説明

ドアトリムにおけるドア本体への取付け構造

【課題】ドアトリムをドア本体に取り付ける際にたとえ引っ掛け係合片部が揺動したとしても、ドアトリム側の上端ウエスト部がこれにつれて揺動しないように構成して、ウエザーストリップ側のシール舌片部が確実に上部ウエスト部の所定位置に弾接するようにした。
【解決手段】ドアトリム5をドア本体4のインナパネル8に取付けるための引っ掛け係合片部6aを、ドアトリム5の上端ウエスト部5cに設けたウエストガーニッシュ6に対して弾性的に揺動可能に構成されるように上端ウエスト部5c裏面側に突出形成し、引っ掛け係合片部6aがドアトリム取付け片部11に係合する際にウエストガーニッシュ6延いては上端ウエスト部5cが引っ掛け係合片部6aの揺動に同期して揺動しないように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドア本体の車室側を内装するドアトリムをドア本体に取付けるための取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種のドアトリムにおけるドア本体への取り付け構造は、例えば、図10乃至図13に示すものが知られている(類似する技術として、例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開2005−289272号公報。
【特許文献2】特開平10−203168号公報。
【0003】
先ず、図10によれば、自動車のドアaは、車体の出入口を開閉すべく、ウインドガラスbを上下動させることによって上部窓部cを開閉可能に構成したドア本体dと、ドア本体dの車室内側を内装すべくドア本体dに装着されたドアトリムeを有し、さらに、ドアトリムeにおける上端ウエスト部fとウインドガラスbとの間に雨水等が車室内に侵入しないようにウインドガラスbに弾接してシールするウエザーストリップgを装備して構成している。
【0004】
ウエザーストリップgは、従来、ドアトリムeの上部ウエスト部fに締着具等を用いて装着されているタイプのものが知られているが、最近、ドアトリムeにおけるドア本体dへの装着作業工数の低減のために、ドア本体d側に装着されるタイプのものが広く採用されるようになっている。
【0005】
このようなタイプの自動車用ドアにおいては、図13に示すように、ドア本体dを不図示のアウタパネルと共に構成するインナパネルhの上端部にウインドガラスb側に位置する強度剛性部材としてのスティッフナーiを取付け、スティッフナーiの上端部にウエザーストリップ取付け片部を形成すると共に、インナパネルhの上端部に車室内側に位置するようにドアトリム取付け片部kを形成し、ウエザーストリップ取付け片部kにウエザーストリップgの挟持枠部g−1を嵌合することによってウエザーストリップgを取付けると共に、ドアトリム取付け片部kにドアトリムeの上端ウエスト部fに形成した引っ掛け係合片部mを係合することによってドアトリムeをインナパネルhに装着し、この際挟持枠部g−1の上面部に形成したシール舌片部g−2を上端ウエスト部fに弾接させるように構成していた。
【0006】
そして、ウエザーストリップgを装着したインナパネルhにドアトリムeを取付けるには、先ず、図11に示すように、ドアトリムe側の引っ掛け係合片部mをドアトリム取付け片部kの上端を滑らしながら、ドアトリムeをウインドガラスb側に移動させる。この時、図12に示すように、引っ掛け係合片部mの楔作用により、上部ウエスト部fをも上方に揺動させながら、引っ掛け係合片部mがドアトリム取付け片部kの上端を乗り上げ、さらに、ドアトリムeを移動させることによって、図13に示すように、引っ掛け係合片部mがドアトリム取付け片部kに係合し、ドアトリムeがインナパネルhに取付けられることになる。
【0007】
この結果、ウエザーストリップgのシール舌片部g−2が上端ウエスト部fに弾接して、ウエザーストリップgのガラス側シール片部g−3がウインドガラスbに弾接することと相俟って、ウインドガラスbとドアトリムeとの間に侵入する雨水等をシールするように構成されることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ドアトリムeをインナパネルhに取り付ける過程において、図12に示すように、引っ掛け係合片部mがドアトリム取付け片部kを乗り上げる際に、ドアトリムeの移動の仕方によっては、上端ウエスト部fが揺動することにより、図14に示すように、シール舌片部g−2を上端ウエスト部fの先端曲部が上部側から押え付けてしまうことがあり、この結果、シール舌片部g−2が上端ウエスト部fの所定位置に弾接しないことになって、ウエザーストリップgのシール性能を損なうおそれが生じることになる。
【0009】
そこで、本発明は、ドアトリムをドア本体に取り付ける際にたとえ引っ掛け係合片部が揺動したとしても、ドアトリム側の上端ウエスト部がこれにつれて揺動しないように構成して、ウエザーストリップ側のシール舌片部が確実に上部ウエスト部の所定位置に弾接するようにしたドアトリムにおけるドア本体への取付け構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るドアトリムにおけるドア本体への取付け構造は、アウタパネルとインナパネルとを接合することによってドア本体を構成し、前記インナパネルの上端部にウインドガラス側に位置するウエザーストリップ取付け片部及び車室内側に位置するドアトリム取付け片部を形成し、前記ウエザーストリップ取付け片部に前記ウインドガラスに弾接してシールするウエザーストリップの挟持枠部を嵌合することによって前記ウエザーストリップを取付けると共に、前記ドアトリム取付け片部に前記インナパネルの車室内側を内装するドアトリムの上端ウエスト部側に設けた引っ掛け係合片部を係合することによって前記ドアトリムを前記インナパネルに装着し、この際前記挟持枠部の上面部に形成したシール舌片部を前記ドアトリムの上端ウエスト部に弾接させるように構成したドアトリムにおけるドア本体への取付け構造において、前記引っ掛け係合片部を前記上端ウエスト部に対して弾性的に揺動可能に構成されるように前記ドアトリムの裏面側に突出形成し、前記引っ掛け係合片部が前記ドアトリム取付け片部に係合する際に前記ドアトリムの上端ウエスト部が前記引っ掛け係合片部の揺動に同期して揺動しないように構成したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記上端ウエスト部に凹陥部を設け、該凹陥部の底部に前記引っ掛け係合片部を形成するようにしても良い。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成する本発明によれば、引っ掛け係合片部をドアトリムの上端ウエスト部に対して弾性的に揺動可能に構成されるようにドアトリムの裏面側に突出形成したことにより、引っ掛け係合片部をインナパネル側のドアトリム取付け片部に係合する際に、上端ウエスト部は揺動しないことになり、上端ウエスト部がシール舌片部を上部側から押え付けることがないために、シール舌片部は上端ウエスト部の所定位置に常時確実に弾接することになって、ウエザーストリップのシール性能を損なわせることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明に係る実施の形態について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る自動車のドアを車室側から描画した斜視図、図2は図1におけるドアトリムの上端ウエスト部の一部を表皮材を破断した状態で描画した斜視図、図3はドア本体にドアトリムを取付ける初期段階を描画した図1のA−A断面図、図4はドア本体にドアトリムを取付ける中間段階を描画した図1のA−A断面図、図5はドア本体へのドアトリムの取付けが完了した状態を描画した図1のA−A断面図である。
【0015】
先ず、図1において、自動車のドア1は、車体の出入口を開閉すべく、ウインドガラス2を上下動させることによって上部窓部3を開閉可能に構成したドア本体4と、ドア本体4の車室内側を内装すべくドア本体4に装着されたドアトリム5を有し、さらに、ドアトリム5における上端ウエスト部6とウインドガラス2との間に雨水等が車室内に侵入しないようにウインドガラス2に弾接してシールするウエザーストリップ7が装備されて構成している。
【0016】
そして、図5に示すように、ドア本体4は、互いに板金をプレス等により成形することにより形成されたインナパネル8と不図示のアウタパネルとを接合することによって構成されており、インナパネル8の上端部は、ウインドガラス2側に位置する強度剛性部材としてのスティッフナー9が取付けられている。
【0017】
スティッフナー9の上端部には、ウエザーストリップ取付け片部10が形成されていて、ウエザーストリップ7の挟持枠部7aが嵌合することによって、ウエザーストリップ7が取付けられている。
【0018】
この結果、ウエザーストリップ7は、挟持枠部7aの上面部に形成したシール舌片部7a−1が上端ウエスト部6に弾接して、側面部に形成した一対のガラス側シール片部7bがウインドガラス2に弾接することと相俟って、ウインドガラス2とドアトリム5との間に侵入する雨水等をシールするように構成されることになる。
【0019】
ドアトリム5は、樹脂を射出成形やモールドプレス成形により成形して形成したトリム芯材5aと芯材5aの表面を被覆する表皮材5bとを有して構成されており、トリム芯材5aは、全体を一体成形する場合もあるが、ドアー1の大型化等により、図においては明確に示していないが、上下方向に2分割或いは3分割等により分割された各分割芯材片を互いに接合することによって構成されている。したがって、例えば、図2においては、トリム芯材5aは、実際の最上位に位置するアッパー側分割芯材片を示している。
【0020】
インナパネル8の上端部には、車室内側に位置するようにドアトリム取付け片部11が形成され、ドアトリム取付け片部11にトリム芯材5aの上端ウエスト部5cに設けたウエストガーニッシュ6に形成した引っ掛け係合片部6aを係合することによって、トリム芯材5aがインナパネル8に装着させるように構成している。
【0021】
引っ掛け係合片部6aは、特に図2に明確に示すように、ウエストガーニッシュ6に凹設した凹陥部6bの底部6b−1をウインドガラス2側にコ字状に切欠くことによって形成されており、底部6b−1における車室内側を連結揺動部6a−2として、係合突起6a―1をウエストガーニッシュ6に対して揺動可能に構成されている。
【0022】
次に、トリム芯材5aに表皮材5bを被覆して構成するドアトリム5をドア本体4のインナパネル8に装着する過程を説明する。
【0023】
すなわち、先ず、図3に示すように、スティッフナー9のウエザーストリップ取付け片部10にウエザーストリップ7を取付けておいて状態において、ドアトリム5をインナパネル8側(図3の矢印方向)に移動して、ドアトリム取付け片部11の車室側に、引っ掛け係合片部6aの先端をあてがい、さらに、ドアトリム5を図3の矢印方向に移動させると、引っ掛け係合片部6aがドアトリム取付け片部11の上方に沿うように揺動変形し、係合突起6a―1がくさび作用で上方に揺動してドアトリム取付け片部11の上端に乗っかることになる。この時、トリム芯材5aの裏面と、ウエストガーニッシュ6の凹陥部6bの間の空間により、引っ掛け係合片部6aの上方への揺動変形を許容している。
【0024】
この状態から、さらにドアトリム5を移動させると、係合突起6a―1がインナパネル8の上端を乗り越え、その後瞬時に係合突起6a−1が下方にスナップ回転してインナパネル8の裏側(ウインドガラス側)に係合することになる(図5に示す状態)。
【0025】
このようなドアトリム5の一連の取付け過程において、引っ掛け係合片部6aは、ドアトリム5の上端ウエスト部6に対して揺動可能に形成したことから、ドアトリム5の上端ウエスト部6の裏面側に突出形成したことにより、引っ掛け係合片部6aがインナパネル8側のドアトリム取付け片部11に係合する際に、上端ウエスト部6は揺動しないことになり、上端ウエスト部6がウエザーストリップ7のシール舌片部7а−1を上部側から押え付けることがないために、シール舌片部7а−1は上端ウエスト部6の所定位置に常時確実に弾接することになって、ウエザーストリップのシール性能を損なわせることはない。
【0026】
次に、図6乃至図9に示す本発明に係る変形例について説明する。
【0027】
図6及び図7に示す第1の変形例は、引っ掛け係合片部6aが凹陥部6bの底部6b−1をコ字状に切欠くことによって形成された点、上記実施の形態と同様であるが、連結揺動部6a―2がウインドガラス2側に位置させた点、相違するものである。
【0028】
図8及び図9に示す第2の変形例は、引っ掛け係合片部6aが、凹陥部6bの底部6b−1から上端ウエスト部5cの車室内側面にかけて設けられた2本のスリットの間に橋渡し状に形成されているとともに、橋渡し形状の略中央部を下方に窪ませることにより形成した係合突起6a−1により構成している点、相違している。2本のスリットが凹陥部6bの底部6b−1からウエストガーニッシュ6の車室内対向側面に跨って設けられているため、引っ掛け係合片部6aがより容易に揺動可能になっている。
【0029】
いずれの変形例においても、係合突起6a―1がドアトリム取付け片部11に掛合する際に、上端ウエスト部6を揺動させない点、上記実施の形態と同様である。
【0030】
なお、上記実施の形態においては、インナパネル8の上部剛性を高めるために、スティッフナー9を設けるようにしたが、必ずしもスティッフナー9を設ける必要がなく、例えば、スティッフナー9に相当する構成をインナパネル8に一体形成するようにしても良く、この場合、ウエザーストリップ取付け片部10はインナパネル8に直接形成することになる。
【0031】
上記実施の形態においては、引っ掛け係合部6aは、ウエストガーニッシュ6に形成しているが、ウエストガーニッシュ6を用いない場合等には、トリム芯材5aの上端ウエスト部5cに直接一体に形成することになる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明は、引っ掛け係合片部をドアトリムの上端ウエスト部に対して弾性的に揺動可能に構成されるようにドアトリムの裏面側に突出形成したことにより、引っ掛け係合片部をインナパネル側のドアトリム取付け片部に係合する際に、上端ウエスト部は揺動しないことになり、上端ウエスト部がシール舌片部を上部側から押え付けることがないために、シール舌片部は上端ウエスト部の所定位置に常時確実に弾接することになって、ウエザーストリップのシール性能を損なわせることはなく、自動車のドア本体の車室側を内装するドアトリムをドア本体に取付けるための取付け構造等に好適であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動車のドアを車室側から描画した斜視図である。
【図2】図1におけるドアトリムの上端ウエスト部の一部を表皮材を破断した状態で描画した斜視図である。
【図3】ドア本体にドアトリムを取付ける初期段階を描画した図1のA−A断面図である。
【図4】ドア本体にドアトリムを取付ける中間段階を描画した図1のA−A断面図である。
【図5】ドア本体へのドアトリムの取付けが完了した状態を描画した図1のA−A断面図である。
【図6】本発明の変形例におけるドアトリムの上端ウエスト部の一部を表皮材を破断した状態で描画した斜視図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】本発明の他の変形例におけるドアトリムの上端ウエスト部の一部を表皮材を破断した状態で描画した斜視図である。
【図9】図8のC−C断面図である。
【図10】従来における自動車のドアを車室側から描画した斜視図である。
【図11】ドア本体にドアトリムを取付ける初期段階を描画した図10のD−D断面図である。
【図12】同じくドア本体にドアトリムを取付ける中間段階を描画した図10のD−D断面図である。
【図13】同じくドア本体へのドアトリムの取付けが正規状態で完了した状態を描画した図10のD−D断面図である。
【図14】同じくドア本体へのドアトリムの取付けが不正規状態で完了した状態を描画した図10のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ドア
2 ウインドガラス
4 ドア本体
5 ドアトリム
5c 上端ウエスト部
6 ウエストガーニッシュ
6a 引っ掛け係合片部
6b 凹陥部
6b−1 底部
7 ウエザーストリップ
7a 挟持枠部
7a−1 シール舌片部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルとインナパネルとを接合することによってドア本体を構成し、前記インナパネルの上端部にウインドガラス側に位置するウエザーストリップ取付け片部及び車室内側に位置するドアトリム取付け片部を形成し、前記ウエザーストリップ取付け片部に前記ウインドガラスに弾接してシールするウエザーストリップの挟持枠部を嵌合することによって前記ウエザーストリップを取付けると共に、前記ドアトリム取付け片部に前記インナパネルの車室内側を内装するドアトリムの上端ウエスト部側に設けた引っ掛け係合片部を係合することによって前記ドアトリムを前記インナパネルに装着し、この際前記挟持枠部の上面部に形成したシール舌片部を前記ドアトリムの上端ウエスト部に弾接させるように構成したドアトリムにおけるドア本体への取付け構造において、
前記引っ掛け係合片部を前記上端ウエスト部に対して弾性的に揺動可能に構成されるように前記ドアトリムの裏面側に突出形成し、前記引っ掛け係合片部が前記ドアトリム取付け片部に係合する際に前記ドアトリムの前記上端ウエスト部が前記引っ掛け係合片部の揺動に同期して揺動しないように構成したことを特徴とするドアトリムにおけるドア本体への取付け構造。
【請求項2】
前記上端ウエスト部に凹陥部を設け、該凹陥部の底部に前記引っ掛け係合片部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のドアトリムにおけるドア本体への取付け構造。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate