特徴付けられる「検体-細胞-複合体」を生じるように前記検体を前記細胞と接触させる工程、好ましくは約37℃にて約3〜約24時間で酵素活性を誘導するために前記の検体-細胞-複合体をインキュベーションする工程、ならびにレポーター遺伝子により誘導された酵素活性を検知または検出する工程を含み、
前記酵素活性は、TLR型またはTLRヘテロ二量体に特異的な発熱原もしくはアゴニスト有効成分の存在を表わすことを特徴とする。
【0040】
好ましくは前記のレポーター遺伝子により誘導された酵素活性の検知または検出は、細胞の誘導可能なレポーター遺伝子によりコードされた酵素に対する基質を含む検出培地を調製すること、ならびに好ましくは37℃にて約30〜240分間前記検出培地中で誘導された検体-細胞-複合体をインキュベーションすることによって行われる。前記酵素活性は酵素的に転換された基質により検出され、好ましくは定量されることを特徴とする。酵素的に転換された基質およびそれを用いた酵素活性の定量によって、特異的発熱原またはTLR活性化有効成分(TLR-アゴニスト、CPG-モチーフなど)の活性または濃度を逆算することができる。
【0041】
前記酵素活性は、アルカリホスファターゼ活性、特にSEAPにより媒介されることが好ましい。アルカリホスファターゼとは、アルカリ環境でリン酸エステルの加水分解を触媒する酵素である。基質として、好ましくは5-ブロモ-4-クロロ-インドイルホスフェート (BICP)が使用される。従って酵素活性の検知は、青色変化および/または青色沈殿物(濃青色、不溶性、容易に認識可能なインジゴの沈殿物)に基づいて行われる。
【0042】
別の変形例において、前記基質は、p-ニトロフェニルリン酸(pNPP)であり、アルカリホスファターゼ活性はpNPPの加水分解および溶液の黄色変化によって示される。溶液色の黄色変化は、好ましくは測光的に検知および定量される。測光分析は約405nmで行われることが好ましい。その吸光から、検体中の発熱原またはTLR活性化有効成分の濃度を測定することができる。細胞内で検出されるレポーター遺伝子を定量可能とするために、細胞を溶解し、そこから色素を遊離させねばならない。細胞内での直接検出はNaOH上において細胞色素の溶出によって行われ、それによって細胞中の定量的測定が可能となる。定量のために濃度計による評価(網掛けにより)も可能なことは自明である。
【0043】
他の好ましい変形例において、酵素活性はβ-ガラクトシダーゼ活性であり、基質は特に5-ブロモ-4-クロロ-3-インドシル-β-D-ガラクトピラノシド(X-GaI)であることが好ましい。酵素活性の検知は青色変化および/または青色沈殿物によって行われる。
【0044】
他の好ましい変形例において酵素活性はルシフェラーゼ活性であり、基質は好ましくはルシフェリンである。必要に応じて添加されるATPおよびMg 2+の存在下では、その酵素活性は発光によって示される(化学発光アッセイ)。
【0045】
本発明の方法または試験系を用いて分析することができる検体は、特に人体または動物個体から得られる臨床検体である。特に敗血症の場合では、検体は血液、特に全血が好ましい。特に感染症のタイプ分類では、更なる臨床検体は、血清、血漿、尿、痰、便、生検組織片、気管支洗浄液、中枢神経液、脊髄液、リンパ液、滑液などである。従って本発明の目的は、好ましくは本発明の方法および/または好ましくは本発明のキットの使用下で、臨床検体中の発熱原を特異的に検出するための遺伝子導入細胞の使用である。
【0046】
驚くべきことに、本発明の遺伝子導入細胞または細胞系は無発熱原性を調べるための試験系に使用し得ることが分かった。無発熱原性を証明するために、または発熱原汚染を測定するために前記方法を使用する場合、その検体は好ましくは、医療機器もしくは医薬品(MP)または生体外診断薬(IVD)用の試料片(標本)、あるいは薬剤、薬剤成分、食品、食品成分、または食品もしくは薬剤の原料もしくは出発物質である。例えば、それぞれ各種の外科用機材、カニューレ、注射器、輸液機器、採血器具および輸血機器、透析用器械および装置、創傷被覆物、縫合材料、インプラント、人工装具、カテーテル、輸液、洗浄液などが挙げられる。さらに前記検体は、ヒト由来の移植片、組織および細胞、およびその内容物またはそれに由来の製品、ならびに動物由来の移植片、組織および細胞、およびその内容物またはそれに由来の製品から選ばれることが含意される。さらに前記検体は、化粧品原料および化粧品から選択されることが含意される。よって本発明の更なる目的は、好ましくは本発明の方法および/または好ましくは本発明のキットの使用下で、無発熱原性を証明する試験のために遺伝子導入細胞を使用することである。
【0047】
さらに驚くべきことに、一群の候補物質においてTLRアンタゴニストの特性を有する有効成分を見付るため、およびその有効性を定量するための試験系に本発明の遺伝子導入細胞または細胞系を使用し得ることが分かった。従って本発明の更なる目的は、好ましくは本発明の方法および/または好ましくは本発明のキットの使用下で、TLRアンタゴニストの特性を有する有効成分をスクリーニングするために遺伝子導入細胞を使用することである。
【0048】
なお驚くべきことに、特定のTLR、特にはTLR-9を活性化するCpG-モチーフを有するオリゴヌクレオチド類を一群の候補物質から見付けるため、およびその有効性を定量するために、本発明の遺伝子導入細胞または細胞系を使用し得ることが分かった。従って最後に本発明の更なる目的は、好ましくは本発明の方法および/または好ましくは本発明のキットの使用下で、CpG-モチーフを有するオリゴヌクレオチド類をスクリーニングするために遺伝子導入細胞を使用することである。
【0049】
[例]
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の試験方法[リガンドLPSを用いたTLR4/CD14 (MD2)の例]を示す略図である。
【図2】解凍し、100 ng/mlのLPS(右側の4穴(ウエル))およびBCIP基質を含有する検出培地を添加した後、SEAPレポータープラスミドを有するNIH-3T3クローン4/5 TLR-4/CD14を示す。
【図3】10 pg/ml〜100 pg/mlのLPS、基質BCIPを含有するNIH-3T3 TLR-4/CD14試験系の誘導(ネガティブコントロールは誘導されないか又はssRNA40で誘導された)を示す。
【図4】NIH-3T3クローン4/5 TLR4/CD14感度の検出[検出培地の添加後2時間、LPS は10 pg/mlまで特異的(測光分析)]を示す。
【図5】NIH-3T3クローン4(5) TLR4/CD14感度の検出[検出培地の添加後2時間、LPS は1 pg/mlまで特異的に検出可能(測光分析)]を示す。
【図6】HEKブルー(blue)293 線維芽細胞および他の293 線維芽細胞を用いたTLR-4試験の比較実験(TLR4/CD14 SEAPを導入し100 ng/mlのLPSで誘導した。誘導細胞と同様に非誘導の対照も青色変化した。これらの細胞を用いた特異的検出は不可能)を示す。
【図7】HEKブルー(blue)293 線維芽細胞および他の293 線維芽細胞を用いたTLR-4試験の比較実験(TLR4/CD14 SEAPを導入し100 ng/mlのLPSで誘導した。誘導細胞と同様に非誘導の対照も青色変化した。これらの細胞を用いた特異的検出は不可能)を示す。
【図8】HEKブルー293 線維芽細胞および他の293 線維芽細胞を用いたTLR-4試験の比較実験[TLR4/CD14 SEAPを導入し100 ng/mlのLPSで誘導した。細胞ペレットのSDS-PAGE/ウエスタン法であって、一次抗体=抗SEAPおよび抗マウスPOD 複合二次抗体、マーカー=予備染色SeeBlue(登録商標) Plus 2 、標準=アルカリホスファターゼ(SAEP)である。HEK293 および他の293 細胞(K2 およびK4)では、誘導細胞と同様に非誘導対照細胞も同量発現した。これらの細胞を用いた特異的検出は不可能]を示す。
【図9】試験系の特異性[NIH-3T3 TLR-4/CD14 試験系を非特異的発熱原、ODN (TLR-9に対するリガンド)、PGN (TLR-2に対するリガンド)、ポリIC−で誘導した(各25 μg/ml)。試験の特異的反応を表わす色変化は認められない]を示す。
【図10】NIH-3T3 TLR-4/CD14クローン4/5の位相差顕微鏡撮影図[30% FCS、80 mmol/l HEPES および5% DMSOの培地100 μlに1穴あたり30,000 細胞を播種し、3日〜4 週間80 ℃にて凍結状態に置き、CO2非含有湿潤雰囲気の37℃で一夜かけて接着させた]を示す。
【図11】本発明のTLR-4試験(凍結して再解凍したNIH-3T3 TLR-4/CD14 SEAP P40にて実施した。100 pg/mlのLPSおよび100 pg/mlのssRNA40で誘導、24時間後に誘導、3時間後に検知。導入細胞に特異的な青色変化が観察される)を示す。
【図12】本発明のTLR-5試験(NIH3T3 クローンTLR-5 SEAPにて実施し、2 μg/mlのフラジェリンで誘導した。導入細胞に特異的な青色変化が観察される)を示す。
【図13】ヒーラ細胞を用いたTLR-5試験の比較実験(TLR-5 SEAPを導入し、2 μg/mlのフラジェリンで誘導した。導入細胞と同様に非導入対照も濃い青色を呈する。この細胞系では特異的な遺伝子導入は不可能である)を示す。
【0051】
例1: TLR-4特異的試験系
方法
TLR-4を用いた遺伝子導入(トランスフェクション)
細胞系NIH-3T3に、TLR4/CD14複合体 およびレポーター遺伝子プラスミド SEAP/ELAM-1 を導入した。
【0052】
TLR-4のエンドトキシン (LPS)媒介型誘導は、シグナルカスケードを経て転写因子NF-κBの活性化に至った。レポーター遺伝子のSEAPの発現は、NF-κB 誘導可能ELAM-1プロモーターにより抑制される。従って、TLR-4 の誘導に際し、エンドトキシンのリポ多糖 (LPS)によりNF-κB活性化およびSEAPの特異的分泌が生じる。
【0053】
試験の実施
NIH-3T3 TLR-4/CD14クローン4/5 P35を、500 μl/ウエル中に1ウエル当たり30,000〜200,000 細胞(24穴)の密度で0,5% FCS 培地に播種(他のウエル容積では適切な細胞数)し、一夜接着させる。
【0054】
翌日、LPS で一夜誘導させる(ネガティブコントロールのssRNA40ではTLR-4/CD14によって誘導されない)。
【0055】
翌日、300 μl/ウエルの検出培地を用いたインキュベーションにより検知を行い、誘導細胞を直接呈示する。誘導細胞では SEAP-活性により検出培地中の基質BCIPが深青の不溶性最終産物(インジゴ)に転化される。また誘導細胞では、SEAP-活性は検出培地中の基質pNPPが淡黄色の可溶性色素複合体に転化され、これを約405 nmで光学的に測定する。測光分析は検出培地添加の約2時間後に行う。
【0056】
24穴プレートを用いた試験キットの凍結および利用
変形例として、遺伝子導入細胞系を適切なアッセイ形式(細胞培養用ウエルプレート: マルチウエルプレート)中で適切な密度(24穴では500 μl 毎に200,000 細胞/ウエル)にて凍結する。使用者は、試験プレート中で凍結乾燥された8〜10種の異なる細胞系を有する「アッセイキット」を入手する。アッセイではキットを開封し、37℃恒温槽中で直接インキュベーションすることができる。
【0057】
キットを解凍した後、細胞接着用のDMEM培地の添加を一夜かけて行う。HEPES緩衝液を含む培地では、細胞試験のインキュベーションをCO2非通気の恒温槽中で行うことができる。100 ng/ml LPSの添加により試験的に誘導する。検知は24時間後、300 μl/ウエルのBCIP検出培地の添加により行う。
【0058】
結果
(a) 解凍試験系
図2は、解凍後に本発明の3T3 NIHクローン4/5 TLR4/CD14に対して行った、100 ng/ml LPSおよびネガティブコントロールでの結果を示す。誘導細胞では、SEAP活性により検出培地中の基質BCIPが濃青色の不溶性最終産物(インジゴ)へ転化されている。
【0059】
TLR 4/CD14を安定的に導入された細胞に基づいて、大型の装備および培養実験室(滅菌ベンチおよびCO2恒温槽)を使わず迅速かつ簡便に操作できるLPS検出系が開発された。迅速な実施が可能であり、取り扱いが簡単である。
【0060】
(b)感度
図3は、10 pg/ml〜100 pg/mlのLPSを用いた、NIH-3T3クローン4(5) TLR4/CD14 SEAP試験系の誘導を示す。検出培地に含まれる基質はBCIPである。ネガティブコントロールでは誘導されず、 ssRNA40を用いた別のネガティブコントロール では非特異的に誘導された。
【0061】
図4は、10 pg/ml 未満のLPSで特異的に反応する、NIH-3T3クローン4(5) TLR4/CD14 SEAP の検出感度を示す。図5は、1 pg/ml 未満のLPSで特異的に反応する、NIH-3T3クローン4(5) TLR4/CD14 SEAP の検出感度を示す。
【0062】
この試験系の感度は約1〜2 pg/ml LPSにある。
【0063】
(c) 特異性
前記のNIH-3T3 TLR-4/CD14 SEAP 試験系は、TLR-4が結合しない高用量の非特異的発熱原(それぞれ25 μg/mlのODN、PGN、ポリIC)で誘導した(ODN、PGN、ポリICは、TLR-9、TLR-2およびTLR-3によって認識されるが、TLR-4では認識されない)。図5は、極めて高濃度の非特異的発熱分画を用いてもTLR-4特異的試験系で色変化が認められず、TLR-4試験は特異的であることを示している。
【0064】
例2: 比較実験
方法
HEK ブルー(blue) 293 線維芽細胞および他の 293 線維芽細胞にTLR-4/CD14 SEAP を導入し、100 ng/ml LPS により誘導した。方法の更なる変量はすべて、本発明の例1と同様に選んだ。
【0065】
さらに、遺伝子発現を調べるウエスタン分析法は既に公知の方法(第1抗体=抗SEAP抗体、複合第2抗体=抗マウスPOD抗体、マーカー=SeeBlue(登録商標) Plus2、着色標準)により実施した。
【0066】
結果
図6および図7は、発色試験の結果を示す。すなわち、誘導細胞だけでなく非誘導の対照も青色変化することを示している。HEK blue 293 細胞およびクローン4(K4)などの他の293細胞を用いると特異的な誘導は見られず、試験系の樹立は不可能である。
【0067】
図8は、100 ng/ml LPSを用いた誘導後における細胞ペレットをSDS-PAGE/ウエスタン分析法にかけた結果を示す。HEK293 および他の293 細胞(K2 およびK4)のアルカリホスファターゼは、誘導細胞の場合と同じ量で非誘導対照細胞でも発現される。これらの細胞を用いても、TLR活性化の有効成分、発熱原、PAMPを特異的に検出することは不可能である。
【0068】
例3: 96穴プレートおよびCO2非含有における培養アッセイ
方法
マルチウエルプレート(96穴)上で、NIH 3T3 TLR4 CD14 SEAP P40 細胞を、培地(DMRM、80 mmol/l HEPES、30% FCS)100μl中に1穴あたり30,000 細胞の密度で懸濁液として−8O℃にて凍結した。
【0069】
−80 ℃にて72 時間〜4 週間経過後、これらの細胞へ37℃培地(10% FCS)100 μl を添加して解凍した(CO2非含有)。
【0070】
接着の24 時間後に培地(DMEM、 0.5% FCS)への交換を行い、100 μl中の細胞を30 pg/ml LPS または30 pg/ml ssRNA33 (対照)により誘導した。
【0071】
誘導期間の24 時間後、検出培地へと培地交換を行った。または、誘導期間後に1穴あたり検出培地100 μlを直接添加する。
【0072】
結果
結果を図11に示す。誘導された酵素活性の検知は、遅くとも3〜24 時間後に現れる。誘導期間の後に検出培地をウエルに直接添加すれば、1〜3 時間後にシグナルが検出可能である。
【0073】
例4: CO2非含有培養での組織学
方法
マルチウエルプレート(96穴)上で、NIH 3T3 TLR4 CD14 SEAP 細胞を1穴あたり30,000 細胞の密度にて培地(30% FCS、80 mmol/l HEPES)100μlに播種した。接着はCO2を含まない湿潤雰囲気下の37℃にて一夜かけて行った。
【0074】
結果
図10は、ウエルに接着した細胞の位相差顕微鏡撮影を示す。すなわち、これらの細胞はHEPES緩衝培地にて37℃恒温槽中の培養により増殖する。画像はインタクトな単層細胞を示す。
例5: TLR-5特異的試験系
方法
TLR-5を用いた遺伝子導入
細胞系NIH-3T3に、TLR-5およびレポーター遺伝子プラスミド SEAP を導入した。この方法は例1に対応する。
【0075】
試験の実施
NIH-3T3クローンTLR-5を、1穴あたり30,000〜200,000細胞の密度(24穴)で0.5% FCS培地の500 μl/ウエルに播種し、2 μg/ml フラジェリンによる誘導を行い、検知はBCIP含有の検出培地300 μl/ウエルでのインキュベーションにより行う。
【0076】
結果
図12は、色試験の結果を示す。すなわち、誘導細胞では特異的な青色変化が起きるものの、非誘導の対照細胞では青色変化は認められない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の発熱原を特異的に検出するための遺伝子導入細胞であって、ゲノム中に以下:
(a) 少なくとも一つのトール様受容体(Toll-like Rezeptor:TLR)をコードする遺伝子、および
(b) NF-κB により誘導可能なプロモーターの発現制御下にある少なくとも一つのレポーター遺伝子
を含む遺伝子導入細胞。
【請求項2】
前記細胞は哺乳動物の線維芽細胞である、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記細胞はマウスのNIH-3T3型線維芽細胞である、請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
前記細胞は、第一のトール様受容体型(TLR-Typ)をコードする一または複数の遺伝子、および第二のトール様受容体型(TLR-Typ)をコードする一または複数の遺伝子を更に含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項5】
前記細胞はCD14受容体をコードする遺伝子を更に有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項6】
前記CD14受容体はヒトTLR4型(TLR-4)と組み合わせて共発現される、請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
前記レポーター遺伝子は分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)をコードする、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項8】
前記レポーター遺伝子はβ-ガラクトシダーゼをコードする、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項9】
前記レポーター遺伝子はルシフェラーゼをコードする、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項10】
前記レポーター遺伝子はGFPをコードする、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項11】
前記誘導可能なプロモーターはセレクチン(内皮細胞白血球接着分子1、ELAM-1)に対するプロモーターである、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項12】
ヒトTLR1型(TLR-1)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項13】
ヒトTLR2型(TLR-2)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項14】
ヒトTLR3型(TLR-3)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項15】
ヒトTLR4型(TLR-4)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項16】
ヒトTLR5型(TLR-5)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項17】
ヒトTLR6型(TLR-6)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項18】
ヒトTLR7型(TLR-7)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項19】
ヒトTLR8型(TLR-8)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項20】
ヒトTLR9型(TLR-9)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項21】
ヒトTLR10型(TLR-10)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項22】
ヒトTLR1型(TLR-1) およびヒトTLR2型 (TLR-2)からなるヘテロ二量体受容体を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項23】
ヒトTLR6型(TLR-6) およびヒトTLR2型 (TLR-2)からなるヘテロ二量体受容体を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項24】
ヒトTLR7型(TLR-7) およびヒトTLR8型 (TLR-8)からなるヘテロ二量体受容体を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項25】
共受容体CD14型(MD2)を更に発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項26】
先行する請求項のいずれか一項に記載の少なくとも一の遺伝子導入細胞を有する培養容器を含む、検体中の発熱原を特異的に検出するためのキット。
【請求項27】
誘導可能なレポーター遺伝子によりコードされた酵素に対する基質を含有する検出培地を含む、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
少なくとも二つのコンパートメントまたはウエルを有する細胞培養容器またはプレートを含むキットであって、
第一のウエルには少なくとも一つの第一のTLR型を発現する少なくとも一つの第一の遺伝子導入細胞、および第二のウエルには少なくとも一つの第二のTLR型を発現する第一の遺伝子導入細胞とは異なる第二の遺伝子導入細胞を含む、請求項26または27に記載のキット。
【請求項29】
ヒトTLR-1を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
ヒトTLR-2を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28または29に記載のキット。
【請求項31】
ヒトTLR-3を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし30のいずれか一項に記載のキット。
【請求項32】
ヒトTLR-4を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
ヒトTLR-5を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし32のいずれか一項に記載のキット。
【請求項34】
ヒトTLR-6を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし33のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
ヒトTLR-7を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし34のいずれか一項に記載のキット。
【請求項36】
ヒトTLR-8を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし35のいずれか一項に記載のキット。
【請求項37】
ヒトTLR-9を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし36のいずれか一項に記載のキット。
【請求項38】
ヒトTLR-10を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし37のいずれか一項に記載のキット。
【請求項39】
ヒトTLR-2およびヒトTLR-6のヘテロ二量体を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし38のいずれか一項に記載のキット。
【請求項40】
ヒトTLR-2およびヒトTLR-1のヘテロ二量体を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項41】
ヒトTLR-7およびヒトTLR-8のヘテロ二量体を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項42】
検体中の発熱原を特異的に検出する方法であって、以下の工程:
(a) 少なくとも一つの特異的トール様受容体(TLR)または特異的TLRヘテロ二量体を発現する請求項1ないし25のいずれか一項に記載の少なくとも一つの遺伝子導入細胞の検体を調製することと、
(b) 前記検体を前記細胞と接触させることと、
(c) 誘導するために前記の検体-細胞-複合体をインキュベーションすることと、ならびに
(d) 誘導されたレポーター遺伝子により媒介された酵素活性を検出することとを含み、
前記の酵素活性の検出が、TLR型またはTLRヘテロ二量体に特異的な発熱原の存在を表わす方法。
【請求項43】
前記工程(d)は、以下の工程:
(d1) 細胞の誘導可能なレポーター遺伝子によりコードされた酵素に対する基質を含む検出培地を調製することと、および
(d2) 前記誘導されたレポーター遺伝子により媒介された酵素活性を検出するために検出培地中で誘導された検体-細胞-複合体をインキュベーションすることと
を含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記酵素活性は、アルカリホスファターゼ活性である、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記基質は5-ブロモ-4-クロロ-インドイルホスフェート (BICP)であり、前記検出は、青色変化および/または青色沈殿物によって示される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記基質はp-ニトロフェニルリン酸(pNPP)であり、前記検出は溶液の黄色変化によって示される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記溶液の黄色変化は測光的に定量される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記酵素活性はβ-ガラクトシダーゼ活性である、請求項42または43に記載の方法。
【請求項49】
前記基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドシル-β-D-ガラクトピラノシド(X-GaI)であり、前記検出は青色変化および/または青色沈殿物によって示される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記酵素活性はルシフェラーゼ活性である、請求項42または43に記載の方法。
【請求項51】
前記基質はルシフェリンであり、必要に応じてATPおよびMg2+を添加し、前記検出は発光によって示される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記酵素活性はGFPである、請求項42または43に記載の方法。
【請求項53】
前記検体は人体または動物個体からの臨床検体である、請求項42ないし50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記検体は血液である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記検体は医療機器または医薬品の試料片である、請求項42ないし50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記検体は、薬剤、薬剤成分、食品、食品成分、または食品もしくは薬剤の原料もしくは出発物質である、請求項42ないし50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
工程(c)における誘導のための前記検体-細胞-複合体のインキュベーションは、約37℃にて少なくとも約1時間ないし最大で約24時間行われる、請求項42ないし56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
臨床検体における発熱原を特異的に検出するための、請求項1ないし25のいずれか一項に記載の遺伝子導入細胞の使用。
【請求項59】
製品の無発熱原性を試験するための、請求項1ないし25のいずれか一項に記載の遺伝子導入細胞の使用。
【請求項60】
TLRアンタゴニストの特性を有する有効成分をスクリーニングするための、請求項1ないし25のいずれか一項に記載の遺伝子導入細胞の使用。
【請求項61】
CpG-モチーフを有するオリゴヌクレオチドをスクリーニングするための、請求項1ないし25のいずれか一項に記載の遺伝子導入細胞の使用。
【請求項62】
前記キットは請求項26ないし41のいずれか一項に記載に従って用いられる、請求項58ないし61のいずれか一項に記載の使用。
【請求項63】
前記方法は請求項42ないし57のいずれか一項に記載に従って行われる、請求項58ないし61のいずれか一項に記載の使用。
【請求項1】
検体中の発熱原を特異的に検出するための遺伝子導入細胞であって、ゲノム中に以下:
(a) 少なくとも一つのトール様受容体(Toll-like Rezeptor:TLR)をコードする遺伝子、および
(b) NF-κB により誘導可能なプロモーターの発現制御下にある少なくとも一つのレポーター遺伝子
を含む遺伝子導入細胞。
【請求項2】
前記細胞は哺乳動物の線維芽細胞である、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記細胞はマウスのNIH-3T3型線維芽細胞である、請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
前記細胞は、第一のトール様受容体型(TLR-Typ)をコードする一または複数の遺伝子、および第二のトール様受容体型(TLR-Typ)をコードする一または複数の遺伝子を更に含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項5】
前記細胞はCD14受容体をコードする遺伝子を更に有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項6】
前記CD14受容体はヒトTLR4型(TLR-4)と組み合わせて共発現される、請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
前記レポーター遺伝子は分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)をコードする、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項8】
前記レポーター遺伝子はβ-ガラクトシダーゼをコードする、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項9】
前記レポーター遺伝子はルシフェラーゼをコードする、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項10】
前記レポーター遺伝子はGFPをコードする、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項11】
前記誘導可能なプロモーターはセレクチン(内皮細胞白血球接着分子1、ELAM-1)に対するプロモーターである、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項12】
ヒトTLR1型(TLR-1)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項13】
ヒトTLR2型(TLR-2)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項14】
ヒトTLR3型(TLR-3)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項15】
ヒトTLR4型(TLR-4)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項16】
ヒトTLR5型(TLR-5)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項17】
ヒトTLR6型(TLR-6)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項18】
ヒトTLR7型(TLR-7)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項19】
ヒトTLR8型(TLR-8)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項20】
ヒトTLR9型(TLR-9)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項21】
ヒトTLR10型(TLR-10)を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項22】
ヒトTLR1型(TLR-1) およびヒトTLR2型 (TLR-2)からなるヘテロ二量体受容体を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項23】
ヒトTLR6型(TLR-6) およびヒトTLR2型 (TLR-2)からなるヘテロ二量体受容体を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項24】
ヒトTLR7型(TLR-7) およびヒトTLR8型 (TLR-8)からなるヘテロ二量体受容体を発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項25】
共受容体CD14型(MD2)を更に発現する、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項26】
先行する請求項のいずれか一項に記載の少なくとも一の遺伝子導入細胞を有する培養容器を含む、検体中の発熱原を特異的に検出するためのキット。
【請求項27】
誘導可能なレポーター遺伝子によりコードされた酵素に対する基質を含有する検出培地を含む、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
少なくとも二つのコンパートメントまたはウエルを有する細胞培養容器またはプレートを含むキットであって、
第一のウエルには少なくとも一つの第一のTLR型を発現する少なくとも一つの第一の遺伝子導入細胞、および第二のウエルには少なくとも一つの第二のTLR型を発現する第一の遺伝子導入細胞とは異なる第二の遺伝子導入細胞を含む、請求項26または27に記載のキット。
【請求項29】
ヒトTLR-1を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
ヒトTLR-2を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28または29に記載のキット。
【請求項31】
ヒトTLR-3を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし30のいずれか一項に記載のキット。
【請求項32】
ヒトTLR-4を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
ヒトTLR-5を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし32のいずれか一項に記載のキット。
【請求項34】
ヒトTLR-6を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし33のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
ヒトTLR-7を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし34のいずれか一項に記載のキット。
【請求項36】
ヒトTLR-8を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし35のいずれか一項に記載のキット。
【請求項37】
ヒトTLR-9を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし36のいずれか一項に記載のキット。
【請求項38】
ヒトTLR-10を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし37のいずれか一項に記載のキット。
【請求項39】
ヒトTLR-2およびヒトTLR-6のヘテロ二量体を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし38のいずれか一項に記載のキット。
【請求項40】
ヒトTLR-2およびヒトTLR-1のヘテロ二量体を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項41】
ヒトTLR-7およびヒトTLR-8のヘテロ二量体を発現する遺伝子導入細胞を含む少なくとも一つのウエルを含む、請求項28ないし39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項42】
検体中の発熱原を特異的に検出する方法であって、以下の工程:
(a) 少なくとも一つの特異的トール様受容体(TLR)または特異的TLRヘテロ二量体を発現する請求項1ないし25のいずれか一項に記載の少なくとも一つの遺伝子導入細胞の検体を調製することと、
(b) 前記検体を前記細胞と接触させることと、
(c) 誘導するために前記の検体-細胞-複合体をインキュベーションすることと、ならびに
(d) 誘導されたレポーター遺伝子により媒介された酵素活性を検出することとを含み、
前記の酵素活性の検出が、TLR型またはTLRヘテロ二量体に特異的な発熱原の存在を表わす方法。
【請求項43】
前記工程(d)は、以下の工程:
(d1) 細胞の誘導可能なレポーター遺伝子によりコードされた酵素に対する基質を含む検出培地を調製することと、および
(d2) 前記誘導されたレポーター遺伝子により媒介された酵素活性を検出するために検出培地中で誘導された検体-細胞-複合体をインキュベーションすることと
を含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記酵素活性は、アルカリホスファターゼ活性である、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記基質は5-ブロモ-4-クロロ-インドイルホスフェート (BICP)であり、前記検出は、青色変化および/または青色沈殿物によって示される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記基質はp-ニトロフェニルリン酸(pNPP)であり、前記検出は溶液の黄色変化によって示される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記溶液の黄色変化は測光的に定量される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記酵素活性はβ-ガラクトシダーゼ活性である、請求項42または43に記載の方法。
【請求項49】
前記基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドシル-β-D-ガラクトピラノシド(X-GaI)であり、前記検出は青色変化および/または青色沈殿物によって示される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記酵素活性はルシフェラーゼ活性である、請求項42または43に記載の方法。
【請求項51】
前記基質はルシフェリンであり、必要に応じてATPおよびMg2+を添加し、前記検出は発光によって示される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記酵素活性はGFPである、請求項42または43に記載の方法。
【請求項53】
前記検体は人体または動物個体からの臨床検体である、請求項42ないし50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記検体は血液である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記検体は医療機器または医薬品の試料片である、請求項42ないし50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記検体は、薬剤、薬剤成分、食品、食品成分、または食品もしくは薬剤の原料もしくは出発物質である、請求項42ないし50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
工程(c)における誘導のための前記検体-細胞-複合体のインキュベーションは、約37℃にて少なくとも約1時間ないし最大で約24時間行われる、請求項42ないし56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
臨床検体における発熱原を特異的に検出するための、請求項1ないし25のいずれか一項に記載の遺伝子導入細胞の使用。
【請求項59】
製品の無発熱原性を試験するための、請求項1ないし25のいずれか一項に記載の遺伝子導入細胞の使用。
【請求項60】
TLRアンタゴニストの特性を有する有効成分をスクリーニングするための、請求項1ないし25のいずれか一項に記載の遺伝子導入細胞の使用。
【請求項61】
CpG-モチーフを有するオリゴヌクレオチドをスクリーニングするための、請求項1ないし25のいずれか一項に記載の遺伝子導入細胞の使用。
【請求項62】
前記キットは請求項26ないし41のいずれか一項に記載に従って用いられる、請求項58ないし61のいずれか一項に記載の使用。
【請求項63】
前記方法は請求項42ないし57のいずれか一項に記載に従って行われる、請求項58ないし61のいずれか一項に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−542236(P2009−542236A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518758(P2009−518758)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005946
【国際公開番号】WO2008/003489
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(597159765)フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー. (68)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005946
【国際公開番号】WO2008/003489
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(597159765)フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー. (68)
【Fターム(参考)】
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